説明

オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物およびその製造方法

【課題】高温信頼性及び機械的特性を損なわずに樹脂成形体の難燃性及び誘電特性を高める環状ホスファゼン化合物を提供する。
【解決手段】式(1)のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物。


式(1)中、nは1〜6の整数を示し、Aは少なくとも一つがオリゴ(フェニレンオキシ)基置換フェニレンオキシ基であり、他が炭素数6〜20のアリールオキシ基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ホスファゼン化合物およびその製造方法、特に、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、その加工性、耐薬品性、耐候性、電気的特性および機械的強度等の点で他の材料に比べて優れていることから、産業用および民生用の機器並びに電気製品などの分野において多用され、その使用量が増加している。合成樹脂の中には、燃焼し易い性質を有するもの、すなわち易燃性合成樹脂があり、これについては難燃剤の添加により難燃性の付与が試みられている。この目的で使用される難燃剤として、一般に、ハロゲン含有化合物やハロゲン含有化合物と酸化アンチモンなどのアンチモン化合物との混合物が知られている。ところが、このような難燃剤を配合した樹脂組成物は、燃焼時や成形時等において、環境汚染のおそれがあるハロゲン系ガスを発生する可能性がある。また、ハロゲン系ガスは、電子部品の電気的特性や機械的特性を低下させる可能性がある。そこで、最近では、易燃性合成樹脂用の難燃剤として、燃焼時や成形時等においてハロゲン系ガスが発生しにくい非ハロゲン系のもの、例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの金属水和物系難燃剤並びにリン酸エステル系、縮合リン酸エステル系、リン酸アミド系、ポリリン酸アンモニウム系、ホスフィネート系およびホスファゼン系などのリン系難燃剤が多用されるようになっている。
【0003】
このうち、金属水和物系難燃剤は、脱水熱分解の吸熱反応とそれに伴う水の放出とが合成樹脂の熱分解や燃焼開始温度と重複した温度領域で起こることで難燃化効果を発揮するが、その効果を高めるためには樹脂組成物に対して多量に配合する必要がある。このため、この種の難燃剤を含む樹脂組成物の成形品は、機械的強度が損なわれるという欠点がある。一方、リン系難燃剤のうち、リン酸エステル系および縮合リン酸エステル系の難燃剤は、可塑効果を有するため、難燃性を高めるために樹脂組成物に対して多量に添加すると、樹脂成形品の機械的強度が低下するなどの欠点が生じる。また、リン酸エステル系、リン酸アミド系、ポリリン酸アンモニウム系およびホスフィネート系の難燃剤は、容易に加水分解することから、機械的および電気的な長期信頼性が要求される樹脂成形品の製造用材料においては実質的に使用が困難である。これらに対し、ホスファゼン系難燃剤は、他のリン系難燃剤に比べて可塑効果および加水分解性が小さいことから、樹脂組成物に対する添加量を大きくすることができるため、合成樹脂用の有効な難燃剤として多用されつつある。
【0004】
しかし、ホスファゼン系難燃剤は、樹脂組成物に対する添加量を増やすと、高温下における樹脂成形品の信頼性(高温信頼性)を損なう可能性がある。具体的には、熱可塑性樹脂系の樹脂組成物の場合は、高温下においてその樹脂成形体からホスファゼン系難燃剤がブリードアウト(溶出)し易く、また、熱硬化性樹脂系の樹脂組成物の場合は、高温下においてその樹脂成形品にフクレ等の変形が発生し、当該樹脂成形品が積層基板等の電気・電子分野において用いられる場合は変形によるショートを引き起こす可能性がある。
【0005】
そこで、ホスファゼン系難燃剤は、高温信頼性を高めるための改良が検討されており、その例として特許文献1〜4には、ヒドロキシ基等の反応性基を有するホスファゼン系難燃剤およびそれを用いたエポキシ樹脂組成物やポリイミド樹脂組成物が開示されている。この種のホスファゼン系難燃剤は、樹脂組成物に対して多量に添加した場合であっても樹脂成形品の高温信頼性を損ないにくいが、添加量を増しても樹脂成形品の難燃性を効果的に高めるのが困難という、それが要求される本質的効果の点で不十分なものもあり、また、樹脂成形品の機械的特性(特に、高いガラス転移温度)を損なうことにもなる。
【0006】
また、近年の情報通信分野で用いられる電子機器においては、信号の大容量化や高速化が進展していることから、高周波特性に優れ、配線数増加による高多層化に対応できるプリント配線板が要求されている。このようなプリント配線板においては、MHz帯からGHz帯という高周波領域における信頼性を維持するために、良好な誘電特性、具体的には低誘電率(ε)および低誘電正接(tanδ)が必要になる。誘電特性に優れたプリント配線板として、エポキシ樹脂にポリフェニレンエーテル(PPE)を配合した熱硬化性樹脂組成物を絶縁層として用いたものが知られている。このプリント配線板は、通常のエポキシ樹脂組成物からなる絶縁層を用いたものに比べて誘電特性に優れているが、他の高価な高周波基板用材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂(BT樹脂)およびポリイミド樹脂などと比較すると、絶縁層部分の耐熱性に劣るという不具合がある。そこで、絶縁層において実用域で要求される難燃性を達成するために、上述の熱硬化性樹脂組成物にホスファゼン系の難燃剤を添加した例が報告されているが(特許文献5、6)、この場合は上記絶縁層において難燃剤のブリードアウトが発生する等、高温信頼性の低下をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−302751号公報
【特許文献2】特開2003−342339号公報
【特許文献3】特開2004−143465号公報
【特許文献4】特開2006−117545号公報
【特許文献5】特開2009−78209号公報
【特許文献6】特開2009−108144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高温信頼性および機械的特性を損なわずに樹脂成形体の難燃性および誘電特性を高めることができる環状ホスファゼン化合物を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく研究を重ねた結果、オリゴ(フェニレンオキシ)基が置換した構造を有する環状ホスファゼン化合物と樹脂材料とを含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂成形体が高温信頼性、機械的特性、難燃性および誘電特性の各特性において優れていることを見出した。
【0010】
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、下記の式(1)で示されるものである。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)中、nは1〜6の整数を示す。また、Aは、下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれる基を示しかつ2n+4個のAのうちの少なくとも一つがA2基である。
A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基。
A2基:下記の式(2)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
【0013】
【化2】

【0014】
式(2)中、E〜Eは、水素原子またはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、下記の式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示しかつ少なくとも一つが式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基を示す。
【0015】
【化3】

【0016】
式(3)中、qは1〜50の整数を示す。また、E〜Eは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示す。
【0017】
このオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物において、好ましいA2基は、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基およびオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つである。また、このオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、好ましくは、式(1)のnが1若しくは2のものである。
【0018】
本発明の製造方法は、本発明に係るオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造方法に関するものであり、下記の式(4)で示されるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物と、下記の式(6)で示されるポリフェニレンエーテル類とをラジカル開始剤の存在下で反応させる工程を含んでいる。
【0019】
【化4】

【0020】
式(4)中、mは1〜6の整数を示す。Gは、下記のG1基およびG2基からなる群から選ばれる基を示しかつ2m+4個のGのうちの少なくとも一つがG2基である。
G1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基。
G2基:下記の式(5)で示されるヒドロキシ基置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
【0021】
【化5】

【0022】
式(5)中、E10〜E14は、水素原子またはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示しかつ少なくとも一つがヒドロキシ基である。
【0023】
【化6】

【0024】
式(6)中、rは30〜1,000の整数を示す。E〜Eは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示す。
【0025】
この製造方法において用いられる式(6)で示されるポリフェニレンエーテル類として好ましいものは、ポリ(メチルフェニレン)エーテルおよびポリ(ジメチルフェニレン)エーテルのうちの一つである。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分と、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物とを含んでいる。
【0027】
ここで用いられる樹脂成分は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂およびビスマレイミド−シアン酸エステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0028】
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物からなるものである。また、本発明の電気・電子部品は、本発明の樹脂成形体を用いたものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、上述のような特定の構造を有するものであるため、樹脂成形体を形成するための樹脂組成物において用いられた場合、高温信頼性および機械的特性を損なわずに樹脂成形体の難燃性および誘電特性を高めることができる。
【0030】
本発明に係るオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造方法は、上述のような工程を含むものであるため、本発明に係る特定の構造を有するオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を製造することができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を難燃剤として含むため、高温信頼性、機械的特性、難燃性および誘電特性に優れた樹脂成形体を形成することができる。
【0032】
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物からなるため、高温信頼性、機械的特性、難燃性および誘電特性に優れている。
【0033】
本発明の電気・電子部品は、本発明の樹脂成形体を用いているため、高温信頼性、機械的特性、難燃性および誘電特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、下記の式(1)で示されるものである。
【0036】
【化7】

【0037】
式(1)において、nは、1から6の整数を示している。但し、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、式(1)のnが小さい化合物の方が、後述する樹脂組成物に用いられた場合において樹脂成分との相溶性が高い。このため、式(1)のnは、1から4の整数が好ましく、1若しくは2が特に好ましい。すなわち、このオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物として特に好ましいものは、nが1のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロトリホスファゼン(3量体)およびnが2のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロテトラホスファゼン(4量体)である。
【0038】
また、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、式(1)のnが異なる二種以上のものの混合物であってもよい。但し、この混合物は、式(1)のnが小さいホスファゼン化合物の含有量の多いものの方が、後述する樹脂組成物に用いられた場合において樹脂成分との相溶性が高い。したがって、この混合物は、式(1)のnが1〜4の整数のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を重量比率で95%以上含む混合物が好ましく、式(1)のnが1若しくは2のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を重量比率で95%以上含む混合物が特に好ましい。
【0039】
式(1)において、Aは、下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれる基を示している。
【0040】
[A1基]
炭素数が6〜20のアリールオキシ基。このアリールオキシ基は、炭素数が1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。
【0041】
このようなアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、エチルメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、イソプロピルメチルフェノキシ基、イソプロピルエチルフェノキシ基、ジイソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ペンチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、エテニルフェノキシ基、1−プロペニルフェノキシ基、2−プロペニルフェノキシ基、イソプロペニルフェノキシ基、1−ブテニルフェノキシ基、sec−ブテニルフェノキシ基、1−ペンテニルフェノキシ基、1−ヘキセニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基およびフェナントリルオキシ基等を挙げることができる。このうち、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、2−プロペニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が好ましく、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が特に好ましい。
【0042】
[A2基]
下記の式(2)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
【0043】
【化8】

【0044】
式(2)中、EからEは、水素原子またはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および下記の式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基から選ばれる基であり、少なくとも一つが下記の式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基である。炭素数6〜20のアリール基は、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。
【0045】
【化9】

