説明

オルガノシロキサン誘導体

【課題】化粧料として有用な、又洗浄剤として使用した場合に優れた洗浄効果及び泡立ち性を付与し得る優れた撥水性を有する表面改質剤として使用可能なオルガノシロキサン誘導体の提供。
【解決手段】下記一般式(1)に示されるオルガノシロキサン誘導体。


(式中、R,R,R,Rは、同一又は異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Mは水素原子,金属原子又は有機陽イオンである。Rは、C2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rは4〜48の整数である。AはC2qで表される直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。pは1以上である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片末端がカルボン酸又はカルボン酸塩であるオルガノシロキサン誘導体、特に該化合物を主剤とする表面処理剤、該化合物と高級アルコールと水とからなるゲル組成物、及び該化合物と脂肪酸石ケン等のアニオン性界面活性剤とを含有する洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコーンオイルを代表するジメチルポリシロキサン固有の特性を生かし、構造の一部に様々な有機基を導入したオルガノ(ポリ)シロキサンの開発がなされている。オルガノ(ポリ)シロキサンは、低表面張力、低屈折率を有し、さらに低摩擦性、耐熱性、耐寒性、帯電防止性、撥水性、離型性、消泡性、耐薬品性等の特性を併せ持つために、様々な分野において利用されている。用途に応じて、各種官能基およびそれらを導入する構造上の位置が変性されたオルガノ(ポリ)シロキサンが存在する。
【0003】
例えば、変性タイプとしてオルガノシロキサンの分子内にカルボキシル基が導入されたものが創製されている。カルボキシル基が金属塩の形態で存在したカルボン酸多価金属塩変性オルガノシロキサンは、脂肪酸の金属塩、すなわち金属石鹸と類似の構造を有する。既存の金属石鹸としては、例えばつや出し剤、撥水剤、潤滑剤として粉末の表面処理や口紅の耐光性のために利用されるステアリン酸カルシウム、つや出し剤、離型剤、安定剤としてW/O型クリームの使用感や安定性の向上のために利用されるステアリン酸亜鉛、潤滑剤としてのミリスチン酸亜鉛、潤滑剤、撥水剤、安定剤としてW/O型クリームの油浮き防止、ワックスのゲル化剤、表面美化剤として利用されるステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの金属石鹸は、製品に配合した場合の撥水性、耐薬品性、低摩擦性などの求められる機能が十分とは言えず、開発の余地が残るものであった。一方で、これらの欠点を改善するものとして、前述のカルボン酸多価金属塩変性オルガノシロキサンが、繊維処理剤、乳化剤、無機材料の表面改質剤や、エポキシ樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの各種樹脂の改質剤として有用されている。
【0005】
具体的には、ジメチルポリシロキサンを基本骨格として、その側鎖または片末端にカルボキシル基が導入されたオルガノシロキサンによって粉体を処理し、撥水性を持たせて化粧料に配合する技術(例えば、特許文献1を参照)、また片末端カルボキシル基変性オルガノシロキサンを用いた経皮吸収促進剤等である(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
さらに、カルボキシ変性オルガノシロキサンの製造工程において、末端水酸基と酸無水物を反応させることによって、より短い工程を経由して末端に酸無水物構造由来のカルボキシル基を有する化合物が得られる技術がある(例えば、特許文献3を参照)。
【0007】
しかしながら、前述のカルボキシ変性オルガノシロキサンは、いずれも主にジメチルポリシロキサンを基本骨格とし、片末端にはカルボキシル基を有しながら、もう一方の片末端の官能基変性は実質なされていないものであった。そこで、従来のカルボキシ変性オルガノシロキサンに対してさらに有機変性を施すことにより、カルボキシ変性オルガノシロキサンが有する特性の改善が望まれていた。
【0008】
また、従来、親水性の有機基を導入したオルガノポリシロキサン(例えば、ポリオキシエチレン・ポリシロキサン共重合体等)は、シロキサン部位の有する疎水性と併せて親水性部−疎水性部の両者を兼ね備えており、優れた界面活性能を示すことから、シリコーン系の界面活性剤として、特に化粧料の分野で汎用されている。
【0009】
一方で、化粧料の分野では、従来、界面活性剤/高級アルコール/水の系でゲル構造を形成することが知られており(例えば、非特許文献1参照)、ゲル構造の崩壊等によって優れた使用感触を付与した化粧料の開発が進められている。しかしながら、従来のゲル組成物は、いずれも比較的リジッドなゲル構造を形成してしまう等の問題があり、使用感触の点で必ずしも満足のいくものが得られてなかった。そこで、シリコーン系の界面活性剤を使用することによって、なじみやべたつき等、さらに使用感触を改善する効果が期待されるものの、従来のシリコーン系界面活性剤においては、界面活性剤/高級アルコール/水系でゲル構造を形成するものは未だ知られていない。
【0010】
また、従来の皮膚洗浄料あるいは頭髪洗浄料においては、通常、アニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤が洗浄剤の主成分として配合されている。これに対して、ほとんどのメーキャップ製品、ヘアワックス等には、化粧持ちや耐水性、すべりや滑らかさを付与する目的でシリコーン化合物が配合されており、洗浄剤として通常の界面活性剤を用いた場合、これらのシリコーン化合物を充分に洗い落とすことができないという問題があった。これに対して、シリコーン油を配合したり、シリコーン系の界面活性剤を用いることによって、洗浄効果は高まるものの、その消泡作用により泡立ちが非常に悪いという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特許第3450541号公報
【特許文献2】特開平5−13997号公報
【特許文献3】特開2001−172390号公報
【非特許文献1】福島正二著,「セチルアルコールの物理化学」,フレグランスジャーナル社,第6章,76〜88頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述の事情に鑑み行われたものであり、その課題は、従来のカルボキシ変性オルガノシロキサンにさらに有機変性を付加することによって得られる有機変性オルガノシロキサン誘導体、特に優れた撥水性を有する表面改質剤として使用可能なオルガノシロキサン誘導体、オルガノシロキサン誘導体/高級アルコール/水系においてゲル構造を形成し、化粧料として有用なオルガノシロキサン誘導体、及び洗浄剤として使用した場合に優れた洗浄効果及び泡立ち性を付与し得るオルガノシロキサン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を達成するために本発明者等が鋭意研究を行った結果、片末端にカルボキシル基、もう片末端に炭素数6以上の長鎖アルキル基を有するオルガノシロキサン誘導体に、表面処理剤としての優れた特性改善、すなわち優れた撥水性があることを見出した。また、このオルガノシロキサン誘導体が、オルガノシロキサン誘導体/高級アルコール/水系でゲル構造を形成することを見出した。さらに、このオルガノシロキサン誘導体の金属塩又は有機陽イオン塩と、脂肪酸石ケン等のアニオン界面活性剤とを組み合わせて配合することにより、洗浄効果に優れるとともに、泡立ち性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記一般式(1)で示されるオルガノシロキサン誘導体を提供するものである。
【化1】


(式中、R,R,R,Rは、同一又は異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Mは水素原子,金属原子又は有機陽イオンである。Rは、C2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rは4〜48の整数である。AはC2qで表される直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。pは1以上である。)
前記オルガノシロキサン誘導体において、一般式(1)中、RがC2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rが10から48の整数であることが好適である。
また、前記オルガノシロキサン誘導体において、一般式(1)中、pが1であることが好適である。
【0014】
また、本発明は前記オルガノシロキサン誘導体を主剤として含む表面処理剤を提供するものである。
また、本発明は前記オルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とからなるゲル組成物を提供するものである。
また、本発明は前記オルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とを含有する化粧料を提供するものである。
さらに、本発明は前記オルガノシロキサン誘導体において、一般式(1)中、Mが金属原子又は有機陽イオンであるオルガノシロキサン誘導体塩と、炭素数10〜20のアルキル基を有するカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤とを含有する洗浄料を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カルボキシ変性オルガノシロキサンの片末端に、長鎖アルキル基が導入されたオルガノシロキサン誘導体が得られ、該化合物の金属塩を表面処理剤の主剤として用いた場合には、優れた撥水性を有する表面改質を達成することができる。また、このオルガノシロキサン誘導体は、オルガノシロキサン誘導体/高級アルコール/水系でゲル構造を形成することができ、例えば、化粧料として優れた使用感触を実現することができる。また、このオルガノシロキサン誘導体と、脂肪酸石ケン等のアニオン界面活性剤とを組み合わせて用いることにより、優れた洗浄効果と、良好な泡立ち性とを兼ね備えた洗浄料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、以下に詳細に説明する。
オルガノシロキサン誘導体
本発明のオルガノシロキサン誘導体は、下記一般式(1)で示されるものであるが、さらに具体的に説明する。
【化2】

