説明

オリゴマーフルオロシランの水性組成物および光学エレメントの表面処理のためのその使用

本発明はオリゴマーフルオロシランおよび界面活性剤を含む水性組成物に関する。本発明は更に、前記水性組成物で光学エレメントを処理する方法およびこうして処理された光学エレメントに関する。本発明は更に、処理された光学エレメントを含む物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオリゴマーフルオロシランおよび界面活性剤を含む水性組成物に関する。本発明は更に、前記水性組成物で光学エレメントを処理する方法およびこうして処理された光学エレメントに関する。本発明は更に、処理された光学エレメントを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ビード映写ディスプレースクリーン、道路標識の製造において用いられる再帰反射シートおよび再帰反射ペンキは、結合剤の使用を通して接着された光学エレメントを典型的に含む。ビード映写ディスプレー材料の場合、光学エレメントは、スクリーンの背面から投影光を集めるとともに微小球の表面付近の比較的小さいスポットに投影光の焦点を合わせるためにレンズとして機能する微視的なガラスビーズである。焦点は光学エレメントが前面支持層に接触するおよその面にある。他の再帰反射材料において、光学エレメントは、反射体(拡散反射顔料の金属鏡)上に光を集束させるレンズとして機能し、一旦光が反射体から反射されて出ると、微小球は入射光源に向けて光を送り返すために再びレンズとして機能する。しかし、所望の再帰反射特性をもたらすために、ガラス微小球の層が結合剤層の表面上に存在することが重要である。
【0003】
米国特許第3,222,204号明細書で開示されたように、普通のガラスビーズは、未硬化液体結合剤層中に沈む傾向がある。個々のビーズが完全には浸漬しない場合、ビーズの光学的特性は、ビード表面を浸すとともに露出ビード表面上に広がる結合剤によっても損なわれうる。この問題に取り組むために、米国特許第3,222,204号明細書では、疎油性フルオロカーボンサイジング剤の薄い表面被膜でガラスビーズを被覆することが開示されている。欄5列61〜75において、この参考文献は、「フルオロカーボンクロム配位錯体の水性処理溶液は好ましく、米国特許第2,662,835号明細書(1953年12月15日)、同第2,809,990号明細書(1957年10月15日)および同第2,934,450号明細書(1960年4月26日)に記載されている。錯体は、溶媒と還元剤の両方として機能するイソプロパノールビヒクル中のフルオロカーボンモノカルボン酸(4〜10個の炭素原子を含む高度に弗素化された末端鎖または末端尾を有する)と塩化クロミルの反応によって製造してもよい。クロム対酸のモル比は2:1〜5:1の範囲内である。錯体の得られた緑色イソプロパノール溶液は使用の時点で水で希釈される。フルオロカーボン酸は、末端フルオロカーボン鎖または末端フルオロカーボン尾中に6〜8個の完全弗素化(過弗素化)炭素原子を有する」と述べている。特定の製造実施例は、パーフルオロオクタン酸とN−エチル−N−パーフルオロオクタンスルホニルグリシンのクロム配位錯体を含んでいる。
【0004】
米国特許第4,713,295号明細書には、物質の混合物でガラスビーズを被覆することが開示されている。混合物は、単独で用いられるならビーズを親油性にしておきつつビーズを疎水性にする傾向がある第1の物質および単独で用いられるならビーズを疎水性と疎油性の両方にする傾向がある第2の物質を含む。「最善の結果のために、アニオンフルオロカーボン化合物である第2の物質であって、フルオロ−アルキル−スルホネート、例えばアルキルが長鎖(C14〜C18)を有するフルオロ−アルキル−スルホネートである第2の物質を用いることが好ましい」(欄4、列8〜13参照)。例証的な疎水疎油性物質は、フルオロアルキルスルホン酸カリウム(例えばスリーエム・カンパニー(3M Company)製のFC129)である(欄5、列50〜52参照)。FC129はカリウムフルオロオクチルスルホニル含有化合物である。
【0005】
米国特許出願公開第2002/0090515号明細書および国際公開第02/68353号パンフレットには、光学エレメントの処理のためのパーフルオロポリエーテル化合物の使用が開示されている。特に、式Rf−Xの化合物が教示されている。式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を表し、Xは例えば酸基およびシラン基を含む極性基を表している。
【0006】
米国特許第6,582,759号明細書には、光学エレメントの処理のための(i)非弗素化ポリオール、(ii)弗素化モノアルコールおよび(iii)ポリイソシアネート、ポリカルボン酸およびポリ燐酸の少なくとも1種の反応生成物が開示されている。一実施形態において、反応生成物はシラン基も含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学エレメントの処理のための多くの既知のフルオロケミカル組成物にもかかわらず、更に適する組成物を見つけることが必要とされ続けている。望ましくは、こうした組成物は環境に優しく、便利で容易で費用効果に優れた方法で製造することが可能である。望ましくは、組成物は効果的な方法で光学エレメントに浮きを提供することが可能である。望ましくは、組成物は良好な貯蔵安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、界面活性剤および一般式:
X−Mfnhmar−G (I)
(式中、Xは開始剤の残基または水素を表し、
fは1種以上の弗素化モノマーから誘導された単位を表し、
hは1種以上の非弗素化モノマーから誘導された単位を表し、
aは式:
【化1】

(式中、Y4、Y5およびY6はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基を表し、
4、Y5およびY6の少なくとも1個は、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基およびアリールオキシ基からなる群から選択された加水分解性基を表す)
によって表されるシリル基を有する単位を表し、
Gは連鎖移動剤の残基を含む1価の有機基であり、
nは1〜100の値を表し、
mは0〜100の値を表し、
rは0〜100の値を表し、
n+m+rは少なくとも2である。
但し、(a)Gが式:
【化2】

