説明

オリゴペプチド

本発明の目的は、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドを提供することである。本発明によれば、式(I):X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7(式中、X1は、Serなどのアミノ酸残基を示し、X2はIleなどのアミノ酸残基を示し、X3はGluなどのアミノ酸残基を示し、X4はGlnなどのアミノ酸残基を示し、X5はSerなどのアミノ酸残基を示し、X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示し、そしてX7はGluまたはAlaなどのアミノ酸残基を示す)等で表されるオリゴペプチドが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、毛成長促進作用を有するオリゴペプチド、及び該オリゴペプチドを有効成分として含む医薬に関するものである。
【背景技術】
上皮組織の正常な形態形成は上皮組織の周りに存在する間充織細胞由来の因子による制御を受けていることが示唆されており、また、上皮組織の形態形成異常に起因する疾患の多くが間充織細胞の異常を原因としていることから、間充織細胞が上皮組織の形態形成を制御するメカニズムの解明に興味がもたれている。しかしながら、上皮組織の形態形成の制御に関与する物質群は複雑な系の中で時間的及び空間的な制御を受けて発現されており、それらの物質を単離して機能を解析することは極めて困難であること、また、上皮組織の形態形成を単純化したモデル実験系の構築も難しいことなどの理由から、この分野の研究には今日まで大きな進展が見られていない。上皮組織の形態形成に起因する疾患の発症機序の解明やそれらの疾患の治療方法の確立などのために、上皮組織における形態形成の制御メカニズムの解析が切望されていた。
このような状況下にあって、上皮組織の形態形成の制御に関与するエピモルフィン(epimorphin)が分離・精製された(欧州特許公開第0562123号(米国特許第5,726,298号))。この物質は277ないし289個のアミノ酸からなる蛋白質をコア・蛋白質とする生理活性物質であり、主として間充織細胞により生合成されていることが明らかにされた。また、エピモルフィンは、上皮細胞に作用して上皮組織の形態形成を促進する作用を有していること、並びにエピモルフィンが機能しない場合には正常な組織形成が行われないことも明らかにされた。
エピモルフィンの構造については、エピモルフィン分子が構造上大きく4個のフラグメントに分けられることが見いだされている(欧州特許公開第0698666号)。すなわち、エピモルフィンの全長を構成するポリペプチドは、N末端側より、コイルドコイル領域(1)、機能ドメイン(2)、コイルドコイル領域(3)、及びC末端の疎水性領域に分けることができる。これらのフラグメントのうち、機能ドメイン(ヒト・エピモルフィンではN末端より104番目から187番目のアミノ酸により特定される領域)については、この領域が細胞接着に関与しており、エピモルフィンの生理活性の発現に密接にかかわっていることが示唆されている(上掲欧州特許公開)。
エピモルフィンが正常な形態形成を促進する作用を有することから、この物質は、形態形成の異常に起因する疾患などの予防や治療のための医薬や、又は育毛剤などの医薬の有効成分として有用であることが期待される。しかしながら、哺乳類動物から得られた天然型エピモルフィンは生理食塩水などの水性媒体に難溶であり、医薬として実用に供することが困難であった。このため、天然型エピモルフィンの形態形成促進作用を実質的に保持しつつ、溶解性に優れたエピモルフィン誘導体を創製する試みがなされている。例えば、C末端部の疎水性領域を除去した改変体(フラグメント123)などが知られている(欧州特許公開第0562123号(米国特許第5,726,298号))。
エピモルフィンの部分構造を有するポリペプチドが上皮細胞に作用して上皮組織の形態形成を促進することが知られている(欧州特許公開第1008603号)。このポリペプチドは生理食塩水などの水性媒体に溶解可能なポリペプチドであり、上記刊行物には、該ポリペプチドが毛成長促進作用を有することが教示されている。また、欧州特許公開第1288221号には、エピモルフィンの部分構造であるオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドが開示されている。
【発明の開示】
本発明の課題は、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドを提供することにある。本発明の別の課題は、精製効率の高い上記オリゴペプチドを提供することである。本発明のさらに別の課題は、上記のオリゴペプチドを有効成分として含む医薬を提供することにある。
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、エピモルフィンの部分構造であるオリゴペプチド中のCys残基またはLys残基をカルボニル基を含有する修飾基により修飾することにより得たオリゴペプチドが、優れた毛成長促進作用を有していることを見出した。さらに本発明者らは、エピモルフィンの部分構造であるオリゴペプチド中のアミノ酸配列中に連結基を導入して分子内に環構造を形成することによって得られるオリゴペプチドが、優れた精製効率を示すと同時に優れた毛成長促進作用を有していることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明によれば、下記の式(I)から(IV)の何れかのアミノ酸配列を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドが提供される。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7 (I)
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7 (II)
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7 (III)
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7 (IV)
(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、CysまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、CysまたはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、CysまたはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示し、そして
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失している。)
好ましくは、X1はSerアミノ酸残基を示し、X2はIleのアミノ酸残基を示し、X3はGluのアミノ酸残基を示し、X4はGlnのアミノ酸残基を示し、X5はSerのアミノ酸残基を示し、X6はカルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示し、そしてX7はGluまたはAlaのアミノ酸残基を示す。
好ましくは、上記式(I)から(IV)の何れかのアミノ酸配列から成る5から7アミノ酸残基から成るオリゴペプチドが提供される。
本発明の別の側面によれば、下記の式(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列を含む6から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドが提供される。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9 (XI)
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7−X8−X9 (XII)
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7−X8−X9 (XIII)
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7−X8−X9 (XIV)
(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、CysまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、CysまたはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、CysまたはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示す。)
好ましくは、X7及びX9の少なくとも片方は、Aspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である。
さらに好ましくは、X1はSerアミノ酸残基を示し、X2はIleのアミノ酸残基を示し、X3はGluのアミノ酸残基を示し、X4はGlnのアミノ酸残基を示し、X5はSerのアミノ酸残基を示し、X6はカルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示し、X7はGluまたはAlaのアミノ酸残基を示し、X8はGlnのアミノ酸残基を示し、そしてX9はGluのアミノ酸残基を示す。
好ましくは、上記式(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列から成る7から9アミノ酸残基から成るオリゴペプチドが提供される。
好ましくは、X6は、末端にカルボキシル基を有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、または末端にカルボキシル基を有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示す。
好ましくは、修飾基内においてカルボニル基は炭素数2から10の炭化水素鎖に結合している。
好ましくは、修飾基内においてカルボニル基は炭素数3から7の炭化水素鎖に結合している。
好ましくは、修飾基は、N−β−マレイミドプロピオン酸に由来する修飾基、N−ε−マレイミドカプロン酸に由来する修飾基、またはN−κ−マレイミドウンデカン酸に由来する修飾基である。
好ましくは、以下の何れかのオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドが提供される。

