オフセット印刷方法及び装置
【課題】 印刷精度を向上させる。
【解決手段】 架台１上に設けたガイドレール２上に、版テーブル４と基板テーブル６を走行可能に設ける。ガイドレール２の長手方向中間部と対応する個所に、ブランケットロール１０と、ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３と、ブランケットロール１０の高さセンサ１４と、ブランケットロール１０の版３や基板５に対する接触圧力を検出する圧力センサ１５を備えてなる転写機構部９を設ける。ブランケットロール１０を版３や基板５に接触させるときに圧力センサ１５で検出される接触圧力が所定の値になるように昇降用アクチュエータ１３を制御するコントローラを備える。版３からブランケットロール１０へ転写を行うときの接触圧力と、ブランケットロール１０から基板５へ再転写を行うときの接触圧力をそれぞれ均一にすることで、版３や基板５との接触部分の変形量を均一にすると共に周速が等しくなるようにさせる。
【解決手段】 架台１上に設けたガイドレール２上に、版テーブル４と基板テーブル６を走行可能に設ける。ガイドレール２の長手方向中間部と対応する個所に、ブランケットロール１０と、ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３と、ブランケットロール１０の高さセンサ１４と、ブランケットロール１０の版３や基板５に対する接触圧力を検出する圧力センサ１５を備えてなる転写機構部９を設ける。ブランケットロール１０を版３や基板５に接触させるときに圧力センサ１５で検出される接触圧力が所定の値になるように昇降用アクチュエータ１３を制御するコントローラを備える。版３からブランケットロール１０へ転写を行うときの接触圧力と、ブランケットロール１０から基板５へ再転写を行うときの接触圧力をそれぞれ均一にすることで、版３や基板５との接触部分の変形量を均一にすると共に周速が等しくなるようにさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、基板に電極パターンを印刷により形成させる場合のように、印刷対象に精細な印刷を高い印刷精度で行うために用いるオフセット印刷方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、液晶ディスプレイ等の電極パターン（導電パターン）を所要の基板上に形成する手法として、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷インクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に電極パターンを印刷して形成する手法が提案されてきている（たとえば、特許文献１、特許文献２参照）。
【０００３】
上記液晶ディスプレイ等の電極パターンを基板に形成する場合は、電極幅として、たとえば、１０μｍ程度と微細なものが要求されることがある。更に、基板上に複数の電極パターンを重ね合わせて形成することがあり、この場合は版を代えて電極パターンの重ね刷りを行うことになるが、印刷位置がずれると電極パターンが崩れてしまうことから、精度は対象によって多少異なるが、上記電極幅を１０μｍ程度とするような精細な電極パターンでは、重ね合わせずれを数μｍに抑えることが必要とされることもある。そのため、上記基板上への電極パターンの印刷は、紙等に文字や画像を印刷する通常の凹版オフセット印刷に比して高い印刷精度が要求される。
【０００４】
従来、凹版オフセット印刷の印刷精度を高めるために提案されている手法の１つとしては、オフセット印刷機を、上面に凹版及び印刷対象となるワークが保持される移動テーブルと、移動テーブルの上方に配された転写用のブランケットロール（転動ブランケット）と、上記移動テーブル及びブランケットロールを独立に駆動する駆動機構と、上記移動テーブル用とブランケットロール用の各駆動機構をそれぞれ独立に制御する数値制御コントローラとを備えてなる構成として、凹版及びワークを保持させた上記移動テーブルの移動と、上記ブランケットロールの回転をそれぞれ独立して動作させ、ブランケットロールの周速をオペレータが手入力で微調整することにより、凹版からブランケットロールへの転写（受理）、及び、ブランケットロールからワークへの再転写（印刷）の精度を高める手法がある（たとえば、特許文献３参照）。
【０００５】
又、オフセット印刷の印刷精度を高めるための別の手法としては、円筒状当接部を有するローラ（ブランケットロール）と、平板状の板状体を支持すると共に上記円筒状当接部に当接する平面状当接部を有する本体と、を備え、上記平面状当接部に対して上記円筒状当接部を当接させつつ上記ローラと上記板状体を相対的に並進移動させながら上記ローラと上記板状体としての版（マスタ板）や印刷対象となる基板（ワーク板）との間でインクを転移する印刷機において、上記円筒状当接部と上記平面状当接部との間の接触力を調節する接触力調節手段を備えてなる構成の印刷機とすることが提案されている。
【０００６】
かかる構成としてある印刷機によれば、上記接触力調整手段により円筒状当接部と平面状当接部との接触力を調節して、接触力を変化させると、円筒状当接部の接触部分が平面状当接部の平面形状に倣うように変形する度合いが変化することで、この円筒状当接部の接触部分の曲率半径が変化して、見かけ上の直径が増減するため、同一の並進移動量とした場合であっても、上記ローラの回転角度を変化させることができるため、上記本体に支持された板状体としての版や基板に対する上記ローラの角度位置、すなわち、印刷位置の見当合わせを高精度で行うことができるとされている（たとえば、特許文献４参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特許第２７９７５６７号公報
【特許文献２】特許第３９０４４３３号公報
【特許文献３】特開２０００−２７２０７９号公報
【特許文献４】特開２００６−１４２７６４号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
ところが、オフセット印刷で用いるブランケットロールは、周壁の表面が所要のゴム等、所要の弾性を備えた材料で形成してあるため、版や印刷対象である基板に所要の圧力をかけて押し付けると、接触部分が該版や基板の表面に沿って歪むようになる。このため、上記版よりブランケットロールへインクを転写させる際、及び、上記ブランケットロールより基板へインクを再転写させる際におけるインクの付き具合は、版とブランケットロールとの接触圧力（印圧）、及び、ブランケットロールと基板との接触圧力（印圧）によってそれぞれ変化する虞が懸念される。そのために、たとえば、精細な電極パターンの印刷を行う場合は、細線として印刷される電極の太さが一定とならないという虞が懸念されるというのが実状である。
【０００９】
更に、上記ブランケットロールを版や印刷対象である基板に所要の圧力をかけて押し付けることで、該ブランケットロールの版や基板との接触部分が該版や基板の表面に沿って歪むようになると、該接触部分ではロール径が変化し、該ロール径の変化に伴ってブランケットロールの周速に変化が生じてしまうというのが実状である。
【００１０】
一方、印刷対象である基板は、すべて同一の厚み寸法として製造することは困難であるため、個々の基板には厚み寸法に多少のばらつきが生じてしまう。
【００１１】
又、重ね刷りを行うために用いる複数の版同士の間でも、個々の版に厚み寸法の多少のばらつきが生じることがある。
【００１２】
そのため、上記印刷対象である個々の基板に厚み寸法のばらつきに起因して、該各基板ごとにブランケットロールとの接触圧力に差が生じると、たとえ同じ版を用いている場合であっても、個々の基板に印刷される電極パターンの細線としての電極の太さが均一にならない虞や、各基板に印刷される印刷パターンが必ずしも一定にならず、再現性が低下する虞が懸念される。
【００１３】
更に、上記重ね刷りを行うために用いる複数の版同士の厚み寸法のばらつきに起因して、該各版ごとにブランケットロールとの接触圧力に差が生じると、１つの基板に上記複数の版を用いた重ね刷りによって形成される電極パターンの細線としての電極の太さが均一にならなかったり、重ね合わせずれが生じる虞が懸念される。
【００１４】
しかも、版は印刷に用いることで徐々に摩耗（消耗）するため、所要の印刷回数や印刷時間ごとに交換する必要が生じることがあるが、この場合、交換前の版と、交換後の新たな版との間に厚み寸法のばらつきがあると、ブランケットロールとの接触圧力に差が生じる虞があり、この場合も、版の交換の前後で基板に印刷される電極パターンの細線としての電極の太さが変化したり、基板に印刷される印刷パターンが変化して、再現性が得られなくなる虞が懸念される。
【００１５】
したがって、上記電極パターンのように精細な印刷パターンを形成するために高い印刷精度が要求される場合には、上記版とブランケットロールとの接触圧力の変化や、ブランケットロールと各基板との接触圧力の変化に起因して、印刷される細線の太さのわずかな変化が生じたり、上記ブランケットロールのわずかなロール径の変化に伴う周速の変化による印刷位置のずれが生じたりすることによっても、求められる印刷精度を達成するのに障害になる虞が懸念される。
【００１６】
なお、上記特許文献３に示された手法では、ブランケットロールの周速を調整する考えは示されているが、手入力でブランケットロールの周速を調整する必要があり、又、適切なブランケットロールの周速が得られているか否かを、印刷結果からオペレータが目視で判断するようになっているため、定量的な評価が困難であるという問題がある。
【００１７】
上記特許文献４には、ローラ（ブランケットロール）の円筒状当接部と、版や基板を支持する本体に設けた平面状当接部との間の接触力（接触圧力）を調節することで、印刷位置の見当合わせを高精度で行う考えは示されているが、版に対するローラの接触圧力と、必ずしも厚み寸法が一定にはならない各基板に対するローラの接触圧力とを一定にする考えは何ら示されていない。そのため、上記特許文献４に示された手法では、前述したようなローラの版や基板との接触圧力の差が生じる虞を解消することはできない。又、ローラが版や基板に接触するときに接触圧力の差が生じることに起因して、該ローラの版や各基板に対する接触部分のローラ径の変化量に差が生じ、該接触部分の周速が変化することで各基板に対する印刷精度、再現性が低下するという問題を解消できるものではない。更には、印刷位置の見当合わせを行うために版や基板を支持する本体に設けた平面状当接部との間の接触力（接触圧力）を操作することは、オフセット印刷による印刷パターンを均一なものとするという本来の目的からすると妥当ではない。
【００１８】
そこで、本発明は、上記基板のように印刷対象が必ずしも一定の厚み寸法となっていないとしても、各印刷対象に対し、細線の太さが均一でかすれやにじみがない印刷パターンを、高い再現性で印刷することができて、印刷精度を高めることができると共に、重ね刷りに用いる複数の版同士が必ずしも一定の厚み寸法となっていない場合や、版の交換時に交換前と後の版同士が必ずしも一定の厚み寸法となっていない場合であっても、細線にかすれやにじみがない印刷パターンを、高い再現性で印刷することができて、印刷精度を高めることができ、よって、電極パターンのような精細な印刷を高精度で行うことができると共に、重ね刷りをする場合であっても重ね合わせずれをマイクロメートルオーダーに抑えることが可能なオフセット印刷方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１９】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項１に対応して、昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触する間の接触圧力と、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触する間の接触圧力が、それぞれ所定の値で一定に保持されるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御するようにするオフセット印刷方法とする。
【００２０】
又、請求項２に対応して、昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触している間、一定に保持するようにし、更に、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触している間、一定に保持するようにするオフセット印刷方法とする。
【００２１】
更に、請求項３に対応して、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、及び、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、それぞれ上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値で一定に保持されるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能を有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置とする。
【００２２】
更に又、請求項４に対応して、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの高さ位置を検出する高さセンサと、上記ブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能と、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能とを有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置とする。
【００２３】
又、上記構成において、コントローラを、ブランケットロールと版との間で転写を行う間、及び、ブランケットロールと印刷対象との間で転写を行う間、圧力センサより入力された接触圧力がそれぞれ所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与えるときに、ブランケットロールに偏心が生じている場合は、該ブランケットロールの偏心量を基に、上記ブランケットロールを保持すべき高さ位置に対して補正を加える機能を有するものとした構成とする。
【発明の効果】
【００２４】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
（１）昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触する間の接触圧力と、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触する間の接触圧力が、それぞれ所定の値で一定に保持されるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御するようにするオフセット印刷方法、及び、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、及び、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、それぞれ上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値で一定に保持されるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能を有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置としてあるので、ブランケットロールを版に接触させてインクの転写を行うときの接触圧力と、ブランケットロールを印刷対象に接触させて再転写を行うときの接触圧力を、それぞれ所定の接触圧力で均一にすることができるため、ブランケットロールを版に接触させるときの接触部分の変形量と、ブランケットロールを印刷対象に接触させるときの接触部分の変形量を、それぞれ均一にさせることができる。したがって、印刷する細線の太さを均一にすることができると共に、上記版からブランケットロールへの転写を行わせるときのブランケットロールの周速と、ブランケットロールより印刷対象へインクを再転写するときのブランケットロールの周速を、それぞれ均一にさせることができて、版からブランケットロールを介して印刷対象へ印刷する印刷パターンの再現性を高めることができる。よって、印刷対象に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを正確に印刷することができる。
（２）よって、印刷対象テーブルに保持させる印刷対象の厚み寸法にばらつきがあったとしても、各印刷対象ごとに再転写を行う際のブランケットロールの接触圧力や周速がばらつく虞を未然に防止できることから、該各印刷対象ごとに印刷精度や再現性のばらつきが生じる虞を未然に防止することができる。
（３）又、重ね刷りを行うための複数の版や、版を交換するときの交換前と交換後の版に厚み寸法のばらつきがあったとしても、各版に対するブランケットロールの接触圧力や周速がばらつく虞を未然に防止できることから、上記版の厚み寸法のばらつきに起因して印刷精度や再現性がばらつく虞を未然に防止することができる。
（４）更に、印刷対象に対して正確で且つ再現性の高い印刷を行うことができることから、印刷対象に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを重ね刷りをする場合であっても、重ね合わせずれを抑制することができて、重ね合わせずれをマイクロメートルオーダーに抑えるのに有利な構成とすることができる。
（５）昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触している間、一定に保持するようにし、更に、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触している間、一定に保持するようにするオフセット印刷方法、及び、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの高さ位置を検出する高さセンサと、上記ブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能と、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能とを有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置とすることにより、ブランケットロールを版や印刷対象に接触させて接触圧力をそれぞれ一旦所定の接触圧力に制御した後は、上記ブランケットロールの接触圧力が所定の接触圧力にされた時点でのブランケットロールの高さ位置を保持することで、ブランケットロールを版に接触させるときの接触部分の変形量と、ブランケットロールを印刷対象に接触させるときの接触部分の変形量をそれぞれ均一にした状態で版や印刷対象に接触させることができる。よって、上記（１）（２）（３）（４）と同様の効果を得ることができる。