【0046】
式(3)中、qは1〜50の整数を示す。また、E〜Eは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基である。
【0047】
式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基は、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等の官能基を有するフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいてもよいし、また、フェニレンエーテルユニットの全部または一部がエポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基またはシリル基等で官能化されることで変性されていてもよい。
【0048】
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基のqを選択することで、後述する樹脂組成物からなる樹脂成形体に対して付与する難燃性を制御することができる。すなわち、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物中のオリゴ(フェニレンオキシ)基において、フェニレンオキシ基の繰り返し数が小さいもの(qが小さいもの)を選択すると、樹脂組成物に対して一定重量割合で添加した場合のリン含有率を高めることができることから、当該樹脂組成物からなる樹脂成形体に対して高い難燃性を付与することができる。一方、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物中のオリゴ(フェニレンオキシ)基において、フェニレンオキシ基の繰り返し数が大きいもの(qが大きいもの)を選択すると、樹脂組成物に対して一定重量割合で添加した場合のリン含有率を抑制することができることから、当該樹脂組成物からなる樹脂成形体に対して適度に難燃性を付与することができる。したがって、式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基のqは、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と組合わせる樹脂成分の種類に応じて設定するのが好ましい。例えば、樹脂成分が比較的燃焼しやすいものの場合、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物中のオリゴ(フェニレンオキシ)基は繰り返し数が小さいもの(qが小さいもの)を選択するのが好ましく、また、樹脂成分が比較的燃焼しにくいものの場合、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物中のオリゴ(フェニレンオキシ)基は繰り返し数が大きいもの(qが大きいもの)を選択するのが好ましい。
【0049】
A2基の具体例としては、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2−メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−5−メチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2−アリルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−アリルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−5−アリルフェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2−アリルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−アリルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換アリルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,4−ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,5−ジメチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,3−ジメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,4,5−トリメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,3,5−トリメチルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換トリメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−フェニルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−フェニルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基などのオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2−メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−5−メチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基などのオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2−アリルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−アリルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−5−アリルフェニルオキシ基、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2−アリルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−アリルフェニルオキシ基などのオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換アリルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,4−ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,5−ジメチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,3−ジメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基などのオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,4,5−トリメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,3,5−トリメチルフェニルオキシ基などのオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換トリメチルフェニルオキシ基並びに3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−フェニルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−フェニルフェニルオキシ基などのオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルフェニルオキシ基を挙げることができる。
【0050】
このうち、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基)、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−5−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基)、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,4−ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,5−ジメチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,3−ジメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基)、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換トリメチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,4,5−トリメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−2,3,5−トリメチルフェニルオキシ基、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基(特に、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−フェニルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基)、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−5−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基)、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,4−ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,5−ジメチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,3−ジメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基)、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換トリメチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,4,5−トリメチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−2,3,5−トリメチルフェニルオキシ基)並びにオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルフェニルオキシ基(特に、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−フェニルフェニルオキシ基)が好ましい。
【0051】
A2基として特に好ましいものは、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基)、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基)、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基(特に、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基などのオリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基)、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基)、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基(特に、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基)並びにオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基(特に、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基)である。
【0052】
式(1)において、Aは2n+4個含まれているが、このうちの少なくとも一つがA2基である。したがって、式(1)で表される本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、次の形態に大別することができる。
【0053】
[形態A]
2n+4個の全てのAがA2基のものである。この場合、Aは、全てが同じA2基であってもよいし、二種以上のA2基であってもよい。
【0054】
このような形態のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物として好ましいものは、式(1)のnが1であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロペンタホスファゼン化合物および式(1)のnが4であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aの全てが、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基、4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基および4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基からなるA2基群から選ばれた一種のA2基であるものまたは当該A2基群から選ばれた二種以上のA2基であるものである。また、この形態のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、これらの好ましいオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の任意の混合物であってもよい。
【0055】
[形態B]
2n+4個のAのうちの一部(すなわち、少なくとも一つ)がA2基であり、他のAがA1基からなる群から選ばれた基のものである。この場合、A2基以外のAは、全てが同じA1基であってもよいし、二種以上のA1基が混在したものであってもよい。
【0056】
この形態のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物として好ましいものは、式(1)のnが1であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロペンタホスファゼン化合物および式(1)のnが4であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロヘキサホスファゼン化合物であって、2n+4個のAのうちの1〜(2n+2)個がA2基のもの並びにこれらの任意の混合物である。この種のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、本発明の他の形態のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物に比べ、高温信頼性および機械的強度(特に、高いガラス転移温度)がより優れた樹脂成形体を実現可能な点において有利である。
【0057】
このような好ましいオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の具体例としては、式(1)のnが1であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロペンタホスファゼン化合物若しくは式(1)のnが4であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aが、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−4−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのものおよびこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0058】
このうち、式(1)のnが1であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロペンタホスファゼン化合物、式(1)のnが4であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aが、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのものおよびこれらの任意の混合物がさらに好ましい。
【0059】
特に、式(1)のnが1であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロトリホスファゼン化合物若しくは式(1)のnが2であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有シクロテトラホスファゼン化合物であって、Aが、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3−メチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換−3,5−ジメチルフェニルオキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのものおよびこれらの任意の混合物が好ましい。
【0060】
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、通常、数平均分子量が1,000〜10,000のものが好ましい。数平均分子量が10,000を超えると、リン含有率が低下してしまい、後述する樹脂成形体に対して十分な難燃性を付与するのが困難になる可能性がある。逆に、数平均分子量が1,000未満の場合は、オリゴ(フェニレンオキシ)基が十分に置換していない可能性があるため、後述する樹脂成分との相溶性が低下する可能性があり、また、後述する樹脂成形体からオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物がブリードアウトしやすくなることから当該樹脂成形体の高温信頼性が低下する可能性がある。
【0061】
オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造方法
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、幾つかの方法により製造することができる。以下、代表的な製造方法を説明する。
<製造方法1>
この製造方法は、特定のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物と特定のポリフェニレンエーテル類とを原料として本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を製造する方法である。
【0062】
(特定のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物)
この製造方法で用いられる特定のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物は、下記の式(4)で示されるものである。
【0063】
【化10】

【0064】
式(4)中、mは1〜6の整数を示す。また、Gは、下記のG1基およびG2基からなる群から選ばれる基を示す。但し、2m+4個のGのうちの少なくとも一つがG2基である。したがって、式(4)で示されるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物は、Gの全てがG2基であるもの(形態Xという)と、GとしてG1基およびG2基の両方を備えたもの(形態Yという)の二種類がある。
【0065】
G1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。この基は、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物のA1基に該当するものである。
G2基:下記の式(5)で示されるヒドロキシ基置換フェニレンオキシ基からなる群から選ばれる基。
【0066】
【化11】

【0067】
式(5)中、水素原子またはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示す。但し、E10〜E14のうちの少なくとも一つはヒドロキシ基である。
【0068】
このようなヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の一般的な製造方法は、各種の文献、例えば、下記の非特許文献1および2並びに特許文献7、8に記載されている。
【0069】
【非特許文献1】PHOSPHAZENES,A WORLDWIDE INSIGHT,M.GLERIA,R.DE JAEGER著,2004年刊,NOVA SCIENCE PUBLISHERS INC.社
【非特許文献2】Alessandro Medici,Giancarlo Fantin,Paola Pedrini,Mario Gleria,and Francesco Minto,Macromolecules,25(10),2569,1992
【特許文献7】特開昭58−219190号公報
【特許文献8】特開2007−153747号公報
【0070】
式(4)で示されるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物は、例えば、次のような方法により製造することができる。
【0071】
先ず、下記の式(7)で表される環状ホスホニトリルジハライドを用意する。
【化12】

【0072】
式(7)において、kは、1から6の整数を示している。また、Xは、ハロゲン原子を示し、好ましくはフッ素原子若しくは塩素原子である。ここで用意する環状ホスホニトリルジハライドは、kが異なる数種類のものの混合物であってもよい。
【0073】
このような環状ホスホニトリルジハライドの製造方法は、各種の文献、例えば、上記非特許文献1および下記の非特許文献3に記載されている。
【0074】
【非特許文献3】PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS,H.R.ALLCOCK著,1972年刊,ACADEMIC PRESS社
【0075】
ここで用いられる環状ホスホニトリルジハライドとして好ましいものは、例えば、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン(kが1のもの)、オクタフルオロシクロテトラホスファゼン(kが2のもの)、デカフルオロシクロペンタホスファゼン(kが3のもの)、ドデカフルオロシクロヘキサホスファゼン(kが4のもの)、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼンとオクタフルオロシクロテトラホスファゼンとの混合物、kが3から6の環状ホスホニトリルジフルオリドの混合物、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(kが1のもの)、オクタクロロシクロテトラホスファゼン(kが2のもの)、デカクロロシクロペンタホスファゼン(kが3のもの)、ドデカクロロシクロヘキサホスファゼン(kが4のもの)、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンとオクタクロロシクロテトラホスファゼンとの混合物およびkが3から6の環状ホスホニトリルジクロリドの混合物等である。このうち、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンとオクタクロロシクロテトラホスファゼンとの混合物およびkが3から6の環状ホスホニトリルジクロリドの混合物がより好ましく、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンとオクタクロロシクロテトラホスファゼンとの混合物およびkが3から6の環状ホスホニトリルジクロリドの混合物が特に好ましい。
【0076】
また、上述の環状ホスホニトリルジハライドと反応させる化合物として、次の化合物B1および化合物B2を用意する。
【0077】
[化合物B1]
炭素数が6〜20のフェノール類。
このフェノール類は、炭素数が1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。
【0078】
このようなフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、エチルメチルフェノール、ジエチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、イソプロピルエチルフェノール、ジイソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、n−ペンチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、ビニルフェノール、1−プロペニルフェノール、2−プロペニルフェノール、イソプロペニルフェノール、1−ブテニルフェノール、sec−ブテニルフェノール、1−ペンテニルフェノール、1−ヘキセニルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール、アントラノールおよびフェナントラノール等を挙げることができる。このうち、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、2−プロペニルフェノール、フェニルフェノールおよびナフトールが好ましく、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノールおよびナフトールが特に好ましい。
【0079】
[化合物B2]
下記の式(8)で示されるアシル基置換フェノール類。
【0080】
【化13】

【0081】
式(8)において、L〜Lは、少なくとも一つがアシル基であり、残りが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる基である。
【0082】
アシル基は、その種類が限定されるものではなく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ステアロイル基、オキサリル基、スクシニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基およびアニソイル基等を挙げることができる。但し、化合物B2は、入手しやすく、また、目的のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を製造するための合成操作を簡便に実施することができることから、アシル基としてアセチル基を有するものを用いるのが好ましい。
【0083】
化合物B2として用いられるアセチル基置換フェノール類としては、例えば、3−アセチルフェノール、4−アセチルフェノール、2−メチル−3−アセチルフェノール、3−アセチル−4−メチルフェノール、3−アセチル−5−メチルフェノール、3−アセチル−6−メチルフェノール、2−メチル−4−アセチルフェノール、3−メチル−4−アセチルフェノール、4−アセチル−3,5−ジメチルフェノール、3−アセチル−4−エチルフェノール、3−アセチル−5−エチルフェノールおよび3−エチル−4−アセチルフェノール等を挙げることができる。このうち、3−アセチル−4−メチルフェノール、3−アセチル−5−メチルフェノール、2−メチル−4−アセチルフェノール、3−メチル−4−アセチルフェノール、4−アセチル−3,5−ジメチルフェノールおよび3−エチル−4−アセチルフェノールが好ましく、3−アセチル−4−メチルフェノール、2−メチル−4−アセチルフェノール、3−メチル−4−アセチルフェノールおよび4−アセチル−3,5−ジメチルフェノールが特に好ましい。
【0084】
式(4)で示されるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造方法では、上述の式(7)で表される環状ホスホニトリルジハライドと、化合物B1および化合物B2を適宜反応させることにより、環状ホスホニトリルジハライドの全ハロゲン原子を、少なくとも一つが下記のJ2基により置換されるよう下記のJ1基およびJ2基からなる群から選ばれた基により置換し、環状ホスホニトリル置換体を製造する(工程1)。
【0085】
[J1基]
炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも1種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
この基は、化合物B1によりハロゲン原子と置換されるものであり、既述のG1基に該当する。
【0086】
[J2基]
下記の式(9)で示されるアシル基置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
【0087】
【化14】

