説明

オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)の分析方法

【課題】
天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中に含まれるOPCの新規な定量法を提供する。
【解決手段】
OPCを加水分解することで得られるアントシアニジンを定量することでOPCの総量を求め、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でOPCの重合度の割合を明らかにすることで、OPC中の各重合物の含有量を求める新規なOPCの定量法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品その他の分析試料中に含まれるオリゴメリックプロアントシアニジン(フラバン−3−オールのn重合体の混合物の総称:n ≧2)を定量する方法に関するものである。
【技術背景】
【0002】
プロアントシアニジン(OPC)の効能については、ワインにも含まれている事からフレンチパラドックスの効能成分の一つといわれており(1995、Clin. Chim. Acta. 235, 207-219)、抗酸化作用、末梢循環改善作用、血液流動性改善効果、肝機能改善効果(2004, ジャパンフードサイエンス, 403、1 月号、40-45)、血小板凝集抑制効果(特表2003-527418)などが知られている。したがって、このような活性成分であるOPCを簡便に定性および定量する方法の開発が望まれている。
【0003】
従来知られているプロアントシアニジンの分析方法としては、質量分析検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(LC-MS)による逆相のHPLC (2003, Biosci. Biotechnol. Biochem., 67,(5), 1140-1142)、LC-MS によるグラジエント溶出の順相のHPLC (2003, J. Agric. Food Chem., 51, 7513-7521)による方法がある。しかしながらいずれの分析法においても、MS検出器が必要なため、簡便な方法とは言い難い。またプロアントシアニジンは構成成分であるフラバン-3-オール類の立体異性により、非常に多くの立体異性体が存在し、標準物質として入手できる化合物には限りがある。そのため定量分析は一部の既知化合物を除いて不可能であった。またプロアントシアニジンはモノマーであるフラバン-3-オールから2量体、3量体さらに重合度の大きいn量体まで天然界に存在し、逆相HPLCによる分析ではフラバン-3-オール(単量体)と2量体、3量体のピークが重なる事も認められている。
【0004】
このように、OPCの定性、定量については簡便な方法が存在しなかった。
【特許文献1】特表2003-527418
【非特許文献1】1995、Clin. Chim. Acta. 235, 207-219
【非特許文献2】2004, ジャパンフードサイエンス,403、1 月号、40-45
【非特許文献3】2003, Biosci. Biotechnol. Biochem., 67,(5), 1140-1142
【非特許文献4】2003, J. Agric. Food Chem., 51, 7513-7521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モノマーであるフラバン-3-オールの干渉を受けず、天然物、飲食物、医療品中に含まれるn 量体の存在割合並びにその含量を求めることの出来る新規な分析法の開発が強く望まれている。従って、本発明は天然物、飲食物などの分析試料中に含まれるOPCの新規な定量法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するために種々研究の結果、(a)オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)を加水分解することで生成するアントシアニジン数は、OPCに含まれるフラバン-3-オールの重合度nの大きさにかかわらず常にn/2である事実を、実験的および分子量論的に明らかにして、簡便なOPCの定量法を見出した。本発明者等はさらに、(b)従来クロマトグラフィーで分離困難であった異なる重合度nのフラバン-3-オール重合体の分離は、順相系カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより容易に達成できるという予測に反する事実も見出した。
【0007】
