説明

オリゴヌクレオチド組成物および免疫応答の調節のためのそれらの使用

【課題】樹状細胞を含めた免疫細胞の機能を調節するための新規のオリゴヌクレオチド組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ヒトまたは動物において樹状細胞を刺激して免疫応答を誘導するための、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド分子および薬学的に許容可能な担体を含む組成物であって、a)3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド分子は6個の塩基であり、塩基の少なくとも50%がグアニンであり、6個の塩基の5’末端がグアニンであり、b)免疫応答が、樹状細胞サイズの増大、粒度の増大、CD40、CD80、CD86またはMHC II細胞表面発現の増大、OX−2細胞表面発現の低減、全身性免疫応答、粘膜免疫応答、および樹状細胞のエンドサイトーシスの増大からなる群から選択される1または複数の応答を含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、3'−OH、5'−OHホスホロチオエートおよびホスホジエステルポリヌクレオチドを含む組成物ならびに免疫応答を調節するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
樹状細胞(DC)は、一次免疫応答の開始に関与する抗原提示細胞(APC)である。それらの機能は、成熟に伴って変化する。未熟DCはネイティブタンパク質抗原のプロセシングに非常に有効であるが、しかし十分な細胞表面MHCクラスIIおよび抗原提示のための同時刺激分子を欠く。成熟DCは、提示のための新規のタンパク質をあまり捕捉できないが、休止CD4およびCD8Tリンパ球の刺激にはより効率的である。形態学的には、成熟DCでは、細胞のサイズおよび粒度を増大する。成熟DCは、細胞表面分子MHC II、CD40、CD83ならびに同時刺激分子CD80およびCD86のレベルが増大している。成熟DCの活性化は、先天性および後天性免疫の両方を強化する高レベルのIL−12の合成を生じる。
【0003】
合成オリゴヌクレオチドは、ポリアニオン性配列である。核酸と、特定細胞タンパク質と、特定核タンパク質と、または特定細胞表面受容体と選択的に結合する合成オリゴヌクレオチドが報告されている。少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する8〜100塩基の合成ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、免疫系を刺激することが示されている(米国特許第6,239,116号)。特にCpGモチーフ(5'プリン−プリン−シトシン−グアニン−ピリミジン−ピリミジン3')を含む合成ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、サイトカイン、例えばIL−6、IL−12、IFN−γ、TNF−αおよびGM−CSFの合成、ナチュラルキラー細胞の溶解活性ならびにBリンパ球の増殖を刺激することが見出されている(Krieg, Annu. Rev. Immunol. 2002, 20: 709-760)。塩基数が14より大きいCpGモチーフを含む合成ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、樹状細胞の成熟および活性化;細胞のサイズおよび粒度の増大;IL−12の合成;エンドサイトーシスの増大;ならびに細胞表面分子MHC II、CD40、CD80、CD83およびCD86の上向き調節(アップレギレーション)を誘発することが報告されている(Sparwasser et al. Eur. J. Immunol. 1998, 28: 2045-205; Hartman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96: 9305-9310; Askew et al. J. Immunol. 2000, 165: 6889-6895)。塩基数が30であるCpGモチーフを含む合成ホスホジエステルオリゴヌクレオチドは、IFNの合成を刺激し、そしてDC前駆体上のCD80およびCD86の発現を上向き調節することが報告されている(Kadowaski et al. J. Immunol. 2001 166: 2291-2295)。
【0004】
(Gxyn、(Tyxn、a(Gxyn、a(Tyxn、(Gxynb、(Tyxnb、a(Gxynbおよびa(Tyxnb(式中、xおよびyは1〜7の整数であり、nは1〜12の整数であり、aおよびbは1または複数のA、C、GまたはTである)からなる群から選択される2〜20塩基の3'−OH、5'−OH合成オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドは2〜20塩基である)を含む組成物を、本発明者らは以前記載した。これらの組成物は、細胞周期の停止、増殖の抑制、カスパーゼ活性化の誘導、アポトーシスの誘導、ならびに単球および末梢血単核球によるサイトカイン合成の刺激からなる群から選択される応答を誘導する(PCT公開WO 01/44465参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要とされるものは、樹状細胞を含めた免疫細胞の機能を調節するための新規のオリゴヌクレオチド組成物およびこれらの組成物の使用方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の概要]
本発明は、6塩基の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド組成物を提供することにより、この必要性を満たす。一実施形態では、ポリヌクレオチドのリン酸骨格は、ホスホジエステル骨格である。別の実施形態では、ポリヌクレオチドのリン酸骨格は、ホスホロチオエート骨格である。好ましくは3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは合成物であり、さらに好ましくは3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、5'GTGTGT3'(配列番号1)、5'GGTGGG3'(配列番号2)、5'GGGTGG3'(配列番号3)、5'GGGCGG3'(配列番号4)、5'GGGAGG3'(配列番号5)、5'GGGGGG3'(配列番号6)および5'GGCCGG3'(配列番号7)からなる群から選択される。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、ヒトまたは動物に投与された場合、免疫応答を刺激する。免疫応答は、全身性または局所性であり得る。一実施形態では、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが投与されるヒトまたは動物におけるAPCを刺激した。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、APCの刺激のためにインビトロで直接APCに投与され得る。刺激されたAPCは次に、ヒトまたは動物における免疫応答の活性化のためにヒトまたは動物に投与され得る。
【0007】
DCに投与される場合、本発明の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、IL−1β、IL−12またはIFNγ産生の増大、細胞サイズおよび粒度の増大、エンドサイトーシスの増大、細胞表面でのCD80、CD83、CD86またはMHC IIの発現の増大、ならびに細胞表面でのOX−2の発現の低減からなる群から選択される応答を誘導することにより、DCを刺激する。
【0008】
本発明はさらに、動物またはヒトにおける免疫応答の刺激、さらに好ましくは動物またはヒトにおける1または複数のAPCの刺激を誘導するのに有効な量で、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物を動物またはヒトに投与する方法を提供する。好ましいAPCは、DCである。別の実施形態では、抗原が、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド組成物のほかに動物またはヒトに投与されて、動物またはヒトにおける抗原特異的免疫応答を生じる。好ましい抗原は、腫瘍抗原および肝炎表面抗原である。いくつかの実施形態では、1または複数のAPCの刺激は、動物またはヒトにおける全身性免疫応答を生じる。その他の実施形態では、免疫応答は局所的である。本発明は、動物またはヒトにおける免疫応答の刺激を誘導するのに有効な量で、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび免疫調節剤、又は方式(モダリティー)を含む組成物を動物またはヒトに投与する方法も包含する。
【0009】
本発明は、腫瘍抗原を包含する抗原を含むAPC、より好ましくはDCへの3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物のインビトロ投与を包む方法であって、このような投与がAPCの刺激を生じる方法をも提供する。本方法はさらに、動物またはヒトにおける免疫応答の刺激のための動物またはヒトへの刺激化APCの導入を包み得る。APC、例えばDCを刺激する短い6塩基3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの予期せぬそして意外な能力は、動物またはヒトに重要な利益を提供する。
【0010】
