説明

オゾン溶存グリセリン溶液を含む化粧料、医薬部外品、医薬(医薬品)等の外用剤

【課題】 十分な安全性および効果を具備する、無傷の皮膚または粘膜に適用し得る外用剤を提供すること。
【解決手段】 オゾン溶存グリセリン溶液を含む、無傷の皮膚または粘膜に用いられる外用剤であって、オゾンの濃度の初期値が少なくとも85ppmである、前記外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン溶存グリセリン溶液を含む化粧料、医薬部外品、医薬(医薬品)等の外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、医薬部外品、化粧料等としての外用剤は、美容または各種疾病の予防、処置、治療を目的として広く用いられる剤である。また、外用剤の有効成分としては、使用の目的に応じて種々のものが用いられている。例えば、医薬および医薬部外品においては、医薬成分および医薬成分より緩徐な作用を有する成分が、化粧料においては、保湿成分、美白成分、しわ改善成分、しみ改善成分等が、それぞれ用いられている。
【0003】
外用剤の成分として、オゾンも知られている。オゾンは無色透明の物質であるうえに、反応した後すぐに酸素に戻ることで組織為害性が極めて弱いため、外用剤の成分としての扱いが容易であり、かつ安全性が高い物質である。オゾンを含む剤として、例えば、特許文献1(特開平10−139645)には、オゾン封入粘稠体として、にきび、吹き出物類に対する殺菌作用、しみ、そばかす類に対する脱色作用、日焼け後の抗炎症作用、又は皮膚に対する組織活性化作用を有する化粧料、歯磨きペースト、創傷用軟膏、塗布用ペースト、軟膏等が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2003−55107)には、グリセリンを、オゾン酸化してなる水溶性殺菌剤が記載され、とくに同文献には、1%程度のグリセリン水溶液のオゾン酸化グリセリン(オゾン濃度約3ppm)が手洗い等に適している旨も記載されている。
また、特許文献3(特開2005−232094)には、オゾン溶存グリセリン溶液を用いた化粧水や美容液および創傷部への治療薬が記載されている。同文献には、とくにオゾン濃度が80ppm以上であれば殺菌能力を発揮することができ、オゾン濃度が500ppm以上であれば、創傷治癒効果を得ることができることについても記載されている。同文献には、とくにオゾン軟膏およびオゾンジェルの具体的な処方とともに、その創傷治癒効果について記載されている。
【0005】
特許文献3においては、濃厚なグリセリン溶液は人体の組織に対して刺激性を有するため、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか一つを混合し、撹拌することを特徴とする溶液、製造方法、保存方法、固化物において、その刺激性等を解決できることについても記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−139645号公報
【特許文献2】特開2003−55107号公報
【特許文献3】特開2005−232094号公報
【非特許文献1】Maurizio Podda, Hautarzt(2004; 55: 1120-1124)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、外用剤として種々のものが知られているが、無傷の皮膚または粘膜に対するそれらの安全性や効果は必ずしも十分ではない。また、有効成分の種類によっては、その物性、例えば溶解性や臭い、オゾンによる酸化分解等のために、外用剤として適さないものもある。
【0008】
外用剤の成分としてのオゾンは、分解後酸素に戻るため取り扱いが容易であるといった利点を有するが、十分な所期の効果を奏するオゾン含有外用剤の具体的な処方として知られているのは、
・手洗い等に用いるための、1%程度のグリセリン水溶液のオゾン酸化グリセリン(特許文献2)、および
・創傷治癒のためのオゾン軟膏およびオゾンジェル(特許文献3)
のみである。特許文献1には、オゾン含有外用剤の具体的な処方は全く記載されていない。
また、オゾンを含む化粧水等の効果は、上記のとおり溶媒であるグリセリンの濃度が限定されるため、一定の濃度以上の濃度のオゾンを含むものの効果の検討さえなされていない。むしろ、オゾンは酸化力を有するため、一般的には皮膚には悪影響を及ぼすことも懸念され、無傷の皮膚または粘膜に対しては、オゾンは適用しづらいとさえ考えられている。例えばマウスを用いた実験の結果から、オゾンは肺だけでなく,皮膚にも障害を与える恐れがあり、「とくに大都市では,他の環境有害物質との相乗作用も考えられるため,注意が必要」である旨記載されている(非特許文献1)。
また、同じくマウスを用いた実験の結果から、オゾンにより皮膚角質層内の細胞酸化代謝産物やストレス蛋白質の濃度が上昇する一方で、保護物質である抗酸化物質の濃度が低下することも明らかにされている(非特許文献1)。例えば、オゾン濃度1ppmの環境下では 2 時間後にトコフェロールとアスコルビン酸がそれぞれ80%ずつ,グルタチオンが45%減少した旨報告されている。
さらに、非特許文献1においては、オゾンのヒトに対する悪影響についても言及され、「オゾンにより、角質層内の不飽和脂肪酸が酸化し、バリア機能が損なわれて皮膚炎を生じる可能性がある」旨記載されている。とくに、スモッグが発生しやすい大都市や人口密集地域では、夏になるとオゾン濃度が0.1〜0.8ppmに達し、さらに炭化水素やたばこの煙、紫外線などの環境有害物質も加わると、相乗作用によりオゾンの悪影響が増大すると考えられている。
このため、これらに対する予防策として、非特許文献1には、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質を事前に塗布することによって、前記のような障害を緩和あるいは回避できる可能性について記載されている。一方において、同文献には、オゾンがより深部へ浸透することや全身的な影響を及ぼすことは考えられない旨も記載されている。
オゾンは上記のような利点を有する物質ではあるが、上記のような人体への悪影響や用いにくさがあるため、その外用剤としての適用は限られているのが現状である。
【0009】
また、上記のとおり、外用剤として種々のものが知られてはいるものの、無傷の皮膚または粘膜に対する十分な安全性および効果を具備し、かつ好適な物性を有する物質を有効成分とするものは、未だ存在しない。
【0010】
