説明

オフセット印刷機及びオフセット印刷方法

【課題】高精度な印刷をより容易に持続することが可能なオフセット印刷機及びオフセット印刷方法を提供する。
【解決手段】プリンティングプレート41と、インク21を供給されたプリンティングプレート41からインク21を転移され、転移されたインク21を基板200に転写するブランケット51とを備えたオフセット印刷機10aにおいて、ブランケット51が基板200にインク21を転写する印刷開始点Pを検出する印刷開始点モニタ91と、検出した印刷開始点Pの変化に対応してブランケット51と基板200との相対的な位置関係を調整するブランケット移動機構60とをさらに備える。このため、ブランケット51のインク21による膨潤により印刷開始点Pが変化しても、印刷開始点Pの変化に対するフィードバック制御により印刷開始位置Pを調整しつつ高精度な印刷を続行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを供給された印刷版から転写体にインクを転移し、印刷版から転写体に転移されたインクを印刷対象物に転写するオフセット印刷機及びオフセット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷技術として、オフセット印刷が行なわれている。オフセット印刷は、所定のパターンが施された印刷版に対してインクを供給し、インクを供給された印刷版(プリンティングプレート)から転写体(ブランケット)にインクを転移し、印刷版から転写体に転移されたインクを印刷対象物に転写する。例えば、特許文献1には、シート状または帯状のブランケットをその両端を印刷方向の前後端において支持することによって懸架し、加圧治具によってブランケットを上方から押圧して下方の印刷版または印刷対象物に圧着させながら印刷方向に掃引することによって、印刷版からブランケットへのインクの転移と、ブランケットから印刷対象物へのインキの転写とを行うオフセット印刷機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−219639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、電子産業用途における回路基板のパターン形成にオフセット印刷が用いられているが、このような用途では高精度の印刷が必要となる。そのため、印刷作業では、熟練した作業員による調整等が必要となっており、改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高精度な印刷をより容易に持続することが可能なオフセット印刷機及びオフセット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定のパターンが施された印刷版と、印刷版にインクを供給するインク供給手段と、インク供給手段からインクを供給された印刷版からインクを転移され、印刷版から転移されたインクを印刷対象物に転写する転写体と、転写体が印刷対象物にインクを転写する転写位置を検出する転写位置検出手段と、転写位置検出手段が検出した転写位置の変化に対応して、転写体と印刷対象物との相対的な位置関係を調整する位置関係調整手段とを備えたオフセット印刷機である。
【0007】
この構成によれば、所定のパターンが施された印刷版と、印刷版にインクを供給するインク供給手段と、インク供給手段からインクを供給された印刷版からインクを転移され、印刷版から転移されたインクを印刷対象物に転写する転写体とを備えたオフセット印刷機において、転写体が印刷対象物にインクを転写する転写位置を検出する転写位置検出手段と、転写位置検出手段が検出した転写位置の変化に対応して、転写体と印刷対象物との相対的な位置関係を調整する位置関係調整手段とをさらに備える。このため、転写位置が変化しても、転写位置の変化に対するフィードバック制御によって転写位置を調整しつつ高精度な印刷をより容易に持続することができる。
【0008】
この場合、転写体の形状の変化を検出する転写体形状検出手段をさらに備え、位置関係調整手段は、転写体形状検出手段が検出した転写体の形状の変化に対応して、転写体と印刷対象物との相対的な位置関係を調整することが好適である。
【0009】
この構成によれば、転写体の形状の変化を検出する転写体形状検出手段をさらに備え、位置関係調整手段は、転写体形状検出手段が検出した転写体の形状の変化に対応して、転写体と印刷対象物との相対的な位置関係を調整する。このため、転写位置の変化の有無に関わらず、転写体の形状の変化という外乱に対するフィードフォワード制御によって転写位置を調整しつつ、より高精度な印刷を続行することができる。
【0010】
また、インク供給手段は、印刷版に施されたパターンの凹部及び凸部に供給されたインクの内で、凹部上に供給されたインクが凹部上に残り、凸部上に供給されたインクが転写体に転移されるようなインクを印刷版に供給することが好適である。
【0011】
