説明

オゾン発生器

【課題】小型であるにもかかわらず振動等の影響を受けないように電極を固定でき、しかも耐オゾン性が高いオゾン発生器を提供する。
【解決手段】本発明のオゾン発生器1は、放電管11、放電管11にガスを導入させる導入管12、および放電管11からガスを排出させる排出管13を有するガラス製の配管部材10と、放電管11の孔径より直径が小さく、放電管11に挿入された金属棒20と、放電管11の端部11a,11bおよび金属棒20との間に挟持されているフッ素樹脂製の固定用チューブ30a,30bと、放電管11の、ガスが通過する部分の外周面11cの少なくとも一部に形成された導電膜40とを備え、固定用チューブ30a,30bは、放電管11の中央側の端部の外径が、放電管11の中央側に向かうにつれて縮径している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、化学発光式窒素酸化物計(NO計)等に具備されるオゾン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを発生させる方法として、酸素を含有するガス(以下、酸素含有ガスという。)の存在下で無声放電を行う方法が広く知られている(例えば、非特許文献1参照)。無声放電を利用してオゾンを発生させる具体的な方法としては、一対の電極間に固体誘電体を配置し、固体誘電体と一方の電極間に酸素含有ガスを存在させた状態で電極間を印加する方法が挙げられる。
【0003】
無声放電を利用してオゾンを発生させるオゾン発生器としては、例えば、図6に示すような、放電管111、導入管112および排出管113を有するガラス製の配管部材110と、放電管111の孔径より直径が小さく、放電管111に挿入された金属棒120と、放電管111の、ガスが通過する部分の外周面に形成された導電膜140とを備えるものが知られている。
このオゾン発生器100では、放電管111の両端側に、金属棒120の直径と略同等の孔径、かつ、放電管111の外径と略同等の外径の第1のチューブ150a,150bを、第1のチューブ150a,150bの貫通孔と放電管111の貫通孔とが連通するように隣接させている。また、第1のチューブ150a,150bと放電管111の端部111a,111bとに、第1のチューブ150a,150bおよび放電管111の外径と略同等の孔径を有する第2のチューブ160を被せて、第1のチューブ150a,150bと放電管111とを接続させている。また、放電管111の、導入管112側の端部111aに隣接する第1のチューブ150aの一部にフッ素樹脂製の棒170を挿入する。
そのようにした状態で、両方の第1のチューブ150a,150bおよび放電管111内に金属棒120を挿入して固定する。ここで、第1のチューブ150a,150bおよび第2のチューブ160としては、適度な柔軟性を有し、金属棒120やフッ素樹脂製の棒170を挿入可能であることから、シリコーン製のものが用いられる。また、金属棒120の、第1のチューブ150bからはみ出る部分にはねじ溝121が形成されている。
【0004】
上記オゾン発生器100を用いてオゾンを発生させるためには、電源接続用配線122の一端に取り付けられた座金123を、金属棒120のねじ溝121に螺着した2つのナット124,124により挟んで、電源接続用配線122の他端に電源Pを接続する。これにより、金属棒120を一方の電極とする。また、アース接続用配線141を介して、導電膜140にアースEを接続して他方の電極とする。次いで、導入管112から酸素含有ガスを放電管111に導入させ、電極間を印加する。これにより生じた無声放電によって、酸素からオゾンを発生させる。発生させたオゾンは、排出管113を介して放電管11から排出させる。
【非特許文献1】宗宮功著、「オゾン利用の新技術」、三▲秀▼書房、1986年、p.31−37
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記オゾン発生器100では、シリコーンの耐オゾン性が高くないため、発生したオゾンの接触によって第1のチューブ150a,150bが劣化して割れてしまうことがあった。また、第2のチューブ160が柔軟性を有することから、振動により電極間隔が変化し、電気的ノイズが発生することがあった。さらに、振動等により金属棒120が位置ずれし、金属棒120の外周面と放電管111の内周面との間隔が一定になりにくかった。そのため、放電が安定せず、オゾンが一定に発生しないことがあった。
ところで、大型のオゾン発生器においては、振動等の影響を受けないように耐オゾン性を有する素材を用いて電極を固定する手法として様々なものが知られている。しかし、小型のオゾン発生器においては、大きさやコストに制約があるため、振動等の影響を受けないように電極を固定することが困難であった。そのため、小型のオゾン発生器については、耐オゾン性が高く、振動等の影響を受けないように電極を固定する方法が知られていないのが実情であった。
