説明

オペークペーストの色調調整用硬化性組成物

【課題】
歯冠補綴物の作成において、複数のペースト同士を混合して色調調整を行う事が容易であり、審美的な歯冠修復物を作製するために最適な色調調整用硬化性組成物と歯冠修復材料と、それらを用いた色調調整方法を提供すること。
【解決手段】
a)平均粒子径0.05〜1.0μmであり、且つフィラー中に占める粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量が10質量%以下であるフィラー、b)重合性単量体、c)光重合開始剤、及びd)顔料
を含んでなり、23℃における粘度が10〜30Pa・sである有色硬化性組成物であって、歯冠補綴物における背景色遮蔽用オぺークペーストを所望の色調に調製するために該オペークペーストと混合して使用される、オペークペーストの色調調整用硬化性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペークペーストの色調調整用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、硬質レジンの理工学的性質の向上や、技工操作が簡単な光重合型硬質レジンの登場等により、歯冠補綴物として、審美性に優れた硬質レジンジャケット冠が臨床において多く用いられるようになった。
【0003】
一般的な歯冠補綴物の作製方法について説明すると、金属裏装を有する場合や歯台が変色している場合であれば、まず、背景色を遮蔽するために、高いコントラスト比を有する硬化性組成物からなるオペークペーストを、金属鋳造物や支台歯模型に均一に塗布し、硬化させる(十分な遮蔽性を得るため、該オペークペーストの塗布・硬化は必要に応じて、複数回繰り返される)。次いで、十分な遮蔽性が得られたならば、歯冠形成用硬質レジンペーストをオペークペーストの硬化層上に少しずつ築盛し、必要に応じて重合を繰り返しながら、最終的には歯牙形態の歯冠補綴物を作製する(非特許文献1、2)。そうして、天然歯牙には白濁した帯や点、部分的な色調変化や、喫煙などの外的要因による変色があるため、白、青、茶などの多様な色調の低粘度ペーストからなるステインペーストを、上記歯冠補綴物表面に部分的に薄く塗布・硬化させ色調調整する方法が挙げられる。(非特許文献3、4)。
【0004】
上記歯冠補綴物の製造に使用するオペークペーストは、重合性単量体、重合触媒に加え、背景色の遮蔽性を付与するための酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの無機白色顔料から主に構成され、さらに機械的強度の向上のたにフィラーが配合されている。また、筆操作により塗布されるため、塗り難い高粘度のものは避ける必要があるが、他方で、背景色の遮蔽のためには、垂れ等を生じさせることなく一定の厚みのものとすることが求められるため、一般に40〜100Pa・s(23℃)のやや粘稠な性状に調整されていることが多い。また、上記フィラーの平均粒子径としては、0.05μm程度から数十μm程度までの幅広い範囲から採択されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高橋英登ら著、月刊歯科技工別冊 セラミックス・高分子複合型歯冠修復材料の臨床/技工、医歯薬出版株式会社発行、1999年、第68〜140ページ
【非特許文献2】新谷明喜ら著、別冊2003/実践・新素材による歯冠色修復とその技法、株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ発行、2003年、第65〜110ページ
【非特許文献3】月刊歯科技工、Vol.34、No.4、2006年、第448〜479ページ
【非特許文献4】Quintessence of Dental Technology、Vol.30、2005、第1260ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、オペークペーストは、適用する歯牙の個々の色調に同調させるため、色調を異にする相当数が用意されているのが普通であるが、人の歯牙の色合いは多様であり、合致する丁度良いものがないことが多々生じていた。また、オペークペーストは、遮蔽性を高めるために、高屈折率の無機白色顔料が配合されているのが普通であり、明度が高い。よって、オペーク層上に築盛するレジンペースト層が薄い場合にはマージン部が白浮きし、補綴物の審美性が低下することがあった。
【0007】
しかして、これらの問題への対策としては、より濃い色調のオペークペーストを使用するか、オペーク層上に前記レジンペーストを直接的に築盛するのではなく、前記ステインペーストを一層塗布して色調調整してから実施するのが一般的であった。しかし、前者の方法においては、予め用意するオペークペーストの色調数が多数になり経済性に劣り、後者においては操作が煩雑になる他、厚みが厚くなり歯冠補綴物全体の色調コントロールに熟練を要する問題があった。
