説明

オメプラゾール含有医薬製剤

【課題】酸に不安定な胃関連疾患の予防および治療薬オメプラゾールを活性成分として含有し、種々の経時的放出速度が得られ、剤形の保存期間を延長できる、腸溶性コーティング経口医薬製剤の提供。
【解決手段】オメプラゾールを活性成分とし、結合剤、充填剤および/または崩壊剤のような製薬上許容しうる賦形剤1つ以上との混合物であるコア物質上に、分離層および腸溶性コーティング層があり、系の光透過率が96%となる温度として決定される曇り点が少なくとも38℃であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を分離層の成分として使用し、曇り点を以下の方法、即ち、pH6.75〜6.85の7:3の比率のリン酸水素2ナトリウム緩衝液0.086Mと塩酸0.1Mの混合液中1.0%(w/w)の濃度でHPCを溶解することにより測定する上記製剤。該腸溶性コーティング層としては、メタクリル酸共重合体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸に不安定なH+,K+−ATPase 阻害剤オメプラゾール、オメプラゾールの
アルカリ塩、その単独のエナンチオマーの1つまたはオメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つのアルカリ塩を含有する経口医薬製剤に関する。以下の記載においては、これらの化合物はオメプラゾールと称する。製剤はオメプラゾールの腸溶性コーティング積層単位を有する多単位の剤形である。より詳細には、単位は場合によりアルカリ反応性物質との混合物として、そして、結合剤、充填剤および/または崩壊剤のような製薬上許容しうる賦形剤の1つ以上との混合物としてオメプラゾールを含有するコア物質を有する。更にまた、各単位はコア物質から腸溶性コーティング層を分離するための分離層を有する。分離層は特定の性質を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、および、場合により医薬賦形剤を含有する。より詳細には、HPCの性質は特定の曇り点を有することにより定義される。
【0002】
更にまた、本発明はオメプラゾールを含有する医薬製剤の製造における特定の性質のHPCの使用、および、医薬におけるこのような医薬製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
オメプラゾール、そのアルカリ塩、オメプラゾールの単独のエナンチオマーおよびオメプラゾールの単独のエナンチオマーのアルカリ塩、以後オメプラゾールと称する全ての化合物は胃酸関連の疾患の治療に使用される。オメプラゾールおよび製薬上許容しうるその塩はEP5129 に記載されており、オメプラゾールの一部の特定のアルカリ塩はEP124495 およびWO95/01977 に記載されている。オメプラゾールの単独のエナンチオマーの特定の塩およびその調製はWO94/27988 に記載されている。
【0004】
オメプラゾールは一般的には酸分泌経路の最終段階において胃酸の分泌を制御することにより哺乳類およびヒトの胃酸分泌を抑制するのに有用であることが知られている。即ち、より一般的な意味において、例えば還流性食道炎、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍および十二指腸潰瘍を包含する哺乳類およびヒトにおける胃酸関連疾患の予防および治療のために使用してよい。更にまた、胃酸抑制作用が望まれる、例えばNSAID療法中の患者において、非潰瘍性消化不良患者において、兆候性の胃食道還流性疾患患者において、そして、ガストリノーマ患者において、他の胃腸疾患の治療のために用いてよい。また、集中治療状況にある患者において、急性上部胃腸出血の患者において、術前術後に胃酸の吸引予防のため、そして、ストレス性潰瘍の予防および治療のために用いてよい。更にまた、乾癬の治療において、並びにヘリコバクター感染およびこれに関連する疾患の治療において、そしてヒトを含む哺乳類の炎症症状の治療または予防において使用してよい。
【0005】
しかしながらオメプラゾールは酸性および中性の媒体中において分解または変換を起こしやすい。分解は酸性化合物により触媒され、アルカリ化合物との混合物中では安定化する。オメプラゾールの化学的安定性はまた水分、熱および有機溶媒による、そしてある程度は光による影響を受ける。
【0006】
オメプラゾールの化学的安定性に関する特徴のために、オメプラゾールを含有する経口固体剤形は酸性の胃液との接触から保護しなければならないことは明白である。オメプラゾールはpHが中性付近であり、急速な吸収が起こり得る胃腸管の部分に至るまでは未損傷の形態に変換されていることも必要である。