(式中、Y1、Y2およびY3はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基または加水分解性基を表し、Y1、Y2およびY3の少なくとも1個は、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基およびアリールオキシ基からなる群から選択された加水分解性基を表す)
のシリル基を含むか、または(b)rが少なくとも1である、の条件の少なくとも一方が満たされることを条件とする)
によるフルオロシランを含む水性組成物を提供する。
【0009】
水性組成物は、光学エレメントの表面を処理するとともに光学エレメントに浮きを提供するために用いることが可能である。組成物は効果的に浮きを提供する利点を典型的に提供する。一般に、水性組成物は良好な貯蔵安定性を有し、環境に優しい方法で設計することが可能である。
【0010】
もう1つの態様において、本発明は水性組成物で光学エレメントを処理する方法およびこうして処理された光学エレメントを提供する。
【0011】
本発明は更に、結合剤および本発明の表面処理された光学エレメントを含む舗装マーキング、反射シートおよび映写スクリーンなどの反射物品に関する。光学エレメントは、直径の一般には約40〜80%、好ましくは40〜60%の深さで結合剤表面中に埋め込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
水性組成物
一般式Iに対応する以後フルオロケミカルシランとも呼ばれるフルオロシランは、連鎖移動剤の存在下でフルオロケミカルモノマーおよび任意に非弗素化モノマーのラジカルオリゴマー化によって調製することができる一般にオリゴマーである。本オリゴマーは1個以上の加水分解性基を有する1個以上のシリル基も含むのもよい。加水分解性基には、例えば、塩素または臭素などのハロゲン、例えば、メトキシ、エトキシまたはプロポキシ基などのC1〜C4アルコキシ基を含むアルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基およびアリールオキシ基が挙げられる。1個以上の加水分解性基を有するシリル基は、フルオロケミカルモノマーをシリル基含有モノマーと共重合させることにより、またはシリル基を含む連鎖移動剤の使用を通して、フルオロケミカルシラン中に含めることが可能である。あるいは、オリゴマー化の後でシリル基含有試薬と反応することができる官能化連鎖移動剤または官能化コモノマーを用いることが可能である。
【0013】
オリゴマー中の単位の全数は、n、mおよびrの合計によって表され、化合物をオリゴマーにするために一般に少なくとも2、好ましくは少なくとも3である。フルオロケミカルオリゴマー中のnの値は典型的には1〜100の間、好ましくは2〜20の間である。mおよびrの値は、典型的には0〜100の間、好ましくは1〜30の間である。好ましい実施形態によると、mの値はnの値より小さく、n+m+rは少なくとも2である。フルオロケミカルオリゴマーの分子量は、典型的には約400〜100000、好ましくは800〜20000である。
【0014】
本発明によるフルオロケミカルシランの調製が化合物の混合物をもたらしてもよく、従って、一般式(I)が化合物の混合物を表すと理解されるべきであり、よって式I中の指数n、mおよびrが混合物中の対応する単位のモル量を表すことは当業者によって更に認められるであろう。従って、n、mおよびrが関数値であることが可能であることは明らかであろう。
【0015】
フルオロケミカルシランの単位Mfは、式:
f−Q−E1 (IV)
(式中、Rfは少なくとも3個の炭素原子を含むフルオロ脂肪族基または弗素化ポリエーテル基を表し、Qは2価の有機連結基を表し、E1はラジカル重合性基を表す)
に対応するフルオロケミカルモノマーから一般に誘導される。
【0016】
フルオロケミカルモノマー中のフルオロ脂肪族基Rfは、弗素化され、安定であり、不活性であり、好ましくは飽和の非極性1価脂肪族基である。それは、直鎖、分岐鎖または環式あるいはそれらの組み合わせであることが可能である。それは、酸素、2価または6価の硫黄または窒素などのヘテロ原子を含むことが可能である。Rfは、好ましくは完全に弗素化された基であるが、水素原子または塩素原子は、いずれかの1個以下の原子が2個の炭素原子ごとに存在する場合に置換基として存在することが可能である。Rf基は、典型的には少なくとも3個且つ18個以下の炭素原子、好ましくは3〜14個、特に4〜10個の炭素原子を有し、好ましくは約40〜約80重量%の弗素、より好ましくは約50〜約78重量%の弗素を含む。Rf基の末端部分は過弗素化部分であり、その部分は、好ましくは少なくとも7個の弗素原子を含む(例えば、CF3CF2CF2−、(CF32CF−、F5SCF2−)。好ましいRf基は完全に弗素化されているか、または実質的に弗素化されており、好ましくは式Cn2n+1−(式中、nは3〜18、特に4〜10である)の過弗素化脂肪族基である。
【0017】
f基はパーフルオロポリエーテル基であることも可能である。パーフルオロポリエーテル基Rfは直鎖、分岐および/または環式の構造を含むことが可能であり、それは、飽和または不飽和であってもよく、1個以上の酸素原子で置換されていてもよい。それは、好ましくは過弗素化基(すなわち、すべてのC−H結合がC−F結合によって置換されている)である。より好ましくは、それは、−(Cn2n)−、−(Cn2nO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cn2nO)−、−(Cn2nCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−およびそれらの組み合わせの群から選択された過弗素化反復単位を含む。これらの反復単位におけるZは、パーフルオロアルキル基、酸素置換パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基または酸素置換パーフルオロアルコキシ基であり、それらのすべては、直鎖、分岐または環式であることが可能であり、好ましくは約1〜約9個の炭素原子および0〜約4個の酸素原子を有する。末端基は、(Cn2n+1)−、(Cn2n+1O)−または(X’Cn2nO)−であることが可能であり、式中、X’は例えばH、ClまたはBrである。好ましくは、これらの末端基は過弗素化されている。これらの反復単位または末端基において、nは1以上、好ましくは約1〜約4である。パーフルオロポリエーテル基のために特に好ましい近似平均構造には、C37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−およびCF3O(C24O)pCF2−が挙げられる。ここで、pに関する平均値は1〜約50である。合成される時、これらの化合物はポリマーの混合物を典型的に含む。近似平均構造は、ポリマーの混合物の近似平均である。
【0018】
二官能性フルオロケミカルモノマーも、得られたフルオロケミカルシランが少なくとも0.1重量%で水性媒体中に分散性のままである限り用いることが可能である。従って、式IのMfは式:
a−Qa−R1f−Qb−Eb (V)
に対応する二官能性フルオロケミカルモノマーから更に誘導することが可能である。式中、QaおよびQbはそれぞれ独立して2価の有機連結基を表し、EaおよびEbはそれぞれ独立してラジカル重合性基を表す。R1fは、例えば、−(CF(CF3)CF2O)p−、−(CF2O)p(CF2CF2O)q−、−CF(CF3)(CF2CF(CF3)O)pCF(CF3)O−、−(CF2O)p(CF2CF2O)qCF2−、−(CF2CF2O)p−、−(CF2CF2CF2O)p−などの2価パーフルオロポリエーテル基を表す。ここで、pおよびqに関する平均値は1〜約50である。2官能性フルオロケミカルモノマーの分子量は、一般には約200〜1000、より好ましくは300〜600である。
【0019】
上の式(IV)および(V)の連結基Q、QaおよびQbはフルオロ脂肪族基または弗素化ポリエーテル基RfまたはR1fをラジカル重合性基E1、EaまたはEbに連結し、一般に非弗素化有機連結基である。連結基は、好ましくは1〜20個の炭素原子を含み、酸素、窒素または硫黄含有基またはそれらの組み合わせを任意に含んでもよい。連結基には、好ましくは、ラジカルオリゴマー化を実質的に妨げる官能基(例えば、重合性オレフィン系二重結合、チオールおよび当業者に知られている他のこうした官能基)がない。適する連結基の例証的な例には、直鎖、分岐鎖または環式のアルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシ、オキソ、ヒドロキシ、チオ、スルホニル、スルホキシ、アミノ、イミノ、スルホンアミド、カルボキサミド、カルボニルオキシ、ウレタニレン、ウレイレン、およびスルホンアミドアルキレンなどのそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい連結基は、アルキレンおよび以下の式による2価の有機連結基からなる群から選択される。
【化3】

