説明

オリゴマーフルオロシランの組成物および再帰反射シートの表面処理

本発明は、1個以上のシリル基を有するフッ素化化合物と、(i)Si、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnから選択された元素Mの1つ以上の非フッ素化化合物および(ii)Si−H基を有する有機化合物からなる群から選択された補助化合物とを含む処理組成物による再帰反射シートの処理方法に関する。本発明はまた、(i)1個以上のシリル基を含むフッ素化化合物と(ii)Si−H基を有する有機化合物からなる群から選択された補助化合物とを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化処理組成物およびフッ素化組成物による再帰反射シートの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射物品は、光が発生する方向に入射光の相当な部分を戻すことができる。この独自の能力のため、道路工事管理者および消防士が着用する衣服に再帰反射物品を広範に使用することができる。それらの衣服上に示される再帰反射物品は典型的に、再帰反射ストライプの形状である。再帰反射ストライプは典型的に、ガラスビーズなどの微小球の層を含む。再帰反射物品は、それらの存在を目立たせることによって着用者の安全性を改善する。
【0003】
微小球を含有する再帰反射材料のいくつかの基本的なタイプが知られている。一つには、微小球が透明な樹脂層に覆われているいわゆる埋設または封入レンズタイプのシート材料が知られており、すなわち微小球は完全に埋められていて空気に露出していない。微小球を有する反射シート材料の第2のタイプは微小球が部分的に空気に露出している、いわゆるオープンビーズまたはオープンレンズ材料であり、すなわち、微小球はバインダー層に完全には埋っていない。微小球シート材料の第3のタイプは、ポリマーカバーフィルムが反射シートの微小球を担持している表面のところどころにヒートシールされている点を除いて第2のタイプに類似している。密閉レンズシート材料中の微小球は(ポリマーカバーフィルムの下では)空気に露出しているが、降雨などの要素には曝されず、オープンビードシート材料とは考えられていない。
【0004】
オープンビーズの反射シート材料の特徴的な欠点は降雨条件下で反射率が低下することである。さらには、しばしばシート材料の反射性能が数回の洗濯で消失する。
【0005】
特開平08−309929号公報には、オープンビーズ反射シートの露出ガラスビーズをフルオロケミカル化合物とシランカップリング剤との組合せで処理することが開示されている。フルオロケミカル化合物として、ペルフルオロアルキルアクリル酸エステルが教示されている。また、当該処理の耐久性をさらに向上させるためにメラミン樹脂またはイソシアネート架橋剤を付加的に使用することが推奨されている。
【0006】
EP1,262,802号明細書は、反射要素を含むと共に反射シートの主面において部分的に露出した微小球を含む反射シートを提供する。前記反射シートは、フッ素化基と1個以上の加水分解可能な基を有するシラン基とを有するフッ素化シラン化合物でさらに処理されている。
【0007】
公知の表面処理のいくつかは許容範囲のレベルの初期撥性性質を与えることができる場合があるが、撥性は、洗濯を繰り返すことによりしばしば失われる。さらに、降雨条件下のオープンビーズ反射シート材料の反射性質を改良することが望ましい。
【0008】
したがって、高耐久性撥水性コーティングを再帰反射シート上に与えることができるコーティング組成物を提供することが望ましい。特に、洗濯を繰り返しても初期反射性質および撥性性質がほとんど維持される耐久性コーティングを提供することが望ましい。また、典型的に、この処理組成物は良好な貯蔵安定性を有し、環境上の不利な点を最小にし、最小のコストで便利に製造できることが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の態様において、(i)バインダー層であって、該バインダーの1つの主面に該バインダー層の該主面に部分的に埋め込まれた部分を有しかつそれから部分的に突き出る部分を有する微小球の層を有するバインダー層と、(ii)前記微小球の前記埋め込まれた部分上に配置された反射層とを含む再帰反射シートを、
(i)1個以上のフッ素化基と1個以上の加水分解可能な基を有する1個以上のシリル基とを有するフッ素化化合物と、
(ii)(1)1分子当たり少なくとも1個の加水分解可能な基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素Mの非フッ素化化合物1つ以上、(2)Si−H基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択された補助化合物と、を含む処理組成物と接触させる工程を含む処理方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、(i)1個以上のフッ素化基と1個以上の加水分解可能な基を有する1個以上のシリル基とを有するフッ素化化合物と、(ii)Si−H基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択された補助化合物と、を含む組成物を提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、1分子当たり少なくとも1個の加水分解可能な基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素Mの非フッ素化化合物を1つ以上さらに含む、上述の組成物に関する。
【0012】
本発明の処理方法によって処理された再帰反射シートは改良された反射および撥性性質を有することがわかった。特に、処理済み再帰反射シートの反射率および撥水性は、洗濯を繰り返した後でも高耐久性であることがわかった。さらに、湿潤条件、特に降雨条件下での再帰反射シートの反射率は典型的に、処理の結果として改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
フッ素化化合物
本発明の再帰反射シートの処理に使用するために適したフッ素化化合物は、1個以上のフッ素化基と1個以上の加水分解可能な基を有する1個以上のシリル基とを含む。用語「加水分解可能な基」によって、フッ素化処理組成物を調製するために用いられる条件および/またはフッ素化組成物を再帰反射シートに適用するための条件下で基が加水分解することができることを意味する。かかる条件は、酸または塩基などの触媒の使用を必要とする場合がある。適した加水分解可能な基の例には、アルコキシ基、アリールオキシ基、塩素などのハロゲン、アセトキシ基およびアシル基などがある。一般に好ましいのは、1〜4個の炭素原子を有する低級アルコキシ基である。
【0014】
フッ素化化合物は、フッ素化基に直接に結合したシラン基を1個以上、例えば2個または3個含有してもよく、またはそれらは有機結合基を介してフッ素化基に結合していてもよい。かかる有機結合基は一般に、炭化水素基などの非フッ素化基であり、1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。
【0015】
フッ素化化合物は、フルオロ脂肪族基およびフッ素化ポリエーテル基などのいずれのフッ素化基を含んでもよい。フッ素化化合物のフッ素化基は、部分的または完全にフッ素化されてもよく、一価または多価、例えば、二価であってもよい。フッ素化基は、連鎖移動剤および任意に1つ以上の非フッ素化モノマーの存在下で少なくとも1つのフッ素化モノマーの重合から誘導されたフッ素化オリゴマーをさらに含んでもよい。
【0016】
特定の実施態様において、本発明に使用するためのフッ素化化合物は、式:
f1−[Q−SiY3-x10xy (I)
で表わされるフッ素化シランであり、式中、
f1が一価または二価フッ素化基を表わし、
Qが有機二価結合基を表わし、
10がC1−C4アルキル基を表わし、
Yが加水分解可能な基を表わし、
xが0、1または2であり、
yが1または2である。
【0017】
特定の実施態様によって、Rf1がフルオロ脂肪族基を表わし、安定で不活性であり、好ましくは飽和しており、無極性である。フルオロ脂肪族基は直鎖、分岐鎖、または環状もしくはそれらの組合せであってもよく、酸素、二価または六価硫黄、または窒素などの1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。フルオロ脂肪族基は好ましくは完全にフッ素化されているが、水素または塩素原子は、炭素原子2個ごとにどちらかの原子が1個以下で存在する場合、置換基として存在しうる。適したフルオロ脂肪族基は一般に、少なくとも3個、18個までの炭素原子、好ましくは3〜14個、特に4〜10個の炭素原子を有し、好ましくは約40重量%〜約80重量%のフッ素、より好ましくは約50重量%〜約79重量%のフッ素を含有する。フルオロ脂肪族基の末端部分は典型的に過フッ素化部分であり、好ましくは少なくとも7個のフッ素原子を含有し、例えば、CF3CF2CF2−、(CF32CF−、F5SCF2−である。好ましいフルオロ脂肪族基は完全にまたはほとんどフッ素化されており、式Cn2n+1−(nが3〜18、特に4〜10である)の過フッ素化脂肪族基が挙げられる。
【0018】
1つの実施態様によって、R1fが一価または二価ポリフルオロポリエーテル基を表わす。ポリフルオロポリエーテル基は直鎖状、分岐状、および/または環状構造を含有することができ、飽和または不飽和であってもよい。それは好ましくは過フッ素化基(すなわち、全てのC−H結合がC−F結合によって置換される)である。より好ましくは、それは、−(Cn2n)−、−(Cn2nO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cn2nO)−、−(Cn2nCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−、およびそれらの組合せの群から選択された過フッ素化反復単位を含有する。これらの反復単位において、Zはペルフルオロアルキル基、酸素置換ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、または酸素置換ペルフルオロアルコキシ基であり、それらの全てが直鎖状、分岐状、または環状であってもよく、好ましくは1〜9個の炭素原子および0〜約4個の酸素原子を有する。これらの反復単位で形成されたポリマー部分を含有するポリフルオロポリエーテルの例は、米国特許第5,306,758号明細書(ペレリット(Pellerite))に開示されている。一価ポリフルオロポリエーテル基(上記の式(I)においてyが1である)については、末端基は(Cn2n+1)−、(Cn2n+1O)−または(X’Cn2nO)−であってもよく、例えばX’がH、Cl、またはBrである。好ましくは、これらの末端基は過フッ素化されている。これらの反復単位または末端基において、nは1以上であり、好ましくは1〜4である。
【0019】
二価フッ素化ポリエーテル基の好ましい近似の平均構造には、−CF2O(CF2O)m(C24O)pCF2−(mおよびpの平均値は0〜50であるが、ただし、mおよびpは同時に0ではないことを条件とする)、−CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−、−CF2O(C24O)pCF2−、および−(CF23O(C48O)p(CF23−(pの平均値は3〜50である)が挙げられる。これらのうち、特に好ましい近似の平均構造は、−CF2O(CF2O)m(C24O)pCF2−、−CF2O(C24O)pCF2−、および−CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−である。一価ペルフルオロポリエーテル基の特に好ましい近似の平均構造には、C37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−およびCF3O(C24O)pCF2−(pの平均値は3〜50である)が挙げられる。合成時に、これらの化合物は典型的に、ポリマーの混合物を含有する。近似の平均構造は、ポリマーの混合物の近似の平均である。
【0020】
二価結合基Qは直鎖状、分岐状、および/または環状構造を含有することができ、飽和または不飽和であってもよい。基Qは、1個以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、または硫黄)または官能基(例えば、カルボニル、アミド、ウレタニレンまたはスルホンアミド)を含有することができる。好ましくは、二価結合基Qは、任意にヘテロ原子または官能基を含有する、より好ましくは、少なくとも1個の官能基を含有する、炭化水素基、好ましくは、直鎖状炭化水素基などの非フッ素化有機基である。Q基の例には、−C(O)NH(CH23−、−CH2O(CH23−、−CH2OC(O)N(R)(CH23−(RがHまたは低級アルキル基である)、および−(Cn2n)−(nが2〜6である)などがある。代表的な結合基Qは−C(O)NH(CH23−である。
【0021】
Yは、式(I)において加水分解可能な基を表わし、例えばハロゲン、C1−C4アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基またはポリオキシアルキレン基、例えば米国特許第5,274,159号明細書に開示されているようなポリオキシエチレン基を表わす。加水分解可能な基の特定の例には、メトキシ、エトキシおよびプロポキシ基、塩素およびアセトキシ基などがある。
【0022】
本発明に使用するために適した式(I)の化合物は典型的に、少なくとも約200、好ましくは、少なくとも約1000の分子量(数平均)を有する。好ましくは、それらは約10000以下である。
【0023】
式(I)の好ましいフッ素化シラン化合物の例には、以下の近似の平均構造:
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X、C37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)X、XCF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)X、XCF2O(C24O)pCF2X、およびCF3O(C24O)pCF2X、X(CF23O(C48O)p(CF23X(式中、−Xが式(I)において上に規定されたように−Q−SiY3-x10xまたは上に規定されたように非シラン含有末端基((Cn2n+1)−、(Cn2n+1O)−または(X’Cn2nO)−であり、X’がH、Cl、またはBrである)であるが、ただし、1分子当たりの少なくとも1個のX基がシランである)などがあるがそれらに限定されない。好ましくは、各フッ素化ポリエーテルシランにおいて、Qが窒素原子を含有する。より好ましくは、1分子当たりの少なくとも1個のX基がC(O)NH(CH23Si(OR)3(式中、Rがメチル、エチル、ポリエチレンオキシまたはそれらの混合物)であり、他のX基が、シランでない場合、OCF3、またはOC37である。これらの近似の平均構造においてのmおよびpの値は変化することができる。好ましくは、mの平均値は、1〜50の範囲内であり、pの平均値は4〜40の範囲内である。これらはポリマー材料であるとき、かかる化合物は、合成時に混合物として存在し、使用に適している。これらの混合物はまた、それらの合成において用いられた方法の結果として、官能基を有しないか(不活性液体)または2個より多い末端基を有する(分岐状構造)ペルフルオロポリエーテル鎖を含有してもよい。典型的に、非官能化ポリマー(例えば、シラン基を有さないポリマー)約10重量%未満を含有するポリマー材料の混合物を使用することができる。さらに、式(I)の個々に記載された化合物のいずれかの混合物を使用することができる。
【0024】
式(I)の化合物は、標準技術を用いて合成することができるが、市販されている。例えば、市販のまたは容易に合成されたフッ素化ポリエーテルエステルに米国特許第3,810,874号明細書(ミッチ(Mitsch)ら)による3−アミノプロピルアルコキシシランなど、官能化アルコキシシランを配合することができる。かかる材料は、本発明による処理方法または組成物において使用する前に精製される必要があるかまたは必要がない場合もある。
【0025】
さらに別の実施態様によって、本発明に使用するためのフッ素化化合物は、上に規定したように1個以上の加水分解可能な基を有する1個以上のシリル基を有するフッ素化オリゴマーから誘導されてもよい。フッ素化オリゴマーは、連鎖移動剤および任意に1つ以上の非フッ素化モノマーの存在下で少なくとも1つのフッ素化モノマーのフリーラジカルオリゴマー化によって調製されてもよく、非フッ素化モノマーおよび/または連鎖移動剤の少なくとも1つが、1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を含む。
【0026】
本発明に使用するためのフルオロケミカルオリゴマーには、一般式(II):
A−Mfqhras−G (II)
によって表わすことができるフルオロケミカルオリゴマーが挙げられ、式中、Aが開始剤の残基または水素を表わし、
fがフッ素化モノマーから誘導された単位を表わし、
hが非フッ素化モノマーから誘導された単位を表わし、
aが式:
【化1】