【0008】
さらに、色調の異なるオペークペースト同士を混合して新たな色調に微調整して使用する方法が取られることもあったが、オペークペーストは前記40〜100Pa・s(23℃)の粘稠な性状であるためなじみが悪く、操作性の面で必ずしも満足のいくものではなかった。
【0009】
したがって、いずれも効率的な方法とは言えず、オペークペーストの色調数を必要以上に増加させなくても、使用時には必要な色調のオペークペーストを簡単に微調整できる方法を開発することが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その検討の過程では、まず、使用時における、オペークペーストの色調調整を、オペークペースト同士ではなくステインペーストとの混合で達成できないかと考え、市販のステインペーストを種々揃え試してみた。しかし、ステインペーストは、低粘度である分、オペークペーストよりは混合のし易さが幾分改善されたものの、それでもまだ十分なレベルではなく、その他の物性においても満足できない点があった。すなわち、これらは形成されるステイン層の強度を十分にする等の観点から、数μm〜数十μmの平均粒子径のフィラーが配合されていることが多く、この場合、たとえペーストが多少低粘度であったとしても、重合性単量体中に分散する粒子間の間隙が大きくなり、その部分にシェアがかかり難くなるため異ペーストとの混合性は高度には改善されないものであった。また、ステインペーストの中には、上記強度等よりも塗布性をより重視して、フィラーは配合していない組成のものがあったが、この場合には、オペークペーストと混合すると、形成されるオペーク層の強度の低下を招いたり、塗布時に厚膜にしようとすると垂れが生じる問題が発現した。
【0011】
しかして、本発明者らは、斯様な状況にあって、これらの知見からさらに検討を深めた結果、オペークペーストに混合するフィラーについて、その平均粒子径や粒度分布を特定のものにし、組成物の粘度を特定の範囲のものに調整することにより、前記の課題が大きく解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、a)平均粒子径0.05〜1.0μmであり、且つフィラー中に占める粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量が10質量%以下であるフィラー
b)重合性単量体、
c)光重合開始剤、及び
d)顔料
を含んでなり、23℃における粘度が10〜30Pa・sである有色硬化性組成物であって、歯冠補綴物における背景色遮蔽用オぺークペーストを所望の色調に調製するために該オペークペーストと混合して使用される、オペークペーストの色調調整用硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の色調調整用硬化性組成物は、オペークペーストとの混合が容易であり、短時間に均一なペーストを得ることができる。したがって、オペークペーストの使用時、歯牙の色調に同調した適当なものがなかったり、マージン部の白浮きを防止するために、より濃い色調のものに調整することが必要なときには、該色調調整用硬化性組成物のうちの適切な色調のものと適宜に混合することにより、求める色調のペーストに簡単に微調整できる。よって、審美性に優れる歯冠補綴物の効率的な製造が実現でき、歯科治療において極めて有意義である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の色調調整用硬化性組成物は、a)平均粒子径0.05〜1.0μmであり、且つフィラー中に占める粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量が10質量%以下であるフィラー
b)重合性単量体、
c)光重合開始剤、及び
d)顔料
を含む有色硬化性組成物からなる。以下、有色硬化性組成物の各構成成分について、順次説明する。
【0015】
a)フィラーは、平均粒子径が0.05〜1.0μmの範囲であり、且つフィラー中に占める粒子径0.03以下の微粒子の含有量が10質量%以下であれば、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できる。斯様な粒子構成のフィラーを用いることによって、硬化性組成物は単に機械的強度が付与されるだけでなく、オペークペーストとの混合性が良好になる。また、粘度の調整も容易であり、流動性に優れたものになる。ここで、上記フィラーの平均粒子径の要件は特に重要であり、この平均粒子径が0.05μmより小さい場合、硬化性組成物の塑性流動性が低下して粘度が上昇し、オペークペーストとの混合性が低下する。また、フィラーの平均粒子径が1μmより大きい場合も、重合性単量体中に分散する粒子間の間隙が大きくなり、その部分にシェアがかかり難くなってオペークペーストとの混合性が低下する。また、ペーストが垂れやすくなり、操作性が低下するため好ましくない。本発明において、使用するフィラーの平均粒子径は0.06〜0.8μmの範囲であるのがより好ましい。
