説明

オリゴデンドロサイト分化の促進

本発明は、概して、神経系疾患および神経疾患の分野であり、特に神経のミエリンの被覆が失われる神経変性疾患の分野にある。神経変性疾患または神経外傷後の損傷の治療のための胚性幹細胞由来のオリゴデンドロサイトの形成を促進するために、IL6R/IL6キメラが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、神経病および神経疾患の分野である。特に、本発明は、中枢神経系(central nervous system)においてミエリン(myelin)を産生する細胞であるオリゴデンドロサイト(oligodendrocyte)の変質(degeneration)の結果、神経のミエリンの被覆が失われる神経変性疾患(neurodegenerative disease)に関する。さらに、特に本発明は、胚性幹細胞(embryonic stem cell)からオリゴデンドロサイトの形成を促進するIL6R/IL6キメラ(chimera)の使用および神経変性疾患または外傷性神経損傷(posttraumatic nerve damage)治療の薬物として供する。
【背景技術】
【0002】
オリゴデンドロサイトは、中枢神経系(CNS)のミエリン鞘(myelin sheaths)を形成し、一連の発生段階を経て、多能性神経幹細胞(multipotential neural stem cell)から生まれる(Rogister et al. 1999; Shihabuddin et al. 1999; Levine et al. 2001)。認識される段階は、初期の双極性前駆体(bipolar progenitor)であるA2A5+細胞、またはO−2A(Raff 1989)、O4スルファチド(sulfatide)配糖体(glycoside)を発現する後期多極性前駆体(late multipolar progenitor)(Schachner et al. 1981)、樹状化した(arborized)未成熟なオリゴデンドロサイトO4、およびGalC陽性で、O1スルファチドを有し、ミエリン膜を、ミエリン塩基性タンパク質(myelin basic protein)(MBP)のようなミエリン膜構造の構成物で合成する成熟オリゴデンドロサイトを、含んでいる。
【0003】
胚性幹細胞(embryonic stem)(ES)細胞株は、胚盤胞期(blastocyst-stage)の胚の内部細胞塊(inner cell mass)由来であって、オリゴデンドロサイトの可能性のある大規模な供給源(source)であり、マウスES細胞由来の前駆体(precursor)は、ミエリンが欠損したCNSへの移植に使用されている(Brustle et al. 1997; Brustle et al. 1999; McDonald et al. 1999)。浮遊胚様体(floating embryoid bodies)(EB)に分化したマウスES細胞が、様々な種類のニューロン(neuron)、アストロサイト(astrocyte)、およびオリゴデンドロサイトを生じる神経系統(lineage)に向け得る多くの条件が、定義された。一つのアプローチは、塩基性繊維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor)(FGF−2)の影響下で、神経系前駆細胞(neural precursor cell)が生存、増殖、および増殖因子の除去で分化する無血清の合成培地(defined medium)の選択と、接着基質(adherent substrate)(Okabe et al. 1996)に播くことに基づいている。トリヨードサイロニン(tri-iodothyronine)(T3)が視神経(optic nerve)由来のO−2A前駆体に効果があることと一致して、T3を添加すると、これらの条件下で、いくつかのO4陽性細胞が、発生する(Barres et al. 1994)。FGF−2、ついで上皮増殖細胞(EGF)と共にFGF−2、そして、グリア前駆細胞の増殖を促進する因子である、血小板由来増殖因子(PDGF−AA)と共にFGF−2により、EB細胞の順次的な処理により、より効果的な選択が得られ(Besnard et al. 1987; Bogler et al. 1990)、その結果、増殖因子の除去後、グリア繊維様酸性タンパク質(GFAP)を発現するO4+オリゴデンドロサイトにもアストロサイトにも分化するA2B5+細胞の個数が増加する(Brustle et al. 1999)。
【0004】
他の方法としては、EB培養に神経系およびグリア系の系統を誘導するレチノイン酸のような分化試薬を使用する(Bain et al. 1995; Fraichard et al. 1995)。新生児の脳由来の培養などの場合、神経系前駆体は、合成培地で浮遊球体として生長している細胞を選択し、EGF、FGFの除去後、分化するニューロスフェアー(neurosphere)およびオリゴデンドロサイトに富む(oligodendrocyte-enrich)オリゴスフェアー(oligosphere)として膨張させることで、さらに富ませる(enrich)ことができる(Zhang et al. 1998、Lui et al. 2000)。EB由来のヒトES細胞株も、浮遊ニューロスフェアーとして、伸長可能なロゼッタ(rosette)状の神経管(neural tube)を形成し、この浮遊ニューロスフェアーは、インビボ(in vivo)において移植、またはニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトに分化するポリカチオン性(polycationic)の基質上に播くことができ、特に後者はPDGF−AAおよびT3処理後に発生する(Reubinoff et al. 2001; Zhang et al. 2001)。LIFのようなサイトカインはES細胞を未分化、多能性の状態に維持することが知られているが、LIFが希薄なマウスES細胞をニューロスフェアーに発展させることを可能にすると、近年見出された(Tropepe et al. 2001)。
【0005】
オリゴスフェアー由来の豊富なマウスES細胞は、90%以上のオリゴデンドロサイトを産生し、T3およびプロゲステロンといったホルモン、ニューロトロフィン−3(neurotrophin-3)(NT3)や毛様体神経栄養因子CNTF(ciliary neurotrophic factor)といったサイトカインの組み合わせを含む複合培地で得られた(Liu et al. 2000)。両サイトカインは、視神経で観察されるように、オリゴデンドロサイト前駆体への効果をもたらす(Barres et al. 1994; Barres et al. 1996)。しかしながら、オリゴデンドロサイト分化におけるCNTFの効果は、O4+細胞には微弱な効果で、A2B5+前駆体(または、初期グリア芽細胞)からGFAP+アストロサイトを主に誘導する(Lillien et al. 1990; Gard et al. 1995; Johe、1996; Bonni et al. 1997)、一方、他の条件において、CNTFは、培養中のGalC+、O1+およびMBP+細胞の生存および比率を増加させている(Kahn et al. 1994; Mayer et al. 1994; Marmur et al. 1998)。
【0006】
CNTFは、LIF−R(CNTF、LIF、OSM)とのヘテロダイマーか、ホモダイマー(IL−6、IL−11)として、gp130を介して、シグナルを伝えるサイトカインインターロイキン−6(IL−6)に属する(Taga et al. 1997)。ミエリンを形成する細胞にとって、gp130シグナルの伝達の重要性について、募りつつある証拠がある。マウスにおいて、誕生後(postnatal)の遺伝子の欠損は、gp130がシュワン細胞の機能および末梢神経(peripheral nerve)の髄鞘形成、加えてアストロサイト形成(astrocytosis)に必要であるということを示している(Betz et al. 1998; Nakashima et al. 1999)。可能性のあるgp130を活性化するリガンドである、IL−6がIL−6レセプターの細胞外部分に融合したIL6R/IL6キメラの助けで(Chebath et al. 1997)、我々は、以前、胚性シュワン細胞のミエリン遺伝子の発現誘導(Haggiag et al. 1999; Haggiag et al. 2001)、およびミエリン遺伝子プロモーターの活性化(Slutsky et al. 2003)を観察した。マウス脳培養におけるトランスジェニックMBP遺伝子プロモーターは、CNTFに応答していることを観察し(Stankoff et al. 2002)、新生児のラットからの同様の皮質培養(cortical culture)において、IL6R/IL6キメラは、CNTFよりも、著しく樹状化しているGalC+オリゴデンドロサイトの発生をさせることに効果的であった(Valerio et al. 2002)。
【0007】
成体マウス脳の脳室周囲域(periventricular zone)からの神経幹細胞の注射したマウスの観察、および、ニューロスフェアーへ生長させた、予期された結果は、多発性硬化症(multiple sclerosis)の動物モデルにおいて、臨床上の回復および再髄鞘形成を誘導した(Pluchino et al. 2003)。神経幹細胞は死体(cadaver)または流産胎児(aborted fetus)から単離しなければならないために、このような技術を、多発性硬化症または他の脱髄疾患を罹患する患者に応用することは、多くの問題を提起する。ゆえに、得られる細胞の量が制限され、脳細胞が危険な病原(pathogen)を移さないということを確かめることは、困難であり、移植は免疫適合性(immuno-histocompatibility)の問題を生じさせるかもしれず、拒絶され得る。
【0008】
示したように、胚盤胞由来のES細胞株は、実験室の組織培養条件で、無限に拡大し、ニューロンを髄鞘形成(myelinate)でき、それによりCNS中の損傷を修復できる、発生しているオリゴデンドロサイトの大規模な供給源を提供できる(Cao et al. 2002; Gottlieb et al. 2002)。
【0009】
それゆえ、ES細胞株からオリゴデンドロサイトの産生を促進する方法が必要である。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、オリゴデンドロサイトを産生する方法であって、脱髄疾患(demyelinating diseases)に起因する損傷を修復するのに適しており、胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞および、一つまたはそれ以上のCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11のようなgp130アクチベーターの存在下で、生長させることからなる方法に関する。
【0011】
他の態様において、本発明は、本発明の方法で得られるオリゴデンドロサイト、および必要に応じた、患者(subject)に脱髄疾患に起因する損傷を治療するための薬剤の製造におけるその使用に関する。
【0012】
もう一つの態様において、本発明は、必要としている患者に脱髄疾患を治療するために、オリゴサイトの分化を促進するための薬剤の製造においての、胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞、およびCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11gp130アクチベーター使用に関するものである。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、gp130アクチベーターがIL6R/IL6キメラ、ミューテイン(mutein)、機能性誘導体、循環置換化した誘導体、それらの塩またはIL−6のような活性画分である
【0014】
本発明のもう一つの好ましい実施態様においては、本方法が、ニューロスフェアーのような胚性幹細胞、解離されたニューロスフェアー細胞および、さらに好ましくは胚様体を使用する。
【0015】
さらに好ましい実施態様においては、本発明のオリゴデンドロサイトは、O1+系統および/またはO4+系統および/またはO4+系統である。
【0016】
さらに具体的には、本発明の方法は、多発性硬化症(multiple sclerosis)、脳卒中(stroke)、脊髄損傷(spinal cord injury)、神経損傷(neural trauma)および軸索の脱髄化(demyelinating of axon)のような脱髄疾患によって起因する損傷を修復することに関する。
【0017】
本発明は、ES、EBおよび/およびNS細胞および、一つまたはそれ以上の、CNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11より選択されたgp130アクチベーターを含む医薬組成物を与える。
【0018】
加えて、本発明は、ES、EBおよび/またはNS細胞および、CNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11より選択されたgp130アクチベーターをコードする発現ベクターを含む医薬組成物を与える。
【0019】
本発明は、さらに、一つまたはそれ以上の、CNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11より選択されたgp130アクチベーターを産生する組換えES、EBおよび/またはNS細胞を含む医薬組成物を与える。
【0020】
