説明

オピオイドアンタゴニストミクロスフェアを含有する乱用抵抗性の経皮的オピオイド送達デバイス

【課題】鎮痛作用を有するオピオイドアゴニストを含有
する経皮的送達デバイスの提供。
【解決手段】有効量のオピオイドアゴニストを包含した薬剤含有層及び当該薬剤含有層中に分散された複数のミクロスフェアを含んでおり、当該ミクロスフェアが、オピオイドアンタゴニストを含み且つ前記薬剤含有層中において視覚的に感知できないものである、前記デバイス
。ミクロスフェアは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリサッカライド、シクロデキストリン、キトサン、ポリ(Σ-カプロラクトン)、ポリ無水物、アルブミン、それらのブレンド(blends)及びコポリマー等、からなる群より選択されるポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年2月23日に出願された米国仮出願第60/547,196号に基
づく優先権を主張するものであり、これをもって、上記仮出願は参照として本明細書に組
み入れられる。
【0002】
本発明は、乱用される可能性を低減しながら、オピオイドアゴニストを送達するのに有
用な経皮的送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
オピオイドの徐放性製剤は、当技術分野において既知であり、オピオイドの即放性製剤
を投与した後に普通に現れる薬効期間よりも長い期間にわたって薬理学的効果をもたらす
。徐放性製剤で得られるこのような長期間にわたる効能は、対応する即放性製剤では達成
されない多くの治療上の便益性を提供することができる。
【0004】
治療学的に活性な物質を持続的に送達するための一つの手法は、経皮的送達デバイス、
例えば経皮用パッチ剤などを使用することである。例えばスコポラミンまたはニトログリ
セリンを送達する、商業的に利用可能な特定の経皮用デバイスは、不浸透性の裏当てと膜
面との間に挟まれた貯蔵部を含み、通常、粘着性ゲルによって皮膚に貼り付けられる。
【0005】
近年、例えば持続的な鎮痛が指示された場合などに、慢性疼痛症候群の管理で経皮的な
投与がますます受け入れられている。オピオイド鎮痛剤が活性成分である経皮的送達デバ
イスが知られている。一般的に、経皮的送達デバイスは、貯蔵部またはマトリックス内の
治療学的に活性な物質(例えばオピオイド鎮痛剤)と、この経皮用デバイスを皮膚に接着
できるようにする粘着剤とを含んでおり、これにより、上記活性物質が本デバイスから患
者の皮膚を通って進入できるようになっている。上記活性物質が皮膚層を浸透すると、こ
の薬剤は血流中に吸収され、そこで所望の薬物療法学的な効果を発揮し、例えば鎮痛作用
などを及ぼすことができる。この分野における特許の例は、Galeに付与された米国特
許第4,588,580号(この特許は、フェンタニルまたは鎮痛作用的に有効なフェン
タニルの誘導体を送達するための経皮的送達デバイスを開示している);Bundgaa
rdに付与された米国特許第5,908,846号(この特許は、経皮用パッチ剤の形態
の、担体との組合せにおけるモルヒネの誘導体の局所製剤を開示している);Chien
らに付与された米国特許第4,806,341号(この特許は、裏当て層、モルフィナン
麻薬性鎮痛薬またはアンタゴニストおよび皮膚透過促進剤を含有する固体ポリマーマトリ
ックスの隣接層、ならびに粘着性ポリマーを含むデバイスを用いる、麻薬性鎮痛薬または
オピオイドアンタゴニストの経皮的な投与を開示している);Aunstらに付与された
米国特許第4,626,539号(この特許は、オピオイド、透過促進剤、およびプロピ
レングリコールなどの製薬学的担体などから成るゲル、ローションまたはクリームを含有
する経皮用パッチ剤を開示している);ならびにRederらに付与された米国特許第5
,968,547号、第6,231,886号および第6,344,212号(これらの
特許は、長期間にわたる疼痛管理をもたらすべくブプレノルフィンを含有した経皮的送達
デバイスを開示している)を含む。前述のものを含め、ここで引用されているすべての文
献は、これをもって、参照により、それらの文献の開示内容全体が本明細書に組み入れら
れる。
【0006】
米国内で市販されている、商業的に入手可能なオピオイド鎮痛剤の経皮用デバイスはD
uragesic(登録商標)パッチ剤であり、このパッチ剤は、活性物質としてフェン
タニルを含んでいる(Janssen Pharmaceuticalから商業的に入手
可能)。このDuragesic(登録商標)パッチ剤が適用されると、48時間から7
2時間鎮痛作用をもたらす。
【0007】
オピオイドの使用に関わる重大な懸念は、このような薬剤の乱用、およびこのような治
療を必要とする患者から非患者へのこれらの薬剤の横流し、例えば不法な使用を目的とし
た非患者への横流しである。当技術分野において、経皮用オピオイド製剤は、不正な使用
(例えば経口的または非経口的な使用)を目的としてオピオイドを遊離させるため、この
送達デバイスが(例えば咬むことにより、裂くことにより、または薬剤を抽出することに
より)手を加えられたときに乱用され得ることが認識されている。さらに、以前に「使用
された」はずの経皮的なフェンタニル送達デバイスのうち、それらの過多量がその後に乱
用されていたという報告もされている。
【0008】
Leeらに付与された米国特許第5,236,714号およびGrangerらに付与
された米国特許第5,149,538号は、乱用される可能性を低減したと主張されてい
るオピオイドアゴニストの経皮的送達デバイスを開示している。
【0009】
含有されたオピオイドが乱用される可能性を低減した経皮的オピオイド送達デバイスが
必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの目的は、オピオイド鎮痛剤を含有し、且つ、乱用される可能性を低減し
た、経皮的送達デバイスを提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、乱用される可能性が低減されているオピオイドを含有した経皮
的送達デバイスを用いて疼痛を治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的および他の目的に従って、本発明は、一部において、オピオイド鎮痛剤を送
達するための経皮的送達デバイスを提示しており、この送達デバイスは、鎮痛作用的に有
効量のオピオイドアゴニストと、本経皮的送達デバイスが局所的にそのままの状態(完全
な状態:intact)で適用されたときには実質的に放出不可能な形態を成すオピオイドアン
タゴニストとを含んでいる。
【0013】
特定の実施形態においては、本発明は、有効量のオピオイドアゴニストを包含した薬剤
含有層およびその薬剤含有層中に分散された複数のミクロスフェアを含む経皮的送達デバ
イスを提示しており、当該ミクロスフェアは、オピオイドアンタゴニストを含んでおり、
且つ、薬剤含有層中において視覚的に感知できない状態に成されている。
【0014】
特定の実施形態においては、本発明は、裏当て層;および上記裏当て層の一方の表面と
接触している薬剤含有層;を含む経皮的送達デバイスを提示しており、上記薬剤含有層は
、有効量のオピオイドアゴニストとこの薬剤含有層中に分散された複数のミクロスフェア
とを含んでおり、当該ミクロスフェアは、オピオイドアンタゴニストと、ポリエステル、
ポリエーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリサッカライド、シクロデキストリン、キト
サン、ポリ(Σ-カプロラクトン)、ポリ無水物、アルブミン、それらの混合物およびコ
ポリマーからなる群より選択されるポリマーとを含んでおり、また、これらのミクロスフ
ェアの平均サイズは約1μmから約500μmである。
【0015】
特定の実施形態においては、本発明は、さらに、裏当て層;および上記裏当て層の一方
の表面と接触している薬剤含有層;を含む経皮的送達デバイスを提示しており、上記薬剤
含有層は、有効量のオピオイドアゴニストとこの薬剤含有層中に分散された複数のミクロ
スフェアとを含んでおり、これらのミクロスフェアは、高分子マトリックス中に分散され
たオピオイドアンタゴニストを含んでおり、また、これらのミクロスフェアの平均サイズ
は約1μmから約500μmである。
【0016】
特定の実施形態においては、本発明は、さらに、裏当て層;および上記裏当て層の一方
の表面に接続されている薬剤含有層;を含む経皮的送達デバイスを提示しており、上記薬
剤含有層は、有効量のオピオイドアゴニストとこの薬剤含有層中に分散された複数のミク
ロスフェアとを含んでおり、これらのミクロスフェアは、平均サイズが約1μmから約5
00μmであり、オピオイドアンタゴニストを含んでいる。このような実施形態において
は、このサイズのアンタゴニスト含有ミクロスフェアは、この経皮用デバイスに含まれて
いるオピオイドアゴニストを乱用しようとしている乱用者によって、オピオイドアゴニス
トから容易に分離されることはない。
【0017】
特定の実施形態においては、本発明は、裏当て層;および上記裏当て層の一方の表面と
接触している薬剤含有層;を含む経皮的送達デバイスを提示しており、上記薬剤含有層は
、有効量のオピオイドアゴニストとこの薬剤含有層中に分散された複数のミクロスフェア
とを含んでおり、これらのミクロスフェアは、本質的に、オピオイドアンタゴニストと、
ポリエステル、ポリエーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリサッカライド、シクロデキ
ストリン、キトサン、ポリ(Σ-カプロラクトン)、ポリ無水物、アルブミン、それらの
混合物およびコポリマーからなる群より選択されるポリマーとから成っている。
【0018】
特定の実施形態においては、本発明は、さらに、裏当て層;および上記裏当て層の一方
の表面と接触している薬剤含有層;を含む経皮的送達デバイスを提示しており、上記薬剤
含有層は、有効量のオピオイドアゴニストとこの薬剤含有層中に分散された複数のミクロ
スフェアとを含んでおり、これらのミクロスフェアは、本質的に、高分子マトリックス中
に分散されたオピオイドアンタゴニストからなる。
【0019】
特定の実施形態においては、オピオイドアゴニスト含有層は、粘着層、マトリックス層
、貯蔵部、またはそれらの組合せから選択される。
【0020】
特定の実施形態においては、アンタゴニストは、本経皮的送達デバイスがヒト患者の皮
膚に局所的にそのままの状態で適用されたときには、ミクロスフェアから放出不可能であ
り、または実質的に放出不可能である(従って、本デバイスから放出されず、または実質
的に放出されない)。しかし、このアンタゴニストは、本経皮的送達デバイスに手が加え
られたときには、例えば咬まれたり、浸されたり、穴を開けられたり、裂かれたり、また
は別な仕方でミクロスフェアの完全性を破壊する任意の他の処理が施されたときには、ミ
クロスフェアから放出可能である。
【0021】
特定の好適な実施形態においては、オピオイドアゴニストを含有するマトリックス層に