【0016】
他方、a)フィラー中に占める粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量が10質量%を超えて多量に含まれていても、硬化性組成物の粘度が増大するため混合における操作性が低下する。本発明において、使用するフィラーにおける、この粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量は5質量%以下であることがより好適である。さらに好ましくは、フィラーの最大粒子径が5μm以下であると、硬化性組成物におけるオペークペーストとの混合性が向上する。
【0017】
ここで、本発明におけるフィラーの平均粒子径とは体積平均径を意味し、その値は、微粒子の測定に適しているレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布測定装置で測定することができる。なお、フィラーの形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られる様な粉砕形フィラー、あるいは球状フィラー等から採択される。球状フィラーが特に好ましい。
【0018】
上記フィラーの材質としては、有機フィラーであっても良いが、機械的強度の良好さから無機フィラーが良好に使用される。具体的に例示すると、石英、無定形シリカ、シリカチタニア、シリカジルコニア、フルオロアルミノシリケート、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリン、ガラス、硫酸バリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0019】
また、これら無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくしオペークペーストとの混合性をより向上させ、機械的強度や耐水性も向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0020】
本発明においてフィラーは、前記説明した平均粒子径や材質が異なるものを複数種類混合して用いることもできる。この場合、前記平均粒子径や粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量は、個々の原料フィラーではなく、混合フィラーとしての値を言う。
【0021】
本発明においてb)重合性単量体としては、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できるが、好適に使用できる重合性単量体としては、ラジカル重合により硬化する重合性単量体が挙げられる。これらの重合性単量体は、本発明の色調調整用硬化性組成物を、後述する23℃における粘度が10〜30Pa・sのものとするために、該粘度が0.008〜20Pa・s、より好ましくは0.01〜15Pa・sのものを使用するのが良好である。
【0022】
重合性単量体の重合性基としては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体が、重合性及び取り扱い易さの点で好適である。また、重合性単量体は、単官能性あるいは多官能性のいずれも好適に使用できる。
【0023】
一般に好適に使用される単官能ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート系単量体:N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド系単量体:スチレン、α−メチルスチレン等の単官能スチレン系単量体が挙げられる。
【0024】
一般に好適に使用される多官能ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ハイドロジェンマレート等の芳香族二官能(メタ)アクリレート系単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の脂肪族二官能(メタ)アクリレート系単量体:N,N'−メチレン(ビス)アクリルアミド等の二官能(メタ)アクリル酸アミド系単量体:ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンダイマー等の二官能スチレン系単量体:ジアリルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルカーボネートなどの二官能アリル系単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート系単量体:ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート系単量体等が挙げられる。