【0017】
まず、式中、R,R,R,Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基のいずれかから選択され、同一であっても異なっていてもよい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、などの直鎖状、分岐状あるいは環状のアルキル基が挙げられる。本発明においては、R,R,R,Rがいずれもメチル基であることが特に好ましい。
【0018】
また、式中のpはジ置換ポリシロキサンの平均重合度を示し、1以上であれば特に限定されるものではない。本発明のオルガノシロキサン誘導体の重量平均分子量も特に限定されるものではないが、好ましくは1〜3である。pが1であると、表面処理剤として用いた場合に撥水性に極めて優れており、特に好ましい。
【0019】
式中のAは、C2qで表される直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数であることを特徴とする。本発明においては、qが2〜10の整数であることがより好ましい。qが20を超えてもさらなる効果の向上は見られない。
【0020】
また、式中のRは、C2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rは4〜48の整数であることを特徴とする。本発明においては、rが10〜48の整数であることがより好ましい。rが4未満であると、表面処理剤として用いた場合に撥水性が劣る場合があり、また48を超えてもさらなる効果の向上はみられない。
【0021】
さらにMは水素原子,金属原子又は有機陽イオンである。金属原子としては、1価のアルカリ金属、2価のアルカリ土類金属、2価以上の金属原子が挙げられる。1価のアルカリ金属としては、Li,Na,Kが、2価のアルカリ土類金属としては、Mg,Ca,Baが、その他にはMn,Fe,Co,Al,Ni,Cu,V,Mo,Nb,Zn,Ti等が挙げられる。また、有機陽イオンとしては、アンモニウムイオン、アミノメチルプロパノール(AMP)中和イオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリイソプロパノールアンモニウムイオン、L−アルギニン中和イオン、L−リジン中和イオン等が挙げられる。本発明のオルガノシロキサン誘導体を主剤として含む表面処理剤として用いる場合、MはCa,Zn,Mg,Alのいずれかであることが特に好ましい。
【0022】
次に、本発明のオルガノシロキサン誘導体の製造方法について詳述する。
上記一般式(1)で表される化合物のうち、p=1である化合物は以下に示す反応により製造される。
【化4】


なお、上記反応において、R及びAは、前記同様の定義を意味し、Pはカルボン酸の保護基を意味する。
【0023】
上記反応の工程(i)において、化合物(a)は1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンであり、公知の方法(例えば、特開昭49−124032号公報)により合成することができる。
化合物(b)は、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのSi−H部位と化合物(c)の存在下で付加反応をすることにより、オルガノシロキサンの官能基として導入される。化合物(b)は、炭素−炭素二重結合を分子末端に有する化合物である。式中のRは、C2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rは4〜48の整数であることを特徴とする。本発明においては、rが10〜48の整数であることがより好ましい。従って、化合物(b)としては、炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であることが好ましく、より好ましくは、炭素原子数12〜50のα−オレフィン化合物である。また、該α−オレフィン化合物は直鎖状または分岐鎖状であるが、直鎖状であることが特に好ましい。具体的には、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等が例示される。
【0024】
上記反応の工程(i)における化合物(a)、(b)、(c)の混合物中、化合物(b)/化合物(a)のモル比は、0.05〜0.4の範囲にあることが好ましく、0.1〜0.3であることがより好ましく、特に好ましくは0.15〜0.25である。前記下限値未満では、未反応の化合物(a)が大量に系中に残存してしまい、後の工程(ii)において反応が効率的に進行しない傾向にあるため好ましくない。また前記上限値を超えると、化合物(a)の両末端のSi−H部位が、化合物(b)と反応して得られる副生成物が大量に合成されてしまい、望む反応が効率的に進行しないため好ましくない。
【0025】
化合物(c)は、ヒドロシリル化反応触媒であり、工程(i)においては、化合物(a)および化合物(b)の付加反応を促進するための触媒であり、後述する工程(ii)においても化合物(d)および化合物(e)の付加反応を促進するための触媒として機能する。該化合物(c)としては、例えば白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が挙げられ、好ましくは白金系触媒である。この白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のケトン錯体、白金のビニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末が例示され、好ましくは、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体または塩化白金酸である。
【0026】
さらにこれらのヒドロシリル化触媒は、非反応性有機溶媒に分散させて系中に添加することが好ましい。イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤に分散させ、系中に滴下することが好ましい。最も好ましくは、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液を系中に滴下して使用することである。滴下に要する時間は、反応のスケールによって異なるが、急激な反応を防止する見地から0.5〜5時間をかけて一定量ずつ滴下することが好ましい。化合物(c)の添加量は、触媒の有効量であれば特に限定されないが、化合物(b)の質量に対して化合物(c)中の触媒金属が重量単位で0.1〜1,000ppmの範囲以内となる量であることが好ましい。特に0.5〜100ppmの範囲以内となる量であることが好ましい。
【0027】
前記工程(i)では、目的とするオルガノシロキサン誘導体の種類に応じて、有機溶媒を用いても用いなくてもよい。有機溶媒を使用する場合は、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジオキサン、THF等のエーテル系溶剤;脂肪族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、塩素化炭素系溶剤を用いることが好ましい。また、前記工程(i)では、反応温度、反応時間は限定されないが、通常50〜150℃の範囲以内であり、反応時間は0.5〜5時間である。
【0028】
工程(i)終了後、得られた化合物(d)から、未反応の化合物(a)を減圧下で留去することが好ましい。他のポリシロキサン類に比して低分子量、低沸点である、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(a)に1の官能基を付加反応により導入することにより、修飾後のオルガノシロキサンの沸点が原料の沸点よりも上昇するため、系中の未反応の化合物(a)を効率よく留去することができる。この時点で、未反応化合物(a)を留去しておくことにより、後の工程(ii)において、副反応を極力回避することが可能となる。減圧留去の方法は、公知の方法を採用すればよい。具体的には、減圧蒸留装置として、薄膜蒸留装置、エバポレーター、高度真空ポンプを用いて、温度40〜160℃、圧力0.1〜100mmHgの条件下でストリッピングを行う方法が挙げられる、減圧留去の条件は、反応のスケールによって適宜変更され、1回のストリッピングまたは繰り返しのストリッピングによって未反応の化合物(a)が留去される。なお、ストリッピングに要する時間は、通常2〜10時間である。
【0029】
続いて前記工程(ii)について説明する。工程(i)で得られた化合物(d)と化合物(e)を、系中に残存する化合物(c)の存在下で付加反応させることにより、化合物(f)を生成する工程である。
化合物(e)は、炭素−炭素二重結合を分子末端に有する化合物であり、式中のAは、C2qで表される直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数であることを特徴とする。本発明においては、qが2〜10の整数であることがより好ましい。また、Pは、カルボン酸の保護基であり、特に限定されるものではないが、後の工程(iii)のPの脱保護反応が効率よく行える範囲で適宜選択されることが好ましい。本発明においては、PがSiRであることが好ましく、すなわち以下の一般式(2)に表される化合物に相当することが好ましい。
【化5】

【0030】
ここで、式中のRは、脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、アルキル基とアリール基が代表的であり、アラルキル基も例示される。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。Rとしては、メチル基またはフェニル基が一般的である。
【0031】
工程(ii)において、使用する化合物(e)の量は、化合物(b)に対して小過剰量であることが好ましい。すなわち、化合物(b)/化合物(e)のモル比が、0.85〜0.95であることが好ましい。該モル比が前記上限値を超えると、工程(ii)の付加反応における化合物(e)が不十分となり、また前記下限値未満であると、未反応の化合物(e)が系中に過剰に残存する。
【0032】
工程(ii)終了後、得られた化合物(f)から未反応の化合物(e)を減圧下で留去することが好ましい。未反応の化合物(e)を低沸分として系中から留去し、生成物(f)を精製する目的で行う操作である。減圧留去の方法は、公知の方法を採用すればよい。具体的には、減圧蒸留装置として、薄膜蒸留装置、エバポレーター、高度真空ポンプを用いて、温度100〜250℃、圧力0.1〜100mmHgの条件下でストリッピングを行う方法が挙げられる、減圧留去の条件は、反応のスケールによって適宜変更され、1回のストリッピングまたは繰り返しのストリッピングによって未反応の化合物(a)が留去される。なお、ストリッピングに要する時間は、通常2〜10時間である。
【0033】
次に工程(iii)について説明する。上記工程(ii)で得られた化合物(f)の末端がP基で保護されている場合、加水分解または脱保護を行うことによって、本発明にかかるオルガノシロキサン誘導体へと変換することができる。
加水分解操作は、特に限定されるものではないが、加水分解性基Pを有する化合物(f)1モルあたり、少なくとも1モルの水を使用して、50〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度条件で、水と加水分解性基Pを有する化合物(f)とを混合攪拌することが一般的である。反応時間は、反応スケールおよび加水分解性基Pの反応性に依存するが、通常1〜6時間である。
【0034】
また、Pの脱保護操作は特に限定されるものではないが、ジシロキサンに導入した官能基の保護基がトリオルガノシリル基(RSi−基、Rは置換または非置換の一価炭化水素基であり、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、より好ましくはメチル基またはフェニル基である)である場合、加アルコール分解によって脱保護することができる。加アルコール分解による脱保護操作は、化合物(g)1モルあたり、少なくとも1モルのメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、フェノール等の1価のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールからなる群から選択される。1種類以上のアルコール類を使用して、50〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度条件で加熱還流しながらアルコキシシランとともに生成する水、アルコール類を減圧留去する方法、または水共沸溶媒添加等の手段により、アルコキシシランとともに生成する水の除去を行うことが好ましい。また、公知の水吸着剤としてゼオライト(モレキュラーシーブズ)、シリカゲル、活性アルミナ等を用いることができ、水共沸溶媒としては、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、1,4−ジオキサン等が好ましく用いられる。
副生成物の留去操作を含め、該脱保護反応完了に要する時間は、反応のスケールや、保護基の反応性に依存するが、通常1〜60時間である。
【0035】
本発明にかかる、前記一般式(1)で表されるオルガノシロキサン誘導体のうち、式中のpが2以上である場合の化合物の製造方法は、前記工程(i)における化合物(a)に代わって、下記一般式(3)に表される化合物を用いる他は、p=1の場合と同様に製造することができる。
【化6】