式中、R1は、水素または炭素原子数2〜4の直鎖または分岐のアルキレンを表し、R2は、水素または炭素原子数1〜4のアルキルを表す。E1、EaおよびEbは、ラジカル重合を受けることができるエチレン系不飽和基を典型的に含むラジカル重合性基である。適する基には、例えば、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエステル、ビニルケトン、スチレン、ビニルアミド、アクリルアミド、マレェート、フマレート、アクリレートおよびメタクリレートから誘導された部分が挙げられる。これらの内、アクリレートおよびメタクリレートなどのアルファ、ベータ不飽和酸のエステルは好ましい。
【0020】
上述したフルオロケミカルモノマーRf−Q−E1およびその調製のための方法は知られており、例えば米国特許第2,803,615号明細書で開示されている。こうした化合物の例証的な例には、弗素化スルホンアミド基を含むフルオロケミカルアクリレート、メタクリレート、ビニルエーテルおよびアリル化合物、フルオロケミカルテロマーアルコールから誘導されたアクリレートまたはメタクリレート、フルオロケミカルカルボン酸から誘導されたアクリレートまたはメタクリレート、およびEP−A−526976号明細書で開示されたパーフルオロアルキルアクリレートまたはメタクリレートの一般クラスが挙げられる。本明細書で使用するために適する弗素化ポリエーテルアクリレートまたはメタクリレートは米国特許第4,085,137号明細書に記載されている。
【0021】
フルオロケミカルモノマーの例には、
【化4】

(式中、Rは、メチル、エチルまたはn−ブチルを表し、uおよびvは約1〜50である)
が挙げられる。
【0022】
フルオロケミカルシランの単位Mh(存在する時)は、非弗素化モノマー、好ましくは重合性基および炭化水素部分からなるモノマーから一般に誘導される。炭化水素基含有モノマーは周知されており、一般に市販されている。単位Mhを誘導できる非弗素化モノマーの例証的な例には、例えば、アリルアセテートおよびアリルヘプタノエートなどのアリルエステル、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルまたはアルキルアリルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、アルファ−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの無水物などの不飽和酸ならびにビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニルまたはアルコキシエチルアクリレートおよびメタクリレートなどの不飽和酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートなどのアルファ−ベータ不飽和ニトリル、アリルアルコール、アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートなどのアルファ,ベータ不飽和カルボン酸誘導体、スチレンおよびビニルトルエン、アルファ−メチルスチレン、アルファ−シアノメチルスチレンなどのスチレンの誘導体、エチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロブタジエン、ジクロロブタジエンおよび2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどのハロゲンを含むことができるより低級のオレフィン系炭化水素、ならびに、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどのアリルハロゲン化物またはビニルハロゲン化物などのラジカル重合可能なエチレン系化合物の一般クラスが挙げられる。好ましい非弗素化モノマーには、オクタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレートおよびエチルヘキシルメタクリレートから選択されたものなどの炭化水素基含有モノマー、ならびに塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが挙げられる。
【0023】
本発明のフルオロケミカルシランは、式:
【化5】

(式中、Y4、Y5およびY6はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、加水分解性基を表し、Zは2価の有機連結基を表し、E2は例えばE1に関して上で記載されたようなラジカル重合性基を表わす)
によって表されるモノマーから誘導可能である単位Maを更に含んでもよい。
【0024】
2価の有機連結基Zは、好ましくは1〜約20個の炭素原子を含む。Zは酸素、窒素または硫黄含有基あるいはそれらの組み合わせを任意に含むことが可能であり、Zには、好ましくはラジカルオリゴマー化を実質的に妨げない官能基(例えば、重合性オレフィン系二重結合、チオールおよび当業者に知られている他のこうした官能基)がない。適する連結基Zの例証的な例には、直鎖、分岐鎖または環式のアルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、ウレイレンアルキレンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい連結基は、アルキレン、オキシアルキレンおよびカルボニルオキシアルキレンからなる群から選択される。
【0025】
4、Y5およびY6は独立してアルキル基、アリール基を表し、それらの少なくとも1個は加水分解性基である。加水分解性基には、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、アシルまたはアリールオキシ基が挙げられる。
【0026】
フルオロケミカルシランは、連鎖移動剤の存在下で任意に非弗素化モノマーおよびシリル基を含むモノマーと弗素化モノマーのラジカル重合を通して便利に調製される。ラジカル開始剤は、重合反応またはオリゴマー化反応を開始させるために一般に用いられる。一般に知られたラジカル開始剤を用いることが可能であり、それらの例には、アゾビスイソブチロニトリル(ABIN)およびアゾ−2−シアノバレリアン酸などのアゾ化合物、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびt−アミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジクミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエートおよびジ−t−ブチルペルオキシフタレートなどのペルオキシエステル、ベンゾイルペルオキシドおよびラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシドが挙げられる。
【0027】
オリゴマー化反応は、有機ラジカル反応のために適するいずれかの溶媒中で行うことが可能である。反応物は反応混合物の全重量を基準にして例えば5〜90重量%の適するいかなる濃度でも溶媒中に存在することが可能である。適する溶媒の例証的な例には、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグリム、ジイソプロピルエーテル)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、メチルクロロホルム、「フレオン(FREON)」(登録商標)113、トリクロロエチレンおよびα,α,α−トリフルオロトルエンなどのハロゲン化溶媒ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
オリゴマー化反応は、有機ラジカル反応を行うために適するいずれかの温度でおこなうことが可能である。用いるための特定の温度および溶媒は、試薬の溶解度、特定の開始剤の使用のために必要とされる温度および所望の分子量などの考慮に基づいて当業者によって容易に選択することが可能である。すべての開始剤およびすべての溶媒のために適する特定の温度を列挙することは実用的ではない一方で、一般に適する温度は30℃〜200℃である。
【0029】
フルオロケミカルオリゴマーは連鎖移動剤の存在下で調製される。適する連鎖移動剤には、典型的にはヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が挙げられる。連鎖移動剤はこうしたヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基の2種以上を含んでもよい。フルオロケミカルオリゴマーの調製において有用な典型的な連鎖移動剤の例証的な例には、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−エチルアミン、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンまたは3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタンなどのメルカプト官能化ポリシロキサンから選択されるものが挙げられる。
【0030】
好ましい実施形態において、1個以上の加水分解性基を有するシリル基を含む連鎖移動剤はフルオロケミカルオリゴマーを製造するためにオリゴマー化において用いられる。シリル基を含む連鎖移動剤には、式VIIによるものが挙げられる。
【化6】