によって表わされるシリル基を有する単位を表わし、式中、Y4、Y5およびY6の各々が独立して、アルキル基、アリール基または加水分解可能な基を表わし、
Gが、連鎖移動剤の残基を含む一価有機基であり、
qが1〜100の値を表わし、
rが0〜100の値を表わし、
sが0〜100の値を表わし、
q+r+sが少なくとも2であり、
ただし、以下の条件の少なくとも1つが満たされることを条件とする、すなわち、(a)Gが、式:
【化2】

のシリル基を含有する一価有機基であり、式中、Y1、Y2およびY3が各々独立して、アルキル基、アリール基または加水分解可能な基を表わし、Y1、Y2およびY3の少なくとも1つが加水分解可能な基を表わすか、または(b)sが少なくとも1であり、Y4、Y5およびY6の少なくとも1つが加水分解可能な基を表わす。
【0027】
フルオロケミカルモノマーを1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を有するモノマーと共重合することによってまたはかかるシリル基を含有する連鎖移動剤の使用によって1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基をフルオロケミカルオリゴマーに含有させることができる。あるいは、オリゴマー化の後に1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を有する試薬と反応させることができる官能化連鎖移動剤または官能化コモノマーを用いることができる。
【0028】
q、rおよびsの合計によって表わされる単位の総数は一般に、化合物をオリゴマーにするために少なくとも2であり、好ましくは少なくとも3である。フルオロケミカルオリゴマーのqの値は1〜100であり、好ましくは2〜20である。rおよびsの値は0〜100であり、好ましくは1〜30である。好ましい実施態様によって、rの値はqの値より小さく、q+r+sが少なくとも2である。
【0029】
式(II)によるフッ素化オリゴマーシランは典型的に、400〜100000、好ましくは600〜20000の平均分子量を有する。フルオロケミカルシランは好ましくは、(単位Mf、MhおよびMaの全モルに対して)加水分解可能な基を少なくとも10モル%で含有する。
【0030】
フルオロケミカルオリゴマーの調製によって化合物の混合物を生じ、したがって、一般式(II)は、化合物の混合物を表わすものとして理解されるべきであり、それによって式(II)の指数q、rおよびsは、かかる混合物中の相当する単位のモル量を表わすことを当業者はさらに理解するであろう。したがって、q、rおよびsは分数値でありうることは明らかである。
【0031】
フルオロケミカルオリゴマーの単位Mfは一般に、式:
【化3】

のフルオロケミカルモノマーから誘導され、式中、R2fが少なくとも3個の炭素原子を含有するフルオロ脂肪族基またはフッ素化ポリエーテル基を表わす。Q1が有機二価結合基を表わし、E1がフリーラジカル重合性基を表わす。
【0032】
フルオロケミカルモノマーのフルオロ脂肪族基R2fは、フッ素化された安定な、不活性、好ましくは飽和した、無極性の一価脂肪族基である。それは、直鎖、分岐鎖、または環状もしくはそれらの組合せであってもよい。それは、酸素、二価または六価硫黄、または窒素などのヘテロ原子を含有することができる。R2fは好ましくは完全にフッ素化された基であるが、水素または塩素原子は、炭素原子2個ごとにどちらかの原子が1個以下で存在する場合、置換基として存在しうる。R2f基は、少なくとも3個、18個までの炭素原子、好ましくは3〜14個、特に4〜10個の炭素原子を有し、好ましくは約40重量%〜約80重量%のフッ素を含有し、より好ましくは約50重量%〜約79重量%のフッ素を含有する。R2f基の末端部分は過フッ素化部分であり、好ましくは少なくとも7個のフッ素原子を含有し、例えば、CF3CF2CF2−、(CF32CF−、F5SCF2−である。好ましいR2f基は完全にまたはほとんどフッ素化されており、好ましくは式Cn2n+1−の過フッ素化脂肪族基であり、nが3〜18、特に4〜10である。
【0033】
2f基は、例えばR1fに対して上に規定したように、一価ポリフルオロポリエーテル基をさらに表わすことができる。
【0034】
式(II)のMfはまた、式:
a−Qa−R3f−Qb−Eb (IV)
の二官能性フルオロケミカルモノマーから誘導されてもよく、式中、QaおよびQbが各々独立して、有機二価結合基を表わし、EaおよびEbが各々独立して、フリーラジカル重合性基を表わす。R3fが、−(CF(CF3)CF2O)p−、−(CF2O)p(CF2CF2O)q−、−CF(CF3)(CF2CF(CF3)O)pCF(CF3)O−、−(CF2O)p(CF2CF2O)qCF2−、−(CF2CF2O)p−、−(CF2CF2CF2O)p−などの二価ペルフルオロポリエーテル基を表わし、pおよびqの平均値が1〜約50である。二官能性フルオロケミカルモノマーの分子量は一般に約200〜3000、より好ましくは300〜2500であるべきである。使用された二官能性フルオロケミカルモノマーの量は、有機溶剤または水に可溶性または分散性である組成物を得るように選択されるべきである。
【0035】
上記の式(III)および(IV)の結合基Q1、QaおよびQbは、フルオロ脂肪族またはフッ素化ポリエーテル基R2fまたはR3fをフリーラジカル重合性基E1、EaまたはEbに結合し、一般に非フッ素化有機結合基である。結合基は好ましくは1〜約20個の炭素原子を含有し、任意に酸素、窒素、または硫黄含有基またはそれらの組合せを含有してもよい。結合基は好ましくは、フリーラジカルオリゴマー化を実質的に妨げる官能基(例えば、重合性オレフィン二重結合、チオール、および当業者に公知の他のかかる官能価)を含有しない。適した結合基Q1,a,bの例には、直鎖、分岐鎖または環状アルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシ、オキソ、ヒドロキシ、チオ、スルホニル、スルホキシ、アミノ、イミノ、スルホンアミド、カルボキシアミド、カルボニルオキシ、ウレタニレン、ウレイレン、およびスルホンアミドアルキレンなどのそれらの組合せがある。好ましい結合基は、アルキレンおよび以下の式:
【化4】