【0036】
上記一般式(3)で表される任意鎖長の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オルガノハイドロジェンシロキサンと低重合度の環状オルガノシロキサンを強酸触媒の存在下で平衡重合反応させることによって得ることができる。具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと低重合度の環状ジメチルシロキサンを強酸触媒と共に加熱し、シロキサン結合の開裂と再結合を含む平衡重合反応により得ることができる。前記低重合度の環状ジメチルシロキサンは特に制限されるものではないが、3〜20のシロキサン単位からなる環状ジメチルシロキサンが一般的に用いられる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(重合度(D)3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)等が挙げられ、これらの環状ジメチルシロキサンを一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0037】
前記強酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、活性白土(酸性ケイ酸アルミニウム粘土)、塩化鉄、ホウ酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。また平衡重合反応は、常温または加温して行うことができる。反応の一例として、例えば、50〜60℃の温度にて5〜6時間平衡重合反応を行い、完全に反応したことを確認した後、生成物のろ過または反応系内の触媒を中和することによって平衡重合反応を停止させる。その後、副生した揮発性直鎖状あるいは環状シロキサン類をストリッピングにより除去することによって、目的の上記一般式(3)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを製造することができる。
【0038】
本発明にかかる前記一般式(1)で表されるオルガノシロキサン誘導体は、前記の製造方法により、片末端がカルボン酸として得られるものであるが、カルボン酸金属塩又は有機陽イオン塩とすることも可能である。例えば、片末端がカルボン酸の構造を有するオルガノシロキサン誘導体を1%水酸化ナトリウム水溶液中でナトリウム塩と変換した後、望む金属塩の塩化物の水溶液、あるいはトリエアノールアミン等の塩基性有機化合物の水溶液を添加して塩交換を行い、本発明にかかるオルガノシロキサン誘導体の金属塩あるいは有機陽イオン塩を得ることができる。なお、金属塩あるいは有機陽イオン塩の処理方法は、これに限定されるものではない。
【0039】
表面処理剤
以上のようにして得られるオルガノシロキサン誘導体は、本発明において表面処理剤として用いることができる。
また、本発明のオルガノシロキサン誘導体を主剤とした表面処理剤とは、表面処理剤中に該化合物を1質量%以上含むものを意味する。該表面処理剤は、本発明のオルガノシロキサン誘導体を単独で用いる場合、及び他の成分の1種以上と混合して用いる場合の両者を含む。
表面処理剤として用いる場合、電気、電子、自動車、機械、医薬、化粧品、繊維、紙、パルプ、建材、塗料等の様々な分野での利用が可能である。本発明においては、粉体、特に一般に化粧品に用いられる粉体に対する表面処理剤として用いることが好ましい。
【0040】
前記粉体としては、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミクスパウダー等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
本発明においては、これらの粉体の1種または2種以上を混合して、本発明のオルガノシロキサン誘導体を用いて表面処理を行うことも可能である。
【0041】
本発明のオルガノシロキサン誘導体を用いて粉体の表面処理をする場合、その処理方法は、例えば以下のような乾式法と湿式法の2種類によって実施される。ただし、これらに限定されるものではない。
処理方法1:乾式法
下記の式(4)で表される本発明のオルガノシロキサン誘導体を前述の金属塩処理方法によって、オルガノシロキサンのCa塩を調製した。その後、タルク15g、前記オルガノシロキサンのCa塩5gを粉砕混合する。
【化7】