本明細書中に記載された方法は、疾患、例えば癌を治療するために、アレルギーを治療するために、種々の病原体に対して動物またはヒトに予防接種するために、自己免疫疾患を治療するために、そして移殖拒絶を予防するために、用いられ得る。いくつかの実施形態では、本発明は、IL−12合成を増大することにより、自己免疫疾患の治療ならびに移殖拒絶の予防を達成する。IL−12の合成は、自己免疫疾患、移殖拒絶および移植片対宿主疾患(GVHD)ならびにアレルギーを抑制し得る(例えばBagenstose et al., J. Immunol. 1998; 160: 1612(IL−12による自己免疫における自己抗体産生の下向き調節); Vogel et al., Eur. J. Immunol., 1996; 26: 219(IL−12による、自己免疫の発生に関与するBリンパ球サブセットであるB1リンパ球の抑制);Dey et al., Blood, 1998; 91: 3315(IL−12による移植片対宿主疾患(GVHD)の抑制);Smits et al., Int. Arch Allergy Immunol., 2001; 126-102(アレルギーの治療におけるIL−12によるTh1プロフィールに向けての病原性Th2免疫プロフィールの修飾)参照)。その他の実施形態では、本発明は、予防接種による自己免疫疾患の治療および移植拒絶の予防を達成する(例えばZhang et al., J. Mol. Med. 1996; 74: 653(自己反応性疾患に関与する自己反応性BまたはTリンパ球に対する予防接種);Vignes et al., Eur. J. Immunol., 2000; 30: 2460(移植片拒絶に関与する同種異系反応性Tリンパ球に対する予防接種);Liu et al., J. Exp. Med., 2002; 196: 1013(in situでの活性化DC細胞への死細胞の送達による免疫寛容の導入)参照)。
【0011】
したがって、ヒトを含めた動物における疾患を治療するのに有効な組成物および方法を提供することが本発明の一目的である。
【0012】
本発明の別の目的は、動物またはヒトに予防接種するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、動物またはヒトにおける癌を治療するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、動物またはヒトにおける免疫応答を刺激するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、動物またはヒトにおけるAPC、好ましくはDCの成熟および/または活性化を誘導するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、動物またはヒトへの刺激化APCの投与のための抗原を含むAPCの刺激をインビトロで誘導するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、DCによりIL−1β、IL−12および/またはIFNγの産生を増大するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、DCの細胞サイズおよび/または粒度を増大するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、DCによりエンドサイトーシスを増大するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、DCの細胞表面でのCD40、CD80、CD86および/またはMHC IIのレベルを増大するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、DCの細胞表面でのOX−2のレベルを低減するのに有効な組成物および方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、その他の治療薬または免疫調節剤の作用を助長する組成物および方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、APC、好ましくはDC上の1または複数のサイトカインの作用を強化する組成物および方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、DC上のGM−CSFの作用を強化する組成物および方法を提供することである。
【0025】
本発明のこれらのおよびその他の目的、特徴および利点は、開示された実施形態の以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を再検討すれば明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[発明の詳細な説明]
本発明は、6個の塩基を含む単離された3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド配列を含む組成物であって、塩基の少なくとも50%がグアニンであり、5'塩基がグアニンであり、かつ組成物が投与される動物またはヒトにおける免疫応答を刺激する組成物を提供する。本発明は、動物またはヒトにおける1または複数の抗原提示細胞(APC)または好ましくは1または複数のDCを刺激するのに有効な量で、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物の動物またはヒトへの投与を含む方法も提供する。動物またはヒトにおける1または複数のAPCの刺激は、全身免疫応答または局所免疫応答を生じ得る。本発明は、APCを刺激するのに有効な量での、抗原を含むAPCへの3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを含む組成物のインビトロ投与を含む方法も提供する。これらのAPCは次に、免疫応答の刺激のために薬学的に許容可能な担体とともに動物またはヒトに投与され得る。免疫調節剤、賦形剤、希釈剤および/または担体は、動物またはヒトに投与されるこれらの組成物のいずれかに付加され得る。本発明は、動物またはヒトにおける免疫応答を刺激するための、かつ、インビトロでの抗原提示細胞の刺激のために有用な薬剤の製造における3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの使用も包含する。APC、例えばDCの刺激を誘導する6塩基3'−OH、5'−OH合成ホスホジエステルおよびホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの予期せぬそして意外な能力は、動物またはヒトに重要な利益を提供する。
【0027】
本明細書中で用いる場合、「3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド」という用語は、その3'および5'末端の両方にヒドロキシル部分を有するポリヌクレオチドを指す。特に、本発明の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの3'末端の糖の3'炭素にヒドロキシル部分を含み、かつポリヌクレオチドの5'末端の糖の5'炭素にヒドロキシル部分を含む。本発明の一実施形態では、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは6ヌクレオチド塩基からなる。好ましくは3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは6ヌクレオチド塩基を含み、この場合、それらのヌクレオチド塩基の少なくとも50%はグアニン(G)であり、かつ5'ヌクレオチド塩基はGである。さらに好ましい実施形態では、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、5'GGNNGG3'(配列番号8)配列または5'GGGNGG3'(配列番号9)配列(NはG、C、AまたはTである)を含むかまたはこれらからなる。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは特に、5'GTGTGT3'(配列番号1)、5'GGTGGG3'(配列番号2)、5'GGGTGG3'(配列番号3)、5'GGCCGG3'(配列番号4)、5'GGGGGG3'(配列番号5)、5'GGGAGG3'(配列番号6)および5'GGGCGG3'(配列番号7)からなる群から選択される配列を含むかまたはそれらからなり得る。一実施形態では、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、ベクター中で、APC、DC、ヒトまたは動物に投与される。
【0028】
これらの3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格または修飾化リン酸骨格、例えばホスホロチオエート骨格を含み得る。上記の配列番号に対応するホスホジエステル骨格を含む3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、本明細書中では以下のように呼ばれる:5'GTGTGT3'(配列番号1)(N1A)、5'GGTGGG3'(配列番号2)(N2A)、5'GGGTGG3'(配列番号3)(N3A)、5'GGCCGG3'(配列番号4)(N4A)、5'GGGGGG3'(配列番号5)(N5A)、5'GGGAGG3'(配列番号6)(N6A)および5'GGGCGG3'(配列番号7)(N7A)。これらの実施形態では、ポリヌクレオチド鎖中の各ヌクレオチドは、ホスホジエステルヌクレオチドである。上記の配列番号に対応するホスホロチオエート骨格を含む3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、本明細書中では以下のように呼ばれる:5'GTGTGT3'(配列番号1)(N1B)、5'GGTGGG3'(配列番号2)(N2B)、5'GGGTGG3'(配列番号3)(N3B)、5'GGCCGG3'(配列番号4)(N4B)、5'GGGGGG3'(配列番号5)(N5B)、5'GGGAGG3'(配列番号6)(N6B)および5'GGGCGG3'(配列番号7)(N7B)。これらの実施形態では、ポリヌクレオチド鎖中の各ヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチドである。本発明は、1または複数のホスホジエステルヌクレオチドおよび1または複数のホスホロチオエートヌクレオチドを含む3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドも包含する。好ましくは3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、N1A、N2B、N3BまたはN5B、さらに好ましくはN3BまたはN5Bである。