式中、Y1、Y2およびY3はそれぞれ独立してアルキル基、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルなどのC1〜C8アルキル基あるいはシクロヘキシルまたはシクロペンチルなどのシクロアルキルを含むアルキル基、フェニルなどのアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基、例えば、ハロゲン、メトキシまたはエトキシなどのアルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基またはアリールオキシ基などの加水分解性基を表し、Y1、Y2およびY3の少なくとも1個は加水分解性基を表す。Lは−O−、−S−および−NR(式中、Rはアルキル基またはアリール基を表す)などの2価の連結基を表す。
【0031】
好ましい連鎖移動剤は、Lが−S−Q1−を表し、Q1が式VII中のシリコーン原子に連結されている連鎖移動剤である。式中、Q1は、例えば、直鎖、分岐または環式のアルキレン、アリーレンまたはアラルキレンなどの2価の有機連結基を表す。
【0032】
単一連鎖移動剤または異なる連鎖移動剤の混合物を用いてもよい。好ましい連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール、オクチルメルカプタンおよび3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。連鎖移動剤は、オリゴマー中の重合済みモノマー単位の数を制御するとともにオリゴマーフルオロケミカルシランの所望の分子量を得るために十分な量で典型的に存在する。連鎖移動剤は、弗素化モノマーおよび非弗素化モノマーを含むモノマーの当量当たり一般には0.05〜0.5当量、好ましくは約0.25当量の量で用いられる。
【0033】
フルオロケミカルシランを製造するための更なる実施形態は、連鎖移動剤の存在下での1種以上の弗素化モノマーと例えば、ヒドロキシ基またはアミノ基などの後続反応のために利用できる官能基を有するモノマーの重合またはオリゴマー化を含む。こうしたモノマーの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび6−ヒドロキシヘキシルメタクリレートなどのヒドロキシまたはアミノ官能化アクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。官能化モノマーの使用に対する代案または官能化モノマーの使用に加えて、官能化連鎖移動剤を用いることが可能である。例えば、ヒドロキシ基またはアミノ基などの基で官能化されている連鎖移動剤を用いることが可能である。こうした連鎖移動剤の例証的な例には、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールおよび2−メルカプト−エチルアミンが挙げられる。オリゴマー化の後、コモノマーおよび/または連鎖移動剤に含まれる官能基は、加水分解性基を有するシリル基を含む化合物であって、コモノマーおよび/または連鎖移動剤中に含まれる官能基と反応できる化合物と反応することが可能である。
【0034】
モノマーまたは連鎖移動剤中に存在する官能基と反応するために適する化合物は以下の式による化合物を含む。
【化7】

式中、Aは、モノマーまたは連鎖移動剤中に含まれる官能基と縮合反応を受けることができる官能基、特に、ヒドロキシ官能性オリゴマーまたはアミノ官能性オリゴマーと縮合できる官能基を表す。Aの例には、イソシアネート基またはエポキシ基が挙げられる。Q5は2価の有機連結基を表し、Ya、YbおよびYcはそれぞれ独立してアルキル基、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルなどのC1〜C8アルキル基あるいはシクロヘキシルまたはシクロペンチルなどのシクロアルキルを含むアルキル基、フェニルなどのアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基あるいは例えば、ハロゲン、メトキシまたはエトキシなどのアルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基またはアリールオキシ基などの加水分解性基を表し、Ya、YbおよびYcの少なくとも1個は加水分解性基を表す。2価の有機連結基Q5の例証的な例には、直鎖、分岐鎖または環式のアルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、ウレイレンアルキレンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい連結基は、アルキレン、オキシアルキレンおよびカルボニルオキシアルキレンからなる群から選択される。
【0035】
式VIIIによる化合物の例証的な例には、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランおよび3−エポキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0036】
縮合反応は当業者に周知されている従来の条件下で便利に行われる。好ましくは、反応は触媒の存在下で行われる。適する触媒の例証的な例には、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクタノエート、スタナスオレェート、錫ジブチルジ−(2−エチルヘキサノエート)、塩化第一錫などの錫塩、および当業者に知られているその他が挙げられる。存在する触媒の量は特定の反応に応じて異なり、従って、特別な好ましい濃度を挙げることは実際的ではない。しかし、一般に、適する触媒濃度は、反応物の全重量を基準にして一般には0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%である。
【0037】
縮合反応は、好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルイソブチルケトンおよびトルエンなどの極性溶媒中で乾燥条件下で行われる。適する反応温度は、特定の反応物、溶媒および用いられる触媒に基づいて当業者によって容易に決定される。適する温度は、典型的には室温から120℃である。
【0038】
上述した官能化連鎖移動剤をオリゴマー化において用いる場合、オリゴマーと式VIII(式中、Aはイソシアネート基である)による化合物の縮合反応および更なる交換反応は、一般に式IXによって表すことができる有機残基G(式I)を有するフルオロケミカルシランオリゴマーを一般にもたらす。
【化8】

式中、Q1およびQ5はそれぞれ独立して2価の有機連結基を表し、T2はOまたはNRを表し、Rは水素またはアリールあるいはC1〜C4アルキル基であり、Y1、Y2およびY3は上で定義された通りであり、Y1、Y2およびY3の少なくとも1個は加水分解性水可溶化基を表す。
【0039】
式VIIIによる化合物(式中、Aはエポキシ基である)を用いる時、有機残基は式XまたはXIあるいはそれらの混合物による残基によって表すことができる。
【化9】