【0042】
処理方法2:湿式法
タルク100g、1%水酸化ナトリウム水溶液38.2gおよび水1Lを混合して、ペラを用いて分散させた後、上記化学式(2)で表される本発明のオルガノシロキサン誘導体5g、1%塩化カルシウム水溶液159mlを順次添加して混合物を分散させた。ここまでの反応は、70℃にて行った。その後、ろ過により表面処理された粉体を単離し、水洗、乾燥し(105℃、12時間)、粉砕機を用いて粉砕した。
【0043】
本発明においては、上述の湿式法による表面処理がより好ましく採用される。湿式法において、その混合温度は60〜80℃であることが好ましい。また、混合時間は、処理量、粉体の種類によって異なるが、通常1〜3時間であることが好ましい。
【0044】
本発明のオルガノシロキサン誘導体を用いて、粉体の表面処理を行う場合、その処理量は、粉体の種類によって異なるが、通常未処理粉体の1〜50質量%であることが好ましい。1質量%よりも少ないと、表面処理による撥水性及び/又は滑沢性が十分に発揮されない場合がある。また、50質量%を超えて処理すると、粉体が本来有する特性を損なう場合があるので好ましくない。
【0045】
本発明のオルガノシロキサン誘導体によって、粉体を表面処理すると撥水性、滑沢性に優れ、表面処理粉体を化粧品に配合した場合には、皮膚上でののび、付き、撥水性に優れたものとすることができる。化粧品に配合する場合、ファンデーション、アイシャドウ、アイブロウ、頬紅などのメーキャップ化粧料、ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディ化粧品、乳液、化粧水等などがその対象として挙げられる。
また、化粧料に該表面処理粉体を配合する場合、その配合量は、各種化粧料に合わせて適宜決定されるが、化粧料組成物中2〜80質量%配合することが好ましい。
【0046】
ゲル組成物
また、本発明のオルガノシロキサン誘導体は、オルガノシロキサン誘導体/高級アルコール/水系でゲル構造を形成することができる。ここで、本発明におけるゲル構造とは、界面活性剤が形成する会合体構造の1種であって、長周期構造において界面活性剤及び高級アルコールの2分子膜が層状に配列しており、また、短面側では界面活性剤及び高級アルコールの疎水性基が六方晶型に配列していることを特徴とした結晶構造である。なお、疎水性基は自身の長軸の周りを回転しているが、液晶構造のように自由に熱運動はしておらず、また、親水性基間には多量の水が存在していることが知られている(例えば、福島正二著,「セチルアルコールの物理化学」,フレグランスジャーナル社,第6章,76〜88頁参照)。なお、このようなゲル構造を有する組成物は、独特な使用感触を有することが知られており、特に化粧料の分野において、例えば、クリームやクレンジング、化粧水等に広く利用されている。
【0047】
したがって、本発明においては、前記オルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とからなるゲル組成物として使用することができる。
なお、本発明においてゲル組成物とは、系の内部にゲル構造を有する組成物であることを意味する。ゲル構造の有無の決定は、従来公知の方法によって行えばよく、例えば、X線回折法により行うことができる。ゲル構造を有する組成物についてX線回折測定を行った場合、通常、小角領域においてラメラ構造と同様の長面間隔に由来する繰り返しのピークが得られるとともに、広角領域において2θ=21.4°付近に短面側の六方晶系に由来するシャープな単一のピークが示される。また、DSC測定によれば、ゲル構造を含む結晶構造の融解に伴う吸熱ピークが観測され、これによって結晶構造の推定を行うことも可能である。
【0048】
また、本発明に用いられる炭素数10〜30の一価脂肪族アルコール(以下、単に高級アルコールという場合がある)は、飽和又は不飽和の1価脂肪族アルコールであって、直鎖状、分岐状のいずれであっても構わないが、直鎖状であることがより好ましい。また、融点40℃以上の高級アルコールであることが好ましい。融点が40℃未満であるとゲル構造を形成できない場合がある。本発明に用いられる炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、キミルアルコール、コレステロール、シトステロール、セタノール、セトステアリルアルコール、セラキルアルコール、デシルテトラデカノール、バチルアルコール、フィトステロール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール等を挙げることができる。なお、本発明においては、単独で融点40〜80℃の高級アルコールを用いるか、あるいは融点が40〜70℃となるように複数の高級アルコールの組み合わせを用いることが好ましい。
【0049】
化粧料
また、本発明のオルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とをともに化粧料中に配合することによって、化粧料製剤中でゲル構造を形成し、これによって、例えば、クリームやクレンジング、化粧水や乳液等の化粧料として用いた場合に、特にヌルつきの無さ、肌なじみの早さ、べたつきの無さといった点で優れた使用感触を付与することができる。
このため、本発明においては、前記オルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とを含有する化粧料として使用することができる。
【0050】
本発明の化粧料へのオルガノシロキサン誘導体の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、組成物全量0.1〜5質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%、さらに好ましくは0.3〜1質量%である。オルガノシロキサン誘導体の配合量が少なすぎると、配合による効果が得られず、また、配合量が多すぎると、使用感触に悪影響を及ぼす場合がある。
【0051】
本発明の化粧料への炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールの配合量は、特に限定されるものではないが、通常、組成物全量0.1〜10質量%であり、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜2質量%である。炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールの配合量が少なすぎると、配合による効果が得られず、また、配合量が多すぎると、使用感触に悪影響を及ぼす場合がある。
【0052】
本発明の化粧料においては、本発明の効果を損なわない質的・量的な範囲内で、上記の必須成分に加えて、通常の化粧品、医薬品分野で用いられるその他の成分、例えば、油分、ワックス、保湿剤、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤、金属石鹸、水溶性高分子、油溶性高分子、薬剤、酸化防止剤、顔料、染料、パール剤、ラメ剤、有機・無機粉末、香料等を必要に応じて配合することができる。
【0053】
本発明の化粧料の使用用途は、特に限定されるものではなく、例えば、保湿クリーム、保湿乳液、保湿ローション、マッサージクリーム、マッサージローション、エッセンス等のスキンケア化粧料、へアクリーム、ヘアローション、整髪料等のヘアケア化粧料、サンスクリーン、ボディクリーム、ボディローション等のボディケア化粧料、口紅、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、液状ファンデーション、ゲル状ファンデーション等のメーキャップ化粧料等、種々の化粧料に利用することができる。
【0054】
洗浄料
また、上記一般式(1)中、Mが金属原子又は有機陽イオンであるオルガノシロキサン誘導体塩と、脂肪酸石ケン等のアニオン界面活性剤とをともに洗浄料中に配合することによって、従来の界面活性剤を用いた場合と比較して、シリコーン系化合物に対する良好な洗浄効果が得られるとともに、泡立ち性が著しく改善される。
このため、本発明においては、上記一般式(1)中、Mが金属原子又は有機陽イオンであるオルガノシロキサン誘導体塩と、炭素数10〜20のアルキル基を有するカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩のいずれか1種以上とを含有する洗浄料として使用することができる。
【0055】
本発明の洗浄料に用いられるオルガノシロキサン誘導体塩は、上記一般式(1)中、Mが金属原子又は有機陽イオンである必要がある。なお、本発明においては、オルガノシロキサン誘導体が予め塩を形成した状態で洗浄料中に配合していてもよく、あるいは、未処理のオルガノシロキサン誘導体(M=H)と、塩を形成するための塩基性物質とをそれぞれ個別に洗浄料中に配合し、処方内で塩を形成してもよい。例えば、未処理のオルガノシロキサン誘導体と水酸化カリウムとを個別に洗浄料処方中に添加することにより、処方内での中和反応によってオルガノシロキサン誘導体のカリウム塩が形成される。なお、未処理オルガノシロキサン誘導体との中和により塩を形成する塩基性物質としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類の水酸化物、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、L−アルギニン、L−リジン、モルホリン、N−アルキルタウリン塩等の塩基性窒素含有化合物が挙げられる。
【0056】
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤は、炭素数10〜20のアルキル基を有するカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩(以下、単に各種アニオン界面活性剤という場合がある)から選ばれるものである。これらの各種アニオン性界面活性剤は、飽和又は不飽和のアルキル基を有する各種酸の塩であり、アルキル鎖は直鎖状、分岐状のいずれであっても構わない。また、前記アルキル鎖のほかに他の官能基(例えば、アミノ基、エーテル基等)あるいは鎖状構造(例えば、ポリオキシアルキレン基等)を有していてもよい。なお、本発明においては、前記各種酸が予め塩を形成した状態で洗浄料中に配合していてもよく、あるいは前記各種酸と、塩を形成するための塩基性物質とをそれぞれ個別に洗浄料中に配合し、処方内で塩を形成してもよい。例えば、アルキルカルボン酸と水酸化カリウムとを個別に洗浄料処方中に添加することにより、処方内での中和反応によってアルキルカルボン酸カリウム塩が形成される。なお、各種酸との中和により塩を形成する塩基性物質としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類の水酸化物、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、L−アルギニン、L−リジン、モルホリン、N−アルキルタウリン塩等の塩基性窒素含有化合物が挙げられる。
【0057】
本発明に用いられる炭素数10〜20のアルキル基を有するカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸トリエタノールアミン、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、ベヘニン酸ナトリウム、リノール酸カリウム、リノール酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、アラキン酸カリウム、2−パルミトレイン酸カリウム、ペトロセリン酸カリウム、エライジン酸カリウム、リシノール酸カリウム、リノエライジン酸カリウム、リノレン酸カリウム、アラキドン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム等の脂肪酸(アルキルカルボン酸)塩;N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸カリウム、N−ミリストイルグルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ミリストイルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイルグリシンナトリウム、N−ミリストイルグリシントリエタノールアミン、N−ラウロイル−β−アラニンカリウム、N−ラウロイルスレオニントリエタノールアミン、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニントリエタノールアミン等のN−アシルアミノ酸塩;ラウロイルイミノジ酢酸ナトリウム、ラウロイルイミノジ酢酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸アシルイミノジ酢酸ナトリウム、ラウロイルイミノジ酢酸ジナトリウム、パーム核脂肪酸イミノジ酢酸ナトリウム等のアシルイミノジ酢酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル酢酸カリウム、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル酢酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンステアリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリグリセリルラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のポリエーテルカルボン酸塩;ヤシ油脂肪酸シルクペプチド等のアシル化ペプチド;ポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテルカルボン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチン酸アミドエーテルカルボン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミドエーテルカルボン酸トリエタノールアミン等のアミドエーテルカルボン酸塩;アシル乳酸塩;アルケニルコハク酸塩等;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルアリールエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンミリスチン酸アミドエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイン酸アミドエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミドエーテル硫酸ナトリウム、オレイン酸アミドエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルアミド硫酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等のアシルエステル硫酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ヤシ油アルキルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン重縮合物等のホルマリン縮合系スルホン酸塩、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、オレイン酸アミドスルホコハク酸2ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ドデセンスルホン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ドデセンスルホン酸カリウム、デトラデセンスルホン酸カリウム等のα−オレフィンスルホン酸塩;α−スルホラウリン酸メチルエステル、α−スルホミリスチン酸メチルエステル、α−スルホラウリン酸(EO)nメチルエステル等のα−スルホ脂肪酸エステル塩;ヤシ油脂肪酸アシル−Nメチルタウリンカリウム、ラウロイル−Nメチルタウリンナトリウム、ラウロイル−Nメチルタウリンカリウム、ラウロイル−Nメチルタウリントリエタノールアミン、ミリストイル−Nメチルタウリンナトリウム、ミリストイル−Nメチルタウリントリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸アシル−Nメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシル−Nメチルタウリントリエタンールアミン等のN−アシルメチル−タウリン塩;ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ミリストイルイセチオン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルイセチオン酸ナトリウム等のアシルイセチオン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ジポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム等のアルキルエーテルリン酸塩;アルキルアリ−ルエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム等の脂肪酸アミドエーテルリン酸塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ミリスチルリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸リン酸ナトリウム、ミリスチルリン酸カリウム、ラウリルリン酸トリエタノールアミン、オレイルリン酸ジエタノールアミン等のアルキルリン酸塩、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
本発明の洗浄料へのオルガノシロキサン誘導体の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、組成物全量0.1〜30質量%であり、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜5質量%である。オルガノシロキサン誘導体の配合量が少なすぎると、シリコーン化合物に対する洗浄効果が得られず、また、配合量が多すぎると、泡立ちが悪くなる場合がある。
【0059】
本発明の洗浄料への各種アニオン性界面活性剤の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、組成物全量0.1〜10質量%であり、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜2質量%である。各種アニオン性界面活性剤の配合量が少なすぎると、良好な泡立ちが得られず、また、配合量が多すぎると、皮膚刺激性の点で問題を生じる場合がある。なお、本発明の洗浄料中においては、上記各種アニオン界面活性剤以外の界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等)を適当量配合しても構わない。
【0060】
本発明の洗浄料においては、本発明の効果を損なわない質的・量的な範囲内で、上記の必須成分に加えて、通常の化粧品、医薬品分野で用いられるその他の成分、例えば、油分、ワックス、保湿剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、水溶性高分子、油溶性高分子、薬剤、酸化防止剤、顔料、染料、パール剤、ラメ剤、有機・無機粉末、香料等を必要に応じて配合することができる。
【0061】
本発明の洗浄料の使用用途は、特に限定されるものではなく、例えば、固形石ケン、液体石ケン、洗顔スクラブ、洗顔フォーム、メーク落とし(クレンジング)、ボディシャンプー等の皮膚洗浄料、シャンプー、リンスインシャンプー等の毛髪洗浄料等、種々の洗浄料に利用することができる。
【0062】
また、本発明のオルガノシロキサン誘導体の用途は、以上に限定されるものではない。その他の用途としては、シリコーンオイルのゲル化剤、乳化剤としての利用が挙げられる。
【実施例1】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例で用いたオルガノシロキサン誘導体の構造、およびその合成法について以下に示す。
【化8】