【0088】
この基は、化合物B2によりハロゲン原子と置換されるものである。
式(9)において、L〜Lは、少なくとも一つがアシル基であり、残りが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる基である。
【0089】
この製造工程では、目的とするヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の種類に応じて、すなわち、上述の形態X係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を製造する場合と、上述の形態Yに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を製造する場合とに応じて、化合物B1および化合物B2を適宜選択して使用する。具体的には次の通りである。
【0090】
[形態Xのヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を製造する場合]
この場合は、環状ホスホニトリルジハライドと化合物B2とを反応させ、環状ホスホニトリルジハライドのハロゲン原子(以下、活性ハロゲン原子という場合がある)の全てを化合物B2に由来のJ2基で置換する。ここで用いられる化合物B2は、上述のアシル基置換フェノール類のうちの一種若しくは二種以上である。環状ホスホニトリルジハライドと化合物B2とを反応させ、環状ホスホニトリルジハライドの全ての活性ハロゲン原子をJ2基で置換する方法としては、次のいずれかの方法を採用することができる。
【0091】
<方法A−a>
環状ホスホニトリルジハライドと化合物B2のアルカリ金属塩とを反応させる。
この方法による場合、化合物B2のアルカリ金属塩の使用量は、通常、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の量の1.0〜2.0当量に設定するのが好ましく、1.05〜1.3当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.0当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.0当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。
【0092】
<方法A−b>
環状ホスホニトリルジハライドと化合物B2とを、ハロゲン化水素を捕捉可能な塩基の存在下で反応させる。
この方法による場合、化合物B2の使用量は、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の量の1.0〜2.0当量に設定するのが好ましく、1.05〜1.3当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.0当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.0当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。また、塩基の使用量は、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の量の1.1〜2.1当量に設定するのが好ましく、1.1〜1.4当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.1当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.1当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。
【0093】
[形態Yのヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を製造する場合]
この場合は、環状ホスホニトリルジハライドに対し、化合物B2のうちの少なくとも一種と、化合物B1のうちの少なくとも一つの化合物とを反応させ、環状ホスホニトリルジハライドの一部の活性ハロゲン原子を化合物B2に由来のJ2基で置換し、残りの活性ハロゲン原子の全てを化合物B1に由来のJ1基のうちの少なくとも一つの基で置換する。このための方法としては、次のいずれかの方法を採用することができる。
【0094】
<方法B−a>
環状ホスホニトリルジハライドに対し、化合物B2のアルカリ金属塩と化合物B1のアルカリ金属塩との混合物を反応させ、活性ハロゲン原子の全てを置換する。当該混合物において、化合物B2のアルカリ金属塩の割合は、製造するヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の種類に応じて適宜設定することができる。
【0095】
この方法による場合、上述の混合物の使用量は、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の量の1.0〜2.0当量に設定するのが好ましく、1.05〜1.3当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.0当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.0当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。
【0096】
<方法B−b>
環状ホスホニトリルジハライドに対し、化合物B2と化合物B1との混合物を、ハロゲン化水素を捕捉可能な塩基の存在下で反応させ、活性ハロゲン原子の全てを置換する。当該混合物において、化合物B2の割合は、製造するヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の種類に応じて適宜設定することができる。
【0097】
この方法による場合、上述の混合物の使用量は、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の量の1.0〜2.0当量に設定するのが好ましく、1.05〜1.3当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.0当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.0当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。また、塩基の使用量は、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の量の1.1〜2.1当量に設定するのが好ましく、1.1〜1.4当量に設定するのがより好ましい。当該使用量が1.1当量未満の場合は、活性ハロゲン原子の一部が残留し、目的とするオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が所要の効果を示さない可能性がある。一方、当該使用量が2.1当量を超える場合は、反応生成物の分離・精製が困難になるおそれがあり、また、不経済である。
【0098】
<方法B−c>
先ず、環状ホスホニトリルジハライドに対して化合物B2を反応させ、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の一部を化合物B2に由来のJ2基により置換した部分置換体を得る(第一工程)。次に、得られた部分置換体に対して化合物B1を反応させ、残りの活性ハロゲン原子の全てを化合物B1に由来のJ1基により置換する(第二工程)。
【0099】
この方法の第一工程は、環状ホスホニトリルジハライドに対して化合物B2のアルカリ金属塩を反応させて実施してもよいし、環状ホスホニトリルジハライドに対し、化合物B2をハロゲン化水素を捕捉可能な塩基の存在下で反応させてもよい。また、第二工程は、第一工程で得た部分置換体に対して化合物B1のアルカリ金属塩を反応させて実施してもよいし、第一工程で得た部分置換体に対し、化合物B1をハロゲン化水素を捕捉可能な塩基の存在下で反応させてもよい。
【0100】
<方法B−d>
先ず、環状ホスホニトリルジハライドに対して化合物B1を反応させ、環状ホスホニトリルジハライドの活性ハロゲン原子の一部を化合物B1に由来のJ1基により置換した部分置換体を得る(第一工程)。次に、得られた部分置換体に対して化合物B2を反応させ、残りの活性ハロゲン原子の全てを化合物B2に由来のJ2基により置換する(第二工程)。
【0101】
この方法の第一工程は、環状ホスホニトリルジハライドに対して化合物B1のアルカリ金属塩を反応させて実施してもよいし、環状ホスホニトリルジハライドに対し、化合物B1をハロゲン化水素を捕捉可能な塩基の存在下で反応させてもよい。また、第二工程は、第一工程で得た部分置換体に対して化合物B2のアルカリ金属塩を反応させて実施してもよいし、第一工程で得た部分置換体に対し、化合物B2をハロゲン化水素を捕捉可能な塩基の存在下で反応させてもよい。
【0102】
上述の各方法において用いられるアルカリ金属塩は、通常、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩が好ましい。特に、ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。このようなアルカリ金属塩は、化合物B1若しくは化合物B2と、金属リチウム、金属ナトリウム若しくは金属カリウム等との脱水素反応、または、化合物B1若しくは化合物B2と、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物との混合物からの脱水反応によって得ることができる。
【0103】
また、上述の各方法において用いられる、ハロゲン化水素を捕捉可能な塩基は、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジイソプロピルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジンおよび4−ジイソプロピルアミノピリジン等の脂肪族若しくは芳香族アミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩並びに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物等を用いるのが好ましい。特に、トリエチルアミン、ピリジン若しくは水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を用いるのが好ましい。
【0104】
上述の環状ホスホニトリルジハライドと化合物B1および化合物B2との反応は、上述のいずれの方法についても、無溶媒で実施することができ、また、溶媒を使用して実施することもできる。溶媒を使用する場合、溶媒の種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではないが、通常、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジエトキシエタンおよびジフェニルエーテル等のエーテル系、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン、エチルベンゼンおよびイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系、クロロホルムおよび塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、ウンデカンおよびドデカン等の脂肪族炭化水素系、ピリジン等の複素環式芳香族炭化水素系、第三級アミン系並びにシアン化合物系等の有機溶媒を用いるのが好ましい。このうち、分子内にエーテル結合を有し、かつ、化合物B1およびB2並びにそれらのアルカリ金属塩の溶解度が高いエーテル系の有機溶媒および水との分離が容易である芳香族炭化水素系の有機溶媒を用いるのが特に好ましい。
【0105】
上述の環状ホスホニトリルジハライドと化合物B1および化合物B2とを反応させる際の反応温度は、上述のいずれの方法によるか、或いは、反応生成物の熱安定性等を考慮して適宜設定することができる。但し、溶媒を用いて当該反応を実施する場合は、通常、−20℃から溶媒の沸点までの温度範囲に反応温度を設定するのが好ましい。一方、無溶媒で当該反応を実施する場合、反応温度は、通常、40〜200℃の範囲に設定するのが好ましい。
【0106】
目的のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造では、次に、上述の工程1において得た環状ホスホニトリル置換体、すなわち、アシル基含有環状ホスホニトリル置換体を酸化し、アシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体を製造する(工程2)。より具体的には、アシル基含有環状ホスホニトリル置換体のアシル基を酸化してアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体を製造する。
【0107】
アシル基含有環状ホスホニトリル置換体の酸化方法は、アシル基をアシルオキシ基に変換可能な方法であれば特に限定されるものではないが、通常はバイヤー−ビリガー酸化によるのが好ましい。アシル基含有環状ホスホニトリル置換体の酸化のためのバイヤー−ビリガー酸化において用いることができる酸化剤は、特に制限されるものではなく、各種の公知の過酸化物である。具体的には、無機過酸化物、有機過酸化物、過酸化水素、過酸化尿素、遷移金属のペルオキソ錯体並びに有機酸、無機酸、ルイス酸、有機過酸、無機過酸およびジオキシランからなる群から選ばれた少なくとも一つとペルオキソ化合物との混合物を挙げることができる。これらの酸化剤は、適宜混合して用いることもできる。また、バイヤー−ビリヤー型モノオキシゲナーゼ(酸素添加酵素)を用いることもできる。
【0108】
無機過酸化物の例としては、過酸化アンモニウム、アルカリ金属過酸化物、過硫酸アンモニウム、アルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸アンモニウム、アルカリ金属過ホウ酸塩、過炭酸アンモニウム、アルカリ金属過炭酸塩、アルカリ土類金属過酸化物、過酸化亜鉛およびこれらの化合物の任意の組合わせによる混合物を挙げることができる。アルカリ金属過酸化物として好ましいものは、過酸化ナトリウムである。
【0109】
有機過酸化物の例としては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、メンチルヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキサンヒドロペルオキシドおよびこれらの化合物の任意の組合わせによる混合物を挙げることができる。
【0110】
遷移金属のペルオキソ錯体の例としては、遷移金属である鉄、マンガン、バナジウムまたはモリブデンのペルオキソ錯体およびこれらのペルオキソ錯体の任意の組合わせによる混合物を挙げることができる。このペルオキソ錯体は、2種または3種以上の遷移金属を含んでいてもよい。
【0111】
無機酸とペルオキソ化合物との混合物の例としては、硫酸とペルオキソ二硫酸カリウムとの混合物を挙げることができ、また、ルイス酸とペルオキソ化合物との混合物の例としては、三フッ化ホウ素と過酸化水素との混合物を挙げることができる。
【0112】
有機過酸の例としては、過蟻酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、モノ過フタル酸マグネシウムおよびこれらの任意の組合わせによる混合物を挙げることができる。
【0113】
無機過酸の例としては、過硫酸、過炭酸、過モノ燐酸およびこれらの任意の組合わせによる混合物を挙げることができる。
【0114】
なお、上述の酸化剤は、純粋な形態または各種の酸化剤の混合物の形態のいずれの形態で用いてもよいが、純粋な形態で用いるのが好ましい。
【0115】
この工程において用いられる酸化剤の必要量、特に、アシル基含有環状ホスホニトリル置換体のアシル基に対する酸化剤の当量は、アシル基含有環状ホスホニトリル置換体と酸化剤との反応性に依存するが、通常は、アシル基含有環状ホスホニトリル置換体のアシル基に対する酸化剤の当量を1〜10当量の範囲に設定するのが好ましく、1.05〜1.5当量の範囲に設定するのがより好ましく、1.1〜1.3当量の範囲に設定するのが特に好ましい。
【0116】
この工程は、無溶媒で実施してもよいし、溶媒を使用して実施してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒の種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン化炭化水素系化合物(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン)、パラフィン系化合物(例えば、ヘキサン、ペンタンまたはリグロイン)、エーテル系化合物(例えば、ジエチルエーテル)、酸アミド系化合物(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、ニトリル系化合物(例えば、アセトニトリル)、二硫化炭素、ニトロ脂肪族化合物(例えば、ニトロメタン)若しくはニトロ芳香族化合物(例えば、ニトロベンゼン)またはこれらの溶媒の混合物を使用することができる。このうち、ハロゲン化炭化水素系化合物を用いるのが好ましい。
【0117】
次に、工程2において得たアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体を脱アシル化し、アシルオキシ基をヒドロキシ基に変換する(工程3)。これにより、目的とするヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物が得られる。
【0118】
この工程での脱アシル化は、無溶媒で実施してもよいし、溶媒を使用して実施してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒の種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではないが、通常は工程2において使用可能なものと同様のものを用いることができる。
【0119】
この工程での脱アシル化は、酸性またはアルカリ性条件下で実施するか、或いは、酵素を用いて実施するのが好ましい。これらの脱アシル化の方法は公知であり、その条件は公知の方法に基づいて適宜設定することが出来る。例えば、酸性またはアルカリ性条件下で加水分解することで脱アシル化する場合は、有機溶媒(例えば、エタノール、THFまたはジオキサン等)中において、酸(例えば、鉱酸や有機酸等)またはアルカリ(例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物または炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等)の水溶液を用いて−10〜90℃で行うことができる。一方、酵素を用いて加水分解することで脱アシル化する場合は、有機溶媒(例えば、エタノールやジメチルスルフォキシド等)と水との混合溶液中において、エステル分解酵素(例えば、エステラーゼやリパーゼ等)を用いて0〜50℃で行うことができる。この際、有機溶媒と水との混合溶液に緩衝液を存在させてもよい。
【0120】
工程3は、工程2で得られたアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体を反応液から単離し、それに対して適用することで実施することができるが、工程2で得られたアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体を含む反応液に対してそのまま適用することで実施することもできる。
【0121】
なお、工程2で得られたアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体を反応液から単離する方法および工程3で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を反応液から単離する方法としては、濾過、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィーおよび再結晶等の通常の分離方法を採用することができる。また、工程2で得られたアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体および工程3で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物は、同様の方法で精製することができる。
【0122】
工程2、3における反応条件は、工程2で酸化するアシル基含有環状ホスホニトリル置換体の種類、酸化剤の種類および使用量、反応溶媒の有無および目的とするヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の物性や用途等に応じて広い範囲から適宜選択することができる。
【0123】
因みに、工程2におけるアシル基含有環状ホスホニトリル置換体の酸化および工程3におけるアシルオキシ基含有環状ホスホニトリル置換体の脱アシル化は、各種の文献、特に、下記の非特許文献4〜6に記載の方法を参照して実施することができる。
【0124】
【非特許文献4】HASSALL,C.H.著,IN:ADAMS,R.(ED.),ORGANIC REACTIONS,WEILY社,NEW YORK,1957年刊,VOL.9,73−106.
【非特許文献5】KROW,G.R.著,IN:PAQUETTE,L.A.(ED.),ORGANIC REACTIONS,WEILY社,NEW YORK,1993年刊,VOL.43,251−798.
【非特許文献6】KYTE,B.G.,ROUVIERE,P.,CHENG,Q.,STEWART,J.D.,J.ORG.CHEM.,2004年刊,VOL.69(1),12−17.
【0125】
目的のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物は、上述の製造方法により製造することができるが、他の方法で製造することもできる。例えば、保護基を脱離させることでヒドロキシ基となる部位を有する所定構造の置換環状ホスファゼン化合物から、その保護基を脱離することで製造することもできる。より具体的には、目的のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物のヒドロキシ基が保護基により保護された化合物に相当するものを合成し、この化合物から保護基を脱離させることで目的のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を製造することもできる。
【0126】
ここで、ヒドロキシ基の保護基としては、例えば、メチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、1−エトキシエチル基、tert−ブチル基、アリル基、ベンジル基、o−ニトロベンジル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基およびトリイソプロピルシリル基等を挙げることができる。これらの保護基のうち、メチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、tert−ブチル基、アリル基、ベンジル基およびtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、メチル基、メトキシメチル基、tert−ブチル基、アリル基およびベンジル基が特に好ましい。
【0127】
これらの保護基を脱離させるための方法は、多数の公知文献に記載されており、保護基の種類および保護基の安定性等に応じて各種の脱保護反応から選択することができる。例えば、保護基がメチル基の場合、環状ホスファゼン化合物を三フッ化ホウ素、ヨウ化トリメチルシラン若しくはピリジン塩酸塩と反応させるのが好ましい。また、保護基がtert−ブチル基の場合、環状ホスファゼン化合物をトリフルオロ酢酸、臭化水素若しくはヨウ化トリメチルシランと反応させるのが好ましい。さらに、保護基がベンジル基の場合、環状ホスファゼン化合物を水素/Pd−C、金属ナトリウム/アンモニア、ヨウ化トリメチルシラン、水素化リチウムアルミニウム、三臭化ホウ素若しくは三フッ化ホウ素と反応させるのが好ましい。
【0128】
このような保護基の脱離により得られる、目的とするヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物は、濾過、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィーおよび再結晶等の通常の分離精製方法により、反応系から単離精製することができる。
【0129】
(特定のポリフェニレンエーテル類)
この製造方法で用いられる特定のポリフェニレンエーテル類は、下記の式(6)で示されるものである。
【0130】
【化15】