の有機二価結合基からなる群から選択され、式中、R11が、水素または2〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキレンを表わし、R12が、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルを表わす。
【0036】
1、EaおよびEbは、フリーラジカル重合することができるエチレン性不飽和基を典型的に含有するフリーラジカル重合性基である。適した基には、例えば、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエステル、ビニルケトン、スチレン、ビニルアミド、アクリルアミド、マレエート、フマレート、アクリレートおよびメタクリレートから誘導された部分がある。これらのうち、アクリレートおよびメタクリレートなど、α,β不飽和酸のエステルが好ましい。
【0037】
上記のようなフルオロケミカルモノマーR2f−Q1−E1およびそれらの調製方法が公知であり、例えば、米国特許第2,803,615号明細書に開示されている。かかる化合物の例には、フルオロケミカルアクリレート、メタクリレート、ビニルエーテルの一般クラス、およびフッ素化スルホンアミド基含有アリル化合物、フルオロケミカルテロマーアルコールから誘導されたアクリレートまたはメタクリレート、フルオロケミカルカルボン酸から誘導されたアクリレートまたはメタクリレート、およびEP526 976号明細書に開示されているようなペルフルオロアルキルアクリレートまたはメタクリレートがある。
【0038】
フッ素化ポリエーテルアクリレートまたはメタクリレートは、米国特許第4,085,137号明細書に記載されている。
【0039】
フルオロケミカルモノマーの代表例には、
CF3(CF22CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF22CH2OCOCH=CH2
49CH2CH2OC(O)CH=CH2
49CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2
CF3(CF27(CH22OCOCH=CH2
CF3(CF27(CH22OCOC(CH3)=CH2
【化5】

CF3CF2(CF2CF22-8CH2CH2OCOCH=CH2
【化6】

CF3O(CF2CF2uCH2OCOCH=CH2
CF3O(CF2CF2uCH2OCOC(CH3)=CH2
37O(CF(CF3)CF2O)uCF(CF3)CH2OCOCH=CH2
37O(CF(CF3)CF2O)uCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2
CH2=CH−OCOCH2CF2(OCF2u(OCF2CF2vOCF2CH2OCOCH=CH2
CH2=C(CH3)−OCOCH2CF2(OCF2u(OCF2CF2vOCF2CH2OCOC(CH3)=CH2
【化7】

などが挙げられ、式中、Rがメチル、エチルまたはn−ブチルを表わし、uおよびvが約1〜50である。
【0040】
フッ素化オリゴマーシラン(存在する場合)の単位Mhは一般に非フッ素化モノマー、好ましくは重合性基および炭化水素部分からなるモノマーから誘導される。
【0041】
単位Mhを誘導することができる非フッ素化モノマーの例には、フリーラジカル重合することができるエチレン性化合物の一般クラスがあり、例えば、酢酸アリルおよびヘプタン酸アリルなどのアリルエステル、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルまたはアルキルアリルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和酸およびそれらの無水物およびそれらのエステル、例えばビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニルまたはアルコキシエチルアクリレートおよびメタクリレートの他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートなどのα−β不飽和ニトリル、アリルアルコール、アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートなどのα,β−不飽和カルボン酸誘導体、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体、ハロゲンを含有することができる低級オレフィン炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロおよびジクロロブタジエンおよび2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンの他、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどのアリルまたはビニルハロゲン化物などが挙げられる。好ましい非フッ素化モノマーには、オクタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレートおよびエチルヘキシルメタクリレート、および塩化ビニルおよび塩化ビニリデンから選択されるような炭化水素基含有モノマーがある。
【0042】
本発明において有用な、1個以上のシリル基を有するフッ素化オリゴマーは一般に、1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を有する単位Maをさらに含有する。単位Maの例には、一般式:
【化8】

で表わされる単位が挙げられ、式中、R13、R14およびR15が各々独立して、水素、アルキル基、例えばメチルまたはエチル、ハロゲンまたはアリール基を表わし、Lが有機二価結合基を表わし、Y7、Y8およびY9が独立してアルキル基、アリール基、または加水分解可能な基を表わす。
【0043】
かかる単位Maは、式:
【化9】

によって表わされるモノマーから誘導されてもよく、Y7、Y8およびY9の各々が独立して、アルキル基、アリール基、または加水分解可能な基を表わし、Lが化学結合または有機二価結合基を表わし、E2が、例えばE1に対して上に記載したようなフリーラジカル重合性基を表わす。あるいは式(V)によるかかる単位Maは、官能化モノマーをシリル基含有試薬と反応させることによって得られる。用語「官能化モノマー」によって、後続の反応のために利用可能な1個以上の基を有するモノマー、例えば縮合反応を受けることができる基を有するモノマーが意味される。典型的に、官能化モノマーは、イソシアネートまたはエポキシ基と反応可能な1個以上の基を有するモノマーである。かかる基の特定の例には、例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランまたは3−エポキシプロピルトリメトキシシランなどがある。
【0044】
Lは、有機二価結合基を表わす場合、好ましくは1〜約20個の炭素原子を含有する。Lは、任意に、酸素、窒素、または硫黄含有基またはそれらの組合せを含有することができ、Lは好ましくは、フリーラジカルオリゴマー化を実質的に妨げる官能基(例えば、重合性オレフィン二重結合、チオール、および当業者に公知の他のかかる官能価)を含有しない。適した結合基Lの例には、直鎖、分岐鎖または環状アルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、ウレイレンアルキレンおよびそれらの組合せなどがある。好ましい結合基は、アルキレン、オキシアルキレンおよびカルボニルオキシアルキレンからなる群から選択される。特定の好ましい実施態様によって、結合基Lは、式:
【化10】

で表わされ、式中、Q3およびQ4が独立して有機二価結合基を表わす。有機二価結合基Q3の例には、例えばアルキレン、アリーレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレンおよびウレイレンアルキレンなどがある。有機二価結合基Q4の例には、例えばアルキレンおよびアリーレンなどがある。TはOまたはNRを表わし、Rは水素、C1−C4アルキル基またはアリール基を表わす。
【0045】
7、Y8およびY9は独立して、アルキル基、アリール基または加水分解可能な基を表わす。
【0046】
式(VI)のモノマーの例には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびアルコキシシラン官能化アクリレートまたはメタクリレート、例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどがある。
【0047】
1個以上のシリル基を有するフッ素化オリゴマーは、連鎖移動剤の存在下で調製されるのが便利である。適した連鎖移動剤には典型的に、ヒドロキシ−、アミノ−、メルカプトまたはハロゲン基などがある。連鎖移動剤は、かかるヒドロキシ、アミノ−、メルカプトまたはハロゲン基の2つ以上を含有してもよい。フッ素化オリゴマーの調製に有用な代表的な連鎖移動剤には、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−エチルアミン、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド、オクチルメルカプタンおよびドデシルメルカプタンから選択された連鎖移動剤がある。さらに、連鎖移動剤は、1個以上のメルカプト基を有するポリシロキサンであってもよい。
【0048】
好ましい実施態様において、1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を含有する連鎖移動剤が、フッ素化を製造するためにオリゴマー化において用いられる。かかるシリル基を含有する連鎖移動剤には、式(VII)
【化11】

の連鎖移動剤があり、式中、Y10、Y11およびY12が各々独立して、アルキル基、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルなどのC1−C8アルキル基、またはシクロヘキシルまたはシルコペンチル(cylcopentyl)などのシクロアルキル含有アルキル基、フェニルなどのアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基、加水分解可能な基、例えばハロゲンまたはメトキシ、エトキシなどのアルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、Y10、Y11およびY12の少なくとも1つが加水分解可能な基を表わす。L1が二価結合基を表わす。
【0049】
好ましい連鎖移動剤は、L1が−S−Q5−を表わし、Q5が式(VII)のシリコーン原子に結合され、Q5が、例えば直鎖、分岐鎖または環状アルキレン、アリーレンまたはアラルキレンなどの有機二価結合基を表わす連鎖移動剤である。かかる連鎖移動剤の使用は一般に、一価有機基Gが以下の式:
【化12】