(式中、Xaaは、N−ε−マレイミドカプロン酸に由来する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示す。)
本発明の別の側面によれば、上記した何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む、医薬並びに毛成長促進剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の医薬または毛成長促進剤の製造のための上記のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩の使用;及び毛の成長促進方法であって、上記のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるその塩の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、下記の式(1)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが提供される。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、またはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Cysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
Yは、欠失しているか、1〜90個のアミノ酸配列を示し、
Lは連結基を示す。)
好ましくは、X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、そしてX7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示す。
好ましくは、Yは欠失しているか、又は1〜12個のアミノ酸配列を示す。
好ましくは、下記の式(2)から成るアミノ酸配列を有し、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが提供される。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、またはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Cysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示し、
Lは連結基を示す。)
好ましくは、X7及びX9の少なくとも片方はAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である。
好ましくは、X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、X7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示し、X8がGlnのアミノ酸残基を示し、そしてX9がGluのアミノ酸残基を示す。
本発明の別の側面によれば、下記の式(3)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが提供される。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、またはHisのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Lysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
Yは、欠失しているか、1〜90個のアミノ酸配列を示し、
Lは連結基を示し、
Zは、Lysと反応して結合できる基を示す。)
好ましくは、X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、そしてX7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示す。
好ましくは、Yは欠失しているか、又は1〜12個のアミノ酸配列を示す。
好ましくは、下記の式(4)から成るアミノ酸配列を有し、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが提供される。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、またはHisのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Lysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示し、
Lは連結基を示し、
Zは、Lysと反応して結合できる基を示す。)
好ましくは、X7及びX9の少なくとも片方はAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である。
好ましくは、X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、X7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示し、X8がGlnのアミノ酸残基を示し、そしてX9がGluのアミノ酸残基を示す。
好ましくは、連結基Lの炭素数は6から8である。
好ましくは、連結基L内においてカルボニル基が炭素数5から7の炭化水素鎖に結合している。
好ましくは、連結基Lは、−CO−(CH−NH−(式中、nは5〜7の整数を示す)である。
好ましくは、連結基L中の−COがX1と結合し、連結基L中のNH−が、X6に結合しているCys残基又はZで表される基と結合している。
特に好ましくは、以下の何れかの環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが提供される。

本発明のさらに別の側面によれば、上記した何れかの環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む、医薬並びに毛成長促進剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した何れかの環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩、並びにミノキシジルを有効成分として含む毛成長促進剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の医薬または毛成長促進剤の製造のための上記環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩の使用;及び毛の成長促進方法であって、上記環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるその塩の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、合成したオリゴペプチド、並びに修飾試薬との反応産物を、液体クロマトグラフィーを用いて解析した結果を示す。
図2は、合成したオリゴペプチド、並びに修飾試薬との反応産物を、液体クロマトグラフィーを用いて解析した結果を示す。
図3は、合成したオリゴペプチド、並びに修飾試薬との反応産物を、液体クロマトグラフィーを用いて解析した結果を示す。
図4は、各種のオリゴペプチドの毛成長促進作用を評価した結果を示す。
図5は、各種のオリゴペプチドの毛成長促進作用を評価した結果を示す。
図6は、化合物(11)のHPLCによる分析結果を示す。
図7は、化合物(12)のHPLCによる分析結果を示す。
図8は、化合物(13)のHPLCによる分析結果を示す。
図9は、化合物(14)のHPLCによる分析結果を示す。
図10は、本発明の環状オリゴペプチドの毛成長促進作用を示す。
図11は、本発明の環状オリゴペプチドの毛成長促進作用を示す。
図12は、本発明の環状オリゴペプチドとミノキシジルとを併用した場合の毛成長促進作用を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の第一の態様のオリゴペプチドは、下記の式(I)から(IV)の何れかのアミノ酸配列を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドである。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7 (I)
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7 (II)
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7 (III)
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7 (IV)
(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、CysまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、CysまたはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、CysまたはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示し、そして
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失している。)
本発明の第二の態様のオリゴペプチドは、下記の式(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列を含む6から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチド:
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9 (XI)
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7−X8−X9 (XII)
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7−X8−X9 (XIII)
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7−X8−X9 (XIV)
(式中、X1からX7は上記と同様のアミノ酸残基を示し、X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そしてX9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示す。)
なお、本発明においては、X7及びX9の少なくとも片方がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基であることが好ましい。X7及びX9の少なくとも片方が、Aspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である場合は、X7及びX9がともにAspのアミノ酸残基である場合に生じることがあるアスパラギン酸に起因するβ転移(スクシイミド)が起こることがなく合成収率が向上するためである。X7がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基であればより好ましい。X7のAspがβ転移を生じることが多いためである。
上記のアミノ酸配列(I)から(IV)並びに(XI)から(XIV)は、欧州特許公開第1008603号に開示されたポリペプチド(II)のC−末端から11個のアミノ酸残基において、N−末端から1個のアミノ酸残基(Lys)およびC−末端から2個のアミノ酸残基(Asp−Glu)を除いたアミノ酸配列、または該アミノ酸配列においてさらにシステイン残基(Cys)の位置を変更したアミノ酸配列であって、当該Cys残基を、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基に置き換えたアミノ酸配列をベースにして、さらに1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列である。上記アミノ酸配列(I)〜(IV)並びに(XI)から(XIV)を含むオリゴペプチドは、下記の実施例に具体的に示すように優れた毛成長促進作用を有している。
アミノ酸配列(I)から(IV)並びに(XI)から(XIV)において、X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示す。
本発明の好ましい態様によれば、修飾基は、末端にカルボキシル基を有する修飾基である。また、本発明のさらに好ましい態様によれば、修飾基内においてカルボニル基は炭素数2から10の炭化水素鎖、さらに好ましくは炭素数3から7の炭化水素鎖に結合している。
本発明においてX6がカルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示す場合の修飾基の具体例としては、好ましくは、N−β−マレイミドプロピオン酸に由来する修飾基、N−ε−マレイミドカプロン酸に由来する修飾基、またはN−κ−マレイミドウンデカン酸に由来する修飾基などを挙げることができる。このような修飾基は、N−β−マレイミドプロピオン酸、N−ε−マレイミドカプロン酸またはN−κ−マレイミドウンデカン酸などの試薬とオリゴペプチドとを反応させることにより、オリゴペプチド中のシステイン残基のスルフヒドリル基と上記試薬とを反応させ、これによりオリゴペプチド中のシステイン残基に導入することができる。
また本発明においてX6がカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示す場合の修飾基の具体例としては、上記したX6がカルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示す場合と同様である。
本発明のオリゴペプチドは、式(I)から(IV)又は(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドである。例えば、アミノ酸残基の数の下限値は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の何れでもよく、上限値は15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90または100の何れでもよい。アミノ酸残基の数は好ましくは5から40、より好ましくは6から30、さらに好ましくは7から20、さらに好ましくは7から15、さらに好ましくは7から12であり、特に好ましくは7から10の範囲内である。アミノ酸残基の数は、オリゴペプチドが生理食塩水又は水などの水性媒体に可溶であり、生物学的活性を有するように選択することが望ましい。
本発明の第三の態様によるオリゴペプチドは、下記の式(1)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドである。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、またはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Cysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
Yは、欠失しているか、1〜90個のアミノ酸配列を示し、
Lは連結基を示す。)
上記オリゴペプチドの好ましい具体例としては、下記の式(2)から成るアミノ酸配列を有し、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが挙げられる。

