説明

オゾン濃度の測定方法

【課題】オゾンを含む流体の蒸留プロセスにおいて、オゾン濃度を測定する方法および当該プロセスを安全に管理する方法を提供すること。
【解決手段】オゾン−酸素−その他の第3の流体の3成分以上の系において、その他成分として希ガスあるいはテトラフルオロメタン等の少なくとも1種類以上を含む系を蒸留する場合に、オゾン濃度が最大となる蒸留塔12(14)塔底付近において、サンプルガスを経路31を介して導出し、当該サンプルガス中のオゾンをオゾン分解触媒筒32により完全分解させて発生した酸素を測定することにより、オゾン濃度を測定して把握し、これにより蒸留プロセスを安全に管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン、酸素およびその他成分を含有する混合流体を蒸留分離するプロセスにおいて、オゾン濃度を管理するためにオゾン濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを含む流体を蒸留する場合、オゾンは自己分解爆発性の物質であるため、流体中のオゾン濃度が爆発下限界を超えないように制御する必要があり、そのためには流体中のオゾン濃度を測定し管理することが保安上必須である。
【0003】
例えば、蒸留プロセスにおけるオゾン濃度を爆発下限界以下にする方法として、特許文献1には、希ガスとオゾンとを混合する方法が開示されている。また、特許文献2には、オゾン−酸素−CFの混合ガスを蒸留するプロセスについて開示されている。このオゾン−酸素−CF系において、オゾンは最も沸点の高い成分であるため、当該混合ガスの液化の際には最も液化し易く、気化の際には最も気化し難い。
したがって、液相においてオゾン濃度が爆発下限界以上にならないように、オゾン濃度の管理を徹底して運転する必要がある。
【0004】
オゾン含有ガス中のオゾン濃度の測定方法には、非特許文献1に記載のような、ヨウ化カリウム溶液を用いた滴定による方法(ヨウ素法)、紫外線吸収による方法(紫外線吸収法)などがある。その他、混合ガス密度測定値あるいは混合液密度測定値からの推定方法、または温度・圧力測定から気液平衡曲線を利用した推定方法などがある。
【0005】
従来のオゾン濃度測定方法では、オゾン−酸素混合系において行われていたため、サンプリング管に使用される金属との接触による触媒反応や、サンプリングの際の急激な温度変化、圧力変化によるサンプリングガス中のオゾンの自己分解などにより、サンプリングされたガス中のオゾンの一部が分解し、オゾン濃度を正確に把握することは困難であった。
【0006】
このように、オゾンを含む流体のオゾン濃度を正確に把握し、保安管理することは困難であったが、従来はガス状態で使用することがほとんどであったため、初めにオゾナイザーなどで発生させたオゾン濃度を市販の紫外線吸収式などのオゾン濃度計で把握すれば、その後は濃度低下するだけであったので管理上問題とはならなかった。
【0007】
一方、オゾン発生後に蒸留操作がある場合、液相においてオゾンが濃縮するため、オゾン濃度を爆発下限界以下に管理することが求められる。
そこで、ガスサンプリングによらずにオゾン濃度を把握する方法として、温度、圧力を測定して気液平衡関係から推定する方法が考えられるが、オゾン−酸素−その他成分の三成分以上の系、あるいはオゾン−その他成分の二成分系では実測データが不足しているという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−040668号公報
【特許文献2】特開2006−272090号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「オゾンの基礎と応用」杉光英俊著、光琳、P138 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明における課題は、オゾンを含む流体を蒸留する場合において流体中のオゾン濃度を管理するために該流体中のオゾン濃度を測定する際に、他の流体、特に酸素の影響を受けずに正確に測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、オゾン、酸素およびこれ以外の第3の流体を含む流体を蒸留塔にて蒸留する際、オゾンが最大濃度となる蒸留塔塔底付近からサンプルガスを導出し、該サンプルガス中のオゾンを完全分解させて発生した酸素の濃度を測定し、この酸素濃度からオゾン濃度に換算してオゾン濃度を測定することを特徴とするオゾン濃度の測定方法である。