で表わされるフッ素化オリゴマーをもたらし、式中、Y10、Y11、Y12およびQ5が上に規定した通りである。
【0050】
単一の連鎖移動剤または異なった連鎖移動剤の混合物を用いてもよい。好ましい連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール、オクチルメルカプタンおよび3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。連鎖移動剤は典型的に、オリゴマー中の重合モノマー単位の数を制御するためにかつオリゴマーフッ素化シランの所望の分子量を得るために十分な量において存在する。連鎖移動剤は一般に、フッ素化および非フッ素化モノマーを含めたモノマー1当量当たり0.05〜0.5当量、好ましくは約0.25当量の量で用いられる。
【0051】
本発明に使用するためのフッ素化オリゴマーシランは1個以上の加水分解可能な基を含有する。これらの加水分解可能な基は、1個以上の加水分解可能な基を含有するシリル基を有する連鎖移動剤、例えば上記の式(VII)の連鎖移動剤(Y10、Y11およびY12の少なくとも1つが加水分解可能な基を表わす)の存在下でオリゴマー化することによって、および/または上記の式(VI)のモノマー(Y7、Y8およびY9の少なくとも1つが加水分解可能な基を表わす)などの1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を含有するモノマーと共オリゴマー化することによってフッ素化シランに導入されてもよい。あるいは、オリゴマー化の後にシリル基含有試薬と反応させることができる官能化連鎖移動剤または官能化コモノマーを用いることができる。
【0052】
本発明に使用するための1個以上のシリル基を有するフッ素化オリゴマーを、EP1225187号明細書に記載されたようにフリーラジカル重合によって調製することができる。
【0053】
本発明に使用するための1個以上のフッ素化基および1個以上のシリル基を有するフッ素化化合物の量は広範囲に変化してもよく、最適な量を当業者は実験によって定量することができる。典型的に、フッ素化化合物および補助化合物の全重量に対して1重量%〜90重量%、好ましくは10重量%〜85重量%、より好ましくは20重量%〜80重量%の量が処理組成物に含有される。
【0054】
補助化合物
元素Mの非フッ素化化合物
本発明に有用な組成物は、1分子当たり少なくとも1個の加水分解可能な基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素Mの1つ以上の非フッ素化化合物を含む。好ましくは、加水分解可能な基は元素Mに直接結合している。
【0055】
本発明の1つの実施態様において、元素Mの非フッ素化化合物が、式(VIII):
(R)iM(Y)j-i (VIII)
の化合物を含み、式中、Rが加水分解不能な基を表し、MがSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素を表し、jがMの原子価に応じて3または4であり、iが0、1または2であり、Yが加水分解可能な基を表す。
【0056】
元素Mの非フッ素化化合物に存在する加水分解可能な基は、同一であっても異なっていてもよく、一般に、適切な条件下、例えば酸性または塩基性水性条件下で加水分解することができ、これにより元素Mの非フッ素化化合物が縮合反応を受けることができる。好ましくは、加水分解した時に加水分解可能な基は、ヒドロキシル基など、縮合反応を受けることができる基を生じる。
【0057】
加水分解可能な基の典型的かつ好ましい例には、フッ素化化合物に対して記載されたような加水分解可能な基がある。好ましくは、元素Mの非フッ素化化合物は、(好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する)テトラ−、トリ−またはジアルコキシ化合物を含有する。
【0058】
加水分解不能な基Rは同一であっても異なっていてもよく、一般に上に記載された条件下で加水分解することができない。例えば、加水分解不能な基Rは独立して、炭化水素基、例えばC1−C30アルキル基から選択されてもよく、直鎖状または分岐状であってもよく、1つ以上の脂肪族、環状炭化水素構造、(任意に、ハロゲンおよびC1−C4アルキル基から選択された1つ以上の置換基によって置換された)C6−C30アリール基、またはC7−C30アラルキル基を含有してもよい。
【0059】
1つの実施態様において加水分解不能な基Rは独立して、炭化水素基、例えば(任意に、ハロゲンおよびC1−C4アルキル基から選択された1つ以上の置換基によって置換された)C1−C30アルキル基およびC6−C20アリール基から選択される。
【0060】
元素Mの好ましい非フッ素化化合物には、MがTi、Zr、SiまたはAlである非フッ素化化合物がある。
【0061】
元素Mの非フッ素化化合物の代表例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、テトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラ−イソプロピルオルトチタネート、テトラ−n−プロピルオルトチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)オルトチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ−イソプロピルジルコネート、テトラ−n−プロピルジルコネートなどがある。より好ましい化合物には、Si、TiおよびZrのC1−C4アルコキシ誘導体がある。元素Mの特に好ましい非フッ素化化合物には、テトラエトキシシランがある。元素Mの非フッ素化化合物の単一化合物または混合物を用いてもよい。元素Mの非フッ素化化合物を、フッ素化処理組成物に添加する前に完全にまたは部分的に加水分解または予備縮合することができる。
【0062】
本発明に使用するための元素Mの非フッ素化化合物の量は広範囲に変化してもよく、最適な量を当業者は日常実験によって容易に定量することができる。典型的にこの化合物は、フッ素化化合物および補助化合物の全重量に対して99重量%まで、好ましくは10〜80重量%の量において組成物中に含有されてもよい。
【0063】
Si−H基を有する有機化合物
本発明に使用するための1つ以上のSi−H基を有する有機化合物は非ポリマー有機化合物であってもよく、あるいはポリマー有機化合物であってもよい。「ポリマー化合物」によって、化合物がより低分子量の化合物、すなわち、モノマーから実際にまたは概念的に誘導される反復単位を含むことが意味される。重合度は広範囲に変化してもよく、例えば2〜50の反復単位の重合度などの低い重合度ならびに50を超える大きな重合度を包含する。このように、用語「ポリマー化合物」は、典型的に低い重合度を有するオリゴマー化合物を包含すると理解されるべきである。有機化合物がポリマーである場合、SiH機能がポリマー鎖の末端基および/またはポリマー化合物の反復単位に含有されてもよい。Si−H基を有する有機化合物は典型的に非フッ素化化合物である。
【0064】
本発明に関した好ましい実施態様によって、Si−H基を有する有機化合物は、ポリシロキシ主鎖を含む、ポリシロキサン(オリゴマーまたはポリマー)である。かかるポリマーまたはオリゴマーは、1つ以上のSi−H機能を含有する基を終端としてもよく、および/または主鎖に沿って分散されたSi−H基を含有してもよい。Si−H基は、主鎖の一部を形成してもよく、またはそれらは主鎖に結合した側基に存在しうる。
【0065】
例えば、本発明に使用するためのポリシロキサンには、式:
【化13】

で表わされるポリシロキサンがあり、式中、R1、R2、R3、R6、R7、R8およびR9が各々独立して、水素、アルコキシ基、任意に例えばアリール基、エステル、アルコキシ等で置換されたアルキル、または任意に例えばアルキル基、エステル、アルコキシ等で置換されたアリール基を表わし、R4およびR5が各々独立して、アルコキシ基、各々任意に置換されてもよいアルキルまたはアリール基を表わし、xが0〜150の値を表わし、yが0〜150の値を表わし、ただし、x=0であるとき、R1、R2、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つが水素原子を表わすことを条件とする。
【0066】
シロキサンの特定の例には、1,1,3,3テトライソプロピルジシロキサン、ユナイテッド・ケム(United Chem)から入手可能なジフェニル−1,1,3,3テトラキス(ジメチルシロキシ)ジシロキサン、シリルヒドリド末端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルヒドロシロキサン)およびジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとのコポリマー、ポリエチルヒドロシロキサン、ポリフェニルジメチルヒドロシロキシシロキサン、メチルヒドロシロキサンとオクチルメチルシロキサンとのコポリマーおよび、メチルヒドロシロキサンとフェニルメチルシロキサンとのコポリマーなどがある。
【0067】
使用できるさらに別のシロキサンは、式:
【化14】