この構成によれば、インク供給手段は、印刷版に施されたパターンの凹部及び凸部に供給されたインクの内で、凹部上に供給されたインクが凹部上に残り、凸部上に供給されたインクが転写体に転移されるようなインクを印刷版に供給する。このような場合は、薄膜形成が可能(容易)なインクが好ましいが、このようなインクが転写体に転移されることにより、転写体から印刷対象物にほとんど全てのインクが転写される。また、印刷版の凹部上のインクは転写しないまま印刷版上に残るため、インクの使用量を低減することができる。さらに、本発明では、転写体がこのようなインクによって膨潤しても、位置関係調整手段により転写位置が調整されるため、高精度の印刷を行なうことができる。
【0012】
この場合、転写体は、同じ転写位置に重ねてインクを転写することが可能である。
【0013】
印刷版に施されたパターンの凹部及び凸部に供給されたインクの内で、凹部上に供給されたインクが凹部上に残り、凸部上に供給されたインクが転写体に転移されるような粘度あるいは乾燥し易さのインクでは、高い位置精度及び極めて薄い膜厚での印刷が可能であるため、同じ転写位置に複数回重ねて印刷することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、所定のパターンが施された印刷版にインクを供給する工程と、インクを供給された印刷版から転写体にインクを転移する工程と、印刷版から転写体に転移されたインクを印刷対象物に転写する工程と、転写体が印刷対象物にインクを転写する転写位置を検出する工程と、検出した転写位置の変化に対応して、転写体と印刷対象物との相対的な位置関係を調整する工程とを含むオフセット印刷方法である。
【0015】
この場合、転写体の形状の変化を検出する工程と、検出した転写体の形状の変化に対応して、転写体と印刷対象物との相対的な位置関係を調整する工程とをさらに含むことが好適である。
【0016】
また、印刷版にインクを供給する工程では、印刷版に施されたパターンの凹部及び凸部に供給されたインクの内で、凹部上に供給されたインクが凹部上に残り、凸部上に供給されたインクが転写体に転移されるようなインクを印刷版に供給することが好適である。
【0017】
この場合、インクを印刷対象物に転写する工程では、同じ転写位置に重ねてインクを転写することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオフセット印刷機及びオフセット印刷方法によれば、高精度な印刷をより容易に持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオフセット印刷機の側面図である。
【図2】(a)〜(d)は、一般的なインクを用いたオフセット印刷方法を示す図である。
【図3】(a)〜(d)は、第1実施形態に係るオフセット印刷方法を示す図である、特にプリンティングプレートの凸部表面がシリコーンである場合を示す。
【図4】第1実施形態に係るオフセット印刷機の動作を示すフローチャートである。
【図5】(a)(b)は、本発明の第2実施形態に係るオフセット印刷機の側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るオフセット印刷機の側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る印刷方法と従来の印刷方法とを比較した表である。
【図8】本発明の実施形態に係る印刷方法と従来の印刷方法とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るオフセット印刷機及びオフセット印刷方法の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るオフセット印刷機10aは、インク塗布機20、ドライヤー30、プリンティングロール40、ブランケットロール50、ブランケット移動機構60、プレッシングロール70、プリンティングロール洗浄・修正機80、印刷開始点モニタ91、ブランケット径検出器92及び制御部100を備えている。
【0021】
インク塗布機20は、プリンティングロール40にインク21を塗布する。後述するように、本実施形態では、インク塗布機20は低粘性のインク21を塗布する。
【0022】
ドライヤー30は、インク塗布機20によりインク21を塗布されたプリンティングロール40に温風あるいは冷風を供給することにより、プリンティングロール40に供給されたインク21を所定の温度及び風量により、過熱及び乾燥させる。
【0023】
プリンティングロール40は、外周のプリンティングプレート(印刷版)41にプリンティングプレート凸部42及びプリンティングプレート凹部43により所定のパターンが施されている。プリンティングロール40は、図中矢印方向に回転しつつインク塗布機20によりインク21を供給される。
【0024】