【0064】
なお、反応生成物の同定は、ガスクロマトグラフィーおよびマススペクトルをGCMS-QP5050A(島津製作所製)を用いて測定することにより行った。また、GC-14B(島津製作所製)を用いたガスクロマトグラフィーの測定結果から、それぞれのピーク面積比を比較することにより、得られたオルガノシロキサン誘導体の純度を算出した。
【0065】
実施例1:化合物1の合成
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1527.6g(11.4モル)を仕込み、1−オクタデセン1574.6g(2.28モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.21gを70℃にて2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下、留去した。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル642.0g(2.51モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si−H)を完全に反応させた。反応終了後、低沸分を減圧下、留去した。その後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、上記化合物1234.6gを得た。純度は94.7%であった。
【0066】
実施例2:化合物2の合成
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1695.1g(12.65モル)を仕込み、1−テトラデセン574.6g(2.53モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.22gを70℃にて2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下、留去した。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル711.7g(2.78モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si−H)を完全に反応させた。反応終了後、低沸分を減圧下、留去した。その後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、上記化合物1340.2gを得た。純度は94.5%であった。
【0067】
実施例3:化合物3の合成
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン596.3g(4.45モル)を仕込み、1−ドデセン150.0g(0.89モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.07gを70℃にて2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下、留去した。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル250.6g(0.98モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si−H)を完全に反応させた。反応終了後、低沸分を減圧下、留去した。その後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、上記化合物375.4gを得た。純度は94.0%であった。
【0068】
実施例4:化合物4の合成
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2164.0g(16.2モル)を仕込み、1−ヘキセン272.8g(3.23モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.24gを70℃にて2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下、留去した。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル908.8g(3.55モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si−H)を完全に反応させた。反応終了後、低沸分を減圧下、留去した。その後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、上記化合物1335.0gを得た。純度は94.5%であった。
【0069】
実施例5:化合物5の合成
【化9】


平均構造式として上記化合物6で表される両末端Si−H官能性シロキサン773.4g(2.30モル)を攪拌機、還流冷却機、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに仕込み、オクタデセン304.9g(1.21モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.11gを70℃にて2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下、留去した。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル309.8g(1.21モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si−H)を完全に反応させた。反応終了後、低沸分を減圧下、留去した。その後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、上記化合物1203.5gを得た。純度は50.0%であった。
【0070】
上記化合物1〜5の基本物性として、各種油分における溶解性を調べた。評価方法、評価基準は以下のとおりである。
(評価方法)
化合物1〜5と下記表に示す油分を各々、重量比で1:1の割合でスクリュー管にて混合、振とうし、外観により溶解性を以下の評価基準に従い判断した。その結果を下記表1に示す。
(評価基準)
○:溶解
△:一部白濁がみられる。
×:不溶または分離
【0071】
【表1】


上記表1の結果から明らかなように、本発明のオルガノシロキサン誘導体、化合物1〜5は各種油分に対して概ね溶解性が良好であった。
【0072】
続いて、前記の湿式法に準じて、上記実施例化合物のCa塩をタルク(商品名JA68R、浅田製粉株式社製)に対して表面処理を施し、各表面処理粉体を評価した。
【0073】
また、比較対象として、以下に示す比較化合物を調製し、タルクに対して上記同様の表面処理を行った。
【化10】


なお、比較化合物2の構造中のmは100、nは4である。
評価項目は以下のとおりである。
【0074】
評価(1):撥水性
(試験方法)
接触角の測定をFACE自動接触角計(CA−V150型、協和界面科学株式会社製)を用いて液滴法により測定した。数値が大きいほど撥水性に優れることを意味する。
(評価基準)
○:110度以上
△:105度以上110度未満
×:105度未満
【0075】
評価(2):なめらかさ、滑沢性
(試験方法)
動摩擦係数をトライボギア(新東科学株式会社製)を用いて測定した。
測定法:両面テープ上に粉末を塗布し、1cmφのステンレス製の円柱を接触子として測定した。数値が小さいものほど、なめらかさに優れていることを意味する。
得られた動摩擦係数により、下記の三段階で示す。
○:動摩擦係数が0.16未満
△:動摩擦係数が0.16以上0.20未満
×:動摩擦係数が0.20以上
【0076】
評価(3):しっとりとしたフィット感
専門パネラー20名により、粉体のしっとりとしたフィット感を評価した。なお、評価は以下の基準に従い、5段階評価によりその平均値を記載した。
(評価基準)
5:かなりしっとりする
4:ややしっとりフィットする
3:ふつう
2:ややフィットしない
1:フィットしない
算出した平均値により、下記の三段階評価で示す。
○:平均値が4.5以上
△:平均値が2.5以上4.5未満
×:平均値が2.5未満
【0077】
Ca処理した前記化合物1および2、比較化合物1および2について、前記評価項目を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
上記表2の結果から明らかなように、本発明にかかる片末端に比較的長鎖のアルキル基を有するオルガノシロキサン誘導体を用いた試験例1及び2は、既存の金属石鹸を用いた試験例3、及び従来品にみられる、ジメチルポリシロキサン骨格に片末端カルボキシル基を有する試験例4と比較して、優れた撥水性が認められた。また、側鎖にカルボキシル基を有する試験例5と比較した場合には、撥水性及びなめらかさの両方の点について評価が上回るものであった。
さらに、本発明にかかる片末端に比較的長鎖のアルキル基を有するオルガノシロキサン誘導体のCa塩で表面処理された粉体は、フィット感が良好であり、このような粉体を例えば化粧料等に配合した場合に、使用性に優れるという利点が期待できるものであった。
【0080】
本発明者らは、片末端にカルボキシル基を有するオルガノシロキサン誘導体について、好適な構造の検討を引き続き行った。その結果を下記表3に示す。
なお、表中のZn処理化合物に関し、その処理方法は前述と同様の湿式法に準じ、以下のとおりである。
【0081】
(Zn処理方法)
タルク100g、1%水酸化ナトリウム水溶液22.9gおよび水1Lを混合して、ペラを用いて分散させた後、本発明のオルガノシロキサン誘導体3g、1%塩化亜鉛水溶液117mlを順次添加して混合物を分散させた。その後、ろ過により表面処理ざれた粉体を単離し、水洗、乾燥(105℃、12時間)し、粉砕機を用いて粉砕した。
【0082】
【表3】


