説明

オブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法、美容用パック材

【課題】皮膚の保湿性を高めるだけでなく、角質を除去するとともに顔肌のたるみを解消し、さらに、容易に皮膚からパックを剥がすことが可能なオブラートを用いた肌の保湿及びたるみの解消方法を提供する。
【解決手段】洗顔後、化粧剤を顔面に噴霧又は塗布することにより皮膚を湿らす。所定形状のオブラートを、顔の各部位に貼り付ける。オブラートを貼付後、当該貼り付けられたオブラートの上から顔面の所望の各部位を覆うように所定形状のマスク(ガーゼ)を被せる。所定時間経過後に、前記オブラート及びマスクを皮膚から剥離する。皮膚表面に貼り付けるために貼り付け箇所の形状に合わせて形成されたオブラートと、このオブラートの表面を覆うように積層された通気性のある不織布からなるマスクから構成された美容用パック材を使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の保湿をする美容技術に係り、特に、オブラートを用いて肌の保湿及びたるみの解消を図り、古角質を剥離し易くする美容方法に関する。また、本発明は、前記のような美容方法に使用するパック材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パック化粧料として保湿や美白効果等を高めるために、化粧水を含浸させたシートやジェル状の化粧剤等、種々のものが使用されている。特に、これらは化粧料からの水溶性高分子を皮膚に付着させることで皮膚の平滑性、保湿性を向上させるとともに、角質を除去するピーリング効果を有している。例えば、特許文献1に示すように、顔肌にパックを塗布し、パック化粧料の有効成分を所定時間、皮膚に浸透させ続ける化粧料が開発されている。
【0003】
ところで、このようなパック化粧料は、洗浄することにより洗い流すタイプと、シートを皮膚から剥がす剥離タイプとが代表的である。剥離タイプの場合、基剤はゼリー状やペースト状等であるため、皮膚に塗布した後、乾燥により皮膚膜が形成され、この膜状になったパック化粧料を手で剥すことができる。特に、近年では、使用に際する手間等の観点で、洗浄タイプよりも剥離タイプの方が一般ユーザに好まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−216109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなパック化粧料は、成分中に含まれる水分が蒸発することで皮膚膜が形成されるので、この皮膚膜の形成には時間を要する。また、上記のようなパック化粧料では、皮膚の保湿性を高めることはできるが、皮膚のたるみに対しては特段の効能を奏しない。
【0006】
さらに、上記のような剥離タイプのパック化粧料では、皮膚上でパック基剤の剥がし残りが存在し、加えて、皮膚から剥がし難いという問題が生じていた。そのため、無理矢理、皮膚上からパックを剥がそうとすると皮膚を傷つけるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解消するために提案されたものであって、その目的は、皮膚の保湿性を高めるだけでなく、顔肌のたるみを解消し、その上で、容易に皮膚からパックを剥がすことが可能なオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法を提供することにある。また、本発明は、前記のような美容方法に使用するパック材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、皮膚表面に化粧水、乳液、パックのいずれかを含む化粧剤を塗布する工程と、化粧剤を塗布後、その皮膚表面に所定形状のオブラートを貼り付ける工程と、オブラートが貼付された皮膚上に不織布からなる所定形状のマスクを覆い被せる工程と、を実施することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、不織布からなる所定形状のマスク内面に所定形状のオブラートを配置し、その上から化粧水、乳液、パックのいずれかを含む化粧剤を噴霧又は塗布する工程と、化粧剤の噴霧後、当該噴霧側を皮膚への貼付面として前記オブラート及びマスクを皮膚上に覆い被せる工程と、を実施することを特徴とする態様を包含する。
【0010】