ブランケットロール50は、図中矢印方向に回転しつつ外周のブランケット51にプリンティングロール40からインク21を転移される。ブランケットロール50は、図中矢印方向に回転しつつ、印刷対象物である基板200に印刷開始点Pにおいてインク21を転写する。なお、図1は側面図であるため、実際には、印刷開始点Pは基板200を横断する線分となる。ブランケット51はブランケット固定具52によりブランケットロール50の外周に固定されている。ブランケットロール50は金属からなるものとでき、ブランケット51は例えばシリコーンゴムからなるものとできる。
【0025】
本実施形態では、後述するように、インク塗布機20より塗布されるインク21は低粘性であるため、プリンティングプレート41に施されたパターンのプリンティングプレート凸部42及びプリンティングプレート凹部43に供給されたインク21の内で、プリンティングプレート凹部43上に供給されたインク21がプリンティングプレート凹部43上に残り、プリンティングロール凸部42上に供給されたインク21がブランケット51に転移される。
【0026】
ブランケット移動機構60は、ブランケットロール50の回転軸を支持するブランケットロールストロークロッド61と、ブラケットロールストロークロッド61を支持するブラケットロールスライダ62とを有する。ブランケットロールストロークロッド61は、長手方向に進退動自在であり、基板200の表面に垂直な図中y軸方向に平行にブランケットロール50を移動させることが可能である。これによりブランケット51と基板200との間隔を調整することが可能である。ブランケットロールストロークロッド61は、長手方向の軸周りの任意の角度θで回転自在であり、ブランケット51の走行方向と基板200の走行方向とがなす角度を変更することが可能となっている。ブランケットロールスライダ62は、基板200の表面に平行な図中x軸方向に平行にブランケットロール50を移動させることが可能である。以上より、ブランケット移動機構60は、印刷開始点Pを任意に移動させることが可能である。
【0027】
プレッシングロール70は、基板200を挟んでブランケットロール50と対向するように位置する。プレッシングロール70は、図中矢印方向に回転しつつ基板200を図中矢印方向に走行させる。
【0028】
プリンティングロール洗浄・修正機80は、ブランケット51にインク21を転移させた後のプリンティングロール40のプリンティングプレート41のインク21の洗浄及び修正を行う。
【0029】
印刷開始点モニタ91は、印刷開始点Pの位置の変化を監視するセンサである。印刷開始点モニタ91は、例えばカメラセンサとすることができる。印刷開始点モニタ91は、例えば、基板200に基準として設けられたアライメントマークと印刷開始点Pとの位置関係の変化をパターン認識等により検出することにより、印刷開始点Pの位置の変化を検出することができる。印刷開始点モニタ91は、印刷開始点Pの変化をμm単位で検出することが可能なものが好ましい。
【0030】
ブランケット径検出器92は、ブランケット51が長時間連続して稼動することにより、例えばインク21中の溶剤がブランケット51に浸透することにより膨潤すること等によるブランケットロール50のみかけの径の変化を検出するセンサである。ブランケット径検出器92は、例えば、ブランケット51を外周に巻かれたブランケットロール50のみかけの径をレーザ光により測定するセンサとすることができる。ブランケット径検出器92は、ブランケットロール50のみかけの径の変化をμm単位で検出することが可能なものが好ましい。
【0031】
制御部100は、印刷開始点モニタ91及びブランケット径検出器92からの検出値に対応して、ブランケット移動機構60の動作を制御し、ブランケット51と基板200との相対的な位置関係を調整することにより、印刷開始点Pの位置を調整する。また、制御部100は、併せてインク塗布機20、ドライヤー30及びプリンティングロール洗浄・修正機80の制御も行なう。制御部100は、データベース101と修正値算出部102を有している。データベース101には、ブランケットロール50の見かけの外径に対する印刷開始点Pの修正値が対応付けられて記憶されている。
【0032】
修正値算出部102は、印刷開始点モニタ91からの検出値に対応して印刷開始点Pの位置を維持するような修正値を算出し、当該修正値を操作量としてブランケット移動機構60を操作する。ブランケット移動機構60を操作後の印刷開始点Pの位置は継続して印刷開始点モニタ91により検出され、修正値算出部102は印刷開始点モニタ91の検出値に基づく修正値を算出するフィードバック制御が行なわれる。また、修正値算出部102は、印刷開始点モニタ91により検出された印刷開始点Pの変動の有無に関わらず、データベース101を参照して、ブランケット径検出器92の検出値に対応する修正値を抽出し、当該修正値を操作量としてブランケット移動機構60を操作するフィードフォワード制御を行なう。
【0033】
