説明

オリゴマーのシロキサノールで官能化された金属酸化物の組成物およびその使用

本発明は、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物をベースとする、本質的に溶剤不含の水性組成物の製造法ならびに相応する組成物、ならびに防食処理および粘着促進のための該組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴマーのシロキサノールで官能化された金属酸化物をベースとする、本質的に溶剤不含の水性組成物の製造法ならびに相応する組成物、ならびに防食処理および粘着促進のための該組成物の使用に関する。
【0002】
グリシドオキシプロピルアルコキシシランと水性シリカゾルとの反応をベースとする分散液は、欧州特許第1773958号明細書A1および米国特許第2008/0058489号明細書の記載から公知である。この系は、鋳型を製造する際の無機結合剤として使用される。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19814605号明細書A1には、グリシドオキシシランおよび例えばリチウムポリシリケートを含有する薬剤が開示されている。欧州特許出願公開第1288245号明細書A2には、水性シリカゾルとアルキルトリアルコキシシランおよびアルコキシシランとの反応からの組成物が開示されている。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19814605号明細書A1に記載の組成物の欠点は、使用されるシリカゾル中で粒子の表面上でのシランの化学結合、すなわち共有結合の形成を欠くことにある。持続的で強い応力下で安定した、シランでの粒子の架橋は、ファンデルワールス力および/または水素架橋結合をベースとする、形成される付着力だけでは生じない。従って、前記の組成物から形成されるシールは、持続的な防食処理を提供しない。無機粒子上へのシランの化学結合は、もたらされた下地、例えば金属基体上での金属酸化物粒子の化学的固定を改善する。
【0004】
記載された刊行物には、珪酸ナトリウムから取得される、既に存在するコロイド状二酸化ケイ素を含有するシリカゾルが開示されている。水性分散液は、酸性または塩基性のpH値の際に安定性であり、20〜100nmの粒度を有する。シリカ粒子は、製造に依存して円形の粒子であり、一連の汚染物、例えば異質金属および塩化物、硫酸塩または別の無機成分を有する。この異質金属は、製造に依存してシリカゾルを汚染し、のちの使用において問題をまねきうる。
【0005】
被覆系中での熱分解法珪酸の使用は、熱分解法珪酸の明らかに僅かな、製造に依存した汚染のために好ましい。シランまたはシロキサンにより変性された、熱分解法珪酸の純粋に水性の金属用被覆剤は、公知技術水準から公知ではない。これは、熱分解法珪酸の水性分散液が高いpH値に調節されるかまたはアルミニウム化合物で安定化されることにより、この水性分散液の安定化を成功させるのが困難であることに帰因しうる。また、高いpH値またはアルミニウム化合物の添加は、数多くの用途において望ましいものではない。
【0006】
オリゴマーのシロキサンで官能化された熱分解法金属酸化物をベースとする、安定した純粋に水性の組成物を提供するという課題が課された。この組成物は、殊に前記の公知の系を使用する際、および/または前記の公知の系として硬化した後に改善された使用特性を有するべきである。従って、1つの特殊な焦点は、化学的に官能化された熱分解法金属酸化物、例えば熱分解法珪酸または金属酸化物で変性された熱分解法珪酸を有する前記組成物を製造するための方法を提供することであった。化学的な官能化とは、オリゴマーのシロキサノールと熱分解法金属酸化物との共有結合を形成することを意味する。
【0007】
この課題は、従属的または副次的な請求項中の記載に相応して解決される。好ましい実施態様は、従属請求項中に記載され、および明細書中には詳細に記載されている。
【0008】
意外なことに、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物を含有する、純粋に水性の組成物、すなわち有機溶剤または有機ポリマー不含の水性の組成物は、本発明による方法により得られ、殊に安定性であることが見い出された。すなわち、本発明による組成物は、前記条件下で少なくとも1ヶ月間に亘り、有利に少なくとも3ヶ月間に亘り、特に有利に12ヶ月間に亘り、殊に有利に24ヶ月間に亘り室温で安定性である。
【0009】
幅広いpH範囲に亘り、殊に9未満のpH値で液状であるか、または攪拌後に再び液状である組成物は、安定性であると評価される。総じて、本発明による組成物は、1〜7の低いpH値で驚異的に安定性である。好ましくは、前記組成物は、2〜6、特に有利に3〜5のpH値を有する。しかし、同様に、高いpH値、例えば特にpH7〜12、特に有利にpH8〜11で安定性の組成物が提供されてもよい。
【0010】
意外なことに、この課題は、純粋に水性の相中で有機官能性の、本質的に完全に加水分解されたシロキサノール(i)が少なくとも1つの熱分解法金属酸化物(ii)と強力に混合されることにより、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物を含有する組成物を製造するための方法で解決されることができた。
【0011】
従って、本発明の対象は、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物を含有する組成物を製造するための方法、およびこの方法により、
(i)本質的に有機溶剤不含、殊に本質的にアルコール不含、有機炭化水素をベースとするポリマー不含であり、およびシロキサノールのそれぞれの珪素原子が少なくとも1つの官能性基であり、および
官能性基が同一かまたは異なり、殊に構造要素中の少なくとも1個の有機官能性基Rであり、かつ
a)50〜100%、殊に80〜100%、特に有利に90〜100%が有機官能性基、1〜50個のC原子を有するアミノアルキル基、N−アルキルアミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基、トリス−N−アミノアルキルシリル基、メルカプトアルキル基、メタクリル基、メタクリルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基、グリシドオキシアルキル基、加水分解されたグリシドオキシアルキル基、ポリスルファン基、ジスルファン基、チオエーテル基、ポリエーテル基、ビニル基、アルキル基、殊に1〜8個のC原子を有するアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン化アルキル基、ウレイド基、スルファニルアルキル基、シアネート基および/またはイソシアネート基、または場合により第四級アミノアルキル−から選択され、この場合有機官能性基は、直鎖状、分枝鎖状および/または環式であり、および
b)0〜50%、殊に0〜20%、特に有利に0〜10%がヒドロキシ基であり、
およびオリゴマーのシロキサノール中の珪素原子の残りの遊離原子価がヒドロキシ基によって飽和されており、殊にa)およびb)による基は、総和で100%になる、少なくとも1つの水性の、本質的に完全に加水分解された、オリゴマーの、および有機官能性のシロキサノールまたは本質的に完全に加水分解された、オリゴマーの、および有機官能性のシロキサノールの混合物が、
(ii)珪酸、金属酸化物で変性された珪酸および元素の周期律表の第2主族ないし第6主族および/または第1副族ないし第8副族の少なくとも1つの金属または半金属を含有する金属酸化物、但し、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、鉄、セリウム、インジウム、サマリウム、錫、亜鉛、アンチモン、砒素、タンタル、ロジウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウムを含有する金属酸化物が特に好ましいものとし、および/または相応する混合酸化物またはそれによって変性された金属酸化物の群から選択された少なくとも1つの熱分解法金属酸化物と、
場合により加水分解触媒および/または縮合触媒、例えば酸、塩基または金属塩、殊に金属フッ化物または有機金属化合物、例えば金属アルコキシドの存在下で、強力に混合され、殊に分散および/または反応され、すなわち純粋に水性のオリゴマーのシロキサノールは、共有結合の形成下に熱分解法金属酸化物と反応することにより得られる組成物である。
【0012】
その上、使用される、殊に純粋に水性の、オリゴマーのシロキサノールは、金属酸エステルならびに加水分解された金属酸エステル、ならびに金属塩を含有していてよい。このような金属酸エステルのための例は、アルキルチタネート、例えばブチルチタネート、プロピルチタネート、イソプロピルチタネートまたは相応するジルコネートである。
【0013】
特に好ましくは、本方法で使用される、殊に本質的に純粋に水性の、オリゴマーのシロキサノールは、平均で少なくとも4のオリゴマー化度を有し、特に有利には、このシロキサノールは、平均で4〜100000のオリゴマー化度、特に好ましくは、4〜50000のオリゴマー化度を有する。使用されるシロキサノールは、本発明によれば、加水分解縮合体および/またはホモ縮合体、共縮合体、ブロック共縮合体、または前記の有機官能性基で置換されたアルコキシシランおよび/またはテトラアルコキシシランの混合物をベースとする。無視してもよい範囲内でのみ、オリゴマーのシロキサノール中の珪素原子の残りの遊離原子価は、ヒドロキシ基によって、アルコキシ基を有する極めて僅かな割合が飽和されてよい。
【0014】
熱分解法により製造された珪酸または熱分解法により製造された金属酸化物の利用は、オリゴマーの、ヒドロキシ官能化されたシランと、共有結合の形成下に反応する状態である本発明による金属酸化物および/または珪酸を含み、殊にこの金属酸化物は、ヒドロキシ基を利用する。好ましい金属酸化物は、金属の珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、錫、セリウム、インジウムの酸化物、ならびに記載された金属の混合酸化物から選択されている。更に、熱分解法珪酸または二酸化ケイ素との混合酸化物ならびに既に製造プロセス中で金属酸化物でドープされている熱分解法珪酸が好ましい(例えば、欧州特許第1216956号明細書または欧州特許第850876号明細書の記載参照)。
【0015】
特に好ましい熱分解法金属酸化物は、SiO2、Al23、TiO2、HfO2、Y23、ZrO2、Fe23、Nb25、V25、WO3、SnO2、GeO2、B23、In23、ZnO、CaO、酸化マンガン、酸化鉛、MgO,BaO、SrOおよび/または相応する金属酸化物またはそれによって変性された金属酸化物である。更に、例えば次の刊行物から公知である熱分解法金属酸化物は、本発明による方法で使用されてもよい。次の刊行物の開示内容に関連して、当該刊行物は、全て参照のために本明細書に援用される:アルミニウムおよび珪素を含有する混合酸化物が開示されている米国特許第7241336号明細書、SiO2で包囲された酸化物が開示されている欧州特許第1284277号明細書、欧州特許第1216956号明細書、欧州特許第1236773号明細書、米国特許第6627173号明細書、欧州特許第1083146号明細書、欧州特許第1048617号明細書、欧州特許第0995718号明細書ならびに欧州特許第0850876号明細書および欧州特許第0585544号明細書。
【0016】
意外なことに、熱分解法珪酸の使用は、形態学的理由から水性シリカゾルと比較して明らかな利点を有することが判明した。そのための理由は、熱分解法珪酸または熱分解法金属酸化物の形態にあり、それというのも、この形態は、殊に一次粒子のよりいっそう大きな粒子またはよりいっそう大きな複合体への凝集または一体化によって、火炎発生(Flammgenese)の際に極めて小さな、一般に2〜100nm、しかも5〜10nmの大きさの一次粒子を形成する、フラクタルな構造またはフラクタルな形態を有するからである。
【0017】
本発明による組成物および/または官能化された熱分解法金属酸化物から得られる被覆は、円形の粒子と比較して前記の不規則な粒子幾何学的形状/形態によってシリカゾル中に、被覆上の直ぐ次の層が公知の被覆上の場合よりも明らかに改善された付着力を有するという利点を有する。この改善された付着力によって、透過傾向(Unterwanderungsneigung)は、減少され、ひいては高められた防食処理が達成される。その上、官能化された熱分解法金属酸化物、殊に熱分解法珪酸または金属酸化物で変性された珪酸は、0.5質量%未満ないしppb範囲の範囲内、例えば1ppb、特に0.5質量%未満、有利に0.3質量%未満、特に有利に0.1質量%を含有するにすぎない攻撃的塩化物を有し、したがってこの観点からしても熱分解法金属酸化物の使用は、改善された防食処理被覆を生じる。
【0018】
有利にこの方法で使用される熱分解法金属酸化物、殊に珪酸または金属酸化物で変性された珪酸は、1μm未満、殊に約50〜400nm、特に有利に90〜200nmの平均粒径を有する一次粒子を有する(中央値、静的光散乱法による測定)。殊に好ましくは、本発明による方法において、熱分解法金属酸化物の一次粒子が2〜100nm、殊に10〜70nm、有利に10〜60nmの平均粒度(d50)を有するような特に小さな一次粒子は、殊に凝集塊として使用されてよい。
【0019】