【0131】
式(6)において、rは30〜1,000の整数を示す。また、E〜Eは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基および炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基である。炭素数6〜20のアリール基は、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい
【0132】
式(6)で示されるポリフェニレンエーテル類の具体例としては、その単独重合体として、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(ジメチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルエチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(ジエチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(エチルプロピルフェニレン)エーテル類、、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(ジプロピルフェニレン)エーテル類、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルブチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(エチルイソプロピルフェニレン)エーテル類およびポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルヒドロキシエチルフェニレン)エーテル類などのホモポリマーが挙げられる。また、フェニレンエーテル構造を主単量体単位とする共重合体として、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体並びに2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールおよびo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
【0133】
この中で、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(ジメチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルエチルフェニレン)エーテル類、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(ジエチルフェニレン)エーテル類および2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(メチルフェニレン)エーテル類およびポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリ(ジメチルフェニレン)エーテル類が特に好ましい。
【0134】
また、特定のポリフェニレンエーテル類としては、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等の官能基を有するフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテル類を用いることもできる。このポリフェニレンエーテル類は、式(6)で示されるポリフェニレンエーテル類と併用されてもよい。
【0135】
さらに、特定のポリフェニレンエーテル類としては、ラジカル開始剤の存在下での再分配反応を阻害しないものであれば、ポリフェニレンエーテル類の一部または全部が、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基またはシリル基等で官能化された変性ポリフェニレンエーテル類も用いることができる。これらは2種以上のものが併用されてもよい。官能化された変性ポリフェニレンエーテル類の製造方法は、本発明の効果が得られるものであれば特に規定はない。例えば、カルボキシル基で官能基化された変性ポリフェニレンエーテル類は、例えばラジカル開始剤の存在下または非存在下において、ポリフェニレンエーテル類に不飽和カルボン酸やその官能的誘導体を溶融混練して反応させることによって製造することができる。また、ポリフェニレンエーテル類と不飽和カルボン酸やその官能的誘導体とをラジカル開始剤存在下または非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって製造することもできる。
【0136】
(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、上述の特定のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物と、上述の特定のポリフェニレンエーテル類とをラジカル開始剤の存在下において反応させることで製造することができる。
【0137】
この反応では、ポリフェニレンエーテル類がラジカル開始剤によりラジカル化され、また、そのラジカル化されたポリマー鎖が再分配反応によって切断されて活性化されたオリゴフェニレンエーテルが生成する。このオリゴフェニレンエーテルは、ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物のヒドロキシ基と反応する。これにより、目的のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が得られる。
【0138】
ここで用いられるラジカル開始剤は、種類が特に限定されるものではないが、例えば、各種の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルやアゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物および2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(例えば、日本油脂株式会社の商品名「ビスクミル」)などを挙げることができる。このうち、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0139】
好ましい有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタールおよびシリルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0140】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエートおよびtert−ブチルパーオキシアセテート等を挙げることができる。
【0141】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α´−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(これは1,4(又は1,3)−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンともいわれる)、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよびtert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0142】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドおよびクメンハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。
【0143】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエンおよびベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0144】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネートおよびジ(3−メチル−3−メトジシブチルパーオキシ)ジカーボネート等を挙げることができる。
【0145】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキスルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカンおよび2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)デカン等を挙げることができる。
【0146】
シリルパーオキサイドとしては、例えば、tert−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(tert−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、tert−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(tert−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(tert−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、tert−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(tert−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイドおよびトリス(tert−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0147】
これらのうち、特に好ましいものは、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよびα,α´−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンである。
【0148】
なお、有機過酸化物は、それぞれ単独で用いることができるが、2種以上のものを併用することもできる。
【0149】
この反応において、ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の使用量は、ポリフェニレンエーテル類100質量部に対して1〜300質量部に設定するのが好ましい。ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の使用量が300質量部を超える場合は、再分配反応が進行し過ぎることから生成するオリゴフェニレンエーテルの数平均分子量が低下し、目的のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物、すなわち、所定のA2基を備えたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が得られない可能性がある。逆に、ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の使用量が1質量部未満の場合は、再分配反応が十分に進行しにくくなることから生成するオリゴフェニレンエーテルの数平均分子量が大きくなり、目的のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物、すなわち、所定のA2基を備えたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が得られない可能性がある。
【0150】
また、ラジカル開始剤の使用量は、ポリフェニレンエーテル類100質量部に対して1〜30質量部に設定するのが好ましい。ラジカル開始剤の使用量が30質量部を超える場合は、再分配反応が進行し過ぎることから生成するオリゴフェニレンエーテルの数平均分子量が低下し、目的のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物、すなわち、所定のA2基を備えたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が得られない可能性がある。逆に、ラジカル開始剤の使用量が1質量部未満の場合は、再分配反応が十分に進行しにくくなることから生成するオリゴフェニレンエーテルの数平均分子量が大きくなり、目的のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物、すなわち、所定のA2基を備えたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物が得られない可能性がある。
【0151】
この反応は、通常、溶媒中で行うことができ、反応温度を80〜120℃に、また、反応時間を10〜180分間に設定するのが好ましい。溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒やクロロホルム等を用いることができる。
【0152】
この製造方法においては、上述の再分配反応のためにポリフェニレンエーテル類(ホモポリマー)が生成し、その微量が目的物であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物に混入する可能性がある。本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、このようなポリフェニレンエーテル類が混入していても、後述する樹脂組成物において支障なく用いることができるが、当該樹脂組成物においてポリフェニレンエーテル類が混入することによる支障があれば、ポリフェニレンエーテル類を取除いてから用いるのが好ましい。オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物に混入しているポリフェニレンエーテル類を除去するための方法としては、例えば、分子量の差による限外濾過、溶解性の差による分別沈殿および蒸気圧の差による分子蒸留等が挙げられる。
【0153】
<製造方法2>
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、一般的なポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法に基づいて製造することができる。この方法では、芳香族炭化水素溶媒または芳香族炭化水素とアルコールとの混合溶媒中において、製造方法1において用いられるものと同様のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物と一価のフェノール化合物とを、銅、マンガンまたはコバルトを含有する錯体触媒の存在下で酸化重合することで、目的のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を製造することができる。この製造方法では、酸化重合のときにアミン類が併用されてもよい。
【0154】
ここで用いられる一価のフェノール化合物は、ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物のヒドロキシ基との反応および酸化重合により所定のA2基を形成可能なものであり、例えば、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール等が挙げられる。これらのフェノール化合物は2種以上のものを併用することもできる。
【0155】
また、酸化重合のときに用いられるアミン類としては、例えば、ジイソプロピルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−tert−アミルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、p,p’−ジトリルアミン、m,m’−ジトリルアミン、エチル−tert−ブチルアミン、N,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルフェニルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、n−ブチルジメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、フェニルジメチルアミン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、トリフェニルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、メチルピリジンおよび2,6−ジメチルピリジン等を挙げることができる。これらのアミン類は、2種以上のものを併用することもできる。
【0156】
この製造方法は、目的物であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物にポリフェニレンエーテル類などが混入する可能性が低いため、製造方法1に比べて純度の高いオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を製造することができる。
【0157】
<製造方法3>
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、芳香族炭化水素溶媒中において、水酸化ナトリウム水溶液、テトラブチルアンモニウム水素サルフェート等の相間移動触媒および空気の存在下で製造方法1において用いられるものと同様のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物とハロフェノール化合物とを反応することで製造することもできる。
【0158】
ここで用いられるハロフェノール化合物は、ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物のヒドロキシ基との反応および酸化重合により所定のA2基を形成可能なものであり、例えば、4−ブロモ−2−メチルフェノールや4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノールを挙げることができる。ハロフェノール化合物は、2種以上のものを併用することもできる。
【0159】
この製造方法は、目的物であるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物にポリフェニレンエーテル類などが混入する可能性が低いため、製造方法1に比べて純度の高いオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を製造することができる。
【0160】
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と樹脂成分とを含むものである。
【0161】
ここで用いられる本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、一種類のものであってもよいし、二種以上のものの混合物であってもよい。また、樹脂成分としては、各種の熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂を使用することができる。これらの樹脂成分は、天然のものであってもよいし、合成のものであってもよい。
【0162】
ここで利用可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、ポリ乳酸、(ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート系)ブロックコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン並びに液晶ポリマー等を挙げることができる。変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリフェニレンエーテルの一部または全部に、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基および無水ジカルボキシル基などの反応性官能基を、グラフト反応や共重合などの何らかの方法により導入したものが用いられる。なお、本発明の樹脂組成物を電子機器用途、特に、OA機器、AV機器、通信機器および家電製品用の筐体や部品用の材料として用いる場合は、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル若しくはポリアミド等を用いるのが好ましい。
【0163】
一方、ここで利用可能な熱硬化性樹脂の具体例としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド−シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド−シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドおよびポリカルボジイミド等のポリイミド系樹脂並びにエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドおよびポリカルボジイミドなどのポリイミド系樹脂、マレイミド樹脂およびマレイミド−シアン酸エステル樹脂等のマレイミド系樹脂は、その取り扱い加工性および接着性を向上するために、熱可塑性や溶媒可溶性が付与されたものであってもよい。なお、本発明の樹脂組成物を電子部品用途、特に、各種IC素子の封止材、配線板の基板材料、層間絶縁材料や絶縁性接着材料等の絶縁材料、Si基板またはSiC基板等の絶縁材料、導電材料および表面保護材料として用いる場合は、熱硬化性樹脂として、ポリウレタン、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミドーシアン酸エステル樹脂、ポリイミド系樹脂若しくはエポキシ樹脂等を用いるのが好ましい。
【0164】
上述の各種樹脂成分は、各々単独で用いられてもよいし、必要に応じて二種以上のものが併用されてもよい。
【0165】
本発明の樹脂組成物において、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の使用量は、樹脂成分の種類、樹脂組成物の用途等の各種条件に応じて適宜設定することができるが、通常、固形分換算での樹脂成分100重量部に対して0.1〜200重量部に設定するのが好ましく、0.5〜100重量部に設定するのがより好ましく、1〜50重量部に設定するのがさらに好ましい。オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の使用量が0.1重量部未満の場合は、当該樹脂組成物からなる樹脂成形体が十分な難燃性を示さないおそれがある。逆に、200重量部を超えると、樹脂成分本来の特性を損なう可能性があることから、当該特性による樹脂成形体が得られなくなるおそれがある。
【0166】
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂成分の種類や樹脂組成物の用途等に応じ、その目的とする物性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合することができる。利用可能な添加剤としては、例えば、天然シリカ、焼成シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、ホワイトカーボン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、天然マイカ、合成マイカ、アエロジル、カオリン、クレー、タルク、焼成カオリン、焼成クレー、焼成タルク、ウオラストナイト、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラスおよびチタン酸カリウム繊維等の無機充填剤、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維等の有機繊維、シランカップリング剤などの充填材の表面処理剤、ワックス類、脂肪酸およびその金属塩、酸アミド類およびパラフィン等の離型剤、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸アミド、リン酸アミドエステル、ホスフィネート系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤リン、塩素化パラフィン、メラミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロンおよびサクシノグアナミン等の窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤並びに臭素系難燃剤等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のドリッピング防止剤、ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤、ヒンダートフェノール、スチレン化フェノールなどの酸化防止剤、チオキサントン系などの光重合開始剤、スチルベン誘導体などの蛍光増白剤、硬化剤、染料、顔料、着色剤、光安定剤、光増感剤、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤、チクソ性付与剤、可塑剤並びに帯電防止剤等を挙げることができる。
【0167】
さらに、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化剤や硬化促進剤を配合することができる。ここで用いられる硬化剤や硬化促進剤は、一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではないが、通常、アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物、イミダゾール類および有機金属塩などである。これらは、二種以上を併用することもできる。
【0168】
本発明の樹脂組成物を電気・電子分野用の材料、具体的には、LSI等の電子部品の封止剤や基板等に用いる場合、樹脂成分としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂およびビスマレイミド−シアン酸エステル樹脂を選択するのが好ましい。
【0169】
この場合において利用可能なエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂およびナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール類とアルデヒド類との反応により得られるノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−AD型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、シクロペンタジェン型エポキシ樹脂、アルキル置換ビフェノール型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等のフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるフェノール型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン、オリゴプロピレングリコールおよび水添ビスフェノール−A等のアルコール類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる脂肪族エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸若しくはフタル酸とエピクロルヒドリン若しくは2−メチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンやアミノフェノール等のアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン系エポキシ樹脂、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られる複素環式エポキシ樹脂、グリシジル基を有するホスファゼン化合物、エポキシ変性ホスファゼン樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂並びにウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂およびトリス(ヒドロキシフェニル)メタンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、各々単独で使用してもよいし、二種以上のものが併用されてもよい。
【0170】
また、エポキシ樹脂としては、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物とエピクロルヒドリン等のエポキシ化合物とを反応させることによって得られるエポキシ変性オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を使用することもできる。このエポキシ変性オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を生成するための反応条件は従来公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物のフェノール性水酸基に対して、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物を、そのエポキシ基に対して1当量以上、好ましくは2当量以上添加する。この際、反応温度は80〜120℃に設定するのが好ましく、また、反応時間は通常1〜10時間に設定するのが好ましく、5〜8時間に設定するのがより好ましい。
【0171】
また、エポキシ変性オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を生成するための反応時には、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物のフェノール性水酸基と同当量の塩基性触媒、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液が添加されてもよい。この場合、塩基性触媒の添加量は、エポキシ化合物のエポキシ基に対して1当量以上、好ましくは1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上に設定する。さらに、上記反応時には、必要に応じ、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を製造するための再分配反応において使用可能な溶媒と同一の溶媒または他の溶媒を加えることができる。
【0172】
樹脂成分としてエポキシ樹脂を用いる場合(以下、このような樹脂組成物を「エポキシ樹脂組成物」という場合がある)、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、エポキシ基との反応によって、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し得る。また、エポキシ樹脂組成物は、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と共に、他の硬化剤を併せて含んでいてもよい。エポキシ樹脂組成物が、硬化剤として本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と他の硬化剤とを併用している場合、硬化剤の合計量(すなわち、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と他の硬化剤との合計量)に占める本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の割合は、0.1〜99重量%が好ましく、0.5〜90重量%がより好ましい。オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の割合が0.1重量%未満の場合は、当該樹脂組成物からなる樹脂成形体が十分な難燃性を示さないおそれがある。
【0173】
エポキシ樹脂組成物において、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と併用され得る他の硬化剤は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンおよびポリアミドポリアミン等のポリアミン系硬化剤、無水ヘキサヒドロフタル酸および無水メチルテトラヒドロフタル酸等の酸無水物系硬化剤、フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等のフェノール系硬化剤、ヒドロキシ基またはグリシジル基を有するホスファゼン化合物、三フッ化ホウ素等のルイス酸およびそれらの塩類並びにジシアンジアミド類等を挙げることができる。これらは、各々単独で用いてもよく、二種以上のものを併用してもよい。
