説明

オピオイド受容体刺激化合物(チモキノン、ニゲラ・サティバ)及び食物アレルギー

本発明は、全般的には食物アレルギー及び栄養の分野に関する。オピオイド受容体の刺激が、食物アレルギーの治療又は予防のために使用できることが見出された。したがって、本発明の一実施形態は、食物アレルギーを治療又は予防するための組成物の調製のための、チモキノン、又はニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ、若しくはティムス由来の植物抽出物のようなオピオイド受容体刺激化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、全般的には食物アレルギー及び栄養の分野に関する。オピオイド受容体の刺激が、食物アレルギーの治療又は予防のために使用できることが見出された。したがって、本発明の一実施形態は、食物アレルギーを治療又は予防するための組成物の調製のための、オピオイド受容体刺激化合物の使用に関する。
【0002】
食物アレルギーは、今日我々の社会の重要な健康問題である。すべての年齢層が食物アレルギーに罹患するが、特に小児が罹患しやすい。最近では、小児全体の約6〜8パーセントが少なくとも1つの食物アレルギーに罹患している。例えば、小麦又は牛乳などの特定の製品に対してアレルギーになることにより、必要なすべての栄養素を十分な量体内に取り入れることが困難になる。成人は、小児より幾分罹患しにくいが、それでも成人全体の約4パーセントが食物アレルギーに罹患している。もちろん、良好な健康状態を維持するために必要なすべての栄養素を体内に取り入れることは成人にとっても重要になる。
【0003】
多くの患者は、特定の食物成分に対してアレルギーであると知っているか又は憶測するが、どの化合物に対してアレルギーであるかを正確に知ることはできない。したがって、患者は、試行錯誤に基づいてアレルギー反応を引き起こす食物を回避しようとする。
【0004】
食物アレルギーと確認された患者に加えて、1つ又は複数の食物アレルゲンに対する過敏症に罹患している最大35%にのぼる多くの人々がいる(Rona,R.J.ら、2007、J.Allergy Clin.Immunol.120:638〜646)。
【0005】
しかし、アレルギー反応を引き起こす食物製品が正確に知られていても、アレルゲン性食物に偶然曝露されることは、かなり頻繁に起こる。平均すると、2年間にわたる期間で、食物アレルギーを有する全対象の約50パーセントは、臨床症状を引き起こし得る、偶然の曝露による少なくとも1つのアレルギー反応を有している。
【0006】
食物誘導アナフィラキシーの多くの発症はかなり重篤な病態を引き起こし、最悪の場合には、患者を死に至らせる。
【0007】
一般に、患者は除去食によって食物アレルギーに対処しており、アレルギーの人は、あらゆる形態のアレルギー性食物を回避する。極めて強いアレルギー反応を有する個体は、触れること又は吸入を含むアレルゲン性食物とのあらゆる物理的接触さえ回避しなければならない場合がある。このことはもちろん、アレルギーの人の生活の質にとって過酷な事態を意味することになる。
【0008】
したがって、食物アレルギーに罹患している人又は動物の生活を容易にする組成物が利用可能になることは望ましいであろう。
【0009】
それ故、本発明の目的は、現状技術を改善すること、並びに食物アレルギーの治療又は予防、食物アレルギー症状の軽減、及び/又はアレルゲン性食物に対するアレルギー患者の耐性レベルの増大を可能にする組成物を提供することであった。
【0010】
本発明者らは、独立請求項によってこの目的を達成することができると知って驚いた。従属請求項は本発明をさらに発展させる。
【0011】
本発明者らは、食物アレルギーのマウスモデルを使用し、少なくとも1つのオピオイド受容体を刺激する化合物が食物アレルギーの治療又は予防のために使用できることを示すことができた。硫酸カリウムアルミニウムと一緒にオボアルブミン(OVA)を腹腔内注射することによって雄性Balb/cマウスを感作した。次いで、OVAの経口摂取によってマウスをチャレンジし、それによって、食物アレルギーの臨床症状、すなわち一時的な下痢を生じさせた。
【0012】
試験したオピオイド受容体アゴニストは本発明の目的を達成することが判明した。オピオイド受容体アゴニストは、試験したマウスモデルにおいて、臨床症状及びアレルギー関連免疫パラメーターを軽減した。
【0013】