本発明による方法は、純粋に水性で、殊に本質的に有機溶剤、例えばアルコール、樹脂または樹脂のプレポリマー、例えば合成樹脂またはプレポリマー、例えばアクリレート、メタクリレート、エポキシド、ポリウレタン、不飽和ポリエステルの存在なしに実施されてよい。アルコールまたは有機溶剤として、典型的なアルコール、殊に加水分解アルコール、グリコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、例えば殊にエタノール、メタノール、プロパノール(n−、イソ−)、ブタノール(異性体ブタノール)、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシプロパノール、アミルアルコール、ポリエーテル、ポリオール、アクリレート、樹脂、PUアクリレート、スチレンアクリレート、ポリビニルアルコール、水性エポキシド樹脂分散液ならびに全ての他の、当業者に公知の溶剤がこれに当てはまる。更に、この方法で使用されるオリゴマーのシロキサノール、またはシロキサノールが誘導されるようなオリゴマーのシランは、本質的に完全に加水分解されており、したがって、これらの反応の場合も本質的に加水分解アルコールは、もはや遊離され得ない。
【0020】
本質的に加水分解可能なアルコキシ基がもはや分離し得ない場合、すなわち架橋時であっても本質的にアルコールがもはや遊離しない場合には、オリゴマーのシロキサノールまたはオリゴマーのシランは、本質的に完全に加水分解したものと見なされる。揮発性アルコールを形成する、加水分解可能なメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基および/またはブトキシ基が不含であることは、特に好ましい。好ましくは、殊に組成物の製造に利用される、オリゴマーのシロキサノール中のアルコキシ基の含量は、オリゴマーのシロキサノールの乾燥質量に対して10質量%未満ないし0質量%、殊に5質量%未満ないし0質量%、有利に3質量%未満ないし0質量%、特に有利に2質量%未満ないし0質量%、さらに有利に1質量%以上ないし0質量%、好ましくは0.5〜0質量%、または0.1〜0質量%である。そのアルコールの含量、殊に溶剤の含量が水性のオリゴマーのシロキサノールの全組成物に対して5質量%未満ないし0.0001質量%、殊に検出限界までである水性のオリゴマーのシロキサノールは、本質的に有機アルコール不含、殊に溶剤不含と見なされる。有利に全組成物の含量は、3質量%未満ないし0.0001質量%、好ましくは検出限界まで、特に有利に1質量%未満、特に好ましくは0.5質量%未満であり、この場合には、0.1質量%が特に有利に使用される。本方法で使用される有機官能性のオリゴマーのシロキサノールは、既に一面でシリカゾルで変性されていてもよい。また、互いに無関係に同一でも異なっていてもよい有機官能性基Rは、好ましくは次の構造単位の1つの有機官能性基Rを意味する。理解しやすくするために、使用される水性のオリゴマーのシロキサノールは、殊に次の構成グループM、D、TまたはQを有する、シロキサン橋(Si−O−Si)を介して共有結合された構造単位から形成されていてもよい。本発明によれば、水性のオリゴマーのシロキサノールは、次の構造単位:−O−Si(OH)(R)−、−O−Si(OH)2(R)、(−O−)2(HO)SiR、(−O−)3SiR、(−O−)2Si(OH)2、(−O−)3Si(OH)、(−O−)4Si、−O−Si(OH)2−、−O−Si(R)2−、−O−Si(OH)(R)2および/または(−O−)2Si(R)2、特に少なくとも−O−Si(OH)(R)−、−O−Si(OH)2(R)、および/または(−O−)2(HO)SiR、すなわち少なくとも1個のシロキサン結合Si−O−Siから選択された構造単位の中の少なくとも2つを利用し、−、および場合により3個までのシロキサンSi−O−Si−結合を有する空間架橋されたSi−Rも利用され、この場合Rは、前記の意味を有する有機官能性基に相応し、特にオリゴマーのシロキサノールは、少なくとも4つの構造単位を有し、すなわちこのオリゴマーのシロキサノールは、4の少なくとも1つのオリゴマー化度を有し、特に有利にオリゴマーのシロキサノールは、平均で4〜100000個の構造単位、特に有利に4〜50000個の構造単位を有する。分子量の測定は、流動場分画により測定されてよい。
【0021】
好ましくは、全部の珪素原子は、有機官能性基、殊に基Rで少なくとも1回および/または2回置換されており、この場合珪素原子の残りの遊離原子価は、ヒドロキシ基またはシロキサン結合によって飽和されている。痕跡中には、なおアルコキシ基が存在していてもよい。それとは別に、珪素原子は、1〜2回有機官能基Rで置換されていてよく、別の珪素原子は、ヒドロキシ基またはシロキサン結合、例えば(−O−)4Siおよび/または(−O−)2Si(OH)2だけを有する。
【0022】
そのための例は、フルオロアルキルトリエトキシシランおよびテトラエトキシシランの反応からのオリゴマーである。記載されたオリゴマーのシランは、有利にシロキサン橋を介して結合された、少なくとも4個の珪素原子を有する。
【0023】
水性のオリゴマーのシロキサノールへの金属酸化物粉末としての熱分解法金属酸化物の添加は、殊に熱分解法金属酸化物が高い攪拌速度および/または混合速度によってオリゴマーのシランと一緒に分散されることにより、同時に高いエネルギー導入の際に特に好ましいことが判明した。本発明によれば、熱分解法金属酸化物は、金属酸化物粉末として水性のオリゴマーのシロキサノールに添加され、高いエネルギー導入下で高い攪拌速度および/または混合速度でオリゴマーのシロキサノールと一緒に分散される。従って、本方法は、次の工程:a)水性のオリゴマーのシロキサンの予めの装入、b)熱分解法金属酸化物の添加およびc)場合により助剤、加水分解触媒および/または縮合触媒の存在下での混合からなる工程(i)を含み、殊に工程b)とc)は、本質的に同時にか、反復してか、またはそのまま連続的に、場合により交互に実施され、および場合によっては少なくとも1つの工程(ii)を含み、この場合他の成分、例えば普通の助剤、例えば、しかし、独占的にではなく、湿潤助剤、塩基、酸、乳化剤、ラッカー原料、水、溶剤、前記配合添加剤含有組成物および例えば金属前処理組成物、ラッカー、着色剤、付着剤組成物または数多くの使用のための他の配合物を製造するための当業者に公知の他の配合添加剤を含有する組成物の添加は、可能である。本発明によれば、分散は、毎分1000回転を上廻る攪拌速度で行なわれる。場合によっては、1つの助剤が添加されてよい。特に好ましくは、混合および/または反応は、高い剪断力の供給下に行なわれる。混合または分散、殊に反応は、特に1000〜10000回転/分、有利に1500〜9500回転/分、特に有利に1500〜8500回転/分で行なわれる。本発明によれば、数段階、殊に2段階での反応を行なうことができ、この場合には、最初に1000〜3000回転/分で分散または混合され、引続き6000〜9000回転/分で分散または混合される。適当な混合装置は、例えば次の通りである:ウルトラターラックス(Ultraturrax)(回転子 固定子 分散機)、溶解機、パールミル、ウェット−ジェットミル、1段式ホモジナイザーおよび多段式ホモジナイザー。段階的な分散は、1段当たり1分間ないし10時間、有利に2ないし60分間、特に有利に2ないし15分間、好ましくは5ないし20分間行なうことができる。
【0024】
本発明による方法により、熱分解法金属酸化物を意外に高い濃度で本質的に水性の、本質的に溶剤不含でオリゴマーのシロキサノールを含有する相中で分散することに成功する。好ましくは、前記相は、熱分解法金属酸化物の添加前にオリゴマーのシロキサン、水および場合により加水分解触媒および/または縮合触媒からなり、および0.5質量%ないし検出限界までの溶剤を含有する。従って、特に、全組成物に対して熱分解法金属酸化物0.001〜60質量%、殊に0.01〜20質量%が分散されてよい。前記含量は、特に、オリゴマーのシランで官能化された熱分解法金属酸化物を含む、純粋に水性の、本質的に溶剤不含の組成物に関連する。
【0025】
本発明による方法において、特に、粘度は、5〜8000mPa・s、殊に10〜4000mPa・s、特に15〜1500mPa・sまたは特に有利に20〜500mPa・sに調節される。相応することは、前記組成物にも当てはまる。粘度は、一般に、DIN 53015に準拠して測定される。
【0026】
本発明による組成物は、好ましくは低い粘度および同時に高い固体含量を示し、例えば実施例または図によって証明されている。この低い粘度と高い個体含量との組合せは、前記被覆を製造する際の高いキャパシティーに必要な前提条件である。
【0027】
また、本発明によれば、官能化された熱分解法金属酸化物を含有する組成物の製造法ならびに本発明による方法により、
殊に第1の工程において、
a)水性の、本質的に溶剤不含の、殊にアルコール不含の、および本質的に完全に加水分解されたオリゴマーの有機官能性シロキサノールを、
但し、このシロキサノールは、有利に水相中に溶解され、特に有利に完全に水相中に溶解され、および殊に反応性ヒドロキシ基を有し、および
このオリゴマーのシロキサノールは、次の構造単位:−O−Si(OH)(R)−、−O−Si(OH)2(R)、(−O−)2(HO)SiR、(−O−)3SiR、(−O−)2Si(OH)2、(−O−)3Si(OH)、(−O−)4Si、−O−Si(OH)2−、−O−Si(R)2−、−O−Si(OH)(R)2および/または(−O−)2Si(R)2、特に少なくとも−O−Si(OH)(R)−、−O−Si(OH)2(R)、および/または(−O−)2(HO)SiRから選択された構造単位の中の少なくとも2つを有し、殊に少なくとも1個の構造単位、有利に4〜100000個の構造単位は、少なくとも1個の反応性ヒドロキシ基を有し、および構造単位中のRは、同一かまたは異なり、およびRは、アミノ基、アミノアルキル基、殊にビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基、トリス−N−アミノアルキルシリル基、第四級アミノアルキル基、メルカプトアルキル基、メタクリル基、メタクリルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、殊にビシナル−ジヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基、グリシドオキシアルキル基、加水分解されたグリシドオキシアルキル基、ポリスルファン基、ジスルファン基、チオエーテル基、ポリエーテル基、ビニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン化アルキル基、殊にフルオロアルキル基、クロロアルキル基、ブロモアルキル基、ウレイド基、スルファンアルキル基、シアネート基および/またはイソシアネート基から選択された有機官能性基であり、この場合この有機官能性基は、直鎖状、分枝鎖状および/または環式であり、
およびシロキサノールは、平均で少なくとも4個の構造単位を有し、好ましくは、シロキサノールは、平均で4〜100000個の構造単位、特に有利に平均で4〜50000個の構造単位を有するものとし、
場合によっては加水分解触媒および/または縮合触媒の存在下で製造し、および/または予め装入し、殊に他の工程で、
b)殊に加水分解されたオリゴマーのシロキサノールに対して反応性の官能基を有する、少なくとも1つの熱分解法金属酸化物、有利に前記したような、熱分解法珪酸、金属酸化物で変性された珪酸と混合し、および反応させることにより得られた組成物が提供される。
【0028】
オリゴマーのシロキサノールを製造するために、次に記載された特許明細書の開示内容全体が引き合いに出され、この場合当該刊行物は、参照のために本明細書に援用される。
【0029】
場合により含有される触媒は、例えば酸であってよく、一般にアルコキシシラン、殊にモノマーのアルコキシシラン、オリゴマーのアルコキシシランおよび/またはポリマーのアルコキシシランの先行する、本質的に全体的な加水分解および部分的な縮合に由来してよいか、または本質的に全体的に加水分解されたホモ縮合体および/またはブロック−共縮合体の製造に由来してもよい。触媒は、通常、蟻酸、酢酸または硝酸であることができるが、しかし、当業者によく知られている別の酸もここでは当てはまる。触媒として、付加的に、またはそれとは別に、シロキサノールの加水分解および/または縮合を促進する、別の普通の触媒が使用されてもよい。また、この触媒は、当業者によく知られている。これは、例えば前記触媒であってよい。好ましくは、本発明による方法において、架橋剤、例えばn−プロピルジルコネート、ブチルチタネート、チタンアセチルアセトネートの添加を省略することができる。これは、既にオリゴマーの化合物が使用されているので可能である。更に、官能化された金属酸化物を含有する組成物が本質的に前記架橋剤を含まないこと、殊にグリシドオキシプロピルアルコキシシランが場合によりフルオロアルキル官能性の水溶性珪素化合物と一緒に使用されることは、好ましい。
【0030】
本方法には、または前記組成物中には、助剤として、殊に分散助剤、レオロジー変性助剤、湿潤剤、例えば界面活性剤が使用されてよい。特に、本方法における前記助剤の中の1つの使用は省略することができるし、本発明による組成物中での前記助剤の中の1つの使用は省略することもできる。
【0031】
本発明により本方法において使用されるオリゴマーのシロキサノールは、殊に前記構造単位の中の少なくとも2個を有するシロキサノール、または少なくとも1個の珪素原子に対して1個の反応性ヒドロキシ基を使用し、および殊に構造単位中のRとして有機官能性基を使用する、前記構造単位を有するポリシロキサノールであり、殊にこの官能性基は、同一かまたは異なり、アミノアルキル基、N−アルキルアミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基、トリス−N−アミノアルキルシリル基、メルカプトアルキル基、メタクリル基、メタクリルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基、グリシドオキシアルキル基、軽い分解されたグリシドオキシアルキル基、ポリスルファン基、ジスルファン基、チオエーテル基、ポリエーテル基、ビニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン化アルキル基、ウレイド基、スルファンアルキル基、シアネート基および/またはイソシアネート基から選択され、この場合有機官能性基は、直鎖状、分枝鎖状および/または環式である。使用されるオリゴマーのシランは、特に前記のオリゴマー化度を有する。有機官能性基、殊にR−またはR−Siまたは(R)2Siとしての構造単位上の有機官能性基Rとして、殊に次のものがこれに該当する:
