説明

オットマン装置付き自動車

【課題】 オットマン装置を備えた自動車において、一種類のオットマン装置を各種の座席に対して用いることができるようにする。
【解決手段】床部1に座席2が支持部材3を介して設けられた自動車において、座席2の下部前方側にはオットマン装置5を配置する。オットマン装置5は、座席2に固定することなく、床部1に直接固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗員の脚部を支持するためのオットマン装置を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用自動車においては、車体の床部に座席が設けられている。座席は、乗員が腰掛ける座部と、乗員が背中をもたれかける背もたれ部とを有している。
【0003】
ところで、座席に長時間座り続けると、脚部の血行が悪くなり、乗員の疲労感が増すという問題がある。そこで、下記特許文献1に記載のものにおいては、座部の先端部にオットマン装置が設けられている。オットマン装置は、座部の先端部に上下方向へ回動可能に設けられたブラケットと、このブラケットの先端部に支持された補助クッションとを有している。そして、オットマン装置の使用時には、ブラケットが回動され、補助クッションが座部とほぼ同一高さに位置調節される。この状態では、乗員がその脚を補助クッションに乗せてほぼ水平にすることができ、ゆったりとくつろぐことができる。一方、オットマン装置の不使用時には、ブラケットが回動され、補助クッションが座部の下側に位置するように位置調節される。
【0004】
【特許文献1】特開平2−121440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のオットマン装置付き自動車においては、オットマン装置が座席の座部に設けられているため、ある座席用に作製したオットマン装置は、他の座席には使用することができない。つまり、オットマン装置を座席毎に作製しなければならない。このため、オットマン装置の種類が増えてその製造費及び管理費が嵩み、ひいては自動車の製造費が嵩むとい問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、車内に、座席と、基部及びこの基部に収容位置と使用位置との間を回動可能に支持された脚支持部を有するオットマン装置とが設けられた自動車において、上記オットマン装置の基部が車体の床部に直接設けられていることを特徴としている。
この場合、上記オットマン装置の基部が上記床部に着脱可能に設けられていることが望ましい。特に、上記基部の下面に面ファスナーが設けられ、この面ファスナーによって上記基部が上記床部に着脱可能に設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、オットマン装置の基部が、座席の座部に設けられることなく、車体のフロアに直接設けられているので、一つのオットマン装置を各種の座席に対して共通に使用することができる。したがって、オットマン装置の種類を減らすことができ、その製造費及び管理費を低減することができ、その分だけ自動車の製造費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明に係る自動車の一実施の形態の要部を示す。この実施の形態の自動車においては、車体の床部1に座席2が支持部材3を介して設けられている。座席2は、支持部材3に支持されたシートフレーム21及び、このシートフレーム21に載置固定されたシートクッション22を有する座部2Aと、シートフレーム21にリクライニング装置4を介して回動位置調節可能に支持されたシートバックフレーム(図示せず)、及びこのシートバックフレームに支持されたシートバッククッション23を有する背もたれ部2Bとを備えている。
【0009】
座部2Aの下部の前方側には、オットマン装置5が設けられている。オットマン装置5は、基部51を有している。基部51は、床部1に固定されている。基部51の上端部には、支持アーム52の基端部が左右方向へ延びる水平な軸53を介して上下方向へ回動可能に支持されている。この支持アーム52の先端部には、補助クッション(脚支持部)54が設けられている。補助クッション54は、支持アーム52を回動させることにより、図1に示す使用位置と、図2に示す収容位置との間を位置調節可能である。補助クッション54は、使用位置に位置させられると、その後端部(図1において右端部)がシートクッション22の前端部とほぼ同一高さになる。しかも、補助クッション54の上面は、前方へ向って緩やかな下り勾配をなすように傾斜する。補助クッション54は、使用位置に回動したとき、その上面がほぼ水平でシートクッション22の前端部とほぼ同一高さになるようにしてもよい。補助クッション52は、図2に示す収容位置に回動させられると、シートクッション22の斜め前下方に位置する。
【0010】
オットマン装置5は、回転駆動装置6を有している。回転駆動装置6は、支持アーム52を使用位置と収容位置との間で回転させるためのものであり、ロッド61を有している。このロッド61の後端部は、床部1にブラケット62及び左右方向へ延びる水平な軸63を介して上下方向へ回動可能に、かつロッド61の長手方向へ移動不能に連結されている。ロッド61の先端部には、筒体64が固定されている。この筒体64の内周面には、雌ねじ部(図示せず)が形成されている。この雌ねじ部には、ねじ軸65の後端部が螺合されている。ねじ軸65の先端部は、支持アーム52に左右方向に延びる水平な軸66及びブラケット67を介して連結されている。ねじ軸65は、ねじ軸65に対しその軸線を中心として上下方向へ回動可能に、かつねじ軸65の長手方向へ移動不能に連結されている。軸66は、その軸線を中心としてブラケット67に回動可能に支持されている。したがって、ねじ軸65を一方向へ回動させてねじ軸65を前進させると、それに伴って支持アーム52が収容位置側から使用位置側へ向って回動する。逆に、ねじ軸65を他方向へ回動させてねじ軸65を後退させると、支持アーム52が使用位置側から収容位置側へ向って回動する。
【0011】
筒体64には、回転機構68が設けられている。回転機構68は、回転駆動源としてのモータ(図示せず)と、このモータの回転を減速してねじ軸65に伝達する減速機構(図示せず)とを有している。そして、車内の座席2近傍、例えばインストルメントパネルやドアの肘掛等に設けられたアップスイッチ(いずれも図示せず)を操作し続けると、ねじ軸65が一方向へ回転し、支持アーム52が使用位置に達するまでを限度として、支持アーム52を収容位置側から使用位置側へ向って回動させる。アップスイッチに隣接して設けられたダウンスイッチ(図示せず)を操作続けると、ねじ軸65が他方向へ回転し、支持アーム52が収容位置に達するまでを限度として、支持アーム52を使用位置側から収容位置側へ向って回動させる。