オピオイド受容体アゴニストは周知のクラスの化合物である。これらの化合物は、例えばJanecka A.ら、2004、Curr.Top.Med.Chem.4(1):1〜17の科学文献中に概説されている。
【0014】
したがって、本発明の一実施形態は、食物アレルギーを治療又は予防するための組成物の調製のための、オピオイド受容体刺激化合物(オピオイド受容体アゴニスト)の使用である。
【0015】
本発明はまた、少なくとも1つのオピオイド受容体刺激化合物を含む、食物アレルギーの治療又は予防のための組成物に関する。
【0016】
本発明の目的では、「食物アレルギー」、「アレルギー」、及び「アレルギー性」という用語は、正常な対象が耐性である指定の刺激への曝露によって開始され、客観的に再現可能な症状又は徴候を引き起こすものとしてEuropean Academy of Allergy and Clinical Immunology(EAACI)によって定義される「過敏症」、及び免疫的機序により開始される過敏症反応としてEAACIによって定義される「アレルギー」(Johansson,S.G.ら、2001、A revised nomenclature for allergy.An EAACI position statement from the EAACI nomenclature task force、Allergy 56、813〜824)を含む。オピオイド受容体刺激化合物が刺激するオピオイド受容体の種類が、本発明の目的にとって重要であることは見出されていない。しかしながら、オピオイド受容体刺激化合物が少なくとも1つのオピオイド受容体を刺激することは必須である。
【0017】
本発明の一実施形態では、オピオイド受容体刺激化合物はμ−受容体刺激化合物である。その代替として又はそれに加えて、オピオイド受容体刺激化合物がκ−受容体刺激化合物及び/又はδ−受容体刺激化合物であってもよい。
【0018】
オピオイド受容体刺激化合物は、2つ以上のオピオイド受容体を刺激してもよい。様々なオピオイド受容体刺激化合物の組合せを使用することができる。
【0019】
オピオイド受容体刺激化合物は、日本米、トマト、ジャガイモ、マコモなどの植物、並びに乳及び乳製品などの他の食物の中に見出すことができる。オピオイド受容体刺激化合物が濃縮された、これらの植物又は食物の抽出物を本発明の目的のために使用することができる。
【0020】
例えば、オピオイド受容体刺激化合物は、チモキノン(2−イソプロピル−5−メチル−1,4−ベンゾキノン)及び/又はチモキノン含有抽出物であってもよい。
【0021】
チモキノンは次の化合物である。
【化1】

【0022】
チモキノンは2000年を超える期間、医療目的に使用されてきた。通常の用途は、抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗腫瘍剤として使用することであった(Trangら、Planta Med 1993;59:99;Hosseinzadehら、Phytomedicine 2004;11:56〜64)。さらに、チモキノンが腫瘍血管形成及び腫瘍増殖を阻害することが最近判明した(Yiら、2008、Molecular Cancer Therapeutics 7、1789〜1796)。
【0023】
チモキノンは、例えば、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa)、ユーパトリウム・アヤパナ(Eupatorium ayapana)、サツレヤ・モンタナ(Satureja montana)及び/又はティムス(Thymus)などの植物に見出すことができる。特に、ニゲラ・サティバの種子はチモキノンの豊富な供給源である。
【0024】
したがって、オピオイド受容体刺激化合物は植物又は植物抽出物の成分として提供してもよい。食物用途に関しては、オピオイド受容体刺激化合物が食用植物又はその抽出物として提供される場合が特に好ましい。ヒト又は動物の摂取用に認可されている場合、その物質は「食用」と考えられる。
【0025】
植物には、その果実、種子、及び根、並びに植物の残りの部分が含まれる。食用植物には、オピオイド受容体刺激化合物を徹底的に精製する必要なく食物製品に添加できる利点がある。この利点は、製品中に「ナチュネス(NaturNes)(登録商標)」を保持し、同時に不必要な精製ステップのためのコスト及び労力を節約するのに役立つであろう。また、化学的に合成した化合物の使用も回避することができる。
【0026】