【0012】
請求項2にかかる発明は、前記第3の流体が、クリプトン、キセノン、ラドン、テトラフルオロメタンあるいはトリフルオロメタンの中から選ばれた少なくとも1種類以上である請求項1記載のオゾン濃度の濃度方法である。
請求項3にかかる発明は、前記サンプルガス中のオゾンを完全分解させる方法が、オゾン分解触媒あるいは加温による方法である請求項1または2記載のオゾン濃度の測定方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蒸留プロセスにおいて、そのプロセス流体としてオゾンを含む流体を取扱う場合に、流体中のオゾン濃度を正確に把握し、プロセスを安全に管理することが可能となる。
また、オゾン濃度測定に代えて酸素濃度測定を行うため、各種の酸素分析測定方法を選ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の測定方法を実施するためのプロセスの第1の例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したプロセスの要部を示す概略構成図である。
【図3】蒸留塔における酸素、オゾンおよびテトラフルオロメタンの濃度分布を示すグラフである。
【図4】本発明の測定方法を実施するためのプロセスの第2の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
オゾン−酸素−その他の第3の流体の3成分以上の混合流体を蒸留する場合において、ラウール則を用いて気液平衡を推算し、その推算値を用いて蒸留計算をしたところ、オゾン−酸素−第3の流体の3成分以上の混合流体を蒸留する場合、オゾン濃度が最大となる蒸留塔塔底付近では酸素は極微量となることがわかった。この発明での蒸留塔塔底付近とは、塔底または塔底から上方に1〜2理論段相当分までを含むものとする。
【0016】
この蒸留特性、すなわち、オゾン濃度が最大となるところでは、酸素濃度が極微量で無視できることを利用することによって、サンプリング時のオゾンの自己分解で発生する酸素と、もともと存在していた酸素とを見分けられないという問題がなくなる。
したがって、サンプリングガス中のオゾンを完全分解して全量を酸素とし、その濃度を測定してオゾン濃度に換算すれば、簡単にオゾン濃度を求めることができる。酸素濃度の測定方法には、質量分析、ガスクロマトグラフ、ジルコニア式酸素濃度測定など各種の方法が選択可能であり、オゾン濃度を直接測定するより、幅広い濃度領域で確実に測定できる。
【0017】
オゾンを完全分解する方法としては、オゾン分解触媒を用いる方法、加熱する方法などが知られている。このとき、その他の第3の流体は、オゾン分解触媒あるいは加熱によって分解しないような成分を選ぶことが重要である。この条件に合致するガスとしては、希ガス、テトラフルオロメタンあるいはトリフルオロメタンがあり、これらのガスは従来からオゾンを含む流体を取り扱う際に用いられている希釈ガスでもある。
また、仮に蒸留塔塔底に微量な酸素が残留していて測定誤差となる場合でも、換算して得られるオゾン濃度は濃く評価されることから、蒸留プロセスを安全側で制御することができる。
【0018】
図1は、本発明の測定方法を実施するためのプロセスの第1の実施形態を示すもので、このプロセスは、特開2005−040668号公報で開示された酸素同位体濃縮プロセスを示すものである。
このプロセスは、原料酸素GOからオゾンを生成するオゾン生成手段11と、該オゾン生成手段11で生成したオゾンを含む原料酸素を、オゾンOZと酸素ROとに分離するオゾン分離手段12と、該オゾン分離手段12で分離したオゾンOZに特定波長の光Lを照射し、分子中に特定の酸素同位体を含むオゾンを選択的に酸素に分解するオゾン光分解手段13と、該オゾン光分解手段13でオゾンが分解して生成した酸素OCを、未分解のオゾンOZから分離して該酸素中に酸素同位体を濃縮する酸素同位体濃縮手段14とを備えている。
【0019】
また、オゾン生成手段11に導入される原料酸素の経路15、オゾン生成手段11で生成したオゾン含有酸素をオゾン分離手段12に導入する経路16及び/もしくはオゾンを濃縮するオゾン分離手段12の適当な位置のいずれか少なくとも一箇所に、オゾンを希釈する希釈ガス(前記その他の第3の流体を指す)RGとしてクリプトン、ラドンあるいはテトラフルオロメタン(CF)、トリフルオロメタン(CHF)の少なくとも1種類以上のガスを導入するための導入経路17、18、19を備えている。
【0020】