本発明の美容用パック材は、皮膚表面に貼り付けるために貼り付け箇所の形状に合わせて形成されたオブラートと、このオブラートの表面を覆うように積層された通気性のある不織布からなるマスクとから構成されている。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、顔の皮膚に対してオブラートを付着させ、その後、例えばガーゼのような不織布からなるマスクを貼り付けることにより、オブラートの肌への密着性を強めることができる。これにより、肌の角質を除去することができるとともに保湿性及びたるみを解消し、肌にハリと艶を与えることが可能となる。
【0012】
特に、オブラートは、肌上の化粧水を吸収した湿った状態から乾燥状態へと移行する際に表れる収縮する性質を用いて、これをマスクと一体とすることで、マスクに支持された状態で、オブラートが均一の円弧を描いてカールする。これにより、肌にピーリング効果を与えることができる。
【0013】
また、このオブラートはマスクと一体になり、マスクを剥がすことでオブラートも同時に皮膚から剥がれるため、剥離性に富んだ美容方法を提供することができる。これにより、皮膚へのオブラートの剥がし残しをなくし、剥がす際に肌を傷つけることも防止することができる。
【0014】
さらに、マスクを用いることで当該マスクとオブラートが一体となり、マスクを用いない従来からの美容方法よりもオブラートの乾燥時間を大幅に短縮することが可能となり、特に、化粧剤として乳液を用いた場合にその効果が顕著となる。
【0015】
本発明の美容用パック材は、オブラートに通気性のある不織布からなるマスクが積層されているので、前記の美容方法を実施する際に、オブラートの上にマスクを被せる作業が簡単に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオブラートの構成を示した平面図(タイプO−1〜O−5)。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマスクの構成を示した平面図(タイプM−1〜M−5)。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るオブラートの収縮の様子を示す画像図。
【図4】本発明の第1の実施形態の作用効果を示すための実験1〜3を表す模式図。
【図5】本発明の第1の実施形態の作用効果を示すための実験1〜3を示す画像図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態に係るオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法について、図1及び2を参照して以下に説明する。
【0018】
ここで、本発明は、皮膚上に化粧水やジェル等の化粧剤を塗布する工程と、化粧剤を塗布後、所定の形状を有する化粧料シートとしてオブラートを貼り付ける工程と、オブラートを貼り付け後、不織布からなるマスクを顔全体に覆い被せる工程と、を実施することを特徴とする美容方法である。特に、本発明は、オブラートの乾燥後、マスクと一体にして吸着したオブラートを皮膚から剥がすことができる点に特徴を有している。
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係るオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法に使用するオブラートと、マスクと、皮膚に直接塗布する化粧剤と、について説明する。
【0020】
[1−1.第1の実施形態の構成]
本実施形態に用いるオブラートは、主成分を澱粉とする一般的なものと同様であり、本実施形態では厚さが0.01〜0.1mmのものを使用する。また、このオブラートは、顔表面の各部位である、額、眉間、こめかみ、頬、鼻、口囲、下顎のうち、その一部分又は全てを覆うような所定の形状を有している。なお、本発明のオブラートは、前記のように顔表面のみならず、身体全体の皮膚表面に用いることができることはいうまでもないが、ここでは代表例として、顔表面に用いる場合を取り上げる。
【0021】
一例として、下記実施例において採用するタイプO−1〜O−5を図1に示しておく。なお、顔面の所望の部位を覆うことができれば上記のような方法に限定するものではない。
【0022】
図1に示す通り、タイプO−1は、顔の輪郭状のオブラートを顔の中心線と垂直に複数枚に切り分け、さらに、口に対応する箇所に口の大きさに応じた孔を備える形状を有している。また、タイプO−2は、顔の輪郭状のオブラートを顔の中心線に沿って2つに切り分け、この切断線上に、鼻孔を確保する切れ目と、口を確保する切れ目と、を備える形状を有している。なお、切断線と逆側にも皮膚に貼り付け易いように複数の切れ目を有している。
【0023】
