説明

オフセット作業機

【課題】回動可能な農作業機の一部を二つの位置で固定することができるリンク機構の大きさをコンパクトにすることができるオフセット作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタに装着して農作業を行う農作業機1の作業部18をシリンダ15の伸縮を利用したリンク機構3により回動させて二つの位置で固定可能なオフセット作業機において、リンク機構3は、二つのフック部40a、40bを有するフック部材40と、第1のカム部43cと第2のカム部43dを有しフック部材40と連動するカム部材43と、第1の当接部37と第2の当接部38を有するロック駆動部材36とを備え、作業部18は、フック部材40の二つのフック部40a、40bが、異なる二カ所の係合部23c、23dにそれぞれ係合することにより二つの位置で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット作業機に関し、特に、回動可能な作業機の一部が二つの位置で固定することができるトラクタに装着して農作業を行うオフセット作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着して農作業を行う作業機は、その用途に合わせて、作業機の一部が回動するなどしてオフセット移動可能になっている場合がある。このとき、回動可能な農作業機の一部は、シリンダの伸縮等により回動することができる(例えば、特許文献1)。しかし、シリンダ等の保持力が足りない場合は、ロック機構により固定する必要がある。
【0003】
固定の方法としては、例えば、フックを用いて、フックをピンに引っかけて固定する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−102640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フックを利用した場合、シリンダに連動させて固定するためには、例えば、カム等を用いてフックの解除の動きをシリンダの伸縮に連動させる必要がある。しかし、一対一でカムとフックを連動させた場合は、カムの形状をフックの動きに合わせて形成する必要があるため、全体として、ロック機構を大きくする必要がある。特に、二つの位置で固定する場合は、二カ所でフックの解除の動きを実現しなければならず、カムの形状がどうしても大きくなってしまい、設計上の制約が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて、回動可能な農作業機の一部を二つの位置で固定することができるリンク機構の大きさをコンパクトにすることができるオフセット作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のオフセット作業機は、トラクタに装着して農作業を行う農作業機の作業部をシリンダの伸縮を利用したリンク機構により回動させて二つの位置で固定可能なオフセット作業機において、前記リンク機構は、二つのフック部を有するフック部材と、第1のカム部と第2のカム部を有し前記フック部材と連動するカム部材と、第1の当接部と第2の当接部を有するロック駆動部材とを備え、前記作業部は、前記フック部材の二つのフック部が、異なる二カ所の係合部にそれぞれ係合することにより二つの位置で固定されることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明のオフセット作業機は、前記第1のカム部と前記第1の当接部に対して、前記第2のカム部と前記第2の当接部は異なる高さに設けられていることを特徴とする。
さらに本発明のオフセット作業機は、前記ロック駆動部材の当接部はローラにより形成されていることを特徴とする。
さらに本発明のオフセット作業機は、前記固定の解除が、前記リンク機構により、一方の位置では、前記第1の当接部が前記第1のカム部を押して前記一方のフック部の固定を解除し、他方の位置では、前記第2の当接部が前記第2のカム部を押して前記他方のフック部の固定を解除することを特徴とする。
さらに本発明のオフセット作業機は、前記第1のカム部と前記第2のカム部は、凹面を有し、凹面の一方の側面は前記当接部で押すことによってフックの固定の解除をする当接面であり、他方の側面は外力により前記フックの固定が解除されないように前記当接部に当てる当接面であることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明のオフセット作業機は、前記リンク機構が、途中に長孔とピンによる接続部で接続され、前記ピンが前記長孔内を移動中に前記フックの固定の解除が行われることを特徴とする。