本発明の方法は、上記(a)及び/又は(b)の事実を利用して、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中のオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)量を分析し、並びにOPC中のn重合体の割合及び/又は含有量を簡便な方法で分析する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、オリゴメリックプロアントシアニジンにしばしば含まれるフラバン−3-オールモノマーの干渉を受けずに、オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)を定量することができる。
【0009】
本発明の方法は、質量分析装置を必要とせずに、分析試料中のオリゴメリックプロアントシアニジンの各重合体毎にフラバン−3-オール重合体を定量することができる。したがって、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中のオリゴメリックプロアントシアニジンの分析に非常に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法が対象とする分析試料は、天然物(ブドウ種子、タマリンド、リンゴ、樹皮、松樹皮由来ポリフェノール、茶葉、ココアなど、及び/又はそれら処理物(エキスなど)、飲食物、医薬品及び/又は化粧品など、フラバン−3−オールのn重合体(n≧2)の混合物(以下、オリゴメリックプロアントシアニジンまたはOPCという)を含むと予測される任意の試料である。
【0011】
オリゴメリックプロアントシアニジンは、典型的には次の一般式で示される化合物少なくとも一種を含んでいる:
【0012】
【化2】

【0013】
本発明の対象は、特に上記オリゴメリックプロアントシアニジンが、構造式1においてn=0で表されるprocyanidin B1, B2, B3, B4、構造式2においてn1=1、n2=0で表されるprocyanidin B5, B6, B7, B8、および構造式1においてn=1で表されるprocyanidin C1, C2, C4の少なくとも一種を含むproanthocyanidin類である。
(1) OPC総量の定量
本発明によれば、分析試料中のオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)に含まれるフラバン-3-オール重合体の種類および重合度を考慮する必要はなく、OPCを加水分解して生じるアントシアニジン(Anthocyanidin)を定量すると、その値からOPCの総量を求めることができる。本発明の方法は以下の順序で行うことができる。
【0014】
OPCの加水分解
オリゴメリックプロアントシアニジンの加水分解は、酸性条件下の加熱分解により行うことができ、好ましい条件の例を挙げると、酸性条件が、酸/低級アルコールであり、酸が塩酸、硫酸、硝酸であり、低級アルコールが、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及び/又はイソペンタノールであり、加熱分解を、温度が50-100℃、好ましくは80-100℃、より好ましくは85-95 ℃、そして、反応時間が30分以上、好ましくは1時間以上で行うことができる。酸の濃度は、0.1Nから2N、好ましくは0.4Nから1Nの範囲で行うことができる。
【0015】
加水分解を行うに際して、分析試料がオリゴメリックプロアントシアニジンを低濃度で含む液状の場合は、サンプルを適当な方法、例えば凍結乾燥あるいは減圧下で乾固して濃縮してもよい。
【0016】
分析試料(濃縮物も含まれる)を0.01〜1%、好ましくは、0.05-0.2% (0.5-2mg/ml)となるように、上記酸/低級アルコールに溶解し、加水分解を行うことができる。
【0017】
加水分解の具体例を示すと、プロアントシアニジンを含むサンプル0.5mg を1ml の0.6N HCl/ブタノールにガラス試験管内で溶解し、90℃の水浴中で2 時間静置する。反応終了後、700-400nm の吸収スペクトルをUV-265(島津製作所製)で測定し551nm の吸光度を測定して加水分解反応が十分に行われたことを確認する。
【0018】
アントシアニジン量の測定
加水分解で生じたアントシアニジン量の測定は、従来公知の任意の方法で行ってよいが、例えば高速液体クロマトグラフィー又は吸光度法で容易に行うことができる。吸光度法は、加水分解反応物をそのまま用いて行うことができ、アントシアニジンが可視吸収スペクトルで極大吸収を示す550-552nmの吸光度を測定することが好ましい。この波長では、オリゴメリックプロアントシアニジンの加水分解で生じたアントシアニジン以外の成分(カテキン:極大吸収270nm)の影響は無視できる。
【0019】
HPLC法の一例を具体的に記載すると、HPLCカラムYMC-ODS-A312(6mm x150mm 、ワイエムシー株式会社)を用い、酢酸:メタノール:水=15:17.5:67.5の混合液、1ml/min でカラム温度は40℃、検出はA520nmの面積値でアントシアニジンを定量する。標準物質としてcyanidin・chloride、delphinidin・chlorideおよびpelargonidin・chloride(いずれもフナコシ株式会社)を用いることができる。なお、先の標準物質の保持時間はいずれも異なっており、混合しても、どれか一つを選択しても標準物質として使用することができる。HPLC カラムは逆相系の樹脂であれば、上記のC18系以外にも、C8系、C30系、ポリマー系C18樹脂でも同様に分析する事が可能である。
