説明

オルガノシランの製造方法

本発明は、一般式(I)のオルガノシランの製造方法において、
a) 式(II)の(ハロオルガニル)アルコキシシランを、アルカリ金属硫化水素、金属硫化物M2S、金属多硫化物M2g、およびそれらの任意の所望の組み合わせの群から選択される硫化試薬と、および随意に追加的に硫黄と、および/またはH2Sと、有機溶剤中で反応させ、
b1) 引き続き、形成する懸濁液から有機溶剤を除去し、且つ、式(I)のオルガノシランを含む液相、およびMXと式(I)の残留オルガノシランとを含む固相を、残留懸濁液から分離するか、または
b2) 引き続き、式(I)のオルガノシランと有機溶剤と含む液相、およびMXと式(I)の残留オルガノシランとを含む固相を、形成する懸濁液から分離し、且つ、有機溶剤を液相から除去し、
c) MXと式(I)の残留オルガノシランとを含む固相を、水と混合し、且つ、
d) 一般式(I)のオルガノシランを含む、形成する有機相を除去する、オルガノシランの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオルガノシランの製造方法に関する。
【0002】
シリルアルキルポリスルファンを、本質的に、クロロアルキルシラン上で、様々な方法で調製されたアニオン性多硫化物を用いた求核置換によって調製できることは公知である(DE−C2141159)。有機ケイ素化合物と、求核置換基において形成される固形物(当該の場合は塩)とからなる混合物はろ過または遠心分離によって作り上げられる。得られた塩は、有機相の外に析出した場合、非常に微細である。
【0003】
さらに、US6777569号は、メルカプト基含有有機ケイ素化合物の金属塩を、トルエンの存在中でアシルハライドと反応させる、ブロックトメルカプトシランの製造方法を開示している。有機ケイ素化合物と、求核置換において形成された塩とからなる混合物は、該塩を脱イオン水中で完全に溶解させ、その後、相を分離することによって作り上げられる。該相分離は、トルエンの存在によって決定的な程度へと促進される。従って、有機相は、有機ケイ素化合物と同様に、トルエンを含み、それは相分離後に蒸留によって除去されなければならない。
【0004】
US5405985号、US5468893号、US5663396号、US5583245号およびEP−A0694552号は、相応する多硫化物を、硫化物および硫黄からの水溶液中で調製し、二相系において、トルエンと相間移動触媒との存在中で、ハロアルキルシランと反応してポリスルファンをもたらす方法を開示している。この手順において、有機ケイ素化合物と、求核置換において形成された塩とからなる混合物は、該塩を脱イオン水中で完全に溶解させ、引き続き、相を分離することによって作り上げられる。該相分離は、トルエンの存在によって決定的な程度へと促進される。従って、有機相は、有機ケイ素化合物と同様に、トルエンを含み、それは相分離後に蒸留によって除去されなければならない。この手順においては、相関移動触媒またはそれらの分解生成物が、硫黄含有有機ケイ素化合物内に残留している。
【0005】
さらには、US6448426号、US6384255号、US6384256号、WO03/002573号、WO03/002576号、WO03/002577号、WO03/002578号およびWO04/043969号は、相応する多硫化物が、硫化物および硫黄または硫化水素、アルカリ金属水酸化物および硫黄からの水溶液中で調製され、二相系において、相関移動触媒の存在中でハロアルキルシランと反応してポリスルファンをもたらす方法を開示している。有機ケイ素化合物と、求核置換において形成された塩とからなる混合物は、該塩を水中で完全に溶解させ、引き続き、相を分離することによって作り上げられる。この手順においては、相間移動触媒またはそれらの分解生成物が、硫黄含有有機ケイ素化合物中に残留しており、ビス(シリルアルキル)ポリスルファンの性能値のプロファイルにまだ影響を有する。
【0006】
EP1808436号は、式(R123SiR42xの有機ケイ素化合物の製造方法であって、式R123SiR4Xのハロアルコキシシランと、式M2zの乾燥多硫化物および/または式M2Sの乾燥硫化物、および随意に硫黄とを、有機溶剤中で反応させ、その際、該有機溶剤が、形成した懸濁液から除去され、有機ケイ素化合物と固体のMXとを含む混合物が、少なくとも1つの緩衝液を含む水と混合され、形成された相が分離される方法を開示している。
【0007】
有機ケイ素化合物を無水の条件下で調製する公知の方法の欠点は、形成する微細な固体の除去が困難であり且つ費用がかかることである。
【0008】
相応する多硫化物(硫化物と硫黄とからの水溶液中で得られる)と、ハロアルキルシランとを、二相系において、溶剤、例えばトルエンの存在下で反応させることによって、ポリスルファンが得られる公知の方法のさらなる欠点は、硫黄含有有機ケイ素化合物を、例えば真空蒸留によって無溶剤にしなければならないことである。他の欠点は、生じる溶剤を、さらなる使用前に乾燥しなければならないことがあることである。
【0009】
相応する多硫化物(硫化物と硫黄とからの水溶液中で得られる)と、ハロアルキルシランとを、二相系において、相間移動触媒の存在下で反応させることによって、ポリスルファンが得られる公知の方法のさらなる欠点は、硫黄含有有機ケイ素化合物が、相間移動触媒またはそれらの分解生成物で汚染されることである。
【0010】
本発明の課題は、硫黄含有オルガノシランの製造を可能にする方法であって、該方法のおかげで、絶対的に必要とされるいかなる相間移動触媒、またはそれらの分解生成物もなく、且つ最大の収率をもたらす方法を提供することである。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明は、一般式I