さらに本発明のオフセット作業機は、当該オフセット作業機が畦塗り機であって、畦塗り作業する作業部をシリンダの伸縮を利用したリンク機構により回動させて二つの位置で固定可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オフセット作業機において、回動可能な農作業機の一部を二つの位置で固定することができるリンク機構の大きさをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一例である畦塗り機の各状態を示す平面図である。(a)は前進作業状態を示す。(b)は格納状態を示す。(c)はバック作業状態を示す。
【図2】本発明のオフセットリンク機構及びリターンリンク機構の一例を示す拡大図である。
【図3】本発明におけるロックカムの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の一例である畦塗り機の前進作業状態を示す拡大平面図である。
【図5】本発明の一例である畦塗り機の格納状態を示す拡大平面図である。
【図6】本発明の一例である畦塗り機の格納状態からフックを外した状態を示す拡大平面図である。
【図7】本発明の一例である畦塗り機のバック作業状態でフックに対するロックがかかる前の状態の拡大平面図である。
【図8】本発明の一例である畦塗り機のバック作業状態を示す拡大平面図である。
【図9】本発明の一例である畦塗り機のバック作業状態からフックを外した状態を示す拡大平面図である。
【図10】本発明の一実施形態を示す農作業機の格納状態でフックに対するロックがかかる前の状態の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を畦塗り機1を例示して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一例である畦塗り機1の各状態を示す平面図である。畦塗り機1は、オフセット及びリターン機構を備えており、装着部11が図示を省略したトラクタの後部に装着され、作業部18は、耕耘部16と、ディスク部17を有している。トラクタからの動力は、ジョイントなどを介して作業部18に伝達され、この動力により前方の耕耘部16で旧畦の土を盛り上げ、ディスク部17の回転により畦形状に形成する。
【0014】
図1(a)は、前進作業状態であり、トラクタを前進させて右側面の畦を形成していく。図1(a)の状態から、第1シリンダ14を縮ませると、作業部18は、オフセットリンク機構2の作用により装着部11より内側(左側)へオフセット移動し、図1(b)の格納状態となる。この状態では、非作業時に安全に畦塗り機1を移動させることができる。そして、図1(b)の状態から第2シリンダ15を伸ばすと、リターンリンク機構3の作用により作業部18が回動し左側に移動して、耕耘部16とディスク部17が逆の向きになる。図1(c)がリターンさせた状態であり、トラクタを旋回させてバック走行することにより塗り残していた圃場の隅を塗ることができる。リターンリンク機構3には、ロック機構を有しており、その詳細は後述する。
【0015】
第1シリンダ14や第2シリンダ15は、油圧回路による油圧シリンダや、電動油圧シリンダ、機械式のシリンダ等を適用でき、遠隔で操作するようにして作業の効率を高めることができる。
【0016】
図2は、本発明のオフセットリンク機構2及びリターンリンク機構3の一例を示す拡大図である。
【0017】
オフセットリンク機構2は、装着部11、第1回動リンク21、第2回動リンク22、回動フレーム23で構成されている。第1回動リンク21は、一端が装着部11に、他端が回動フレーム23に水平方向に回動可能に支持されている(21a、21b)。第2回動リンク22も同様に、一端が装着部11に、他端が回動フレーム23に水平方向に回動可能に支持されている(22a、22b)。このとき、第1回動リンク21は右側(前進作業における作業部18側)に、第2回動リンク22は左側に取り付けられ、第1回動リンク21の方が、第2回動リンク22より長さが長くなっている。また、前進作業状態(図1(a))のときは、平行で、かつ、作業部18に向けて斜めになるように配置されている。なお、第1シリンダ14は、第1回動リンク21の取付部21cと装着部11の左側の取付部11aの間に装着されている。
【0018】
次に、リターンリンク機構3について説明する。
【0019】
回動フレーム23は、前方側で第1回動リンク21と第2回動リンク22を取り付け、その間にアーム取付部23aを有する。また後方側の中央には、フレーム取付部23bを有する。また、後方側の右側と左側にピン状の第1係合部23cと第2係合部23dを有している。
【0020】