さらに好ましくは、本発明の医薬組成物において、p130アクチベーターはIL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、循環置換化した誘導体、それらの塩またはIL−6のような活性画分である。
【0021】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、細胞は、例えば解離されたNS細胞である。
【0022】
本発明のもう一方の好ましい実施態様においては、医薬組成物がEB細胞を含む。
【0023】
本発明のさらにもう一方の好ましい実施態様においては、医薬組成物は、本発明の方法により得られるオリゴデンドロサイトを含む。
【0024】
さらに具体的には、本発明は、必要としている患者における脱髄疾患に起因する損傷を治療するための医薬組成物を与える。
【0025】
本発明は、細胞の培養に適した液体中に、一つまたはそれ以上のCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11より選択されたgp130アクチベーターを含み、胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞をオリゴデンドロサイトへ分化させるのに適した培養培地を与える。
【0026】
本発明の好ましい実施態様においては、gp130アクチベーターがIL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、それらの塩である。
【0027】
本発明のもう一方の好ましい実施態様においては、gp130アクチベーターがIL−6である。
【0028】
本発明のもう一方の好ましい実施態様においては、培養培地が、EBおよびNSのような胚性幹細胞をO1+系統および/またはO4+系統および/または系統のオリゴデンドロサイトへの分化を促進することに適している。
【0029】
本発明は、本発明により得られたオリゴデンドロサイトの有効量(effective amount)を投与することを含む脱髄疾患の治療をも与える。
【0030】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、本発明のオリゴデンドロサイトは、必要としている患者のCNS中へ直接的に投与される。
【0031】
本発明のオリゴデンドロサイトは、必要としている患者へ静脈(IV)注射で投与され得る。
【0032】
本発明は、必要としている患者へES、EBおよび/またはNS細胞、および、一つまたはそれ以上のCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11より選択されたgp130アクチベーターの有効量の投与を含む脱髄疾患を処置する方法をも与える。
【0033】
本発明の方法での一つの好ましい実施態様においては、gp130アクチベーターが、IL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、それらの塩である。
【0034】
本発明の方法のもう一方の実施態様においては、gp130アクチベーターがIL−6である。
【0035】
胚性細胞は、解離されたNS細胞および/またはEB細胞のようなNS細胞であり得る。
【0036】
本発明の方法の実施態様によると、gp130アクチベーターは発現ベクターにより投与される。
【0037】
gp130アクチベーターは、ES、EB、および/またはNS細胞のようなアクチベーターを産生する組換え細胞によっても投与され得る。
【0038】
本発明の方法の好ましい実施態様においては、gp130アクチベーターが、投与の前にES、EB、および/またはNS細胞のような胚性細胞とエクスビボで接触される。
【0039】
gp130アクチベーターおよび/または細胞は必要としている患者のCNS中に直接投与され得る。
【0040】
好ましくは、gp130アクチベーターおよび/または細胞は必要としている患者への静脈注射により投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞から、損傷を受けた中枢神経系(CNS)中の神経の髄鞘形成(myelination)を増大させる胚性幹(ES)、オリゴデンドロサイトを産生するためのIL6R/IL6キメラのようなgp130アクチベーターの使用に関する。
【0042】
本発明は、さらに、神経の周囲のミエリン鞘(myelin sheath)の損失に起因する神経変性疾患をもつ患者へ、後の移植および治療のために、胚性幹(ES)細胞の培養の可能性を向上する方法に関する。
【0043】
本発明は、ES,EBおよび/またはNS細胞をオリゴデンドロサイトへの分化を促進するのに適した培養培地であって、前記培養培地は1つまたはそれ以上のgp130アクチベーターおよびES、EBおよび/またはNS細胞の培養に適した液体を含む培養培地に関する。
【0044】
具体的には、本発明は、多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷および他の外傷、軸索の脱髄化のような神経変性疾患の治療に使用されることが可能である(Gledhill et al. 1973; Griffiths et al. 1983; Blight 1985; Bunge et al. 1993)。本発明の原理および実施は、図およびそれに付随した説明を参照して、よく理解され得る。
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は、本明細書中の以下の記述の説明または、実施例で例示された細部に限定されないことを理解されるべきである。本発明は、他の実施態様または、様々な方法において、実施または実行され得る。また、ここで用いられる語法および専門用語は、記述のためであり、限定とみなされるべきではないことを理解されるべきである。
【0046】
細胞治療(cellular therapy)の使用は急速に増加し、例えば、神経変性疾患のニューロン細胞の治療といった、様々な疾患の治療において、重要な治療モダリティ(therapeutic modality)に次第になってきている。マウスにおいて、マウスの脳の脳質周囲域由来の神経幹細胞および生長させたニューロスフェアーの注射が、多発性硬化症の動物モデルにおける臨床的な回復および再髄鞘形成を誘導したという、有望な結果が、近年得られた(Pluchino et al. 2003)。このような技術を、多発性硬化症または他の脱髄化疾患を罹患した人間の患者に応用することは、神経幹細胞は死体または流産胎児より単離されるので、多くの問題を提起する。ゆえに、得られる細胞の量が限られており、脳の細胞が危険な病原体を移さないこと、および移植が免疫適合性の問題を引き起こし、拒絶され得るということを確かめることは、困難であろう。
【0047】
ES細胞由来の移植の使用は、胎児または成人の脳の使用の上で多くの利点を持つ。ES細胞は、インビトロにおいて増殖の高い可能性を持ち、病原体−フリー(pathogen-free)であることが確認されることができ、免疫適合性は、ES細胞株のバンクの維持(骨髄移植のために使用される)または、クローニング(つまり、患者自身の細胞からの核の移行により産生された胚盤胞由来のES細胞を産生すること。)により、達成可能である(Lanza et al. 1994)。動物への実験上の移植は、マウスES細胞およびヒトES細胞由来のニューロスフェアーで、予期されたように達成された。この方法は、髄鞘形成するオリゴデンドロサイトのような、特異的な細胞系統に向かって、ES細胞の分化を促進する方法を持つことによって、大いに改善された。
【0048】
本発明の一つの実施態様においては、ES細胞からニューロスフェアーを調製するために使用し(ヒトES細胞に既に使用されている手順で(Zhang et al. 2001))、その後、ニューロスフェアー細胞を無血清の化学的に合成された培地(実施例1に記載)で、CHO細胞で産生された純粋な組換え型ヒトIL6R/IL6キメラ分子(200ng/ml)による治療に供した。IL6R/IL6キメラの存在下においては、ポリ−D−リジンおよびフィブロネクチン(fibronectin)上で播かれたニューロスフェアーは、その表面上のO4スルファチドグリコシドにより同定されたオリゴデンドロサイト前駆体の密な網状構造を発達させた。最新技術により行われた培養において、IL6R/IL6キメラが無いと、僅かな数および小さなオリゴデンドロサイトが発生した。ゆえに、IL6R/IL6キメラは、オリゴデンドロサイト系統に向かって、ニューロスフェアー細胞の分化を促進する特異的な効果を示した。
【0049】
もう一方の実施態様において、IL6R/IL6キメラを、ES細胞由来の解離したニューロスフェアー細胞の短期間の培養に投与した場合(実施例3)でも、オリゴデンドロサイト前駆細胞(Rip+)の分化を導くことができることが示された。前駆細胞は、完全に分化した細胞よりも、移植により適しているので、この結果は、注射により、CNSへ移動可能で、髄鞘形成に効果がある細胞のエクスビボ調製を改善するために、IL6R/IL6キメラを使用することの利点を支持している。
【0050】
IL6R/IL6キメラは、ミエリン塩基性タンパク質MBPとして構造構成物を発現し、成熟したミエリン化細胞に特徴的なミエリン膜を形成するオリゴデンドロサイトの成熟化を導くことができるということも見つかった。IL6R/IL6のこの活性は、インビボにおける成熟化を促進し、CNSの脱髄損傷の修復の効果を高めるために、移植したES、EB、および/またはNS細胞と共に、注射され得ることが示唆された。
【0051】
ES、EBおよび/またはNS細胞からオリゴデンドロサイトの産生を誘導するための薬剤の製造において、本発明は、1つまたはそれ以上のgp130アクチベーターの使用を含む。gp130アクチベーターは、ES、EBおよび/またはNS細胞の培養物にエクスビボで添加され得て、その後、それらは患者に移植される。代わりに、ES、EBおよび/またはNS移植のインビボでの分化を促進する(stimulate)ために、その細胞と一緒にする前に、またはその細胞を注射した後に、gp130アクチベーターは患者に移植され得る。好ましいgp130アクチベーターはIL−6であり、さらに好ましくは、IL6R/IL6キメラである。IL6R/IL6キメラも、ES、EB、および/またはNS細胞からオリゴデンドロサイトの初期の前駆体の産生を促進するために、利用され得る。加えて、本発明によるgp130アクチベーターは、LIF、CNTF、CT−1、OSM IL−6およびIL−11から選択される。
【0052】
本発明による、ES細胞は、多能性であり、胚性の組織、胎児の組織または他の供給源由来であるか否かに関らず、全ての3つの生殖系列の層の誘導体であるプロジェニー(progeny)を産生することができる、任意の細胞である。特に、霊長類由来の胚性幹細胞(ES)は、例えば、Thomsonらにより記載された(Thomson et al. 1998)、ヒト胚性幹(hES)細胞;レソス(Rhesus)幹細胞(Thomson et al. 1995)、マーモセット幹細胞(Thomson et al. 1996)およびヒト胚性生殖細胞(Shamblott et al. 1998)といった他の霊長類由来の胚性幹細胞の様々なタイプの細胞を含む。
【0053】
本発明による胚性幹(ES)細胞株の使用は、胚盤胞期の胚から得られる(Brustle et al. 1997; Brustle et al. 1999; McDonald et al. 1999)。一般的には、ES細胞を、典型的には胚または胎児の組織由来の繊維芽細胞である、フィーダー細胞の層上で培養する。フィーダー細胞レイヤー(feeder cell layer)を調製するために、細胞を、放射線に曝す、または増殖を阻害するがES細胞を支持する因子を合成されるように処理した。LIFまたは関連したサイトカインを、ESの多能性を維持するために、しばしば添加する。
【0054】
一連の継代を通じてこのようなES細胞からの発生を誘導し、機能的に分化したニューロンおよびグリア細胞の産生に至る培養条件は、以下の手順を含む:1−未分化ES細胞の拡大、2−原始内胚葉、原始外胚葉の層を含む胚様体の産生、3−一般的にはbFGFで、一つまたはそれ以上の増殖因子を含む合成培地中で、ニューロスフェアーを選択するために、胚様体を培養。4−浮遊中でニューロスフェアーを拡大。5−成長因子の除去すること、および/または接着性の条件で生長することで拡大したニューロスフェアーの分化の誘導。
【0055】
本発明による、細胞は、以上の5段階のいずれかの由来の細胞を含む。
【0056】
Martinら(1975)の「テトラカルシノーマ細胞のクローン系列の分化:インビトロにおける胚様体の形成」により記載された方法に従って、胚様体を浮遊培養中で産生できる(Martin et al. 1975)。
【0057】
概して言うと、胚様体を形成するために、組織培養プレートから、ES細胞の塊を剥離する。組織培養プレートから細胞を剥離する方法は、公知であり、トリプシンまたはパパイン(papain)、ジスパーゼ(dispase)または市販の調製品のような酵素の使用を含む。
【0058】
一般的に、クラスター(cluster)(例えば、10から50またはそれ以上の細胞の凝集)中の組織培養プレートから、ES細胞を剥離する。そして、個別細胞が大部分である細胞の集団を得るために、ES細胞のクラスターを解離する。細胞のクラスターを解離する方法は、同様に公知である。細胞を解離する一つの方法は、機械的に細胞を分離すること、例えばピペットで細胞培養液を、繰返し吸引することを含む。好ましくは、過剰増殖した培養液中で生じがちである自発的な分化(Spontaneous differentiation)を防ぐために、ES細胞を解離するときは、対数増殖期においてである。
