説明

オピオイド鎮痛剤およびアロエ組成物を含む経皮製剤

【課題】活性成分としてのフェナントレン群ないしはその薬学的に許容し得る塩からのオピオイド鎮痛剤の経皮薬の提供。
【解決手段】オピオイド鎮痛剤および経皮透過剤としてのアロエ組成物を含む経皮製剤。前記製剤が被覆層を備えたパッチであり、パッチが、マトリックス型パッチ、リザーバー型パッチ、多層性薬剤含有接着剤型パッチ、および一体性薬剤含有接着剤型パッチの群から選択される製剤である。また前記製剤が一体性薬剤含有接着剤型パッチである製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮透過剤の助けを借りた鎮痛剤の経皮投与の方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮薬の適用は従来の投与方法を超える明確な利点を提供する。例えば、幾つかの薬物は消化管から吸収され得ず、注射による静脈内投与および皮下投与は有痛性で侵襲性である。別の理由は経口投与時の全身性初回通過代謝を避けるためである。
残念なことに、皮膚の薬物透過抵抗のため、ごく限られた数の薬物が経皮適用を通して生体利用される(Ghosh,T.K.;Pfister,W.R.;Yum,S.I.,Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Interpharm Press,Inc.P.7)。皮膚は2〜3mmの全厚さをもつ複雑な多層器官である。皮下脂肪層は、厚さが一定しない脂肪層であり、真皮の下にある。真皮は表皮を支持する密生結合組織の層である。表皮は、上皮細胞の層を含み、約100μmの厚さである。表皮は更に幾つかの層に分類され、その最外層は角質層(15〜20μmの厚さ)である。角質層は極めて高密度の角質化組織を含み、皮膚の浸透抵抗および透過抵抗の主な原因である(Montagna,W.and Parakkal,P.F.(1974) The Structure and Function of Skin,Academic Press,New York,and Holbrook,K.A.and Wolf,K.(1993),The Structure and Development of Skin,In:Dermatology in General Medicine,Vol 1,4th ed.,Eds.T.B.Fitzpatrick,A.Z.Eisen,K.Wolff,I.M.Feedberg,and K.F.Austen,McGraw Hill,Inc.,New York,pp.97-145)。
経皮吸収についての下記の機構順序が提示されている。1)適用媒体から角質層への薬物の分配;2)角質層中に拡散;3)該層から表皮への分配;4)表皮中に拡散;および5)毛細血管の取り込み(Potts et al.(1992) Percutaneous Absorption:Pharmacology of the Skin,Ed.Mukhtar,H.CRC Press,pp.13-27)。
【0003】
皮膚の薬物透過に対する内因性抵抗のため、透過剤はしばしば経皮薬物投与を補助するために欠かせない。「透過剤」という用語は一般に活性剤の分配および/拡散を増大させる部類の化学物質に適用されてきた(例えば、Ghosh,T.K.et al.(1993),Pharm.Tech.17(3):72-98;Ghosh,T.K.et al.(1993),Pharm.Tech.17(4):62-89;Ghosh,T.K.et al.(1993),Pharm.Tech.17(5):68-76;Pfister et al.Pharm.Tech.14(9):132-140を参照、これらの全ては参照により本明細書に組み入れられる)。理想としては、透過剤は、薬理学的に不活性な無毒で刺激性のない非アレルギー性であり、製剤成分と適合し、作用が速やかに始まり、ならびに皮膚防壁性の減少に可逆的である。透過剤はまた皮膚上に適切な皮膚感触で十分に延びるべきである。実際には、これらの理想的要件の全ては稀にしか満たされず、透過剤の改良が必要である(Aungst (1991),Skin Permeation Enhancers for Improved Transdermal Drug delivery.In:High Performance Biomaterial:A Comprehensive Guide to Medical and Pharmaceutical Applications,Ed.M.Szycher,pp 527-538)。
アロエは、アフリカ原産の植物種であり、「砂漠のユリ」、「不死植物」、および「薬用植物」としても知られる。名前は、葉に見られる苦い液体から、「苦い」を意味するアラビア語のアロエ(alloeh)に由来した。紀元前1500年に、エジプト人は、火傷、感染および寄生生物の治療における薬用植物の使用を記録した。