したがって、本発明の一実施形態では、オピオイド受容体刺激化合物は、ニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ、及び/若しくはティムスとして、又はそれらの抽出物として提供される。
【0027】
ニゲラ・サティバの典型的な抽出物は粗脂質抽出物である。ニゲラ・サティバのそのような粗脂質抽出物は、約0.22重量%のチモキノンを含有する可能性がある。
【0028】
本発明者らは、オピオイド受容体刺激化合物が、食物アレルギーのマウスモデルにおいて、アレルギー関連免疫パラメーターを全般的に軽減させることを示すことができた。この発見はアレルゲンそのものに依存しないので、本発明を使用して調製した組成物はいかなる種類の食物アレルギーに対しても有効になるであろう。
【0029】
それ故、食物アレルギーのタイプは本発明の目的にとって重要ではないと考えられる。これには、本発明の組成物は、食物由来のアレルゲンそのものが正確に知られていない状況下でも使用することができるという利点がある。
【0030】
したがって、一実施形態では、食物アレルギーは、乳製品アレルギー、卵アレルギー、ピーナッツアレルギー、ナッツアレルギー、ゴマアレルギー、トウモロコシアレルギー、米アレルギー、パセリアレルギー、ソバアレルギー、魚介類アレルギー、貝類アレルギー、大豆アレルギー、小麦アレルギー、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
本発明の組成物はまた、食物アレルギー症状の治療又は予防のために使用することができる。これらの症状は、例えば組織腫脹;口、喉、目、及び/若しくは皮膚のそう痒;悪心;嘔吐;下痢;胃痙攣及び/若しくは腹痛;鼻閉;喘鳴;咽喉痛(scratchy throat);息切れ;嚥下障害;又はそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0032】
本発明の組成物は、食物アレルギーに罹患しているか又は食物アレルギーを発症するリスクがあるいかなる対象にも投与することができる。
【0033】
例えば、この組成物はヒトを対象としてもよい。その代替として又はそれに加えて、この組成物は動物、例えばペット動物を対象としてもよい。
【0034】
小児又は乳児が食物アレルギーに特に罹患しやすいので、本発明の組成物は小児及び/又は乳児を対象とすることができる。乳児用調合乳及びフォローオン調合乳に関する2006年12月22日のEuropean Commission Directive 2006/141/ECの第2条にある定義によれば、「乳児」は12月齢未満の小児であり、幼児は1〜3歳の間の小児である。
【0035】
用語「小児」は1〜14歳の年齢層を指す。
【0036】
もちろん、本発明の組成物はまた、ティーンエイジャー(15〜17歳)又は成人(18歳以上)のために使用してもよい。
【0037】
さらに、この組成物の形態は、本発明の目的にとって重要ではないと考えられる。少なくとも1つのオピオイド受容体刺激化合物を投与することを可能にするいかなる組成物も適合している。
【0038】
この組成物は、食物組成物、ペット食物組成物、食品、飲料、栄養調合乳、乳児用栄養調合乳、栄養補助食物、食物添加物、及び/又は医薬であってもよい。
【0039】
本発明による食物製品としては、例えばヨーグルト、バターミルク等の発酵乳製品などの乳製品;アイスクリーム;濃縮乳;乳;乳脂;フレーバード乳飲料;乳清飲料;トッピング;コーヒークリーム;チョコレート;チーズ製品;スープ;ソース;ピューレ;ドレッシング;プディング;カスタード;ベビーフード;例えば、乳児、小児、ティーンエイジャー、成人、又は高齢者のための完全な栄養調合乳などの栄養調合乳;シリアル及びシリアルバーが挙げられる。
【0040】
飲料としては、例えば乳ベース又はヨーグルトベースの飲料、発酵乳、コーヒー、タンパク質飲料、茶、栄養飲料、大豆飲料、果実及び/又は野菜の飲料、果実及び/又は野菜のジュースが挙げられる。
【0041】
組成物は経口的、経腸的、及び/又は非経口的、例えば、皮下若しくは筋肉内に投与することになってもよい。
【0042】
治療に適用する場合、組成物は、食物アレルギー及びその合併症の症状を少なくとも部分的に治癒させるか又は抑えるのに十分な量で投与する。これを達成するために適切な量を、「治療有効用量」と定義する。この目的のための有効量は、アレルギーの重症度及び種類、患者の体重及び全身状態、並びに遺伝的背景など、当業者に公知のいくつかの要因に依存することになる。