【0174】
エポキシ樹脂組成物において、硬化剤(すなわち、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物または本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と上述の他の硬化剤との併用物)の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量になるよう設定するのが好ましく、0.6〜1.2当量になるよう設定するのがより好ましい。
【0175】
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。利用可能な硬化促進剤は、公知の種々のものであり、特に限定されるものではないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾールおよび2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン系化合物、トリフェニルホスフィン化合物等を挙げることができる。硬化促進剤を用いる場合、その使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部に設定するのが好ましく、0.1〜10重量部に設定するのがより好ましい。
【0176】
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて公知の反応性希釈剤や添加剤が配合されていてもよい。利用可能な反応性希釈剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルおよびアリルグリシジルエーテル等の脂肪族アルキルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートおよび3級カルボン酸グリシジルエステル等のアルキルグリシジルエステル、スチレンオキサイドおよびフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−s−ブチルフェニルグリシジルエーテルおよびノニルフェニルグリシジルエーテル等の芳香族アルキルグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの反応性希釈剤は、各々単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。一方、添加剤としては、既述のようなものを用いることができる。
【0177】
本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、その製造時に用いたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物を末端または中心として、オリゴフェニレンエーテルが結合した構造を有している。エポキシ樹脂組成物において、このようなオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、オリゴ(フェニレンオキシ)基に由来するフェノール性水酸基がエポキシ樹脂のエポキシ基と反応し、強固な架橋構造を形成することができる。したがって、エポキシ樹脂組成物を電気・電子部品分野において用いられる金属張り積層板などの積層板の製造用材料として用いた場合、強固な架橋構造のために金属面や隣接板との接着強度を高めることができることから、層間剥離を抑制することができ、また、耐熱性を高めることもできる。さらに、エポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂および本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物に加えて上述の他の硬化剤を含む場合は、硬化によって誘電率や誘電正接をより効果的に低下させることができ、優れた高周波特性を達成することができる。
【0178】
上述のエポキシ樹脂組成物等の本発明の樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。この樹脂組成物は、樹脂成分に応じて100〜250℃程度の温度範囲で1〜36時間放置すると、充分な硬化反応が進行し、硬化物を形成する。例えば、エポキシ樹脂組成物は、通常、150〜250℃の温度で2〜15時間放置すると、充分な硬化反応が進行し、硬化物を形成する。したがって、本発明の樹脂組成物は、各種の樹脂成形体の製造用材料、塗料用材料、接着剤用材料およびその他の用途用材料として、広く用いることができる。
【0179】
本発明の樹脂組成物に含まれる本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、上述の硬化過程において、そのヒドロキシ基が樹脂成分と反応し、硬化物中において安定に保持される。このため、この硬化物からなる樹脂成形体等は、高温下においてもオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物がブリードアウトしにくく、高温信頼性が損なわれにくい。また、本発明のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物は、上記硬化物の機械的特性(特に、ガラス転移温度)を損なわずに、その難燃性を高め、さらに誘電率や誘電正接を低下させることができることから誘電特性を高めることができる。
【0180】
本発明の樹脂組成物は、誘電特性に優れた樹脂成形体を形成することができるため、半導体封止用材料や回路基板(特に、金属張り積層板、プリント配線板用基板、プリント配線板用接着剤、プリント配線板用接着剤シート、プリント配線板用絶縁性回路保護膜、プリント配線板用導電ペースト、多層プリント配線板用封止剤、回路保護剤、カバーレイフィルム、カバーインク)形成用材料等の電気・電子部品の製造用材料として特に好適である。そして、本発明の樹脂組成物からなる樹脂成形体を用いた回路基板等の電気・電子部品は、誘電特性に優れている。
【実施例】
【0181】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。以下において、「unit mol」の「unit」は、環状ホスファゼン化合物の最小構成単位、例えば、一般式(1)については(PNA)を意味し、また、一般式(4)または一般式(7)についてはそれぞれ(PNG)または(PNX)を意味する。一般式(7)において、Xが塩素の場合、その1unit molは115.87gである。また、以下においては、特に断りがない限り、「%」および「部」とあるのは、それぞれ「重量%」および「重量部」を意味する。
【0182】
合成例および実施例等で得られたホスファゼン化合物は、H−NMRスペクトルおよび31P−NMRスペクトルの測定、CHN元素分析、IRスペクトルの測定、アルカリ溶融後の硝酸銀を用いた電位差滴定法による塩素元素(残留塩素)の分析、マイクロウエーブ湿式分解後のICP−AESによるリン元素の分析並びにTOF−MS分析の結果に基づいて同定した。また、水酸基当量は、JIS K0070−1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価および不けん化物の試験方法」において規定された水酸基価測定方法の中和滴定法に従い測定し、水酸基価mgKOH/gの値を水酸基当量g/eq.に変換した。さらに、分子量(数平均分子量)は、JIS K7252−2008「プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方」に従い、Waters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「2695」、東ソー株式会社製のカラム「TSKgel Super HZM−M」(2本)およびWaters社製示差屈折計(DRI detector:商品名「2414」)を使用して、40℃にてテトラヒドロフラン0.25mL/分の条件で測定した。ここで、測定対象物質の分子量は、6種類の標準ポリスチレン(分子量1,110,000、397,000、98,900、17,100、5,870および1,010)を用いて作成した較正曲線から算出した。
【0183】
合成例1(形態Yに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
[工程1:方法B−cによるアセチル基含有環状ホスファゼン化合物の製造]
温度計、撹拌機、冷却管および滴下ロートを備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、窒素気流下でヘキサクロロシクロトリホスファゼン(173.8g,1.50unit mol)のTHF(700mL)溶液を加えた。これに、予め調製したナトリウム4−アセチル−3,5−ジメチルフェノキシド(204.8g,1.1mol)のTHF(1,000mL)溶液を1時間かけて滴下した後、25℃で24時間撹拌した。次に、この反応液を予め調製したナトリウムフェノキシド(140.5g,2.65mol)のトルエン(1,250mL)懸濁液に添加した後、70℃で3時間還流した。反応混合物を室温に冷却後、濃縮して溶媒を留去し、トルエン(1,000mL)および5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を加えて分液ロートに移した。水層を分離後、トルエン層を5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄し、さらに希硝酸で中和して水洗した。トルエン層を減圧濃縮し、388.6gの生成物を得た(収率:94.0%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0184】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.04(12H),2.49(6H),6.9〜7.8(24H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.3〜9.7
◎TOF−MS(m/z):
763、834、904
◎残存塩素分析:
<0.01%
【0185】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CHCOCH)(OC]、[N(OC(CHCOCH(OC]および[N(OC(CHCOCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CHCOCH2.1(OC3.9]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0186】
[工程2:バイヤー−ビリガー酸化工程]
温度計、撹拌機、還流冷却管および滴下ロートを備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程1で得られた化合物(192.9g,0.70unit mol)およびクロロホルム(300mL)を仕込み、これに内温0℃以下で3−クロロ過安息香酸(207.1g,1.20mol)を滴下した後、2時間還流撹拌した。反応終了を確認後、反応混合物を分液ロートに移し、20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮して185.0gの生成物を得た(収率92.5%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0187】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.2(12H),2.3(6H),6.8〜7.3(24H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.4〜10.6
【0188】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CHOCOCH)(OC]、[N(OC(CHOCOCH(OC]および[N(OC(CHOCOCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CHOCOCH2.1(OC3.9]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0189】
[工程3:脱アセチル化工程]
温度計、撹拌機および還流冷却管を備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、工程2で得られた化合物(171.4g,0.60unit mol)、アセトン(200mL)および3M塩酸(20mL)を仕込み、3時間還流撹拌した。反応液から溶媒を留去した後の濃縮残渣に飽和重炭酸ナトリウム水溶液(300mL)を加え、分液ロートに移して4−メチル−2−ペンタノン(すなわち、メチルイソブチルケトン:MIBK)で生成物を抽出した。MIBK層を脱イオン水で2回洗浄した後、乾燥、濃縮して151.9gの生成物を得た(収率96.6%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0190】
H−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
2.0(12H),6.4〜7.3(24H),8.2(2H)
31P−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.2〜10.2
◎CHNP元素分析:
理論値 C:61.4%,H:4.9%,N:5.4%,P:11.9%
実測値 C:61.2%,H:4.8%,N:5.5%,P:11.7%
◎TOF−MS(m/z):
738、782、826
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎水酸基当量:
373g/eq.(理論値374g/eq.)
【0191】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CHOH)(OC]、[N(OC(CHOH)(OC]および[N(OC(CHOH)(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CHOH)2.1(OC3.9]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0192】
合成例2(形態Yに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
[工程1:方法B−cによるアセチル基含有環状ホスファゼン化合物の製造]
温度計、撹拌機、冷却管および滴下ロートを備え付けた5リットルの四つ口フラスコに、窒素気流下でヘキサクロロシクロトリホスファゼン(173.8g,1.50unit mol)を仕込み、トルエン(1,950mL)を加えて溶解した。これに予め調製したナトリウム4−アセチル−3−メチルフェノキシド(215.1g,1.25mol)のTHF(400mL)溶液を5時間かけて滴下した後、25℃で24時間撹拌した。次に、この反応液を予め調製したナトリウムフェノキシド(140.5g,2.65mol)のトルエン(1,250mL)懸濁液に添加した後、110℃で3時間還流した。反応混合物を室温に冷却後、5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を加えて分液ロートに移した。水層を分離後、トルエン層を5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄してから希硝酸で中和し、水洗した。このトルエン層を減圧濃縮し、418.8gの生成物を得た(収率:98.7%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0193】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.4(6H),2.5(6H),6.7〜7.5(26H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.2〜10.3
◎TOF−MS(m/z):
750、806、862
◎残存塩素分析:
<0.01%
【0194】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CH)COCH)(OC]、[N(OC(CH)COCH(OC]および[N(OC(CH)COCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CH)COCH2.0(OC4.0]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0195】
[工程2:バイヤー−ビリガー酸化工程]
温度計、撹拌機および滴下ロートを備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程1で得られた化合物(187.8g,0.70unit mol)、トリフルオロ酢酸無水物(100mL)およびジクロロメタン(200mL)を仕込み、これに内温0℃以下で60%過酸化水素水(48.7g,0.86mol)を滴下した後、内温25℃で3時間撹拌した。反応終了を確認後、反応混合物を分液ロートに移し、20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮して193.3gの生成物を得た(収率98.9%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0196】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.2(6H),2.4(6H),6.8〜7.3(26H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.5〜10.4
【0197】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CH)OCOCH)(OC]、[N(OC(CH)OCOCH(OC]および[N(OC(CH)OCOCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CH)OCOCH2.0(OC4.0]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0198】
[工程3:脱アセチル化工程]
温度計および撹拌機を備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程2で得られた化合物(167.5g,0.60unit mol)、メタノール(100mL)および48%水酸化ナトリウム水溶液(70.9g,0.86mol)を仕込み、室温で4時間撹拌した。反応の終了を確認後、メタノールを留去し、濃縮残渣に脱イオン水(900mL)を加えて溶解後、30%硝酸でpH6に調整した。これを分液ロートに移してMIBKで生成物を抽出し、MIBK層を脱イオン水で2回洗浄した後に乾燥、濃縮して140.5gの生成物を得た(収率93.2%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0199】
H−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
2.1(6H),6.5〜7.3(26H)
31P−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.1〜10.3
◎CHNP元素分析:
理論値 C:60.6%,H:4.6%,N:5.6%,P:12.3%
実測値 C:60.5%,H:4.5%,N:5.7%,P:12.5%
◎TOF−MS(m/z):
724、754、784
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎水酸基当量:
375g/eq.(理論値377g/eq.)
【0200】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CH)OH)(OC]、[N(OC(CH)OH)(OC]および[N(OC(CH)OH)(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CH)OH)2.0(OC4.0]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0201】
合成例3(形態Yに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
[工程1:方法B−cによるアセチル基含有環状ホスファゼン化合物の製造]
温度計、撹拌機、冷却管および滴下ロートを備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、窒素気流下で水素化ナトリウム(76.0g,3.17mol)を仕込み、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(173.8g,1.50unit mol)のTHF(700mL)溶液を加えた。これを0℃に維持しながら、2−メチル−4−アセチルフェノール(150.2g,1.0mol)のTHF(200mL)溶液を1時間以上かけて滴下した後、1時間撹拌した。次に、この反応液にフェノール(207.0g,2.2mol)のTHF(200mL)溶液を1時間以上かけてさらに滴下した後、70℃で6時間還流した。反応混合物を室温に冷却後、濃縮して溶媒を留去し、トルエン(1,000mL)および5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を加えて分液ロートに移した。水層を分離後、トルエン層を5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄してから希硝酸で中和し、さらに水洗した。このトルエン層を減圧濃縮し、312.3gの生成物を得た(収率:77.5%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0202】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.1(6H),2.5(6H),6.9〜7.8(26H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.1〜9.6
◎TOF−MS(m/z):
750、806、862
◎残存塩素分析:
<0.01%
【0203】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CH)COCH)(OC]、[N(OC(CH)COCH(OC]および[N(OC(CH)COCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CH)COCH2.0(OC4.0]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0204】
[工程2:バイヤー−ビリガー酸化工程]
温度計、撹拌機、還流冷却管および滴下ロートを備え付けた2リットルの四つ口フラスコに、工程1で得られ化合物(188.0g,0.70unit mol)およびアセトニトリル(300mL)を仕込み、内温0℃以下で予め調製した2M過リン酸のアセトニトリル溶液(350mL,0.70mol)を滴下した後、25℃で2時間撹拌した。この反応混合物にトルエン(500mL)を加えて分液ロートに移し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した後、乾燥、濃縮して184.5gの生成物を得た(収率94.4%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0205】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.2(6H),2.3(6H),6.8〜7.3(26H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.3
【0206】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CH)OCOCH)(OC]、[N(OC(CH)OCOCH(OC]および[N(OC(CH)OCOCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CH)OCOCH2.0(OC4.0]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0207】
[工程3:脱アセチル化工程]
温度計および撹拌機を備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程2で得られた化合物(167.5g,0.60unit mol)、メタノール(200mL)および炭酸カリウム(55.3g,0.40mol)を仕込み、25℃で3時間撹拌した。この反応液から溶媒を留去し、濃縮残渣に水(300mL)を加えた。これを分液ロートに移してMIBKで生成物を抽出し、MIBK層を脱イオン水で2回洗浄した後に乾燥、濃縮して149.1gの生成物を得た(収率98.9%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0208】
H−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
2.0(6H),6.4〜7.4(26H)
31P−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.0〜11.5
◎CHNP元素分析:
理論値 C:60.6%,H:4.6%,N:5.6%,P:12.3%
実測値 C:60.7%,H:4.5%,N:5.6%,P:12.4%
◎TOF−MS(m/z):
724、754、784
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎水酸基当量:
371g/eq.(理論値377g/eq.)
【0209】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OC(CH)OH)(OC]、[N(OC(CH)OH)(OC]および[N(OC(CH)OH)(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OC(CH)OH)2.0(OC4.0]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0210】
合成例4(形態Yに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
[工程1:方法B−cによるアセチル基含有環状ホスファゼン化合物の製造]
温度計、撹拌機、冷却管および滴下ロートを備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、窒素気流下で水素化ナトリウム(76.0g,3.17mol)を仕込み、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(173.8g,1.50unit mol)のTHF(700mL)溶液を加えた。これを0℃に維持しながら、4−アセチルフェノール(149.8g,1.1mol)のTHF(200mL)溶液を1時間以上かけて滴下した後、1時間撹拌した。得られた反応液にフェノール(197.6g,2.1mol)のTHF(200mL)溶液を1時間以上かけてさらに滴下した後、70℃で6時間還流した。反応混合物を室温に冷却後、濃縮して溶媒を留去し、トルエン(1,000mL)および5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を加えて分液ロートに移した。水層を分離後、トルエン層を5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄してから希硝酸で中和し、さらに水洗した。このトルエン層を減圧濃縮し、391.8gの生成物を得た(収率:97.7%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0211】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.5(6H),6.9〜7.8(28H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.1〜9.6
◎TOF−MS(m/z):
736、778、820
◎残存塩素分析:
<0.01%
【0212】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCCOCH)(OC]、[N(OCCOCH(OC]および[N(OCCOCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OCCOCH2.2(OC3.8]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0213】
[工程2:バイヤー−ビリガー酸化工程]
温度計、撹拌機、還流冷却管および滴下ロートを備え付けた2リットルの四つ口フラスコに、工程1で得られた化合物(183.4g,0.70unit mol)およびアセトニトリル(300mL)を仕込み、内温0℃以下で予め調製した2M過リン酸のアセトニトリル溶液(350mL,0.70mol)を滴下した後、25℃で2時間撹拌した。この反応混合物にトルエン(500mL)を加えて分液ロートに移し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した後、乾燥、濃縮して188.4gの生成物を得た(収率98.3%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0214】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.3(6H),6.8〜7.3(28H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.3
【0215】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCOCOCH)(OC]、[N(OCOCOCH(OC]および[N(OCOCOCH(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OCOCOCH2.2(OC3.8]の環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0216】
[工程3:脱アセチル化工程]
温度計および撹拌機を備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程2で得られた化合物(164.2g,0.60unit mol)、メタノール(200mL)および炭酸カリウム(55.3g,0.40mol)を仕込み、25℃で3時間撹拌した。この反応液から溶媒を留去し、濃縮残渣に水(300mL)を加えた。これを分液ロートに移してMIBKで生成物を抽出し、MIBK層を脱イオン水で2回洗浄した後に乾燥、濃縮して144.1gの生成物を得た(収率98.9%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0217】
H−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
6.4〜7.4(28H)
31P−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.0〜11.5
◎CHNP元素分析:
理論値 C:59.3%,H:5.0%,N:5.8%,P:12.7%
実測値 C:59.1%,H:5.1%,N:5.9%,P:12.7%
◎TOF−MS(m/z):
669、699、729
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎水酸基当量:
329g/eq.(理論値331g/eq.)
【0218】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCOH)(OC]、[N(OCOH)(OC]および[N(OCOH)(OC]の混合物であり、その平均組成が[N(OCOH)2.2(OC3.8]のヒドロキシ基環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0219】