【0029】
本明細書中で用いる場合、「刺激する(stimulate及びstimulates)」という用語は、用語の前後関係によって、DCまたは別のAPCの活性化または成熟を、あるいは免疫応答の活性化または増大を指す。DCの刺激は、細胞サイズおよび/または粒度の増大、IL−1β、IL−12および/またはIFNγ産生の増大、エンドサイトーシスの増大、CD80、CD83、CD86、MHC IIまたはそれらの任意の組合せの細胞表面発現の増大、OX−2細胞表面発現の低減、あるいはそれらの任意の組合せにより立証され得る。したがって「樹状細胞応答」としては、細胞サイズおよび/または粒度の増大、IL−1β、IL−12またはIFNγ産生の増大、エンドサイトーシスの増大、CD80、CD83、CD86またはMHC IIの細胞表面発現の増大、OX−2細胞表面発現の低減あるいはそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。「樹状細胞」および「DC」という用語は、間質性DC、ランゲルハンス細胞由来DC、形質細胞様(plasmacytoid)DCおよび上記の細胞の任意の前駆体を含むが、これらに限定されない。本明細書中で用いる場合、「産生」という用語は分子の合成および/または分泌を指す。好ましい実施形態では、樹状細胞は間質性DCである。
【0030】
本明細書中に記載された3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドはDCを刺激し得るだけでなく、その他のAPC、例えばプロフェッショナルAPC、例えば単球、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、クッパー細胞、小グリア細胞、シュワン細胞および内皮細胞(これらに限定されない)、ならびに非プロフェッショナルAPC、例えば上皮細胞、繊維芽細胞、メラニン形成細胞(メラノサイト)、神経細胞、平滑筋細胞、筋細胞、肝細胞、星状細胞およびケラチノサイト(これらに限定されない)も刺激し得る、と考えられる。したがって本発明は、APCの活性化のための組成物および方法を包含する。
【0031】
免疫応答を指す場合、「刺激する」という用語は、別記しない限り、一般的には免疫系の活性化を、あるいは抗原非特異的方法での免疫系の構成成分の活性化を指す。個体における免疫応答の刺激は、細胞増殖、クローン拡張、新規タンパク質の合成、エフェクター細胞への分化、記憶細胞への分化、ある型の抗体のレベルまたは量の増大、抗体クラスにおける転換、抗体産生Bリンパ球における体細胞性過剰変異(hypermutation)、ある型の免疫細胞のレベルまたは量の増大、特定位置における免疫細胞の動員(運動性および遊走)、個体におけるサイトカインのレベルまたは量の増大、個体におけるケモカインのレベルまたは量の増大、抗原提示増大、エンドサイトーシス増大、同時刺激性分子(補助分子)の増大または獲得、接着分子の増大または獲得、サイトカイン受容体の増大または獲得、ケモカイン受容体の増大または獲得、細胞媒介性細胞傷害性の増大、形態学的変化、免疫細胞の記憶の確立、活性酸素(reactive oxygen)中間体のレベルまたは量の増大、一酸化窒素のレベルまたは量の増大、神経内分泌分子(例えばホルモン、神経伝達物質等)のレベルまたは量の増大、免疫寛容または免疫抑制の遮断により立証され得るが、これらに限定されない。免疫細胞としては、リンパ球、例えばB細胞、T細胞、例えばCD4+およびCD8+細胞、およびNK細胞;単核球食細胞;顆粒球、例えば好中球、好酸球、好塩基球;本明細書中に記載されたような樹状細胞;ならびに上記細胞の任意の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体型としては、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEおよびIgYが挙げられる。
【0032】
一実施形態では、免疫応答は全身免疫応答である。「全身免疫応答」という用語は、本明細書中では、身体の特定領域に制限されない免疫応答を指す。全身免疫応答の一例は、個体への抗原および免疫刺激分子の投与後の個体中の循環またはリンパ系中に循環する抗体のレベルの増大である。別の例は、個体への免疫刺激分子の投与後の個体中の循環またはリンパ系中のサイトカインおよび/またはケモカインのレベルの増大である。別の例は、血液またはリンパ循環におけるあるいは免疫系器官、例えば脾臓、リンパ節または肝臓における感作抗原を用いた攻撃誘発に応答し得る感作免疫エフェクター細胞、例えばT細胞、B細胞または形質細胞の存在である。その他の実施形態では、免疫応答は、局所免疫応答である。「局所免疫応答」という用語は、主に(しかし必ずしも完全にというわけではない)、身体の特定領域に制限される免疫応答を指す。局所免疫応答は、限局性腫脹または発赤および/または身体の特定領域への免疫細胞の動員(運動性および遊走)により立証される。例えば粘膜免疫応答は、抗原および/または免疫刺激分子、例えば本明細書中に記載された3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの粘膜投与後に起こり得る。粘膜応答としては、ある型の抗体のレベルまたは量の増大、IgA抗体のレベルまたは量の増大、γ/δ陽性Tリンパ球の活性化、局所免疫寛容の誘導および全身免疫寛容の誘導が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、疾患の治療または予防のために個体(即ち動物またはヒト)に投与される。本明細書中で用いる場合、「疾患」という用語は、身体的健康が悪化される状態を指し、例としては癌、病原体、例えばウイルス、細菌または寄生生物による感染;アレルギー;自己免疫疾患;ならびに移殖器官に対する自己免疫応答が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、疾患はDC機能障害に関連し、例としてはセザリー症候群(患者は循環DCの顕著な欠損を有する)(Wysocka et al., Blood 2002, 100: 3287)、ダウン症候群(患者は樹状突起萎縮を有する)(Takashima et al., J. Intellect. Disabil. Res. 1994, 38: 265)、DCの不適切活性化を伴う自己免疫疾患(例えばDCによる自己抗原の長期提示)(Erikson et al., J. Exp. Med. 2003, 197: 323およびLudewig et al., Curr. Opin. Immunol. 2001, 13: 657)、脊髄損傷(患者は樹状突起萎縮を有する)(Iversen et al., Blood 2000, 96: 2081)およびグレーブス病(甲状腺樹状細胞が疾患に関連する)(Quadbeck et al., Scand. J. Immunol. 2002, 55: 612)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」という用語は、疾患症候の減少を指し、疾患の治癒を要さない。同様にまた本明細書中で用いる場合、「有効量」という用語は、免疫応答を誘導するのに有効な3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの量を指す。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの治療有効性は、塩基、糖またはリン酸骨格の化学的修飾、適切な配列を含む細菌プラスミドを用いた配列の化学的補充またはバイオテクノロジー的増幅、配列と生物学的または化学的担体との接合、あるいは配列と細胞型特異的リガンドまたは抗体とのカップリングを含めた方法(これらに限定されない)により増大され得る。
【0034】
本発明の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、薬学的に許容可能な担体と組合せられ、組成物としてインビトロまたはインビボで、細胞に、好ましくはAPC、さらに好ましくはDCに投与され得る。本発明の一実施形態では、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを含む組成物は、DCを刺激するのに有効な量で、インビトロでDCに投与される。DCは次に、動物またはヒトにおける免疫応答の刺激のために、薬学的に許容可能な担体とともに動物またはヒトに投与される。好ましい実施形態では、樹状細胞は、以下の:MHC IIの高細胞内レベル;高飲食作用活性;高レベルの特異的ケモカイン受容体CCR1、CCR2、CCR3、CCR5、CCR6およびCXRC1;低レベルのCCR7;高レベルのCD36、CD68、CD47およびCD91分子;低レベルの同時刺激性CD40、CD54、CD58、CD80およびCD83分子;DC−LAMP(LAMP;リソソーム関連膜タンパク質)の非存在;DCIR(DC免疫受容体)の存在、CLEC−1(C−レクチン受容体)、DC−ASGPR(DCアシアロ糖タンパク質)、MN(マンノース受容体)、TLR−2および−3(Toll様受容体)、FCγR、FcεR、インテグリンαvβ5およびαvβ3の細胞表面の存在(これらに限定されない)を含めた特徴を有する未熟DCである。未熟DCは、末梢血中に見出され得る。さらなる好ましい実施形態では、未熟DCは、DCへの3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの投与前に、抗原を含むかまたは抗原に曝露される。抗原を含むDCを得る方法としては、抗原パルス標識、ならびに1またはいくつかの抗原を発現する遺伝子修飾DCの使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