タイプO−3は、(a)に示すように、四角形のオブラートを、上記顔面の各部位に応じて、大きさが大小異なる複数の長方形に切り分けた形状を有する。このタイプでは、例えば、(b)に示すように、ボックスに収納することで、ここから取り出すようにして用いることができるものである。
【0024】
また、タイプO−4は、上記顔面の各部位に応じた形に形成されている(図1では、額、頬、鼻、口囲に応じた形。)。タイプO−5は、口周りを構成する部分と、鼻から目を挟んで額までの2つに分けられて構成されたものである。
【0025】
本実施形態に用いる不織布からなるマスクには、目が粗めの60本ガーゼや80本ガーゼを使用し、厚さも薄手のものを採用する。また、このマスクの形状は、オブラートと同様に、顔表面の各部位である、額、眉間、こめかみ、頬、鼻、口囲、下顎のうち、その一部分又は全てを覆うような所定の形状を有している。なお、本発明のマスクにおいても、前記のように顔表面のみならず、身体全体の皮膚表面に用いることができることはいうまでもないが、ここでは代表例として、顔表面に用いる場合を取り上げる。
【0026】
一例として、下記実施例において採用するタイプM−1〜M−5を図2に示す。なお、オブラートと同様に、顔面の所望の部位を覆うことができれば上記のような方法に限定するものではない。
【0027】
図2に示す通り、タイプM−1は、顔の輪郭状のガーゼに、鼻孔を確保する切れ目と口部を確保する切れ目を形成し、さらに、輪郭状のガーゼ側部に顔面に貼り付け易いように切り込みを入れた形状を有している。また、タイプM−2は、顔の輪郭状のガーゼを顔の中心線と垂直に複数枚に切り分け、この切り分けた各ガーゼの端部は当該ガーゼを皮膚から剥がし易いように先細りの形状を有している。
【0028】
タイプM−3は、図2に示すように、顔面の鼻下側及びこめかみを覆うような形状を有し、特に、皮膚から剥がし易いように、ガーゼの上部両脇に上方向に伸びた端部(こめかみを覆う部分に対応する。)を設けている。なお、下顎部に対応する箇所には皮膚に貼り付け易いように切り込みが入っている。また、タイプM−4は、顔面上において目及び口を除いた各部位を一枚のガーゼで覆うような顔型の形状を有している。なお、鼻孔を確保するための切れ込みも形成されている。
【0029】
タイプM−5は、(a)に示すように、四角形のマスクを、上記顔面の各部位に応じて、大きさが大小異なる複数の長方形に切り分けた形状を有する。このタイプでは、例えば、(b)に示すように、ボックスに収納することで、ここから取り出すようにして用いることができるものである。
【0030】
本実施形態で用いる顔面に塗布する化粧剤は、化粧水、乳液やパック等を含むものであり、市販のものであっても構わない。なお、以下の実施例では、タイプK−1としてジェル状パックを使用し、タイプK−2として乳液を使用する。また、パックや乳液ではなく、一般的な超音波用ジェルを使用することも可能である。
【0031】
[1−2.オブラートの性質に基づく本実施形態方法の作用効果]
ここで、本実施形態のオブラートの性質を説明し、本実施形態の方法の特有の作用について、実験結果を示しながら以下にまとめる。
【0032】
オブラートは、その成分である澱粉の吸湿性と、吸湿に相対する澱粉のりが乾燥する際にカールする性質を有する。オブラートは、その性質上、水分に極めて敏感で、例えば、手の平にオブラートを乗せただけで、即座に手の平と反対側にカールする(図3参照)。このようなオブラートの性質は、従前より知られていることである。
【0033】
本実施形態は、このようなオブラートの性質を用い、さらに、これを効果的に利用することによって、本発明の所期の目的並びに作用効果を奏するものである。すなわち、本実施形態のオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法では、肌に化粧材を塗布し、オブラートを貼付け、さらに、不織布によりマスクを被せる工程とからなるが、このようにオブラートにマスクを被せ、貼り付けることにより、オブラートの性質をより効果的に生かせるものである。出願人はこのことを実験的に証明した。以下、この実験内容及び結果を説明する。
【0034】
上述のとおり、本実施形態の方法は、肌に化粧剤を塗布し、オブラートを貼付け、さらに、不織布によりマスクを被せる工程とからなるが、特に、このようにオブラートにマスクを被せ、貼り付ける点に顕著な特徴を有するものである。これらの工程により、化粧剤によりオブラートが湿り、その澱粉糊の接着効果により、肌及びガーゼ等からなるガーゼと貼りつき、さらに、オブラート及びガーゼが乾燥することにより実現されるものである。
【0035】
そこで、オブラートの性質を観察する本実験では、マスクとして用いたガーゼと重ね合わせたオブラートが一旦濡れてから乾燥した時に肌に与える影響を観察するため、以下の点を観察することを主眼とする。