（６）コントローラを、ブランケットロールと版との間で転写を行う間、及び、ブランケットロールと印刷対象との間で転写を行う間、圧力センサより入力された接触圧力がそれぞれ所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与えるときに、ブランケットロールに偏心が生じている場合は、該ブランケットロールの偏心量を基に、上記ブランケットロールを保持すべき高さ位置に対して補正を加える機能を有するものとした構成とすることにより、ブランケットロールが偏心していても、該ブランケットロールの版や印刷対象に接触する部分の変形量を、ブランケットロールを版や印刷対象に接触させて接触圧力をそれぞれ一旦所定の接触圧力に制御した状態での変形量に保持した状態で版や印刷対象との間で転写や再転写を行わせることができる。よって、上記のようにブランケットロールが偏心していても印刷精度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明のオフセット印刷方法及び装置の実施の一形態を示す概略側面図である。
【図２】図１のオフセット印刷装置における転写機構部を拡大して示す切断側面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ方向矢視図である。
【図４】図１のオフセット印刷装置に備えるコントローラの制御構成を示す概要図である。
【図５】図１のオフセット印刷装置のコントローラによるブランケットロールの高さ位置制御を行う場合の制御ブロック図である。
【図６】図１のオフセット印刷装置のコントローラによるブランケットロールの接触圧力一定制御を行う場合の制御ブロック図である。
【図７】図１のオフセット印刷装置によりオフセット印刷を行う場合における転写機構部の転写動作手順を示すもので、（イ）は転写前の初期状態を、（ロ）はブランケットロールの回転と版テーブルの走行を同期して開始させた状態を、（ハ）はブランケットロールを版に接触させた状態をそれぞれ示す概要図である。
【図８】図１のオフセット印刷装置の転写機構部における転写動作手順の図７（ハ）に続く動作を示すもので、（イ）はブランケットロールの版との接触圧力を所定圧力に制御した状態を、（ロ）はブランケットロールの範囲対する接触圧力を所定圧力に保持させた状態を示す概要図である。
【図９】図１のオフセット印刷装置の転写機構部における転写動作手順の図８（ロ）に続く動作を示すもので、（イ）はブランケットロールを退避高さ位置まで上昇させた状態を、（ロ）は転写終了の状態をそれぞれ示す概要図である。
【図１０】図１のオフセット印刷装置のインキング装置を示すもので、（イ）は版に対するインキング開始前の状態を示す概略側面図、（ロ）は版にインク押し込みブレードとインク掻き取りブレードを接触させてインキングを開始した状態を示す概略側面図、（ハ）はインク押し込み部レートとインク掻き取りブレードの部分を拡大して示す側面図である。
【図１１】図１のオフセット印刷装置のインキング装置を示すもので、（イ）はブランケットロールへのインクの転写に供された後の版を保持した版テーブルを版テーブル待機エリアへ走行させる状態を示す概略側面図、（ロ）は版上のインク溜りをインク戻しブレードにより版のガイドレール長手方向の他端寄り端辺部へ戻す状態を示す概略側面図である。
【図１２】本発明の実施の他の形態を示すもので、オフセット印刷装置のコントローラによるブランケットロールの圧力一定制御完了時の高さ位置を保持させるロール高さ位置保持制御を行う場合の制御ブロック図である。
【図１３】図１２のロール高さ位置保持制御を行う場合の転写動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【００２７】
図１乃至図１１（イ）（ロ）は本発明のオフセット印刷方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【００２８】
すなわち、水平な架台１の上側に、一方向（Ｘ軸方向）に延びるガイドレール２、たとえば、２本一組のガイドレール２を設け、該ガイドレール２に、凹版等の版３を上面部に取り付けて保持させる版テーブル４と、印刷対象としての基板５を上面部に取り付けて保持させる印刷対象テーブルとしての基板テーブル６とを、ガイドレール２の長手方向の一端側（図１における左側）より順に並べて配置した状態でそれぞれ個別のガイドブロック２ａを介してスライド可能に取り付けると共に、該各テーブル４，６を、リニアモータ等の個別の駆動装置７により上記ガイドレール２に沿って独立して移動（走行）できるようにする。更に、上記版テーブル４と基板テーブル６は、上記架台１上に上記ガイドレール２と平行に設けた共通のリニアスケール８により、それぞれのガイドレール２の長手方向に沿う位置、すなわち、Ｘ軸方向の所要の点を基準とするＸ軸方向の絶対位置の検出を行うことができるようにする。
【００２９】
上記架台１上におけるガイドレール２の長手方向中間部と対応する個所には、上記ガイドレール２の上方にて該ガイドレール２の長手方向と直交する方向（Ｙ軸方向）に延びるように配置して駆動モータ１１により回転駆動可能なブランケットロール１０と、上記ブランケットロール１０の回転速度及び周方向の角度姿勢を検出するためのエンコーダ１２と、上記ブランケットロール１０を昇降させて、該ブランケットロール１０の周壁面の下端部が上記版テーブル４及び基板テーブル６の上面よりも所要寸法高い位置に配置される退避高さ位置（退避ポジション）Ｈａと、該ブランケットロール１０の周壁面の下端部が上記各テーブル４及び６の上面に対応した高さに配置される接触高さ位置（接触ポジション）Ｈｂとの間で移動させるための昇降用アクチュエータ１３と、上記ブランケットロール１０の高さ位置を検出するための高さセンサ１４と、上記昇降用アクチュエータ１３により上記接触高さ位置（接触ポジション）Ｈｂまで下ろしてその下方に配置された状態の上記版テーブル４に保持させた版３や上記基板テーブル６に保持させた基板５に接触させると共に下方へ付勢して押し付けるときの接触圧力を検出するための圧力センサ１５とを備えてなる転写機構部９を設ける。
【００３０】
更に、上記架台１上におけるガイドレール２の長手方向一端部と対応する個所に、ガイドレール２の長手方向一端部まで版テーブル４を移動させて待機させるための版テーブル待機エリア１６を設け、上記架台１上における上記版テーブル待機エリア１６と上記転写機構部９との間に、上記版テーブル４の上面部に保持させた版３に対してインキングを行うためのインキング装置１７を設ける。
【００３１】
上記架台１上におけるガイドレール２の長手方向他端部と対応する個所には、ガイドレール２の長手方向他端部まで基板テーブル６を移動させて待機させた状態で、該基板テーブル６の上面部に対して印刷処理を新たに行うための基板５の取り付けと、印刷処理された後の基板５の取外しを行うための基板設置エリア１８を設ける。
【００３２】
更に、上記リニアスケール８より入力される上記版テーブル４と基板テーブル６のガイドレール２の長手方向に関する位置の検出信号、及び、上記転写機構部９のエンコーダ１２と高さセンサ１４と圧力センサ１５より入力される信号に基づいて、上記版テーブル４と基板テーブル６の個別の駆動装置７、及び、上記転写機構部９のブランケットロール１０の駆動モータ１１と昇降用アクチュエータ１３に指令を与えるコントローラ（制御器）１９を備えて、本発明のオフセット印刷装置を構成する。
【００３３】
詳述すると、上記転写機構部９は、図１乃至図３に示すように、上記ガイドレール２の長手方向中間部の両方の外側にそれぞれガイドレール２の長手方向（Ｘ軸方向）に所要間隔を隔てて２本ずつ設けた所要の高さ寸法を有する支柱部材２１と、上記ガイドレール２の長手方向中間部の所要寸法上方を横切るように配置して上記各支柱部材２１の頂部同士を連結する梁部材２２とからなる門型のフレーム２０を備え、該フレーム２０における上記ガイドレール２の外側にそれぞれＸ軸方向に沿って配設してある２本の支柱部材２１同士の間に、上記ブランケットロール１０の両端の回転軸２３を軸受２５を介して回転自在に保持させてなるロールハウジング２４の両端部が、上下方向に延びるリニアガイド２６を介して上下方向移動可能に取り付けてある。
【００３４】
更に、上記ロールハウジング２４における上記ブランケットロール１０の軸心方向に所要間隔を隔てた２個所、たとえば、上記ブランケットロール１０の軸心方向両端部にほぼ対応する２個所と、該各個所にそれぞれ対応する上記フレーム２０の梁部材２２の所要の２個所との間に、それぞれ上記昇降用アクチュエータ１３と圧力センサ１５を直列に介装して取り付けた構成としてある。
【００３５】
更に又、上記ブランケットロール１０の高さセンサ１４として、たとえば、上下方向のリニアスケールの如き高さセンサ１４を、上記ロールハウジング２４の両端部の所要個所と上記フレーム２０におけるそれぞれ対応する支柱部材２１の所要個所との間に設けてなる構成として、該各高さセンサ１４により上記ロールハウジング２４の上下方向位置の検出を介して、間接的に該ロールハウジング２４に保持したブランケットロール１０の高さ位置の検出を行うことができるようにしてある。これにより、上記各昇降用アクチュエータ１３の同期した駆動により上記ロールハウジング２４と一体に上記ブランケットロール１０を上記リニアガイド２６に沿わせて上下方向に移動させて、該ブランケットロール１０を、上記高さセンサ１４により検出される上記所定の退避高さ位置Ｈａ又は接触高さ位置Ｈｂに配置できるようにしてある。したがって、上記ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａまで引き上げた状態では、上記ガイドレール２に沿って移動する上記版テーブル４や基板テーブル６を、該ブランケットロール１０に干渉することなく、その下方を通過させることができるようにしてある。又、上記ブランケットロール１０の真下に上記版テーブル４や基板テーブル６が配置されている状態で、上記各昇降用アクチュエータ１３によりロールハウジング２４と一体に上記ブランケットロール１０を接触高さ位置Ｈｂまで下ろすことで、該ブランケットロール１０の周壁面を、上記版テーブル４の上面部に保持させた版３や基板テーブル６の上面部に保持させた基板５に上方から押し当てることができるようにしてあり、この際、上記各昇降用アクチュエータ１３に直列に設けてある各圧力センサ１５により、該各昇降用アクチュエータ１３がロールハウジング２４と一体にブランケットロール１０を下方に付勢する力の反力として、上記ブランケットロール１０の上記版テーブル４上の版３や基板テーブル６上の基板５に対する接触圧力を検出できるようにしてある。
【００３６】
上記ロールハウジング２４の片側には、駆動モータ１１を内向きに取り付けて、上記ロールハウジング２４の長手方向の片側の軸受２５に回転自在に保持させてある上記ブランケットロール１０の片側の回転軸２３に、上記駆動モータ１１の図示しない出力軸が接続してあり、これにより、上記駆動モータ１１の運転により上記ブランケットロール１０を回転駆動できるようにしてある。更に、上記駆動モータ１１の図示しない出力軸には、上記エンコーダ１２が取り付けてあり、これにより、該エンコーダ１２で、上記駆動モータ１１の運転により上記ブランケットロール１０を回転駆動するときにおける該ブランケットロール１０の回転速度と、該ブランケットロール１０の回転角度（周方向のある１個所を基準とする角度姿勢）を検出できるようにしてある。
【００３７】
上記コントローラ１９は、図４にその制御構成を示す如く、架台１上に設けたリニアスケール８より入力される版テーブル４と基板テーブル６の個別のテーブル位置検出信号Ｓ１を基に、該版テーブル４と基板テーブル６の個別の駆動装置７へ指令を与えて、上記各テーブル４，６の位置と移動方向（走行方向）と移動速度（走行速度）を制御できるようにしたテーブル走行制御部１９ａと、上記転写機構部９における各高さセンサ１４から入力されるブランケットロール１０の高さ位置の検出信号Ｓ２、及び、各圧力センサ１５から入力されるブランケットロール１０の上記版３や基板５に対する接触圧力の検出信号Ｓ３を基に、上記ブランケットロール１０の各昇降用アクチュエータ１３へ指令を与えて、該ブランケットロール１０の高さ位置、及び、該ブランケットロール１０の上記版３や基板５に対する接触圧力を制御できるようにしたロール位置制御兼圧力制御部１９ｂと、上記ブランケットロール１０の駆動モータ１１に取り付けてあるエンコーダ１２から入力されるブランケットロール１０の回転速度及び回転角度の検出信号を基に、上記ブランケットロール１０の駆動モータ１１へ指令を与えて、上記ブランケットロール１０の回転速度と回転角度を制御できるようにしたロール回転制御部１９ｃとを備えてなり、更に、上記ロール位置制御兼圧力制御部１９ｂ、及び、上記ロール回転制御部１９ｃを、共に上記テーブル走行制御部１９ａと同期制御できるようにした構成としてある。
【００３８】
更に又、上記コントローラ１９は、その制御機能として、必要に応じてブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａ又は接触高さ位置Ｈｂのいずれかに配置するためのロール高さ位置制御の機能と、上記ブランケットロール１０を版３に接触させて転写（受理）を行う場合に該ブランケットロール１０の上記版３に対する接触圧力を一定にさせ、且つ上記ブランケットロール１０を基板５に接触させて再転写（印刷）を行う場合に該ブランケットロール１０の上記基板５に対する接触圧力を一定にさせる接触圧力一定制御を行う機能を備えてなるものとしてある。
【００３９】
具体的には、上記コントローラ１９によるロール高さ位置制御機能は、図５にその制御ブロック図を示すように（なお、図示する便宜上、転写機構部９のフレーム２０やブランケットロール１０のロールハウジング２４の記載は省略すると共に、ブランケットロール１０に付設してある駆動モータ１１、エンコーダ１２、昇降用アクチュエータ１３、高さセンサとしてのリニアスケール１４、圧力センサ１５の形状及び配置は変更してある。又、ブランケットロール１０の片側の昇降用アクチュエータ１３の制御系統の記載は省略してある。図６及び図１２においても同様。）、架台１上のリニアスケール８（図２、図４参照）による版テーブル４のＸ軸方向の位置と、基板テーブル６のＸ軸方向の位置に関するテーブル位置検出信号Ｓ１が入力されると、該各テーブル位置検出信号Ｓ１を、予め設定してある所要のテーブル関数によるテーブル関数処理２７を行うことで、ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａ、あるいは、接触高さ位置Ｈｂのいずれに配置すべきかを判断して、上記退避高さ位置Ｈａもしくは接触高さ位置Ｈｂの高さ目標値ｈを出力させ、次いで、減算器２８に、上記高さ目標値ｈと、上記転写機構部９の高さセンサ１４より入力される検出信号に基づくブランケットロール１０の高さ現在値ｈ１とを入力して、該高さ現在値ｈ１の上記高さ目標値ｈに対する高さ偏差Δｈを求め、その後、この高さ偏差ΔｈをゼロにするためにＰＩＤ制御等のフィードバック制御理論に基づいたフィードバック処理２９を行なうことで求めた駆動指令Ｃ１を、上記ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３へ与えるようにしてある。これにより、上記昇降用アクチュエータ１３を上記駆動指令Ｃ１に基づいて作動させることで、上記版テーブル４や基板テーブル６のＸ軸方向の位置に応じて、後述するようにブランケットロール１０を版３や基板５との間でインクの転写を行わせるために接触させる場合は上記ブランケットロール１０を接触高さ位置Ｈｂに、それ以外の時には上記ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａに配置させることができるようにしてある。
【００４０】
又、上記コントローラ１９によるブランケットロール１０の接触圧力一定制御機能は、図６にその制御ブロック図を示すようにしてある。
【００４１】
すなわち、版３からブランケットロール１０へインクを転写（受理）させる場合は、版３にインキングされているインクをブランケットロール１０の表面に吸着させる必要がある一方、ブランケットロール１０から印刷対象となる基板５へインクを再転写させる場合は、ブランケットロール１０の表面に吸着されているインクを該ブランケットロール１０の表面より離反させて基板５の表面に吸着させる必要がある。このため、版３からブランケットロール１０へのインクの転写特性と、ブランケットロール１０から基板５へのインクの転写特性は、必ずしも同一でないことがあり、オフセット印刷全体での転写性能を高めるためには、上記ブランケットロール１０を版３に接触させるときに所望される接触圧力と、上記ブランケットロール１０を基板５に接触させるときに所望される接触圧力は、必ずしも同一にならないことがある。
【００４２】
この点に鑑みて、上記ブランケットロール１０の接触圧力一定制御を行う場合は、予め、圧力決定ブロック３０で、ブランケットロール１０を接触させる対象が、版３又は基板５のいずれであるかに応じて、それぞれ所望される或る接触圧力の目標値ｐを個別に設定しておき、この圧力目標値ｐと、上記転写機構部９の圧力センサ１５より入力されるブランケットロール１０の上記版テーブル４に保持された版３、又は、基板テーブル６に保持された基板５に対する接触圧力の現在値ｐ１とを減算器３１に入力して、接触圧力現在値ｐ１の上記圧力目標値ｐに対する圧力偏差Δｐを求め、この圧力偏差ΔｐをゼロにするためにＰＩＤ制御等のフィードバック制御理論に基いたフィードバック処理３２を行なうことで求めた駆動指令Ｃ２を、上記ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３へ与えることができるようにしてある。これにより、上記昇降用アクチュエータ１３を上記駆動指令Ｃ２に基づいて作動させることで、後述するようにブランケットロール１０と版３や基板５との間でインクの転写を行わせる際に、上記ブランケットロール１０を、上記版３や基板５に対し、それぞれ所望される上記圧力目標値ｐに応じた一定の接触圧力で接触させることができるようにしてある。
【００４３】
この際、上記ブランケットロール１０の軸心方向両端部にほぼ対応させて設けてある２つの昇降用アクチュエータ１３により該ブランケットロール１０の軸心方向両端部を下方に付勢した状態で、上記各昇降用アクチュエータ１３ごとに設けてある圧力センサ１５で上記接触圧力現在値ｐ１を監視して、上記したと同様の処理手順で上記２つの昇降用アクチュエータ１３の制御を個別に行うことで、上記ブランケットロール１０の版３又は基板５に対する接触面内の圧力の均一化が図れるようにしてある。
【００４４】
以上のようにブランケットロール１０の高さ位置制御機能と、接触圧力一定制御機能を備えたコントローラ１９により、本発明のオフセット印刷装置によるオフセット印刷を実施する際に上記転写機構部９において版３からブランケットロール１０へのインクの転写（受理）を行わせる場合の転写動作の手順は、図７（イ）（ロ）（ハ）乃至図９（イ）（ロ）に示す手順で行うようにする。なお、転写時における上記ブランケットロール１０の回転方向は、図上時計回り方向とし、版テーブル４の転写用走行方向は、ガイドレール２の長手方向他端側から一端側へ向かう向き（図上左向き）としてあるものとする。
【００４５】
上記版３からブランケットロール１０への転写動作を行わせる場合は、予め、上記図５に示したブランケットロール１０の高さ位置制御機能を用いて、図７（イ）に示すように、ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａに配置しておく。なお、この時点では、上記ブランケットロール１０の回転は停止させておくようにする。又、版テーブル４に保持させた版３に対してインキング装置１７によるインキングを予め施した状態で、該版テーブル４を、上記ブランケットロール１０の真下位置よりも、転写用走行方向の所要寸法上流側に予め設定してある転写開始位置Ｘ０に配置して一旦停止させるようにする。なお、図では、上記版テーブル４におけるガイドレール２長手方向の他端寄りの端部（図では右端部）を基準としてテーブル位置を定めてある。
【００４６】
次に、図７（ロ）に示すように、上記ブランケットロール１０を、退避高さ位置Ｈａに配置した状態のまま、駆動モータ１１の運転により回転させると共に、上記転写開始位置Ｘａに停止させてあった版テーブル４を、駆動装置（図２参照）７の運転により転写用走行方向への走行を開始させる。この際、後述するように接触圧力一定制御を行ってブランケットロール１０を予め設定した所定の接触圧力で版３に押し付けるようにして接触させることで該ブランケットロール１０の版３との接触部分に変形が生じるときの該ブランケットロール１０の変形部分のロール径に基づく周速と、上記版テーブル４の走行速度が一致するように、上記ブランケットロール１０の回転速度と、上記版テーブル４の走行速度とを設定しておくようにする。更に、上記ブランケットロール１０を版３に上記所要の接触圧力での接触させることに伴って変形する部分のロール径に基づいて、次の工程でブランケットロール１０を版テーブル４上に保持させた版３に接触させて転写を開始させるときの転写開始状態で接触させる個所を始点とするブランケットロール１０の周方向位置と、上記版テーブル４のＸ軸方向位置が一致するように位相同期制御を行うようにしてあるものとする。
【００４７】
次いで、図７（ハ）に示すように、転写用走行方向に走行する上記版テーブル４が、上記ブランケットロール１０の真下に所要量進入したローラ接触位置Ｘ１に達した時点で、上記コントローラ１９は、図５に示したブランケットロール１０の高さ位置制御機能を用いて、各昇降用アクチュエータ１３に高さ制御用の駆動指令Ｃ１を与えて、ブランケットロール１０を、該ブランケットロール１０の外周面の下端部が版テーブル４上に保持された版３に接触するよう事前に設定してある接触高さ位置Ｈｂまで下降させる。なお、インキング装置１７で後述するように上記版テーブル４に保持してある版３に対してインキングを行ってある場合は、該版３のガイドレール２長手方向一端寄りの端辺部にインク溜りが形成されているため、このインク溜りに上記ブランケットロール１０が接触しないように、該ブランケットロール１０の版３に対する接触位置が設定してあるものとする。
【００４８】
上記のようにして、上記ブランケットロール１０の周壁面を版テーブル４上の版３に接触させると、転写機構部９にてブランケットロール１０の各昇降用アクチュエータ１３と直列に設けてある各圧力センサ１５により、上記ブランケットロール１０の上記版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が検出されるようになる。
【００４９】
上記各圧力センサ１５より接触高さ位置Ｈｂに配置してあるブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１の検出信号が上記コントローラ１９へ入力されるようになると、該コントローラ１９では、図５に示したブランケットロール１０の高さ位置制御機能から図６に示した接触圧力一定制御機能に切換えて、上記ブランケットロール１０の各昇降用アクチュエータ１３へ圧力制御用の駆動指令Ｃ２を与えることで、上記圧力センサ１５で検出されるブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が、図８（イ）に示すように、予め設定した所定の接触圧力の圧力目標値ｐで一定となるように保持させるようにする。なお、この際、上記ブランケットロール１０の版３に対する接触圧力が安定した値となるまで、上記ブランケットロール１０の回転速度と、上記版テーブル４の走行による版３の移動速度とを、互いの同期を維持しながら共に減速させるようにしてもよい。
【００５０】
その後、図８（ロ）に示すように、上記回転するブランケットロール１０が上記走行する版テーブル４上の版３に接触して転写を行っている間、上記コントローラ１９では、上記各圧力センサ１５により検出される上記ブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が、上記所定の接触圧力の目標値ｐで一定に保持されるように、各ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３を制御する（図６参照）。これにより、上記ブランケットロール１０では、上記版３との接触部分に生じる変形量が或る一定量に保たれるようにしてある。
【００５１】
その後、上記ブランケットロール１０より版３への転写が終了した後は、図９（イ）に示すように、版テーブル４が上記ブランケットロール１０の直下位置を完全に通過する前に設定してあるローラ分離位置Ｘ２に達すると、上記ブランケットロール１０の回転と、上記版テーブル４の走行を継続させた状態で、上記コントローラ１９の図５に示したブランケットロールの高さ位置制御機能により、各昇降用アクチュエータ１３へ高さ制御用の駆動指令Ｃ１を与えて上記ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａまで上昇させる。なお、上記のようにブランケットロール１０を上昇させて版３より離反させた後は、ブランケットロール１０の回転速度と、版テーブル４の走行速度の同期制御を解除してよい。
【００５２】
しかる後、図９（ロ）に示すように、上記版テーブル４が転写終了位置Ｘ３まで走行すると、上記コントローラ１９は、退避高さ位置Ｈａまで上昇させたブランケットロール１０の回転を停止させて、図７（イ）に示したと同様の初期状態に回復させるようにしてある。
【００５３】
上記転写機構部９にて、上記図７（イ）（ロ）（ハ）乃至図９（イ）（ロ）に示した手順で版３からブランケットロール１０へのインクの転写（受理）を行わせた後、該ブランケットロール１０から印刷対象となる基板５へインクの再転写（印刷）を行う場合は、版３を保持した版テーブル４に代えて、印刷対象となる基板５を保持した基板テーブル６を用いて、コントローラ１９により図７（イ）（ロ）（ハ）乃至図９（イ）（ロ）に示したと同様の手順で転写動作を行わせるようにすることで、上記ブランケットロール１０から上記基板５へのインクの再転写（印刷）を行うことができるようにしてある。
【００５４】
なお、上記コントローラ１９の図６に示した接触圧力一定制御機能により、図８（イ）（ロ）に示したと同様にして、上記ブランケットロール１０を基板５に一定の接触圧力で接触させるときには、前記したように、圧力決定ブロック３０で、上記ブランケットロール１０を基板５に接触させるときの接触圧力の圧力目標値ｐを、上記ブランケットロール１０を版３に接触させるときの接触圧力の圧力目標値ｐとは別に設定するようにしてあることに起因して、上記ブランケットロール１０を基板５に上記所定の圧力目標値ｐとなるよう制御された一定の接触圧力で接触させるときにおける該ブランケットロール１０の接触部分の変形量は、上記ブランケットロール１０を版３に接触させたときの接触部分の変形量と必ずしも一致しない。
【００５５】
よって、上記ブランケットロール１０から上記基板５へのインクの再転写（印刷）を行う場合は、版３と基板５に対する接触圧力の違いにより生じるブランケットロール１０の変形量の違いを予め計測しておき、その変形量の違いによる周速の変化を考慮して、図７（ロ）から図９（イ）までの間、接触圧力一定制御を行ってブランケットロール１０を予め設定した所定の接触圧力で基板５に接触させるときに該ブランケットロール１０の基板５との接触部分に変形が生じるときの該変形部分のロール径に基づく周速と、基板テーブル６の走行速度が一致するように、上記ブランケットロール１０の回転速度と、上記基板テーブル６の走行速度とを補正して設定しておくようにしてあるものとする。これにより、上記ブランケットロール１０が基板テーブル６に保持された基板５に接触するときには、図８（イ）（ロ）に示したと同様に接触圧力一定制御が行われることから、印刷対象となる各基板５ごとに厚み寸法が変化しても、ブランケットロール１０が各基板５に接するときの圧力は均一とされる。よって、ブランケットロール１０が各基板５に接触するときの接触部分の変形量が毎回同じになるため、該ブランケットロール１０から各基板５へ再転写される印刷パターンの再現性を高めることができて、該各基板５へ印刷される印刷パターンが精細な電極パターンのように細線を有するものであるとしても、該細線を均一の太さで高い再現性で印刷できるようにしてある。
【００５６】
ところで、上記ブランケットロール１０は、その製作精度等に起因して、軸心が両端部の回転軸２３の軸心と必ずしも完全に一致していない場合があり、この場合、上記ブランケットロール１０では上記偏心に起因して回転角度により周位置が不均一になっていることがあるが、上記コントローラ１９は、ブランケットロール１０の版３又は基板５に対する接触圧力を一定に制御するようにしてあるので、上記のようにブランケットロール１０が偏心していても、該ブランケットロール１０の版３又は基板５に対する接触部分の変形量を均一にすることができる。しかし、上記接触圧力一定制御を行っても、偏心に起因してブランケットロール１０の回転角度により周速に変化が生じることは防止できない。そのため、上記ブランケットロール１０に偏心が生じている場合は、ブランケットロール１０の周速は回転角度に軸心から版３もしくは基板５への距離、すなわち、回転半径を乗ずることで得られることに鑑みて、予め、厚さが既知の図示しない検査用の基板を基板テーブル６に保持させた状態で、版３からの転写時の接触圧力と基板５への再転写時の接触圧力による接触圧力一定制御を行いながら上記ブランケットロール１０を回転させて上記検査用基板に接触させて、そのときに高さセンサとしてのリニアスケール１４で検出されるブランケットロール１０の高さ位置の変化を、ブランケットロール１０の回転角度変化と共に記録し、記録された上記ブランケットロール１０の高さ位置と既知の上記検査用基板の高さとの差を求めることで、上記ブランケットロール１０が或る回転角度となるときにおける版３からの転写時の接触圧力と基板５への再転写時の接触圧力による接触部分の回転半径をそれぞれ得ることができる。
【００５７】
したがって、ブランケットロール１０の回転角度ごとに回転半径を記録した補正用のテーブルを作成することで、偏心のあるブランケットロール１０についても、上記補正テーブルに基づいてブランケットロール１０の駆動モータ１１へ指令を与えて、該駆動モータ１１の回転速度をブランケットロール１０の回転角度に応じて適宜変化させる補正を加えることで、該ブランケットロール１０の周速を一定とすることができるようにすればよい。
【００５８】
あるいは、上記駆動モータ１１の回転速度を一定とし、上記偏心のあるブランケットロール１０の周速の変化に応じて版テーブル４や基板テーブル６の走行速度に補正を加えることで、ブランケットロール１０の周速と、版テーブル４上の版３や基板テーブル６上の基板５の移動速度とを同期させるようにしてもよい。
【００５９】
なお、上記偏心したブランケットロール１０の回転半径データは、定期的に計測して更新することで、ブランケットロール１０の磨耗等の経年変化に対応させるようにしてもよい。
【００６０】
上記インキング装置１７は、図１、図１０（イ）（ロ）（ハ）及び図１１（イ）（ロ）に示すように、上記ガイドレール２に沿って移動する版テーブル４の上面よりもやや上方となる退避高さ位置に、インク戻しブレード３３と、インク押し込みブレード３４と、インク掻き取りブレード３５を、ガイドレール２の長手方向一端側から順に備えると共に、該各ブレード３３，３４，３５をその下端部が上記版テーブル４に保持された版３に接する位置まで個別に下降させることができるようにするための図示しないアクチュエータを備えた構成としてある。
【００６１】
上記インク戻しブレード３３は、上端側よりも下端側がガイドレール２の長手方向一端部寄りに位置するように傾斜させてある。
【００６２】
又、上記インク押し込みブレード３４と上記インク掻き取りブレード３５は、共に上端側よりも下端側がガイドレール２の長手方向他端部寄りに位置するように傾斜させてあり、更に、上記インク押し込みブレード３４の方が、上記インク掻き取りブレード３５よりも、水平面からの傾斜角度が小さくなるように設定してある。これにより、インクとして導電性ペーストのような粘性の大きいインクを使用する場合であっても、水平面からの傾斜角度が比較的小さく設定してある上記インク押し込みブレード３４を用いることで版３へのインクの充填性を高めることができるようにしてあり、上記インク押し込みブレード３４で一旦版３に強制的に押し込まれることで、上記インク押し込みブレード３４通過後に版３より盛り上がるインクの余剰分は、水平面からの傾斜角度をより大きく設定して掻き取り性能を高いものとしてある上記インク掻き取りブレード３５で掻き取るようにして、上記版３に適正量のインクをインキングすることができるようにしてある。したがって、上記インキング装置１７により版へのインキングを行うときは、図１０（イ）に示すように、上記架台１の版テーブル待機エリア１６に配置した版テーブル４の上面部に版３を取り付け、且つ該版３の表面におけるガイドレール２他端寄り端辺付近に所要量のインク溜り３６、たとえば、導電性ペーストのようなインクがインク溜り３６として載せてある状態で、図１０（イ）に二点鎖線で示すように、上記版テーブル４をガイドレール２に沿って該ガイドレール２の長手方向他端側へ移動させて上記インキング装置１７を通して転写機構部９側へ移動させるときに、先ず、上記インク押し込みブレード３４を、上記版３におけるガイドレール２他端寄り端辺が真下に達する直前に、該版３に接触する位置まで下降させ、次いで、図１０（ロ）に示すように、上記インク掻き取りブレード３５を、上記版３におけるガイドレール２他端寄り端辺が真下に達する直前に、該版３に接触する位置まで下降させることで、図１０（ハ）に示すように、上記版３の表面におけるガイドレール２他端寄り端辺付近に載せてあったインク溜り３６のインクを、上記版テーブル４のガイドレール２長手方向他端側への移動に伴って上記版３の表面を相対的に摺動する上記インク押し込みブレード３４により版３へ押し込み、次に、上記インク押し込みブレード３４と同様に版３の表面を相対的に摺動する上記掻き取りブレード３５により上記版３に押し込まれたインクの余剰分を掻き取るようにして、上記版３に対するインキングを行い、該インキングされた版３を版テーブル４の移動により上記転写機構部９側へ送ることができるようにしてある。
【００６３】
なお、上記インク押し込みブレード３４及びインク掻き取りブレード３５は、上記版３におけるガイドレール２一端寄り端辺が真下を通過する直前に、該版３より離反させて退避位置まで引き上げることで、上記版３に対して摺動させるインク押し込みブレード３４とインク掻き取りブレード３５のガイドレール２長手方向一端側に形成されるインク溜り３６を、図１１（イ）に示すように、上記インキング装置１７を通過した後の版３の表面におけるガイドレール２一端寄り端辺付近に集めることができるようにして、この状態でインク溜り３６を載せた状態の版３を保持した版テーブル４を転写機構部９へ送って、上記した版３からブランケットロール１０へのインクの転写を行わせることができるようにしてある。
【００６４】
その後、上記ブランケットロール１０へのインクの転写に供された後の版３を保持した版テーブル４を転写機構部９側からガイドレール２の長手方向一端側へ移動させてインキング装置１７を通して版テーブル待機エリア１６まで戻すときに、図１１（ロ）に示すように、上記退避位置に配置してあったインク戻しブレード３３を、上記版テーブル４の移動に伴ってガイドレール２長手方向一端側へ移動する上記版３の表面に接する位置まで下ろして、該版３の表面におけるガイドレール２一端寄り端辺付近から、ガイドレール２他端寄り端辺付近まで相対的に摺動させることで、上記インク押し込みブレード３４とインク掻き取りブレード３５により上記版３の表面におけるガイドレール２一端寄り端辺付近に集められていたインク溜り３６を、該版３の表面におけるガイドレール２他端寄り端辺付近まで戻して、図１０（イ）に示したと同様の初期状態とすることができるようにしてある。
【００６５】
更に、図１に示した本発明のオフセット印刷装置では、上記版テーブル４及び基板テーブル６を、上部に上記ガイドレール２の長手方向（Ｘ軸方向）及びガイドレール２の長手方向に直交する方向（Ｙ軸方向）への水平移動と、ガイドレール２の長手方向に対するヨー角度（θ）の回転が可能なアライメントステージ４ａ及び６ａをそれぞれ具備してなる構成として、該各アライメントステージ４ａ及び６ａの上面部に上記版３及び印刷対象となる基板５をそれぞれ取り付けることができるようにしてある。
【００６６】
更に又、上記架台１の長手方向における上記転写機構部９、版テーブル待機エリア１６、インキング装置１７及び基板設置エリア１８と干渉しない所要個所、たとえば、上記転写機構部９と基板設置エリア１８との間の個所に、アライメントエリア３７を設けて、該アライメントエリア３７にて、上記版テーブル４のアライメントステージ４ａに保持させる版３と、上記基板テーブル６のアライメントステージ６ａに保持させる基板５について、共通のアライメントセンサ３８を用いてそれぞれ対応するテーブル４，６に対する相対位置を、センサフィードバックアライメント補正できるようにしてある。
【００６７】
具体的には、上記アライメントエリア３７には、上記版テーブル４及び基板テーブル６が下方を通過できるようにした支持架台３９を設けると共に、該支持架台３９における上記版テーブル４及び基板テーブル６の対角に対応する２個所又は４角部に対応する４個所に、アライメントセンサ３８としての精密カメラ３８をそれぞれ下向きに設けた構成としてある。これにより、上記版テーブル４に保持させた版３について初期アライメントを取る場合は、使用する版３の対角又は４角部に予め図示しないアライメントマーカをポインティングしておき、版テーブル待機エリア１６で版３を取り付けた版テーブル４を上記アライメントエリア３７へ移動させて、該アライメントエリア３７に予め設定してある所定のアライメント位置に停止させ、この状態で、上記支持架台３９上の各精密カメラ３８により上記版３の対角又は４角部の図示しないアライメントマーカを検出し、該各アライメントマーカが所定の配置となるように上記版テーブル４のアライメントステージ４ａのＸ−Ｙ方向への水平移動と回転による位置補正を行わせることで、該版テーブル４に対する上記版３の相対位置を常に同じ配置とさせることができるようにしてある。
【００６８】