したがって、本発明は、十分な安全性および効果を具備する、無傷の皮膚または粘膜に適用し得る外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、従来のものより高濃度の溶存オゾンを含有する外用剤が、驚くべきことに、無傷の皮膚または粘膜に対して種々の優れた効果を有し、かつ無傷の皮膚または粘膜に対する安全性も担保されることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも以下の各発明に関する。
(1)オゾン溶存グリセリン溶液を含む、無傷の皮膚または粘膜に用いられる外用剤であって、オゾンの濃度の初期値が少なくとも85ppmである、前記外用剤。
(2)化粧料である、前記外用剤。
(3)水、保湿剤、増粘剤、防腐剤、界面活性剤、抗炎症剤、セラミドまたはその前駆体、ポリエチレングリコール、アロマオイルおよびエタノールの少なくとも1種をさらに含む、前記外用剤。
(4)保湿剤がヒアルロン酸Na、アセチルヒアルロン酸Naおよびそれらの誘導体の、少なくとも1種であり、増粘剤がキサンタンガムであり、防腐剤がフェノキシエタノールである、前記外用剤。
(5)界面活性剤がラウロイル硫酸Naであり、保湿剤がPCA−Naであり、抗炎症剤がグリチルリチン酸2Kであり、セラミドまたはその前駆体がセラミド1、セラミド3、セラミド6II、フィトスフィンゴシンおよびコレステロールの少なくとも1種であり、防腐剤がフェノキシエタノールである、前記外用剤。
(6)ポリエチレングリコール450およびポリエチレングリコール65Mの少なくとも1種をさらに含む、前記外用剤。
(7)エタノールおよび/または少なくとも1種のアロマオイルをさらに含む、前記外用剤。
(8)酸性水である水をさらに含む、請求項3〜7のいずれかに記載の外用剤、前記外用剤。
(9)皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善の1または2以上に用いられる、前記外用剤。
(10)皮膚または粘膜における、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減または真菌の低減に用いられる、前記外用剤。
(11)上記いずれかの外用剤と、抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤とからなるキット。
(12)抗酸化物質が、ビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である前記キット。
(13)皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減または真菌の低減の1または2以上の方法であって、本発明の前記外用剤を皮膚または粘膜に用いた後に、ビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤を前記皮膚または粘膜に用いる、前記方法。
(14)本発明の前記外用剤またはビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤を保存する方法であって、前記各外用剤を冷蔵もしくは冷凍することを含む、前記方法。
【0012】
また、本発明は、前記いずれかの外用剤を無傷の皮膚または粘膜に用いることによって、皮膚の健全性を高める(皮膚のトラブルを改善し、健全性を回復する)方法にも関する。
【0013】
本明細書において「無傷の皮膚または粘膜」とは、創傷等の外傷がない皮膚または粘膜を意味する。したがって、「無傷の皮膚または粘膜」には、皮膚または粘膜として、水分蒸散が進んだ状態にあるもの、しみを有するもの、たるみを有するもの、皮脂が沈積したもの、ターンオーバーが退行したもの、抗酸化機能が退行したもの、にきびが発生したもの、真菌が発生したもの等の、好ましくない状態にある皮膚または粘膜が包含される。
また、「皮膚または粘膜の健全性を高める」とは、上記それぞれの好ましくない状態を改善することを意味する。
【0014】
上記のとおり、従来技術において、オゾン溶存グリセリン溶液が殺菌効果および創傷治癒効果を有することは知られている。これらの効果のうち、創傷治癒効果は、殺菌効果によるものであるか、または創傷部位から浸透したオゾンが血球細胞を刺激し、IL-8を始めとしたサイトカインの分泌を促すことによるものであると考えられている。IL-8は、線維芽細胞の誘導、血管新生、白血球の走化性を活性化させる、白血球遊走因子(leukocyte chemotactic factor)の一種である。サイトカインは真皮まで到達し、真皮における線維芽細胞の増殖などを誘導し、その結果、ヒアルロン酸やコラーゲンが生成され肉芽形成促進や上皮の再生という過程を経て創傷治癒に至ると考えられる。
【0015】
一方、創面以外の、無傷の皮膚(粘膜も含む)においては、上記の作用機序に加えて、さらに別異な作用機序が必要である。創面が様々な状況により表皮や真皮が損傷しているためオゾンの透過が容易であるのに対し、無傷の皮膚においては少なくとも角層が、オゾンの透過を妨げるバリアーとなるからである。したがって、本発明の外用剤は、グリセリン溶液から徐放されたオゾンが、マイルドな酸化刺激を角層に与え、その酸化刺激によって角層のランゲルハンス細胞やケラチノサイトからサイトカインを放出せしめることによって効果を発現すると考えられる。また、本発明の外用剤は、初期オゾン濃度として85ppm以上といった、従来のオゾン含有化粧水等より高濃度のオゾンを含有することによって、より長期にわたる効果の発現を、皮膚に対して悪影響を及ぼすことなく達成することができる。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明の外用剤によれば、皮膚または粘膜における水分蒸散量の低減、しみの低減、たるみの改善、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減、真菌の低減など、皮膚または粘膜の健全性を高めることができる。
(2)本発明の外用剤のうち、化粧料であるものによれば、皮膚または粘膜の健全性を高め、美容目的に用いることができる。
(3)本発明の外用剤のうち、水、保湿剤、増粘剤、防腐剤、界面活性剤、抗炎症剤、セラミドまたはその前駆体、ポリエチレングリコール、アロマオイルおよびエタノールの少なくとも1種をさらに含むものによれば、これら各種追加の成分の効果または該成分とオゾンとの相乗効果により、皮膚または粘膜の健全性をより一層高めることができる。
(4)保湿剤がヒアルロン酸Na、アセチルヒアルロン酸Naおよびそれらの誘導体の、少なくとも1種であり、増粘剤がキサンタンガムであり、防腐剤がフェノキシエタノールであるものによれば、保湿化粧水、保湿美容液として、皮膚または粘膜の健全性をより一層高めることができる。