有機官能性基として、殊に構造単位中のRとしての好ましいアミノアルキル基のための例は、次のアミノアルキル基から選択されてよい(全ての係数は、整数に相当する):
式(I)のR1h*NH(2-h*)[(CH2h(NH)]j[(CH2l(NH)]n−(CH2k
〔式中、0≦h≦6、h*=0、1または2、j=0、1または2、0≦l≦6、n=0、1または2、0≦k≦6であり、R1は、ベンジル基、アリール基、ビニル基、ホルミル基および/または1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状および/または環式のアルキル基に相当する〕、および/または
式(II)の[NH2(CH2m2N(CH2p
〔式中、0≦m≦6および0≦p≦6である〕。構造要素中のRとしてのN,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基のために、好ましくは、式(I)において、k=3、n=1または2、l=1、2または3およびj=0であり、特に好ましくは、k=3、n=1または2、l=2およびj=0、m=2およびp=3である。構造単位中の有機官能性基Rとしての好ましいアミノアルキル基のための他の例は、次の通りである:アミノプロピル基、H2N(CH23−、ジアミノエチレン−3−プロピル基、H2N(CH22NH(CH23基、トリアミノジエチレン−3−プロピル基、H2N(CH22NH(CH22NH(CH23基、2−アミノエチル基、1−アミノメチル基、(2−アミノエチルアミノ)−エチル基、6−アミノ−n−ヘキシル基、ならびに殊に3−アミノ−n−プロピル基、1−アミノメチル基、N−ブチル−3−アミノプロピル基、N−ブチル−1−アミノ−メチル基。
【0032】
また、殊に、構造単位中のRとしての有機官能性基、例えばビス(モノシリルアルキル)アミン基は、有利であることができる:
式(III)の−(CH2i−[NH(CH2fgNH[(CH2f*NH]g*−(CH2i*−Si、上記式中、i、i*、f、f*、gまたはg*は、同一かまたは異なり、iおよび/またはi*=0〜8、fおよび/またはf*=1、2または3、gおよび/またはg*=0、1または2であり、この場合iおよび/またはi*は、殊に数1、2、3または4の中の1つ、有利に3に相当し、特に好ましくは、i、i*=3およびg、g*=0である。そのための例は、−(CH23NH(CH23−Si、−(CH23NH(CH23−Si、−(CH23NH(CH22NH(CH23−Si、−(CH23NH(CH22NH(CH22NH(CH23−Siであり、この場合ビス(プロピル)アミン−Siが特に好ましい。この場合、式(III)のSiの残りの遊離原子価は、ヒドロキシ基および/またはシロキサン基、殊に−O−Siによって架橋されたシロキサン、および場合により1〜24個のC原子を有するアルキル基で飽和されていてよい。ビス(モノシリルアルキル)アミン基を含有するオリゴマーのシランは、例えばビス(トリエトキシシラン)アミンおよび/またはビス(トリメトキシシラン)アミンおよび場合により前記の有機官能性基を有するシランの他のシラン、例えばアルキル基により官能化されたシランの反応に由来する。加水分解および縮合の後、存在する溶剤は、本質的に完全に除去される。
【0033】
第四級アミノアルキル官能性基、第四級アミノ官能性基を含有する構造要素またはシロキサノールは、例示的に、しかし、独占的にではなく、式VIII
−(R6n**CHHal (VIII)
〔式中、基R6は、同一かまたは異なり、1〜18個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキレン基、すなわち1〜18個のC原子を有する2価アルキル基を表わし、この場合アルキレン基は、置換されていてよいかまたはオレフィン系C−C結合、特に−CH2−、−(CH22−、−CH2CH(CH3)−を含有し、n**は、0または1であり、Halは、塩素または臭素を表わす〕で示されるシランおよび/または場合によりその加水分解生成物および/または縮合生成物、すなわち可能なホモ縮合体、共縮合体、ブロック縮合体またはブロック共縮合体を含めてこれらの化合物の少なくとも1つのハロゲン化アルキル官能性基と、
定義された量の水の存在下または添加下での一般式IX
N(R73 (IX)
〔式中、基R7は、同一かまたは異なり、R7は、基(R*O)3-x-y(R**xSi[(R6n**CH2−]1+yを表わし、この場合R6およびn**は、前記の意味を有し、R*は、同一かまたは異なり、およびR*は、水素、1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはアシル基を表わし、基R**は、同一かまたは異なり、およびRは、1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはアシル基を表わし、xは、0、1または2であり、yは、0、1または2であり、(x+y)は、0、1または2であり、或いはR7は、1〜30個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基を表わし、1〜30個のC原子を有する前記アルキル基は、さらに、特に一連の−N(R82、但し、基R8は、同一かまたは異なり、およびR8は、水素、1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基、アミノアルキル基または(R*O)3-x-y(R**xSi[(R6n**CH2−]1+yを表わすかまたは−SR8、但し、基R8は、同一かまたは異なり、およびR8は、水素、1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基または(R*O)3-x-y(R**xSi[(R6n**CH2−]1+yまたは場合によりその加水分解生成物および/または縮合生成物を表わすものとし、−ORまたは(R*O)3-x(R**xSi[(R6n**CH2−]または場合によりその加水分解生成物および/または縮合生成物、但し、基R*、R**、R6、xおよびn**は、無関係に既述した意味を有するものとし、の少なくとも1つの基で置換されていてよい〕で示される第三級アミンとの反応により得ることができ、および第三級アミンの窒素原子で環式化合物を形成し、および形成された加水分解アルコールは、少なくとも部分的に、有利に本質的に全体的に除去される。特に好ましい第四級のオリゴマーのシロキサノールは、場合により他のシランまたはその縮合生成物の存在下での3−クロロプロピルトリエトキシシラン(CPTEO)とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)との反応ならびに加水分解アルコールの引続く除去により得ることができ、好ましくは、本方法において使用される。
【0034】
有機官能性基として、殊に構造要素中のRとしての好ましいアルキル基の例は、直鎖状、分枝鎖状および/または環式のアルキル基、例えばn−プロピル基、イソプロピル基、エチル基、メチル基、n−オクチル基、イソブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基および/またはヘキサデシル基であってよい。有機官能性基として、殊に構造要素中のRとしての好ましいエポキシ基および/またはヒドロキシアルキル基の例は、グリシドオキシアルキル基、3−グリシドオキシプロピル基、エポキシアルキル基および/またはエポキシシクロアルキル基であってよい。好ましくは、殊にグリシジルオキシアルキル、エポキシシクロヘキシルであってよい。
【0035】
有機官能性基として、殊に構造要素中のRとしての好ましいハロゲン化アルキル基の例は、式(IV)R2−Ym*−(CH2s−に由来してもよく、この場合R2は、1〜9個のC原子を有するモノ−、オリゴ−またはペルフッ素化アルキル基、またはモノ−、オリゴ−またはペルフッ素化アリール基に相当し、この場合さらにYは、CH2−基、O−基、アリール−基またはS−基に相当し、およびm*は、0または1であり、およびsは、0または2である。特に有利には、ハロゲン化アルキル基は、フルオロアルキル基、例えば特にF3C(CF2r(CH2s−、CF3(CF25(CH22−またはCF3(C64)−またはC65−基であることができ、この場合rは、0〜9の整数であり、sは、0または2であり、特に好ましくは、rは、5であり、およびsは、2である。好ましい有機官能性基Rは、次のものであってよい:トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−、3,3,3−トリフルオロプロピル−、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル−、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシエチル−、3,3,3−トリフルオロプロピルメルカプトエチル−、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−。
【0036】
1つの好ましい実施態様によれば、有機官能性基またはRは、−(CH2q−X−(CH2q−Si シリル基を有する一般式Vのビス−スルファンアルキル基に相当し、この場合qは、1、2または3であり、Xは、Spであり、この場合pは、鎖中に2〜12個の硫黄原子の分布を有する、平均で2または2.18、または平均で4または3.8に相当する。好ましい基Rは、(Si 266)から製造されたビス(プロピル)ジスルファン−シリル基、(Si 69)から製造されたビス(メチル)ジスルファン−シリル基および/またはビス(プロピル)テトラスルファン−シリル基であることができる。
【0037】
トリス(アルコキシシリルアルキル)アミン、例えばトリス(トリエトキシシラン)アミンまたはトリス(トリメトキシシラン)アミンに由来する、例示的な水性のオリゴマーのシロキサノールは、一般式VIに由来するトリスシリル化されたアミン構造要素を有する:
N[ZSi(R12Ω(OR23-Ω3 (VI)、この場合Zは、無関係に、殊に一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−または−[CH2CH(CH3)CH]−からの2価アルキレン基であり、R12は、1〜24個のC原子、殊に1〜16個のC原子、有利に1〜8個のC原子、特に有利に1〜4個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状および/または環式のアルキル基、またはアリール基であり、無関係にΩは、0または1であり、R2は、無関係に水素または1〜4個のC原子を有するアルキル基である。アミン構造要素は、シロキサン結合を介して元来のOR2−基をオリゴマーのシロキサノールと共有結合している。トリス−N−アミノアルキル基により官能化されたオリゴマーのシロキサノール、例えば本発明により使用可能な全てのオリゴマーのシロキサノールは、本発明により使用可能な有機官能性基、例えばアルキル基、ハロゲン化アルキル基および/またはグリシドオキシアルキル基の1個またはそれ以上で置換された、モノマーまたはオリゴマーのシランとのホモ縮合、共縮合またはブロック共縮合、アルコールの加水分解および縮合および除去によって製造されてよい。本発明による方法のための有用性に関連して、オリゴマーのシランは、本質的に溶剤不含で使用される。
【0038】
更に、有機官能性基は、式VIIの末位の末端化されたポリエーテル基であることができ、殊に水性のオリゴマーのシロキサノールは、加水分解アルコールまたは含有された溶剤の加水分解および縮合、殊に本質的に完全な除去によって得られる、直鎖状、環式または分枝鎖状のポリエーテル官能性シロキサンまたはポリエーテル官能性シロキサンの混合物であってもよい。記載されたシランの製造については、全体的にWO 2006/037380A1の開示内容に指摘されている。式VII
3−O[R4−O]n*[(−R5m**]− (VII)
〔式中、R3は、1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基、特にメチル、または2〜8個のC原子を有するアルキレン基、特にビニルまたはアリル、または6〜12個のC原子を有するアリール基、特にベンジルまたはフェニルまたはスチリルであり、R4は、同一かまたは異なり、およびR4は、1〜8個のC原子を有する、2価の直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基、特に−CH2−(メチレンとしてのメチル)、および相応するエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルまたは第三ブチルを表わし、およびR5は、1〜8個のC原子を有する、2価の直鎖状、分枝鎖状または環式のアルキル基、特にエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルならびにイソブチル、n−オクチル、イソオクチル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、またはフルオロアルキル、例えばしかし、独占的にではなく、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、またはメルカプトアルキル基、特に3−メルカプトプロピル、または2〜8個のC原子を有するアルキレン基、特にビニル、または2〜8個のC原子を有するアルキニル基、または6〜12個のC原子を有するアリール基、特にベンジル、フェニルまたはスチリル、または前記したようなアミンアルキル基、殊にN−アルキルアミンアルキル、例えばN−(ブチル)−3−アミノプロピル−または前記したようなエポキシ基、特に3−グリシドオキシプロピル−を表わし、n*は、1〜200、特に1〜100、特に有利に2〜40、殊に3〜30であり、ならびにm**は、0または1である〕で示される末位の末端化されたポリエーテル基。本発明による方法において使用されてよい、特に好ましいポリエーテル官能性の水性のオリゴマーのシロキサノールは、ドイツ連邦共和国特許第102004049号明細書、殊に第[0037]段落ならびに実施例中に開示されており、当該刊行物および殊にこの段落の記載内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0039】