※1:下記一般式(5)中のrに相当する。
※2:下記一般式(5)中のpに相当する。
※3:比較化合物1に相当する構造。
【化11】

【0083】
上記表3の結果から明らかなように、一般式(1)で表されるオルガノシロキサン誘導体のrが4以上になると、撥水性及びなめらかさの点で優れた表面処理粉体が得られることが明らかである。また、rが大きくなると、本発明にかかるオルガノシロキサン誘導体がワックスのように硬くなる傾向にあり、乾式法による表面処理を施すと、粉体との混合性に劣り、撥水性が劣る場合が見られた。湿式法によれば、このような問題は見られず撥水性が良好であった。以上の結果、および粉体のフィット感を考慮すると、rが10以上になるとより優れたものであることが分かった。
また、式中pの値が7.6である試験例13は、良好な撥水性が得られるもののなめらかさの点ではやや劣るものであった。
【0084】
オルガノシロキサン誘導体Zn塩を用いて処理した表面処理粉体は(試験例14及び15、同様の構造を有するCa塩を用いて処理した表面処理粉体(試験例9及び10)よりもさらに撥水性の点で向上がみられた。一方、前記比較化合物1をZn塩として用いた試験例16と、対応するCa塩(試験例1)を比較した場合には、撥水性の向上は認められなかった。これらの結果から、本発明のオルガノシロキサン誘導体には、金属処理をすることによって、従来には無い優れた特性を発揮する能力があることが確かめられた。
【0085】
以下、本発明のオルガノシロキサン誘導体を粉体の表面処理剤として利用し、該粉体を配合した処方例を具体的に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
処方例1:ファンデーション
(配合成分) (質量%)
(1)Ca処理化合物1による表面処理タルク 30
(2)マイカ 26.85
(3)酸化亜鉛 3
(4)微粒子酸化チタン 1
(5)疎水化処理酸化チタン 11
(6)疎水化処理黄酸化鉄 2.7
(7)疎水化処理赤酸化鉄 1
(8)疎水化処理黒酸化鉄 0.25
(9)硫酸バリウム 6
(10)架橋ジメチコンコポリマー 8
(11)メトキシケイ皮酸イソオクチル 1
(12)水添オレフィンオリゴマー 2.5
(13)メチルフェニルポリシロキサン 2
(14)リンゴ酸ジイソステアリル 3
(15)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.5
(16)パラベン 0.2
(製法)
(1)〜(10)および(16)を混合粉砕する。その後80℃に温めた(11)〜(15)の油分を添加し混合する。得られた粉体を成型し、目的のファンデーションを得た。
【0086】
処方例2:ルースパウダー
(配合成分) (質量%)
(1)Ca処理化合物1による表面処理セリサイト 20
(2)疎水化処理タルク 68
(3)酸化亜鉛 1
(4)ミリスチン酸亜鉛 4
(5)架橋型、網状型シリコーンブロック共重合体 7
(製法)
(1)〜(5)を混合粉砕し、目的のルースパウダーを得た。
【0087】
処方例3:フェースパウダー
(配合成分) (質量%)
(1)Zn処理化合物3による表面処理タルク 50
(2)タルク 23.22
(3)マイカ 3
(4)酸化亜鉛 1
(5)雲母チタン 13
(6)黄酸化鉄 0.5
(7)赤酸化鉄 0.07
(8)黒酸化鉄 0.01
(9)ポリメタクリル酸メチル 1
(10)ワセリン 1
(11)合成炭化水素ワックス 2
(12)トリイソオクタン酸グリセリド 5
(13)パラベン 0.2
(製法)
(1)〜(9)および(13)を混合粉砕する。その後80℃に温めた(10)〜(12)の油分を添加し混合する。得られた粉体を成型し、目的のフェースパウダーを得た。
【実施例2】
【0088】
つづいて、本発明者らは、上記実施例において調製した本発明のオルガノシロキサン誘導体を用いて、オルガノシロキサン誘導体/高級アルコール/水の系での組成物の相状態について検討を行った。なお、オルガノシロキサン誘導体として上記化合物4、高級アルコールとしてステアリルアルコールを用い、それぞれを各種割合で混合した組成物を調製し、示差走査熱量分析(DSC)及び小角X線回折(SAXS)を行った。試験の内容は以下に示すとおりである
【0089】
試験例2−1〜2−8
イオン交換水に水酸化カリウムを適量加え、室温で溶解して全体で80部とし、つづいて化合物4(以下、CSiC10COOHと略す)とステアリルアルコール(以下、StOHと略す)とを以下に示す各種割合(モル比)で混合したものを20部加え、ホモミキサーを用いて70℃に加温して攪拌混合した。その後、30℃まで急冷し、最終的に室温として、試験例2−1〜2−8の組成物を得た。
【0090】
試験例2−1 StOH:CSiC10COOH=0.1:1
2−2 StOH:CSiC10COOH=0.3:1
2−3 StOH:CSiC10COOH=0.5:1
2−4 StOH:CSiC10COOH=0.7:1
2−5 StOH:CSiC10COOH=1:1
2−6 StOH:CSiC10COOH=3:1
2−7 StOH:CSiC10COOH=5:1
2−8 StOH:CSiC10COOH=7:1
【0091】
以上のようにして得られた試験例2−1〜2−8の各組成物について、DSC Q1000(TAインスツルメント(株)社製)を用いて、示差走査熱量分析(DSC)測定を行った。DSC測定の結果を図1に示す。
【0092】
図1より、ステアリルアルコールのモル比が少ない試験例2−1においては32℃付近にブロードなピークが見られた。そして、このブロードなピークは、試験例2−2,2−3,2−4と、ステアリルアルコールのモル比が高くなるにつれて高温側にシフトしていることがわかった。一方で、ステアリルアルコールのモル比の比較的多い試験例2−5,2−6,2−7においては、このブロードなピークとは全く別に、48℃付近にシャープな単一のピークが見られた。
【0093】
また、本発明者らは、前記試験例2−7(StOH:CSiC10COOH=5:1)の組成物について、SAXSess(スペクトリス(株)社製)を用いて、各種の温度条件で小角X線回折(SAXS)測定を行った(25℃,50℃,54℃,57℃,60℃)。SAXS測定の結果を図2に示す(図2(a)小角〜広角領域,(b)小角領域)。
【0094】
図2(a)より、小角〜広角領域では、25℃においてq=14付近にシャープな単一のピーク,また、q=15,23,25付近に小さなピークが見られた(なお、面間隔d(nm)=2Π/qの関係にある)。このうち、q=15,23,25付近のピークは、ステアリルアルコールの結晶構造に由来するピークと考えられ、これらのピークは50℃においてほぼ消失していることがわかった。このことから、図1(試験例2−7)の48℃付近のDSCピークは、ステアリルアルコールの結晶構造の融解ピークに相当するものと考えられる。一方で、q=14(2θ=21.4°)付近のシャープなピークは25〜57℃までの範囲で見られ、60℃においてほぼ消失していた。このピークはゲル構造の短面側の六方晶構造に由来するものであり、したがって、図1(試験例2−7)の56℃付近のDSCピークは、ゲル構造の融解ピークに相当するものと考えられる。
【0095】
図2(b)より、小角領域では、50〜57℃においてゲル構造の長面側のラメラ構造に由来する周期的なピークが見られ、その面間隔は約5.8nmであった。また、60℃の条件では、ゲル構造の融点(約56℃)よりも高いため、これらのピークはほぼ消失していた。また、25℃の条件においては、これよりも面間隔の短い約4.6nmのステアリルアルコールの水和結晶構造に由来する大きなピークが見られた(なお、これにより共存するゲル構造のピークが見えにくくなっているものと考えられる)。また、このステアリルアルコールの結晶構造に相当するピークは、その融点(約48℃)よりも高い50℃以上の測定条件において完全に消失していた。
【0096】
上記SAXS測定結果より、図1のDSC測定結果において、ステアリルアルコールのモル比に応じて高温側へシフトしている32℃〜57℃付近までの融解ピークは、ゲル構造の融解ピークに相当するものであり、また、48℃付近のシャープな単一ピークは、ステアリルアルコールの結晶構造の融解ピークに相当するものと考えられる。
【0097】
また、本発明者らは、さらに試験例2−7の組成物について、光学顕微鏡及び偏光顕微鏡を用いて写真図の撮影を行った。なお、光学顕微鏡、偏光顕微鏡としては、BX51(オリンパス(株)社製)を使用した。光学顕微鏡及び偏光顕微鏡を用いて撮影した写真図を図3,4に、それぞれ示す。
【0098】
図3の光学顕微鏡写真図より、試験例2−7の組成物においては、水連続相中に1〜10μm程度の微粒子が分散していることがわかる。また、図4の偏光顕微鏡写真図より、水連続相中に分散している微粒子が、ゲル構造に典型的なテクスチャであるマルテーゼクロスを示すこと確認され、同微粒子においてゲル構造が形成されていることが認められた。
【0099】
以上の結果から、本発明のオルガノシロキサン誘導体を用いることによって、オルガノシロキサン誘導体/高級アルコール/水の混合系において、ゲル構造を形成可能であることが明らかとなった。
【0100】
試験例2−9〜2−15
イオン交換水に水酸化カリウムを適量加え、室温で溶解して全体で80部とし、つづいて化合物4(以下、CSiC10COOHと略す)とベヘニルアルコール:ステアリルアルコール1:1混合物(以下、Be/Stと略す)とを以下に示す各種割合(モル比)で混合したものを20部加え、ホモミキサーを用いて70℃に加温して攪拌混合した。その後、30℃まで急冷し、最終的に室温として、試験例2−9〜2−15の組成物を得た。
【0101】
試験例2−9 Be/St:CSiC10COOH=0.1:1
2−10 Be/St:CSiC10COOH=0.3:1
2−11 Be/St:CSiC10COOH=0.5:1
2−12 Be/St:CSiC10COOH=0.7:1
2−13 Be/St:CSiC10COOH=1:1
2−14 Be/St:CSiC10COOH=3:1
2−15 Be/St:CSiC10COOH=5:1
【0102】
以上のようにして得られた試験例2−9〜2−15の各組成物について、DSC Q1000(TAインスツルメント(株)社製)を用いて、示差走査熱量分析(DSC)測定を行った。DSC測定の結果を図5に示す。
【0103】
図5より、ベヘニルアルコール/ステアリルアルコールのモル比が比較的多い試験例2−14,2−15においては、ゲル構造の融解ピークと考えられる60〜61℃付近の単一ピークが確認された。一方で、同試験例2−9〜2−15においては、ベヘニルアルコールとステアリルアルコールとの混合物を用いていることから、いずれの組成物においても高級アルコールの結晶構造の融解ピークは見られなかった。
【0104】
したがって、例えば、上記試験例2−14,2−15のように、ベヘニルアルコール/ステアリルアルコール混合物のような、融点の低い高級アルコールの組み合わせを用いることによって、製品中での結晶の析出を生じることなく、高級アルコールの配合量を増量することができると考えられる。
【実施例3】
【0105】
次に、本発明者らは、本発明にかかるオルガノシロキサン誘導体と、高級アルコールと、水とを化粧料(乳液)中に配合し、その使用感触(ヌルつき、なじみ、べたつき)、及び乳化安定性について評価を行った。なお、オルガノシロキサン誘導体としては、上記化合物4(CSiC10COOH)及び化合物1(C18SiC10COOH)、高級アルコールとしてはベヘニルアルコール及びステアリルアルコールを用いた。試験に用いた各種化粧料の組成と、評価結果とを併せて下記表4及び5に示す。なお、評価基準は以下に示すとおりである。
【0106】
使用感触(ヌルつきの無さ、肌なじみの早さ、べたつきの無さ)
10名の専門パネルにより、各試験例の化粧料を実際に肌に塗布し、塗布時のヌルつきの無さ、塗布時の肌なじみの早さ、塗布後のべたつきのなさ、のそれぞれの使用感触について評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:専門パネル10名のうち、9名以上が良いと答えた。
○:専門パネル10名のうち、6〜8名が良いと答えた。
△:専門パネル10名のうち、3〜5名が良いと答えた。
×:専門パネル10名のうち、2名以下が良いと答えた。
【0107】
乳化安定性
各試験例の化粧料を調製した後、透明のガラス管に充填して密閉し、50℃の恒温槽に1ヶ月間保存した後の乳化粒子の状態について評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:乳化粒子の状態に変化は見られなかった。
○:乳化粒子がやや大きくなっていた。
△:乳化粒子が大きくなっていた。
×:乳化粒子が大きくなった結果、分離が生じていた。
××:製造直後に分離していまい、評価することができなかった。
【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
上記表4より明らかなように、本発明のオルガノシロキサン誘導体(CSiC10COOH又はC18SiC10COOH)と、高級アルコール(ベヘニルアルコール及びステアリルアルコール)と、水とをともに配合した実施例3−1〜3−5の乳液においては、ヌルつきの無さ、肌なじみの早さ、べたつきの無さといった使用感触の点でいずれも優れており、さらに乳化安定性も比較的良好であることがわかった。
【0111】
一方で、上記表5より明らかなように、本発明のオルガノシロキサン誘導体に代えて、高級脂肪酸(中和により脂肪酸石ケンとして機能する)を配合した比較例3−1、従来の非イオン系界面活性剤を配合した比較例3−2においては、ヌルつき等の使用感触の点で十分でなかった。また、高級アルコールのみを配合した比較例3−3においては、製造直後に分離してしまい、製品を得ることができなかった。また、高級脂肪酸と非イオン性界面活性剤とを組み合わせて配合した比較例3−4においては、ヌルつきや肌なじみといった使用感触の点で劣っていた。また、本発明のオルガノシロキサン誘導体の配合量が0.02質量%と少ない試験例3−5,あるいは10質量%と多い試験例3−6においては、いずれも使用感触の点で満足の行くものは得られなかった。
【0112】
以上の結果から、本発明のオルガノシロキサン誘導体と、高級アルコールと、水とをともに化粧料中に配合することによって、特にヌルつきの無さ、肌なじみの早さ、べたつきの無さといった使用感触の点で優れた化粧料が得られることが明らかとなった。
【0113】
以下、本発明のオルガノシロキサン誘導体と、高級アルコールと、水とを配合した化粧料の処方例を具体的に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
処方例3−1:乳液
(配合成分) (質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 5
(3)ブチレングリコール 5
(4)ポリエチレングリコール1500 2
(5)アルコール 3
(6)フェノキシエタノール 0.3
(7)パラベン 0.1
(8)水酸化カリウム 0.1
(9)エデト酸3ナトリウム 0.05
(10)カルボキシビニルポリマー 0.1
(11)キサンタンガム 0.1
(12)ベヘニルアルコール 0.5
(13)オルガノシロキサン誘導体(化合物4) 1
(14)ワセリン 2
(15)スクワラン 3
(16)デカメチルシクロペンタシロキサン 3
(17)ジメチルポリシロキサン 2
(18)2−エチルヘキサン酸セチル 2
(19)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1
(20)ステアリン酸PEG−5グリセリル 1
(21)香料 0.1
(製法)
75℃まで加温した(1)〜(11)までの水相に、75℃まで加温した(12)〜(21)までの油、界面活性剤相を徐々に添加しホモミキサーにて撹拌後、30℃まで冷却することで乳液が得られた。
【0114】
処方例3−2:クリーム
(配合成分) (質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 7
(3)ジプロピレングリコール 7
(4)エリスリトール 1
(5)ポリエチレングリコール20000 2
(6)フェノキシエタノール 0.5
(7)トリエタノールアミン 0.5
(8)エデト酸3ナトリウム 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.1
(10)キサンタンガム 0.1
(11)ベヘニルアルコール 3
(12)ステアリルアルコール 1
(13)オルガノシロキサン誘導体(化合物1) 1
(14)マイクロクリスタリンワックス 1
(15)ワセリン 2
(16)スクワラン 5
(17)デカメチルシクロペンタシロキサン 3
(18)ジメチルポリシロキサン 3
(19)イソノナン酸イソノニル 2
(20)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1
(21)ステアリン酸PEG−5グリセリル 1
(22)香料 0.1
(製法)
75℃まで加温した(1)〜(10)までの水相に、75℃まで加温した(11)〜(22)までの油、界面活性剤相を徐々に添加しホモミキサーにて撹拌後、30℃まで冷却することでクリームが得られた。
【0115】
処方例3−3:日焼け止め化粧料
(配合成分) (質量%)
(1)ポリオキシエチレン硬化ひまし油 1
(2)ジメチコンコポリオール 0.5
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(4)オルガノシロキサン誘導体(化合物2) 0.5
(5)ベヘニルアルコール 0.3
(6)フェニルトリメチコン 1
(7)疎水化処理酸化チタン 5
(8)疎水化処理酸化亜鉛 2
(9)球状ポリアクリル酸アルキル粉体 2
(10)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5
(11)クエン酸 0.01
(12)クエン酸ナトリウム 0.09
(13)シリカ 1
(14)パラベン 適量
(15)フェノキシエタノール 適量
(16)水酸化ナトリウム 0.05
(17)アルコール 5
(18)ダイナマイトグリセリン 1
(19)サクシノグルカン 0.2
(20)セルロースガム 1
(21)イオン交換水 残余
(製法)
(11)〜(21)の水相を調製後、(1)〜(10)の油相に徐々に添加し、最後にホモミキサーを用いて攪拌した。
【0116】
処方例3−4:乳化ファンデーション
(配合成分) (質量%)
(1)タルク 3
(2)二酸化チタン 4
(3)ベンガラ 0.5
(4)黄酸化鉄 1.5
(5)黒酸化鉄 0.1
(6)ベントナイト 0.5
(7)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1
(8)トリエタノールアミン 1.5
(9)ジプロピレングリコール 8
(10)イオン交換水 残余
(11)オルガノシロキサン誘導体(化合物3) 0.6
(12)ステアリルアルコール 0.4
(13)イソヘキサデシルアルコール 6
(14)モノステアリン酸グリセリン 2
(15)液状ラノリン 2
(16)流動パラフィン 6
(17)パラベン 0.1
(18)香料 0.05
(製法)
ベントナイトを分散したジプロピレングリコールをイオン交換水に加え、70℃でホモミキサー撹拌をした後、残りの水相成分を添加し撹拌した。これに十分混合粉砕された粉体部を撹拌しながら添加し、70℃で撹拌した。最後に70℃〜80℃に加熱溶解された油相を徐々に添加しホモミキサーで撹拌した後、30℃まで冷却することで乳化ファンデーションを得た。
【0117】
処方例3−5:乳化アイシャドー
(配合成分) (質量%)
(1)タルク 10
(2)カオリン 2
(3)顔料 5
(4)オルガノシロキサン誘導体(化合物5) 1
(5)ベヘニルアルコール 0.2
(6)ミリスチン酸イソプロピル 6
(7)流動パラフィン 5
(8)モノラウリン酸プロピレングリコール 3
(9)香料 0.05
(10)イオン交換水 残余
(11)ブチレングリコール 5
(12)グリセリン 1
(13)水酸化カリウム 0.07
(14)フェノキシエタノール 0.5
(15)エデト酸2ナトリウム 0.1
(製法)
(1)〜(3)の粉体部を混合後、粉砕処理をする。(10)〜(14)の水相部を75℃まで加温した。(4)〜(9)の油相部を80度まで加温溶解した。粉体部を水相に加え撹拌し、ここに油相を撹拌しながら徐々に添加し、ホモミキサー処理を行った。30℃まで冷却することで乳化アイシャドーを得た。
【実施例4】
【0118】
さらに本発明者らは、上記実施例において調製した本発明のオルガノシロキサン誘導体を用いて、洗浄剤成分としての適性について検討を行った。下記表6〜8に示す各組成物を調製し、泡立ち、メーク落ち、及びヘアワックスの落ちの各種使用性について評価した。試験に用いた組成と評価結果とを併せて、下記表6〜8に示す。なお、試験の内容は以下に示すとおりである。
【0119】
使用テスト(泡立ち、メーク落ち、ヘアワックスの落ち)
各実施例及び比較例の組成物について、専門パネル10名による洗浄を行い、泡立ち、メーク落ち、ヘアワックスの落ちの各項目について官能評価を行った。評価は、以下に示すように各項目ごとに5段階(1〜5点)の評価点方式により行い、10名の平均点を算出し、下記判定基準により評価した。
(判定基準)
◎:非常に良好(平均点が4.5点以上)
○:良好(平均点が3.5点以上4.5未満)
△:普通(平均点が2.5点以上3.5点未満)
×:不良(平均点が2.5点未満)
【0120】
泡立ち
(評価点基準)
5点:泡立ちが良い(泡の量が多い)
4点:泡立ちがやや良い(泡の量がやや多い)
3点:普通
2点:泡立ちがやや悪い(泡の量がやや少ない)
1点:泡立ちが悪い(泡の量が少ない)
メーク落ち
(評価点基準)
5点:メークの落ちがよい
4点:ややメークの落ちがよい
3点:普通
2点:ややメークの落ちが悪い
1点:メークの落ちが悪い
ヘアワックスの落ち
(評価点基準)
5点:ヘアワックスの落ちがよい
4点:ややヘアワックスの落ちがよい
3点:普通
2点:ややヘアワックスが悪い
1点:ヘアワックスの落ちが悪い
【0121】
【表6】