【0025】
上述のラジカル重合性単量体は単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0026】
本発明におけるc)光重合開始剤としては、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できる。代表的な光重合開始剤としては、α−ジケトン類及び第三級アミン類の組み合わせ,アシルホスフィンオキサイド及び第三級アミン類の組み合わせ、チオキサントン類及び第三級アミン類の組み合わせ,α−アミノアセトフェノン類及び第三級アミン類の組み合わせ,アリールボレート類及び光酸発生剤類の組み合わせ等の光重合開始剤が挙げられる。
【0027】
上記各種光重合開始剤に好適に使用される各種化合物を例示すると、α−ジケトン類としては、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、p,p'−ジメトキシベンジル、p,p'−ジクロロベンジルアセチル、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等が挙げられる。
【0028】
三級アミンとしてはN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2'−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を配合して使用することができる。
【0029】
アシルホスフィンオキサイド類としては、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
チオキサントン類として2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0031】
α−アミノアセトフェノン類として2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1等が挙げられる。
【0032】
上記光重合開始剤は単独で用いても、2種類以上のものを混合して用いても良い。
【0033】
本発明において、色調調整用硬化性組成物として使用する有色硬化性組成物は顔料により着色されている。ここで、本発明における顔料とは、少量添加することによって全体の色調を変更することが可能な、重合性単量体に不溶性または難溶性の粉体を指し、同じ粉体であるフィラーとは区別して用いる。
【0034】
斯様な顔料としては、歯科用として公知の有機顔料、無機顔料が使用される。具体的に例示すれば、白色顔料としては酸化チタン、亜鉛華、酸化ジルコニウム、赤顔料としてべんがら、モリブデンレッド、クロモフタールレッド等、黄色顔料として黄酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、クロモフタールイエロー等、青色顔料としてコバルトブルー、群青、紺青、クロモフタールブルー、フタロシアニンブルー等、黒色顔料として黒酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
これらの顔料は、硬化性組成物を所望の色調に調整するために、自由に組み合わせて使用することができる。なお、顔料は、後述するように一般に少量で使用されるため、オペークペーストとの混合において、その平均粒子径の違いが混合性に大きな影響を与えるものではなく、平均粒子径は0.03〜3.0μmの幅広い範囲から採択すれば良い。しかしながら、少しでもオペークペーストに対するより良好な混合性を付与する観点にたてば、該顔料も、前記a)フィラーと同様に平均粒子径0.05〜1.0μmの範囲のものを使用するのが好適である。
【0036】
上記顔料により着色する硬化性組成物の色調としては、オペークペーストに対して、その色調を、天然歯牙の白濁した帯や点の再現するため、若しくは明度を上げるための白;彩度を上げるための赤、黄、オレンジ;明度を下げたり、透明感を再現するための青、ラベンダー:彩度を上げ明度を下げるためのブラウン;明度を下げるための黒などが一般的であるが、これらの色調に限定されるものではない。
【0037】
また、本発明の色調調整用硬化性組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて他の成分を添加することができる。具体例を挙げれば、重合禁止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0038】