【0007】
オメプラゾールの医薬経口剤形は腸溶性コーティング層により酸性の胃液との接触から
最も良く保護される。例えばEP247983 はオメプラゾールの腸溶性コーティング製剤を記載している。このような製剤はアルカリ塩と共にオメプラゾールを含有する、または、場合によりアルカリ塩と共にオメプラゾールのアルカリ塩を含有するコア単位の形態でオメプラゾールを含有しており、コア単位は分離層および腸溶性コーティング層で積層されている。WO96/01623 にはオメプラゾールを含有する多単位の錠剤化剤形が記載されている。
【0008】
EP247983 に記載されている経口製剤およびWO96/01623 に記載されている錠剤製剤は、酸感受性物質であるオメプラゾールから酸性の腸溶性コーティング物質を分離するための分離層を有するまたは場合により有する腸溶性コーティング積層製剤の例である。HPCは記載された製剤において腸溶性コーティングからコア物質を分離する層中に使用される。医薬調製物中に使用される全ての成分は、HPCの性質を含めて、厳密な基準、例えば薬局方に記載された条件を満足しなければならない。
【0009】
医薬品の剤形からのオメプラゾールの放出速度は全身循環系へのオメプラゾールの吸収の総量に影響する(Pilbrant and Cederberg, Scand. J. Gastroenterology, 1985; 20 (suppl.108) p.113-120)。従って医薬製剤からのオメプラゾールの放出速度の限界は製品の販売許可書に明記される。オメプラゾールの放出は活性物質の化学的安定性および医薬製剤の放出安定性の双方に影響される。製剤が放出速度の点において不安定である場合、薬剤は許容できない保存時間を有することになり、即ち、製品の使用有効期限が短すぎるものとなる。
【0010】
今般、意外にも薬局方の基準を全て満たすHPCの種々のバッチをオメプラゾールを含有する医薬製剤中の分離層のための材料として用いた場合に種々の経時的放出速度が得られることを発見した。即ち、医薬製剤の保存時間は許容できない場合がある。放出安定性に対するHPCの影響に関する興味深いパラメーターの1つはその水溶性である。
【0011】
HPCの水溶性は重合体相の分離により温度上昇と共に低下する。このことは温度を上昇させた場合に重合体溶液の曇りとして観察される。曇り点はこの重合体相の分離が起こる温度である。曇り点は重合体溶液の光透過率を測定することにより求められる。重合体が溶解している特定の系、即ち曇っていない透明な重合体溶液の光透過率は光透過率100%として定義される。本出願においては、曇り点はMettler製の市販機器を使用した場合の特定の系の光透過率が96%である温度として定義する。他の曇り点の系および機器については、別の光透過率が各系に対して特定される。
【0012】
新しい製剤および特定の性質のHPCの使用により回避することができる1つの問題点は剤形の保存期間を延長でき保証できる点である。経済的観点から、HPCの性質を特定して確認し、これにより剤形の長い有効期限を保持することが好都合である。
【発明の概要】
【0013】
MettlerのFP90/FP81C機により測定した特定の系の光透過率が96%となる温度
として定義される曇り点が38℃以上である性質のHPCがオメプラゾールを含有する腸溶性コーティング積層医薬製剤において望ましいことが解かった。好ましくはHPCは40℃以上、より好ましくは41℃以上の曇り点を有する。測定に別の機材を使用する場合は、別の用語で曇り点が特定される。曇り点の上限は重要ではなく、従って、これを特定する必要はない。
【0014】
HPCは腸溶性コーティング層からオメプラゾールを含有するコア物質を分離する分離層の成分として用いられる。本発明において定義されるHPCの性質は放出速度安定性に関する基準を満足するために望ましく、そして、オメプラゾールを含有する経口投与形態
に適していることが望ましい。
【0015】
図1は、A型およびB型と命名した2種類の性質のHPCに基づく2つの異なる剤形を示す2本のグラフである。グラフは40℃、相対湿度75%の加速条件下で3ヶ月および6ヶ月保存した後の剤形から放出されたオメプラゾールを示している。2種類の性質のHPCは後述する実施例2に記載する分離層の成分として使用する。A型のHPCを含有する分離層の場合は、オメプラゾールの経時的放出速度は低下する。B型のHPCの場合は、オメプラゾールの経時的放出速度は新たに製造した製品とほぼ同等である。
【0016】
図2は、A型およびB型と命名した2種類の性質のHPCを示す2本のグラフである。グラフは後述する実施例1〜3に記載した分離層の成分として使用される2種類の性質のHPCの曇り点の測定を示している。
【0017】