(式中、X1〜X7およびLは、式(1)と同義であり、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示す。)
本発明の第四の態様のオリゴペプチドは、下記の式(3)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドである。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、またはHisのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Lysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
Yは、欠失しているか、1〜90個のアミノ酸配列を示し、
Lは連結基を示し、
Zは、Lysと反応して結合できる基を示す。)
上記オリゴペプチドの好ましい具体例としては、下記の式(4)から成るアミノ酸配列を有し、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドが挙げられる。

(式中、X1〜X7、LおよびZは、式(3)と同義であり、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示す。)
なお、本発明においては、X7及びX9の少なくとも片方がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基であることが好ましい。X7及びX9の少なくとも片方が、Aspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である場合は、X7及びX9がともにAspのアミノ酸残基である場合に生じることがあるアスパラギン酸に起因するβ転移(スクシイミド)が起こることがなく合成収率が向上するためである。X7がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基であればより好ましい。X7のAspがβ転移を生じることが多いためである。
上記のアミノ酸配列は、欧州特許公開第1008603号に開示されたポリペプチド(II)のC−末端から11個のアミノ酸残基において、N−末端から1個のアミノ酸残基(Lys)およびC−末端から2個のアミノ酸残基(Asp−Glu)を除いたアミノ酸配列をベースにしたアミノ酸配列である。
上記した本発明の環状オリゴペプチドは、下記の実施例で具体的に示す通り、30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸で処理し、乾燥した後においても優れた毛成長促進作用を発揮できる。30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸での処理は、逆相クロマトグラフィーによる精製時にオリゴペプチドが供される条件でもあることから、本発明の環状オリゴペプチドは逆相クロマトグラフィーを使用して精製することができ、これにより精製効率を高めることができる。
アミノ酸配列(1)から(4)において、X6はCysまたはLysのアミノ酸残基を示し、特に好ましくは、X6はCysのアミノ酸残基を示す。
本発明の環状オリゴペプチドにおいては、X1とX6とが、−L−Cys−(式中、LはX1と結合している連結基を示し、CysはX6と結合しているCys残基を示す)または−L−Z(式中、LはX1と結合している連結基を示し、ZはLysと反応して結合できる基を示す)を介して結合して分子内環構造を形成していることを特徴とする。Zで表されるLysと反応して結合できる基の具体例としては、N−ヒドロキシサクシンイミドエステル基、イミドエステル基、ヒドロキシメチルフォスフィン基などが挙げられる。
Lで表される連結基の具体例としては、炭素数が6から8の連結基が挙げられ、例えば、カルボニル基が炭素数5から7の炭化水素鎖に結合している連結基などが挙げられる。連結基Lの具体例としては、−CO−(CH−NH−(式中、nは5〜7の整数を示す)が挙げられる。上記の連結基L中において、−COはX1と結合し、NH−は、X6に結合しているCys残基またはZと結合することができる。
本発明の環状オリゴペプチドは、式(1)又は(3)のアミノ酸配列を有する5から98アミノ酸残基から成るオリゴペプチドである。アミノ酸残基の数は好ましくは5から20、より好ましくは7から15、さらに好ましくは7から12であり、特に好ましくは7から10の範囲内である。アミノ酸残基の数は、オリゴペプチドが生理食塩水又は水などの水性媒体に可溶であり、生物学的活性を有するように選択することが望ましい。
以下、上記した第一の態様から第四の態様までのオリゴペプチド(即ち、式(I)から(IV)の何れかのアミノ酸配列を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチド;式(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチド;式(1)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド;及び、式(3)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド)を本発明のオリゴペプチドと称する。
本発明のオリゴペプチドにおけるアミノ酸残基の種類は特に限定されず、天然型アミノ酸残基、非天然型アミノ酸残基、又はそれらの誘導体の何れでもよい。即ち、即ち、アミノ酸としてはL−アミノ酸であってもよいし、D−アミノ酸であってもよいし、これらの混合物でもよい。また、アミノ酸の種類としては、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸の何れでもよいが、天然型アミノ酸であるα−アミノ酸が好ましい。
本明細書で言う非天然型アミノ酸とは、天然型蛋白質を構成する天然型アミノ酸20種類(グリシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−セリン、L−トレオニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−リシン、L−アルギニン、L−シスチン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−ヒスチジン、L−プロリン)以外の全てのアミノ酸を意味し、具体的には、(1)天然型アミノ酸中の原子を他の物質で置換した非天然型アミノ酸、(2)天然型アミノ酸の側鎖の光学異性体、(3)天然型アミノ酸の側鎖に置換基を導入した非天然型アミノ酸、並びに(4)天然型アミノ酸の側鎖を置換して疎水性、反応性、荷電状態、分子の大きさ、水素結合能などを変化させた非天然型アミノ酸などが挙げられる。
本発明のオリゴペプチドの別の態様は、上記のアミノ酸配列(I)から(IV)、(XI)から(XIV)を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって毛成長促進作用を有するオリゴペプチドの修飾オリゴペプチドであって、上記した本発明のオリゴペプチドと同様の毛成長促進作用を有する修飾オリゴペプチドである。
本発明のオリゴペプチドの別の態様は、上記のアミノ酸配列(1)から(4)の何れかを含む7から98アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって毛成長促進作用を有するオリゴペプチドの修飾オリゴペプチドであって、上記した本発明のオリゴペプチドと同様の毛成長促進作用を有する修飾オリゴペプチドである。
本発明のオリゴペプチド又は修飾オリゴペプチドが、毛成長促進作用を有することは、本明細書の実施例に詳細かつ具体的に記載した試験方法によって、又は上記試験方法に適宜の改変や修飾を加えることにより、当業者が容易に確認可能である。このような方法の具体例としては、以下の方法が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(1)C3HやC57BL/6マウスは生後45日から95日前後まで約50日間休止期が続くことが知られている。また、休止期ではピンク、成長期ではグレー又はクロと皮膚の色が変化するため、毛周期の判定が容易である。このマウスを使用し、被験物質の投与により、成長期への移行が促進されるか否か評価することにより、育毛活性を評価することが可能である。
(2)上皮性の新生毛包に存在する抗原(例えば、約220kDaの抗原が挙げられる)を特異的に認識するモノクローナル抗体(例えば、受託番号FERM BP−8121を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体)またはその断片を用いて育毛活性を評価することができる。より具体的には、生体由来の皮膚組織を被験物質の存在下で培養し、該皮膚組織片を回収し、上記のモノクローナル抗体またはその断片と反応させ、皮膚組織片と反応した該モノクローナル抗体またはその断片を検出または測定することにより、上皮性の新生毛包に存在する抗原の発現量を測定し、育毛活性を評価することができる。あるいは、皮膚を切断して被験物質の存在下で培養し、その培養物中の蛋白質と前記モノクローナル抗体を反応させた結果により、育毛活性を評価することができる。
本発明の修飾オリゴペプチドにおいて、「修飾」という用語は、化学的修飾及び生物学的修飾を含めて最も広義に解釈しなければならない。修飾の例としては、例えば、アルキル化、エステル化、ハロゲン化、又はアミノ化などの官能基導入、酸化、還元、付加、又は脱離などによる官能基変換、糖化合物(単糖、二糖、オリゴ糖、若しくは多糖)又は脂質化合物などの導入、リン酸化、あるいはビオチン化などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
好ましい修飾オリゴペプチドとしては、ビオチン化されたオリゴペプチドを挙げることができ、より好ましくは修飾オリゴペプチドとして、スペーサを介して又はスペーサーを介さずにビオチンがN−末端に結合したオリゴペプチドを挙げることができる。上記の修飾オリゴペプチドにおいて、ビオチンには所望の生理活性を損なわない限りにおいて適宜の化学的修飾が施されていてもよい。適宜の長さのスペーサーを介してビオチンをオリゴペプチドのN−末端に導入するためには、例えば、NHS−Biotin又はNHS−LC−Biotin(いずれもピアース社から入手できる)などを用いることができる。
上記した本発明の各種のオリゴペプチド(修飾オリゴペプチドも含む)は遊離形態であってもよいが、酸付加塩又は塩基付加塩として提供されてもよい。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸塩;又は、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;メチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などの有機アンモニウム塩を挙げることができる。グリシンなどのアミノ酸と塩を形成する場合もあり、また、分子内で対イオンを形成することもある。
さらに、これらのオリゴペプチド又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合がある。上記オリゴペプチドは複数の不斉炭素を有している。各不斉炭素の立体は特に限定されないが、アミノ酸残基はL−アミノ酸であることが望ましい。これらの不斉炭素に基づく光学活性体、ジアステレオ異性体などの立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
本発明のオリゴペプチドは、ペプチド合成に通常用いられる固相法および液相法などの化学的手法により合成することができる。ペプチド合成におけるアミノ基等の保護基および縮合反応の縮合剤については種々の成書があり、それらを参照することができる。固相法では市販の各種ペプチド合成装置を利用することができる。必要に応じて、官能基の保護及び脱保護を行うことにより効率的に合成を行うことができる。保護基の導入及び脱離方法については、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T.W.Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons,Inc.)(1981年)などを参照することができる。また、化学的修飾又は生物学的修飾などを含めて修飾オリゴペプチドの製造方法は当業者に周知されており、いかなる方法を用いてもよい。