以下、本実施形態のオフセット印刷機10の動作について説明する。まず、本実施形態で行なわれるオフセット印刷について説明する。図2(a)に示すように、一般のオフセット印刷では、所定のパターンに従って金属やゴムなどによりプリンティングプレート凸部42及びプリンティングプレート凹部43を設けられたプリンティングプレート41が用意される。
【0034】
次に図2(b)に示すように、プリンティングプレート41のプリンティングプレート凹部43に比較的に高粘性のインク21’を塗布する。次に図2(c)に示すように、ブランケットロール50のブランケット51にインク21’を転移させる。最後に図2(d)に示すように、ブランケット51から基板200にインク21’を転写させる。
【0035】
しかしながら、上記の手法では、高粘性のインク21’を用いるため、基板200への転写後もブランケット51にインク21’が残留し、残ったインク21’が転写・印刷された場合、電子産業用途では異物となり、問題となる。そのため、残留したインク21’は適宜洗浄が必要となる。
【0036】
そこで、本実施形態では、以下に示すオフセット印刷を行なう。図3(a)に示すように、所定のパターンに従ってプリンティングプレート凸部42及びプリンティングプレート凹部43を設けられたプリンティングプレート41が用意される。プリンティングプレート凸部42の表層(表面)はシリコーン等により形成されている。次に、図3(b)に示すように、インク塗布機20により、プリンティングプレート41の全面に、比較的に低粘性のインク21を塗布する。
【0037】
次に図3(c)に示すように、ブランケットロール50のブランケット51にインク21を転移させる。図2(a)〜(d)の手法と異なり、本手法では、比較的に低粘性のインク21を用いるため、プリンティングプレート凹部43上のインク21はプリンティングプレート41に残留し、プリンティングプレート凸部42上のインク21はブランケット51にほぼ100%転移される。最後に図3(d)に示すように、ブランケット51から基板200にインク21を転写させる。この場合も、低粘性のインク21はブランケット51から基板200にほぼ100%転写される。
【0038】
この本実施形態の手法では、低粘性のインク21を用いるため、基板200への転写後もブランケット51にインク21が残留することがなく、ブランケット51の洗浄は容易となる。また、プリンティングプレート41からブランケット51へ、さらにブランケット51から基板200へと、転移又は転写されるべきインク21がほぼ100%転移又は転写されるため、印刷に使用されないインク21を極めて少なくすることができる。
【0039】
以下、上記のオフセット印刷を行なう本実施形態のオフセット印刷機10aの動作について説明する。図4に示すように、プレッシングロール70が回転し、基板200が走行させられる(S11)。印刷開始点モニタ91は印刷開始点Pの位置の変化を検出し続ける(S12)。印刷開始点Pの変化が閾値以上となった場合は(S13)、制御部100の修正値算出部102は、印刷開始点Pの変化量に応じて印刷開始点Pの位置を維持するための修正値を算出する(S14)。この場合の印刷開始点Pの変化の閾値は、所定の閾値としても良いし、あるいは印刷開始点モニタ91が検出可能な最小値とし、印刷開始点モニタ91により印刷開始点Pの変化が検出され次第、修正値を算出することとしても良い。制御部100は、ブランケット移動機構60を修正値に従って駆動することにより、印刷開始点Pを維持する(S15)。
【0040】
一方、上記のS12〜S15の処理に並行して、ブランケット径検出器92はブランケットロール50のみかけの径の変化を測定し続ける(S16)。インク21によるブランケット51の膨潤等によりブランケットロール50のみかけの径の変動が閾値以上となった場合は(S17)、制御部100の修正値算出部102は、データベース101を参照しつつ、ブランケットロール50の径の変化量に応じた修正値を算出する(S18)。この場合の修正値は、例えば、ブランケット51がインク21により膨潤し、ブランケットロール50のみかけの径が増大していくにつれて、図1中のy軸のマイナス側にブランケットロール50を移動させてブランケット51と基板200との間隔を増やすための修正値や、図1中のx軸のプラス側にブランケットロール50を移動させて印刷開始点Pを基板200の走行方向側に遅らせるための修正値が考えられる。
【0041】
また、この場合のブランケットロール50の径の変化の閾値は、所定の閾値としても良いし、あるいはブランケット径検出器92が検出可能な最小値とし、ブランケット径92により印刷開始点Pの変化が検出され次第、修正値を算出することとしても良い。制御部100は、印刷開始点モニタ91により印刷開始点Pの変化が検出されているか否かに関わらず、ブランケット移動機構60を修正値に従って駆動することにより、印刷開始点Pを維持する(S19)。以上のS12〜S19の動作は印刷終了まで行なわれる(S20)。通常の印刷は、粘稠性の大きいインクを用い、印刷後に硬化させる。本実施形態では、シリコーン表層部の粘稠性が小さく乾燥性の良いインクのため、印刷物の硬化工程を経る事無く、同じ工程を繰り返すことが可能であり、なお、本実施形態では、同じ基板200の既にインク21を転写した位置に対して複数回重ねてインク21を転写することが可能である。
