説明

オリゴヌクレオチド含有マイクロスフェア、1型糖尿病を処置する医薬の製造のための、その使用

【課題】非肥満性糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、樹状細胞寛容を誘導するためのAS−オリゴヌクレオチドのマイクロスフェア送達の提供。
【解決手段】AS−オリゴヌクレオチドが、特に、非肥満性糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、樹状細胞寛容を誘導するためにマイクロスフェア形態で送達される。このマイクロスフェアは、アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドをとりこむ。プロセスは、インビボおよびインサイチュでのNODマウスにおける自己免疫性糖尿病状態を予防するためにアンチセンスアプローチを使用する工程を包含する。このオリゴヌクレオチドは、主要転写物CD40、CD80、CD86およびそれらの組み合わせへ結合するように標的化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
2004年5月12日に出願された、仮特許出願シリアル番号60/570,273、および2004年11月5日に出願された、仮特許出願シリアル番号60/625,483。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般的に、特に、非肥満性糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、樹状細胞寛容を誘導するためのAS−オリゴヌクレオチドのマイクロスフェア送達に関する。より詳しくは、本発明は、完全に水性の条件を使用して製造されるマイクロスフェア(マイクロスフェアは、アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドをとりこむ)による薬物送達技術に関する。これらのマイクロスフェアは、インビボおよびインサイチュでのNODマウスにおける自己免疫性糖尿病状態を予防する、アンチセンスアプローチのために使用される。
【0003】
(発明の背景)
微粒子、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルは、1mm未満の直径、より好ましくは100ミクロン未満の直径を有する、固体または半固体の粒子であり、これらは、種々の材料(合成ポリマー、タンパク質および多糖類が挙げられる)から形成され得る。マイクロスフェアは、多くの異なる用途(主に、分離、診断および薬物送達)において使用されてきた。
【0004】
多くの異なる技術が、合成ポリマー、天然ポリマー、タンパク質および多糖類から、これらのマイクロスフェアを作製するために使用され得、これらの技術としては、相分離、溶媒エバポレーション、乳化および噴霧乾燥が挙げられる。一般的に、ポリマーは、これらのマイクロスフェアの支持構造を形成し、目的の薬物は、このポリマー構造に取り込まれる。マイクロスフェアの形成のために使用される例示的なポリマーとしては、Ruizに対する特許文献1、Reidらに対する特許文献2、Ticeらに対する特許文献3、Ticeらに対する特許文献4、Ticeらに対する特許文献5、Singhらに対する特許文献6、Boyesらに対する特許文献7、Ticeらに対する特許文献8およびSouthern Research Instituteに対する特許文献9に記載される乳酸およびグリコール酸(PLGA)のホモポリマーおよびコポリマー;Illumに対する特許文献10に記載されるテトロニック(tetronic)908およびポロキサマー(poloxamer)407のようなブロックコポリマー;ならびに、Cohenらに対する特許文献11に記載されるポリホスファゼンが挙げられる。これらのようなポリマーを使用して作製されるマイクロスフェアは、低い装填効率を示し、そしてしばしば、ポリマー構造へ目的の薬物を、低い割合でしか取り込み得ない。したがって、治療効果を達成するために、相当量のマイクロスフェアが、しばしば投与されねばならない。
【0005】
球状のビーズまたは粒子が、長年にわたり、生化学者のための道具として市販されている。例えば、ビーズに結合された抗体は、特定のリガンドに特異的な、比較的大型の粒子を生成する。この大型の抗体コーティングされた粒子は、通常、細胞活性化のために、細胞の表面上のレセプターを架橋するために使用され、免疫親和性精製のための固相に結合され、そして、所望の部位へ治療薬を標的する粒子に結合体化された組織特異的抗体または腫瘍特異的抗体を使用して、長期間にわたり、ゆっくり放出される治療薬を送達するために使用され得る。
【0006】
現在利用可能な微粒子またはビーズの1つの欠点は、これらが、生成するのが困難かつ高価であることである。これらの公知の方法により生成される微粒子は、広範な粒子サイズの分布を有し、しばしば均一性を欠き、そして、活性成分の濃度が高い場合、長期の放出動態を示すことができない。さらに、これらの公知の方法において使用されるポリマーは、微粒子を形成するために、有機溶媒中に溶解される。それゆえ、これらは、有機溶媒を取り扱うように設計される特別な設備において生成されなければならない。これらの有機溶媒は、微粒子内に含まれるタンパク質またはペプチドを変性し得る。残留有機溶媒は、ヒトまたは動物に投与される場合、有毒であり得る。
【0007】