メインフレーム30は、一端が、接続部30pとなっており、他端に作業部18が備えられている。接続部30pは、回動フレーム23のフレーム取付部23bに回動可能に取り付けられている。また、メインフレーム30の途中には、一方の側面にリンク部材取付部30aを他方の側面にフック取付部30bとバネ取付部30cを有しており、上部に、カム取付部30dを有している。バネ取付部30cには、第2のバネ42の一端が取り付けられている。また、フック取付部30bの下部は、メインフレーム30に固定されるストッパ部45となっており、受け部45a、45bで第1係合部23cと第2係合部23dをそれぞれ受けてメインフレーム30の回動を止める。
【0021】
リンク部材31は、一端の接続部31aが第2シリンダ15の一端の取付部15aと回動可能に接続されており、他端の接続部31bがアーム32の長孔部32aで連結されている。接続部31bは例えば、ピン形状として、長孔部32a内で長手方向に移動することができる。また、中央には一方向に張り出す張出部31cを有し、ここに有する接続部31dでメインフレーム30のリンク部材取付部30aに回動可能に取り付けられている。また、張出部31cには、接続部31dに近接した先端側にロック駆動部材取付部31eを有している。さらに、バネ取付部31fを有し、第1のバネ35の一端が取り付けられている。また、接続部31bの近傍には、切替カム取付部31gを有している。また、ストッパ31hも切替カム取付部31gの近傍に備えられている。
【0022】
アーム32は、一端に長孔部32aを有しおり、リンク部材31と接続されている。他端には接続部32bを有しており、回動フレーム23のアーム取付部23aに回動可能に取り付けられている。また、長孔部32aの近傍に、側面からリンク部材31側に突出する突起部32cを有している。
【0023】
切替カム33は、中央に接続部33aを有しており、リンク部材31の切替カム取付部31gに回動可能に取り付けられている。一方、アーム32の反対側にはバネ取付部33bとロッド取付部33cを有し、バネ取付部33bは第1のバネ35の他端が取り付けられ、ロッド取付部33cは、第1ロッド34の一端が回動可能に取り付けてある。また、アーム32側に第1突起部33dと第2突起部33eを有している。
【0024】
ロック駆動部材36は板状部材で、一端部に第1ローラ37が、中央側面に第2ローラ38が取り付けてある。第1ローラ37は板の上側、第2ローラ38は板の下側に取り付けており、取り付けられる位置の高さも異なっている。これらのローラ間の中程に接続部36aを有しており、リンク部材31のロック駆動部材取付部31eに回動可能に取り付けられている。また、第1ローラ37と反対側の端部には、取付部36bを有しており、第1ロッド34の他端が回動可能に取り付けられている。
【0025】
ロック用フック40には、第1のフック部40aと第2のフック部40bの二つのフック部が両側に左右対称に備えられ、その中央が接続部40cとなっており、メインフレーム30のフック取付部30bに回動可能に取り付けられている。また、フック部の背面側にはロッド取付部40dを有し、第2ロッド41の一端が回動可能に取り付けられている。また、二つのフック部40a、40b間のフック部側の側面には、バネ取付部40eを有しており、第2のバネ42の他端が取り付けられている。フック部40a、40bは、内側の凹んだ係合部40p、40xとその外側の側面には、傾斜した当接面40q、40yとを有する。
【0026】
図3は、本発明におけるロックカム43の一例を示す斜視図である。ロックカム43は、一端にロッド取付部43aを有し、アーム部43bを介して第1のカム部43cが形成されている。ロッド取付部43aには、第2ロッド41の他端が回動可能に取り付けられている。また、第1のカム部43cの上部には、第2のカム部43dが設けられている。第1のカム部43cに、摺動面として第1側面43pと第2側面43rを有する凹面43qが形成され、第2のカム部43dに、摺動面として第1側面43xと第2側面43zを有する凹面43yが形成されている。凹面43qと凹面43yは上下に並んで同じ方向に向けて形成されている。また、接続部43eは、第1のカム部43cや第2のカム部43dに位置し、メインフレーム30のカム取付部30dに回動可能に取り付けられている。回動中心は、凹面43q及び凹面43yの近傍となり、第1側面43p、43xに対して第2側面43r、43zは、かかる負荷による回動方向が逆になるように形成されている。第1側面43pと第2側面43zは、ローラ37、38で押すことによってロック用フック40の固定の解除をする当接面となり、第2側面43rと第1側面43xは、外力によりロック用フック40の固定が解除されないようにローラ37、38に当てる当接面となる。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。図4〜図10は、畦塗り機1の各状態を示しており、説明のため作業部18における耕耘部16とディスク部17の具体的な図示は省略している。