【0043】
予防に適用する場合、本発明による組成物は、食物アレルギーを発症しやすい患者又はそうでなければ食物アレルギーを発症するリスクがある患者に、そのような疾患を発症するリスクを少なくとも部分的に軽減するのに十分な量で投与する。このような量を「予防有効用量」と定義する。この場合も、この正確な量は、患者の健康状態及び体重並びに遺伝的背景など、その患者に特有ないくつかの要因に依存する。
【0044】
一般に、本発明の組成物は治療有効用量及び/又は予防有効用量で投与する。
【0045】
当業者は、これらの用量を容易に決定することができる。
【0046】
通常は、例えば、オピオイド受容体刺激化合物は、治療される対象に対して0.1mg/kg〜90mg/kg体重、好ましくは1mg/kg体重〜20mg/kg体重の範囲の1日用量で投与することになる。
【0047】
オピオイド受容体刺激化合物を、植物原料、例えばニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ、ティムス、又はそれらの組合せとして投与することになる場合、植物原料、例えばニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ、ティムス、又はそれらの組合せは、植物原料1mg/kg体重〜植物原料50g/kg体重の範囲、好ましくは植物原料2g/kg体重〜植物原料20g/kg体重の範囲の1日用量で投与することができる。
【0048】
オピオイド受容体刺激化合物を、植物原料、例えばニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ及び/若しくはティムス、又はそれらの組合せの抽出物として投与することになる場合、例えば、ニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ、ティムス、又はそれらの組合せの抽出物は、植物抽出物1mg/kg体重〜植物抽出物160mg/kg体重の範囲、好ましくは植物抽出物6mg/kg体重〜植物抽出物80mg/kg体重の範囲の1日用量で投与することができる。
【0049】
本発明の組成物は、タンパク質源、炭水化物源及び/又は脂質源をさらに含んでもよい。
【0050】
特別の臨床適用、特に非経口的適用では、炭水化物源を含まない組成物を提供することが望ましいことがある。
【0051】
アレルギー応答を誘発するアレルゲンは、通常食物タンパク質又はその一部であるので、アレルギー患者を対象とした組成物中のタンパク質源の組成には、特別の注意が必要である。一般に、組成物中に存在するタンパク質のタイプはアレルギー反応を誘発すべきではない。したがって、使用するタンパク質源は、本発明の組成物が予防又は治療することになるアレルギーのタイプに応じて変えることができる。
【0052】
任意の適切な食物タンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、及び卵タンパク質など)若しくはその加水分解物;植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など)若しくはその加水分解物;遊離アミノ酸の混合物;又はそれらの組合せを使用することができる。いくつかの適用においては、カゼイン及び乳清などの乳タンパク質並びに大豆タンパク質又はその加水分解物が好ましいことがある。タンパク質源を乳タンパク質又は乳タンパク質画分とする場合、例えば、甘味乳清(sweet whey)、酸乳清、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、酸カゼイン、カゼイン塩、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼインとすることができる。もちろん、様々なタンパク質源の組合せを使用することができる。
【0053】
乳清タンパク質に関する限り、タンパク質源は酸乳清若しくは甘味乳清又はそれらの混合物をベースとしてもよく、所望の割合のα−ラクトアルブミン及びβ−ラクトグロブリンを含んでいてもよい。しかしながら、特に組成物が乳児用栄養調合乳である場合、タンパク質源は改変甘味乳清をベースとすることが好ましい。甘味乳清は、容易に入手可能なチーズ製造の副産物であり、牛乳をベースとした乳児用調合乳の製造において頻繁に使用される。
【0054】