本発明は、小型であるにもかかわらず振動等の影響を受けないように電極を固定でき、しかも耐オゾン性が高いオゾン発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 放電管、該放電管にガスを導入させる導入管、および前記放電管からガスを排出させる排出管を有するガラス製の配管部材と、
前記放電管の孔径より直径が小さく、放電管に挿入された金属棒と、
前記放電管の端部および金属棒との間に挟持されているフッ素樹脂製の固定用チューブと、
前記放電管の、ガスが通過する部分の外周面の少なくとも一部に形成された導電膜とを備え、
前記固定用チューブは、放電管の中央側の端部の外径が、放電管の中央側に向かうにつれて縮径していることを特徴とするオゾン発生器。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオゾン発生器は、小型であるにもかかわらず振動等の影響を受けないように電極を固定でき、しかも耐オゾン性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のオゾン発生器の一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態のオゾン発生器を示す。このオゾン発生器1は、直胴の放電管11と、放電管11にガスを導入させる導入管12と、放電管11からガスを排出させる排出管13とを有するガラス製の配管部材10を備える。ここで、導入管12および排出管13は共に、放電管11の垂直方向に、放電管11の外周面11cから突き出ている。また、導入管12と排出管13とは、互いに離されて配置されている。
【0009】
放電管11の内部には、放電管11の孔径より直径が小さく、かつ、放電管11より長い金属棒20が挿入されている。
放電管11の導入管12側の端部11aと金属棒20との間には、図2に示すように、第1の固定用チューブ30aが挟持されている。ここでいう「端部」とは、両端の部分を意味している。本実施形態では、第1の固定用チューブ30aの一方の先端31aが、放電管11の端部11a側の先端11eと同じ位置にある。
放電管11の排出管13側の端部11bと金属棒20との間には、図3に示すように、第2の固定用チューブ30bが挟持されている。本実施形態における第2の固定用チューブ30bは放電管11からはみ出ている。
放電管11の、ガスが通過する部分の外周面11cの全部には、導電膜40が形成されている。ここで、ガスが通過する部分は、放電管11の、導入管12が接続された位置から排出管13が接続された位置までの部分である。
放電管11の導入管12側の端部11aには、キャップ50が取り付けられている。
放電管11の、排出管13側の端部11bには、金属棒支持部材60が取り付けられている。金属棒支持部材60からは、金属棒20の一端がはみ出ている。
【0010】
(配管部材)
放電管11の外径および孔径(内径)は、発生させるオゾンの流量にもよるが、例えば、NO分析計の場合には、外径を6〜10mm、孔径を4〜8mmとすることができる。
【0011】
(金属棒)
金属棒20の、金属棒支持部材60からはみ出る部分には、ねじ溝21があらかじめ形成されている。
金属棒20の直径は、放電管11との間隙が0.5〜1.0mmになるようにすることが好ましい。放電管11との間隙が0.5mm以上かつ1.0mm以下になるようにすれば、オゾンをより安定に発生させることができる。
金属棒20を構成する金属としては、耐オゾン性を有するものが選択され、例えば、チタン、ステンレスなどが挙げられる。
【0012】
(固定用チューブ)
第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bの外径は、放電管11の孔径と略同等であり、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bの孔径は金属棒20の直径と略同等である。
また、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bは共に、放電管11の中央側の外径が、放電管11の中央側に向かうにつれて縮径している。
【0013】
第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bは、フッ素樹脂製である。フッ素樹脂としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
【0014】
(導電膜)
導電膜40は、例えば、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔、金属を含む導電性ペーストが放電管11の外周面11cに塗布されて形成された塗膜からなっている。なお、上記金属箔は銅製やアルミニウム製等のテープ部材であってもよい。
【0015】
(キャップ)
キャップ50は、図4に示すように、放電管11の外径と略同等の内径の凹部51を有する部材である。キャップ50は、凹部51を放電管11の導入管12側の端部11aに嵌めることによって、放電管11に取り付けられる(図2参照)。