1つの好ましい実施態様によれば、オリゴマーのシロキサノールの珪素原子、殊に構造要素は、2個の有機官能性基またはRを使用し、殊に構造要素は、次の置換基を有していてよい:アミノプロピル−/メチル−、2−アミノエチル−/メチル−、2−アミノエチル−/フェニル−、6−アミノ−n−ヘキシル−/メチル−、3−アミノ−n−プロピル−/メチル−、1−アミノメチル−/メチル−、N−ブチル−3−アミノプロピル−/メチル−、N−ブチル−1−アミノメチル−/メチル−、メチル−/メチル−、プロピル−/メチル−、n−オクチル−/メチル−、オクタデシル−/メチル−ヘキシル−/メチル−、ヘキサデシル−/メチル−、3,3,3−トリフルオロプロピル−/メチル−、3,3,3−トリフルオロプロピル−/シクロヘキシル−、3,3,3−トリフルオロプロピル−/フェニル−、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル−/メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルオキシエチル−/メチル、トリアミノプロピルまたはアミノプロピルまたはジアミノプロピル/トリデカフルオロオクチル、トリアミノプロピルまたはアミノプロピルまたはジアミノプロピル/イソブチル、トリアミノプロピルまたはアミノプロピルまたはジアミノプロピル/イソオクチル、トリアミノプロピルまたはアミノプロピルまたはジアミノプロピル/ヘキサデシル。
【0040】
この場合、使用されるオリゴマーのシロキサノールの構造要素中での珪素原子の100〜0.01%が少なくとも1個の有機官能性基またはrで置換されていることは、好ましく、さらに好ましくは、50〜100%、特に好ましくは、80〜100%である。2個の有機官能性基を有する置換基は、同様に有利であることができる。構造要素中の残りの珪素原子および/または珪素原子の残りの結合位置は、シロキサン結合として、または本質的にヒドロキシ基としてオリゴマーのシロキサノール中に存在していてよい。
【0041】
オリゴマーのシロキサノール、またはポリシロキサンの製造の際に形成される加水分解アルコールまたは前記製造の際に使用される有機溶剤は、本発明による方法におけるオリゴマーのシロキサノールの使用前、または本発明により得られる組成物の製造のために、本質的に完全に除去される。
【0042】
相応する構造単位を有するポリシロキサンも算入されるような、本発明による使用される好ましい水性のオリゴマーのシランは、欧州特許第0675128号明細書、欧州特許第0953591号明細書、欧州特許第0716128号明細書、欧州特許第0716127号明細書、欧州特許第0832911号明細書、欧州特許第1031593号明細書、WO 2007/085320、WO 2006/010388A1、WO 2007/085339およびWO 2009/030538、WO 2006/037380の記載から公知であり、当該刊行物の開示内容は、参照のために本明細書に援用される。殊に、記載された刊行物中に示された実施例が指摘される。
【0043】
1個の有機官能性基だけで置換された、特に好ましいオリゴマーのシロキサノールは、有機官能性基、殊に基Rとして、エポキシ基、例えばグリシドオキシアルキル基、3−グリシドオキシプロピル基、加水分解されたグリシドオキシアルキル基またはアミノ基、例えばアミノアルキル基、殊にN−アルキルアミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基またはトリス−N−アミノアルキルシリル基を有する。
【0044】
更に、特に好ましいオリゴマーのシロキサノールは、記載された有機官能性基との珪素原子の次の組合せ、または記載された基Rを有する構造要素を有し、すなわちオリゴマーのシロキサノールは、殊に他の選択可能な方法a)、b)、c)および/またはd)に記載された、種々の有機官能性基:
a)アミノアルキル基で置換され、この場合アミノアルキルには、殊にN−アミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、ビス−(N−アミノアルキル)基、ビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基および/またはトリス−N−アミノアルキルシリル基が挙げられ、およびアルキル基を有する構造要素も挙げられる。例えば、R中のオリゴマーのシランは、ジアミノアルキル基およびアルキル基またはアミン基およびアルキル基に相当し、
b)フルオロアルキル基およびアミノ基および/またはアミノアルキル基で置換され、この場合アミノアルキル基には、殊にN−アミノアルキル−、ジアミノアルキル−、トリアミノアルキル−、ビス−(N−アミノアルキル)−、ビス−N−アミノアルキルシリル化合物、トリス−N−アミノアルキル基および/またはトリス−N−アミノアルキルシリル基が挙げられ、場合により付加的にアルキル基で置換され、
c)ハロゲン化アルキル基およびアミノ基および/またはアミノアルキル基で置換され、この場合アミノアルキル基には、殊にN−アミノアルキル−、ジアミノアルキル−、トリアミノアルキル−、ビス−(N−アミノアルキル)−、ビス−N−アミノアルキルシリル化合物、トリス−N−アミノアルキル基および/またはトリス−N−アミノアルキルシリル基が挙げられ、
d)前記されたようなヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基および/またはポリエーテル基、およびアミノ基および/またはアミノアルキル基で置換され、この場合アミノアルキル基には、殊にN−アミノアルキル−、ジアミノアルキル−、トリアミノアルキル−、ビス−(N−アミノアルキル)−、ビス−N−アミノアルキルシリル化合物、トリス−N−アミノアルキル基および/またはトリス−N−アミノアルキルシリル基が挙げられ、場合により付加的にフルオロアルキル基で置換され、この場合前述のハロゲン基またはフルオロアルキル基は、有利に既に前記に定義された基であってよく、殊に0≦s≦16および0≦r≦16、特にs=2および0≦r≦13である−(CH2s(CF2rCF3で示されるフルオロアルキル官能基であってよい。
【0045】
全てのオリゴマーのシロキサノールには、構造要素がランダムに分布していてよいか、或いはホモ縮合体として、有機官能性基Rを有するブロック共縮合体として含有されていてもよい。
【0046】
本発明により使用される、全てのオリゴマーのシロキサノールは、個別的に、またはオリゴマーのシロキサノールの混合物として、場合により本質的に加水分解された、モノマーのシランの存在下で使用されてよい。
【0047】
本発明による組成物の製造のために、本方法において、製造すべき全組成物に対して、有利に熱分解法酸化物1〜60質量%、特に2〜40質量%、特に有利に3〜25質量%は、オリゴマーのシランに添加される。
【0048】
従って、本発明による組成物は、熱分解法酸化物の相応する含量を有することができる。特に、全組成物に対して、熱分解法金属酸化物0.1〜60質量%、有利に0.1〜25質量%、特に有利に0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%が分散される。
【0049】
好ましくは、シロキサノールへの金属酸化物の添加は、殊に高い攪拌速度および/または混合速度によって、またはシロキサノールおよび金属酸化物の均質化および/または分散のための流動化によってエネルギー導入下で本発明による方法において行なわれる。他の選択可能な方法によれば、エネルギー導入は、熱分解法金属酸化物を水性のオリゴマーのシロキサノールを含有する相中に噴射することによって行なわれてもよい。オリゴマーのシロキサノールへの熱分解法酸化物の添加および殊に均質化および/または分散のためのエネルギー導入は、好ましい。
【0050】
このような組成物または分散液の好ましい製造は、既述されたオリゴマーのシロキサノールまたはポリシロキサンの水溶液中への、殊に粉末としての熱分解法珪酸の混入によって行なわれる。熱分解法珪酸または金属酸化物は、オリゴマーのシロキサノールに添加され、および攪拌される。このために、理想的には、攪拌機または溶解機が使用される。攪拌作用は、金属酸化物を特に水相中にもたらし、殊に金属酸化物粉末は、水相と緊密に接触し、オリゴマーのシロキサノールと金属酸化物との反応を可能にする。こうしてもたらされた粉末は、特に高いエネルギー導入によって分散されうる。適当な分散装置は、例えば回転子−固定子システム、例えばウルトラターラックス(Ultraturrax)またはキネマティカ(Kinematica)である。
【0051】
オリゴマーのシランと熱分解法金属酸化物、殊に熱分解法珪酸との分散および反応の際に、生成物は、温度上昇を受ける。通常、反応は、10〜100℃、特に20〜80℃、特に有利に25〜60℃で進行する。他の選択可能な方法の実施において、金属酸化物は、昇温されたオリゴマーのシランに供給されてよいか、または引続きこの反応混合物は、昇温される。しかし、分散の際に生じる熱が反応混合物の冷却によって導出されることは、好ましい。
【0052】
また、本発明の対象は、前記方法により得られた組成物、殊に請求項1から11までのいずれか1項の記載により得られた組成物であり、本発明による組成物は、シロキサノールの官能基としての第四級アミノアルキルなしに得られるか、或いは殊に本発明によらない方法により得られる場合には、有機官能性基としての第四級アミンアルキル基を有するシロキサノールを含まず、この場合には、特に少なくとも1つのオリゴマーのシロキサノールは、少なくとも1個の共有結合を介して熱分解法金属酸化物に結合している。こうして得られた組成物、殊に分散液は、乳白色の液体であることができ、および前記粘度を有することができる。
【0053】
従って、本発明の対象は、
(i)少なくとも1つの水性の、本質的に完全に加水分解された、オリゴマーの有機官能性シロキサノール、またはシロキサノールの全ての珪素原子が少なくとも1個の官能基を有し、この官能基が同一かまたは異なり、および
a)50〜100%が有機官能性基、アミノアルキル基、N−アルキルアミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基、トリス−N−アミノアルキルシリル基、メルカプトアルキル基、メタクリル基、メタクリルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基、グリシドオキシアルキル基、加水分解されたグリシドオキシアルキル基、ポリスルファン基、ジスルファン基、チオエーテル基、ポリエーテル基、ビニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン化アルキル基、ウレイド基、スルファンアルキル基、シアネート基および/またはイソシアネート基から選択され、但し、有機官能性基は、直鎖状、分枝鎖状および/または環式であるものとし、および
b)0〜50%がヒドロキシ基から選択され、およびオリゴマーのシロキサノール中の珪素原子の残りの遊離原子価が飽和されている、有機溶剤を本質的に含まない、前記シロキサノールからなる、オリゴマーの有機官能性シロキサノールの混合物を、
(ii)珪酸、金属酸化物で変性された珪酸および少なくとも珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、鉄、セリウム、インジウム、サマリウム、錫、亜鉛、アンチモン、砒素、タンタル、ロジウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウムを含有する金属酸化物および/または相応する混合酸化物と強力に混合することにより得られた、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物を含有する少なくとも1つの組成物であり、この場合特に熱分解法金属酸化物は、金属酸化物粉末として水性のオリゴマーのシロキサノールに添加され、および高いエネルギー導入下で高い攪拌速度および/または混合速度によってオリゴマーのシロキサノールと一緒に分散される。
【0054】
本発明による方法によれば、水相中で不溶性の金属酸化物は、水相中で可溶性のオリゴマーのシロキサノールに結合され、それによって恐らく、金属酸化物を含有する組成物の安定性を改善する。本発明による組成物ならびに本発明による最終製品は、使用前に、必要に応じて有利に、水または別の溶剤、またはこれらの混合物で10〜0.01質量%、有利に5〜0.1質量%の含量に希釈されてよい。
【0055】
また、本発明の対象は、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法により得られた、オリゴマーのシロキサノールで官能化された、少なくとも1つの熱分解法金属酸化物を含有する組成物である。また、本発明による組成物は、乾燥工程後に本質的に無水で存在してよい。例えば、本方法が基体上への前記組成物の施与および/または1つの乾燥工程を含む場合には、この組成物は、例えば被覆の形で基体上、特に前処理された金属を含む基体上に施される。