【0122】
【表7】

【0123】
上記表6に示すように、本発明のオルガノシロキサン誘導体(化合物3〜5)と、脂肪酸石ケン(ラウリン酸ナトリウム)とをともに配合した実施例4−1〜4−4の洗浄料においては、メーク落ち、ヘアワックスの落ちといった化粧料の洗浄効果に優れるとともに、良好な泡立ち性を示すものであった。一方で、脂肪酸石ケンを単独で用いた比較例4−1では、泡立ちは良好であるものの、洗浄性に劣るものであった。また、オルガノシロキサン誘導体を単独で用いた比較例4−2では、洗浄効果に優れていれるものの、泡立ちがまったく得られなかった。
【0124】
さらに、上記表7に示すように、ジメチルポリシロキサンの片末端にカルボキシル基を有するオルガノシロキサン誘導体(比較化合物1)を用いた比較例4−3では洗浄性の点で劣っており、長鎖シリコーンの側鎖にカルボキシル基を有するオルガノシロキサン誘導体(比較化合物2)を用いた比較例4−4では、洗浄効果は得られるものの、オルガノシロキサン誘導体の消泡作用のため、泡立ちが得られなかった。また、シリコーン油(ジメチコン)や従来のシリコーン系界面活性剤、炭化水素油(流動パラフィン)、エステル油(トリオクタン酸セチル)を用いた比較例4−5〜4−9においても、優れた泡立ちと洗浄効果とを両立した洗浄料は得られなかった。
【0125】
【表8】

