オリゴヌクレオチド
二次構造を実質的に有さず、ヌクレオチド残基から形成され、2つ以上の内部ヌクレオチド残基が結合するクエンチャーなしに蛍光体で標識されている一本鎖オリゴヌクレオチド。典型的には蛍光体で標識されたヌクレオチド残基の少なくとも2つは少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されている。このオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列の研究に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド、特にハイブリダイゼーションプローブとして使用するための蛍光標識オリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
特異的DNA配列を検出する技法および公知の一塩基多型を記録する技法は多数知られている。これらの検出方法のいくつかは蛍光プローブのハイブリダイゼーションを利用しており、ドナー部分とアクセプター部分との間のエネルギー移動に頼っている。
【0003】
ホモジニアスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、増幅工程と検出工程が対になった方法である。標的増幅後のゲル電気泳動などの従来法と比べたホモジニアスPCRの利点は、検査時間、作業時間、および相互汚染の可能性の減少である。蛍光プローブは、増幅中(リアルタイム)および増幅後(エンドポイント)に増幅産物を検出および同定するためにLightCycler(Roche)、ABI PRISM 7700および7900(Applied Biosystems)、Smartcycler(Cepheid)、Rotogene(Corbett Research)、MX4000(Stratagene)、SynChron(Biogene)、およびiCycler(BioRad)などのリアルタイムPCR装置と共に採用される。プローブに基づく技法の例には、分子ビーコン(Tyagiら、1996)、5'エキソヌクレアーゼアッセイ(US5691146)、ハイブリダイゼーションプローブ(US6174670)、Scorpionプライマー(Whitcombeら、1999)、およびResonSense(Leeら、2002)がある。蛍光プローブは、標的配列とのハイブリダイゼーションがコンホメーション変化もしくはプローブ分解などによる脱消光(dequenching)またはプローブ相互作用の結果としての励起を招くまでは、典型的には消光状態または非励起状態である。これらのプローブ系は、ドナー(例えば蛍光体)部分とアクセプター(例えば クエンチャーまたは第2の蛍光体)部分との間のエネルギー移動に頼っている。蛍光体により吸収されたエネルギーは、クエンチャーまたはアクセプター蛍光体に移動し、熱として放出されるか、または異なる波長の光として放射されることができる。蛍光シグナルの消光は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムによって起こることがあるし、非FRETのメカニズムによって起こることもある。FRET消光には、ドナーとアクセプターとの間のスペクトル重複が必要であり、この場合、消光の効率はこれら2つの部分の間の距離に関係する。非FRET消光は、蛍光体とクエンチャーとの間の短距離の「接触」により起こり、部分同士でスペクトルが重複する必要はない。
【0004】
5'エキソヌクレアーゼ(TaqMan(商標))アッセイは、PCR増幅された標的DNAを検出するためにFRET消光を使用している。TaqManプローブは、好ましくは5'および3'末端に位置する蛍光体部分およびクエンチャー部分を有するオリゴヌクレオチドである。分子内消光が効率的であることから、無傷のプローブから蛍光はほとんど発生しない。しかし、PCR増幅時にこのプローブはその標的配列と特異的にハイブリダイズし、Taqポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性は蛍光体部分とクエンチャー部分との間でプローブを開裂する。TaqManプローブの酵素的開裂は、蛍光体構成要素とクエンチャー構成要素とを空間的に分離し、標的の増幅と相関して蛍光発光の有意な増加を引き起こす。TaqManプローブを慎重に設計すると、完全に一致したプローブだけが分解し、蛍光シグナルの増加を生じて、多型性標的を識別できるようになる。TaqManプローブはリアルタイムPCR増幅の間に消化されるので、プローブは増幅後の配列解析に利用することはできない。
【0005】
Eclipseプローブは、5'末端に副溝結合剤(MGB)およびクエンチャー部分と、3'末端に結合した蛍光体とを有する短直鎖状オリゴヌクレオチドである。MGBは、Taqのエキソヌクレアーゼ活性がプローブを開裂するのを阻害すると考えられている。プローブのランダムコイル形成により、蛍光体構成要素とクエンチャー構成要素が接近し、蛍光消光が起きる。標的配列へのハイブリダイゼーションはプローブをまっすぐにし、その結果、蛍光体部分およびクエンチャー部分は空間的に離れる。
【0006】
分子ビーコンは分離された状態では非蛍光性であるが、標的配列とハイブリダイゼーションすると蛍光性になる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブである。ハイブリダイゼーションしていない分子ビーコンはステム-ループ構造を形成し、分子の一方の末端に共有結合した蛍光体と、他方の末端に結合したクエンチャーとを有し、その結果、ビーコンのヘアピンは蛍光体部分をクエンチャーと近接した位置に配置する。分子ビーコンが標的配列とハイブリダイズすると、蛍光体部分およびクエンチャー部分は空間的に離れ、その結果、蛍光体はもはや消光されず、分子ビーコンは蛍光を発する。分子ビーコンは、配列検出およびSNP識別のためのリアルタイムアッセイおよびエンドポイントアッセイに採用することができる。分子ビーコンの二次構造はプローブに高特異性を伝達し、一塩基だけ異なる標的の同定を可能にする。しかし、分子ビーコンの分子内相互作用は、潜在的に分子間の標的ハイブリダイゼーションの競合のもととなり、そして、分子ビーコンは内部プローブであることから、標的配列に結合するために、アンプリコンの反対鎖と競合しなければならない。両方の形態の競合が一緒になると、一部の標的分子に対する分子ビーコンのハイブリダイゼーション効率が低下するおそれがある。
【0007】
Scorpionは、蛍光体およびクエンチャーを有するステム-ループ尾部をもつPCRプライマーである(Whitcombeら、1999)。ステム-ループ構造により、蛍光体構成要素およびクエンチャー構成要素は接近する。Scorpionのループ構成要素はプローブ形成配列を有し、高度に効率的な分子内メカニズムにより標的検出が起こる。PCRの間にScorpionは伸長し、プローブ標的配列を含む産物を形成する。Scorpionの尾部は折り重なり、プローブと標的配列とのハイブリダイゼーションが可能になる。増幅された標的へのプローブ形成配列のハイブリダイゼーションは、ステム-ループ構造よりも熱力学的に有利であり、慎重なプローブ設計はわずか一塩基が異なる標的の識別を可能にする。プローブのハイブリダイゼーションによりステム-ループ構造は解離し、その結果、蛍光体構成要素とクエンチャー構成要素とは空間的に離れ、蛍光発生の大きな増加が生じる。ステム-ループ尾部は、DNAポリメラーゼがScorpionのステム-ループ配列をコピーすることを阻害するPCRストッパー(例えばHEG)によりPCRプライマー配列と分離されている。二本鎖Scorpion(Solinasら、2001)は、一方がプライマー、蛍光体、およびプローブ形成配列を有し、他方がクエンチャー部分を有する2つの標識オリゴヌクレオチドを利用している。この場合も、二本鎖Scorpionの伸長によりプローブ形成配列が折り重なり、増幅した標的とハイブリダイズすることが可能になることによって、蛍光体とクエンチャーオリゴヌクレオチドが解離し、発光する蛍光シグナルの量を増加させる。
【0008】
ハイブリダイゼーションプローブは1つの蛍光体部分で標識されたオリゴヌクレオチドである。一方がドナー蛍光体で、他方がアクセプター蛍光体で標識された2つの当該オリゴヌクレオチドが各ハイブリダイゼーションプローブアッセイに必要である。フルオレセインが通常ドナーとして採用され、Cy5、LC-RED640、およびLC-RED705が通常アクセプターとして使用される。ドナー蛍光体の励起は、アクセプター蛍光体の吸収スペクトルと重複する発光スペクトルを生じる。ハイブリダイゼーションプローブ対は、標的分子内の隣接するヌクレオチド配列を認識するように設計されている。分離された状態ではアクセプターオリゴヌクレオチドは励起せず、蛍光シグナルを発生しない。しかし、ポリヌクレオチド標的配列とハイブリダイゼーションする際に、ドナープローブおよびアクセプタープローブは接近し、ドナーからアクセプターに蛍光共鳴エネルギー移動を起こさせる。アクセプター蛍光体からの蛍光シグナルは、両プローブが標的分子にハイブリダイズした場合にのみ発光する。PCR反応に組み込まれた場合、アクセプタープローブからの蛍光は増幅1サイクルあたり1回モニターされ、産物の蓄積のリアルタイム測定を容易にする。ここで、アクセプターにより発光した蛍光の量は、合成された標的の量に比例する。プローブおよびアッセイ条件の慎重な設計により、密接に関係する標識をリアルタイムPCRにより識別することが可能になる。さらに、ハイブリダイゼーションプローブ対を採用して、融解ピーク分析およびTm測定により対立遺伝子を識別することができる。融解曲線分析時の特異的ピークの発生によりホモ接合型試料を同定することができ、融解の追跡1回に2つのピークが存在することによってヘテロ接合型試料を同定することができる。
【0009】
ResonSenseプローブは、プライマー対の位置の間の標的配列に結合する単一標識オリゴヌクレオチドである。ResonSense プローブは、分離された状態または標的配列の不在下では検出できるシグナルを生じない。その代わりにResonSense プローブを励起するためにSYBR GoldなどのDNAインターカレーターを含ませる。DNAインターカレーターは二本鎖DNAに結合し、そして、リアルタイム装置により励起されるとResonSense プローブの蛍光体にエネルギーを移動する(Leeら、2002)。
【0010】
上記プローブ技法は、ポリヌクレオチド配列を検出および識別するためにFRETおよびクエンチャー標識を利用する。しかし、代替的なライトアップ(light-up)プローブ(Svanvikら、2000)システムは、DNA配列を検出および識別するためにクエンチャー標識も、ドナー部分とアクセプター部分との間のFRET移動も必要としない。これらのライトアッププローブは、ペプチド核酸(PNA)から構成されるオリゴヌクレオチド認識配列と、単一の蛍光レポーター基とを含み、ここで、そのレポーターは典型的には非対称シアニン色素であるチアゾールオレンジの誘導体であり、正の電荷を有する。ライトアッププローブの蛍光色素構成要素は、オリゴヌクレオチド分子の末端に結合している。一本鎖の場合は、プローブは相補的核酸配列にハイブリダイズした場合よりも有意に低レベルの蛍光を発光する。一本鎖プローブでは、蛍光体は自由な状態であり、励起エネルギーは運動または熱の形態で放出されることができ、その結果、プローブはあまり蛍光を発生しない。ハイブリダイゼーションすると、正に荷電した蛍光体はDNAの塩基同士の間に入り込み、電荷相互作用の結果として位置が「ロック」され、その結果、励起エネルギーは光としてのみ放出されうる。蛍光発光の量を測定することにより、ライトアッププローブは、核酸配列を検出して1つの位置だけが異なる標的同士を区別するために採用することができる。
【0011】
標的の検出および同定できるようにするためにクエンチャー部分の結合を必要としない他のいくつかの他のプローブ技法も記載されている。多くの蛍光体の発光は、それらの蛍光体が核酸塩基と相互作用することにより変化すると報告されている(Siedelら、1996、Knemeyerら、2000、Leeら、1994、Crockett & Wittwer 2001、Nazerenkoら、2002)。蛍光体とDNAとの相互作用も、蛍光発光の波長に影響すると報告されている。蛍光に最大の作用を及ぼすのは、効率的な電子ドナーであるグアニンであるとされた。消光は、グアニン核酸塩基から蛍光色素への電子移動に起因すると考えられる。消光の程度はプローブおよび標的鎖のグアニンに蛍光体が近接していることに依存すると報告されている(Xuら、1994、Hawkinsら、1997、Norlundら、1989)。蛍光標識プローブでの発光変化の強度および方向は、プローブ配列および標的配列におけるグアニン残基の位置に依存すると報告されている。LUX Primer(Invitrogen)は、ヘアピンの3'末端近くに結合した蛍光体を消光するためにヘアピン構造を採用している(Nazerenkoら、2002)。LUXプライマーのヘアピン構造は、Gの領域に蛍光体部分を接近させることによって蛍光を消光させる場合が多い。プライマーが二本鎖PCR産物に組み込まれると、ヘアピン構造は解離して、蛍光体を脱消光させる。標識近くにグアニン残基が存在すると、LUX Primerの機能性に影響すると報告されている。LUX Primerはどのような二本鎖分子に組み込まれても蛍光シグナルを生じる。したがって、このプライマーは非特異的増幅産物およびプライマー二量体を検出するであろう。
【0012】
GenePinプローブ(Atto-tec GmbH)またはSmart プローブ(Knemeyerら、2000、Heinleinら、2003)は、分子ビーコンに類似したステム-ループ構造である。ループはプローブ形成構成要素であり、ステムは一本鎖状態で蛍光を消光するために採用されている(WO01/36668)。GenePin プローブの蛍光体はステムのポリ(C)構成要素に結合しており、蛍光は相補的なポリ(G)ステム構成要素により効率的に消光される。標的のハイブリダイゼーション時に、ポリ(C)構成要素およびポリ(G)構成要素は分離し、グアニン消光の影響は排除され、蛍光発光のレベルは増加する。
【0013】
Simpleプローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光発光の変化を示す単一標識オリゴヌクレオチドである(US6635427)。蛍光体は典型的には末端に結合しており、ここで、5'標識プローブは好ましくは3'リン酸も含む。Simple プローブでの蛍光変化の強度および方向は、蛍光体の結合位置に隣接するプローブDNA配列およびハイブリダイゼーション時に蛍光体が相互作用する標的DNA配列に依存する。Simple プローブの蛍光消光は、蛍光体が標的鎖のデオキシグアノシンヌクレオチドと接近するハイブリダイゼーション時に報告されている(CrockettおよびWittwer2001)。対照的に、G残基またはその近くに結合している末端蛍光体が相補的標的配列にハイブリダイズしたときに、蛍光増強が報告されている(US6635427)。蛍光体が内部塩基(「バーチャルヌクレオチド」)に置き換わった特定の例では、蛍光体が多型性標的対立遺伝子中のAおよびGヌクレオチドに対向する標的のハイブリダイゼーション時に、Simple プローブの蛍光はそれぞれ増強および消光することが実証された。ヘテロ接合型試料はプローブ/標的のハイブリダイゼーション時に蛍光の有意な増加も減少も示さなかった。
【0014】
ハイブリダイゼーションビーコン(HyBeacon(登録商標)とも呼ばれる)は、一本鎖状態のときよりも標的配列にハイブリダイズしているときに多量の蛍光を発光する内部標識オリゴヌクレオチドである(WO01/73118)。HyBeaconは蛍光シグナルの発生にクエンチャー部分を必要とせず、プローブの二次構造にも、酵素開裂にも、別の蛍光体へのFRETにも頼っていない。クエンチャー標識の不在下で報告されたDNAの消光性が、ハイブリダイゼーション時の蛍光発光の変化を担っている。上に説明した他の単一標識プローブ技法とは異なり、蛍光変化の方向はプローブおよび標的鎖のヌクレオチド配列による影響を受けない。
【0015】
本明細書における以前に公表された文書の一覧および論考は、必ずしもその文書が現況技術の一部であるという承認としても、通常の一般知識であるという承認としてもとらえてはならない。
【特許文献1】US5691146
【特許文献2】US6174670
【特許文献3】WO01/36668
【特許文献4】US6635427
【特許文献5】WO01/73118
【特許文献6】WO01/73118A2
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、今回驚くことに多数の内部蛍光体を好ましくは相互に所定の間隔で有するオリゴヌクレオチドが、それ以外は等しい単一標識版のオリゴヌクレオチドに比べて、標的ポリヌクレオチド配列と結合したときに予想外に大きな蛍光シグナルを与えることを見出した。
【0017】
本発明の第1の態様は、二次構造を実質的に有さず、ヌクレオチド残基から形成される一本鎖オリゴヌクレオチドを提供し、ここで、2つ以上の内部ヌクレオチド残基は結合するクエンチャーを有さない蛍光体で標識されている。
【0018】
下に詳細に論じるように、本発明のオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションプローブとして特に有用である。
【0019】
本発明のオリゴヌクレオチドは、WO01/73118に記載されたHyBeacon(登録商標)のように、容易に検出することのできるハイブリダイゼーションプローブとして有効であるためにオリゴヌクレオチドの二次構造にも、酵素の作用にも、オリゴヌクレオチドに結合したクエンチャー部分にも頼らない。これらのオリゴヌクレオチドと(下記の)それらの標的配列との間の相互作用は、蛍光発光に有意な変化を生み、信頼できる標的検出を可能にする。プローブの安定性の変動によって、下記にさらに詳細に論じる二本鎖融解温度の測定により1つのヌクレオチドだけが異なる標的の識別が可能になる。
【0020】
オリゴヌクレオチドに結合した蛍光体は、C残基に隣接している蛍光体およびその蛍光体の領域に豊富なG残基を有する標的鎖が原因で、プローブ/標的のハイブリダイゼーション時に消光すると予想されるということを示唆している、US6635427に提示された配列に依存するデータとは逆に、本発明のオリゴヌクレオチドは、プローブ配列および標的配列とは無関係に、完全相補的標的配列および(部分的に)ミスマッチの(すなわち部分的に相補的な)標的配列にハイブリダイズしたときに高レベルの蛍光を示す。
【0021】
データは、本発明のオリゴヌクレオチドの蛍光体が一本鎖オリゴヌクレオチド自体と相互作用するが、ハイブリダイゼーション時に形成したハイブリッド中の二本鎖DNAとは相互作用しないことを実証している。したがって、プローブの配列が蛍光変化の強度に影響するおそれがあるが、プローブはハイブリダイゼーション時に消光しない。本発明のオリゴヌクレオチドの蛍光体標識塩基がハイブリダイゼーション時にGに富む標的領域に接近した場合でも、蛍光体で直接標識されたヌクレオチド残基が2つ以上の未標識ヌクレオチド残基で分離されているオリゴヌクレオチドプローブでは特に、脱消光および正の融解ピーク(-dF/dTが正の値となる)が本明細書に実証されたように観察される。本発明のオリゴヌクレオチドが配列に依存しないことは、Nazerenkoら(2002b)により報告されたものとは対照的であり、その報告では、プローブ内の蛍光体の位置および蛍光体へのグアニンの近接に依存して、ハイブリダイゼーション時に内部フルオレセインdTの発光は増強または消光された。ハイブリダイゼーション時に蛍光増強を可能にするためには標識から4ヌクレオチド以内に少なくとも1つのグアニン塩基が必要であると報告された。
【0022】
WO01/73118のHyBeacon(登録商標)と同様に、本明細書に記載する本発明の多標識オリゴヌクレオチドは、プローブ配列および標的配列とは無関係に蛍光増強のレベル増大を生じ、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光増強を促進するために、所定の位置にグアニンを必要としない。理論に縛られるわけではないが、本発明のオリゴヌクレオチドに結合した蛍光体は、一本鎖のときのプローブ(オリゴヌクレオチド)DNAと相互作用することにより(例えば一本鎖疎水性ポケットに埋まることにより)、(例えば衝突消光(collisional quenching)を起こす塩基スタッキングにより)蛍光消光を起こすと考えられている。しかし、プローブが標的とハイブリダイズすると、蛍光体は二本鎖DNAと相互作用せず、その結果、本発明のオリゴヌクレオチドに結合した蛍光体は溶液内に突出し、発光レベルの増大を示し、そのような増大は標的配列には依存しないと考えられている。参照により本明細書に組み込まれている、Marksら(2005)に記載された分子およびコンピュータモデリングは、この点に関連する。
【0023】
「二次構造を実質的にもたない一本鎖オリゴヌクレオチド」により、そのオリゴヌクレオチドは、分子内塩基対形成を可能にする、相互の逆相補体である実質的な部分がある配列を有さないという意味が含まれる。「実質的な部分」により、4つ以上の連続するヌクレオチド残基を意味する。特に、逆相補性の実質的な領域を有するように設計された分子ビーコン、Scorpion、LUX、およびSmartプローブなどの従来技術のオリゴヌクレオチドプローブとは異なり、本発明のプローブは典型的には当該逆相補性を避けるように設計されている。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、標的の逆相補体を採用しているだけであり、二次構造を発生する追加の配列を含まない。
【0024】
オリゴヌクレオチドの潜在的な二次構造は、Mfold(Zucker(2003))などの核酸フォールディングソフトウェアを使用して予測することができる。二次構造の安定性は、その自由エネルギー(ΔG)、すなわちその二次構造を壊すのに必要なエネルギーで表されることが多い。ここで、負側に大きいΔG値は安定な構造を示す。本発明のプローブは、典型的には正の、または負側に小さいΔG値を有し、好ましくは-2kcal/molよりも負側に小さく、さらに好ましくは-1kcal/molよりも負側に小さい。Scorpionなどの二次構造に頼るプローブ技法は、典型的にはずっと負側に大きいΔG値を示す。Thelwellら(2000)により記載されたScorpionプローブは、-7.7kcal/molから-12.2kcal/molの範囲のΔG値を有する。
【0025】
二次構造は、オリゴヌクレオチドの一領域が別の領域とハイブリダイズして、例えば(従来の分子ビーコンの場合のように)ループを形成するときに生じ、オリゴヌクレオチドがその標的とハイブリダイズする効率を低下させる。本発明のオリゴヌクレオチドでは、オリゴヌクレオチドの一領域が別の領域とハイブリダイズする傾向が実質的になく、これは、例えば上記のMfoldソフトウェアを使用して評価することができる。
【0026】
蛍光基(蛍光体)は、5'または3'末端とは対照的に、本発明のオリゴヌクレオチドの内部塩基に結合しており、二本鎖の場合(すなわち標的とハイブリダイズした際)よりも一本鎖の場合に大きく消光されると考えられる。それは、DNA塩基が塩基対を形成していない場合に蛍光体にスタッキングすることができると提案されているからである。一本鎖状態では、蛍光体は2つのDNA塩基の間に挟まれ、安定な疎水性構造を形成することができる。この構造は、ヌクレオチドが塩基対形成に関与する二本鎖の形成時に開放されるものである。
【0027】
末端に標識があると、塩基のスタッキングはハイブリダイゼーション時に蛍光体の一方の側にのみ起きることができる。本発明のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした場合は、蛍光体はDNA塩基の間に位置しないであろうが、塩基から妨害されずに伸びることができる。蛍光体が一本鎖状態よりも二本鎖状態でより多くのグアニンに近接しているならば、Simple プローブなどの末端標識プローブは、二本鎖形成時に消光するであろう。しかし、末端標識が高いグアニン存在度の領域でプローブに結合しているならば、蛍光は二本鎖形成時に増強するであろう(US6635427)。プローブおよび標的鎖中のグアニンの位置および存在度によるこの蛍光消光および増強の配列依存性は、本発明のオリゴヌクレオチドでは観察されない。
【0028】
全てのDNA塩基は、ある程度蛍光を消光することができ、Gが最大のその能力をもつ。疑いを避けるために、用語「結合するクエンチャー」には、オリゴヌクレオチドの部分を形成するDNA塩基は含まれない。本発明のオリゴヌクレオチド上の蛍光体は、一本鎖プローブの塩基と相互作用し、その結果、蛍光は消光する。蛍光体は標的のハイブリダイゼーション時に溶液中に突出し、二本鎖DNAと相互作用しないと予想されることから、標的の配列は蛍光の変化の方向に影響することはできず、すなわち標的中のグアニンはハイブリダイゼーション時に蛍光を消光することはできない。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドは標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光のレベル増大を示す。Gは蛍光強度を調節することができるが、ハイブリダイゼーション時に全ての蛍光が有意に脱消光する。本発明のオリゴヌクレオチドの内部結合蛍光体からの蛍光は、プローブおよび標的鎖中のグアニンの位置および存在度とは無関係に、二本鎖形成時に常に増強する。
【0029】
本発明の二重標識および多重標識オリゴヌクレオチドは、図11に示すようにピーク高の低下または負のピークに至る不都合な相互作用を避けるために典型的には本明細書に開示した単純な間隔の制約に従うものの、クエンチャー構成要素が不在であるにもかかわらず、一本鎖(ハイブリダイズしていない)コンホメーションに比べて相補的核酸配列とハイブリダイズした場合に有意に多量の蛍光を発光する。
【0030】
SN比は、本発明のオリゴヌクレオチドを含む二本鎖ハイブリッドのシグナル強度対一本鎖プローブのシグナル強度の比であり、好ましくは可能な限り大きく、例えば2以上である。本発明のオリゴヌクレオチドのSN比はかなり大きく、実用的には結合するクエンチャー部分が不在であるにもかかわらず1を超える。DNA配列とのある形態の相互作用が原因で、一本鎖状態の場合よりもプローブが標的分子とハイブリダイズしている場合に、蛍光体部分は有意に大きな蛍光シグナルを発光すると考えられる。本発明の二重標識または多重標識オリゴヌクレオチドプローブは、同一の配列の単一標識オリゴヌクレオチドから予想される比よりも大きい比を有する。
【0031】
蛍光増強は、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光体標識残基があらゆる配列状況に置かれたときに起こる。蛍光体標識残基をGに隣接して配置すると、二本鎖状態で最高レベルの蛍光増強を招くことができる。しかし、標的のハイブリダイゼーション時の蛍光増強は、蛍光体標識残基が高いC存在度の領域内に位置する場合にも起こるものである。本発明の一実施形態では、標的鎖の残基は、ハイブリダイゼーション時のプローブ蛍光の消光の原因にも増強の原因にもならない。蛍光体とオリゴヌクレオチドとの相互作用の性質は、遊離オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドとの間で異なり、その結果、本発明のオリゴヌクレオチドは、一本鎖の場合よりも二本鎖の場合に高レベルの蛍光発光を示し、これは、配列が蛍光増強の強度に影響するおそれがあるが、機能性に関して容易に認められる配列の制約がないことを実証している。
【0032】
典型的には、オリゴヌクレオチドは、蛍光体で標識された2または3または4または5または6または7または8または9または10個の内部残基を有する。この数はオリゴヌクレオチドの長さに依存することがある。典型的には、最大約3分の1の内部残基が蛍光体で標識されているが、それよりも少数であってもよい。
【0033】
本発明のオリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは相補的ポリヌクレオチド標識とハイブリダイズして安定なハイブリッドを用意するために適した長さであり、そのハイブリッドの融解温度は標的の正確な配列に依存する。15ヌクレオチド残基未満を有するオリゴヌクレオチドは、多くの場合、特に2つのハイブリダイズする配列が完全には相補的でない場合に十分に安定なハイブリッドを形成しない。もっとも、それらの配列も一部の状況では使用することができる。約30ヌクレオチド残基よりも長いオリゴヌクレオチドは、一塩基のミスマッチが存在する可能性に融解温度が比較的非感受性なハイブリッドを形成することがある。もっとも、それらのオリゴヌクレオチドは一部の状況で使用することができる。
【0034】
典型的には、オリゴヌクレオチドは長さが10から50ヌクレオチド残基であり、好ましくは長さが15から30ヌクレオチド残基である。したがって典型的には、このオリゴヌクレオチドは、長さが10または11または12または13または14または15ヌクレオチド残基から最長25または26または27または28または29または30(以下)である。したがって、本発明は、言及した任意のサイズの範囲内のオリゴヌクレオチドを含む。
【0035】
サイズの範囲が15から30ヌクレオチドの範囲内のオリゴヌクレオチドは、蛍光体で標識された最大約10個のその内部ヌクレオチド残基を有することがあるが、好都合にはこのサイズの範囲のオリゴヌクレオチドは、蛍光体で標識されたその内部残基の2または3または4または5個を有する。
【0036】
蛍光体で標識された少なくとも2つ(または場合によっては2つ)のヌクレオチド残基が、少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されていることが好ましい。典型的には、標識ヌクレオチド残基を分離する2または3または4または5または6個の未標識ヌクレオチド残基がある。2つの未標識残基が標識残基を分離していることが特に好ましい。全ての標識ヌクレオチド残基が少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されていることも特に好ましい。好ましくは、蛍光体同士の直接「接触」消光を回避するように蛍光体は間隔が置かれている。接触消光は蛍光体の物理的接触に起因し、典型的には物理的分離(すなわち蛍光体標識塩基同士の間の少なくとも2つのヌクレオチド残基)により回避される。
【0037】
ヌクレオチド残基は、通常は天然ヌクレオシドA、C、G、T、およびUに由来する。しかし、本発明のオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の位置でヌクレオチドアナログを使用することができ、当該ヌクレオチドアナログは、例えば塩基部分および/または糖部分および/またはリン酸結合で修飾されている。プロピニルdU(dT-アナログ)および2-アミノdA(dAアナログ)などの塩基修飾は、一般にハイブリダイゼーションの性質を変化させ、15個未満のヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドの使用を魅力的にする。プロピニルdU含有オリゴヌクレオチドの場合、それらのオリゴヌクレオチドは、必要な標的配列との融解温度に応じて長さ約10残基である。
【0038】
あるいは、ペプチド核酸(PNA)、LNA(locked nucleic acid)、2'-O-メチルRNA、ホスホルアミダイトDNA、ホスホロチオエートDNA、メチルホスホネートDNA、またはホスホトリエステルDNAから構成されるか、またはそれを含むオリゴヌクレオチドを採用して標的配列と化学的または酵素的により安定な相互作用を形成させることができる。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチド全体にわたって同一の蛍光体を使用することが好ましい。ヌクレオチド残基に結合することができる任意の蛍光体が、オリゴヌクレオチドがその標的配列にハイブリダイズすることを阻止しないならば、その蛍光体を使用することができる。
【0040】
適切な蛍光体には、FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(ヘキサクロロフルオレセイン)などのフルオレセイン系蛍光体;ROX(6-カルボキシ-X-ローダミン)およびTAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)などのローダミン系蛍光体;Cyファミリーの色素、特にCy3およびCy5があり、その全てをGlen Research、22825 Davis Drive、Sterling、VA 20164、米国から入手することができる。
【0041】
NEDおよびJOEなどのその他のフルオレセイン色素、例えば異なる発光スペクトルを有する色素を使用することができる。下記の表9から15に詳細に示すように、Alexa、Atto、Dyomics、Dyomics Megastokes、およびThilyte色素ファミリーなどのその他の蛍光体も使用することができる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、C6 FAM dU(英国サウサンプトン大学から入手できる)またはフルオレセインdT(Glen Research、スターリング、バージニア州から入手できる)をそれぞれ使用して、内部ウラシル/チミン塩基の5-位置で標識する(これに関連して、dTおよびdUの構造は同一であり、それ故にこれらの用語は相互に交換することができる)。FMOC保護されたホスホルアミダイトは、オリゴヌクレオチド内の内部T位置で組み込むことができ、FAM、TET、HEX、ROX、TAMRA、Cy3、およびCy5(全てGlen Researchから入手できる)を非限定的に含む多様な蛍光色素のための結合点として使用することができる。オリゴヌクレオチドの合成後にFMOC基を2'-保護ウリジンから除去し、適切に保護された6-カルボキシフルオレセインホスホルアミダイトなどの蛍光体ホスホルアミダイトを遊離の2'-ヒドロキシ基と結合させることができる。なお別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、内部のA、C、またはG位置で標識することができ、ここで、固相オリゴヌクレオチド合成の間に標識ヌクレオチドがホスホルアミダイトとして取り込まれるか、またはオリゴヌクレオチド合成後に蛍光体が、保護されたホスホルアミダイト(例えば8-アミノアルキル-dA、7-アミノアルキル7-デアザ-dA、N(4)-アミノアルキルdC、および5-アミノアルキル-dC)を使用して結合されるかのいずれかである。
【0043】
本発明のオリゴヌクレオチド全体にわたって典型的には同一の蛍光体が使用されるが、同一のオリゴヌクレオチドに異なる蛍光体を使用することが有利なこともある。例えば、実施例にさらに詳細に論じるように、同一のオリゴヌクレオチド中にROXおよびFAMの両方が存在することが有利である。オリゴヌクレオチドが、一方はROXであり、他方はFAMである2つの蛍光体を有することが特に好ましい。同一のオリゴヌクレオチドに2つ以上の異なる蛍光体を使用することは、そのオリゴヌクレオチドが多重化に使用される場合に特に有利なことがある。
【0044】
蛍光体が二本鎖DNAにインターカレートしないことが好ましい。蛍光体がチアゾールオレンジ(TO)でないことが好ましい。
【0045】
本発明の二重標識オリゴヌクレオチドは、単一標識プローブで観察されるものの2倍の蛍光シグナルおよび背景ノイズを示すことにより、SN比が維持されると予想することができる(すなわち相加的作用が予想される)。しかし、驚くことに二重標識プローブのSN比は、同一の配列の単一標識プローブで観察されたSN比よりも大きい。SN比における同様の予想外の増加は、本発明のその他の多重標識オリゴヌクレオチドでも観察される。
【0046】
さらに、実施例にさらに詳細に記載するように、二重、三重、四重、およびさらなる多重標識プローブは、同一のヌクレオチド配列の個別の単一標識プローブの累積作用が単に相加的である場合に、その作用から予想されるピークよりもかなり大きい融解ピークを発生することが実証された。
【0047】
典型的には、本発明のオリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチド配列に相補的な配列を有する。したがって、そのオリゴヌクレオチドは、適切な条件で標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる。したがって、状況が他のことを示さない限り、「相補的」により、オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズできるという意味を含める。オリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列に完全に相補的であってもよいし(すなわちオリゴヌクレオチド同士の塩基対形成に関して完全なマッチがある)、オリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチド配列に部分的に相補的であってもよい(すなわちオリゴヌクレオチドと標的ポリヌクレオチド配列との間に1つまたは複数のミスマッチがあるが、オリゴヌクレオチドはそれでもハイブリダイズすることができる)。典型的には、オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドと部分的に相補的な場合には、5個未満のミスマッチ、好ましくは1または2または3または4個のミスマッチがあり、さらに好ましくは1つのミスマッチがある。好都合には、オリゴヌクレオチドは、その標的の相補体と少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する。例えば、20残基のオリゴヌクレオチドについて、標的と6または4または3または2または1個のミスマッチがあってもよい。
【0048】
典型的には、標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、マウスゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、および任意の感染因子のゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)からなる群から選択される。好ましくはオリゴヌクレオチドは、以下のヒト遺伝子またはその対立遺伝子の任意の1つに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。
N-アセチルトランスフェラーゼ2 X14672
第V因子Leiden AY364535
第II因子 AF493953
MTHFR NM_005957
鎌状赤血球貧血症 AY356351
【0049】
ヒツジPrP遺伝子(NM_001009481)も分析に好ましい遺伝子である。
【0050】
オリゴヌクレオチドが、以下の感染因子のゲノムまたはその中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであることも好ましい。
トラコーマクラミジア X07547
アデノウイルス AJ293905
A型インフルエンザ AY130766
肺炎連鎖球菌 X52474
MRSA AJ810121
【0051】
実施例にさらに記載するように、このオリゴヌクレオチドは、遺伝子の1つの対立遺伝子に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、このオリゴヌクレオチドは、ヒトにおいて特定の遺伝病(例えば嚢胞性線維症)に関連することがある遺伝子の突然変異対立遺伝子に相補的であってもよいし、野生型対立遺伝子に相補的であってもよい。その遺伝子の与えられた対立遺伝子を別の対立遺伝子と比べたヌクレオチド配列の差に相補的な配列が、オリゴヌクレオチドの中央近くに位置する(例えばヌクレオチド残基の半分から3分の1の範囲内にある)ことが好ましい。これは、(両対立遺伝子にハイブリダイズすることができるが異なるTmを有する)与えられた当該オリゴヌクレオチドについての融解温度を十分に識別することを可能にする。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明によるオリゴヌクレオチドは、好ましくは公知の多型、例えば点突然変異または一塩基挿入または欠失(SNP)を有する公知のポリヌクレオチド標的の一対立遺伝子に完全に相補的な配列を有する。多型の部位は、好ましくは本質的ではないがオリゴヌクレオチドプローブの中央に位置する。あるいは、オリゴヌクレオチドは公知の非多型ポリヌクレオチド配列に相補的であってもよく、例えば迅速な病原体検出のために単にその標的を検出するために使用してもよい。また、オリゴヌクレオチドを使用して、公知の多型および特徴付けられていない多型を有する潜在的に多型の標的を研究してもよい。オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの差および融解ピークTmの差により未知の多型の位置および/または性質のマッピングする可能性が考えられている。本発明のオリゴヌクレオチドがポリヌクレオチド標的とハイブリダイズされる場合、上記特徴の全ては、至適融解温度と、完全にマッチする鎖および単一または多数の位置のミスマッチを有する鎖の間に融解温度の実質的な差(ΔTm)とを有する安定なハイブリッドの形成に寄与する。
【0053】