図3aおよび図3bは、A型およびB型と命名した2種類の性質のHPCに基づく2つの異なる剤形を示すグラフである。図3aはA型のHPCを含有する剤形、即ち、標準対照品からのオメプラゾールの放出を示す。図3bはB型のHPCを含有する剤形、即ち、本発明の剤形からのオメプラゾールの放出を示す。2種の性質のHPCは後述する実施例1に記載した分離層の成分として使用する。
【0018】
コア物質
式Iaのオメプラゾールは好ましくはMg2+、Ca2+、Na+およびK+の塩よりなる群から選択されるアルカリ塩のような製薬上許容しうる塩、より好ましくはMg2+塩の形態で経口組成物中に製剤される。オメプラゾールはまたオメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つまたはオメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つのアルカリ塩、特にオメプラゾールの(−)−エナンチオマーのアルカリ塩、より好ましくはオメプラゾールの(−)−エナンチオマーのMg2+塩の形態で使用してもよい。
【化1】

【0019】
個々の腸溶性コーティング積層ペレットのコア物質は種々の原理に従って、例えば参照により本明細書に組み込まれるEP247983 およびWO96/01623 に記載の通り組成し製剤することができる。例えば、好ましい取り扱い性や加工特性を得たり、また、最終混合物中のオメプラゾールの適当な濃度を得るためにオメプラゾールを医薬成分1種以上と混合する。充填剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、界面活性剤および他の製薬上許容しうる添加剤のような医薬品成分を使用することができる。
【0020】
好ましくはオメプラゾールは場合によりアルカリ化合物と混合した後に結合剤を含む適当な成分と混合し、コア物質に調製する。このようなコア物質は押出し法/球状化法、ボール化法または圧縮により、そして、種々の加工装置を用いることにより製造して良い。調製されたコア物質は約2mmより小さいものであってよい。製造されたコア物質は、場合により活性物質を含有する更に別の成分で積層されることができ、および/または、別の加工を施すことができる。
【0021】
或いは、活性物質で積層された不活性のシード(活性物質は場合によりアルカリ化合物と混合される)を更に加工するためのコア物質として使用することができる。活性物質で積層されるシードは、種々の酸化物、セルロース、有機重合体および他の材料を単独または混合物として含有する水不溶性のシード、または、種々の無機塩、糖類、ノンパレイユ(non-pareils)および他の物質を単独または混合物として含有する水溶性のシードであることができる。
【0022】
例えば顆粒化装置または噴霧コーティング/積層装置を用いてシードを積層する前に、オメプラゾールを結合剤および場合により他の成分と混合する。このような他の成分は結合剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、アルカリ添加剤、または、他の製薬上許容しうる成分の単独または混合物であることができる。
【0023】
結合剤は例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース、ポリビニルピロリドン、糖類、澱粉および凝集性を有する他の製薬上許容しうる物質である。適当な界面活性剤は製薬上許容しうる非イオン性またはイオン性の界面活性剤の群から選択され、例えばラウリル硫酸ナトリウムである。
【0024】
活性物質はまたアルカリ性の製薬上許容しうる物質と混合しても良い。このような物質はリン酸、カルボン酸、クエン酸または他の適当な無機または有機の弱酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの塩;水酸化アルミニウム/重炭酸ナトリウム共沈殿物;アルミニウム、カルシウムおよびマグネシウムの水酸化物のような制酸剤で通常使用される物質;酸化マグネシウムまたはその複合物質、例えばAl23.6MgO.CO2.12H2O、Mg6Al2(OH)16CO3.4H2O、MgO.Al23.2SiO2.nH2Oまたは類似の化合物;有機性のpH緩衝物質、例えばトリヒドロキシメチルアミノメタン、塩基性アミノ酸およびその塩または他の同様の製薬上許容しうるpH緩衝物質のような物質から選択されるが、これらに限定されない。
或いは、上記したコア物質は噴霧乾燥または噴霧凝結法を用いて調製することもできる。
【0025】
分離層
オメプラゾールを含有するコア物質はEP247983 に従って、コーティング工程または