で表わされるシロキサンなど、環状であってもよく、式中、Rcが水素、アルキル基またはアリール基を表わし、RdおよびReが各々独立して、アルキルまたはアリール基を表わし、kが少なくとも1であり、k+lの合計が少なくとも3である。上記の式の環状シロキサンの特定の例は、1,3,5−トリメチルシクロシロキサンおよび1フェニル−3,3,5,5−テトラメチルシクロシロキサンである。
【0068】
SiH基を有するポリシロキサンおよびシロキサンは本技術分野に公知であり、例えば、ポリマー科学および工学の百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、第2版、 V15 、シリコーン、204〜308ページ、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1989年に開示されているような公知の手順によって製造することができる。SiH基を有するシロキサンもまた、一般に市販されている。好ましくは、シロキサンまたはポリシロキサンは、150g/モル〜70000g/モルの分子量を有する。
【0069】
本発明に使用するためのSi−H基を有する有機化合物の量は、広範囲に変化することができる。典型的に、Si−H含有化合物は、組成物中にフッ素化化合物と補助化合物との全重量に対して90重量%まで、好ましくは5重量%〜60重量%の量で含有されてもよい。
【0070】
再帰反射シート
本発明に使用するための再帰反射シートは、(i)バインダー層であって、該バインダー層の1つの主面に前記バインダー層の前記主面に部分的に埋め込まれた部分を有しかつそれから部分的に突き出る部分を有する微小球の層を有するバインダー層と、(ii)前記微小球の前記埋め込まれた部分上に配置された反射層とを含む。
【0071】
バインダー層
バインダー層は典型的に、再帰反射シートを安定化しかつ反射層と微小球とを含む反射光学系を支持する可撓性流体不浸透ポリマー材料を含む。バインダー層のポリマー材料には、様々なエラストマー、ならびに溶融状態になるまで加熱することによって液体または軟化状態になる熱可塑性樹脂バインダーを挙げることができる。好ましくは、ポリマー材料は、架橋されたまたは実質的に架橋されたエラストマーを包含する。架橋されたエラストマーは、エラストマーのポリマー鎖が化学架橋されて分子流に対して安定化されている三次元網目を形成することを意味する。実質的に架橋されたエラストマーは、エラストマーのポリマー鎖の移動度が鎖の交絡によっておよび/または水素結合によって大幅に低減され、ポリマーの凝集強度または内部強度の増加をもたらすことを意味する。かかるポリマー架橋の例には、炭素−炭素結合の形成、例えば鎖間のビニル基間のフリーラジカル結合、加硫またはイソシアネートまたはエポキシ官能化ポリマーの場合、ジオールなどのカップリング剤との反応による、薬剤または基のカップリング、アミンおよびアルコール官能化ポリマーの場合、ジイソシアネートまたは活性化エステル、およびカルボン酸または無水物官能化ポリマーの場合、エポキシドおよびジオールが挙げられる。かかる仮想架橋(virtual crosslinking)の例には、ポリアミドに見出されるようなアミド水素結合またはスチレンおよびアクリロニトリルのブロックコポリマーに見出されるような結晶域および非晶域相互作用などがある。
【0072】
バインダー層はまた、安定剤(例えば、熱安定剤および加水分解安定剤)、酸化防止剤、難燃剤および流れ調整剤(例えば、界面活性剤)、粘度調節剤(例えば、有機溶剤)、レオロジー調節剤(例えば、増粘剤)、融合助剤、可塑剤、粘着付与剤などの任意選択の添加剤を含有してもよい。バインダー層は透明であってもよいが、一般に、特殊な色および視覚効果を提供するために着色剤、例えば、米国特許第5,812,317号明細書(ビリングスレイ(Billingsley))に記載されているように顔料、染料または金属フレークを含む。一般に、バインダー層は、ポリマー材料を約70重量%から約99重量%まで含有し、残りの部分が有効量の任意選択の添加剤である。
【0073】
バインダー層に使用されてもよいポリマーの具体例には、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシド、天然および合成ゴム、およびそれらの組合せなどがある。架橋ポリマーの例には、エポキシド基、オレフィン基、イソシアネート基、アルコール基、アミン基または無水物基などの架橋可能な基で置換されたポリマーの前述の例が挙げられる。ポリマーの官能基と反応する多官能性モノマーおよびオリゴマーもまた、架橋剤として用いられてもよい。
【0074】
有用なバインダー層材料の特定の例が米国特許第5,200,262号明細書および米国特許第5,283,101号明細書に開示されている。米国特許第5,200,262号明細書において、バインダー層は、架橋されたウレタン系ポリマー(例えば、イソシアネート硬化ポリエステルまたは2つの成分ポリウレタンの1つ)などの活性水素官能価を有する1つ以上の可撓性ポリマーと1つ以上のイソシアネート官能性シランカップリング剤とを含む。米国特許第5,283,101号明細書において、バインダー層は、クロロスルホン化ポリエチレン、少なくとも約70重量パーセントのポリエチレンを含むエチレンコポリマー、およびポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ ジエン)ポリマーからなる群から選択される電子線硬化ポリマーを含む。
【0075】
再帰反射シートのバインダー層に用いられてもよい市販のポリマーの例には、シェル・オイル・カンパニー(Shell Oil Company)から入手可能なバイテル(Vitel)(登録商標)3550、バイテル(登録商標)VPE 5545およびVPE 5833 ポリエステル、ローム・アンド・ハス(Rohm and Haas)から入手可能なロープレックス(Rhoplex)(登録商標)HA−8およびNW−1845 アクリル樹脂、アメリカン・シアナミドのサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries of American Cyanamide)から入手可能なサイドロタン(Cydrothane)(登録商標)ポリウレタン、B.F.グッドリッチ(B.F.Goodrich)から入手可能なエスタン(Estane)(登録商標)5703および5715、ゼオン・ケミカルズ(Zeon Chemicals)から入手可能なニポル(Nipol)(登録商標)1000およびABCRから入手可能なアクリロニトリルブタジエンゴムなどがある。耐久性があり、洗濯に対して耐性があると共に隣接した反射要素に対して非腐蝕性である組成物を含むバインダー層が好ましい。
【0076】
定着剤もまた、0.2%〜約1.5重量%の量においてバインダー層中に存在してもよい。定着剤は一般に、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシランである。
【0077】
バインダー層はさらに、2つ以上の層からなってもよい。例えばバインダー層は、定着剤と定着剤を含有しない層とを含む1つ以上の層からなってもよい。
【0078】
バインダー層は好ましくは、約50〜250μm、より好ましくは約75〜200μmの厚さを有する。これらの範囲外の厚さを有するバインダー層を用いてもよい。しかしながら、バインダー層は、薄すぎる場合、再帰反射要素および微小球に十分な支持を提供しない場合があり、微小球が取り除かれる場合がある。バインダー層は、200μmを超える厚さを有する場合、物品を不必要に固くする場合があり、そのコストを増す場合がある。
【0079】
バインダー層はまた、米国特許第5,674,605号明細書(マレキ(Marecki))に記載されているような接着剤の固有特性を有するポリマー組成物を含んでもよく、特定の場合、バインダー層を用いて、付加的な接着剤を使用せずに反射シートを衣類または付属品に結合することができる。
【0080】
微小球
再帰反射シートは、半球反射層がその上に配置された微小球の単一層を含む。微小球は、バインダー層の前側または第1の主面に部分的に埋設され、それから部分的に突き出ている。バインダー層によって支持された微小球は、光を平行化することができ、入射光は、光が来る方向に略平行な方向に戻される。微小球は好ましくは実質的に形状が球形であり均一で効率的な再帰反射をもたらす。また、微小球は好ましくは実質的に透明であり、微小球による光吸収を最小にし、それによって物品により再帰反射される光量を最適化する。透明という語は、光学顕微鏡(例えば、100倍)で見たとき、微小球が可視光線を通す特性があることを意味し、微小球とほぼ同一の屈折率の油に微小球と本体の両方を浸したときに、微小球の下にある本体、例えば、微小球と同じ性質の本体を、微小球を通して明らかに見ることができる。微小球の下にある本体の輪郭、外面または端縁が明らかに識別できる。油は微小球の屈折率に近い屈折率を有さなければならないが、完全に適合する場合のように微小球が見えなくなるほど近くすべきではない。微小球は典型的には実質的に無着色であるが、特別な効果を出すために着色されてもよい。
【0081】
透明な微小球は、ガラス、非ガラスセラミックス成分などの無機材料からから作製されてもよく、または要求される光学特性および再帰反射に必要な物理的特徴を持つ合成樹脂などの有機材料から作製しうる。一般的には、ガラスまたはセラミックス製の微小球が合成樹脂製の微小球より硬く耐久性が高い場合があるので好ましい。
【0082】
本発明に使用される微小球は平均粒径約30〜200マイクロメートル(μm)であり、より好ましくは40〜90μmである。30μmより小さい微小球は散乱効果のため低いレベルの再帰反射をもたらす傾向があることがある。一方200μmより大きい微小球は望ましくない粗なテクスチャーを物品に与える傾向にあるか、それの柔軟性をひどく損なう傾向があることがある。本発明に用いられる微小球は屈折率が1.7〜2.0であることが好ましく、この範囲は、本明細書におけるように、微小球の前面が露出されるかまたは空気が入射する、微小球をベースとした再帰反射製品において有用と考えられる。本発明に有用でありうる微小球の例は次の米国特許明細書、すなわち、米国特許第1,175,224号明細書、米国特許第2,461,011号明細書、米国特許第2,726,161号明細書、米国特許第2,842,446号明細書、米国特許第2,853,393号明細書、米国特許第2,870,030号明細書、米国特許第2,939,797号明細書、米国特許第2,965,921号明細書、米国特許第2,992,122号明細書、米国特許第3,468,681号明細書、米国特許第3,946,130号明細書、米国特許第4,192,576号明細書、米国特許第4,367,919号明細書、米国特許第4,564,556号明細書、米国特許第4,758,469号明細書、米国特許第4,772,511号明細書、および米国特許第4,931,414号明細書に開示されている。
【0083】
微小球の屈折率と大きさは微小球が入射光を反射層の位置と大まかに一致する点に焦点をあわせることが出来るように選択される。これらの変数の適切な選択によって、微小球は入射光を微小球の裏表面付近かまたは微小球表面のわずか後ろの地点に焦点をあわせることが容易にできる。
【0084】
反射層
再帰反射シートは、光を反射するために反射層をさらに含む。反射層は、その上に入射する光を反射するために微小球の埋め込まれた部分の上に配置される。「微小球の埋め込まれた部分の上に配置された」という表現は、反射層が(埋め込まれた部分の上の)微小球と直接接触しているかあるいは別の反射層(例えば、誘電体ミラー)またはさらに記載されるように、非反射性のいわゆる光透過性中間層を介して微小球と接触していることを意味する。
【0085】
反射層は反射顔料を含んでもよく、または反射金属層であってもよい。用語「反射金属層」は、本明細書において、入射光を反射するための、好ましくは入射光を正反射するための金属元素の有効量を含む反射層を意味する。様々な金属を用いて正反射金属層を設けることができる。これらには、元素の形の、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル、マグネシウム、金、およびそれらの合金がある。アルミニウムおよび銀は、反射金属層に使用するための好ましい金属である。反射金属層は、連続したコーティングであってもよく、真空蒸着、蒸気コーティング化学蒸着、または無電解めっき技術によって製造されてもよい。真空蒸着および蒸気コーティング技術が好ましい。蒸気コーティングは、蒸発およびスパッタリングなどが挙げられるがそれらに限定されない技術によって真空中に金属分子または粒子の流れを形成することを意味する。蒸気コーティング作業は、金属を気化させるために十分に高い温度まで真空中で加熱される蒸発器内に金属を置くことによって行われてもよい。通常真空圧力は約0.133〜1.33パスカルである。スパッタリング技術もまた、真空中に金属分子または粒子の流れまたは雲を形成するために用いてもよい。蒸気コーティングによって形成された分子または粒子は、微小球の裏側に付着される。この形態において、反射金属層は、高純度金属から本質的になる。金属粒子を支持する樹脂母材は必要とされない。アルミニウムの場合、金属の一部が金属酸化物および/または水酸化物の形であってもよいことは理解されるはずである。アルミニウムおよび銀金属は、最も高い再帰反射輝度をもたらす傾向があるので好ましい。金属層は、入射光を反射するために十分に厚くすべきである。典型的に、反射金属層は厚さ約50〜150ナノメートルである。銀コーティングの反射色はアルミニウムコーティングの反射色よりも明るい場合があるが、アルミニウム層は通常、ガラス光学要素に付着された時に、より良い洗濯耐久性を提供することができるので、より好ましい。
【0086】
あるいは、反射層は、例えば、マイカ粉末、金属粒子またはフレークまたは真珠光沢タイプの顔料などの反射顔料を含んでもよい。
【0087】
付加的な層
再帰反射シートはさらなる層を含んでもよい。上述のように、いわゆる光透過性中間層が存在しうる。光透過性層は典型的に、微小球と反射層、例えば、反射金属層との間に配置される。反射要素を腐食や風雨への曝露および/または洗濯の間のその反射特性劣化から保護するために光透過性中間層を設けることができる。中間層は好ましくは、機能的な再帰反射光学系を提供するために選択される屈折率などの光学特性を有する透明なポリマー層を含む。
【0088】
光透過性中間層は一般に、バインダー層のポリマー材料と同じかまたは異なっていてもよいポリマー材料を含む。良好な洗濯耐久性を提供するために、ポリマーは好ましくは、架橋ポリマーである。適している場合があるポリマーの例には、ウレタン、エステル、エーテル、ウレア、エポキシ、カーボネート、(メタ)アクリレート、アクリル、オレフィン、塩化ビニル、アミド、アルキドの単位、またはそれらの組合せを含有するポリマーが挙げられる。
【0089】
光透過性中間層に用いられるポリマーはポリマーをシランカップリング剤に結合できる官能基を有してもよく、あるいはポリマーを形成する反応体がかかる官能価を有してもよい。例えば、ポリウレタンを製造する時に、出発原料は、イソシアネート−官能性シランカップリング剤と反応することができる水素官能価を有してもよい。例えば、米国特許第5,200,262号明細書(リ(Li))を参照のこと。好ましいポリマーは、架橋ポリ(ウレタン−ウレア)および架橋ポリ(アクリレート)である。これらのポリマーは、工業洗濯プロセスの過酷さの下でおよび衣服として着用される時にそれらの性質を維持することができる。
【0090】
ポリ(ウレタン−ウレア)は、ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂を過剰なポリイソシアネートと反応させることによって形成されてもよい。あるいは、ポリプロピレンオキシドジオールを、ジイソシアネートと反応させ、次いでトリアミノ官能化ポリプロピレンオキシドと反応させてもよい。
【0091】
架橋ポリ(アクリレート)はアクリレートオリゴマーを電子線放射線に露光することによって形成されてもよい。例えば、米国特許第5,283,101号明細書(リ(Li))を参照のこと。
【0092】
光透過性中間層に用いてもよい市販のポリマーの例には、オハイオ州、アクロンのシェル・オイル・カンパニー(Shell Oil Company, Akron, Ohio)から入手可能なバイテル(Vitel)(登録商標)3550、ジョージア州、スムリナのUBCラドキュア(UBC Radcure,Smryna, Georgia)から入手可能なエベクリル(Ebecryl)(登録商標)230、テキサス州、ヒューストンのハンツマン・コーポレーション(Huntsman Corporation,Houston,Texas)から入手可能なジェフアミン(Jeffamine)(登録商標)T−5000、およびペンシルベニア州、ニュータウン・スクエアのアルコ・ケミカル・カンパニー(Arco Chemical Company,Newtown Square,Pennsylvania)から入手可能なアルコル(Arcol)(登録商標)R−1819などがある。
【0093】
光透過性中間層の厚さは一般に、入射光を微小球によって反射金属層上に焦点を合わせることができるように選択される。光透過性中間層は典型的に、約5ナノメートルから倍微小球の平均直径の1.5倍までの平均厚さを有する。好ましくは、光透過性中間層は、約100ナノメートルから微小球のおよそ平均直径までの平均厚さを有する。より好ましくは、光透過性中間層の平均厚さは、約1マイクロメートルから微小球の平均直径の約0.25倍である。光透過性中間層の厚さは、微小球の間が、微小球上より大きくてもよい。光透過性中間層は好ましくは連続的であるが、非常に小さい領域−特に微小球の大部分の埋め込まれた部分−では不連続であってもよく、すなわち、その厚さはゼロまたはゼロに接近する。このように光透過性中間層は適宜に連続的または実質的に連続的である。
【0094】
さらなる付加的な層が再帰反射シートに存在しうる。これらの層は例えば、反射シートの更なる支持と取り扱い性を付与するのに役立つ場合があり、または反射シートを安全着類または付属品などの基材に取り付けるための接着特性を付与するために存在してもよい。付加的な層の例には織ウェブまたは不織ウェブ、熱活性化接着層、感圧接着層またはこれらの層の組合せが挙げられる。反射布が得られるように、織ウェブが付加的な層として特に好ましい。
【0095】
織ウェブまたは不織ウェブは、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアシロニトリル(polyacylonitrile)繊維ならびに綿などの天然繊維などのいずれかの公知の繊維材料からなってもよい。混合合成および天然繊維などの混合繊維を同様に使用できる。
【0096】
反射シートに使用するための適した接着剤層には、例えば、ポリエステル、ポリウレタンまたはビニル系ポリマーを含む熱活性化接着剤、または通常、アクリルポリマー、ゴム−樹脂系またはシリコーン系ポリマーを含む粘着性感圧接着剤がある。
【0097】
付加的な層の特定の組合せには、1)布を有する感圧接着剤層および2)熱活性化接着剤層と組み合わせた感圧接着剤層がある。接着剤層を保護するために、シリコン処理ペーパーライナーなどの保護ライナーを用いてもよい。記載された2つの組合せにおいて、感圧接着剤は、基材または衣類との接着を形成するために露出されるように配置される。
【0098】