又、上記基板テーブル６に保持させた基板５について初期アライメントを取る場合は、使用する基板５の対角又は４角部に予め図示しないアライメントマーカをポインティングしておき、基板設置エリア１８にて新たに印刷対象とする基板５を取り付けた基板テーブル６を、上記アライメントエリア３７へ移動させて上記所定のアライメント位置に停止させ、この状態で、上記支持架台３９上の各精密カメラ３８により上記基板５の対角又は４角部の図示しないアライメントマーカを検出し、該各アライメントマーカが所定の配置となるように上記基板テーブル６のアライメントステージ６ａのＸ−Ｙ方向への水平移動と回転による位置補正を行わせることで、該基板テーブル６対する上記基板５の相対位置を、常に同じ配置とさせることができるようにしてある。よって、上記アライメントエリア３７で初期アライメントを取った状態のときの版テーブル４上の版３の位置に対し、該アライメントエリア３７で初期アライメントを取った基板テーブル６上の基板５の相対的な配置を、常に同一の配置とさせることができるようにしてある。
【００６９】
なお、基板テーブル６に保持させる印刷対象とする基板５に対して重ね刷りを行う場合であって、印刷対象とする各基板５ごとに対する第１層目の印刷パターンの配置について厳密な再現性が特に求められず、印刷パターンの重ね合わせずれの防止がより重要となる場合は、基板５の対角又は４角に予めアライメントマーカをポインティングすることに代えて、基板５に対して第１回目の印刷を行うときに、アライメントマーカを印刷によりポインティングするようにしてもよい。よって、この場合は、基板テーブル６に保持させた基板５に第１回目の印刷を行う前は、該基板５についてアライメントをとる必要はない。
【００７０】
なお、図４に二点鎖線で示すように、上記コントローラ１９に、ブレード昇降制御部１９ｄを設けて、上記インキング装置１７における図示しないアクチュエータによる各ブレード３３，３４，３５（図１、図１０（イ）（ロ）（ハ）及び図１１（イ）（ロ）参照）の昇降制御を行わせるようにすると共に、上記コントローラ１９に、アライメントステージ制御部１９ｅを設けて、上記アライメントエリア３７における精密カメラ３８による版３や基板５の図示しないアライメントマーカの検出（図１参照）と、該検出されたアライメントマーカに基づく版テーブル４のアライメントステージ４ａの制御による版３の位置補正や、基板テーブル６のアライメントステージ６ａの制御による基板５の位置補正を行わせるようにしてもよい。この場合、上記ブレード制御部１９ｄと、上記アライメントステージ制御部１９ｅは、テーブル走行制御部１９ａと同期制御を行わせるようにすればよい。
【００７１】
更に、上記版テーブル４及び基板テーブル６にそれぞれアライメントステージ４ａ，６ａを設けた構成としてあることにより、上記ブランケットロール１０に偏心がある場合に、前述したようにブランケットロール１０の駆動モータ１１の回転速度に補正を加えたり、あるいは、版テーブル４や基板テーブル６の走行速度に補正を加えることに代えて、ブランケットロール１０の回転角度と版テーブル４もしくは基板テーブル６の走行位置の同期を取り、偏心に由来するブランケットロール１０の周方向位置と、版テーブル４もしくは基板テーブル６の走行位置とのずれを、該版テーブル４のアライメントステージ４ａもしくは基板テーブル６のアライメントステージ６ａのＸ方向への動作で補償させるようにしてもよい。
【００７２】
以上の構成としてある本発明のオフセット印刷装置によれば、転写機構部９にて、ブランケットロール１０を版３に接触させてインクの転写を行うときの接触圧力を一定にすることができるため、重ね刷りを行うために異なる版３を用いる場合や、版３を交換した場合であっても、ブランケットロール１０が版３に接触するときの変形量を均一にすることができて、上記版３からブランケットロール１０へインクが転写されるときのインクの付き具合を、毎回均一にすることができる。
【００７３】
又、上記転写機構部９にて、ブランケットロール１０を印刷対象となる基板５に接触させて再転写を行うときの圧力を、各基板５に対し均一に制御することができるため、ブランケットロール１０を各基板５に接触させるときの接触部分の変形量を毎回同一にすることができて、ブランケットロール１０より基板５へインクを再転写するときのインクの付き具合も、毎回均一にすることができる。
【００７４】
よって、印刷パターンが精細な電極パターンのように細線で電極を形成する場合であっても、各基板５ごとに細線として印刷される電極の太さが変化する虞を未然に防止できて、該各基板５に均一な太さで電極を印刷することができる。
【００７５】
しかも、印刷対象となる基板５の厚み寸法にばらつきがあったとしても、各基板５に接するブランケットロール１０の接触部分の変形量を均一にできて、ブランケットロール１０より各基板５へインクを再転写するときにブランケットロール１０の周速がばらつく虞を未然に防止でき、ブランケットロール１０の周速と基板ステージ６に保持させた基板５の移動速度を同期させることができるため、該各基板５ごとに印刷精度や再現性のばらつきが生じる虞を未然に防止することができる。
【００７６】
同様に、重ね刷りを行うための各版３の厚み寸法にばらつきがあったり、版３を交換した場合に交換前の版３と交換後の版３の厚み寸法にばらつきがあっても、該各版３に接するブランケットロール１０の接触部分の変形量を均一にできて、これらの版３からブランケットロール１０へインクを転写させるときにブランケットロール１０の周速がばらつく虞を未然に防止でき、ブランケットロール１０の周速と版テーブル４に保持させた版３の移動速度を同期させることができるため、基板５に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを正確に且つ高い再現性で印刷することができると共に、基板５に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを重ね刷りをする場合であっても、重ね合わせずれを抑制することができて、重ね合わせずれをマイクロメートルオーダーに抑えるのに有利な構成とすることができる。
【００７７】
更には、共通のアライメントエリア３７にて、版テーブル４に保持させた版３の該版テーブル４に対する相対位置と、基板テーブル６に保持させた基板５の該基板テーブル６に対する相対位置が一致するようにアライメントを取ることができるため、同じガイドレール２に沿って走行する上記版テーブル４と基板テーブル６にそれぞれ保持させた上記版３と基板５を、上記ガイドレール２に沿って同じ角度配置、同じ軌跡で移動させることができるようになるため、版３に形成してある印刷パターンを基板５に印刷する際の再現性をより高めることができる。
【００７８】
次に、図１２及び図１３は本発明の実施の他の形態を示すもので、図１乃至図１１（イ）（ロ）に示したと同様の構成において、コントローラ１９に、図５に制御ブロック図を示した如きブランケットロール１０のロール高さ位置制御機能と、図６に制御ブロック図を示した如きブランケットロール１０の接触圧力一定制御機能に加えて、図１２に制御ブロック図を示す如く、上記接触圧力一定制御機能に基づくブランケットロール１０の版３や基板５に対する接触圧力一定制御完了時の高さ位置を保持するためのロール高さ位置保持制御機能を備えるようにする。
【００７９】
具体的には、上記コントローラ１９によるロール高さ位置保持機能は、図１２に示すように、上記図６に示した接触圧力一定制御機能に基づくブランケットロール１０の版３や基板５に対する接触圧力一定制御完了時点で転写機構部９の高さセンサ１４により検出されるブランケットロール１０の高さ位置である所定接触圧力高さ位置Ｈｃを、ロール高さ保持目標値ｈ０とし、減算器４０に、上記ロール高さ保持目標値ｈ０と、上記接触圧力一定制御完了後に上記高さセンサ１４より入力される検出信号に基づくブランケットロール１０の高さ現在値ｈ１とを入力して、高さ現在値ｈ１の上記ロール高さ保持目標値ｈ０に対する高さ偏差Δｈを求め、その後、この高さ偏差ΔｈをゼロにするためにＰＩＤ制御等のフィードバック制御理論に基づいたフィードバック処理４１を行なうことで求めた駆動指令Ｃ３を、上記ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３へ与えるようにしてある。これにより、上記接触圧力一定制御を行うことでブランケットロール１０を所定の接触圧力で版３や基板５に一旦接触させた後、該ブランケットロール１０の高さ位置を一定に保持することで、該ブランケットロール１０を上記所定の接触圧力で版３や基板５に接触させた時点での接触部分の変形量が一定に保持されるようにして、ロール径の変化による周速の変化が生じる虞を未然に防止できるようにしてある。
【００８０】
更に、本実施の形態におけるコントローラ１９では、図１２に示すように、上記ブランケットロール１０に製作精度等に起因して偏心が存在していても、上記接触圧力一定制御完了時点でブランケットロール１０を所定の接触圧力で版３や基板５に接触させたときの接触部分の変形量を一定に保持できるようにするために、上記ブランケットロール１０の駆動モータ１１に取り付けてあるエンコーダ１２の検出信号ｒを基に、ブランケットロール１０の回転角度と周位置の不均一性を予め計測して求めた補正テーブルに基づいたテーブル関数処理４２を行なうことで、上記ブランケットロール１０の回転角度に応じた周位置の偏心補正値ｒ１を求め、別の減算器４３で、上記接触圧力一定制御完了時点でのロール高さ保持目標値ｈ０に対し上記偏心補正値ｒ１により予め補正を加えた後、この補正後のロール高さ保持目標値ｈ０´に対する高さ現在値ｈ１の高さ偏差Δｈを求めてから、この高さ偏差Δｈをゼロにするための上記フィードバック処理４１を行なって上記駆動指令Ｃ３を求めるようにしてある。
【００８１】
上記図１２に示したロール高さ保持制御機能を有するコントローラ１９を用いる場合の転写動作手順は、図５に示したコントローラ１９のロール高さ位置制御機能を用いて、ブランケットロール１０と版テーブル４に図７（イ）（ロ）（ハ）に示したと同様の動作を行なって、ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａより接触高さ位置Ｈｂまで下降させて、ブランケットロール１０の周壁面を版テーブル４上の版３に接触させた後、図６に示した接触圧力一定制御機能により、図８（イ）に示したと同様に圧力センサ１５で検出されるブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が、予め設定した所定の接触圧力の圧力目標値ｐとなるようにさせ、その後、図１３に示すように、上記圧力一定制御を行った時点で高さセンサ１４により検出されるブランケットロール１０の高さ位置をロール高さ保持目標値ｈ０とする図１２に示したロール高さ位置制御機能に切り替えて、上記回転するブランケットロール１０が上記走行する版テーブル４上の版３に接触して転写を行っている間、上記高さセンサ１４により検出される上記ブランケットロール１０の高さ位置が、上記ロール高さ保持目標値ｈ０に保持されるように、各ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３（図１２参照）を制御する。これにより、上記ブランケットロール１０では、上記版３との接触部分に生じる変形量が或る一定量に保たれる。
【００８２】
上記ブランケットロール１０より版３へのインクの転写が終了した後は、図９（イ）（ロ）に示したと同様にして転写動作を終了させるようにすればよい。
【００８３】
又、ブランケットロール１０から基板５へのインクの再転写も、上記版３を保持した版テーブル４に代えて基板５を保持した基板テーブル６に対して上記と同様の転写動作を行うようにすればよい。
【００８４】
したがって、本実施の形態によっても、上記実施の形態と同様に、ブランケットロール１０を版３に接触させるときの接触圧力を均一にできて、重ね刷りを行うために異なる版３を用いる場合や、版３を交換した場合であっても、ブランケットロール１０が版３に接触するときの変形量を均一にすることができる。又、ブランケットロール１０を基板５に接触させるときの接触圧力を均一にできることから、ブランケットロール１０を各基板５に接触させるときの接触部分の変形量を毎回同一にすることができる。
【００８５】
よって、印刷パターンが精細な電極パターンのように細線で電極を形成する場合であっても、各基板５ごとに細線として印刷される電極の太さが変化する虞を未然に防止できて、該各基板５に均一な太さで電極を印刷することができると共に、各基板５に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを正確に且つ高い再現性で印刷することができて、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【００８６】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、たとえば、ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３をボールねじ機構とし、ブランケットロール１０の高さセンサ１４を上記ボールねじ機構の駆動モータ（サーボモータ）に備えたエンコーダとする等、ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３や高さセンサ１４の配置や形式は、適宜変更してもよい。又、昇降用アクチュエータ１３によりブランケットロール１０を版３や印刷対象となる基板５に押し付けるときの圧力を検出できるようにしてあれば、圧力センサ１５の配置や形式を適宜変更してもよい。
【００８７】
上記各実施の形態においては、ブランケットロール１０の軸心方向の両端部と対応する個所に設けた２つの昇降用アクチュエータ１３により、ブランケットロール１０の回転軸部分に対して版３あるいは基板５に接触させるための力を加えるものとして示したが、上記ブランケットロール１０に対して下向きの力を付与する個所は該ブランケットロール１０にてブランケット（図示せず）が取り付けられていない部分であれば任意の個所に変更してよく、たとえば、円筒形状の軸心方向の両端部分を下向きに押す構成としたり、上記ブランケットロール１０におけるブランケット（図示せず）の取り付け面積をロール半周分以下の領域として、該ブランケットが取り付けられていない円筒面の任意の部分を下向きに加圧する構成としてもよい。又、ブランケットロール１０を下向きに付勢する個所を３個所以上として該ブランケットロール１０に作用する圧力の軸心方向の分布の均一性を向上させるようにしてもよい。
【００８８】
版３からブランケットロール１０へのインクの転写特性と、ブランケットロール１０から印刷対象となる基板５へのインクの転写特性に応じて、ブランケットロール１０と版３及び基板５との接触圧力を同一とするようにしてもよい。
【００８９】
上記各実施の形態では、転写機構部９にて転写動作を行わせるときに、版テーブル４や基板テーブル６のガイドレール２長手方向の他端寄りの端部（図上右端部）を基準としてテーブル位置を定めるものとして説明したが、各テーブル４，６のテーブル位置を定めるための基準は、該各テーブル４，６の任意の個所に設定してよい。
【００９０】
インキング装置１７は版テーブル４に保持された版３へ適正なインキングが行えるようにしてあれば、図１０（イ）（ロ）（ハ）及び図１１（イ）（ロ）に示した以外の任意の形式のインキング装置１７を用いるようにしてもよい。
【００９１】
アライメントエリア３７は自動的にアライメントを取る観点からすると設けることが望ましいが、別の手段で版テーブル４上に保持させる版３と基板テーブル６上に保持させる基板５とのアライメントをとることができれば、アライメントエリア３７を省略してもよい。
【００９２】
本発明のオフセット印刷装置は、基板以外の印刷対象に印刷を行うために適用してもよい。
【００９３】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【００９４】
１ 架台
２ ガイドレール
３ 版
４ 版テーブル
５ 基板（印刷対象）
６ 基板テーブル（印刷対象テーブル）
１０ ブランケットロール
１３ 昇降用アクチュエータ
１４ 高さセンサ
１５ 圧力センサ
１９ コントローラ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、基板に電極パターンを印刷により形成させる場合のように、印刷対象に精細な印刷を高い印刷精度で行うために用いるオフセット印刷方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、液晶ディスプレイ等の電極パターン（導電パターン）を所要の基板上に形成する手法として、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷インクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に電極パターンを印刷して形成する手法が提案されてきている（たとえば、特許文献１、特許文献２参照）。
【０００３】
上記液晶ディスプレイ等の電極パターンを基板に形成する場合は、電極幅として、たとえば、１０μｍ程度と微細なものが要求されることがある。更に、基板上に複数の電極パターンを重ね合わせて形成することがあり、この場合は版を代えて電極パターンの重ね刷りを行うことになるが、印刷位置がずれると電極パターンが崩れてしまうことから、精度は対象によって多少異なるが、上記電極幅を１０μｍ程度とするような精細な電極パターンでは、重ね合わせずれを数μｍに抑えることが必要とされることもある。そのため、上記基板上への電極パターンの印刷は、紙等に文字や画像を印刷する通常の凹版オフセット印刷に比して高い印刷精度が要求される。
【０００４】
従来、凹版オフセット印刷の印刷精度を高めるために提案されている手法の１つとしては、オフセット印刷機を、上面に凹版及び印刷対象となるワークが保持される移動テーブルと、移動テーブルの上方に配された転写用のブランケットロール（転動ブランケット）と、上記移動テーブル及びブランケットロールを独立に駆動する駆動機構と、上記移動テーブル用とブランケットロール用の各駆動機構をそれぞれ独立に制御する数値制御コントローラとを備えてなる構成として、凹版及びワークを保持させた上記移動テーブルの移動と、上記ブランケットロールの回転をそれぞれ独立して動作させ、ブランケットロールの周速をオペレータが手入力で微調整することにより、凹版からブランケットロールへの転写（受理）、及び、ブランケットロールからワークへの再転写（印刷）の精度を高める手法がある（たとえば、特許文献３参照）。
【０００５】
又、オフセット印刷の印刷精度を高めるための別の手法としては、円筒状当接部を有するローラ（ブランケットロール）と、平板状の板状体を支持すると共に上記円筒状当接部に当接する平面状当接部を有する本体と、を備え、上記平面状当接部に対して上記円筒状当接部を当接させつつ上記ローラと上記板状体を相対的に並進移動させながら上記ローラと上記板状体としての版（マスタ板）や印刷対象となる基板（ワーク板）との間でインクを転移する印刷機において、上記円筒状当接部と上記平面状当接部との間の接触力を調節する接触力調節手段を備えてなる構成の印刷機とすることが提案されている。
【０００６】