【0028】
図4は、畦塗り機1の格納状態を示す拡大平面図である。図4は、図1(a)の状態に対応する。作業部18は右側に位置し、第1シリンダ14は伸びた状態である。装着部11に対する回動フレーム23の保持力は、第1シリンダ14により保持されている。また、第2シリンダ15は縮んだ状態にある。このとき、ロック用フック40の第1のフック部40aが、回動フレーム23の第1係合部23cに係合し、メインフレーム30の回動フレーム23に対する回動を止めている。
【0029】
図5は、畦塗り機1の格納状態を示す拡大平面図である。図5は、図1(b)の状態に対応する。図4の状態から、第1シリンダ14を縮ませると、オフセットリンク機構2が作用して、回動フレーム23が角度を変えながら移動し、図5の状態となる。これは、第1回動リンク21と第2回動リンク22の長さの違い等によって姿勢が決められるためである。また、リターンリンク機構3はそのままである。
【0030】
なお、この状態で、切替カム33の第1突起部33dは、アーム32の突起部32cに当接して一方向の回動を規制し、切替カム33の第2突起部33eは、アーム32の側面に当接して他方向の回動を規制している。このことにより、切替カム33が回動せず、それと連動しているロック駆動部材36も固定されていることになる。このため、ロック用フック40に外力を加えて外そうとしても、それと連動するロックカム43の第2側面43rが、凹面43qに配置された第1ローラ37に当接して動かすことができないようになっている。
【0031】
図6は、畦塗り機1の格納状態からフック40を外した状態を示す拡大平面図である。図5の状態から、第2シリンダ15をわずかに伸ばす。このとき、リンク部材31は、接続部31dを中心に第2シリンダ15に押されて、反時計回りに回動するが、アーム32との接続部31bは、長孔部32a内で移動するだけで、アーム32へ力は伝達されない。このため、メインフレーム30は、回動フレーム23に対してまだ回動しない状態となっている。
【0032】
このとき、ロック駆動部材36は、リンク部材31の回動と合わせて移動する。また、切替カム33は、第2突起部33eがアーム32の側面に当接するのと、第1のバネ35の付勢力により回動が規制される。すると、第1ローラ37が、ロックカム43の第1側面43pを(図6の下方向へ)押し、ロックカム43は接続部43eを中心に時計回りに回動し、第2ロッド41を押す。これにより、ロック用フック40が接続部40cを中心に時計回りに回動し、第1のフック部40aが第1係合部23cから外れる。
【0033】
図6の状態から、第2シリンダ15をさらに伸ばすと、リンク部材31の接続部31bが、アーム32の長孔部32aの(アーム32側の)端面に当接したまま、その力は接続部32bを介して回動フレーム23へ伝達される。また、第2シリンダ15の他端の取付部15bは、メインフレーム30と一体に接合されている作業部18の後方で接続されている。これらにより、第2シリンダ15をさらに伸ばすと、メインフレーム30が、メインフレーム30の接続部30pを中心に時計回りに回動する。
【0034】
図7は、畦塗り機1のバック作業状態でフックに対するロックがかかる前の状態の拡大平面図である。メインフレーム30が回動すると、ロック用フック40もこの回動にあわせて移動する。すると、ロック用フック40の当接面40yが、回動フレーム23の第2係合部23dのピンに当たり、その力で、第2のバネ42の付勢力に対向して、ロック用フック40が反時計回りに回動し、当接面40yが第2係合部23dに当接しない位置まで摺動しながら回動すると、今度は、第2のバネ42の付勢力で時計回りに回動してロック用フック40の係合部40xが回動フレーム23の第2係合部23dに係合する。
【0035】
また、ロックカム43がメインフレーム30の回動にあわせて移動する。一方、リンク部材31は、接続部31aで第2シリンダ15と接続されているため、メインフレーム30の回動にあわせて移動するとともに、接続部31dを中心に回動して角度が変わる。これにより、リンク部材31上のロック駆動部材36に対するメインフレーム30上のロックカム43の角度が変わり、ロック駆動部材36の第2ローラ38が、ロックカム43の第2のカム部43dに近づく。このとき、切替カム33は、第2突起部33eのアーム32に対する当接と、第1のバネ35の力により回動が規制され、それと連動するロック駆動部材36の回動も規制される。
【0036】