再帰反射シートの様々な構造を使用してもよい。例えば、第1の実施態様において、再帰反射シートは、再帰反射シートの第1の主面で空気に部分的に暴露された微小球の層、光透過性中間層、反射要素としての金属層およびバインダー層を含む。反射シートのこの第1の実施態様においては、光は微小球の表面に当たるが、光透過性中間層の選択された厚さを通して微小球の非露出部分の後ろに特定距離に配置された反射金属層上に焦点を結び、次いで反射されて微小球を通って観測者に戻ってくる。従って、高再帰反射性反射シートが得られる。バインダー層上には例えば、織ウェブまたは不織ウェブなどの付加的な層を設けてもよい。
【0099】
再帰反射シートの第2の実施態様においては、反射層は微小球に直接付与される反射金属層を含み、従って一般的には微小球の非露出部分の輪郭に沿っている。光透過性中間層は存在しない。この実施態様の反射層は、真空蒸着技術によって、微小球の非露出部分に直接好適に適用された薄い金属層を含む。典型的には、第1の実施態様と同じくバインダー層と付加的な層とが薄い金属層の上にさらに設けられる。
【0100】
再帰反射シートの製造は、本技術分野に公知である。オープンビード再帰反射シートをEP759 179号明細書またはEP1 262 802号明細書の教示によって作製することができる。
【0101】
再帰反射シートを様々な基材によって適用することができる。しばしば基材は衣服の物品の外面であるかまたは外面になり、再帰反射シートは、衣服がその通常の向きで着用される時に表示される。基材は、例えば、綿布、ナイロン、オレフィン、ポリエステル、セルロース、ウレタン、ビニル、アクリル系誘導体、ゴムなどのポリマー層、革などの織または不織布であってもよい。本発明に使用するための1つの好ましい基材は、難燃材料で処理されたポリエステルナイロントリコットメリヤス布である。基材はまた、自動車の車体、貨物トレーラーの壁、またはヘルメットの表面などの硬質な金属表面であってもよい。
【0102】
本発明に使用するための再帰反射シートを、様々な方法を用いて基材に適用してもよい。1つの方法において、再帰反射シートのバインダー層は、下の基材に直接に熱積層される。あるいは、再帰反射シートは、例えば、縫いつけによって基材に機械的に固定されてもよい。しかしながら、いくつかの適用において、バインダー層の裏側の表面または第2の表面に配置された接着剤層の使用によってシートを基材に固定することが望ましい。接着剤層は、感圧接着剤、熱活性化接着剤、または紫外線放射線活性化接着剤であってもよい。臭素化ビフェノール(例えば、デカブロモジフェニルオキシド、ルイジアナ州、バトンルージュのエチル・コーポレーション(Ethyl Corporation,Baton Rouge,La.)から入手可能なセイテックス(Saytex)(登録商標)102E)などの難燃材料を接着剤中に置くことができる。
【0103】
処理方法
処理方法において、再帰反射シートは、露出した微小球を有する主面において、シランを含むフッ素化化合物と1つ以上の補助化合物とを含む処理組成物と接触される。処理組成物は一般に、特に、洗濯を繰り返した後および降雨条件下で、所望の撥水性および/または反射性質の改良をもたらすコーティングを製造するのに十分な量で反射シートの表面に適用される。このコーティングはきわめて薄く、例えば、1〜50分子層であって、実際には有用なコーティングはより厚い場合がある。
【0104】
1つの実施態様において、フッ素化シランと補助化合物とを含む処理組成物は水に溶かした溶液または分散体として調製される。従って、フッ素化シランと補助化合物との混合物を中性のpHの水中で、典型的に20〜70℃、好ましくは30〜65℃の温度においておよび生成物を溶解するかまたは分散させるのに十分な時間、激しく撹拌する。付加的な乳化剤を用いて分散体の安定性を増加させることができる。通常のカチオン性、非イオン性、アニオンおよび双性イオン乳化剤が適している。分散体を安定化するために有効な量で乳化剤を使用でき、好ましくは、組成物の100重量部に対して約0〜25重量部、好ましくは5〜10重量部の量で使用する。シリカまたはTiO2などの他の成分、ならびに当業者に公知の他の水性水エキステンダーが存在しうる。例には、メラミン、ウレタンなどがある。
【0105】
代替として、処理組成物は、溶剤に溶かした分散体または溶液として適用されてもよい。有機溶剤は、単一の有機溶剤または2つ以上の有機溶剤の混合物を含んでもよい。組成物に用いられる溶剤は好ましくは、ほとんど不活性である(すなわち、フッ素化シランとほとんど非反応性であり、再帰反射シートに対して非破壊的である)溶剤を包含する。適した有機溶剤、または溶剤の混合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、アセトンまたはメチルエチルケトンなどのケトン、酢酸エチルなどのエステル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびメチルt−ブチルエーテルなどのエーテルおよびフッ素化溶剤などのハロゲン化溶剤から選択することができる。適したフッ素化溶剤の例には、ペルフルオロオクタンなどのフッ素化炭化水素、ペンタフルオロブタンなどの部分的にフッ素化された炭化水素、メチルペルフルオロブチルエーテルおよびエチルペルフルオロブチルエーテルなどのヒドロフルオロエーテルなどがある。フッ素化有機溶剤と非フッ素化有機溶剤または他のハロゲン化溶剤との様々なブレンドを用いることができる。
【0106】
特に機械的洗浄または洗濯に対して、十分な耐久性を達成するために、溶剤に溶かされた溶液または分散体はまた、好ましくは水を含有する。典型的に、水の量は、0.1〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0107】
本発明の処理方法において用いられる組成物はまた、酸触媒または塩基触媒を含有してもよい。酸触媒は、存在する場合、有機または無機酸を含む。有機酸には、酢酸、クエン酸、ギ酸などがある。無機酸の例には、硫酸、塩酸などがある。酸は一般に、組成物中に約0.01〜10%、より好ましくは0.05〜5重量%の量で含有される。塩基触媒は、存在する場合、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む。
【0108】
処理組成物は典型的に、フッ素化化合物および補助化合物を0.05〜30重量パーセント、好ましくは0.05〜20重量パーセント、より好ましくは0.1〜5重量パーセント含有する、比較的希薄な溶液または分散体である。
【0109】
多種多様なコーティング方法を用いて、再帰反射シートの表面を処理することができる。前記方法には、噴霧、浸漬、グラビア印刷、スクリーン印刷、タンポン印刷、転写コーティング、ナイフコーティング、キスコーティングおよびフーラード(Foulard)適用技術などがある。好ましい方法には、フーラード適用および噴霧などがある。特定の好ましい方法は、EP1,262,802号明細書に記載されているようなキスコーティングである。再帰反射シートの表面を洗濯機で1回以上の洗濯サイクルの間にさらに処理および/または再処理することができる。このため、処理組成物は、典型的に水性エマルションとして洗濯サイクルの最終洗浄の間に添加される。
【0110】
典型的に、乾燥工程を方法に導入し、溶剤および/または水を除去して再帰反射シートの表面にフッ素化シランおよび補助化合物の完成コーティングを形成することができる。乾燥工程は、周囲条件下での溶剤および/または水の蒸発および/または高温の強制空気炉を利用して溶剤および/または水の除去を促進し、および/またはフッ素化シラン化合物と補助化合物との反応および再帰反射シートの表面との反応を促進する1つ以上の段階を含んでもよい。好ましくは、処理済み再帰反射シートを乾燥および硬化させるために十分な時間、処理済み再帰反射シートを50℃〜180℃の温度にかける。
【0111】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、しかしながら本発明をそれらに限定するものではない。
【実施例】
【0112】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、しかしながら本発明をそれらに限定するものではない。特に指示しない限り、全ての部は重量に基づく。
【0113】
略語
MeFBSEMA: N−メチルペルフルオロブチルスルホンアミドエチルメタクリレート
MeFBSEA: N−メチルペルフルオロブチルスルホンアミドエチルアクリレート
A−160: HS(CH23Si(OCH33、アルドリッチ(Aldrich)から入手可能
A−174: CH2=C(CH3)C(O)O(CH23Si(OCH33、アルドリッチから入手可能
L31: ポリメチルヒドロシラン、GE・ケム・スペシャルティズ(GE Chem Specialties)から入手可能
TEOS: テトラエトキシシラン
EHT: テトラ(2−エチルヘキシル)オルトチタネート
ABIN: アゾ−ビスイソブチロニトリル
MEK: メチルエチルケトン
アークアド(Arquad)2HT/75: ジココジメチルアンモニウムクロリド、アクゾ(Akzo)から入手可能
PES/CO布: 215g/m2の重量を有する65/35ポリエステル/綿布、ラウフェンミューレ・GmbH(Lauffenmuehle GmbH)から入手可能
【0114】
試験方法
再帰反射シートの再帰反射率R’測定
再帰反射シートの反射率を国際照明委員会またはCIE(コミッション インターナショナーレ ド レクレアージュ(Commission Internationale de l’eclairage))54: 1982 再帰反射:定義および測定に基づき測定した。試料を観測角(α)0.2°、照射角(β1)5°で測定した。結果を平方メートル当たりルクス当たりのカンデラ(cd/lx/m2)で記録した。
【0115】
反射シートの湿潤時再帰反射率R’の測定
湿潤時再帰反射率を測定するために、再帰反射シートの10×10cm2試料を試験前にPES/CO布(65/35)上に縫いつけた。
【0116】
降雨時条件を想定した反射シートの再帰反射率の測定は一般に上記のCIE法に準ずるがEN471ANNEX A−湿潤時再帰反射率測定法に特別に記述されている場合、この条件に準ずる。測定は5分の連続した仮想降雨条件の経過した後行う。
【0117】
試料を観測角(α)0.2°、照射角(β1)5°で測定した。結果はcd/lx/m2で記録した。
【0118】
スプレー等級(SR)およびΔ重量(g)
処理済基材のスプレー等級は、処理済基材に衝突する水に対する処理済基材の動的撥性を示す値である。米国繊維化学者色彩技術者協会(AATCC)の1985年技術マニュアルおよび年鑑(1985 Technical Manual and Yearbook of the American Association of Textile Chemists and Colorists)に公表された標準試験番号22によって、試験された基材についてわずかに異なった「スプレー等級」を用いて、18×15cm2の秤量された試料の撥性を測定した。スプレー等級は、15cmの高さから250mlの水を基材にスプレーすることによって得られた。湿潤パターンは0〜100のスケールを用いて視覚的に格付けされ、0は完全な湿潤を意味し、100は全く湿潤しないことを意味した。80の値は、噴霧の間、水の不連続な筋といくつかの水滴がパネル上にみられることを意味した。パネルを、試験の前と後(付着していない水の除去後)に秤量した。重量の増加をΔ重量(g)として記録した。試料を3つ作製し、記録した値は3回の測定の平均である。
【0119】
接触角(°)
処理済み再帰反射シートを、オリンパス(Olympus)TGHMゴニオメーターを用いて水(W)およびn−ヘキサデカン(O)に対するそれらの接触角について試験した。水との接触角は、コーティングの撥水性を反映する。ヘキサデカンとの接触角は、汚れ防止および汚染防止性質を示している。接触角を(初期)および磨耗後すぐに(磨耗)測定した。値は4回の測定の平均値であり、度の単位で記録する。接触角の最小測定値は20であった。値<20は、液体が表面に広がることを意味した。
【0120】
再帰反射シートのための洗浄手順
家庭洗濯:
処理済みおよび未処理の再帰反射シートの試料(100cm2)を65/35PES/CO布に縫いつけた。布をISO26330布−布試験のための家庭洗浄および乾燥手順(Domestic Washing and Drying Procedures for Textile Testing)によって洗濯した。洗浄を60℃において家庭用洗浄機内で行い、サイクル数を以下のデータの表に示す。
【0121】
工業洗濯:
再帰反射シートの処理済みおよび未処理の両方の試料を30サイクルでISO15797(8)およびトンネル仕上によって洗濯した。
【0122】
実施例に使用された材料
1個以上のシリル基を有するフッ素化化合物(FC):
(A)フッ素化オリゴマーシランMeFBSEMA/A−160 8/1:
冷却器、撹拌機、温度計、加熱用マントルおよび加熱制御を備えた1000mlの3首フラスコに、425g(1モル)MeFBSEMAおよび24.54g(0.125モル)A−160、300gの酢酸エチルおよび0.9gのABINを入れた。
【0123】
混合物をアスピレーター真空および窒素圧力を用いて3回脱気した。混合物を8時間80℃の窒素下で反応させた。約8/1のモル比のオリゴマーフルオロケミカルシランMeFBSEMA/A−160の透明な溶液が得られた。特に記載しない限り、処理組成物に使用する前に溶剤を蒸発させなかった。
【0124】
(B)フッ素化オリゴマーシランMeFBSEA/A−174/A−160 4/1/1:
冷却器、撹拌機および温度計を備えた500mlの3首フラスコに、41.1g(0.1モル)のMeFBSEA、6.2g(0.025モル)のA−174、4.9g(0.025モル)のA−160、35gの酢酸エチルおよび0.1gのABINを入れた。混合物をアスピレーター真空および窒素圧力を用いて3回脱気した。混合物を8時間75℃の窒素下で反応させた。付加的な0.05gのABINを添加し、反応をさらに3時間75℃で続け、さらに0.05gのABINを添加し、反応を2時間82℃で続けた。モル比4/1/1のオリゴマーフルオロケミカルシランMeFBSEA/A−174/A−160の透明な溶液が得られた。特に記載しない限り、処理組成物に使用する前に溶剤を蒸発させなかった。
【0125】
(C)フッ素化ポリエーテルジシラン
フッ素化ポリエーテルジシラン(C)を調製するために、米国特許第3,810,874号明細書(ミッチら)、表1、6行目に教示されているように、商品名Z−デール(Z−DEAL)としてイタリアのオーシモント(Ausimont,Italy)から市販されているペルフルオロポリエーテルジエステルCH3OC(O)CF2(CF2O)9-11(CF2CF2O)9-11CF2C(O)OCH3(約2000の平均分子量を有する)をアルドリッチ・カンパニーから入手可能な3−アミノプロピルトリエトキシシランと反応させた。単に出発原料を混合するだけで発熱反応が室温においてすぐに進行した。反応の進行は赤外線分析によってモニターされた。特に記載しない限り、反応後に、10部のフッ素化ポリエーテルジシランを60部のTEOSおよび30部のエタノールと混合した。FC(C)として示されたこの混合物を実施例において使用した。
【0126】
実施例1〜4および比較例C−1およびC−2
実施例1および3において、再帰反射シートの第1(1)および第2(2)の実施態様として再帰反射シートに関する節に記載された再帰反射布ウェブを約20ml./分でスプレー塗布によって0.1gのフッ素化化合物(B)、0.6gのTEOS、3gの酢酸、1.5gの水および100gのエタノールの混合物で処理した。実施例2および4において、第1(1)および第2(2)の実施態様の再帰反射布ウェブを、(0.1gのフッ素化ポリエーテルジシラン(C)、0.6gのTEOSおよび0.3gのエタノールを含有する)1gのFC(C)、3gの酢酸、1.5gの水および100gのエタノールの混合物で処理した。噴霧した後、基材を5分間、120℃において乾燥および硬化させた。比較例C−1およびC−2については、第1(1)および第2(2)の実施態様の未処理の再帰反射シートをそれぞれ、使用した。比較例C−3において、第1の実施態様の湿潤再帰反射布を0.1gのフルオロケミカルジシラン(C)、0.3gの酢酸、1.5gの水および100gのエタノールの混合物でスプレー塗布によって処理した。接触角を初期に、およびエリクセン(Erichsen)クリーニング機、3M高性能拭取り材(3M社(3M Company)から入手可能)およびミスター・プロプリ(Mister Propre)クリーナー(ヘンケル(Henkel)から入手可能)を用いて、5000サイクルを用いて磨耗後に測定した。結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
結果は、高い撥水性を有する再帰反射シートが初期および長時間にわたる磨耗後の両方で得られたことを示す。非フッ素化補助化合物の添加は明らかに撥水性を改良する。処理済み再帰反射シートは、シクロヘキサンに対する接触角に反映されるように高い汚れ防止性質をさらに示した。
【0129】
実施例5および6および比較例C−4
実施例5および6において、PES/CO布上に縫いつけられた第2の実施態様による再帰反射布の18×15cm2パネルを、K1コーティングバー(ロイストン、リトリングトンのRKプリント・コート・インストルメンツ社サウス・ビュウ・ラボラトリーズ(RK Print−Coat Instruments,Ltd.South View Laboratories,Litlington,Royston)から入手可能なハーツ(Herts)SG8 0QZUK)を用いて0.02gのL31、0.05gのフッ素化オリゴマーシラン(A)、10gのMEKおよび0.02gのTEOS(実施例5)または0.02gのEHT(実施例6)の溶液で処理し、6g/m2とした。試料を3分間室温において乾燥させ、10分間100℃において硬化させた。比較例C−4を第2の実施態様の未処理の再帰反射シートで実施した。初期撥水性を測定した。3回の測定の平均値を表2に記録する。家庭洗濯を繰り返した後に湿潤時反射率の耐久性をEN471、アネックス(Annex)Aによって測定した。結果を表3に記録する(複製パネルの結果の平均値)。
【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
結果は、フッ素化化合物と補助化合物とを含む組成物で処理された再帰反射シートが、高耐久性の再帰反射性質を有することを示した。再帰反射率は、家庭洗濯を繰り返した後でも高いままであった。高い湿潤時再帰反射率もまた指摘される。
【0133】
実施例7および8および比較例C−5およびC−6
実施例7および8において、第1(1)および第2(2)の実施態様による再帰反射布ウェブを、K1コーティングバー(6g/m2)を用いて0.2gのL31、0.88gの、上に調製された56.9%フッ素化オリゴマー溶液(A)および0.2gのTEOSを100gのMEKに溶解した溶液でコーティングした。試料を10分間乾燥させ、ヘラウス(Heraeus)乾燥炉、モデル2721内で10分間、100℃で硬化させた。比較例C−5およびC−6を第1および第2の実施態様の未処理の再帰反射シートで実施した。処理済み再帰反射布の反射性質を45回の家庭洗濯の後に評価した。結果を表4に示す。
【0134】
【表4】

