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オリーブ葉抽出物を酵母処理することにより得られる抗酸化物質
説明

オリーブ葉抽出物を酵母処理することにより得られる抗酸化物質

【課題】オリーブ葉抽出物を酵母で生物変換して得られる抗酸化性化合物ならびにそれを含む抽出物、それを含有する化粧品添加剤、食品添加剤、化粧品、及び食品、ならびに化合物の製造方法の提供。
【解決手段】特定のピラン環含有新規化合物及び同化合物を含むパン酵母処理オリーブ抽出物。この化合物は抗酸化性組成物として有用であり、食品添加剤用、化粧品添加剤用として用いることができる。この化合物は、オリーブ抽出物のパン酵母による変換反応により製造され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、特に、オリーブ葉抽出物を酵母で生物変換して得られる抗酸化性化合物ならびにそれを含む抽出物、それを含有する化粧品添加剤、食品添加剤、化粧品、及び食品、ならびに化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の消費者の食品・化粧品の安全性に対する意識の高まりから,より安全な添加物の調製が望まれている。その中で抗酸化性物質はさまざまな効果が期待される点で特に注目が集まっている。天然由来の成分にはそれを満たすものが存在する可能性があり,様々な探索が行われてきている。一方,二次代謝産物の中には,微生物酵素の処理により,複雑な構造の一部を変換するだけで,その化合物の物理化学的性質,生理活性が大きく変化し,医薬品などの実用化,開発が行われている事例がいくつか知られている。(例えば非特許文献1,2、特許文献1参照)
【0003】
オリーブの葉や剪定枝にはオレウロペインをはじめとするユニークな構造を有する二次代謝産物が大量に含まれていることが知られているが,それらの構造を微生物をはじめとする細胞あるいは酵素により変化させた薬剤の報告は、特許文献2があるに止まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−290675号公報
【特許文献2】特許第3776001号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Antibiotics 55 1042-7, (2002)
【非特許文献2】Biotechnology annual review 2 373-89,(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、オリーブ葉,剪定枝などの抽出物中に含まれる二次代謝産物を,食品微生物で生物変換を行い,抗酸化活性を有するヒトに優しい新規化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、パン酵母でオリーブ抽出物を処理することにより抗酸化活性を有する優れた新規化合物を見出すことに成功し、本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、以下よりなる。
1.以下の一般式Iで示される化合物。
式I:
【化2】

2.式Iで示される請求項1に記載の化合物を含むパン酵母処理オリーブ抽出物。
3.請求項1に記載の化合物と請求項2に記載の抽出物との少なくとも何れか一方を含有することを特徴とする抗酸化性組成物。
4.食品添加剤用であることを特徴とする、請求項3に記載の抗酸化性組成物。
5.化粧品添加剤用であることを特徴とする、請求項3に記載の抗酸化性組成物。
6.請求項1に記載の化合物と請求項2に記載の抽出物との少なくとも何れか一方を含有することを特徴とする食品。
7.請求項1に記載の化合物と請求項2に記載の抽出物との少なくとも何れか一方を含有することを特徴とする化粧品。
8.オリーブ抽出物のパン酵母による変換反応による請求項1記載の化合物の製造方法。
9.オリーブ抽出物のパン酵母による変換反応による請求項2記載の抽出物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規化合物は、オリーブ中に含まれるアルデヒド基を有する化合物を還元して得られるアルコール化合物であり,抗酸化活性に必要なカテコール構造を有するヒドロキシチロソール骨格を保持している。アルデヒドがアルコールに変化したことにより,薬剤として安定性は上昇しており,かつ抗酸化活性を有している,さらに食品微生物による変換で生成されるということを考え合わせて,ヒトに優しい化粧品添加物や食品添加物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る休止菌体反応の説明図である。
【図2】本発明の実施例に係る化合物Aの単離の説明図である。
【図3】本発明の実施例に係るHPLC分析とUVスペクトルの説明図である。
【図4】本発明の実施例に係る化合物Aの同定の説明図である。
【図5】本発明の実施例に係る化合物Bの同定の説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る抗酸化活性の説明図である。
【実施例】
【0011】
以下に本発明の理解を高めるために実施例を挙げて説明するが、本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
【0012】
オリーブ葉抽出物の調製
オリーブ葉(ルッカー種)から得られた95%エタノール抽出物31.6gを酢酸エチルと水により有機溶媒分画して酢酸エチル抽出物19.1gを得た。この抽出物をオリーブ葉抽出物として用いる。
【0013】
オリーブ葉抽出物の微生物変換の確認
スキーム1:休止菌体反応