かかる構成としてある印刷機によれば、上記接触力調整手段により円筒状当接部と平面状当接部との接触力を調節して、接触力を変化させると、円筒状当接部の接触部分が平面状当接部の平面形状に倣うように変形する度合いが変化することで、この円筒状当接部の接触部分の曲率半径が変化して、見かけ上の直径が増減するため、同一の並進移動量とした場合であっても、上記ローラの回転角度を変化させることができるため、上記本体に支持された板状体としての版や基板に対する上記ローラの角度位置、すなわち、印刷位置の見当合わせを高精度で行うことができるとされている（たとえば、特許文献４参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特許第２７９７５６７号公報
【特許文献２】特許第３９０４４３３号公報
【特許文献３】特開２０００−２７２０７９号公報
【特許文献４】特開２００６−１４２７６４号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
ところが、オフセット印刷で用いるブランケットロールは、周壁の表面が所要のゴム等、所要の弾性を備えた材料で形成してあるため、版や印刷対象である基板に所要の圧力をかけて押し付けると、接触部分が該版や基板の表面に沿って歪むようになる。このため、上記版よりブランケットロールへインクを転写させる際、及び、上記ブランケットロールより基板へインクを再転写させる際におけるインクの付き具合は、版とブランケットロールとの接触圧力（印圧）、及び、ブランケットロールと基板との接触圧力（印圧）によってそれぞれ変化する虞が懸念される。そのために、たとえば、精細な電極パターンの印刷を行う場合は、細線として印刷される電極の太さが一定とならないという虞が懸念されるというのが実状である。
【０００９】
更に、上記ブランケットロールを版や印刷対象である基板に所要の圧力をかけて押し付けることで、該ブランケットロールの版や基板との接触部分が該版や基板の表面に沿って歪むようになると、該接触部分ではロール径が変化し、該ロール径の変化に伴ってブランケットロールの周速に変化が生じてしまうというのが実状である。
【００１０】
一方、印刷対象である基板は、すべて同一の厚み寸法として製造することは困難であるため、個々の基板には厚み寸法に多少のばらつきが生じてしまう。
【００１１】
又、重ね刷りを行うために用いる複数の版同士の間でも、個々の版に厚み寸法の多少のばらつきが生じることがある。
【００１２】
そのため、上記印刷対象である個々の基板に厚み寸法のばらつきに起因して、該各基板ごとにブランケットロールとの接触圧力に差が生じると、たとえ同じ版を用いている場合であっても、個々の基板に印刷される電極パターンの細線としての電極の太さが均一にならない虞や、各基板に印刷される印刷パターンが必ずしも一定にならず、再現性が低下する虞が懸念される。
【００１３】
更に、上記重ね刷りを行うために用いる複数の版同士の厚み寸法のばらつきに起因して、該各版ごとにブランケットロールとの接触圧力に差が生じると、１つの基板に上記複数の版を用いた重ね刷りによって形成される電極パターンの細線としての電極の太さが均一にならなかったり、重ね合わせずれが生じる虞が懸念される。
【００１４】
しかも、版は印刷に用いることで徐々に摩耗（消耗）するため、所要の印刷回数や印刷時間ごとに交換する必要が生じることがあるが、この場合、交換前の版と、交換後の新たな版との間に厚み寸法のばらつきがあると、ブランケットロールとの接触圧力に差が生じる虞があり、この場合も、版の交換の前後で基板に印刷される電極パターンの細線としての電極の太さが変化したり、基板に印刷される印刷パターンが変化して、再現性が得られなくなる虞が懸念される。
【００１５】
したがって、上記電極パターンのように精細な印刷パターンを形成するために高い印刷精度が要求される場合には、上記版とブランケットロールとの接触圧力の変化や、ブランケットロールと各基板との接触圧力の変化に起因して、印刷される細線の太さのわずかな変化が生じたり、上記ブランケットロールのわずかなロール径の変化に伴う周速の変化による印刷位置のずれが生じたりすることによっても、求められる印刷精度を達成するのに障害になる虞が懸念される。
【００１６】
なお、上記特許文献３に示された手法では、ブランケットロールの周速を調整する考えは示されているが、手入力でブランケットロールの周速を調整する必要があり、又、適切なブランケットロールの周速が得られているか否かを、印刷結果からオペレータが目視で判断するようになっているため、定量的な評価が困難であるという問題がある。
【００１７】
上記特許文献４には、ローラ（ブランケットロール）の円筒状当接部と、版や基板を支持する本体に設けた平面状当接部との間の接触力（接触圧力）を調節することで、印刷位置の見当合わせを高精度で行う考えは示されているが、版に対するローラの接触圧力と、必ずしも厚み寸法が一定にはならない各基板に対するローラの接触圧力とを一定にする考えは何ら示されていない。そのため、上記特許文献４に示された手法では、前述したようなローラの版や基板との接触圧力の差が生じる虞を解消することはできない。又、ローラが版や基板に接触するときに接触圧力の差が生じることに起因して、該ローラの版や各基板に対する接触部分のローラ径の変化量に差が生じ、該接触部分の周速が変化することで各基板に対する印刷精度、再現性が低下するという問題を解消できるものではない。更には、印刷位置の見当合わせを行うために版や基板を支持する本体に設けた平面状当接部との間の接触力（接触圧力）を操作することは、オフセット印刷による印刷パターンを均一なものとするという本来の目的からすると妥当ではない。
【００１８】
そこで、本発明は、上記基板のように印刷対象が必ずしも一定の厚み寸法となっていないとしても、各印刷対象に対し、細線の太さが均一でかすれやにじみがない印刷パターンを、高い再現性で印刷することができて、印刷精度を高めることができると共に、重ね刷りに用いる複数の版同士が必ずしも一定の厚み寸法となっていない場合や、版の交換時に交換前と後の版同士が必ずしも一定の厚み寸法となっていない場合であっても、細線にかすれやにじみがない印刷パターンを、高い再現性で印刷することができて、印刷精度を高めることができ、よって、電極パターンのような精細な印刷を高精度で行うことができると共に、重ね刷りをする場合であっても重ね合わせずれをマイクロメートルオーダーに抑えることが可能なオフセット印刷方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１９】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項１に対応して、昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触する間の接触圧力と、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触する間の接触圧力が、それぞれ所定の値で一定に保持されるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御するようにするオフセット印刷方法とする。
【００２０】
又、請求項２に対応して、昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触している間、一定に保持するようにし、更に、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触している間、一定に保持するようにするオフセット印刷方法とする。
【００２１】
更に、請求項３に対応して、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、及び、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、それぞれ上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値で一定に保持されるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能を有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置とする。
【００２２】
更に又、請求項４に対応して、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの高さ位置を検出する高さセンサと、上記ブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能と、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能とを有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置とする。
【００２３】
又、上記構成において、コントローラを、ブランケットロールと版との間で転写を行う間、及び、ブランケットロールと印刷対象との間で転写を行う間、圧力センサより入力された接触圧力がそれぞれ所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与えるときに、ブランケットロールに偏心が生じている場合は、該ブランケットロールの偏心量を基に、上記ブランケットロールを保持すべき高さ位置に対して補正を加える機能を有するものとした構成とする。
【発明の効果】
【００２４】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
（１）昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触する間の接触圧力と、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触する間の接触圧力が、それぞれ所定の値で一定に保持されるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御するようにするオフセット印刷方法、及び、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、及び、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、それぞれ上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値で一定に保持されるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能を有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置としてあるので、ブランケットロールを版に接触させてインクの転写を行うときの接触圧力と、ブランケットロールを印刷対象に接触させて再転写を行うときの接触圧力を、それぞれ所定の接触圧力で均一にすることができるため、ブランケットロールを版に接触させるときの接触部分の変形量と、ブランケットロールを印刷対象に接触させるときの接触部分の変形量を、それぞれ均一にさせることができる。したがって、印刷する細線の太さを均一にすることができると共に、上記版からブランケットロールへの転写を行わせるときのブランケットロールの周速と、ブランケットロールより印刷対象へインクを再転写するときのブランケットロールの周速を、それぞれ均一にさせることができて、版からブランケットロールを介して印刷対象へ印刷する印刷パターンの再現性を高めることができる。よって、印刷対象に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを正確に印刷することができる。
（２）よって、印刷対象テーブルに保持させる印刷対象の厚み寸法にばらつきがあったとしても、各印刷対象ごとに再転写を行う際のブランケットロールの接触圧力や周速がばらつく虞を未然に防止できることから、該各印刷対象ごとに印刷精度や再現性のばらつきが生じる虞を未然に防止することができる。
（３）又、重ね刷りを行うための複数の版や、版を交換するときの交換前と交換後の版に厚み寸法のばらつきがあったとしても、各版に対するブランケットロールの接触圧力や周速がばらつく虞を未然に防止できることから、上記版の厚み寸法のばらつきに起因して印刷精度や再現性がばらつく虞を未然に防止することができる。
（４）更に、印刷対象に対して正確で且つ再現性の高い印刷を行うことができることから、印刷対象に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを重ね刷りをする場合であっても、重ね合わせずれを抑制することができて、重ね合わせずれをマイクロメートルオーダーに抑えるのに有利な構成とすることができる。
（５）昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触している間、一定に保持するようにし、更に、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触している間、一定に保持するようにするオフセット印刷方法、及び、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの高さ位置を検出する高さセンサと、上記ブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能と、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能とを有するコントローラを備えてなる構成を有するオフセット印刷装置とすることにより、ブランケットロールを版や印刷対象に接触させて接触圧力をそれぞれ一旦所定の接触圧力に制御した後は、上記ブランケットロールの接触圧力が所定の接触圧力にされた時点でのブランケットロールの高さ位置を保持することで、ブランケットロールを版に接触させるときの接触部分の変形量と、ブランケットロールを印刷対象に接触させるときの接触部分の変形量をそれぞれ均一にした状態で版や印刷対象に接触させることができる。よって、上記（１）（２）（３）（４）と同様の効果を得ることができる。
（６）コントローラを、ブランケットロールと版との間で転写を行う間、及び、ブランケットロールと印刷対象との間で転写を行う間、圧力センサより入力された接触圧力がそれぞれ所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与えるときに、ブランケットロールに偏心が生じている場合は、該ブランケットロールの偏心量を基に、上記ブランケットロールを保持すべき高さ位置に対して補正を加える機能を有するものとした構成とすることにより、ブランケットロールが偏心していても、該ブランケットロールの版や印刷対象に接触する部分の変形量を、ブランケットロールを版や印刷対象に接触させて接触圧力をそれぞれ一旦所定の接触圧力に制御した状態での変形量に保持した状態で版や印刷対象との間で転写や再転写を行わせることができる。よって、上記のようにブランケットロールが偏心していても印刷精度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明のオフセット印刷方法及び装置の実施の一形態を示す概略側面図である。
【図２】図１のオフセット印刷装置における転写機構部を拡大して示す切断側面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ方向矢視図である。
【図４】図１のオフセット印刷装置に備えるコントローラの制御構成を示す概要図である。
【図５】図１のオフセット印刷装置のコントローラによるブランケットロールの高さ位置制御を行う場合の制御ブロック図である。
【図６】図１のオフセット印刷装置のコントローラによるブランケットロールの接触圧力一定制御を行う場合の制御ブロック図である。
【図７】図１のオフセット印刷装置によりオフセット印刷を行う場合における転写機構部の転写動作手順を示すもので、（イ）は転写前の初期状態を、（ロ）はブランケットロールの回転と版テーブルの走行を同期して開始させた状態を、（ハ）はブランケットロールを版に接触させた状態をそれぞれ示す概要図である。
【図８】図１のオフセット印刷装置の転写機構部における転写動作手順の図７（ハ）に続く動作を示すもので、（イ）はブランケットロールの版との接触圧力を所定圧力に制御した状態を、（ロ）はブランケットロールの範囲対する接触圧力を所定圧力に保持させた状態を示す概要図である。
【図９】図１のオフセット印刷装置の転写機構部における転写動作手順の図８（ロ）に続く動作を示すもので、（イ）はブランケットロールを退避高さ位置まで上昇させた状態を、（ロ）は転写終了の状態をそれぞれ示す概要図である。
【図１０】図１のオフセット印刷装置のインキング装置を示すもので、（イ）は版に対するインキング開始前の状態を示す概略側面図、（ロ）は版にインク押し込みブレードとインク掻き取りブレードを接触させてインキングを開始した状態を示す概略側面図、（ハ）はインク押し込み部レートとインク掻き取りブレードの部分を拡大して示す側面図である。
【図１１】図１のオフセット印刷装置のインキング装置を示すもので、（イ）はブランケットロールへのインクの転写に供された後の版を保持した版テーブルを版テーブル待機エリアへ走行させる状態を示す概略側面図、（ロ）は版上のインク溜りをインク戻しブレードにより版のガイドレール長手方向の他端寄り端辺部へ戻す状態を示す概略側面図である。
【図１２】本発明の実施の他の形態を示すもので、オフセット印刷装置のコントローラによるブランケットロールの圧力一定制御完了時の高さ位置を保持させるロール高さ位置保持制御を行う場合の制御ブロック図である。
【図１３】図１２のロール高さ位置保持制御を行う場合の転写動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【００２７】
図１乃至図１１（イ）（ロ）は本発明のオフセット印刷方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【００２８】
すなわち、水平な架台１の上側に、一方向（Ｘ軸方向）に延びるガイドレール２、たとえば、２本一組のガイドレール２を設け、該ガイドレール２に、凹版等の版３を上面部に取り付けて保持させる版テーブル４と、印刷対象としての基板５を上面部に取り付けて保持させる印刷対象テーブルとしての基板テーブル６とを、ガイドレール２の長手方向の一端側（図１における左側）より順に並べて配置した状態でそれぞれ個別のガイドブロック２ａを介してスライド可能に取り付けると共に、該各テーブル４，６を、リニアモータ等の個別の駆動装置７により上記ガイドレール２に沿って独立して移動（走行）できるようにする。更に、上記版テーブル４と基板テーブル６は、上記架台１上に上記ガイドレール２と平行に設けた共通のリニアスケール８により、それぞれのガイドレール２の長手方向に沿う位置、すなわち、Ｘ軸方向の所要の点を基準とするＸ軸方向の絶対位置の検出を行うことができるようにする。
【００２９】