【0135】
表の結果は、処理済み再帰反射シートが45回の家庭洗濯後に未処理の再帰反射シートと比べて湿潤時反射率のかなりの改良を示したことを示す。
【0136】
実施例9および10
実施例9および10において、PES/CO布に縫いつけられた第1および第2の実施態様の再帰反射布を予備縮合されたTEOS、フッ素化オリゴマー溶液(A)およびSi−H基を有する化合物で処理した。第1の工程において、TEOSの予備縮合を行うために50gのTEOS、44gのエタノール、2.17gの脱イオン水および0.27gのHCl(37%)を48時間125ml反応フラスコ内で混合および撹拌した。溶剤を1時間53℃において1mmHg圧力でストリッピングした。第2の工程において、処理組成物を調製した。従って、第1の工程において調製された反応生成物0.2gを0.2gのL31および0.88gの56.9%フッ素化オリゴマーシラン溶液(A)と一緒に100gのMEKに溶解した。この混合物を、K1コーティングバーを用いて再帰反射布上にコーティングした(6g/m2)。試料を10分間乾燥させ、ヘラウス乾燥炉、モデル2721内で10分間、100℃で硬化させた。処理済み再帰反射布の反射性質を45回の家庭洗濯後に評価した。結果を表5に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
結果は、高い耐久性の再帰反射率がフッ素化化合物と、予備縮合されたTEOSとSiH基含有化合物とを含む処理組成物で得られることを示した。
【0139】
実施例11〜14
実施例7〜10において作製された処理済み再帰反射シートを、工業洗濯サイクル(30サイクル)に対するそれらの耐性について試験した。20サイクル後に再処理しておよび再処理せずに耐久性を試験した。実施例11および13について、20サイクル後の再処理のために、フッ素化オリゴマーシラン(A)とTEOSとL31とを含むエマルションを調製した。第1の工程において、30gのアークアド(Arquad)2HT/75および300gの酢酸エチルを、透明なエマルションが形成されるまで撹拌および加熱した(55℃)。100gのTEOSならびに400gの60%フッ素化オリゴマーシラン溶液(A)を添加した。撹拌した後、混合物は均質になった。100gのL31を添加し、混合物を60℃まで加熱した。別個のフラスコに、(ISO15797、アネックスA1に記載されているような)工業洗濯用の洗剤の5g/l水溶液10gを880gの脱イオン水に添加した。混合物を撹拌し、47℃まで加熱した。上に調製されたフルオロケミカル混合物を激しい撹拌下、洗剤混合物にゆっくりと添加した。安定なプレエマルションを、55℃および260/20バールの圧力に設定したMG乳化機(タイプLAB60−10TBS)に流し込んだ。エマルションは、1回終わった後、再びMGに流し込み、2回目を行った。エマルションは粘性になった。脱イオン水を添加して合計1920gを得た。エマルションをロータベーパー(rotavapor)を用いて46℃でストリッピングして固形分28%のエマルションを得た。実施例12および14の処理エマルションを同じ方法によって作製したが、(実施例9および10において調製された)予備縮合されたTEOSを用いた。全ての実施例について、20回目の工業洗濯サイクルの最終洗浄の間、10ml/l水のエマルションを工業洗濯機の容器に加え、軟化剤を加えるために割り当てた。試料を回分乾燥機で乾燥させた。10回、さらに工業洗浄した後に性能を試験した。反射率を測定し、20サイクル後に再処理をせずに30回の洗濯サイクルにかけた同じ試料と比較した。結果を表6に示す。
【0140】
【表6】