[式中、
Rは同一または異なり、且つ、C1〜C8−アルキル、好ましくはCH3またはCH2CH3、C1〜C8−アルケニル、C1〜C8−アリール、C1〜C8−アラルキル基、またはOR’基であり、
R’は、同一または異なり、且つ、C1〜C24−、好ましくはC1〜C4−またはC12〜C18−、より好ましくはCH2CH3、分枝または非分枝の一価アルキルまたはアルケニル基、アリール基、アラルキル基、水素(−H)、アルキルエーテル基 −(CRIII2)−O−アルクまたは−(CRIII2y−O−アルクまたはアルキルポリエーテル基 −(CRIII2O)y−アルクまたは−(CRIII2−CRIII2−O)y−アルク、前記y=2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜6、RIIIは独立してHまたはアルキル基、好ましくはCH3基、およびアルクは分枝または非分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族、または脂肪族/芳香族混合の、一価のC1〜C30−、好ましくはC2〜C20−、より好ましくはC6〜C18−、最も好ましくはC10〜C18−炭化水素基であり、
R’’は、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族または脂肪族/芳香族混合の、二価のC1〜C30−、好ましくはC1〜C20−、より好ましくはC1〜C10−、最も好ましくはC1〜C7−炭化水素基であり、それは随意にF、Cl、Br、I、HS、NH2またはNHR’によって置換されており、
nは1または2であり、
n=2の場合、X=Sであり、且つ、mは1.5〜4.5の硫黄鎖長を意味し、且つ、
n=1の場合、X=SHであり、且つm=1である]
のオルガノシランの製造方法であって、
a) 式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシラン
【化2】

[式中、
R、R’およびR’’はそれぞれ上記に定義された通りであり、且つ、Halは塩素、臭素、フッ素またはヨウ素である]
を、アルカリ金属硫化水素、金属硫化物M2S、金属多硫化物M2g、およびそれらの任意の所望の組み合わせ (前記Mはアルカリ金属、アンモニウムまたは(アルカリ土類金属)1/2、且つg=1.5〜8.0)の群から選択される硫化試薬と、および随意に追加的に硫黄と、および/またはH2Sと、有機溶剤中で反応させ、
b1) 引き続き、形成する懸濁液から有機溶剤を除去し、且つ、式Iのオルガノシランを含む液相、およびMXと式Iの残留オルガノシランとを含む固相を、残留懸濁液から分離するか、または
b2) 引き続き、式Iのオルガノシランと有機溶剤と含む液相、およびMXと式Iの残留オルガノシランとを含む固相を、形成する懸濁液から分離し、且つ、有機溶剤を液相から除去し、
c) MXと式Iの残留オルガノシランとを含む固相を、水と混合し、且つ、
d) 一般式Iのオルガノシランを含む、形成する有機相を除去することを特徴とする、オルガノシランの製造方法を提供する。
【0013】
工程段階b1)およびb2)は選択的な工程段階である。
【0014】
工程段階c)において、界面活性剤を添加してよい。
【0015】
工程段階c)およびd)は、1回より多く、好ましくは2回または3回、連続して実施してよい。
【0016】
工程段階e)において、工程段階b1)またはb2)からの式Iのオルガノシランを、工程段階d)からの式Iのオルガノシランと混合してよい。引き続き、式Iのオルガノシランを工程段階f)において乾燥させてよい。
【0017】
本発明による方法を、触媒を用いないで、特に相関移動触媒を用いないで実施できる。相関移動触媒は、WO0302576号、WO0302577号、WO0302578号およびWO0302573号内で指定される触媒を意味すると理解できる。
【0018】
一般式Iのオルガノシランは、一般式Iのオルガノシランの混合物であってよい。
【0019】
n=2である一般式Iのオルガノシランは、異なる硫黄鎖長mを有する一般式Iのオルガノシランの混合物であってよい。
【0020】
n=2である一般式Iのオルガノシランは、以下であってよい: ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルファン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルファン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、

【0021】
n=1の一般式Iのオルガノシランは、以下であってよい:
3−メルカプトプロピル(トリメトキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジメトキシヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(トリエトキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジエトキシヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジエトキシメトキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(トリプロポキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジプロポキシメトキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジプロポキシヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(トリドデカノキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジドデカノキシヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(トリテトラデカノキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(トリヘキサデカノキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(トリオクタデカノキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、
3−メルカプトプロピル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、
3−メルカプトプロピル(ジメトキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(メトキシメチルヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(メトキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ヒドロキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジエトキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(エトキシヒドロキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(エトキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジプロポキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(プロポキシメチルヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(プロポキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジイソプロポキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(イソプロポキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジブトキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ブトキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジイソブトキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(イソブトキシメチルヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(イソブトキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジドデカノキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ドデカノキシジメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(ジテトラデカノキシメチルシラン)、
3−メルカプトプロピル(テトラデカノキシメチルヒドロキシシラン)、
3−メルカプトプロピル(テトラデカノキシジメチルシラン)、
2−メルカプトエチル(トリメトキシシラン)、
2−メルカプトエチル(トリエトキシシラン)、
2−メルカプトエチル(ジエトキシメトキシシラン)、
2−メルカプトエチル(トリプロポキシシラン)、
2−メルカプトエチル(ジプロポキシメトキシシラン)、
2−メルカプトエチル(トリドデカノキシシラン)、
2−メルカプトエチル(トリテトラデカノキシシラン)、
2−メルカプトエチル(トリヘキサデカノキシシラン)、
2−メルカプトエチル(トリオクタデカノキシシラン)、
2−メルカプトエチル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、
2−メルカプトエチル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、
2−メルカプトエチル(ジメトキシメチルシラン)、
2−メルカプトエチル(メトキシメチルヒドロキシシラン)、
2−メルカプトエチル(メトキシジメチルシラン)、
2−メルカプトエチル(ジエトキシメチルシラン)、
2−メルカプトエチル(エトキシジメチルシラン)、
2−メルカプトエチル(ヒドロキシジメチルシラン)、
1−メルカプトメチル(トリメトキシシラン)、
1−メルカプトメチル(トリエトキシシラン)、
1−メルカプトメチル(ジエトキシメトキシシラン)、
1−メルカプトメチル(ジエトキシヒドロキシシラン)、
1−メルカプトメチル(ジプロポキシメトキシシラン)、
1−メルカプトメチル(トリプロポキシシラン)、
1−メルカプトメチル(トリメトキシシラン)、
1−メルカプトメチル(ジメトキシメチルシラン)、
1−メルカプトメチル(メトキシジメチルシラン)、
1−メルカプトメチル(ジエトキシメチルシラン)、
1−メルカプトメチル(エトキシメチルヒドロキシシラン)、