【0020】
OPC総量の計算
上で定量したアントシアニジン量から、分析試料中のオリゴメリックプロアントシアニジン量を求めるには、次のように行う。イ)OPCに含まれるフラバン−3−オール重合体の重合度nの大きさにかかわらずn重合体1個から加水分解で産生するアントシアニジン量はn/2個である事実に基づいて、加水分解して生じたアントシアニジン量に係数2を掛け合わせて、所定量の分析試料中のOPCの総量を例えばmg単位で求めることができる。あるいは、ロ)OPCの加水分解で産生するアントシアニジン量はOPCに含まれるフラバン−3−オール重合体の重合度nの大きさにかかわらずOPCの総量に比例する事実に基づいて、加水分解して生じたアントシアニジン量を、既知量のOPC標準物質を加水分解して生じたアントシアニジン量と対比して、検量線によりまたは下記の計算式により、分析試料中のOPCの総量(例えばmg単位)および/または分析試料中のOPCの割合(a%)を求めることができる:
OPCの総量(mg)=(測定値sample/測定値standard)x 標準物質の量(mg) (式1)
分析試料中のOPCの割合(a%)=(OPCの総量(mg)/分析試料の量) x 100 (式2)
標準物質としては、Procyanidin B1、Procyanidin B2 (いずれもフナコシ株式会社)などから適宜選択して使用することができる。
(2) OPCを構成するn重合体各々の定量
本発明の特に好ましい態様では、上記(1)における所定重量の分析試料中のOPCの総重量の決定に加え、またはこれとは独立に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でOPCの種々のフラバン−3−オール重合体の割合を明らかにすることで、所定重量の分析試料中に含まれる異なる重合度nの重合体毎にその重量を求める新規なOPCの定量法も提供する。
【0021】
ここで、高速液体クロマトグラフィーに使用するカラムは順相系カラムであることが好ましく、特に順相カラムの充填樹脂がシリカゲル系であることが好ましい。本発明者らの研究によれば、重合度の異なるプロアントシアニジン(この場合、n=1も含む)が、順相系カラムのクロマトグラフィーで、極めて良好に分離できることが判明した。フラバン-3-オール類は極性が大きいことから考えると、順相系カラムで分離できることは従来考えられなかった。しかも、本発明の方法は紫外検出器があれば測定が可能で、質量分析検出器を必要としない。
【0022】
高速液体クロマトグラフィーの条件は適宜決定してよいが、具体的に例示すると、カラムは例えば、Inertsil SIL,(4.6 mmφ x 150 mm 、ジーエルサイエンス株式会社)を用い、溶離液は例えばヘキサン、メタノール、テトラヒドロフラン、蟻酸の混合液で、好ましくはHexane:MeOH:THF:HCOOH = 45:40:14:1のアイソクラティック溶出(約1ml/min)で行うが、Hexane:MeOH:THF:HCOOH = 40から60:30 から50:10 から20:0.1から5 の割合で流速が0.3 から1.5ml/min でも分析する事が可能である。カラム温度は10から60℃好ましくは40℃、検出器はPhotodiodeoarray検出器を用いて240-400nm のスペクトルデータを収集することが好ましい、なぜならOPCは280nmに極大吸収を持つが、他のポリフェノールが混在するサンプルの場合極大吸収が異なるピークはOPCと区別し除外する事が可能となるからである。しかしながら、単波長の検出器しか使用できない環境にある場合はA280nmの吸収のみでも分析する事が可能である。
【0023】
クロマトグラフィーで分離された全重合体の総ピーク面積(2 〜全重合体)は、280nm に極大吸収を持つピークのA280nmにおける面積値を合計する。カラムはInertsil SIL, (4.6 mmφ x 150 mm、ジーエルサイエンス株式会社)の他、Shimpack PREP-SIL(H)(4.6 mmφ x 300 mm、株式会社島津製作所) 、Supersher Si60(4.5 mmφ x 100 mm、メルク株式会社)でも可能である。
【0024】
OPCを構成する各n重合体の割合(b%)は、高速液体クロマトグラフィーのピーク面積に基づいて下記の計算式で求めることができる:
b% ={ピーク面積(各n重合体)}/{総ピーク面積(全重合体)} (式3)
こうして求めた各n重合体の割合と、上記(1) で求めたOPCの重量から、下記の計算式により、所定重量の分析試料に含まれる各n 重合体の重量を、例えばmg単位で求めることができる:
