説明

オブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法、そのコンピュータプログラムおよび制御設備

【課題】センサによって供給される相対位置パラメータに基づいて、オブジェクトの絶対位置を決定する。
【解決手段】オブジェクトの集合のうちの2つのオブジェクト間の相対配置パラメータをそれぞれ取得するステップ(210;210*)と、受信したそれぞれの相対配置パラメータに相対配置パラメータの信頼性と呼ぶ値を関連付けるステップ(211;211*)と、相対配置パラメータの信頼性に応じて、作業用部分集合を選択するステップ(214;214*)と、作業用部分集合に属するオブジェクトと作業用部分集合外のオブジェクトとの間の新たな相対配置パラメータをそれぞれ決定するステップ(230;230*)と、決定した新たな相対配置パラメータのそれぞれに、作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に基づいて計算した信頼性を関連付けるステップ(232;232*)のループ(212;212*)を少なくとも1回実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法、そのコンピュータプログラムおよび制御設備に関する。
【0002】
以下の記述および請求項では、次の用語を使用する。
【0003】
2つのオブジェクトの「相対配置」とは、2つのオブジェクトの互いの立体的構成である。
【0004】
「相対配置パラメータ」とは、2つのオブジェクトの相対配置を少なくとも部分的に特徴付ける情報である。特にこれは、2つのオブジェクト間の(ユークリッド)距離または2つのオブジェクトの相対方向のことである。
【0005】
あるオブジェクトの「絶対配置」とは、ある基準(または基準の目印)に対するオブジェクトの立体的構成である。
【0006】
「絶対配置パラメータ」とは、オブジェクトの絶対配置を少なくとも部分的に特徴付ける情報である。特にこれは、基準に対するオブジェクトの位置または基準に対するオブジェクトの方向のことである。
【0007】
2009年8月12日〜14日にノーザンイリノイ大学で開催された会議では、Nathan KrislockおよびHenry Wolkowiczが「Explicit Sensor Network Localization using Semidefinite Programming and Clique Reductions(半定値プログラミングおよびクリーク削減を使用する明白なセンサネットワークのローカリゼーション」と題する発表で、オブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法を提案した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Explicit Sensor Network Localization using Semidefinite Programming and Clique Reductions
【0009】
さらに正確にいうと、オブジェクトはセンサであり、絶対配置パラメータはこのセンサの位置のことである。この位置は、このセンサ(つまり基準センサ)のうちのいくつかの絶対位置、およびセンサ間の相対配置パラメータ、すなわちセンサを2つずつ隔てている距離を認識することにより決定され、この距離は距離行列で統合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本方法は、距離行列の完全なブロック(すなわちセンサ間の距離すべてが認識されている)を重ね合わせることによって利点を引き出してこの距離行列を完成し、それによってセンサネットワークの完全な部分集合を重ね合うことを検討することを提案するものである。距離行列が完成すると、各センサの位置が決定される。本方法により、問題を明瞭に解決することができる。
【0011】
しかし、本方法は、各ペアのセンサ間の離れている距離が所定のパラメータR(ラジオパラメータと呼ぶ)よりも短い距離であると認識される場合のみ適用される。その上、本方法は、ノイズのないデータ(基準センサの位置および正確に認識された最初の距離)にしか適用することができない。
【0012】
したがって、オブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法を想定して、この問題の少なくとも一部および前述の制約を緩和できるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって本発明は、
‐ オブジェクトの集合のうちの2つのオブジェクト間の相対配置パラメータをそれぞれ取得するステップと、
‐ 受信したそれぞれの相対配置パラメータに、相対配置パラメータの信頼性と呼ぶ値を関連付けるステップと、
少なくとも一回実施する