【0042】
本実施形態では、所定のパターンが施されたプリンティングプレート41と、プリンティングプレート41にインク21を供給するインク塗布機20と、インク塗布機20からインク21を供給されたプリンティングプレート41からインク21を転移され、プリンティングプレート41から転移されたインク21を基板200に転写するブランケット51とを備えたオフセット印刷機10aにおいて、ブランケット51が基板200にインク21を転写する印刷開始点Pを検出する印刷開始点モニタ91と、印刷開始点モニタ91が検出した印刷開始点Pの変化に対応して、ブランケット51と基板200との相対的な位置関係を調整するブランケット移動機構60とをさらに備える。このため、ブランケット51がインク21中の成分、例えば溶剤等を吸収することによる膨潤等によって形状が変化し、印刷開始点Pが変化しても、印刷開始点Pの変化に対するフィードバック制御によって印刷開始位置Pを調整しつつ高精度な印刷を続行することができる。その結果、印刷時に熟練した作業員による調整等が不要となり、労力及び人員を削減することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ブランケット51の形状の変化を検出するブランケット径検出器92をさらに備え、ブランケット移動機構60は、ブランケット径検出器92が検出したブランケット51の形状の変化に対応して、ブランケット51と基板200との相対的な位置関係を調整する。このため、ブランケット51がインク21を吸収することによる膨潤等によって形状が変化したとしても、印刷開始点Pの変化の有無に関わらず、ブランケット51の形状の変化という外乱に対するフィードフォワード制御によって印刷開始点Pを調整しつつ、より高精度な印刷を続行することができる。
【0044】
また、本実施形態では、インク塗布機20は、プリンティングプレート41に施されたパターンのプリンティングプレート凹部43及びプリンティングプレート凸部42に供給されたインク21の内で、プリンティングプレート凹部43上に供給されたインク21がプリンティングプレート凹部43上に残り、プリンティングプレート凸部42上に供給されたインク21がブランケット51に転移されるような低い粘度のインク21をプリンティングプレート41に供給する。このように低粘度のインク21がブランケット51に転移されることにより、ブランケット51から基板200にほとんど全てのインク21が転写され、ブランケット51にインク21が残り難くなり、ブランケット51の洗浄等が容易となる。さらに、本実施形態では、ブランケット51がこのような低粘度のインク21中の成分、特に溶剤によって大きく膨潤しても、ブランケット移動機構60により印刷開始点Pが調整されるため、高精度の印刷を行なうことができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、プリンティングプレート凹部43上に供給されたインク21がプリンティングプレート凹部43上に残り、プリンティングプレート凸部42上に供給されたインク21がブランケット51に転移されるような粘度あるいは乾燥し易さのインク21が用いられるため、図7及び図8に示すように高い位置精度及び極めて薄い膜厚での印刷が可能である。そのため、同じ転写位置に複数回重ねて印刷する重ね印刷が可能となる。
【0046】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、ブランケット51へのインク21の転移と、ブランケット51から基板200へのインク21の転写とが同時に行なわれたが、本実施形態では、これらを別個に行なう。図5(a)に示すように、本実施形態のオフセット印刷機10bでは、まず、上記第1実施形態と同様にして、プリンティングプレート41からブランケット51へのインク21の転移が行なわれる。
【0047】
その後、図5(b)に示すように、ブランケット移動機構60により、印刷定盤201上で走行させられる基板200上にブランケットロール50を移動させるか、プリンティングロール40、インク塗布機20、ドライヤー30及びプリンティングロール洗浄・修正機を避退させて、ブランケット51から基板200へのインク21の転写が行なわれる。
【0048】
本実施形態においても、印刷開始点モニタ91、ブランケット径検出器92及び制御部100による印刷開始点Pの修正は上記第1実施形態と同様に行なわれる。