(5)界面活性剤がラウロイル硫酸Naであり、保湿剤がPCA−Naであり、抗炎症剤がグリチルリチン酸2Kであり、セラミドまたはその前駆体がセラミド1、セラミド3、セラミド6II、フィトスフィンゴシンおよびコレステロールの少なくとも1種であり、防腐剤がフェノキシエタノールであるものによれば、保湿化粧水、保湿美容液として、皮膚または粘膜の健全性をより一層高めることができる。
(6)本発明の外用剤のうち、ポリエチレングリコール450およびポリエチレングリコール65Mの少なくとも1種をさらに含むものによれば、オゾンクリームとして、皮膚または粘膜の健全性をより一層高めることができる。
(7)本発明の外用剤のうち、エタノールおよび/または少なくとも1種のアロマオイルをさらに含むものによれば、エタノールまたは少なくとも1種のアロマオイルによる清涼効果により、より優れた使用感を伴って皮膚または粘膜の健全性を高めることができる。
(8)本発明の外用剤のうち、酸性水である水をさらに含むものによれば、より長期にわたり皮膚または粘膜の健全性を高めることができる。
(9)本発明の外用剤のうち、皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善の1または2以上に用いられるものによれば、これらの目的を確実に達成することができる。
(10)本発明の外用剤のうち、皮膚または粘膜における、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減または真菌の低減に用いられるものによれば、これらの目的を確実に達成することができる。
(11)本発明の、上記いずれかの外用剤と、抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤とからなるキットものによれば、オゾンの反応を停止させ、過剰な酸化を防ぐことが可能となる。オゾンの効果をより好適に奏せしめることができる。
(12)本発明のキットのうち、抗酸化物質が、ビタミンC類、ビタミンE類グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上であるものによれば、オゾンの反応を停止させることと合わせて、皮膚内にて消費された抗酸化物質を補給することが可能となる。これらの物質の還元作用により、皮膚または粘膜に対してより好ましい効果を奏せしめることができる。
(13)本発明の皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減等の方法によれば、オゾンの反応を停止させることと合わせて、皮膚内にて消費された抗酸化物質を補給することが可能となる。
(14)本発明の前記外用剤またはビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤を保存する方法によれば、これらの成分の酸化・還元反応を抑えることによって、同各成分のより長期の保存が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の外用剤は、オゾン溶存グリセリン溶液を含む、無傷の皮膚または粘膜に用いられる外用剤であって、オゾンの初期濃度が少なくとも85ppmであれば、その処方、剤型等は限定されない。したがって、本発明の外用剤は、オゾンの初期濃度が少なくとも85ppmであれば、オゾン溶存グリセリン溶液そのもの、すなわちグリセリンにオゾンを溶存せしめた溶液そのもの(ジェル)でもよい。他の剤型としては、化粧水、美容液、クリーム、乳液、クレンジング、洗顔、紫外線防止剤、メイクアップ剤、軟膏、パック、テープおよび貼付剤等が挙げられる。
本発明の外用剤は、その効果および使いやすさの観点から、化粧料としての用途が好ましい。
【0018】
なお、オゾンを溶存せしめた場合、気泡として溶液中に残存するオゾンやグリセリンと結合して残存するオゾンが少量存在してもよい。したがって、本発明の外用剤におけるオゾンの濃度とは、最終的な外用剤中に溶存して、気泡として、またはグリセリンと結合して存在するオゾンの、外用剤全体に対する割合を意味する。
また、外用剤のうち、貼付剤のように支持体を有するものにおいては、「外用剤全体」とは、外用剤のうち支持体以外の部分全体に対する割合を意味する。
【0019】
本発明の外用剤におけるオゾンの濃度としては、効果および製造の簡便さの観点から、95ppm〜1500ppmであるものが好ましく、100ppm〜1000ppmであるものがより好ましい。これらの濃度は、用途に応じて適宜調整することができる。
【0020】
なお、本発明の外用剤におけるグリセリンの濃度は通常20%以下とすることが好ましい。グリセリンの濃度は20%以下とすることによって、グリセリンの皮膚または粘膜に対する刺激性を抑制することができる。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液に適当な希釈剤を混合して希釈することができる。
希釈剤としては、オゾンにより酸敗しにくいものが適しており、水、ポリエチレングリコール等が好適である。
一方、グリセリン濃度を高濃度の50%以上にすることによって、温感効果を発揮させることができ、また、一定時間後に洗い流すことでグリセリンが高濃度であることの刺激性を回避することができる。さらに、洗い流すことによって、オゾンによる酸化反応を停止させることもできる。この際、抗酸化物質やアルカリ水を用いると、オゾンによる酸化反応の停止がより迅速に行われるため好ましい。とくに、抗酸化物質を用いれば、皮膚において消費された抗酸化物質の補給を行うことができる。非特許文献1に記載されているように、事前にビタミンCやビタミンEを塗布した場合、本発明の外用剤を塗布した場合には、オゾンが分解されてしまうが、逆に、本発明の外用剤を使用した後に抗酸化物質を投与すれば、本発明の外用剤の所定の効果と合わせて、オゾンの反応を停止させ、失われた抗酸化物質を補給できるといった効果が奏される。
【0021】
水を希釈剤とする場合は、純水または超純水を使用することが好ましい。純水または超純水を用いることによって、オゾンに酸化されて不純物による皮膚または粘膜に対する刺激や効果発現の低下の原因となり得る酸化物(過酸化物)の生成を抑制することができる。水としては、pHが酸性側である水、すなわちpH7未満の酸性水を用いるとさらに好ましい。
【0022】
本発明においては、ポリエチレングリコールを用いてもよい。ポリエチレングリコールは、分子量により液体、固体のものがあるところ、本発明においては、いずれも用いることができる。2種類以上のポリエチレングリコールを、使用時のテクスチャーに合わせて、それらの混合比率を変えることによって、より使いやすいテクスチャーとすることができる。したがって、ポリエチレングリコールの種類はとくに限定されないが、ポリエチレングリコール450およびポリエチレングリコール65Mが好ましく、これらを組み合わせたものはより好ましい。