世界中の気候で成長するアロエは500種を超える。古代のギリシャ人、アラビア人、およびスペイン人は数千年にわたって該植物を使用してきた。アフリカの狩猟者は発汗および体臭を減らすために依然体に該ゲルを塗る。1930年代からの広範な研究は、その透明なゲルが、患部を保護被覆し、治癒速度を速めることにより、外傷、潰瘍および火傷を劇的に治癒する能力を有することを示してきた。
該植物は約96%が水である。その残りは、精油、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、酵素および糖タンパク質を含む活性成分を含有する。現代の治療者はこれを1930年代から薬草として使用してきた。多数の液体健康治療が施され、アロエ・ジュースと他の植物および薬草を組み合わせるものもある。該ジュースは大腸炎および消化性潰瘍などの消化管の刺激を鎮静する。
【0004】
アロエは、胃、小腸および結腸に役立つ少なくとも三つの抗炎症脂肪酸を含む。アロエで新しく発見された化合物のアセマンナン(acemannan)は、現在、身体の自然抵抗性を強化する能力について研究されている。研究はアセマンナンが免疫系を補助するTリンパ球を増やすことを示した。
経皮治療システムにおいて、アロエ・ベラは一般に皮膚保護薬として使用される。米国特許第6,455,066号において、アロエ・ベラは角質層を通って表皮または真皮へのリドカインの透過を増大すると記載される。それにも関わらず、アロエ・ベラは毛細血管による薬物の吸収に影響しなかった。意外なことに、初めて、本発明者らは、緩衝系による鎮痛物質の吸収を含む、皮膚を通じた該物質の薬物透過促進剤としてのアロエ・ベラの有意な効能を観察した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基礎を成す問題は、活性成分としてのフェナントレン群ないしはその薬学的に許容し得る塩からのオピオイド鎮痛剤、および経皮透過剤としてのアロエ組成物を含む、経皮製剤により解決される。
本発明の製剤は被覆層とともに提供されるパッチであり得る。
さらに、本発明に従って、該パッチは、マトリックス型パッチ、リザーバー型パッチ、多層性薬剤含有接着剤(drug−in−adhesive)型パッチ、および一体性薬剤含有接着剤型パッチの群から選択される製剤であり得る。
さらに、本発明に従って、該製剤は一体性薬剤含有接着剤型パッチであり得る。
さらに、本発明に従って、該製剤は、バッキング、感圧接着剤および剥離ライナーを含み得る。
さらに、本発明に従って、前記接着剤は、天然ゴム;合成ゴム;アクリル接着剤;ポリビニルアセテート;ポリジメチルシロキサン;およびヒドロゲル類、特に高分子量ポリビニルピロリドンおよびポリエチレンオキシド・オリゴマーの群から選択される成分を含み得る又はからなり得る。
【0006】
さらに、本発明に従って、接着剤はアクリル接着剤であり得る。
さらに、本発明に従って、ゴム接着剤はスチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体またはスチレン−ブタジエン・ブロック共重合体を含み得る又はからなり得る。
さらに、本発明に従って、アクリル接着剤はポリアクリレートを含み得る又はからなり得る。
さらに、本発明に従って、ポリアクリレートは、ポリブチルアクリレート、ポリメチルアクリレートおよびポリ−2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択され得る。
さらに、本発明に従って、前記接着剤は架橋剤を含み得る。
さらに、本発明に従って、前記鎮痛剤はブプレノルフィン又はその薬学的に許容し得る塩であり得る。
さらに、本発明に従って、前記鎮痛剤はブプレノルフィン又はその薬学的に許容し得る塩であり得る。
【0007】
さらに、本発明に従って、アロエ抽出の抽出剤または媒体は植物油であり得る。
さらに、本発明に従って、前記植物油は硬化油であり得る。
さらに、本発明に従って、前記植物油は大豆油であり得る。
さらに、本発明に従って、製剤は前記アロエ組成物に加えて他の透過剤を含み得る。
さらに、本発明に従って、追加の透過剤は、エチルアルコール;イソプロピルアルコール;オクチルフェノール;ポリエチレングリコール・オクチルフェニル・エーテル;オレイン酸;ポリエチレングリコール(PEG)、特にPEG400;プロピレングリコール;N−デシルメチルスルホキシド;脂肪酸エステル、特にミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、グリセロール・モノオレエートおよびプロピレングリコール・モノオレエート;ならびにN−メチルピロリドンからなる群より選択される。