【0059】
次に、解離したES細胞を、以下の記載のように、ES1培地で培養した。しかしながら、ES細胞の増殖期(組織培養ディッシュ表面で、細胞が生長する)と対照的に、胚様体は、懸濁により産生され得る。例えば、本細胞は、非接着性のバクテリア培養ディッシュで、培養され得る。この時期において、本細胞は、約4日から7日間インキュベートされる。好ましくは、培地を1日から3日置きに交換する。
【0060】
胚様体(EB)からのES細胞分化のための、多くの特異的な培養条件が、参照することによって、本明細書に記載され、組みこまれる。一つのアプローチは、無血清合成培地の選択に基づき、塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF−2)の影響下で、神経系前駆細胞を生存、および増殖させ、成長因子の除去により分化させ、そして接着性基質上で播いた(Okabe et al. 1996)。これらの条件下で、トリヨードサイロシン(T3)を添加したとき、T3が視神経由来のO2−A前駆体に効果を及ぼすように、いくつかのO4陽性のオリゴデンドロサイト前駆細胞が発生した(Barresら、1994)。
【0061】
別のアプローチでも、EB培養も達成でき、この方法はEB培地中に神経系およびグリア系の細胞系統を誘導するために、レチノイン酸のような分化試薬を用いる(Bain et al. 1995; Fraichaed et al. 1995)。
【0062】
新生児の脳由来の培養などの場合、合成培地中で浮遊状の球体(Sphere)として生長している非接着性の細胞を選択すること、およびEGF,FGFの除去後に分化するニューロスフェアーおよびオリゴデンドロサイトに富むオリゴスフェアーとして、それらを膨張させることで、神経系前駆体は、さらに富ませ得る(Reynolds et al. 1996; Zhang et al. 1998; Liu et al. 2000)。浮遊しているスフェアーとして膨張可能でロゼッタ状の神経管をEB由来のヒトES細胞株も形成し、インビボで移植され得たり、または、ニューロン、アストロサイトもしくはオリゴデンドロサイトに分化するために、ポリカチオン性の基質に播かれ得る。特に後者がPDGF−AAおよびT3処理後に発生する(Reubinoff et al. 2001; Zhang et al. 2001)。
【0063】
どの市販の成長培地、または細胞薬剤(cell formulation)も胚性幹細胞の培養に適しており(例えば、ステムセルテクノロジー(StemCell Technologies)のES−Cultm培地)、本発明に用いることができる。本発明の細胞を培養するのに適した溶液の例に限定はされないが、ダルベッコ(Dulbecco)のDMEM(好ましくは、約4.5mg/mlの高グルコース)(ギブコ/BRL(Gibco/BRL))に、約0.1mMの非必須アミノ酸、1〜5mM、または0.5g/lのグルタミン、0.5〜5mM、または0.11g/lのピルビン酸、0.01〜0.5mMまたは0.11g/lのβ−メルカプトエタノール、2〜20%の仔牛血清(FCS)そして追加的に、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、そして約40mg/mlの白血病抑制阻害因子LIF、またはDMEM高グルコース(好ましくは、約4.5mg/mlの高グルコース)、5〜20%の新生牛血清(熱非働化された)、1〜5mMまたは0.5g/lのグルタミン、および追加的に、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、またはDMEM/F12(1:1)、2〜20%のFCS、1〜5mMまたは0.5g/lのグルタミン、0.01〜0.5mMのβ−メルカプトエタノール、0.5〜5μg/mlのへパリン(heparin)および1〜10ng/mlのFGF−2、または、DMEM/F12に1〜50μg/mlのインスリン(insulin)からなる無細胞合成培地、10〜200mg/mlのトランスフェリン(transferrin)、10〜100μMのプトレッシン(putrescine)、5〜100nMまたは0.01mg/mlの亜セレン酸ナトリウム(sodium selenite)、0.5〜10μg/mlのへパリン、2〜200nMのプロゲステロン(progesteron)、および0〜100ng/mlのFGF−2、またはDMEM/F12に10μg/mlのインスリン、10〜200μl/mlのトランスフェリン、1〜50μg/mlのプトレッシン、0〜50ng/mlの亜セレン酸、1〜20ng/mlのプロゲステロン、および追加的に50μg/mlのアスコルビン酸(ビタミンC)からなる。
【0064】
本発明の一つの実施態様として、ES細胞株R11を、LIFを含むES培地(実施例1参照)中のフィーダー細胞上に3日間培養する。細胞をトリプシンと共に前培養し、播種し、およびLIFを欠きFGFを含むES1培地(実施例1参照)2日間培養する。胚態様を誘導するために、細胞を、ジスパーゼでフィーダー細胞から引き剥がし、FGFなしのES1培地で4日間培養する。塊(胚態様、EB)を取り出し、FGFを追加した無血清で化学的に合成されたEB培地(実施例1参照)に8〜10日間培養した。産生したニューロスフェアーを取り出し、FGFを追加したEB培地中で7日間、懸濁中で、球体が生長する非接着性のバクテリア培養ディッシュに移した。この工程の後に、ニューロスフェアー(NS)を合成分化培地を用いた接着状態で生長させるために、フィブロネクチンでコートしたプレートに移した。
【0065】
記載されているように、同様の手順が、ヒトES細胞使って、EBおよび/またはNS細胞を得るために用いられ得る(Reubinoff et al. 2001; Zhang et al. 2001)。
【0066】
本発明によれば、オリゴデンドロサイト前駆体の形成を促進するためにES,EBおよび/もしくはNS細胞の培養にgp130アクチベーターを加える。本発明によれば、ES、EBおよび/もしくはNS細胞単独または他の成長もしくは分化試薬のレチノイン酸、EGF、PDGF等と共にオリゴデンドロサイトの分化を促進するため、脱髄疾患に罹患している患者にES、EBおよび/またはNS細胞とgp130アクチベーターを投与する。
【0067】
ES細胞も商業上入手可能であり、本発明の態様により使用される得ることが、好ましい。ヒトES細胞は、例えばNIHヒト胚性幹細胞登録(NIH human embryonic stem cells registry)(<http://escr.nih.gov>)から購入され得る。
【0068】
本発明によれば、gp130アクチベーターをもつ細胞を、CNSに直接移植すること、または、例えば静脈内に(IV)、注射することができ、そしてCNSへの移動させることができる。
【0069】
本発明による好ましいgp130アクチベーターはIL−6であり、そして最も好ましくはIL6R/IL6キメラであり、それは細胞表面に単独でgp130を有し、他のIL−6サイトカインファミリーのレセプターを欠く細胞にでさえ活性がある。
【0070】
本明細書中で用いた「IL6R/IL6キメラ」(「IL6R/IL6」または「IL−6キメラ」とも言う)は、インターロイキン−6の全て、または生物学的活性のある画分を融合したインターロイキン−6レセプターの可溶性部分からなるキメラ分子である。キメラタンパク質の部分構造(moiety)は直接融合され得て、またはジスルフィド架橋またはポリペプチドリンカーのような適当なリンカーで結合され得る。リンカーは短いペプチドリンカーであり、長さで1から3アミノ酸残基位の短さ、またはより長く、例えば、長さで13または18アミノ酸残基であり得る。例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチド、またはGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Met(配列番号1)からなる13アミノ酸リンカー配列であり得る該リンカーは、可溶性IL−6レセプターとIL−6のアミノ酸配列間に導入した。IL6R/IL6キメラ分子の実施例は、当業者に公知であり、例えば、国際公開99/02552号パンフレットまたは国際公開97/32891号パンフレットに詳細に記載されている。
【0071】
IL6R/IL6キメラは、酵母細胞、昆虫細胞、バクテリアなどの任意の適当な真核または原核細胞で産生され得る。好ましくは哺乳類細胞で産生され、最も好ましくは国際公開99/02552号パンフレットに記載された遺伝学的に改変したCHO細胞である。ヒト起源のタンパク質が好ましいが、本明細書中に記載の生物学的活性を保持している限り、他の起源の同様な融合タンパク質も、本発明により使用され得ると当業者により理解されるだろう。
【0072】
脳へのIL6R/IL6キメラの送達も、コーディング配列からなるベクターまたはIL6R/IL6キメラ、ミューテイン、融合タンパク質、活性画分(Active fraction)もしくは循環置換化したその誘導体を用いて実施され得る。ベクターは、ヒトの体内で、より好ましくは脳内で、最も好ましくは線条体(striatum)内で、望んだタンパク質の発現に必要である全ての制御配列を含む。発現ベクターの制御領域は当業者に公知である。そこで、本発明はCNS損傷の治療の薬剤の製造のために、IL6R/IL6キメラのコード配列からなるベクターの使用にも関する。
【0073】
当業者に公知のいかなるベクターも、本発明により使用され得る。しかしながら、レンチウイルス由来のベクターは線条体に直接的に、IL6R/IL6キメラを送達するのに、特に有用であろう。このようなレンチウイルスベクターは、当業者に公知である。これらは、具体的に、例えば(Kordower et al. 1999; Deglon et al. 2000; Bensadoun et al. 2001)に記載されている。
【0074】
もう一つの方法として、gp130アクチベーターが発現し、そして随意に存在している細胞(例えば、不溶性の膜に結合したgp130アクチベーター)に本発明のES細胞を接触され得る。これは、分泌または膜結合のgp130アクチベーターを発現する細胞と共に本発明の幹細胞を共培養(co-culture)することで、効果を奏すことができる。例えば、未分化状態での幹細胞の増殖をサポートするために、幹細胞としばしば共培養される繊維芽細胞フィーダー細胞は、目的のgp130アクチベーターを発現可能であるので、その結果として二重の役割、つまり、生長のサポートおよびオリゴデンドロサイトへのES分化を担う。
【0075】
一方では、本発明のES細胞は、ES細胞中にgp130アクチベーターまたはその活性部分を発現させるために、以下の記載のような発現構築体で形質転換されることが可能である。
【0076】
このような場合、発現構築体は、哺乳類細胞で活性のあるシス作動制御因子を含む(以下の例)。本発明の核酸構築体は、さらに、エンハンサーを含み、それはプロモーター配列に近位または遠位にあり、そこから転写をアップレギュレートの機能をし得る。
【0077】
言及したように、好ましいgp130は、IL6R/IL6キメラ、またはミューテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、またはそれらの塩であり、CNS損傷治療のためのES細胞由来オリゴデンドロサイトの産生の投薬の製造のために、使用されることが可能である。
【0078】
本明細書で使用される「治療」という用語は、脱髄した神経変性疾患の、いくつかの、または全ての症状または、原因を、予防、阻害、減弱、改善、または無効にすることと理解されるべきである。
【0079】
本明細書中で使用される「ミューテイン」という用語は、IL6R/IL6の類似体を言及し、元のIL6R/IL6キメラと比較し、得られた生成物の活性を著しく変化することなく、自然に生じたIL6R/IL6キメラの構成物中の1つ、もしくはそれ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基に置換、または欠失、または、IL6R/IL6キメラの元の配列に、1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基が付加されることを言及している。
【0080】
本発明におけるミューテインは、DNAまたはRNAのような核酸によりコードされているタンパク質を含み、本発明において、ストリンジェントな条件下で、これらは、IL6R/IL6キメラをコードしているDNAまたはRNAとハイブリダイズする。「ストリンジェントな条件(stringent condition)」という用語は、ハイブリダイゼーション、およびその後の洗浄条件を言及し、通常の当業者は、一般的に「ストリンジェント」と言及している。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supra, Interscience, N.Y.,§§6.3 (1989,1992) および Sambrook et al. (Sambrook, J. C., Fritsch, E. F. および Maniatis, T.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照。
【0081】
限定はしないが、ストリンジェントな条件の例として、洗浄条件は検討したハイブリッドの計算上のTmの12〜20℃低く、例えば2×SSCおよび0.5%のSDSで5分、2×SSCおよび0.1%のSDSで15分、37℃で0.1×SSCおよび0.5%のSDS、30〜60分、その後、68℃で、0.1×SSCおよび0.5%のSDS、30〜60分である。通常の当業者は、ストリンジェントな条件もDNA配列の長さとオリゴヌクレオチドプローブ(10〜40塩基のような)または混合オリゴヌクレオチドプローブ(Mixed oligonucleotide probe)に依存することは理解され得る。混合オリゴヌクレオチドプローブを使用する場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。アウスベル スプラ(Ausubel, supra)参照のこと。