上記架台１上におけるガイドレール２の長手方向中間部と対応する個所には、上記ガイドレール２の上方にて該ガイドレール２の長手方向と直交する方向（Ｙ軸方向）に延びるように配置して駆動モータ１１により回転駆動可能なブランケットロール１０と、上記ブランケットロール１０の回転速度及び周方向の角度姿勢を検出するためのエンコーダ１２と、上記ブランケットロール１０を昇降させて、該ブランケットロール１０の周壁面の下端部が上記版テーブル４及び基板テーブル６の上面よりも所要寸法高い位置に配置される退避高さ位置（退避ポジション）Ｈａと、該ブランケットロール１０の周壁面の下端部が上記各テーブル４及び６の上面に対応した高さに配置される接触高さ位置（接触ポジション）Ｈｂとの間で移動させるための昇降用アクチュエータ１３と、上記ブランケットロール１０の高さ位置を検出するための高さセンサ１４と、上記昇降用アクチュエータ１３により上記接触高さ位置（接触ポジション）Ｈｂまで下ろしてその下方に配置された状態の上記版テーブル４に保持させた版３や上記基板テーブル６に保持させた基板５に接触させると共に下方へ付勢して押し付けるときの接触圧力を検出するための圧力センサ１５とを備えてなる転写機構部９を設ける。
【００３０】
更に、上記架台１上におけるガイドレール２の長手方向一端部と対応する個所に、ガイドレール２の長手方向一端部まで版テーブル４を移動させて待機させるための版テーブル待機エリア１６を設け、上記架台１上における上記版テーブル待機エリア１６と上記転写機構部９との間に、上記版テーブル４の上面部に保持させた版３に対してインキングを行うためのインキング装置１７を設ける。
【００３１】
上記架台１上におけるガイドレール２の長手方向他端部と対応する個所には、ガイドレール２の長手方向他端部まで基板テーブル６を移動させて待機させた状態で、該基板テーブル６の上面部に対して印刷処理を新たに行うための基板５の取り付けと、印刷処理された後の基板５の取外しを行うための基板設置エリア１８を設ける。
【００３２】
更に、上記リニアスケール８より入力される上記版テーブル４と基板テーブル６のガイドレール２の長手方向に関する位置の検出信号、及び、上記転写機構部９のエンコーダ１２と高さセンサ１４と圧力センサ１５より入力される信号に基づいて、上記版テーブル４と基板テーブル６の個別の駆動装置７、及び、上記転写機構部９のブランケットロール１０の駆動モータ１１と昇降用アクチュエータ１３に指令を与えるコントローラ（制御器）１９を備えて、本発明のオフセット印刷装置を構成する。
【００３３】
詳述すると、上記転写機構部９は、図１乃至図３に示すように、上記ガイドレール２の長手方向中間部の両方の外側にそれぞれガイドレール２の長手方向（Ｘ軸方向）に所要間隔を隔てて２本ずつ設けた所要の高さ寸法を有する支柱部材２１と、上記ガイドレール２の長手方向中間部の所要寸法上方を横切るように配置して上記各支柱部材２１の頂部同士を連結する梁部材２２とからなる門型のフレーム２０を備え、該フレーム２０における上記ガイドレール２の外側にそれぞれＸ軸方向に沿って配設してある２本の支柱部材２１同士の間に、上記ブランケットロール１０の両端の回転軸２３を軸受２５を介して回転自在に保持させてなるロールハウジング２４の両端部が、上下方向に延びるリニアガイド２６を介して上下方向移動可能に取り付けてある。
【００３４】
更に、上記ロールハウジング２４における上記ブランケットロール１０の軸心方向に所要間隔を隔てた２個所、たとえば、上記ブランケットロール１０の軸心方向両端部にほぼ対応する２個所と、該各個所にそれぞれ対応する上記フレーム２０の梁部材２２の所要の２個所との間に、それぞれ上記昇降用アクチュエータ１３と圧力センサ１５を直列に介装して取り付けた構成としてある。
【００３５】
更に又、上記ブランケットロール１０の高さセンサ１４として、たとえば、上下方向のリニアスケールの如き高さセンサ１４を、上記ロールハウジング２４の両端部の所要個所と上記フレーム２０におけるそれぞれ対応する支柱部材２１の所要個所との間に設けてなる構成として、該各高さセンサ１４により上記ロールハウジング２４の上下方向位置の検出を介して、間接的に該ロールハウジング２４に保持したブランケットロール１０の高さ位置の検出を行うことができるようにしてある。これにより、上記各昇降用アクチュエータ１３の同期した駆動により上記ロールハウジング２４と一体に上記ブランケットロール１０を上記リニアガイド２６に沿わせて上下方向に移動させて、該ブランケットロール１０を、上記高さセンサ１４により検出される上記所定の退避高さ位置Ｈａ又は接触高さ位置Ｈｂに配置できるようにしてある。したがって、上記ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａまで引き上げた状態では、上記ガイドレール２に沿って移動する上記版テーブル４や基板テーブル６を、該ブランケットロール１０に干渉することなく、その下方を通過させることができるようにしてある。又、上記ブランケットロール１０の真下に上記版テーブル４や基板テーブル６が配置されている状態で、上記各昇降用アクチュエータ１３によりロールハウジング２４と一体に上記ブランケットロール１０を接触高さ位置Ｈｂまで下ろすことで、該ブランケットロール１０の周壁面を、上記版テーブル４の上面部に保持させた版３や基板テーブル６の上面部に保持させた基板５に上方から押し当てることができるようにしてあり、この際、上記各昇降用アクチュエータ１３に直列に設けてある各圧力センサ１５により、該各昇降用アクチュエータ１３がロールハウジング２４と一体にブランケットロール１０を下方に付勢する力の反力として、上記ブランケットロール１０の上記版テーブル４上の版３や基板テーブル６上の基板５に対する接触圧力を検出できるようにしてある。
【００３６】
上記ロールハウジング２４の片側には、駆動モータ１１を内向きに取り付けて、上記ロールハウジング２４の長手方向の片側の軸受２５に回転自在に保持させてある上記ブランケットロール１０の片側の回転軸２３に、上記駆動モータ１１の図示しない出力軸が接続してあり、これにより、上記駆動モータ１１の運転により上記ブランケットロール１０を回転駆動できるようにしてある。更に、上記駆動モータ１１の図示しない出力軸には、上記エンコーダ１２が取り付けてあり、これにより、該エンコーダ１２で、上記駆動モータ１１の運転により上記ブランケットロール１０を回転駆動するときにおける該ブランケットロール１０の回転速度と、該ブランケットロール１０の回転角度（周方向のある１個所を基準とする角度姿勢）を検出できるようにしてある。
【００３７】
上記コントローラ１９は、図４にその制御構成を示す如く、架台１上に設けたリニアスケール８より入力される版テーブル４と基板テーブル６の個別のテーブル位置検出信号Ｓ１を基に、該版テーブル４と基板テーブル６の個別の駆動装置７へ指令を与えて、上記各テーブル４，６の位置と移動方向（走行方向）と移動速度（走行速度）を制御できるようにしたテーブル走行制御部１９ａと、上記転写機構部９における各高さセンサ１４から入力されるブランケットロール１０の高さ位置の検出信号Ｓ２、及び、各圧力センサ１５から入力されるブランケットロール１０の上記版３や基板５に対する接触圧力の検出信号Ｓ３を基に、上記ブランケットロール１０の各昇降用アクチュエータ１３へ指令を与えて、該ブランケットロール１０の高さ位置、及び、該ブランケットロール１０の上記版３や基板５に対する接触圧力を制御できるようにしたロール位置制御兼圧力制御部１９ｂと、上記ブランケットロール１０の駆動モータ１１に取り付けてあるエンコーダ１２から入力されるブランケットロール１０の回転速度及び回転角度の検出信号を基に、上記ブランケットロール１０の駆動モータ１１へ指令を与えて、上記ブランケットロール１０の回転速度と回転角度を制御できるようにしたロール回転制御部１９ｃとを備えてなり、更に、上記ロール位置制御兼圧力制御部１９ｂ、及び、上記ロール回転制御部１９ｃを、共に上記テーブル走行制御部１９ａと同期制御できるようにした構成としてある。
【００３８】
更に又、上記コントローラ１９は、その制御機能として、必要に応じてブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａ又は接触高さ位置Ｈｂのいずれかに配置するためのロール高さ位置制御の機能と、上記ブランケットロール１０を版３に接触させて転写（受理）を行う場合に該ブランケットロール１０の上記版３に対する接触圧力を一定にさせ、且つ上記ブランケットロール１０を基板５に接触させて再転写（印刷）を行う場合に該ブランケットロール１０の上記基板５に対する接触圧力を一定にさせる接触圧力一定制御を行う機能を備えてなるものとしてある。
【００３９】
具体的には、上記コントローラ１９によるロール高さ位置制御機能は、図５にその制御ブロック図を示すように（なお、図示する便宜上、転写機構部９のフレーム２０やブランケットロール１０のロールハウジング２４の記載は省略すると共に、ブランケットロール１０に付設してある駆動モータ１１、エンコーダ１２、昇降用アクチュエータ１３、高さセンサとしてのリニアスケール１４、圧力センサ１５の形状及び配置は変更してある。又、ブランケットロール１０の片側の昇降用アクチュエータ１３の制御系統の記載は省略してある。図６及び図１２においても同様。）、架台１上のリニアスケール８（図２、図４参照）による版テーブル４のＸ軸方向の位置と、基板テーブル６のＸ軸方向の位置に関するテーブル位置検出信号Ｓ１が入力されると、該各テーブル位置検出信号Ｓ１を、予め設定してある所要のテーブル関数によるテーブル関数処理２７を行うことで、ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａ、あるいは、接触高さ位置Ｈｂのいずれに配置すべきかを判断して、上記退避高さ位置Ｈａもしくは接触高さ位置Ｈｂの高さ目標値ｈを出力させ、次いで、減算器２８に、上記高さ目標値ｈと、上記転写機構部９の高さセンサ１４より入力される検出信号に基づくブランケットロール１０の高さ現在値ｈ１とを入力して、該高さ現在値ｈ１の上記高さ目標値ｈに対する高さ偏差Δｈを求め、その後、この高さ偏差ΔｈをゼロにするためにＰＩＤ制御等のフィードバック制御理論に基づいたフィードバック処理２９を行なうことで求めた駆動指令Ｃ１を、上記ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３へ与えるようにしてある。これにより、上記昇降用アクチュエータ１３を上記駆動指令Ｃ１に基づいて作動させることで、上記版テーブル４や基板テーブル６のＸ軸方向の位置に応じて、後述するようにブランケットロール１０を版３や基板５との間でインクの転写を行わせるために接触させる場合は上記ブランケットロール１０を接触高さ位置Ｈｂに、それ以外の時には上記ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａに配置させることができるようにしてある。
【００４０】
又、上記コントローラ１９によるブランケットロール１０の接触圧力一定制御機能は、図６にその制御ブロック図を示すようにしてある。
【００４１】
すなわち、版３からブランケットロール１０へインクを転写（受理）させる場合は、版３にインキングされているインクをブランケットロール１０の表面に吸着させる必要がある一方、ブランケットロール１０から印刷対象となる基板５へインクを再転写させる場合は、ブランケットロール１０の表面に吸着されているインクを該ブランケットロール１０の表面より離反させて基板５の表面に吸着させる必要がある。このため、版３からブランケットロール１０へのインクの転写特性と、ブランケットロール１０から基板５へのインクの転写特性は、必ずしも同一でないことがあり、オフセット印刷全体での転写性能を高めるためには、上記ブランケットロール１０を版３に接触させるときに所望される接触圧力と、上記ブランケットロール１０を基板５に接触させるときに所望される接触圧力は、必ずしも同一にならないことがある。
【００４２】
この点に鑑みて、上記ブランケットロール１０の接触圧力一定制御を行う場合は、予め、圧力決定ブロック３０で、ブランケットロール１０を接触させる対象が、版３又は基板５のいずれであるかに応じて、それぞれ所望される或る接触圧力の目標値ｐを個別に設定しておき、この圧力目標値ｐと、上記転写機構部９の圧力センサ１５より入力されるブランケットロール１０の上記版テーブル４に保持された版３、又は、基板テーブル６に保持された基板５に対する接触圧力の現在値ｐ１とを減算器３１に入力して、接触圧力現在値ｐ１の上記圧力目標値ｐに対する圧力偏差Δｐを求め、この圧力偏差ΔｐをゼロにするためにＰＩＤ制御等のフィードバック制御理論に基いたフィードバック処理３２を行なうことで求めた駆動指令Ｃ２を、上記ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３へ与えることができるようにしてある。これにより、上記昇降用アクチュエータ１３を上記駆動指令Ｃ２に基づいて作動させることで、後述するようにブランケットロール１０と版３や基板５との間でインクの転写を行わせる際に、上記ブランケットロール１０を、上記版３や基板５に対し、それぞれ所望される上記圧力目標値ｐに応じた一定の接触圧力で接触させることができるようにしてある。
【００４３】
この際、上記ブランケットロール１０の軸心方向両端部にほぼ対応させて設けてある２つの昇降用アクチュエータ１３により該ブランケットロール１０の軸心方向両端部を下方に付勢した状態で、上記各昇降用アクチュエータ１３ごとに設けてある圧力センサ１５で上記接触圧力現在値ｐ１を監視して、上記したと同様の処理手順で上記２つの昇降用アクチュエータ１３の制御を個別に行うことで、上記ブランケットロール１０の版３又は基板５に対する接触面内の圧力の均一化が図れるようにしてある。
【００４４】
以上のようにブランケットロール１０の高さ位置制御機能と、接触圧力一定制御機能を備えたコントローラ１９により、本発明のオフセット印刷装置によるオフセット印刷を実施する際に上記転写機構部９において版３からブランケットロール１０へのインクの転写（受理）を行わせる場合の転写動作の手順は、図７（イ）（ロ）（ハ）乃至図９（イ）（ロ）に示す手順で行うようにする。なお、転写時における上記ブランケットロール１０の回転方向は、図上時計回り方向とし、版テーブル４の転写用走行方向は、ガイドレール２の長手方向他端側から一端側へ向かう向き（図上左向き）としてあるものとする。
【００４５】
上記版３からブランケットロール１０への転写動作を行わせる場合は、予め、上記図５に示したブランケットロール１０の高さ位置制御機能を用いて、図７（イ）に示すように、ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａに配置しておく。なお、この時点では、上記ブランケットロール１０の回転は停止させておくようにする。又、版テーブル４に保持させた版３に対してインキング装置１７によるインキングを予め施した状態で、該版テーブル４を、上記ブランケットロール１０の真下位置よりも、転写用走行方向の所要寸法上流側に予め設定してある転写開始位置Ｘ０に配置して一旦停止させるようにする。なお、図では、上記版テーブル４におけるガイドレール２長手方向の他端寄りの端部（図では右端部）を基準としてテーブル位置を定めてある。
【００４６】
次に、図７（ロ）に示すように、上記ブランケットロール１０を、退避高さ位置Ｈａに配置した状態のまま、駆動モータ１１の運転により回転させると共に、上記転写開始位置Ｘａに停止させてあった版テーブル４を、駆動装置（図２参照）７の運転により転写用走行方向への走行を開始させる。この際、後述するように接触圧力一定制御を行ってブランケットロール１０を予め設定した所定の接触圧力で版３に押し付けるようにして接触させることで該ブランケットロール１０の版３との接触部分に変形が生じるときの該ブランケットロール１０の変形部分のロール径に基づく周速と、上記版テーブル４の走行速度が一致するように、上記ブランケットロール１０の回転速度と、上記版テーブル４の走行速度とを設定しておくようにする。更に、上記ブランケットロール１０を版３に上記所要の接触圧力での接触させることに伴って変形する部分のロール径に基づいて、次の工程でブランケットロール１０を版テーブル４上に保持させた版３に接触させて転写を開始させるときの転写開始状態で接触させる個所を始点とするブランケットロール１０の周方向位置と、上記版テーブル４のＸ軸方向位置が一致するように位相同期制御を行うようにしてあるものとする。
【００４７】
次いで、図７（ハ）に示すように、転写用走行方向に走行する上記版テーブル４が、上記ブランケットロール１０の真下に所要量進入したローラ接触位置Ｘ１に達した時点で、上記コントローラ１９は、図５に示したブランケットロール１０の高さ位置制御機能を用いて、各昇降用アクチュエータ１３に高さ制御用の駆動指令Ｃ１を与えて、ブランケットロール１０を、該ブランケットロール１０の外周面の下端部が版テーブル４上に保持された版３に接触するよう事前に設定してある接触高さ位置Ｈｂまで下降させる。なお、インキング装置１７で後述するように上記版テーブル４に保持してある版３に対してインキングを行ってある場合は、該版３のガイドレール２長手方向一端寄りの端辺部にインク溜りが形成されているため、このインク溜りに上記ブランケットロール１０が接触しないように、該ブランケットロール１０の版３に対する接触位置が設定してあるものとする。
【００４８】
上記のようにして、上記ブランケットロール１０の周壁面を版テーブル４上の版３に接触させると、転写機構部９にてブランケットロール１０の各昇降用アクチュエータ１３と直列に設けてある各圧力センサ１５により、上記ブランケットロール１０の上記版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が検出されるようになる。
【００４９】
上記各圧力センサ１５より接触高さ位置Ｈｂに配置してあるブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１の検出信号が上記コントローラ１９へ入力されるようになると、該コントローラ１９では、図５に示したブランケットロール１０の高さ位置制御機能から図６に示した接触圧力一定制御機能に切換えて、上記ブランケットロール１０の各昇降用アクチュエータ１３へ圧力制御用の駆動指令Ｃ２を与えることで、上記圧力センサ１５で検出されるブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が、図８（イ）に示すように、予め設定した所定の接触圧力の圧力目標値ｐで一定となるように保持させるようにする。なお、この際、上記ブランケットロール１０の版３に対する接触圧力が安定した値となるまで、上記ブランケットロール１０の回転速度と、上記版テーブル４の走行による版３の移動速度とを、互いの同期を維持しながら共に減速させるようにしてもよい。
【００５０】
その後、図８（ロ）に示すように、上記回転するブランケットロール１０が上記走行する版テーブル４上の版３に接触して転写を行っている間、上記コントローラ１９では、上記各圧力センサ１５により検出される上記ブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が、上記所定の接触圧力の目標値ｐで一定に保持されるように、各ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３を制御する（図６参照）。これにより、上記ブランケットロール１０では、上記版３との接触部分に生じる変形量が或る一定量に保たれるようにしてある。
【００５１】