1−メルカプトメチル(エトキシジメチルシラン)、
1,3−ジメルカプトプロピル(トリメトキシシラン)、
1,3−ジメルカプトプロピル(トリエトキシシラン)、
1,3−ジメルカプトプロピル(トリプロポキシシラン)、
1,3−ジメルカプトプロピル(トリドデカノキシシラン)、
1,3−ジメルカプトプロピル(トリテトラデカノキシシラン)、
1,3−ジメルカプトプロピル(トリヘキサデカノキシシラン)、
2,3−ジメルカプトプロピル(トリメトキシシラン)、
2,3−ジメルカプトプロピル(トリエトキシシラン)、
2,3−ジメルカプトプロピル(トリプロポキシシラン)、
2,3−ジメルカプトプロピル(トリドデカノキシシラン)、
2,3−ジメルカプトプロピル(トリテトラデカノキシシラン)、
2,3−ジメルカプトプロピル(トリヘキサデカノキシシラン)、
3−メルカプトブチル(トリメトキシシラン)、
3−メルカプトブチル(トリエトキシシラン)、
3−メルカプトブチル(ジエトキシメトキシシラン)、
3−メルカプトブチル(トリプロポキシシラン)、
3−メルカプトブチル(ジプロポキシメトキシシラン)、
3−メルカプトブチル(ジメトキシメチルシラン)、
3−メルカプトブチル(ジエトキシメチルシラン)、
3−メルカプトブチル(ジメチルメトキシシラン)、
3−メルカプトブチル(ジメチルエトキシシラン)、
3−メルカプトブチル(ジメチルヒドロキシシラン)、
3−メルカプトブチル(トリドデカノキシシラン)、
3−メルカプトブチル(トリテトラデカノキシシラン)、
3−メルカプトブチル(トリヘキサデカノキシシラン)、
3−メルカプトブチル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、
3−メルカプトブチル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリメトキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリエトキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジエトキシメトキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリプロポキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジプロポキシメトキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリドデカノキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリテトラデカノキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリヘキサデカノキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(トリオクタデカノキシシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジメトキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(メトキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジエトキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(エトキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ヒドロキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジプロポキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(プロポキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジイソプロポキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(イソプロポキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジブトキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ブトキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジイソブトキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(イソブトキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジドデカノキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ドデカノキシジメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(ジテトラデカノキシメチルシラン)、
3−メルカプト−2−メチルプロピル(テトラデカノキシジメチルシラン)、

【0022】

【0023】

【0024】

【0025】

【0026】
使用される式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシランは、好ましくは以下であってよい:
3−クロロブチル(トリエトキシシラン)、
3−クロロブチル(トリメトキシシラン)、
3−クロロブチル(ジエトキシメトキシシラン)、
3−クロロプロピル(トリエトキシシラン)、