タンパク質はインタクトであっても、加水分解されていても、又はインタクトタンパク質と加水分解タンパク質との混合物であってもよい。広範囲又は部分的に加水分解されたタンパク質(2〜20%の間の加水分解度)の供給が望ましいことがある。加水分解ステップでは、潜在的にアレルゲン性の食物タンパク質を消化することができる。その結果、加水分解タンパク質の提供はアレルギー患者又はアレルギーを発症するリスクがある人々にとって有益になり得る。
【0055】
加水分解タンパク質が必要である場合、所望されるとおりに、また当技術分野で知られているように、この加水分解工程を実施することができる。例えば、乳清タンパク質加水分解物は、1つ又は複数のステップで乳清画分を酵素的に加水分解することにより調製することができる。
【0056】
本発明の組成物がタンパク質源を含有する場合、通常は、組成物中のタンパク質又はタンパク質等価物の量は1.6〜7.5g/100kcal組成物の範囲にある。
【0057】
特に栄養調合乳の場合、タンパク質源により、必須アミノ酸含量の最小必要量が満たされるべきである。
【0058】
組成物が炭水化物源を含有する場合、使用される炭水化物の種類は特に限定されない。任意の適切な炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン、デンプン、及びそれらの混合物を使用することができる。様々な炭水化物源の組合せを使用することができる。炭水化物は、組成物のエネルギーの30%〜80%を提供することが好ましい場合がある。例えば、組成物は、9〜18g/100kcal組成物の量で炭水化物源を含むことができる。
【0059】
食物繊維もまた添加することができる。食物繊維は可溶であっても不溶であってもよく、一般には、2つのタイプのブレンドが好まれる。食物繊維の適切な供給源としては、大豆、エンドウ豆、カラスムギ、ペクチン、グアーガム、アラビアゴム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリルラクトース、及び畜乳由来のオリゴ糖が挙げられる。好ましい繊維ブレンドは、イヌリンと短鎖フラクトオリゴ糖との混合物である。
【0060】
組成物が脂質源を含有する場合、使用される脂質の種類は特に限定されない。組成物が脂質源を含む場合、脂質源が組成物のエネルギーの5%〜70%を提供してもよい。DHA、ARA及び/又はEPAなどの長鎖n−3及び/又はn−6多価不飽和脂肪酸を添加することができる。適切な脂肪プロフィールは、キャノーラ油、コーン油、高級オレイン酸のヒマワリ油、及び中鎖トリグリセリド油のブレンドを使用して得ることができる。組成物は、1.5〜7g/100kcal組成物の量で脂質源を含むことができる。
【0061】
当業者ならば、開示の本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の本発明のすべての特徴を自由に組み合わせることができることを理解されよう。特に、本発明の使用のために記載された特徴は、本発明に記載の組成物に適用することができ、その逆も成立する。
【0062】
本発明のさらなる利点及び特徴は以下の実施例及び図から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】生理食塩水若しくはOVAのいずれかでチャレンジされたOVA感作マウス、又はOVAでチャレンジされた後チモキノンで処置されたOVA感作マウスにおいて観察された下痢スコアを示す図である。結果を、中央値(中央値±ロバストSD:生理食塩水=0±0、OVA=5±0;チモキノン=3±1.79)によって表示する。
【図2】生理食塩水(値=3.24±0.27ng/ml(データ図示されず))若しくはOVAのいずれかでチャレンジされたOVA感作マウス、又はOVAでチャレンジされた後チモキノンで処置されたOVA感作マウスにおける、MMCP−1血漿濃度(6回のチャレンジのうちの4回目における)を示す図である。結果を、平均値±SEM(μg/ml血漿)によって表示する。