一方、これらの回動をするときは、畦塗り機1を地面より少し上げて行う。このとき、トラクタの昇降機構により畦塗り機1はやや前傾した状態となることが多く、このため、メインフレーム30が一定以上回動すると作業部18の自重により前方向に力がかかる。それにともない、アーム32の長孔部32aに対するリンク部材31の接続部31bの位置は、作業部18側へ移動する。
【0037】
図8は、畦塗り機1のバック作業状態を示す拡大平面図である。図8は、図1(c)の状態に対応する。図7の状態から、第2シリンダ15をさらに伸ばすと、長孔部32aの長孔分だけ、リンク部材31が接続部31dを中心に反時計回りに回動し、同時にリンク部材31上のロック駆動部材36も移動する。このとき、切替カム33は、第2突起部33eのアーム32の側面に対する当接と、第1のバネ35の力により回動は規制され、それと連動するロック駆動部材36の回動も規制される。これらにより、第2ローラ38は、ロックカム43の第2のカム部43dにおける凹面43yに接した位置に移動する。このことにより、ロック用フック40を解除する方向(反時計回り)に力が働いても、第2のカム部43dの第1側面43xが第2ローラ38に当接してロックカム43の反時計回りの回動が阻止され、連動するロック用フック40も動かない。
【0038】
図9は、畦塗り機1のバック作業状態からフックを外した状態を示す拡大平面図である。図8の状態から第2シリンダ15を少し縮めると、長孔部32aの長孔分だけ、リンク部材31が接続部31dを中心に時計回りに回動し、同時にリンク部材31上のロック駆動部材36も移動する。このとき、切替カム33がリンク部材31に有するストッパ31hに当接していることと、第1のバネ35の付勢力により、切替カム33の回動は規制され、それと連動するロック駆動部材36の回動も規制される。これらにより、第2ローラ38は、ロックカム43の第2のカム部43dにおける第2側面43zを押し、ロックカム43は、接続部43eを中心に反時計回りに回動する。さらに、第2ロッド41を介して、ロック用フック40も第2のバネ42の付勢力に抗して反時計回りに回動し、第2のフック部40bが第2係合部23dから外れてロックが解除される。
【0039】
図9の状態から、第2シリンダ15をさらに縮めると、リンク部材31の接続部31bが、アーム32の長孔部32aの(リンク部材31側の)端面に当接したまま、メインフレーム30が、接続部30pを中心に反時計回りに回動する。
【0040】
図10は、作業機1の格納状態でフックに対するロックがかかる前の状態の拡大平面図である。メインフレーム30が回動すると、ロック用フック40もこの回動にあわせて移動し、ロック用フック40の当接面40qが、回動フレーム23の第1係合部23cであるピンに当たり、このときの反力でロック用フック40が、第2のバネ42の付勢力に対抗して、接続部40cを中心に時計回りに回動する。ロック用フック40の当接面40qが第1係合部23cに当接しない位置まで回動すると、今度は、第2のバネ42の付勢力で反時計回りに回動してロック用フック40の係合部40pが回動フレーム23の第1係合部23cに係合しロックされる。
【0041】
また、ロックカム43もメインフレーム30の回動にあわせて移動する。一方、リンク部材31は、接続部31aで第2シリンダ15と接続されているため、メインフレーム30の回動にあわせて移動しながら、接続部31dを中心にメインフレーム30に対して時計回りに回動する。これにより、リンク部材31上のロック駆動部材36に対するメインフレーム30上のロックカム43の角度が変わり、ロック駆動部材36の第1ローラ37が、ロックカム43の第1のカム部43cに近づく。このとき、切替カム33は、第1突起部33dのアーム32に対する当接と、第1のバネ35の力により回動が規制され、そのため、それと連動するロック駆動部材36の回動も規制される。
【0042】
なお、畦塗り機1は、やや前傾した状態では、作業部18の自重により前方向に力がかかり、それにともない、アーム32の長孔部32aに対するリンク部材31の接続部31bの位置は、アーム32側へ移動している。
【0043】
図10の状態から、第2シリンダ15をさらに縮めると、長孔部32aの長孔分だけ、リンク部材31が接続部31dを中心に時計回りに回動し、これによりロック駆動部材36は前方へ移動する。その状態が図5となる。このとき、切替カム33の第1突起部33dがアーム32の突起部32cに当接して、切替カム33の第2突起部33eがアーム32の側面に当接していることにより、切替カム33の回動は規制され、それと連動するロック駆動部材36の回動も規制される。これらにより、第1ローラ37は、ロックカム43の第1のカム部43cにおける凹面43qに当接した位置に移動し、ロック用フック40の回動を規制する。