さらに、本発明に従って、前記組成物は、保存剤、特に、アルコール類、第四級アミン類、有機酸、パラベン類およびフェノール類の群から選択される保存剤を含み得る。
さらに、本発明に従って、製剤は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、綿または羊毛からなる群より選択される物質を含む又はからなるバッキングを含み得る。
さらに、本発明に従って、前記バッキングはポリオレフィン箔であり得る。
最後に、本発明に従って、前記箔は、0.5〜1.5の厚さ、特に0.6〜1.0mmを有し得る。
【0008】
上記から、アロエ組成物が、経皮適用された鎮痛剤の角質層を通した表皮または真皮への透過ならびに更に循環血液への透過を促進するための透過剤であることが現在見出されているという記載が続く。
一つの実施態様において、本発明は鎮痛剤を投与する方法を含む。該方法は、治療に有効な量の鎮痛剤ないしはその薬学的に許容し得る塩、およびアロエ組成物からなる群より選択される透過促進量の経皮透過剤を含有する薬学的に許容し得る経皮製剤を被験体の皮膚に適用する工程を含む。他の実施態様において、薬学的に許容し得る経皮製剤はパッチにある。
更なる他の実施態様において、本発明は、使用説明書とともに包装された、アロエ組成物からなる群より選択される透過促進量の経皮透過剤、および鎮痛作用の必要がある被験体に鎮痛剤を投与するために治療に有効な量の鎮痛剤を含むパッチに関し、該使用説明書は該パッチの皮膚への適用を含む。
更なる他の実施態様において、本発明はバッキングおよびスチレン−ブタジエン−スチレン感圧接着剤を含むパッチに関し、該接着剤は治療に有効な量の鎮痛剤およびアロエ組成物から選択される透過促進量の経皮透過剤を含む。
他の実施態様において、本発明は治療に有効な量の鎮痛剤ないしはその薬学的に許容し得る塩およびアロエ組成物から選択される透過促進量の経皮透過剤を含む組成物に関する。
本発明のこれらの特性および他の特性、局面ならびに利点は、下記の詳細な説明、実施例、および添付の特許請求の範囲を参照して、より一層理解するようになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一つの実施態様において、本発明は、鎮痛作用の必要がある被験体に鎮痛剤を投与する方法、治療に有効な量の鎮痛剤又はその薬学的に許容し得る塩およびアロエ組成物から選択される透過促進量の経皮透過剤を含む薬学的に許容し得る経皮製剤を被験体の皮膚に適用する方法を含む。
本明細書で用いられるように、「経皮透過剤」という用語は、薬理学的に活性な化合物を角質層を通って表皮または真皮に送達でき、さらに毛細血管に取り込まれる剤を意味する。経皮透過剤の「透過促進量」は、角質層を通る鎮痛剤の透過速度を促進し並びに/または皮膚内での鎮痛剤の溶解度を増大させる量である。
本明細書で用いられる「薬学的に許容し得る経皮製剤」という用語は、鎮痛剤の経皮投与用に薬学的に許容される任意の製剤を意味する。本発明に従って、「経皮製剤」は少なくとも鎮痛剤および経皮透過剤を含む。経皮製剤の選択は、治療される状態、鎮痛剤および存在する他の賦形剤の物理化学的特性、製剤でのそれらの安定性、入手可能な製造装置、および費用制約条件を含む幾つかの因子に依存するだろう。
本明細書で用いられるように、「治療に有効な量の鎮痛剤」は、疼痛を抑制するのに十分な鎮痛効果を誘起するために必要な鎮痛剤の量を意味する。
本明細書で用いられるように、「被験体」という用語は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを意味する。
油性のアロエ抽出物は本発明での使用に特に好ましく、抽出剤または媒体として、例えば、扁桃油およびクルミ油などの堅果油;ヒマシ油;ココナッツ油;トウモロコシ油;綿実油;ホホバ油;アマニ油;ブドウ種油;菜種油;カラシ油;オリーブ油;パーム油およびパーム核油;落花生油;紅花油;ゴマ油;大豆油;ヒマワリ種子油;ハマナ油;小麦胚種油;ココアバター;又はこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。大豆油は本発明での使用に好ましい植物油である。必要ならば、植物油は、例えば水素化により、加工され得る。
【0010】