【0023】
本発明の外用剤は、典型的には医薬、医薬部外品または化粧料として用いられる。
本発明の外用剤のうち医薬または医薬部外品として用いられるものは、オゾン溶存グリセリン溶液に加えて各種医薬成分または医薬部外品に用いられる成分を含んでもよい。
【0024】
また、本発明の外用剤のうち化粧料として用いられるものは、オゾン溶存グリセリン溶液に加えて、人の身体に清潔、美化、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚、粘膜もしくは毛髪を健やかに保つための成分を含んでもよい。
【0025】
また、本発明の外用剤は、種々の原料と組み合わせる処方とすることによって、種々の効果をより高く発現せしめることが可能となる。とくに、従来は、皮膚には抗酸化物質を塗布することが通例であり、酸化物質を塗布することはピーリング剤としての使い方しかなされていなかった。しかし、本発明の外用剤は、酸化力を有するオゾンを含むにもかかわらず、酸化剤としてのピーリング効果のみならず、皮膚の免疫機能、とくに抗酸化機能を高めることができ、種々の効果を発現することができる。これは、オゾンがグリセリン溶液から徐放性でマイルドな酸化刺激を与えられることに起因し、その酸化刺激が角層のランゲルハンス細胞やケラチノサイトに作用し、様々な要因(加齢、紫外線、ストレス等)により低下した免疫機能や細胞機能の賦活化に寄与することによると考えられる。
【0026】
本発明の外用剤に好適に用いられる追加の成分として、水、少なくとも1種の、保湿剤、増粘剤、防腐剤が挙げられる。これらの追加の成分を全て含む本発明の外用剤は好ましい。
【0027】
(水)
本発明の外用剤において、水は、例えば保湿やグリセリンの希釈のために用いられ、その種類はとくに限定されない。水として酸性水を用いると、オゾンの保存がより好適に行われるため好ましい。H型陽イオン交換樹脂を用いて調製した酸性の軟水を用いると、アストリンゼント効果および収斂による毛穴の開き改善効果も奏することができ、とくに好ましい。
水として、純水または超純水も上記のとおり好ましい。したがって、酸性純水は、とくに好ましい。また、水を電気分解して処理した中性もしくは酸性の水を用いることによって、肌への浸透をさらに向上せしめることが可能である。さらに、酸性の水においては、オゾンの分解が抑制される点においても好ましい。
【0028】
水の外用剤における配合量は限定されず、グリセリンに起因する本発明の外用剤の粘度を緩和や保湿を目的として、外用剤全体の0〜99%の範囲で適宜改変することができる。
【0029】
(保湿剤)
本発明の外用剤において、保湿剤は、皮膚や粘膜の保湿に用いられ、その種類はとくに限定されない。保湿剤としては、保湿作用を有するものであれば何れも使用し得る。これらの成分としては、多価アルコール類、PCA−Na(ピロリドンカルボン酸ナトリウム)をはじめとしたNMF(天然保湿因子)、ヒアルロン酸やアセチルヒアルロン酸Naやその誘導体またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、多糖類、高分子剤(増粘剤)等を挙げることができる。保湿剤の外用剤における配合量は、好ましくは外用剤全体の0.1〜1%である。
【0030】
保湿剤としては多価アルコール類、PCA−NaをはじめとしたNMF(天然保湿因子)およびヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸誘導体やその塩が好ましい。多価アルコール類としてはポリエチレングリコールが好ましく、その1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることもできる。ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール450およびポリエチレングリコール65Mが好ましく、これらを組み合わせたものはより好ましい。
【0031】
(増粘剤)
本発明の外用剤において、増粘剤は、剤の粘度の調整に用いられ、その種類はとくに限定されない。増粘剤としては、水溶性または水膨潤性高分子化合物が好ましく、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、アガロース、アルギン酸塩、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びその塩またはそれらの架橋体等の天然高分子若しくはその変性物又は合成高分子若しくはその架橋体等が挙げられる。これらの高分子は単独で用いても、複数の高分子を組み合わせて用いてもよい。キサンタンガムが最も好ましい。
これらの増粘剤の外用剤全体に対する含量は、外用剤に適度な粘度を付与し得る限りとくに制限はないが、外用剤全体の0.1〜1%が好ましい。
【0032】
(防腐剤)
本発明の外用剤において、防腐剤は外用剤を清潔に保つために用いられ、その種類はとくに限定されない。防腐剤としては、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン類)、安息香酸、サリチル酸及びその塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、クロルクレゾール、ヘキサクロロフェン、レゾルシン、パラオキシエノキサシン、塩酸シプロフロキサシン、ナリジクス、ノルフロキサシン、フレロキサシン、オフロキサシンが挙げられる。イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリウム、トリクロロカルバニド、ハロカルバン、感光素201号、トリクロサン、グレープシードエキス、塩酸ベンザルコニウム、フェノール、チモールが挙げられる。フェノキシエタノールが最も好ましい。
これらの防腐剤の外用剤全体に対する含量は、外用剤を清潔に保てる限りとくに制限はないが、外用剤全体の0.01〜1%が好ましい。
【0033】
本発明の外用剤には、少なくとも1種の、界面活性剤、抗炎症剤およびセラミドまたはその前駆体も用いることができる。少なくとも1種の、界面活性剤、抗炎症剤およびセラミドまたはその前駆体を全て含む本発明の外用剤は好ましい。
【0034】
(界面活性剤)
界面活性剤は、各種成分の剤中における相互に混じり合わない物質を溶け込んだ状態にするために用いられ、その種類はとくに限定されない。