保存中にオメプラゾールの分解/変色をもたらす遊離のカルボキシル基を有する腸溶性コーティング重合体から分離されなければならない。本発明によれば、分離層は特定の性質のHPCを含有する。この特定の性質のHPCは好ましくはMettlerの機材で測定した場合に曇り点が少なくとも38℃である。曇り点は7:3の比率で混合された混合リン酸水素2ナトリウム緩衝液0.086Mおよび塩酸0.1M中で測定する。曇り点の測定のために使用する混合溶液は6.75〜6.85のpHを有する。混合溶液中のHPCの濃度はMettler機材では1.0%(w/w)である。混合溶液の組成に関するより詳細な情報は後述する実験のセクションで記載する。好ましくは、HPCは低粘度を有し、例えば25℃の5%(w/w)水溶液中で400mPas未満である。
【0026】
或いは、HPCの性質は、上記した方法に相関する方法で、例えばNIR分光光度測定により測定しても良い。
添加剤、例えば可塑剤、着色料、顔料、充填剤、抗粘着剤、緩衝剤および静電気防止剤、例えばステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルクおよび他の添加剤も分離層に含有させて良い。
【0027】
腸溶性コーティング層
腸溶性コーティング層1つ以上を適当なコーティング方法を用いて分離層で被覆された
コア物質上に適用する。腸溶性コーティング層の材料は水または適当な有機溶媒中に分散または溶解し得る。腸溶性コーティング層の重合体としては、以下に示す重合体、例えば:メタクリル酸共重合体、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、シェラックまたは他の適当な腸溶性コーティング層重合体の溶液または分散液の1つ以上を単独または組み合わせて使用できる。環境上の理由から水性のコーティング工程が好ましい。このような水性のコーティング工程では、メタクリル酸共重合体が最も好ましい。
【0028】
腸溶性コーティング層は腸溶性コーティング層の可撓性および硬度のような所望の機械的特性を得るために製薬上許容しうる可塑剤を含有して良い。このような可塑剤は例えばトリアセチン、クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベートまたは他の可塑剤が例示できるがこれらに限定されない。可塑剤の量は選択された腸溶性コーティング層重合体、選択された可塑剤およびこの重合体が適用される量との関連において各腸溶性コーティング層の処方に関して最適化する。分散剤、着色料、顔料、重合体、例えばポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)、抗粘着剤および消泡剤のような添加剤もまた腸溶性コーティング層に含有させてよい。膜厚を増大させ、酸感受性活性物質への酸性胃液の拡散を低減するために他の化合物を添加しても良い。
【0029】
酸感受性活性物質を保護するために、腸溶性コーティング層は好ましくは少なくとも約10μmの厚みを有する。適用する腸溶性コーティング層の最大厚みは通常は加工条件により制限されるのみである。
腸溶性コーティング層で被覆されたペレットまたは単位はオーバーコーティング層1つ以上で更に被覆しても良い。オーバーコーティング層は、腸溶性コーティング積層ペレットに対して、コーティングまたは積層化の方法により、適当な装置、例えばコーティングパン、コーティング造粒機中で、または、流動床装置中で水および/または有機溶媒を積層化のために用いながら適用することができる。
【0030】
最終剤形
調製されたペレットはハードゼラチンカプセルに充填するか、または、適当な錠剤賦形剤と共に圧縮成形して錠剤化された多単位の製剤としてよく、後者が好ましい。最終剤形はまた発泡性錠剤、およびオメプラゾールと他の活性成分、例えば抗菌物質、NSAID、運動促進剤または制酸剤との組み合わせも包含するがこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】A型およびB型と命名した2種類の性質のHPCに基づく2つの異なる剤形を示す2本のグラフである。
【図2】A型およびB型と命名した2種類の性質のHPCを示す2本のグラフである。
【図3a】A型のHPCを含有する剤形、即ち、標準対照品からのオメプラゾールの放出を示すグラフである。
【図3b】B型のHPCを含有する剤形、即ち、本発明の剤形からのオメプラゾールの放出を示すグラフである。
【実施例】
【0032】
実験のセクション
実施例1:
分離層の成分として使用した種々のHPCでペレットが積層されたオメプラゾールの多単位錠剤の試験(実験室規模)
以下の組成を有するオメプラゾール錠剤をWO96/01623 の記載に従って調製した。糖類の球状物に流動床中でオメプラゾールマグネシウム塩とHPMCの水性懸濁液で噴霧積層した。調製したペレットに分離層を積層し、その後腸溶性コーティングした。腸溶性コーティングされたペレットを錠剤賦形剤と混合し、圧縮成形して多単位の錠剤とした。