本明細書で用いられるように、「アロエ組成物」という用語は、ユリ科アロエ属の植物の任意の抽出物または加工形態を意味する。例えば、本発明で使用するためのアロエ抽出物およびアロエの加工形態は、アロエのアロエ・アルブロレッセンス(Aloe arbrorescens)、アロエ・バルバンデンシス(Aloe barbandensis)、またはアロエ・フェロックス(Aloe ferox)の種から得られ得る。葉、幹、または花などの該植物のあらゆる部分が加工または抽出され得る。適切なアロエ組成物の例は、アロエ・アルブロレッセンスの葉の抽出物(Maruzen Pharmaceuticals,Morristown,N.J.);アロエ・バルバンデンシスの葉の抽出物(Florida Food Products,Inc.,Eustis,Fla.);アロエ・バルバンデンシスの花の抽出物(Tri-K,Industries,Emerson,N.J.);アロエ・バルバンデンシスのゲル(Active Organics,Dallas,Tex.);およびアロエ・フェロックスの葉の抽出物(Maruzen Pharmaceuticals,Morristown,N.J.)を含む。本発明での使用に好ましいアロエ組成物はアロエ・バルバンデンシスのゲルであり、これは、本明細書で「アロエ−べラ・ゲル」と称される、葉の中心の実質組織から得られる新鮮な粘性のゲルである。
本明細書で用いられるように、「鎮痛剤」という用語は、鎮痛をもたらす任意の薬物または神経障害性疼痛の症例でも侵害受容性疼痛の遮断をもたらす任意の薬物を意味する。鎮痛剤は、例えばブプレノルフィンもしくはナルブフィンのようにフェナントレン群及びそれらの薬学的に許容し得る塩、又はそれらの混合物からの任意のオピオイド鎮痛剤であり得る。
【0011】
さらに、現在の局所に有効な治療の効果および耐性を改善するために、異なる薬力学および薬物動態をもつオピオイド鎮痛剤が薬学的に許容し得る局所製剤と組合され得る。
「薬学的に許容し得る塩」という語句は、本明細書で用いられるように、他に示されない限り、天然鎮痛剤の生物学的な効果および性質を保持し且つ他の点で製薬学的用途に許容される塩を意味する。薬学的に許容し得る塩は酸性基または塩基性基の塩を含み、その基はオピオイド鎮痛剤に存在し得る。本発明で用いられる塩基性オピオイド鎮痛剤の塩の薬学的に許容し得る添加は、無毒の塩を形成するもの、即ち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、燐酸塩、過燐酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))の塩などの薬学的に許容し得る陰イオンを含む塩である。アミノ部分を含む本発明の鎮痛剤は、種々のアミノ酸と薬学的に許容し得る塩を形成し得る。適切な塩基性塩は無毒な塩を形成する塩基から形成され、例はアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛およびジエタノールアミンの塩である。薬学的に許容し得る塩の概説については、Berge et al.,J.Pharm.Sci.,66,1-19 (1977)を参照せよ。これは参照により本明細書に組み入れられる。
本発明に従って、アロエ組成物の任意の組み合わせ、例えば大豆油とアロエ−ベラ・ゲルの混合物が使用できる。
適切な保存剤は、アルコール類、第四級アミン類、有機酸、パラベン類、およびフェノール類を含むが、これらに限定されない。
適切な抗酸化剤は、アスコルビン酸及びそのエステル類、重硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸などのキレート剤を含むが、これらに限定されない。
適切な保湿剤は、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、およびプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0012】
本発明での使用に適した緩衝剤は、クエン酸、塩酸および乳酸緩衝剤を含むが、これらに限定されない。
適切な可溶化剤は、塩化第四級アンモニウム類、シクロデキストリン類、安息香酸ベンジル、レシチン、およびポリソルベート類を含むが、これらに限定されない。
本発明で使用する透過剤は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、グリセロール・モノオレエート、およびプロピレングリコール・モノオレエート);ならびにN−メチルピロリドンを含むが、これらに限定されない。
本発明の局所製剤で使用できる適切な皮膚保護薬は、ビタミンE油、アラトイン(allatoin)、ジメチコーン、グリセリン、ワセリン、および酸化亜鉛を含むが、これらに限定されない。
本発明の好ましい実施態様において、鎮痛剤および経皮透過剤を含む製剤は、皮膚の近傍に適用されるパッチに含まれる。本明細書で用いられるように、「パッチ」は、パッチが皮膚上に設置できるように、少なくとも局所製剤および被覆層を含む。好ましくは、パッチは、遅延時間を短縮し、均一な吸収を促進し、ならびに機械的な擦れ落ちを減らすように設計される。