界面活性剤としては、ラウロイル硫酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の非イオン界面活性剤、アルキルサルフェート塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。ラウロイル硫酸ナトリウムが最も好ましい。
【0035】
これらの界面活性剤の外用剤全体に対する含量は、各成分に十分な溶解性を付与し得る限りとくに制限はない。
【0036】
(抗炎症剤)
抗炎症剤は、皮膚または粘膜の炎症をより効果的に抑えるために用いられ、その種類はとくに限定されない。
抗炎症剤としては、各種ステロイド系抗炎症剤およびグリチルリチン酸またはその塩、アラントイン、オウゴンエキス等の非ステロイド系が挙げられる。これらのうち、グリチルリチン酸およびグリチルリチン酸2Kが好ましく、グリチルリチン酸2Kがとくに好ましい。
これらの抗炎症剤の外用剤全体に対する含量は、炎症を効果的に抑え得る限りとくに制限はない。
【0037】
(セラミドまたはその前駆体)
セラミドおよびその前駆体は、角質層の細胞と細胞の隙間を埋めてつなぎ合わせている脂質の約半分を占める主要な成分であり、豊富な水分を包接し、その水分が蒸発しないように働く一方で、外部からの刺激や細菌の進入を防ぐ作用を有する。
セラミドまたはその前駆体としては、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド6IIおよびフィトスフィンゴシン、コレステロール等が挙げられ、セラミド1、セラミド3、セラミド6IIおよびフィトスフィンゴシン、コレステロールを全て含むものが好ましい。
【0038】
これらのセラミドまたはその前駆体の外用剤全体に対する含量は、保湿効果および/または抗菌効果を奏し得る限りとくに制限はない。
【0039】
本発明の外用剤には、オゾンを含まない処方の医薬、医薬部外品、化粧料によって、皮膚へのオゾンの酸化作用を低減もしくは停止を目的として、抗酸化物質・中和剤を併用することができる。この場合、オゾン溶存グリセリンから製造した本法記載の外用剤を使用した後で、抗酸化物質を投与することによって、所定の効果と合わせて、オゾンの反応を停止させ、失われた抗酸化物質を補給できるといった効果が奏されるため好ましい。
抗酸化物質・中和剤は限定されないが、例えば以下のものが挙げられる:
・ビタミンC類、ビタミンE類、セレニウム等のビタミン類、
・フラボノイド等の植物由来物質、
・カロテノイド(αカロチン、βカロチン、γカロチン)、リコピン、キサントフィル等の植物由来の抗酸化物質(SOD様物質)、アスタキサンチン等
・フラボノイド、ユビキノン、サポニンなどのテルペン類やイノシトール、カテキン、タンニン、アントシアニン、イソフラボン、
・ぶどう種子、イチョウ葉、海岸松樹皮(ピクノジェノール)等の植物由来のポリフェノール類、
・グルタチオン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン(DEA)、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン(TEA)、フラーレン(C60)。
【0040】
上記抗酸化物質・中和剤のうち、ビタミンC類、ビタミンE類、ポリフェノール類、グルタチオンおよびフラーレンが好ましく、ビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンがとくに好ましい。
抗酸化物質・中和剤の外用剤全体に対する含量は、外用剤のpHを好適に保ち得る限りとくに制限はない。
【0041】
本発明の外用剤には、清涼化剤としてエタノールやアロマオイルも好適に用いることができる。アロマオイルとしては、ラベンダー、オレンジ、グレープフルーツ、サンダルウッド、イランイラン、ペパーミント、レモングラス、カモミール・ローマン、ローズ、ローズマリー等が挙げられ、ラベンダーオイルおよびローズオイルが好ましい。
これらの成分の本発明の外用剤中における安定性は、空気中や水中に比較して顕著により良好となる。したがって、エタノールやアロマオイルを含む本発明の外用剤は、これらの成分によるより長期の清涼効果を付与し得るため好ましい。
【0042】
エタノールまたはアロマオイルの外用剤全体に対する含量は、その所期の効果が奏される限りとくに制限はない。
【0043】
本発明の外用剤には、皮膚または粘膜に受容可能な補助成分を含むことができる。かかる補助成分は、例えばEDTA等の安定剤、パラオキシ安息香酸エステル等であり、その量は本発明の外用剤の効果を損なわない量であれば限定されない。
【0044】
本発明の外用剤は、無傷の皮膚をより健全にするために用いられるが、実使用時におけるオゾン濃度は、対象の年齢、肌の健全性の程度等または使用目的に応じて適宜希釈して用いてもよい。また、本発明の外用剤中のオゾンの濃度は経時的に減少するが、オゾンの濃度の初期値が85ppm以上である限り、かかる濃度減少後の外用剤も、当然に本発明の外用剤に包含される。
【0045】
本発明の外用剤は、皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減、しみの低減、たるみの改善、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減または真菌の低減に好適に用いられ、水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善に好ましく用いられ、しみの低減にとくに好ましく用いられる。
水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善の1または2以上によって、本発明の外用剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品としての効果を奏し、とくに化粧料としての効果を奏する。
【0046】
皮脂の除去については、本発明の外用剤は、皮脂をオゾン酸化により親水性化(不飽和結合をカルボキシル基化し、難溶性から易溶性化へ)し、強い界面活性剤などを用いて取り過ぎることなく、水のみで洗浄可能になり、デリケートな肌へも対応可能である。
【0047】
ターンオーバーの改善とくすみの除去については、本発明の外用剤は、オゾンにより、古い角質を除去することで肌のターンオーバーを正常化し、肥厚した角層が柔らかくなり、よってくすみが改善され、肌のトーンが明るくなり、合わせてメラニンの排出を促進することができる。
【0048】
抗酸化機能の亢進については、本発明の外用剤は、角層における免疫を司るランゲルハンス細胞、ケラチノサイトに作用し、様々な要因で低下した抗酸化機能を高めることができる。このことにより、本発明の外用剤は、肌表面における作用のみならず皮膚の中からの細胞新生の正常化、トラブル状態を改善するものである。