また、通常の遺伝子発現操作等の生物学的手法に従って、上記オリゴペプチドをコードするDNA配列を含む組み換えベクターを製造した後、該ベクターにより形質転換された微生物(形質転換体)を調製し、該形質転換体を培養した培養物から所望のオリゴペプチドを分離・精製することができる。もっとも、上記オリゴペプチドの製造方法はこれらの化学的方法及び生物学的方法に限定されることはない。また、化学的修飾又は生物学的修飾などを含めて修飾オリゴペプチドの製造方法は当業者に周知されており、いかなる方法を用いてもよい。
次に、本発明のオリゴペプチドが環状オリゴペプチドである場合の製造方法をより具体的に説明する。本発明の環状オリゴペプチドは、以下の(1)〜(3)の手順に従って合成することができる。
(1)先ず、連結基L(−CO−(CH−NH−)に相当する化合物であるHOOC−(CH−NH(式中、nは5〜7の整数を示す)を化学合成する。
(2)次に、Cys−L−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7(X6がCysの場合)で表されるオリゴペプチドまたはZ−L−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7(X6がLysの場合)を上記したような通常のペプチド合成法により合成する。例えば、市販のペプチド自動合成機(例えば、Applied Biosystem社のペプチド自動合成機430Aモデルなど)を使用して、プログラムに従ってC端より逐次BOC法によりペプチド鎖を延長して目的の保護ペプチド樹脂の合成を行なうことができる。
(3)最後に、X6がCysの場合は、N末端のCys残基とX6で表されるCysとを共有結合により結合させる。この共有結合の形成は常法により行なうことができる。具体的には、遊離チオール基を有するオリゴペプチドを酢酸溶液中でのヨウ素酸化により環化反応を行なうことにより、上記共有結合を形成することができる。
また、X6がLysの場合は、N末端のZ残基とX6で表されるLysとを共有結合により結合させる。この共有結合の形成は常法により行なうことができる。
本発明のオリゴペプチドは、医薬の有効成分として有用である。本明細書における医薬という用語は、ヒトを含む哺乳類の病気の予防又は治療のほか、医薬部外品や化粧品として分類される場合がある毛成長促進剤などを含めて最も広義に用いる。
本発明の医薬の投与対象、薬効、並びに本発明の医薬による治療の対象疾患の具体例を以下に列挙する。
(1)本発明のオリゴペプチドは、血管再生作用、再生促進作用、心臓血管再生作用、血管内皮細胞誘導作用などを示し、慢性閉塞性動脈硬化症、バージャー病、重症狭心症、動脈硬化症などの治療及び予防に有用である(Exp Cell Res 1996 Jan 10,222(1):189−98)
(2)本発明のオリゴペプチドは、膵臓上皮の形態形成に関与し、糖尿病などの治療および予防に有用である(J Cell Biol 2001,Mar 5;152(5):911−22)。
(3)本発明のオリゴペプチドは、肝臓の形成(再生)に関与し、肝代謝障害の治療および予防に有用である(Biochem Biophys Res Commun 1998 Sep 18;250(2):486−90)。
(4)本発明のオリゴペプチドは、骨や歯の形成に関与し、歯周病、骨折、骨腫瘍、骨欠損、骨粗しょう症の治療および予防に有用である(Arch Oral Biol 1995 Feb;40(2):161−4)。
(5)本発明のオリゴペプチドは、肺分岐の形態形成や肺線維症に関与し、肺疾患の治療および予防に有用である(Biochem Biophys Res Commun 1997 May 19;234(2):522−5;及びAm J Respir Cell Mol Biol 2000 Aug;23(2):168−74)。
(6)本発明のオリゴペプチドは、腸ひだの形成に関与し、腸疾患の治療および予防に有用である(Am J Physiol 1998 Jul;275(1 Pt1):G114−24)。
(7)本発明のオリゴペプチドは、筋肉の構造の維持に関与し、例えば、筋ジストロフィー症の治療および予防に有用である(Histochem J 1998 Dec;30(12):903−8)。
(8)本発明のオリゴペプチドは、胆嚢上皮の形成に関与し、胆嚢疾患の治療および予防に有用である(Cell Tissue Res 2000 May;300(2):331−44)
(9)本発明のオリゴペプチドは、乳上皮の形態形成に関与し、乳疾患の治療および予防に有用である(J Cell Biol 2001 May 14;153(4):785−94)
これらの中でも最も好ましくは、毛成長促進剤として使用することができる。
本明細書において用いられる「毛成長促進剤」という用語は、育毛促進、発毛促進、及び脱毛予防などを含めて最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
また、本発明の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を毛成長促進剤として使用する場合、ミノキシジルと組み合わせて使用することもできる。
本発明の医薬としては、上記のオリゴペプチド又は生理学的に許容されるその塩から選ばれる1又は2種以上の物質をそのまま用いてもよいが、通常は、製剤学的に許容しうる1又は2種以上の製剤用添加物を用いて上記物質の1又は2種以上を有効成分として含む医薬組成物を製造して投与することが好ましい。上記のオリゴペプチドの1種又は2種以上を有効成分として含む毛成長促進剤は、クリーム剤、噴霧剤、塗布用の溶液剤、又は貼付剤などとして外用剤として適用できるが、注射剤として患部に直接投与してもよく、毛成長促進剤としての使用目的に好適な形態の製剤として提供することが可能である。
例えば、シャンプーやリンスに有効成分である上記のオリゴペプチドを配合してもよく、上記のオリゴペプチドをリポソームなどに封入して製剤を調製してもよい。このような形態の組成物も本発明の医薬に包含される。皮膚のケラチン層を通して有効成分であるオリゴペプチドを効率的に経皮吸収させるために、適宜の界面活性剤や脂溶性物質などをクリーム剤などに配合することも好適である。
哺乳動物への局所投与のためには、本発明の組成物は、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、スティック剤、スプレー剤、軟膏、ペースト剤などを含む(但し、これらに限定されない)多様な剤形として提供することができる。これらの剤形は、溶液、乳濁液、ゲル、固体及びリポソームなどを含む多様な調合形態を含む。
溶液として調剤した本発明の組成物の局所投与に有用な組成としては、一般的には、薬学的に許容可能な水性又は有機溶媒が挙げられる。「薬学的に許容可能な有機溶媒」とは、本発明のオリゴペプチドを分散または溶解することができ、許容可能な安全性(例えば、刺激性及び感受性など)を有する溶媒のことを言う。好適な有機溶媒の具体例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(200〜600)、ポリプロピレングリコール(425〜2025)、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ブタンジオール、及びそれらの混合物などが挙げられる。
局所用組成物をエアロゾルとして調剤し、スプレーオンとして皮膚に投与する場合、推進剤を溶液組成物に添加する。推進剤の具体例としては、塩素化、フッ素化または塩フッ素化した低分子量の炭化水素が挙げられるが、これに限定されるものではない。
局所用組成物は、緩和剤を含む溶液として調剤してもよい。緩和剤とは、乾燥の防止または緩和、並びに皮膚の保護のために使用される物質を言う。多様な好適な緩和剤が公知であり、本発明において使用することができる。
本発明のオリゴペプチドを含む組成物から調剤することができる別の剤形としては、クリーム剤及びローション剤がある。
本発明のオリゴペプチドを含む組成物から調剤することができる別の剤形としては、軟膏がある。軟膏は、動物又は植物の油あるいは半固体炭化水素(油性)の基剤を含むことができる。軟膏はまた、水を吸収して乳濁物を形成する吸収軟膏基剤を含むことができる。軟膏は水溶性でもよい。
別の剤形は、乳濁剤である。乳化剤は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性の何れでもよく、乳化剤の例としては、例えば、米国特許第3,755,560号及び4,421,769号に記載されている。
ローション剤及びクリーム剤は、乳濁剤及び溶液として調剤することができる。水中油型及び油中水型のローション剤及びクリーム剤等の局所調製物のための単一乳濁剤は周知である。水中油中水型などの多相乳濁組成物も公知であり、例えば、米国特許第4,254,105号に記載されている。3重乳濁剤も本発明の局所投与のためには有用であり、シリコン中水中油型の液体乳濁物などが挙げられ、例えば、米国特許第4,960,764号に記載されている。
局所組成物に有用な他の乳濁剤は、マイクロエマルジョン系である。例えば、約9〜約15%のスクアレン、約25〜約40%のシリコン油、約8〜約20%の脂肪アルコール、約15〜約30%のポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸(商品名TWEENSで市販)または他の非イオン性剤、及び約7〜約20%の水を含む系が挙げられる。
本発明のオリゴペプチドを含む組成物にはリポソーム製剤も有用である。リポソーム組成物は、本発明のオリゴペプチドを含む組成物を、ジパルミトイルホスファチジルコリン等のリン脂質、コレステロール及び水と定法に従って混合することによって調製できる。リポソーム形成用の好適な組成物の表皮脂質をリン脂質の代わりに使用してもよい。リポソーム調製物を上記局所調剤の一つ(例えば、ゲル剤又は水中油型乳濁剤)に取り込んで、リポソーム製剤とすることができる。局所投与されるイポソームの他の組成及び薬学的用途については、例えば、Mezei(1985)Topics in Pharmaceutical Sciences,Bremer et al.eds.,Elsevier Science,New York,N.Y.,pp345−358に記載されている。
上記の毛成長促進剤の投与量は使用目的、製剤形態、有効成分の種類などに応じて適宜選択可能であるが、例えば、本明細書の実施例に具体的に示した投与量を参考にして選択することが可能である。例えば、例えば、成人一日当たり有効成分の投与量としては、1μg/kg/日〜10mg/kg/日、好ましくは10μg/kg/日〜1mg/kg/日程度の範囲内である。
なお、本発明の実施に当っては、分子生物学(遺伝子組み換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及び免疫学の慣用技術を使用することができ、これらは当業者の知識の範囲内である。このような技術は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(Sambrook et al.,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D,M.Wei & C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalial Cells(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987 and annual updates);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991 and annual updates)等に記載されている。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されることはない。
実施例1:修飾オリゴペプチドの作製
下記のアミノ酸配列で表されるオリゴペプチドをFmocを用いた固相法により合成した。