3−クロロプロピル(トリメトキシシラン)、
3−クロロプロピル(ジエトキシメトキシシラン)、
2−クロロエチル(トリエトキシシラン)、
2−クロロエチル(トリメトキシシラン)、
2−クロロエチル(ジエトキシメトキシシラン)、
1−クロロメチル(トリエトキシシラン)、
1−クロロメチル(トリメトキシシラン)、
1−クロロメチル(ジエトキシメトキシシラン)、
3−クロロプロピル(ジエトキシメチルシラン)、
3−クロロプロピル(ジメトキシメチルシラン)、
2−クロロエチル(ジエトキシメチルシラン)、
2−クロロエチル(ジメトキシメチルシラン)、
1−クロロメチル(ジエトキシメチルシラン)、
1−クロロメチル(ジメトキシメチルシラン)、
3−クロロプロピル(エトキシジメチルシラン)、
3−クロロプロピル(メトキシジメチルシラン)、
2−クロロエチル(エトキシジメチルシラン)、
2−クロロエチル(メトキシジメチルシラン)、
1−クロロメチル(エトキシジメチルシラン)、または
1−クロロメチル(メトキシジメチルシラン)。
【0027】
(ハロオルガニル)アルコキシシランは、式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシランまたは式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシランの混合物であってよい。
【0028】
工程段階a)の作用物質、式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシランおよび硫化試薬を、溶剤または溶剤混合物内で共に、初めに充填し、反応できるか、または2つの作用物質の1つをそのままで、または溶液として第2の作用物質に計量導入する。第2の作用物質は、同様に、物質として、または溶液として存在してよい。本発明の方法の性能について、2つの作用物質のどれを最初に充填し、且つ、それを計量導入するかは、決定的ではないことがある。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、2つの作用物質、式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシランおよび硫化試薬を、有機溶剤または溶剤混合物中に初めに充填し、その後、反応させてよい。
【0030】
有機溶剤は、不活性な有機溶剤であってよい。有機溶剤は、エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンおよびジエトキシエタン、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールおよびエチレングリコール、および脂肪族または芳香族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンおよびキシレンであってよい。有機溶剤を、ケイ素原子上での不所望のエステル交換が除外されるように選択できる。好ましい有機溶剤は、アルコールであってよく、その場合、特に好ましい実施態様において、使用されるアルコールは、アルコキシシリル基内で結合されたアルコキシ基に相応する。より好ましくは、使用される有機溶剤は、式I内のOR’基の1つがエトキシ基である場合、エタノールであってよい。
【0031】
有機溶剤は、含水率≦35質量%、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜15質量%を有してよい。
【0032】
反応時間は、反応温度に依存することがある。反応温度が高いほど、式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシランと硫化試薬との完全な反応に必要とされる時間は恐らく短い。反応時間は、0.1〜10時間、好ましくは2時間〜5時間であってよい。
【0033】
硫化試薬M2gは、含水率≦10質量%、好ましくは≦5質量%、より好ましくは≦2質量%、最も好ましくは≦1質量%を有してよい。
【0034】
硫化試薬M2Sは、含水率≦70質量%、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%、最も好ましくは35〜40質量%を有してよい。
【0035】
硫化試薬MSHは、含水率≦80質量%、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、最も好ましくは30〜55質量%を有してよい。
【0036】
工程段階a)において、緩衝剤を添加できる。
【0037】
緩衝剤溶液を、オルガノシランの安定性のために最適なpH範囲内に保つ、工程段階a)の緩衝剤は、種類および濃度の点で、実質的に変化できる。使用される緩衝剤は、有機および無機の酸および塩基、およびそれらの塩であってよく、好ましくは、カルボン酸、リン酸、硫酸、C1〜C6−オルガノ−、モノ−またはポリカルボン酸の、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウム塩である。使用される緩衝剤は、例えばNaHCO3、Na2CO3、炭酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、硫酸一ナトリウム、硫酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジンおよびアニリンであってよい。それらの緩衝剤の組み合わせ、またはそれらの緩衝剤と他の緩衝剤、例えば酸または塩基との組み合わせも同様に使用できる。
【0038】