オゾン分離手段12および酸素同位体濃縮手段14は、図2に示されるような蒸留塔で構成されている。図2において、オゾン生成手段11から経路16を通って、オゾンと酸素と希釈ガスとの混合ガスが蒸留塔の中間段に送られ、蒸留され、塔頂に酸素が分離され、塔底にオゾンと希釈ガスとが分離される。
図3は、蒸留塔内の酸素、オゾン、希釈ガスとしてのCFの気相での各成分の濃度分布を塔頂からの距離に対応して計算した例を示すものである。図3のグラフにおいて、オゾン濃度は蒸留塔塔底において最大であり、酸素は極微量であることがわかる。また、塔底から上方に1〜2理論段相当分まででの酸素量も最大で1vol%未満である。
【0021】
したがって、図2に示すように、蒸留塔12(14)の塔底からサンプリングガスを経路31に導出し、酸化マンガンなどの触媒を装填したオゾン分解触媒筒32に通してオゾンを酸素に完全に分解した後、経路33を通ってジルコニア式酸素濃度計などの酸素濃度計(図示略)で酸素濃度を測定する。測定された酸素濃度からオゾン濃度を換算し、オゾン濃度が求められる。
【0022】
このようにして、プロセス内のオゾンが最も濃縮する位置、すなわち蒸留塔の塔底付近におけるオゾン濃度が常に爆発限界以下であることを確認することができ、これによりプロセスを安全に管理することができる。
また、酸素濃度測定後のガスは、蒸留塔の適当な位置に導入することも可能である。
【0023】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態で示した構成要素のうち、第1の実施形態で示した構成要素と同一構成要素には同じ符号を付与して説明は省略する。
第2の実施形態では、第1の実施形態において酸素同位体濃縮手段14から導出されるオゾン含有ガス(オゾンと希釈ガスの混合ガス)OR1を原料として、さらに、特定波長の光L2を照射し、分子中に特定の酸素同位体を含むオゾンを選択的に酸素に分解する第2オゾン光分解手段21と、該第2オゾン光分解手段21でオゾンが分解して生成した酸素OC2を、未分解のオゾンと希釈ガスの混合ガスOR2から分離して該酸素中に酸素同位体を濃縮する第2酸素同位体濃縮手段22とを備える。
【0024】
また、該オゾン・希釈ガスの混合ガスOR2はオゾン分解手段23に導入されて、オゾンが分解される。オゾン分解により生成された酸素および希釈ガスからなる希釈ガス・酸素混合ガスOR3は、希釈ガス回収手段24に導入される。希釈ガス回収手段24では、酸素と希釈ガスとを分離する操作が行われ、排酸素WOは系外に排出され、分離した希釈ガスは前記経路18を通って循環する。
【0025】
このプロセスにおいては、オゾン分離手段12からの混合ガスOR、酸素同位体濃縮手段14からの混合ガスOR1、第2酸素同位体濃縮手段22からの混合ガスOR2において、オゾン濃度が最も高濃度になると予想されるので、この箇所からサンプリングしたガスをオゾン分解触媒等によりオゾン分解した後、質量分析計等により、酸素濃度を測定する。この測定された酸素濃度をオゾン濃度に換算して、装置内のオゾン濃度が爆発限界以下の濃度であることを確認することにより、安全に管理することができる。
【符号の説明】
【0026】
12・・オゾン分離手段、14・・酸素同位体濃縮手段、31・・経路、32・・オゾン分解触媒筒、33・・経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン、酸素およびこれ以外の第3の流体を含む流体を蒸留塔にて蒸留する際、オゾンが最大濃度となる蒸留塔塔底付近からサンプルガスを導出し、該サンプルガス中のオゾンを完全分解させて発生した酸素の濃度を測定し、この酸素濃度をオゾン濃度に換算してオゾン濃度を測定することを特徴とするオゾン濃度の測定方法。
【請求項2】
前記第3の流体が、クリプトン、キセノン、ラドン、テトラフルオロメタンあるいはトリフルオロメタンの中から選ばれた少なくとも1種類以上である請求項1記載のオゾン濃度の測定方法。
【請求項3】
前記サンプルガス中のオゾンを完全分解させる方法が、オゾン分解触媒あるいは加温による方法である請求項1または2記載のオゾン濃度の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223801(P2010−223801A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72080(P2009−72080)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】