説明

オルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法

【解決手段】5−ビニル−2−ノルボルネンに下記一般式(1)
HSiR1n(OR23-n (1)
(R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物を、アンモニウム塩存在下に白金化合物含有触媒を用いてヒドロシリル化する下記一般式(2)


(R1、R2、nは上記の通り。)
で示されるオルガノキシシリル基又シロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【効果】本発明によれば、アンモニウム塩存在下に5−ビニル−2−ノルボルネンとハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物を反応することで、目的とするオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物を、高い反応性・選択性で、効率よく製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤等に有用なオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物は、特にメタセシス重合で製造されるポリマーの物性向上のためフィラー添加やシロキサン変性などを行う際に非常に有用である(特許文献1,2:特開2009−255380号公報、特表2005−097265号公報)。
【0003】
オルガノキシ(シロキシ)シリル基含有エチルノルボルネン化合物を製造する方法としては、例えば、5−ビニル−2−ノルボルネンとハイドロジェンオルガノキシ(シロキシ)シラン化合物をヒドロシリル化する方法が知られている(特許文献3:国際公開第2008/082128号パンフレット)。しかし、特許文献3記載の方法同様に既存のヒドロシリル化法では、反応性が低く、かつ、ノルボルネン環の内部二重結合への付加生成物が多く生成するため、目的物の選択性が低い。更に環の内部二重結合への付加生成物は目的物と分子量が同じであるため沸点が極めて近く、蒸留による分離が困難であり、収率、純度が共に低下してしまう。また、両方の二重結合への付加物であるビスシリル体の生成は目的物の収率を低下してしまう。
【0004】
具体的には、例えば、5−ビニル−2−ノルボルネンとトリメトキシシランの塩化白金酸触媒を用いたヒドロシリル化反応では、目的物である5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン(a)の他に、環の内部二重結合への付加物であるビニルノルボルニルトリメトキシシラン(b)や両方の二重結合への付加物であるビスシリル付加体(c)が多く生成するなどの問題があった。
【0005】
【化1】

【0006】
ここで、選択性よく高純度なオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物を得ることが必要である理由は、重合用モノマーであるノルボルネン化合物の純度が低いと、ポリマーの物性(機械的、熱的、光学的)が低下、又は、変化したり、ノルボルネン化合物等の開環メタセシス重合を行う際に、予期せぬビニル化合物が存在すると開環メタセシス重合が停止するため、分子量の制御が困難となってしまうためである。そのため、高い選択性で純度の高いオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物を効率よく製造する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−255380号公報
【特許文献2】特表2005−097265号公報
【特許文献3】国際公開第2008/082128号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、5−ビニル−2−ノルボルネンとハイドロジェンオルガノキシシラン化合物又はハイドロジェンオルガノキシシロキシ化合物とを白金触媒を用いてヒドロシリル化反応し、オルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物を製造する際に、反応性とビニル基/環内部二重結合への付加選択性を向上させ、効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、5−ビニル−2−ノルボルネンと、ハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とを白金化合物含有触媒を用いてヒドロシリル化する際に、アンモニウム塩を存在させることにより、反応性とビニル基/環内部二重結合への選択性を向上させ、効率よくオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記オルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法を提供する。
<1> 5−ビニル−2−ノルボルネンに下記一般式(1)
HSiR1n(OR23-n (1)
(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物又はハイドロジェンオルガノキシシロキシ化合物を、アンモニウム塩存在下に白金化合物含有触媒を用いてヒドロシリル化することを特徴とする下記一般式(2)
【化2】


(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
<2> 前記アンモニウム塩が、pKaが2以上の酸のアンモニウム塩であることを特徴とする<1>記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
<3> 前記アンモニウム塩が、無機酸のアンモニウム塩であることを特徴とする<1>又は<2>記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
<4> 前記アンモニウム塩を5−ビニル−2−ノルボルネン化合物1モルに対して1×10-5〜1×10-1モル使用することを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
<5> 白金化合物含有触媒として、0価の白金錯体を用いることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
<6> 白金化合物含有触媒を5−ビニル−2−ノルボルネン化合物1モルに対して含有される白金原子として1×10-7〜1×10-2モル使用することを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
<7> 上記一般式(1)で示されるハイドロジェンオルガノキシ(シロキシ)シラン化合物が、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1,1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサンから選ばれるものである<1>〜<6>のいずれかに記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、アンモニウム塩存在下に5−ビニル−2−ノルボルネンとハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物を反応することで、目的とするオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物を、高い反応性・選択性で、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法は、5−ビニル−2−ノルボルネンに下記一般式(1)
HSiR1n(OR23-n (1)
(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物を、アンモニウム塩存在下に白金化合物含有触媒を用いてヒドロシリル化することにより、下記一般式(2)
【化3】