合成例5(形態Xに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
[工程1:方法A−aによるアセチル基含有環状ホスファゼン化合物の製造]
温度計、撹拌機、冷却管および滴下ロートを備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、窒素気流下でヘキサクロロシクロテトラホスファゼン(173.8g,1.50unit mol)のTHF(500mL)溶液を加えた。これに、予め調製したナトリウム4−アセチルフェノキシド(506.0g,3.2mol)のTHF(1,000mL)溶液を1時間かけて滴下した後、1時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却後、減圧濃縮し、トルエン(1,000mL)および5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を加えて分液ロートに移した。水層を分離後、トルエン層を5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄し、希硝酸で中和して水洗した。トルエン層を減圧濃縮し、560.1gの生成物を得た(収率:96.7%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0220】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.5〜2.6(6H),6.9〜7.5(8H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.3〜9.6
◎TOF−MS(m/z):
946
◎残存塩素分析:
<0.01%
【0221】
以上の分析結果から、この生成物は、[N(OCCOCH]で表わされる環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0222】
[工程2:バイヤー−ビリガー酸化工程]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却管を備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程1で得られた化合物(220.7g,0.70unit mol)およびクロロホルム(200mL)を仕込んだ。これに、内温0℃以下で6Mトリフルオロ過酢酸クロロホルム溶液(250mL,1.5mol)を30分間かけて滴下し、30分間還流撹拌した。反応混合物を分液ロートに移し、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮して237.7gの生成物を得た(収率97.8%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0223】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.1〜2.2(6H),6.6〜7.3(8H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.3〜9.7
【0224】
以上の分析結果から、この生成物は、[N(OCOCOCH]で表わされる環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0225】
[工程3:脱アセチル化工程]
温度計、撹拌機および還流冷却器を備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程2で得られた化合物(208.4g,0.60unit mol)、メタノール(500mL)およびp−トルエンスルホン酸(1.0g)を仕込み、5時間還流撹拌した。反応液を減圧濃縮した後に水を加え、析出した固体を濾過して採取した。この固体を水で充分洗浄した後に乾燥し、151.7gの生成物を得た(収率96.1%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0226】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
6.6〜7.3(8H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.8〜10.1
◎CHNP元素分析:
理論値 C:54.8%,H:3.8%,N:5.3%,P:11.8%
実測値 C:54.6%,H:3.8%,N:5.4%,P:11.9%
◎TOF−MS(m/z):
790
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎水酸基当量:
130g/eq.(理論値132g/eq.)
【0227】
以上の分析結果から、この生成物は[N(OCOH)]で表わされるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0228】
合成例6(形態Yに係るヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
[工程1:方法B−cによるアセチル基含有環状ホスファゼン化合物の製造]
温度計、撹拌機、冷却管および滴下ロートを備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、窒素気流下で水素化ナトリウム(76.0g,3.17mol)を仕込み、クロロシクロホスファゼンオリゴマー(分子式(PNClで表わされる、n=3〜8の混合物:173.8g,1.50unit mol)のTHF(700mL)溶液を加えた。これを0℃に維持しながら、4−アセチルフェノール(235.8g,1.55mol)のTHF(200mL)溶液を1時間以上かけて滴下した後、1時間撹拌した。得られた反応液に4−メチルフェノール(167.6g,1.55mol)のTHF(200mL)溶液を1時間以上かけてさらに滴下した後、70℃で6時間還流した。反応混合物を室温に冷却後、濃縮して溶媒を留去し、トルエン(1,000mL)および5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を加えて分液ロートに移した。水層を分離後、トルエン層を5%水酸化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄してから希硝酸で中和し、さらに水洗した。このトルエン層を減圧濃縮し、406.7gの生成物を得た(収率:94.4%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0229】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.1(3H),2.5(3H),6.9〜7.8(8H)
◎TOF−MS(m/z):
862、1,149、1,436、1,724、2,010、2,298
◎残存塩素分析:
<0.01%
【0230】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[NP(OCCOCH)(OCCH)](n=3〜8)で表わされる環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
【0231】
[工程2:バイヤー−ビリガー酸化工程]
温度計、撹拌機、還流冷却管および滴下ロートを備え付けた2リットルの四つ口フラスコに、工程1で得られた化合物(201.1g,0.70unit mol)およびアセトニトリル(300mL)を仕込み、内温0℃以下で予め調製した2M過リン酸のアセトニトリル溶液(350mL,0.70mol)を滴下した後、25℃で2時間撹拌した。この反応混合物にトルエン(500mL)を加えて分液ロートに移し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した後、乾燥、濃縮して203.8gの生成物を得た(収率96.0%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0232】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.2(3H),2.3(6H),6.8〜7.3(8H)
【0233】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[NP(OCOCOCH)(OCCH)](n=3〜8)で表わされる環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
【0234】
[工程3:脱アセチル化工程]
温度計および撹拌機を備え付けた1リットルの四つ口フラスコに、工程2で得られた化合物(182.0g,0.60unit mol)、メタノール(200mL)および炭酸カリウム(55.3g,0.40mol)を仕込み、25℃で3時間撹拌した。この反応液から溶媒を留去し、濃縮残渣に水(300mL)を加えた。これを分液ロートに移してMIBKで生成物を抽出し、MIBK層を脱イオン水で2回洗浄した後に乾燥、濃縮して148.6gの生成物を得た(収率94.8%)。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
【0235】
H−NMRスペクトル(重アセトン中、δ、ppm):
6.4〜7.4(28H)
◎CHNP元素分析:
理論値 C:59.8%,H:4.6%,N:5.4%,P:11.9%
実測値 C:59.6%,H:4.8%,N:5.5%,P:12.0%
◎TOF−MS(m/z):
784、1,044、1,306、1,567、1,828、2,090
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎水酸基当量:
260g/eq.(理論値261g/eq.)
【0236】
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[NP(OCOH)(OCCH)](n=3〜8)で表わされるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
【0237】
合成例7(フェノキシ基全置換環状ホスファゼン化合物の製造)
PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS、H.R.ALLCOCK著、1972年刊、151頁、ACADEMIC PRESS社に記載されている方法に従い、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン81%とオクタクロロシクロテトラホスファゼン19%とのシクロホスファゼン混合物を用いて[N=P(OCと[N=P(OCとの混合物(白色固体/融点:65〜112℃)を得た。
【0238】
実施例1(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
温度計、撹拌機および冷却管を備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、合成例1で得られた平均組成が[N(OC(CHOH)2.1(OC3.9]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物(100g、0.38unit mol)、旭化成ケミカルズ株式会社製のポリフェニレンエーテル(数平均分子量:17,000/670g)およびトルエン(2,000mL)を加えて90℃で加熱、溶解させ、その中に過酸化ベンゾイル(20g,0.082mol)をさらに加えて90℃で1時間反応した。そして、この反応混合物をメタノール(6,000mL)に投入することで得られた沈殿を濾別した。この沈殿をメタノール(1,200mL)で洗浄後、減圧乾燥することでオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物744gを得た(収率96.6%)。なお、収率はポリフェニレンエーテルが全てヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物に再分配した場合を100%として算出した。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0239】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(267.1H),6.3〜6.6(89.0H),6.7〜7.3(19.5H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.5〜10.0
◎水酸基当量
2,800g/eq.(理論値2,825g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 5,900
【0240】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分析結果を図1に示す。図において、反応開始前はポリフェニレンエーテルのピークが保持時間24.5分に検出されており、また、ヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物のピークが保持時間30.4分に検出されている。一方、反応開始1時間後には、保持時間24.5分および同30.4分にピークは検出されず、保持時間25.8分に単一のピークが検出されている。また、最終生成物(反応により得られた沈殿を濾別して洗浄したもの)については、保持時間25.9分に単一のピークが検出されている。
【0241】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH(OC(CH)20.2OH}2.1(OC3.9]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0242】
実施例2(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
ポリフェニレンエーテルの使用量を335gに変更した点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物414gを得た(収率95.3%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0243】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(137.3H),6.3〜6.6(45.8H),6.7〜7.3(19.5H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.5〜10.0
◎水酸基当量
1,520g/eq.(理論値1,564g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 3,200
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0244】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH(OC(CH)9.9OH}2.1(OC3.9]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0245】
実施例3(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
温度計、撹拌機および冷却管を備え付けた3リットルの四つ口フラスコに、合成例1で得られた平均組成が[N(OC(CHOH)2.1(OC3.9]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物(100g,0.38unit mol)、旭化成ケミカルズ株式会社製のポリフェニレンエーテル(数平均分子量:18,000/200g)およびトルエン(2,000mL)を加えて90℃で加熱、溶解させ、その中に過酸化ベンゾイル(20g,0.082mol)をさらに加えて90℃で1時間反応した。得られた反応混合物を室温に冷却した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して洗浄し、水層と有機層とを分別して有機層を脱イオン水で再度洗浄した。そして、水層と有機層とを再度分別し、有機層を減圧濃縮することでオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物288gを得た(収率96.1%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0246】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(93.2H),6.3〜6.6(31.1H),6.7〜7.3(19.5H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.5〜10.0
◎水酸基当量
1,200g/eq.(理論値1,143g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 2,700
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0247】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH(OC(CH)6.4OH}2.1(OC3.9]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0248】
実施例4(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
過酸化ベンゾイルをジクミルパーオキサイド(22g、0.082mol)に変更した点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物746gを得た(収率96.9%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0249】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(269.6H),6.3〜6.6(89.9H),6.7〜7.3(19.5H),
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.5〜10.0
◎水酸基当量
2,800g/eq.(理論値2,825g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 6,200
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0250】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH(OC(CH)20.4OH}2.1(OC3.9]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0251】
実施例5(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
過酸化ベンゾイルをアゾビスイソブチロニトリル(14g,0.082mol)に変更した点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物735gを得た(収率95.8%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0252】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(272.2H),6.3〜6.6(90.7H),6.7〜7.3(19.5H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.5〜10.0
◎水酸基当量
2,800g/eq.(理論値2,849g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 6,100
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0253】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH(OC(CH)20.6OH}2.1(OC3.9]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0254】
実施例6(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
合成例1で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物に替えて合成例2で得られた平均組成が[N(OC(CH)OH)2.0(OC4.0]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物(100g,0.40unit mol)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物742gを得た(収率96.4%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0255】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(243.6H),6.3〜6.6(85.2H),6.7〜7.3(20.0H),
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.0
◎水酸基当量
2,900g/eq.(理論値2,804g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
数平均分子量 5,600
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0256】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH)(OC(CH)19.8OH}2.0(OC4.0]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0257】
実施例7(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
合成例1で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物に替えて合成例3で得られた平均組成が[N(OC(CH)OH)2.0(OC4.0]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物(100g,0.41unit mol)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物732gを得た(収率95.1%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0258】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(235.2H),6.3〜6.6(82.4H),6.7〜7.3(20.0H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.0
◎水酸基当量
2,600g/eq.(理論値2,672g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 5,500
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0259】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(CH(OC(CH)19.1OH}2.0(OC4.0]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0260】
実施例8(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
合成例1で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物に替えて合成例4で得られた平均組成が[N(OCOH)2.2(OC3.8]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物(100g,0.41unit mol)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物731gを得た(収率94.9%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0261】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(241.6H),6.3〜6.6(89.3H),6.7〜7.3(19.0H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.0
◎水酸基当量
2,600g/eq.(理論値2,530g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 5,800
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0262】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(OC(CH)18.3OH}2.2(OC3.8]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0263】
実施例9(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
合成例1で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物に替えて合成例5で得られた平均組成が[N(OCOH)]のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物(100g,0.38unit mol)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物726gを得た(収率94.3%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0264】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(252.0H),6.3〜6.6(108.0H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.0
◎水酸基当量
1,000g/eq.(理論値972g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 5,700
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0265】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[N{OC(OC(CH)7.0OH}]で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0266】
実施例10(オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
合成例1で得られたヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物に替えて合成例6で得られた平均組成が[NP(OCOH)(OCCH)](n=3〜8)のヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物の混合物(100g,0.38unit mol)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、オリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の混合物740gを得た(収率96.1%)。得られたオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の分析結果は次のとおりである。
【0267】
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
2.0〜2.2(241.6H),6.3〜6.6(89.3H),6.7〜7.3(19.0H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.6〜10.0
◎水酸基当量
1,900g/eq.(理論値1,967g/eq.)
◎ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:
数平均分子量 8,600
実施例1の場合と同様に、反応開始1時間後にはヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物およびポリフェニレンエーテルの各ピークが消失し、生成物の単一ピークが検出された。
【0268】
以上の分析結果から、本実施例で得られた生成物は、[NP{OC(OC(CH)14.2OH}(OCCH)](n=3〜8)で表わされる平均組成のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
【0269】
実施例11〜16および比較例1〜3(樹脂組成物の調製)
スチレン−ブタジエン共重合体樹脂(PSジャパン株式会社製のゴム強化スチレン系樹脂:商品名「433」)、数平均分子量(Mn)が約16,000のポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製)、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE/三井・デュポンフロロケミカル株式会社の商品名「テフロン6−J」)および表1に示すオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物を表1に示す割合でドライブレンドし、これを二軸押出機(シリンダー温度260℃)を用いてペレット化することで樹脂組成物を得た。
【0270】
得られた樹脂組成物を射出成型機(シリンダー温度250℃)を用いて板状に成形し、試験片を得た。得られた試験片について、成形品外観、熱変形温度、難燃性、高温信頼性および誘電特性を評価した結果を表1に示す。評価方法は次の通りである。なお、試験片は、評価項目に応じて大きさの異なるものを製造した。
【0271】
(成形品外観)
長さ160mm、幅75mmおよび厚み1.3mmの試験片を目視観察し、試験片表面に0.1mm以上の凝集物による点状または筋状の外観不良(以下「ピット等」という)を調べた。評価の基準は次のとおりである。
○:ピット等の発生なし
×:少なくとも1個のピット等が発生
【0272】
(熱変形温度)
長さ127mm、幅12.7mmおよび厚み3mmの試験片について、ASTM D648「Standard Test Method for Deflection Temperature of Plastics Under Flexural Load in the Edgewise Position」に従い、荷重1.80MPaおよびアニーリング無しの条件で測定した。
【0273】
(難燃性)
アンダーライターズラボラトリーズ(Underwriter’s Laboratories Inc.)のUL−94規格垂直燃焼試験に基づき、長さ125mm、幅12.5mmおよび厚み1.5mmの試験片を用いて実施し、10回接炎時の合計燃焼時間と燃焼時の滴下物による綿着火の有無により、V−0、V−1、V−2および規格外の四段階の難燃性クラスに分類判定した。V−0が最高評価であり、V−1、V−2、規格外の順に評価が下がる。
【0274】
(高温信頼性:温度85℃、湿度85%)
長さ127mm、幅12.7mmおよび厚み3mmの試験片を温度85℃、湿度85%の恒温槽で500時間放置した後、試験片の外観変化を観察した。評価の基準は次のとおりである。
○:環状ホスファゼン化合物のブリードアウトによる外観変化がなく、高温信頼性が有る
×:環状ホスファゼン化合物のブリードアウトによる外観変化があり、高温信頼性が無い
【0275】
(誘電特性)
長さ50mm、幅50mmおよび厚み2.0mmの試験片について、JIS C2138「比誘電率及び誘電正接の測定方法」に従って周波数100MHzの比誘電率と誘電正接を測定した。
【0276】
【表1】