【0033】
試験したオメプラゾール錠剤(20mg濃度)の組成は以下の通りである。
成分名 処方(mg/錠)
オメプラゾールマグネシウム 20.6
グリセリルモノステアレート 1.4
ヒドロキシプロピルセルロース 4.8
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 4.6
ステアリン酸マグネシウム 0.7
メタクリル酸共重合体C型 27
微結晶セルロース 220
ポリソルベート80 0.1
ポリビニルピロリドン架橋物 4.6
ステアリルフマル酸ナトリウム 0.5
糖類球状物 22
タルク 8.3
クエン酸トリエチル 8.2
【0034】
A型またはB型の何れかの性質のHPCを分離層が含有する、ペレット上に分離層を有するオメプラゾールの多単位錠剤を調製した。2種のHPCはPhEurおよびUSPの全ての基準を満足する。しかしながら2種のHPCは一部の物理的/化学的性質、例えば曇り点に関して異なっている。
調製された錠剤を以下に記載する通り試験した。錠剤、即ちペレットを同じバッチのオメプラゾールマグネシウムから、そして、同じ腸溶性コーティング材料を用いて調製した。オメプラゾールの放出は0ヶ月および6ヶ月の保存の後、保存錠剤について試験した。緩衝溶液中で30分以内に放出されるオメプラゾールの量を測定した。
【0035】
錠剤を2時間37℃の塩酸に予備曝露した。その後30分におけるpH6.8の緩衝溶液中の薬剤の放出を液体クロマトグラフィーにより測定した。pH6.8の緩衝溶液は7:3の比率のリン酸水素2ナトリウム緩衝液0.086Mと塩酸0.1Mの混合物であり、pHは6.75〜6.85とした。塩酸0.1Mは濃塩酸213mlを水に溶解し、水を加えて25000mlとすることにより調製した。リン酸水素2ナトリウム溶液0.086MはNa2HPO4.2H2O 382gを水に溶解し、水で25000mlまで希釈することにより調製した。
【0036】
安定性試験は乾燥剤の入ったプラスチック瓶に充填した錠剤(20mg濃度)について行なった(錠剤は錠剤コーティングにより被覆されていない)。
結果を図3aおよび図3bに示す。図3aはA型のHPCを用いた場合、すなわち標準対照品の結果を示し、図3bはB型のHPCを用いた場合、即ち、本発明の結果を示す。
【0037】
実施例2:
分離層の成分として種々のHPCを含有する錠剤からのオメプラゾールの放出
パイロットスケールのバッチ(A型HPC使用:6バッチ、B型:2バッチ)を製造し、実施例1の実験室試験の間に観察された改善点を確認した。安定性試験の結果を図1に示す。
B型のHPCを含有する錠剤がA型と比較して改善された放出速度安定性を有することが比較により明らかになった。
【0038】
オメプラゾール錠剤(20mg濃度)の一般的組成
成分名 処方(mg/錠)
オメプラゾールマグネシウム 20.6
赤茶色酸化鉄 0.3
グリセリルモノステアレート 1.4
ヒドロキシプロピルセルロース 4.8
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 15
ステアリン酸マグネシウム 0.7
メタクリル酸共重合体C型 27
微結晶セルロース 220
パラフィン 0.2
ポリエチレングリコール6000 2.5
ポリソルベート80 0.1
ポリビニルピロリドン架橋物 4.6
ステアリルフマル酸ナトリウム 0.5
糖類球状物 22
タルク 8.3
二酸化チタン 2.2
クエン酸トリエチル 8.2
錠剤はHPMC、PEG6000および顔料を含有する錠剤コーティングの工程を加え、実施例1に記載の通り製造した。
【0039】
実施例3:
曇り点の測定
オメプラゾール錠剤を実施例1に記載の通り実験室規模で製造した。Mettler機材にお
けるHPC型の曇り点の測定は以下の通り実施した。HPC型の曇り点は7:3の比率のリン酸緩衝液0.086Mと塩酸0.1Mの混合物中で測定した。曇り点の測定に用いた混合溶液は6.75〜6.85のpHを有していた。混合溶液中のHPCの濃度は1.0%(w/w)であった。曇り点の測定の特異性のためにはこの系が選択された機材において用いられることが必須である。Mettlerの機材は以下の部品、即ち、Mettler FP90中央処理装置、FP81C測定装置およびME-18572沸点試験管よりなる。温度範囲30.0〜50.0℃を用い、加熱速度は1.0℃/分とした。曇り点は光透過率が96%となる温度として定義される。