キャップ50の材質としては特に制限されないが、取り付けが容易になることから、ゴムであることが好ましく、耐薬品性の点で、シリコーンゴムがより好ましい。
【0016】
(金属棒支持部材)
金属棒支持部材60は、図5に示すように、貫通孔61を有する部材である。ここで、貫通孔61は、金属棒20の直径と略同等の孔径の第1の孔61aと、第1の孔61aに連通し、第2の固定用チューブ30bの外径と略同等の孔径の第2の孔61bと、第2の孔61bに連通し、放電管11の外径と略同等の孔径の第3の孔61cとが形成されている。
第1の孔61a内には金属棒20が挿入され、第2の孔61b内には第2の固定用チューブ30bが挿入され、第3の孔61cには放電管11の排出管13側の端部11bが挿入されて、金属棒20を支持するようになっている(図3参照)。
金属棒支持部材60の材質は、キャップ50と同様の理由から、ゴムが好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。
【0017】
(作製方法)
上記オゾン発生器1の作製方法の一例について説明する。
まず、放電管11の、導入管12と排出管13との間の外周面11cの全部に導電膜40を形成する。
次いで、金属棒20を放電管11に、排出管13側の先端11dから、導入管12側の先端11eまで挿入する。
次いで、導入管12側の先端11eから、放電管11と金属棒20との間に、第1の固定用チューブ30aを、縮径している側が放電管11の軸方向中央側になるように挿入する。ここで、第1の固定用チューブ30aは金属棒20を放電管11に固定する楔の役割を果たす。第1の固定用チューブ30aの全部を放電管11に挿入する必要はなく、放電管11が破損しない程度に挿入し、放電管11からはみ出た部分を切断する。これにより、第1の固定用チューブ30aの一方の先端31aと、放電管11の端部11a側の先端11eとを同じ位置にする。
次いで、キャップ50の凹部51を、放電管11の導入管12側の端部11aに嵌めて、キャップ50を放電管11に取り付ける。
次いで、排出管13側の先端11dから、放電管11と金属棒20との間に、第2の固定用チューブ30bを、縮径している側が放電管11の軸方向中央側になるように挿入する。ここで、第2の固定用チューブ30bは、第1の固定用チューブ30aと同様に楔の役割を果たす。したがって、第2の固定用チューブ30bも全部を放電管11に挿入する必要はなく、放電管11が破損しない程度に挿入し、一部を放電管11からはみ出させる。
次いで、金属棒支持部材60の第3の孔61c側から、第1の孔61aに金属棒20を挿入し、金属棒支持部材60を放電管11側に押し込むことにより、第2の孔61bに第2の固定用チューブ30bのはみ出た部分、第3の孔61cに放電管11の排出管13側の端部11bを順次挿入する。これにより、金属棒支持部材60を取り付けて、金属棒20を支持する。
これにより、オゾン発生器1が得られる。
【0018】
(他の配管の接続)
導入管12および排出管13には他の配管が接続される。導入管12に他の配管を接続する方法としては特に制限はないが、例えば、以下のように接続できる。すなわち、まず、導入管12の外径と略同等の外径の第1のチューブを、第1のチューブの貫通孔と導入管12の貫通孔とが連通するように導入管に隣接させる。次いで、第1のチューブと導入管12とに、第1のチューブの外径および導入管12の外径と略同等の孔径を有する第2のチューブを被せて、それらを接続する。このように第1のチューブを接続し、第1のチューブの貫通孔に他の配管を接続する。他の配管の外径が第1のチューブの貫通孔の孔径より小さい場合には、第1のチューブの貫通孔内に、他の配管の外径と略同等の孔径を有する第3のチューブを挿入して対応させることができる。
排出管13に他の配管を接続する際にも上記接続方法と同様の方法を採ることができる。
【0019】
(電源およびアースの接続)
上記オゾン発生器1は、以下のようにして電源PおよびアースEに接続される。
金属棒20のねじ溝21に、電源接続用配線22の一端に取り付けられた座金23を挟持するように2つのナット24,24を螺着し、電源接続用配線22の他端に電源Pを接続する。このように金属棒20に電源Pを接続することによって、金属棒20は一方の電極になる。
また、導電膜40に、アース接続用配線41を介してアースEを接続する。これにより、導電膜40は他方の電極になる。
【0020】
(オゾン発生方法)
オゾン発生器1を用いてオゾンを発生させるためには、導入管12から酸素含有ガスを放電管11内に導入させて、放電管11内を通過させる。ここで、酸素含有ガスとしては、例えば、酸素、空気などが挙げられる。
また、金属棒20と導電膜40とを印加し、これらの間で無声放電を生じさせて、酸素からオゾンを発生させる。
その際の印加電圧は6〜10kVであることが好ましい。印加電圧が6kV以上であれば、充分に無声放電を生じさせることができ、充分量のオゾンを発生させることができ、10kV以下であれば、電源P、電源接続用配線22およびアース接続用配線41として汎用品を使用できる。