式中、Q1、Q5、T2ならびにY1、Y2およびY3は式IXにおいて上で定義された通りの意味を有する。
【0040】
上述した方法のいずれかによるフルオロケミカルシランの調製後、フルオロケミカルシランは調製において用いられた一切の溶媒を蒸発させることにより単離してもよい。
【0041】
フルオロシランの水性分散液または水性エマルジョンは、界面活性剤の助けにより水中でフルオロシランを混合することによって得ることが可能である。エマルジョンまたは分散液を製造するために適する界面活性剤には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。用いることができる界面活性剤の特定の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび分子量1500のポリ(エチレングリコール)が挙げられる。典型的には、界面活性剤は、フルオロシランの重量を基準にして典型的には1〜25%、好ましくは3〜6%の量で用いられる。エマルジョンまたは分散液は約50%以下の共溶媒を更に含んでもよい。水性組成物中で用いるために適する共溶媒には、極性溶媒および特にアルコール、ケトン、エーテルおよびアセテートなどの水混和性有機溶媒が挙げられる。共溶媒の特定の例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルが挙げられる。水性組成物は、好ましくは約30%未満の共溶媒、より好ましくは約10%未満の共溶媒を含み、最も好ましくは、水性組成物には実質的に共溶媒がない。
【0042】
光学エレメント
「光学エレメント」という用語は、約25〜1000マイクロメートルの範囲の粒子サイズを有するとともに1.5〜2.3またはそれ以上の範囲の屈折率を有する材料を意味する。
【0043】
光学エレメントは2ミリメートル以下、好ましくは250マイクロメートル以下である少なくとも1つの寸法を有する。光学エレメントは、粒子、フレークおよび繊維などのいずれかの形状の形態を取ってもよい。しかし、以後「ガラスビーズ」、「ビーズ」および「微小球」として表される球状ガラスエレメントは、再帰反射物品(例えば、再帰反射シート、舗装マーキングおよびビード映写スクリーン)などの材料のために好ましい。
【0044】
再帰反射材料の製造中に、光学エレメントは結合剤によって適所に固定される。光学エレメントは、結合剤の密度の数倍の密度または比重を有し、よって光学エレメントを表面上に浮かばせるのでなく結合剤層中に沈めさせる。
【0045】
光学エレメントの好ましい特性をガラスビーズに関して本明細書で記載する。普通のガラスビーズは、典型的には約2.5の密度および約1.5の屈折率を有する。「高インデックス」ビーズが約3.5の密度および約1.9の屈折率を有するビーズを意味するのに対して、「超高インデックス」は、典型的には約5の密度および約2.3以上の屈折率を有するビーズを意味する。ガラスビーズの直径は、典型的には数マイクロメートル〜約2500マイクロメートルの範囲であり、好ましくは約25〜1000マイクロメートルである。
【0046】
所望の粒子サイズおよび屈折率を有することに加えて、ガラスビーズは典型的には透明である。透明という用語は、光学顕微鏡(例えば100倍で)下で見た時、微小球と物体の両方を微小球とほぼ同じ屈折率の油に浸漬している時、微小球と同じ性質の物体などの微小球より下の物体を微小球を通して明確に見ることができるように微小球が可視光の透過光線の特性を有することを意味する。微小球より下にある物体の輪郭、外面または縁は明確に識別できる。油は微小球の屈折率に近い屈折率を有するのがよいけれども、油は完全調和の場合に起きうるように微小球が消えるように思われるほど近くないのがよい。
【0047】
光学エレメントはセラミックである微小球を含んでもよい。一般に、セラミック微小球光学エレメントは実質的に無色である金属酸化物よりなる。適する金属酸化物には、Al23、SiO2、ThO2、SnO2、TiO2、Y23およびZrO2が挙げられ、ジルコニウム、珪素およびチタンの酸化物が好ましい。セラミック微小球は用いられる種々の金属酸化物の種類および量ならびに製造の方法に応じて一定の特性範囲を示すことが可能である。しかし、砂より大きい平均硬度を有する開放多孔度が実質的にない密な微小球が好ましい。
【0048】
微小球の種々の最終用途のために望まれる特性および製造の方法(例えばゾルゲル法)に関する追加の情報は、米国特許第3,493,403号明細書、同第3,709,706号明細書および同第4,564,556号明細書に見られる。本発明の光学エレメントとして用いるために適するガラスビーズは、ミズーリ州フェントンのフレックス−オー−ライト(Flex−O−Lite Corporation(Fenton,MO))および日本国大阪の日本電気硝子(Nippon Electric Glass(Osaka,Japan))から市販もされている。
【0049】
光学エレメントの処理の方法
光学エレメントは、エレメントに表面処理を提供するためにフルオロシランを含む水性組成物で処理され、よって結合剤が液化されている時に結合剤中の光学エレメントの浮き特性を変える。ガラスビーズの文脈で記載される「浮かぶ」およびその派生は、各ビーズの半分を若干上回る部分が浸漬している位置を取るビーズに関連する。結合剤は、好ましくは、ビーズの赤道の上5〜30度までのみ、埋め込まれたビーズに接触している。ガラスビーズの浮きは、粒子サイズ、粒子サイズ分布、表面化学および特定のガラスビーズの化学構成ならびに液化状態にある結合剤の化学構成、密度および粘度によってある程度影響を受けうる。しかし、一般に、ガラスビーズの約10%以下のみは効果的な表面処理のない状態でヘプタン試験液に浮かぶ傾向がある。
【0050】
波だっていない結合剤を基準にしてガラスビーズが表面処理のお陰で達成する位置は、乾燥または固化された最終的な結合剤被膜中にビーズを定着させるのを助ける。ガラスビーズは、好ましくは、ビーズ直径の約40〜80%、より好ましくは約40〜60%まで埋め込まれる。ビーズは適切に露出して、ビーズのサイズを基準にして大きな光学アパチャを有する球レンズを提供する。結合剤の乾燥または固化中、結合剤膜の多少の収縮がある。しかし、ビーズは、浮きビーズの中心が結合剤層の下部背面表面または基板の最上表面からおよそ等距離で接着されたままである。
【0051】
光学エレメントの浮きの改善に加えて、表面処理が光学エレメントの結合剤との接着力に悪影響を及ぼさないことも重要である。粘着力は幾つかの方法で評価することが可能であり、本明細書においてガラスビーズである好ましい光学エレメントを基準にして記載されている。初期接着力は、埋め込まれたガラスビーズが硬化後に結合剤中に沈んだ深さを推定することにより主観的に決定することが可能である。ガラスビーズは、ビーズ直径の好ましくは約40〜70%、より好ましくは約40〜60%の深さに埋め込まれる。粘着力を評価するもう1つの方法は促進老化評価である。硬化したガラスビーズが埋め込まれた結合剤の1片を沸騰水中で24時間にわたり状態調節する。状態調節後、ガラスビーズは、好ましくは状態調節前と同じ程度に埋め込まれており、個々のガラスビーズは切開プローブで除去するのが困難である。粘着力に及ぼす結合剤の影響を評価するためのもう1つの方法は比較引張試験である。約1対3の比の結合剤と未処理ガラスビーズの均一スラリーを約0.4mmの厚さを有するフィルムに引き落とす。同じ原料比およびフィルム厚さを用いる結合剤と表面処理済みガラスビーズの第2のスラリーを調製する。サンプルを完全に硬化させた後、サンプルを周囲温度で水中で24時間にわたり状態調節する。引張試験を0.5インチ(1.3cm)/分の速度で2インチ(5cm)空隙を用いて幅1インチ(2.5cm)のサンプルで行う。表面処理済みビードを含むサンプルの破断点応力は未処理ビーズを含む対照サンプルとほぼ同じか、または好ましくは未処理ビーズを含む対照サンプルより大きい(平均値の標準偏差約90%以上)。前に記載した方法のいずれか1つは、表面処理がガラスビーズと結合剤の接着力に悪影響を及ぼすか否かを決定するのに典型的には十分である。しかし、好ましくは、評価の3つのすべてを行う。
【0052】
表面処理剤は、光学エレメントの約50%を上回る部分がヘプタン中で浮かぶように十分な量で光学エレメント上に典型的に存在するのがよい。表面処理剤は、好ましくは光学エレメントの約80%を上回る部分がヘプタン中で浮かぶ、より好ましくは光学エレメントの約90%〜100%がヘプタン中で浮かぶように浮遊度を改善する。
【0053】
光学エレメントを被覆するために用いられるフルオロシランの量は光学エレメントの重量に対して典型的には約5ppm〜約1000ppmの範囲である。フルオロシランの量は、通常は約600ppm以下、好ましくは約300ppm以下、より好ましくは約150ppm、なおより好ましくは約100ppm、最も好ましくは約50ppm以下である。本発明の表面処理剤の全体的な被膜厚さは、典型的には約15オングストロームより厚い、好ましくは約20オングストロームより厚い、より好ましくは約50オングストロームより厚い。より厚い被膜は必要ならば得ることが可能である。但し、被膜厚さが約500オングストローム以下、より好ましくは約300オングストローム厚さ以下、最も好ましくは約150オングストローム厚さ以下であることが好ましい。表面処理剤の過剰濃度は光学エレメントの凝集をもたらしうる。こうした限界は、日常的な実験によって決定することが可能であり、場合によって、凝集は流れ調整剤の使用によって減らすことが可能である。
【0054】
表面処理剤は今記載された化合物のどの1種またはいずれかの混合物ならびに今記載された表面処理剤と既知の他の表面処理剤の混合物を含んでもよい。
【0055】
光学エレメントは、定着剤および粒子の凝集を減らす流れ調整剤などの1種以上の追加の表面処理剤を含んでもよい。3−アミノプロピルトリエトキシシランなどの種々のシランが定着剤として一般に用いられるのに対して、「ボラン」という商品名でオハイオ州クリーブランドのザクロン(Zaclon Inc.(Cleavland,OH))から市販されているメタクリラトクロム塩化物は典型的な流れ調整剤である。
【0056】
再帰反射物品
表面処理された光学エレメントは、舗装マーキング、再帰反射シートおよびビード映写スクリーンなどの様々な反射製品または反射物品を製造するために用いることが可能である。こうした製品は、液体結合剤層を含み、多数の光学エレメントを結合剤表面中に埋め込み、その後、結合剤を固化して光学エレメントを適所に維持する共通の特徴を共有する。本発明の舗装マーキング、再帰反射シートおよびビード映写スクリーンにおいて、光学エレメントの少なくとも一部は本発明の表面処理された光学エレメントを含む。典型的には、反射製品の製造において用いられる光学エレメントの大部分、好ましくは実質的にすべては本発明の表面処理された光学エレメントを含む。
【0057】
種々の1パート硬化性結合剤および2パート硬化性結合剤ならびに溶融するまで加熱を経由して液状態を達成する熱可塑性結合剤を含む種々の既知の結合剤材料を用いてもよい。一般的な結合剤材料には、ポリアクリレート、メタクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエポキシド樹脂、フェノール樹脂およびポリエステルが挙げられる。反射ペンキに関して、結合剤は反射顔料を含んでもよい。しかし、反射シートに関して、結合剤は典型的には透明である。透明結合剤は反射基板に被着されるか、または剥離被覆された支持体に被着させてもよく、透明結合剤の固化後、ビーズ付きフィルムは剥離被覆された支持体から剥ぎ取られ、後で反射基板に被着させてもよいか、あるいは反射塗料または反射メッキを与えてもよい。
【0058】
表面処理された光学エレメントを用いてもよい露出レンズ(例えば、米国特許第2,326,634号明細書および同第2,354,018号明細書)再帰反射シート、埋め込みレンズ(例えば米国特許第2,407,680号明細書)再帰反射シートおよびカプセル化レンズ(例えば米国特許第4,025,159号明細書)再帰反射シートなどの再帰反射物品の幾つかのタイプがある。再帰反射物品は、(i)剥離被覆されたウェブ上にトップコートを形成する工程(例えば、剥離被覆された紙ウェブ上にヒドロキシ官能性アクリルポリオールおよび脂肪族多官能性イソシアネートの溶液を被覆し、その後、オーブンを通して被膜を約150℃で約10分にわたり搬送することにより硬化させる)、(ii)液体結合剤でトップコートの露出表面を被覆する工程(例えば、油のない合成ポリエステル樹脂およびブチル化メラミン樹脂を含む溶液を被覆する)、(iii)結合剤を乾燥させて未硬化粘着性ビーズ結合層を形成する工程、(iv)複数のガラス微小球をビーズ結合層上にカスケード被覆し、埋め込みガラス微小球の単層を形成する工程、(v)ビーズ含有ビーズ結合層を非粘着性状態に硬化させ(例えば、150℃に加熱することにより)、ビーズ含有ビーズ結合層上にわたって空間コート層を形成する工程(例えば、溶媒中のポリビニルブチラール樹脂およびブチル化メラミン樹脂よりなる25%固形物溶液を被覆し、170℃で約10分にわたり硬化させる)、(vi)空間コート層上にわたって反射層を被着させ(例えば、約100nmの厚さでアルミニウム金属を蒸着させる)、剥離被覆ウェブを剥ぎ取る工程を含む方法を含む既知の方法によって調製することが可能である。接着剤層は、典型的には反射層に被着される(例えば、シリコーン処理剥離ライナ上に強力アクリル感圧接着剤の厚さ0.025mmの層を被覆し、接着剤を反射層に対して押し付けることにより)。
【0059】
表面処理された光学エレメントは舗装マーキング材料中でも有用である。光学エレメントは、多数の光学エレメントを中に分散させた膜形成材料を一般に含む塗料組成物に導入することが可能である。表面処理された光学エレメントは、光学エレメントを湿式ペイントまたは高温熱可塑性樹脂上に単に落下させ、湿式ペイントまたは高温熱可塑性樹脂に接着させるハイウェーレーン識別線のような目的のために落下用途においても用いてよい。
【0060】
1つの典型的な舗装マーキングシートは米国特許第4,248,932号明細書に記載されている。このシート材料は、レーン分割線のような目的のために舗装上に置き舗装上に固定するために適合した組立細片であり、道路表面に順応性である軟質アルミニウムフォイルなどの基板シート、基板シートの1表面に接着され、非常に可撓性で耐破断性であるトップ層(支持フィルムまたは結合剤フィルムとも呼ばれる)および分散された方式または無秩序に分離された方式でトップ層中に部分的に埋め込まれた透明微小球レンズエレメントなどの表面処理された光学エレメントの単一層を含む。舗装マーキングシート構造は、基板シートの底上に接着剤(例えば、感圧接着剤、熱活性化接着剤または溶媒活性化接着剤あるいは接触接着剤)も含んでよい。基板シートは、アクリロニトリル−ブタジエンポリマー、ポリウレタンまたはネオプレンゴムなどのエラストマー製であってもよい。表面処理された微小球が埋め込まれているトップ層は、ビニルポリマー、ポリウレタン、エポキシおよびポリエステルなどの典型的にはポリマーである。あるいは、表面処理された微小球レンズは舗装マーキングシートの層中に完全に埋め込んでもよい。