さらに、利用可能な微粒子は、治療薬を投与するために、通常使用される針のサイズの開口部を通過するのに適合するか、または吸入による投与のために有用であるように十分に小さいサイズであることは稀である。例えば、ポリ乳酸グリコール酸(polylactic glycolic acid)(PLGA)を使用して調製される微粒子は、大型であり、そして凝集する傾向がある。サイズの選択工程(産物の損失をもたらす)は、注射には大きすぎる粒子を除去するために必要である。注射のために適切なサイズであるPLGA粒子は、大型の粒子サイズに適応する大口径の針により投与されるべきであるが、この投与は、しばしば、患者に不快感を引き起こす。
【0008】
一般的に、多くの現在利用可能な微粒子は、水性媒体中のそれらの内容物を放出するように活性化され、それゆえ、早すぎる放出を防止するために凍結乾燥されなければならない。さらに、PLGA系を使用して調製されるような粒子は、侵食と拡散との両方に基づく放出動態を示す。この型のシステムにおいて、薬物のイニシャル・バーストまたは急速な放出が観察される。このバースト効果は、この粒子が投与された患者において、望まれない副作用をもたらし得る。
【0009】
目標薬物をカプセル化する脂質を使用して調製される微粒子が、公知である。例えば、粒子を形成する複数の水性区画を囲む二重層膜内に並べられる脂質は、Sinil Kimに対する特許文献12に記載されるような後の送達のために、水溶性の薬物をカプセル化するために使用され得る。これらの粒子は、一般的に10ミクロンより大きなサイズであり、そして関節内投与、髄腔内投与、皮下投与および硬膜上投与のために設計される。あるいは、リポソームが、小分子の静脈内送達のために使用されてきた。リポソームは、単一または複数のリン脂質とコレステロールとの二重層からなる球状の粒子である。リポソームは、30ミクロン以上のサイズであり、そして種々の水溶性薬物または脂溶性薬物を輸送し得る。リポソーム技術は、問題(脂質成分の純度、毒性の可能性、小胞の不均一性および安定性、過剰な取り込み、ならびに製造の問題または有効期限の問題が挙げられる)により妨害されている。
【0010】
医学界のための目的は、糖尿病処置のための動物中の細胞への核酸の送達である。例えば、核酸は、(インビトロ)培養物中の細胞へ比較的効果的に送達され得るが、核酸が動物へ送達される(インビボ)場合には、ヌクレアーゼが、核酸の分解を高い割合でもたらす。
【0011】
さらに、ヌクレアーゼ消化から核酸を保護するために、核酸送達ビヒクルは、低い毒性を示さねばならず、効率的に細胞により吸収されねばならず、そして明確かつ容易に製造される処方を有さなければならない。臨床試験において示されるように、送達のためのウイルスベクターは、インビボで、非常に有害で、さらに致死的な免疫応答をもたらし得る。さらに、この方法は、インビボで、突然変異誘発効果を有する可能性を有する。異なる処方物(例えば、リポソームまたは陽イオン性脂質複合体)の脂質複合体中に核酸を封入することによる送達は、一般的に、インビボで無効であり、そして中毒作用を有し得る。種々のポリマーまたはペプチドと核酸との複合体は、一貫する結果を示さず、そして、これらの処方物の毒性は、未だに解決されていない。核酸もまた、送達のためのポリマーマトリクス中にカプセル化されたが、これらの場合において、粒子は広範なサイズ範囲を有し、治療適用についての有効性は未だに実証されていない。
【0012】
それゆえ、核酸送達の問題に取り組む必要性が存在し、マイクロスフェアの開発に対して、そして、マイクロスフェアを作製するための新規の方法に対して、必要性が存在し続けている。マイクロスフェアに関する詳細は、Scottらに対する特許文献13、Woiszwilloらに対する特許文献14、特許文献15、特許文献16および特許文献17ならびにWoiszwilloに対する特許文献18において見られる。これらおよび本明細書で特定される参考文献は、本明細書において参考として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,213,812号明細書
【特許文献2】米国特許第5,417,986号明細書
【特許文献3】米国特許第4,530,840号明細書
【特許文献4】米国特許第4,897,268号明細書
【特許文献5】米国特許第5,075,109号明細書
【特許文献6】米国特許第5,102,872号明細書
【特許文献7】米国特許第5,384,133号明細書
【特許文献8】米国特許第5,360,610号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第248,531号明細書
【特許文献10】米国特許第4,904,479号明細書
【特許文献11】米国特許第5,149,543号明細書
【特許文献12】米国特許第5,422,120号明細書
【特許文献13】米国特許第6,458,387号明細書
【特許文献14】米国特許第6,268,053号明細書
【特許文献15】米国特許第6,090,925号明細書
【特許文献16】米国特許第5,981,719号明細書
【特許文献17】米国特許第5,599,719号明細書
【特許文献18】米国特許第5,578,709号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(本発明の要旨)