【0012】
上記構成の自動車においては、オットマン装置5が座席2に設けられることなく、車体の床部1に直接設けられている。したがって、一種類のオットマン装置5を各種の座席2に用いることができ、座席2の種類毎に異なるオットマン装置5を作製する必要がない。よって、オットマン装置5の製造費及び管理費等を低減することができ、ひいては自動車の製造費を低減することができる。
【0013】
図3及び図4は、この発明に係る自動車において用いられるオットマン装置の他の例を示す。このオットマン装置7は、基部71と支持アーム72とを有している。基部71の下面には、面ファスナ73が設けられている。この面ファスナ73により、基部71が床部1の表面を構成するマット(図示せず)に着脱可能に取り付けられている。面ファスナ73としては、マットの材質に応じて周知の各種のものが適宜採用される。
【0014】
基部71の上端部には、支持アーム72の基端部が水平な軸74を介して上下方向へ回動可能に支持されている。支持アーム72は、図3に示す収容位置と図4に示す使用位置との間を回動可能である。支持アーム72の使用位置に回動したときに上方を向く面には、補助クッション(脚支持部)75が設けられている。この補助クッション75は、支持アーム72が使用位置に回動すると、補助クッション75の上面がほぼ水平になり、支持アーム72が収容位置に回動すると、補助クッション75の長手方向が上下方向を向くように設けられている。
【0015】
基部71には、係止機構(図示せず)が設けられている。この係止機構は、支持アーム72が使用位置に位置すると、支持アーム72が収容位置側へ回動することを阻止し、支持アーム72が収容位置に位置すると、支持アーム72が使用位置側へ回動することを阻止する。勿論、係止機構による係止状態を解除することにより、支持アーム72は、収容位置から使用位置側へ、使用位置から収容位置側へそれぞれ回動させることができる。
【0016】
基部71と支持アーム72との間には、回動付勢手段及びダンパ機構(いずれも図示せず)が設けられている。回動付勢手段は、コイルばね、その他の弾性部材からなるものであり、支持アーム72を収容位置から使用位置に向かって回動付勢している。ダンパ機構は、支持アーム72の収容位置から使用位置側への回動速度を低速に抑える一方、使用位置から収容位置側への高速回動を許容する。
【0017】
図5は、上記構成のオットマン装置7の使用の第1例を示す。この使用例では、オットマン装置7が座席2′の座部2A′の前方側下部に配置されており、基部71が面ファスナ73によって床部1に着脱可能に取り付けられている。この実施の形態は、オットマン装置7が床部1に対して着脱可能である点を除き、その他の構成はオットマン装置5が用いられた自動車と同様である。
【0018】
図6は、上記オットマン装置7の使用の第2例を示す。この使用例では、オットマン装置7が座席2′の斜め前方の床部1に着脱可能に設けられている。この使用例では、座席2′の前方に座席が設けられている場合であっても、乗員Pはその脚部PLをオットマン装置7の補助クッション75上に載せて伸ばすことができる。
【0019】
図7は、上記オットマン装置7の使用の第3例を示す。この使用例では、オットマン装置7が、左右に並んだ二つの座席2′,2′間の床部1に着脱可能に設けられている。左右に一列状に並んだ座席2′、オットマン装置7及び座席2′により一種のベンチシートを構成することができる。
【0020】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、面ファスナ73によってオットマン装置7の基部71を床部1に着脱可能に取り付けているが、ボルト及びナット等の締結手段によって着脱可能に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1実施の形態の要部を、補助クッションを使用位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図2】同要部を、補助クッションを収容位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図3】この発明に係る自動車において用いられるオットマン装置の他の例を、補助クッションを収容位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図4】同他の例を、補助クッションを使用位置に位置させた状態で示す側面図である。
【図5】図3及び図4に示すオットマン装置の使用の第1例を示す側面図である。
【図6】同使用の第2例を示す平面図である。
【図7】同使用の第3例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 床部
2 座席
2′ 座席
5 オットマン装置
7 オットマン装置
51 基部
54 補助クッション(脚支持部)
71 基部
73 面ファスナ
75 補助クッション(脚支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内に、座席と、基部及びこの基部に収容位置と使用位置との間を回動可能に支持された脚支持部を有するオットマン装置とが設けられた自動車において、
上記オットマン装置の基部が車体の床部に直接設けられていることを特徴とするオットマン装置付き自動車。
【請求項2】
上記オットマン装置の基部が上記床部に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオットマン装置付き自動車。
【請求項3】
上記基部の下面に面ファスナーが設けられ、この面ファスナーによって上記基部が上記床部に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオットマン装置付き自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255801(P2009−255801A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108657(P2008−108657)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】