下にさらに詳細に論じるように、特に本発明のオリゴヌクレオチドが核酸増幅反応における標的ポリヌクレオチド配列の産生のプローブとして使用される場合に、このオリゴヌクレオチドは、3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシル基を有さないオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼに対するプライマーとして作用できず、DNAリガーゼによる連結できないオリゴヌクレオチドであることが好ましい。好都合には、3'ヌクレオチド残基は3'デオキシ残基である。同じく好都合には、3'ヌクレオチド残基は3'リン酸または鎖の伸長を阻止する他の3'基を有することがある。
【0054】
本発明のさらなる態様は、固体支持体に固定化された本発明のオリゴヌクレオチドを提供する。固体支持体は任意の適切な固体支持体であってよい。オリゴヌクレオチドを溶液中の相補的標的と自由にハイブリダイズさせる形態の支持体を使用してそのオリゴヌクレオチドを固定化する技法およびリンカーは、文献に十分に説明されている。
【0055】
本発明のなおさらなる態様は、本発明のオリゴヌクレオチドのアレイを提供する。アレイは、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドの、2つ以上の個別にアドレスで呼び出せる部位を含んでもよい。典型的には、このアレイは、少なくとも10または少なくとも100または少なくとも1000個の当該部位を有するものである。典型的には、このアレイは、異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、典型的にはそれぞれ異なる部位が、異なる配列を有するオリゴヌクレオチドと関連している。好ましい実施形態では、アレイは、支持体を使用して間隔を置いた位置で固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイであり、ここで、その異なるオリゴヌクレオチドプローブは、本発明による異なるオリゴヌクレオチドである。さらに、本発明のオリゴヌクレオチドは、支持体上または支持体内に固定化されたDNA標的を分析するために採用してもよく、ここで、個別の標的はアレイ型形式に間隔を置いた位置で配置することができる。
【0056】
オリゴヌクレオチドを固定化する方法およびオリゴヌクレオチドのアレイを作製する方法は当技術分野において周知である。
【0057】
本発明のなおさらなる態様は、ポリヌクレオチド配列を有する試料中の標的ポリヌクレオチド配列を研究する方法を提供し、その方法は、標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる本発明のオリゴヌクレオチドと試料を接触させるステップ、およびハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するステップを含む。
【0058】
試料は任意の適切な試料であってもよく、標的ポリヌクレオチド配列を含むことが公知の試料であってもよく、標的ポリヌクレオチド配列を含むことが未知の試料であってもよい。そして、研究の目的は、試料がその配列を含むか含まないかを判定することである。
【0059】
このオリゴヌクレオチドは蛍光標識されており、標的にこのオリゴヌクレオチドが結合すると、蛍光の増大があることから、好都合には蛍光の増加は、このオリゴヌクレオチドと標的ポリヌクレオチド配列との間にハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するために使用される。
【0060】
与えられた条件でこのオリゴヌクレオチドはある温度でその標的とハイブリダイズすることができると認識されているものである。下にさらに詳細に論じるように、標的ポリヌクレオチド配列を研究するために、ハイブリダイゼーションの温度を変動させ、異なる温度で蛍光を検出することが望ましいことがある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、この方法は、前もって決定された温度で、または標的ポリヌクレオチド配列と前記オリゴヌクレオチドとの間に形成したハイブリッドの融解点(Tm)付近の温度範囲にわたって行われる。Tmは、典型的にはプローブの50%が標的配列にハイブリダイズし、50%が解離して溶液中に遊離状態である溶解曲線の分析により判定される。
【0061】
このオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列に完全に相補的であってもよく、そのオリゴヌクレオチドは、与えられたハイブリダイゼーション条件で特徴的なTmを有するものである。あるいは、このオリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチド配列に完全には相補的ではないことがあるが、それでも標的にハイブリダイズすることができ(そのオリゴヌクレオチドは部分的に相補的である)、このオリゴヌクレオチドは特徴的な(しかしほぼ確実に異なる)Tmを有するものである。
【0062】
本発明の方法は、遺伝子の多型の分析に特に適することから、一実施形態において、研究された標的ポリヌクレオチド配列は遺伝子の1つまたは複数の対立遺伝子である。この方法に使用するオリゴヌクレオチド(または前記オリゴヌクレオチド)は、好都合には遺伝子の1つを超える対立遺伝子にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドであり、典型的には与えられたハイブリダイゼーション条件で異なる対立遺伝子に関して異なるTmを有する。
【0063】
この方法は、例えば標的配列が存在するかどうかが未知の試料中での、標的配列の存在を検出するために使用することができる。この方法は、標的配列を同定するためにも使用することができるし、試料中の標的ポリヌクレオチド配列の量を定量するために使用することもできる。典型的には、標的ポリヌクレオチドにオリゴヌクレオチドが結合したときの蛍光の増加をこのために使用する。
【0064】
生物学的材料の最初の供給源(唾液、口腔スワブ、少量の乾燥血液など)が標的ポリヌクレオチドを含みうる少量の核酸だけを含むことが多いことから、試料が増幅により産生されたポリヌクレオチド配列を含む場合に、これは特に好都合である。
【0065】
適切には、ポリヌクレオチド配列は、非対称的PCR増幅、逆転写PCR(RT-PCR)、リガーゼ鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在性増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、または核酸配列に基づく増幅(NASBA)を含む任意の1つまたは複数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生される。
【0066】
好ましい実施形態では、試料中のポリヌクレオチド配列の増幅は、標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドの存在下で行われる。この実施形態では、オリゴヌクレオチドの3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシルを有さないことが特に好ましい。反応に存在する本発明のオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼによる鎖伸長をできず、DNAリガーゼによる連結をできないことが特に好ましい。この実施形態では、試料中のポリヌクレオチド配列が増幅する間に蛍光の観察を行うことも好ましい。
【0067】
増幅の工程が、生物学的供給源から核酸を抽出することができるため、増幅前に当該抽出が必要ないことがある。したがって、例えば試料中のポリヌクレオチド配列は、事前の核酸抽出なしに唾液などの生物学的供給源から増幅により産生することができる。
【0068】
本発明は、公知の多型を有するポリヌクレオチド標的を研究する方法を提供し、その方法は、蛍光体標識ヌクレオチド残基を含むオリゴヌクレオチドプローブを用意するステップを含む。ポリヌクレオチド標的は、オリゴヌクレオチドプローブと共にインキュベートされハイブリッドを形成し、そのオリゴヌクレオチドプローブは、一本鎖形態よりもハイブリッド形態の場合に高レベルの蛍光を示す。オリゴヌクレオチドプローブが発光する蛍光のレベルは、前もって決定された温度で観察されるか、またはある範囲の温度でモニターされる。
【0069】
好都合には、2つの異なる対立遺伝子に異なるTmでハイブリダイズできる単一オリゴヌクレオチドプローブが研究に使用される場合、2つのTmの中間の温度を使用してもよいし、アッセイをある範囲の温度で(すなわち溶解分析により)行ってもよい。
【0070】
この方法は、異なる標的配列(例えば同一遺伝子の異なる対立遺伝子)にハイブリダイズする本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブを含みうると認識されているものである。好都合には、これらは異なる蛍光性質を有する蛍光体を使用することにより識別することができるし、2つ以上のオリゴヌクレオチドは、それぞれの標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズした(またはハイブリダイズしつつある)場合に、異なる融解性(例えばTm)を有する。
【0071】
典型的には、ある範囲の温度が使用される場合に、その範囲はオリゴヌクレオチドとそのポリヌクレオチド標的との間に形成したハイブリッドについてのTmを包含する。好都合には、温度範囲は、Tmの±10℃、典型的には±5℃である。
【0072】
好都合には、2つの異なるオリゴヌクレオチドプローブが研究に含まれる場合に、アッセイはある範囲の温度で(すなわち融解分析により)行われる。
【0073】
温度に伴う蛍光シグナルの変化速度の観察が行われるように、本発明の方法を実施することが特に有用である。
【0074】
典型的には、本発明のオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列とハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドであり、ここで、そのハイブリッドは20℃から90℃、好ましくは40℃から70℃のTmを有する。
【0075】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブが完全に相補的な標的配列および部分的に相補的な標的配列を検出するために使用される状況において、完全に相補的な配列との選択的なハイブリダイゼーションは、標的の濃度がプローブの濃度を超える場合に起こることができる。それは、ミスマッチの配列の方が不安定だからである。極端な場合には、選択的ハイブリダイゼーションは完全に相補的な形態の標的だけを検出することができる。したがって、プローブ濃度の増加を採用して、ミスマッチの標的のハイブリダイゼーションを促し、ピーク高のバランスを改善することができる。
【0076】
本発明のこの態様の一実施形態では、PCRアッセイに本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが含められ、そのオリゴヌクレオチドは、一本鎖の場合よりも相補的標的配列にハイブリダイズした場合に多量の蛍光を発光する。増幅後に、標的配列の存在および同一性が融解曲線分析により判定される(Frenchら、2001、Frenchら、2002)。ハイブリダイズしたプローブの安定性および融解温度は、プローブと標的配列との間の相同性の程度に依存する。反応温度が本発明のオリゴヌクレオチドのTmを超えて増大すると、プローブ/標的二本鎖が解離し、蛍光発光の量が減少する。一塩基だけが異なる配列を検出し、融解ピークTmに基づき区別する。50サイクルの増幅および融解分析は、わずか16分間で完了する。ホモジニアス配列分析に本発明のオリゴヌクレオチドを使用する1つの利点は、単一オリゴヌクレオチドプローブを使用してホモ接合型およびヘテロ接合型試料を信頼性高く同定できることから得られる。
【0077】
ポリヌクレオチド標的はDNA、RNA、またはcDNAであってもよく、一本鎖形態で使用されるか、またはDNA二本鎖を探索して三重鎖を形成させてもよい。一実施形態では、ポリヌクレオチド標的は公知の多型性、好ましくは一塩基多型(SNP)を有する。標的は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブと共にハイブリダイズ条件でインキュベートされる。ハイブリッドが一本鎖オリゴヌクレオチドプローブよりも強い蛍光シグナルを発生することが必要である。ハイブリッドの融解温度は、何よりもポリヌクレオチド標的およびオリゴヌクレオチドプローブが完全に相補的であるか、それとも、SNPの位置、もしくはその近くに単一のミスマッチまたは二重ミスマッチまでもあるかに依存するものである。この方法は、ハイブリッドの融解温度近くの前もって決定された温度で、またはある範囲の温度でオリゴヌクレオチドプローブにより発光する蛍光シグナルのレベルを観察するステップを伴う。2つの代替法が記載されているが、他の代替法も可能である。
a)温度に対する蛍光シグナル強度の負の導関数(-dF/dT)のグラフを温度に対して作るために、蛍光シグナルを連続的に観察しながらハイブリッドを含有する溶液の温度をゆっくりと上げる。ハイブリッドの融解温度(Tm)はピークとして現れ、ポリヌクレオチド標的の配列についての情報を与える。本発明のオリゴヌクレオチドの融解分析により得られたTmを使用して、多型性標的を識別することができる。同様に、その溶液を高温からゆっくりと冷却し、アニーリング温度を決定することにより分析を行うことができる。
b)ハイブリッドの溶液を所定の温度に保ち、蛍光のレベルを観察した。一般に、所定の温度は、完全にマッチしたハイブリッドの融解温度と1つまたは2つのミスマッチを有するハイブリッドの融解温度との中間になるように選択される。観察された蛍光シグナルのレベルは、ハイブリッドが解離したか、していないかを示し、それでポリヌクレオチド標的の配列についての情報を与える。多型性標的はエンドポイント形式およびリアルタイム形式で識別することができる。
【0078】
好都合には、ポリヌクレオチド標的は、ゲノムDNAの所望の部分を増幅させるために適切なプライマーを使用することにより形成したPCRアンプリマーのことがある。ホモジニアスな様式で、例えば増幅サイクル手順の前、途中、または後にオリゴヌクレオチドプローブを加えることにより、1つの反応容器内で、増幅および標的の研究を行うことが好都合なことがある。DNA、RNA、またはcDNAを前もって抽出せずに唾液などの試料から直接標的増幅および配列研究を行うことも好都合なことがある。好ましくは、PCR増幅の間の鎖伸長を防止するためにオリゴヌクレオチドプローブはその3'-末端で修飾される。別の態様では、標的の増幅は非対称PCRを使用して行われ、多量の一本鎖標的を発生させることができる。ミスマッチの標的よりも完全に相補的な標的配列に対する選択的なプローブハイブリダイゼーションは、プローブ濃度を増加させることにより避けることができる。本発明のオリゴヌクレオチドを使用したアッセイのための標的の増幅は、連結鎖反応(LCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、および核酸配列に基づく増幅(NASBA)などの代替技法を使用しても行うことができる。典型的には、150nMよりも高いプローブ濃度が非対称的アッセイに使用される。
【0079】
検討中のSNPの各対立遺伝子に1つが完全に相補的な、本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドを提供することが好都合なことがある。本発明の各オリゴヌクレオチドが異なる蛍光体を有する場合に、ホモ接合型標的およびヘテロ接合型標的の分析のために溶液中でプローブを混合することが好都合なことがある。同様にして、いくつかの異なるSNPの様々な対立遺伝子に相補的な本発明のオリゴヌクレオチドが、それぞれスペクトル的に別個の蛍光体で標識されているならば、そのオリゴヌクレオチドの混合物を多重分析のために溶液中で一緒に使用することができる。当該多重分析は、異なるマッチおよびミスマッチのTmを示す本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドを採用することにより、多数の標的および対立遺伝子を融解温度に基づき同時に検出および同定できるようにすることで、単一の種類のレポーター色素(蛍光体)を使用して行うこともできる。
【0080】
標的ポリヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド標的配列を含有しうる試料、またはその両方にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドが支持体上または支持体内に固定化される本発明の方法を行うことができる。
【0081】
標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、マウスゲノムまたはその中の任意の遺伝子もしくは対立遺伝子、および任意の感染因子のゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)からなる群から好ましくは選択される。好ましい標的配列は上記の通りである。
【0082】
本発明のさらなる態様は、本発明のオリゴヌクレオチドを作製する方法を提供し、その方法は、標的ポリヌクレオチド配列を選択するステップおよび標的ポリヌクレオチドと配列相補性を有し、本発明の第1の態様に示された性質を有するオリゴヌクレオチドを合成するステップを含む。典型的には、このオリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドは、標的配列に完全に相補的なオリゴヌクレオチドであってもよいし、または上記のようにミスマッチのオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0083】
好ましくは、標的ポリヌクレオチド配列は、上にさらに詳細に記載したようにヒトゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、マウスゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、および任意の感染因子のゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)からなる群から選択される。
【0084】
この方法により産生された本発明のオリゴヌクレオチドは、アレイ上に配置することができることから、本発明は、固体支持体上に本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドを配置することによってオリゴヌクレオチドのアレイを産生する方法も含む。典型的には、オリゴヌクレオチドが配置(結合)している部位は、支持体上に均一に分布している。
【0085】
本明細書において参照した全ての文書は、本明細書に組み込まれる。
【0086】
これから以下の非限定的な実施例および図面を参照することにより、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
実施例に関係する材料および方法
オリゴヌクレオチドプローブの設計および合成
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、典型的には長さ約18〜25ヌクレオチドに設計されているか、または完全に相補的な標的配列にハイブリダイズしたときに約55〜60℃のTmを有する。蛍光体は、C6 FAM dU(サウサンプトン大学、英国)またはフルオレセインdT(Glen Research、スターリング、バージニア州)のいずれかを使用してプローブ配列中の内部残基に結合している。C6 FAM dU(図1)の場合、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)は、当業者に周知のDNA合成法により、ウラシル塩基の5位に結合している。蛍光体は、固相オリゴヌクレオチド合成のときにホスホルアミダイトとしてプローブに組み込むことができる(Brownら、2001、Brownら、2003)。他の蛍光修飾は、Glen Researchの8-アミノアルキル-dAおよび5-アミノアルキル-dCなどのモノマーを使用して合成後に行うこともできる。本発明のオリゴヌクレオチドは、プローブをリアルタイムPCRアッセイに組み込んだときにTaq介在性伸長を阻止するために3'-リン酸構成要素または他のブロッキング剤を有することがある。
【0088】
合成から得られたプローブの量は、特定の体積の水にオリゴヌクレオチドプローブの一定分量を溶解させ、260nmでUV吸光を測定することによって決定される。プローブの濃度は、オリゴヌクレオチドのUV吸光および260nmでの吸光係数から計算される。オリゴヌクレオチドの吸光係数は、そのオリゴヌクレオチドが構成されている未修飾ヌクレオシドおよび蛍光標識ヌクレオシドの個別の吸光係数の和から計算される。
【0089】
多型部位は、好都合にはΔTmを最大化するためにオリゴヌクレオチドの中心付近に位置する。多型部位のヌクレオチドは、典型的にはプローブがミスマッチの標的とハイブリダイズした場合に高不安定化相互作用が起きるように選択される。C/A、C/T、およびC/Cミスマッチを示すプローブが選択的に採用され、G/T、G/A、およびG/Gミスマッチは回避される。上記のように、オリゴヌクレオチドプローブは、その標的の相補体に70%または80%または85%または90%または95%の配列同一性を有することがある。
【0090】
ポリメラーゼ連鎖反応
PCRの体積は、典型的には20μlであり、試料2μl、1×PCR緩衝液、0.5μMプライマー、Taqポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)1ユニット、3mM総MgCl2、5ng/μl BSA(Roche Diagnostics)、1mM dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、および150nMプローブを含む。オリゴヌクレオチドを使用するアッセイに採用される緩衝液は、尿の直接分析には10×PCR緩衝液(TaKaRa、1.5mM MgCl2を含む)、10×HEPES#7(100mM HEPES(pH8.3)、250mM KCl)であり、唾液の直接分析および精製/処理された試料には10×HEPES#8(100mM HEPES(pH8.3)、500mM KCl)である。標的のホモジニアスな増幅および検出は、LightCycler装置(Roche Diagnostics)を使用して行うことができる。3段階の熱プロトコールでリアルタイムPCR検出および標的定量を実現することができ、そのプロトコールでは、最初の変性反応ステップ(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルを用いて標的を増幅する。蛍光の取得は3段階アッセイの各サイクルに1回、各プライマーのアニーリングステップの終わりに行う。あるいは、2段階熱プロトコールを使用して標的を迅速に増幅することもでき、そのプロトコールでは、最初の変性ステップ(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)およびアニーリング/伸長期を組み合わせたもの(65℃、10秒間)を含む50サイクルを用いて標的を増幅する。2段階増幅の間は蛍光を取得しない。
【0091】
標的の検出および同定
3段階および2段階増幅の後に、反応物を直ちに変性させ(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)してから、蛍光を連続的に取得する融解曲線分析を行う(35〜95℃で変化速度0.2℃/s)。LightCyclerソフトウェア(バージョン3.5)を使用して温度に対する蛍光の負の導関数(y軸は-dF/dT)を温度(x軸)に対してプロットすることにより、融解ピークを構築する。標的は、オリゴヌクレオチドプローブのピークの融解温度(Tm)を使用して信頼性高く検出および同定することができる。
【実施例1】
【0092】
単一標識オリゴヌクレオチドプローブの例
以下は、標的配列の検出および多型標的の同定に使用されたプローブの例である。対応する標的を増幅するために使用されたプライマー配列を提供する。この実施例は、本発明の二重標識および多重標識プローブと比較するための単一標識オリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0093】
NAT2*5A(C481T)多型の分析は、2303002(5'GAGAGGAATCFGGTACCTGGACC(配列番号1))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部塩基は多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。NAT2*5A SNPを有する標的配列は、195993(5'CCTCTAGAATTAATTTCTGGG(配列番号2))および195991(5'CTGCTCTCTCCTGATTTGGTCC(配列番号3))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な*4およびミスマッチ(C:A)の*5A対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。2303002プローブは、以下のいずれかの配列を有する、NAT2遺伝子(Genbank受託番号X14672)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NAT2*4 5'GGTCCAGGTACCAGATTCCTCTC (配列番号4)
NAT2*5A 5'GGTCCAAGTACCAGATTCCTCTC (配列番号5)
【0094】
NAT2*5C(A803G)多型の分析は、DdeFL1*4(5'GAAGTGCFGAAAAATATATTTAAG(配列番号6))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部塩基は多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。NAT2*5C SNPを有する標的配列は、DdeF2(5'CCTATAGAAAATTCAATTATAAAG(配列番号7))およびDdeR(5'CACGAGATTTCTCCCCAAGG(配列番号8))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な*4およびミスマッチ(A:C)の*5C対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。DdeFL1*4プローブは、以下のいずれかの配列を有する、NAT2遺伝子(Genbank受託番号X14672)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NAT2*4 5'CTTAAATATATTTTTCAGCACTTC (配列番号9)
NAT2*5C 5'CTTAAATATATTTCTCAGCACTTC (配列番号10)
【0095】
NAT2*7(G857A)多型の分析は、BamFL1*7(5'CCTGGTGAFGAATCCCTTAC(配列番号11))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部塩基は多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。NAT2*7 SNPを含有する標的配列は、BamF2(5'CCTATAGAAAATTCAATTATAAAG(配列番号12))およびBamR(5'CACGAGATTTCTCCCCAAGG(配列番号13))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な*7およびミスマッチ(A:C)の*4対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。DdeFL1*7プローブは、以下のいずれかの配列を有する、NAT2遺伝子(Genbank受託番号X14672)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NAT2*4 5'GTAAGGGATTCATCACCAGG (配列番号14)
NAT2*7 5'GTAAGGGATCCATCACCAGG (配列番号15)
【0096】
2つのNAT1*10 SNPの分析は、HYBNAT3S(5'CTTTAAAATACAFTTTTTATTATTA(配列番号16))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。完全に相補的な対立遺伝子、ミスマッチの対立遺伝子、および二重ミスマッチの対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。このプローブの機能性は、多型の位置に全ての可能性のある塩基の組合せを有する相補的オリゴヌクレオチドを使用して実証された。HYBNAT3Sプローブは、以下のいずれかの配列を有するNAT1遺伝子(Genbank受託番号AY376850)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NATRAA TAATAATAAAAAATGTATTTTAAAGATGGC (配列番号17)
NATRTA TAATAATAATAAATGTATTTTAAAGATGGC (配列番号18)
NATRTC TAATAATAATAAATGTCTTTTAAAGATGGC (配列番号19)
NATRAC TAATAATAAAAAATGTCTTTTAAAGATGGC (配列番号20)
【0097】
第V因子Leiden(G1691A)多型の分析は、FVG1(5'CTGTAFTCCTCGCCTGTCC(配列番号21))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。第V因子SNPを有する標的配列は、FVF1.3(5'GGACTACTTCTAATCTGTAAGAGCAGATC(配列番号22))およびFVR3.5(5'GCCCCATTATTTAGCCAGGAGACCTAACATG(配列番号23))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な「野生型」対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の「突然変異」対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。FVG1プローブは、以下のいずれかの配列を有する第V因子遺伝子(Genbank受託番号AY364535)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FVG 5'GGACAGGCGAGGAATACAG (配列番号24)
FVA 5'GGACAGGCAAGGAATACAG (配列番号25)
【0098】
鎌状赤血球貧血症のHbSおよびHbC多型の同時分析は、SCT1(5'GTGCACCTGACFCCTGTGG(配列番号26))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などの単一標識オリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。鎌状赤血球多型を有する標的配列は、SCF1(5'AGGGCAGAGCCATCTATTGCT(配列番号27))およびSCR2(5'CATCCACGTTCACCTTGCC(配列番号28))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な(GT:CA)HbS、ミスマッチ(GT:CT)の野生型、および二重ミスマッチ(GT:TT)のHbC対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。SCT1プローブは、以下のいずれかの配列を有する、β-グロビン遺伝子(Genbank受託番号AY356351)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HbS 5'CCACAGGAGTCAGGTGCAC (配列番号29)
HbWT 5'CCTCAGGAGTCAGGTGCAC (配列番号30)
HbC 5'CCTTAGGAGTCAGGTGCAC (配列番号31)
【0099】
トラコーマクラミジア潜在プラスミドの検出は、HYBCH2(5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG(配列番号32))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。潜在プラスミドの標的配列は、CHF3-1(5'GGGTTCGTTGTAGAGCCATGTCCTATCTTG(配列番号33))およびCHR4-1(5'CGCAGCTGCTGTAATCACCCAGTCGATAAA(配列番号34))などのプライマーを使用して増幅することができる。クラミジアの潜在プラスミドおよびミスマッチ(C:A)の陽性増幅対照(下記参照)は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBCH2プローブは、以下のいずれかの配列を有する、潜在プラスミド(Genbank受託番号X07547)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HYBCHRC 5'CTTGGTATACATTTGCAGGCTTG (配列番号35)
模倣体 5'CTTGGTATACATTTACAGGCTTG (配列番号36)
【0100】
CYP2D6*3、CYP2D6*4、CYP2C19m1、CYP2C19m2、CYP2C9*2、およびCYP2C9*3 SNPなどの標的を分析するために単一標識オリゴヌクレオチドプローブを採用しているさらなるアッセイは、WO01/73118A2に記載されている。
【0101】
【表1A】
【0102】
【表1B】
【実施例2】
【0103】
本発明の二重標識オリゴヌクレオチドプローブの例
第V因子Leiden(G1691A)多型の分析は、FVG11(5'CTGTAFTCCTCGCCFGTCC(配列番号60))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。第V因子SNPを含む標的配列は、FVF1.3(5'GGACTACTTCTAATCTGTAAGAGCAGATC(配列番号22))およびFVR3.5(5'GCCCCATTATTTAGCCAGGAGACCTAACATG(配列番号23))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な「野生型」対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の「突然変異」対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。FVG1プローブは、以下のいずれかの配列を有する第V遺伝子(Genbank受託番号AY364535)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FVG 5'GGACAGGCGAGGAATACAG (配列番号24)
FVA 5'GGACAGGCAAGGAATACAG (配列番号25)
【0104】
トラコーマクラミジア潜在プラスミドの検出は、HYBCH(5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG(配列番号61))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。潜在プラスミド標的配列は、CHF3-1(5'GGGTTCGTTGTAGAGCCATGTCCTATCTTG(配列番号33))およびCHR4-1(5'CGCAGCTGCTGTAATCACCCAGTCGATAAA(配列番号34))などのプライマーを使用して増幅することができる。クラミジア潜在プラスミドおよびミスマッチ(C:A)の陽性増幅対照は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBCH2プローブは、以下のいずれかの配列を有する、潜在プラスミド(Genbank受託番号X07547)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HYBCHRC 5'CTTGGTATACATTTGCAGGCTTG (配列番号35)
模倣体 5'CTTGGTATACATTTACAGGCTTG (配列番号36)
【0105】
淋菌潜在プラスミドの検出は、HYBNG(5'TCTGCFTCCGCFACGGCTTC(配列番号58))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。潜在プラスミド標的配列は、NGF1(5'ACTTTGGCGATATTGCTCGG(配列番号74))およびNGR1(5'TACCGAGAACGAACGCGACA(配列番号75))などのプライマーを使用して増幅することができる。淋菌潜在プラスミドは、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。HYBNGプローブは、以下の配列を有する、潜在プラスミド(Genbank受託番号M10316)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HYBNGRC 5'GAAGCCGTAGCGGAAGCAGA (配列番号59)
【0106】
アデノウイルスC株およびアデノウイルスD株におけるヘキソン遺伝子の検出は、HyBAdC(5'GACGTGGFCCGTGFGCACCAGCCT(配列番号68))およびHyBAdD(5'GACGTGGFCAGAGFGCACCAGCCT(配列番号71))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などの本発明のオリゴヌクレオチドを使用した融解分析により行うことができる。これらのプローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。ヘキソン標的配列は、VirOligoデータベースから得たADRJC1(5'GACATGACTTTCGAGGTCGATCCCATGGA(配列番号76))(Elnifroら、2000)およびPB00432(5'GCCGAGAAGGGCGTGCGCAGGTA(配列番号77))などのプライマーを使用して増幅することができる。これらのアデノウイルス株は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HyBAdCプローブは、アデノウイルスC配列に完全に相補的であり、アデノウイルスD配列にハイブリダイズした場合にC:TミスマッチおよびT:Tミスマッチの両方を示す。HyBAdDプローブは、アデノウイルスD配列に完全に相補的であり、アデノウイルスC配列にハイブリダイズした場合にA:GミスマッチおよびA:Aミスマッチの両方を示す。HyBAdCプローブではプローブの融解温度の大きな変動が得られる(表1)。アデノウイルスプローブは、以下のいずれか配列を有する、ヘキソン遺伝子(Genbank受託番号AJ293905)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HyBAdCRC 5'AGGCTGGTGCACACGGACCACGTC (配列番号69)
HyBAdDRC 5'AGGCTGGTGCACTCTGACCACGTC (配列番号70)
【0107】
A型インフルエンザマトリックス遺伝子の検出は、HYBINF(5'GGGAFCCAAAFAACATGGACAGAGCT(配列番号66))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。マトリックス標的配列は、INFA-1(5'GGACTGCAGCGTAGACGCTT(配列番号78))およびFLU-4(5'ATTTCTTTGGCCCCATGGAATGT(配列番号79))などのプライマーを使用して増幅することができる。インフルエンザはRNAウイルスであることから、標的増幅の前に逆転写(RT)ステップが必要である。cDNAの産生、PCR増幅、および標的検出は、RocheワンステップLightCycler RT-PCRキットを使用して1つの反応容器の中で全て行うことができる。A型インフルエンザは、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。HYBINFプローブは、以下の配列を有する、マトリックス遺伝子(Genbank受託番号AY130766)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
INFRC 5'AGCTCTGTCCATGTTATTTGGATCCC (配列番号67)
【0108】
肺炎連鎖球菌ニューモリシン遺伝子の検出は、SP1(5'GGGGTCTFCCACTFGGAGAAAGCTATC(配列番号64))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。単一標識版のストレプトコッカスプローブ(5'GGGGTCTFCCACTTGGAGAAAGCTATC(配列番号80))も研究した。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。ニューモリシン標的配列は、SPF2(5'CTTGCGGTTGATCGTGCTCCGATGAC(配列番号81))およびSPR2(5'CATTATTGACCTGACCATAATCTTGATGCC(配列番号82))などのプライマーを使用して増幅することができる。肺炎連鎖球菌は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。SP1プローブは、以下の配列を有するニューモリシン遺伝子(Genbank受託番号X52474)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