本発明にしたがって、樹状細胞に送達されるべきDNAは、マイクロスフェアとして送達される。このような送達アプローチは、マイクロスフェア中の核酸へのヌクレアーゼの接近を防止すると考えられる。AS−オリゴヌクレオチドのマイクロスフェア送達は、特に、NODマウスモデルにおいて、樹状細胞の寛容を誘導するために実行される。マイクロスフェアは、マイクロスフェアがアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドを取り込む、水性条件を使用して製造される。これらのマイクロスフェアは、遺伝子発現を阻害し、そしてインビボおよびインサイチュでのNODマウスにおける自己免疫性糖尿病状態を予防するために使用される。
【0015】
本発明の好ましい局面において、CD40、CD80およびCD86主要転写物に標的化される、3つのAS−オリゴヌクレオチドが合成される。そして、このオリゴヌクレオチド混合物の水溶液が調製され、ポリマー溶液と組み合わされる。加工後、このオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフェアが提供され、そして、これらはNODマウスに送達される。
【0016】
本発明のこれらの局面および他の局面、目的、特徴ならびに利点(種々の組み合わせを含む)は、以下の詳細な説明の考察から、明白であり、この考察を通して明確に理解される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
1型糖尿病の処置のためのオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフェアであって、該オリゴヌクレオチドは、該マイクロスフェアの全重量に基づいて、該マイクロスフェアの約30重量%と約100重量%との間を構成し、該マイクロスフェアは、約50ミクロンを超えない平均粒子サイズを有する、マイクロスフェア。
(項目2)
前記オリゴヌクレオチドが、CD40、CD80およびCD86主要転写物ならびにその組み合わせからなる群から選択される主要転写物に結合するように標的化される、項目1に記載のマイクロスフェア。
(項目3)
前記オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2または配列番号3およびその組み合わせからなる群から選択される、項目2に記載のマイクロスフェア。
(項目4)
1型糖尿病を有する個体へ、マイクロスフェアの形態で核酸を送達するためのプロセスであって、該マイクロスフェアの送達のための投与経路は、静脈内、筋内、皮下、局所、皮内、腹腔内、経口、肺、眼、経鼻または直腸からなる群から選択される、プロセス。
(項目5)
項目1に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊から非肥満性糖尿病マウスの膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目6)
項目2に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊から非肥満性糖尿病マウスの膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目7)
項目1に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊から個体の膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目8)
項目2に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊から個体の膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目9)
項目1に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊からヒトの膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目10)
項目2に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊からヒトの膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目11)
項目1に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊および1型糖尿病の発症から個体の膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
(項目12)
項目2に記載のマイクロスフェアを皮下注射する工程を包含する、自己免疫性の破壊および1型糖尿病の発症から個体の膵臓β細胞を防御するためのプロセス。
【0017】
この説明の過程で、添付の図面への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、1型糖尿病での、膵臓のインシュリン産生β細胞の自己免疫性の破壊における樹状細胞の役割の略図である。
【図2】図2は、βガラクトシダーゼ遺伝子を含むプラスミドベクターの図である。
【図3】図3は、プラスミドDNAマイクロスフェアによる、NIH 3T3線維芽細胞のトランスフェクションについての証拠を提供する顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、各々DNAaseへの暴露後の、無防備のプラスミドDNAおよび本発明にしたがう2つのプラスミドDNAマイクロスフェア処方物のアガロース電気泳動ゲルの顕微鏡写真である。