(1) どのように、変化するか。
(2) オブラートだけで、実験した場合はどうなるか(下記実験1)。
(3) オブラート/ガーゼを重ね合わせた場合、オブラートが内側の場合と外側の場合で、差があるか(下記実験2,3)。
【0036】
以下の1〜3の実験では、上記(1) 〜(3) を観察するため、人間の肌が水に溶けない状態を再現するため、例えば、プラスティックの薄板のような合成樹脂板を肌と見立て、合成樹脂板で肌に対するピーリング効果の再現を図ったものである。
【0037】
より具体的には、実験1として、合成樹脂板にオブラートのみを載せ、水分を付与した上で乾燥状態を観察する。これは、本実施形態の方法のうち、肌にオブラートのみを貼付け、化粧材を塗布するものであり、マスクを被せる工程を省いたものである。
【0038】
また、実験2として、合成樹脂板に、まず、ガーゼを載せ、その上にオブラートを乗せ、水分を付与した上で乾燥状態を観察する。これは、肌にマスクを被せた後、オブラートを貼付け、化粧材を塗布するというものであり、本実施形態の方法の手順を変えて実施するものである。
【0039】
そして、実験3として、合成樹脂板に、オブラートを載せ、次に、ガーゼを載せ、さらに水分を付与した上で乾燥状態を観察する。これは、本実施形態の方法どおりの手順を実行するものである。
【0040】
なお、オブラートは半透明のため、実験上、観察を容易にするため、合成樹脂板としては黒色のプラスティックの薄板を用いた。
【0041】
[実験1]
上述のとおり、第1の実験では、ポリプロピレン等の合成樹脂からなる板に、オブラートを貼り付けて、乾燥後の状態を確かめた。すなわち、これは、本実施形態における方法をオブラートのみにより実行したような例を示すものである。
【0042】
実験の状態を図4(a)に示す。図4(a)は、合成樹脂板上にオブラートを重ねた状態を示す模式図である。この図に表れるように、実験1では、合成樹脂板の上にオブラートのみを置く。そして、その上から、霧吹きで水を吹き付けて濡らして溶かし、乾燥後の状態を確かめた。
【0043】
乾燥後の状態を図5(a)の画像図に示す。同図に示すように、オブラートは合成樹脂板から剥がれており、合成樹脂板の上には、ほとんどオブラートは残っていなかった。オブラートは、合成樹脂板上で、波状に収縮するのみであった。
【0044】
[実験2]
上述のとおり、第2の実験では、ポリプロピレン等の合成樹脂からなる板に、ガーゼを敷きその上にオブラートを重ねて貼り付けて、乾燥後の状態を確かめた。すなわち、これは、本実施形態における方法を、肌、マスク、オブラートの順に積層することを想定した例を示すものである。
【0045】
実験の状態を図4(b)に示す。図4(b)は、合成樹脂板上にガーゼを敷き、その上にオブラートを重ねた状態を示す模式図である。まず、合成樹脂板の上にオブラートのみを置く。そして、その上から、霧吹きで水を吹き付けて濡らして溶かし、乾燥後の状態を確かめた。
【0046】
乾燥後の状態を図5(b)に示す。同図に示すように、ガーゼとオブラートは合成樹脂板から剥がれており、ガーゼとオブラートは、実験1と同様、合成樹脂板上で波状に収縮するのみであった。
【0047】
[実験3]
上述のとおり、第3の実験では、ポリプロピレン等の合成樹脂からなる板に、オブラートを敷きその上にガーゼを重ね、乾燥後の状態を確かめた。すなわち、これは、本実施形態における方法である肌、オブラート、マスクの順に積層することを想定した例を示すものである。
【0048】
実験の状態を図4(c)に示す。図4(c)は、合成樹脂板上にオブラートを敷き、その上にガーゼを重ねた状態を示す模式図である。まず、合成樹脂板の上にオブラートを置く。そして、その上からガーゼを積層し、この状態で霧吹きで水を吹き付けて濡らして溶かし、乾燥後の状態を確かめた。
【0049】
乾燥後の状態を図5(c)に示す。同図に示すように、合成樹脂板上において、オブラートとガーゼとが、アーチを描いてカールする。このとき、オブラートとガーゼとの関係を見ると、オブラートはガーゼに貼り付いて、無理に剥がさなければ取れない状態となっていた。つまり、オブラートが、水分を吸収することで澱粉糊に戻り、澱粉糊の接着力によりガーゼに密着したものである。
【0050】
以上のような実験1〜3によれば、濡らしたオブラートは、乾燥時に収縮する性質が観察された。特に、実験2及び実験3のように、ガーゼと重ね合わせた場合は、収縮具合が大きくなるが、実験3のように、合成樹脂板上に、オブラート、ガーゼの順に積層した場合には、オブラートとガーゼがアーチ状に大きくカールしていた。これは、オブラート乾燥時に収縮する性質に、ガーゼの繊維が相乗効果となり、上述のとおりカールが大きくなったものと考えられる。