‐ 集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に応じて、作業用部分集合と呼ぶオブジェクトの部分集合を選択するステップと、
‐ 作業用部分集合に属するオブジェクトと作業用部分集合外のオブジェクトとの間の新たな相対配置パラメータをそれぞれ決定するステップと、
‐ 決定した新たな相対配置パラメータのそれぞれに、作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に基づいて計算した信頼性を関連付けるステップ
とのループとを含むとともに、
‐ 集合の各オブジェクトのそれぞれの絶対配置パラメータ(このパラメータは決定した新たな相対配置パラメータから得られる)を供給するステップ
を含むオブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法を目的とする。
【0014】
したがって、信頼性の概念を導入することにより、本発明によって作業用部分集合の選択における信頼性を利用してほかのオブジェクトに対する相対配置パラメータのいくつかを優遇することができるとともに、あらかじめ決定したパラメータの信頼性に応じて、決定した新たなパラメータの信頼性を決定して、ほかのオブジェクトへの反復プロセスのエラーが伝播するのを考慮に入れることができる。
【0015】
特に、本発明によって最も信頼性が高いと判断されたデータを優遇して新たな相対配置パラメータを発見することができ、また、新しいパラメータの信頼性を計算する方法を適切に選んで多くの反復プロセスのあとに決定したパラメータによる影響を軽減することができる。
【0016】
選択的に、作業用部分集合の選択には、
‐ 可能な作業用部分集合と呼ぶ複数の部分集合を決定して、可能な作業用部分集合のそれぞれに対して、この可能な作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に基づいてこの可能な作業用部分集合の信頼性と呼ぶ値を計算することと、
‐ 作業用部分集合として、最も高い信頼性を示す可能な作業用部分集合を選択すること
とを含めてもよい。
【0017】
同じく選択的に、ステップのループがさらに、作業用部分集合の各オブジェクトの絶対配置パラメータを決定することを含めてもよい。
【0018】
同じく選択的に、作業用部分集合の選択がさらに、作業用部分集合のオブジェクトの全相対配置パラメータが認識されることを強制することにより実現されるようにしてもよい。
【0019】
同じく選択的に、絶対配置パラメータが認識されているオブジェクトを基準オブジェクトと呼び、作業用部分集合の各オブジェクトの絶対配置パラメータの決定が、作業用部分集合の基準オブジェクトの絶対配置パラメータおよび作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータに基づいて実現されるようにしてもよい。
【0020】
同じく選択的に、絶対配置パラメータが認識されているオブジェクトを基準オブジェクトと呼び、作業用部分集合のオブジェクトと作業用部分集合外のオブジェクトは基準オブジェクトであり、この両者の間で新たな相対配置パラメータが決定される。
【0021】
同じく選択的に、作業用部分集合のオブジェクトと作業用部分集合外のオブジェクトとの間の新たな相対配置パラメータに関連付けられる信頼性が、所定の規則に従って決定され、この規則が作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性の平均を厳密に下回るように強制してもよい。
【0022】
同じく選択的に、2つのオブジェクト間の相対配置パラメータがこの2つのオブジェクト間の距離であり、1つのオブジェクトの絶対配置パラメータが基準に対するこのオブジェクトの位置としてもよい。
【0023】
同じく選択的に、2つのオブジェクト間の相対配置パラメータがこの2つのオブジェクト間の相対方向であり、1つのオブジェクトの絶対配置パラメータが基準に対するこのオブジェクトの方向としてもよい。
【0024】
同じく選択的に、ステップのループがさらに、
‐ 作業用部分集合のオブジェクトの相対方向を統合する行列の固有ベクトルを決定し、固有ベクトルの全構成要素が単一のベクトルであることと、
‐ 作業用部分集合の各オブジェクトの絶対方向を、固有ベクトルおよび作業用部分集合の基準オブジェクトの絶対方向に基づいて決定すること
とを含んでもよい。
【0025】
また、本発明は、通信ネットワークからダウンロード可能なコンピュータプログラムおよび/またはコンピュータによって読み取り可能な媒体に保存されたコンピュータプログラムおよび/またはプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行される場合に本発明によるオブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法のステップを実行するためのインストラクションを含むコンピュータプログラムも目的とする。