【0049】
にきびの原因は毛嚢孔や皮脂腺の開口部が角質でふさがれたり、狭くなったりし、正常な皮脂の分泌が抑えられ皮脂が停滞することや、細菌(皮膚常在菌:アクネ菌、黄色ブドウ球菌)が増加し菌のリパーゼがトリグリセリドを分解し遊離脂肪酸に変え、その遊離脂肪酸は各種酵素を産生し、炎症を起こす。これに対して、本発明の外用剤は、古い角質をオゾンの徐放性によるマイルドな作用により古い角質を除去することや適切なモイスチャーバランスとすることによって皮脂の分泌を整え、過剰な皮脂に対してオゾン酸化し親水性化し穏やかに水洗すること、そしてにきびやアトピー性疾患の原因菌を殺菌し、肌のpHを最適化することで効果を発現することを可能とする。
【0050】
本発明の外用剤は、オゾンを高濃度で含有しているにもかかわらず、無傷の皮膚または粘膜における真菌の低減も可能とする。かかる低減効果は、オゾン固有の殺菌性によるものである。
真菌の低減のために、抗真菌剤を本発明の外用剤にさらに加えてもよい。抗真菌剤としては、ビホナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、アムホテリシン、ピマリシン、ミカファンギンナトリウム、グリセオフルビン、エキサラミド、シクロピロクスオラミン、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸ミコナゾール、チオコナゾール、トルナフタート、ロールニトリンが挙げられる。
【0051】
本発明の外用剤は、種々の用い方が可能である。例えば、本発明の外用剤を用いた後に、各種抗酸化物質等の皮膚または粘膜に対する有効成分を用いることによって、有効成分のより浸透や高い効果の発現が可能となる。より具体的には、
(1)本発明の外用剤を用いた反応後、水洗することで反応を停止させる(リーブオフ)、
(2)(1)によって古い角層を剥離せしめることによって、新しい細胞を露出させ、有効成分を角層から真皮へ吸収しやすくする、
(3)(2)によって有効成分を吸収させた後、ヒアルロン酸をはじめとした保湿成分で有効成分の保持と水分蒸散を防ぎ、細胞の賦活やモイスチャーバランスを改善し外敵や刺激から肌を守る、
といった一連の適用が好適である。
【0052】
さらに、本発明の外用剤においては、皮膚の状態に合わせたオゾン濃度の選定が可能である。例えば、肌の状態によっては、オゾンが入った単一または複数の外用剤をリーブオンで使用することが過度の酸化につながることも想定されるため、下記のようにして過度の酸化を防止することができる:
(1)肌の状態に合わせてオゾン濃度を可変にする、
(2)肌の状態に合わせて反応時間を設定する、
(3)酸化状態の細胞を抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、フラーレン等)および/またはアルカリ水の使用により中和する。
【0053】
本発明の外用剤においては、上記のとおり各種処方が可能である。かかる処方は、典型的には、例えば、
・オゾンの効果を高めるための処方(保湿剤、増粘剤、防腐剤、界面活性剤、抗炎症剤、セラミドまたはその前駆体、ポリエチレングリコール等を含有する処方)
・物質との反応性の予想外の低さから導かれた処方(エタノール・アロマオイルを含有する処方)、
・オゾン濃度を安定化させる処方(酸性水やpHを酸性側に傾けることができる原料を用いた処方)
が挙げられる。
【0054】
本発明の外用剤は、単独の外用剤として用いてもよいが、2種以上のものを併用すると相乗効果があるため好ましい。3種以上の本発明の外用剤の併用はとくに好ましい。このような併用される組み合わせは、例えば化粧水と美容液、化粧水とクリーム、美容液とクリーム、ならびに化粧水、美容液およびクリームである。化粧水、美容液およびクリームの併用はとくに好ましい。したがって、本発明の外用剤のうち、2種以上の外用剤のキットとして構成されたものは好ましく、3種以上の外用剤のキットとして構成されたものはより好ましい。
また、これらの組み合わせによる効果が発現しやすい準備として、刺激の弱いクレンジング料や洗顔料を使用すること、またこれらの組み合わせによる効果をより高めることができる紫外線ケアアイテム、ファンデーション等メイク料を使用することが望ましいため、それらのキットとして構成されたものはより好ましい。
また、キットとしては、本発明の外用剤、とくに1種または2種以上の本発明の化粧料と、抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤とからなるキットを用いれば、オゾンによる酸化効果と抗酸化物質またはアルカリ水による還元作用との組み合わせにより、皮膚または粘膜のpHをより好適に調節することができる。本発明の外用剤と抗酸化物質またはアルカリ水を処理する量は、対象の年齢、肌の健全性の程度等または使用目的に応じて適宜希釈することができる。
抗酸化物質としては、上記に記載したものが用いられ、抗酸化物質がビタミンC類、ビタミンE類およびフラーレンの1種または2種以上であるキットは好ましい。
キットの形態としては、1種または2種以上の本発明の外用剤、および必要に応じて1種または2種以上の抗酸化物質またはアルカリ水からなる外用剤を、それぞれバイアル、瓶等の適当な容器に入れ、必要に応じて使用指示書を添付したものが例示される。
抗酸化剤は、例えば化粧水、美容液、クリーム、乳液、クレンジング、洗顔、紫外線防止剤、メイクアップ剤、軟膏、パック、テープおよび貼付剤等の形態によって用いることができる。
【0055】
本発明の外用剤の製造は、オゾン溶存グリセリン溶液を原料として、従来の外用剤と同様に行うことができる。すなわち、例えば、オゾン溶存グリセリン溶液を溶媒で適宜希釈した後、必要に応じてその他の成分を添加し、当該成分を溶存または懸濁せしめる。
また、オゾン溶存グリセリン溶液は、グリセリンにオゾンの微小気泡を通気せしめることによって得られるところ、所望の濃度のもの、とくに100ppmを越える高濃度のものは、典型的には特許文献2または3に記載されている方法に従うことによって簡便に調製することができる。
【実施例】
【0056】
実施例1
オゾン溶存グリセリン溶液を原料として調製した下記3品を用い、下記のように試験を行った。
【0057】
【表1】

【0058】
各実施例にかかる外用剤の製法の概略は以下のとおりである。かかる記載を基に、当業者であれば、本発明の外用剤を製造することができることは明らかである。
オゾン溶存グリセリン(オゾン濃度2000ppm)にフェノキシエタノールを投入し、ホモジナイザーによって攪拌し、そこにA液(組成は下記参照)を投入し、ホモジナイザーによってさらに攪拌する。その後PCA−Naを投入し、ホモジナイザーによって再度攪拌して、B液を得る。