SP1RC 5'GATAGCTTTCTCCAAGTGGAAGACCCC (配列番号65)
【0109】
第II因子(G20210A)SNPの検出は、HYBFII(5'GCATFGAGGCTCGCFGAGAGTC(配列番号115))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。第II因子標的配列は、FIIF2(5'CTGGGCTCCTGGAACCAATC(配列番号118))およびFIIR1(5'GCTGCCCATGAATAGCACTGG(配列番号119))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBFIIプローブは、以下のいずれかの配列を有する第II因子遺伝子(Genbank受託番号AF493953)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FIIRC 5'GACTCTCAGCGAGCCTCAATGC (配列番号116)
FIIMM 5'GACTCTCAGCAAGCCTCAATGC (配列番号117)
【0110】
MTHFR(A1928C)SNPの検出は、HYBA1928C(5'GACCAGFGAAGCAAGFGTCTTTG(配列番号112))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。A1928C標的配列は、1928F(5'CCCAAGGAGGAGCTGCTGAA(配列番号120))および1928R(5'CCATTCCGGTTTGGTTCTCC(配列番号121))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な対立遺伝子およびミスマッチ(C:T)の対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBA1928Cプローブは、以下の配列を有する、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(Genbank受託番号NM_005957)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FIIRC 5'CAAAGACACTTGCTTCACTGGTC (配列番号113)
FIIMM 5'CAAAGACACTTTCTTCACTGGTC (配列番号114)
【0111】
MTHFR(C677T)SNPの検出は、HYBMTH(5'GTCFGCGGGAGCCGAFTTCATC(配列番号112))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。C677T標的配列は、MTHF2(5'CTGACCTGAAGCACTTGAAGGAG(配列番号122))およびMTHR2(5'GCGGAAGAATGTGTCAGCCTCAAAG(配列番号123))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBMTHプローブは、以下のいずれかの配列を有する5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(Genbank受託番号NM_005957)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FIIRC 5'CAAAGACACTTGCTTCACTGGTC (配列番号110)
FIIMM 5'CAAAGACACTTTCTTCACTGGTC (配列番号129)
【実施例3】
【0112】
唾液試料の直接分析
上記のMTHFR(A1928C)プライマーおよびプローブを用いて、(DNA精製せずに)一連の唾液試料を分析した。水の中に約50%の唾液を含む口すすぎ液をアッセイに直接含めた。口腔用綿棒を水中で絞り出したものも直接分析することができる。HYBA1928Cプローブは、A対立遺伝子およびC対立遺伝子とホモ接合型の試料で、それぞれ約51.5℃および61℃のTmを有する単一の融解ピークを発生する(図2)。A対立遺伝子およびC対立遺伝子にヘテロ接合型の唾液試料は、51.5℃および61℃のピークの両方を発生することで明らかに同定される。DNA精製の必要なしにポリヌクレオチド標識の検出および同定を直接実現した。
【実施例4】
【0113】
二重標識および三重標識プローブを使用した迅速な標的検出
クラミジア潜在プラスミド標的は、プライマーCHF3-1(配列番号33)およびCHR4-1(配列番号34)を使用して増幅することができる。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用する。増幅した標的は、HYBCH(配列番号61)またはHYBCH6プローブ(配列番号104)の含有、ならびに変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けする。クラミジアDNAの存在下で、HYBCHおよびHYBCH6プローブは、それぞれ約56℃および60.5℃のTmで明らかな融解ピークを発生する。本発明のオリゴヌクレオチドを使用したアッセイは、精製DNA、ニートな尿、処理された(Becton Dickinson、オックスフォード、英国)尿およびスワブ、ならびにスワブから直接ピペットで吸い取った液体試料中のクラミジアの存在を検出した(図4)。
【0114】
淋菌プラスミド標的は、プライマーNGF1(配列番号74)およびNGR1(配列番号75)を使用して増幅する。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用する。増幅した標的は、HYBNGプローブ(配列番号58)の含有、ならびに変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けする。淋菌DNAの存在下では、HYBNGプローブは約59℃のTmで明らかな融解ピークを発生する(図5)。
【実施例5】
【0115】
単一標識および二重標識プローブの比較
プライマーFVF1.3(配列番号22)およびFVR3.5(配列番号23)を使用して、DNA精製せずに、第V因子標的は唾液試料から直接増幅する。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、1秒間)、アニーリング/伸長期を組み合わせたもの(65℃、5秒間)を含む50サイクルのPCRからなる2段階LightCyclerプロトコールを採用する。増幅した標的は、FVG1(配列番号21)またはFVG11(配列番号60)オリゴヌクレオチドプローブの含有、ならびに変性(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けする。第V因子のアッセイは、16分間という短時間で完了することができる。ホモ接合型野生型試料は、FVG1およびFVG11プローブを採用した場合にそれぞれ約59℃および55℃のTmを有する単一融解ピークをもたらす。ホモ接合型突然変異試料は、FVG1およびFVG11プローブが採用された場合にそれぞれ約49.5℃および45℃のTmを有する単一融解ピークを発生する。ヘテロ接合型第V因子の試料は、単一標識FVG1プローブを使用したときに59℃および49.5℃両方の融解ピークを生じ、二重標識FVG11プローブを採用したときに55℃および45℃の両方のピークを発生する(図6)。このアッセイは、精製DNA、スワブ試料、および口腔すすぎ液で効率的に機能する。FVG1およびFVG11プローブを使用して、450を超えるゲノム試料が第V因子の多型に関して信頼性高く分類された。
【0116】
二重標識プローブは、一本鎖の場合に単一標識プローブに比べて高レベルのバックグラウンドシグナルを実際に示す。しかし、二重標識FVG11プローブは単一標識FVG1プローブで発生したピークのサイズの約4倍の融解ピークを生じ、それは追加の蛍光体の影響が単に相加的な場合に予想されるものよりも有意に大きい。FVG11における追加の蛍光体は、単一標識FVG1プローブに比べて約4.5℃だけプローブのTmを減少させる(図3)。Tmにおける類似の減少は、単一標識HYBCH2(配列番号32)および二重標識HYBCH(配列番号61)クラミジアプローブで観察される(図11)。
【実施例6】
【0117】
プローブのSN比
プローブ配列、蛍光体の位置、および二重/三重標識の影響を研究するために、本発明のオリゴヌクレオチドからの蛍光発光の量を一本鎖状態および二本鎖状体で測定した。典型的にはTaKaRa緩衝液中で150nMのプローブを150nMの完全に相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、本発明のオリゴヌクレオチドのSN比を決定した。変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含むLightCycler融解曲線プロトコールを使用して、蛍光測定を行った。蛍光値は、解離状態およびハイブリダイズした状態のそれぞれについてプローブのTm±10℃の温度での融解曲線から得た(図7)。温度が発光の量に及ぼす影響の一部を除くことを試みて、蛍光測定をこの所定の温度範囲で行った。ハイブリダイズした蛍光値および解離した蛍光値は、SN比の尺度と、発光に及ぼすプローブのハイブリダイゼーションの影響の指標を与え(表2)、ここで、SN比は、ハイブリダイズしているときのシグナルを解離しているときのシグナルで割ったものとして計算する。プローブのSN比は高度に再現性であり、運転間および装置間で低い変動を示すことが見出された。
【0118】
単一標識FVG1プローブ(配列番号21)は、完全に相補的な標的配列(配列番号24)にハイブリダイズしたときに約59℃のTmを有し、49℃および69℃でそれぞれ8および6(LightCyclerの任意の蛍光ユニット)の蛍光レベルを示す。二重標識FVG11プローブ(配列番号60)は、完全に相補的な標的配列にハイブリダイズしたときに約55℃のTmを有し、45℃および65℃でそれぞれ21.8および12の蛍光レベルを示す。単一標識および二重標識第V因子プローブのSN比は、それぞれ1.33および1.82と計算される。
【0119】
二重標識プローブは、対応する単一標識プローブに比べて高レベルのバックグラウンド蛍光ノイズを示すことがある。しかし、バックグラウンドノイズの高まりにかかわらず、二重標識プローブは一貫してかなり大きなSN比および融解ピーク高を生じる。オリゴヌクレオチド標的と共に、単一標識プローブは20%から92%の間の発光増加を生じた。一方で、二重標識プローブは71%から199%の間の蛍光増加を実証した。150nM FVG11プローブが相補的オリゴヌクレオチドFVG(配列番号24)にハイブリダイズすると、150nM FVG1プローブのハイブリダイゼーションよりも(90℃で)約2倍の大きさのバックグラウンド蛍光が生じる(図8)。しかし、LightCyclerソフトウェアのバックグラウンド補正機能は、二重標識ピークがオリゴヌクレオチド標的を伴う対応する単一標識プローブのピークよりも約5倍の高さであることを実証している(図3および8)。ヘテロ接合型第V因子担体DNA試料由来のバックグラウンド補正データは、二重標識プローブが標的増幅アッセイにおいて単一標識プローブで発生したピーク高のそれぞれ約3倍の2つの融解ピークを生じることを実証している(図9)。
【0120】
グアニンヌクレオチドに隣接する蛍光体
グアニン塩基が効率的な蛍光のクエンチャーであるとすると、プローブが解離状態の場合にGに隣接する蛍光体は効率的に消光されると予想することができ、蛍光発光はプローブのハイブリダイゼーション時にかなり増加すると予想することができる。G(の5'、3'、または両方の位置)に隣接して内部蛍光体を有する全てのプローブは、標的のハイブリダイゼーション時にシグナルの増強を示した(表2)。C9*2C(配列番号55)、136A(配列番号83)、およびHYBA1928C(配列番号112)オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光標識が2つのGヌクレオチドの間に位置するプローブのよい例である。C9*2CのSN比は、蛍光体が1つのGにのみ隣接しているが、一般に非常にGに富む2D64C*プローブ(配列番号51)に匹敵する。A/Tに富むDdeFL1*4プローブ(配列番号6)も類似のSN比を示し、蛍光体に隣接した単一のGヌクレオチドを有する。G残基に隣接して蛍光体を配置することは、大きなピーク高およびSN比を発生するために必要ではないものの、その可能性が高い。蛍光体があらゆる配列環境に位置するときに、プローブは効率的なハイブリダイゼーションシグナルを生じることから、プローブ内の適切な位置にG残基が不在であることは問題ではない。この例は本発明のオリゴヌクレオチドと同様に単一標識オリゴヌクレオチドを示しているが、それにもかかわらず、標的のハイブリダイゼーション時に配列に依存しない蛍光増強を起こすのは標的配列の独立性であり、蛍光体の間の相互作用ではないことを実証している。
【0121】
シトシンヌクレオチドに隣接する蛍光体
標的配列中のグアニン残基が蛍光消光を起こす能力を有するならば、標的のハイブリダイゼーション時にC残基に隣接する蛍光体からの発光が減少すると予想することができる。しかし、HYBNG(配列番号58)、171R(配列番号85)、C19m1A(配列番号39)、SCT1(配列番号26)、およびSP2(配列番号80)などの、蛍光体がC残基に隣接する全てのヌクレオチドプローブは、プローブのハイブリダイゼーション時に蛍光増強を示した。HEPB(配列番号45)およびFVG2(5'GTATFCCTCGCCTGTCCAG(配列番号87))などの高度にCに富むオリゴヌクレオチドプローブでさえも、一本鎖の場合よりも標的にハイブリダイズした場合に高レベルの蛍光を発光する。プローブのハイブリダイゼーション時の蛍光増強は、分子モデリングにより予測されるように標的配列にグアニンヌクレオチドが存在することに依存しないと思われる。分子モデリングは、蛍光体が二本鎖DNAと相互作用しないことを示している。
【0122】
アデニンおよびチミンヌクレオチドに隣接する蛍光体
蛍光体がA残基とT残基との間に位置するオリゴヌクレオチドプローブも、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光発光の増強を示す。NAT2*6(配列番号88)、HYBNAT3S(配列番号16)、およびFVGI(配列番号21)プローブは、蛍光体で標識された塩基がAおよびTヌクレオチドに隣接しているプローブのよい例である。人工的に構築したポリTプローブ(5'TTTTTTTTTTTFTTTTTTTTTTT(配列番号37))は、プローブ鎖および標的鎖の両方にGヌクレオチドが完全に不在であるにもかかわらず、一本鎖状態の場合に比べて標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光発光のレベル増大を示す。これらのオリゴヌクレオチドは、単一の蛍光体を有するため、本発明のオリゴヌクレオチドではない。それにもかかわらず、これらのオリゴヌクレオチドはプローブの蛍光性質が配列に依存しないことを示す。
【0123】
シグナル強度および配列と蛍光体の結合との関係
表2のデータは、プローブの機能性がプローブまたは標的配列内のグアニン残基の存在に依存しないことを実証している。しかし、高いSN比と蛍光体のすぐ隣のプローブ位置にGが存在することの間に関連がある可能性がある。単一標識プローブについて、大きなSN比の多数は、蛍光体がグアニン塩基に隣接するプローブに由来する。しかし、単一標識の最大のSN比は、AヌクレオチドおよびCヌクレオチドが隣接する蛍光体を有するオリゴヌクレオチドから得られた(配列番号85)。
【0124】
蛍光体がA、C、およびT塩基に隣接するプローブは、蛍光体標識塩基のすぐ隣にGヌクレオチドを有するいくつかのプローブよりも大きなシグナルを生じた。さらに、全ての単一標識、二重標識、および多重標識オリゴヌクレオチドプローブは、内部蛍光体に隣接する配列に関係なく、標的ハイブリダイゼーション時に増大したレベルの蛍光発光を示した。したがって、グアニン残基の隣に蛍光体標識ヌクレオチドを配置することによって、さらに大きな融解ピークを得ることができるが、高品質の融解ピークはプローブ配列の特定の部位にG残基を必要とせずに得ることができる。これらのオリゴヌクレオチドは単一の蛍光体を有するが、これらのオリゴヌクレオチドは配列非依存性を示し、ある配列の状況で最適の間隔形成も助けるであろう。
【0125】
標的配列の非依存性
LightcCycler融解曲線分析は、標的の配列がオリゴヌクレオチドプローブの機能性にほとんどまたは全く影響を及ぼさないことを強く示唆している。オリゴヌクレオチドプローブの蛍光体がハイブリダイゼーション時に溶液中に突出する結果、二本鎖DNAと相互作用しないならば、蛍光体は、標的のGヌクレオチドにより消光されずにプローブの高度にCに富む領域内に位置することができる。今日まで設計された全ての単一標識および二重標識オリゴヌクレオチドプローブは、プローブ配列および蛍光体で標識された塩基に隣接するヌクレオチドに関係なく、一本鎖状態に比べてハイブリダイゼーション時に増大したレベルの蛍光を示す。
【0126】
【表2A】
【0127】
【表2B】
【0128】
UV-可視吸収および蛍光スペクトルの測定(Marksら(2005))は、約4nmの青方偏移と、相補的標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション時の強度増加とがあることを示している。遊離FAMCAP色素の蛍光性質の方が、プローブ/標的二本鎖の性質によく似ている。DNAプローブ構築物にFAMCAPを組み込むと、励起および発光のλmaxに赤方偏移が起こる。この赤方偏移は、蛍光体とssDNAとの相互作用の可能性を示唆しており、この相互作用は色素とDNA塩基との間のπ-πスタッキング相互作用を含むことがある。Marksらの結果も、蛍光体がインターカレーションによっても、溝の結合によっても二本鎖DNAと相互作用しないと示唆している。それは、これらの相互作用がハイブリダイゼーション時に強い赤方偏移を起こすと思われるからである。したがって、蛍光体と蛍光消光を起こす一本鎖プローブDNAの塩基との間で相互作用があるおそれがある。蛍光体とプローブDNAとの間のこの相互作用は、標的のハイブリダイゼーション時に除かれる結果、色素は溶液中に突出し、蛍光が増強する。この蛍光増強のメカニズムは、末端標識プローブで作動するとは予想されない。それは、塩基のスタッキングが蛍光体の片方の側でのみ起こることができるからである。このデータは、オリゴヌクレオチドプローブの蛍光増加が、蛍光の増強よりも消光の除去により起こることを示している。プローブのシグナルが標的配列に依存しない結果として、蛍光体は、Cに富む領域内にも位置することができ、標的のハイブリダイゼーション時に増大したレベルの蛍光を依然として示すという本発明者らの提案も、プローブの機能性のこのモデルは支持している。
【実施例7】
【0129】
ピーク高
プローブ配列、蛍光体の位置、および多重蛍光体の影響を検討するために単一標識、二重標識、および三重標識プローブのピーク高も測定した。プローブ比較のためのピーク高の測定は、運転間変動および装置間変動が原因でSN比よりもやや信頼性に欠ける。しかし、1回のLightCycler実験で発生した融解ピークは、プローブの配列を信頼性高く比較するために採用することができる。150nMのプローブを、典型的にはTaKaRa緩衝液中の150nMの完全相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせた。蛍光測定は、変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含むLightCycler融解曲線プロトコールを使用して行った。LightCyclerソフトウェアのバージョン3.5だけで得られた融解ピークのデータを表3に含めた。LightCyclerソフトウェアのバージョン3.01は、ユーザが蛍光のゲインを手動で設定する必要がある。バージョン3.5のソフトウェアは最高レベルの発光を示す試料に対する蛍光レベルを自動的に測定する。
【0130】
本発明の全てのオリゴヌクレオチドは、x軸の温度に対してy軸に-dF/dTをプロットしたとき、プローブおよび標的の配列ならびにそれらの配列内のGの位置とは無関係に正の融解ピークを示す。第V因子プローブ形成配列においてA塩基とT塩基の間(FVG1)およびC塩基とG塩基の間(FVG1ALT)に単一の蛍光体を配置すると、ほぼ等しい高さの融解ピークが生じる。二重標識第V因子プローブ(FVG11)は、2つの単一標識プローブFVG1およびFVG1ALT(表3)で発生した融解ピークの約4倍の高さの融解ピークを生じる。単一標識のピーク高の和は、二重標識プローブにより示される和よりも小さい。しかし、両方の単一標識プローブの75nMまたは150nMを1つの反応容器に採り入れた場合も、二重標識オリゴヌクレオチドプローブにより発生するピークよりも小さな融解ピークが生じる。蛍光体標識塩基同士の相互作用は、SN比および融解ピーク高の増大を担い、二重標識プローブを2つの単一標識プローブの合計よりも大きくすることがある。シグナルのさらなる増大は、三重標識プローブ(下記参照)から得られる。プローブ内の蛍光体の位置およびそれらの分離度は、標的のハイブリダイゼーションおよび解離時の蛍光変化の強度に影響することがある。単一標識プローブは、未標識オリゴヌクレオチドに比べて低いTmを有し、二重標識プローブは、一貫して対応する単一標識プローブに比べて低いTmを示す(表1)。蛍光体は標的のハイブリダイゼーション時に溶液中に突出することによって、二本鎖DNAと相互作用しないと考えられているため、蛍光体は二本鎖を不安定化するよりも一本鎖プローブ種を安定化すると考えられる。多重標識プローブは、対応する単一標識オリゴヌクレオチドプローブよりも一本鎖プローブ構造を大きく安定化すると考えられる。二重標識および多重標識プローブは、安定化して効率的に消光された一本鎖構造が原因で、予想よりも低レベルの蛍光ノイズを示すことが多い(表5)。二重標識および多重標識プローブのバックグラウンド減少およびシグナル増加は、対応する単一標識オリゴヌクレオチドに比べて大きなピーク高およびSN比を生じる。
【実施例8】
【0131】
内部標識プローブおよび末端標識プローブの比較
第V因子標的配列は、プライマーFVF1(5'GACTACTTCTAATCTGTAAGAGCAG(配列番号92))およびFVR3(5'CCATTATTTAGCCAGGAGAC(配列番号93))を使用して増幅した。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、O秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用した。増幅した標的は、FV3(5'CTGTATTCCTCGCCTGTCCF(配列番号94))またはFV5(5'FCTGTATTCCTCGCCTGTCC(配列番号95))末端標識プローブの包含、ならびに変性(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)、0.1℃/sの変化速度を用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けした。3'標識FV3プローブは完全に非機能性であり、融解曲線分析でピークを生じなかった。プローブの発光スペクトルの測定により効率的なオリゴヌクレオチド合成および蛍光体の結合を立証した。5'-FAM結合を有するFV5プローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光発光の減少を示した。FV5プローブは、-dF/dTプロットにおいて逆向きの融解ピークを発生し(図10)、そのピークは、ホモ接合型およびヘテロ接合型試料の同定を可能にした。5'-標識プローブ由来の逆向きの融解ピークは、単一標識FVG1第V因子プローブから得られたピーク高と類似の強度であった(図10)。
5'CTGTATTCCTCGCCTGTCC3' (第V因子プローブ配列;配列番号140)
3'ATGGACATAAGGAGCGGACAGGTCC5' (標的配列;配列番号141)
【0132】
5'標識プローブには、標的配列とのハイブリダイゼーション時にG残基近くの位置0および+1に蛍光体が配置されており、これは、観察された蛍光発光の減少を説明している。3'-標識プローブでもG残基近くの位置0および-1に蛍光体が配置されているが、蛍光はハイブリダイゼーション時に増強も消光もしなかった。
【0133】
【表3A】
【0134】
【表3B】
【0135】
本発明のオリゴヌクレオチドの内部残基に結合した蛍光体は、一本鎖状態で消光し、ハイブリダイゼーションはこの消光の率を減らす。DNAの塩基が塩基対を形成しないときに、DNAの塩基が蛍光基の上にスタッキングすることがあるため、一本鎖プローブの消光が起きることがある。一本鎖形態では蛍光体は2つのDNA塩基の間に挟まれて、かなり安定な疎水性構造を形成するものである。この構造は、二本鎖形成時に塩基が塩基対形成に参加しなければならなくなると破壊されるものである。グアニンは他の塩基よりも大きな影響を有する可能性があるものの、この現象は単なる「グアニン消光」ではないおそれがある。
【0136】
塩基のスタッキングは蛍光体の一方の側でのみ起こることができることから、末端標識での状況は異なる。一本鎖(および二本鎖)では、蛍光体はDNA塩基の間に挟まれず、塩基の上にスタッキングするだけである。蛍光体が標的鎖のグアニン塩基に接近すると、ハイブリダイゼーション時の消光が起こることがある。逆に、蛍光体がプローブの末端G残基に結合しているならば、ハイブリダイゼーション時に蛍光増強が起こることがある。オリゴヌクレオチドプローブの内部標識は、プローブ配列および標的配列によりほとんど影響されず、二本鎖でのグアニンの位置に関係なく、ハイブリダイゼーション時に常に蛍光の増加を示す。末端標識プローブは、標的配列中のオリゴヌクレオチドにより影響され、標的のハイブリダイゼーション時に増加または減少したレベルの蛍光を示すことがある。本発明の二重標識オリゴヌクレオチドは、蛍光体同士の相互作用ではなく標的配列の非依存性が原因で、ハイブリダイゼーション時に蛍光のレベル増加を示す。
【実施例9】
【0137】
多重標識プローブにおけるシグナル強度および蛍光体の間隔
オリゴヌクレオチドプローブ配列に追加の蛍光体を組み込むと、ハイブリダイズした(シグナル)状態および一本鎖(ノイズ)状態の両方でプローブ発光が増加することによって、SN比が維持されると予想することができる。あるいは、FAM色素同士が近接している場合に相互に実際に消光することができることから、多数の蛍光体でプローブを標識することがSN比を低下させるおそれがある。しかし、プローブのSN比および融解ピーク高はオリゴヌクレオチドプローブ配列内に2つ以上のFAM色素を含ませることによりかなり改善された。上記の全てのプローブは、チミンヌクレオチドを置き換えるためにC6 FAM dUまたはGlenフルオレセインdTのいずれかを利用し、これらのプローブの蛍光体は少なくとも3つのヌクレオチドで分離されている。本発明のオリゴヌクレオチドに追加の蛍光体(例えば3または4個のFAM標識)を含ませると、SN比および融解ピーク高がさらに増大することがある。しかし、蛍光体で標識された塩基は最小数のヌクレオチドで分離し、非放射エネルギー移動による蛍光体同士の直接消光を避けなければならない。この非FRET消光は、色素同士の短距離「接触」により起こることがあり、励起スペクトルと発光スペクトルとの重複を必要としない。FRET消光も、励起スペクトルと発光スペクトルとの重複によりFAM標識の間で起こることがある。本発明のオリゴヌクレオチドプローブを設計する場合の好ましい間隔は3〜6である。しかし、蛍光体が少なくとも2つの未標識ヌクレオチドで分離されている全てのプローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光のかなりの増加を示す。11ヌクレオチドよりも大きい間隔は試験していないが、その間隔は二本鎖中のそれらの相対的な角配置に応じて効率的なシグナルを生じることがある(表7参照)。
【0138】
150nMのHYBCHRC(配列番号35)逆ホモログオリゴヌクレオチドを、TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中の150nMの単一標識(HYBCH2)、二重標識(HYBCH)、三重標識(HYBCH3)、および四重標識(HYBCH4)クラミジアプローブとハイブリダイズさせた。
HYBCH2 5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG (配列番号32)
HYBCH 5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号61)
HYBCH3 5'CAAGCCFGCAAAFGFATACCAAG (配列番号96)
HYBCH4 5'CAAGCCFGCAAAFGFAFACCAAG (配列番号97)
【0139】
変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。単一標識プローブに比べ、二重標識HYBCHオリゴヌクレオチドプローブは、上記のようにTmの低下と共に高いSN比および融解ピーク高を示した。HYBCHの蛍光体標識塩基は5ヌクレオチドで分離されている。三重標識HYBCH3プローブは、標的のハイブリダイゼーション時にやや消光し、-dF/dTのグラフでマイナス側/逆方向に小さなピークを示す(図11)。HYBCH3のTmは単一標識プローブに比べて低いが、二重標識オリゴヌクレオチドプローブのTmよりも高い。四重標識HYBCH4プローブは、-dF/dTのグラフで小さな正のピークおよびHYBCHのTmに類似したTmを示す。HYBCH3およびHYBCH4プローブの両方は、1つのヌクレオチドだけで分離された蛍光体標識塩基を有し、ハイブリダイズした状態および解離状態の両方でかなり減少したレベルの蛍光を示す(図11)。蛍光データは、近位のFAM色素が一本鎖状態で相互に消光することを示している。HYBCH3プローブは、相補的標的配列にハイブリダイゼーションしたときに大きく消光されるが、これは、蛍光体同士が溶液中に突出したときに一本鎖コンホメーション状態のときよりもなお緊密に接触するようになることがあると示唆している。
【0140】
蛍光体標識塩基同士の分離がさらに大きなレベルの、追加の三重標識クラミジアプローブを設計した。150nMのHYBCH6RC(配列番号103)逆ホモログオリゴヌクレオチドを、TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMの単一標識プローブ(HYBCH2)、二重標識プローブ(HYBCH)、および三重標識(HYBCH5およびHYBCH6)プローブにハイブリダイズさせた。融解ピークは、変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して発生させた。
HYBCH2 5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG (配列番号32)
HYBCH 5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号61)
HYBCH5 5'CAAGCCFGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号102)
HYBCH6 5'GTAAFCAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号104)
【0141】
三重標識HYBCH5プローブは、HYBCH二重標識プローブのTmに非常に類似したTmを示す(表1)。2つを超える蛍光標識を付加しても一本鎖構造はそれ以上安定化しないことがある。三重標識HYBCH6プローブは、以前に言及したクラミジアプローブよりも5ヌクレオチド長く、単一標識HYCH2プローブに類似したTmを示す。三重標識プローブは、共に単一標識HYBCH2プローブおよび二重標識HYBCHプローブの高さのそれぞれ6.5および3.25倍の融解ピークをもたらす。(図4および11C)。
【0142】
各蛍光体が合計シグナル強度に及ぼす貢献度を研究するために、三重標識HYBCH5プローブを、可能性のある3つの単一標識クラミジアプローブおよび3つの二重標識オリゴヌクレオチドプローブと比較した。三重標識オリゴヌクレオチドプローブ内の修飾された各位置を単一標識プローブおよび二重標識プローブで表した。これらのプローブも四重標識オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号126)と比較した。以前に説明したように、150nMのHYBCH6RC(配列番号103)逆ホモログオリゴヌクレオチドを、TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMのプローブとハイブリダイズさせた。
HYBCH2 5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG (配列番号32)
HYBCH7 5'CAAGCCFGCAAATGTATACCAAG (配列番号105)
HYBCH8 5'CAAGCCTGCAAATGTAFACCAAG (配列番号106)
HYBCH 5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号61)
HYBCH9 5'CAAGCCTGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号107)
HYBCH10 5'CAAGCCFGCAAATGTAFACCAAG (配列番号108)
HYBCH5 5'CAAGCCFGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号102)
HYBCH11 5'GTAAFCAAGCCFGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号126)
【0143】
2つのLightCycler装置(LC1およびLC2)で発生した融解ピークの高さは、計算されたSN比よりも大きな変動レベルを示した(表4)。しかし、両方のLightCycler装置で、三重標識プローブのピーク高は、最も効率的な二重標識プローブの高さの約2倍であり、最も効率的な単一標識オリゴヌクレオチドプローブの4倍を超える大きさであった(表4)。3重標識融解ピークの高さは、3つの単一標識オリゴヌクレオチドプローブの合計よりも大きく、また、任意の二重標識プローブと、対応する任意の単一標識オリゴヌクレオチドプローブとの和よりも大きい。四重標識オリゴヌクレオチドプローブも、三重標識プローブよりも約25%大きなピーク高を示して高品質の融解データをもたらした(表4)。
【0144】
【表4】
【0145】
ハイブリダイズした状態および一本鎖状態での蛍光発光のレベルを比較するために、標的の存在下および不在下で35℃でも、単一標識、二重標識、三重標識クラミジアプローブを検討した。TaKaRa PCR緩衝液中で合計3mMのMgCl2中で150nMのHYBCH6RC(配列番号103)逆ホモログオリゴヌクレオチドを150nMのプローブとハイブリダイズさせた。連続的に蛍光を取得しながら試料をLightCyclerキャピラリー中で変性させ(95℃、5秒間)、その後35℃に冷却した。標的の存在下および不在下でプローブを2回の繰り返しで分析し、ハイブリダイズした状態および一本鎖状態についての平均発光値を表5に詳述する。標的の不在下では、三重標識オリゴヌクレオチドプローブは、どの単一標識プローブおよび二重標識プローブよりも小さな蛍光を発光する。一方で、標的の存在下では、三重標識プローブからの蛍光レベルは、二重標識HYBCH10プローブから発光する蛍光レベルとよく類似していた。三重標識プローブは、二本鎖状態および一本鎖状態の間で最大の差を示し、それ故に最大の融解ピークを生じる。一本鎖プローブ構造での消光などの、蛍光体同士の相互作用は、二重標識および三重標識オリゴヌクレオチドプローブが示したピーク高の上昇およびSN比の増加を担うことがある。一本鎖(ランダムコイル)では、蛍光体は相互に接触およびスタッキングし、衝突消光を起こすことができるが、二本鎖では、少なくとも2個のヌクレオチドで分離されている場合に頑健なB-DNA構造により蛍光体が離れたままであることから、これは不可能である。これらの蛍光体が互いにもっと近づくならば、チミン塩基5位の柔軟なリンカーは、蛍光体を相互に接近させることができる。
【0146】
【表5】
【実施例10】
【0147】
単一標識、二重標識、および三重標識オリゴヌクレオチドのさらなる比較
3つの単一標識第V因子オリゴヌクレオチドプローブを同一の配列の二重標識および三重標識プローブと比較した。二重標識および三重標識オリゴヌクレオチドプローブに存在する全ての蛍光体を複数の単一標識プローブで表した。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中の150nMのオリゴヌクレオチドプローブに150nMのFVG(配列番号24)逆ホモログオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせた。変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。単一標識プローブ、二重標識プローブ、および三重標識プローブのピーク高およびSN比を表6に示す。
FVG1 5'CTGTAFTCCTCGCCTGTCC (配列番号21)
FVG1ALT 5'CTGTATTCCTCGCCFGTCC (配列番号101)
FVG1ALT2 5'CTGTATTCCFCGCCTGTCC (配列番号128)
FVG11 5'CTGTAFTCCTCGCCFGTCC (配列番号60)
FVG111 5'CTGTAFTCCFCGCCFGTCC (配列番号127)
【0148】
二重標識FVG11プローブは、配列内の同一の位置に蛍光体を有する単一標識オリゴヌクレオチドプローブの約3〜4倍の大きさの融解ピークを生じる。それ故に、二重標識融解ピークは単一標識ピークの合計よりも大きい。さらに、三重標識オリゴヌクレオチドプローブは、単一標識オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも7倍の大きさで、二重標識プローブの2.6倍の大きさの融解ピークを発生する(図12)。三重標識プローブからの融解ピークは、単一標識オリゴヌクレオチド由来のピークの合計よりもかなり大きい。クラミジアオリゴヌクレオチドと同様に、プローブへの多数の蛍光体の付加は、単一標識オリゴヌクレオチドプローブから予想されるよりも高さが大きい融解ピークの発生を引き起こす。クラミジアおよび第V因子プローブから得られたデータは、2または3個の蛍光体標識塩基の組込みが、必ずしもオリゴヌクレオチドプローブの融解ピーク高を2倍または3倍にするわけではないことを実証している。
【0149】
【表6】
【実施例11】
【0150】
蛍光体の最小間隔の設定
一連のオリゴヌクレオチドプローブを合成し、二重標識オリゴヌクレオチドプローブにおける蛍光体標識塩基同士の間に必要な最小の間隔を決定した。プローブは、蛍光体標識塩基同士の間に0から9ヌクレオチドを有した。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMのMODRC(5'CCCCCCTTTTTTTTTTTTTCCCCCC(配列番号139))逆ホモログオリゴヌクレオチドを150nMのオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせた。変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。SN比および融解ピーク高を表7に示す。標識塩基の間に0および1個のヌクレオチドを有するプローブは、近接する蛍光体により起きる接触消光により、かなり減少した蛍光レベルを示した。これらのプローブの両方は負(逆方向)の融解ピークを示し、ここで、一本鎖状態に比べて標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光レベルは減少した。蛍光体標識塩基を分離している2から9ヌクレオチドを有する全てのプローブは、標的のハイブリダイゼーション時に正の融解ピークおよび蛍光増強を示した。7および8ヌクレオチドで分離された蛍光体を有するプローブは、やや減少したレベルの蛍光と2〜6および9個の間隔のプローブに比べて小さな融解ピークとを示した。二本鎖DNAと同じ表面に多数の蛍光体を有するプローブは、ある程度の接触消光に遭遇することによって、ピーク高およびSN比の減少を示すことがある。8ヌクレオチドの間隔がFVG11(配列番号60)、HYBMRSA(配列番号99)、およびHYBA1928C(配列番号112)プローブで採用され、大きな融解ピークおよびSN比を発生することから、これらの角配置の影響は配列特異的でありうる。オリゴヌクレオチドプローブが遊離のプローブに比べて標的のハイブリダイゼーション時に高レベルの蛍光発光を生じるためには、蛍光体標識塩基を分離している少なくとも2つのヌクレオチドが必要である。
【0151】
【表7】
【0152】
蛍光体標識塩基を分離している2から11個のヌクレオチドを有する、今日までに設計された全ての二重標識、三重標識、および四重標識オリゴヌクレオチドプローブは、相補的標的配列にハイブリダイゼーション時にかなりの蛍光増強を示す。0または1ヌクレオチドが蛍光体標識塩基を分離しているプローブだけが、標的のハイブリダイゼーション時に小さなレベルの蛍光消光を示すことが見出された。蛍光体標識ヌクレオチドの最大分離間隔はまだ同定されていない。