【0056】
この場合、この組成物は、特に、一次粒子が2〜100nm、殊に10〜70nm、有利に10〜60nmの平均粒度を有する熱分解法金属酸化物を有する。
【0057】
更に、本発明による組成物は、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物および水を溶解して含有し、特に、金属酸化物は、完全に溶解されている。
【0058】
前記特徴に加えて、この組成物は、特に全組成物中の揮発性有機溶剤または加水分解アルコールの含量を5質量%未満ないし検出限界まで、または0.0001質量%まで、殊に3質量%ないし0.0001質量%、特に1質量%未満ないし0.0001質量%有し、この場合この組成物中の全成分は、総和で100質量%になる。
【0059】
前記特徴に加えて、またはそれとは別に、この組成物は、全組成物中の使用された金属酸化物に対して、熱分解法金属酸化物の含量を0.001〜60質量%、殊に0.01〜20質量%有する。
【0060】
特に、この組成物は、殊に水と水性の、本質的に溶剤不含の、殊にアルコール不含の、および本質的に完全に加水分解されたオリゴマーの有機官能性シロキサノールと少なくとも1つの金属酸化物、殊に熱分解法金属酸化物と、但し、このオリゴマーのシロキサノールは、少なくとも1個またはそれ以上の共有結合を介して熱分解法金属酸化物にしているものとし、および場合により1つ以上の加水分解触媒および/または縮合触媒とからなる。
【0061】
特に好ましい実施態様によれば、官能化された熱分解法金属酸化物は、組成物中に水性の、本質的に溶剤不含の相で分散されている。この相は、必要に応じて、例えば金属処理系またはラッカーの製造のために、水または水相でさらに希釈されてよい。
【0062】
同時に、官能化された金属酸化物は、前記の実施の後に、殊に金属−酸素−珪素結合の形でオリゴマーのシロキサノールに共有結合されている。典型的には、金属酸化物は、使用されるオリゴマーのシランの少なくとも1個の珪素原子を有する金属−酸素結合を形成する。この結合は、理想化されてM−O−Si(−O−)a(R)b(OH)cとして表わされてよく、この場合Mは、一般的に金属酸化物中の金属原子を符号で示したものであり、この金属原子は、酸素原子(−O−)を介してオリゴマーのシロキサノールの珪素原子と共有結合されており、この場合a、bおよびcは、互いに無関係に1、2または3であり、a+b+cは、3である。一般的に、珪素原子は、(−O−)aを介してオリゴマーのシロキサノール中の他の珪素原子と共有結合されていてよいか、または他の金属Mと共有結合されていてもよい。Rは、本発明による定義に相当する。
【0063】
官能化された熱分解法金属酸化物の本発明による組成物は、一般的に全ての割合で水で希釈することができる。好ましくは、この組成物は、適用前の或る程度の期間に亘って、または使用の範囲内で金属前処理系中で水または別の溶剤または溶剤混合物で希釈される。通常の加工濃度は、組成物または系中でオリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解補金属酸化物の含量に対して、全組成物に対して特に90〜0.01質量%、殊に60〜0.1質量%、有利に40〜0.5質量%である。更に、希釈されていないかまたは希釈された組成物は、本発明によれば、次の説明と同様に使用されてよい。
【0064】
同時に、本発明の対象は、金属前処理組成物中でまたは金属前処理組成物として、または金属前処理組成物を製造するための、または金属前処理系を製造するための、殊に請求項1から11までのいずれか1項または請求項12から14までのいずれか1項に記載の本発明による組成物の使用である。特に、この組成物は、金属前処理組成物を配合するための基本物質として使用される。そのために、この基本物質には、他の添加剤、例えば水、有機溶剤、溶剤混合物、pH値を調節するための添加剤、助剤、湿潤剤、例えばBYK348またはTEGO WET 742)、防食処理顔料、顔料、防食処理添加剤、染料、充填剤、プラスチック、ポリマー、樹脂および/または粘度を調節するための添加剤が添加されてよい。
【0065】
更に、本発明の対象は、配合物、被覆、基体、製品、金属前処理組成物を変性、処理および/または製造するための、ベアメタルの防食処理を得るための、基体上の被覆のための付着助剤としての、防食処理を改善するためのラッカー層の下方での、第三系(Drittsysteme)中への熱分解法金属酸化物の均質な導入のための、ラッカー層の付着補助のための、および/または被覆剤、シール材または接着材料、例えば染料、ラッカー、シーリングコンパウンドの粘度を調節するための、または金属前処理組成物を製造するための本発明による組成物の使用である。この場合、前記組成物または前記組成物を含有する金属前処理組成物またはラッカーが変性、被覆および/または処理のために、または基体上、殊にクロムメッキされた、リン酸塩処理された、亜鉛メッキされた、錫メッキされた、エッチングされた、および/または別の方法で前処理された基体上の被覆のための付着助剤として使用されることは、特に好ましい。
【0066】
好ましい変性すべき基体および/または処理すべき基体は、金属またはこの金属を含む合金、例えば殊に鋼、鋼合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ブロンズ、銅、錫および/または亜鉛または記載された金属の合金を含む。そのために、前記組成物は、特にラッカー配合物中に混入されてもよい。この場合、この基体は、処理されていない表面および/または処理された表面を有することができる。処理された表面は、例えば化学的、電気化学的、機械的に、プラズマにより、および/または他の処理方法により前処理されていてよい。
【0067】
同時に、本発明の対象は、殊に金属前処理組成物としての、または金属前処理組成物中の、ベアメタルの防食処理を得るための、殊に鋼、鋼合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ブロンズ、銅、錫および/または亜鉛および/またはこれらを含む基体上での付着助剤としての本発明による組成物の使用である。ベアメタルとして、例えば亜鉛メッキされていない、亜鉛メッキされた、リン酸塩処理されたまたは何か他の遣り方で化学的または電気化学的に保護層が設けられた金属が含まれる。予め清浄化されたベアメタルを製造するための化学的、機械的および/または電気化学的な処理は、前記組成物の改善された付着に貢献することができる。
【0068】
その上、本発明の対象は、防食処理を改善するための、および/またはラッカー層を付着補助するためのラッカー層の下方での前記組成物ならびに前記金属前処理系の使用である。付着補助のために、官能化された金属酸化物および/または前記組成物は、特にラッカー配合物中に混入されてよい。
【0069】
更に、本発明の対象は、被覆剤の粘度を調節するための、殊にこの粘度を上昇させるための前記組成物ならびに前記金属前処理系の使用に関する。被覆剤は、塗布後に基体上に薄手の層を形成するのに適した、ラッカー、プライマーまたは一般的に薬剤にも関連しうる。殊に、分散液の形の、記載された金属前処理組成物または金属前処理系は、有利に金属基体上に塗布される。特に、分散液は、ドクターブレードで、浸漬、フラッド(Fluten)または噴霧によって、または回転塗布法で塗布される。
【0070】
処理すべき金属基体は、特に鋼、アルミニウム、マグネシウム、ブロンズ、銅、錫および亜鉛からなる。また、本発明による組成物および/または本発明による系は、有利に既に前処理された金属薄板上、例えば亜鉛メッキされた、錫メッキされた、リン酸塩処理された、クロムIIIまたはクロムVIで処理された、または別の前処理方法で保護された金属薄板および基体上に塗布される。
【0071】
引続き、こうして処理された金属薄板は、特に10〜200℃の温度、有利に20〜150℃の温度、特に有利に50〜120℃の温度で乾燥されてよい。
【0072】
こうして前処理された金属薄板は、場合により被覆剤で被覆されてよい。適当な被覆剤は、例えばポリウレタン(1成分系ならびに2成分系)、アクリレート、エポキシ化合物、ポリエステル、アルキドをベースとする溶剤型系、またはアクリレートまたはエポキシ化合物をベースとする溶剤不含のUV硬化型系である。更に、メラミンをベースとする水性系、またはアクリレートまたはポリウレタンをベースとする分散液も好ましい。
【0073】
更に、本発明による組成物および/または官能化された金属酸化物は、殊に分散液として被覆剤中に導入されてよく、被覆剤の粘度を上昇させる。これは、殊に刷毛塗り法、噴霧法または噴射法によって塗布される被覆剤において必要とされる。
【0074】
しばしば溶剤含有塗料において、熱分解法珪酸または有機変性された熱分解法珪酸が使用される。これは、水性ラッカーおよび染料をベースとする、水性の、殊に本質的に純粋に水性の相中では、これまで不可能であった。本発明による分散液は、被覆剤のチキソトロピーを向上させ、したがって被覆剤の加工性を、殊に基体上への塗布の際に改善する。
【0075】
本発明による組成物において、殊に分散液において、シランは、粒子で固定されており、実際に殊に共有結合を介して固定されている。熱分解法金属酸化物上でのオリゴマーのシランの固定化のために、前記組成物および/または官能化された金属酸化物の安定性は、幅広いpH値範囲に亘って高められる。これまで、熱分解法珪酸をベースとする通常の分散系は、低いpH値で短時間だけ安定性であった。シランを変性する場合、安定性は、次に示したように明らかに良好である。
【0076】
また、本発明の対象は、本発明による組成物および/または官能化された金属酸化物を使用することにより、および/または1つの組成物または1つの官能化された金属酸化物を配合物中、例えばラッカー中で使用して得られる被覆、例えばプライマー、付着層、ラッカー層である。また、本発明の対象は、基体を本発明による組成物、官能化された金属酸化物および/または本発明による組成物を有する配合物で処理、変性および/または被覆することによって得られる製品である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例3の粘度曲線を示す略図。
【図2】実施例5の粘度曲線を示す略図。
【図3】実施例6の粘度曲線を示す略図。
【図4】実施例7の粘度曲線を示す略図。
【図5】実施例7の熱分解法金属酸化物の寸法(μm)に対する粒度分布q3(%)を示す略図。
【図6】実施例20の粘度曲線を示す略図。
【図7a】塩水噴霧試験から144時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。(DIN−EN−ISO 9227−2006に準拠する)
【図7b】塩水噴霧試験から216時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図7c】塩水噴霧試験から576時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図8a】塩水噴霧試験から144時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図8b】塩水噴霧試験から216時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図8c】塩水噴霧試験から576時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図9a】塩水噴霧試験から144時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図9b】塩水噴霧試験から216時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図9c】塩水噴霧試験から576時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図10a】塩水噴霧試験から114時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図10b】塩水噴霧試験から216時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図10c】塩水噴霧試験から576時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図11a】塩水噴霧試験から144時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図11b】塩水噴霧試験から216時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図11c】塩水噴霧試験から480時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図12a】塩水噴霧試験から144時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図12b】塩水噴霧試験から216時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図12c】塩水噴霧試験から480時間後の金属薄板表面の変化を示す写真。
【図13】1つの分散液のチキソトロープ挙動を示す略図。
【図14】他の分散液のチキソトロープ挙動を示す略図。
【0078】
以下、本発明は、若干の実施例につき記載されるが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】