【0082】
いかなるこのようなミューテインは、好ましくは、本質的に類似しているような、またはより良い活性をIL6R/IL6に持たせるような、IL6R/IL6キメラの配列を十分に複製できるアミノ酸配列を持つ。
【0083】
IL6R/IL6キメラの一つの特徴的な活性は、gp130に結合する能力である。gp130へのIL6R/IL6キメラ結合を測定するELISA型のアッセイは、国際公開99/02552号パンフレットの39頁の実施例7に詳細に記載されており、本明細書中の参照によりすべて組み込まれた。ミューテインがgp130に対する本質的な結合活性を有する限り、IL6R/IL6キメラに対して本質的に同様な活性を有するとみなすことができる。国際公開99/02552号パンフレットの実施例7で記載されているように、固定化したgp130に結合するか、否かを決定するために、例えば、シンプルなサンドイッチ結合アッセイに変異タンパク質を供することからなる通常の実験より、このような任意の与えられた変異タンパク質が、少なくとも本質的にIL6R/IL6と同じような活性を持つか、否かを決定することができる。
【0084】
好ましい実施態様として、このような任意のミューテインは、国際公開99/0252号パンフレットで構成されているIL6R/IL6のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性(identity)、または相同性(homology)を有する。さらに好ましくは、それが少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%で、最も好ましくは、90%の同一性または相同性を有する。
【0085】
同一性は、配列を比較することで決定した2つまたはそれ以上のアミノ酸配列もしくは2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映している。一般的に、同一性は、比較された配列の長さの上で、それぞれ2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の正確なヌクレオチドとヌクレオチド、またはアミノ酸とアミノ酸の一致を言及している。
【0086】
正確な一致の無い配列では、「パーセント同一性(percent identity)」で決定されるだろう。一般的に、比較される2つの配列は、配列間で最大の相関関係が与えられるように並べられる。このことは、アラインメント(Alignment)の程度を高めるために、一つまたは両方の配列に「ギャップ(gap)」が挿入されることも含まれるだろう。パーセント同一性は、比較されるそれぞれの配列の全長(いわゆるグローバルアラインメント(global alignment))から決定され、同じまたは似ている配列に特に適しており、または短い、限定された長さ(いわゆるローカルアラインメント(local alignment))、から決定され、同じではない長さの配列により適している。
【0087】
2つまたはそれ以上の配列の同一性および相同性を比較する方法は、当業者に公知の方法である。このような例として、ウィスコンシン シークエンス アナリシス パッケージ バージョン9.1(Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1)(Devereux J et al. 1984, Nucleic Acids Res.1984 Jan 11;12(1 Pt 1):387-95)のプログラムが利用でき、例えば、プログラム ベストフィット(program BESTFIT)およびギャップ(GAP)は、2つのポリヌクレオチド間のパーセント同一性と2つのポリペプチド間のパーセント同一性および%相同性を決定するのに使用され得る。BSTFITはスミス ウォーターマン(Smith and Waterman)の「ローカルホモロジー(local homology)」アルゴリズムを用い(J Theor Biol.1981 Jul 21;91(2):379-80およびJ Mol Biol.1981 Mar 25;147(1):195-7.1981)、2つの配列間の最も類似性の単一な領域を見つけ出す。配列間の同一性および/または類似性を決定する他のプログラムは、当業者にも公知であり、例として、プログラムのブラスト(BLAST)ファミリー(Altschul S F et al. 1990 Oct 5;215(3):403-10, Proc Natl Acad Sci U S A.1990 Jul;87(14):5509-13,Altschul S F et al. Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-402、www.ncbi.nlm.nih.govでのNCBIのホームページからアクセス可能である)およびFASTA(Pearson W R, Methods Enzymol.1990;183:63-98.Pearson J Mol Biol.1998 Feb 13;276(1):71-84)がある。
【0088】
本発明により使用されるIL6R/IL6キメラのミューテインまたは核酸がコードするものは、本明細書で開示する教示および指導に基づき、過度の実験行うことなく、本技術の通常の技能により普通に得ることができる置換ペプチドまたはポリヌクレオチドとして、本質的に一致している配列の限定された集合を含む。
【0089】
本発明によるミューテインの好ましい変化は、「保存的な(conservative)」置換として知られていることである。IL6R/IL6キメラの保存アミノ酸置換は、十分に類似している物理化学的特性を有するグループ内での同義アミノ酸(synonymous amino acid)を含み、このグループ間の置換は分子の生物学的機能を保持している(Grantham Science.1974 Sep 6;185(4154):862-4)。特に挿入および欠失が数アミノ酸、例えば30以下、好ましくは10以下ならば、かつ、例えばシステイン残基といった機能的な立体構造に重要なアミノ酸の除去または置換はしないならば、上記に定義した配列でのアミノ酸の挿入(insertion)および欠失(deletion)も機能を変えることなく作製されるだろうことは明らかであろう。タンパク質、ならびに、欠失および/または挿入により作出したミューテインは、本発明の範囲内に存在する。
【0090】
好ましくは、同義アミノ酸が表1で限定したものである。さらに好ましくは、同義アミノ酸が表2で限定したものである。最も好ましくは、表3で限定したものである。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
IL6R/IL6キメラポリペプチドの変異タンパク質を得るため、本発明で使用するために用いられるタンパク質中のアミノ酸置換生産物の実施例は、Markらによる米国特許第4,959,314号明細書、同第4,588,585号明細書および同第4,737,462号明細書 ; Kothsらによる同第5,116,943号明細書、Namenらによる同第4,965,195号明細書 ;Chongらによる 同第4,879,111号明細書;Leeらによる同第5,017,691号明細書およびShawらによる米国特許第4,904,584号明細書中のリシン置換型タンパク質で公開されている、あらゆる周知の方法も含む(Shaw et al.)。
【0095】
本明細書で使用される「機能性誘導体」は、IL6R/IL6キメラの誘導体およびその変異タンパク質が範囲とされ、当業者に公知の方法により残基上の側鎖に生じる官能基、またはN−、C−末端基へ付加された官能基より調製され得て、それらが薬学上受容しうる限り、つまり、IL6R/IL6キメラの活性と本質的に類似しているタンパク質の活性を破壊せず、それを含む構成物に毒性(toxic property)が与えられることがない限り、本発明に含まれる。
【0096】
例えば、これらの誘導体はポリエチレングリコール側鎖がふくまれ、抗原部位をマスク化し、体液中でのIL6R/IL6キメラの留居を延長し得る。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは1級アミン、2級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル(acyl)部分と形成するアミノ酸残基のフリーな(free)アミノ基のN−アシル誘導体(例として、アルカロイル(alkanoyl)基、カルボキシルアロイル(carboxylic aroyl)基)、またはアシル部分を形成するフリーなハイドロキシル基(例として、セリン残基またはトレオニン残基の)のO−アシル誘導体を含む。
【0097】
本発明による「活性画分」とは、例えばIL6R/IL6キメラの断片であり得る。断片という用語は、分子の任意の一部分を、つまり目的とする生物学的活性を保持しているより小さなペプチドを言及する。断片は、IL6R/IL6キメラ分子の一方の末端を削除、および得られた断片にgp130への結合特性の試験をすることで、容易に調製し得る。ポリペプチドのN末端またはC末端から同時に、一つのアミノ酸を削除するプロテアーゼは公知であるので、目的とする生物学的活性を保持する断片の決定は、単に通常の実験に属する。
【0098】
IL6R/IL6キメラ、そのミューテイン、融合タンパク質の活性画分と同じく、本発明はさらに、タンパク質分子のポリペプチド鎖の任意の断片または前駆体単独、関連分子、または、例えば、糖またはリン酸残基を含む関連分子または残基に結合したタンパク質、またはタンパク質分子または糖残基それら自体の凝集体までが範囲とされ、前記画分はgp130に本質的と同様な活性を与える。
【0099】
本明細書における用語「塩(salt)」は、IL6R/IL6キメラ分子のカルボキシル基の塩とアミノ基の酸付加(acid addition)塩、またはその類似体を言及している。カルボキシル基の塩は、当業者に公知の方法で形成され得て、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄または亜鉛塩等との無機塩を含み、例えば、トリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカイン等のようなアミンで形成されたそれらの有機塩基(organic base)との塩も含む。酸付加塩は、例えば、塩酸または硫酸のような鉱酸との塩および、例えば酢酸またはオキザロ酢酸のような有機酸との塩を含む。無論、任意のこのような塩はIL6R/IL6キメラの生物学的活性、つまりgp130への結合能を保持していなければならない。
【0100】
本明細書中で用いた用語「循環置換化(circularly permuted)」とは、環状分子(circular molecule)を作出するために、末端が直接またはリンカーを通じて、互いに結合した末端を持つ直線分子を言及し、そして環状分子は、元の分子の末端と異なる末端を持つ新しいリンカー分子を作出するために他方の部位が開かれる。循環置換体(circular permutation)は、構造が環状化され、また開環化する分子に相当する分子を含む。このように、循環置換化した分子は、直線分子としてデノボ(de novo)で合成され得て、環状化および開環化する工程を経ない。分子の特定の循環置換化は、ペプチド結合が切断したアミノ酸残基間に含まれるブラケット(bracket)により指定される。循環置換化分子は、DNA、RNAおよびタンパク質を含み得て、単鎖の分子であって、しばしばリンカーで通常の末端を融合させ、他方の部位に新しい末端を含む。Goldenberg et al. J. Mol. Biol, 165:407-413(1983)およびPam et al. Gene 125:111-114(1993) を参照し、両文献はここに参照することによって組み込まれる。この循環置換体は、直線鎖分子を用いて、環状分子を形成するために末端を融合し、そして異なる末端を持つ新しい直線鎖分子を形成するために異なる部位で環状分子を切断することであり、機能的に同等である。そこで循環置換は、タンパク質のアミノ酸配列と同一性を保持し、一方で異なった部位に新しい末端を生ずるものである。
【0101】
本発明の好ましい実施態様は、IL6R/IL6キメラは、一つまたはそれ以上の部位に糖鎖化されている(glycosylate)ことである。IL6R/IL6キメラの糖鎖付加体(glycosylated form)は、国際公開99/02552号パンフレット(PCT/IL98/00321)に記載されており、本発明によると、非常に好ましいキメラ分子である。本明細書中のIL6R/IL6キメラは、組換え型の糖タンパク質(glycoprotein)であり、両方ともヒト起源である可溶型IL−6レセプターδ−Val(Novick et al. 1990)に天然で起こる全コード配列に、天然に起こる成熟IL−6に起こる全コード配列に融合することで得られる。
【0102】
IL6R/IL6キメラは、酵母細胞、昆虫細胞、バクテリア等のような、任意の適当な真核細胞または原核細胞中で産生され得る。好ましくは哺乳類細胞で、最も好ましくは国際公開99/02552号パンフレット記載の遺伝子改変したCHO細胞である。ヒト由来のタンパク質が好ましいが、本明細書で記載された生物学的活性を保持しているかぎり、本発明により、他の由来の類似した融合タンパク質が使用され得ることは当業者に理解されるであろう。
【0103】