【実施例12】
【0153】
dAおよびdCへの蛍光体の結合
アミノ-dAおよびアミノ-dCモノマー(Glen Research、スターリング、バージニア州)を使用し、FAMで合成後標識を行ってFAM dAおよびFAM dCオリゴヌクレオチドプローブを合成した。FAM dCおよびFAM dAを有する単一標識および二重標識プローブを合成し、単一標識および二重標識C6 FAM dUオリゴヌクレオチドプローブと比較した(表8)。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMの適切な逆ホモログオリゴヌクレオチド(FVGまたはGLENARC)を150nMのオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせた。変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。
FVG 5'GGACAGGCGAGGAATACAG (配列番号24)
GLENARC 5'CTGTATACCTTGCCTGTCC (配列番号91)
【0154】
FAM dCおよびFAM dAプローブは全て、標的のハイブリダイゼーション時に一本鎖状態に比べて蛍光レベルの増強を示した(図13)。FAM dCのハイブリダイゼーション時の蛍光発光の増強は、オリゴヌクレオチドプローブの蛍光体が標的鎖のDNAと相互作用しないというモデルを支持している。それは、標的中のGとの相互作用が蛍光消光を起こすと予想されないからである。C6 FAM dUおよびフルオレセインdTと同様に、二重標識FAM dCおよびFAM dAプローブは、共に対応する単一標識オリゴヌクレオチドプローブの高さの2倍を超える融解ピークを生じる。
【0155】
二重標識C6 FAM dUおよびフルオレセインdTプローブは、同一配列の単一標識プローブよりも約4〜5℃低いTmを示す。FAM dCおよびFAM dAで標識されたプローブは、それぞれ1℃および8.3℃のTmの差を示した(表8)。
【0156】
【表8】
【0157】
A、T、C、およびUについて、合成前、合成中、または合成後に蛍光体がヌクレオチドに結合しているかどうかは問題ではない。「天然」塩基を維持しながらこれらのヌクレオチドに結合することは可能である。Gへの蛍光体の直接結合は塩基アナログを産生する。
【実施例13】
【0158】
融解ピーク高を高めるための非対称的PCR
本発明のオリゴヌクレオチドを使用するアッセイのPCR段階の後で、プローブは増幅産物と競合して標的配列とハイブリダイズする。この競合により、プローブ/標的の相互作用の可能性が減り、融解ピーク高が制限される。標的ハイブリダイゼーションがプローブ側に傾くならば、融解ピーク高は増大することができる。これは、プローブの濃度を増加させること、またはPCR競合鎖の存在度を減少させることのいずれかによって実現することができる。
【0159】
最適濃度のオリゴヌクレオチドプローブは、150nMであることが見出された。200nMを超えてプローブ濃度を増加させると、SN比が高まることが見出された。実際に、プローブ濃度の増加は、クラミジアの融解グラフに有害な影響を及ぼし、約80℃で第2のピークを発生させ、そのピークはプローブの濃度と共に高さが増大する。ピークの質は、標的配列にハイブリダイズすることができない一本鎖プローブに起因する追加のバックグラウンド蛍光により、高いプローブ濃度で減少することも見出された。
【0160】
競合するDNA鎖の存在度は、非対称的増幅法を使用することにより標的配列に対して減少させることができる。融解ピーク高を最大にするために、クラミジアの順方向および逆方向プライマーの濃度を最適化した。プライマーCHF3-1(配列番号33)およびCHR4-1(配列番号34)を使用してクラミジア潜在プラスミド標的を増幅した。アッセイには、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用した。HYBCHプローブ(配列番号61)を含むこと、ならびに変性(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sの変化速度を使用した95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により、増幅された標的を検出および特徴付けした。クラミジアDNAの存在下で、HYBCHプローブは約56℃のTmを有する明確な融解ピークを発生する(図14)。逆方向プライマー(0.5μM)に対して10倍希釈の順方向プライマー(0.05μM)は、標準等モル濃度アッセイに比べてクラミジアピーク高を3〜5倍増大させた(図14)。精製ゲノムDNAおよび処理した臨床試料でこのピーク高の増大が観察された。非対称的PCRと三重標識した標識プローブ(HYBCH6)との組合せは、単一標識オリゴヌクレオチドプローブを採用している非対称的アッセイで発生したサイズの約20倍の融解ピークを発生した。
【実施例14】
【0161】
非対称PCR、プローブ濃度、およびピーク高
非対称PCRは、クラミジア、淋病、第II因子、A1928C、およびC677Tアッセイで対称的増幅に比べてピーク高の増大を生じた。しかし、非対称的増幅はNAT2*5C試験でピーク高を増大させなかった。非対称的PCRは一本鎖標的を発生することから、プローブは相補的PCR鎖とハイブリダイゼーションを競合する必要がなく、融解ピークはオリゴヌクレオチドで得られたピークと類似した強度である可能性がある。対称的増幅が、すでにオリゴヌクレオチドピークと類似した強度の融解ピークを生じるならば(例えばNAT2*5Cアッセイ)、非対称的増幅から利益を得ることはできない。オリゴヌクレオチドに比べてピーク高の減少を示すプローブだけが、アッセイを非対称的試験に変えた場合にピーク高の高まりを示すようである。非対称的PCRは、アッセイが長鎖標的アンプリコンを利用するか、またはプライマー二量体が発生する場合に有利なことがある。
【0162】
第V因子プローブ(FVG1およびFVG11)は、さらに複雑な状態である。非対称的アッセイで発生した融解ピークは、妥当な高さであり、試料の信頼できる同定を可能にするが、オリゴヌクレオチド標的から得られるピークに比べて減少している。ヘテロ接合型試料で行った50サイクルの非対称的増幅は、対称的アッセイに比べてマッチのピーク高またはミスマッチのピーク高のどちらにも影響しないことが見出された。しかし、60および70サイクルの非対称的増幅が、マッチの融解ピーク高を増大させる一方で、ミスマッチのピーク高を減少させる/それに影響しないことが見出された(図14)。70サイクル後に、プローブは標的で飽和し、その結果、完全相補的な対立遺伝子との選択的ハイブリダイゼーションは、ピーク高の不均衡を招く。完全に相補的なプローブ/標的二本鎖の安定性増加は、ミスマッチの二本鎖に比べたこの選択的ハイブリダイゼーションおよびピーク高の増大を担っている。
【0163】
標的の濃度が融解ピーク高に及ぼす影響を検討するために、FVG11プローブ(配列番号60)を完全相補的(FVG(配列番号24))およびミスマッチ(FVA(配列番号25))オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせた。変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sの変化速度を使用した95℃への低速加熱を含む熱プロトコールを採用して、LightCycler装置で融解分析を行った。等モル濃度でマッチおよびミスマッチの標的を採用した。150nMの標的にハイブリダイズした150nMのプローブは、等しい高さのマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じた(図15)。300nMの標的にハイブリダイズした300nMのプローブも、匹敵する高さのマッチおよびミスマッチのピークをもたらした。しかし、1μMの標的にハイブリダイズした150nMのプローブは、マッチの融解ピークだけを生じた(図15)。完全に相補的な標的はプローブを隔離し、競合ハイブリダイゼーションはミスマッチの標的の効率的なハイブリダイゼーションを阻止する。第V因子SNPは、プローブ/標的二本鎖の安定性にかなり影響し、その結果、高い標的濃度でプローブは完全に相補的な配列に選択的に結合する。この観察は、鎌状赤血球およびNAT1*10アッセイなどでの完全に相補的な標的および二重ミスマッチの標的の間のピーク高の不均衡も説明している。
【0164】
高濃度のプローブが高い標的濃度でマッチおよびミスマッチのピーク高の均衡をもう一度確立できるかどうかを確かめるために、150nM、300nM、および500nMのFVG11プローブおよびヘテロ接合型第V因子ゲノムDNA試料を使用して対称的および非対称的アッセイを行った。50、60、および70サイクルの2段階増幅を行った。50サイクル後に、マッチおよびミスマッチのピーク高を比較したが、対称的および非対称的反応の間にあまり差はなかった(図16)。150nMのプローブの反応が、最高品質のデータを生じた。図14に示すように、150nMのプローブで60および70回の非対称的サイクル後に発生したマッチおよびミスマッチの融解ピーク高は不等であった。
【0165】
ミスマッチの融解ピーク高は、高いプローブ濃度でかなり改善した。60回の非対称的サイクル後に150nM FVG11は、それぞれ高さ0.83および0.35のマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じた(2.3倍の差)。一方で、500nMのプローブは、それぞれ高さ0.63および0.50のマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じた(1.13倍の差)。150nMおよび500nMのプローブ反応におけるヘテロ接合型ピーク高の合計はそれぞれ1.19および1.13であり、ホモ接合型オリゴヌクレオチド標的で観察されたものと同様であった(図3)。プローブの濃度増加は、非対称的増幅産物で発生したマッチおよびミスマッチの融解ピーク高を均衡させた。オリゴヌクレオチドおよびPCRのデータは、マッチおよびミスマッチの標的分子へのプローブの競合ハイブリダイゼーションを実際に確認している。高い標的濃度では、この競合ハイブリダイゼーションおよびミスマッチの二本鎖の安定性減少は、多標的融解プロファイルでのピークの低下または喪失を招く。150nMよりも高いプローブ濃度がある種の非対称的アッセイでは必要なことがある。
【実施例15】
【0166】
融解温度による多重分析
1つのLightCyclerキャピラリーで4つのオリゴヌクレオチドプローブをそれらの相補的オリゴヌクレオチド標的に同時にハイブリダイズさせ、融解ピーク分析を多重で行える可能性を実証した。プローブおよび標的を様々な濃度で採用し、単一標識および二重標識プローブ由来のピーク高を同じにした。ポリT、HYBINF、HYBCH2、およびHYBAdCプローブおよび標的オリゴヌクレオチドをそれぞれ1.2μM、233nM、183nM、および27nMで採用した。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で、変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.4℃/sで95℃への加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。ポリT、HYBINF、HYBCH2、およびHYBAdCプローブは、それぞれ約49℃、54℃、62℃、および68℃のTmで明確な融解ピークを発生した(図17)。2つの二対立遺伝子(biallelic)SNPの同時分析を可能にするオリゴヌクレオチドプローブを使用して、Tmに基づき少なくとも4つの標的配列を検出および同定することができる。スペクトルが異なる蛍光色素をさらに使用して多重分析の可能性を高めることができる。
【実施例16】
【0167】
正の増幅対照
本発明のオリゴヌクレオチドは、臨床試料中の感染性病原体の存在または不在を決定するために採用することができる。特異的融解ピークの発生は、試料中に特定の感染因子が存在することを示す。しかし、融解ピークが全く存在しないことは、病原体の欠如を信頼性高く示すわけではない。尿などの臨床試料は高レベルのPCR阻害剤を含有するおそれがあり、その阻害剤が陽性試料中の病原体の検出を阻止するおそれがある。病原体の不在により陰性である反応を、PCR阻害により融解ピークを発生しない反応と区別するために、増幅対照が必要である。
【0168】
142塩基のオリゴヌクレオチド(配列番号98)を使用してクラミジア増幅対照(模倣体)を構築した。クローニング目的のPCRテンプレートとして長鎖オリゴヌクレオチドを採用した。Tmに基づく模倣体とクラミジア標的との区別を可能にするために、そのオリゴヌクレオチドはプローブ形成領域内にCからTへの塩基置換を有した。この長鎖オリゴヌクレオチドからの増幅は、CHF3-1(配列番号33)およびCHR4-1(配列番号34)プライマーを使用して行った。PCR cloningPlusキット(Qiagen Ltd、クローリー、英国)を使用して増幅産物をpDriveベクターに連結し、Qiagen EZコンピテント細胞に形質転換した。本発明のオリゴヌクレオチドプローブを使用したクラミジアアッセイを用いて、模倣体配列を有するコロニーを直接同定した。製造業者の推奨する方法を用いて、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen Ltd、クローリー、英国)を使用して形質転換体の培養物からプラスミドを精製した。模倣体標的配列への本発明のクラミジアオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、約8℃だけプローブのTmを下げるC:Aミスマッチを招く(図18)。
【実施例17】
【0169】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを使用したDNAの定量
プライマーFVF1.3(配列番号22)およびFVR3.5(配列番号23)を使用した一連のDNA標準から第V因子標的を増幅させた。DNA標準は、100ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、100pg/μl、および10pg/μlのヒトゲノムDNAを有した。アッセイには、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性期(95℃、0秒間)およびアニーリング期(50℃、10秒間)および伸長期(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用した。FVG1(配列番号21)またはFVG11(配列番号60)を含むこと、およびPCRのアニーリング期の間の蛍光取得により、増幅した標的を検出および特徴付けた。閾値レベル(CT)を超えて蛍光発光が増加するサイクル数を測定することにより、DNA標的の定量が可能になる(図19)。リアルタイムPCRアッセイの間に得られたCT値は、標的配列の初発コピー数に直接比例し、標準曲線を構築するために使用することができ、その標準曲線から「未知」試料を定量することができる。唾液試料は、典型的には約1ng/μlのヒトゲノムDNAを含有することが見出された。
【実施例18】
【0170】
フルオレセイン以外の蛍光体を用いた分析
それぞれ2つの内部位置で蛍光体で標識された4つの第V因子オリゴヌクレオチドプローブを合成した。これらのプローブは以下の通りである。
FVG11TAM5'CTGTAXTCCTCGCCXGTCC(配列番号140)(配列中、XはTAMRAで標識されたdT残基である)、
FVG1IROX5'CTGTAXTCCTCGCCXGTCC(配列番号141)(配列中、XはROXで標識されたdT残基である)、
FVG11Cy55'CTGTAXTCCTCGCCXGTCC(配列番号142)(配列中、XはCySで標識されたdT残基である)、
FVG11Mix5'CTGTAFTCCTCGCCXGTCC(配列番号143)(配列中、FはFAMで標識されたdT残基であり、XはROXで標識されたdT残基である)。
【0171】
96ウェルの光学プレート中でTaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で、プローブをその相補的オリゴヌクレオチド標的(配列番号24)とハイブリダイズさせ、ABI7700サーモサイクラーを使用して融解曲線を作製した。融解プロトコールは、変性(95℃、30秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および35℃から95℃まで1℃きざみで各温度で15秒間停止させる段階的昇温を含む融解プロファイルを含んでいた。プローブおよび相補体を150nMの濃度で使用した。生データをABI7700サーモサイクラーからエクスポートし、MicrosoftのExcel表計算プログラムを使用して処理した。図20A、20B、20C、および20Dは、これらのプローブがその相補体から離れるときの融解曲線を示し、全ての場合で曲線の屈曲がみられる。Cy5の検出のための最適状態に及ばない光学系ではあるが、プローブがその標的から解離する直接の結果、温度の関数としての蛍光の直線的減少に比べて蛍光が減少することが実証されている。このデータは、この現象が蛍光体の一般的な特徴であり、フルオレセインおよび他のフルオレセイン系誘導体に限定されないという以前のデータおよび結論を確認するものである。
【0172】
結論
単一および多重蛍光体標識内部塩基を有するオリゴヌクレオチドプローブは、全て一本鎖状態に比べてハイブリダイズしたときに蛍光発光のレベル増加を示す。オリゴヌクレオチドプローブおよび標的配列とは無関係に、ハイブリダイゼーションしたときにプローブ蛍光が常に増加することから、一本鎖の場合に蛍光体はプローブDNAと相互作用し消光を招くが、二本鎖状態ではプローブとも標的配列とも相互作用せず、その結果、蛍光体は脱消光され蛍光が増加すると考えられている。ハイブリダイズしたプローブから発光した蛍光のレベル増加は、DNAの消光の影響を逃れて溶液中に突出する蛍光体に起因すると考えられる。
【0173】
単一標識オリゴヌクレオチドプローブを同一配列の二重標識および三重標識プローブと比較することによる予想外の結果は、追加の蛍光体が含まれることに伴い蛍光が単に2倍または3倍になるわけではないことであった。二重標識および三重標識プローブは、単一標識オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれから予想されるよりも大きな融解ピークを示し、これは、蛍光体同士の相互作用があることを示唆している。接触消光を阻止し、標的検出時に効率的なシグナル発生を確実にするためにオリゴヌクレオチドプローブ中の蛍光体は、好ましくは少なくとも2つのヌクレオチドで分離されている。
【0174】
【表9】
【0175】
【表10】
【0176】
【表11】
【0177】
【表12】
【0178】
【表13】
【0179】
【表14】
【0180】
【表15】
【0181】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明のオリゴヌクレオチドに採用されたC6 FAM dUおよびGlenフルオレセインdT標識の化学構造を示す図である。
【図2】単一標識オリゴヌクレオチド(HYBA1928C)が5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(MTHFR)A1928C多型に関して唾液試料を直接分析するために採用されたことを示す図である。温度に対する蛍光の負の導関数(y軸の-dF/dT)を試料温度(x軸)に対してプロットし、融解ピークを作製した。オリゴヌクレオチドは、AおよびC対立遺伝子の存在下でそれぞれ約51.5℃および61℃のTmを有する融解ピークを生じる。ヘテロ接合型試料は、共に51.5℃および61℃の融解ピークを発生する。
【図3】単一標識(FVG1)および二重標識(FVG11)第V因子オリゴヌクレオチド由来の融解ピークを示す図である。追加的な蛍光体は、融解ピーク高を4〜5倍増加させ、プローブのTmを約5℃減少させる。
【図4】A)トラコーマクラミジア(LGV-II、434株、ATCC VR-920B、Advanced Biotechnologies、メリーランド州、米国)および処理した臨床スワブ試料由来の精製DNAを用いて得られたHYBCH2プローブの融解ピークを示す図である。Tmが約60℃の単一の融解ピークがクラミジア標的DNAの存在下で発生する。B)HYBCH6クラミジアプローブで得られたリアルタイムPCRおよび融解ピークのデータを示す図である。三重標識トラコーマクラミジアプローブは、単一標識HYBCH2オリゴヌクレオチドの約6倍強度の融解ピークを生じる。
【図5】精製淋菌DNAを用いて得たHYBNG(本発明の二重標識オリゴヌクレオチド)の融解ピークを示す図である。約59℃のTmを有する単一融解ピークが発生する。
【図6】A)第V因子Leiden多型について試料を分類するために二重標識FVG11プローブを使用して、一連の精製ヒトゲノムDNAから得られた融解ピークを示す図である。ホモ接合型野生型試料はTmが約55℃の単一の融解ピークを発生する。ヘテロ接合型試料は、それぞれ55℃および45℃のTmを有するマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じる。ホモ接合型「突然変異」試料は、45℃の融解ピークだけを生じるであろう。陰性対照反応はどちらの融解ピークも発生しない。B)LightCyclerソフトウェアが、融解ピークの数およびTmに基づき、第V因子多型の関して試料を分類するために採用することができることを示す図である。
【図7】プローブのSN比を計算する方法を示す図である。解離したプローブ状態およびハイブリダイズしたプローブ状態それぞれについてTm±10℃で蛍光の読み取り値を測定する。ハイブリダイズしているときのシグナルを解離しているときのシグナルで割ったものとしてSN比を計算することができる。
【図8】A)二重標識FVG11プローブが単一標識FVG1プローブに比べて約2倍量のバックグラウンド蛍光(70℃を超える)を示すことを示す図である。それに反して、B)二重標識第V因子プローブは、単一標識プローブで発生したピークの約5〜6倍のサイズの融解ピークを生じることを示す図である。これは、2倍の蛍光体が2倍のバックグラウンドおよび2倍のシグナルを生むことによってSN比は不変であるという予想される結果に比較して、FVG1に比べてFVG11ではSN比が約3倍良好であることを示している。FVG1およびFVG11プローブは、ハイブリダイゼーション時にそれぞれ33%および82%の蛍光の増加を示す。
【図9】精製ゲノム試料を使用した単一標識(FVG1)および二重標識(FVG11)第V因子プローブの比較を示す図である。データの平均平滑化のために10℃を使用し、バックグラウンド補正を行う多項式LightCycler関数を使用して融解ピークを分析した。負の対照反応(NC)は、FVG1プローブまたはFVG11プローブのいずれでも融解ピークを生まない。1ng/μlのホモ接合型「野生型」DNAは、単一標識および二重標識プローブについてそれぞれ約59℃および54.6℃のTmを有する単一の融解ピークを生じる。ヘテロ接合型(HET)ゲノム試料は、マッチおよびミスマッチ両方の融解ピークを生じる。二重標識融解ピークの高さは、単一標識プローブで発生したピークよりも約3〜4倍の大きさである。
【図10】同一配列の3'標識、5'標識、および内部標識プローブの比較を示す図である。5'標識プローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光消光を示し、-dF/dTのグラフに逆向きの融解ピークを発生した。3'標識プローブは、ハイブリダイゼーション時に蛍光増強も消光も示さなかった。内部標識オリゴヌクレオチドは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光増強を示し、-dF/dTのグラフにおいて正の融解ピークを示した。単一標識および二重標識プローブの両方は標的配列に依存せず、ハイブリダイズしたときに常に高いレベルの蛍光を示す。
【図11】A)HYBCH(1)、HYBCH2(2)、HYBCH3(3)、およびHYBCH4(4)クラミジアプローブの比較を示す図である。3および4つのFAM色素で標識されたプローブは、標識に近接していることから単一標識および二重標識プローブに比べてかなり低レベルの蛍光を発光する。三重標識プローブ(3)は、二重鎖の解離時に増大したレベルの発光を示す。B)4つのクラミジアプローブから得られた融解ピークを示す図である。三重標識プローブは二重標識変異体よりも高いTmで小さな逆向きの融解ピークを生じる。4つのFAM色素で標識されたプローブは、二重標識プローブで発生したものとほぼ等しいTmを有する小さな正の融解ピークを生じる。C)二重標識HYBCH(1)、単一標識HYBCH2(2)、ならびに三重標識HYBCH5(5)およびHYBCH6(6)オリゴヌクレオチドの比較を示す図である。
【図12】単一標識(1)、二重標識(2)、および三重標識(3)第V因子オリゴヌクレオチドプローブ由来の融解ピークを示す図である。
【図13】A)FAM dAおよびB)FAM dCを有する本発明の単一標識(1)および二重標識(2)オリゴヌクレオチドを示す図である。
【図14】A)HYBCH2プローブを使用したトラコーマクラミジアの検出のための対称的および非対称的PCRのプロトコールの比較を示す図である。 B)対称的PCRおよび単一標識プローブ(1)と非対称的増幅および単一標識プローブ(2)の比較と、ならびに非対称的PCRと二重標識プローブ変異体(3)との比較を示す図である。クラミジア融解ピークの高さは、非対称的PCRおよび二重標識HYBCHプローブを使用すると7倍超高まる。
【図15】150nMのFVG11を75nMのFVGおよび75nMのFVAオリゴヌクレオチド標的にハイブリダイズさせた図である(1)。300nMのプローブを150nMのFVGおよび150nMのFVAとハイブリダイズさせた(2)。150nMのプローブも500nMのFVGおよび500nMのFVAとハイブリダイズさせた。高い標的濃度で完全に相補的な標的配列に対するプローブの選択的なハイブリダイゼーションは、ミスマッチの標的変異体の検出を完全に阻止した(3)。
【図16】A)150nMのFVG11プローブを採用すると、60サイクルの非対称的標的増幅後に、マッチおよびミスマッチの第V因子の融解ピークの高さが不均衡になることを示す図である。プローブ濃度を500nMに増加させると、融解ピークの高さの均衡が高まる。B)150nM、300nM、および500nMのFVG11プローブを使用した、50、60、および70サイクルの対称的および非対称的標的増幅後にFVG11の融解ピークの高さを測定した。
【図17】PolyT(1)、HYBINF(2)、HYBCH2(3)、およびHyBAdC(4)オリゴヌクレオチドプローブを使用した標的配列の多重検出を示す図である。多重検出は融解ピークTmに基づき、全てのプローブにFAMを採用した。
【図18】精製クラミジアDNAおよび模倣プラスミドからそれぞれ増幅された、マッチおよびミスマッチの標的配列を検出する三重標識HYBCH6プローブで得られた融解ピークを示す図である。プローブは、それぞれクラミジアDNAおよび模倣標的で約60.3℃および51.8℃のTmを示す。標的の不在下ではピークは発生しない。
【図19】ヒトゲノムDNAの希釈物を使用してリアルタイム標準曲線を作製するために二重標識FVG11プローブを採用したことを示す図である。希釈系列は、100ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、0.1ng/μl、および0.01ng/μlのゲノムDNAを含んでいた。
【図20】A.TAMRA、B.ROX、C.Cy5、D.ROX、およびFAMで標識された二重標識FVG11誘導体プローブについての融解曲線、ならびにハイブリダイゼーション状態の結果としての蛍光変化を示す、その融解曲線における変曲点を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド、特にハイブリダイゼーションプローブとして使用するための蛍光標識オリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
特異的DNA配列を検出する技法および公知の一塩基多型を記録する技法は多数知られている。これらの検出方法のいくつかは蛍光プローブのハイブリダイゼーションを利用しており、ドナー部分とアクセプター部分との間のエネルギー移動に頼っている。
【0003】
ホモジニアスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、増幅工程と検出工程が対になった方法である。標的増幅後のゲル電気泳動などの従来法と比べたホモジニアスPCRの利点は、検査時間、作業時間、および相互汚染の可能性の減少である。蛍光プローブは、増幅中(リアルタイム)および増幅後(エンドポイント)に増幅産物を検出および同定するためにLightCycler(Roche)、ABI PRISM 7700および7900(Applied Biosystems)、Smartcycler(Cepheid)、Rotogene(Corbett Research)、MX4000(Stratagene)、SynChron(Biogene)、およびiCycler(BioRad)などのリアルタイムPCR装置と共に採用される。プローブに基づく技法の例には、分子ビーコン(Tyagiら、1996)、5'エキソヌクレアーゼアッセイ(US5691146)、ハイブリダイゼーションプローブ(US6174670)、Scorpionプライマー(Whitcombeら、1999)、およびResonSense(Leeら、2002)がある。蛍光プローブは、標的配列とのハイブリダイゼーションがコンホメーション変化もしくはプローブ分解などによる脱消光(dequenching)またはプローブ相互作用の結果としての励起を招くまでは、典型的には消光状態または非励起状態である。これらのプローブ系は、ドナー(例えば蛍光体)部分とアクセプター(例えば クエンチャーまたは第2の蛍光体)部分との間のエネルギー移動に頼っている。蛍光体により吸収されたエネルギーは、クエンチャーまたはアクセプター蛍光体に移動し、熱として放出されるか、または異なる波長の光として放射されることができる。蛍光シグナルの消光は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムによって起こることがあるし、非FRETのメカニズムによって起こることもある。FRET消光には、ドナーとアクセプターとの間のスペクトル重複が必要であり、この場合、消光の効率はこれら2つの部分の間の距離に関係する。非FRET消光は、蛍光体とクエンチャーとの間の短距離の「接触」により起こり、部分同士でスペクトルが重複する必要はない。
【0004】
5'エキソヌクレアーゼ(TaqMan(商標))アッセイは、PCR増幅された標的DNAを検出するためにFRET消光を使用している。TaqManプローブは、好ましくは5'および3'末端に位置する蛍光体部分およびクエンチャー部分を有するオリゴヌクレオチドである。分子内消光が効率的であることから、無傷のプローブから蛍光はほとんど発生しない。しかし、PCR増幅時にこのプローブはその標的配列と特異的にハイブリダイズし、Taqポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性は蛍光体部分とクエンチャー部分との間でプローブを開裂する。TaqManプローブの酵素的開裂は、蛍光体構成要素とクエンチャー構成要素とを空間的に分離し、標的の増幅と相関して蛍光発光の有意な増加を引き起こす。TaqManプローブを慎重に設計すると、完全に一致したプローブだけが分解し、蛍光シグナルの増加を生じて、多型性標的を識別できるようになる。TaqManプローブはリアルタイムPCR増幅の間に消化されるので、プローブは増幅後の配列解析に利用することはできない。
【0005】
Eclipseプローブは、5'末端に副溝結合剤(MGB)およびクエンチャー部分と、3'末端に結合した蛍光体とを有する短直鎖状オリゴヌクレオチドである。MGBは、Taqのエキソヌクレアーゼ活性がプローブを開裂するのを阻害すると考えられている。プローブのランダムコイル形成により、蛍光体構成要素とクエンチャー構成要素が接近し、蛍光消光が起きる。標的配列へのハイブリダイゼーションはプローブをまっすぐにし、その結果、蛍光体部分およびクエンチャー部分は空間的に離れる。
【0006】
分子ビーコンは分離された状態では非蛍光性であるが、標的配列とハイブリダイゼーションすると蛍光性になる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブである。ハイブリダイゼーションしていない分子ビーコンはステム-ループ構造を形成し、分子の一方の末端に共有結合した蛍光体と、他方の末端に結合したクエンチャーとを有し、その結果、ビーコンのヘアピンは蛍光体部分をクエンチャーと近接した位置に配置する。分子ビーコンが標的配列とハイブリダイズすると、蛍光体部分およびクエンチャー部分は空間的に離れ、その結果、蛍光体はもはや消光されず、分子ビーコンは蛍光を発する。分子ビーコンは、配列検出およびSNP識別のためのリアルタイムアッセイおよびエンドポイントアッセイに採用することができる。分子ビーコンの二次構造はプローブに高特異性を伝達し、一塩基だけ異なる標的の同定を可能にする。しかし、分子ビーコンの分子内相互作用は、潜在的に分子間の標的ハイブリダイゼーションの競合のもととなり、そして、分子ビーコンは内部プローブであることから、標的配列に結合するために、アンプリコンの反対鎖と競合しなければならない。両方の形態の競合が一緒になると、一部の標的分子に対する分子ビーコンのハイブリダイゼーション効率が低下するおそれがある。
【0007】
Scorpionは、蛍光体およびクエンチャーを有するステム-ループ尾部をもつPCRプライマーである(Whitcombeら、1999)。ステム-ループ構造により、蛍光体構成要素およびクエンチャー構成要素は接近する。Scorpionのループ構成要素はプローブ形成配列を有し、高度に効率的な分子内メカニズムにより標的検出が起こる。PCRの間にScorpionは伸長し、プローブ標的配列を含む産物を形成する。Scorpionの尾部は折り重なり、プローブと標的配列とのハイブリダイゼーションが可能になる。増幅された標的へのプローブ形成配列のハイブリダイゼーションは、ステム-ループ構造よりも熱力学的に有利であり、慎重なプローブ設計はわずか一塩基が異なる標的の識別を可能にする。プローブのハイブリダイゼーションによりステム-ループ構造は解離し、その結果、蛍光体構成要素とクエンチャー構成要素とは空間的に離れ、蛍光発生の大きな増加が生じる。ステム-ループ尾部は、DNAポリメラーゼがScorpionのステム-ループ配列をコピーすることを阻害するPCRストッパー(例えばHEG)によりPCRプライマー配列と分離されている。二本鎖Scorpion(Solinasら、2001)は、一方がプライマー、蛍光体、およびプローブ形成配列を有し、他方がクエンチャー部分を有する2つの標識オリゴヌクレオチドを利用している。この場合も、二本鎖Scorpionの伸長によりプローブ形成配列が折り重なり、増幅した標的とハイブリダイズすることが可能になることによって、蛍光体とクエンチャーオリゴヌクレオチドが解離し、発光する蛍光シグナルの量を増加させる。
【0008】
ハイブリダイゼーションプローブは1つの蛍光体部分で標識されたオリゴヌクレオチドである。一方がドナー蛍光体で、他方がアクセプター蛍光体で標識された2つの当該オリゴヌクレオチドが各ハイブリダイゼーションプローブアッセイに必要である。フルオレセインが通常ドナーとして採用され、Cy5、LC-RED640、およびLC-RED705が通常アクセプターとして使用される。ドナー蛍光体の励起は、アクセプター蛍光体の吸収スペクトルと重複する発光スペクトルを生じる。ハイブリダイゼーションプローブ対は、標的分子内の隣接するヌクレオチド配列を認識するように設計されている。分離された状態ではアクセプターオリゴヌクレオチドは励起せず、蛍光シグナルを発生しない。しかし、ポリヌクレオチド標的配列とハイブリダイゼーションする際に、ドナープローブおよびアクセプタープローブは接近し、ドナーからアクセプターに蛍光共鳴エネルギー移動を起こさせる。アクセプター蛍光体からの蛍光シグナルは、両プローブが標的分子にハイブリダイズした場合にのみ発光する。PCR反応に組み込まれた場合、アクセプタープローブからの蛍光は増幅1サイクルあたり1回モニターされ、産物の蓄積のリアルタイム測定を容易にする。ここで、アクセプターにより発光した蛍光の量は、合成された標的の量に比例する。プローブおよびアッセイ条件の慎重な設計により、密接に関係する標識をリアルタイムPCRにより識別することが可能になる。さらに、ハイブリダイゼーションプローブ対を採用して、融解ピーク分析およびTm測定により対立遺伝子を識別することができる。融解曲線分析時の特異的ピークの発生によりホモ接合型試料を同定することができ、融解の追跡1回に2つのピークが存在することによってヘテロ接合型試料を同定することができる。
【0009】
ResonSenseプローブは、プライマー対の位置の間の標的配列に結合する単一標識オリゴヌクレオチドである。ResonSense プローブは、分離された状態または標的配列の不在下では検出できるシグナルを生じない。その代わりにResonSense プローブを励起するためにSYBR GoldなどのDNAインターカレーターを含ませる。DNAインターカレーターは二本鎖DNAに結合し、そして、リアルタイム装置により励起されるとResonSense プローブの蛍光体にエネルギーを移動する(Leeら、2002)。
【0010】
上記プローブ技法は、ポリヌクレオチド配列を検出および識別するためにFRETおよびクエンチャー標識を利用する。しかし、代替的なライトアップ(light-up)プローブ(Svanvikら、2000)システムは、DNA配列を検出および識別するためにクエンチャー標識も、ドナー部分とアクセプター部分との間のFRET移動も必要としない。これらのライトアッププローブは、ペプチド核酸(PNA)から構成されるオリゴヌクレオチド認識配列と、単一の蛍光レポーター基とを含み、ここで、そのレポーターは典型的には非対称シアニン色素であるチアゾールオレンジの誘導体であり、正の電荷を有する。ライトアッププローブの蛍光色素構成要素は、オリゴヌクレオチド分子の末端に結合している。一本鎖の場合は、プローブは相補的核酸配列にハイブリダイズした場合よりも有意に低レベルの蛍光を発光する。一本鎖プローブでは、蛍光体は自由な状態であり、励起エネルギーは運動または熱の形態で放出されることができ、その結果、プローブはあまり蛍光を発生しない。ハイブリダイゼーションすると、正に荷電した蛍光体はDNAの塩基同士の間に入り込み、電荷相互作用の結果として位置が「ロック」され、その結果、励起エネルギーは光としてのみ放出されうる。蛍光発光の量を測定することにより、ライトアッププローブは、核酸配列を検出して1つの位置だけが異なる標的同士を区別するために採用することができる。
【0011】
標的の検出および同定できるようにするためにクエンチャー部分の結合を必要としない他のいくつかの他のプローブ技法も記載されている。多くの蛍光体の発光は、それらの蛍光体が核酸塩基と相互作用することにより変化すると報告されている(Siedelら、1996、Knemeyerら、2000、Leeら、1994、Crockett & Wittwer 2001、Nazerenkoら、2002)。蛍光体とDNAとの相互作用も、蛍光発光の波長に影響すると報告されている。蛍光に最大の作用を及ぼすのは、効率的な電子ドナーであるグアニンであるとされた。消光は、グアニン核酸塩基から蛍光色素への電子移動に起因すると考えられる。消光の程度はプローブおよび標的鎖のグアニンに蛍光体が近接していることに依存すると報告されている(Xuら、1994、Hawkinsら、1997、Norlundら、1989)。蛍光標識プローブでの発光変化の強度および方向は、プローブ配列および標的配列におけるグアニン残基の位置に依存すると報告されている。LUX Primer(Invitrogen)は、ヘアピンの3'末端近くに結合した蛍光体を消光するためにヘアピン構造を採用している(Nazerenkoら、2002)。LUXプライマーのヘアピン構造は、Gの領域に蛍光体部分を接近させることによって蛍光を消光させる場合が多い。プライマーが二本鎖PCR産物に組み込まれると、ヘアピン構造は解離して、蛍光体を脱消光させる。標識近くにグアニン残基が存在すると、LUX Primerの機能性に影響すると報告されている。LUX Primerはどのような二本鎖分子に組み込まれても蛍光シグナルを生じる。したがって、このプライマーは非特異的増幅産物およびプライマー二量体を検出するであろう。
【0012】
GenePinプローブ(Atto-tec GmbH)またはSmart プローブ(Knemeyerら、2000、Heinleinら、2003)は、分子ビーコンに類似したステム-ループ構造である。ループはプローブ形成構成要素であり、ステムは一本鎖状態で蛍光を消光するために採用されている(WO01/36668)。GenePin プローブの蛍光体はステムのポリ(C)構成要素に結合しており、蛍光は相補的なポリ(G)ステム構成要素により効率的に消光される。標的のハイブリダイゼーション時に、ポリ(C)構成要素およびポリ(G)構成要素は分離し、グアニン消光の影響は排除され、蛍光発光のレベルは増加する。
【0013】
Simpleプローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光発光の変化を示す単一標識オリゴヌクレオチドである(US6635427)。蛍光体は典型的には末端に結合しており、ここで、5'標識プローブは好ましくは3'リン酸も含む。Simple プローブでの蛍光変化の強度および方向は、蛍光体の結合位置に隣接するプローブDNA配列およびハイブリダイゼーション時に蛍光体が相互作用する標的DNA配列に依存する。Simple プローブの蛍光消光は、蛍光体が標的鎖のデオキシグアノシンヌクレオチドと接近するハイブリダイゼーション時に報告されている(CrockettおよびWittwer2001)。対照的に、G残基またはその近くに結合している末端蛍光体が相補的標的配列にハイブリダイズしたときに、蛍光増強が報告されている(US6635427)。蛍光体が内部塩基(「バーチャルヌクレオチド」)に置き換わった特定の例では、蛍光体が多型性標的対立遺伝子中のAおよびGヌクレオチドに対向する標的のハイブリダイゼーション時に、Simple プローブの蛍光はそれぞれ増強および消光することが実証された。ヘテロ接合型試料はプローブ/標的のハイブリダイゼーション時に蛍光の有意な増加も減少も示さなかった。
【0014】
ハイブリダイゼーションビーコン(HyBeacon(登録商標)とも呼ばれる)は、一本鎖状態のときよりも標的配列にハイブリダイズしているときに多量の蛍光を発光する内部標識オリゴヌクレオチドである(WO01/73118)。HyBeaconは蛍光シグナルの発生にクエンチャー部分を必要とせず、プローブの二次構造にも、酵素開裂にも、別の蛍光体へのFRETにも頼っていない。クエンチャー標識の不在下で報告されたDNAの消光性が、ハイブリダイゼーション時の蛍光発光の変化を担っている。上に説明した他の単一標識プローブ技法とは異なり、蛍光変化の方向はプローブおよび標的鎖のヌクレオチド配列による影響を受けない。
【0015】
本明細書における以前に公表された文書の一覧および論考は、必ずしもその文書が現況技術の一部であるという承認としても、通常の一般知識であるという承認としてもとらえてはならない。
【特許文献1】US5691146
【特許文献2】US6174670
【特許文献3】WO01/36668
【特許文献4】US6635427
【特許文献5】WO01/73118
【特許文献6】WO01/73118A2
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、今回驚くことに多数の内部蛍光体を好ましくは相互に所定の間隔で有するオリゴヌクレオチドが、それ以外は等しい単一標識版のオリゴヌクレオチドに比べて、標的ポリヌクレオチド配列と結合したときに予想外に大きな蛍光シグナルを与えることを見出した。
【0017】
本発明の第1の態様は、二次構造を実質的に有さず、ヌクレオチド残基から形成される一本鎖オリゴヌクレオチドを提供し、ここで、2つ以上の内部ヌクレオチド残基は結合するクエンチャーを有さない蛍光体で標識されている。
【0018】
下に詳細に論じるように、本発明のオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションプローブとして特に有用である。
【0019】
本発明のオリゴヌクレオチドは、WO01/73118に記載されたHyBeacon(登録商標)のように、容易に検出することのできるハイブリダイゼーションプローブとして有効であるためにオリゴヌクレオチドの二次構造にも、酵素の作用にも、オリゴヌクレオチドに結合したクエンチャー部分にも頼らない。これらのオリゴヌクレオチドと(下記の)それらの標的配列との間の相互作用は、蛍光発光に有意な変化を生み、信頼できる標的検出を可能にする。プローブの安定性の変動によって、下記にさらに詳細に論じる二本鎖融解温度の測定により1つのヌクレオチドだけが異なる標的の識別が可能になる。
【0020】
オリゴヌクレオチドに結合した蛍光体は、C残基に隣接している蛍光体およびその蛍光体の領域に豊富なG残基を有する標的鎖が原因で、プローブ/標的のハイブリダイゼーション時に消光すると予想されるということを示唆している、US6635427に提示された配列に依存するデータとは逆に、本発明のオリゴヌクレオチドは、プローブ配列および標的配列とは無関係に、完全相補的標的配列および(部分的に)ミスマッチの(すなわち部分的に相補的な)標的配列にハイブリダイズしたときに高レベルの蛍光を示す。
【0021】
データは、本発明のオリゴヌクレオチドの蛍光体が一本鎖オリゴヌクレオチド自体と相互作用するが、ハイブリダイゼーション時に形成したハイブリッド中の二本鎖DNAとは相互作用しないことを実証している。したがって、プローブの配列が蛍光変化の強度に影響するおそれがあるが、プローブはハイブリダイゼーション時に消光しない。本発明のオリゴヌクレオチドの蛍光体標識塩基がハイブリダイゼーション時にGに富む標的領域に接近した場合でも、蛍光体で直接標識されたヌクレオチド残基が2つ以上の未標識ヌクレオチド残基で分離されているオリゴヌクレオチドプローブでは特に、脱消光および正の融解ピーク(-dF/dTが正の値となる)が本明細書に実証されたように観察される。本発明のオリゴヌクレオチドが配列に依存しないことは、Nazerenkoら(2002b)により報告されたものとは対照的であり、その報告では、プローブ内の蛍光体の位置および蛍光体へのグアニンの近接に依存して、ハイブリダイゼーション時に内部フルオレセインdTの発光は増強または消光された。ハイブリダイゼーション時に蛍光増強を可能にするためには標識から4ヌクレオチド以内に少なくとも1つのグアニン塩基が必要であると報告された。
【0022】
WO01/73118のHyBeacon(登録商標)と同様に、本明細書に記載する本発明の多標識オリゴヌクレオチドは、プローブ配列および標的配列とは無関係に蛍光増強のレベル増大を生じ、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光増強を促進するために、所定の位置にグアニンを必要としない。理論に縛られるわけではないが、本発明のオリゴヌクレオチドに結合した蛍光体は、一本鎖のときのプローブ(オリゴヌクレオチド)DNAと相互作用することにより(例えば一本鎖疎水性ポケットに埋まることにより)、(例えば衝突消光(collisional quenching)を起こす塩基スタッキングにより)蛍光消光を起こすと考えられている。しかし、プローブが標的とハイブリダイズすると、蛍光体は二本鎖DNAと相互作用せず、その結果、本発明のオリゴヌクレオチドに結合した蛍光体は溶液内に突出し、発光レベルの増大を示し、そのような増大は標的配列には依存しないと考えられている。参照により本明細書に組み込まれている、Marksら(2005)に記載された分子およびコンピュータモデリングは、この点に関連する。
【0023】
「二次構造を実質的にもたない一本鎖オリゴヌクレオチド」により、そのオリゴヌクレオチドは、分子内塩基対形成を可能にする、相互の逆相補体である実質的な部分がある配列を有さないという意味が含まれる。「実質的な部分」により、4つ以上の連続するヌクレオチド残基を意味する。特に、逆相補性の実質的な領域を有するように設計された分子ビーコン、Scorpion、LUX、およびSmartプローブなどの従来技術のオリゴヌクレオチドプローブとは異なり、本発明のプローブは典型的には当該逆相補性を避けるように設計されている。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、標的の逆相補体を採用しているだけであり、二次構造を発生する追加の配列を含まない。
【0024】
オリゴヌクレオチドの潜在的な二次構造は、Mfold(Zucker(2003))などの核酸フォールディングソフトウェアを使用して予測することができる。二次構造の安定性は、その自由エネルギー(ΔG)、すなわちその二次構造を壊すのに必要なエネルギーで表されることが多い。ここで、負側に大きいΔG値は安定な構造を示す。本発明のプローブは、典型的には正の、または負側に小さいΔG値を有し、好ましくは-2kcal/molよりも負側に小さく、さらに好ましくは-1kcal/molよりも負側に小さい。Scorpionなどの二次構造に頼るプローブ技法は、典型的にはずっと負側に大きいΔG値を示す。Thelwellら(2000)により記載されたScorpionプローブは、-7.7kcal/molから-12.2kcal/molの範囲のΔG値を有する。
【0025】
二次構造は、オリゴヌクレオチドの一領域が別の領域とハイブリダイズして、例えば(従来の分子ビーコンの場合のように)ループを形成するときに生じ、オリゴヌクレオチドがその標的とハイブリダイズする効率を低下させる。本発明のオリゴヌクレオチドでは、オリゴヌクレオチドの一領域が別の領域とハイブリダイズする傾向が実質的になく、これは、例えば上記のMfoldソフトウェアを使用して評価することができる。
【0026】
蛍光基(蛍光体)は、5'または3'末端とは対照的に、本発明のオリゴヌクレオチドの内部塩基に結合しており、二本鎖の場合(すなわち標的とハイブリダイズした際)よりも一本鎖の場合に大きく消光されると考えられる。それは、DNA塩基が塩基対を形成していない場合に蛍光体にスタッキングすることができると提案されているからである。一本鎖状態では、蛍光体は2つのDNA塩基の間に挟まれ、安定な疎水性構造を形成することができる。この構造は、ヌクレオチドが塩基対形成に関与する二本鎖の形成時に開放されるものである。
【0027】
末端に標識があると、塩基のスタッキングはハイブリダイゼーション時に蛍光体の一方の側にのみ起きることができる。本発明のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした場合は、蛍光体はDNA塩基の間に位置しないであろうが、塩基から妨害されずに伸びることができる。蛍光体が一本鎖状態よりも二本鎖状態でより多くのグアニンに近接しているならば、Simple プローブなどの末端標識プローブは、二本鎖形成時に消光するであろう。しかし、末端標識が高いグアニン存在度の領域でプローブに結合しているならば、蛍光は二本鎖形成時に増強するであろう(US6635427)。プローブおよび標的鎖中のグアニンの位置および存在度によるこの蛍光消光および増強の配列依存性は、本発明のオリゴヌクレオチドでは観察されない。
【0028】
全てのDNA塩基は、ある程度蛍光を消光することができ、Gが最大のその能力をもつ。疑いを避けるために、用語「結合するクエンチャー」には、オリゴヌクレオチドの部分を形成するDNA塩基は含まれない。本発明のオリゴヌクレオチド上の蛍光体は、一本鎖プローブの塩基と相互作用し、その結果、蛍光は消光する。蛍光体は標的のハイブリダイゼーション時に溶液中に突出し、二本鎖DNAと相互作用しないと予想されることから、標的の配列は蛍光の変化の方向に影響することはできず、すなわち標的中のグアニンはハイブリダイゼーション時に蛍光を消光することはできない。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドは標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光のレベル増大を示す。Gは蛍光強度を調節することができるが、ハイブリダイゼーション時に全ての蛍光が有意に脱消光する。本発明のオリゴヌクレオチドの内部結合蛍光体からの蛍光は、プローブおよび標的鎖中のグアニンの位置および存在度とは無関係に、二本鎖形成時に常に増強する。
【0029】
本発明の二重標識および多重標識オリゴヌクレオチドは、図11に示すようにピーク高の低下または負のピークに至る不都合な相互作用を避けるために典型的には本明細書に開示した単純な間隔の制約に従うものの、クエンチャー構成要素が不在であるにもかかわらず、一本鎖(ハイブリダイズしていない)コンホメーションに比べて相補的核酸配列とハイブリダイズした場合に有意に多量の蛍光を発光する。
【0030】
SN比は、本発明のオリゴヌクレオチドを含む二本鎖ハイブリッドのシグナル強度対一本鎖プローブのシグナル強度の比であり、好ましくは可能な限り大きく、例えば2以上である。本発明のオリゴヌクレオチドのSN比はかなり大きく、実用的には結合するクエンチャー部分が不在であるにもかかわらず1を超える。DNA配列とのある形態の相互作用が原因で、一本鎖状態の場合よりもプローブが標的分子とハイブリダイズしている場合に、蛍光体部分は有意に大きな蛍光シグナルを発光すると考えられる。本発明の二重標識または多重標識オリゴヌクレオチドプローブは、同一の配列の単一標識オリゴヌクレオチドから予想される比よりも大きい比を有する。
【0031】
蛍光増強は、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光体標識残基があらゆる配列状況に置かれたときに起こる。蛍光体標識残基をGに隣接して配置すると、二本鎖状態で最高レベルの蛍光増強を招くことができる。しかし、標的のハイブリダイゼーション時の蛍光増強は、蛍光体標識残基が高いC存在度の領域内に位置する場合にも起こるものである。本発明の一実施形態では、標的鎖の残基は、ハイブリダイゼーション時のプローブ蛍光の消光の原因にも増強の原因にもならない。蛍光体とオリゴヌクレオチドとの相互作用の性質は、遊離オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドとの間で異なり、その結果、本発明のオリゴヌクレオチドは、一本鎖の場合よりも二本鎖の場合に高レベルの蛍光発光を示し、これは、配列が蛍光増強の強度に影響するおそれがあるが、機能性に関して容易に認められる配列の制約がないことを実証している。
【0032】
典型的には、オリゴヌクレオチドは、蛍光体で標識された2または3または4または5または6または7または8または9または10個の内部残基を有する。この数はオリゴヌクレオチドの長さに依存することがある。典型的には、最大約3分の1の内部残基が蛍光体で標識されているが、それよりも少数であってもよい。
【0033】
本発明のオリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは相補的ポリヌクレオチド標識とハイブリダイズして安定なハイブリッドを用意するために適した長さであり、そのハイブリッドの融解温度は標的の正確な配列に依存する。15ヌクレオチド残基未満を有するオリゴヌクレオチドは、多くの場合、特に2つのハイブリダイズする配列が完全には相補的でない場合に十分に安定なハイブリッドを形成しない。もっとも、それらの配列も一部の状況では使用することができる。約30ヌクレオチド残基よりも長いオリゴヌクレオチドは、一塩基のミスマッチが存在する可能性に融解温度が比較的非感受性なハイブリッドを形成することがある。もっとも、それらのオリゴヌクレオチドは一部の状況で使用することができる。
【0034】
典型的には、オリゴヌクレオチドは長さが10から50ヌクレオチド残基であり、好ましくは長さが15から30ヌクレオチド残基である。したがって典型的には、このオリゴヌクレオチドは、長さが10または11または12または13または14または15ヌクレオチド残基から最長25または26または27または28または29または30(以下)である。したがって、本発明は、言及した任意のサイズの範囲内のオリゴヌクレオチドを含む。
【0035】
サイズの範囲が15から30ヌクレオチドの範囲内のオリゴヌクレオチドは、蛍光体で標識された最大約10個のその内部ヌクレオチド残基を有することがあるが、好都合にはこのサイズの範囲のオリゴヌクレオチドは、蛍光体で標識されたその内部残基の2または3または4または5個を有する。
【0036】
蛍光体で標識された少なくとも2つ(または場合によっては2つ)のヌクレオチド残基が、少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されていることが好ましい。典型的には、標識ヌクレオチド残基を分離する2または3または4または5または6個の未標識ヌクレオチド残基がある。2つの未標識残基が標識残基を分離していることが特に好ましい。全ての標識ヌクレオチド残基が少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されていることも特に好ましい。好ましくは、蛍光体同士の直接「接触」消光を回避するように蛍光体は間隔が置かれている。接触消光は蛍光体の物理的接触に起因し、典型的には物理的分離(すなわち蛍光体標識塩基同士の間の少なくとも2つのヌクレオチド残基)により回避される。
【0037】
ヌクレオチド残基は、通常は天然ヌクレオシドA、C、G、T、およびUに由来する。しかし、本発明のオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の位置でヌクレオチドアナログを使用することができ、当該ヌクレオチドアナログは、例えば塩基部分および/または糖部分および/またはリン酸結合で修飾されている。プロピニルdU(dT-アナログ)および2-アミノdA(dAアナログ)などの塩基修飾は、一般にハイブリダイゼーションの性質を変化させ、15個未満のヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドの使用を魅力的にする。プロピニルdU含有オリゴヌクレオチドの場合、それらのオリゴヌクレオチドは、必要な標的配列との融解温度に応じて長さ約10残基である。
【0038】
あるいは、ペプチド核酸(PNA)、LNA(locked nucleic acid)、2'-O-メチルRNA、ホスホルアミダイトDNA、ホスホロチオエートDNA、メチルホスホネートDNA、またはホスホトリエステルDNAから構成されるか、またはそれを含むオリゴヌクレオチドを採用して標的配列と化学的または酵素的により安定な相互作用を形成させることができる。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチド全体にわたって同一の蛍光体を使用することが好ましい。ヌクレオチド残基に結合することができる任意の蛍光体が、オリゴヌクレオチドがその標的配列にハイブリダイズすることを阻止しないならば、その蛍光体を使用することができる。
【0040】
適切な蛍光体には、FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(ヘキサクロロフルオレセイン)などのフルオレセイン系蛍光体;ROX(6-カルボキシ-X-ローダミン)およびTAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)などのローダミン系蛍光体;Cyファミリーの色素、特にCy3およびCy5があり、その全てをGlen Research、22825 Davis Drive、Sterling、VA 20164、米国から入手することができる。
【0041】
NEDおよびJOEなどのその他のフルオレセイン色素、例えば異なる発光スペクトルを有する色素を使用することができる。下記の表9から15に詳細に示すように、Alexa、Atto、Dyomics、Dyomics Megastokes、およびThilyte色素ファミリーなどのその他の蛍光体も使用することができる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、C6 FAM dU(英国サウサンプトン大学から入手できる)またはフルオレセインdT(Glen Research、スターリング、バージニア州から入手できる)をそれぞれ使用して、内部ウラシル/チミン塩基の5-位置で標識する(これに関連して、dTおよびdUの構造は同一であり、それ故にこれらの用語は相互に交換することができる)。FMOC保護されたホスホルアミダイトは、オリゴヌクレオチド内の内部T位置で組み込むことができ、FAM、TET、HEX、ROX、TAMRA、Cy3、およびCy5(全てGlen Researchから入手できる)を非限定的に含む多様な蛍光色素のための結合点として使用することができる。オリゴヌクレオチドの合成後にFMOC基を2'-保護ウリジンから除去し、適切に保護された6-カルボキシフルオレセインホスホルアミダイトなどの蛍光体ホスホルアミダイトを遊離の2'-ヒドロキシ基と結合させることができる。なお別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、内部のA、C、またはG位置で標識することができ、ここで、固相オリゴヌクレオチド合成の間に標識ヌクレオチドがホスホルアミダイトとして取り込まれるか、またはオリゴヌクレオチド合成後に蛍光体が、保護されたホスホルアミダイト(例えば8-アミノアルキル-dA、7-アミノアルキル7-デアザ-dA、N(4)-アミノアルキルdC、および5-アミノアルキル-dC)を使用して結合されるかのいずれかである。
【0043】
本発明のオリゴヌクレオチド全体にわたって典型的には同一の蛍光体が使用されるが、同一のオリゴヌクレオチドに異なる蛍光体を使用することが有利なこともある。例えば、実施例にさらに詳細に論じるように、同一のオリゴヌクレオチド中にROXおよびFAMの両方が存在することが有利である。オリゴヌクレオチドが、一方はROXであり、他方はFAMである2つの蛍光体を有することが特に好ましい。同一のオリゴヌクレオチドに2つ以上の異なる蛍光体を使用することは、そのオリゴヌクレオチドが多重化に使用される場合に特に有利なことがある。
【0044】
蛍光体が二本鎖DNAにインターカレートしないことが好ましい。蛍光体がチアゾールオレンジ(TO)でないことが好ましい。
【0045】
本発明の二重標識オリゴヌクレオチドは、単一標識プローブで観察されるものの2倍の蛍光シグナルおよび背景ノイズを示すことにより、SN比が維持されると予想することができる(すなわち相加的作用が予想される)。しかし、驚くことに二重標識プローブのSN比は、同一の配列の単一標識プローブで観察されたSN比よりも大きい。SN比における同様の予想外の増加は、本発明のその他の多重標識オリゴヌクレオチドでも観察される。
【0046】
さらに、実施例にさらに詳細に記載するように、二重、三重、四重、およびさらなる多重標識プローブは、同一のヌクレオチド配列の個別の単一標識プローブの累積作用が単に相加的である場合に、その作用から予想されるピークよりもかなり大きい融解ピークを発生することが実証された。
【0047】
典型的には、本発明のオリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチド配列に相補的な配列を有する。したがって、そのオリゴヌクレオチドは、適切な条件で標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる。したがって、状況が他のことを示さない限り、「相補的」により、オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズできるという意味を含める。オリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列に完全に相補的であってもよいし(すなわちオリゴヌクレオチド同士の塩基対形成に関して完全なマッチがある)、オリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチド配列に部分的に相補的であってもよい(すなわちオリゴヌクレオチドと標的ポリヌクレオチド配列との間に1つまたは複数のミスマッチがあるが、オリゴヌクレオチドはそれでもハイブリダイズすることができる)。典型的には、オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドと部分的に相補的な場合には、5個未満のミスマッチ、好ましくは1または2または3または4個のミスマッチがあり、さらに好ましくは1つのミスマッチがある。好都合には、オリゴヌクレオチドは、その標的の相補体と少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する。例えば、20残基のオリゴヌクレオチドについて、標的と6または4または3または2または1個のミスマッチがあってもよい。
【0048】
典型的には、標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、マウスゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、および任意の感染因子のゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)からなる群から選択される。好ましくはオリゴヌクレオチドは、以下のヒト遺伝子またはその対立遺伝子の任意の1つに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。
N-アセチルトランスフェラーゼ2 X14672
第V因子Leiden AY364535
第II因子 AF493953
MTHFR NM_005957
鎌状赤血球貧血症 AY356351
【0049】
ヒツジPrP遺伝子(NM_001009481)も分析に好ましい遺伝子である。
【0050】
オリゴヌクレオチドが、以下の感染因子のゲノムまたはその中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであることも好ましい。
トラコーマクラミジア X07547
アデノウイルス AJ293905
A型インフルエンザ AY130766
肺炎連鎖球菌 X52474
MRSA AJ810121
【0051】
実施例にさらに記載するように、このオリゴヌクレオチドは、遺伝子の1つの対立遺伝子に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、このオリゴヌクレオチドは、ヒトにおいて特定の遺伝病(例えば嚢胞性線維症)に関連することがある遺伝子の突然変異対立遺伝子に相補的であってもよいし、野生型対立遺伝子に相補的であってもよい。その遺伝子の与えられた対立遺伝子を別の対立遺伝子と比べたヌクレオチド配列の差に相補的な配列が、オリゴヌクレオチドの中央近くに位置する(例えばヌクレオチド残基の半分から3分の1の範囲内にある)ことが好ましい。これは、(両対立遺伝子にハイブリダイズすることができるが異なるTmを有する)与えられた当該オリゴヌクレオチドについての融解温度を十分に識別することを可能にする。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明によるオリゴヌクレオチドは、好ましくは公知の多型、例えば点突然変異または一塩基挿入または欠失(SNP)を有する公知のポリヌクレオチド標的の一対立遺伝子に完全に相補的な配列を有する。多型の部位は、好ましくは本質的ではないがオリゴヌクレオチドプローブの中央に位置する。あるいは、オリゴヌクレオチドは公知の非多型ポリヌクレオチド配列に相補的であってもよく、例えば迅速な病原体検出のために単にその標的を検出するために使用してもよい。また、オリゴヌクレオチドを使用して、公知の多型および特徴付けられていない多型を有する潜在的に多型の標的を研究してもよい。オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの差および融解ピークTmの差により未知の多型の位置および/または性質のマッピングする可能性が考えられている。本発明のオリゴヌクレオチドがポリヌクレオチド標的とハイブリダイズされる場合、上記特徴の全ては、至適融解温度と、完全にマッチする鎖および単一または多数の位置のミスマッチを有する鎖の間に融解温度の実質的な差(ΔTm)とを有する安定なハイブリッドの形成に寄与する。
【0053】
下にさらに詳細に論じるように、特に本発明のオリゴヌクレオチドが核酸増幅反応における標的ポリヌクレオチド配列の産生のプローブとして使用される場合に、このオリゴヌクレオチドは、3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシル基を有さないオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼに対するプライマーとして作用できず、DNAリガーゼによる連結できないオリゴヌクレオチドであることが好ましい。好都合には、3'ヌクレオチド残基は3'デオキシ残基である。同じく好都合には、3'ヌクレオチド残基は3'リン酸または鎖の伸長を阻止する他の3'基を有することがある。
【0054】
本発明のさらなる態様は、固体支持体に固定化された本発明のオリゴヌクレオチドを提供する。固体支持体は任意の適切な固体支持体であってよい。オリゴヌクレオチドを溶液中の相補的標的と自由にハイブリダイズさせる形態の支持体を使用してそのオリゴヌクレオチドを固定化する技法およびリンカーは、文献に十分に説明されている。
【0055】
本発明のなおさらなる態様は、本発明のオリゴヌクレオチドのアレイを提供する。アレイは、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドの、2つ以上の個別にアドレスで呼び出せる部位を含んでもよい。典型的には、このアレイは、少なくとも10または少なくとも100または少なくとも1000個の当該部位を有するものである。典型的には、このアレイは、異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、典型的にはそれぞれ異なる部位が、異なる配列を有するオリゴヌクレオチドと関連している。好ましい実施形態では、アレイは、支持体を使用して間隔を置いた位置で固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイであり、ここで、その異なるオリゴヌクレオチドプローブは、本発明による異なるオリゴヌクレオチドである。さらに、本発明のオリゴヌクレオチドは、支持体上または支持体内に固定化されたDNA標的を分析するために採用してもよく、ここで、個別の標的はアレイ型形式に間隔を置いた位置で配置することができる。
【0056】
オリゴヌクレオチドを固定化する方法およびオリゴヌクレオチドのアレイを作製する方法は当技術分野において周知である。
【0057】
本発明のなおさらなる態様は、ポリヌクレオチド配列を有する試料中の標的ポリヌクレオチド配列を研究する方法を提供し、その方法は、標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる本発明のオリゴヌクレオチドと試料を接触させるステップ、およびハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するステップを含む。
【0058】
試料は任意の適切な試料であってもよく、標的ポリヌクレオチド配列を含むことが公知の試料であってもよく、標的ポリヌクレオチド配列を含むことが未知の試料であってもよい。そして、研究の目的は、試料がその配列を含むか含まないかを判定することである。
【0059】
このオリゴヌクレオチドは蛍光標識されており、標的にこのオリゴヌクレオチドが結合すると、蛍光の増大があることから、好都合には蛍光の増加は、このオリゴヌクレオチドと標的ポリヌクレオチド配列との間にハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するために使用される。
【0060】
与えられた条件でこのオリゴヌクレオチドはある温度でその標的とハイブリダイズすることができると認識されているものである。下にさらに詳細に論じるように、標的ポリヌクレオチド配列を研究するために、ハイブリダイゼーションの温度を変動させ、異なる温度で蛍光を検出することが望ましいことがある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、この方法は、前もって決定された温度で、または標的ポリヌクレオチド配列と前記オリゴヌクレオチドとの間に形成したハイブリッドの融解点(Tm)付近の温度範囲にわたって行われる。Tmは、典型的にはプローブの50%が標的配列にハイブリダイズし、50%が解離して溶液中に遊離状態である溶解曲線の分析により判定される。
【0061】
このオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列に完全に相補的であってもよく、そのオリゴヌクレオチドは、与えられたハイブリダイゼーション条件で特徴的なTmを有するものである。あるいは、このオリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチド配列に完全には相補的ではないことがあるが、それでも標的にハイブリダイズすることができ(そのオリゴヌクレオチドは部分的に相補的である)、このオリゴヌクレオチドは特徴的な(しかしほぼ確実に異なる)Tmを有するものである。
【0062】
本発明の方法は、遺伝子の多型の分析に特に適することから、一実施形態において、研究された標的ポリヌクレオチド配列は遺伝子の1つまたは複数の対立遺伝子である。この方法に使用するオリゴヌクレオチド(または前記オリゴヌクレオチド)は、好都合には遺伝子の1つを超える対立遺伝子にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドであり、典型的には与えられたハイブリダイゼーション条件で異なる対立遺伝子に関して異なるTmを有する。
【0063】
この方法は、例えば標的配列が存在するかどうかが未知の試料中での、標的配列の存在を検出するために使用することができる。この方法は、標的配列を同定するためにも使用することができるし、試料中の標的ポリヌクレオチド配列の量を定量するために使用することもできる。典型的には、標的ポリヌクレオチドにオリゴヌクレオチドが結合したときの蛍光の増加をこのために使用する。
【0064】
生物学的材料の最初の供給源(唾液、口腔スワブ、少量の乾燥血液など)が標的ポリヌクレオチドを含みうる少量の核酸だけを含むことが多いことから、試料が増幅により産生されたポリヌクレオチド配列を含む場合に、これは特に好都合である。
【0065】
適切には、ポリヌクレオチド配列は、非対称的PCR増幅、逆転写PCR(RT-PCR)、リガーゼ鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在性増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、または核酸配列に基づく増幅(NASBA)を含む任意の1つまたは複数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生される。
【0066】
好ましい実施形態では、試料中のポリヌクレオチド配列の増幅は、標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドの存在下で行われる。この実施形態では、オリゴヌクレオチドの3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシルを有さないことが特に好ましい。反応に存在する本発明のオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼによる鎖伸長をできず、DNAリガーゼによる連結をできないことが特に好ましい。この実施形態では、試料中のポリヌクレオチド配列が増幅する間に蛍光の観察を行うことも好ましい。
【0067】
増幅の工程が、生物学的供給源から核酸を抽出することができるため、増幅前に当該抽出が必要ないことがある。したがって、例えば試料中のポリヌクレオチド配列は、事前の核酸抽出なしに唾液などの生物学的供給源から増幅により産生することができる。
【0068】
本発明は、公知の多型を有するポリヌクレオチド標的を研究する方法を提供し、その方法は、蛍光体標識ヌクレオチド残基を含むオリゴヌクレオチドプローブを用意するステップを含む。ポリヌクレオチド標的は、オリゴヌクレオチドプローブと共にインキュベートされハイブリッドを形成し、そのオリゴヌクレオチドプローブは、一本鎖形態よりもハイブリッド形態の場合に高レベルの蛍光を示す。オリゴヌクレオチドプローブが発光する蛍光のレベルは、前もって決定された温度で観察されるか、またはある範囲の温度でモニターされる。
【0069】
好都合には、2つの異なる対立遺伝子に異なるTmでハイブリダイズできる単一オリゴヌクレオチドプローブが研究に使用される場合、2つのTmの中間の温度を使用してもよいし、アッセイをある範囲の温度で(すなわち溶解分析により)行ってもよい。
【0070】
この方法は、異なる標的配列(例えば同一遺伝子の異なる対立遺伝子)にハイブリダイズする本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブを含みうると認識されているものである。好都合には、これらは異なる蛍光性質を有する蛍光体を使用することにより識別することができるし、2つ以上のオリゴヌクレオチドは、それぞれの標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズした(またはハイブリダイズしつつある)場合に、異なる融解性(例えばTm)を有する。
【0071】
典型的には、ある範囲の温度が使用される場合に、その範囲はオリゴヌクレオチドとそのポリヌクレオチド標的との間に形成したハイブリッドについてのTmを包含する。好都合には、温度範囲は、Tmの±10℃、典型的には±5℃である。
【0072】
好都合には、2つの異なるオリゴヌクレオチドプローブが研究に含まれる場合に、アッセイはある範囲の温度で(すなわち融解分析により)行われる。
【0073】
温度に伴う蛍光シグナルの変化速度の観察が行われるように、本発明の方法を実施することが特に有用である。
【0074】
典型的には、本発明のオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列とハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドであり、ここで、そのハイブリッドは20℃から90℃、好ましくは40℃から70℃のTmを有する。
【0075】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブが完全に相補的な標的配列および部分的に相補的な標的配列を検出するために使用される状況において、完全に相補的な配列との選択的なハイブリダイゼーションは、標的の濃度がプローブの濃度を超える場合に起こることができる。それは、ミスマッチの配列の方が不安定だからである。極端な場合には、選択的ハイブリダイゼーションは完全に相補的な形態の標的だけを検出することができる。したがって、プローブ濃度の増加を採用して、ミスマッチの標的のハイブリダイゼーションを促し、ピーク高のバランスを改善することができる。
【0076】
本発明のこの態様の一実施形態では、PCRアッセイに本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが含められ、そのオリゴヌクレオチドは、一本鎖の場合よりも相補的標的配列にハイブリダイズした場合に多量の蛍光を発光する。増幅後に、標的配列の存在および同一性が融解曲線分析により判定される(Frenchら、2001、Frenchら、2002)。ハイブリダイズしたプローブの安定性および融解温度は、プローブと標的配列との間の相同性の程度に依存する。反応温度が本発明のオリゴヌクレオチドのTmを超えて増大すると、プローブ/標的二本鎖が解離し、蛍光発光の量が減少する。一塩基だけが異なる配列を検出し、融解ピークTmに基づき区別する。50サイクルの増幅および融解分析は、わずか16分間で完了する。ホモジニアス配列分析に本発明のオリゴヌクレオチドを使用する1つの利点は、単一オリゴヌクレオチドプローブを使用してホモ接合型およびヘテロ接合型試料を信頼性高く同定できることから得られる。
【0077】
ポリヌクレオチド標的はDNA、RNA、またはcDNAであってもよく、一本鎖形態で使用されるか、またはDNA二本鎖を探索して三重鎖を形成させてもよい。一実施形態では、ポリヌクレオチド標的は公知の多型性、好ましくは一塩基多型(SNP)を有する。標的は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブと共にハイブリダイズ条件でインキュベートされる。ハイブリッドが一本鎖オリゴヌクレオチドプローブよりも強い蛍光シグナルを発生することが必要である。ハイブリッドの融解温度は、何よりもポリヌクレオチド標的およびオリゴヌクレオチドプローブが完全に相補的であるか、それとも、SNPの位置、もしくはその近くに単一のミスマッチまたは二重ミスマッチまでもあるかに依存するものである。この方法は、ハイブリッドの融解温度近くの前もって決定された温度で、またはある範囲の温度でオリゴヌクレオチドプローブにより発光する蛍光シグナルのレベルを観察するステップを伴う。2つの代替法が記載されているが、他の代替法も可能である。
a)温度に対する蛍光シグナル強度の負の導関数(-dF/dT)のグラフを温度に対して作るために、蛍光シグナルを連続的に観察しながらハイブリッドを含有する溶液の温度をゆっくりと上げる。ハイブリッドの融解温度(Tm)はピークとして現れ、ポリヌクレオチド標的の配列についての情報を与える。本発明のオリゴヌクレオチドの融解分析により得られたTmを使用して、多型性標的を識別することができる。同様に、その溶液を高温からゆっくりと冷却し、アニーリング温度を決定することにより分析を行うことができる。
b)ハイブリッドの溶液を所定の温度に保ち、蛍光のレベルを観察した。一般に、所定の温度は、完全にマッチしたハイブリッドの融解温度と1つまたは2つのミスマッチを有するハイブリッドの融解温度との中間になるように選択される。観察された蛍光シグナルのレベルは、ハイブリッドが解離したか、していないかを示し、それでポリヌクレオチド標的の配列についての情報を与える。多型性標的はエンドポイント形式およびリアルタイム形式で識別することができる。
【0078】