【0013】
好ましくは、パッチの構成成分は、皮膚の粘弾性特性に似ており、動作中の皮膚になじんで過度のずれ及び剥離を防止する。
本発明の局所製剤を含むパッチは従来の投与方法を凌ぐ利点を有する。一つの利点は、用量がパッチの表面積により制御されることである。パッチの他の利点は、定率の投与、長時間の作用(1、3、7日以上の皮膚への粘着能力);患者の服薬順守の向上、非侵襲性投薬、および可逆作用(即ち、パッチが簡単に剥れ得る)である。
好ましいパッチは、(1)マトリックス型パッチ;(2)リザーバー型パッチ;(3)多層性薬剤含有接着剤型パッチ;および(4)一体性薬剤含有接着剤型パッチ(Ghosh,T.K.;Pfister,W.R.;Yum,S.I.,Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Interpharm Press,Inc.p.249-297、参照により本明細書に組み入れられる)を含む。これらのパッチは、当分野で周知であり、一般に市販されている。
本発明の実施では、マトリックス型および薬剤含有接着剤型パッチが特に好ましい。より好ましい薬剤含有接着剤パッチは一体型である。
マトリックスパッチは、鎮痛剤を含有するマトリックス、粘着性バッキングフィルム重層および剥離ライナーを含む。ある場合には、バッキングフィルムへの薬物移行を最小にするために不透過層を含むことが必要であり得る(例えば、米国特許第4,336,243号、参照により本明細書に組み入れられる)。鎮痛剤を含むマトリックスは粘着性重層により皮膚に留まる。適切な鎮痛マトリックス材の例は、ポリビニルクロライド、ポリジメチルシロキサンなどの脂溶性ポリマー、およびポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチンに基づくヒドロゲル、またはポリビニルピロリドン/ポリエチレンオキシド混合物などの親水性ポリマーを含むが、これらに限定されない。
リザーバー型パッチの設計は、接着剤で被覆されたバッキングフィルム、及び好ましくは溶液または懸濁液の剤形で薬物製剤を含む貯蔵区画により特徴付けられる。該区画は半透膜により皮膚から隔てられる(例えば、米国特許第4,615,699号、参照により本明細書に組み入れられる)。接着剤で被覆されたバッキング層は、貯蔵境界の周囲に広がり、皮膚と同心性密着し、皮膚に近接する貯蔵区画を保持する。
【0014】
一体性薬剤含有接着剤パッチの設計は、皮膚に接触する粘着層の薬物製剤、バッキングフィルム、および好ましくは剥離ライナーの含有により特徴付けられる。接着剤は、鎮痛剤を放出し、鎮痛マトリックスを皮膚に付着させるための両方に機能する。薬剤含有接着剤システムは粘着重層を必要としない。また、薬剤含有接着剤型パッチは薄く快適である(例えば、米国特許第4,751,087号、参照により本明細書に組み入れられる)。
多層性薬剤含有接着剤型パッチの設計は、一つのバッキングフィルム下に二つの異なる薬剤含有接着剤層または複数の薬剤含有接着剤層の間に付加的な半透膜をさらに組み込む(Peterson,T.A.and Dreyer,S.J.,Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.21:477-478、参照により本明細書に組み入れられる)。
リザーバーパッチまたは多層パッチで役立つ半透膜は、薄い無孔性のエチレン−酢酸ビニル・フィルムまたはマイクロラミネート固体状リザーバーパッチで使用されるポリエチレンの薄い微孔性フィルムを含む。
薬剤含有接着剤型パッチで使用する接着剤は当分野で周知であり、選択は当業者により容易に遂行される。一般に使用される三つの基本的な型は、ポリイソブチレン、シリコーン、アクリル系である。本発明に役立つ接着剤は、高い及び低い湿度、入浴、発汗などの広範な条件下で機能し得る。接着剤は、天然もしくは合成のゴム;ポリブチルアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレートなどのポリアクリレート;ポリビニルアセテート;ポリジメチルシロキサン;又は並びにヒドロゲル(例えば、高分子量ポリビニルピロリドンおよびポリエチレンオキシド・オリゴマー)に基づく組成物であり得る。最も好ましい接着剤はスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体ゴム接着剤であり、例えばDurotak.RTM.接着剤である(例えば、Durotak.RTM.87-6173,National Starch and Chemicals)。接着剤はシリカ増粘剤などの増粘剤(例えば、Aerosil,Degussa,Ridgefield Park,N.J.)またはアルミニウムアセチルアセトナートなどの架橋剤を含み得る。