好都合なことに、本キメラ分子はバクテリア細胞中で産生され、そこでは糖残基を合成できないが、通常では産生した組換えタンパク質の高産生量を持つ。
【0104】
IL6R/IL6キメラの機能性誘導体は、安定性(stability)、半減期(half-time)、バイオアベイアビリティー(bioavailability)、人体による耐性(tolerance)または免疫反応性(immunogenicity)のような、タンパク質の特性を改善するために、ポリマーを共役され得る。
【0105】
それゆえ、本発明の好ましい実施態様は、一つまたはそれ以上の機能的な官能基に結合した少なくとも一つの構造からなるIL6R/IL6の機能性誘導体で、アミノ酸残基の一つまたはそれ以上の側鎖に生じるIL6R/IL6の機能性誘導体に関する。
【0106】
非常に好ましい実施態様は、ポリエチレングリコール(polyethlyenglycol)(PEG)に結合したIL6R/IL6キメラに関する。PEG化(PEGylation)は、例として、国際公開92/13095号パンフレットに記載の方法のような、公知な方法で実施され得る。
【0107】
それゆえ、本発明は、CNS損傷の治療の薬剤の製造のために、ES細胞の使用およびIL6R/IL6キメラ、ミューテイン、融合タンパク質、活性画分、またはその循環置換化誘導体の使用に関する。本細胞は、任意の適切な投与で行われるだろう。しかしながら、ポリマーカプセルに入れられた細胞(polymer-encapsulated cell)は、本細胞の送達の非常に好ましい形態である。カプセル化(encapsulation)の手順は、Emerich et al.(J Comp Neurol.1994 Nov 1;349(1):148-64およびExp Neurol.1994 Nov;130(1):141-50)または、米国特許第5,853,385明細書に記載されている。適切な細胞株および安定な発現系も、技術的に公知である。
【0108】
脳へのIL6R/IL6の送達も、IL6R/IL6キメラ、そのミューテイン、融合タンパク質、活性画分または循環置換体したコード配列をもつベクターを用いて実施されるであろう。本ベクターは、体内で、好ましくは脳で、さらに好ましくは線条体で、目的とするタンパク質の発現に必要な制御配列を有する。発現ベクターの制御配列は、当業者に公知である。このように、本発明は脱髄疾患の処置の薬剤の製造のためのIL6R/IL6キメラのコード配列を有するベクターの使用にも関する。
【0109】
技術的に公知である任意のベクターが、本発明により使用され得る。しかしながら、レンチウイルス由来のベクター(lentivirally-derived vector)は、特にIL6R/IL6キメラの直接的な線条体への送達に有用である。このようなレンチウイルスベクター(lentiviral vector)は、技術的に公知である。それらは、具体的に、例えば、Kordowerら(1999)またはDelgonら(2000)に記載されている。
【0110】
CNS損傷の治療のために、IL6R/IL6、そのミューテイン、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、または循環置換化した誘導体、またはそれらの塩、追加的に、一つまたはそれ以上の薬学上許容可能なキャリアー、希釈剤または添加剤(excipient)からなる医薬組成物を供することが、本発明のさらなる目的である。使用されたIL6R/IL6キメラは、真核生物由来(糖化)かバクテリア由来(非糖化)かであり得る。
【0111】
本発明は、さらに、CNS損傷の治療のための、IL6R/IL6キメラからなる医薬組成物に関し、随意的に一つまたはそれ以上の薬学上許容可能なキャリアー、希釈剤または添加剤と共に、発現ベクター、特にIL6R/IL6キメラを発現するレンチウイルス遺伝子治療(lentiviral gene therapy)のベクターからなる医薬組成物で、さらにIL6R/IL6キメラ(タンパク質またはベクター)、ES細胞からなる医薬組成物に関する。
【0112】
本発明による医薬組成物はgp130アクチベーターの混合物からなり得る。
【0113】
「薬学上許容可能」の定義は、活性のある成分の生物学的活性の効果を妨害しないで、投与された宿主に対し毒性がない任意のキャリアーをも含まれることを意味する。例えば、非経口投与(parenteral administration)では、食塩水、デキストロース液、血清アルブミンおよびリンガー液のような賦形剤(vehicle)の注射には単位服用量内で調合され得る。
【0114】
IL6R/IL6キメラは、必要としている患者に様々な方法で投与されることが可能である。投与経路(route of administration)は、頭蓋内(intracranical)、皮下(intradermal)、経皮性(transdermal)(例えば、製剤の遅い放出)、筋肉内(intramusclar)、腹膜内(intraperitoneal)、静脈内(intravwnous)、皮下(subcutaneous)、経口(oral)、硬膜外(epidural)、局部(topical)および鼻腔内(intranasal)の経路を含む。例えば、上皮(epithelial)または内皮(endothelial)組織を通じての吸収、または、IL6R/IL6キメラをコードするDNA分子を患者に投与し(例えば、ベクターで)、インビボでIL6R/IL6に発現および分泌を起こさせる遺伝子治療により他の治療に効果的な投与経路も使用されることが可能である。さらに、IL6R/IL6キメラは、薬学上許容可能な界面活性剤、添加剤、キャリアー、希釈液および賦形剤のような生物学的に活性をもつ薬剤の他の組成物とも、投与されることが可能である。
【0115】
非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)投与では、薬学上許容可能な非経口賦形剤(例えば、水、食塩水、デキストロース液)および等張性(isotonicity)(例えば、マンニトール)または化学的安定性(例えば、保存剤および緩衝液)を維持する添加剤と共に、IL6R/IL6キメラは、溶液、懸濁液、エマルジョン(emulsion)または、凍結乾燥粉末(lyophilized powder)として、調合されることが可能である。本製剤は一般的に使用された技術で滅菌される。
【0116】
脱髄疾患を処置する方法であって、随意的に薬学上許容可能なキャリアーと共にIL6R/IL6キメラ、IL6R/IL6、ミューテイン、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、または循環置換化した誘導体またはそれらの塩の有効量および、ES,EB,NSおよび/または派生細胞(derived cell)の有効量を、必要としている患者に投与することからなる方法を供することがさらなる本発明の目的である。
【0117】
「有効量」は、上記記載した本疾患の経過(course)および重症度(severity)に効果を及ぼすのに十分な活性成分(active ingredient)の量を言及し、このような病理の軽減(reduction)または鎮静(remission)を導く。有効量は、投与経路および患者の状態に依存する。
【0118】
単一または複数の服用として、個体に投与される服用量は、IL6R/IL6キメラの薬物動態的特性(pharmacokinetic properties)、投与経路、患者の状態および特徴(性、年齢、体重、健康、サイズ)、症状の程度、併用療法(concurrent treatment)、治療の頻度(frequency of treatment)、目的とする効果を含めた多様な要因に依存し、変わるであろう。確立した投与量の範囲の調整および操作は、当業者の能力内で十分である。
【0119】
脱髄疾患の治療の方法は、必要としている患者に、IL6R/IL6キメラ、ミューテイン、融合タンパク質、活性画分または循環置換型の誘導体の有効量を投与すること、または、必要としている患者にIL6R/IL6キメラ、ミューテイン、融合タンパク質、活性画分または循環置換型の誘導体をコードする発現ベクターおよびES細胞を投与することからなる。
【0120】
脱髄疾患に起因した損傷を修復するために、患者に移植するために分化したオリゴデンドロサイトの調製方法を供することが、本発明のさらなる目的である。この場合、IL6R/IL6キメラは、ES細胞からオリゴデンドロサイトの発生を促進するためにエクスビボで使用される。この促進はインビトロでの培養からのオリゴデンドロサイト細胞の生産量を大いに改善でき、以後の移植のためのこれらの組織の使用を容易にする。
【0121】
本発明は、以下に限定なしでの実施例および添付の図面に、より詳細に記載されている。
【実施例】
【0122】
実施例1:IL6R/IL6キメラはO4スルファチドを発現するオリゴデンドロサイト前駆体の分化を促進する。
【0123】
0.1mMの非必須アミノ酸、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMのβ−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、15%の仔牛血清(FCS)および40mg/mlの白血病抑制因子LIFとダルベッコDMEM高グルコース(4.5mg/ml)からなる5mlのES培地(ギブコ/BRL)で、γ線照射(γ-irradiated)した胚性繊維芽細胞(以下参照)のフィーダーレイヤー(feeder layer)の上に、マウスES細胞株Rosa11(R11)を、10.7×106細胞/6cmディッシュで播種し、3日間培養した。すべての培養は、37℃、6.5%のCO2で、培地を毎日取り換えて行った。フィーダー細胞は15.5日齢のマウス胚のトリプシン処理(trypsinisation)で得て、10%の新生児仔牛血清(56℃、0.5時間で熱非働化)、2mMのグルタミン、50U/のペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシンのDMEM高グルコース(4.5mg/ml)10ml中の5×106細胞/10cmプレートで培養し、トリプシン処理および10.5分間、3000radのコバルト源からのγ線照射下で、5mlの同じ培地で懸濁させ、そして0.3×106細胞/6cmディッシュに播いた。
【0124】
3日後、R11 ES細胞を0.05%のトリプシンで継代培養し、DMEM/F12(1:1)、15%のFCS、1%のグルタミン、0.1mMのβ−メルカプトエタノール、0.2μg/mlのへパリン、4ng/mlのFGF−2からなるES1培地で、上記のように播種した。2日後、0.2g/mlのジスパーゼ(ギブコ/RBL)37℃、15分で処理し、剥離した細胞のクラスターを洗浄し、FGF無しのES1培地10mlで、3つの組織培養(ヌンクロン(Nunclon))9cmプレートにて培養し、4日間胚態様を発生させた。その後、これらを0.1mg/mlのジスパーゼ(37℃、10分)で処理し、取り除いたEBを取り出し、DMEM/F12に25μg/mlのインスリン、100μg/mlのトランスフェリン、60μMのプトレッシン、30nMの亜セレン酸ナトリウム、2μg/mlのヘパリン、20nMのプロゲステロンおよび20ng/mlのFGF−2からなる無血清EB培地で、新しいプレート(約50/25cm2)に移し8〜10日、毎日培地を取り替えて培養した。再び、0.1mg/mlのジスパーゼ(37℃、10分)で、培養を部分的に解離させ、〜200球状の塊(軸索の伸長によりニューロスフェアー、NSと同定)を取り出し、7日間、球体を懸濁中で生長させた非接着性バクテリア培養ペトリディッシュ(同様のEB培地10mlの9cm)に移した。
【0125】
ニューロスフェアーは、20μg/mlのポリ−D−リジン(シグマ、セントルイス、ミズーリ州)の溶液でコートした、個々のガラスカバースリップ(glass coverslip)に載せ、5%のCO2中で、37℃、一晩、接触させ、水中で洗浄し、250μg/mlのフィブロネクチンを、4℃、2〜12時間で、添加する前に乾燥させた。約4つのニューロスフェアーを、それぞれコートしたカバースリップに置き、DMEM/F12と5μg/mlのインスリン、100μg/mlのトランスフェリン、16.1μg/mlのプトレッシン、5.2ng/mlの亜セレン酸および6.3ng/mlのプロゲステロン(1%のN2添加物として供した。ギブコ)からなる合成した分化培地1mlの12−ウェルプレートの各ウェルの底に入れた。ウェルの半分は、純粋なIL6R/IL6Rキメラを、200ng/ml(各ウェルに添加したストックの量)((Chebath et al. 1997)に記載されているように、CHO細胞で産生)を添加した。培地とすべてのその成分は3日置きに取り換え、3週間後50μg/mlのアスコルビン酸(ビタミンC)を培地に添加し、培養を続けた。ニューロスフェアーを播いて、6週間後、4%のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で固定し、4℃、PBS中で保存した。免疫染色の前に、プレートを、22℃、30分間、PBS中の5%のFCSでブロックした。未成熟オリゴデンドロサイトの染色は、抗スルファチドO4モノクローナル抗体(ケミコン、テメクーラ、カリフォルニア州(Chemicon, Temecula, CA);37℃、60分間で、1:75)およびFITC共役型抗IGMポリクローナル抗体(37℃、60分間で、1:50)で行った。モノクローナル抗体TuJ−1抗チューブリン(tublin)βIII(コバンス リサーチ プロダクト、バークレー、カリフォルニア州(CA)、1:400に希釈)軸索網状構造(axonal network)を染色するのに用いた。アストロサイトは、蛍光標識Cy3(シグマ、セントルイス、ミズーリ州、1:400)を共役させたモノクローナル抗グリア繊維性酸性タンパク質(glial fibrillary acid protein)(GFAP)で染色した。5分間、3回、PBSで洗浄した後、2次抗体である、FITC−またはCy3−共役型のヤギ抗マウスIgGまたはIgM(ジャックソン イミュノーリサーチ ラボ インク(Jackson ImmunoReaserch lab, Inc.)、PBS中で1:400)を添加し、5分間、3回のPBSで洗浄およびモヴィオール(Mowiol)(カルビオケム、ラジョラ、カリフォルニア州(Calbiochem, LaJolla, CA))を乗せる前に、室温、1時間、放置した。UV光蛍光(UV-light fluorescence)下で、顕微鏡オリンパスIX−70 FLA(Olympus IX-70 FLA)で確認した。DVCデジタルカメラ搭載の顕微鏡で写真を撮影し、フォトショップ(Photoshop)で加工した。