【0126】
上記表8から明らかなように、脂肪酸石ケンとともに、本発明のオルガノシロキサン誘導体(化合物4)を0.5〜18質量%配合した実施例4−5〜4−8の洗浄料においては、洗浄効果、泡立ち性ともに優れた効果を示すものであった。これに対して、オルガノシロキサン誘導体無配合の比較例4−10、脂肪酸無配合の比較例4−11では、泡立ち性あるいは洗浄効果のいずれかの点で著しく劣っているものであった。
【0127】
以下、本発明のオルガノシロキサン誘導体と、各種アニオン界面活性剤とを配合した洗浄料の処方例を具体的に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
処方例4−1:メーク落とし石鹸
(配合成分) (質量%)
(1)化合物1 2
(2)エタノール 10
(3)グリセリン 10
(4)ジグリセリン 3
(5)ソルビット液 8
(6)イソステアリン酸 2
(7)ステアリン酸 5
(8)ミリスチン酸 15
(9)パルミチン酸 3
(10)ポリオキシエチレン(25) 3
ポリオキシプロピレングリコール(30)
(11)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 0.1
(12)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N− 2
ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
(13)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 2
(14)ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム 0.5
(15)酸化チタン 0.1
(16)水酸化ナトリウム液(48%) 7
(17)水酸化カリウム液(47%) 3
(18)塩化ナトリウム 0.1
(19)メタリン酸ナトリウム 0.1
(20)グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
(21)ヒドロキシエタンジホスホン酸4ナトリウム(30%) 適量
(22)エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム 適量
(23)白糖 10
(24)精製水 残余
(製造方法)
(24)中に(10)から(14)、(18)から(23)を加え溶解させる。ついで(1)から(9)を加えて75度で溶解させ、(16),(17)を加えて中和させる。容器に充填し、冷却し固形石けんを得る。
【0128】
処方例4−2:メーク落とし石鹸
(配合成分) (質量%)
(1)化合物2 4
(2)エタノール 15
(3)ソルビット液 10
(4)ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリルエーテル 4
(5)ヒマシ油 2
(6)イソステアリン酸 2
(7)ステアリン酸 7
(8)ラウリン酸 6
(9)ミリスチン酸 11
(10)パルミチン酸 3
(11)ドデカン−1,2−ジオール酢酸エーテルナトリウム 3
(12)N−メチルタウリンナトリウム 5
(13)水酸化ナトリウム 4
(14)塩化ナトリウム 0.5
(15)カモミラエキス 0.1
(16)ジブチルヒドロキシトルエン 適量
(17)ヒドロキシエタンジホスホン酸4ナトリウム(30%) 0.1
(18)エデト酸3ナトリウム 0.1
(19)4−tert−ブチル−4’− 0.05
メトキシジベンゾイルメタン
(20)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 0.05
(21)白糖・ソルビット混合物 15
(22)色素 適量
(23)精製水 残余
(24)香料 適量
(製造方法)
(1)〜(12)、(14)〜(23)をすべて加えて75度で溶解させる。溶解後(13)で中和し、最後に(24)を加えて、その後25℃まで急冷し本品を得る。
【0129】
処方例4−3:メーク落としフォーム
(配合成分) (質量%)
(1)化合物3 3
(2)グリセリン 6
(3)ジプロピレングリコール 4
(4)イソステアリン酸 2
(5)ラウリン酸 8
(6)ミリスチン酸 5
(7)ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール 4
(8)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 2.5
(9)ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン 10
(10)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N− 13
ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
(11)ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液 0.5
(12)トリエタノールアミン 12.4
(13)塩化ナトリウム 0.5
(14)ジブチルヒドロキシトルエン 適量
(15)エデト酸3ナトリウム 適量
(16)精製水 残余
(17)香料 適量
(製造方法)
(1)〜(11)、(13)〜(16)をすべて加えて75度で溶解させる。溶解後(12)で中和し、最後に(17)を加えて、その後25℃まで急冷し本品を得る。
【0130】
処方例4−4:メーク落としフォーム
(配合成分) (質量%)
(1)化合物4 3
(2)グリセリン 25
(3)ソルビット液(70%) 5
(4)ポリエチレングリコール1500 10
(5)サラシミツロウ 1
(6)ステアリン酸 9
(7)ラウリン酸 4
(8)ミリスチン酸 10
(9)ポリオキシエチレン(25) 2
ポリオキシプロピレングリコール(30)
(10)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2
(11)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2
(12)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 1.5
(13)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 1
(14)タルク 0.1
(15)水酸化カリウム 4
(16)ボタンエキス 0.1
(17)メリッサエキス 0.1
(18)エデト酸3ナトリウム 適量
(19)エチルセルロース 適量
(20)ポリエチレン末 3
(21)精製水 残余
(22)香料 適量
(製造方法)
(1)〜(14)、(16)〜(21)をすべて加えて75度で溶解させる。溶解後(15)で中和し、最後に(22)を加えて、その後25℃まで急冷し本品を得る。
【0131】
処方例4−5:ヘアワックス落としシャンプー
(1)化合物1ナトリウム塩 3
(2)グリセリン 3
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(12EO) 1
(4)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3
(5)ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル 15
硫酸トリエタノールアミン
(6)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 4
(7)ポリマーJR−400(Amerchol社製) 0.6
(8)クエン酸 0.25
(9)無水リン酸1水素ナトリウム 0.1
(10)イリス根エキス 0.02
(11)安息香酸ナトリウム 適量
(12)エデト酸2ナトリウム 適量
(13)水 残余
(14)香料 適量
(製造方法)
(1)〜(6)、(8)〜(13)をすべて加えて60度で溶解させる。溶解後(7)を加えて十分攪拌する、最後に(14)を加えて、その後25℃まで急冷し本品を得る。
【0132】
処方例4−6:ヘアワックス落としシャンプー
(配合成分) (質量%)
(1)化合物2ナトリウム塩 3
(2)ジステアリン酸エチレングリコール 1.5
(3)ヤシ油脂肪酸エタノールアミド 5.5
(4)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 8
(5)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5
(6)ポリマーJR−400(Amerchol社製) 0.5
(7)クエン酸 0.5
(8)塩化ナトリウム 1.2
(9)ビワ葉エキス 0.1
(10)フェノキシエタノール 0.1
(11)安息香酸ナトリウム 適量
(12)エデト酸2ナトリウム 適量
(13)精製水 残余
(14)香料 適量
(製造方法)
(1)〜(5)、(7)〜(13)をすべて加えて60度で溶解させる。溶解後(6)を加えて十分攪拌する、最後に(14)を加えて、その後25℃まで急冷し本品を得る。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】試験例2−1〜2−8の組成物(StOH:CSiC10COOH=0.1:1〜7:1)の示差走査熱量分析(DSC)測定結果である。
【図2】試験例2−7の組成物(StOH:CSiC10COOH=5:1)の小角X線回折(SAXS)測定結果である((a)小角〜広角領域,(b)小角領域)。
【図3】試験例2−7の組成物(StOH:CSiC10COOH=5:1)の光学顕微鏡写真図である。
【図4】試験例2−7の組成物(StOH:CSiC10COOH=5:1)の偏光顕微鏡写真図である。
【図5】試験例2−9〜2−15の組成物(Be/St:CSiC10COOH=0.1:1〜5:1)の示差走査熱量分析(DSC)測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるオルガノシロキサン誘導体。
【化1】


(式中、R,R,R,Rは、同一又は異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基のいずれかであり、Mは水素原子,金属原子又は有機陽イオンである。Rは、C2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rは4〜48の整数である。AはC2qで表される直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、qは0〜20の整数である。pは1以上である。)
【請求項2】
請求項1に記載のオルガノシロキサン誘導体において、一般式(1)中、RがC2r+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、rが10から48の整数であることを特徴とするオルガノシロキサン誘導体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオルガノシロキサン誘導体において、一般式(1)中、pが1であることを特徴とするオルガノシロキサン誘導体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノシロキサン誘導体を主剤として含む表面処理剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とからなるゲル組成物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノシロキサン誘導体と、炭素数10〜30の一価脂肪族アルコールと、水とを含有する化粧料。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノシロキサン誘導体において、一般式(1)中、Mが金属原子又は有機陽イオンであるオルガノシロキサン誘導体塩と、炭素数10〜20のアルキル基を有するカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤とを含有する洗浄料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−266285(P2008−266285A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276979(P2007−276979)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】