好都合には、ポリヌクレオチド標的は、ゲノムDNAの所望の部分を増幅させるために適切なプライマーを使用することにより形成したPCRアンプリマーのことがある。ホモジニアスな様式で、例えば増幅サイクル手順の前、途中、または後にオリゴヌクレオチドプローブを加えることにより、1つの反応容器内で、増幅および標的の研究を行うことが好都合なことがある。DNA、RNA、またはcDNAを前もって抽出せずに唾液などの試料から直接標的増幅および配列研究を行うことも好都合なことがある。好ましくは、PCR増幅の間の鎖伸長を防止するためにオリゴヌクレオチドプローブはその3'-末端で修飾される。別の態様では、標的の増幅は非対称PCRを使用して行われ、多量の一本鎖標的を発生させることができる。ミスマッチの標的よりも完全に相補的な標的配列に対する選択的なプローブハイブリダイゼーションは、プローブ濃度を増加させることにより避けることができる。本発明のオリゴヌクレオチドを使用したアッセイのための標的の増幅は、連結鎖反応(LCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、および核酸配列に基づく増幅(NASBA)などの代替技法を使用しても行うことができる。典型的には、150nMよりも高いプローブ濃度が非対称的アッセイに使用される。
【0079】
検討中のSNPの各対立遺伝子に1つが完全に相補的な、本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドを提供することが好都合なことがある。本発明の各オリゴヌクレオチドが異なる蛍光体を有する場合に、ホモ接合型標的およびヘテロ接合型標的の分析のために溶液中でプローブを混合することが好都合なことがある。同様にして、いくつかの異なるSNPの様々な対立遺伝子に相補的な本発明のオリゴヌクレオチドが、それぞれスペクトル的に別個の蛍光体で標識されているならば、そのオリゴヌクレオチドの混合物を多重分析のために溶液中で一緒に使用することができる。当該多重分析は、異なるマッチおよびミスマッチのTmを示す本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドを採用することにより、多数の標的および対立遺伝子を融解温度に基づき同時に検出および同定できるようにすることで、単一の種類のレポーター色素(蛍光体)を使用して行うこともできる。
【0080】
標的ポリヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド標的配列を含有しうる試料、またはその両方にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドが支持体上または支持体内に固定化される本発明の方法を行うことができる。
【0081】
標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、マウスゲノムまたはその中の任意の遺伝子もしくは対立遺伝子、および任意の感染因子のゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)からなる群から好ましくは選択される。好ましい標的配列は上記の通りである。
【0082】
本発明のさらなる態様は、本発明のオリゴヌクレオチドを作製する方法を提供し、その方法は、標的ポリヌクレオチド配列を選択するステップおよび標的ポリヌクレオチドと配列相補性を有し、本発明の第1の態様に示された性質を有するオリゴヌクレオチドを合成するステップを含む。典型的には、このオリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドは、標的配列に完全に相補的なオリゴヌクレオチドであってもよいし、または上記のようにミスマッチのオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0083】
好ましくは、標的ポリヌクレオチド配列は、上にさらに詳細に記載したようにヒトゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、マウスゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)、および任意の感染因子のゲノム(その中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む)からなる群から選択される。
【0084】
この方法により産生された本発明のオリゴヌクレオチドは、アレイ上に配置することができることから、本発明は、固体支持体上に本発明の2つ以上のオリゴヌクレオチドを配置することによってオリゴヌクレオチドのアレイを産生する方法も含む。典型的には、オリゴヌクレオチドが配置(結合)している部位は、支持体上に均一に分布している。
【0085】
本明細書において参照した全ての文書は、本明細書に組み込まれる。
【0086】
これから以下の非限定的な実施例および図面を参照することにより、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
実施例に関係する材料および方法
オリゴヌクレオチドプローブの設計および合成
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、典型的には長さ約18〜25ヌクレオチドに設計されているか、または完全に相補的な標的配列にハイブリダイズしたときに約55〜60℃のTmを有する。蛍光体は、C6 FAM dU(サウサンプトン大学、英国)またはフルオレセインdT(Glen Research、スターリング、バージニア州)のいずれかを使用してプローブ配列中の内部残基に結合している。C6 FAM dU(図1)の場合、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)は、当業者に周知のDNA合成法により、ウラシル塩基の5位に結合している。蛍光体は、固相オリゴヌクレオチド合成のときにホスホルアミダイトとしてプローブに組み込むことができる(Brownら、2001、Brownら、2003)。他の蛍光修飾は、Glen Researchの8-アミノアルキル-dAおよび5-アミノアルキル-dCなどのモノマーを使用して合成後に行うこともできる。本発明のオリゴヌクレオチドは、プローブをリアルタイムPCRアッセイに組み込んだときにTaq介在性伸長を阻止するために3'-リン酸構成要素または他のブロッキング剤を有することがある。
【0088】
合成から得られたプローブの量は、特定の体積の水にオリゴヌクレオチドプローブの一定分量を溶解させ、260nmでUV吸光を測定することによって決定される。プローブの濃度は、オリゴヌクレオチドのUV吸光および260nmでの吸光係数から計算される。オリゴヌクレオチドの吸光係数は、そのオリゴヌクレオチドが構成されている未修飾ヌクレオシドおよび蛍光標識ヌクレオシドの個別の吸光係数の和から計算される。
【0089】
多型部位は、好都合にはΔTmを最大化するためにオリゴヌクレオチドの中心付近に位置する。多型部位のヌクレオチドは、典型的にはプローブがミスマッチの標的とハイブリダイズした場合に高不安定化相互作用が起きるように選択される。C/A、C/T、およびC/Cミスマッチを示すプローブが選択的に採用され、G/T、G/A、およびG/Gミスマッチは回避される。上記のように、オリゴヌクレオチドプローブは、その標的の相補体に70%または80%または85%または90%または95%の配列同一性を有することがある。
【0090】
ポリメラーゼ連鎖反応
PCRの体積は、典型的には20μlであり、試料2μl、1×PCR緩衝液、0.5μMプライマー、Taqポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)1ユニット、3mM総MgCl2、5ng/μl BSA(Roche Diagnostics)、1mM dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、および150nMプローブを含む。オリゴヌクレオチドを使用するアッセイに採用される緩衝液は、尿の直接分析には10×PCR緩衝液(TaKaRa、1.5mM MgCl2を含む)、10×HEPES#7(100mM HEPES(pH8.3)、250mM KCl)であり、唾液の直接分析および精製/処理された試料には10×HEPES#8(100mM HEPES(pH8.3)、500mM KCl)である。標的のホモジニアスな増幅および検出は、LightCycler装置(Roche Diagnostics)を使用して行うことができる。3段階の熱プロトコールでリアルタイムPCR検出および標的定量を実現することができ、そのプロトコールでは、最初の変性反応ステップ(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルを用いて標的を増幅する。蛍光の取得は3段階アッセイの各サイクルに1回、各プライマーのアニーリングステップの終わりに行う。あるいは、2段階熱プロトコールを使用して標的を迅速に増幅することもでき、そのプロトコールでは、最初の変性ステップ(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)およびアニーリング/伸長期を組み合わせたもの(65℃、10秒間)を含む50サイクルを用いて標的を増幅する。2段階増幅の間は蛍光を取得しない。
【0091】
標的の検出および同定
3段階および2段階増幅の後に、反応物を直ちに変性させ(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)してから、蛍光を連続的に取得する融解曲線分析を行う(35〜95℃で変化速度0.2℃/s)。LightCyclerソフトウェア(バージョン3.5)を使用して温度に対する蛍光の負の導関数(y軸は-dF/dT)を温度(x軸)に対してプロットすることにより、融解ピークを構築する。標的は、オリゴヌクレオチドプローブのピークの融解温度(Tm)を使用して信頼性高く検出および同定することができる。
【実施例1】
【0092】
単一標識オリゴヌクレオチドプローブの例
以下は、標的配列の検出および多型標的の同定に使用されたプローブの例である。対応する標的を増幅するために使用されたプライマー配列を提供する。この実施例は、本発明の二重標識および多重標識プローブと比較するための単一標識オリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0093】
NAT2*5A(C481T)多型の分析は、2303002(5'GAGAGGAATCFGGTACCTGGACC(配列番号1))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部塩基は多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。NAT2*5A SNPを有する標的配列は、195993(5'CCTCTAGAATTAATTTCTGGG(配列番号2))および195991(5'CTGCTCTCTCCTGATTTGGTCC(配列番号3))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な*4およびミスマッチ(C:A)の*5A対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。2303002プローブは、以下のいずれかの配列を有する、NAT2遺伝子(Genbank受託番号X14672)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NAT2*4 5'GGTCCAGGTACCAGATTCCTCTC (配列番号4)
NAT2*5A 5'GGTCCAAGTACCAGATTCCTCTC (配列番号5)
【0094】
NAT2*5C(A803G)多型の分析は、DdeFL1*4(5'GAAGTGCFGAAAAATATATTTAAG(配列番号6))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部塩基は多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。NAT2*5C SNPを有する標的配列は、DdeF2(5'CCTATAGAAAATTCAATTATAAAG(配列番号7))およびDdeR(5'CACGAGATTTCTCCCCAAGG(配列番号8))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な*4およびミスマッチ(A:C)の*5C対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。DdeFL1*4プローブは、以下のいずれかの配列を有する、NAT2遺伝子(Genbank受託番号X14672)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NAT2*4 5'CTTAAATATATTTTTCAGCACTTC (配列番号9)
NAT2*5C 5'CTTAAATATATTTCTCAGCACTTC (配列番号10)
【0095】
NAT2*7(G857A)多型の分析は、BamFL1*7(5'CCTGGTGAFGAATCCCTTAC(配列番号11))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部塩基は多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。NAT2*7 SNPを含有する標的配列は、BamF2(5'CCTATAGAAAATTCAATTATAAAG(配列番号12))およびBamR(5'CACGAGATTTCTCCCCAAGG(配列番号13))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な*7およびミスマッチ(A:C)の*4対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。DdeFL1*7プローブは、以下のいずれかの配列を有する、NAT2遺伝子(Genbank受託番号X14672)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NAT2*4 5'GTAAGGGATTCATCACCAGG (配列番号14)
NAT2*7 5'GTAAGGGATCCATCACCAGG (配列番号15)
【0096】
2つのNAT1*10 SNPの分析は、HYBNAT3S(5'CTTTAAAATACAFTTTTTATTATTA(配列番号16))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置を表す)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。完全に相補的な対立遺伝子、ミスマッチの対立遺伝子、および二重ミスマッチの対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。このプローブの機能性は、多型の位置に全ての可能性のある塩基の組合せを有する相補的オリゴヌクレオチドを使用して実証された。HYBNAT3Sプローブは、以下のいずれかの配列を有するNAT1遺伝子(Genbank受託番号AY376850)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
NATRAA TAATAATAAAAAATGTATTTTAAAGATGGC (配列番号17)
NATRTA TAATAATAATAAATGTATTTTAAAGATGGC (配列番号18)
NATRTC TAATAATAATAAATGTCTTTTAAAGATGGC (配列番号19)
NATRAC TAATAATAAAAAATGTCTTTTAAAGATGGC (配列番号20)
【0097】
第V因子Leiden(G1691A)多型の分析は、FVG1(5'CTGTAFTCCTCGCCTGTCC(配列番号21))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。第V因子SNPを有する標的配列は、FVF1.3(5'GGACTACTTCTAATCTGTAAGAGCAGATC(配列番号22))およびFVR3.5(5'GCCCCATTATTTAGCCAGGAGACCTAACATG(配列番号23))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な「野生型」対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の「突然変異」対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。FVG1プローブは、以下のいずれかの配列を有する第V因子遺伝子(Genbank受託番号AY364535)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FVG 5'GGACAGGCGAGGAATACAG (配列番号24)
FVA 5'GGACAGGCAAGGAATACAG (配列番号25)
【0098】
鎌状赤血球貧血症のHbSおよびHbC多型の同時分析は、SCT1(5'GTGCACCTGACFCCTGTGG(配列番号26))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などの単一標識オリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。鎌状赤血球多型を有する標的配列は、SCF1(5'AGGGCAGAGCCATCTATTGCT(配列番号27))およびSCR2(5'CATCCACGTTCACCTTGCC(配列番号28))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な(GT:CA)HbS、ミスマッチ(GT:CT)の野生型、および二重ミスマッチ(GT:TT)のHbC対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。SCT1プローブは、以下のいずれかの配列を有する、β-グロビン遺伝子(Genbank受託番号AY356351)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HbS 5'CCACAGGAGTCAGGTGCAC (配列番号29)
HbWT 5'CCTCAGGAGTCAGGTGCAC (配列番号30)
HbC 5'CCTTAGGAGTCAGGTGCAC (配列番号31)
【0099】
トラコーマクラミジア潜在プラスミドの検出は、HYBCH2(5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG(配列番号32))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。潜在プラスミドの標的配列は、CHF3-1(5'GGGTTCGTTGTAGAGCCATGTCCTATCTTG(配列番号33))およびCHR4-1(5'CGCAGCTGCTGTAATCACCCAGTCGATAAA(配列番号34))などのプライマーを使用して増幅することができる。クラミジアの潜在プラスミドおよびミスマッチ(C:A)の陽性増幅対照(下記参照)は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBCH2プローブは、以下のいずれかの配列を有する、潜在プラスミド(Genbank受託番号X07547)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HYBCHRC 5'CTTGGTATACATTTGCAGGCTTG (配列番号35)
模倣体 5'CTTGGTATACATTTACAGGCTTG (配列番号36)
【0100】
CYP2D6*3、CYP2D6*4、CYP2C19m1、CYP2C19m2、CYP2C9*2、およびCYP2C9*3 SNPなどの標的を分析するために単一標識オリゴヌクレオチドプローブを採用しているさらなるアッセイは、WO01/73118A2に記載されている。
【0101】
【表1A】
【0102】
【表1B】
【実施例2】
【0103】
本発明の二重標識オリゴヌクレオチドプローブの例
第V因子Leiden(G1691A)多型の分析は、FVG11(5'CTGTAFTCCTCGCCFGTCC(配列番号60))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。第V因子SNPを含む標的配列は、FVF1.3(5'GGACTACTTCTAATCTGTAAGAGCAGATC(配列番号22))およびFVR3.5(5'GCCCCATTATTTAGCCAGGAGACCTAACATG(配列番号23))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な「野生型」対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の「突然変異」対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。FVG1プローブは、以下のいずれかの配列を有する第V遺伝子(Genbank受託番号AY364535)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FVG 5'GGACAGGCGAGGAATACAG (配列番号24)
FVA 5'GGACAGGCAAGGAATACAG (配列番号25)
【0104】
トラコーマクラミジア潜在プラスミドの検出は、HYBCH(5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG(配列番号61))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。潜在プラスミド標的配列は、CHF3-1(5'GGGTTCGTTGTAGAGCCATGTCCTATCTTG(配列番号33))およびCHR4-1(5'CGCAGCTGCTGTAATCACCCAGTCGATAAA(配列番号34))などのプライマーを使用して増幅することができる。クラミジア潜在プラスミドおよびミスマッチ(C:A)の陽性増幅対照は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBCH2プローブは、以下のいずれかの配列を有する、潜在プラスミド(Genbank受託番号X07547)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HYBCHRC 5'CTTGGTATACATTTGCAGGCTTG (配列番号35)
模倣体 5'CTTGGTATACATTTACAGGCTTG (配列番号36)
【0105】
淋菌潜在プラスミドの検出は、HYBNG(5'TCTGCFTCCGCFACGGCTTC(配列番号58))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。潜在プラスミド標的配列は、NGF1(5'ACTTTGGCGATATTGCTCGG(配列番号74))およびNGR1(5'TACCGAGAACGAACGCGACA(配列番号75))などのプライマーを使用して増幅することができる。淋菌潜在プラスミドは、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。HYBNGプローブは、以下の配列を有する、潜在プラスミド(Genbank受託番号M10316)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HYBNGRC 5'GAAGCCGTAGCGGAAGCAGA (配列番号59)
【0106】
アデノウイルスC株およびアデノウイルスD株におけるヘキソン遺伝子の検出は、HyBAdC(5'GACGTGGFCCGTGFGCACCAGCCT(配列番号68))およびHyBAdD(5'GACGTGGFCAGAGFGCACCAGCCT(配列番号71))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などの本発明のオリゴヌクレオチドを使用した融解分析により行うことができる。これらのプローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。ヘキソン標的配列は、VirOligoデータベースから得たADRJC1(5'GACATGACTTTCGAGGTCGATCCCATGGA(配列番号76))(Elnifroら、2000)およびPB00432(5'GCCGAGAAGGGCGTGCGCAGGTA(配列番号77))などのプライマーを使用して増幅することができる。これらのアデノウイルス株は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HyBAdCプローブは、アデノウイルスC配列に完全に相補的であり、アデノウイルスD配列にハイブリダイズした場合にC:TミスマッチおよびT:Tミスマッチの両方を示す。HyBAdDプローブは、アデノウイルスD配列に完全に相補的であり、アデノウイルスC配列にハイブリダイズした場合にA:GミスマッチおよびA:Aミスマッチの両方を示す。HyBAdCプローブではプローブの融解温度の大きな変動が得られる(表1)。アデノウイルスプローブは、以下のいずれか配列を有する、ヘキソン遺伝子(Genbank受託番号AJ293905)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
HyBAdCRC 5'AGGCTGGTGCACACGGACCACGTC (配列番号69)
HyBAdDRC 5'AGGCTGGTGCACTCTGACCACGTC (配列番号70)
【0107】
A型インフルエンザマトリックス遺伝子の検出は、HYBINF(5'GGGAFCCAAAFAACATGGACAGAGCT(配列番号66))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。マトリックス標的配列は、INFA-1(5'GGACTGCAGCGTAGACGCTT(配列番号78))およびFLU-4(5'ATTTCTTTGGCCCCATGGAATGT(配列番号79))などのプライマーを使用して増幅することができる。インフルエンザはRNAウイルスであることから、標的増幅の前に逆転写(RT)ステップが必要である。cDNAの産生、PCR増幅、および標的検出は、RocheワンステップLightCycler RT-PCRキットを使用して1つの反応容器の中で全て行うことができる。A型インフルエンザは、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。HYBINFプローブは、以下の配列を有する、マトリックス遺伝子(Genbank受託番号AY130766)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
INFRC 5'AGCTCTGTCCATGTTATTTGGATCCC (配列番号67)
【0108】
肺炎連鎖球菌ニューモリシン遺伝子の検出は、SP1(5'GGGGTCTFCCACTFGGAGAAAGCTATC(配列番号64))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドである)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。単一標識版のストレプトコッカスプローブ(5'GGGGTCTFCCACTTGGAGAAAGCTATC(配列番号80))も研究した。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。ニューモリシン標的配列は、SPF2(5'CTTGCGGTTGATCGTGCTCCGATGAC(配列番号81))およびSPR2(5'CATTATTGACCTGACCATAATCTTGATGCC(配列番号82))などのプライマーを使用して増幅することができる。肺炎連鎖球菌は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1)。SP1プローブは、以下の配列を有するニューモリシン遺伝子(Genbank受託番号X52474)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
SP1RC 5'GATAGCTTTCTCCAAGTGGAAGACCCC (配列番号65)
【0109】
第II因子(G20210A)SNPの検出は、HYBFII(5'GCATFGAGGCTCGCFGAGAGTC(配列番号115))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。第II因子標的配列は、FIIF2(5'CTGGGCTCCTGGAACCAATC(配列番号118))およびFIIR1(5'GCTGCCCATGAATAGCACTGG(配列番号119))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBFIIプローブは、以下のいずれかの配列を有する第II因子遺伝子(Genbank受託番号AF493953)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FIIRC 5'GACTCTCAGCGAGCCTCAATGC (配列番号116)
FIIMM 5'GACTCTCAGCAAGCCTCAATGC (配列番号117)
【0110】
MTHFR(A1928C)SNPの検出は、HYBA1928C(5'GACCAGFGAAGCAAGFGTCTTTG(配列番号112))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。A1928C標的配列は、1928F(5'CCCAAGGAGGAGCTGCTGAA(配列番号120))および1928R(5'CCATTCCGGTTTGGTTCTCC(配列番号121))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な対立遺伝子およびミスマッチ(C:T)の対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBA1928Cプローブは、以下の配列を有する、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(Genbank受託番号NM_005957)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FIIRC 5'CAAAGACACTTGCTTCACTGGTC (配列番号113)
FIIMM 5'CAAAGACACTTTCTTCACTGGTC (配列番号114)
【0111】
MTHFR(C677T)SNPの検出は、HYBMTH(5'GTCFGCGGGAGCCGAFTTCATC(配列番号112))(配列中、Fは蛍光標識ヌクレオチドであり、下線部ヌクレオチドは多型の位置である)などのオリゴヌクレオチドプローブを使用した融解分析により行うことができる。プローブからのPCR伸長は3'リン酸でブロックする。C677T標的配列は、MTHF2(5'CTGACCTGAAGCACTTGAAGGAG(配列番号122))およびMTHR2(5'GCGGAAGAATGTGTCAGCCTCAAAG(配列番号123))などのプライマーを使用して増幅することができる。完全に相補的な対立遺伝子およびミスマッチ(C:A)の対立遺伝子は、プローブのTmに基づいて信頼性高く検出および同定することができる(表1参照)。HYBMTHプローブは、以下のいずれかの配列を有する5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(Genbank受託番号NM_005957)の部分にハイブリダイズするように設計されている。
FIIRC 5'CAAAGACACTTGCTTCACTGGTC (配列番号110)
FIIMM 5'CAAAGACACTTTCTTCACTGGTC (配列番号129)
【実施例3】
【0112】
唾液試料の直接分析
上記のMTHFR(A1928C)プライマーおよびプローブを用いて、(DNA精製せずに)一連の唾液試料を分析した。水の中に約50%の唾液を含む口すすぎ液をアッセイに直接含めた。口腔用綿棒を水中で絞り出したものも直接分析することができる。HYBA1928Cプローブは、A対立遺伝子およびC対立遺伝子とホモ接合型の試料で、それぞれ約51.5℃および61℃のTmを有する単一の融解ピークを発生する(図2)。A対立遺伝子およびC対立遺伝子にヘテロ接合型の唾液試料は、51.5℃および61℃のピークの両方を発生することで明らかに同定される。DNA精製の必要なしにポリヌクレオチド標識の検出および同定を直接実現した。
【実施例4】
【0113】
二重標識および三重標識プローブを使用した迅速な標的検出
クラミジア潜在プラスミド標的は、プライマーCHF3-1(配列番号33)およびCHR4-1(配列番号34)を使用して増幅することができる。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用する。増幅した標的は、HYBCH(配列番号61)またはHYBCH6プローブ(配列番号104)の含有、ならびに変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けする。クラミジアDNAの存在下で、HYBCHおよびHYBCH6プローブは、それぞれ約56℃および60.5℃のTmで明らかな融解ピークを発生する。本発明のオリゴヌクレオチドを使用したアッセイは、精製DNA、ニートな尿、処理された(Becton Dickinson、オックスフォード、英国)尿およびスワブ、ならびにスワブから直接ピペットで吸い取った液体試料中のクラミジアの存在を検出した(図4)。
【0114】
淋菌プラスミド標的は、プライマーNGF1(配列番号74)およびNGR1(配列番号75)を使用して増幅する。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用する。増幅した標的は、HYBNGプローブ(配列番号58)の含有、ならびに変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けする。淋菌DNAの存在下では、HYBNGプローブは約59℃のTmで明らかな融解ピークを発生する(図5)。
【実施例5】
【0115】
単一標識および二重標識プローブの比較
プライマーFVF1.3(配列番号22)およびFVR3.5(配列番号23)を使用して、DNA精製せずに、第V因子標的は唾液試料から直接増幅する。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、1秒間)、アニーリング/伸長期を組み合わせたもの(65℃、5秒間)を含む50サイクルのPCRからなる2段階LightCyclerプロトコールを採用する。増幅した標的は、FVG1(配列番号21)またはFVG11(配列番号60)オリゴヌクレオチドプローブの含有、ならびに変性(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けする。第V因子のアッセイは、16分間という短時間で完了することができる。ホモ接合型野生型試料は、FVG1およびFVG11プローブを採用した場合にそれぞれ約59℃および55℃のTmを有する単一融解ピークをもたらす。ホモ接合型突然変異試料は、FVG1およびFVG11プローブが採用された場合にそれぞれ約49.5℃および45℃のTmを有する単一融解ピークを発生する。ヘテロ接合型第V因子の試料は、単一標識FVG1プローブを使用したときに59℃および49.5℃両方の融解ピークを生じ、二重標識FVG11プローブを採用したときに55℃および45℃の両方のピークを発生する(図6)。このアッセイは、精製DNA、スワブ試料、および口腔すすぎ液で効率的に機能する。FVG1およびFVG11プローブを使用して、450を超えるゲノム試料が第V因子の多型に関して信頼性高く分類された。
【0116】
二重標識プローブは、一本鎖の場合に単一標識プローブに比べて高レベルのバックグラウンドシグナルを実際に示す。しかし、二重標識FVG11プローブは単一標識FVG1プローブで発生したピークのサイズの約4倍の融解ピークを生じ、それは追加の蛍光体の影響が単に相加的な場合に予想されるものよりも有意に大きい。FVG11における追加の蛍光体は、単一標識FVG1プローブに比べて約4.5℃だけプローブのTmを減少させる(図3)。Tmにおける類似の減少は、単一標識HYBCH2(配列番号32)および二重標識HYBCH(配列番号61)クラミジアプローブで観察される(図11)。
【実施例6】
【0117】
プローブのSN比
プローブ配列、蛍光体の位置、および二重/三重標識の影響を研究するために、本発明のオリゴヌクレオチドからの蛍光発光の量を一本鎖状態および二本鎖状体で測定した。典型的にはTaKaRa緩衝液中で150nMのプローブを150nMの完全に相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、本発明のオリゴヌクレオチドのSN比を決定した。変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含むLightCycler融解曲線プロトコールを使用して、蛍光測定を行った。蛍光値は、解離状態およびハイブリダイズした状態のそれぞれについてプローブのTm±10℃の温度での融解曲線から得た(図7)。温度が発光の量に及ぼす影響の一部を除くことを試みて、蛍光測定をこの所定の温度範囲で行った。ハイブリダイズした蛍光値および解離した蛍光値は、SN比の尺度と、発光に及ぼすプローブのハイブリダイゼーションの影響の指標を与え(表2)、ここで、SN比は、ハイブリダイズしているときのシグナルを解離しているときのシグナルで割ったものとして計算する。プローブのSN比は高度に再現性であり、運転間および装置間で低い変動を示すことが見出された。
【0118】
単一標識FVG1プローブ(配列番号21)は、完全に相補的な標的配列(配列番号24)にハイブリダイズしたときに約59℃のTmを有し、49℃および69℃でそれぞれ8および6(LightCyclerの任意の蛍光ユニット)の蛍光レベルを示す。二重標識FVG11プローブ(配列番号60)は、完全に相補的な標的配列にハイブリダイズしたときに約55℃のTmを有し、45℃および65℃でそれぞれ21.8および12の蛍光レベルを示す。単一標識および二重標識第V因子プローブのSN比は、それぞれ1.33および1.82と計算される。
【0119】
二重標識プローブは、対応する単一標識プローブに比べて高レベルのバックグラウンド蛍光ノイズを示すことがある。しかし、バックグラウンドノイズの高まりにかかわらず、二重標識プローブは一貫してかなり大きなSN比および融解ピーク高を生じる。オリゴヌクレオチド標的と共に、単一標識プローブは20%から92%の間の発光増加を生じた。一方で、二重標識プローブは71%から199%の間の蛍光増加を実証した。150nM FVG11プローブが相補的オリゴヌクレオチドFVG(配列番号24)にハイブリダイズすると、150nM FVG1プローブのハイブリダイゼーションよりも(90℃で)約2倍の大きさのバックグラウンド蛍光が生じる(図8)。しかし、LightCyclerソフトウェアのバックグラウンド補正機能は、二重標識ピークがオリゴヌクレオチド標的を伴う対応する単一標識プローブのピークよりも約5倍の高さであることを実証している(図3および8)。ヘテロ接合型第V因子担体DNA試料由来のバックグラウンド補正データは、二重標識プローブが標的増幅アッセイにおいて単一標識プローブで発生したピーク高のそれぞれ約3倍の2つの融解ピークを生じることを実証している(図9)。
【0120】
グアニンヌクレオチドに隣接する蛍光体
グアニン塩基が効率的な蛍光のクエンチャーであるとすると、プローブが解離状態の場合にGに隣接する蛍光体は効率的に消光されると予想することができ、蛍光発光はプローブのハイブリダイゼーション時にかなり増加すると予想することができる。G(の5'、3'、または両方の位置)に隣接して内部蛍光体を有する全てのプローブは、標的のハイブリダイゼーション時にシグナルの増強を示した(表2)。C9*2C(配列番号55)、136A(配列番号83)、およびHYBA1928C(配列番号112)オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光標識が2つのGヌクレオチドの間に位置するプローブのよい例である。C9*2CのSN比は、蛍光体が1つのGにのみ隣接しているが、一般に非常にGに富む2D64C*プローブ(配列番号51)に匹敵する。A/Tに富むDdeFL1*4プローブ(配列番号6)も類似のSN比を示し、蛍光体に隣接した単一のGヌクレオチドを有する。G残基に隣接して蛍光体を配置することは、大きなピーク高およびSN比を発生するために必要ではないものの、その可能性が高い。蛍光体があらゆる配列環境に位置するときに、プローブは効率的なハイブリダイゼーションシグナルを生じることから、プローブ内の適切な位置にG残基が不在であることは問題ではない。この例は本発明のオリゴヌクレオチドと同様に単一標識オリゴヌクレオチドを示しているが、それにもかかわらず、標的のハイブリダイゼーション時に配列に依存しない蛍光増強を起こすのは標的配列の独立性であり、蛍光体の間の相互作用ではないことを実証している。
【0121】
シトシンヌクレオチドに隣接する蛍光体
標的配列中のグアニン残基が蛍光消光を起こす能力を有するならば、標的のハイブリダイゼーション時にC残基に隣接する蛍光体からの発光が減少すると予想することができる。しかし、HYBNG(配列番号58)、171R(配列番号85)、C19m1A(配列番号39)、SCT1(配列番号26)、およびSP2(配列番号80)などの、蛍光体がC残基に隣接する全てのヌクレオチドプローブは、プローブのハイブリダイゼーション時に蛍光増強を示した。HEPB(配列番号45)およびFVG2(5'GTATFCCTCGCCTGTCCAG(配列番号87))などの高度にCに富むオリゴヌクレオチドプローブでさえも、一本鎖の場合よりも標的にハイブリダイズした場合に高レベルの蛍光を発光する。プローブのハイブリダイゼーション時の蛍光増強は、分子モデリングにより予測されるように標的配列にグアニンヌクレオチドが存在することに依存しないと思われる。分子モデリングは、蛍光体が二本鎖DNAと相互作用しないことを示している。