【0126】
以上の手順を用いて、ニューロスフェアーの細胞分化におけるIL6R/IL6キメラの効果を研究した。要するに、マウスR11 ES細胞を、血清およびFGF−2を含む培地中で照射した胚性フィブロブラストのフィーダーレイヤー上で継代培養し、フィーダーレイヤーから剥がして、FGF−2の無い組織培養ディッシュ中で4日間培養し、そして得られたEBを解離して、8日間、20ng/mlのFGF−2がある合成された無血清培地で再度プレートに播いた。記載されているように(Zhang et al. 2001)、神経管様構造体(neural tube-like structure)に象徴されるロゼッタ型(rosette-type)の塊が出現し、同じ培地で非接着性プレート上に浮遊培養に移すために、ジスパーゼでの部分消化により取り除いた。1週間以内に、この塊を取り出し、グリア細胞の発生に適した基質であるポリ−D−リジンおよびフィブロネクチンでコートされたガラスカバースリップ上に接着させた(Reubinoff et al. 2001)。数多くの神経突起がその球体から外側に伸長し、βIII−チューブリンで免疫染色されることで視覚化される軸索束が形成される。3週間目に、軸索ネットワークは単独あるいはIL6R/IL6キメラを伴ってプレートに播かれたニューロスフェアーの伸長を比較した(図示されていない)。アストロサイトは、GFAPで染色され、コントロール培養における神経束間に存在しているが、IL6R/IL6キメラを処理した培地においては、絶えず、より多くかつ長かった(図示されていない)。
【0127】
プロオリゴデンドロサイト(pro-oligodendrocyte)または未成熟なオリゴデンドロサイトが、抗スルファチドO4抗体で染色することで視覚化された際、さらに著しい差異が観察された。6週間で、コントロール培地は、ニューロスフェアーから伸長している細胞の下にある層の間で、多くの多極化O4+細胞の拡散が見られた(図1、左上のパネル)。対照的に、IL6R/IL6キメラ共に培養には、ある伸長領域における細胞の大部分を形成し、肥大化した神経線維をとりまく、より多くの樹状化を伴ったO4+細胞の密な網状構造を含んでいた(図1 右上のパネル)。個々を観察すると、IL6R/IL6キメラを処理した培養におけるO4が染色されるオリゴデンドロサイトは、コントロール培養における場合よりも、ずっと大きいサイズに生長していることが見られた。
【0128】
実施例2:IL6R/IL6キメラは、髄鞘形成段階へオリゴデンドロサイトの成熟化を促進する
【0129】
ニューロスフェアーから外側へ伸張している細胞を、ミエリン塩基性タンパク質MBPに対するモノクローナル抗体(MAB 386、ケミコン(Chemicon))で染色したこと以外は、実施例1と同様な手順を、使用した。MBP、構造をつくるミエリンタンパク質の蓄積は、IL6R/IL6キメラで処理した培養オリゴデンドロサイトの網状構造において、明確に観察されたが、同様のコントロール培養には観察されなかった(図 下のパネル)。それゆえ、gp130アクチベーターは、ES細胞由来のオリゴデンドロサイトの数と密度だけでなく、髄鞘形成の表現型への成熟も増加した。この成熟化は、髄鞘形成しているオリゴデンドロサイトに特徴を持つ扁平なミエリン様膜の鞘の発生により、IL6R/IL6キメラを処理した培養で、さらに示された。これは、未処理の培養では見られなかった。
【0130】
オリゴデンドロサイトの成熟化は、未成熟細胞でみられるO4スルファチドに代わって、O1スルファチドグリコシドの出現で、特徴付けられる(Schachner et al. 1981)。拡大した樹状を持つ大きなO1+オリゴデンドロサイトIL6R/IL6を処理した培養において見られ、一方、同様のコントロール培地おいては、わずかにだけ見られ、小さな細胞が見られた。IL6RIL6は、成熟化したO1+オリゴデンドロサイトの発生を促進させ、そのサイズは、コントロール培養と比較して、著しく大きくなっていた(図示されていない)。他の実験では、我々は、最初の7日間にIL6RIL6の存在で、6週間の培養の終わりに、O1+細胞の増加を生じるのに十分であることも分かった。さらに、IL6RIL6の促進効果は、トリ−ヨードサイロニンおよびチロキシンを付け加えた培地と同様であり(それぞれ0.4ng/ml;図示されていない)、IL6RIL6の効果は、これらのホルモンの添加した効果であったことを示している。
【0131】
ミエリン膜の形態的な発生に一致して、単に弱く標識され、小さなサイズの細胞が見られたコントロール培地よりも、6週間のIL6R/IL6処理した培地(図示されていない)のオリゴデンドロサイトの網状構造における方が、ミエリンタンパク質であるMBPの免疫染色は、ずっと高かった。IL6R/IL6によるMBP+細胞の促進は、既に14日目で観察されていた(図示されていない)。それゆえ、gp130アクチベーターは、ES細胞由来のオロゴデンドロサイト前駆体の分化ばかりではなく、髄鞘形成の表現型への成熟化も促進する。
【0132】
実施例3:IL6R/IL6キメラは、短期間の解離した細胞の培養におけるオリゴデンドロサイト前駆体の数を増加させる
【0133】
フィーダーレイヤー上のES細胞の長期に及ぶ維持は、神経系の前駆体に富み、機械的に単離が可能である、細胞塊を生じる(Reubinoff et al. 2001)。この塊は、無血清の合成EB培地中の培養(実施例1記載の条件)で浮遊している、ニューロスフェアーを形成する。この球体は、R11 ES細胞から調製され、5mg/mlのコラゲナーゼ/ジスパーゼ混合物(シグマ、#C3180)で消化し、解離した細胞を、12ウェルプレート中に1.5×104細胞/ウェルの密度で、ポリ−D−リジンおよびフィブロネクチンカバースリップ上に播種した。実施例1にあるような合成分化培地で培養を行い、最初の4日間FGF−2および5μg/mlのラミニン(laminin)を添加し、その後除去した。この時、ウェルの半分に、200ng/mlのIL6R/IL6キメラを添加し、18日間培養を続けた。発生の初期段階から成熟した細胞までのオリゴデンドロサイトを標識し、アストロサイトを染色しない、Ripモノクローナル抗体(ハイブリドーマ バンク、アイオワ大学)で、固定した細胞を染色した(Friedman et al. 1989)。IL6R/IL6キメラを処理した培養におけるRip+オリゴデンドロサイトのコロニーは、未処理の培養よりも、ずっとサイズが大きく密であった(図示されていない)。解離した細胞のこれらの比較的短期間の培養においては、オリゴデンドロサイトは、まだ、前駆体の段階であることを示す短い多極化した突起を持っていた。ゆえに、IL6R/IL6キメラは、本細胞系統の分化の初期において作用し、大量の移植に適したES細胞由来のオリゴデンドロサイト前駆体を得られるようにするであろう。
【0134】
実施例4 EB細胞由来のニューロスフェアーへのIL6R/IL6の添加は、オリゴデンドロサイト前駆体の分化を促進する―定量分析
【0135】
既に行なわれたEBを形成するために誘導し、ニューロスフェアー細胞に添加したIL6R/IL6の効果を観察した。ニューロスフェアーを産生するために(Zhang 2001およびReubinoff BE 2001)、マウスROSA 11 ES細胞を、フィーダーレイヤーから除去し、20ng/mlのFGFを添加した無血清培地中で、神経系の前駆細胞を選択するのに供したEBより(Okabe et al. 1996)、誘導した。これらの条件下では、一つに、伸長している軸索に囲まれた球形の細胞の凝集体の形成を観察した。これらの凝集体の中心を取り出し、8日間またはそれ以上、FGF−2を含む同じ選択培地中で、浮遊している球体を維持した、浮遊培養に移した。トリプシンで浮遊している球体の解離およびガラスカバースリップ上に播いたことで、本球体は、小さく円形のまたは伸長した二極化の細胞で主に構成され、それらの90%が神経系の前駆細胞に見られる中間径繊維のネスチンに陽性であると確認された(図示されていない)。GFAP(アストロサイト)またはβIII−チューブリン(ニューロン)に対する染色は1%以下であり、オリゴデンドロサイトに分化する前駆体を特徴付けるO4スルファチドに対しては全く染色されず、この段階では、ほとんどの分化している細胞が見られなかった。さらに、出産前後期の初期オリゴデンドロサイト前駆体に特異的なマーカーであると考えられ、現在では、より初期での神経の多能性前駆体にも存在すると知られているコンドロイチン硫酸プロテオグリカンNG2(chondroitin sulfate proteoglycan NG2)の染色で、本細胞を調べた(Belachew et al. 2003)。10%まではNG2+細胞が見られたが、ニューロスフフェアーで存在し、オリゴデンドロサイト前駆体では無いネスチン陽性の神経系の前駆体に類似している二極化の形態を、全ての細胞が持っていた(以下参照)。
【0136】
分化におけるgp130アクチベーターIL6RIL6の効果を調べるために、グリア細胞の発生に適した接着性の基質である、ポリ−D−リジンおよびフィブロネクチン(PDL−FN)でコートされたガラスカバースリップ上に、遊離している球体を載せ、そして、IL6R/IL6添加の有無の合成N2培地中で、インキュベートした(Rubinoff et al. 1996)。細胞の伸長を促すために、最初の4日間、FGF−2(5ng/ml)およびラミニン(2.5μg/ml)を添加し、その後、これらの添加なしで、培養を続けた。最初の4日間で、O4+細胞ではなく、GFAP+細胞の単層を形成した伸長が観察された。7日目(つまり、FGF除去後3日目)のコントロール培地中において、O4+オリゴデンドロサイト前駆細胞が明かになったが(図示されていない)、IL6RIL6の存在下において、それらの数およびサイズは、ずっと大きかった。対照的に、ニューロスフェアーを囲んでいるGFAP+アストロサイトは、両条件において同様と思われる。DAPIで標識した総細胞数に対する染色された細胞の定量分析は、IL6RIL6の非存在下においては、伸長中の半分以上の細胞は、GFAP+であり、約2%がO4+オリゴデンドロサイト(表1)であった。本データでは、IL6RIL6の存在下において、GFAP+細胞の比率(しかし、絶対量ではない)は現に減少し、一方でO4+細胞のパーセンテージはコントロール条件と比べて、6.4倍になった。IL6RIL6は、O4+前駆細胞の比率を高めるばかりでなく、それらの分化も促進する。このように、15日目(図示されていない)において、アストロサイト層の上に網状組織を形成するO4+オリゴデンドロサイトの著しい拡張および分岐をIL6RIL6処理の培養は示した。IL6R/IL6が無い場合、15日間の培養にはこの分化は見られなかった。
【0137】
【表4】

【0138】
一方の実験では、伸長している細胞を、初期と後期の前駆体それぞれにおける効果を比較するために、NG2およびO4を二重染色した。これらの19日培養における定量分析を容易にするために、IL6RIL6処理により、産生したO4+前駆体の個数およびサイズの増加を、明確に視覚化することを可能にする、より高い倍率で、細胞を観察した。O4+細胞のパーセンテージは、サイトカインに応答して、0.8〜7.3%、または9.1倍に上昇した(表1)。NG+細胞のパーセンテージも、IL6RIL6に応答して、上昇したが、2.7倍だけであった(表1)。O4+細胞のより高い増加は、IL6RIL6の主要な効果は、NG2+初期前駆体から分化したO4+細胞へ移行することであり得ることを示唆している。7日目を調べると、NG+細胞の増加は類似していた(2.5倍のパーセンテージの増加)。NG2も多能性の神経系前駆体に存在し得るが(Belachew et al. 2003)、伸長中のNG2+細胞は、ほとんどがオリゴデンドロサイト前駆体の特徴である多極化または分岐化していた。さらに、多極化および分岐化したNG2+細胞のサイズはIL6RIL6処理した培地の場合と比べて、より大きかった。ゆえに、O4に比べて明言されなかったが、NG2+の初期前駆体の増加は、再現性よく観察された。他方、チューブリンβIIIを染色した培養では、我々はニューロスフェアーの周りにある伸長の中で、ニューロンの軸索の網状構造の密度の著しい変化を観察しなかった。これにより、オリゴデンドロサイト分化におけるIL6RIL6の効果は、軸索の網状構造の増加から生じる二次的な効果ではなさそうである。
【0139】
実施例5 IL6RIL6は、オリゴデンドロサイト系統特異的な遺伝子発現を促進する
【0140】