【0015】
適切な剥離ライナーは、感圧性剥離ライナーの薄い被覆(例えば、シリコーン−フルオロシリコーン(fluorsilicone)、およびパーフルオロカーボン(perfluorcarbon)に基づくポリマー)とともに、密封性の不透明または透明なポリエステル・フィルムを含むが、これらに限定されない。
バッキングフィルムは不透明または透明であり得る。該フィルムは、ポリオレフィン、油、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン(polyvinylidine chloride)、およびポリウレタンなどの合成ポリマー、または綿、羊毛などの天然物質に由来する。合成ポリエステルなどの不透明なバッキングフィルムが角質層の外層の水和を招く一方、非密封性バッキングは該領域の呼吸を可能にする(即ち、皮膚表面から水蒸気の透過を促進する)。より好ましくは、バッキングフィルムは不透明なポリオレフィン箔(Alevo,Dreieich;Germany)である。ポリオレフィン箔は約0.6から約1mmの厚さであることが好ましい。
局所製剤の鎮痛剤の量は一般に製剤の全重量の約0.5%から約25%であろう。
一般的に、経皮透過剤は、パッチの全重量の約0.5重量パーセントから約40重量パーセント、好ましくは約2パーセントから約20パーセントを占めるだろう。
本発明はある種の好ましい実施態様に準拠してかなり詳細に記載されるが、他の実施態様が可能である。従って、添付される特許請求の範囲の精神および範囲は本明細書に含まれる好ましい実施態様の記載に限定されるべきでない。
【実施例】
【0016】
下記の実施例は、単に説明目的で提供され、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
実施例1
異なるブプレノルフィン/アロエ・ベラ組成物の皮膚透過比較研究
本研究は1.05 cm2のマトリックスパッチを用いて行った。該マトリックスは、スチレン−ブタジエン−スチレン重合体に経皮透過剤としてブプレノルフィンおよびアロエの混合物を含んだ。
該マトリックスは、ブプレノルフィン(5〜15重量パーセント)をエチルメチルケトンに溶解し(1:4.2の割合);経皮透過剤(0〜20重量パーセント)およびスチレン−ブタジエン−スチレン重合体(Durotak.RTM.-6173)を添加し;ならびに均質になるまで混合することにより調製した。次いで均質な混合物は手動塗工機を用いて約50g/m2の平均面積重量までポリオレフィン箔上に被覆した。被覆された箔は約80℃で約15分間乾燥し、エチルメチルケトン溶媒を蒸発させた。各パッチのブプレノルフィンおよび経皮透過剤の量は全パッチ重量の百分率として下記の表Iに示す。
マトリックスパッチは雌の無毛マウスの皮膚に適用した。
【0017】
【表1】

【0018】
上記表Iの流量データは、マトリックス中のアロエ・ベラの量が流量に効果的に影響を及ぼすことを証明する。僅か10%のアロエを用いた経皮マトリックスシステムが0.9g/(cm2*h)の最大流量をもたらす一方、20%のアロエ・ベラ(&15%のブプレノルフィン、バッチ001を参照)を含むシステムは2.3g/(cm2*h)までの流量を示す。
前記は本発明のより適切で重要な特性をかなり広範に概説した。本明細書に開示される本発明が上記の目的を満たすように十分計算されていることは明らかであるが、多数の改変および実施態様が当業者により考案され得ることが理解されよう。従って、添付の特許請求の範囲はこのような全ての改変を網羅することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてのフェナントレン群ないしはその薬学的に許容し得る塩からのオピオイド鎮痛剤および経皮透過剤としてのアロエ組成物を含む経皮製剤。
【請求項2】
前記製剤が被覆層を備えたパッチである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記パッチが、マトリックス型パッチ、リザーバー型パッチ、多層性薬剤含有接着剤型パッチ、および一体性薬剤含有接着剤型パッチの群から選択される製剤である、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤が一体性薬剤含有接着剤型パッチである、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤が、バッキング、感圧接着剤および剥離ライナーを含む、前記請求項の少なくとも一項、特に請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