【0122】
アデニンおよびチミンヌクレオチドに隣接する蛍光体
蛍光体がA残基とT残基との間に位置するオリゴヌクレオチドプローブも、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光発光の増強を示す。NAT2*6(配列番号88)、HYBNAT3S(配列番号16)、およびFVGI(配列番号21)プローブは、蛍光体で標識された塩基がAおよびTヌクレオチドに隣接しているプローブのよい例である。人工的に構築したポリTプローブ(5'TTTTTTTTTTTFTTTTTTTTTTT(配列番号37))は、プローブ鎖および標的鎖の両方にGヌクレオチドが完全に不在であるにもかかわらず、一本鎖状態の場合に比べて標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光発光のレベル増大を示す。これらのオリゴヌクレオチドは、単一の蛍光体を有するため、本発明のオリゴヌクレオチドではない。それにもかかわらず、これらのオリゴヌクレオチドはプローブの蛍光性質が配列に依存しないことを示す。
【0123】
シグナル強度および配列と蛍光体の結合との関係
表2のデータは、プローブの機能性がプローブまたは標的配列内のグアニン残基の存在に依存しないことを実証している。しかし、高いSN比と蛍光体のすぐ隣のプローブ位置にGが存在することの間に関連がある可能性がある。単一標識プローブについて、大きなSN比の多数は、蛍光体がグアニン塩基に隣接するプローブに由来する。しかし、単一標識の最大のSN比は、AヌクレオチドおよびCヌクレオチドが隣接する蛍光体を有するオリゴヌクレオチドから得られた(配列番号85)。
【0124】
蛍光体がA、C、およびT塩基に隣接するプローブは、蛍光体標識塩基のすぐ隣にGヌクレオチドを有するいくつかのプローブよりも大きなシグナルを生じた。さらに、全ての単一標識、二重標識、および多重標識オリゴヌクレオチドプローブは、内部蛍光体に隣接する配列に関係なく、標的ハイブリダイゼーション時に増大したレベルの蛍光発光を示した。したがって、グアニン残基の隣に蛍光体標識ヌクレオチドを配置することによって、さらに大きな融解ピークを得ることができるが、高品質の融解ピークはプローブ配列の特定の部位にG残基を必要とせずに得ることができる。これらのオリゴヌクレオチドは単一の蛍光体を有するが、これらのオリゴヌクレオチドは配列非依存性を示し、ある配列の状況で最適の間隔形成も助けるであろう。
【0125】
標的配列の非依存性
LightcCycler融解曲線分析は、標的の配列がオリゴヌクレオチドプローブの機能性にほとんどまたは全く影響を及ぼさないことを強く示唆している。オリゴヌクレオチドプローブの蛍光体がハイブリダイゼーション時に溶液中に突出する結果、二本鎖DNAと相互作用しないならば、蛍光体は、標的のGヌクレオチドにより消光されずにプローブの高度にCに富む領域内に位置することができる。今日まで設計された全ての単一標識および二重標識オリゴヌクレオチドプローブは、プローブ配列および蛍光体で標識された塩基に隣接するヌクレオチドに関係なく、一本鎖状態に比べてハイブリダイゼーション時に増大したレベルの蛍光を示す。
【0126】
【表2A】
【0127】
【表2B】
【0128】
UV-可視吸収および蛍光スペクトルの測定(Marksら(2005))は、約4nmの青方偏移と、相補的標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション時の強度増加とがあることを示している。遊離FAMCAP色素の蛍光性質の方が、プローブ/標的二本鎖の性質によく似ている。DNAプローブ構築物にFAMCAPを組み込むと、励起および発光のλmaxに赤方偏移が起こる。この赤方偏移は、蛍光体とssDNAとの相互作用の可能性を示唆しており、この相互作用は色素とDNA塩基との間のπ-πスタッキング相互作用を含むことがある。Marksらの結果も、蛍光体がインターカレーションによっても、溝の結合によっても二本鎖DNAと相互作用しないと示唆している。それは、これらの相互作用がハイブリダイゼーション時に強い赤方偏移を起こすと思われるからである。したがって、蛍光体と蛍光消光を起こす一本鎖プローブDNAの塩基との間で相互作用があるおそれがある。蛍光体とプローブDNAとの間のこの相互作用は、標的のハイブリダイゼーション時に除かれる結果、色素は溶液中に突出し、蛍光が増強する。この蛍光増強のメカニズムは、末端標識プローブで作動するとは予想されない。それは、塩基のスタッキングが蛍光体の片方の側でのみ起こることができるからである。このデータは、オリゴヌクレオチドプローブの蛍光増加が、蛍光の増強よりも消光の除去により起こることを示している。プローブのシグナルが標的配列に依存しない結果として、蛍光体は、Cに富む領域内にも位置することができ、標的のハイブリダイゼーション時に増大したレベルの蛍光を依然として示すという本発明者らの提案も、プローブの機能性のこのモデルは支持している。
【実施例7】
【0129】
ピーク高
プローブ配列、蛍光体の位置、および多重蛍光体の影響を検討するために単一標識、二重標識、および三重標識プローブのピーク高も測定した。プローブ比較のためのピーク高の測定は、運転間変動および装置間変動が原因でSN比よりもやや信頼性に欠ける。しかし、1回のLightCycler実験で発生した融解ピークは、プローブの配列を信頼性高く比較するために採用することができる。150nMのプローブを、典型的にはTaKaRa緩衝液中の150nMの完全相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせた。蛍光測定は、変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および変化速度0.2℃/sを用いた95℃への低速加熱を含むLightCycler融解曲線プロトコールを使用して行った。LightCyclerソフトウェアのバージョン3.5だけで得られた融解ピークのデータを表3に含めた。LightCyclerソフトウェアのバージョン3.01は、ユーザが蛍光のゲインを手動で設定する必要がある。バージョン3.5のソフトウェアは最高レベルの発光を示す試料に対する蛍光レベルを自動的に測定する。
【0130】
本発明の全てのオリゴヌクレオチドは、x軸の温度に対してy軸に-dF/dTをプロットしたとき、プローブおよび標的の配列ならびにそれらの配列内のGの位置とは無関係に正の融解ピークを示す。第V因子プローブ形成配列においてA塩基とT塩基の間(FVG1)およびC塩基とG塩基の間(FVG1ALT)に単一の蛍光体を配置すると、ほぼ等しい高さの融解ピークが生じる。二重標識第V因子プローブ(FVG11)は、2つの単一標識プローブFVG1およびFVG1ALT(表3)で発生した融解ピークの約4倍の高さの融解ピークを生じる。単一標識のピーク高の和は、二重標識プローブにより示される和よりも小さい。しかし、両方の単一標識プローブの75nMまたは150nMを1つの反応容器に採り入れた場合も、二重標識オリゴヌクレオチドプローブにより発生するピークよりも小さな融解ピークが生じる。蛍光体標識塩基同士の相互作用は、SN比および融解ピーク高の増大を担い、二重標識プローブを2つの単一標識プローブの合計よりも大きくすることがある。シグナルのさらなる増大は、三重標識プローブ(下記参照)から得られる。プローブ内の蛍光体の位置およびそれらの分離度は、標的のハイブリダイゼーションおよび解離時の蛍光変化の強度に影響することがある。単一標識プローブは、未標識オリゴヌクレオチドに比べて低いTmを有し、二重標識プローブは、一貫して対応する単一標識プローブに比べて低いTmを示す(表1)。蛍光体は標的のハイブリダイゼーション時に溶液中に突出することによって、二本鎖DNAと相互作用しないと考えられているため、蛍光体は二本鎖を不安定化するよりも一本鎖プローブ種を安定化すると考えられる。多重標識プローブは、対応する単一標識オリゴヌクレオチドプローブよりも一本鎖プローブ構造を大きく安定化すると考えられる。二重標識および多重標識プローブは、安定化して効率的に消光された一本鎖構造が原因で、予想よりも低レベルの蛍光ノイズを示すことが多い(表5)。二重標識および多重標識プローブのバックグラウンド減少およびシグナル増加は、対応する単一標識オリゴヌクレオチドに比べて大きなピーク高およびSN比を生じる。
【実施例8】
【0131】
内部標識プローブおよび末端標識プローブの比較
第V因子標的配列は、プライマーFVF1(5'GACTACTTCTAATCTGTAAGAGCAG(配列番号92))およびFVR3(5'CCATTATTTAGCCAGGAGAC(配列番号93))を使用して増幅した。アッセイは、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、O秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用した。増幅した標的は、FV3(5'CTGTATTCCTCGCCTGTCCF(配列番号94))またはFV5(5'FCTGTATTCCTCGCCTGTCC(配列番号95))末端標識プローブの包含、ならびに変性(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)、0.1℃/sの変化速度を用いた95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により検出および特徴付けした。3'標識FV3プローブは完全に非機能性であり、融解曲線分析でピークを生じなかった。プローブの発光スペクトルの測定により効率的なオリゴヌクレオチド合成および蛍光体の結合を立証した。5'-FAM結合を有するFV5プローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光発光の減少を示した。FV5プローブは、-dF/dTプロットにおいて逆向きの融解ピークを発生し(図10)、そのピークは、ホモ接合型およびヘテロ接合型試料の同定を可能にした。5'-標識プローブ由来の逆向きの融解ピークは、単一標識FVG1第V因子プローブから得られたピーク高と類似の強度であった(図10)。
5'CTGTATTCCTCGCCTGTCC3' (第V因子プローブ配列;配列番号140)
3'ATGGACATAAGGAGCGGACAGGTCC5' (標的配列;配列番号141)
【0132】
5'標識プローブには、標的配列とのハイブリダイゼーション時にG残基近くの位置0および+1に蛍光体が配置されており、これは、観察された蛍光発光の減少を説明している。3'-標識プローブでもG残基近くの位置0および-1に蛍光体が配置されているが、蛍光はハイブリダイゼーション時に増強も消光もしなかった。
【0133】
【表3A】
【0134】
【表3B】
【0135】
本発明のオリゴヌクレオチドの内部残基に結合した蛍光体は、一本鎖状態で消光し、ハイブリダイゼーションはこの消光の率を減らす。DNAの塩基が塩基対を形成しないときに、DNAの塩基が蛍光基の上にスタッキングすることがあるため、一本鎖プローブの消光が起きることがある。一本鎖形態では蛍光体は2つのDNA塩基の間に挟まれて、かなり安定な疎水性構造を形成するものである。この構造は、二本鎖形成時に塩基が塩基対形成に参加しなければならなくなると破壊されるものである。グアニンは他の塩基よりも大きな影響を有する可能性があるものの、この現象は単なる「グアニン消光」ではないおそれがある。
【0136】
塩基のスタッキングは蛍光体の一方の側でのみ起こることができることから、末端標識での状況は異なる。一本鎖(および二本鎖)では、蛍光体はDNA塩基の間に挟まれず、塩基の上にスタッキングするだけである。蛍光体が標的鎖のグアニン塩基に接近すると、ハイブリダイゼーション時の消光が起こることがある。逆に、蛍光体がプローブの末端G残基に結合しているならば、ハイブリダイゼーション時に蛍光増強が起こることがある。オリゴヌクレオチドプローブの内部標識は、プローブ配列および標的配列によりほとんど影響されず、二本鎖でのグアニンの位置に関係なく、ハイブリダイゼーション時に常に蛍光の増加を示す。末端標識プローブは、標的配列中のオリゴヌクレオチドにより影響され、標的のハイブリダイゼーション時に増加または減少したレベルの蛍光を示すことがある。本発明の二重標識オリゴヌクレオチドは、蛍光体同士の相互作用ではなく標的配列の非依存性が原因で、ハイブリダイゼーション時に蛍光のレベル増加を示す。
【実施例9】
【0137】
多重標識プローブにおけるシグナル強度および蛍光体の間隔
オリゴヌクレオチドプローブ配列に追加の蛍光体を組み込むと、ハイブリダイズした(シグナル)状態および一本鎖(ノイズ)状態の両方でプローブ発光が増加することによって、SN比が維持されると予想することができる。あるいは、FAM色素同士が近接している場合に相互に実際に消光することができることから、多数の蛍光体でプローブを標識することがSN比を低下させるおそれがある。しかし、プローブのSN比および融解ピーク高はオリゴヌクレオチドプローブ配列内に2つ以上のFAM色素を含ませることによりかなり改善された。上記の全てのプローブは、チミンヌクレオチドを置き換えるためにC6 FAM dUまたはGlenフルオレセインdTのいずれかを利用し、これらのプローブの蛍光体は少なくとも3つのヌクレオチドで分離されている。本発明のオリゴヌクレオチドに追加の蛍光体(例えば3または4個のFAM標識)を含ませると、SN比および融解ピーク高がさらに増大することがある。しかし、蛍光体で標識された塩基は最小数のヌクレオチドで分離し、非放射エネルギー移動による蛍光体同士の直接消光を避けなければならない。この非FRET消光は、色素同士の短距離「接触」により起こることがあり、励起スペクトルと発光スペクトルとの重複を必要としない。FRET消光も、励起スペクトルと発光スペクトルとの重複によりFAM標識の間で起こることがある。本発明のオリゴヌクレオチドプローブを設計する場合の好ましい間隔は3〜6である。しかし、蛍光体が少なくとも2つの未標識ヌクレオチドで分離されている全てのプローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光のかなりの増加を示す。11ヌクレオチドよりも大きい間隔は試験していないが、その間隔は二本鎖中のそれらの相対的な角配置に応じて効率的なシグナルを生じることがある(表7参照)。
【0138】
150nMのHYBCHRC(配列番号35)逆ホモログオリゴヌクレオチドを、TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中の150nMの単一標識(HYBCH2)、二重標識(HYBCH)、三重標識(HYBCH3)、および四重標識(HYBCH4)クラミジアプローブとハイブリダイズさせた。
HYBCH2 5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG (配列番号32)
HYBCH 5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号61)
HYBCH3 5'CAAGCCFGCAAAFGFATACCAAG (配列番号96)
HYBCH4 5'CAAGCCFGCAAAFGFAFACCAAG (配列番号97)
【0139】
変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。単一標識プローブに比べ、二重標識HYBCHオリゴヌクレオチドプローブは、上記のようにTmの低下と共に高いSN比および融解ピーク高を示した。HYBCHの蛍光体標識塩基は5ヌクレオチドで分離されている。三重標識HYBCH3プローブは、標的のハイブリダイゼーション時にやや消光し、-dF/dTのグラフでマイナス側/逆方向に小さなピークを示す(図11)。HYBCH3のTmは単一標識プローブに比べて低いが、二重標識オリゴヌクレオチドプローブのTmよりも高い。四重標識HYBCH4プローブは、-dF/dTのグラフで小さな正のピークおよびHYBCHのTmに類似したTmを示す。HYBCH3およびHYBCH4プローブの両方は、1つのヌクレオチドだけで分離された蛍光体標識塩基を有し、ハイブリダイズした状態および解離状態の両方でかなり減少したレベルの蛍光を示す(図11)。蛍光データは、近位のFAM色素が一本鎖状態で相互に消光することを示している。HYBCH3プローブは、相補的標的配列にハイブリダイゼーションしたときに大きく消光されるが、これは、蛍光体同士が溶液中に突出したときに一本鎖コンホメーション状態のときよりもなお緊密に接触するようになることがあると示唆している。
【0140】
蛍光体標識塩基同士の分離がさらに大きなレベルの、追加の三重標識クラミジアプローブを設計した。150nMのHYBCH6RC(配列番号103)逆ホモログオリゴヌクレオチドを、TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMの単一標識プローブ(HYBCH2)、二重標識プローブ(HYBCH)、および三重標識(HYBCH5およびHYBCH6)プローブにハイブリダイズさせた。融解ピークは、変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して発生させた。
HYBCH2 5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG (配列番号32)
HYBCH 5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号61)
HYBCH5 5'CAAGCCFGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号102)
HYBCH6 5'GTAAFCAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号104)
【0141】
三重標識HYBCH5プローブは、HYBCH二重標識プローブのTmに非常に類似したTmを示す(表1)。2つを超える蛍光標識を付加しても一本鎖構造はそれ以上安定化しないことがある。三重標識HYBCH6プローブは、以前に言及したクラミジアプローブよりも5ヌクレオチド長く、単一標識HYCH2プローブに類似したTmを示す。三重標識プローブは、共に単一標識HYBCH2プローブおよび二重標識HYBCHプローブの高さのそれぞれ6.5および3.25倍の融解ピークをもたらす。(図4および11C)。
【0142】
各蛍光体が合計シグナル強度に及ぼす貢献度を研究するために、三重標識HYBCH5プローブを、可能性のある3つの単一標識クラミジアプローブおよび3つの二重標識オリゴヌクレオチドプローブと比較した。三重標識オリゴヌクレオチドプローブ内の修飾された各位置を単一標識プローブおよび二重標識プローブで表した。これらのプローブも四重標識オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号126)と比較した。以前に説明したように、150nMのHYBCH6RC(配列番号103)逆ホモログオリゴヌクレオチドを、TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMのプローブとハイブリダイズさせた。
HYBCH2 5'CAAGCCTGCAAAFGTATACCAAG (配列番号32)
HYBCH7 5'CAAGCCFGCAAATGTATACCAAG (配列番号105)
HYBCH8 5'CAAGCCTGCAAATGTAFACCAAG (配列番号106)
HYBCH 5'CAAGCCFGCAAAFGTATACCAAG (配列番号61)
HYBCH9 5'CAAGCCTGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号107)
HYBCH10 5'CAAGCCFGCAAATGTAFACCAAG (配列番号108)
HYBCH5 5'CAAGCCFGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号102)
HYBCH11 5'GTAAFCAAGCCFGCAAAFGTAFACCAAG (配列番号126)
【0143】
2つのLightCycler装置(LC1およびLC2)で発生した融解ピークの高さは、計算されたSN比よりも大きな変動レベルを示した(表4)。しかし、両方のLightCycler装置で、三重標識プローブのピーク高は、最も効率的な二重標識プローブの高さの約2倍であり、最も効率的な単一標識オリゴヌクレオチドプローブの4倍を超える大きさであった(表4)。3重標識融解ピークの高さは、3つの単一標識オリゴヌクレオチドプローブの合計よりも大きく、また、任意の二重標識プローブと、対応する任意の単一標識オリゴヌクレオチドプローブとの和よりも大きい。四重標識オリゴヌクレオチドプローブも、三重標識プローブよりも約25%大きなピーク高を示して高品質の融解データをもたらした(表4)。
【0144】
【表4】
【0145】
ハイブリダイズした状態および一本鎖状態での蛍光発光のレベルを比較するために、標的の存在下および不在下で35℃でも、単一標識、二重標識、三重標識クラミジアプローブを検討した。TaKaRa PCR緩衝液中で合計3mMのMgCl2中で150nMのHYBCH6RC(配列番号103)逆ホモログオリゴヌクレオチドを150nMのプローブとハイブリダイズさせた。連続的に蛍光を取得しながら試料をLightCyclerキャピラリー中で変性させ(95℃、5秒間)、その後35℃に冷却した。標的の存在下および不在下でプローブを2回の繰り返しで分析し、ハイブリダイズした状態および一本鎖状態についての平均発光値を表5に詳述する。標的の不在下では、三重標識オリゴヌクレオチドプローブは、どの単一標識プローブおよび二重標識プローブよりも小さな蛍光を発光する。一方で、標的の存在下では、三重標識プローブからの蛍光レベルは、二重標識HYBCH10プローブから発光する蛍光レベルとよく類似していた。三重標識プローブは、二本鎖状態および一本鎖状態の間で最大の差を示し、それ故に最大の融解ピークを生じる。一本鎖プローブ構造での消光などの、蛍光体同士の相互作用は、二重標識および三重標識オリゴヌクレオチドプローブが示したピーク高の上昇およびSN比の増加を担うことがある。一本鎖(ランダムコイル)では、蛍光体は相互に接触およびスタッキングし、衝突消光を起こすことができるが、二本鎖では、少なくとも2個のヌクレオチドで分離されている場合に頑健なB-DNA構造により蛍光体が離れたままであることから、これは不可能である。これらの蛍光体が互いにもっと近づくならば、チミン塩基5位の柔軟なリンカーは、蛍光体を相互に接近させることができる。
【0146】
【表5】
【実施例10】
【0147】
単一標識、二重標識、および三重標識オリゴヌクレオチドのさらなる比較
3つの単一標識第V因子オリゴヌクレオチドプローブを同一の配列の二重標識および三重標識プローブと比較した。二重標識および三重標識オリゴヌクレオチドプローブに存在する全ての蛍光体を複数の単一標識プローブで表した。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中の150nMのオリゴヌクレオチドプローブに150nMのFVG(配列番号24)逆ホモログオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせた。変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。単一標識プローブ、二重標識プローブ、および三重標識プローブのピーク高およびSN比を表6に示す。
FVG1 5'CTGTAFTCCTCGCCTGTCC (配列番号21)
FVG1ALT 5'CTGTATTCCTCGCCFGTCC (配列番号101)
FVG1ALT2 5'CTGTATTCCFCGCCTGTCC (配列番号128)
FVG11 5'CTGTAFTCCTCGCCFGTCC (配列番号60)
FVG111 5'CTGTAFTCCFCGCCFGTCC (配列番号127)
【0148】
二重標識FVG11プローブは、配列内の同一の位置に蛍光体を有する単一標識オリゴヌクレオチドプローブの約3〜4倍の大きさの融解ピークを生じる。それ故に、二重標識融解ピークは単一標識ピークの合計よりも大きい。さらに、三重標識オリゴヌクレオチドプローブは、単一標識オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも7倍の大きさで、二重標識プローブの2.6倍の大きさの融解ピークを発生する(図12)。三重標識プローブからの融解ピークは、単一標識オリゴヌクレオチド由来のピークの合計よりもかなり大きい。クラミジアオリゴヌクレオチドと同様に、プローブへの多数の蛍光体の付加は、単一標識オリゴヌクレオチドプローブから予想されるよりも高さが大きい融解ピークの発生を引き起こす。クラミジアおよび第V因子プローブから得られたデータは、2または3個の蛍光体標識塩基の組込みが、必ずしもオリゴヌクレオチドプローブの融解ピーク高を2倍または3倍にするわけではないことを実証している。
【0149】
【表6】
【実施例11】
【0150】
蛍光体の最小間隔の設定
一連のオリゴヌクレオチドプローブを合成し、二重標識オリゴヌクレオチドプローブにおける蛍光体標識塩基同士の間に必要な最小の間隔を決定した。プローブは、蛍光体標識塩基同士の間に0から9ヌクレオチドを有した。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMのMODRC(5'CCCCCCTTTTTTTTTTTTTCCCCCC(配列番号139))逆ホモログオリゴヌクレオチドを150nMのオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせた。変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。SN比および融解ピーク高を表7に示す。標識塩基の間に0および1個のヌクレオチドを有するプローブは、近接する蛍光体により起きる接触消光により、かなり減少した蛍光レベルを示した。これらのプローブの両方は負(逆方向)の融解ピークを示し、ここで、一本鎖状態に比べて標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光レベルは減少した。蛍光体標識塩基を分離している2から9ヌクレオチドを有する全てのプローブは、標的のハイブリダイゼーション時に正の融解ピークおよび蛍光増強を示した。7および8ヌクレオチドで分離された蛍光体を有するプローブは、やや減少したレベルの蛍光と2〜6および9個の間隔のプローブに比べて小さな融解ピークとを示した。二本鎖DNAと同じ表面に多数の蛍光体を有するプローブは、ある程度の接触消光に遭遇することによって、ピーク高およびSN比の減少を示すことがある。8ヌクレオチドの間隔がFVG11(配列番号60)、HYBMRSA(配列番号99)、およびHYBA1928C(配列番号112)プローブで採用され、大きな融解ピークおよびSN比を発生することから、これらの角配置の影響は配列特異的でありうる。オリゴヌクレオチドプローブが遊離のプローブに比べて標的のハイブリダイゼーション時に高レベルの蛍光発光を生じるためには、蛍光体標識塩基を分離している少なくとも2つのヌクレオチドが必要である。
【0151】
【表7】
【0152】
蛍光体標識塩基を分離している2から11個のヌクレオチドを有する、今日までに設計された全ての二重標識、三重標識、および四重標識オリゴヌクレオチドプローブは、相補的標的配列にハイブリダイゼーション時にかなりの蛍光増強を示す。0または1ヌクレオチドが蛍光体標識塩基を分離しているプローブだけが、標的のハイブリダイゼーション時に小さなレベルの蛍光消光を示すことが見出された。蛍光体標識ヌクレオチドの最大分離間隔はまだ同定されていない。
【実施例12】
【0153】
dAおよびdCへの蛍光体の結合
アミノ-dAおよびアミノ-dCモノマー(Glen Research、スターリング、バージニア州)を使用し、FAMで合成後標識を行ってFAM dAおよびFAM dCオリゴヌクレオチドプローブを合成した。FAM dCおよびFAM dAを有する単一標識および二重標識プローブを合成し、単一標識および二重標識C6 FAM dUオリゴヌクレオチドプローブと比較した(表8)。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で150nMの適切な逆ホモログオリゴヌクレオチド(FVGまたはGLENARC)を150nMのオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせた。変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sで95℃への低速加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。
FVG 5'GGACAGGCGAGGAATACAG (配列番号24)
GLENARC 5'CTGTATACCTTGCCTGTCC (配列番号91)
【0154】
FAM dCおよびFAM dAプローブは全て、標的のハイブリダイゼーション時に一本鎖状態に比べて蛍光レベルの増強を示した(図13)。FAM dCのハイブリダイゼーション時の蛍光発光の増強は、オリゴヌクレオチドプローブの蛍光体が標的鎖のDNAと相互作用しないというモデルを支持している。それは、標的中のGとの相互作用が蛍光消光を起こすと予想されないからである。C6 FAM dUおよびフルオレセインdTと同様に、二重標識FAM dCおよびFAM dAプローブは、共に対応する単一標識オリゴヌクレオチドプローブの高さの2倍を超える融解ピークを生じる。
【0155】
二重標識C6 FAM dUおよびフルオレセインdTプローブは、同一配列の単一標識プローブよりも約4〜5℃低いTmを示す。FAM dCおよびFAM dAで標識されたプローブは、それぞれ1℃および8.3℃のTmの差を示した(表8)。
【0156】
【表8】
【0157】
A、T、C、およびUについて、合成前、合成中、または合成後に蛍光体がヌクレオチドに結合しているかどうかは問題ではない。「天然」塩基を維持しながらこれらのヌクレオチドに結合することは可能である。Gへの蛍光体の直接結合は塩基アナログを産生する。
【実施例13】
【0158】
融解ピーク高を高めるための非対称的PCR
本発明のオリゴヌクレオチドを使用するアッセイのPCR段階の後で、プローブは増幅産物と競合して標的配列とハイブリダイズする。この競合により、プローブ/標的の相互作用の可能性が減り、融解ピーク高が制限される。標的ハイブリダイゼーションがプローブ側に傾くならば、融解ピーク高は増大することができる。これは、プローブの濃度を増加させること、またはPCR競合鎖の存在度を減少させることのいずれかによって実現することができる。
【0159】
最適濃度のオリゴヌクレオチドプローブは、150nMであることが見出された。200nMを超えてプローブ濃度を増加させると、SN比が高まることが見出された。実際に、プローブ濃度の増加は、クラミジアの融解グラフに有害な影響を及ぼし、約80℃で第2のピークを発生させ、そのピークはプローブの濃度と共に高さが増大する。ピークの質は、標的配列にハイブリダイズすることができない一本鎖プローブに起因する追加のバックグラウンド蛍光により、高いプローブ濃度で減少することも見出された。
【0160】
競合するDNA鎖の存在度は、非対称的増幅法を使用することにより標的配列に対して減少させることができる。融解ピーク高を最大にするために、クラミジアの順方向および逆方向プライマーの濃度を最適化した。プライマーCHF3-1(配列番号33)およびCHR4-1(配列番号34)を使用してクラミジア潜在プラスミド標的を増幅した。アッセイには、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性(95℃、5秒間)、プライマーのアニーリング(55℃、10秒間)、および産物の伸長(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用した。HYBCHプローブ(配列番号61)を含むこと、ならびに変性(95℃、O秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sの変化速度を使用した95℃への低速加熱を含む融解曲線分析により、増幅された標的を検出および特徴付けした。クラミジアDNAの存在下で、HYBCHプローブは約56℃のTmを有する明確な融解ピークを発生する(図14)。逆方向プライマー(0.5μM)に対して10倍希釈の順方向プライマー(0.05μM)は、標準等モル濃度アッセイに比べてクラミジアピーク高を3〜5倍増大させた(図14)。精製ゲノムDNAおよび処理した臨床試料でこのピーク高の増大が観察された。非対称的PCRと三重標識した標識プローブ(HYBCH6)との組合せは、単一標識オリゴヌクレオチドプローブを採用している非対称的アッセイで発生したサイズの約20倍の融解ピークを発生した。
【実施例14】
【0161】
非対称PCR、プローブ濃度、およびピーク高
非対称PCRは、クラミジア、淋病、第II因子、A1928C、およびC677Tアッセイで対称的増幅に比べてピーク高の増大を生じた。しかし、非対称的増幅はNAT2*5C試験でピーク高を増大させなかった。非対称的PCRは一本鎖標的を発生することから、プローブは相補的PCR鎖とハイブリダイゼーションを競合する必要がなく、融解ピークはオリゴヌクレオチドで得られたピークと類似した強度である可能性がある。対称的増幅が、すでにオリゴヌクレオチドピークと類似した強度の融解ピークを生じるならば(例えばNAT2*5Cアッセイ)、非対称的増幅から利益を得ることはできない。オリゴヌクレオチドに比べてピーク高の減少を示すプローブだけが、アッセイを非対称的試験に変えた場合にピーク高の高まりを示すようである。非対称的PCRは、アッセイが長鎖標的アンプリコンを利用するか、またはプライマー二量体が発生する場合に有利なことがある。
【0162】
第V因子プローブ(FVG1およびFVG11)は、さらに複雑な状態である。非対称的アッセイで発生した融解ピークは、妥当な高さであり、試料の信頼できる同定を可能にするが、オリゴヌクレオチド標的から得られるピークに比べて減少している。ヘテロ接合型試料で行った50サイクルの非対称的増幅は、対称的アッセイに比べてマッチのピーク高またはミスマッチのピーク高のどちらにも影響しないことが見出された。しかし、60および70サイクルの非対称的増幅が、マッチの融解ピーク高を増大させる一方で、ミスマッチのピーク高を減少させる/それに影響しないことが見出された(図14)。70サイクル後に、プローブは標的で飽和し、その結果、完全相補的な対立遺伝子との選択的ハイブリダイゼーションは、ピーク高の不均衡を招く。完全に相補的なプローブ/標的二本鎖の安定性増加は、ミスマッチの二本鎖に比べたこの選択的ハイブリダイゼーションおよびピーク高の増大を担っている。
【0163】
標的の濃度が融解ピーク高に及ぼす影響を検討するために、FVG11プローブ(配列番号60)を完全相補的(FVG(配列番号24))およびミスマッチ(FVA(配列番号25))オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせた。変性(95℃、0秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.2℃/sの変化速度を使用した95℃への低速加熱を含む熱プロトコールを採用して、LightCycler装置で融解分析を行った。等モル濃度でマッチおよびミスマッチの標的を採用した。150nMの標的にハイブリダイズした150nMのプローブは、等しい高さのマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じた(図15)。300nMの標的にハイブリダイズした300nMのプローブも、匹敵する高さのマッチおよびミスマッチのピークをもたらした。しかし、1μMの標的にハイブリダイズした150nMのプローブは、マッチの融解ピークだけを生じた(図15)。完全に相補的な標的はプローブを隔離し、競合ハイブリダイゼーションはミスマッチの標的の効率的なハイブリダイゼーションを阻止する。第V因子SNPは、プローブ/標的二本鎖の安定性にかなり影響し、その結果、高い標的濃度でプローブは完全に相補的な配列に選択的に結合する。この観察は、鎌状赤血球およびNAT1*10アッセイなどでの完全に相補的な標的および二重ミスマッチの標的の間のピーク高の不均衡も説明している。
【0164】
高濃度のプローブが高い標的濃度でマッチおよびミスマッチのピーク高の均衡をもう一度確立できるかどうかを確かめるために、150nM、300nM、および500nMのFVG11プローブおよびヘテロ接合型第V因子ゲノムDNA試料を使用して対称的および非対称的アッセイを行った。50、60、および70サイクルの2段階増幅を行った。50サイクル後に、マッチおよびミスマッチのピーク高を比較したが、対称的および非対称的反応の間にあまり差はなかった(図16)。150nMのプローブの反応が、最高品質のデータを生じた。図14に示すように、150nMのプローブで60および70回の非対称的サイクル後に発生したマッチおよびミスマッチの融解ピーク高は不等であった。
【0165】
ミスマッチの融解ピーク高は、高いプローブ濃度でかなり改善した。60回の非対称的サイクル後に150nM FVG11は、それぞれ高さ0.83および0.35のマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じた(2.3倍の差)。一方で、500nMのプローブは、それぞれ高さ0.63および0.50のマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じた(1.13倍の差)。150nMおよび500nMのプローブ反応におけるヘテロ接合型ピーク高の合計はそれぞれ1.19および1.13であり、ホモ接合型オリゴヌクレオチド標的で観察されたものと同様であった(図3)。プローブの濃度増加は、非対称的増幅産物で発生したマッチおよびミスマッチの融解ピーク高を均衡させた。オリゴヌクレオチドおよびPCRのデータは、マッチおよびミスマッチの標的分子へのプローブの競合ハイブリダイゼーションを実際に確認している。高い標的濃度では、この競合ハイブリダイゼーションおよびミスマッチの二本鎖の安定性減少は、多標的融解プロファイルでのピークの低下または喪失を招く。150nMよりも高いプローブ濃度がある種の非対称的アッセイでは必要なことがある。
【実施例15】
【0166】
融解温度による多重分析
1つのLightCyclerキャピラリーで4つのオリゴヌクレオチドプローブをそれらの相補的オリゴヌクレオチド標的に同時にハイブリダイズさせ、融解ピーク分析を多重で行える可能性を実証した。プローブおよび標的を様々な濃度で採用し、単一標識および二重標識プローブ由来のピーク高を同じにした。ポリT、HYBINF、HYBCH2、およびHYBAdCプローブおよび標的オリゴヌクレオチドをそれぞれ1.2μM、233nM、183nM、および27nMで採用した。TaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で、変性(95℃、5秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および0.4℃/sで95℃への加熱を含むLightCyclerプロトコールを使用して融解ピークを発生させた。ポリT、HYBINF、HYBCH2、およびHYBAdCプローブは、それぞれ約49℃、54℃、62℃、および68℃のTmで明確な融解ピークを発生した(図17)。2つの二対立遺伝子(biallelic)SNPの同時分析を可能にするオリゴヌクレオチドプローブを使用して、Tmに基づき少なくとも4つの標的配列を検出および同定することができる。スペクトルが異なる蛍光色素をさらに使用して多重分析の可能性を高めることができる。
【実施例16】
【0167】
正の増幅対照
本発明のオリゴヌクレオチドは、臨床試料中の感染性病原体の存在または不在を決定するために採用することができる。特異的融解ピークの発生は、試料中に特定の感染因子が存在することを示す。しかし、融解ピークが全く存在しないことは、病原体の欠如を信頼性高く示すわけではない。尿などの臨床試料は高レベルのPCR阻害剤を含有するおそれがあり、その阻害剤が陽性試料中の病原体の検出を阻止するおそれがある。病原体の不在により陰性である反応を、PCR阻害により融解ピークを発生しない反応と区別するために、増幅対照が必要である。
【0168】
142塩基のオリゴヌクレオチド(配列番号98)を使用してクラミジア増幅対照(模倣体)を構築した。クローニング目的のPCRテンプレートとして長鎖オリゴヌクレオチドを採用した。Tmに基づく模倣体とクラミジア標的との区別を可能にするために、そのオリゴヌクレオチドはプローブ形成領域内にCからTへの塩基置換を有した。この長鎖オリゴヌクレオチドからの増幅は、CHF3-1(配列番号33)およびCHR4-1(配列番号34)プライマーを使用して行った。PCR cloningPlusキット(Qiagen Ltd、クローリー、英国)を使用して増幅産物をpDriveベクターに連結し、Qiagen EZコンピテント細胞に形質転換した。本発明のオリゴヌクレオチドプローブを使用したクラミジアアッセイを用いて、模倣体配列を有するコロニーを直接同定した。製造業者の推奨する方法を用いて、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen Ltd、クローリー、英国)を使用して形質転換体の培養物からプラスミドを精製した。模倣体標的配列への本発明のクラミジアオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、約8℃だけプローブのTmを下げるC:Aミスマッチを招く(図18)。