【図3】生理食塩水(生理食塩水)又はオボアルブミン(OVA)でチャレンジされ、ニゲラ・サティバ抽出物(N.サティバ)、ニゲラ・サティバ抽出物及びオピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンメチオジド(N.サティバ+ナロキソン)、又はナロキソンメチオジド単独(ナロキソン)のいずれかで処置されたOVA感作マウスにおいて観察された下痢スコアを示す図である。3回目〜6回目のチャレンジでの結果を示し、中央値によって表す(中央値±ロバストSD、3回目のチャレンジ:生理食塩水=0±0;OVA=1±1.2;N.サティバ=1±1.2;N.サティバ+ナロキソン=1±0.6;ナロキソン=2±1.2;4回目のチャレンジ:生理食塩水=0±0;OVA=2±3.6;N.サティバ=1±1.2;N.サティバ+ナロキソン=2±1.8;ナロキソン=3.5±1.2;5回目のチャレンジ:生理食塩水=0±0;OVA=4±0;N.サティバ=3±1.2;N.サティバ+ナロキソン=4±0;ナロキソン=4±0;6回目のチャレンジ:生理食塩水=0±0.6;OVA=4.5±1.2;N.サティバ=3±1.2;N.サティバ+ナロキソン=4±1.2;ナロキソン=5±0)。
【図4】生理食塩水又はオボアルブミンでチャレンジされ、ニゲラ・サティバ抽出物、ニゲラ・サティバ抽出物及びオピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンメチオジド、又はナロキソンメチオジド単独のいずれかで処置されたOVA感作マウスにおいて観察された下痢スコア(3回目〜6回目のチャレンジ)の合計を示す図である。結果を、個々の値±中央値として表す。
【図5】生理食塩水(値=34±2.45ng/ml)又はOVAでチャレンジされ、ニゲラ・サティバ抽出物、ニゲラ・サティバ抽出物及びナロキソンメチオジド、又はナロキソンメチオジド単独のいずれかで処置されたOVA感作マウスにおけるMMCP−1血漿濃度(4回目のチャレンジ)を示す図である。結果を、平均値±SEM(μg/ml血漿)によって表示する。
【図6】生理食塩水(値=80±12.25ng/ml)又はOVAでチャレンジされ、ニゲラ・サティバ抽出物、ニゲラ・サティバ抽出物及びナロキソンメチオジド、又はナロキソンメチオジド単独のいずれかで処置されたOVA感作マウスにおけるMMCP−1血漿濃度(6回目のチャレンジ)を示す図である。結果を、平均値±SEM(μg/ml血漿)によって表示する。
【図7】生理食塩水(生理食塩水)又はオボアルブミン(OVA)でチャレンジされ、ニゲラ・サティバ抽出物(N.サティバ)、ニゲラ・サティバ抽出物及びナロキソンメチオジド(N.サティバ+ナロキソン)、又はナロキソンメチオジド単独(ナロキソン)のいずれかで処置されたOVA感作マウスにおけるOVA特異的IgEの血漿レベル(6回目のチャレンジ)を示す図である。結果を、平均値±SEMによって表す。
【図8】生理食塩水又はOVAでチャレンジされ、ニゲラ・サティバ抽出物、ニゲラ・サティバ抽出物及びナロキソンメチオジド、又はナロキソンメチオジド単独のいずれかで処置されたOVA感作マウスにおける全IgEの血漿レベル(6回目のチャレンジ)を示す図である。結果を、平均値±SEMによって表す。
【図9】生理食塩水又はOVAでチャレンジされ、未処置或いはニゲラ・サティバ抽出物若しくはナロキソンメチオジド単独又はニゲラ・サティバ抽出物及びナロキソンメチオジドで処置されたマウス由来の生体外OVA刺激腸間膜リンパ球の上清中のIL−13濃度を示す図である(2〜3匹のマウスからプールした試料に対する結果を示す)。
【実施例】
【0064】
方法:OVA誘導アレルギー性下痢のマウスモデル
手短に言えば、成熟雄性Balb/cマウスを、感作(14日の間隔でOVA及び硫酸カリウムアルミニウムを2回腹腔内注射)した後、OVAで6回(28、30、33、35、37、40日目)経口的にチャレンジして、一時的な臨床症状(下痢)及び免疫パラメーター(全IgE、OVA特異的IgE、マウス肥満細胞プロテアーゼ1(MMCP−1)の血漿濃度、及び生体外OVA再刺激腸間膜リンパ球(MLN)のTh2タイプサイトカイン産生)変化を生じさせた。試験物質を、皮下注射(文献に記載のチモキノン及びナロキソンメチオジド)、又は胃管栄養法(ニゲラ・サティバ抽出物)のいずれかによって投与した。
【0065】
チモキノンの効果
1)臨床症状に対するチモキノンの効果
OVAによる感作前4日間及びチャレンジ期間にチモキノンで処置されたマウスは、未処置マウスと比較して、6回目のチャレンジ後に観察される臨床症状が有意に改善する(図1)。
【0066】
2)免疫マーカーに対するチモキノンの効果
チモキノンを投与されたマウスでは、未処置OVAチャレンジ対照と比較して、4回目のチャレンジにおいて血漿中のマウス肥満細胞プロテアーゼ−1(MMCP−1)量が有意に低下していることが示された(図2)。一般に、血漿中のMMCP−1濃度は、このマウスモデルにおいて下痢発症のキープレーヤーであることが知られている、組織中の肥満細胞の数と相関する(Brandt,E.B.ら、2003、J.Clin.Invest 112、1666〜1677)。