【0049】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。上記第1及び第2実施形態では、ブランケット51は、円筒状のブランケットロール50の外周に固定されて基板200へのインク21の転写を行なっていたが、図6に示すように、本実施形態のオフセット印刷機10cでは、ブランケット51は円弧を有する台座53の円弧上に固定されて基板200へのインク21の転写を行なう。台座53は、ブランケット移動機構60の台座揺動機63により、図中矢印方向に台座53の円弧の全面が基板200の全面と接触するように揺動させられる。これにより、比較的に基板200の面積が大きい場合においても、ブランケット51による基板200へのインク21の転写が容易となる。
【0050】
本実施形態においても、印刷開始点モニタ91、ブランケット径検出器92及び制御部100による印刷開始点Pの修正は上記第1及び第2実施形態と同様に行なわれる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変改態様が可能である。例えば、上記実施形態では、図3(a)〜(d)に記載の低粘度のインク21によりオフセット印刷を行なう態様について中心に説明したが、本発明は図2(a)〜(d)に示すような高粘度のインク21’を用いるオフセット印刷にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
10a〜10c…オフセット印刷機、20…インク塗布機、21…インク(低粘性)、21’…インク(高粘性)、30…ドライヤー、40…プリンティングロール、41…プリンティングプレート(印刷版)、42…プリンティングプレート凸部、43…プリンティングプレート凹部、50…ブランケットロール、51…ブランケット(転写版)、52…ブランケット固定具、53…台座、60…ブランケット移動機構、61…ブランケットロールストロークロッド、62…ブランケットロールスライダ、63…台座揺動機、70…プレッシングロール、80…プリンティングロール洗浄・修正機、91…印刷開始点モニタ、92…ブランケット径検出器、100…制御部、101…データベース、102…修正値算出部、200…基板、201…印刷定盤、P…印刷開始点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが施された印刷版と、
前記印刷版にインクを供給するインク供給手段と、
前記インク供給手段から前記インクを供給された前記印刷版から前記インクを転移され、前記印刷版から転移された前記インクを印刷対象物に転写する転写体と、
前記転写体が前記印刷対象物に前記インクを転写する転写位置を検出する転写位置検出手段と、
前記転写位置検出手段が検出した前記転写位置の変化に対応して、前記転写体と前記印刷対象物との相対的な位置関係を調整する位置関係調整手段と、を備えたオフセット印刷機。
【請求項2】
前記転写体の形状の変化を検出する転写体形状検出手段をさらに備え、
前記位置関係調整手段は、前記転写体形状検出手段が検出した前記転写体の形状の変化に対応して、前記転写体と前記印刷対象物との相対的な位置関係を調整する、請求項1に記載のオフセット印刷機。
【請求項3】
前記インク供給手段は、前記印刷版に施された前記パターンの凹部及び凸部に供給された前記インクの内で、前記凹部上に供給された前記インクが前記凹部上に残り、前記凸部上に供給された前記インクが前記転写体に転移されるような前記インクを前記印刷版に供給する、請求項1又は2に記載のオフセット印刷機。
【請求項4】
前記転写体は、同じ前記転写位置に重ねて前記インクを転写する、請求項3に記載のオフセット印刷機。
【請求項5】
所定のパターンが施された印刷版にインクを供給する工程と、
前記インクを供給された前記印刷版から転写体に前記インクを転移する工程と、
前記印刷版から前記転写体に転移された前記インクを印刷対象物に転写する工程と、
前記転写体が前記印刷対象物に前記インクを転写する転写位置を検出する工程と、
検出した前記転写位置の変化に対応して、前記転写体と前記印刷対象物との相対的な位置関係を調整する工程と、を含むオフセット印刷方法。
【請求項6】
前記転写体の形状の変化を検出する工程と、
検出した前記転写体の形状の変化に対応して、前記転写体と前記印刷対象物との相対的な位置関係を調整する工程と、をさらに含む請求項5に記載のオフセット印刷方法。
【請求項7】
前記印刷版にインクを供給する工程では、前記印刷版に施された前記パターンの凹部及び凸部に供給された前記インクの内で、前記凹部上に供給された前記インクが前記凹部上に残り、前記凸部上に供給された前記インクが前記転写体に転移されるような前記インクを前記印刷版に供給する、請求項5又は6に記載のオフセット印刷方法。
【請求項8】
前記インクを印刷対象物に転写する工程では、同じ前記転写位置に重ねて前記インクを転写する、請求項7に記載のオフセット印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−71303(P2013−71303A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211306(P2011−211306)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】