分散されている本発明のミクロスフェアは、このマトリックス層の他の成分(例えばオピ
オイドアゴニスト、一つまたは複数のポリマーなど)と同様な視覚的外観を有しており、
従って、オピオイドアゴニストおよびオピオイドアンタゴニストを目視検査によって容易
に識別することができず、これにより、オピオイドアンタゴニストからのオピオイドアゴ
ニストの分離の困難性が高められている。
【0022】
特定の好適な実施形態においては、マトリックス層の組成が、ヒト患者の皮膚への本デ
バイスのそのままの状態での局所的適用時におけるミクロスフェアの分解およびオピオイ
ドアンタゴニストの放出を妨げている。
【0023】
本発明においては、手を加えられた(例えば咬まれた、浸された、穴を開けられた、裂
かれた、またはミクロスフェアの完全性を破壊する任意の他の処理が施された)本発明の
経皮的送達デバイスから放出されるアンタゴニストの量は、投与(例えば経口的に、鼻内
に、非経口的に、または舌下に)されたときに、オピオイドアゴニストを少なくとも部分
的にブロックするような量である。好適には、オピオイドアゴニストによる陶酔効果が減
衰またはブロックされ、これにより、この剤形を悪用および乱用する傾向が低減される。
【0024】
ポリマーの物理化学的/化学的特徴を利用して、本発明の乱用抵抗性(abuse resistan
ce)をもたらすことができる。例えば、ポリ(オルトエステル)の加水分解は酸により触
媒される。従って、ポリ(オルトエステル)およびオピオイドアンタゴニストを含むミク
ロスフェアを含有する本経皮的送達デバイスのオピオイド含有部分の経口摂取による乱用
は、胃の酸環境におけるポリマーの分解およびオピオイドアンタゴニストの放出をもたら
す。加えて、ポリサッカライドおよびタンパク質を含むミクロスフェアの分解は、酵素的
切断により触媒される。従って、デキストランを含むミクロスフェアの経皮的送達デバイ
スの経口摂取による乱用は、胃腸管内におけるポリマーの分解およびオピオイドアンタゴ
ニストの放出をもたらす。さらに、乱用者は、ミクロスフェアを含有する経皮用製剤を、
この製剤全体をジエチルエーテル中に浸漬することにより抽出しようとするかもしれない
。本ミクロスフェアはエーテル中で溶解してアンタゴニストを放出し、この液体を乱用に
適さない状態にする。一つの更なる実施形態では、経皮用剤形の口腔内乱用の設定におい
て、唾液が経皮用製剤に浸透してミクロスフェアを溶解し、アンタゴニストを放出するこ
とにより、乱用者にとってのこの経皮用製剤の価値を低減させる。このような実施形態に
おいては、ミクロスフェアは、唾液アミラーゼによって分解するデンプンなどの材料を含
むことができる。
【0025】
特定の好適な実施形態においては、マトリックス層の裏当て層と接している側とは反対
側でマトリックス層と接している別個の粘着層が含められてよい。他の好適な実施形態に
おいては、オピオイドアゴニストとアンタゴニストのミクロスフェアとを含有するマトリ
ックス層が、経皮用粘着剤としても作用する、薬学的に許容可能なポリマーを含んでおり
、本経皮用デバイスを患者の皮膚に接着可能にするための付加的な粘着層は必要でない。
特定の好適な実施形態においては、本経皮的送達デバイスを患者の皮膚に固着するために
使用される粘着層は感圧性接着剤を含んでいる。特定の実施形態においては、本経皮的送
達デバイスは、さらに、マトリックス層または粘着層と接触しており、本経皮的送達デバ
イスを皮膚に適用する前に取り除かれる、取り外し可能な保護層を含んでいる。
【0026】
好適な実施形態においては、本経皮的送達デバイスは、ヒト患者の皮膚に完全な状態で
着けられたときに、2日から8日の期間、効果的な疼痛管理を提供する。
【0027】
特定の実施形態においては、本経皮的送達デバイスは、経皮用パッチ剤、経皮用プラス
ター剤、経皮用ディスク剤、イオントフォレーゼ(iontophoretic)経皮用デバイスなど
である。
【0028】
「徐放性」という用語は、本発明の目的上、少なくとも1日の間、例えば2日から8日
の間、治療学的な範囲内ではあるが、毒性レベル以下の血液(例えば血漿)濃度(レベル
)が達成および維持されるような速度で、経皮的送達デバイスからオピオイドアゴニスト
が放出されることとして定義される。
【0029】
本発明の目的上、「オピオイドアゴニスト」という用語は、「オピオイド」または「オ
ピオイド鎮痛剤」という用語と互換可能であり、オピオイドの塩基および薬学的に許容可
能な塩を含む。また、本発明は、患者体内で(in the patient's device)活性なアゴニ
ストに変換される、オピオイドのプロドラッグ(例えばエーテルまたはエステル)を投与
することも想定している。オピオイドアゴニストは、完全なアゴニスト、アゴニスト混合
アンタゴニスト、または部分的なアゴニストであってよい。
【0030】
本発明の目的上、「オピオイドアンタゴニスト」という用語は、アンタゴニストの塩基
および薬学的に許容可能な塩を含む。また、本発明は、アンタゴニストのプロドラッグを
投与することも想定している。オピオイドアンタゴニストの例は、例えばナロルフィン、
ナロルフィンジニコチナート、ナロキソン、ナルメフェン、シクラゾシン、レバロルファ
ン、ナルトレキソン、ナジド、シクラゾシン、アミフェナゾール、およびそれらの薬学的
に許容可能な塩、ならびにそれらの混合物を含む。
【0031】
「効果的な鎮痛」という用語は、本発明の目的上、ヒト患者により決定された際の、ま
たは認知されている疼痛尺度の使用を通じて決定された際の、疼痛の満足のゆく低減また
は消失として定義される。一つの好適な実施形態においては、効果的な鎮痛は、ヒト患者
により決定された際、何ら副作用を伴わず、または許容可能なレベルの副作用を伴う。
【0032】
本明細書で使用される「ミクロスフェア」という用語は、アンタゴニストを放出不可能
または実質的に放出不可能にさせる働きをする生体適合性ポリマー中に分散された活性物
質(マトリックス型)、または上記ポリマーで被覆された活性物質(マイクロカプセル)
を含有する固体(または半固体)粒子を意味する。「実質的に放出不可能」という用語は
、この剤形が意図通りに経皮的に投与されたときに、放出された量が鎮痛効力に影響を及
ぼさない限り、または有意に影響を及ぼさない限り、少量のアンタゴニストが放出されて
もよいことを意味する。
【0033】
「流量(flux)」という用語は、個人の皮膚を通じる、化学物質、例えばオピオイドア
ゴニストまたはオピオイドアンタゴニストなどの浸透速度を表す。
【0034】
本発明の目的上、「エマルジョン」という用語は、第二の不混和性液体中における第一
の液体の安定した分散を意味する。エマルジョンに関して、「連続相」という用語は、内
相である「分散相」に照らし、外相を意味する。例えば、エマルジョンが「油中水」(w
/o)型のエマルジョンである場合には、油が連続相であり、一方、「水中油」(o/w
)型のエマルジョンでは、水が連続相である。
【0035】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける治療学的特性を
有するオピオイドアゴニストまたはアンタゴニストのあらゆる無毒の適切な塩を意味する
。このような塩の調製は、製薬技術分野における当業者にとって既知である。オピオイド
アゴニストまたはオピオイドアンタゴニストの有用な塩の形態は、数ある中でもとりわけ
、例えば塩酸塩、臭化水素酸、ヨウ化水素酸(hydroiodide)、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸
塩、クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、乳酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩
、コハク酸塩、酢酸塩、パルメエート、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩
、ナプシレート、トシル酸塩(tosylate)、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、ラウリン
酸塩、吉草酸塩を含むことができる。
【0036】
特定の実施形態においては、本発明は、さらに、乱用される可能性が低減されたオピオ
イドアゴニストの経皮的送達デバイスを調製する方法を提示しており、この方法は、本明
細書で開示されているオピオイドアンタゴニストを含む複数のミクロスフェアをオピオイ
ドの経皮用デバイスに組み入れるステップを含む。
【0037】
特定の実施形態においては、本発明は、さらに、疼痛を治療する方法を提示しており、
この方法は、このような治療法を必要とする患者に、本明細書で説明されている経皮的送
達デバイスを適用するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明により調製され、使用される特定のデバイスは、ミクロスフェア中に分散された
オピオイドアンタゴニストを含んでいる。特定の実施形態においては、ミクロスフェア中
に組み入れられるオピオイドアンタゴニストの量は、ミクロスフェア(活性物質(active
)を含む)のうち、約1重量%から約90重量%、または約5重量%から約70重量%、
または約30重量%から約50重量%の範囲である。
【0039】
本発明においては、オピオイドアンタゴニストは、アンタゴニストミクロスフェアを含
むそのままの状態の経皮的送達デバイスを局所的に適用したときに、オピオイドアンタゴ
ニストを放出不可能にすべく、または実質的に放出不可能にすべく、オピオイドの経皮的
送達デバイスにおいて使用するためのミクロスフェアに組み入れられる。これらのミクロ
スフェアは、好適には、高分子物質を含む。オピオイド含有アンタゴニストミクロスフェ
ア(opioid-containing antagonist microspheres)を形成するために使用することがで
きる適切なポリマーは、可溶性、不溶性、生物分解性、および非生物分解性のポリマーを
含む。薬学的に許容可能な無毒のポリマーの使用が好適である。
【0040】
これらのポリマーの物理化学的特徴は、さらに本発明の乱用抵抗性をもたらすべく選択
することができる。例えば、ポリ(オルトエステル)の加水分解は酸により触媒される。
従って、オピオイドアンタゴニストを含むポリ(オルトエステル)のミクロスフェアを含
有した経皮的送達デバイスのオピオイド含有部分を経口的に摂取することによる乱用は、
胃の酸環境におけるこのポリマーの分解およびオピオイドアンタゴニストの放出をもたら
す。ポリサッカライドおよびタンパク質を含むミクロスフェアの分解は酵素的切断により
触媒される。従って、例えば、デキストランのミクロスフェアを含有した経皮的送達デバ
イスのオピオイド含有部分を経口的に摂取することによる乱用は、胃腸管内におけるこの
ポリマーの分解およびオピオイドアンタゴニストの放出をもたらす。
【0041】
本発明のオピオイドアンタゴニスト含有ミクロスフェアのために使用することができる
ポリマーは、一般的に、3つのタイプ、即ち、それらのポリマーの原料に基づき、天然ポ
リマー、半合成ポリマーおよび合成ポリマーに分類することができる。天然の生物分解性