1または複数の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、免疫応答の刺激のために動物またはヒトに再注入されるよう意図されたDCの刺激を誘導するのに有効な量で、単独で、または抗原、例えば腫瘍抗原を含むDCに影響を及ぼす他の免疫調節剤と組合せて、インビトロでDCに投与され得る、と理解されるべきである。免疫調節剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:水酸化アルミニウム;リン酸アルミニウム;リン酸カルシウム;ポリマー;コポリマー、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、例えばブロックコポリマー;ポリマーP1005;フロイント完全アジュバント(動物用);フロイント不完全アジュバント;モノオレイン酸ソルビタン;スクアレン;CRL−8300アジュバント;QS21;サポニン;ISCOM;ムラミルジペプチド;グルコサミニルムラミルジペプチド;トレハロース;細菌抽出物、例えばマイコバクテリア抽出物;細菌全細胞、例えばマイコバクテリア全細胞;解毒化エンドトキシン;膜脂質;原核生物から単離されたDNA、CpG合成オリゴヌクレオチド;非CpG合成オリゴヌクレオチド;アパタマー(apatamer);プラスミド免疫刺激分子;ポリ(I:C)分子;サイトカイン;ケモカイン;キトサンおよび誘導体;ヒアルロン酸および誘導体;コレラ毒素;百日咳毒素;ならびにキーホールリンペットヘモシアニン、あるいはそれらの組合せ。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドまたは3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド+免疫調節剤は、単一治療において、または多重治療において、任意選択に異なる濃度で、そしてDCの刺激に適した期間に亘って、DCに加えられ得る。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、免疫調節剤の投与の前に、同時にまたは後に加えられ得る。さらに3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、抗原(単数または複数)の投与の前に、同時にまたは後に加えられ得る。
【0036】
本発明は、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよびDC内に含まれない抗原を動物またはヒトに投与する方法も包含するが、この場合、このような投与は、動物またはヒトにおける免疫応答、さらに好ましくは抗原特異的免疫応答を生じる。抗原は、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの投与の前に、同時にまたは後に動物またはヒトに投与され得る。好ましい実施形態では、抗原は3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドと同時に投与される。
【0037】
本明細書中に記載された抗原は、任意の特定の抗原または抗原型に限定されない。一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、例えば腫瘍細胞溶解物由来の腫瘍抗原である。別の実施形態では、抗原は、病原体由来の抗原、さらに好ましくは病原体の表面で発現される抗原である。病原体由来表面抗原の一例は、肝炎表面抗原である。DC内に含まれない抗原が動物またはヒトに投与される場合、抗原はタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドとして投与されるか、あるいは抗原をコードするポリヌクレオチドが投与され得る。抗原をコードするポリヌクレオチドは、動物またはヒト中での抗原ポリペプチドの発現を可能にするその他の因子を含むベクター内に含まれ得る。一実施形態では、抗原および3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、異なるベクター内に含まれる。
【0038】
動物またはヒトへの3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドで刺激された、抗原を含むDCの投与、または3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび抗原の投与は、動物またはヒトにおける免疫応答の刺激を生じる。好ましい実施形態では、このような投与は、動物またはヒトにおける抗原特異的免疫応答と一緒に、免疫系の刺激を生じる。「抗原特異的免疫応答」という用語は、抗原に対して優勢的に向けられる免疫応答を指す。抗原特異的免疫応答は、抗体の量(抗体力価)の増大、抗体クラスにおける転換、抗体産生Bリンパ球における体細胞性過剰変異、免疫細胞の記憶の確立、抗原が投与されるヒトまたは動物における抗原に対する特異的B細胞受容体またはT細胞受容体を保有する細胞の量の増大を含むかまたはそれらからなる。抗体−抗原複合体の産生を生じるのに十分な親和性および結合力で抗体が抗原に結合する場合、抗体は特定の抗原に「特異的」である。
【0039】
投与形態としては、注射液、溶液、クリーム、ゲル、移植片、ポンプ、軟膏、乳濁液、懸濁液、ミクロスフェア、粒子、微小粒子、ナノ粒子、リポソーム、ペースト、パッチ、錠剤、経皮送達装置、スプレー、エーロゾルまたは当業者に既知のその他の手段が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的処方物は、既知の且つ容易に入手可能な成分を用いて、当該技術分野で既知の手法により調製され得る。例えば化合物は、一般的賦形剤、希釈剤または担体とともに処方され、そして錠剤、カプセル、懸濁液、粉末等に成形され得る。このような処方物に適した賦形剤、希釈剤および担体の例としては、以下のものが挙げられる:充填剤および増量剤(例えばデンプン、糖、マンニトールおよびケイ酸誘導体);結合剤(例えばカルボキシメチルセルロースならびにその他のセルロース誘導体、アルギン酸、ゼラチンおよびポリビニルピロリドン);保湿剤(例えばグリセロール);崩壊剤(例えば炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウム);崩壊遅延剤(例えばパラフィン);再吸収促進剤(例えば第四級アンモニウム化合物);界面活性剤(例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール);吸着担体(例えばカオリンおよびベントナイト);乳化剤;防腐剤;甘味剤;安定剤;着色剤;香料;風味剤;滑剤(例えばタルク、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウム);固体ポリエチルグリコール;ならびにそれらの混合物。
【0040】
処方物は、それらが活性成分のみを、あるいは好ましくは特定位置で、あるいはある時間に亘って放出するよう構成され得る(即ち持放性処方物)。このような組合せは、放出動態を制御するためのさらなるメカニズムをさらに提供する。コーティング、エンベロープおよび保護マトリックスは、例えば高分子物質またはワックスから作られる。
【0041】
1または複数の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび薬学的に許容可能な担体を均一に且つしっかりと会合させることにより調製される。薬学的に許容可能な担体としては、液体担体、固体担体またはその両方が挙げられる。液体担体は、水性担体、非水性担体またはその両方であり、例としては水性懸濁液、油乳剤、油中水型エマルション、水中油中水型エマルション、部位特異的エマルション、長期滞留エマルション、粘着性エマルション、マイクロエマルションおよびナノエマルションが挙げられるが、これらに限定されない。固体担体は、生物学的担体、化学的担体またはその両方であり、例としては、オリゴヌクレオチド組成物の持続性放出を可能にするウイルスベクター系、粒子、微小粒子、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミニポンプ、細菌細胞壁抽出物ならびに生分解性または非生分解性天然または合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。エマルション、ミニポンプおよびポリマーは、送達が必要とされる場所の付近に埋め込まれ得る(Brem et al., J. Neurosurg. 74: 441, 1991)。3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドと固体担体を複合するために用いられる方法としては、固体担体の表面への直接吸着、直接的にまたは連結部分を介しての固体担体の表面への共有的結合、固体担体を造るために用いられるポリマーとの共有的結合が挙げられるが、これらに限定されない。任意選択に、配列(単数または複数)は、非イオン性またはイオン性ポリマー、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN)またはヒアルロン酸の付加により安定化され得る。
【0042】
好ましい水性担体としては、水、生理食塩水および薬学的に許容可能な緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい非水性担体としては、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、脂質、油およびそれらの混合物(これらに限定されない)を含む鉱油または天然油が挙げられるが、これらに限定されず、この場合、油は、多不飽和および飽和脂肪酸の適切な混合物を含む。例としては、ダイズ油、キャノーラ油、パーム油、オリーブ油およびマイグリオール(これらに限定されない)が挙げられ、この場合、脂肪酸は飽和または不飽和であり得る。任意選択に、賦形剤は、用いられる薬学的に許容可能な担体とは関係なく、細胞に3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド組成物を提示するために含まれ得る。これらの賦形剤としては酸化防止剤、緩衝剤および静菌剤が挙げられるが、これらに限定されず、沈殿防止剤および増粘剤を含み得る。
【0043】