【0044】
このように、リターンリンク機構3により、回動可能なメインフレーム30(作業部18)を2つの位置でロック用フック40の係合により固定することができる。このため、作業部18に第2シリンダ15の保持力以上の力がかかっても、回動してしまうことがなくなる。そして、ロック駆動部材36の異なる位置に配置された第1ローラ37と第2ローラ38を、ロックカム43のカム部43cと43bにそれぞれの固定位置で当接する機構とすることで、ロック用フック40の解除の動きを制御することができ、カムの形状を大きくすることなく全体としてコンパクトにすることができる。なお、二つのローラ37、38はローラにすることによりスムーズに摺動できるが、ローラ形状としない円弧状等の当接部であってもよい。
【0045】
上記実施形態は、畦塗り機について説明したが、これに限らず、例えば、溝掘り機等、農作業機の一部を回動させて、2つの位置で固定してトラクタに装着して農作業を行う農作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 畦塗り機
3 リターンリンク機構
11 装着部
14 第1シリンダ
15 第2シリンダ
16 耕耘部
17 ディスク部
18 作業部
23 回動フレーム
23c 第1係合部
23d 第2係合部
30 メインフレーム
30p 接続部
31 リンク部材
32 アーム
32a 長孔部
33 切替カム
36 ロック駆動部材
37 第1ローラ
38 第2ローラ
40 ロック用フック
40a 第1のフック部
40b 第2のフック部
43 ロックカム
43c 第1のカム部
43d 第2のカム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機の作業部をシリンダの伸縮を利用したリンク機構により回動させて二つの位置で固定可能なオフセット作業機において、
前記リンク機構は、二つのフック部を有するフック部材と、第1のカム部と第2のカム部を有し前記フック部材と連動するカム部材と、第1の当接部と第2の当接部を有するロック駆動部材とを備え、
前記作業部は、前記フック部材の二つのフック部が、異なる二カ所の係合部にそれぞれ係合することにより二つの位置で固定されることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項2】
請求項1に記載のオフセット作業機において、
前記第1のカム部と前記第1の当接部に対して、前記第2のカム部と前記第2の当接部は異なる高さに設けられていることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のオフセット作業機において、
前記ロック駆動部材の当接部はローラにより形成されていることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオフセット作業機において、
前記固定の解除は、前記リンク機構により、一方の位置では、前記第1の当接部が前記第1のカム部を押して前記一方のフック部の固定を解除し、他方の位置では、前記第2の当接部が前記第2のカム部を押して前記他方のフック部の固定を解除することを特徴とするオフセット作業機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のオフセット作業機において、
前記第1のカム部と前記第2のカム部は、凹面を有し、凹面の一方の側面は前記当接部で押すことによってフックの固定の解除をする当接面であり、他方の側面は外力により前記フックの固定が解除されないように前記当接部に当てる当接面であることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のオフセット作業機において、
前記リンク機構は、途中に長孔とピンによる接続部で接続され、前記ピンが前記長孔内を移動中に前記フックの固定の解除が行われることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のオフセット作業機において、
当該オフセット作業機は畦塗り機であって、畦塗り作業する作業部をシリンダの伸縮を利用したリンク機構により回動させて二つの位置で固定可能なことを特徴とするオフセット作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5774(P2013−5774A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141730(P2011−141730)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】