ポリマーは、さらに、タンパク質およびポリサッカライドに分類することができる。
【0042】
代表的な天然誘導ポリマーは、タンパク質、例えばゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼ
ラチン、グルテン、アルブミン、フェチュイン、オロソムコイド、グリコプロテイン、コ
ラーゲン、合成ポリペプチドおよびエラスチンなどを含む。生物分解性の合成ポリペプチ
ドは、例えばポリ−(N−ヒドロキシアルキル)−L−アスパラギン、ポリ−(N−ヒド
ロキシアルキル)−L−グルタミン、ならびにN−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギ
ンおよびN−ヒドロキシアルキル−L−グルタミンと他のアミノ酸、例えばL−アラニン
、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−バリン、L−チロシンなどとのコポリマーを
含む。ポリサッカライド(例えばセルロース、デキストラン、ポリヒアルロン酸、リポポ
リサッカライド)、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、ならびにアルギン酸のポリ
マーも使用することができる。
【0043】
合成により修飾された天然(即ち、半合成)のポリマーは、数ある中でもとりわけ、ア
ルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエ
ステルおよびニトロセルロースを含む。
【0044】
半合成の生物分解性ポリマーは、物理化学的特性、例えば熱ゲル化特性、機械的強度お
よび分解速度などが改変されたポリマーを生成すべく、天然ポリマーを修飾することによ
り製造される。本発明において使用するのに適した半合成の生物分解性ポリマーの例は、
修飾キトサン複合体、硫酸コンドロイチン−Aキトサン複合体および水溶性のホスホリル
化キトサン(P−キトサン)、ならびにそれらの組合せ、例えばアルギナート−キトサン
などを含む。
【0045】
免疫原性が無く、物理化学的特性を高度に再現可能であり、且つ、予測可能であること
が、薬剤送達用途において、合成の生物分解性ポリマーを天然ポリマーよりも好ましいも
のにしている。これらのポリマーは、無毒であり、且つ、生物分解性であり得、送達デバ
イスはこれらのポリマーから調製されてきた。それ故、合成の生物分解性ポリマーは、本
発明のミクロスフェアに特に適していると考えられる。
【0046】
合成の生物分解性ポリマーの非限定的な例は:ポリエステル、ポリエーテル、ポリ(オ
ルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアク
リルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレ
フタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビ
ニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリラクチド、ポリウレタンおよび
それらのコポリマーを含む。ポリエステルの非限定的な例は、ポリ乳酸、ポリグリコール
酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリジオキサノ
ン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ
ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ブテル酸(buteric ac
id))、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ無水物、および上述のポリマ
ーのうちのいずれかを合成するために使用されるモノマーのコポリマー、例えばポリ(乳
酸−コ−グリコール酸)またはポリヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸とのコポリマー(
ZenecaによるBiopol(登録商標))を含む。乳酸とグリコール酸とのコポリマー、例えば
ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)は、薬剤送達デバイス、例えばミクロスフ
ェアなどでの使用について幅広く研究されている。
【0047】
特定の実施形態においては、本ポリマー(例えばPLGA)は、約1KDから約100
KDもしくはそれ以上、約5KDから約60KD、または約10KDから約40KDの分
子量を有することができる。特定の実施形態においては、PLGAの一部(例えば10%
から約90%)は20KD未満または15KD未満の分子量を有することができ、対応す
る残りの部分(例えば90%から10%)は25KD以上または35KD以上の分子量を
有することができる。
【0048】
本発明で使用するためのミクロスフェアの調製において、ポリ(e−カプロラクトン)
を使用することができる。ポリ(e−カプロラクトン)の分解速度は、ポリグリコール酸
またはポリ(乳酸−コ−グリコール酸)のどちらの分解速度よりもずっと遅い。ポリ(e
−カプロラクトン)は、多くの他のポリマーと混合物を形成する格別の能力を有している
。ポリ(e−カプロラクトン)のコポリマーは、薬剤送達デバイスの浸透性および機械的
特性を調節するために使用することができる。
【0049】
ポリエーテルおよびポリ(オルトエステル)も、本発明で使用するためのミクロスフェ
アの調製において使用することができる。これらのポリマーは、多様な分解速度、機械的
強度、多孔度、拡散性および固有粘度を有するブロックポリマーのためのマルチブロック
に組み入れられてきた。ポリエーテルの例はポリエチレングリコールおよびポリプロピレ
ングリコールを含む。マルチブロックコポリマーの一例はポリ(エーテルエステルアミド
)である。さらに、様々な含有量のポリ(エチレングリコール)を含むポリ(オルトエス
テル)のトリブロックコポリマーは、水/油(w/o)型エマルジョン中におけるそれら
の安定性にとって有用であり、ミクロスフェアの調製において使用したときに、ポリ(オ
ルトエステル)よりも高い効力を有している。他の有用なブロックコポリマーは、ポリ(
乳酸−コ−グリコール酸)およびポリ(エチレングリコール)(PEG)のジブロックコ
ポリマー、PEG-PLGA-PEGのトリブロックコポリマー、PLGAおよびポリリシ
ンのコポリマー、ならびにポリ(エステルエーテル)ブロックコポリマーを含む。
【0050】
特定の実施形態においては、本発明を実施するのに有用なミクロスフェアは球形に形作
られ、直径は、約1ミクロンから約500ミクロン、約1ミクロンから約300ミクロン
、約1ミクロンから約200ミクロン、約1ミクロンから約100ミクロン、約300ミ
クロンから約500ミクロン、約200ミクロンから約500ミクロン、約100ミクロ
ンから約500ミクロン、約125ミクロンから約200ミクロン、または約50ミクロ
ンから約100ミクロンである。ミクロスフェアのサイズは、使用されるポリマーのタイ
プに依存性であり得る。特定の実施形態においては、球形であるよりむしろ、ミクロスフ
ェアは不規則に形作られてよく、この場合、直径は、このミクロスフェアの最大断面であ
るとみなされる。
【0051】
特定の実施形態においては、本発明で使用されるミクロスフェアは、ミクロスフェア(
活性物質(active)を含む)のうち、約5重量%から約70重量%の量でオピオイドアン
タゴニストを含む。
【0052】
特定の実施形態においては、オピオイドアンタゴニストは、マイクロカプセル化により
ミクロスフェア中に取り込む(loaded)ことができる。本発明により使用するためのマイ
クロカプセル化の技術は、米国特許第3,161,602号;第3,396,117号;
第3,270,100号;第3,405,070号;第3,341,466号;第3,5
67,650号;第3,875,074号;第4,652,441号;第5,100,6
69号;第4,438,253号;第4,391,909号;第4,145,184号;
第4,277,364号;第5,288,502号;および第5,665,428号に記
載されている。さらに、ミクロスフェアは、例えば
E. Mathiowitzらによる、J. Scanning Microscopy, 4, 329 (1990); L
. R. Beckらによる、Fertil. Steril., 31, 545 (1979);およびS. Ben
itaらによる、J. Pharm. Sci. 73, 1721 (1984)に記載の溶媒蒸発法;もしくは例えば
E. Mathowitzらによる、Reactive Polymers 6, 275 (1987)に記載のホット
メルトマイクロカプセル化法;または噴霧乾燥法のいずれかにより調製することもできる
。ミクロスフェアは、これらに限定するものではないが、コアセルベーション法、相分離
法、溶媒蒸発法、噴霧乾燥法、噴霧凝結法、パンコーティング法、流動床コーティング法
などを含め、当該技術分野において周知のあらゆる方法により調製されてよい。
【0053】
本発明の目的上、マイクロカプセルは、内容物をフィルムで封入する小さな容器として
機能的に説明される。当該フィルムは、上述のような合成、半合成または天然のポリマー
で調製されていてよく、内容物の放出を調節する(または放出させない)ことができる。
マイクロカプセルからの内容物の放出速度は、主に、カプセルフィルムの化学的構造およ
び厚み、ならびにマイクロカプセルのサイズによって決まる。マイクロカプセル製剤にお
いては、オピオイドアンタゴニストの小さな固体粒子は、有機ポリマー、ヒドロコロイド
、糖、ワックス、脂肪、金属または無機酸化物からなる被膜で被覆することができる。
【0054】
特定の実施形態においては、オピオイドアンタゴニストは、油/水(o/w)型エマル
ジョン、水/油(w/o)型エマルジョン、油/油(o/o)型エマルジョン、油/水/
油(o/w/o)型エマルジョン、油/水/水(o/w/w)型エマルジョン、水/油/
水(w/o/w)型エマルジョンまたは水/油/油(w/o/o)型エマルジョンなどを
用いてミクロスフェアに組み入れられる。
【0055】
特定の実施形態においては、オピオイドアンタゴニストは、不揮発性油および水溶性オ
ピオイドアンタゴニストの水溶液のマイクロエマルジョン化によりミクロスフェアに組み
入れられる。このエマルジョンは「油中水」型である。エマルジョンが「油中水」型であ
るときには、水が連続相である「水中油」型デバイスとは反対に、油が連続相または外相
であり、水が「分散」相または内相である。
【0056】
特定の好適な実施形態においては、オピオイドアンタゴニストは、w/o/wなどの多
相乳化デバイスによりミクロスフェアに組み入れられてよい。オピオイドアンタゴニスト
は、多重エマルジョン溶媒蒸発法により調製された多相ミクロスフェアに組み入れられて
よい。この技術においては、オピオイドアンタゴニストは、乳化プロセスにより、生物分
解性の高分子ミクロスフェアに組み入れられる。このデバイスは、水溶性のオピオイドア