その後、上記ブランケットロール１０より版３への転写が終了した後は、図９（イ）に示すように、版テーブル４が上記ブランケットロール１０の直下位置を完全に通過する前に設定してあるローラ分離位置Ｘ２に達すると、上記ブランケットロール１０の回転と、上記版テーブル４の走行を継続させた状態で、上記コントローラ１９の図５に示したブランケットロールの高さ位置制御機能により、各昇降用アクチュエータ１３へ高さ制御用の駆動指令Ｃ１を与えて上記ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａまで上昇させる。なお、上記のようにブランケットロール１０を上昇させて版３より離反させた後は、ブランケットロール１０の回転速度と、版テーブル４の走行速度の同期制御を解除してよい。
【００５２】
しかる後、図９（ロ）に示すように、上記版テーブル４が転写終了位置Ｘ３まで走行すると、上記コントローラ１９は、退避高さ位置Ｈａまで上昇させたブランケットロール１０の回転を停止させて、図７（イ）に示したと同様の初期状態に回復させるようにしてある。
【００５３】
上記転写機構部９にて、上記図７（イ）（ロ）（ハ）乃至図９（イ）（ロ）に示した手順で版３からブランケットロール１０へのインクの転写（受理）を行わせた後、該ブランケットロール１０から印刷対象となる基板５へインクの再転写（印刷）を行う場合は、版３を保持した版テーブル４に代えて、印刷対象となる基板５を保持した基板テーブル６を用いて、コントローラ１９により図７（イ）（ロ）（ハ）乃至図９（イ）（ロ）に示したと同様の手順で転写動作を行わせるようにすることで、上記ブランケットロール１０から上記基板５へのインクの再転写（印刷）を行うことができるようにしてある。
【００５４】
なお、上記コントローラ１９の図６に示した接触圧力一定制御機能により、図８（イ）（ロ）に示したと同様にして、上記ブランケットロール１０を基板５に一定の接触圧力で接触させるときには、前記したように、圧力決定ブロック３０で、上記ブランケットロール１０を基板５に接触させるときの接触圧力の圧力目標値ｐを、上記ブランケットロール１０を版３に接触させるときの接触圧力の圧力目標値ｐとは別に設定するようにしてあることに起因して、上記ブランケットロール１０を基板５に上記所定の圧力目標値ｐとなるよう制御された一定の接触圧力で接触させるときにおける該ブランケットロール１０の接触部分の変形量は、上記ブランケットロール１０を版３に接触させたときの接触部分の変形量と必ずしも一致しない。
【００５５】
よって、上記ブランケットロール１０から上記基板５へのインクの再転写（印刷）を行う場合は、版３と基板５に対する接触圧力の違いにより生じるブランケットロール１０の変形量の違いを予め計測しておき、その変形量の違いによる周速の変化を考慮して、図７（ロ）から図９（イ）までの間、接触圧力一定制御を行ってブランケットロール１０を予め設定した所定の接触圧力で基板５に接触させるときに該ブランケットロール１０の基板５との接触部分に変形が生じるときの該変形部分のロール径に基づく周速と、基板テーブル６の走行速度が一致するように、上記ブランケットロール１０の回転速度と、上記基板テーブル６の走行速度とを補正して設定しておくようにしてあるものとする。これにより、上記ブランケットロール１０が基板テーブル６に保持された基板５に接触するときには、図８（イ）（ロ）に示したと同様に接触圧力一定制御が行われることから、印刷対象となる各基板５ごとに厚み寸法が変化しても、ブランケットロール１０が各基板５に接するときの圧力は均一とされる。よって、ブランケットロール１０が各基板５に接触するときの接触部分の変形量が毎回同じになるため、該ブランケットロール１０から各基板５へ再転写される印刷パターンの再現性を高めることができて、該各基板５へ印刷される印刷パターンが精細な電極パターンのように細線を有するものであるとしても、該細線を均一の太さで高い再現性で印刷できるようにしてある。
【００５６】
ところで、上記ブランケットロール１０は、その製作精度等に起因して、軸心が両端部の回転軸２３の軸心と必ずしも完全に一致していない場合があり、この場合、上記ブランケットロール１０では上記偏心に起因して回転角度により周位置が不均一になっていることがあるが、上記コントローラ１９は、ブランケットロール１０の版３又は基板５に対する接触圧力を一定に制御するようにしてあるので、上記のようにブランケットロール１０が偏心していても、該ブランケットロール１０の版３又は基板５に対する接触部分の変形量を均一にすることができる。しかし、上記接触圧力一定制御を行っても、偏心に起因してブランケットロール１０の回転角度により周速に変化が生じることは防止できない。そのため、上記ブランケットロール１０に偏心が生じている場合は、ブランケットロール１０の周速は回転角度に軸心から版３もしくは基板５への距離、すなわち、回転半径を乗ずることで得られることに鑑みて、予め、厚さが既知の図示しない検査用の基板を基板テーブル６に保持させた状態で、版３からの転写時の接触圧力と基板５への再転写時の接触圧力による接触圧力一定制御を行いながら上記ブランケットロール１０を回転させて上記検査用基板に接触させて、そのときに高さセンサとしてのリニアスケール１４で検出されるブランケットロール１０の高さ位置の変化を、ブランケットロール１０の回転角度変化と共に記録し、記録された上記ブランケットロール１０の高さ位置と既知の上記検査用基板の高さとの差を求めることで、上記ブランケットロール１０が或る回転角度となるときにおける版３からの転写時の接触圧力と基板５への再転写時の接触圧力による接触部分の回転半径をそれぞれ得ることができる。
【００５７】
したがって、ブランケットロール１０の回転角度ごとに回転半径を記録した補正用のテーブルを作成することで、偏心のあるブランケットロール１０についても、上記補正テーブルに基づいてブランケットロール１０の駆動モータ１１へ指令を与えて、該駆動モータ１１の回転速度をブランケットロール１０の回転角度に応じて適宜変化させる補正を加えることで、該ブランケットロール１０の周速を一定とすることができるようにすればよい。
【００５８】
あるいは、上記駆動モータ１１の回転速度を一定とし、上記偏心のあるブランケットロール１０の周速の変化に応じて版テーブル４や基板テーブル６の走行速度に補正を加えることで、ブランケットロール１０の周速と、版テーブル４上の版３や基板テーブル６上の基板５の移動速度とを同期させるようにしてもよい。
【００５９】
なお、上記偏心したブランケットロール１０の回転半径データは、定期的に計測して更新することで、ブランケットロール１０の磨耗等の経年変化に対応させるようにしてもよい。
【００６０】
上記インキング装置１７は、図１、図１０（イ）（ロ）（ハ）及び図１１（イ）（ロ）に示すように、上記ガイドレール２に沿って移動する版テーブル４の上面よりもやや上方となる退避高さ位置に、インク戻しブレード３３と、インク押し込みブレード３４と、インク掻き取りブレード３５を、ガイドレール２の長手方向一端側から順に備えると共に、該各ブレード３３，３４，３５をその下端部が上記版テーブル４に保持された版３に接する位置まで個別に下降させることができるようにするための図示しないアクチュエータを備えた構成としてある。
【００６１】
上記インク戻しブレード３３は、上端側よりも下端側がガイドレール２の長手方向一端部寄りに位置するように傾斜させてある。
【００６２】
又、上記インク押し込みブレード３４と上記インク掻き取りブレード３５は、共に上端側よりも下端側がガイドレール２の長手方向他端部寄りに位置するように傾斜させてあり、更に、上記インク押し込みブレード３４の方が、上記インク掻き取りブレード３５よりも、水平面からの傾斜角度が小さくなるように設定してある。これにより、インクとして導電性ペーストのような粘性の大きいインクを使用する場合であっても、水平面からの傾斜角度が比較的小さく設定してある上記インク押し込みブレード３４を用いることで版３へのインクの充填性を高めることができるようにしてあり、上記インク押し込みブレード３４で一旦版３に強制的に押し込まれることで、上記インク押し込みブレード３４通過後に版３より盛り上がるインクの余剰分は、水平面からの傾斜角度をより大きく設定して掻き取り性能を高いものとしてある上記インク掻き取りブレード３５で掻き取るようにして、上記版３に適正量のインクをインキングすることができるようにしてある。したがって、上記インキング装置１７により版へのインキングを行うときは、図１０（イ）に示すように、上記架台１の版テーブル待機エリア１６に配置した版テーブル４の上面部に版３を取り付け、且つ該版３の表面におけるガイドレール２他端寄り端辺付近に所要量のインク溜り３６、たとえば、導電性ペーストのようなインクがインク溜り３６として載せてある状態で、図１０（イ）に二点鎖線で示すように、上記版テーブル４をガイドレール２に沿って該ガイドレール２の長手方向他端側へ移動させて上記インキング装置１７を通して転写機構部９側へ移動させるときに、先ず、上記インク押し込みブレード３４を、上記版３におけるガイドレール２他端寄り端辺が真下に達する直前に、該版３に接触する位置まで下降させ、次いで、図１０（ロ）に示すように、上記インク掻き取りブレード３５を、上記版３におけるガイドレール２他端寄り端辺が真下に達する直前に、該版３に接触する位置まで下降させることで、図１０（ハ）に示すように、上記版３の表面におけるガイドレール２他端寄り端辺付近に載せてあったインク溜り３６のインクを、上記版テーブル４のガイドレール２長手方向他端側への移動に伴って上記版３の表面を相対的に摺動する上記インク押し込みブレード３４により版３へ押し込み、次に、上記インク押し込みブレード３４と同様に版３の表面を相対的に摺動する上記掻き取りブレード３５により上記版３に押し込まれたインクの余剰分を掻き取るようにして、上記版３に対するインキングを行い、該インキングされた版３を版テーブル４の移動により上記転写機構部９側へ送ることができるようにしてある。
【００６３】
なお、上記インク押し込みブレード３４及びインク掻き取りブレード３５は、上記版３におけるガイドレール２一端寄り端辺が真下を通過する直前に、該版３より離反させて退避位置まで引き上げることで、上記版３に対して摺動させるインク押し込みブレード３４とインク掻き取りブレード３５のガイドレール２長手方向一端側に形成されるインク溜り３６を、図１１（イ）に示すように、上記インキング装置１７を通過した後の版３の表面におけるガイドレール２一端寄り端辺付近に集めることができるようにして、この状態でインク溜り３６を載せた状態の版３を保持した版テーブル４を転写機構部９へ送って、上記した版３からブランケットロール１０へのインクの転写を行わせることができるようにしてある。
【００６４】
その後、上記ブランケットロール１０へのインクの転写に供された後の版３を保持した版テーブル４を転写機構部９側からガイドレール２の長手方向一端側へ移動させてインキング装置１７を通して版テーブル待機エリア１６まで戻すときに、図１１（ロ）に示すように、上記退避位置に配置してあったインク戻しブレード３３を、上記版テーブル４の移動に伴ってガイドレール２長手方向一端側へ移動する上記版３の表面に接する位置まで下ろして、該版３の表面におけるガイドレール２一端寄り端辺付近から、ガイドレール２他端寄り端辺付近まで相対的に摺動させることで、上記インク押し込みブレード３４とインク掻き取りブレード３５により上記版３の表面におけるガイドレール２一端寄り端辺付近に集められていたインク溜り３６を、該版３の表面におけるガイドレール２他端寄り端辺付近まで戻して、図１０（イ）に示したと同様の初期状態とすることができるようにしてある。
【００６５】
更に、図１に示した本発明のオフセット印刷装置では、上記版テーブル４及び基板テーブル６を、上部に上記ガイドレール２の長手方向（Ｘ軸方向）及びガイドレール２の長手方向に直交する方向（Ｙ軸方向）への水平移動と、ガイドレール２の長手方向に対するヨー角度（θ）の回転が可能なアライメントステージ４ａ及び６ａをそれぞれ具備してなる構成として、該各アライメントステージ４ａ及び６ａの上面部に上記版３及び印刷対象となる基板５をそれぞれ取り付けることができるようにしてある。
【００６６】
更に又、上記架台１の長手方向における上記転写機構部９、版テーブル待機エリア１６、インキング装置１７及び基板設置エリア１８と干渉しない所要個所、たとえば、上記転写機構部９と基板設置エリア１８との間の個所に、アライメントエリア３７を設けて、該アライメントエリア３７にて、上記版テーブル４のアライメントステージ４ａに保持させる版３と、上記基板テーブル６のアライメントステージ６ａに保持させる基板５について、共通のアライメントセンサ３８を用いてそれぞれ対応するテーブル４，６に対する相対位置を、センサフィードバックアライメント補正できるようにしてある。
【００６７】
具体的には、上記アライメントエリア３７には、上記版テーブル４及び基板テーブル６が下方を通過できるようにした支持架台３９を設けると共に、該支持架台３９における上記版テーブル４及び基板テーブル６の対角に対応する２個所又は４角部に対応する４個所に、アライメントセンサ３８としての精密カメラ３８をそれぞれ下向きに設けた構成としてある。これにより、上記版テーブル４に保持させた版３について初期アライメントを取る場合は、使用する版３の対角又は４角部に予め図示しないアライメントマーカをポインティングしておき、版テーブル待機エリア１６で版３を取り付けた版テーブル４を上記アライメントエリア３７へ移動させて、該アライメントエリア３７に予め設定してある所定のアライメント位置に停止させ、この状態で、上記支持架台３９上の各精密カメラ３８により上記版３の対角又は４角部の図示しないアライメントマーカを検出し、該各アライメントマーカが所定の配置となるように上記版テーブル４のアライメントステージ４ａのＸ−Ｙ方向への水平移動と回転による位置補正を行わせることで、該版テーブル４に対する上記版３の相対位置を常に同じ配置とさせることができるようにしてある。
【００６８】
又、上記基板テーブル６に保持させた基板５について初期アライメントを取る場合は、使用する基板５の対角又は４角部に予め図示しないアライメントマーカをポインティングしておき、基板設置エリア１８にて新たに印刷対象とする基板５を取り付けた基板テーブル６を、上記アライメントエリア３７へ移動させて上記所定のアライメント位置に停止させ、この状態で、上記支持架台３９上の各精密カメラ３８により上記基板５の対角又は４角部の図示しないアライメントマーカを検出し、該各アライメントマーカが所定の配置となるように上記基板テーブル６のアライメントステージ６ａのＸ−Ｙ方向への水平移動と回転による位置補正を行わせることで、該基板テーブル６対する上記基板５の相対位置を、常に同じ配置とさせることができるようにしてある。よって、上記アライメントエリア３７で初期アライメントを取った状態のときの版テーブル４上の版３の位置に対し、該アライメントエリア３７で初期アライメントを取った基板テーブル６上の基板５の相対的な配置を、常に同一の配置とさせることができるようにしてある。
【００６９】
なお、基板テーブル６に保持させる印刷対象とする基板５に対して重ね刷りを行う場合であって、印刷対象とする各基板５ごとに対する第１層目の印刷パターンの配置について厳密な再現性が特に求められず、印刷パターンの重ね合わせずれの防止がより重要となる場合は、基板５の対角又は４角に予めアライメントマーカをポインティングすることに代えて、基板５に対して第１回目の印刷を行うときに、アライメントマーカを印刷によりポインティングするようにしてもよい。よって、この場合は、基板テーブル６に保持させた基板５に第１回目の印刷を行う前は、該基板５についてアライメントをとる必要はない。
【００７０】
なお、図４に二点鎖線で示すように、上記コントローラ１９に、ブレード昇降制御部１９ｄを設けて、上記インキング装置１７における図示しないアクチュエータによる各ブレード３３，３４，３５（図１、図１０（イ）（ロ）（ハ）及び図１１（イ）（ロ）参照）の昇降制御を行わせるようにすると共に、上記コントローラ１９に、アライメントステージ制御部１９ｅを設けて、上記アライメントエリア３７における精密カメラ３８による版３や基板５の図示しないアライメントマーカの検出（図１参照）と、該検出されたアライメントマーカに基づく版テーブル４のアライメントステージ４ａの制御による版３の位置補正や、基板テーブル６のアライメントステージ６ａの制御による基板５の位置補正を行わせるようにしてもよい。この場合、上記ブレード制御部１９ｄと、上記アライメントステージ制御部１９ｅは、テーブル走行制御部１９ａと同期制御を行わせるようにすればよい。
【００７１】
更に、上記版テーブル４及び基板テーブル６にそれぞれアライメントステージ４ａ，６ａを設けた構成としてあることにより、上記ブランケットロール１０に偏心がある場合に、前述したようにブランケットロール１０の駆動モータ１１の回転速度に補正を加えたり、あるいは、版テーブル４や基板テーブル６の走行速度に補正を加えることに代えて、ブランケットロール１０の回転角度と版テーブル４もしくは基板テーブル６の走行位置の同期を取り、偏心に由来するブランケットロール１０の周方向位置と、版テーブル４もしくは基板テーブル６の走行位置とのずれを、該版テーブル４のアライメントステージ４ａもしくは基板テーブル６のアライメントステージ６ａのＸ方向への動作で補償させるようにしてもよい。
【００７２】
以上の構成としてある本発明のオフセット印刷装置によれば、転写機構部９にて、ブランケットロール１０を版３に接触させてインクの転写を行うときの接触圧力を一定にすることができるため、重ね刷りを行うために異なる版３を用いる場合や、版３を交換した場合であっても、ブランケットロール１０が版３に接触するときの変形量を均一にすることができて、上記版３からブランケットロール１０へインクが転写されるときのインクの付き具合を、毎回均一にすることができる。
【００７３】
又、上記転写機構部９にて、ブランケットロール１０を印刷対象となる基板５に接触させて再転写を行うときの圧力を、各基板５に対し均一に制御することができるため、ブランケットロール１０を各基板５に接触させるときの接触部分の変形量を毎回同一にすることができて、ブランケットロール１０より基板５へインクを再転写するときのインクの付き具合も、毎回均一にすることができる。
【００７４】
よって、印刷パターンが精細な電極パターンのように細線で電極を形成する場合であっても、各基板５ごとに細線として印刷される電極の太さが変化する虞を未然に防止できて、該各基板５に均一な太さで電極を印刷することができる。
【００７５】
しかも、印刷対象となる基板５の厚み寸法にばらつきがあったとしても、各基板５に接するブランケットロール１０の接触部分の変形量を均一にできて、ブランケットロール１０より各基板５へインクを再転写するときにブランケットロール１０の周速がばらつく虞を未然に防止でき、ブランケットロール１０の周速と基板ステージ６に保持させた基板５の移動速度を同期させることができるため、該各基板５ごとに印刷精度や再現性のばらつきが生じる虞を未然に防止することができる。
【００７６】
同様に、重ね刷りを行うための各版３の厚み寸法にばらつきがあったり、版３を交換した場合に交換前の版３と交換後の版３の厚み寸法にばらつきがあっても、該各版３に接するブランケットロール１０の接触部分の変形量を均一にできて、これらの版３からブランケットロール１０へインクを転写させるときにブランケットロール１０の周速がばらつく虞を未然に防止でき、ブランケットロール１０の周速と版テーブル４に保持させた版３の移動速度を同期させることができるため、基板５に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを正確に且つ高い再現性で印刷することができると共に、基板５に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを重ね刷りをする場合であっても、重ね合わせずれを抑制することができて、重ね合わせずれをマイクロメートルオーダーに抑えるのに有利な構成とすることができる。