【図5】図5は、4つの異なるプラスミドDNA処理におけるβガラクトシダーゼ活性の棒グラフである。
【図6】図6は、AS−オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リジン ポリカチオンのマイクロスフェアの走査電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、AS−オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−オルニチン ポリカチオンのマイクロスフェアの走査電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、マイクロスフェアに、および3つの主要転写物の送達のための他の手順により処置された、NODマウスの3つの群における糖尿病発生率をまとめるプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(好ましい実施形態の説明)
必要とされるように、本発明の詳細な実施形態が、本明細書で開示される;しかしながら開示される実施形態は、本発明の例示であるにすぎず、本発明は種々の形態に具体化され得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書で開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、特許請求のための単なる根拠として、そして実質的に任意の適切な様式で本発明を種々に使用するように当業者へ教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0020】
好ましい実施形態は、CD40、CD80およびCD86の主要転写物に標的化する、本明細書に記載のアンチセンス(AS)−オリゴヌクレオチドのマイクロスフェアを処方および注射することにより、自己免疫性インシュリン依存性糖尿病を予防する。これらのオリゴヌクレオチドは、NODマウスモデルにおいて、インシュリン産生β細胞の破壊を防止することを試みる、免疫寛容を誘導するように設計される。これらのβ細胞の破壊を導く事象は、図1に示される。これは、どのようにして、NODマウスおよびヒトにおいて、膵臓のインシュリン産生β細胞の自己免疫性の破壊により、1型糖尿病が発現するかを示す。臨床的な発症の時点において、ヒトは、10%〜20%の残余のβ細胞集団を有する。この残余の集団を残すことは、グルコースレベルを調節するのに適切である、残存インシュリンレベルをもたらし得る。本発明の微粒子は、図1に示されるβ細胞の自己免疫性の破壊を妨害するために提供される。
【0021】
樹状細胞(DC)は、あらゆる組織において見られ、そして皮下に高度に濃縮される潜在的な抗原提示細胞となるべく、活性化され得ることが理解される。これらの抗原提示樹状細胞は、特に、リンパ節におけるT細胞の活性化を介する免疫応答のきっかけとして作用する。
【0022】
図2は、NIH 3T3線維芽細胞をトランスフェクトするために使用され得る、βガラクトシダーゼ遺伝子を含むプラスミドベクターの図面である。プラスミドDNAマイクロスフェアによる、NIH 3T3線維芽細胞のトランスフェクションについてのインビトロでの証拠が、βガラクトシダーゼ x−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド)基質の添加に応答して青色に染色する細胞により、図3において示される。
【0023】
図4は、マイクロスフェアの、溶液中のDNAを防御する能力を示す。これは、概して本明細書に記載されるように生成される、プラスミドDNAのマイクロスフェアにより付与されるヌクレアーゼ防御を示す、アガロース電気泳動ゲルである。プラスミドサンプル1、2および3において、無防備(naked)のプラスミドDNAがDNAseに曝された。スメアは、3つのレベルのDNAase処理の各々において、プラスミドDNA分解を示す。粒子1のサンプルおよび粒子2のサンプルにおいて、プラスミドDNAマイクロスフェア処方物がDNAaseに曝された。スメアの欠如は、マイクロスフェア処方物が、プラスミドDNAを分解から保護することを示す。
【0024】
図5は、4つの異なるプラスミドDNA処理におけるβガラクトシダーゼ活性について報告する。無防備のプラスミドDNA処理は、非常に低いレベルを示した。幾分より高いレベルが、送達ビヒクルとしてリポフェクタミン(市販の陽イオン性脂質)を使用するプラスミドDNA陽イオン性脂質複合体の処理について示される。大幅により高い活性が、図4の粒子1に対応するマイクロスフェア1および図4の粒子2に対応するマイクロスフェア2による、2つのpDNAマイクロスフェアについて示される。
【0025】
マウスにおける糖尿病の自己免疫の処置に使用されるマイクロスフェアの作製において、3種のAS−オリゴヌクレオチドが、水溶液に溶解され、そして水溶性ポリマーとポリカチオンとに組み合わされる。この溶液は、代表的に約60℃〜70℃でインキュベートされ、約23℃に冷却される。そして過剰なポリマーが除去される。以下の配列を有する3種のAS−オリゴヌクレオチドを含むと考えられるマイクロスフェアが、形成される:
【0026】
【化1】