n 重合体の量(mg)= OPCの総量(mg) x n重合体の割合(b%) (式4)
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定されない。
【実施例1】
【0025】
酸加水分解条件の検討
フラバンジェノールを用いて、酸分解の経時変化を観察した。1mgのフラバンジェノールを1mlの0.6N HCl/BuOHに溶解し、90℃の湯浴で加温し、20分から140 分まで20分に一回サンプリングしてブタノールで10倍希釈して400-700nmの可視部吸収スペクトルを測定した。極大吸収はいずれも551nmであった。測定結果を表1に示す。
【0026】
[表1]
表1 フラバンジェノールの酸分解の経時変化
時間 吸光度(551nm)
20分 0.732
40分 0.796
60分 0.819
80分 0.830
100分 0.867
120分 0.877
140分 0.823

この結果、吸光度は酸分解の時間とともに緩やかに上昇し、120分で最大に達した。この結果に基づき、以後の実験において加水分解の時間は120分(2時間)とした。
【実施例2】
【0027】
酸加水分解によるアントシアニジンの生成とその定量
プロアントシアニジンを含むサンプル0.5mg を1ml の0.6N HCl/ブタノールにガラス試験管内で溶解し、90℃の水浴中で2時間静置した。反応終了後、700-400nm の吸収スペクトルをUV-265(島津製作所製)で測定し551nm の吸光度で定量した。また反応終了液は以下の条件のHPLCに供し、アントシアニジンの定量を行った。
【0028】
カラム:YMC-ODS-A312, 6 mmφ x 150 mm
移動相:CH3COOH : MeOH : H2O=15 : 17.5 : 67.5
検出:A520nm (PDAは400〜600nm を測定)
定量のための標準物質はdelphinidin、cyanidinおよびPelargonidinをフナコシ株式会社より購入した。標準物質delphinidinは4.2分に溶出し、λmaxは535nm、Cyanidinは5.5 分に溶出し、λmaxは525nm、Pelargonidinは8.0分に溶出し、λmaxは515nmであった。これらと一致するサンプル酸加水分解物からの成分をそれぞれdelphinidin、cyanidinおよびPelargonidinとして定量した。
【0029】
分析に供したサンプルはフラバンジェノール、ブドウ種子ポリフェノール、茶ポリフェノール、リンゴポリフェノール、タマリンドでOPCの標準物質としてprocyanidinB1(フナコシ株式会社)を用いた。
【0030】
結果は表2および表3に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【実施例3】
【0033】
順相HPLCによるカテキン、2 量体、3 量体の分析
カテキンおよびプロアントシアニジンの標準物質は以下の条件の順相HPLCにより分析した。
【0034】
(+)-catechin(ナカライテスク株式会社)、(-)-epicatechin(和光純薬株式会社)、procyanidinB1(フナコシ株式会社)の各サンプル0.1mgを1mlの移動相に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過後、下記のHPLCに供した。
【0035】
また3量体は実施例5に記載する方法で合成した。
【0036】
カラム:Inertsil SIL, 4.6 mmφ x 150 mm
移動相:hexane : MeOH : THF : HCOOH=45 : 40 : 14 : 1
検出:A280nm (PDA は240 〜400nm を測定)
本条件でモノマー((+)-catechinおよび(-)-epicatechin )は2.9分に、ダイマーは3.6分に、トリマーは4.3分に溶出した。
【0037】
それぞれのクロマトグラムは図1に示す。
【実施例4】
【0038】
順相HPLCによる分析
カテキンおよびプロアントシアニジンの混合しているサンプルを以下の条件の順相HPLCにより分析した。
【0039】
プロアントシアニジンを含むサンプル1〜2mgを1mlの移動相に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過後、下記のHPLCに供した。
【0040】
用いたサンプルは、リンゴポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノール、フラバンジェノールおよびタマリンドである。
【0041】
カラム:Inertsil SIL, 4.6 mmφ x 150mm
移動相:hexane : MeOH : THF : HCOOH=45 : 40 : 14 : 1
検出:A280nm (PDAは240〜400nmを測定)