次に、合成したオリゴペプチドと以下の修飾試薬とを、同試薬の使用説明書に従って反応させた。オリゴペプチドと修飾試薬との比率は、モル比で正確に1:1で反応を行った。
EMCA(N−ε−マレイミドカプロン酸):ピアス社製
KMUA(N−κ−マレイミドウンデカン酸):ピアス社製
BMPA(N−β−マレイミドプロピオン酸):ピアス社製
フェニルマレイミド:シグマ社製
合成したオリゴペプチド、並びに修飾試薬との反応産物を、液体クロマトグラフィーを用いて解析した結果を図1から図3に示す。液体クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。
注入サンプル:20μl
溶離条件TFA、アセトニトリル20→75%
210nmの吸収でペプチドの溶出位置を見る。
図1から3では、オリゴペプチドと修飾試薬(EMCA)とをモル比で正確に1:1の比率で反応させ、その前後の逆相液体クロマトグラムを示す。
図1の左図は配列番号1の合成オリゴペプチドの結果を示し、図1の右図は、そのシステイン残基をEMCAで修飾したオリゴペプチドの結果を示す。
図2の左図は配列番号2の合成オリゴペプチドの結果を示し、図2の右図は、そのシステイン残基をEMCAで修飾したオリゴペプチドの結果を示す。
図3の左図は配列番号3の合成オリゴペプチドの結果を示し、図3の右図は、そのシステイン残基をEMCAで修飾したオリゴペプチドの結果を示す。
実施例2:新生毛包に特異的なモノクローナル抗体の作製
B57BLマウスの成長期(48から50日目)の皮膚から毛を切り取り、8M尿素、2%SDS、100mMのDTTを含むPBS中で37℃で一晩インキュベートし、タンパク質を抽出した。また、B57BLマウスのヒゲの毛包(毛球部に色素がついているもの;成長期)を実体顕微鏡で採取し、PBS中にホモジナイズした。上記2種類の試料(タンパク質量として0.5mg)を混合し、等量のコンプリートアジュバンドと混合してミセルを作製した。
上記で得たミセル(0.2mg)をラット(Wister)の皮下(3箇所)に分けて投与して免疫した。初回免疫の1ヵ月後に上記と同様に追加免疫を行なった。さらに2週間後に上記と同様に2回目の追加免疫を行なった。2回目の追加免疫の3日後に、免疫ラットから脾臓を取り出し、メッシュにて血球成分を回収した。この血球成分の中には抗体産生細胞が含まれている。上記で回収した血球成分(全量)とマウスミエローマP3U1とをポリエチレングリコール1500を用いて混合し、ダルベッコ/ハムF12混合培地中に懸濁し、96ウエルプレートに各ウエル100μlずつ播いた。翌日、等量(100μl)のHAT培地(シグマ社)を各ウエルに添加した。2日後に各ウエルから150μlずつを吸引廃棄し、150μlの新培地を各ウエルに添加した。96ウエルプレートを37℃のCOインキュベーター内に静置した。
成長期のB57BLマウスのヒゲの毛包を8M尿素中に超音波粉砕機を用いて溶解した。この溶液にニトロセルロースメンブレンを5分間浸し、PBSで十分に洗浄したものをBioradドットブロッターに装着したものを用いて、上記の96ウエルプレートの各ウエルから回収したハイブリドーマ上清を一次スクリーニングした。先ず、上記で作製したニトロセルロースメンブレンを5%スキムミルクを溶解したトリスバッファー(TBST)でブロッキングした後、当該ニトロセルロースメンブレンを底とする各ウエルにハイブリドーマ上清100μlを添加した。1時間インキュベートした後、トリスバッファーで洗浄し、二次抗体であるホースラディッシュパーオキシダーゼ標識抗ラットIgG(1μg/ml TBST)を添加した。発色基質であるECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を添加して、発色の有無により成長期のヒゲの毛包と反応する抗体(全部で50種類)を選出した(一次スクリーニング)。
上記の一次スクリーニングで選出した抗体(50種類)について、成長期ヒゲ毛包の凍結切片(10μm)を用いて特異的に反応にするものを選出した(二次スクリーニング)。具体的には、スライドガラス上に成長期ヒゲ毛包の凍結切片を置き、一次スクリーニングで選出されたハイブリドーマ上清を添加し、二次抗体で発色させた。具体的には、クライオスダト(ブライト社)で作成した成長期ヒゲ毛包の凍結切片を−20℃メタノールで処理し、TBSTで1時間ブロッキングを行った後、ハイブリドーマ上清を1時間反応させた。トリスバッファーで洗浄後、FITC標識抗ラットIgG(TBSTに100μg/mlで溶解したもの)を反応させた。トリスバッファーで洗浄後、カバーガラスをかけて、蛍光顕微鏡にて観察を行った。
二次スクリーニングの結果、全部で8種類の抗体を選出した。これらの抗体は表皮とは反応せず、毛包に特異的に反応するものであった。これら8種類の抗体を限界希釈法でクローニングした。
これら8種類の抗体について、成長期ヒゲ毛包又は休止期ヒゲ毛包をサンプルとしたウエスタンブロットで反応性を調べ、さらに毛包が形成されている14日齢マウス胎児皮膚の切片試料を用いて反応性を調べた。その結果、成長期ヒゲ毛包及び形成途中毛包(新生毛包)と特異的に反応し、休止期ヒゲ毛包とは反応しないモノクローナル抗体としてmAb27を取得した。モノクローナル抗体mAb27を産生するハイブリドーマは、受託番号FERM P−18578として平成13年11月2日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1中央第6)に寄託されており、平成14年7月22日付けで受託番号FERM BP−8121として国際寄託に移管された。
実施例3:各種オリゴペプチドの毛成長促進作用の評価
実施例1で作成した各種のオリゴペプチドを用いて毛成長促進作用を評価した。使用したオリゴペプチドを以下に示す。