【0061】
舗装マーキングシートは、技術上知られているプロセスによって製造してもよい(例えば米国特許第4,248,932号明細書参照)。一例は、(i)軟質アルミニウムの基板シート(厚さ50マイクロメートル)上に樹脂の混合物(例えば、エポキシとアクリロニトリルブタジエンエラストマーの混合物)、顔料(TiO2)および溶媒(例えばメチルエチルケトン)を被覆して支持フィルムを形成する工程、(ii)支持フィルム原料の湿潤表面上に本発明の多数の表面処理された光学エレメントを落下させ、支持フィルムを150℃で約10分にわたり硬化させる工程を含む。その後、接着剤の層は基板シートの底上に通常は被覆される。
【0062】
顔料または他の着色剤は、交通制御マーキングとして用いるためのシート材料を着色するのに十分な量でトップ層に含めてもよい。二酸化チタンは白色を得るために典型的に用いられるのに対して、クロム酸鉛は黄色を提供するために典型的に用いられる。
【0063】
背面映写スクリーンは、光学映写装置の画像表面に置かれる比較的薄いビューイング層を有するシート様光学装置である。不透明マトリックスに埋め込まれたガラス微小球を含む背面映写スクリーンディスプレーは、例えば米国特許第2,378,252号明細書から知られている。一般に、微小球のサイズは約150マイクロメートル未満である。最大輝度のために、微小球は約1.8未満、好ましくは約1.45〜約1.75の屈折率を有する。複数の表面処理されたガラス微小球は透明基材の主面に結合されるか、または透明基材の主面に密に接触している。あるいは、拡散層は、不透明結合剤および微小球の被着の前に透明基材上に分離層として光学的に不均質な材料を被覆することにより形成することが可能である。背面映写スクリーンは、i)不透明結合剤(例えば、不透明にするためにカーボンブラックを装填したアクリレート)を上に配置させた基材(例えば、ポリエステル、ポリカーボネート)を提供する工程およびii)基材に光学的に接触しており、不透明マトリックスに埋め込まれた微小球をもたらすために有効な条件下で表面処理されたガラス微小球を被着させる工程によって調製される。
【0064】
本発明の幾つかの有用な実施形態において、鏡面反射手段は、表面処理された微小球上に蒸着された金属(例えばアルミニウム)の層により提供される。もう1つの有用な鏡面反射手段は、隣接層またはビーズの屈折率より約0.3高いか、または低い屈折率を各層が有し、可視範囲内の光の約1/4波長の奇数倍に対応する光学厚さを各層が有する微小球の背後の透明材料の1層以上の層を含む誘電性反射体である。こうした誘電性反射体に関するより詳細は米国特許第3,700,305号明細書に見られる。
【0065】
本発明を以下の実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0066】
フルオロケミカルおよび配合物の調製
本願において、以下の略称を用いる。
「MeFBSEA」は、国際公開第01/30873号パンフレット(サビュ(Savu)ら)の実施例2Bに記載された手順により調製されたN−メチル−パーフルオロブタンスルホニルエチルアクリレートである。
「MeFBSPTMS」は、米国特許第5,274,159号明細書の実施例6に見られるのと同じ手順を用いるが、N−メチルパーフルオロブタンスルホニル類似体を用いて調製されたN−メチル−パーフルオロブタンスルホニルプロピルトリメトキシシランである。
「ODA」は、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から入手できるオクタデシルアクリレートである。
「A−174」は、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートであり、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から入手できる。
「バゾ(VAZO)」64は、デラウェア州ウィルミントンのデュポン(Dupont(Wilmington,DE))から入手できるラジカル開始剤である。
「ペグ(PEG)」−1500は分子量15,00のポリ(エチレングリコール)であり、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から入手できる。
「DS−10」は、「シポネート(SIPONATE)」DS−10という商品名でニュージャージー州プリンストンのローン・プーラン(Rhone−Poulenc(Princeton,NJ))から入手できるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
「FP−1」は、MeFBSEAと(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(モル比4:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−2」は、MeFBSEAと(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(モル比6:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−3」は、MeFBSEA、ODAおよび(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(モル比4:0.3:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−4」は、MeFBSEA、ODAおよび(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(モル比4:0.6:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−5」は、MeFBSEA、ODA、A−174および2,2−(ジヒドロキシメチル)ブチルトリス(3−メルカプトプロピオネート)(モル比5:1:1:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−6」は、MeFBSEA、ODA、A−174およびHSC24OCH22(モル比6:1:0.5:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−7」は、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルアクリレートと3−(トリエトキシシリル)プロピルアミド3−メルカプトプロピオネート(モル比1:1)から得られるオリゴマーである。
「FP−8」は、MeFBSEA、A−174およびステアリル3−メルカプトプロピオネート(モル比6:1:1)から得られるオリゴマーである。
【0067】
実施例で用いた他のすべての化学品は、ダウ・ケミカル(Dow Chemical Co.)(ミシガン州ミッドランド(Midland,MI))から入手できる3−メルカプトプロピオン酸オクタデシルエステルを除き、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))から入手できる。
【0068】
比較実施例1−MeFBSPTMSの乳化
99部の蒸留水中に1部のDS−10を溶解させることにより水中のDS−10の1%溶液を製造した。DS−10が溶解するまで、この溶液を室温で攪拌した。その後、3%のMeFBSPTMSを添加した。溶液をさらに30分にわたり攪拌したが、この時間後に油相および水相を有することが観察された。混合物は1週間にわたり静置すると白色沈殿物をゆっくり生じた。
【0069】
実施例1−FP−1溶液およびエマルジョンの調製
80ミリモルのMeFBSEA(32.88g)、20ミリモルの3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(3.92g)、エタノール(40g)および酢酸エチル(20g)をN2で完全にフラッシュされたボトルに入れた。「バゾ(VAZO)」64(0.1g)を添加し、混合物を通してN2を泡立てて、酸素を除去し、ボトルを密封し、混合物を70℃で24時間にわたり重合させた。固形物38%の得られたポリマー溶液(FP−1S)をFTIRによって分析し、それは、アクリレート二重結合の信号(1637−1621cm-1)の消失を確認した。
【0070】
50gの上のポリマー溶液を水(100g)中のDS−10(0.75g)で乳化した。溶媒を真空で除去して18.5%の固形物含有率を有する106gのエマルジョン(FP−1E)をもたらした。
【0071】
実施例2−FP−2エマルジョンの調製
120ミリモルのMeFBSEA(49.32g)、20ミリモルの3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(3.92g)、酢酸エチル(100g)および「バゾ(VAZO)」64(0.5g)を実施例1で記載された手順と同じ手順で重合させた。固形物34%の溶液を得た。
【0072】
ポリマー溶液を水(200g)中のDS−10(1.6g)およびPEG−1500(10.64g)で乳化した。固形物25.2%の250gのエマルジョン(FP−2E)を溶媒除去後に得た。
【0073】
実施例3−FP−3溶液およびエマルジョンの調製
160ミリモルのMeFBSEA(65.76g)、11.3ミリモルODA(3.80g)、40ミリモルの3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(7.84g)、酢酸エチル(106g)、イソプロパノール(14g)および「バゾ(VAZO)」64(0.2g)をボトルに入れ、実施例1で記載された手順と同じ手順を用いて70℃で24時間にわたり重合させた。得られたポリマー溶液(FP−3S)は固形物39.21%であり、FTIRによって分析した。
【0074】
ポリマー溶液を水(250g)中のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DS−10、1.9g)およびPEG−1500(20g)で乳化した。固形物18.3%のエマルジョン(FP−3E)を溶媒除去後に得た。
【0075】
実施例4−FP−4エマルジョンの調製
200ミルモルのMeFBSEA(82.20g)、30ミリモルのODA(9.75g)、50ミリモルの3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(9.80g)、「バゾ(VAZO)」64(1.1g)および酢酸エチル(200g)を実施例1で記載された手順と同じ手順を用いて70℃で24時間にわたり重合させた。固形物39.2%の溶液を得た。
【0076】
ポリマー溶液を水(400g)中のDS−10(2.0g)およびPEG−1500(15g)で乳化した。固形物22.4%のエマルジョン(FP−4E)を溶媒除去後に得た。
【0077】
実施例5−FP−5エマルジョンの調製
240ミルモルのMeFBSEA(98.64g)、40ミリモルのODA(13.0g)、40ミリモルの(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(9.92g)、40ミリモルの2,2−(ジヒドロキシメチル)ブチルトリス(3−メルカプトプロピオネート)(15.94g)、「バゾ(VAZO)」64(1.0g)および酢酸エチル(220g)を実施例1で記載された方式に似た方式で70℃で15時間にわたり重合させた。得られた溶液は固形物38%であった。
【0078】
溶液を水(600g)中のDS−10(4.0g)およびPEG−1500(20g)で乳化した。得られたエマルジョン(FP−5E)は溶媒除去後に固形物18%であった。
【0079】
実施例6−FP−6エマルジョンの調製
300ミルモルのMeFBSEA(123.3g)、50ミリモルのODA(16.25g)、25ミリモルの3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(6.20g)、50ミリモルの3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール(9.10g)、「バゾ(VAZO)」64(1.1g)および酢酸エチル(250g)を実施例1で記載された方式に似た方式で70℃で4時間にわたり重合させた。追加の「バゾ(VAZO)」64(0.2g)を添加し、溶液をもう10時間にわたり70℃に加熱した。得られた溶液は固形物38%であった。
【0080】
300gの上の溶液を水(500g)中のDS−10(3.3g)およびPEG−1500(20g)で乳化した。得られたエマルジョン(FP−6E)は溶媒除去後に固形物18.7%であった。
【0081】
実施例7−FP−7の調製
40ミルモルの3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルアクリレート(16.27g)、10ミリモルの2−メルカプトエタノール(0.78g)、「バゾ(VAZO)」64(0.175g)および酢酸エチル(32.5g)を実施例1で記載された方式に似た方式で70℃で24時間にわたり重合させた。得られた溶液(50g)は固形物35%であった。
【0082】
5滴のジブチル錫ジラウレート触媒を用いて29.4gの溶液を40gの酢酸エチル中の1.46gの3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネートと70℃で4時間にわたり反応させた。FP−7の得られた溶液は固形物22.7%であり、FTIRにおいてイソシアネートピークを示さなかった。
【0083】
実施例8−FP−8の調製
240ミルモルのMeFBSEA(98.64g)、40ミリモルの3−(トリメトキシシリル)プロピルメルカプタン(9.92g)、40ミリモルの3−メルカプトプロピオン酸オクタデシルエステル(14.0g)、「バゾ(VAZO)」64(0.5g)および酢酸エチル(200g)を実施例1で記載された方式に似た方式で70℃で24時間にわたり重合させた。得られた溶液は固形物38%であった。
【0084】
フルオロオリゴマー入り水性配合物の安定性
【0085】
【表1】