Olig−1は、アストロサイトまたは他のグリア細胞においては見られず、オリゴデンドロサイト系統で見られる、限定された発現をもつbHLHグループの転写因子である(Zhou et al. 2000、Wegner et al. 2001)。Olig−1は、初期で発現し、オリゴデンドロサイトの発生および成熟が必要であり特異的に出現する(Lu et al. 2002)。Sox10もオリゴデンドロサイト系統の初期で発現し(Wegner et al. 2001)、ミエリン遺伝子のプロモーターに作用する転写因子である(Slutsky et al. 2003、Stolt et al. 2002)。これらのオリゴデンドロサイトのマーカー遺伝子およびアストロサイトのマーカーであるGFAPの発現をRT−PCRで調べた。我々は、最初に、12日間、20ng/mlのFGF−2および無血清培地で選択後、EB培地中で形成された球状の凝集体から抽出したRNAを分析した。IL6RIL6で処理した場合でさえ、球状の凝集物にOlig−1、Sox10またはGFAPのRNAの微量な発現を検出した(図2、レーン1、2)。PDL−FN(5ng/mlのFGF−2および2.5μg/mlのラミニンで4日、および、その後、これらの添加物を含まず、さらに4日)の分化条件下に伸長しているニューロスフェアーから、RNAを抽出した場合、3つのマーカー遺伝子を観察した(レーン3)。この分化培養の最後の4日間、IL6RIL6を添加することで、Olig−1およびSox10における著しい増加を生じ、一方で、GFAPは影響をうけなかった(レーン4)。さらに、IL6RIL6に応答して、MBP RNAの誘導が観察された(レーン5,6)。光度走査(photometric scanning)は、IL6RIL6に応答して、Olig−1に20倍、Sox−10に7.6倍まで増加を示した。これらの短期間での培養では、MBPは3倍に増加した。これらの遺伝子発現のプロファイルは、gp130アクチベーターがオリゴデンドロサイト系統(Sox−10およびOlig−1発現により示される)における、細胞分化の初期段階並びにMBPを発現する髄鞘形成するオリゴデンドロサイトに向けての成熟化に対する効果の促進に及ぶと言った結論を支持する。
【0141】
実施例6:解離したニューロスフェアー細胞からのオリゴデンドロサイト分化。
【0142】
先行研究は、ニューロスフェアーから伸長する細胞について調べていた。分化は、培養中の細胞の一部についてのみ、研究されることが可能であったが、中心に留まっているニューロスフェアーは、よく調べることができない細胞の塊が形成されている。それゆえ、IL6RIL6の効果が、ニューロスフェアーから単離された細胞においても証明されるかを見ることは重要である。我々は、ニューロスフェアー細胞を解離するために、トリプシン消化を用い、接着性の基質上に播いた。多くの実験条件を試験した後、我々は、オリゴデンドロサイトの分化を観察するのに適した条件を見つけた。
【0143】
20ng/mlのFGF−2を含む合成培地で、浮遊培養において、ES細胞由来のニューロスフェアーを維持し、その後、3日間、20ng/mlのPDGFおよびEGFを添加した。ニューロスフェアーを回収し、0.05%のトリプシン−EDTAで処理し、そしてN2培地中のポリオルニチン(poly-ornithine)をコートしたカバースリップ上に、解離した細胞を載せた。最初の3日間、10ng/mlのFGF−2を添加し、その後成長因子を除去し、培養を10日間続けた。IL6RIL6を、最後の3日間に100ng/ml添加した。コントロール培養において、IL6RIL6無しで、わずかの小さなオリゴデンドロサイトを観察した。IL6RIL6培養の処理は、結果として非常に大きく、よく分岐したオリゴデンドロサイトの形成をもたらし、大きなミエリン膜(図示されていない)を示した。周囲を囲む細胞は、主にニューロンおよびアストロサイトであった(図示されていない)。これらの条件は、残存するニューロスフェアー細胞の塊からの干渉なしに、遺伝子発現の研究を考慮に入れるべきである。
【0144】
実施例7:IL6R/IL6キメラはヒトオリゴデンドロサイト前駆体の分化を促進する
【0145】
ヒトEBおよびニューロスフェアーを、Zhang et al. (2001) により記載されたように、調製した。簡潔に言うと、H1およびH9.2(Amit et al. 2000に記載)由来のヒトES細胞株を、放射線照射したマウス胚性繊維芽細胞(Thomson et al. 1998)のフィーダーレイヤー上で繁殖させた。分化を開始するために、ESコロニーを剥がし、4日間、胚様体として生長させた。組織培養の処理をしたフラスコで、化学的に合成された培地にて、EBを培養した(Zhang et al. 1999; Zhang et al. 2000; Zhang et al. 2001)。FGFとの培養で、5〜7日後にEB細胞は、扁平な細胞、および、数多くの小型で、伸びた細胞も産生した。7日目までに、小型の伸長した細胞はロゼッタ型の構造を作った。ジスパーゼの処理でニューロスフェアーが優先的に分離をおこす。
【0146】
ニューロスフェアーを取り出し、グリア細胞の発生に適している基質である(Reubinoff et al. 2001)、ポリ−D−リジンおよびフィブロネクチンでコートしたガラスカバースリップに接着させ、実施例1記載のように、200ng/mlの純粋なIL6/RIL6キメラを添加した。多くのニューロン突起が球体から外側に伸長し、βIIIチューブリンを免疫染色することで視覚化される軸索束を形成する。
【0147】
プロオリゴデンドロサイトまたは未成熟なオリゴデンドロサイトを、抗スルファチドO4抗体の染色で視覚化する。2〜6週間後、コントロール培養(IL6R/IL6キメラなし)は、ニューロスフェアーから伸長している細胞の下層の間で、多くの小さな多極化したO4+細胞の拡大を示した。対照的に、IL6R/IL6キメラを加えた培養物は、より多くの樹状を持つO4+細胞の密な網状構造を含んでいる。MBPに対する抗体で染色することで、IL6R/IL6キメラが細胞の髄鞘形成活性を促すことが証明された。
【0148】
実施例8:ES細胞培養およびニューロスフェアーの産生
【0149】
マウスES細胞株ROSA11(FriedrichおよびSoriano 1991)を、以前のように(Li et al. 2001)、維持した。0.05%のトリプシンでフィーダーレイヤーから取り除き、LIF無しで、4ng/mlのFGF−2を含むES1培地(DMEM/F12に15%の仔牛血清(FCS)、1%のグルタミン、1mMのβ−メルカプトエタノール、2μg/mlのへパリン)中の組織培養プレートに移した。培地は、ギブコ/インビトジェン(Gibco/Invitogen)からで、毎日補給した。2日後、0.2%のジスパーゼ(ギブコ/インビトロジェン)で、15分、37℃で、培養液を処理し、そして塊を、FGFを欠くES1培地で、9cm培養ディッシュに再び播種した。4日後、分化している胚態様(EB)の塊が見られ、数個の付着した細胞の介在により、ディッシュに緩く付着していた。この塊を容易に針を用いて回収し、新しい組織培養ディッシュに移して、付着を容易にするためにES1培地で、もう1日培養した。後で、20ng/mlのFGF−2を含むEB合成培地(DMEM/F12、25μg/mlのインスリン、100mg/mlのトランスフェリン、60μMのプトレッシン、30nMの亜セレン酸ナトリウム、2μg/mlのへパリン、20nMのプロゲステロン)を用いて、神経系の前駆体の生存および生長の選択(Okabe et al. 1996)を行った。培地は、2日おきに変えた。8〜10日後、周囲を囲む、放射している軸索により同定できる神経系の前駆細胞を含む球体の凝集体の中心を、針で取り出した。これらの球体状の凝集体を、20ng/mlのFGF−2を含む同様のEB合成培地でバクテリア培養プレート(ステリリン(Sterilin))に移し、少なくとも8日間、懸濁状態で保存した。浮遊培養の間に凝集体から多くの細胞が剥がされ、後者はニューロスフェアーに特徴的な通常の形態を獲得する(Ben-Hur et al. 1998)。より長い培養のために、懸濁状態で、再び播種する前に、0.5mm以上の直径に拡大した球体を2つに切断した。0.25%のトリプシン−EDTAで完全に解離した後で、免疫染色に、カバースリップ上の25,000個の細胞を載せることで、浮遊しているニューロスフェアーの構成を調べた(以下のように)。
【0150】
実施例9:細胞分化アッセイ
【0151】
20μg/mlのポリ−D−リジン、250μg/mlのフィブロネクチンの溶液でプレコートした(pre-coated)各ガラスカバースリップ上に、浮遊培養からの4つのニューロスフェアーを、置き、分化N2培地(DMEM/F12に、5μg/mlのインスリン、100μg/mlのトランスフェリン、16.1μg/mlのプトレッシン、5.2ng/mlの亜セレン塩および6.3ng/mlのプロゲステロン−ギブコの1%のN2添加物として全て加えた。)で、12ウェルプレートのウェルに移した。最初の4日間において、付着を容易にするために、2.5μg/mlのラミニンおよび5ng/mlのFGF−2を、添加し、その後取り除いた(結果を変えることなく、いくつかの実験では、ラミニンを省いた)。ウェルの半分はCHO細胞で産生し、以前の様に精製した、100または200ng/mlのIL6RIL6キメラを添加した(Chebath FischerおよびKumar 1997)。培地を3日おきに換え、長期の培養においては、50μg/mlのアスコルビン酸を、開始21日目で、培地に加えた。ニューロスフェアーをプレートに播いた後、指定した時間において、4%のパラホルムアルデヒヒド(PFA)で培養物を固定し、4℃、PBS中で保存した。5%の正常ヤギ血清(NGS)でブロッキング後、1時間、室温(RT)でウサギポリクローナル抗−NG2(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン;ケミコン インターナショナル、テメークラ(Chemicon International, Temecula)、カリフォルニア州;1:200)で、および、その後、Alexa Fluor 566共役型ヤギ抗ウサギ抗体(モレキュラー プローブス、オイジーン(Molecular Probes, Eugene)、オレゴン州;1:250)で、初期前駆体またはオリゴデンドロブラストの染色を、固定化した細胞で行った。後期の前駆体またはプレオリゴデンドロサイトの染色は、一時間、室温にて抗スルファチドO4マウスモノクローナル(Mc)IgM抗体(Fluorescein-conjugated goat anti-IgM)(McAB 345 ケミコン;1:75)、および蛍光共役型ヤギ抗マウスIgM(ケミコン;1:50)で行った。GFAP、βIIIチューブリン、ネスチンおよびMBPの免疫染色は、トリトン−X100(Triton-X100)でパーミネラリゼーション(permineralization)および10%のNGSでブロッキング(blocking)後に行った。蛍光Cy−3タグ(シグマ、セントルイス、ミズーリ州(Sigma, St Louis, MO);1:400)共役型マウスMc抗GFAPでの染色は、RT、1時間で行った。マウスMc IgG Tuji−1抗チューブリンβIII(コバンス リサーチ プロダクト、バークレー、カリフォルニア州(Covance Research Product, Berkeley, CA);1:400に希釈)を、Alexa Fluor 488(モレキュラー プローブ(Molecular Probe);1:250)と共役したヤギ抗マウスIgGと共に用いた。髄鞘形成細胞の染色は、マウスMc IgG抗MBP(McAB 386、ケミコン;1:400)およびF(ab’)2フラグメント(ジャクソン イミュノリサーチ ラボラトリーズ、ウェスト グルーブ、ペンシルベニア州(Jackson ImmunoReaserch Lab, West Grove, PA);1:400)特異的であるCy3−共役型のアフィ二ティー精製したヤギ抗マウスIgGで行った。上記と同様に、同じCy3共役型IgGに従って、神経系前駆体の染色は、Mc IgG1抗ネスチン(ラット−401、アイオワ大学発生学研究ハイブリドーマバンク(Rat-401, Developmental Studies Hybridoma Bank at University of Iowa);1:100希釈)で行った。
【0152】
生きている細胞に、O1の染色をした。5%のFCSでブロッキング後、メタノール中の5%の酢酸での固定の前に、抗O1マウスIgM Mc抗体(McAB 344、ケミコン;1:75)および蛍光共役型ヤギ抗マウスIgM(ケミコン;1:50)を、1時間、37℃、加湿空気中で用いた。すべての場合、核の蛍光色素DAPI(シグマ;0.05μg/ml)を最後に加えた。カバースリップをモヴィオール(カルビオケム、ラジョラ、カリフォルニア州)上に載せて、DVC−1310C(DVC、オースチン(Austin)、TX)デジタルカメラ付きのオリンパスIX−70 FLA顕微鏡で観察し、像をフォトショップ(Photoshop)で加工した。二重染色の調整を、オーバーレイした像として示した。アルファイーズ(AlphaEase)ソフトウェアー(アルファ イノテック、サンレナルド、カリフォルニア州)のマニュアル計数プログラム(manual count program)で、サイズを計測すること、および、DAPIにより視覚化された全ての細胞核、ならびに、NG2、O4およびGFAPが染色された細胞を数えた。
【0153】
実施例10:遺伝子発現アッセイ
【0154】
RNA抽出の手順およびSox10、GFAP、MBP、グリセルアルデヒド3’−ホスホデヒドロゲナーゼ(G3PDH)遺伝子の転写物のレベルを測定するRT−PCRは、サイクル数および使用したプライマーも含めて、以前詳細に記載されたのと同様であった。Olig−1遺伝子(アクセッション NM_016968)では、プライマーは、フォワード、5’−TGCGCGCGAGAAGGCCGAAG(配列番号2)、およびリバース、5’−CCCAGCCAGCCCTCACTTG(配列番号3)である。PCR増幅の条件:94℃、2分、その後94℃、30秒;56℃、30秒;72℃、1分の30サイクル。PCR緩衝液(Slutsky et al. 2003)は10%のDMSOを添加した。ゲル電気泳動後、増幅したDNAバンドを、UV光下で撮影およびスキャンし、それらの強度(intensity)を、アルファイーズ スポット デンシティー(spot density)ソフトウェアーを用いて定量した。ゲルにロードしたPCR反応物の量を変えて、直線範囲(linear range)内であるように、バンドの強度(band intensity)を検証した。