本発明の色調調整用硬化性組成物は、粘度が、23℃において10〜30Pa・s、より好ましくは13〜28Pa・sであることが必要である。すなわち、粘度がこの範囲であると、オぺークペーストとの混合が容易である。色調調整用硬化性組成物の粘度が10Pa・s未満である場合、操作性が低下し所望の色調に調整するのが困難になる。また、30Pa・sを超える場合、オぺークペーストと混合し難くなり、色調調整されたオペークペーストを筆などで塗布したときに厚くなり易く、所望の色調に調整するのが困難になる。
【0039】
本発明において硬化性組成物の粘度の測定方法としては、動的粘弾性測定装置(レオメーター)を用いるのがよく、直径20mm、1°コーンを使用し、測定温度23℃、ショアレート10s−1の条件で測定する。
【0040】
前述の構成成分からなる本発明の硬化性組成物において、上記粘度の調整は、各成分の配合比、特に、a)フィラーとb)重合性単量体との配合比の調整により実現すれば良い。すなわち、硬化性組成物の粘度は、使用するb)重合性単量体の粘度やa)フィラーとの相溶性の違いにも影響されるため、両者の配合比は一概には決定できず、これらの性状、さらには硬化性組成物に対する機械的強度の付与効果等も考慮して適宜に選定すればよい。一般には、b)重合性単量体成分100質量部に対して、a)フィラー70〜250質量部、より好ましくは90〜200質量部の範囲から採択される。
【0041】
なお、本発明の硬化性組成物において、c)光重合開始剤の配合量は、公知の添加範囲が特に制限なく採用されるが、上記粘度の調整上の有利さや、硬化深度と色調調整用硬化性組成物の環境光安定性の両立という観点から、b)重合性単量体成分100質量部に対して0.003〜5質量部、より好適には0.01〜3質量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0042】
さらに、本発明の硬化性組成物において、d)顔料の配合量は、硬化性組成物が所望の色の濃さや硬化性組成物の粘度を勘案して適宜に採択すれば良いが、一般にはb)重合性単量体成分100質量部に対して0.00001〜25質量部、より好適には0.0001〜20質量部の範囲から、上記粘度の調整等も考慮して採択すればよい。
【0043】
本発明において、上記色調調整用硬化性組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の歯科用硬化性組成物の製造方法に準じて行えば良く、例えば、それぞれ所定量の重合性単量体、光重合開始剤、フィラー、顔料、並びに必要に応じて配合される上記各種任意成分を混合し、均一のペースト状になるまで混合することにより調製することができる。
【0044】
次に、本発明において、オペークペーストとは、金属フレームや変色した歯台に対する裏装を伴う歯冠補綴物において、金属鋳造物や支台歯模型の背景色を隠蔽するために使用される硬化性組成物である。金属フレームの金属色を遮蔽する場合等においては、オペークペースト硬化体は高コントラスト比であることが好ましく、0.1mm厚さの硬化体においてコントラスト比Yb/Ywが0.8〜1.0であることが好ましい。
【0045】
本発明の色調調整用硬化性組成物により色調調整したオペークペーストの上記コントラスト比Yb/Ywも上記0.8〜1.0とするために、該色調調整用硬化性組成物のコントラスト比Yb/Ywも係る0.8〜1.0の範囲であるのが良好である。
【0046】
ここで、本発明におけるコントラスト比とは透明性を表す尺度であり、JIS Z8701に規定されるXYZ表色系の三刺激値のうち明るさに関するY値を用いて算出するものであり、一般的な色差計を用いることにより測定することができる。具体的には、一定厚みの試料板に黒背景、もしくは白背景を接触させ、標準の光Cを照射した際の反射光におけるY値を読み取る。黒背景の場合のYをYb、白背景の場合のYをYwとすると、コントラスト比はYb/Ywから求められる。コントラスト比の値が1に近いほど不透明な材料であり、0に近いほど透明な材料であることを示す。オペークペーストにおいてこのコントラスト比は、0.90〜0.98であることが特に好適である。背景色を遮蔽するためには、コントラスト比が1に近いほど良く、コントラスト比が0.8未満である場合、十分な遮蔽性を得ることができなくなる。このような色調調整用硬化性組成物におけるコントラスト比の調整は、無機白色顔料を必要量、通常は、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲、より好適には0.5〜10質量部の範囲から選定して含有させることにより行えば良い。