【0277】
表1によると、実施例11〜16の樹脂組成物からなる成形体(試験片)は、良好な外観や機械的強度(高い熱変形温度)を維持しながら、同時に優れた難燃性と高温信頼性を示し、しかも比誘電率および誘電正接が低いことから誘電特性においても優れている。
【0278】
実施例17〜23および比較例4,5(樹脂組成物の調製)
ビスフェノール−A型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社の商品名「エピクロン850S」:エポキシ当量180)、数平均分子量(Mn)が約19,000のポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製)および表1に示す環状ホスファゼン化合物を表1に示す割合でトルエンに配合し、70℃に加熱したオイルバス中で30分撹拌して均一に溶解した。さらに140℃のオイルバス中で2時間加熱してトルエンを除去し、次いで減圧乾燥機を用いて140℃、1mmHg以下の環境で2時間減圧乾燥することでトルエンを完全に除去した。
【0279】
得られた混合物を110℃に保ち、硬化剤としてジアミノジフェニルメタン1部と、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1部とを添加した。この混合物を加熱しながら1分間充分に撹拌した後、型に流し込んだ。そして、100℃、0MPaで2分間、130℃、1MPaで2分間および180℃、3MPaで10分間の順に熱プレス機で硬化させた後、型から取り出し、最後に180℃で3時間後硬化させることにより、試験片を作製した。得られた試験片について、難燃性、誘電特性、高温信頼性および折り曲げ強度を評価した結果を表1に示す。評価方法は次の通りである。なお、試験片は、評価項目に応じて大きさの異なるものを製造した。
【0280】
(難燃性)
実施例11〜16および比較例1〜3と同様の方法で評価した。
(誘電特性)
長さ50mm、幅50mmおよび厚み2.0mmの試験片について、JIS C2138「比誘電率及び誘電正接の測定方法」に従って周波数1GHzの比誘電率および誘電正接を測定した。
【0281】
(高温信頼性:プレッシャークッカー試験、温度121℃、圧力0.2MPa)
長さ15mm、幅15mmおよび厚み1.5mmの試験片を蒸留水5mLとともに容量15mLのポリテトラフルオロエチレン製容器に入れ、更にこの容器を鋼鉄製の容器に入れて完全に密封した。鋼鉄製の容器を温度121℃で100時間放置した後、試験片を取り出し、外観変化を観察した。評価の基準は次のとおりである。
○:環状ホスファゼン化合物のブリードアウトによる外観変化がなく、高温信頼性が有る
×:環状ホスファゼン化合物のブリードアウトによる外観変化があり、高温信頼性が無い
【0282】
(折り曲げ強度)
長さ100mm、幅20mmおよび厚み0.5mmの試験片について、その両端を手で持ち、180度の折り曲げを20回繰り返すことで折り曲げ強度(機械的強度)を次の基準で評価した。
○:割れの発生なし
×:割れの発生あり
【0283】
【表2】