(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるオルガノキシシリル基又はシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物を製造するものである。
【0013】
上記一般式(1)中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、フェニルベンジル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノニル基、デセニル基、シクロヘキセニル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基その他の1価の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0014】
また、これらの1価炭化水素基の水素原子の1個又はそれ以上が置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基、アセタミド基、ベンズアミド基等のアミド基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のオルガノキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジエチルアミノエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、エステル基、エーテル基、(メタ)アクリロキシ基、グリシドキシ基、エポキシ基、オキセタニル基、スルフィド基、トリオルガノキシシリル基、ジアルキルオルガノキシシリル基、アルキルジオルガノキシシリル基、アルキルシロキシ基等によって置換されていてもよい。
【0015】
シロキシ基としては、式−O[Si(CH32O]m−Si(CH33(m=0〜10の整数)で示されるシロキシ基等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(1)中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。1価炭化水素基としては、上記R1と同様の基が挙げられる。シリル基としては、アルキル基の炭素数がそれぞれ1〜4であるトリアルキルシリル基、アルキルアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基等が挙げられ、トリメチルシリル基が好ましい。
【0017】
上記一般式(1)で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物を具体的に例示すると、例えば、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1,1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサン等が挙げられる。
【0018】
5−ビニル−2−ノルボルネンと、上記一般式(1)で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物の配合割合は特に制限されないが、5−ビニル−2−ノルボルネン1モルに対してハイドロジェンオルガノキシシラン又はシロキシ化合物0.8〜3.0モル、特に1.0〜1.2モルとすることが、経済性の点から好ましい。
【0019】
アンモニウム塩としては、有機酸又は無機酸のアンモニウム塩が挙げられ、有機酸のアンモニウム塩の例として、例えば、メタンスルホン酸アンモニウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、シュウ酸二アンモニウム、シュウ酸水素アンモニウム、安息香酸アンモニウム、クエン酸一アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、酒石酸一アンモニウム、酒石酸二アンモニウム、アスパラギン酸アンモニウム等が挙げられる。無機酸のアンモニウム塩の例として、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸二水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジ亜リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウフッ化アンモニウム等が挙げられる。
【0020】
アンモニウム塩としては、pKaが2以上の酸のアンモニウム塩が好ましく、有機酸のアンモニウム塩では、目的物のシリル基に有機酸がエステル交換した化合物が生成するため、無機酸のアンモニウム塩がより好ましく、特に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが好ましい。
【0021】
アンモニウム塩の使用量としては特に制限はないが、反応性、選択性、コストの観点からを上記5−ビニル−2−ノルボルネン1モルに対して1×10-5〜1×10-1モル、特に好ましくは、1×10-4〜5×10-2モルの範囲が好ましい。
【0022】
本発明で用いられる白金化合物含有触媒としては特に制限はないが、具体的には塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金、白金−炭素、白金−アルミナ、白金−シリカなどの担持触媒等が例示される。選択性の面から、好ましくは0価の白金錯体が用いられ、更に好ましくは白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液が挙げられる。
【0023】
白金化合物含有触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(1)で示される5−ビニル−2−ノルボルネン1モルに対し、含有される白金原子が1×10-7〜1×10-2モル、更に1×10-7〜1×10-3モル、特に1×10-6〜1×10-3モルの範囲が好ましい。
【0024】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
また、その他の添加剤を併用して使用することも可能だが、添加剤として特に3級アミン化合物やニトリル化合物が挙げられる。
【0026】
3級アミン化合物としては特に制限されないが、具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン化合物や、ピリジン、キノリン、2,6−ルチジン等の芳香族環に窒素原子を含んでいるアミン化合物、更に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラミン等の特殊な環状アミンなども挙げられる。
【0027】
3級アミン化合物の使用量は特に制限はないが、使用量が多い場合、触媒活性が非常に低下する場合があるため、白金化合物含有触媒1モルに対して1〜1,000モル、特に1〜100モル、更に好ましくは1〜10モルが好ましい。
【0028】
ニトリル化合物としては特に制限されないが、具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、エチレンシアノヒドリン、ベンゾニトリル等が例示される。
【0029】
ニトリル化合物の使用量は、選択性を向上させるために5−ビニル−2−ノルボルネンに対して0.1質量%以上、更に0.5質量%以上、特に1質量%以上が好ましい。上限は特に制限されないが、100質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。使用量が少なすぎると選択性の向上が不十分な場合があり、多すぎると体積当たりの収率が低くなる場合がある。
【0030】
本発明の製造方法において、反応温度は特に限定されず、室温下又は加熱下で行うことができる。適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、0〜200℃、更に40〜110℃、特に40〜90℃が好ましい。また、反応時間も特に限定されないが、1〜60時間、更に1〜30時間、特に1〜20時間が好ましい。
【0031】
本発明の製造方法によって得られる有機ケイ素化合物は、その目的品質に応じて、蒸留、ろ過、洗浄、カラム分離、固体吸着剤等の各種の精製法によって更に精製して使用することもできる。触媒等の微量不純物を取り除き、高純度にするためには、蒸留による精製が好ましい。
【0032】
本発明の有機ケイ素化合物の用途は特に限定されるものではないが、具体的には、無機充填剤の表面処理、液状封止剤、鋳物用鋳型、樹脂の表面改質、高分子変性剤及び水系塗料の添加剤等を挙げることができる。この場合、本発明の有機ケイ素化合物に加え、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択される他の添加剤の1種以上を含有するものであってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]