ンタゴニストおよび水に不溶性のオピオイドアンタゴニストのどちらにも適している。
【0057】
本発明のミクロスフェアは、オピオイドアンタゴニストが高分子マトリックス中におけ
る油性液滴として分散されている、多相の高分子ミクロスフェアであってよい。これらの
ミクロスフェアは、米国特許第5,288,502号に記載の多重エマルジョン溶媒蒸発
法により調製することができる。この特許は多重エマルジョン溶媒法について開示してお
り、薬剤は、油性液滴内に保護されており、ポリマー、有機溶媒および他の潜在的な変性
剤との接触が回避されている。
【0058】
多重エマルジョンは、油分散相の滴自体が水性連続相と同一の液体から成るより小さな
水性分散液滴を含んでいるデバイスである。多重エマルジョンは、薬剤を封入し、且つ、
封入された薬剤を保護する高い能力を有し、さらには、互いに相容れない物質を同じデバ
イス内に導入することができ、且つ、放出を延長させることができるエマルジョンである

【0059】
数ある中でもとりわけ、ベニバナ油、ダイズ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油または
タラの肝油を含め、あらゆる様々な不揮発性油をミクロスフェアの調製において使用する
ことができる。特定の好適な実施形態においては、ダイズ油、ゴマ油またはベニバナ油が
使用される。この油相はイソへキサデカンまたは液体パラフィンからなるものであってよ
い。油分濃度はエマルジョンの安定性に影響を及ぼす。安定性は、油分百分率が、全エマ
ルジョンのうち、好適には20〜30%w/wの範囲にあるときに最適になる。
【0060】
多重エマルジョンプロセスにおいて、有機相は、オピオイドアンタゴニストおよび高分
子材料を含有するエマルジョンを調製することにより調製されてよい。好適には、オピオ
イドアンタゴニストは、塩化メチレンまたは酢酸エチルのいずれかにおける有機ポリマー
溶液中に分散される。結果として生じる一次的なw/oエマルジョンは、この後、高分子
マトリックス材料中のオピオイドアンタゴニストを含有するミクロスフェアを含む第二の
エマルジョンを形成すべく、外部水性相中に分散される(即ち、外相中への乳化)。その
後のプロセスステップは、o/w法の場合と同様である。薬剤を内部水性相中に溶解する
ステップは排除される。これに加え、内部薬剤相が、薬剤溶液ではなく、固体粒子のみか
ら成っているため、理論上、より高度な薬剤の取込みが達成される。
【0061】
さらに別の実施形態においては、o/wエマルジョンプロセスを利用して、ミクロスフ
ェアにオピオイドアンタゴニストを組み入れることができる。o/w分散法の場合、オピ
オイドアンタゴニストは、ポリマー相中に分散され、続いて、外部水性相中で乳化される
。この後、これらのミクロスフェアは、湿式篩い分け(wet sieving)により外部水性相
から分離され、続いて、洗浄され、デシケーターで乾燥される。
【0062】
特定の実施形態においては、本発明は、液体または固体の物質をポリマーによってカプ
セル化できるようにするカプセル化法を利用する。特定の好適な実施形態においては、オ
ピオイドアンタゴニストは結晶の形態を成している。これらの結晶性オピオイドアンタゴ
ニスト粒子は、溶媒蒸気にさらすことによる固体結晶化法によって形成されてよい。結晶
の形態は、調製物の含水量を低減することができ、従って、オピオイドアンタゴニストの
安定性を保持することができる。この結晶を不揮発性油中にカプセル化し、分散油中にお
けるポリマーおよび溶媒の溶液と混合することができる。Savoirに付与された米国
特許第6,287,693号は、ミクロスフェアの形態にされ、保存安定性を達成する、
結晶性有機化合物の安定した形状の粒子を開示している。代替的に、有機化合物の結晶性
粒子を生成するためのあらゆる適切な方法を用いることができる。
【0063】
エマルジョンデバイスの安定性および放出特性は、数多くの要因、例えばエマルジョン
の組成、液滴のサイズ、粘度、相の体積およびpHなどにより影響される。オピオイドア
ンタゴニストのカプセル化の有効性は、カプセル化プロセス中の抽出媒質(クエンチ溶液
)の体積、温度および化学的組成を変えることによってポリマーからの薬剤の移動を最小
化することにより最適化することができる。クエンチ溶液の目的は、プロセッシング中に
、ミクロスフェアから殆どの有機溶媒を取り除くことである。
【0064】
クエンチ液体は淡水、水溶液、または他の適切な液体であってよく、また、クエンチ液
体の体積、量およびタイプはエマルジョン相中の溶媒に依存する。クエンチ液体の体積は
、飽和体積の10倍のオーダーである(即ち、エマルジョン中の溶媒の体積を完全に吸収
するのに必要なクエンチ体積の10倍)。クエンチ体積は、飽和体積の約2倍から約20
倍の範囲で変わり得る。
【0065】
クエンチング後、ミクロスフェアは、例えばデカンテーションまたは篩いカラムを用い
る濾過により、水性クエンチ溶液から分離される。様々な他の分離技術を用いることがで
きる。
【0066】
ミクロスフェア中に残留した溶媒は分解プロセスを加速し、これにより貯蔵寿命を短縮
させる。従って、好適には、ミクロスフェアは、残留した溶媒をさらに除去するため、好
適には約0.2%から約2.0%またはそれ以下のレベルにまで除去するため、水、また
はミクロスフェアと混和性の溶媒によって、洗浄される。脂肪族アルコール、例えばメタ
ノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびそれらのアイソマーなどが、洗
浄溶液において使用するのに好適である。最も好適なものはエタノールである。
【0067】
代替的に、溶媒の除去は、蒸発により果たすこともできる。溶媒蒸発法が用いられる実
施形態においては、ポリマーを揮発性有機溶媒中に溶解することができる。オピオイドア
ンタゴニストは、選定されたポリマーおよび塩化メチレンのような揮発性有機溶媒の溶液
中に分散または溶解され、結果として生じた分散液または溶液は、表面活性剤、例えばポ
リ(ビニルアルコール)などを含有する水溶液中に懸濁され、温度勾配を用いて溶媒が除
去される。
【0068】
溶媒蒸発法は、共溶媒デバイス中にオピオイドアンタゴニストおよびポリマーを溶解す
ることを含み得る。しかし、許容されない有機溶媒の組み込みを除外する代替的な方法を
用いることもできる。結果として生じたエマルジョンは、固体のミクロスフェアを残して
殆どの有機溶媒が蒸発するまで攪拌される。この溶液にオピオイドアンタゴニストを取り
込み、1%(w/v)のポリ(ビニルアルコール)を含有する200mlの激しく攪拌さ
れた蒸留水中に懸濁させることができる。4時間の攪拌後、ポリマーから有機溶媒が蒸発
し、結果として生じたミクロスフェアを水で洗浄し、凍結乾燥器中で一晩乾燥させること
ができる。
【0069】
噴霧乾燥法が用いられる実施形態においては、ポリマーを塩化メチレン中に溶解するこ
とができる。既知量の薬剤がこのポリマー溶液中に懸濁され(オピオイドアンタゴニスト
が不溶性の場合)、または共溶解される(オピオイドアンタゴニストが可溶性の場合)。
次いで、この分散の溶液が噴霧乾燥される。この方法は、1〜10ミクロンの間の小さな
ミクロスフェアに対して使用される。
【0070】
特定の実施形態においては、ホットメルトカプセル化法を用いることができる。この方
法を用いる場合、ポリマーが先ず融かされ、この後、50ミクロン未満に篩い分けされた
薬剤の固体粒子と混合される。この混合物が非混和性溶媒中に懸濁され、連続的に攪拌し
ながら、ポリマーの融点を5℃上回る温度にまで加熱する。エマルジョンが安定化された
後、ポリマー粒子が固化するまで冷却する。結果として生じたミクロスフェアを、石油エ
ーテルを用いるデカンテーションで洗浄することにより、自由流動性の粉末を得る。この
技術は、高い融点および種々の異なる分子量を有するポリエステル、ポリ無水物およびポ
リマーに対して使用される。このプロセスにおけるミクロスフェアの典型的な収率は約8
0〜90%である。結果として生じるミクロスフェアはコア−シェル構造を有している。
【0071】
オピオイドアンタゴニストを含有するミクロスフェアを作製するため、有機または油性
(不連続)相と水性相とを組み合わせることができる。これらの有機および水性相は、エ
マルジョンの連続相を構成している水性相とは大体または実質的に不混和性である。有機
相は活性物質および壁形成ポリマー、即ち、高分子マトリックス材料を含む。有機相は、
活性なオピオイドアンタゴニストを一つまたは複数の有機溶媒中に分散させることにより
調製される。好適には、これらの有機および水性相は、混合手段の影響下において、好適
には静的ミキサーの下で化合される。
【0072】
本発明に有用なオピオイドアンタゴニストは、これらに限定するものではないが、ナロ
ルフィン、ナロルフィンジニコチナート、ナロキソン、ナルメフェン、シクラゾシン、レ
バロルファン、ナルトレキソン、ナジド、シクラゾシン、アミフェナゾール、およびそれ
らの薬学的に許容可能な塩、ならびにそれらの混合物を含む。好適には、オピオイドアン
タゴニストは、経口投与可能なアンタゴニスト、例えばナルトレキソンまたはナルトレキ
ソンの薬学的に許容可能な塩である。体内に吸収され利用され得るアンタゴニストを使用
することにより、本経皮用デバイスは、経口的な乱用と非経口的な乱用の両方を抑止する

【0073】
オピオイドアンタゴニストを含有したミクロスフェアの形成後、これらのミクロスフェ
アは、オピオイドアゴニストを含有した経皮的送達デバイスに組み入れられる。好適には
、ミクロスフェアは、オピオイドアゴニスト含有調製物のバルク(bulk)から実質的に識
別できるような仕方で経皮的送達デバイスに含められる(例えば、ミクロスフェアをマト
リックス型送達デバイスのマトリックス中に埋め込むことができる)。特定の実施形態に
おいては、オピオイドアゴニストはヒト皮膚を通じて吸収され得る形態であり、即ち、こ
のオピオイドアゴニストは経皮的な経路を介して効果的に投与することができる。幾つか
の実施形態においては、経皮的な吸収を促進するため、吸収促進剤をさらに提供する必要
があり得る。
【0074】
本発明の経皮的送達デバイスにおいては、オピオイドアゴニストは、無傷の皮膚表面に
おける典型的には50nm未満の細孔を通過する吸収用に使用し、長期間にわたって持続
的な治療学的レベルを提供することができる。本発明により調製された経皮的送達デバイ
スは、一次薬物速度論(例えば、オピオイドアゴニストの血漿濃度が特定の期間にわたっ
て増加する場合)に従って、もしくはゼロ次薬物速度論(例えば、血漿濃度が、特定の期
間にわたり、比較的一定したレベルに維持される場合)に従って、または一次およびゼロ
次の両方の薬物速度論に従って、オピオイドアゴニストを放出してよい。
【0075】
本発明の経皮的送達デバイスにおいて使用するために選択され得るオピオイドアゴニス
トは、あらゆるオピオイドアゴニスト、混合アゴニスト−アンタゴニスト、または部分的
なアゴニストを含み、これらに限定するものではないが、アルフェンタニル、アリルプロ
ジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノ
ルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルフィン、デキストロモ
ラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフ
ィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチ
ルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン
、エチルモルフィン、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモ
ルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフ
ェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタ
ドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファ
ノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン、ノルモルフィン、ノルピパノン、
アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン
、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロ
フェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、レミフェンタニル、ス
フェンタニル、チリジン、トラマドール、それらの薬学的に許容可能な塩、それらの混合
物などを含む。
【0076】
好適な実施形態においては、オピオイドアゴニストは、経皮的に投与可能な形態のフェ
ンタニル、ブプレノルフィン、スフェンタニル、ヒドロコドン、モルヒネ、ヒドロモルホ
ン、オキシコドン、コデイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、オキシモルホ
ン、ジヒドロコデイン、トラマドール、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの
混合物からなる群より選択される。
【0077】
少なくとも1日の間、例えば2日から8日の間にわたり、1つまたは複数の所望の薬物
動態学的または薬力学的応答が得られる限り、あらゆるタイプの経皮的送達デバイスを本
発明の方法により使用することができる。好適な経皮的送達デバイスは、例えば経皮用パ
ッチ剤、経皮用プラスター剤、経皮用ディスク剤などを含む。
【0078】
好適な実施形態においては、本発明の経皮的薬剤送達デバイスはパッチ剤、典型的には
約1から約30平方センチメートルの範囲のパッチ剤、好適には2から10平方センチメ
ートルの範囲のパッチ剤である。本明細書で使用する場合、「パッチ剤」という用語は、
裏当てメンバーと患者の皮膚への接着を可能にする感圧性粘着面表面とを有するあらゆる
製品を含む。このような製品は、様々なサイズおよび形状、例えばテープ、包帯、シート
などの形状で提供することができる。
【0079】
本発明の経皮的送達デバイスにおいては、オピオイドアゴニストは、好適には、マトリ
ックス(例えばポリマーマトリックス)全体にわたって分散される。このようなマトリッ
クス型デバイスにおいては、オピオイドアゴニストの放出は、主に、ポリマーからのオピ
オイドアゴニストの拡散により、もしくはオピオイドアゴニストを放出するためのポリマ
ーの浸食により、またはこれら二つのメカニズムの組合せにより調節することができる。
オピオイドアゴニストの拡散がポリマーの浸食よりも速い場合、薬剤の放出は拡散により
調節される。ポリマーの浸食がオピオイドアゴニストの拡散よりも速いときには、薬剤の
放出はポリマーの浸食により調節される。本送達デバイスが表面浸食ポリマーを用いて調
製される場合には、薬剤の放出は、本デバイスに取り込まれる薬剤の量を変えることによ
り及び/又は本送達デバイスの幾何学的寸法を変えることにより調節することができる。
【0080】
一般的に、本経皮的送達デバイスのポリマーマトリックスにおいて使用されるポリマー
は、オピオイドアゴニストが制御された速度で通過できる薄壁または被膜を形成すること
ができるポリマーである。ポリマーマトリックスの調製において使用するためのこのよう
なポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、
エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、シリコン、
ゴム、ゴム様合成ホモ-、コ-またはブロックポリマー、ポリアクリル酸エステルおよびポ
リアクリル酸エステルのコポリマー、ポリウレタン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチ
レン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリメタクリレートポリマ
ー(ヒドロゲル)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチレン-
ビニルアルコールコポリマー、エチレン-ビニルオキシエタノールコポリマー、シリコン
コポリマー、例えばポリシロキサン-ポリメタクリレートコポリマーなどを含むシリコン
、セルロースポリマー(例えばエチルセルロースおよびセルロースエステル)、ポリカー
ボネート、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの混合物を含む。
【0081】
ポリマーマトリックスの調製において使用するための好適な材料は、一般的なポリジメ
チルシロキサン構造のシリコンエラストマー(例えばシリコンポリマー)である。好適な
シリコンポリマーは、架橋し、薬学的に許容可能なシリコンポリマーである。例えば、ポ
リマーマトリックス層の調製において使用するための好適な材料は、適切な過酸化物触媒
を用いて架橋することができるジメチル及び/又はジメチルビニルシロキサン単位を有す
る架橋可能なコポリマーであるシリコンポリマーを含む。また、スチレンおよび1,3−
ジエンをベースとしたブロックコポリマー(特に、スチレン-ブタジエン-ブロックコポリ
マーの直鎖状スチレン-イソプレン-ブロックコポリマー)からなるポリマー、ポリイソブ
チレン、アクリレート及び/又はメタクリレートをベースとしたポリマーも好適である。
【0082】
特定の実施形態においては、ポリマーマトリックスは薬学的に許容可能な架橋剤を含む
。適切な架橋剤は、数ある中でもとりわけ、例えばテトラプロポキシシランを含む。
【0083】
本発明の特定の実施形態は、オピオイドアンタゴニストの混合ミクロスフェアと共にオ
ピオイドアゴニストを包含したポリマーマトリックス層を含む。好適には、オピオイドア
ンタゴニストが体内に吸収され利用され得るようになるためには、ミクロスフェアの完全
性が破壊されなければならない。ポリマーマトリックスとミクロスフェアとの組合せは、
そのままの状態のデバイスにおける、マトリックス内に埋め込まれたミクロスフェアから
のオピオイドアンタゴニストの放出を防止する。ミクロスフェアからのオピオイドアンタ
ゴニストの放出は、ミクロスフェア上のポリマーコーティングによりさらに防止すること
ができる。
【0084】
好適には、本発明の経皮的送達デバイスは、オピオイドアゴニストに対して不浸透性の
、薬学的に許容可能な材料でできた裏当て層を含む。この裏当て層は、好適には、オピオ
イドアゴニストに対する保護カバーとして機能し、また、支持機能も提供する。裏当て層
を作るのに適した材料の例は、高密度および低密度のポリエチレンフィルム、ポリプロピ
レンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリ(エチレンフタレ
ート)などのポリエステルフィルム、金属ホイル、このような適切なポリマーフィルムの
金属ホイルラミネート、および織物である。好適には、裏当て層に使用される材料は、こ
のようなポリマーフィルムと金属ホイル、例えばアルミニウムホイルなどとのラミネート
である。裏当て層は、望ましい保護機能および支持機能をもたらすあらゆる適切な厚みで
あってよい。適切な厚みは、例えば約10ミクロンから約200ミクロンである。
【0085】
特定の代替的実施形態においては、本発明の経皮的送達デバイスは、貯蔵部に収容され
たミクロスフェアを含むことができる。このような貯蔵デバイスにおいては、オピオイド
アゴニストおよびオピオイドアンタゴニストのミクロスフェアは貯蔵部(例えば液体また
はゲルの貯蔵部)中に分散されていて、速度制限用の生物分解性膜がこれらの薬剤の流路
に設けられており、これにより、オピオイドアゴニストの皮膚への流量を制限することが
できる。このようなデバイスは、オピオイドアゴニストの一定した放出速度をもたらすが
、オピオイドアンタゴニストの放出を防止する機能を果たすことができる。また、貯蔵デ
バイスを利用する経皮的送達デバイスは裏当て層および、場合によって、マトリックス型
デバイスに関して上述のように、取り外し可能な保護層も有することができる。
【0086】
本発明の方法により使用される好適な経皮的送達デバイスは、好ましくは、さらに、所
望の投与期間、例えば2日から8日の間、本送達デバイスを患者の皮膚に固着しておくた
めの粘着層を含んでいる。この送達デバイスの粘着層が所望の期間にわたる適切に固着し
ない場合には、例えば本送達デバイスを患者の皮膚に粘着テープで、例えば外科手術用テ
ープで固定することにより、本送達デバイスと皮膚との間の接触を維持することができる
。本発明の目的上、必要な投与期間の間、本送達デバイスが患者の皮膚に付着されている
ことを条件として、患者の皮膚への本送達デバイスの固着が、本送達デバイスの粘着層の
みで達成されるのか、または外部的な固着手段(adhesive source)、例えば外科手術用
テープなどを使用することにより達成されるのかは、重要でない。しかし、あらゆる場合
において、固着は、治療を必要とする患者の皮膚に本パッチ剤をしっかりと付着させるこ
とができるが、このパッチ剤を取り外したときに患者に損傷を及ぼすほど強力に付着して
いるものであってはならない。
【0087】
粘着層は、本送達デバイスと薬学的に適合する、当技術分野において既知のあらゆる粘
着剤から選択することができる。粘着剤は、好適には、低アレルゲン性である。粘着剤の
例は、ポリアクリル酸粘着性ポリマー、アクリレートコポリマー(例えばポリアクリレー
ト)またはポリイソブチレン粘着性ポリマーを含む。他の有用な粘着剤は、シリコン、ポ
リイソアルキレン、ゴム、酢酸ビニル、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン(または
イソプレン)-スチレンブロックコポリマーゴム、アクリルゴムおよび天然ゴム;ビニル
をベースとした高分子量物質、例えばポリビニルアルキルエーテル、ポリ酢酸ビニルなど
;セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒド
ロキシプロピルセルロースなど;ポリサッカライド、例えばプルラン、デキストリンおよ
び寒天など;ならびにポリウレタンエラストマーおよびポリエステルエラストマーを含む
。これらの粘着剤のうち、多くのものは互いに交換可能であるが、特定のオピオイド鎮痛
剤と特定の粘着剤との幾つかの組合せは僅かに優れた特性をもたらし得る。
【0088】
幾つかの実施形態においては、この粘着剤は、好適には低アレルゲン性の、感圧性コン
タクト接着剤である。
【0089】
特定の実施形態においては、この経皮的薬剤送達材料は、薬剤含有マトリックスと粘着
剤との両方の機能を提供する。別個の粘着層を伴う特定の実施形態においては、薬剤は、
複数の異なる層によりもたらされる種々の異なる環境に対する薬剤の相対的親和性により
、すべての層(裏当て層を例外として)に隈無く分配される。このマトリックス「層」は
、送達特性を最適化すべく調節された複数の異なる層にオピオイドを取込み、オピオイド
アンタゴニスト含有ミクロスフェアが全体に分散された状態の、一つより多くのサブ層か
ら構成されていてよい。このような実施形態においては、薬剤を含有するマトリックスが
皮膚と直接的に接触し、経皮的送達デバイスは、辺縁の粘着剤またはマトリックス自体に
より皮膚に保持される。
【0090】
特定の実施形態においては、本発明の経皮的送達デバイスは、場合によって、透過促進
剤を含む。透過促進剤は、皮膚を介した患者の血流中へのオピオイドアゴニストの浸透及
び/又は吸収を促進する化合物である。これらの透過促進剤の結果として、殆どのあらゆ
る薬剤を、ある程度まで、経皮的に投与することができる。透過促進剤は、一般的に、一
価の分枝状もしくは非分枝状の脂肪族、脂環式または芳香族の4〜12個の炭素原子のア
ルコール;脂環式もしくは芳香族の4〜10個の炭素原子のアルデヒドまたはケトン、C
10-20炭素のシクロアルカノイルアミド、脂肪族、脂環式および芳香族のエステル、N,N
-ジ-低級アルキルスルホキシド、不飽和油、テルペンおよびグリコールシリカートの群よ
りの化合物であることを特徴とする。透過促進剤の非限定的リストは、ポリエチレングリ
コール、界面活性剤などを含む。
【0091】
オピオイドアゴニストの浸透は、患者の望ましい部位への適用後、例えば密封包帯を用
いて送達デバイスを塞ぐことによっても促進させることができる。また、浸透は、例えば
刈り込み、剃り込み、または脱毛剤の使用により適用部位から毛を除去することによって
も促進させることができる。浸透を促進させる別の手法は、固着されたパッチ剤の部位に
熱を加えること、例えば赤外線ランプを用いるなどして熱を加えることによる方法である
。オピオイドアゴニストの浸透を促進させる他の手法は、イオントフォレーゼ手段の使用
を含む。
【0092】
特定の実施形態においては、本経皮的送達デバイスは、薬剤の吸収を促進させるべく固
着部位における皮膚を改質(modify)するための軟化剤を含む。適切な軟化剤は、高級ア
ルコール、例えばドデカノール、ウンデカノール、オクタノール、カルボン酸のエステル
などを含み、ここで、このアルコール成分は、ポリエトキシル化アルコール、ジカルボン
酸のジエステル、例えばジ-n-ブチルアジパートなど、およびトリグリセリド、特にカプ
リル酸/カプリン酸の中鎖トリグリセリドまたはヤシ油であってもよい。適切な軟化剤の
更なる例は、多価アルコール、例えばレブリン酸、カプリル酸、グリセロールおよび1,
2−プロパンジオールであり、また、これらの多価アルコールはポリエチレングリコール
によりエーテル化されていてもよい。
【0093】
特定の実施形態においては、オピオイドアゴニスト用の溶媒が本発明の経皮的送達デバ
イスに含まれている。好適には、この溶媒はオピオイドアゴニストを充分な程度にまで溶
解し、これにより、完全な塩の形成を回避することができる。適切な溶媒の非限定的なリ
ストは、少なくとも一つの酸性基を有する溶媒を含む。ジカルボン酸のモノエステル、例
えばモノメチルグルタレートおよびモノメチルアジパートなどが特に適している。
【0094】
本発明の経皮的送達デバイスに含まれ得る他の薬学的に許容可能な化合物は、粘度増強
剤、例えばセルロース誘導体、天然または合成のゴム、例えばグアーガムなどを含む。
【0095】
本発明の特定の実施形態においては、経皮的送達デバイスは、さらに、取り外し可能な
保護層を含む。この取り外し可能な保護層は、適用前に除去され、例えばシリコン処理に
より、取り外し可能にされることを条件として、上述の裏当て層の作成で使用された材料
から成っていてよい。取り外し可能な保護層の他の例は、ポリテトラ−フルオロエチレン
、表面加工紙、アロフェン、ポリ塩化ビニルなどである。一般的に、取り外し可能な保護
層は粘着層と接しており、所望の適用時まで粘着層の完全性を維持する便利な手段を提供
する。
【0096】
経皮的送達デバイスの技術分野においては、所望の投与期間にわたって望ましい流動速
度(flux rate)を維持するためには、所望の期間にわたって患者に送達すべき量よりも
実質的に多い量における「過多量」の活性物質を経皮的送達デバイスに含める必要がある
ことが広く理解されている。例えば、3日間望ましい流動速度を維持するためには、活性
物質の3日分の用量の100%となる量よりもずっと多い量を経皮的送達デバイスに含め
ることが必要であると考えられる。活性物質の余った量はこの経皮的送達デバイスに残る
。経皮的送達デバイスから抜け出た一部の活性物質のみが皮膚内への吸収に利用できるよ
うになる。
【0097】
「過多量」という用語は、本発明の目的上、患者へ送達されない、経皮的送達デバイス
に含有されているオピオイド鎮痛剤の量を意味する。この過多量は、充分な濃度勾配を創
出するために必要であり、この充分な濃度勾配により、活性物質は、充分な治療学的効果
をもたらすべく、経皮的送達デバイスから患者の皮膚を通して移動する。
【0098】
好適には、本発明の経皮的送達デバイスは、ミクロスフェアに含有されているオピオイ
ドアンタゴニストを放出不可能な状態または実質的に放出不可能な状態に留めたまま、長
期間にわたり、患者に一定またはパルス的な仕方でオピオイドアゴニストを投与および放
出するために使用される。
【0099】
オピオイドアゴニストと組み合わせて含められ得る非オピオイド鎮痛剤は、例えばアセ
トアミノフェン、フェナセチンおよび非ステロイド性抗炎症薬である。適切な非ステロイ
ド性抗炎症薬は、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキ
サプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン
、インドプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフ
ェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チア
プロフェン酸、フルプロフェン、ブクロクス酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチ
ン、ゾメピラク、チオピナク、ジトメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナ
ク、オキシピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、ト
ルフェナム酸、ジフルリサル、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカムまたはイソ
キシカム、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの混合物を含む。他の適切な非
ステロイド性抗炎症薬は、cox−2阻害剤、例えばセレコキシブ、DUP−697、フ
ロスリド、メロキシカム、6−MNA、L−745337、ロフェコキシブ、ナブメトン
、ニメスリド、NS−398、SC−5766、T−614、L−768277、GR−
253035、JTE−522、RS−57067−000、SC−58125、SC−
078、PD−138387、NS−398、フロスリド、D−1367、SC−576
6、PD−164387、エトリコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、それらの薬
学的に許容可能な塩、およびそれらの混合物などを含む。
【0100】
オピオイドアゴニストと組み合わせられ得る他の活性物質は、例えば制吐薬/抗めまい
薬、例えばクロルプロマジン、ペルフェナジン、トリフルプロマジン、プロクロルペラジ
ン、トリエチルペラジン、メトクロプロプラミド、シクリジン、メクリジン、スコポラミ
ン、ジフェンヒドラミン、ブクリジン、ジメンヒドレートおよびトリメトベンズアミドな
ど;5−HT3受容体アンタゴニスト、例えばオンダンセトロン、グラニセトロンおよび
ドラセトロンなど;抗不安薬、例えばメプロバメート、ベンゾジアゼピン、ブスピロン、
ヒドロキシジンおよびドキセピンなどであってよい。
【0101】
これまでに知られている経皮的送達デバイスが、そのようなデバイスの乱用の可能性を
低減させるため、上述の通りのオピオイド−アンタゴニスト−含有ミクロスフェアをマト
リックス層、貯蔵層及び/又は粘着層に含めることにより改変され得ることが想定されて
いる。例えば、本発明に従って使用するための経皮的送達デバイスは、Hilleらに付
与された米国特許第5,240,711号;Hidakaらに付与された米国特許第5,
225,199号;Galeらに付与された米国特許第4,588,580号;Shar
maらに付与された米国特許第5,069,909号;Chienらに付与された米国特
許第4,806,341号;Drustらに付与された米国特許第5,026,556号
;およびMcQuinn,R.L.らによる、「Sustained Oral Mucosal Delivery in H
uman Volunteers」J. Controlled Release; (34) 1995 (243-250)に記載されている特定
の態様を利用することができる。
【0102】
また、本発明は、活性物質の乱用を防止するため、種々の異なる活性物質/アンタゴニ
ストの組合せ(即ち、非オピオイド)を使用する、本明細書で開示されている経皮用剤形
も提示している。例えば、本発明の経皮用剤形における活性物質としてベンゾジアゼピン
が使用されるときには、放出不可能なベンゾジアゼピンアンタゴニストを本経皮用剤形に
おいて調合することができる。本発明の経皮用剤形における活性物質としてバルビツレー
トが使用されるときには、放出不可能なバルビツレートアンタゴニストを本経皮用剤形に
おいて調合することができる。本発明の経皮用剤形における活性物質としてアンフェタミ
ンが使用されるときには、放出不可能なアンフェタミンアンタゴニストを本経皮用剤形に
おいて調合することができる。
【0103】
「ベンゾジアゼピン」という用語は、ベンゾジアゼピンおよび、中枢神経系を抑制する
ことができるベンゾジアゼピンの誘導体である薬剤を表す。ベンゾジアゼピンは、これら