1または複数の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、単独で、または他の免疫調節モダリティーと組合せて、ヒトまたは動物に投与され、例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:水酸化アルミニウム;リン酸アルミニウム;リン酸カルシウム;ポリマー;コポリマー、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、例えばブロックコポリマー;ポリマーP1005;フロイント完全アジュバント(動物用);フロイント不完全アジュバント;モノオレイン酸ソルビタン;スクアレン;CRL−8300アジュバント;QS21;サポニン;ISCOM;ムラミルジペプチド;グルコサミニルムラミルジペプチド;トレハロース;細菌抽出物、例えばマイコバクテリア抽出物;細菌全細胞、例えばマイコバクテリア全細胞;解毒化内毒素;膜脂質;原核生物から単離されたDNA、CpG合成オリゴヌクレオチド;非CpG合成オリゴヌクレオチド;アプタマー;免疫刺激分子をコードするプラスミド;ポリ(I:C)分子;サイトカイン;ケモカイン;キトサンおよび誘導体;ヒアルロン酸および誘導体;コレラ毒素;百日咳毒素;ならびにキーホールリンペットヘモシアニン、あるいはそれらの組合せ。
【0044】
さらにまた1または複数の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、単独でまたは他の治療用モダリティー、例えば化学療法薬、抗菌薬または抗ウイルス薬と組合せて投与され得る。化学療法薬としては、抗代謝物、DNA損傷、微小管不安定、微小管安定、アクチン脱重合化、増殖抑制、トポイソメラーゼ抑制、HMG−CoA抑制、プリン抑制、ピリミジン抑制、メタロプロテイナーゼ抑制、CDK抑制、血管新生抑制および分化強化剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらのその他の治療用モダリティーの投与量および投与方法は、当業者に既知である。
【0045】
本発明の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを含むAPCまたはDC細胞、あるいは3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを含む組成物、ならびにその他の物質、例えば種々の形態に特に適した本発明の担体を投与する方法としては、以下の型の投与が挙げられるが、これらに限定されない:経口(例えば頬または舌下)、肛門,直腸(座薬として)、局所的、非経口的、鼻、エーロゾル、吸入、髄腔内、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、皮内、真皮下、皮下、筋内、組織内(例えば組織または腺)、子宮内、膣、体腔中、腫瘍または内部損傷の位置での外科的投与、腫瘍へ直接的に、管腔または器官の実質組織中へ、骨髄中へ、ならびに消化系、生殖系、泌尿器系および泌尿生殖系の任意の粘膜表面への投与。好ましい実施形態では、本発明の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドは、膀胱内(内部膀胱)、目、口腔、鼻腔、直腸および膣表面からなる群から選択される粘膜表面に投与される。上記の種々の投与形態に有用な技法としては、局所適用、経口摂取、外科的投与、注射、噴霧、経皮送達具、浸透圧ポンプ、所望の部位上での直接的電着、あるいは当業者に既知のその他の手段が挙げられるが、これらに限定されない。適用部位は、外部、例えば上皮上、または内部、例えば胃潰瘍、外科的領域またはその他の場所であり得る。
【0046】
本発明の組成物は、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、リポソーム、粒子または組成物の処方および送達の当業者に既知のその他の手段の形態で適用され得る。超微粉砕粒子サイズは、治療薬の吸入送達のために用いられ得る。皮下投与のための適切な処方物のいくつかの例としては、移植片、デポー剤、針、カプセルおよび浸透圧ポンプが挙げられるが、これらに限定されない。膣投与のための適切な処方物のいくつかの例としては、クリームおよびリングが挙げられるが、これらに限定されない。経口投与のための適切な処方物のいくつかの例としては、ピル、液体、シロップおよび懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。経皮投与のための適切な処方物のいくつかの例としては、ゲル、クリーム、ペースト、パッチ、スプレーおよびゲルが挙げられるが、これらに限定されない。皮下投与のための適切な送達メカニズムのいくつかの例としては、移植片、デポー剤、針、カプセルおよび浸透圧ポンプが挙げられるが、これらに限定されない。非経口投与に適した処方物としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および処方物を意図されたレシピエントの血液と等張にさせる溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射溶液、ならびに沈殿防止剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。即時調合注射溶液および懸濁液は、当業者により一般に用いられる滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0047】
本発明の組成物が、例えば1または複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と組合される実施形態は、単位剤形で存在するのが便利であり、そして慣用的薬学的技法により調製され得る。このような技法は、活性成分および薬学的担体(単数または複数)または賦形剤(単数または複数)を含む組成物を会合させる過程を含む。概して、処方物は、活性成分を液体担体と均一に且つしっかりと会合させることにより調製される。好ましい単位投与処方物は、ある用量または単位の投与成分、あるいはその適切な分画を含むものである。特に上記された成分のほかに、本発明の組成物を含む処方物は、当業者に一般的に用いられるその他の作用物質を含み得る、と理解されるべきである。
【0048】
投与容積は、投与経路によって変わる。このような容積は、動物またはヒトに組成物を投与する当業者に既知である。投与経路によって、容積/用量は、好ましくは約0.001〜100ml/用量、さらに好ましくは約0.01〜50ml/用量、最も好ましくは約0.1〜30ml/用量である。例えば筋内注射は、約0.1ml〜1.0mlの容量範囲であり得る。単独で、または他の治療薬(単数または複数)と一緒に投与されるオリゴヌクレオチド組成物は、治療中の疾患、レシピエントの状態および投与経路に適したスケジュールで、適した時間に亘って、単一用量治療で、多用量治療で投与されるか、または連続注入され得る。さらにその他の治療薬は、オリゴヌクレオチド組成物の投与の前に、同時にまたは後に投与され得る。
【0049】
好ましくは用量当たりで投与される3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの量は、約0.0001〜100mg/kg体重、さらに好ましくは約0.001〜10mg/kg体重、最も好ましくは約0.01〜5mg/kg体重である。投与される特定の3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドおよび特定の治療薬、量/用量、用量スケジュールおよび投与経路は、当業者に既知の方法を用いて開業医により決定されるべきであり、そして疾患の型、疾患の重症度、疾患の位置、およびその他の臨床的因子、例えばレシピエントのサイズ、体重および物理的条件によっている。さらにインビトロ検定は、配列のための、ならびに配列+治療薬投与のための最適範囲を同定するのを助けるために任意選択に用いられ得る。
【0050】
以下の実施例は本発明をさらに例証するのに役立てるものであるが、しかしながら同時に本発明を限定するものではない。それどころか、本明細書を読んだ後に、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々のその他の実施形態、修正およびその等価物に対する方策が当業者に示唆され得る、と明瞭に理解される。
【実施例】
【0051】
〔実施例1〕
3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドの調製
3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド配列は、アバカスセグメント化合成技法(Abacus
Segmented Synthesis Technology)を用いて、シグマ−ジェノシス(Sigma-Genosys, Woodlands, TX)により調製された。別記しない限り、配列は、使用直前に、オートクレーブ処理脱イオン水中に、または薬物学的に許容可能な緩衝液、例えば生理食塩水(これらに限定されない)中に分散した。以下の配列を用いた:N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AおよびN7B。
【0052】
〔実施例2〕
樹状細胞
ヒト樹状細胞は、クロンティクス(Clonetics)(San Diego, CA, USA)から入手し、クロンティクスが推奨した培地中で培養した。DCは、3つの異なる個体から入手した(表1参照)。これらの個体の各々に関して主要組織適合分類を実施し、HLA(ヒト白血球抗原)型のいくつかを示す。
【0053】
【表1】

【0054】
〔実施例3〕
3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを用いて培養したDCの細胞サイズおよび粒度の増大
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に、DCを播種した。FACSCaliburを用いてフローサイトメトリーにより細胞サイズ(FCS:前方側散乱)および粒度(SSC:側面光散乱)を測定し、CELLQuest Proソフトウェア(ともにBecton-Dickinson, San Diego, CA, USAから)を用いて分析した。3つの異なる個体から単離されたDCに関して3'−OH、5'−OHポリヌクレオチドを用いた処置後に、FCS>500単位およびSSC>400単位を示すDCのパーセンテージを測定した。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示したように、複数の配列が、細胞サイズ(FCS)および粒度(SSC)の増大により測定されるようなDCの刺激/成熟を誘導した。