【0026】
また、本発明は、
‐ センサの集合であって、各センサが集合のうちの少なくとも1つのほかのセンサに対する相対配置パラメータを決定し、このパラメータを伝送するように設計されているセンサの集合と、
‐ センサによって伝送されたパラメータを受信し、本発明によるセンサの絶対配置パラメータの決定方法を実践するように設計された処理装置
とを含む制御設備を目的とする。
【0027】
本発明は添付の図を参照しながら、例としてのみ挙げた以下の説明を読めばさらによく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態による制御設備を含む土木作品を示す概略図である。
【図2】図1の土木作品の土木構造の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示す土木作品100は、土木構造102と、土木構造102の状態およびとりわけその立体的変形を観察するための土木構造102の制御設備104とを備える。
【0030】
このために、制御設備104はまず、土木構造102に設置されたセンサの集合(図の例では符号C1、C2、C3、C4、C5、C6で示す6つ)を有し、たとえばこの構造に埋め込まれた状態になっている。各センサは、集合のうちのほかのセンサに対する相対位置の特徴を決定するようになっており、特に従来の方法を用いてその距離と方向を決定するようになっている。各センサはさらに、決定された相対配置の特徴を設備104の処理装置106に有線または無線で伝送するようになっている。
【0031】
この処理装置106は、センサの伝送モードに従って、有線または無線の接続によって各センサに接続している。処理装置106は、センサの少なくとも一部、可能であれば全部の絶対位置と絶対方向を決定するようになっている。記載の例では、装置106はコンピュータプログラム108がインストールされたコンピュータであり、センサの絶対位置の決定方法およびセンサの絶対方向の決定方法のステップを実行するためのインストラクションを含んでいる。
【0032】
図2を見ると、設備104によって実践される土木構造102の制御方法200は次のステップを含む。
【0033】
ステップ202では、各センサC1、C2、C3、C4、C5、C6はほかのセンサに対する距離を決定しようとする。一般に、この距離の決定は、2つのセンサが互いにそれほど離れておらず、両者の間に不可解な障害物(センサによる可視能力という意味で)が一切ない場合に可能となる。各センサは、ほかのセンサとの距離をまったく決定しないこともあれば、1つのみまたは複数の距離を決定することもある。
【0034】
ステップ204では、センサC1、C2、C3、C4、C5、C6は決定した距離を処理装置106に伝送する。
【0035】
次に、処理装置106はコンピュータプログラム108を実行し、センサC1、C2、C3、C4、C5、C6の少なくとも一部の位置を決定する方法であって、以下に詳述するステップを含む方法206を実践する。
【0036】
ステップ208では、処理装置106は集合のセンサのそれぞれの(絶対)位置を受信する。位置を認識されたセンサは、これ以降基準センサと呼ぶ。
【0037】
ステップ210では、処理装置106はセンサC1、C2、C3、C4、C5、C6から伝送された距離の受信、および基準センサ間の距離の計算に由来するセンサ間の距離を得る。よって受信する各距離は、集合のそれぞれ2つのセンサ間で取得される。
【0038】
この距離は、距離行列Dのロケーション(i、j)に記録されたセンサCiとセンサCjとの間の距離とともに距離行列Dに記録される。したがって、距離行列Dは対称の行列である。さらに、一般には、センサ間の距離のなかには認識されないものもあるため、距離行列Dのロケーションのなかには中身のないものもある。したがって、距離行列Dは数学的には「不完全」と呼ぶ。つまり、処理装置106によって受信され、距離行列Dに記録された距離は、一般にセンサ間の実際の距離と比べるとエラーとなるため、距離行列Dはいわゆる「ノイズがある」。
【0039】
ステップ211では、処理装置106は、受信した各距離に距離の信頼性と呼ぶ値を関連付ける。この信頼性は、たとえば数の形態で表現され、特に「0」と「1」の間、またはパーセンテージで表現される。
【0040】
センサが測定した距離の信頼性は、各センサの本質的な誤差範囲に基づいて決定することが好ましい。基準センサの位置をもとに計算された距離の信頼性は、このセンサの位置を測定する装置の本質的な誤差範囲に基づいて決定することが好ましい。この2つの場合では、誤差範囲は、たとえばモデル構築と計算および/またはセンサまたは位置測定装置に基づいてテストによって経験的に得られる。一般に、基準センサ間の距離に関連付けられる信頼性は、センサ自体が測定した距離の信頼性よりも高く、たとえば第1の信頼性は95%またはそれ以上であるのに対し、第2の信頼性は95%未満である。