に限定するものではないが、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシード(
chlordiazepoxied)、クロラゼパート、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラ
ゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパ
ム、テマゼパム、トリアゾラム、メチルフェニダートおよびそれらの混合物を含む。
【0104】
本発明で使用することができるベンゾジアゼピンアンタゴニストは、これに限定するも
のではないが、フルマゼニルを含む。
【0105】
バルビツレートは、バルビツール酸(2,4,6-トリオキソヘキサヒドロピリミジン)
から誘導された鎮静−催眠薬を表す。バルビツレートは、これらに限定するものではない
が、アモバルビタール、アプロバルボタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メト
ヘキシタール、メホバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビ
タール、セコバルビタールおよびそれらの混合物を含む。
【0106】
本発明で使用することができるバルビツレートアンタゴニストは、これらに限定するも
のではないが、本明細書で説明されている通りのアンフェタミンを含む。
【0107】
興奮誘発剤は、中枢神経系を刺激する薬剤を表す。興奮誘発剤は、これらに限定するも
のではないが、アンフェタミン類、例えばアンフェタミン、デキストロアンフェタミン樹
脂複合体、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニダートおよびそ
れらの混合物などを含む。
【0108】
本発明で使用することができる興奮誘発剤アンタゴニストは、これらに限定するもので
はないが、本明細書で説明されている通りのベンゾジアゼピンを含む。
【0109】
また、本発明は、活性物質の乱用を防止するため、アンタゴニスト以外の逆作用(adve
rse)物質を利用する、本明細書で開示されている経皮用剤形も提示している。「逆作用
物質」という用語は、放出可能な形態で投与されたときに不快な影響を創出することがで
きるあらゆる物質を表す。アンタゴニスト以外の逆作用物質の例は、催吐剤、刺激剤およ
び苦味剤を含む。
【0110】
催吐剤は、これらに限定するものではないが、トコンおよびアポモルフィンを含む。
【0111】
刺激剤は、これらに限定するものではないが、カプサイシン、カプサイシン類似体およ
びそれらの混合物を含む。カプサイシン類似体は、レジニフェラトキシン、チニアトキシ
ン、ヘプタノイルイソブチルアミド、ヘプタノイルグアヤシルアミド、他のイソブチルア
ミド類またはグアヤシルアミド類、ジヒドロカプサイシン、ホモバニリルオクチルエステ
ル、ノナノイルバニリルアミドおよびそれらの混合物を含む。
【0112】
苦味剤は、これらに限定するものではないが、芳香油;香味芳香族化合物;含油樹脂;
植物、葉、花から誘導された抽出物;果実風味剤;スクロース誘導体;クロロスクロース
誘導体;硫酸キニーネ;デナトニウムベンゾエート;およびそれらの組合せを含む。
【0113】
以下の実施例は、いかなる仕方においても本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0114】
この実施例に開示されている手順を用いて、様々な分子量のラクチド/グリコリド(6
5:35)ポリマー(40KD、0.01%の塩化カルシウムを含む40KD、40KD
および低分子量(約10KD)の50:50混合物、ならびに11KD)を使用し、多数
バッチのナルトレキソン取込みミクロスフェアを調製した。
【0115】
ナルトレキソン取込みミクロスフェアは、水中油中水(w/o/w)型二重エマルジョ
ン溶媒抽出/蒸発法を用いて製作された。このプロセスにおいて、ナルトレキソンを、乳
化剤として0.05%(w/v)のポリビニルアルコール(PVA)を含有するリン酸緩
衝生理食塩水(PBS)(pH 7.4)中に溶解し、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)
(PLGA)を含有する酢酸エチルと混合した。この乳化は、15秒間の超音波処理によ
り実施された。結果として生じたエマルジョンを、さらに、二重w/o/wエマルジョン
を生成すべく、乳化剤として0.05%(w/v)のPVAを含有するPBS(pH 7
.4)中に注入した。次いで、この分散液を一定温度で30分間攪拌した。この第一エマ
ルジョンから酢酸エチルを外相中に抽出するため、0.05%(w/v)のPVAを含有
する第二の緩衝溶液(pH 7.4)を3ml/分の速度で連続的に加えた。この第二エ
マルジョンの温度は、低温循環器を用いて、溶媒抽出/蒸発段階を通して一定に維持され
た。結果として生じたナルトレキソン取込みミクロスフェアを真空濾過により回収し、P
BSで3回洗浄した。この後、これらのミクロスフェアを一晩真空乾燥させ、4℃におい
て保存した。
【0116】
ミクロスフェアへのナルトレキソンの取込み量を、以下の表1に示す。
【0117】
【表1】

【実施例2】
【0118】
実施例1で調製されたミクロスフェアを、シミュレーション化された抽出条件にさらし
、ミクロスフェアからのナルトレキソンのインビトロ放出の程度を定量した。この抽出は
、0.5NのNaCl、pH6.5のリン酸緩衝液を用いて実施された。サンプルサイズ
は100mgのミクロスフェアであり、ナルトレキソンの放出を0.5時間、1時間およ
び4時間の時点で測定した。その結果を表2および図5に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
どのミクロスフェア製剤についても、それらから放出されたアンタゴニストの量に基づ
いて、不正に手が加えられた際に所望の放出量が得られるように、ミクロスフェアに取り
込まれるアンタゴニストの量を調整することができる。
【実施例3】
【0121】
(仮定的(Prophetic))
ミクロスフェアを以下のようにして調製する。ナルトレキソンを必要量のゼラチン、T
ween 80および水と混合し、加熱する。次いで、マイクロエマルジョンを形成すべ
く、この混合物を、アルミニウムモノステアレート、Span 80およびダイズ油の混
合物中に分散させる。マイクロエマルジョンをミクロフルイダイザーにより均質化する。
その後、マイクロエマルジョンをPLGA−アセトニトリル溶液中に分散させる。次いで
、大気圧下における蒸発によってこのエマルジョンからアセトニトリルを除去し、これに
より、経皮的送達デバイスに組み入れるためのナルトレキソン含有ミクロスフェアを形成
する。
【実施例4】
【0122】
(仮定的)
実施例1により調製されたナルトレキソン含有ミクロスフェアを用い、1996年7月
4日に公表されたLTS GMBHのWO第96/19975号の開示に従って、経皮用
パッチ剤を以下のようにして調製する。
【0123】
以下のものを均質化する:2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸
を含有する自己架橋型アクリレートコポリマーを含む、1.139gの47.83w/w
%ポリアクリレート溶液(溶解剤: 比が37:26:26:4:1である酢酸エチル:
ヘプタン:イソプロパノール:トルオール:アセチルアセトネート)、100gのレブリ
ン酸、150gのオレイルオレエート、100gのポリビニルピロリドン、150gのエ
タノール、200gの酢酸エチル、および100gのブプレノルフィン塩基。この混合物
を約2時間攪拌した後、視覚的に検査し、すべての固体物質が溶解されていることを確認
する。蒸発による損失は、計量して戻し、必要に応じ、酢酸エチルを加えて溶媒を補う方
法により調節する。その後、上記混合物を、実施例1で説明するように調製されたナルト
レキソンミクロスフェアと混合する。次いで、この混合物を、幅420mmの透明なポリ
エステルホイルに移す。溶媒を、加熱空気を用いる乾燥により除去する。この後、この密
封フィルムをポリエステルホイルでカバーする。適当な切断用具によって、表面が約16
cm2となるように切断する。
【0124】
本発明の特定の好適な実施形態を参照しながら本発明を説明し、例示したが、当業者で
あれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において各種変更をし
得ることが理解される。このような変更例は、添付の特許請求の範囲内であることが意図
される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の経皮的送達デバイスの一つの実施形態の断面図を示している。このデバイスは、不浸透性の裏当て層10、例えば金属ホイル、プラスチックフィルム、または異なる材料のラミネートなどを有している。裏当て層10に接触した状態で下側に、オピオイドアゴニストと、ポリマーおよびオピオイドアンタゴニストを含有したミクロスフェア11との両方を含むマトリックス層が配置されている。この実施形態のマトリックス層は、オピオイドアゴニストのための貯蔵部としての機能と、この経皮的送達デバイスをヒト患者の皮膚に接着可能にする粘着剤としての機能との両方を果たす。
【0126】
【図2】本発明の経皮的送達デバイスの一つの実施形態の断面図を示している。このデバイスは、不浸透性の裏当て層13と、この裏当て層13に接触した状態で下側にマトリックス層15とを有している点において、図1に示されているデバイスと類似している。当該マトリックス層は、オピオイドアゴニストと、ポリマーおよびオピオイドアンタゴニストを含有したミクロスフェア14との両方を含んでいる。また、この経皮的送達デバイスは、マトリックス層と接触し、且つ、裏当て層の特定の部分とも接触していて、この経皮的送達デバイスをヒト患者の皮膚に接着可能にする、別個の粘着層16も有している。
【0127】
【図3】本発明の経皮的送達デバイスの一つの実施形態の断面図を示している。このデバイスは、不浸透性の裏当て層17と、この裏当て層17に接触した状態で下側に設けられたマトリックス層18とを有している。マトリックス層は、オピオイドアゴニスト、ならびにポリマーおよびオピオイドアンタゴニストを含有したミクロスフェア20を含んでいる。マトリックス層は、この経皮的送達デバイスをヒト患者の皮膚に接着可能にする粘着剤として機能する。また、この経皮的送達デバイスは、マトリックス層に接触した状態で下側に設けられた、取り外し可能な保護層19も有しており、この保護層は、経皮的送達デバイスを適用する前に取り除かれる。
【0128】
【図4】本発明の経皮的送達デバイスの一つの実施形態の断面図を示している。このデバイスは、不浸透性の裏当て層21と、この裏当て層21に接触した状態で下側にマトリックス層22とを有している点において、図3に示されているデバイスと類似している。マトリックス層は、オピオイドアゴニスト、ならびにポリマーおよびオピオイドアンタゴニストを含有したミクロスフェア25を含んでいる。さらに、この経皮的送達デバイスは、マトリックス層22と接触した状態で下側に設けられ、この経皮的送達デバイスをヒト患者の皮膚に接着可能にする、粘着層23を有している。また、この経皮的送達デバイスは、上記粘着層に接触した状態で下側に設けられた、取り外し可能な保護層24も有しており、この保護層は、経皮的送達デバイスを適用する前に取り除かれる。