【0057】
〔実施例4〕
IL−1β産生の誘導
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中にDCを播種した。インキュベーションの48時間後、市販ELISA(BioSource, Camarillo, CA, USA)を用いて、100μlの培養上清中で、IL−1βの産生を測定した。対照細胞と比較した場合の処置DCによるIL−1β産生の「倍」(×)増大として結果を表す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3に示したように、ポリヌクレオチドN3BおよびポリヌクレオチドN5Bは、試験した3個体からの細胞中のIL−1βの産生を誘導した。
【0060】
〔実施例5〕
IL−12産生の誘導
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中にDCを播種した。インキュベーションの48時間後、市販ELISA(BioSource)を用いて、100μlの培養上清中で、IL−12の産生を測定した。対照細胞と比較した場合の処置DCによるIL−12産生の「倍」(×)増大として結果を表す。
【0061】
【表4】

【0062】
表4に示したように、複数の配列がIL−12の産生を誘導した。
【0063】
〔実施例6〕
IFN−γ産生の誘導
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中にDCを播種した。インキュベーションの48時間後、市販ELISA(BioSource)を用いて、100μlの培養上清中で、IFN−γの産生を測定した。対照細胞と比較した場合の処置DCによるIFN−γ産生の「倍」(×)増大として結果を表す。
【0064】
【表5】

【0065】
表5に示したように、ポリヌクレオチドN3BおよびポリヌクレオチドN5Bは、試験した3個体からの細胞中のIFN−γの産生を誘導した。
【0066】
〔実施例7〕
配列+GM−CSFによるIL−12の誘導
500単位のヒト組換えGM−CSF(Clonetics)および100μgの6塩基ポリヌクレオチドN1AまたはポリヌクレオチドN7Aを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体BからのDCを播種した。インキュベーションの48時間後、市販ELISA(BioSource)を用いて、100μlの培養上清中で、IL−12の産生を測定した。組換えGM−CSFの非存在下または存在下で、対照細胞と比較した場合の処置DCによるIL−12産生の「倍」(×)増大として結果を表す。
【0067】
【表6】

【0068】
表6に示したように、GM−CSFおよびポリヌクレオチドN1AまたはポリヌクレオチドN7A間で、DCによるIL−12の産生に関して、相乗作用を観察した。
【0069】
〔実施例8〕
DC細胞表面でのCD40レベルの増大
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体BおよびCからのDCを播種した。インキュベーションの48時間後、CD40に向けられたFITC接合モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリー(FACSCaliburシステム)により、細胞表面でのCD40レベルを測定し、CELLQuest Pro(全てBecton Dickinsonから)により分析した。処置後のCD40hiDCのパーセンテージとして、結果を表す。「CD40hi」という用語は、CD40のベースライン発現より高いとフローサイトメトリーにより同定された細胞の集団を指す。
【0070】
【表7】

【0071】
表7に示したように、複数の配列が、DCの細胞表面でのCD40の発現を有意に上向き調節する能力を有する。**p<0.001コルモゴロフ−スミルノフ(D>0.20)。
【0072】
〔実施例9〕
DC細胞表面でのCD80レベルの増大
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体BおよびCからのDCを播種した。インキュベーションの48時間後、CD80(Serotec, Oxford, U.K.)に向けられたFITC接合モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより、細胞表面でのCD80レベルを測定し、CELLQuestにより分析した。処置後のCD80hiDCのパーセンテージとして、結果を表す。
【0073】
【表8】

【0074】
表8に示したように、複数の配列が、DCの細胞表面でのCD80の発現を有意に上向き調節した。**p<0.001コルモゴロフ−スミルノフ(D>0.20)。
【0075】
〔実施例10〕
DC細胞表面でのCD86レベルの増大
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体BおよびCからのDCを播種した。インキュベーションの48時間後、CD86(Serotec)に向けられたPE接合モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより、細胞表面でのCD86レベルを測定し、CELLQuest Proにより分析した。処置後のCD86hiDCのパーセンテージとして、結果を表す。
【0076】
【表9】

【0077】
表10に示したように、複数の配列が、DCの細胞表面でのCD86の発現を有意に上向き調節した。**p<0.001コルモゴロフ−スミルノフ(D>0.20)。
【0078】
〔実施例11〕
DC細胞表面でのMHC−IIレベルの増大
100μgの6塩基N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体BからのDCを播種した。インキュベーションの48時間後、MHC II(Serotec)に向けられたFITC接合モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより、細胞表面でのMHC IIレベルを測定し、CELLQuest Proにより分析した。処置後のMHC−IIhiDCのパーセンテージとして、結果を表す。
【0079】
【表10】

【0080】
表10に示したように、N1A,N2AおよびN7Bが、DCの細胞表面でのMHC IIの発現を有意に上向き調節した。**p<0.001コルモゴロフ−スミルノフ(D>0.20)。
【0081】
〔実施例12〕
DC細胞表面でのOX−2レベルの低減
1、10または100μgの6塩基N3AまたはN6Aポリヌクレオチドを用いて、48時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体AからのDCを播種した。インキュベーションの48時間後、OX−2に向けられたFITC接合モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより、細胞表面でのOX−2のレベルを測定し(BioSPARK, Greenwich, CT, USA)、CELLQuest Proにより分析した。DC表面抗原であるOX−2は、Th1サイトカイン産生の刺激を抑制すること、そして免疫細胞に寛容化シグナルを提供することが見出された(Gorczynski
et al., J. Immunol. 1999 162: 774-781)。処置後のOX−2hiDCのパーセンテージとして、結果を表す。
【0082】
【表11】

【0083】
表11に示したように、ポリヌクレオチドN3Aが、DCの細胞表面でのOX−2の発現を有意に下向き調節した。**p<0.001コルモゴロフ−スミルノフ(D>0.20)。
【0084】
〔実施例13〕
DCによるエンドサイトーシスの増大
100μgの6塩基N2A、N2B、N3A、N3B、N5A、N5BおよびN6Bポリヌクレオチドの非存在下または存在下で、4℃(FITC−デキストランの細胞表面結合を制御)および37℃(エンドサイトーシスを査定するため)で、1mg/mlのFITC−デキストラン(20kDa;Sigma-Aldrich)を用いて、24時間、6ウエル平底組織培養プレート中で1.0×105細胞/mlで、1.0ml中に個体BからのDCを播種した。細胞を氷冷リン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、CELLQuest Proを用いてフローサイトメトリーにより分析した。相対エンドサイトーシス率として、結果を表す(正常化△平均蛍光値(△MFV))。△MFV=37℃でFITC−デキストランに曝露されたDCのMFV−4℃でFITC−デキストランに曝露されたDCのMFV。△MFV=(△MFV配列/△MFV対照)×100。
【0085】
【表12】

【0086】
表12に示したように、N2A、N2B、N3A、N5AおよびN5BポリヌクレオチドはDCのエンドサイトーシス率を増大した。
【0087】
〔実施例14〕
抗原パルス標識DCを用いた癌予防接種
C57BL/6マウスから単離したDCに、メラノーマB−16細胞からの腫瘍細胞溶解物をインビトロで負荷する。抗原パルス標識中に、N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを含ませる。75匹のC57BL/6マウスに、約2×106個のB−16メラノーマ細胞を皮下注射する。
【0088】