超純水にグリチルリチン酸2Kを投入し、ホモジナイザーによって攪拌し、その後B液を全量投入し超純水を加え、加温しながらホモジナイザーにて攪拌し、オゾン保湿化粧水(実施例1)を得る。
(A液の組成)
ラウロイル硫酸Na 10ml
セラミド1 0.001g
セラミド3 0.5g
セラミド6II 0.5g
フィトスフィンゴシン 0.5g
コレステロール 0.5g
超純水 適量
合計 100ml
【0059】
オゾン溶存グリセリンにフェノキシエタノールを投入し、ホモジナイザーによって攪拌した後キサンタンガム投入し、ホモジナイザーによって攪拌する。その後ヒアルロン酸Naを投入し、ホモジナイザーによって攪拌し、最後に超純水を加え、ホモジナイザーによってさらに攪拌し、オゾン保湿美容液(実施例2)を得る。
予めPEG450と500gのPEG65Mを混合し、該混合物にオゾン溶存グリセリン(オゾン濃度2000ppm)を投入し、ホモジナイザーによってゆっくりと攪拌し、オゾンクリーム(実施例3)を得る。
【0060】
予めスクリーニングを実施した被験者12名に対して4週間の試験を行った。朝、晩洗顔後に顔右側へオゾン保湿化粧水(ローション、実施例1)→オゾン保湿美容液(エッセンス、実施例2)→オゾンクリーム(実施例3)の順で適量を使用した。0、2、4週目において観察した。左側は未塗布とした。なお適量とは、ローション:10円玉大、エッセンス:1.5〜2プッシュ、クリーム:スパチュラにて顔全体になじむ量とした。被験者が普段から使用している洗顔料を用いて洗顔後に使用した。その後待合室(湿度50%±15%、室温22℃±2℃)で25分間安静に待機した。その後環境調整室(湿度50%±10%、室温22℃±1℃)で5分間待機し、測定を実施した。水分蒸散量は、被験者の耳たぶ下の付け根と唇端を結んだ4cmの部分をTewameter TM300((株)インテグラル製)にて測定した。皮膚弾力性測定は、水分蒸散量と同様の箇所について、Cutometer MPA580((株)インテグラル製)にて測定した。シミ面積解析は、撮影したシミ1箇所をデジタル解析し、シミ面積をデジタルマイクロスコープKH-3000ND(ハイロックス製)にて測定した。以下に結果を示す。
水分蒸散量は、右群で2週間後、4週間後に有意差が認められた。左群は有意差が認められなかった。弾力性(振幅最大値)は、右群、左群共に4週間後に有意差が認められた。弾力性(戻り率)は、右群、左群共に4週間後に有意差が認められた。弾力性(振幅最小値)は、いずれの群においても有意差はみられなかった。シミ面積は、塗布前と比較して、2週間後、4週間後に有意差が認められた(表2)。
【0061】
各測定結果について、塗布前の値を100%とし、塗布後の値を塗布前の値で割った%値等によって、以下により詳細に示す。
水分蒸散量の右群は、塗布2週後(75.3%±9.9%)、塗布4週後(80.1%±21.2%)となった。塗布2週後と塗布4週後に有意差が認められた。左群は、塗布2週後(92.2%±20.0%)、塗布4週後(108.1%±38.3%)となり、有意差は認められなかった。右群と左群の比較では、塗布2週後と塗布4週後に有意差が認められた。
【0062】
弾力性(振幅最大値)は、右群は、塗布2週後(104.7%±14.0%)、塗布4週後(118.2%±26.1%)となった。塗布4週後に有意差が認められた。左群は、塗布2週後(96.8%±16.9%)、塗布4週後(122.1%±21.9%)となった。塗布4週後に有意差が認められた。右群と左群の比較では、有意差は認められなかった。
【0063】
弾力性(戻り率)は、右群は、塗布2週後(106.0%±8.2%)、塗布4週後(118.8%±12.7%)となり、塗布4週後に有意差が認められた。左群は、塗布2週後(98.3%±4.0%)、塗布4週後(113.4%±12.7%)となった。塗布4週後に有意差が認められた。右群と左群の比較では、塗布2週後に有意差が認められた。弾力性(振幅最小値)は、右群は、塗布2週後(93.9%±12.1%)、塗布4週後(80.3%±41.0%)となった。有意差は認められなかった。
左群は、塗布2週後(104.9%±28.5%)、塗布4週後(92.0%±30.9%)となり、有意差は認められなかった。右群と左群の比較では、有意差は認められなかった。
【表2】

【0064】
上記の結果から、本発明の外用剤は、皮膚の水分蒸散量、弾力性およびしみについて、皮膚の健全性を増強せしめる効果を有することが明らかになった。
【0065】
実施例2 化粧水にエタノール添加した時のオゾン濃度の変化(I)
(方法)
1.オゾン含有化粧水10mLにエタノール1mLを添加し、1分間スターラーで攪拌した (9.1%エタノール)。
2.室温に放置し、経時的にオゾン濃度を測定した。
(結果)
図1および2に示すとおり、化粧水にエタノールを入れた方がオゾン濃度の減少は小さかった。したがって、アルコール入りの化粧水等を本発明の外用剤と併用しても問題ない。また、濃度的にも問題はない。
なお、測定日および室内の温湿度は以下のとおりであった。
【表3】

【0066】
実施例3 化粧水にエタノール添加した時のオゾン濃度の変化(II)
(方法)
エタノールの濃度を5%、10%および15%とした以外は実施例2と同様にして、経時的にオゾン濃度を測定した。
(結果)
エタノールの濃度は、オゾン濃度の減衰の程度にほとんど影響しなかった(図3)。
なお、測定日および室内の温湿度は以下のとおりであった。
【表4】

【0067】
実施例4 5%オゾン溶存グリセリン溶液にエタノール添加した時のオゾン濃度の変化
(方法)
化粧水に代えて5%オゾン溶存グリセリン溶液を用いた以外は実施例3と同様にして、経時的にオゾン濃度を測定した。
(結果)
エタノールの濃度が低いほど、オゾン濃度の減衰の程度は小さかった(図4)。
なお、測定日および室内の温湿度は以下のとおりであった。
【表5】

【0068】
実施例5 20%OG 美容液中のオゾン濃度に対する保存温度の影響
(方法)
保存温度を冷蔵、室温または40℃とし、エタノールをローズオイルまたはラベンダーオイルとした以外は実施例3と同様にして、経時的にオゾン濃度を測定した。
(結果)
保存温度が低いほど、オゾン濃度の減少は抑制された(図5〜7)。また、いずれの保存温度においても、オゾン濃度はローズオイルまたはラベンダーオイルの影響を受けなかった
【0069】
実施例6 20%OG 美容液にローズオイル添加した時のオゾン濃度の変化
(方法)
1.OGを精製水にて5倍に希釈し、OG40mL+精製水160mL=200mLを5分間スターラーにて攪拌した。
2.濃度を測定した(413.5ppm、pH4.45)。但し、コントロールとしては、実施例5のデータを用いた。