【図5】実施例1により調製されたミクロスフェアからのナルトレキソンのインビトロにおける放出を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的送達デバイスであって、
有効量のオピオイドアゴニストを包含した薬剤含有層及び当該薬剤含有層中に分散され
た複数のミクロスフェアを含んでおり、当該ミクロスフェアが、オピオイドアンタゴニス
トを含み且つ前記薬剤含有層中において視覚的に感知できないものである、前記デバイス

【請求項2】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約1μmから約500μmである、請求項1記載の
デバイス。
【請求項3】
経皮的送達デバイスであって、
有効量のオピオイドアゴニストを包含した薬剤含有層及び当該薬剤含有層中に分散され
た複数のミクロスフェアを含んでおり、当該ミクロスフェアは、オピオイドアンタゴニス
トを含み且つ平均直径が約1μmから約500μmである、前記デバイス。
【請求項4】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約1μmから約300μmである、請求項3記載の
デバイス。
【請求項5】
前記複数のミクロスフェアが、高分子マトリックス中に分散された前記オピオイドアン
タゴニストを含む、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項6】
前記ミクロスフェアが、さらに、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ(オルトエステル
)、ポリサッカライド、シクロデキストリン、キトサン、ポリ(Σ-カプロラクトン)、
ポリ無水物、アルブミン、それらのブレンド(blends)及びコポリマー、ならびにそれら
の混合物(mixtures)からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1又は3記載の
デバイス。
【請求項7】
前記ミクロスフェアが、本質的に、オピオイドアンタゴニストと、ポリエステル、ポリ
エーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリサッカライド、シクロデキストリン、キトサン
、ポリ(Σ-カプロラクトン)、ポリ無水物、アルブミン、それらの混合物及びコポリマ
ーからなる群より選択されるポリマーとから構成されている、請求項1又は3記載のデバ
イス。
【請求項8】
前記ミクロスフェアが、本質的に、高分子マトリックス中に分散された前記オピオイド
アンタゴニストからなる、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項9】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約300ミクロンから約500ミクロンである、請
求項1又は3記載のデバイス。
【請求項10】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約200ミクロンから約500ミクロンである、請
求項1又は3記載のデバイス。
【請求項11】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約125ミクロンから約200ミクロンである、請
求項1又は3記載のデバイス。
【請求項12】
前記経皮的送達デバイスが、咬まれ、浸漬され、穴を開けられ、裂かれ、又は前記ミク
ロスフェアの完全性を破壊する任意の他の処理が施された場合に、前記オピオイドアンタ
ゴニストが放出可能となる、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項13】
前記送達デバイスが、咬まれ、潰され、もしくは溶媒中に溶解され、又は該ミクロスフ
ェアの完全性を破壊する任意の他の処理が施され、且つ経口的に、鼻内に、非経口的に又
は舌下的に投与された場合に、前記オピオイドアゴニストの効果が少なくとも部分的にブ
ロックされる、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項14】
前記オピオイドアンタゴニストが安定した結晶性粒子の形態である、請求項1又は3記
載のデバイス。
【請求項15】
前記ミクロスフェアが前記薬剤層内に均一に分散されている、請求項1又は3記載のデ
バイス。
【請求項16】
前記オピオイドアゴニストが、フェンタニル、スフェンタニル、ブプレノルフィン、ヒ
ドロコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドン、コデイン、レボルファノール、
メペリジン、メタドン、オキシモルホン、ジヒドロコデイン、トラマドール、それらの薬
学的に許容可能な塩、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1又は3記
載のデバイス。
【請求項17】
前記オピオイドアンタゴニストが、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、ジプ
レノルフィン、ナルメキソン、シプレノルフィン、アラゾシン、オキシロルファン、シク
ロファン、ナロルフィン、ナルブフィン、ブプレノルフィンブトルファノール、シクラゾ
シン、ペンタゾシン、レバロルファン、それらの薬学的に許容可能な塩、及びそれらの混
合物からなる群より選択される、請求項1、3又は16記載のデバイス。
【請求項18】
前記オピオイドアンタゴニストがナルトレキソン又はその薬学的に許容可能な付加塩で
ある、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項19】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約50ミクロンから約100ミクロンである、請求
項1又は3記載のデバイス。
【請求項20】
オピオイド鎮痛剤が、ヒト患者の皮膚に固着されたときに2日から8日の期間にわたっ
て鎮痛をもたらすのに有効な量で含まれている、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項21】
前記薬剤含有層がマトリックス層である、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項22】
前記マトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマ
ー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、シリコ
ン、ゴム、ゴム様合成ホモ-、コ-又はブロックポリマー、ポリアクリル酸エステル及びそ
れらのコポリマー、ポリウレタン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビ
ニル、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、ポリメタクリレートポリマー(ヒドロゲル)
、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチレン-ビニルアルコール
コポリマー、エチレン-ビニルオキシエタノールコポリマー、シリコン(例えばシリコン
コポリマー、例えばポリシロキサン-ポリメタクリレートコポリマーなど)、セルロース
ポリマー(例えばエチルセルロース及びセルロースエステル)、ポリカーボネート、ポリ
テトラフルオロエチレン、及びそれらの混合物からなる群より選択される材料を含む、請
求項21記載のデバイス。
【請求項23】
前記マトリックスが、シリコンコポリマー、架橋可能なシリコンコポリマー、架橋され
得るジメチル及び/又はジメチルビニルシロキサン単位を有するコポリマー、スチレン及
び1,3-ジエンをベースとするブロックコポリマー、ポリイソブチレン、アクリレート
及び/又はメタクリレートをベースとしたポリマーからなる群より選択される、請求項5
記載のデバイス。
【請求項24】
さらに、接触した状態で前記マトリックス層に隣接し、治療学的活性物質に対して浸透
性である粘着層を含む、請求項21記載のデバイス。
【請求項25】
前記薬剤含有層が粘着層である、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項26】
前記薬剤含有層が貯蔵層である、請求項1又は3記載のデバイス。
【請求項27】
さらに、前記貯蔵層上に重ね合わされ、前記貯蔵層と実質的に同一の広がりを持つ速度
調節膜層を含む、請求項26記載のデバイス。
【請求項28】
さらに、接触した状態で前記膜層に隣接し、治療学的活性物質に対して浸透性である粘
着層を含む、請求項27記載のデバイス。
【請求項29】
さらに、前記粘着層を覆った状態で前記粘着層に付着しており、前記経皮的送達デバイ
スを使用するために前記粘着層から取り外し可能な保護層を含む、請求項24記載のデバ
イス。
【請求項30】
前記経皮的送達デバイスが、経皮用パッチ剤、経皮用プラスター剤、経皮用ディスク剤
及びイオントフォレーゼ経皮用デバイスからなる群より選択されるデバイスである、請求
項1又は3記載のデバイス。
【請求項31】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約1ミクロンから約200ミクロンである、請求項
1又は3記載のデバイス。
【請求項32】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約1ミクロンから約100ミクロンである、請求項
1又は3記載のデバイス。
【請求項33】
前記ミクロスフェアは、平均直径が約100ミクロンから約500ミクロンである、請
求項1又は3記載のデバイス。
【請求項34】
疼痛の軽減を必要とする患者の皮膚に請求項1又は3記載のデバイスを適用することを
含む、疼痛の治療方法。
【請求項35】
請求項1又は3記載のデバイスを調製することを含む、経皮的オピオイドアゴニスト送
達デバイスの乱用の防止方法。
【請求項36】
鎮痛を必要とする患者に鎮痛をもたらすための、請求項1〜33のいずれかに記載の経
皮用デバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−225594(P2011−225594A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140151(P2011−140151)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【分割の表示】特願2006−554163(P2006−554163)の分割
【原出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】