腫瘍接種の7日後に、マウスを、各5匹の15群に分ける。群1マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DCを予防接種する;群2マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN1Aポリヌクレオチドを予防接種する;群3マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN1Bポリヌクレオチドを予防接種する;群4マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN2Aポリヌクレオチドを予防接種する;群5マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN2Bポリヌクレオチドを予防接種する;群6マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN3Aポリヌクレオチドを予防接種する;群7マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN3Bポリヌクレオチドを予防接種する;群8マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN4Aポリヌクレオチドを予防接種する;群9マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN4Bポリヌクレオチドを予防接種する;群10マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN5Aポリヌクレオチドを予防接種する;群11マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN5Bポリヌクレオチドを予防接種する;群12マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN6Aポリヌクレオチドを予防接種する;群13マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN6Bポリヌクレオチドを予防接種する;群14マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN7Aポリヌクレオチドを予防接種する;ならびに群15マウスに、2×104個のB−16腫瘍溶解物パルス標識DC+100μgのN7Bポリヌクレオチドを予防接種する。
【0089】
1週間後、上記の予防接種を反復する。2週間後、腫瘍の容積および重量を分析した。群2〜15マウスは、群1マウスより少ない腫瘍塊を有する。腫瘍溶解物パルス標識DCの注射の前および後のマウス由来の末梢血単核球を用いて、IFN−γELISPOTにより、B−16抗原に向けられた特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を分析する。B−16に向けられたCTLの頻度は、群1マウスより群2〜15マウスにおいて高い。
【0090】
〔実施例15〕
百日咳菌(Bordatella perutussis)パルス標識DCを用いた予防接種
C57BL/6マウスから単離したDCに、107個の加熱殺菌百日咳菌をインビトロで負荷する。抗原パルス標識中に、N1A、N1B、N2A、N2B、N3A、N3B、N4A、N4B、N5A、N5B、N6A、N6B、N7AまたはN7Bポリヌクレオチドを含ませる。70匹のC57BL/6マウスを5匹の15群分ける。群1マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DCを予防接種する;群2マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN1Aポリヌクレオチドを予防接種する;群3マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN1Bポリヌクレオチドを予防接種する;群4マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN2Aポリヌクレオチドを予防接種する;群5マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN2Bポリヌクレオチドを予防接種する;群6マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN3Aポリヌクレオチドを予防接種する;群7マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN3Bポリヌクレオチドを予防接種する;群8マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN4Aポリヌクレオチドを予防接種する;群9マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN4Bポリヌクレオチドを予防接種する;群10マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN5Aポリヌクレオチドを予防接種する;群11マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN5Bポリヌクレオチドを予防接種する;群12マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN6Aポリヌクレオチドを予防接種する;群13マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN6Bポリヌクレオチドを予防接種する;群14マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN7Aポリヌクレオチドを予防接種する;ならびに群15マウスに、107個の加熱殺菌百日咳菌パルス標識DC+100μgのN7Bポリヌクレオチドを予防接種する。
【0091】
上記の予防接種を、1週間間隔で2回反復する。DCの最後の投与の2週間後に、5×106個の百日咳菌を用いて、マウスを攻撃誘発する(鼻腔内投与)。攻撃誘発後に動物を殺害し、血清中の百日咳菌特異的IgGレベル、肺中の細菌荷重、および百日咳菌特異的抗体分泌細胞に関して検定する。群2〜15マウスは、群1マウスより高いレベルの百日咳菌特異的IgGを示す。群2〜15マウスは、群1マウスより少ない肺中の百日咳菌を示す。群2〜15マウスは、肺中の高レベルの百日咳菌特異的抗体分泌細胞を示す。
【0092】
〔実施例16〕
肝炎表面抗原を用いた予防接種
水酸化アルミニウム(アルミニウムアジュバント;SuperFos Biosector, Vedback, Denmark)および/またはN3A、N6AまたはN6Bポリヌクレオチドと組合せた組換えB型肝炎表面抗原(HbsAg;Cortex Biochemical, San Leandro, CA, USA)を用いた免疫感作を、6〜8週齢雌BALB/Cマウス(Charles River, St-Constant, Qc, Canada)で実行した。0日目および21日目に、総容積50μl中に以下のものを含む溶液を、各マウス(5匹/群)に1回筋内注射で脛骨筋に投与した:
生理食塩水(群1)、HbsAg 1μg(群2)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg(群3)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N3A 10μg(群4)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N3A 100μg(群5)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N3B 10μg(群6)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N3B 100μg(群7)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N6A 10μg(群8)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N6A 100μg(群9)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N6B 10μg(群10)、HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N6B 100μg(群11)。31日目に、血漿を回収した。
【0093】
HbsAgに特異的な抗体を検出し、終点希釈検定ELISAにより定量した。要するに、HbsAgタンパク質の固相を用いて(0.1μg/ウエル、4℃で一晩)、血漿中の抗HbsAgを捕捉し(37℃で1時間)、これを次に、メーカー(Clonetyping system, Southern Biotechnology Inc., Birmingham, AL, USA)の使用説明書に従って、ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合ヤギ抗マウスIgG(全体)、IgG1およびIgG2aを用いて検出した。対照(群1)の2倍の吸光度値(OD450)を生じた最高血漿希釈として、終点力価を限定した。データは、5匹/群の平均±SDとして表13中に表す。
【0094】
【表13】

【0095】
表13に示したように、N3A(群4:HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N3A 10μgおよび群5:HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N3A 100μg)およびN6A(群9:HbsAg 1μg+アルミニウムアジュバント10μg+N6A 100μg)は、HbsAgに対するIgG、IgG1およびIgG2aの力価を増大することにより、HbsAgに対する免疫応答を有意に刺激する能力を有する。
【0096】
〔実施例17〕
肝炎表面抗原を用いた経口予防接種
N6AまたはN6Bポリヌクレオチドと組合せた組換えB型肝炎表面抗原を用いた免疫感作を、6〜8週齢雌BALB/Cマウス(Charles River, St-Constant, Qc, Canada)で実行した。0、7および14日目に、総容積50μl中に以下のものを含む溶液を、各マウス(5匹/群)に経口投与した:
生理食塩水(群1)、HbsAg 10μg(群2)、HbsAg 10μg+N6A 1μg(群3)、HbsAg 10μg+N6A 10μg(群4)、HbsAg 10μg+N6A 100μg(群5)、HbsAg 10μg+N6B 1μg(群6)、HbsAg 10μg+N6B 10μg(群7)およびHbsAg 10μg+N6B 100μg(群8)。21日目に、血漿および腸洗浄液を回収した。プロテアーゼ阻害剤(ペプスタチン10μg、ロイペプシン10μg、アンチパイン10μgおよびベンズアミジン50μg)を含むPBS 0.2mlを静かにピペット分取することにより、腸洗浄液(IgA測定のため)を得た。