分析のクロマトグラムは図2に示す。図中、×印は極大吸収に280nmをもたない、OPCとは異なるポリフェノール類であることを意味する。
【0042】
各サンプル中の2量体および3量体の濃度を式c% = a% x b%より求め、結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【実施例5】
【0044】
OPCの合成
OPCの合成は論文(1981, J.C.S. Perkin I. 1235-1245)に従い、以下のように行った。
【0045】
(+)-taxifolin 500mg をエタノール50mlに溶解し、NaBH4を200mg 加えた後、(+)-catechin、1gを加え溶解後、HClを加え1時間撹拌した。反応物を逆相のHPLCで精製し、3量体を得た。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】順相HPLCによるカテキン、及びフラバン−3−オールの2 量体、3 量体の分析結果を示す図である。
【図2】順相HPLCによるカテキンおよびプロアントシアニジンの混合している分析試料の分析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定重量の分析試料中に含まれる、フラバン−3−オールのn重合体(n ≧2)の混合物(以下、オリゴメリックプロアントシアニジンまたはOPCという)の総重量を定量する方法であって、nの大きさにかかわらずn重合体1個から加水分解で産生するアントシアニジン量はn/2個である事実に基づいて、該分析試料のOPCを加水分解して生じるアントシアニジン重量を測定し、測定されたアントシアニジン重量に係数2を掛け合わせて該試料中のOPCの総重量とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
所定重量の分析試料中に含まれる、オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)の総重量を定量する方法であって、OPCの加水分解で産生するアントシアニジン量はOPCに含まれる重合度nの大きさが異なるn重合体の量比にかかわらずOPCの総量に比例する事実に基づいて、該分析試料のOPCを加水分解して生じるアントシアニジン重量を測定し、それとは別に既知重量のOPC標準物質を加水分解して生じるアントシアニジン量を測定して、検量線によりまたは下記の計算式により分析試料中のOPCの総重量および/または分析試料中のOPCの重量比(a%)を求めることを特徴とする方法:
OPCの総重量=(測定値sample/測定値standard)x 標準物質の重量 (式1)
分析試料中のOPCの重量比(a%)=(OPCの総重量/分析試料の重量) x 100 (式2)
【請求項3】
標準物質が、プロシアニジン(Procyanidin) B1である請求項2記載の方法。
【請求項4】
加水分解を、酸性条件下の加熱分解により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
酸性条件が、酸/低級アルコールであることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
酸が塩酸、硫酸又は硝酸であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
低級アルコールが、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及び/又はイソペンタノールであることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
加熱分解を、温度50-100℃、好ましくは80-100℃、より好ましくは85-95 ℃、そして、反応時間30分以上、好ましくは1時間以上で行うことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
アントシアニジン量の測定を高速液体クロマトグラフィー及び/又は吸光度法で行う請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
吸光度法を、アントシアニジンが可視吸収スペクトルで極大吸収を示す550-552nmの吸光度測定により行うことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
分析試料中に含まれるオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)を、重合度nが異なるフラバン−3−オールのn重合体毎に定量する方法であって、次の段階を含む方法:
a) 請求項1〜10のいずれか1項の方法で、所定重量の分析試料中に含まれるOPCの総重量を求め;
b) a)の操作とは別に、該分析試料を高速液体クロマトグラフイー(HPLC)で分析して、OPCに含まれる重合度nが異なるn重合体を各々分離し、全n重合体すなわちOPCの量に対する各n重合体の量的割合を求め;そして