上記式中、Xaaは、EMCA(N−ε−マレイミドカプロン酸)、KMUA(N−κ−マレイミドウンデカン酸)、BMPA(N−β−マレイミドプロピオン酸)またはフェニルマレイミドに由来する修飾基が結合しているシステイン(Cys)残基を示す。

(上記式中、Xaaは、EMCA(N−ε−マレイミドカプロン酸)に由来する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示す。)
12日目のICRマウス胎児の上アゴ皮膚組織を実体顕微鏡で採取し、左と右に分けて5頭分を回収した。回収した5頭分の皮膚を左(コントロール用)と右(被験オリゴペプチド用)を別々に5個ずつ一枚のヌクレポアメンブレン(孔径8μm、直径13mm)の上に載せ、実体顕微鏡で観察して外側が上になるようにした。1%BSAを含むダルベッコMEM/ハムF12培地500μlを24ウエルディッシュの2ウエルに添加し、片方には被験オリゴペプチド溶液(溶媒はPBS)を最終濃度20μMとなるように添加し、他方には溶媒(PBS)を対照として同量入れた。被験オリゴペプチドとしては、上記(1)で作製した未修飾オリゴペプチド及び修飾オリゴペプチドを使用した。
皮膚組織を載せたメンブレン1枚ずつを上記のウエル中の溶液に浮かべ、37℃で6日間培養した。メンブレンから5個の組織片をSDSサンプルバッファ(SDS 0.02g/ml、グリセロール 0.2g/ml、pH6.8)100μl中に回収し、超音波粉砕器により溶解した。対照も同様に処理した。上記処理で得た溶液をSDS−PAGE(アクリルアミド4〜20%)にて電気泳動後(35mA、1.5時間)、PVDF膜にトランスファーし、5%スキムミルクを含むトリス緩衝液(TBST)中で1時間インキュベートした。実施例2で取得したmAb27(TBST中10μg/ml)と1時間反応後、TBSにて十分に洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG(アマシャム社)をTBSTで1/1000に希釈したものを二次抗体として反応させ、十分に洗浄後、ECLキット(アマシャム社)を用いてmAb27の反応の強さを調べた。
得られた結果を図4及び図5に示す。図4および図5におけるAHFは、モノクローナル抗体mAb27が認識する抗原(具体的には、配列番号11に示す1439アミノ酸残基からなるタンパク質)を示す。
図4の結果から分かるように、左から1番目、2番目及び3番目のレーンのバンドはそれぞれ左から4番目及び5番目のレーンのバンドよりも濃かった。これらの結果は、オリゴペプチド中のシステイン残基にカルボニル基を含有する修飾基(EMCA、KMUA、またはBMPA)が結合しているオリゴペプチドは強い発毛活性を有すること、特に、対応する未修飾のオリゴペプチドやカルボニル基を含有しない修飾基(フェニルマレイミド)が結合しているオリゴペプチドよりも強い発毛活性を有することを実証するものである。上記の中でもEMCAの活性が特に強かった。
また、図5の結果は、