ここで星印は、チオエーション(thioation)を示す。
【0027】
より詳細には、核酸は、代表的に、約30重量%と約100重量%との間のマイクロスフェアを含み、そして約50ミクロンを超えない平均粒子サイズを有する。代表的に、これらは、以下のように調製される。オリゴヌクレオチド混合物の水溶液は、3つのオリゴヌクレオチド溶液(各々の溶液は、これらの3つの型のうちの1つを含む)からのアリコートを組み合わせることにより調製される。3つの型のオリゴヌクレオチドを含む溶液が調製される。この溶液は、好ましくは、約10mg/mlのオリゴヌクレオチドを含む。これらは、約1:1から約4:1のポリカチオン:オリゴヌクレオチドの体積比で、ポリカチオン溶液の10mg/mlストック溶液のアリコートと組み合わされる。ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールのポリマー溶液が調製され、そして、その他の溶液と組み合わされる。加熱、冷却、遠心分離および複数回の洗浄は、水性の懸濁物を提供し、この懸濁物は、代表的に、凍結および凍結乾燥され、オリゴヌクレオチドとポリカチオンとを含むマイクロスフェアの乾燥粉末を形成する。
【0028】
本発明にしたがうマイクロスフェアは、プラスミドDNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドならびに他の核酸のための実行可能な非ウイルス性の送達手段である。これらは、3T3線維芽細胞における、βガラクトシダーゼプラスミドDNAのインビトロ送達を可能にする。マイクロスフェアは、ヌクレアーゼ活性からプラスミドDNAを保護する。高いレベルのβガラクトシダーゼ活性が、マイクロスフェア処方物によるトランスフェクション後に発現される。
【0029】
目的のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するマイクロスフェアは、膵臓のインシュリン産生β細胞の破壊をもたらす自己免疫反応の活性化において重要であることが公知の、表面細胞抗原CD40、CD80およびCD86をダウンレギュレートさせる。このことは、皮下に位置する樹状細胞への皮下注射により達成され得る。NODマウス研究は、β細胞の自己免疫性の破壊の有効な予防を実証する。DNAおよびオリゴヌクレオチドのマイクロスフェアは、インビトロおよびインビボでの、有効なトランスフェクションビヒクルである。樹状細胞は、オリゴヌクレオチドマイクロスフェアを取り込み、表面細胞抗原CD40、CD80およびCD86の発現を抑制するようである。このアンチセンス(anitsense)オリゴヌクレオチドマイクロスフェアは、NODマウスにおいて糖尿病の発症を有効に予防する。
【0030】
以下の実施例は、本発明をさらに示すために、本発明の特定の特徴および利点を示す。これらの実施例は、本発明を限定するとも、他の方法により本発明の限定であるともみなされるべきではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
CD40、CD80およびCD86主要転写物に標的化される、3つのAS−オリゴヌクレオチドを、University of Pittsburgh(Pittsburgh、PA)にあるDNA合成設備により合成した。AS−オリゴヌクレオチドの配列は、以下である:
【0032】
【化2】

オリゴヌクレオチド混合物の水溶液を、3つのオリゴヌクレオチド溶液(各々は、1つの型のオリゴヌクレオチドを含んだ)のアリコートを組み合わせることにより調製し、3つの型のオリゴヌクレオチドの10[mg/ml]溶液を生成した。diH2O中で10[mg/ml]のポリ−L−リジン・HBrを調製した(Bachem、King of
Prussia、PAによるポリ−L−リジン・HBr 50,000まで)。ポリ−L−リジン・HBrを、1:1の体積比で、このオリゴヌクレオチド溶液に添加した。この混合物を、穏やかにボルテックスした。pH=5.5でのlM 酢酸ナトリウム(Spectrum、Gardena、CA)中に、12.5%のPVP(ポリビニルピロリドン、40,000ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)と12.5%のPEG(ポリエチレングリコール、3,350ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)とを含む25%ポリマー溶液を作製した。このポリマー溶液を以下:750μ1のAS−オリゴヌクレオチド、0.75mlのポリ−L−リジン・HBr、3.0mlのPEG/PVPのように2:1の体積比で添加し、そして4.50mlの全容積にした。
【0033】
このバッチを70℃で30分インキュベートし、次に23℃に冷却した。冷却に際して、この溶液が濁り、そして沈殿が生じた。次いで、この懸濁物を遠心分離し、そして過剰なPEG/PVPを除去した。生じたペレットを、脱イオン水でこのペレットを再懸濁することにより洗浄し、次に遠心分離そして上清の除去を行った。この洗浄プロセスを、3回繰り返した。この水性の懸濁物を、凍結および凍結乾燥させて、オリゴヌクレオチドとポリ−L−リジンとを含有するマイクロスフェアの乾燥粉末を形成した。
【0034】