【0141】
30回の工業洗濯の後でも高い再帰反射率を有する再帰反射布シートが得られた。再帰反射布に応じて、処理済み基材をフルオロケミカル組成物の付加的な量で再処理することによってさらなる改良を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)バインダー層であって、該バインダー層の1つの主面に、該バインダー層の該主面に部分的に埋め込まれた部分を有しかつそれから部分的に突き出る部分を有する微小球の層を有するバインダー層と、(ii)前記微小球の前記埋め込まれた部分上に配置された反射層とを含む再帰反射シートを、
(i)1個以上のフッ素化基と1個以上の加水分解可能な基を有する1個以上のシリル基とを有するフッ素化化合物と、
(ii)(1)1分子当たり少なくとも1個の加水分解可能な基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素Mの非フッ素化化合物1つ以上、(2)Si−H基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択された補助化合物と、を含む処理組成物と接触させる工程を含む、処理方法。
【請求項2】
前記処理組成物が前記フッ素化化合物と前記補助化合物との水性分散体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理組成物が、有機溶剤中の前記フッ素化化合物と前記補助化合物との分散体または溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化化合物が、1個以上のフッ素化ポリエーテル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化化合物が、連鎖移動剤および任意に1つ以上の非フッ素化モノマーの存在下で少なくとも1つのフッ素化モノマーの重合から誘導されたオリゴマーを含み、前記オリゴマーが、1個以上の加水分解可能な基を有する少なくとも1個のシリル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴマーが、連鎖移動剤の存在下で少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび1つ以上の非フッ素化モノマーの重合から誘導され、前記非フッ素化モノマーおよび/または前記連鎖移動剤の少なくとも1つが、1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素化化合物の前記シリル基の前記加水分解可能な基および/または前記非フッ素化化合物の前記加水分解可能な基がハロゲン、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキシ基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非フッ素化化合物が式:
(R)iM(Y)j-i
(式中、Rが加水分解不能な基を表し、MがSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素を表し、jがMの原子価に応じて3または4であり、iが0、1または2であり、Yが加水分解可能な基を表す)で表わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
−SiH基を含む前記化合物がポリシロキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリシロキサンが、式:
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R6、R7、R8およびR9が各々独立して、水素、アルキルまたはアリール基を表わし、R4およびR5が各々独立して、アルキルまたはアリール基を表わし、xが0〜150の値を表わし、yが0〜150の値を表わし、ただし、x=0であるとき、R1、R2、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つが水素原子を表わすことを条件とする)で表わされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)1個以上のフッ素化基と1個以上の加水分解可能な基を有する1個以上のシリル基とを有するフッ素化化合物と、
(ii)Si−H基を有する有機化合物からなる群から選択された補助化合物と、を含む組成物。
【請求項12】
1分子当たり少なくとも1個の加水分解可能な基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素Mの非フッ素化化合物を1つ以上さらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記非フッ素化化合物が、式:
(R)iM(Y)j-i
(式中、Rが加水分解不能な基を表し、MがSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PbおよびSnからなる群から選択された元素を表し、jがMの原子価に応じて3または4であり、iが0、1または2であり、Yが加水分解可能な基を表す)で表わされる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
−SiH基を含む前記化合物がポリシロキサンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリシロキサンが、式:
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R6、R7、R8およびR9が各々独立して、水素、アルキルまたはアリール基を表わし、R4およびR5が各々独立して、アルキルまたはアリール基を表わし、xが0〜150の値を表わし、yが0〜150の値を表わし、ただし、x=0であるとき、R1、R2、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つが水素原子を表わすことを条件とする)で表わされる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記フッ素化化合物と前記補助化合物との水性分散体を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
有機溶剤中の前記フッ素化化合物と前記補助化合物との分散体または溶液を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記フッ素化化合物が1個以上のフッ素化ポリエーテル基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記フッ素化化合物が、連鎖移動剤および任意に1つ以上の非フッ素化モノマーの存在下で少なくとも1つのフッ素化モノマーの重合から誘導されたオリゴマーを含み、前記オリゴマーが、1個以上の加水分解可能な基を有する少なくとも1個のシリル基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記オリゴマーが、連鎖移動剤の存在下で少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび1つ以上の非フッ素化モノマーの重合から誘導され、前記非フッ素化モノマーおよび/または前記連鎖移動剤の少なくとも1つが、1個以上の加水分解可能な基を有するシリル基を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記加水分解可能な基が独立して、ハロゲン、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキシ基からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって得ることができる再帰反射物品。

【公表番号】特表2007−520740(P2007−520740A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547057(P2006−547057)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/040958
【国際公開番号】WO2005/066666
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】