(上記式中、Xaaは、EMCA(N−ε−マレイミドカプロン酸)に由来する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示す。)
で表されるオリゴペプチドが強い発毛活性を有することを実証している。上記の中でも配列番号8と9で表されるオリゴペプチドが特に強い発毛活性を示した。
実施例4:環状オリゴペプチドの作製
下記のアミノ酸配列で表される環状オリゴペプチドを化学合成した。また、化合物11において−CO(CHNH−を−CONH−に置換して化合物も合成した。

合成は以下の手順で行なった。
Applied Biosystem社のペプチド自動合成機(430AモデルFoster city、CA、USA)を使用し、プログラムに従ってC端より逐次BOC法によりペプチド鎖を延長し、目的の保護ペプチド樹脂の合成を行なった。出発アミノ酸樹脂担体は、Boc−Ala−PAM(0.25mmol)を使用し、Cys(MeBzl)、Ser(Bzl)、Glu(cHx)など通常のアミノ酸誘導体を使用した。
樹脂上へのペプチドの構築が終了した後、保護ペプチド樹脂を乾燥した。得られた保護ペプチドの脱保護基とペプチドの樹脂担体からの切り離しは、無水フッ化水素処理によって行なった。チオール基遊離の粗ペプチドは酢酸水溶液によって抽出した後、凍結乾燥粉末として得た。続いて、チオール基遊離の粗ペプチドを酢酸溶液中でのヨウ素酸化により環化反応を行い、上記に示した環状オリゴペプチドを合成した。得られた粗ペプチドを逆相高速クロマトグラフィー(島津製作所、分取装置 モデルLC8A)によりアセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸水の系を用いて分取精製を行なって目的とする環状オリゴペプチドを得た。得られた精製物を、分析用HPLC、質量分析ならびにアミノ酸分析により検定した。上記で合成した化合物の同定データを以下に示し、またHPLCの結果を図6〜図9に示す。
化合物(11)
外観:白色凍結乾燥体
アミノ酸分析値:
加水分解条件:6N HCl、110℃、22時間
Ser(2)1.78、Glu(4)4.00、Ala(1)0.96
Ile(1)0.98、NH(2)2.05、Cys(2)1.86
ε−Acp(1)1.05
純度(HPLC):98.4%
ESI−MS:分子量1207.7(理論値1208.3)
化合物(12)
外観:白色凍結乾燥体
アミノ酸分析値:
加水分解条件:6N HCl、110℃、22時間
Ser(2)1.80、Glu(4)4.00、Ala(1)1.00
Ile(1)0.99、NH(2)2.08、Cys(2)1.91
8−Aoa(1)N.D.(通常分析条件下、溶出されないため、定量できない)
純度(HPLC):97.8%
ESI−MS:分子量1235.8(理論値1236.4)
化合物(13)
外観:白色凍結乾燥体
アミノ酸分析値:
加水分解条件:6N HCl、110℃、22時間
Ser(2)1.79、Glu(2)2.01、Ala(1)1.00
Ile(1)0.97、NH(1)1.20、Cys(2)1.94
ε−Acp(1)1.01
純度(HPLC):99.0%
ESI−MS:分子量950.5(理論値951.1)
化合物(14)
外観:白色凍結乾燥体
アミノ酸分析値:
加水分解条件:6N HCl、110℃、22時間
Ser(2)1.79、Glu(2)2.00、Ile(1)0.97
NH(1)1.18、Cys(2)1.92、ε−Acp(1)1.01
純度(HPLC):97.9%
ESI−MS:分子量879.6(理論値880.0)
実施例5:各種オリゴペプチドの毛成長促進作用の評価
実施例4で合成した環状オリゴペプチドを30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸で処理し、乾燥した。この環状オリゴペプチドを0.00002重量%となるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、この溶液に等容量の100%エタノールを加えて0.00001重量%の50%エタノール・PBS溶液を調製した。コントロール溶液としては、PBSを用いた。
C3HやC57BL/6マウスは生後45日から95日前後まで約50日間休止期が続くことが知られている。また、休止期ではピンク、成長期ではグレー又はクロと皮膚の色が変化するため、毛周期の判定が容易である。このマウスを使用し、本発明の環状オリゴペプチドの投与により、成長期への移行が促進されるか否か評価した。C57BL/6マウスの7週齢(48〜50日齢、雌)を購入し、背中(約3×2.5cm)を動物用電気バリカンで傷が付かないように注意深く刈毛し、皮膚の色から毛周期が休止期であることを確認した。上記で調製した環状オリゴペプチド溶液(0.00001重量%)を0.2mlずつ毎日1回、週5日間、実験開始後38日まで各群10匹ずつ塗布を行った。塗布は針の付いていない注射器を用いて行った。
評価は週2回マウスを観察し、毛を刈った面積に対する再生した面積の割合に応じてスコアを6段階に設定し、複数人(2人)が肉眼判定することにより行った。また、写真撮影も行った。発毛スコアは以下の要領で計算した。毛を刈った部分のうち、皮膚の色がグレー又はクロになった部分の割合により下記のようにスコアを付けた。0〜20%:1、20〜40%:2、40〜60%:3、60〜80%:4、80〜100%:5。各群における上記スコアの合計を発毛スコアとした。判定者1人あたり発毛スコアの各群の最大値は50であり、判定者を2人としたので発毛スコアの最大値は100である。
環状オリゴペプチドを塗布した群では、コントロール群に比べて毛の再生が促進されていた。結果を図10及び図11に示す。これらの結果から、本発明の環状オリゴペプチドは毛成長促進作用を有することが実証された。
実施例6:本発明の環状オリゴペプチドとミノキシジルとの併用
製剤1:実施例4で製造した式(13)の環状オリゴペプチド(0.00001%)とミノキシジル(1%)との混合液
製剤2:ミノキシジル(1%)液(市販品であるリアップ(大正製薬株式会社)をそのまま使用)
製剤1と製剤2をそれぞれ実施例5と同様にして、毛包が休止期にあるC57BL/6マウスの背中に投与して毛包の成長期への移行が促進されるかどうかを評価した。結果を図12に示す。ミノキシジルのみを投与した場合と比較して、本発明の環状ペプチドとミノキシジルとを併用して投与した場合には、毛包の成長期への移行が飛躍的に促進された。両者の間で、ウィルコキソンの検定で棄却率5%未満のp値で有意差があった。
実施例7:細胞障害性の評価
実施例4で製造した式(13)の環状オリゴペプチドの0.1重量%液、0.01重量%液、0.001重量%液、0.0001重量%液、0.00001重量%液、及び0.000001重量%液のそれぞれについて細胞障害性試験を行った。被験細胞としては皮膚由来細胞HSC−5(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の下部組織であるヒューマンサイエンス研究資源バンク(http://www.jhsf.or.jp/index_b.html)から入手)を24穴培養プレートに100,000細胞/ウエルで播種した。培地としては、10%FCSを含むISCOV変法DMEM培地を使用し、培養は2日間行った。培養終了後、生細胞の割合をカウントした。その結果、何れの場合も細胞は生存しており、細胞障害性は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
本発明のオリゴペプチドは毛成長促進作用を有しており、毛成長促進剤などの医薬の有効成分として有用である。本発明では、修飾基を特定のものとすることにより、国際公開WO01/094382号に記載のペプチドよりも毛成長促進作用が向上している。さらに、X7及びX9をAsp以外の別のアミノ酸に置換することで収率を向上させることができる。また、本発明の環状オリゴペプチドは、分子内に環構造を有し、有機溶媒に露出しても安定であるため、逆相クロマトグラフィーなどの厳しい条件下でも安定であり、特に精製効率が高いという利点を有している。
【配列表】