【0051】
実験1〜3の結果を考察すると、次のとおりである。
(1) オブラートの収縮する性質は、元来オブラート原料の澱粉糊自体の性質によると考えられる。
【0052】
(2) 実験1及び2と実験3とで、収縮度合いに差が生じ、実験3においてはアーチ状にカールする様子が見て取れた。これは、実験1のように、オブラート単独では、その薄さから大きくカールするだけの力が保てなかったのに対して、実験3では、ガーゼを重ね合わせた場合、ガーゼが糊状になったオブラートの芯となって、大きくカールするための土台になったと考えられる。一方、実験2では、オブラートのカールが見られたガーゼ側に合成樹脂板が存在したため、カールする余地がなく、実験1と同様の状態となったと考えられる。
【0053】
(3) なお、「糊状になったオブラートの芯」の役割は、上述したガーゼの場合だけではなく、本実施形態においてマスクとして想定される不織布一般、あるいは澱粉糊に海苔など様々なものを混ぜることにより作製するオブラートにおいても同様の効果を生じさせるものと想定される。すなわち、繊維状のものが、澱粉糊の芯になって、オブラートのカールを補助すると考えることができる。
【0054】
以上のような実験に基づけば、本実施形態の方法において、オブラートの性質を強め、ガーゼを積層することでこの性質を強化させることで、澱粉糊の接着力でガーゼに密着したオブラートがガーゼの繊維と乾燥する際のオブラートのカールする力の強さとの相乗効果によって、大きくカールさせ、オブラートの側に接した肌に対してピーリングの効果を実現することができるものである。
【実施例】
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明について以下に詳述するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実験方法]
(1)洗顔後、化粧剤を顔面に噴霧又は塗布することにより皮膚を湿らす。
(2)所定形状のオブラートを、顔の各部位に貼り付ける。
(3)オブラートを貼付後、当該貼り付けられたオブラートの上から顔面の所望の各部位を覆うように所定形状のマスク(ガーゼ)を被せる(実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4のみ)。
(4)所定時間経過後に、前記オブラート及びマスク(マスクは実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4のみ)を皮膚から剥離する。
【0057】
このような美容方法を用い、下記に示す実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4及び従来例1−1〜1−2、2−1〜2−2、3−1〜3−2、4−1〜4−2に関して、オブラートが乾燥する乾燥時間と、オブラートの肌への密着性と、オブラート及びマスク(マスクは実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4のみ)の肌からの剥離性と、肌の保湿性と、肌のハリ(たるみが解消するか)と、の観点から評価する。
【0058】
本実験で用いる実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4について、図1及び2に示したオブラートとマスクのタイプの組み合わせと、使用する化粧剤との組み合わせは下記表1〜4に示す通りである。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
一方、従来例としては、マスクを使用せず、前記実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4と同様のオブラート及び化粧剤を使用した従来例1−1〜1−2、2−1〜2−2、3−1〜3−2、4−1〜4−2を下記表5〜8に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
[実験結果]
上記のような実験方法により得られた実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4及び従来例1−1〜1−2、2−1〜2−2、3−1〜3−2、4−1〜4−2に関する実験結果は表9〜12に示す通りである。なお、評価指標である乾燥時間、密着性、剥離性、保湿性、ハリに関する評価◎、○、△、×は、下記の通りであり、モニター10人に対して得られた結果を参考にしている。
【0069】
乾燥時間 ○:0分以上8分未満
△:8分以上15分未満
×:15分以上
【0070】