【0047】
オペークペーストは、通常、フィラー、重合性単量体、光重合開始剤、及び上記無機白色顔料を含む硬化性組成物からなる。さらに、通常は、適用する歯牙の個々の色調に同調させるため、前記無機白色顔料以外の顔料が配合されている。これらの各成分は、歯科用で公知のものであれば何ら制限なく使用できるが、その中でも特に、重合性単量体は、前述した色調調整用硬化性組成物に用いられるものと同じものを使用すると、色調調整用硬化性組成物と混合しやすく、操作性、機械的強度などが良好であるため好ましい。また、フィラーの平均粒子径は、通常、0.05〜10μmの範囲から採択されるが、良好な操作性、流動性や、強度を得るという観点からは0.06〜1μmの範囲のものが好ましい。顔料も、前記色調調整用硬化性組成物と同様のものが使用される。
【0048】
また、オペークペーストには、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤等のその他の成分を添加することができる。
【0049】
なお、オペークペーストの粘度は40〜100Pa・sが好ましく、40〜90Pa・sであることがより好ましく、43〜70Pa・sであることが特に好ましい。この範囲であると、色調調整用硬化性組成物との混合が容易である上に、筆などで塗布して使用する際に塗布物が流れすぎないため、塗布した際に適度な厚みが確保できる。このような粘度のものとするためには、重合性単量体100質量部に対するフィラーの含有量が70〜250質量部であり、さらに好ましくは80〜200質量部であるのが好ましい。光重合開始剤、顔料(無機白色顔料以外)の含有量(無機白色顔料との合計量)は、前記した色調調整用硬化性組成物における光重合開始剤及び顔料の好ましい含有量と同様である。
【0050】
本発明の色調調整用硬化性組成物は、オペークペーストの色調調整用に該オペークペーストと混合して使用される。その際、本発明の色調調整用硬化性組成物は2種以上を混合して使用することもできる。オペークペーストと色調調整用硬化性組成物の混合比は特に制限されるものではないが、色調調整用硬化性組成物の混合割合があまり多いと、オペークペーストの粘度が低下し、使用時に垂れが生じ易くなったり、十分な遮蔽性を発揮するために必要な厚みで塗布できなくなったりする等の性状悪化が生じる虞もあるため、オペークペースト100質量部に対して色調調整用硬化性組成物を1〜100質量部、より好ましくは3〜70質量部の範囲で混合するのが好ましい。この混合比で、オペークペーストを所望の色調に調整できるよう、色調調整用硬化性組成物の色調の濃さを整えるのが好ましい。
【0051】
本発明の色調調整用硬化性組成物で色調調整したオペークペーストは、通常のオペークペーストと同様に歯冠補綴物の作製において金属鋳造物や支台歯模型に塗布して用いればよい。この色調調整したオペークペーストの硬化層上に築盛する硬質レジンも、歯冠形成用として市販等される公知のものが制限なく使用できる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明に関する実施例と比較例を示すが、本発明は該実施例に限定されるものではない。本発明中並びに実施例に示した略称・略号については次の通りである。
名称または構造
・重合性単量体
D−2.6E:2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン(23℃における粘度1.10Pa・s)
UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン(23℃における粘度3.80Pa・s)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(23℃における粘度0.01Pa・s)
・光重合開始剤
CQ:カンファーキノン
DMBE:4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
・フィラー
F−1:球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径0.4μm、粒子径の範囲0.25〜0.80μm、0.03μm以下の粒子を含まない(0%)
F−2:球状シリカ−チタニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径0.07μm、粒子径の範囲0.02〜0.10μm、0.03μm以下の粒子を5%含む
F−3:球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径0.9μm、粒子径の範囲0.60〜1.20μm、0.03μm以下の粒子を含まない(0%)