【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)から(IV)の何れかのアミノ酸配列を含む5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7 (I)
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7 (II)
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7 (III)
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7 (IV)
(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、CysまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、CysまたはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、CysまたはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示し、そして
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失している。)
【請求項2】
X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がカルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示し、そしてX7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示す、請求項1に記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項3】
式(I)から(IV)の何れかのアミノ酸配列から成る5から7アミノ酸残基から成るオリゴペプチドである、請求項1又は2に記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項4】
下記の式(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列を含む6から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドであって、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9 (XI)
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7−X8−X9 (XII)
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7−X8−X9 (XIII)
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7−X8−X9 (XIV)
(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、CysまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、CysまたはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、CysまたはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、カルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、またはカルボニル基を含有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示す。)
【請求項5】
X7及びX9の少なくとも片方がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である、請求項4に記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項6】
X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がカルボニル基を含有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示し、X7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示し、X8がGlnのアミノ酸残基を示し、そしてX9がGluのアミノ酸残基を示す、請求項4又は5に記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項7】
式(XI)から(XIV)の何れかのアミノ酸配列から成る7から9アミノ酸残基から成るオリゴペプチドである、請求項4から6の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項8】
X6が、末端にカルボキシル基を有する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基、または末端にカルボキシル基を有する修飾基が結合しているLysのアミノ酸残基を示す、請求項1から7の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項9】
修飾基内においてカルボニル基が炭素数2から10の炭化水素鎖に結合している、請求項1から8の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項10】
修飾基内においてカルボニル基が炭素数3から7の炭化水素鎖に結合している、請求項1から9の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項11】
修飾基が、N−β−マレイミドプロピオン酸に由来する修飾基、N−ε−マレイミドカプロン酸に由来する修飾基、またはN−κ−マレイミドウンデカン酸に由来する修飾基である、請求項1から10の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
【請求項12】
以下の何れかのオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチド。
Ser−Ile−Glu−Gln−Ser−Xaa−Ala−Gln−Glu
Ser−Ile−Glu−Gln−Ser−Xaa−Glu−Gln−Glu
Ser−Ile−Glu−Gln−Ser−Xaa−Glu−Gln−Glu−Ala
(式中、Xaaは、N−ε−マレイミドカプロン酸に由来する修飾基が結合しているCysのアミノ酸残基を示す。)
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む医薬。
【請求項14】
請求項1から12の何れかに記載のオリゴペプチドまたはその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む毛成長促進剤。
【請求項15】
下記の式(1)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、またはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Cysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
Yは、欠失しているか、1〜90個のアミノ酸配列を示し、
Lは連結基を示す。)
【請求項16】
X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、そしてX7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示す、請求項15に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項17】
Yが欠失している、請求項15又は16に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項18】
Yが、1〜12個のアミノ酸配列を示す、請求項15又は16に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項19】
下記の式(2)から成るアミノ酸配列を有し、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Lys、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His、またはLysのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Cysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示し、
Lは連結基を示す。)
【請求項20】
X7及びX9の少なくとも片方がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である、請求項19に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項21】
X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、X7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示し、X8がGlnのアミノ酸残基を示し、そしてX9がGluのアミノ酸残基を示す、請求項19又は20に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項22】
下記の式(3)のアミノ酸配列から成り、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、またはHisのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Lysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
Yは、欠失しているか、1〜90個のアミノ酸配列を示し、
Lは連結基を示し、
Zは、Lysと反応して結合できる基を示す。)
【請求項23】
X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、そしてX7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示す、請求項22に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項24】
Yが欠失している、請求項22又は23に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項25】
Yが、1〜12個のアミノ酸配列を示す、請求項22又は23に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項26】
下記の式(4)から成るアミノ酸配列を有し、毛成長促進作用を有する環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。

(式中、X1は、Ser、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X2は、Ile、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、またはMetのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失しており、
X3は、Glu、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し、
X4は、Gln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、またはHisのアミノ酸残基を示し、
X5は、Ser、Trp、Phe、Thr、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、IleまたはMetのアミノ酸残基を示し、
X6は、Lysのアミノ酸残基を示し、
X7は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示すか、あるいは欠失し、
X8は、Glnのアミノ酸残基を示し、そして
X9は、Asp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、ArgまたはLeuのアミノ酸残基を示し、
Lは連結基を示し、
Zは、Lysと反応して結合できる基を示す。)
【請求項27】
X7及びX9の少なくとも片方がAspのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基である、請求項26に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項28】
X1がSerアミノ酸残基を示し、X2がIleのアミノ酸残基を示し、X3がGluのアミノ酸残基を示し、X4がGlnのアミノ酸残基を示し、X5がSerのアミノ酸残基を示し、X6がCysのアミノ酸残基を示し、X7がGluまたはAlaのアミノ酸残基を示し、X8がGlnのアミノ酸残基を示し、そしてX9がGluのアミノ酸残基を示す、請求項26又は27に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項29】
連結基Lの炭素数が6から8である、請求項15から28の何れかに記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項30】
連結基L内においてカルボニル基が炭素数5から7の炭化水素鎖に結合している、請求項15から29の何れかに記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項31】
連結基Lが、−CO−(CH−NH−(式中、nは5〜7の整数を示す)である、請求項15から30の何れかに記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項32】
連結基L中の−COがX1と結合し、連結基L中のNH−が、X6に結合しているCys残基又はZで表される基と結合している、請求項31に記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。
【請求項33】
以下の何れかの環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチド。

【請求項34】
請求項15から33の何れかに記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む医薬。
【請求項35】
請求項15から33の何れかに記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む毛成長促進剤。
【請求項36】
請求項15から33の何れかに記載の環状オリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドあるいは生理学的に許容されるそれらの塩、並びにミノキシジルを有効成分として含む毛成長促進剤。

【国際公開番号】WO2004/101610
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506273(P2005−506273)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006909
【国際出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】