【0067】
ニゲラ・サティバ抽出物の効果
チモキノンを含有する植物の1つはニゲラ・サティバ(ブラッククミン、ブラックシード)である。これは、南ヨーロッパ、北アフリカ、小アジア、及びインドで香辛料及び薬用植物として何世紀も使用されてきた。我々は、OVA誘導アレルギー性下痢のマウスモデルにおいて、0.22重量%のチモキノンを含有する、ニゲラ・サティバの粗脂質抽出物を試験した。
【0068】
1)臨床症状に対するニゲラ・サティバの効果
各感作前の3日間及びチャレンジ期間にニゲラ・サティバのヘキサン抽出物を経口投与すると、対照(OVA)と比較して、OVA(N.サティバ)で感作及びチャレンジされたマウスの臨床症状が軽減した(図3)。さらに、最初の下痢症状が観察されるために必要とされるオボアルブミンのチャレンジの回数に関して症状の発生が遅れた(OVAマウスの中には、3回目のチャレンジで既に下痢の症状(スコア≧3)を示すものがいるが、ニゲラ・サティバ処置マウスでは、最初の下痢症状を観察するために5回のチャレンジが必要であった)。6回のチャレンジすべてからの個々のスコアを合計すると、未処置対照(OVA)と比較して、ニゲラ・サティバ処置マウスの総合スコアは低下していた(図4)。
【0069】
2)免疫マーカーに対するニゲラ・サティバの効果
臨床スコアの結果に対応して、ニゲラ・サティバを摂取させると、対照マウスと比較して、4回目のチャレンジ後の血漿MMCP−1レベルが低下する傾向が見られた(図5)。
【0070】
臨床症状と一致して、ニゲラ・サティバ抽出物による処置によって、血漿中のOVA特異的IgE(図7)のようなアレルギー関連免疫マーカーは有意に低下したが、全IgEは不変であった(図8)。OVA特異的IgEは、オボアルブミンに対するアレルギー反応の結果として形質細胞によって生成されるが、一般に、全IgEは、アレルギー誘発性のサイトカイン環境の結果として形質細胞によって生成される。
【0071】
腸間膜リンパ節から単離したリンパ球を用いた生体外実験の結果では、ニゲラ・サティバを投与されたマウスに由来する腸間膜リンパ球をOVAで再刺激した後に、アレルギー関連サイトカインIL−13の放出が低下する傾向が見られた(図9)。
【0072】
興味深いことには、OVA誘導アレルギー性下痢を有するマウスにおいて観察されたニゲラ・サティバの有益な効果は、末梢オピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンメチオジドによる処置によって(ほとんどのパラメーターに対して)少なくとも部分的に無効にされた。このことは、オピオイド受容体経路を含む作用原理を裏付けている(図4、5、8及び9;N.サティバ群とN.サティバ+ナロキソン群との比較)。さらに、ニゲラ・サティバによる処置によって、臨床スコアが低下しただけでなく、アレルギー関連免疫パラメーターもまた変化した。このことは、古典的な抗下痢特性(例えば、通過時間の延長)以外の追加の効果があることを示唆する。
【0073】
食物アレルギーに対する効果に関して陽性と判定された化合物はすべて1つ又は複数のオピオイド受容体を刺激することが示された。
【0074】
例えば、チモキノンは、現在までに知られている3つの(μ−、κ−、δ−)オピオイド受容体すべてに対する結合を示した(表1)。したがって、我々は合成チモキノンに対するデータを原理の証明としてここに提示する。
【0075】
【表1】

【0076】
表1:μ−、κ−、及びδ−オピオイド受容体におけるチモキノンによるリガンド置換(%);50%超の値は、顕著なリガンド置換を示し、20〜50%の間の値は、弱から中程度の置換を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物アレルギーを治療又は予防するための組成物の調製のための、オピオイド受容体刺激化合物の使用。
【請求項2】