記接着剤が、天然ゴム;合成ゴム;アクリル接着剤;ポリビニルアセテート;ポリジメチルシロキサン;ならびにヒドロゲル類、特に、高分子量ポリビニルピロリドンおよびポリエチレンオキシド・オリゴマーの群から選択される構成成分を含む又はからなる、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記接着剤がアクリル接着剤である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記ゴム接着剤がスチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体またはスチレン−ブタジエン・ブロック共重合体を含む又はからなる、請求項6に記載の製剤。
【請求項9】
前記アクリル接着剤がポリアクリレートを含む又はからなる、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記ポリアクリレートが、ポリブチルアクリレート、ポリメチルアクリレートおよびポリ−2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記接着剤が架橋剤を含む、請求項4〜10の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記鎮痛剤がブプレノルフィン又はその薬学的に許容し得る塩である、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記鎮痛剤がブプレノルフィンないしはその薬学的に許容し得る塩である、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項14】
アロエ抽出の抽出剤または媒体が植物油である、前記請求項の少なくとも一項、特に請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
前記植物油が硬化油である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記植物油が大豆油である、請求項14または15に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が、前記アロエ組成物に加えて他の透過剤を含む、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記追加の透過剤が、エチルアルコール;イソプロピルアルコール;オクチルフェノール;ポリエチレングリコール・オクチルフェニル・エーテル;オレイン酸;ポリエチレングリコール(PEG)、特にPEG400;プロピレングリコール;N−デシルメチルスルホキシド;脂肪酸エステル類、特にミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、グリセロール・モノオレエートおよびプロピレングリコール・モノオレエート;ならびにN−メチルピロリドンからなる群より選択される、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記組成物が、保存剤、特に、アルコール類、第四級アミン類、有機酸、パラベン類およびフェノール類の群から選択される保存剤を含む、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記製剤が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、綿または羊毛からなる群より選択される物質を含む又はからなるバッキングを含む、前記請求項の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項21】
前記バッキングがポリオレフィン箔である、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
前記箔が、0.5〜1.5、特に0.6〜1.0mmの厚さを有する、請求項21に記載の製剤。

【公開番号】特開2012−188447(P2012−188447A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129370(P2012−129370)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−525053(P2006−525053)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(506072859)アシーノ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】