【0086】
ガラスビーズ浮き試験
実施例9〜20−ガラスビーズ浮きのための適用
球状ガラスビーズ(平均直径71マイクロメートル、米国特許出願公開第2002/0090515号明細書(ジング(Jing)ら)においてタイプIビーズとして記載されたもの)をフルオロオリゴマーFR−1〜FP−8で次の通り処理した。フルオロオリゴマー(FR−1〜FP−8)を表IIの指示溶媒で希釈して、固形物含有率に基づく所望の濃度を得た。用いられたフルオロオリゴマー、用いられた溶媒系、タイプIビード上のフルオロオリゴマーの理論濃度および浮いているビーズの%を表IIで報告している。表面処理するとともにビーズの浮きを試験するために用いられた手順は、上で引用した米国特許出願公開第2002/0090515号明細書の実施例節で記載された手順と同じであった。
【0087】
ヘプタン浮き試験を用いて浮き試験を次の通り行った。光学エレメント(処理されたビーズ)の単一層を転倒した清浄パイントペンキ缶蓋上に広げた。ヘプタンが溢れるまでヘプタンを蓋の縁でシリンジまたはスポイトによりゆっくり導入した。浮く光学エレメントの%を目視で推定した。コポリマー表面処理剤で被覆してから24時間以内にビーズを試験した。結果を表IIに示している。
【0088】
【表2】