【0155】
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【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】ニューロスフェアーに生長し、その後IL6R/IL6キメラ(200ng/ml)と共にまたは単独(未処理)で、6週間培養し、細胞を固定して、オリゴデンドロサイトに特異的な抗体で染色したマウスES細胞(R11細胞株)の代表的な視野(field)の蛍光顕微鏡写真を示す。上のパネルは、未成熟型またはプレオリゴデンドロサイト中のスルファチドグリコシドの存在を特異的に検出するモノクローナル抗体O4で染色したことを示す。下のパネルは、成熟化したオリゴデンドロサイトによってのみ形成されるミエリンの構造構成物である、ミエリン塩基性タンパク質に対する抗MBP抗体で染色したことを示す。未処理の培養においては、小さなO4+オリゴデンドロサイトが観察されたが、一方、IL6R/IL6キメラの存在において、多数のニューロンとの接触を形成している長い枝と共に、より多くの、樹状化したオリゴデンドロサイトの発達した網状構造があった。IL6R/IL6キメラ処理した培養において、MBPはオリゴデンドロサイトの成熟化を示している枝分かれした網状構造に存在し、未処理培養における球形で小型の細胞体の弱い染色と、よい対照をなしている。
【図2】IL6RIL6により促進されたオリゴデンドロサイト系統に特異的な遺伝子の発現を示す。(レーン 1、2):選択後12日間、20ng/mlのFGF−2を含む合成培地でのEB培養中に形成される球状の凝集体中の遺伝子発現:(レーン 3〜6)PDL−FM上で8日間(FGFは4日目に除去した。)の伸長しているニューロスフェアー。ここで示したように、RNAを抽出する前に、IL6RIL6を最後の4日間添加した。レーン2では、200ng/mlのIL6RIL6、レーン4およびレーン6では、100ng/mlのIL6RIL6。RNAロードディングのコントロールとしてハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)G3’PDHに対するGFAP(アストロサイト系統)、Olig−1およびSox10(初期のオリゴデンドロサイト前駆体)およびMBP(オリゴデンドロサイトの成熟化)を、RT−PCRで測定した発現レベルで示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄疾患により引き起こされた損傷を修復するのに適したオリゴデンドロサイトを産生する方法であって、CNTF、OSM、IL−6、IL6RIL6キメラおよびIL−11から選択される一つまたはそれ以上のgp130アクチベーターの存在下において、胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞を生長することからなる方法。
【請求項2】
前記gp130アクチベーターが、IL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、またはそれらの塩である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記gp130アクチベーターが、IL−6である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、NS細胞である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、解離されたNS細胞である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、EB細胞である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴデンドロサイトが、O1+系統である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴデンドロサイトが、O4+系統である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記脱髄疾患が、多発性硬化症、脳卒中、骨髄損傷、神経損傷および軸索の脱髄から選択される請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られるオリゴデンドロサイト。
【請求項11】
必要としている患者における脱髄疾患に起因する損傷を治療するための薬剤製造における、請求項10記載のオリゴデンドロサイトの用途。
【請求項12】
必要としている患者における脱髄疾患を治療するためのオリゴデンドロサイトの分化を促進する薬剤製造における、胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞、およびCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11から選択されるgp130アクチベーターの用途。
【請求項13】
前記gp130アクチベーターが、IL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、またはそれらの塩である請求項12記載の用途。
【請求項14】
前記gp130アクチベーターが、IL−6である請求項13記載の用途。
【請求項15】
前記細胞が、NS細胞である請求項12〜14のいずれかに記載の用途。
【請求項16】
前記NS細胞が、解離されているNS細胞である請求項15記載の用途。
【請求項17】
前記細胞が、EB細胞である請求項12〜14のいずれかに記載の用途。
【請求項18】
O1+オリゴデンドロサイトを促進するための請求項12記載の用途。
【請求項19】
O4+オリゴデンドロサイトを促進するための請求項12記載の用途。
【請求項20】
ES、EB、および/またはNS細胞、およびCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11から選択される、一つまたはそれ以上のgp130アクチベーターからなる医薬組成物。
【請求項21】
ES、EB、および/またはNS細胞、およびCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11から選択されるgp130アクチベーターをコードする発現ベクターからなる医薬組成物。
【請求項22】
CNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11から選択される、一つまたはそれ以上のgp130アクチベーターを産生する、改変したES、EB、および/またはNS細胞からなる医薬組成物。
【請求項23】
gp130アクチベーターが、IL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、またはそれらの塩である請求項20〜22のいずれかに記載の前記医薬組成物。
【請求項24】
前記gp130アクチベーターが、IL−6である請求項23記載の前記医薬組成物。
【請求項25】
NS細胞からオリゴデンドロサイトへの分化を促進するための請求項20〜24のいずれか記載の前記医薬組成物。
【請求項26】
解離されているNS細胞からオリゴデンドロサイトへの分化を促進するための請求項25記載の前記医薬組成物。
【請求項27】
EB細胞からオリゴデンドロサイトの分化を促進するための請求項20〜24のいずれか記載の前記医薬組成物。
【請求項28】
請求項10記載のオリゴデンドロサイトからなる医薬組成物。
【請求項29】
必要としている患者における脱髄疾患に起因する損傷を治療するための請求項20〜28のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項30】
胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞のオリゴデンドロサイトへの分化を促進するのに適した培養培地であって、前記細胞を培養するのに適した溶液中に、CNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11から選択される、一つまたはそれ以上のgp130アクチベーターからなる培養培地。
【請求項31】
前記gp130アクチベーターが、IL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、またはそれらの塩である請求項30記載の培養培地。
【請求項32】
前記gp130アクチベーターが、IL−6である請求項31記載の培養培地。
【請求項33】
胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞をO1+系統のオリゴデンドロサイトへの分化を促進するのに適した請求項30または32記載の培養培地。
【請求項34】
胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/またはニューロスフェアー(NS)細胞をO4+系統のオリゴデンドロサイトへの分化を促進するのに適した請求項30または32記載の培養培地。
【請求項35】
前記溶液が、EBの培養に適した請求項30〜34記載の培養培地。
【請求項36】
前記溶液が、NSの培養に適した請求項30〜34記載の培養培地。
【請求項37】
脱髄疾患の治療方法であって、必要としている患者に、請求項10記載のオリゴデンドロサイトの有効量を投与することからなる方法。
【請求項38】
前記オリゴデンドロサイトが、必要としている患者のCNS中に直接投与される請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記オリゴデンドロサイトが、必要としている患者にIV注射によって投与される請求項37記載の方法。
【請求項40】
脱髄疾患の治療方法であって、胚性幹(ES)、胚様体(EB)および/または、ニューロスフェアー(NS)細胞を投与すること、およびCNTF、OSM、IL−6、IL6R/IL6キメラおよびIL−11から選択される、一つまたはそれ以上のgp130アクチベーターの有効量の必要としている患者に投与することからなる方法。
【請求項41】
前記gp130アクチベーターがIL6R/IL6キメラ、ミューテイン、機能性誘導体、活性画分、循環置換化した誘導体、またはそれらの塩である請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記gp130アクチベーターが、IL−6である請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記細胞がNS細胞である請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が分離されているNS細胞である請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記細胞がEB細胞である請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記gp130アクチベーターが、発現ベクターにより投与される請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記gp130アクチベーターが、アクチベーターを発現する組換え細胞により投与される請求項40〜42記載のいずれかの方法。
【請求項48】
アクチベーターを発現する細胞が、ES細胞である請求項40〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
アクチベーターを発現する細胞が、EB細胞である請求項40〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
アクチベーターを発現する細胞が、NS細胞である請求項40〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
投与前に前記gp130アクチベーターを細胞とエクスビボで接触させる請求項40〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記gp130アクチベーターおよび/または前記細胞が、必要としている患者のCNS中に直接投与される請求項40〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記gp130アクチベーターおよび/または前記細胞が、必要としている患者にIV注射によって投与される請求項40〜51のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−526997(P2006−526997A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516798(P2006−516798)
【出願日】平成16年6月13日(2004.6.13)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000507
【国際公開番号】WO2004/111210
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】