結果を図2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オメプラゾール、オメプラゾールのアルカリ塩、オメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つおよびオメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つのアルカリ塩の群から選択される化合物を活性成分として含有する腸溶性コーティング経口医薬製剤であり、製剤は場合によりアルカリ反応性化合物との混合物として活性成分を含有するコア物質を有し、そして活性成分は結合剤、充填剤および/または崩壊剤のような製薬上許容しうる賦形剤1つ以上との混合物であり、そしてコア物質上には分離層および腸溶性コーティング層があり、系の光透過率が96%となる温度として決定される曇り点が少なくとも38℃であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を分離層の成分として使用し、曇り点を以下の方法、即ち、pH6.75〜6.85の7:3の比率のリン酸水素2ナトリウム緩衝液0.086Mと塩酸0.1Mの混合液中1.0%(w/w)の濃度でHPCを溶解することにより測定する上記製剤。
【請求項2】
HPCが少なくとも40℃の曇り点を有する請求項1記載の製剤。
【請求項3】
HPCが少なくとも41℃の曇り点を有する請求項1記載の製剤。
【請求項4】
腸溶性コーティング層がメタクリル酸共重合体を含有する請求項1記載の製剤。
【請求項5】
HPCが低い粘度を有する請求項1記載の製剤。
【請求項6】
活性成分がオメプラゾールである請求項1記載の製剤。
【請求項7】
活性成分がオメプラゾールのマグネシウム塩である請求項1記載の製剤。
【請求項8】
活性成分がオメプラゾールの(−)−エナンチオマーのマグネシウム塩である請求項1記載の製剤。
【請求項9】
オメプラゾール、オメプラゾールのアルカリ塩、オメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つおよびオメプラゾールの単独のエナンチオマーの1つのアルカリ塩の群から選択される化合物を活性成分として含有する腸溶性コーティング経口医薬製剤の調製における系の光透過率が96%となる曇り点が少なくとも38℃である性質を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の使用であり、製剤は場合によりアルカリ反応性化合物との混合物として活性成分を含有するコア物質を有し、そして活性成分は結合剤、充填剤および/または崩壊剤のような製薬上許容しうる賦形剤1つ以上との混合物であり、そしてコア物質上には分離層および腸溶性コーティング層があり、分離層が上記定義した曇り点を有するHPCを含有し、曇り点を以下の方法、即ち、pH6.75〜6.85の7:3の比率のリン酸水素2ナトリウム緩衝液0.086Mと塩酸0.1Mの混合溶液中1.0%(w/w)の濃度でHPCを溶解することにより測定する上記使用。
【請求項10】
HPCが低い粘度を有する請求項9記載の使用。
【請求項11】
請求項1記載の腸溶性コーティング経口医薬製剤の製造方法であり、活性物質を結合剤と混合し、場合によりアルカリ反応性化合物と混合し、シード上に積層し、そしてコア物質を形成し、そしてそのコア物質上には分離層がコーティング積層され、そしてその後、腸溶性コーティングを適用し、分離層は系の光透過率が96%となる曇り点が少なくとも38℃であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含有し、曇り点を以下の方法、即ち、pH6.75〜6.85の7:3の比率のリン酸水素2ナトリウム緩衝液0.086Mと塩酸0.1Mの混合溶液中1.0%(w/w)の濃度でHPCを溶解することにより測定する上記方法。
【請求項12】
胃腸疾患の治療のための医薬の製造における請求項1〜8の何れかに記載の医薬製剤の使用。
【請求項13】
請求項1〜8の何れかに記載の治療上有効な剤形を胃腸疾患の治療の必要な宿主に投与することによるヒトを包含する哺乳類における上記疾患の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2012−31189(P2012−31189A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−215798(P2011−215798)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2000−580597(P2000−580597)の分割
【原出願日】平成11年11月3日(1999.11.3)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】