前記オピオイド受容体刺激化合物が、μ−受容体刺激化合物、κ−受容体刺激化合物、δ−受容体刺激化合物、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記オピオイド受容体刺激化合物が、チモキノン(2−イソプロピル−5−メチル−1,4−ベンゾキノン)及び/又はチモキノン含有抽出物である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記オピオイド受容体刺激化合物が、植物又は植物抽出物の成分、例えばニゲラ・サティバ、ユーパトリウム・アヤパナ、サツレヤ・モンタナ、ティムス又はそれらの混合物として提供される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記食物アレルギーが、乳製品アレルギー、卵アレルギー、ピーナッツアレルギー、ナッツアレルギー、ゴマアレルギー、トウモロコシアレルギー、米アレルギー、ソバアレルギー、パセリアレルギー、魚介類アレルギー、貝類アレルギー、大豆アレルギー、小麦アレルギー、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
食物エネルギーの症状、例えば組織腫脹;口、喉、目、及び/若しくは皮膚のそう痒;悪心;嘔吐;下痢;胃痙攣及び/若しくは腹痛;鼻閉;喘鳴;咽喉痛;息切れ;嚥下障害;又はそれらの組合せからなる群から選択される症状を治療又は予防するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物が、ヒト又はペット動物からなる群から選択される対象に投与されることになる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が、食物組成物、食品、飲料、栄養調合乳、乳児用栄養調合乳、栄養補助食物、食物添加物、医薬からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物が、経口的、経腸的、及び/又は非経口的に投与されることになる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記オピオイド受容体刺激化合物が、治療される対象に対して0.1mg/kg体重〜90mg/kg体重、好ましくは1mg/kg体重〜20mg/kg体重の範囲の1日用量で投与され、及び/又は前記オピオイド受容体刺激化合物が、治療される対象に対してニゲラ・サティバ植物原料1mg/kg体重〜ニゲラ・サティバ植物原料50g/kg体重、好ましくはニゲラ・サティバ植物原料2g/kg体重〜ニゲラ・サティバ植物原料20g/kg体重の範囲の1日用量でニゲラ・サティバとして提供され、及び/又は前記オピオイド受容体刺激化合物が、治療される対象に対してニゲラ・サティバ植物抽出物1mg/kg体重〜ニゲラ・サティバ植物抽出物160mg/kg体重、好ましくはニゲラ・サティバ植物抽出物6mg/kg体重〜ニゲラ・サティバ植物抽出物80mg/kg体重の範囲の1日用量でニゲラ・サティバ抽出物として提供されることになる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、1.6〜7.5g/100kcal組成物の量でタンパク質源をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記タンパク質源が、2〜20%の間の範囲の加水分解度(DH)に加水分解される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記タンパク質源が、乳タンパク質又は乳タンパク質画分、例えば、甘味乳清、酸乳清、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、酸カゼイン、カゼイン塩、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼインである、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、9〜18g/100kcal組成物の量で炭水化物源をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、1.5〜7g/100kcal組成物の量で脂質源をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−527224(P2012−527224A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511255(P2012−511255)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056783
【国際公開番号】WO2010/133574
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】