【0041】
距離の信頼性は、行列Fのロケーション(i、j)に記録されるセンサCiとセンサCjとの間の距離の信頼性とともに行列Fに記録される。したがって、この行列Fも同じく対称であり、不完全である。
【0042】
処理装置106は次のステップ212のループを少なくとも1回実行する。
【0043】
ステップ214では、処理装置106は、集合のセンサ間の距離の信頼性に応じて作業用部分集合と呼ぶセンサの部分集合を選択する。記載の例では、作業用部分集合は、統合するセンサ間の距離をすべて認識するように決定される。さらに作業用部分集合は、決定が3次元で行われるときは、同一平面状にはない少なくとも4つの基準センサを有するように決定される。あるいは、決定が2次元で行われるときは、同列にはない少なくとも3つの基準センサを有するように決定される。
【0044】
作業用部分集合のセンサ間の距離は、距離行列Dに対するものと同じように、距離行列^Dに記録される。作業用部分集合のセンサ間の距離はすべて認識されるため、距離行列^Dは数学的にいわゆる「完全」となる。簡略化のため、作業用部分集合とその距離行列の両方に対し^Dの記号を用いる。
【0045】
記載の例では、作業用部分集合を決定するため、ステップ216では処理装置106は複数の可能な作業用部分集合(完全で、場合によって少なくとも3つまたは4つの基準センサを有する)を決定し、部分集合のオブジェクト間の距離の信頼性に基づいて部分集合の信頼性と呼ぶ値をそれぞれのセンサに対して計算する。記載の例では、部分集合の信頼性は、部分集合のセンサ間の距離の信頼性の平均に等しい。使用する平均は、算術平均であることが好ましい。
【0046】
可能な実施形態によれば、ステップ216では、処理装置106は集合のセンサの一部のそれぞれ、たとえば集合の各センサに対して可能な作業用部分集合を決定する。Ciというセンサに対しては、この可能な作業用部分集合は次のようにして決定することができる。処理装置106はまず、センサCiのみを有する一時的な部分集合を作成する。次に処理装置106は、一時的な部分集合のそれぞれとの距離が認識されている一時的な部分集合の外部にある1つまたは複数のセンサであって、一時的な部分集合に属しているか(平面上での1回の位置決定に対して3つの基準センサ)、一時的な部分集合の各センサとの距離が認識されているかのいずれかである少なくとも4つの基準センサの外部にあるセンサを決定する。決定されたこの外部センサの中から、処理装置106は、増大したこのセンサの一時的な部分集合で構成される部分集合が最も高い信頼性を示すことができるセンサを選択する。このようにして選択されたセンサは、一時的な部分集合に追加される。ここまでの3ステップ(外部センサを決定、このセンサのうちの1つを選択、選択したセンサを一時的な部分集合に追加)は、一時的な部分集合に追加するセンサを発見できる限り繰り返される。この発見がそれ以上できなくなれば、一時的な部分集合はセンサCiに対する可能な作業用部分集合となる。
【0047】
もうひとつのやり方は、実際には限定数のセンサを有する集合にのみ検討可能なものだが、理論的に可能な作業用部分集合すべてを、周知の一方法で決定することである。
【0048】
次にステップ218では、処理装置106は作業用部分集合として最も高い信頼性を示す可能な作業用部分集合を選択する。複数の可能な作業用部分集合が同じ信頼性を示す場合、処理装置106はたとえば基準センサを最も多く有するものを選択する。複数の可能な作業用部分集合が同数の基準センサを有する場合、処理装置106は最も高い信頼性を示す2つの離れたセンサを有するものを選択する。どちらも対等である場合は、処理装置106は可能な作業用部分集合のうちの1つを独断的に選択する。
【0049】
厳密には、最も高い信頼性を示す部分集合の検索は、グラフの理論から起こる問題であり、NP困難に分類される問題である。したがって、可能な作業用部分集合すべてを妥当な時間で発見することは不可能であり、可能な作業用部分集合が最高の信頼性を示していることを確認することも不可能である。ただし、限定数のセンサがあらかじめ提起された場合は除き、この場合は理論的な可能な作業用部分集合すべてを必ずしもステップ216で決定する必要はない。実際には、このステップは、本方法全体の障害とならないかぎり、最適な形でインプリメンテーションすることができる。
【0050】
ステップ220では、処理装置106は作業用部分集合の基準センサの位置および作業用部分集合のセンサ間の距離に基づいて、作業用部分集合のセンサの絶対位置を決定する。したがって、作業用部分集合のセンサはすべて基準センサとなる。
【0051】
記載の例では、作業用部分集合の各センサの位置の決定には、次のステップ222〜228が含まれる。
【0052】
ステップ222では、処理装置106は以下の方法で行列Gを計算する。