好ましい緩衝剤は、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムであってよい。
【0039】
緩衝剤は、出発混合物に対して、濃度0.1〜80質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、最も好ましくは0.1〜5質量%で存在してよい。
【0040】
緩衝剤を、有機溶剤、または作用物質の1つと共に添加できる。
【0041】
工程段階a)における温度は、20〜120℃、好ましくは50〜70℃であってよい。
【0042】
工程段階a)を、攪拌ユニットを備えた反応器内で行うことができる。
【0043】
工程段階a)において、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせ、例えばn−アルキルベンゼンスルホネートと脂肪アルコールエーテルスルフェートとの混合物、およびエタノールを使用することが可能である。
【0044】
有機溶剤を、工程段階b1)またはb2)において、懸濁液から蒸留によって除去できる。有機溶剤は、水との共沸物を形成してよい。除去される有機溶剤は、水を含んでよい。
【0045】
固相を、工程段階b1)またはb2)において、液相から濾過、遠心分離、デカンテーション、沈殿、抽出圧縮または液相の吐出によって分離できる。ろ過のために、圧力式ろ過器、真空ろ過器、デカンター、またはフィルター遠心分離器を好ましく使用できる。
【0046】
工程段階c)において添加される水の量は、固相に対して、1質量%〜400質量%、好ましくは1質量%〜200質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%であってよい。工程段階c)において添加される水の量を、固相の一部だけが溶解されるように選択できる。工程段階c)において添加される水の量は、存在する固相の量よりも少なくてよい。
【0047】
工程段階c)における水の添加を、0〜100℃、好ましくは10〜80℃、より好ましくは10〜30℃の温度で行うことができる。
【0048】
水の添加後に形成する相は、0.1秒〜10日間、好ましくは10秒〜10時間以内の待機時間後に形成できる。
【0049】
工程段階c)において随意に添加される界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、例えばアルキルスルフェートまたはアルキルベンゼンスルホネート、カチオン性界面活性剤、例えばテトラアルキルアンモニウム塩、両性界面活性剤、例えば四級アンモニウム基とCOOH基との化合物、および非イオン性界面活性剤、例えば脂肪アルコールポリグリコールエーテルまたはアルキルポリグリコシドであってよい。
【0050】
界面活性剤は、脂肪アルコールエトキシレート、ポリアクリル酸および/またはそれらの誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、レシチン、リグノスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホン酸誘導体を含有するコポリマー、マレイン酸無水物および/またはマレイン酸誘導体を含有するコポリマー、アルコール、エーテルまたは前述の界面活性剤の組み合わせであってよい。
【0051】
使用される界面活性剤は、好ましくはアニオン性界面活性剤、例えばn−アルキルベンゼンスルホネートまたは脂肪アルコールエーテルスルフェート、非イオン性界面活性剤、例えばアルコール、好ましくはエタノール、またはアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせであってよい。
【0052】
水中の界面活性剤濃度は、0〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%であってよい。
【0053】
相分離(工程段階b1)またはb2))後に得られた固相を、工程段階c)において、初めに水と、その後に界面活性剤と混合してよい。
【0054】
相分離(工程段階b1)またはb2))後に得られた固相を、工程段階c)において、初めに界面活性剤と、その後に水と混合してよい。
【0055】
相分離(工程段階b1)またはb2))後に得られた固相を、工程段階c)において、水/界面活性剤混合物と混合してよい。
【0056】
水の代わりに、塩水溶液を使用することも可能である。該塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩および/またはリン酸塩、またはそれらの混合物、好ましくは塩化ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムであってよい。
【0057】
有機相を、工程段階d)においてろ過、遠心分離、沈殿、デカンテーション、または抽出圧縮によって除去することができる。有機相と同時に、水および塩からなる水相が形成することがある。塩溶液を、工程段階c)において水の代わりに使用できる。
【0058】
工程段階c)およびd)を、同時に実施できる。
【0059】
本発明による方法の利点は、収率を著しく高められることである。
【0060】
実施例:
実施例1:
a) 200kgのクロロプロピルトリエトキシシランを、36kgの硫黄、および結晶水を含有する50kgの硫化ナトリウム(含水率=37質量%)と、15kgの炭酸水素ナトリウムおよび80kgのエタノール−水混合物(15質量%の水)の存在下で反応させ、生成物をもたらす。
【0061】
b1) 引き続き、溶剤を蒸留によって懸濁液から除去する。
【0062】