【実施例17】
【0169】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを使用したDNAの定量
プライマーFVF1.3(配列番号22)およびFVR3.5(配列番号23)を使用した一連のDNA標準から第V因子標的を増幅させた。DNA標準は、100ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、100pg/μl、および10pg/μlのヒトゲノムDNAを有した。アッセイには、最初の変性(95℃、1分間)に続いて、変性期(95℃、0秒間)およびアニーリング期(50℃、10秒間)および伸長期(72℃、10秒間)を含む50サイクルのPCRからなる3段階LightCyclerプロトコールを採用した。FVG1(配列番号21)またはFVG11(配列番号60)を含むこと、およびPCRのアニーリング期の間の蛍光取得により、増幅した標的を検出および特徴付けた。閾値レベル(CT)を超えて蛍光発光が増加するサイクル数を測定することにより、DNA標的の定量が可能になる(図19)。リアルタイムPCRアッセイの間に得られたCT値は、標的配列の初発コピー数に直接比例し、標準曲線を構築するために使用することができ、その標準曲線から「未知」試料を定量することができる。唾液試料は、典型的には約1ng/μlのヒトゲノムDNAを含有することが見出された。
【実施例18】
【0170】
フルオレセイン以外の蛍光体を用いた分析
それぞれ2つの内部位置で蛍光体で標識された4つの第V因子オリゴヌクレオチドプローブを合成した。これらのプローブは以下の通りである。
FVG11TAM5'CTGTAXTCCTCGCCXGTCC(配列番号140)(配列中、XはTAMRAで標識されたdT残基である)、
FVG1IROX5'CTGTAXTCCTCGCCXGTCC(配列番号141)(配列中、XはROXで標識されたdT残基である)、
FVG11Cy55'CTGTAXTCCTCGCCXGTCC(配列番号142)(配列中、XはCySで標識されたdT残基である)、
FVG11Mix5'CTGTAFTCCTCGCCXGTCC(配列番号143)(配列中、FはFAMで標識されたdT残基であり、XはROXで標識されたdT残基である)。
【0171】
96ウェルの光学プレート中でTaKaRa PCR緩衝液および合計3mMのMgCl2中で、プローブをその相補的オリゴヌクレオチド標的(配列番号24)とハイブリダイズさせ、ABI7700サーモサイクラーを使用して融解曲線を作製した。融解プロトコールは、変性(95℃、30秒間)、冷却(35℃、30秒間)、および35℃から95℃まで1℃きざみで各温度で15秒間停止させる段階的昇温を含む融解プロファイルを含んでいた。プローブおよび相補体を150nMの濃度で使用した。生データをABI7700サーモサイクラーからエクスポートし、MicrosoftのExcel表計算プログラムを使用して処理した。図20A、20B、20C、および20Dは、これらのプローブがその相補体から離れるときの融解曲線を示し、全ての場合で曲線の屈曲がみられる。Cy5の検出のための最適状態に及ばない光学系ではあるが、プローブがその標的から解離する直接の結果、温度の関数としての蛍光の直線的減少に比べて蛍光が減少することが実証されている。このデータは、この現象が蛍光体の一般的な特徴であり、フルオレセインおよび他のフルオレセイン系誘導体に限定されないという以前のデータおよび結論を確認するものである。
【0172】
結論
単一および多重蛍光体標識内部塩基を有するオリゴヌクレオチドプローブは、全て一本鎖状態に比べてハイブリダイズしたときに蛍光発光のレベル増加を示す。オリゴヌクレオチドプローブおよび標的配列とは無関係に、ハイブリダイゼーションしたときにプローブ蛍光が常に増加することから、一本鎖の場合に蛍光体はプローブDNAと相互作用し消光を招くが、二本鎖状態ではプローブとも標的配列とも相互作用せず、その結果、蛍光体は脱消光され蛍光が増加すると考えられている。ハイブリダイズしたプローブから発光した蛍光のレベル増加は、DNAの消光の影響を逃れて溶液中に突出する蛍光体に起因すると考えられる。
【0173】
単一標識オリゴヌクレオチドプローブを同一配列の二重標識および三重標識プローブと比較することによる予想外の結果は、追加の蛍光体が含まれることに伴い蛍光が単に2倍または3倍になるわけではないことであった。二重標識および三重標識プローブは、単一標識オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれから予想されるよりも大きな融解ピークを示し、これは、蛍光体同士の相互作用があることを示唆している。接触消光を阻止し、標的検出時に効率的なシグナル発生を確実にするためにオリゴヌクレオチドプローブ中の蛍光体は、好ましくは少なくとも2つのヌクレオチドで分離されている。
【0174】
【表9】
【0175】
【表10】
【0176】
【表11】
【0177】
【表12】
【0178】
【表13】
【0179】
【表14】
【0180】
【表15】
【0181】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明のオリゴヌクレオチドに採用されたC6 FAM dUおよびGlenフルオレセインdT標識の化学構造を示す図である。
【図2】単一標識オリゴヌクレオチド(HYBA1928C)が5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(MTHFR)A1928C多型に関して唾液試料を直接分析するために採用されたことを示す図である。温度に対する蛍光の負の導関数(y軸の-dF/dT)を試料温度(x軸)に対してプロットし、融解ピークを作製した。オリゴヌクレオチドは、AおよびC対立遺伝子の存在下でそれぞれ約51.5℃および61℃のTmを有する融解ピークを生じる。ヘテロ接合型試料は、共に51.5℃および61℃の融解ピークを発生する。
【図3】単一標識(FVG1)および二重標識(FVG11)第V因子オリゴヌクレオチド由来の融解ピークを示す図である。追加的な蛍光体は、融解ピーク高を4〜5倍増加させ、プローブのTmを約5℃減少させる。
【図4】A)トラコーマクラミジア(LGV-II、434株、ATCC VR-920B、Advanced Biotechnologies、メリーランド州、米国)および処理した臨床スワブ試料由来の精製DNAを用いて得られたHYBCH2プローブの融解ピークを示す図である。Tmが約60℃の単一の融解ピークがクラミジア標的DNAの存在下で発生する。B)HYBCH6クラミジアプローブで得られたリアルタイムPCRおよび融解ピークのデータを示す図である。三重標識トラコーマクラミジアプローブは、単一標識HYBCH2オリゴヌクレオチドの約6倍強度の融解ピークを生じる。
【図5】精製淋菌DNAを用いて得たHYBNG(本発明の二重標識オリゴヌクレオチド)の融解ピークを示す図である。約59℃のTmを有する単一融解ピークが発生する。
【図6】A)第V因子Leiden多型について試料を分類するために二重標識FVG11プローブを使用して、一連の精製ヒトゲノムDNAから得られた融解ピークを示す図である。ホモ接合型野生型試料はTmが約55℃の単一の融解ピークを発生する。ヘテロ接合型試料は、それぞれ55℃および45℃のTmを有するマッチおよびミスマッチの融解ピークを生じる。ホモ接合型「突然変異」試料は、45℃の融解ピークだけを生じるであろう。陰性対照反応はどちらの融解ピークも発生しない。B)LightCyclerソフトウェアが、融解ピークの数およびTmに基づき、第V因子多型の関して試料を分類するために採用することができることを示す図である。
【図7】プローブのSN比を計算する方法を示す図である。解離したプローブ状態およびハイブリダイズしたプローブ状態それぞれについてTm±10℃で蛍光の読み取り値を測定する。ハイブリダイズしているときのシグナルを解離しているときのシグナルで割ったものとしてSN比を計算することができる。
【図8】A)二重標識FVG11プローブが単一標識FVG1プローブに比べて約2倍量のバックグラウンド蛍光(70℃を超える)を示すことを示す図である。それに反して、B)二重標識第V因子プローブは、単一標識プローブで発生したピークの約5〜6倍のサイズの融解ピークを生じることを示す図である。これは、2倍の蛍光体が2倍のバックグラウンドおよび2倍のシグナルを生むことによってSN比は不変であるという予想される結果に比較して、FVG1に比べてFVG11ではSN比が約3倍良好であることを示している。FVG1およびFVG11プローブは、ハイブリダイゼーション時にそれぞれ33%および82%の蛍光の増加を示す。
【図9】精製ゲノム試料を使用した単一標識(FVG1)および二重標識(FVG11)第V因子プローブの比較を示す図である。データの平均平滑化のために10℃を使用し、バックグラウンド補正を行う多項式LightCycler関数を使用して融解ピークを分析した。負の対照反応(NC)は、FVG1プローブまたはFVG11プローブのいずれでも融解ピークを生まない。1ng/μlのホモ接合型「野生型」DNAは、単一標識および二重標識プローブについてそれぞれ約59℃および54.6℃のTmを有する単一の融解ピークを生じる。ヘテロ接合型(HET)ゲノム試料は、マッチおよびミスマッチ両方の融解ピークを生じる。二重標識融解ピークの高さは、単一標識プローブで発生したピークよりも約3〜4倍の大きさである。
【図10】同一配列の3'標識、5'標識、および内部標識プローブの比較を示す図である。5'標識プローブは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光消光を示し、-dF/dTのグラフに逆向きの融解ピークを発生した。3'標識プローブは、ハイブリダイゼーション時に蛍光増強も消光も示さなかった。内部標識オリゴヌクレオチドは、標的のハイブリダイゼーション時に蛍光増強を示し、-dF/dTのグラフにおいて正の融解ピークを示した。単一標識および二重標識プローブの両方は標的配列に依存せず、ハイブリダイズしたときに常に高いレベルの蛍光を示す。
【図11】A)HYBCH(1)、HYBCH2(2)、HYBCH3(3)、およびHYBCH4(4)クラミジアプローブの比較を示す図である。3および4つのFAM色素で標識されたプローブは、標識に近接していることから単一標識および二重標識プローブに比べてかなり低レベルの蛍光を発光する。三重標識プローブ(3)は、二重鎖の解離時に増大したレベルの発光を示す。B)4つのクラミジアプローブから得られた融解ピークを示す図である。三重標識プローブは二重標識変異体よりも高いTmで小さな逆向きの融解ピークを生じる。4つのFAM色素で標識されたプローブは、二重標識プローブで発生したものとほぼ等しいTmを有する小さな正の融解ピークを生じる。C)二重標識HYBCH(1)、単一標識HYBCH2(2)、ならびに三重標識HYBCH5(5)およびHYBCH6(6)オリゴヌクレオチドの比較を示す図である。
【図12】単一標識(1)、二重標識(2)、および三重標識(3)第V因子オリゴヌクレオチドプローブ由来の融解ピークを示す図である。
【図13】A)FAM dAおよびB)FAM dCを有する本発明の単一標識(1)および二重標識(2)オリゴヌクレオチドを示す図である。
【図14】A)HYBCH2プローブを使用したトラコーマクラミジアの検出のための対称的および非対称的PCRのプロトコールの比較を示す図である。 B)対称的PCRおよび単一標識プローブ(1)と非対称的増幅および単一標識プローブ(2)の比較と、ならびに非対称的PCRと二重標識プローブ変異体(3)との比較を示す図である。クラミジア融解ピークの高さは、非対称的PCRおよび二重標識HYBCHプローブを使用すると7倍超高まる。
【図15】150nMのFVG11を75nMのFVGおよび75nMのFVAオリゴヌクレオチド標的にハイブリダイズさせた図である(1)。300nMのプローブを150nMのFVGおよび150nMのFVAとハイブリダイズさせた(2)。150nMのプローブも500nMのFVGおよび500nMのFVAとハイブリダイズさせた。高い標的濃度で完全に相補的な標的配列に対するプローブの選択的なハイブリダイゼーションは、ミスマッチの標的変異体の検出を完全に阻止した(3)。
【図16】A)150nMのFVG11プローブを採用すると、60サイクルの非対称的標的増幅後に、マッチおよびミスマッチの第V因子の融解ピークの高さが不均衡になることを示す図である。プローブ濃度を500nMに増加させると、融解ピークの高さの均衡が高まる。B)150nM、300nM、および500nMのFVG11プローブを使用した、50、60、および70サイクルの対称的および非対称的標的増幅後にFVG11の融解ピークの高さを測定した。
【図17】PolyT(1)、HYBINF(2)、HYBCH2(3)、およびHyBAdC(4)オリゴヌクレオチドプローブを使用した標的配列の多重検出を示す図である。多重検出は融解ピークTmに基づき、全てのプローブにFAMを採用した。
【図18】精製クラミジアDNAおよび模倣プラスミドからそれぞれ増幅された、マッチおよびミスマッチの標的配列を検出する三重標識HYBCH6プローブで得られた融解ピークを示す図である。プローブは、それぞれクラミジアDNAおよび模倣標的で約60.3℃および51.8℃のTmを示す。標的の不在下ではピークは発生しない。
【図19】ヒトゲノムDNAの希釈物を使用してリアルタイム標準曲線を作製するために二重標識FVG11プローブを採用したことを示す図である。希釈系列は、100ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、0.1ng/μl、および0.01ng/μlのゲノムDNAを含んでいた。
【図20】A.TAMRA、B.ROX、C.Cy5、D.ROX、およびFAMで標識された二重標識FVG11誘導体プローブについての融解曲線、ならびにハイブリダイゼーション状態の結果としての蛍光変化を示す、その融解曲線における変曲点を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次構造を実質的に有さず、ヌクレオチド残基から形成される一本鎖オリゴヌクレオチドであって、2つ以上の内部ヌクレオチド残基が結合するクエンチャーなしに蛍光体で標識されている一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記内部残基の最大約3分の1が蛍光体で標識されている、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
蛍光体で標識されているヌクレオチド残基の少なくとも2つが、少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されている、請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
蛍光体で標識されているヌクレオチド残基の全てが、少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
少なくとも1つのG残基を有するオリゴヌクレオチドであって、前記蛍光体標識ヌクレオチド残基の少なくとも1つが、前記G残基の少なくとも1つに隣接して位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシルを有さない、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
3'ヌクレオチド残基が3'リン酸を有するか、または3'デオキシ残基である、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
10から50個のヌクレオチド残基を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
15から30個のヌクレオチド残基を有する、請求項8に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
2から10個の蛍光体標識内部ヌクレオチド残基を有する、請求項8に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
2から5個の蛍光体標識内部残基を有する、請求項9に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
各蛍光体が同一の蛍光体である、請求項1から11のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
2つ以上の異なる蛍光体を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記蛍光体が、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)などのフルオレセイン系色素;6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)などのローダミン系色素;Cy3またはCy5などのCyファミリーの色素;NEDまたはJOEなどのその他の蛍光体;ならびにAlexa色素、Atto色素、Dyomic色素、Dyomic megastoke色素、およびThilyte色素からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
一方がFAMであり、他方がROXである2つの異なる蛍光体を有する、請求項13に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記蛍光体が二本鎖DNAにインターカレートしない、請求項1から14のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
標的ポリヌクレオチド配列に配列相補性を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記標的ポリヌクレオチド配列が、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むヒトゲノム、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むマウスゲノム、およびその中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む任意の感染因子のゲノムからなる群から選択される、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
以下のヒト遺伝子またはその対立遺伝子:
N-アセチルトランスフェラーゼ2 X14672
第V因子Leiden AY364535
第II因子 AF493953
MTHFR NM_005957
鎌状赤血球貧血症 AY356351および
ヒツジPrP遺伝子(NM_001009481)
の任意の1つに相補的な配列を有する、請求項18に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
以下の感染因子:
トラコーマクラミジア X07547
アデノウイルス AJ293905
A型インフルエンザ AY130766
肺炎連鎖球菌 X52474および
MRSA AJ810121
のゲノムまたはその中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子に相補的な配列を有する、請求項18に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
遺伝子の1つの対立遺伝子に完全に相補的な配列を有する、請求項18から20のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項17から20のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項23に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
前記遺伝子の所与の対立遺伝子を別の対立遺伝子と比べたヌクレオチド配列の差に相補的な配列が、前記オリゴヌクレオチドの中央付近に位置する、請求項21に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
支持体上または支持体内に固定化されている、請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
支持体上または支持体内の間隔を置いた位置に固定化されているオリゴヌクレオチドのアレイであって、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドであるアレイ。
【請求項27】
各オリゴヌクレオチドが請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドである、請求項26に記載のオリゴヌクレオチドのアレイ。
【請求項28】
ポリヌクレオチド配列を含有する試料中の標的ポリヌクレオチド配列を研究する方法であって、前記標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる、請求項1から25のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドと前記試料を接触させるステップ、およびハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するステップを含む方法。
【請求項29】
蛍光の増加の検出が、前記オリゴヌクレオチドと前記標的ポリヌクレオチド配列との間でハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するために使用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標的ポリヌクレオチド配列と前記オリゴヌクレオチドとの間に形成したハイブリッドの融解点付近の所定の温度で、または前記融解点を包含する温度範囲にわたって行われる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列に完全に相補的である、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列に完全には相補的でない、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
研究される前記標的ポリヌクレオチド配列が遺伝子の1つまたは複数の対立遺伝子である、請求項28から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴヌクレオチドが、前記遺伝子の1つを超える対立遺伝子にハイブリダイズすることができる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチド配列の存在または量を検出、同定、または定量するために使用される、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記試料が、増幅により産生されたポリヌクレオチド配列を含有する、請求項28から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチド配列が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在性増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、または核酸配列に基づく増幅(NASBA)の任意の1つまたは複数により産生される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列の前記増幅が、前記標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドの存在下で行われる、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記オリゴヌクレオチドの3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシルを有さない、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
蛍光の観察が、前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列の前記増幅中に行われる、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列が、核酸の予備抽出なしに生物学的起源からの増幅により産生される、請求項38から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記PCRが非対称的増幅である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド、前記ポリヌクレオチド標的配列を含有しうる試料、またはその両方が支持体上または支持体内に固定化されている、請求項30から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記標的ポリヌクレオチド配列が、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むヒトゲノム、マウスゲノムまたはその中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子、およびその中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む任意の感染因子のゲノムからなる群から選択される、請求項30から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
標的ポリヌクレオチド配列を選択するステップ、および前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を有し、請求項1から25のいずれかに記載の性質を有するオリゴヌクレオチドを合成するステップを含む、請求項17から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを製造する方法。
【請求項48】
前記標的ポリヌクレオチド配列が、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むヒトゲノム、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むマウスゲノム、およびその中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む任意の感染因子のゲノムからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
2つ以上の内部ヌクレオチド残基が、本明細書の表および配列リストを特に参照して本明細書に記載されているように結合するクエンチャーなしに蛍光体で標識されている、任意の新規な一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項50】
本明細書に記載の標的ポリヌクレオチド配列を研究する任意の新規な方法。
【請求項1】
二次構造を実質的に有さず、ヌクレオチド残基から形成される一本鎖オリゴヌクレオチドであって、2つ以上の内部ヌクレオチド残基が結合するクエンチャーなしに蛍光体で標識されている一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記内部残基の最大約3分の1が蛍光体で標識されている、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
蛍光体で標識されているヌクレオチド残基の少なくとも2つが、少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されている、請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
蛍光体で標識されているヌクレオチド残基の全てが、少なくとも2つの未標識ヌクレオチド残基で分離されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
少なくとも1つのG残基を有するオリゴヌクレオチドであって、前記蛍光体標識ヌクレオチド残基の少なくとも1つが、前記G残基の少なくとも1つに隣接して位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシルを有さない、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
3'ヌクレオチド残基が3'リン酸を有するか、または3'デオキシ残基である、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
10から50個のヌクレオチド残基を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
15から30個のヌクレオチド残基を有する、請求項8に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
2から10個の蛍光体標識内部ヌクレオチド残基を有する、請求項8に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
2から5個の蛍光体標識内部残基を有する、請求項9に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
各蛍光体が同一の蛍光体である、請求項1から11のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
2つ以上の異なる蛍光体を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記蛍光体が、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)などのフルオレセイン系色素;6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)などのローダミン系色素;Cy3またはCy5などのCyファミリーの色素;NEDまたはJOEなどのその他の蛍光体;ならびにAlexa色素、Atto色素、Dyomic色素、Dyomic megastoke色素、およびThilyte色素からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
一方がFAMであり、他方がROXである2つの異なる蛍光体を有する、請求項13に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記蛍光体が二本鎖DNAにインターカレートしない、請求項1から14のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
標的ポリヌクレオチド配列に配列相補性を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記標的ポリヌクレオチド配列が、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むヒトゲノム、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むマウスゲノム、およびその中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む任意の感染因子のゲノムからなる群から選択される、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
以下のヒト遺伝子またはその対立遺伝子:
N-アセチルトランスフェラーゼ2 X14672
第V因子Leiden AY364535
第II因子 AF493953
MTHFR NM_005957
鎌状赤血球貧血症 AY356351および
ヒツジPrP遺伝子(NM_001009481)
の任意の1つに相補的な配列を有する、請求項18に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
以下の感染因子:
トラコーマクラミジア X07547
アデノウイルス AJ293905
A型インフルエンザ AY130766
肺炎連鎖球菌 X52474および
MRSA AJ810121
のゲノムまたはその中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子に相補的な配列を有する、請求項18に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
遺伝子の1つの対立遺伝子に完全に相補的な配列を有する、請求項18から20のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項17から20のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項23に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
前記遺伝子の所与の対立遺伝子を別の対立遺伝子と比べたヌクレオチド配列の差に相補的な配列が、前記オリゴヌクレオチドの中央付近に位置する、請求項21に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
支持体上または支持体内に固定化されている、請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
支持体上または支持体内の間隔を置いた位置に固定化されているオリゴヌクレオチドのアレイであって、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドであるアレイ。
【請求項27】
各オリゴヌクレオチドが請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドである、請求項26に記載のオリゴヌクレオチドのアレイ。
【請求項28】
ポリヌクレオチド配列を含有する試料中の標的ポリヌクレオチド配列を研究する方法であって、前記標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる、請求項1から25のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドと前記試料を接触させるステップ、およびハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するステップを含む方法。
【請求項29】
蛍光の増加の検出が、前記オリゴヌクレオチドと前記標的ポリヌクレオチド配列との間でハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するために使用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標的ポリヌクレオチド配列と前記オリゴヌクレオチドとの間に形成したハイブリッドの融解点付近の所定の温度で、または前記融解点を包含する温度範囲にわたって行われる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列に完全に相補的である、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列に完全には相補的でない、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
研究される前記標的ポリヌクレオチド配列が遺伝子の1つまたは複数の対立遺伝子である、請求項28から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴヌクレオチドが、前記遺伝子の1つを超える対立遺伝子にハイブリダイズすることができる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチド配列の存在または量を検出、同定、または定量するために使用される、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記試料が、増幅により産生されたポリヌクレオチド配列を含有する、請求項28から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチド配列が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在性増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、または核酸配列に基づく増幅(NASBA)の任意の1つまたは複数により産生される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列の前記増幅が、前記標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドの存在下で行われる、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記オリゴヌクレオチドの3'ヌクレオチド残基が3'ヒドロキシルを有さない、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
蛍光の観察が、前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列の前記増幅中に行われる、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列が、核酸の予備抽出なしに生物学的起源からの増幅により産生される、請求項38から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記PCRが非対称的増幅である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド、前記ポリヌクレオチド標的配列を含有しうる試料、またはその両方が支持体上または支持体内に固定化されている、請求項30から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記標的ポリヌクレオチド配列が、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むヒトゲノム、マウスゲノムまたはその中の任意の遺伝子またはその対立遺伝子、およびその中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む任意の感染因子のゲノムからなる群から選択される、請求項30から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
標的ポリヌクレオチド配列を選択するステップ、および前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を有し、請求項1から25のいずれかに記載の性質を有するオリゴヌクレオチドを合成するステップを含む、請求項17から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを製造する方法。
【請求項48】
前記標的ポリヌクレオチド配列が、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むヒトゲノム、その中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含むマウスゲノム、およびその中に任意の遺伝子またはその対立遺伝子を含む任意の感染因子のゲノムからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
2つ以上の内部ヌクレオチド残基が、本明細書の表および配列リストを特に参照して本明細書に記載されているように結合するクエンチャーなしに蛍光体で標識されている、任意の新規な一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項50】
本明細書に記載の標的ポリヌクレオチド配列を研究する任意の新規な方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−501542(P2009−501542A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522059(P2008−522059)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002719
【国際公開番号】WO2007/010268
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(502355886)エルジーシー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002719
【国際公開番号】WO2007/010268
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(502355886)エルジーシー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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