=I−J/Nの式中Nは作業用部分集合^D内のセンサ数であり、IはN次の同一の行列であり、Jは「1」のみを含むN次の正方行列である。
【0053】
ステップ224では、処理装置106は、空間内のセンサの位置を決定する場合は、行列Gの絶対値で最も大きい固有値を3つ決定してそれを対角行列Λに記録する一方で、それに関連する3つの固有ベクトルを決定してそれを行列Pに記録する。平面のセンサの位置を決定する場合は、最も大きい固有値を2つとそのベクトルのみを決定する。この決定は、たとえば特異値分解アルゴリズムを用いて実現する。
【0054】
ステップ226では、処理装置106は以下の方法で行列Yを計算する。
Y=PΛ1/2
【0055】
幾何学的に、行列Yは作業用部分集合の各センサの位置を含んでいるが、基準の指標ではない指標に含んでいることを示している。
【0056】
ステップ228では、処理装置106は行列Yおよび基準センサの位置に基づいて作業用部分集合の各センサの位置を決定する。
【0057】
ステップ230では、処理装置106は、作業用部分集合に属する基準センサと作業用部分集合外にある基準センサとの間の新たな距離をそれぞれ決定し、発見した新たな距離とともに行列Dを完成させる。この決定は、各基準センサの位置を認識することにより容易に実現される。
【0058】
次に、ステップ232では、処理装置106はステップ230で決定した新たな距離のそれぞれに対して、作業用部分集合のセンサ間の距離の信頼性に基づいて計算した信頼性を関連付ける。記載の例では、それぞれの新たな距離の信頼性は、作業用部分集合の信頼性の半分に等しい。すなわち作業用部分集合のセンサの距離の信頼性の平均の半分に等しい。新たな距離に関連付けられた信頼性は、厳密には作業用部分集合のセンサの距離の信頼性の平均よりも低い。これにより決定した新たな距離の信頼性を、ステップ212のループの実行数とともに確実に減少させることができる。したがって、ステップ212のループを実行するたびに、信頼性が最も高く、ステップ212のループよりも前のステップを実行した際にまだ発見されていない作業用部分集合を発見するのは難しくなる。したがって、ループ212の最初の反復プロセスが行われた際に決定された距離は、その後の反復で決定された距離よりも影響力が大きい。これによって、最初の反復プロセスで決定された距離を離れたセンサを有する部分集合を作業用部分集合として選択することが、その後の反復で決定された距離によって離れたセンサを有する部分集合よりも有利になる。この方法によって、ステップ212のループを連続して実行する間にエラーが伝播するのを抑えられる。
【0059】
処理装置106は、ステップ212のループの実行を新たに開始する。
【0060】
しかし、ステップ230で新たな距離が一切決定されなければ、処理装置106はステップ212のループの実行を停止して、ステップ231でセンサの集合の基準センサの位置を供給し、特にステップ220で決定された距離を供給することができる。
【0061】
処理装置106は、コンピュータプログラム108を実行し、センサC1、C2、C3、C4、C5、C6の絶対方向の決定方法240も実践する。この方法240は、距離および位置には適用されずに相対方向および絶対方向にのみ適用される場合は206の方法とほぼ同じである。この変化を反映するため、方法206と同じ展開であるステップは同じように番号を付すが、処理されたデータは同じではないことを示すアステリスクを付ける。
【0062】
したがって、センサの位置はセンサの絶対方向に代えられる。記載の例では、この絶対方向は4元数で表している。
【0063】
2つのセンサ間の距離は、2つのセンサ間の相対方向に代えられる。記載の例では、この相対方向も同じく4元数で表している。
【0064】
センサの集合の距離行列Dは、相対方向の行列Oに代えられ、センサCiとセンサCjとの間の相対方向は、相対方向の行列Oのロケーション(i、j)に記録される。よって記載の例では、行列Oは4元数の対称行列である。
【0065】
同じく、作業用部分集合の距離行列^Dは作業用部分集合の相対方向の行列Oに代えられ、距離の信頼性は相対方向の信頼性に代えられる。
【0066】
さらに、作業用部分集合は、方法206に対して少なくとも3つまたは4つの基準センサの代わりに、少なくとも1つの基準センサを有する(つまり、方法240の枠で絶対方向が認識されているセンサ)。
【0067】
さらに、作業用部分集合の各センサの絶対方向の決定220*には、ステップ222〜228の代わりに次のステップ242および244が含まれる。
【0068】
ステップ242では、処理装置106は、作業用部分集合の相対方向の行列Oの絶対値で最も大きい固有値を決定する一方で、Vの記号で示し、単一の4元数のみで構成されるその固有ベクトルを決定する。
【0069】
ステップ244では、処理装置106は、固有ベクトルVおよび作業用部分集合の基準センサの絶対方向に基づいて、作業用部分集合の各センサの絶対方向を決定する。