次の固体−液体分離を、フィルター遠心分離器を用いて行う。液相は、206kgのビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン生成物を含有する。
【0063】
c) 固体−液体分離から得られた70kgの固体を、70kgの界面活性剤/水混合物と混合する。水中の界面活性剤の濃度は0.3質量%である。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との混合物である。アニオン性界面活性剤は、ナトリウムn−アルキルベンゼンスルホネートと脂肪アルコールエーテスルフェートとの混合物である。非イオン性界面活性剤はエタノールである。
【0064】
d) 生じる懸濁液を、フィルター遠心分離器に供給する。ろ液は相分離され、且つ、5.2kgの有機相を含有する。
【0065】
15kgをろ液の水相から取り、再度、遠心分離器に(水を再度添加せずに)供給する。これにより、さらに1.9kgの有機相を含有するろ液がもたらされる。
【0066】
ろ液の水相から15kgをさらに添加後、新たな0.3kgの有機相が得られる。
【0067】
工程段階d)で得られた有機相(合計7.4kg)を蒸留した後、6.5kgの生成物が得られる。性能試験は、このように得られた生成物が、標準的な生成物から見分けがつかないことを示す。
【0068】
該実験は、オルガノシランを、工程段階b1)からの固体から、固体を完全に溶解せずに除去できることを示す。
【0069】
工程段階b1)後の、出発材料に対する収率は、理論値の94%であり、且つ、工程段階c)およびd)の性能によって理論値の97%まで増加できる。
【0070】
実施例2:
実施例1の工程段階b1)からの固体をそれぞれ100g、種々の量の水および湿潤剤濃縮物と、工程段階c)において混ぜ、そして5分間混合する。引き続き、セパレータ遠心分離器を用いて、懸濁液をその相に分離する(工程段階d))。以下の表1は、種々の混合物および有機相の外見を示す。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
Rは同一あるいは異なり、且つ、C1〜C8−アルキル、C1〜C8−アルケニル、C1〜C8−アリール、C1〜C8−アラルキル基、またはOR’基であり、
R’は同一あるいは異なり、且つ、C1〜C24−分枝または非分枝の一価アルキルまたはアルケニル基、アリール基、アラルキル基、水素(−H)、アルキルエーテル基 O−(CRIII2)−O−アルクまたはO−(CRIII2y−O−アルクまたはアルキルポリエーテル基 O−(CRIII2O)y−アルクまたはO−(CRIII2−CRIII2−O)y−アルク、前記y=2〜20、RIIIは独立してHまたはアルキル基、およびアルクは分枝または非分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族、または脂肪族/芳香族混合の、一価のC1〜C30−炭化水素であり、
R’’は分枝または非分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族または脂肪族/芳香族混合の、二価のC1〜C30−炭化水素基であり、随意にF、Cl、Br、I、HS、NH2またはNHR’によって置換されており、
nは1または2であり、
n=2である場合、X=Sであり、且つ、mは1.5〜4.5の平均硫黄鎖長であり、且つ
n=1の場合、X=SHであり、且つm=1である]
のオルガノシランの製造方法であって、
a) 式IIの(ハロオルガニル)アルコキシシラン
【化2】

[式中、
R、R’およびR’’はそれぞれ上記に定義された通りであり、且つ、Halは塩素、臭素、フッ素またはヨウ素である]
を、アルカリ金属硫化水素、金属硫化物M2S、金属多硫化物M2g、およびそれらの任意の所望の組み合わせ (前記Mはアルカリ金属、アンモニウムまたは(アルカリ土類金属)1/2、且つg=1.5〜8.0)の群から選択される硫化試薬と、および随意に、追加的に硫黄と、および/またはH2Sと、有機溶剤中で反応させ、
b1) 引き続き、形成する懸濁液から有機溶剤を除去し、且つ、式Iのオルガノシランを含む液相、およびMXと式Iの残留オルガノシランとを含む固相を、残留懸濁液から分離するか、または
b2) 引き続き、式Iのオルガノシランと有機溶剤と含む液相、およびMXと式Iの残留オルガノシランとを含む固相を、形成する懸濁液から分離し、且つ、有機溶剤を液相から除去し、
c) MXと式Iの残留オルガノシランとを含む固相を、水と混合し、且つ、
d) 一般式Iのオルガノシランを含む、形成する有機相を除去することを特徴とする、オルガノシランの製造方法。
【請求項2】
工程段階a)において、緩衝剤を使用することを特徴とする、請求項1に記載のオルガノシランの製造方法。
【請求項3】
工程段階c)において、界面活性剤を添加することを特徴とする、請求項1または2に記載のオルガノシランの製造方法。
【請求項4】
工程段階c)およびd)を、1回より多く、連続して実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のオルガノシランの製造方法。

【公表番号】特表2012−520830(P2012−520830A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500035(P2012−500035)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/CN2009/070912
【国際公開番号】WO2010/105434
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】