図6は、1:1のポリ−L−リジン:オリゴヌクレオチド比の物質の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。平均粒子サイズ約2.5μmを有するマイクロスフェア(0.5〜4μmのサイズ)を作製した。未知物質の沈殿も観察された。HPLCによるさらなる研究は、この沈殿が残余のPEG/PVP、大部分はPVPからなることを決定した。
【0035】
(実施例2)
CD40、CD80およびCD86主要転写物に標的化される、AS−オリゴヌクレオチドは、実施例1のAS−オリゴヌクレオチド配列であった。このオリゴヌクレオチド混合物の水溶液を、3つのオリゴヌクレオチド溶液(各々は、1つの型のオリゴヌクレオチドを含んだ)のアリコートを組み合わせることにより調製し、3つの型のオリゴヌクレオチドの10[mg/ml]溶液を生成した。オリゴヌクレオチド混合物の溶液を調製した。diH2O中で5[mg/ml]のポリ−L−オルニチン・HBrを調製した(Sigmaによるポリ−L−オルニチン・HBr 11,900(vis))。ポリ−L−オルニチン・HBrを、このオリゴヌクレオチド溶液に添加した。この混合物を、穏やかにボルテックスした。pH=5.5での0.1M 酢酸ナトリウム(Spectrum Chemicals、Gardena、CA)中に、12.5%のPVP(40,000ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)と12.5%のPEG(3,350ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)とを含む25%ポリマー溶液を作製した。このポリマー溶液を添加した。実施例1に記載されるように、インキュベーションとリンスが続いた。1.5mlのAS−オリゴヌクレオチド、1.5mlのポリ−L−オルニチン・HBr、3.0mlのPEG/PVP、そして全容積、6.0mlを調製した。
【0036】
図7は、この1:1のポリ−L−オルニチン:オリゴヌクレオチド比の物質のSEMを示す。平均粒子サイズ約2μmを有するマイクロスフェア(0.2〜8μmのサイズ)を作製した。未知物質の沈殿も観察された。さらなるHPLC研究は、この沈殿が残余のPEG/PVP、大部分はPVPからなることを証明し得た。
【0037】
(実施例3)
インビボ研究を、1型真性糖尿病のNODマウスモデルを使用して実行した。1型糖尿病は、図1に示されるように、膵臓のインシュリン産生β細胞の自己免疫性の破壊により発現する。AS−オリゴヌクレオチドを、β細胞の自己免疫性の破壊を妨害する試みにおいて、3つの適用により使用した。この目標は、T細胞の活性化に必要とされる樹状細胞(dendritric cell)表面タンパク質をコードするCD40、CD80およびCD86主要転写物を標的化することにより、樹状細胞の機能を妨害することである。低レベルのCD40、CD80およびCD86を有する樹状細胞は、インビボにおいて、抑制性の免疫細胞ネットワークを促進することが公知である。これらのカスケードは、インビボにおいて、β細胞に対するT細胞の反応低下をもたらし得る。
【0038】
試験動物の第一群において、樹状細胞を、NODマウスの骨髄の前駆体から、生体外で増殖させた。CD40、CD80およびCD86主要転写物を標的化する3つのAS−オリゴヌクレオチドの組み合わせを、組織培養内の細胞に添加した。インキュベーション後、AS−オリゴヌクレオチドをトランスフェクトさせた樹状細胞を、5〜8週齢の同系(syngenetic)の受容者 (まだ糖尿病ではない)へ注射した。これは、公知の生体外送達アプローチである。
【0039】
平行して、AS−オリゴヌクレオチドのマイクロスフェアを、同一齢の他のNODマウスへ直接注射した。単回の注射を、このように処置した各マウスに対し実行した。別の群のこれらのNODマウスは、処置せず、コントロールとして扱った。
【0040】
図8は、コントロール、未処置のNODマウスが全て、23週齢までに糖尿病を発症したことを示す。生体外でAS−オリゴヌクレオチドをトランスフェクトされ、そして再注入された樹状細胞の群(AS−ODN DC)は、糖尿病の発症の遅延を示し、うち20%が、グルコースレベルが非糖尿病の範囲内に維持されることを示した「糖尿病を有さない」ままであった。マイクロスフェアをインビボ注射されたNODマウスのうち、71%が、43週において「糖尿病を有さない」ままであった。
【0041】
記載された本発明の実施形態は、本発明の原理のいくつかの応用の例であることが理解されるべきである。多くの改変が、本発明の真の意図および範囲から逸脱することなく、当業者によりなされ得る。本明細書に記載される種々の特徴は、任意の組み合わせにおいて使用され得、そして本明細書で具体的に概説される詳細な組み合わせに限定されない。
【数1】

【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−256204(P2011−256204A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−199945(P2011−199945)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【分割の表示】特願2007−513370(P2007−513370)の分割
【原出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(506348846)
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】