密着性 ◎:モニター10人が非常に良い
○:モニター7人以上が良い
△:モニター4人以上6人以下が良い
×:モニター3人以下が良い
【0071】
剥離性 ◎:モニター10人が皮膚への剥がし残しが全くない
○:モニター7人以上が皮膚への剥がし残しが全くない
△:モニター4人以上6人以下が皮膚への剥がし残しが全くない
×:モニター3人以下が皮膚への剥がし残しが全くない
【0072】
保湿性 ◎:モニター10人が非常に良い
○:モニター7人以上が良い
△:モニター4人以上6人以下が良い
×:モニター3人以下が良い
【0073】
ハリ ◎:モニター10人が非常に良い
○:モニター7人以上が良い
△:モニター4人以上6人以下が良い
×:モニター3人以下が良い
【0074】
【表9】

【0075】
【表10】

【0076】
【表11】

【0077】
【表12】

【0078】
以上のような表9〜12によれば、実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4は、マスクを使用しない従来例1−1〜1−2、2−1〜2−2、3−1〜3−2、4−1〜4−2と比較して、肌へのオブラートの密着性、肌からのオブラートの剥離性に長けていることが判明した。また、肌の保湿性に加え、角質の除去及び皮膚のたるみを解消することで肌のハリを保つこともできた。
【0079】
このように、顔の皮膚に対してオブラートを付着させ、その後ガーゼからなるマスクを貼り付けることにより、オブラートの肌への密着性を強めることができ、それ故に、保湿性及びたるみを解消し、肌にハリと艶を与えることを可能とする。そして、このオブラートはマスクと一体になり、マスクを剥がすことでオブラートも同時に皮膚から剥がれるため、剥離性に富んだ美容方法を提供することができる。これにより、皮膚へのオブラートの剥がし残しをなくし、剥がす際に肌を傷つけることも防止することができる。
【0080】
また、実施例1−1〜1−4、2−1〜2−4、3−1〜3−4、4−1〜4−4では、マスクを用いることで当該マスクとオブラートが一体となり、従来例1−1〜1−2、2−1〜2−2、3−1〜3−2、4−1〜4−2よりもオブラートの乾燥時間を大幅に短縮することが可能となった。
【0081】
[1−3.実施形態の効果]
以上のような本実施形態によれば、顔の皮膚に対してオブラートを付着させ、その後、例えばガーゼのような不織布からなるマスクを貼り付けることにより、オブラートの肌への密着性を強めることができる。これにより、肌の角質を除去することができるとともに保湿性及びたるみを解消し、肌にハリと艶を与えることが可能となる。
【0082】
特に、オブラートは、肌上の化粧剤を吸収した湿った状態から乾燥状態へと移行する際に表れる収縮する性質を用いて、これをマスクと一体とすることで、マスクに支持された状態で、オブラートが均一の円弧を描いてカールする。これにより、肌にピーリング効果を与えることができる。
【0083】
また、このオブラートはマスクと一体になり、マスクを剥がすことでオブラートも同時に皮膚から剥がれるため、剥離性に富んだ美容方法を提供することができる。これにより、皮膚へのオブラートの剥がし残しをなくし、剥がす際に肌を傷つけることも防止することができる。
【0084】
さらに、マスクを用いることで当該マスクとオブラートが一体となり、マスクを用いない従来からの美容方法よりもオブラートの乾燥時間を大幅に短縮することが可能となり、特に、化粧剤として乳液を用いた場合にその効果が顕著となる。
【0085】
[2.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法について以下に説明する。第2の実施形態では、第一の実施形態のように顔面に予め化粧剤を塗布するのではなく、マスク上に乾いたオブラートを置き、その上から化粧水等の化粧剤を染み込ませることでマスクにオブラートを付着させ、それを顔に貼り付ける工程に特徴を有する。
【0086】
具体的には、
(1)マスク内面に所定形状のオブラートを敷き、その上から化粧剤を塗布することでマスクにオブラートを付着させる。
(2)オブラートをマスクに付着後、マスクと一体となったオブラートを顔の各部位に対して貼り付ける。
(3)所定時間経過後に、前記オブラート及びマスクを皮膚から剥離する。
【0087】
なお、実施例については概ね上記実施形態と同様であったため説明は省略する。
【0088】
このような第2の実施形態によれば、実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、マスクに予め付着させたオブラートを顔に貼り付けるので、第一の実施形態と同様に、オブラートの肌への密着性を強めることができ、それ故に、肌の保湿、角質除去及びたるみを解消し、肌にハリと艶を与えることが可能とする。