F−4:ヒュームドシリカ;平均粒子径0.01μm、粒子径の範囲0.005〜0.04μm、0.03μm以下の粒子を95%含む
F−5:不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径1.7μm、粒子径の範囲0.01〜10μm、0.03μm以下の粒子を15%含む
・顔料
酸化チタン:タイペークCR−50、石原産業社製、平均粒子径0.25μm
黄色顔料:クロモフタールイエローGR、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、平均粒子径1.0μm
赤色顔料:クロモフタールスカーレットRN、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、平均粒子径1.0μm
【0053】
なお、物性の評価は以下の方法で行った。
(1)粘度測定
粘度測定装置(BOHLIN社製CSレオメーター CVO120HR)に調製したペースト0.1gを載せ、23℃で保持しながら粘度の測定を開始し、測定開始から60秒後の粘度を色調調整用硬化性組成物、オペークペーストの粘度とした。なお、粘度測定装置の測定条件は、コーン直径が2cm、コーンの傾斜角度が1°、ショアレート10s−1とした。
(2)コントラスト比測定
歯科用可視光線照射器(カー社製「デメトロンLCT」)を用いて0.1mm厚さの硬化体を作製し、色差計(東京電色社製「TC−1800MK2」)で黒背景、白背景におけるXYZ表色系の三刺激値のうち明るさに関するY値をそれぞれ測定し、測定値を下式(C)に代入してコントラスト比を得た。
【0054】
Yb(黒背景のY値)/Yw(白背景のY値)=コントラスト比(C)
(3)色調調整用硬化性組成物ペーストのオペークペーストに対する混合性評価
色調調整用硬化性組成物ペーストを0.01g、オペークペーストを0.09gパレットに採取し、小筆を用いて混合し、その混合のし易さを以下の基準で評価した。
【0055】
◎;3秒間の練和後に、目視で均一な色調を有するペーストになり、混合が非常に容易と判断できるもの
○;均一な色調を有するペーストになるまでに要する時間が10秒未満であり、混合が容易と判断できるもの
×;均一な色調を有するペーストになるまでに要する時間が10秒以上であり、混合が困難と判断できるもの
(4)硬質レジン層に対する、オペークペーストの白浮き防止効果
歯冠用硬質レジン「パールエステ」(トクヤマデンタル社製)のDA2シェードを用いて1mm厚みの硬化体を2個作成する。一方の硬化体の片面にオペークペーストを0.1mmの厚みになるように塗布し、歯科用可視光線照射器で光照射を行い硬化させ、オペークペーストの表面硬化層を有する歯冠用硬質レジン硬化体を調整した。また、他方の硬化体の片面に、該オペークペーストを色調調整用硬化性組成物を用いて、前記(3)混合性評価に記載の方法に従って混合することにより色調調整した色調調整オペークペーストを0.1mm程度の厚みになるように塗布し、同様に硬化させ、色調調整オペークペーストの表面硬化層を有する歯冠用硬質レジン硬化体を調整した。
【0056】
これらの両歯冠用硬質レジン硬化体について、オペークペーストまたは色調調整オペークペーストの各塗布面と反対の面を、色差計(東京電色社製「TC−1800MK2」)を用いてその色調をそれぞれ測定し、得られた測定値をCIELabで表した。
【0057】
得られたオペークペーストの表面硬化層を有する歯冠用硬質レジン硬化体と色調調整オペークペーストの表面硬化層を有する歯冠用硬質レジン硬化体の各L*値の差ΔL*を求め、次の基準で評価した。
【0058】
ΔL*が3以上;オペークの白浮き防止効果が得られたもの(○)
ΔL*が3未満;白浮き防止効果が得られていない(×)
実施例1
UDMA 100質量部、CQ 1.0質量部、DMBE 1.0質量部からなるマトリックスモノマーをあらかじめ調製した。次に、F−1 72質量部とマトリックスモノマー 100質量部、クロモフタールイエロー 0.002質量部、クロモフタールスカーレット0.001質量部、クロモフタールブルー0.0008質量部をメノウ乳鉢に入れ、暗所にて十分に混合し均一なブラウンの色調の低粘度ペーストにした後に脱泡し、色調調整用硬化性組成物ペーストを製造した。該色調調整用硬化性組成物ペーストの粘度を測定したところ、20Pa・sであった。
【0059】