温度計、コンデンサー、攪拌機、滴下ロートを備えたフラスコに、5−ビニル−2−ノルボルネン120g(1.0モル)、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(5−ビニル−2−ノルボルネンに対して白金原子に換算して1×10-4モル)、炭酸水素アンモニウム0.4g(0.002モル)を仕込み、トリメトキシシラン124g(1.0モル)を内温55〜65℃で4時間かけて滴下した。その温度で1時間攪拌し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、5−ビニル−2−ノルボルネンに対する反応率は98%であり、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン:5−ビニルノルボルニルトリメトキシシラン:環内部オレフィンとビニル基両方に付加したビスシリル付加体の面積%の比は95.3:0.1:4.6であった。反応液を蒸留することで、沸点102〜103℃/0.4kPaで5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン218g得た(収率90%、純度99.9%)。
【0035】
[比較例1]
炭酸水素アンモニウムを使用しないこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、滴下途中で発熱がなくなり滴下を中止した。ガスクロマトグラフィーの分析の結果、5−ビニル−2−ノルボルネンに対する反応率は29%であり、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン:ビニルノルボルニルトリメトキシシラン:環内部オレフィンとビニル基両方に付加したビスシリル付加体の面積%の比は46.9:48.1:5.0であった。
【0036】
[実施例2]
炭酸水素アンモニウム0.4g(0.002モル)の代わりに炭酸水素アンモニウム0.8g(0.01モル)を使用したこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析の結果、5−ビニル−2−ノルボルネンに対する反応率は99%であり、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン:ビニルノルボルニルトリメトキシシラン:環内部オレフィンとビニル基両方に付加したビスシリル付加体の面積%の比は95.3:0.1:4.6であった。反応液を蒸留することで、沸点102〜103℃/0.4kPaで5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン220g得た(収率91%、純度99.9%)。
【0037】
[実施例3]
炭酸水素アンモニウム0.4g(0.002モル)の代わりに酢酸アンモニウム0.6g(0.01モル)を使用したこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析の結果、5−ビニル−2−ノルボルネンに対する反応率は98%であり、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン:ビニルノルボルニルトリメトキシシラン:環内部オレフィンとビニル基両方に付加したビスシリル付加体の面積%の比は95.2:0.1:4.7であった。反応液を蒸留することで、沸点102〜103℃/0.4kPaで5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン220g得た(収率90%、純度98.8%、5−(2−アセトキシジメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン1%含む)。
【0038】
[実施例4]
トリメトキシシラン124g(1.0モル)の代わりにメチルジエトキシシラン136g(1.0モル)を使用したこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析の結果、5−ビニル−2−ノルボルネンに対する反応率は96%であり、5−(2−メチルジエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン:ビニルノルボルニルメチルジエトキシシラン:環内部オレフィンとビニル基両方に付加したビスシリル付加体の面積%の比は92.5:0.9:6.6であった。反応液を蒸留することで、沸点107〜108℃/0.4kPaで5−(2−メチルジエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン208g得た(収率82%、純度99.0%)。
【0039】
[実施例5]
トリメトキシシラン124g(1.0モル)の代わりにペンタメチルジシロキサン148g(1.0モル)を使用したこと以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ガスクロマトグラフィーの分析の結果、5−ビニル−2−ノルボルネンに対する反応率は94%であり、5−(2−ジメチルトリメチルシロキシシリルエチル)−2−ノルボルネン:ビニルノルボルニルジメチルトリメチルシロキシシラン:環内部オレフィンとビニル基両方に付加したビスシリル付加体の面積%の比は89.0:1.0:10.0であった。反応液を蒸留することで、沸点98〜99℃/0.4kPaで5−(2−ジメチルトリメチルシロキシシリルエチル)−2−ノルボルネン212g得た(収率79%、純度99.0%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−ビニル−2−ノルボルネンに下記一般式(1)
HSiR1n(OR23-n (1)
(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物又はハイドロジェンオルガノキシシロキシ化合物を、アンモニウム塩存在下に白金化合物含有触媒を用いてヒドロシリル化することを特徴とする下記一般式(2)
【化1】


(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシロキシ基である。R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基又はシリル基である。R1とR2は各々同一又は異なってもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記アンモニウム塩が、pKaが2以上の酸のアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記アンモニウム塩が、無機酸のアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1又は2記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記アンモニウム塩を5−ビニル−2−ノルボルネン化合物1モルに対して1×10-5〜1×10-1モル使用することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項5】
白金化合物含有触媒として、0価の白金錯体を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項6】
白金化合物含有触媒を5−ビニル−2−ノルボルネン化合物1モルに対して含有される白金原子として1×10-7〜1×10-2モル使用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項7】
上記一般式(1)で示されるハイドロジェンオルガノキシ(シロキシ)シラン化合物が、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1,1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサンから選ばれるものである請求項1乃至6のいずれか1項記載のオルガノキシシリル基又はオルガノキシシロキシ基含有エチルノルボルネン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2013−60377(P2013−60377A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198595(P2011−198595)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】