また、放電管11内の絶対圧力は10〜80kPaであることが好ましい。絶対圧力が10kPa以上であれば、充分量のオゾンを発生させることができ、80kPa以下であれば、無声放電を容易に生じさせることができる。
そして、放電管11内で発生させたオゾンを、排出管13を介して放電管11から排出させて、オゾンを使用する他の装置に供給する。
上記オゾン発生方法は連続的に行うことができる。
【0021】
(作用効果)
上述したオゾン発生器1では、小型であるにもかかわらず、金属棒20の外周面と放電管11の内周面との間隔を一定にしながら、振動等の影響を受けないように金属棒20を放電管11に固定できる。そのため、電気的ノイズの発生を抑制でき、また、放電を安定化させて、オゾンを一定に発生させることできる。なお、放電管11の内部は通常減圧されているから、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bによる封止でも、放電管11からのオゾンの流出を防止できる。
また、オゾンに接するのは、配管部材10、金属棒20、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bである上に、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bがフッ素樹脂製であるため、耐オゾン性が高い。ところで、フッ素樹脂は硬い樹脂であり、しかも配管部材10および金属棒20には寸法誤差があるため、放電管11と金属棒20との間に挟持する固定用チューブの外径が一定であると、固定用チューブを挿入した際にガラス製の配管部材10を破損させるおそれがある。しかし、本実施形態では、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bが、放電管11の中央側に向かうにつれて縮径しているため、第1の固定用チューブ30aおよび第2の固定用チューブ30bを挿入した際の配管部材10の破損が防止されている。
【0022】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、キャップ50と金属棒支持部材60を備えていたが、これらの一方または両方を備えていなくてもよい。
また、導電膜40は、放電管11の、ガスが通過する部分の外周面11cの少なくとも一部に形成されていればよい。
また、第2の固定用チューブ30bは放電管11からはみ出ていなくてもよい。
また、金属棒20にアースEを接続し、導電膜40に電源Pを接続しても構わない。
【0023】
(用途)
本発明のオゾン発生器は、一酸化窒素とオゾンとの反応の際に生じる化学発光によって濃度測定する化学発光式窒素酸化物計に好適に具備される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のオゾン発生器の一実施形態を説明する図である。
【図2】図1に示すオゾン発生器の要部を拡大した図である。
【図3】図1に示すオゾン発生器の要部を拡大した図である。
【図4】図1に示すオゾン発生器を構成するキャップを示す断面図である。
【図5】図1に示すオゾン発生器を構成する金属棒支持部材を示す断面図である。
【図6】従来のオゾン発生器の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
1 オゾン発生器
10 配管部材
11 放電管
11a,11b 端部
11c 外周面
11d,11e 先端
12 導入管
13 排出管
20 金属棒
21 ねじ溝
22 電源接続用配線
23 座金
24 ナット
30a 第1の固定用チューブ
30b 第2の固定用チューブ
31a 先端
40 導電膜
41 アース接続用配線
50 キャップ
51 凹部
60 金属棒支持部材
61 貫通孔
61a 第1の孔
61b 第2の孔
61c 第3の孔
E アース
P 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管、該放電管にガスを導入させる導入管、および前記放電管からガスを排出させる排出管を有するガラス製の配管部材と、
前記放電管の孔径より直径が小さく、放電管に挿入された金属棒と、
前記放電管の端部および金属棒との間に挟持されているフッ素樹脂製の固定用チューブと、
前記放電管の、ガスが通過する部分の外周面の少なくとも一部に形成された導電膜とを備え、
前記固定用チューブは、放電管の中央側の端部の外径が、放電管の中央側に向かうにつれて縮径していることを特徴とするオゾン発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−155186(P2009−155186A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338095(P2007−338095)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】