c) a)とb)の結果からn重合体毎にその分析試料中の重量を求める。
【請求項12】
(b)の高速液体クロマトグラフィーに使用するカラムが順相系カラムであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
順相カラムの充填樹脂がシリカゲル系であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
高速液体クロマトグラフィーにおいて、溶離液はヘキサン/メタノール/テトラヒドロフラン/蟻酸の混合液であり、その混合比はヘキサン/メタノール/テトラヒドロフラン/蟻酸=40-60:30-50:10-20:0.1-5 、好ましくは45:40:14:1のアイソクラティックであり、カラム温度は10から60℃、好ましくは40℃であり、そして、280nmの吸光度を測定することを特徴とする請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
各n重合体の量的割合(b%)を、高速液体クロマトグラフィーのピーク面積に基づいて下記の計算式で求めることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項記載の方法:
b% ={ピーク面積(各n重合体)}/{総ピーク面積(全重合体)} (式3)
【請求項16】
(c)のn重合体毎の重量を求める段階において、(a)により求めたOPCの重量と(b)により求めた各n重合体の割合から、下記の計算式により求めることを特徴とする請求項11記載の方法:
n重合体の量 = OPCの総重量 x n重合体の割合(b%) (式4)
【請求項17】
定量しようとするオリゴメリックプロアントシアニジンが次の一般式で示される化合物少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項記載の方法:
【化1】

【請求項18】
オリゴメリックプロアントシアニジンが、構造式1においてn=0で表されるprocyanidin B1, B2, B3, B4、構造式2においてn1=1、n2=0で表されるprocyanidin B5, B6, B7, B8、および構造式1においてn=1で表されるprocyanidin C1, C2, C4の少なくとも一種を含むプロアントシアニジン類であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
分析試料が天然物(ブドウ種子、タマリンド、リンゴ、樹皮、松樹皮由来ポリフェノール、茶葉、ココアなど、及び/又はそれら処理物(エキスなど)、飲食物、医薬品及び/又は化粧品であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
分析試料に含まれるオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)の重合度の異なるn重合体の割合を、高速液体クロマトグラフイー(HPLC)により求める方法。
【請求項21】
高速液体クロマトグラフィーに使用するカラムが順相系カラムであることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
順相カラムの充填樹脂がシリカゲル系であることを特徴とする請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
高速液体クロマトグラフィーにおいて、溶離液はヘキサン/メタノール/テトラヒドロフラン/蟻酸の混合液であり、その混合比はヘキサン/メタノール/テトラヒドロフラン/蟻酸=40-60:30-50:10-20:0.1-5 、好ましくは45:40:14:1のアイソクラティックであり、カラム温度は10から60℃、好ましくは40℃であり、そして、280nmの吸光度を測定することを特徴とする請求項20〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
各n重合体の割合(b%)を、その高速液体クロマトグラフィーのピーク面積に基づいて下記の計算式で求めることを特徴とする請求項20〜23のいずれか1項記載の方法。
b% ={ピーク面積(各n重合体)}/{総ピーク面積(全重合体)} (式3)
【請求項25】
分析試料が清涼飲料、茶飲料、酒類などを含む液状の場合は、該試料を凍結乾燥あるいは減圧下で乾固して粉末化する段階を含むことを特徴とする請求項1−24のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−38763(P2006−38763A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222255(P2004−222255)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】