3.残りの110mLにローズオイルを3滴添加した。
4.容器を回しながら5分間手動にて振とう混和し、表面にオイルの固まりがないようにした。
5.試料として30mLずつ3個に小分けして保存した。
6.各々室温・冷蔵・40℃にて保存し、濃度の変化を測定した。
(結果)
いずれの保存温度においても、オゾン濃度はローズオイルの影響を受けなかった(図8)。
【0070】
実施例7 20%OG 美容液にラベンダーオイル添加した時のオゾン濃度の変化
(方法)
1.OGを精製水にて5倍に希釈し、OG20mL+精製水80mL=100mLを5分間スターラーにて攪拌した。
2.濃度を測定した(413.5ppm、pH4.45)。但し、コントロールとしては、実施例5のデータを用いた。
3.残りの100mLにラベンダーオイルを3滴添加した。
4.容器を回しながら5分間手動にて振とう混和し、表面にオイルの固まりがないようにした。
5.試料として30mLずつ3個に小分けして保存した。
6.各々室温・冷蔵・40℃にて保存し、濃度の変化を測定した。
(結果)
オゾン濃度は、ラベンダーオイルの影響を受けなかった(図9)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の外用剤は、医薬、医薬部外品および化粧料等として、有効に用いられる。したがって、本発明は、これらに関連する産業の発展に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】化粧水にエタノールを添加した時のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図2】化粧水にエタノールを添加した時のオゾン濃度の変化の割合を示す図である。
【図3】濃度を変えたエタノールを化粧水に添加した時のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図4】5%オゾン溶存グリセリン溶液にエタノール添加した時のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図5】冷蔵保存における、20%OG 美容液のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図6】室温保存における、20%OG 美容液のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図7】40℃保存における、20%OG 美容液のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図8】20%OG 美容液にローズオイル添加した時のオゾン濃度の変化を示す図である。
【図9】20%OG 美容液にラベンダーオイル添加した時のオゾン濃度の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン溶存グリセリン溶液を含む、無傷の皮膚または粘膜に用いられる外用剤であって、オゾンの濃度の初期値が少なくとも85ppmである、前記外用剤。
【請求項2】
化粧料である、請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
水、保湿剤、増粘剤、防腐剤、界面活性剤、抗炎症剤、セラミドまたはその前駆体、ポリエチレングリコール、アロマオイルおよびエタノールの少なくとも1種をさらに含む、請求項1または2に記載の外用剤。
【請求項4】
保湿剤がヒアルロン酸Na、アセチルヒアルロン酸Naおよびそれらの誘導体、少なくとも1種であり、増粘剤がキサンタンガムであり、防腐剤がフェノキシエタノールである、請求項3に記載の外用剤。
【請求項5】
界面活性剤がラウロイル硫酸Naであり、保湿剤がPCA−Naであり、抗炎症剤がグリチルリチン酸2Kであり、セラミドまたはその前駆体がセラミド1、セラミド3、セラミド6II、フィトスフィンゴシンおよびコレステロールの少なくとも1種であり、防腐剤がフェノキシエタノールである、請求項3または4に記載の外用剤。
【請求項6】
ポリエチレングリコール450およびポリエチレングリコール65Mの少なくとも1種をさらに含む、請求項3〜5のいずれかに記載の外用剤。
【請求項7】
エタノールおよび/または少なくとも1種のアロマオイルをさらに含む、請求項3〜6のいずれかに記載の外用剤。
【請求項8】
酸性水である水をさらに含む、請求項3〜7のいずれかに記載の外用剤。
【請求項9】
皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善の1または2以上に用いられる、請求項1〜8のいずれかに記載の外用剤。
【請求項10】
皮膚または粘膜における、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減または真菌の低減に用いられる、請求項1〜9のいずれかに記載の外用剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の外用剤と、抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤とからなるキット。
【請求項12】
抗酸化物質が、ビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
皮膚または粘膜における、水分蒸散量の低減、しみの低減およびたるみの改善、皮脂の除去、ターンオーバーの改善、抗酸化機能の亢進、にきびの低減または真菌の低減の1または2以上の方法であって、請求項1〜10のいずれかに記載の外用剤を皮膚または粘膜に用いた後に、ビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤を前記皮膚または粘膜に用いる、前記方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の外用剤またはビタミンC類、ビタミンE類、グルタチオンおよびフラーレンの1種または2種以上である抗酸化物質またはアルカリ水とを含む外用剤を保存する方法であって、前記各外用剤を冷蔵もしくは冷凍することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−332078(P2007−332078A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166364(P2006−166364)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(506129016)株式会社オゾテック (5)
【Fターム(参考)】