オリーブ葉由来酢酸エチル抽出物: 1.8 mg
DMSO: 50 mL
水またはリン酸緩衝液: 350 mL
菌体(パン酵母)(6.25または 25 mg/mL): 100 mL
休止菌体反応(往復振とう24h,160 rpm)
反応終了後の反応液500 mL
酢酸エチルで抽出
酢酸エチル層
濃縮乾固
メタノール添加しTLC(薄層クロマトグラフィー)分析
上記のスキームに従って休止菌体反応を行い,生成物のTLC分析を行ったところ,図1に示すように菌体添加量増加に伴って,化合物Aが減少し,Bが増加した。本反応は酸性条件下で進むことが示唆され,中性緩衝液中では進行しないことも判明した。ここで用いるパン酵母は市販のドライイーストでよく,どの会社の製品でも反応は進行する。また,生酵母による反応の進行も確認した。
【0014】
化合物Aの分取TLCによる単離
図2に示したように,オリーブ葉抽出物(酢酸エチル抽出物)40mgから出発し,ODSフラッシュカラムクロマトグラフィーと分取TLCにより,化合物Aを1.97mg単離した。
【0015】
精製化合物Aが基質であることの確認
上記で精製した化合物Aをオリーブ葉抽出物の代わりに基質として,スキーム1に従う方法により休止菌体反応を実施し,化合物Bが確かに生成することを確認した。
【0016】
休止菌体反応のスケールアップと化合物Bの単離
スキーム1の反応を40倍スケールアップし,オリーブ葉抽出物72 mgをパン酵母で処理した後,反応液上清を酢酸エチル抽出し,反応液抽出物を21.7 mg得た。この試料について図2で示した化合物Aの単離の際と同様の分取TLC法により化合物Bを3.85mg得た。
【0017】
休止菌体反応のHPLC(液体クロマトグラフィー)分析による確認
TLC分析は分離能,感度の点でHPLC分析より劣っているため,HPLC分析による休止菌体反応の追跡を行うことにした。スキーム1に従って反応を行い得られた反応生成物抽出液をInertsil ODS-3 (4.6 X 250 mm)カラムで分離し,Hitachi Diode Array Detector L-7455で多波長分析した。図3に示すように,酵母を添加していないコントロール区に化合物Aと思われるピークが8.35分に観察され,酵母による反応を行うと,そのピークが消失するとともに化合物Bと推測されるピークが新たに7.15分に現れた。両ピークとも,上記の分取TLCで精製した化合物と同じUV吸収スペクトルを与えた。
【0018】
分取HPLCによる,化合物A,Bの大量精製
分取TLCでの精製は完全ではなかったため,より純度の高い精製標品を得るため分取HPLC(Inertsil ODS-3, 20 X 250mm)による精製を試みた。化合物Aについてはオリーブ葉抽出物19.0 mgから3.80mgの精製化合物を得た。化合物Bについては,0013と同じスケールで反応を行い5.38mgの精製化合物を得た。
【0019】
化合物Aの構造解析
図4に1H-NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)分析結果を示した。まず注目したのはδ9.54のシグナルで,一般にアルデヒドプロトンシグナルがδ10付近に検出されることが分かっているので,このシグナルをアルデヒドプロトンシグナルであると予想した。オリーブ葉由来二次代謝産物の中でアルデヒド基を有する化合物を調べたところ, DHEPA-EA(2H-Pyran-4-acetic acid, 3-formyl-3,4-dihydro-5-(methoxycarbonyl)-2-methyl-, 2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethyl ester)の存在が明らかとなり,その1H-NMRデータと化合物Aのデータを比較したところほぼ完全に一致したので,化合物AをDHEPA-EAであるとして同定した。相違は水酸基が文献では記載されていなかった点と,ベンゼン環のプロトンが文献では3H,マルチプレットと記載されていた点である。なおこのDHEPA-EAはオレウロペインがβグリコシダーゼによって加水分解され,オレウロペインアグリコンとなり,その後異性化によって生成する化合物とされており,我々の研究でアグリコンとそのアルデヒド型は平衡混合物として存在することが判っている。
(Hydroxytyrosolの母体構造部分C-1'~8')
ベンゼン環プロトンの一般的な結合定数は,o: J= 9, m: J= 3, p: J= 0~1なのでδ 6.63のダブルダブレットはオルト位,メタ位とカップリングしているのでH-8'とわかる。δ6.78,δ6.80はダブレットだが,パラ位のJ値が小さすぎて見た目にはカップリングしていないように見えたなら,ダブレットとなる筈なのでδ6.78がH-4',δ6.80がH-7'となる。
次にC-1'だが,一般にエステルに隣接するメチレンプロトンはδ4.1付近である。互いにカップリングし(一般にJ=12~15),次に隣接するC-2'のメチレンプロトンとカップリングする(一般J= 7)のでマルチプレットとなる筈である。δ4.23 ,δ4.32のシグナルが該当し,またこの2つのシグナルは互いにルーフ効果を示していた。
最後にC-2'はベンゼンに置換したメチレンなので一般的にはδ2.6付近となる。C-1'と同じ原理でマルチプレットになると該当するのは,δ2.82の2Hになる。つまりこのシグナルは正確には,1Hのマルチプレットのシグナル2つが重なって, 2H分となったと思われる。
(C-1~10)
まず,特徴的なシグナルから帰属し,消去法で残るシグナルの帰属を行った。まず積分値から3H分とわかったδ1.39とδ3.74のシグナルで,これらはC-2,C-10のメチルプロトンと予想できた。次にδ7.58のシグナルが突出して低磁場に検出されているのでオレフィンプロトンと予想した。残るシグナルはδ値,J値を一般値と比較して帰属を行っていった。