測定方法:
加水分解後のアルコール含量をガスクロマトグラフィーにより測定する。そのために、定義された量の試料を硫酸(試料5g、H2SO425ml、w=20%)で加水分解する。蒸留水75mlを添加する。引続き、苛性ソーダ液で中和し、水蒸気蒸留を実施する。内部標準2−ブタノール。SiO2を、分解後に硫酸およびケルダール触媒(Kjeldahl−Katalysator)を用いて、分離されたSiO2の質量を測定することにより、測定する。粘度の測定は、一般にDIN 53015により、ならびにDIN EM ISO 3219により行なわれる。突き固め密度をDIN EN ISO 707/11、1983年8月、に準拠して測定した。水性の溶剤含有調製物中の固体含量、すなわち非揮発性成分の割合の測定は、DIN/EN ISO 3251(ラッカーおよび塗料のためのラッカー、塗料および結合剤の非揮発性成分の割合の測定)に準拠して次のように実施することができる(QM−AA):
試験装置:温度計(読取り精度2K)、アルミニウム製の1回秤量用のシャーレ(Einmalschalen)
(d=約65mm、h=約17mm)、
分析天秤(精度1mg)
乾燥キャビネット250℃まで
デシケーター。
【0080】
試料を確定された温度(例えば、125℃)に昇温し、こうして揮発成分の割合の試料を除去する。熱処理後の試料の固体含量(乾燥残滓)を検出する。
【0081】
分析天秤上の試料約1gを1回秤量用のシャーレ中に計量供給する。生成物は、短時間振り回すことにより1回秤量用のシャーレ中に均一に分布させる。このシャーレを約125℃で1時間、乾燥キャビネット中で貯蔵する。乾燥工程の終了後に、このシャーレを20分間、デシケーター中で室温に冷却し、かつ分析天秤上で1mgを正確に再秤量する。試験毎に少なくとも2回の測定を実施する。
【0082】
【数1】