【0070】
記載の例では、この決定は次の計算によって実現される。

式中

は、作業用部分集合のk個のセンサの絶対方向を表すk個の4元数のベクトルであり、qは作業用部分集合の基準センサCiの絶対方向を表す4元数であり、vは基準センサCiに対応する固有ベクトルVの構成要素の複素共役である。
【0071】
前述した方法は、センサの位置を決定するため、基準センサの位置およびセンサ間で最初に決定された距離に対するエラーを変化させることにより、4つの基準センサを有する10個のセンサのネットワークでテストした。無限大ノルム(理論値と決定値との間の最大距離)は、決定された位置に対するエラーを評価するのに使用した。結果は、この方法が揺るぎないものであることを示した。
【0072】
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではないことを明記しておく。実際に当業者は、ここに開示した教示に照らして上記の実施形態にさまざまな修正を加えることができることがわかるだろう。
【0073】
特に、制御設備は、土木構造の制御以外の分野でも使用することができ、たとえばオブジェクト(自動車、商品、人、動物など)の動きを追跡するのに使用するこができ、それに対してセンサを設置する。
【0074】
このほか、オブジェクトの絶対配置パラメータは、ステップのループを反復プロセスごとに少しずつ決定する代わりに、このステップのループを続けて実行したのちに決定することができる。たとえば、本発明は有利なように、本明細書の冒頭に引用した会議で説明された方法に適用して改良することができる。信頼性が距離に関連づけられ、重なり合った完全な部分集合の決定にはこの信頼性が考慮される。さらに、反復プロセスごとに決定される新たな距離は、本発明が想定するように新たな信頼性が関連づけられる。本発明によって、所定のパラメータR(ラジオパラメータと呼ぶ)よりも短い距離を離れた各ペアのセンサ間の距離が認識されるという制約をなくすことが可能になる。
【0075】
さらに、不完全な作業用部分集合を選択することも可能になる。この場合、作業用部分集合のオブジェクトの絶対配置パラメータを決定するステップ220が単純に適応される。
【0076】
さらに、基準オブジェクトを最初に使用しないでおくことも可能である。すなわち、ステップ208を含めなくてもよい。この場合、絶対配置パラメータはオブジェクト(たとえば基準として独断的に選んだオブジェクト)の集合に付けられた指標に対して決定される。固定の基準に対してではなくオブジェクトの互いに対する位置を知りたい場合は、この変形例も考えられる。
【0077】
以下の請求項では、使用する語を本明細書で開示した実施形態への請求項に限定して解釈してはならず、本文の記載およびそこから予見される内容は、ここに開示した教示の実践に一般知識を応用することによって当業者が到達しうる範囲内であることから、請求項が範囲に含めると想定するあらゆる同等のものも含まれると解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置(106)によって実践され、センサによって供給される相対配置パラメータに基づいてオブジェクトの絶対配置パラメータを決定する方法であって、
‐ オブジェクトの集合のうちの2つのオブジェクト間の相対配置パラメータをそれぞれ取得するステップ(210;210*)であって、前記相対配置パラメータは前記処理装置(106)によって決定され、伝送されるステップと、
‐ 受信したそれぞれの相対配置パラメータに、相対配置パラメータの信頼性と呼ぶ値を関連付けるステップ(211;211*)と、
少なくとも一回実施する
‐ 集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に応じて、作業用部分集合と呼ぶオブジェクトの部分集合を選択するステップ(214;214*)と、
‐ 前記作業用部分集合に属するオブジェクトと前記作業用部分集合外のオブジェクトとの間の新たな相対配置パラメータをそれぞれ決定するステップ(230;230*)と、
‐ 決定した前記新たな相対配置パラメータのそれぞれに、前記作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に基づいて計算した信頼性を関連付けるステップ(232;232*)
とのループ(212;212*)とを含むとともに、
‐ 集合の各オブジェクトのそれぞれの絶対配置パラメータ(このパラメータは決定した前記新たな相対配置パラメータから得られる)を供給するステップ(231)
を含むことを特徴とするオブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法。
【請求項2】
前記作業用部分集合の選択(214)は、