【0284】
表2によると、実施例17〜23の樹脂組成物は、優れた難燃性、高温信頼性および折り曲げ強度を示し、しかも比誘電率および誘電正接が低いことから誘電特性においても優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物。
【化1】

(式(1)中、nは1〜6の整数を示し、Aは下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれる基を示しかつ2n+4個のAのうちの少なくとも一つがA2基である。
A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基。
A2基:下記の式(2)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
【化2】

式(2)中、E〜Eは、水素原子またはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、下記の式(3)で示されるオリゴ(フェニレンオキシ)基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示しかつ少なくとも一つが前記オリゴ(フェニレンオキシ)基である。
【化3】

式(3)中、qは1〜50の整数を示し、E〜Eは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示す。)
【請求項2】
A2基が、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基、オリゴ(メチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換フェニルオキシ基、オリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換メチルフェニルオキシ基およびオリゴ(ジメチルフェニレンオキシ)基置換ジメチルフェニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物。
【請求項3】
式(1)のnが1若しくは2である、請求項1または2に記載のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物。
【請求項4】
下記の式(4)で示されるヒドロキシ基含有環状ホスファゼン化合物と、下記の式(6)で示されるポリフェニレンエーテル類とをラジカル開始剤の存在下で反応させる工程を含む、請求項1に記載のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造方法。
【化4】

(式(4)中、mは1〜6の整数を示し、Gは下記のG1基およびG2基からなる群から選ばれる基を示しかつ2m+4個のGのうちの少なくとも一つがG2基である。
G1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基。
G2基:下記の式(5)で示されるヒドロキシ基置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
【化5】

式(5)中、E10〜E14は、水素原子またはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基でありかつ少なくとも一つがヒドロキシ基である。)
【化6】

(式(6)中、rは30〜1,000の整数を示し、E〜Eは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基並びに炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示す。)
【請求項5】
式(6)で示される前記ポリフェニレンエーテル類が、ポリ(メチルフェニレン)エーテル類およびポリ(ジメチルフェニレン)エーテル類のうちの一つである、請求項4に記載のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物の製造方法。
【請求項6】
樹脂成分と、
請求項1から3のいずれかに記載のオリゴ(フェニレンオキシ)基含有環状ホスファゼン化合物と、
を含む樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂成分が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂およびビスマレイミド−シアン酸エステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂成形体を用いた電気・電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−99044(P2011−99044A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254652(P2009−254652)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(591286270)株式会社伏見製薬所 (50)
【Fターム(参考)】