δ 1.41 C-10のメチルプロトン。H-8とカップリングし(J= 6.8一般値7),ダブレット。
δ 2.56, C-6のメチレンプロトン(一般にesterに隣接するメチレンプロトンはd 2.3付近)。互いにカップリングし(J= 16.1一般値15),更にH-5とカップリングするためダブルダブレットとなる。また,互いにルーフ効果あり。
δ 2.65 C-9のメチンプロトン。H-1(J= 1.7一般値2)H-8(J= 5.5一般値7)とカップリングしてダブルトリプレット。
δ 3.74 C-2のCOO-Meプロトン(一般にδ 3.4付近)。カップリング無し。
δ 4.46 C-8のメチンプロトン。隣接するメチル基(J= 6.4一般値7),メチン基(J= 6.4一般値7)のカップリングが等価なため,クインテットに見える。
δ 7.59 C-3のオレフィンプロトン(一般値は分からなかったが,エステルとエーテルに囲まれたオレフィンプロトンなのでこの様な低磁場に現れ得る。)H-5とカップリングし(J= 1.0一般値1.5),ダブレット。
δ 9.54 C-1のアルデヒドプロトン。H-9とカップリング(J= 2.0,一般値2~3)してダブレット。
以上の帰属の結果から 1H-NMRデータ上,化合物AはDHEPA-EAと同定するのに矛盾点はなかった。
【0020】
化合物Bの構造解析
図5に示すように,化合物Bと化合物Aの1H-NMRの相違点はアルデヒドプロトンが消失し,その代わりにδ3.63とδ3.54にメチレンプロトンが出現した点であり,容易にアルデヒド基がヒドロキシメチル基に還元されて生じた化合物であると推測された。さらに,アルデヒド基がヒドロキシメチル基構造変換を受けた部分の近傍に存在するプロトンがいずれも高磁場シフトしており,それを裏付けた。以上のことから化合物Bを図5に示すように,DHEPA-EAのアルコール体であると同定した。本化合物は,Scifinder Scholarによる構造検索の結果,これまでに全く報告のない化合物であることが判明した。従って,オリーブ中ではこのような還元反応は全く生じていないことが明らかである。
【0021】
DPPH法による抗酸化活性の評価
化合物A,Bともに,オレウロペインが抗酸化活性を示す部分構造であるカテコール構造を有していることから,それらの抗酸化活性をDPPHラジカル消去能で評価した。
表1 抗酸化活性測定の反応液組成(最終 DPPH濃度:100 mM)
1200 mM DPPH:25 mL
試料(0-5 mg/mL):25mL
メタノール:250 mL
合計:300 mL
測定機器;マイクロプレートリーダー(BIO RAD Model 680) 測定波長;540 nm
【0022】
図6に示したように,両化合物ともに抗酸化活性を同程度示し,その活性はアスコルビン酸の3分の2程度であった。
化合物Bは化合物Aのアルデヒド基がヒドロキシメチル基に変化しており,アルデヒドが酸化還元に対して不安定であることを考えると,化合物として安定になっており,一方で抗酸化活性に寄与するカテコール構造は保持していることから,食品や化粧品の添加物として有用と考えられる。また、本発明の化合物は、単独で使用できることは勿論、既存の各種抗酸化剤と組み合わせて使用することもでき、食品、化粧品、医薬品、医薬部外品等の各対象物に応じた配合処方で使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学式で示される新規化合物。
式I:
【化1】

【請求項2】
式Iで示される請求項1に記載の化合物を含むパン酵母処理オリーブ抽出物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物と請求項2に記載の抽出物との少なくとも何れか一方を含有することを特徴とする抗酸化性組成物。
【請求項4】
食品添加剤用であることを特徴とする、請求項3に記載の抗酸化性組成物。
【請求項5】
化粧品添加剤用であることを特徴とする、請求項3に記載の抗酸化性組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物と請求項2に記載の抽出物との少なくとも何れか一方を含有することを特徴とする食品。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物と請求項2に記載の抽出物との少なくとも何れか一方を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項8】
オリーブ抽出物のパン酵母による変換反応による請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
オリーブ抽出物のパン酵母による変換反応による請求項2記載の抽出物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−21025(P2011−21025A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204916(P2010−204916)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2007−39296(P2007−39296)の分割
【原出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(591081664)日本オリーブ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】