‐ 可能な作業用部分集合と呼ぶ複数の部分集合を決定して(216;216*)、前記可能な作業用部分集合のそれぞれに対して、前記可能な作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性に基づいて前記可能な作業用部分集合の信頼性と呼ぶ値を計算することと、
‐ 作業用部分集合として、最も高い信頼性を示す前記可能な作業用部分集合を選択すること(218;218*)
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップのループ(212;212*)がさらに、前記作業用部分集合の各オブジェクトの前記絶対配置パラメータを決定する(220;220*)ことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記作業用部分集合の前記選択がさらに、前記作業用部分集合のオブジェクトの全相対配置パラメータが認識されることを強制することにより実現される、前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記絶対配置パラメータが認識されているオブジェクトを基準オブジェクトと呼び、前記作業用部分集合の各オブジェクトの前記絶対配置パラメータの決定(220;220*)が、前記作業用部分集合の基準オブジェクトの前記絶対配置パラメータおよび前記作業用部分集合のオブジェクトの前記相対配置パラメータに基づいて実現される、請求項3および4に記載の方法。
【請求項6】
前記絶対配置パラメータが認識されているオブジェクトを基準オブジェクトと呼び、前記作業用部分集合のオブジェクトと前記作業用部分集合外のオブジェクトは基準オブジェクトであり、この両者の間で新たな相対配置パラメータが決定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
作業用部分集合のオブジェクトと作業用部分集合外のオブジェクトとの間の新たな相対配置パラメータに関連付けられる信頼性が、所定の規則に従って決定され、該規則が作業用部分集合のオブジェクトの相対配置パラメータの信頼性の平均を厳密に下回るように強制する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2つのオブジェクト間の前記相対配置パラメータが前記2つのオブジェクト間の距離であり、1つのオブジェクトの前記絶対配置パラメータが基準に対する前記オブジェクトの位置である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2つのオブジェクト間の前記相対配置パラメータが前記2つのオブジェクト間の相対方向であり、1つのオブジェクトの前記絶対配置パラメータが基準に対する前記オブジェクトの方向である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップのループ(212*)がさらに、
‐ 前記作業用部分集合のオブジェクトの相対方向を統合する行列の固有ベクトルを決定し(242)、前記固有ベクトルの全構成要素が単一のベクトルであることと、
‐ 前記作業用部分集合の各オブジェクトの絶対方向を、前記固有ベクトルおよび前記作業用部分集合の基準オブジェクトの絶対方向に基づいて決定すること(244)
とを含む、請求項4および9に記載の方法。
【請求項11】
通信ネットワークからダウンロード可能なコンピュータプログラムおよび/またはコンピュータによって読み取り可能な媒体に保存されたコンピュータプログラムおよび/またはプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行される場合に、請求項1〜10のいずれか一項に記載のオブジェクトの絶対配置パラメータの決定方法のステップ(206;240)を実行するためのインストラクションを含むコンピュータプログラム。
【請求項12】
制御設備であって、
‐ センサ(C1,C2,C3,C4,C5,C6)の集合であって、各センサが集合のうちの少なくとも1つのほかのセンサに対する相対配置パラメータを決定し、このパラメータを伝送するように設計されているセンサの集合と、
‐ センサによって伝送されたパラメータを受信し、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサの絶対配置パラメータの決定方法(206;240)を実践するように設計された処理装置(106)
とを含む制御設備(102)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−209284(P2011−209284A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71076(P2011−71076)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(510191207)
【出願人】(511079458)
【Fターム(参考)】