固体含量 処理前および処理後の試料質量の百分率での割合、最終質量:処理後の試料質量、初期質量:処理前の試料質量。
【0083】
1)使用された熱分解法金属酸化物(a)およびオリゴマーのシロキサノール(b)
a)熱分解法金属酸化物:
使用可能な本発明による熱分解法金属酸化物は、一般的に使用された金属酸化物に対して1.5質量%以下の乾燥損失(105℃で2時間)を有し、好ましい値は、1.0質量%以下である。それに続いて測定された、こうして乾燥された混合酸化物の灼熱減量は、一般的に1.5質量%以下、有利に1質量%以下である。
【0084】
熱分解法SiO2(py SiO2−1)として約200±25m2/gのm2/gでの比表面積(BET)を有する親水性の熱分解法珪酸を使用した。灼熱された物質中のSiO2の含量は、約99.8質量%以上である。一次粒子の平均粒度(d50)は、約12nmである。突き固め密度は、約50g/lである。他の熱分解法SiO2(py SiO2−2)として約90±15m2/gのm2/gでの比表面積(BET)を有する親水性の熱分解法珪酸を使用した。灼熱された物質中のSiO2の含量は、約99.8質量%以上である。一次粒子の平均粒度(d50)は、約20nmである。突き固め密度は、約80g/lである。記載された熱分解法珪酸は、しばしば、この熱分解法珪酸が一次粒子の部分的な溶融によって鎖の形成下に生じた、一次粒子の粒状の凝集体の形で存在することを示す。
【0085】
他の熱分解法金属酸化物としては、(py MO−1)として、全組成物に対して酸化アルミニウムを約1質量%、殊に0.3〜1.3質量%含有する二酸化ケイ素を含有する親水性の熱分解法混合酸化物が使用された。二酸化ケイ素の含量は、灼熱された混合酸化物中で約98.3質量%以上である。比表面積(BET)を約80±20m2/gと測定したが、この場合一次粒子は、約30nmの平均粒度を有する。突き固め密度は、約60g/lである。
【0086】
その上、熱分解法金属酸化物、(py MO−1)とも呼称される、としては、全組成物に対して酸化アルミニウムを約1質量%、殊に0.3〜1.3質量%含有する二酸化ケイ素を含有する親水性の熱分解法混合酸化物が使用された。二酸化ケイ素の含量は、灼熱された混合酸化物中で約98.3質量%以上である。比表面積(BET)を約170±30m2/gと測定したが、この場合一次粒子は、約15nmの平均粒度を有する。突き固め密度は、50g/lである。
【0087】
更に、熱分解法に酸化セリウム(py CeO2)を使用した。好ましい比表面積(BET)は、50±15m2/gであることができる。
【0088】
次の性質を有する熱分解法二酸化チタン(TiO−1)を同様に使用した。灼熱された混合酸化物に関連する二酸化チタンの含量は、全組成物に対して約99.5質量%以上である。比表面積(BET)は、約21nmの測定された平均粒度の際に50±15m2/gである。突き固め密度として約130g/lを算出した。熱分解法二酸化チタンは、製造に応じて微少量の鉄、アルミニウムおよび/または珪素の酸化物を含有していてもよい。
【0089】
b)水性のオリゴマーのシロキサノールの製造例
水性のオリゴマーのシロキサノールを製造するための次の例の反応装置として、1または2 lの容積、内部温度測定部、液体計量供給装置、頭頂温度測定部を備えた蒸留ブリッジ、生成物冷却器、留出物貯蔵容器、実験室用圧力漏斗(2 lの容積)を有する温度調節可能な実験室用攪拌釜型反応器を使用した。真空を調節するために、真空ポンプを使用した。更に、反応溶液にシリコーン樹脂乳濁液をベースとする市販の消泡剤の2、3滴の液滴を添加することにより、蒸留中に場合により発生する発泡問題を阻止することができる。消泡剤の添加により生じる弱い混濁は、ガラス繊維フィルター(細孔幅1μm未満)を有する圧力漏斗を介する濾過によって除去されることができる。
【0090】
次に製造される水性のオリゴマーのシロキサノールは、特に次の性質を有する:生成物は、澄明であり、水との全ての割合で混合可能である。アルコールおよび/または加水分解可能なアルコキシ基の含量は、3質量%未満、有利に一般的に0.5質量%未満である。生成物の引火点は、95℃を上廻る値であり、水でさらに希釈した場合でも低下しない。それというのも、さらなる加水分解は、起こらず、ひいてはさらなるアルコールは遊離されないからである。
【0091】
Silox−1の製造:
加水分解されたエポキシ基を有する水性のオリゴマーのシロキサノール(Silox−1)は、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシランを反応させることによって製造される。上記の装置中に3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシランを予め装入する。水162gおよび蟻酸3.5g(85%の)を混合し、15分以内に供給する。この場合、温度は、20℃から35℃に上昇する。バッチ量を60℃で2時間攪拌する。その後に、8時間以内にメタノール/水混合物を留去し、同時に質量に応じて水と交換する(圧力:300〜133ミリバール、温度:42〜52℃)。頭頂温度が133ミリバールで約50℃であり、かつ塔頂生成物がなお水だけを含有する場合には、蒸留を終了し、相応する量の水を添加し、したがって、水中でw(3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン)=40%を有する溶液が生じる。
【0092】
Silox−2の製造:
ジアミノ基およびアルキル基で官能化された、水性のオリゴマーのシロキサノール(Silox−2)を、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン1モル、メチルトリエトキシシラン0.41モルおよび脱イオン化水24.6モルを攪拌モータ、冷却器および温度計を備えた1 lの三口フラスコ中で反応させることによって、製造する。開始時に約30℃の温度上昇を観察することができる。1時間攪拌した。混合物にSAG 5693 0.07g(OSi Specialities of Danbury社、Conneticut在、の消泡剤、oberflaechen Siloconmittel)を添加した。反応装置にビグルー(Vigreux)カラム、(分別カラム)および冷却器を備えた蒸留アタッチメントを装備した。反応混合物を昇温させ、水メタノール/エタノール/混合物を、頭頂温度が100℃で一定に留まるまで留去した。エタノールの濃度を1質量%未満に調節する。留出物の量を水の添加によって再び交換し、および冷却した。
【0093】
Silox−3の製造:
ジアミノ基およびアルキル基で官能化された、水性のオリゴマーのシロキサノール(Silox−3)を、アミノプロピルトリエトキシシラン400gおよび脱イオン化水600gを攪拌モータ、冷却器および温度計を備えた2 lの三口フラスコ中で反応させることによって、製造する。開始時に温度上昇を観察することができる。1時間攪拌した。混合物にSAG 5693 0.07g(OSi Specialities of Danbury社、Conneticut在、の消泡剤、oberflaechen Siloconmittel)を添加した。反応装置にビグルー(Vigreux)カラム、(分別カラム)および冷却器を備えた蒸留アタッチメントを装備した。反応混合物を昇温させ、水エタノール/混合物を、頭頂温度が100℃で一定に留まるまで留去した。エタノールの濃度を1質量%未満に調節する。留出物の量を水の添加によって再び交換し、および冷却した。
【0094】
Silox−4の製造:
1:1のモル比のアミノプロピル基とイソブチル基を有する水性のオリゴマーのシロキサノール(Silox−4)を、上記の装置中でアミノプロピルトリエトキシシラン221gおよびイソブチルトリメトキシシラン178gを混合し、および水54gを添加することにより、製造する。半時間後、攪拌しながらさらなる水64gを15分間以内に計量供給装置を介して添加する。この場合、温度は、20℃から約60℃に上昇する。更に、15分間以内に計量供給装置を介してHCl110g(水中で33質量%)を攪拌しながら供給する。約4時間以内に、52℃までの塔底温度で130ミリバールの圧力で、頭頂温度が約50℃になり、および塔頂生成物がなお水だけを含有するまで、エタノール/メタノール/水混合物を留去する。蒸留中、水を、計量供給装置を介して量的に、留出物が除去されるような程度に生成物に供給する。
【0095】
Silox−5の製造:
水性シリカゾルの存在下で加水分解されたエポキシ基を有する水性のオリゴマーのシランの製造(Silox−5)。3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン415.6gを予め装入し、かつ撹拌下で酢酸20.6gを添加した。その直後、TYZOR(登録商標)NPZ 41.1g(ジルコニウム−テトラ−n−プロパノラート)を供給した。5分後に、温度は約2〜5℃上昇した。次に、1分以内にLevasil(登録商標)100S45% 417.0g(固体含量45質量%を有する水性シリカゾル)gを攪拌導入した。その際、良好な攪拌作用に留意すべきであった。その直後、脱イオン化水477.3gを同様に迅速に滴加した。約42℃の最高温度に達した後に、不透明な分散液を75〜80℃で2時間、(環流)後攪拌した。約50℃の塔底温度に冷却した後で、脱イオン化水356.4gを後供給した。引続き、メタノールを約50〜60℃の塔底温度および約270ミリバールの絶対圧力で留去した。塔底温度は、蒸留の終了時に、圧力を変更しないで60〜65℃に上昇した。塔頂温度は、同様に62℃を超えて上昇した。更に、水だけを留去し、それによって蒸留を終了した。50℃以下への冷却後に、59.4gを超えて存在する、留出された量の脱イオン化水を後供給した。メタノールの含量は、明らかに3質量%を下廻っている。分散液をなお少なくともさらに2時間攪拌した。充填を室温で行なった。生成物は、乳白色の不透明な外観を有していた。3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシランの質量に対するシリカゾルの固体質量の比率は、0.45であった。収量は、1498gであり、殆ど100%であった。
【0096】
DIN ISO 3251に準拠して測定された固体含量(1時間、125℃)は、約36質量%であり、SiO2含量は、約16質量%である。粘度(20℃)は、DIN 53015により約8mPa・sであることが測定された。pH値は、4〜5であり、DIN 1757により測定された、20℃での密度は、1.148g/mlであった。
【0097】
2)熱分解法金属酸化物と一緒に分散液を貯蔵した際の安定性
次の例は、水と100質量%になるまでの熱分解法SiO220質量%(py SiO2−1)との組成物についての比較例の安定性を、熱分解法SiO2(py SiO2−1)20質量%が100質量%になるまで混入された、オリゴマーのシロキサノールをベースとする本発明による組成物の安定性と対比している。
【0098】
a)製造から24時間後および室温で貯蔵後の組成物の評価、第1表。
【0099】
【表1】