同様に、D−2.6E 50質量部、UDMA 50質量部、CQ 1.0質量部、DMBE 1.0質量部からなるマトリックスモノマーを予め調整し、F−1 103質量部、F−2 65質量部、F−5 3質量部と、マトリックスモノマー 100質量部と、酸化チタン5質量部、クロモフタールイエロー 0.0001質量部、クロモフタールスカーレット0.00005質量部、クロモフタールブルー0.00003質量部をメノウ乳鉢に入れ、暗所にて十分に混合し均一な低粘度ペーストにした後に脱泡し、A2の色調のオペークペーストを製造した。該オペークペーストの粘度を測定したところ、47Pa・sであった。また、このときのオペークペーストの0.1mm厚み硬化体のコントラスト比はYb/Yw=0.92であった。さらに、オペークペーストについて、「パールエステ」DA2シェードの1mm厚み硬化体に、オペークペーストを0.1mm厚みになるよう塗布して硬化体の色調を測定したところ、L*は66.9であった。
【0060】
次に、パレットに、色調調整用硬化性組成物ペースト 0.01gとオペークペースト 0.09gを採取し、小筆を用いて混合性を評価したところ、3秒間で色調が均一な色調調整用硬化性組成物ペーストを得た。この色調調整用硬化性組成物ペーストの0.1mm厚み硬化体のコントラスト比はYb/Yw=0.92であった。また、前記オペークペーストに対する混合性評価を行ったところ、混合性は非常に容易であり◎の評価だった。
【0061】
さらに、該色調調整用硬化性組成物ペーストを用いて、前記オペークペーストを色調調整した色調調整オペークペーストについて、硬質レジン層に対する白浮き防止効果を測定したところ、オペークペーストの表面硬化層を有する歯冠用硬質レジン硬化体のL*は66.9であり、他方、色調調整オペークペーストの表面硬化層を有する歯冠用硬質レジン硬化体のL*は63.3であり、ΔL*は3.6であり、硬質レジン層に対する白浮き防止効果(評価○)が確認できた。
実施例2〜5
実施例1と同様に、表1に示す各組成の、色調調整用硬化性組成物ペーストを調製した。また、オペークペーストは実施例1と同一とした。該色調調整用硬化性組成物ペーストの評価結果を表2に示した。
【0062】
実施例2〜5のいずれにおいても、色調調整用硬化性組成物ペーストのオペークペーストに対する混合性は良好であり、得られた色調調整オペークペーストは良好な白浮き防止効果が得られていた。
比較例1〜3
実施例1と同様に、表1に示す各組成の、色調調整用硬化性組成物ペーストを調製した(比較例1は、オペークペーストとほぼ同じ組成のもの)。また、オペークペーストは実施例1と同一とした。該色調調整用硬化性組成物ペーストの評価結果を表2に示した。
【0063】
色調調整用硬化性組成物ペーストのオペークペーストに対する混合性の評価において、比較例1〜3のいずれも、両ペーストを15秒混合しても不均一であり、均一な色調を有するペーストにならなかった。そのため、硬化体の色調の測定、白浮き防止効果の評価ができなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
実施例6〜9
実施例1と同様に、表3に示す各組成の、色調調整用硬化性組成物ペーストとオペークペーストとを調製した。また、該色調調整用硬化性組成物ペーストの評価結果を表4に示した。
【0067】
実施例6〜9のいずれにおいても、色調調整用硬化性組成物ペーストのオペークペーストに対する混合性は良好であり、得られた色調調整オペークペーストは良好な白浮き防止効果が得られていた。
比較例4、5
実施例1と同様に、表3に示す各組成の、色調調整用硬化性組成物ペーストとオペークペーストを調製した。また、該色調調整用硬化性組成物ペーストの評価結果を表4に示した。
【0068】
色調調整用硬化性組成物ペーストのオペークペーストに対する混合性の評価において、比較例3、4のいずれも、両ペーストを15秒混合しても不均一であり、均一な色調を有するペーストにならなかった。そのため、硬化体の色調の測定、白浮き防止効果の評価ができなかった。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)平均粒子径0.05〜1.0μmであり、且つフィラー中に占める粒子径0.03μm以下の微粒子の含有量が10質量%以下であるフィラー
b)重合性単量体、
c)光重合開始剤、及び
d)顔料
を含んでなり、23℃における粘度が10〜30Pa・sである有色硬化性組成物であって、歯冠補綴物における背景色遮蔽用オぺークペーストを所望の色調に調製するために該オペークペーストと混合して使用される、オペークペーストの色調調整用硬化性組成物。
【請求項2】
オペークペーストが、フィラー、重合性単量体、光重合開始剤、及び無機白色顔料を含んでなり、23℃における粘度40〜100Pa・sのものである請求項1記載のオペークペーストの色調調整用硬化性組成物。

【公開番号】特開2010−215694(P2010−215694A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60870(P2009−60870)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】