【0089】
また、第2の実施形態では、マスクに予めオブラートを付着させているので、顔から剥離する際も、マスクを剥がすことでオブラートも一体となって皮膚から剥がれるため、利便性に長け、皮膚へのオブラートの剥がし残しを抑制する。さらに、剥がす際に肌を傷つけることも防止することができる。
【0090】
[3.他の実施形態]
なお、本発明は、上記のような第1及び2の実施形態に限定するものではなく、オブラート及びマスクを顔面に貼付け後、当該オブラート及びマスクをより顔に固定するために、包帯で巻回し支持する実施形態も包含する。これにより、オブラート及びマスクの密着度が増すため、オブラートの肌への密着性及びハリは向上し、また、包帯とオブラート及びマスクが一体となるのでオブラートの乾燥時間の短縮も図ることができる。
【0091】
また、本発明は、上記のような顔面に対する美容方法である第1及び2の実施形態に限定するものではなく、下顎から首にかけて、オブラート及びマスクを貼り付ける実施形態も包含する。すなわち、下顎から首にかけても第1及び2の実施形態と同様の方法によりオブラート及びマスクを貼り付けることができるので、当該部位にも乾燥時間が短く剥離性に長けた、オブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法を提供することが可能となる。なお、下顎から首だけでなく、膝や肘等の身体のあらゆる部位にも本発明は使用可能である。
【0092】
また、前記各実施形態は、オブラート及びマスクを順番に貼り付けたが、皮膚表面に貼り付けるために貼り付け箇所の形状に合わせて形成されたオブラートと、このオブラートの表面を覆うように積層された通気性のある不織布からなるマスクから構成された美容用パック材を使用することで、これらの貼り付け作業を同時に実施できる。なお、オブラートと不織布の貼り付けは、オブラートと同質のデンプン糊を使用したり、その他の接着剤を使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面に化粧水、乳液、パック、美溶液、クリームパック、ジェルのいずれかを含む化粧剤を塗布する工程と、
化粧剤を塗布後、その皮膚表面に所定形状のオブラートを貼り付ける工程と、
オブラートが貼付された皮膚上に不織布からなる所定形状のマスクを覆い被せる工程と、
を実施することを特徴とするオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法。
【請求項2】
不織布からなる所定形状のマスク内面に所定形状のオブラートを配置し、その上から化粧水、乳液、パックのいずれかを含む化粧剤を噴霧又は塗布する工程と、
化粧剤の噴霧後、当該噴霧側を皮膚への貼付面として前記オブラート及びマスクを皮膚上に覆い被せる工程と、
を実施することを特徴とするオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法。
【請求項3】
皮膚上に付着させる前記オブラートと前記マスクのいずれか一方は、当該顔の中心線と垂直に、複数枚に切り分けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法。
【請求項4】
皮膚上に付着させる前記オブラートと前記マスクのいずれか一方は、顔面の各部位に対応する形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法。
【請求項5】
皮膚上に付着させる前記オブラートは、顔面の各部位に対応する大きさの長方形に切り分けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオブラートを用いた肌の保湿、角質除去及びたるみの解消方法。
【請求項6】
皮膚表面に貼り付けるために貼り付け箇所の形状に合わせて形成されたオブラートと、このオブラートの表面を覆うように積層された通気性のある不織布からなるマスクから構成されたことを特徴とする美容用パック材。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−82170(P2012−82170A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230597(P2010−230597)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(509271255)
【出願人】(391040205)国光オブラート株式会社 (2)
【Fターム(参考)】