【0100】
b)製造から3日後および室温で貯蔵後の組成物の評価、第2表。
【0101】
【表2】

【0102】
c)製造から4週間後および室温で貯蔵後の組成物の評価、第3表。
【0103】
【表3】

【0104】
3)実施例1〜27
本発明による組成物または分散液を製造するために、それぞれ水性のオリゴマーのシロキサンを予め装入し、それに次の第4表に記載の熱分解法金属酸化物を添加した。バッチ量を溶解機で2000rpmで10分間均質化した。引続き、キネマティカ(Kinematica)PT 3100を用いて8000rpmで15分間分散を行なった。
【0105】
【表4】

【0106】
図1〜6には、実施例の中の幾つかの粘度曲線(剪断速度γn 1/秒に対する粘度(η)mPa・s)および粒度分布が示されている:
図1:実施例3の粘度曲線、
図2:実施例5の粘度曲線、
図3:実施例6の粘度曲線、
図4:実施例7の粘度曲線、
図5:実施例7の熱分解法金属酸化物の寸法(μm)に対する粒度分布q3(%)、
図6:実施例20の粘度曲線。
【0107】
4)実施例28〜42
実施例28〜42には、金属の前処理に適した、配合物のための製造例が記載されている。そのために、項目3)の例からの組成物を次の第5表の記載と同様に水と混合し、金属基体上に塗布した。
【0108】
【表5】

【0109】
第5表および第6表についての説明:
鋼薄板、V+P:溶融亜鉛メッキ、亜鉛マンガンリン酸塩処理。Chemetall社の金属薄板(Gardobond 26/1S/GN D60/OE)
V:溶融亜鉛メッキ、Chemetall社の金属薄板(Gardobond OE)
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
第7表および第8表についての説明:
++:極めて良好な表面、僅かな白色の錆だけ。
+:部分的に白色の錆で覆われた表面。
0:表面全体が白色の錆、なお赤色の錆なし。
−:微少量の赤色の錆。
−−:既に著量の赤色の錆。
【0112】
図7a/b/c〜9a/b/c中の描写は、写真として、塩水噴霧試験から144時間後、216時間後および576時間後の金属薄板表面の変化を示す。
【0113】
図7a/b/c、処理なしの金属薄板、図7a:塩水噴霧試験から144時間後、(DIN−EN−ISO 9227−2006に準拠する)図7b:塩水噴霧試験から216時間後、図7c:塩水噴霧試験から576時間後。
【0114】
図8a/b/c:比較例6、図8a:塩水噴霧試験から144時間後、
図8b:塩水噴霧試験から216時間後、図8c:塩水噴霧試験から576時間後。
【0115】
図9a/b/c:実施例5、図9a:塩水噴霧試験から144時間後、図9b:塩水噴霧試験から216時間後、図9c:塩水噴霧試験から576時間後。
【0116】
図10a/b/c〜12a/b/c中の描写は、写真として、塩水試験から144時間後、216時間後および480時間後の金属薄板表面の変化を示す。
【0117】
図10a/b/c:処理なしの金属薄板、図10a:塩水噴霧試験から114時間後、図10b:塩水噴霧試験から216時間後、図10c:塩水噴霧試験から576時間後。
【0118】
図11a/b/c:比較例2、図11a:塩水噴霧試験から144時間後、図11b:塩水噴霧試験から216時間後、図11c:塩水噴霧試験から480時間後。
【0119】
図12a/b/c:実施例28、図12a:塩水噴霧試験から144時間後、図12b:塩水噴霧試験から216時間後、図12c:塩水噴霧試験から480時間後。
【0120】
【表8】

【0121】
説明、第7表参照。
【0122】
実施例43:ラッカー配合物の粘度を変えるための分散液の使用
【表9】

【0123】
処方成分を処方の順序で攪拌しながら計量供給した。その後に、バッチ量を溶解機で2000rpmで10分間均質化した。引続き、キネマティカ(Kinematica)PT 3100を用いて8000rpmで15分間分散を行なった。
【0124】
【表10】

【0125】
アルカリ性分散液(py SiO2−KOH)として、親水性の熱分解法珪酸の安定化された分散液を使用した。DIN EN ISO 3219による100s-1の剪断速度で測定された粘度は、300mPa・s以下であった。第11表は、第10表中に示された組成物を使用しながら製造されたラッカーを示す。
【0126】
【表11】

【0127】
噴霧毎の塗布のために、ラッカーの粘度を水の添加によって調節する。ISO 2413。次の量の水を個々の試験で添加した:
【表12】

【0128】
図13および14は、分散液のチキソトロープ挙動を示す。実施例(A)は、BおよびCよりも明らかに顕著なチキソトロピーを示す。
【0129】
対照配合物は、レオロジー変性添加剤なしのラッカーである。
【0130】
【表13】

【0131】
【表14】

【符号の説明】
【0132】
A 実施例、 B (py SiO2−1)分散液、 C Silox−1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)本質的に有機溶剤不含である、少なくとも1つの水性の、本質的に完全に加水分解された、オリゴマーの有機官能性シロキサノール、またはオリゴマーの有機官能性シロキサノールのそれぞれの珪素原子が少なくとも1つの官能性基を有し、および
官能基が同一かまたは異なり、および
a)50〜100%が有機官能性基、アミノアルキル基、N−アルキルアミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキル基、ビス−N−アミノアルキルシリル基、トリス−N−アミノアルキル基、トリス−N−アミノアルキルシリル基、第四級アミノアルキル基、メルカプトアルキル基、メタクリル基、メタクリルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基、グリシドオキシアルキル基、加水分解されたグリシドオキシアルキル基、ポリスルファン基、ジスルファン基、チオエーテル基、ポリエーテル基、ビニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン化アルキル基、ウレイド基、スルファンアルキル基、シアネート基および/またはイソシアネート基から選択され、この場合有機官能性基は、直鎖状、分枝鎖状および/または環式であり、および
b)0〜50%がヒドロキシ基から選択され、およびオリゴマーのシロキサノール中の珪素原子の残りの遊離原子価がヒドロキシ基によって飽和されている、本質的に有機溶剤不含である、少なくとも1つの水性の、本質的に完全に加水分解された、オリゴマーの有機官能性シロキサノール、またはオリゴマーの有機官能性シロキサノールの混合物を、
(ii)珪酸、金属酸化物で変性された珪酸および少なくとも珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、鉄、セリウム、インジウム、サマリウム、錫、亜鉛、アンチモン、砒素、タンタル、ロジウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウムを含有する金属酸化物および/または相応する混合酸化物またはそれによって変性された金属酸化物と強力に混合することにより、オリゴマーのシロキサノールで官能化された熱分解法金属酸化物を含有する組成物を製造するための方法。
【請求項2】
熱分解法金属酸化物を、金属酸化物粉末として水性のオリゴマーのシロキサノールに添加し、および高いエネルギー導入下で高い攪拌速度および/または混合速度によりオリゴマーのシロキサノールと一緒に分散させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
熱分解法金属酸化物は、SiO2、Al23、TiO2、HfO2、Y23、ZrO2、Fe23、Nb25、V25、WO3、SnO2、GeO2、B23、In23、ZnO、CaO、酸化マンガン、酸化鉛、MgO、BaO、SrO、相応する金属酸化物およびそれによって変性された金属酸化物から選択する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
全組成物に対して熱分解法金属酸化物0.001〜60質量%を分散させる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オリゴマーのシロキサノールは、少なくとも4のオリゴマー化度、殊に4〜100000のオリゴマー化度を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
熱分解法金属酸化物の一次粒子は、2〜100nmの平均粒度(d50)を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
分散は、毎分1000回転を上廻る攪拌速度で行なわれる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
有機官能基は、互いに無関係に、次の基
a)式Iおよび/またはII
1h*NH(2-h*)[(CH2h(NH)]j[(CH2(NH)]n−(CH2k− (I)
〔式中、0≦h≦6、h*=0、1または2、j=0、1または2、0≦l≦6、n=0、1または2、0≦k≦6であり、R1は、ベンジル基、アリール基、ビニル基、ホルミル基および/または1〜8個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状および/または環式のアルキル基に相当する〕、
[NH2(CH2m2N(CH2p− (II)
〔式中、0≦m≦6および0≦p≦6である〕で示されるアミノアルキル基、
b)n−プロピル基、イソプロピル基、エチル基、メチル基、n−オクチル基、イソブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基および/またはヘキサデシル基から選択されたアルキル基、
c)グリシドオキシアルキル基、エポキシアルキル基および/またはエポキシシクロアルキル基から選択されたエポキシ基および/またはヒドロキシアルキル基、および/または
d)式(IV)
2−Ym*−(CH2s− (IV)
〔式中、R2は、1〜9個のC原子を有するモノ−、オリゴ−またはペルフッ素化アルキル基、またはモノ−、オリゴ−またはペルフッ素化アリール基に相当し、およびこの場合
さらにYは、CH2−、O−、アリール−またはS基に相当し、m*は、0または1であり、およびsは、0または2である〕で示されるハロゲン化アルキル基の少なくとも1つを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機官能性のオリゴマーのシロキサノールは、−O−Si(OH)(R)−、−O−Si(OH)2(R)、(−O−)2(HO)SiR、(−O−)3SiR、(−O−)3Si(OH)、(−O−)2Si(OH)2、(−O−)4Si、−O−Si(OH)2−、−O−Si(R)2−、−O−Si(OH)(R)2および/または(−O−)2Si(R)2、特に少なくとも−O−Si(OH)(R)−、−O−Si(OH)2(R)、および/または(−O−)2(HO)SiRから選択された構造単位の中の少なくとも2つに相当し、およびRは、構造単位中で同一または異なり、Rは、殊に請求項1から8までのいずれか1項に記載の定義による有機官能性基に相当する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
粘度は、5〜8000mPa・s、殊に10〜4000mPa・s、特に15〜1500mPa・sまたは特に有利に20〜500mPa・sに調節される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
本方法は、本質的に有機溶剤または有機ポリマーの存在なしに実施される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法により得られた、オリゴマーのシロキサノールで官能化された、少なくとも1つの熱分解法金属酸化物を含有する組成物。
【請求項13】
熱分解法金属酸化物の一次粒子が2〜100nm、殊に10〜70nm、有利に10〜60nmの平均粒度を有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、全組成物中の使用された金属酸化物に対して、熱分解法金属酸化物の含量を0.001〜60質量%、殊に0.01〜20質量%有する、請求項12または13記載の組成物。
【請求項15】
配合物、被覆、基体、製品、金属前処理組成物を変性、処理および/または製造するための、ベアメタルの防食処理を得るための、基体上の被覆のための付着助剤としての、防食処理を改善するためのラッカー層の下方での、第三系中への熱分解法金属酸化物の均質な導入のための、ラッカー層の付着補助のための、および/または被覆剤、シール材または接着材料の粘度を調節するための、請求項1から11までのいずれか1項または請求項12から14までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
クロムメッキされた、リン酸塩処理された、亜鉛メッキされた、錫メッキされた、エッチングされた、および/または別の方法で前処理された基体を変性、被覆および/または処理するための請求項15記載の使用。
【請求項17】
基体は、金属またはこの金属を含む合金、例えば殊に鋼、鋼合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ブロンズ、銅、錫および/または亜鉛または記載された金属の合金を含む、請求項15または16記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a−10b】
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【図10c】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−520536(P2013−520536A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554230(P2012−554230)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070745
【国際公開番号】WO2011/103939
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】