【0089】
比較例2を除くすべての実施例において、溶媒を使用の前に乾燥させなかった。比較例2において、乾燥酢酸エチルをビーズ処理溶媒として用いた。結果は、フルオロオリゴマーをビーズに接着できる前に溶媒中の少量の残留水がフルオロオリゴマーのシロキサンエステル基を加水分解するために必要であることを示している。実施例12のビーズを処理するために水の滴を比較例2のフルオロオリゴマー溶液に添加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤および一般式:
X−Mfnhmar−G (I)
(式中、Xは開始剤の残基または水素を表し、
fは1種以上の弗素化モノマーから誘導された単位を表し、
hは1種以上の非弗素化モノマーから誘導された単位を表し、
aは式:
【化1】

(式中、Y4、Y5およびY6はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基を表し、
4、Y5およびY6の少なくとも1個は、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基およびアリールオキシ基からなる群から選択された加水分解性基を表す)
によって表されるシリル基を有する単位を表し、
Gは連鎖移動剤の残基を含む1価の有機基であり、
nは1〜100の値を表し、
mは0〜100の値を表し、
rは0〜100の値を表し、
n+m+rは少なくとも2であり、
但し、(a)Gが式:
【化2】

(式中、Y1、Y2およびY3はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基または加水分解性基を表し、Y1、Y2およびY3の少なくとも1個は、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基およびアリールオキシ基からなる群から選択された加水分解性基を表す)
のシリル基を含むか、または(b)rが少なくとも1である、の条件の少なくとも一方が満たされることを条件とする)
によるフルオロシランを含む水性組成物。
【請求項2】
前記組成物は、前記組成物の全重量の50重量%以下の量で共溶媒を更に含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記共溶媒は、アルコール、ケトン、エーテルおよびアセテートからなる群から選択される、請求項2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記弗素化モノマーは式:
f−Q−E1
(式中、Rfは少なくとも3個の炭素原子を含むフルオロ脂肪族基を表し、Qは2価の有機連結基を表し、E1はラジカル重合性基を表す)
に対応する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
fはC49−を表す、請求項4に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記単位Maは式:
【化3】

(式中、Y4、Y5およびY6は請求項1で定義された意味を有し、Zは2価の有機連結基を表し、E2はラジカル重合性基を表す)
によって表されたモノマーから誘導可能である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項7】
光学エレメントを処理する方法であって、請求項1に記載の水性組成物に接触させることを含む方法。
【請求項8】
前記光学エレメントがガラスまたはセラミックの微小球を含む、請求項7に記載の光学エレメントを処理する方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法により得ることができる表面処理された光学エレメント。
【請求項10】
請求項9に記載の表面処理された光学エレメントを含む液体組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の表面処理された光学エレメントを含む再帰反射物品。
【請求項12】
透明基材および不透明結合剤マトリックスに埋め込まれた請求項9に記載の複数の光学エレメントを含む背面映写スクリーンであって、前記光学エレメントが前記透明基材に接触している背面映写スクリーン。

【公表番号】特表2007−523970(P2007−523970A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546989(P2006−546989)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/037002
【国際公開番号】WO2005/068386
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】