【0097】
HbsAgに特異的な抗体を検出し、ELISAにより定量した。要するに、HbsAgタンパク質の固相を用いて(1.0μg/ウエル、4℃で一晩)、血漿中の、または腸洗浄液中の抗HbsAgを捕捉し(37℃で1時間)、これを次に、メーカー(Clonetyping system, Southern Biotechnology Inc.)の使用説明書に従って、ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合ヤギ抗マウスIgA(腸洗浄液用)およびヤギ抗マウス総IgG(血漿用)を用いて検出した。データは、5匹/群の平均±SDとして、OD(450nm)で表14中に表す。IgAに関するODは1:2腸洗浄液希釈後に得て、一方、総IgGは、1:16血清希釈後に得る。
【0098】
【表14】

【0099】
表14に示したように、N6A(群3:HbsAg 10μg+N6A 1μg;群4:HbsAg 10μg+N6A 10μgおよび群5:HbsAg 10μg+N6A 100μg)およびN6B(群8:HbsAg 10μg+N6B 100μg)は、経口投与後のHbsAgに対する免疫応答を有意に刺激した。
【0100】
上記で引用した特許、刊行物および要約は全て、それらの記載内容全体が参照により本明細書中で援用される。上記は本発明の好ましい実施形態に関するだけであり、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の精神および範囲を逸脱せずに、本明細書において多数の修正または変更がなされ得る、と理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物において樹状細胞を刺激して免疫応答を誘導するための、3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド分子および薬学的に許容可能な担体を含む組成物であって、
a)3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド分子は6個の塩基であり、塩基の少なくとも50%がグアニンであり、6個の塩基の5’末端がグアニンであり、
b)免疫応答が、樹状細胞サイズの増大、粒度の増大、CD40、CD80、CD86またはMHC II細胞表面発現の増大、OX−2細胞表面発現の低減、全身性免疫応答、粘膜免疫応答、および樹状細胞のエンドサイトーシスの増大からなる群から選択される1または複数の応答を含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチド分子が、5’GTGTGT3’(配列番号1)、5’GGTGGG3’(配列番号2)、5’GGGTGG3’(配列番号3)、5’GGGCGG3’(配列番号7)、5’GGGAGG3’(配列番号6)、5’GGGGGG3’(配列番号5)、または5’GGCCGG3’(配列番号4)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチド分子が、5’GGGTGG3’(配列番号3)または5’GGGAGG3’(配列番号6)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド分子がホスホジエステル骨格を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド配列がホスホロチオエート骨格を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
皮下、筋内、組織内、髄腔内、または経皮経路で投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
膀胱内、目、口腔、鼻腔、直腸、または膣粘膜経路で投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
持放性デバイスで投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
さらに抗原を含み、免疫応答が抗原特異的である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
化学療法薬、抗菌薬および抗ウイルス薬からなる群より選択される治療法モダリティーをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記化学療法薬が、抗代謝物剤、DNA損傷剤、微小管不安定化剤、微小管安定剤、アクチン脱重合化剤、増殖抑制剤、トポイソメラーゼ抑制剤、HMG−CoA抑制剤、プリン抑制剤、ピリミジン抑制剤、メタロプロテイナーゼ抑制剤、CDK抑制剤、血管新生抑制剤または分化強化剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ポリマー、コポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ブロックコポリマー、ポリマーP1005、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、モノオレイン酸ソルビタン、スクアレン、CRL−8300アジュバント、QS21、サポニン、ISCOM、ムラミルジペプチド、グルコサミニルムラミルジペプチド、トレハロース、細菌抽出物、マイコバクテリア抽出物、細菌全細胞、マイコバクテリア全細胞、解毒化内毒素、膜脂質、原核生物から単離されたDNA、CpG合成オリゴヌクレオチド、非CpG合成オリゴヌクレオチド、アプタマー、免疫刺激分子をコードするプラスミド、ポリ(I:C)分子、サイトカイン、ケモカイン、キトサン、キトサン誘導体、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、コレラ毒素、百日咳毒素、およびキーホールリンペットヘモシアニン、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される免疫調製剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
ヒトまたは動物における腫瘍関連疾患を治療するための、腫瘍細胞溶解物でインビトロパルス標識した樹状細胞、単離された3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド分子および薬学的に許容可能な担体を含む組成物であって、単離された3'−OH、5'−OHポリヌクレオチド分子は6個の塩基であり、塩基の少なくとも50%がグアニンであり、6個の塩基の5’末端がグアニンである、組成物。
【請求項14】
前記腫瘍関連疾患がメラノーマである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
薬学的に許容可能な担体が液体担体、固体担体またはその組み合わせである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記液体担体が、水、生理食塩水、生理学的に許容可能な緩衝液、水性懸濁液、油乳剤、油中水型エマルション、水中油中水型エマルション、部位特異的エマルション、長期滞留エマルション、粘着性エマルション、マイクロエマルション、またはナノエマルションである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記固体担体が、ポリヌクレオチド組成物の持続性放出を可能にする、化学的担体、生物学的担体、粒子、微小粒子、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミニポンプ、細菌細胞壁抽出物、生分解性または非生分解性天然または合成ポリマーである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
希釈剤、賦形剤、または担体をさらに含み、希釈剤、賦形剤、または担体が、充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、崩壊遅延剤、再吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、乳化剤、防腐剤、甘味剤、安定剤、着色剤、香料、風味剤、滑剤、固体ポリエチルグリコールまたはそれらの混合物である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記動物またはヒトに投与され、投与が、経口、肛門、直腸、局所的、非経口的、鼻、エーロゾル、吸入、皮下、経皮、皮内、真皮下、筋内、腹腔内、髄腔内、動脈内、静脈内、組織内、子宮内、膣、体腔中、腫瘍または内部損傷の位置での投与、腫瘍へ直接的に、管腔または器官の実質組織中へ、骨髄中へ、消化系、生殖系、泌尿器系または泌尿生殖系の粘膜表面への投与である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
用量当たりの組成物量が、約0.0001〜100mg/kg体重である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
用量当たりの組成物量が、約0.001〜10mg/kg体重である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
用量当たりの組成物量が、約0.01〜5mg/kg体重である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−26328(P2011−26328A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204776(P2010−204776)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2003−586354(P2003−586354)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(503082723)バイオニケ ライフ サイエンシーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】