【００７７】
更には、共通のアライメントエリア３７にて、版テーブル４に保持させた版３の該版テーブル４に対する相対位置と、基板テーブル６に保持させた基板５の該基板テーブル６に対する相対位置が一致するようにアライメントを取ることができるため、同じガイドレール２に沿って走行する上記版テーブル４と基板テーブル６にそれぞれ保持させた上記版３と基板５を、上記ガイドレール２に沿って同じ角度配置、同じ軌跡で移動させることができるようになるため、版３に形成してある印刷パターンを基板５に印刷する際の再現性をより高めることができる。
【００７８】
次に、図１２及び図１３は本発明の実施の他の形態を示すもので、図１乃至図１１（イ）（ロ）に示したと同様の構成において、コントローラ１９に、図５に制御ブロック図を示した如きブランケットロール１０のロール高さ位置制御機能と、図６に制御ブロック図を示した如きブランケットロール１０の接触圧力一定制御機能に加えて、図１２に制御ブロック図を示す如く、上記接触圧力一定制御機能に基づくブランケットロール１０の版３や基板５に対する接触圧力一定制御完了時の高さ位置を保持するためのロール高さ位置保持制御機能を備えるようにする。
【００７９】
具体的には、上記コントローラ１９によるロール高さ位置保持機能は、図１２に示すように、上記図６に示した接触圧力一定制御機能に基づくブランケットロール１０の版３や基板５に対する接触圧力一定制御完了時点で転写機構部９の高さセンサ１４により検出されるブランケットロール１０の高さ位置である所定接触圧力高さ位置Ｈｃを、ロール高さ保持目標値ｈ０とし、減算器４０に、上記ロール高さ保持目標値ｈ０と、上記接触圧力一定制御完了後に上記高さセンサ１４より入力される検出信号に基づくブランケットロール１０の高さ現在値ｈ１とを入力して、高さ現在値ｈ１の上記ロール高さ保持目標値ｈ０に対する高さ偏差Δｈを求め、その後、この高さ偏差ΔｈをゼロにするためにＰＩＤ制御等のフィードバック制御理論に基づいたフィードバック処理４１を行なうことで求めた駆動指令Ｃ３を、上記ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３へ与えるようにしてある。これにより、上記接触圧力一定制御を行うことでブランケットロール１０を所定の接触圧力で版３や基板５に一旦接触させた後、該ブランケットロール１０の高さ位置を一定に保持することで、該ブランケットロール１０を上記所定の接触圧力で版３や基板５に接触させた時点での接触部分の変形量が一定に保持されるようにして、ロール径の変化による周速の変化が生じる虞を未然に防止できるようにしてある。
【００８０】
更に、本実施の形態におけるコントローラ１９では、図１２に示すように、上記ブランケットロール１０に製作精度等に起因して偏心が存在していても、上記接触圧力一定制御完了時点でブランケットロール１０を所定の接触圧力で版３や基板５に接触させたときの接触部分の変形量を一定に保持できるようにするために、上記ブランケットロール１０の駆動モータ１１に取り付けてあるエンコーダ１２の検出信号ｒを基に、ブランケットロール１０の回転角度と周位置の不均一性を予め計測して求めた補正テーブルに基づいたテーブル関数処理４２を行なうことで、上記ブランケットロール１０の回転角度に応じた周位置の偏心補正値ｒ１を求め、別の減算器４３で、上記接触圧力一定制御完了時点でのロール高さ保持目標値ｈ０に対し上記偏心補正値ｒ１により予め補正を加えた後、この補正後のロール高さ保持目標値ｈ０´に対する高さ現在値ｈ１の高さ偏差Δｈを求めてから、この高さ偏差Δｈをゼロにするための上記フィードバック処理４１を行なって上記駆動指令Ｃ３を求めるようにしてある。
【００８１】
上記図１２に示したロール高さ保持制御機能を有するコントローラ１９を用いる場合の転写動作手順は、図５に示したコントローラ１９のロール高さ位置制御機能を用いて、ブランケットロール１０と版テーブル４に図７（イ）（ロ）（ハ）に示したと同様の動作を行なって、ブランケットロール１０を退避高さ位置Ｈａより接触高さ位置Ｈｂまで下降させて、ブランケットロール１０の周壁面を版テーブル４上の版３に接触させた後、図６に示した接触圧力一定制御機能により、図８（イ）に示したと同様に圧力センサ１５で検出されるブランケットロール１０の版３に対する接触圧力の圧力現在値ｐ１が、予め設定した所定の接触圧力の圧力目標値ｐとなるようにさせ、その後、図１３に示すように、上記圧力一定制御を行った時点で高さセンサ１４により検出されるブランケットロール１０の高さ位置をロール高さ保持目標値ｈ０とする図１２に示したロール高さ位置制御機能に切り替えて、上記回転するブランケットロール１０が上記走行する版テーブル４上の版３に接触して転写を行っている間、上記高さセンサ１４により検出される上記ブランケットロール１０の高さ位置が、上記ロール高さ保持目標値ｈ０に保持されるように、各ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３（図１２参照）を制御する。これにより、上記ブランケットロール１０では、上記版３との接触部分に生じる変形量が或る一定量に保たれる。
【００８２】
上記ブランケットロール１０より版３へのインクの転写が終了した後は、図９（イ）（ロ）に示したと同様にして転写動作を終了させるようにすればよい。
【００８３】
又、ブランケットロール１０から基板５へのインクの再転写も、上記版３を保持した版テーブル４に代えて基板５を保持した基板テーブル６に対して上記と同様の転写動作を行うようにすればよい。
【００８４】
したがって、本実施の形態によっても、上記実施の形態と同様に、ブランケットロール１０を版３に接触させるときの接触圧力を均一にできて、重ね刷りを行うために異なる版３を用いる場合や、版３を交換した場合であっても、ブランケットロール１０が版３に接触するときの変形量を均一にすることができる。又、ブランケットロール１０を基板５に接触させるときの接触圧力を均一にできることから、ブランケットロール１０を各基板５に接触させるときの接触部分の変形量を毎回同一にすることができる。
【００８５】
よって、印刷パターンが精細な電極パターンのように細線で電極を形成する場合であっても、各基板５ごとに細線として印刷される電極の太さが変化する虞を未然に防止できて、該各基板５に均一な太さで電極を印刷することができると共に、各基板５に対して電極パターンのような精細な印刷パターンを正確に且つ高い再現性で印刷することができて、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【００８６】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、たとえば、ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３をボールねじ機構とし、ブランケットロール１０の高さセンサ１４を上記ボールねじ機構の駆動モータ（サーボモータ）に備えたエンコーダとする等、ブランケットロール１０の昇降用アクチュエータ１３や高さセンサ１４の配置や形式は、適宜変更してもよい。又、昇降用アクチュエータ１３によりブランケットロール１０を版３や印刷対象となる基板５に押し付けるときの圧力を検出できるようにしてあれば、圧力センサ１５の配置や形式を適宜変更してもよい。
【００８７】
上記各実施の形態においては、ブランケットロール１０の軸心方向の両端部と対応する個所に設けた２つの昇降用アクチュエータ１３により、ブランケットロール１０の回転軸部分に対して版３あるいは基板５に接触させるための力を加えるものとして示したが、上記ブランケットロール１０に対して下向きの力を付与する個所は該ブランケットロール１０にてブランケット（図示せず）が取り付けられていない部分であれば任意の個所に変更してよく、たとえば、円筒形状の軸心方向の両端部分を下向きに押す構成としたり、上記ブランケットロール１０におけるブランケット（図示せず）の取り付け面積をロール半周分以下の領域として、該ブランケットが取り付けられていない円筒面の任意の部分を下向きに加圧する構成としてもよい。又、ブランケットロール１０を下向きに付勢する個所を３個所以上として該ブランケットロール１０に作用する圧力の軸心方向の分布の均一性を向上させるようにしてもよい。
【００８８】
版３からブランケットロール１０へのインクの転写特性と、ブランケットロール１０から印刷対象となる基板５へのインクの転写特性に応じて、ブランケットロール１０と版３及び基板５との接触圧力を同一とするようにしてもよい。
【００８９】
上記各実施の形態では、転写機構部９にて転写動作を行わせるときに、版テーブル４や基板テーブル６のガイドレール２長手方向の他端寄りの端部（図上右端部）を基準としてテーブル位置を定めるものとして説明したが、各テーブル４，６のテーブル位置を定めるための基準は、該各テーブル４，６の任意の個所に設定してよい。
【００９０】
インキング装置１７は版テーブル４に保持された版３へ適正なインキングが行えるようにしてあれば、図１０（イ）（ロ）（ハ）及び図１１（イ）（ロ）に示した以外の任意の形式のインキング装置１７を用いるようにしてもよい。
【００９１】
アライメントエリア３７は自動的にアライメントを取る観点からすると設けることが望ましいが、別の手段で版テーブル４上に保持させる版３と基板テーブル６上に保持させる基板５とのアライメントをとることができれば、アライメントエリア３７を省略してもよい。
【００９２】
本発明のオフセット印刷装置は、基板以外の印刷対象に印刷を行うために適用してもよい。
【００９３】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【００９４】
１ 架台
２ ガイドレール
３ 版
４ 版テーブル
５ 基板（印刷対象）
６ 基板テーブル（印刷対象テーブル）
１０ ブランケットロール
１３ 昇降用アクチュエータ
１４ 高さセンサ
１５ 圧力センサ
１９ コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触する間の接触圧力と、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触する間の接触圧力が、それぞれ所定の値で一定に保持されるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御することを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項２】
昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触している間、一定に保持するようにし、更に、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触している間、一定に保持するようにすることを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項３】
架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、及び、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、それぞれ上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値で一定に保持されるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能を有するコントローラを備えてなる構成を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項４】
架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの高さ位置を検出する高さセンサと、上記ブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能と、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能とを有するコントローラを備えてなる構成を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項５】
コントローラを、ブランケットロールと版との間で転写を行う間、及び、ブランケットロールと印刷対象との間で転写を行う間、圧力センサより入力された接触圧力がそれぞれ所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与えるときに、ブランケットロールに偏心が生じている場合は、該ブランケットロールの偏心量を基に、上記ブランケットロールを保持すべき高さ位置に対して補正を加える機能を有するものとした請求項４記載のオフセット印刷装置。
【請求項１】
昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触する間の接触圧力と、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触する間の接触圧力が、それぞれ所定の値で一定に保持されるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御することを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項２】
昇降用アクチュエータにより昇降させられるブランケットロールを、架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルに保持させた版に、上方より接触させ、次いで、上記ブランケットロールを、上記ガイドレール上を走行する印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、上方より接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記版テーブルに保持させた版に接触している間、一定に保持するようにし、更に、上記ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触開始する際の接触圧力が所定の値となるように上記昇降用アクチュエータによるブランケットロールの昇降を制御した後、そのブランケットロールの高さ位置を該ブランケットロールが上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に接触している間、一定に保持するようにすることを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項３】
架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、及び、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、それぞれ上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値で一定に保持されるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能を有するコントローラを備えてなる構成を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項４】
架台上に設けたガイドレール上を走行する版テーブルと印刷対象テーブルを備え、上記版テーブルに保持させた版と、上記印刷対象テーブルに保持させた印刷対象に、昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールを上方より順次接触させることで、上記版からブランケットロールへの転写と、ブランケットロールから印刷対象への再転写を行わせるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記昇降用アクチュエータにより昇降させるブランケットロールの高さ位置を検出する高さセンサと、上記ブランケットロールの上記版及び印刷対象に対する接触圧力を検出する圧力センサを備え、更に、上記ブランケットロールと上記版との間で転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記版との間で転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能と、上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を開始させる際に上記圧力センサより入力される接触圧力が所定の値となるよう上記昇降用アクチュエータへ指令を与え、且つ上記ブランケットロールと上記印刷対象との間で再転写を行う間、上記圧力センサより入力された接触圧力が所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与える機能とを有するコントローラを備えてなる構成を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項５】
コントローラを、ブランケットロールと版との間で転写を行う間、及び、ブランケットロールと印刷対象との間で転写を行う間、圧力センサより入力された接触圧力がそれぞれ所定の値となったときの上記ブランケットロールの高さ位置が保持されるよう上記高さセンサからの入力を基に上記昇降用アクチュエータへ指令を与えるときに、ブランケットロールに偏心が生じている場合は、該ブランケットロールの偏心量を基に、上記ブランケットロールを保持すべき高さ位置に対して補正を加える機能を有するものとした請求項４記載のオフセット印刷装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
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【図１０】
【図１１】
【図１２】
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【公開番号】特開２０１０−２４１０６９（Ｐ２０１０−２４１０６９Ａ）
【公開日】平成２２年１０月２８日（２０１０．１０．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−９４７６５（Ｐ２００９−９４７６５）
【出願日】平成２１年４月９日（２００９．４．９）
【出願人】（０００００００９９）株式会社ＩＨＩ (5,014)
【公開日】平成２２年１０月２８日（２０１０．１０．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年４月９日（２００９．４．９）
【出願人】（０００００００９９）株式会社ＩＨＩ (5,014)
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