説明

オルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物

【課題】シルメチレン結合を有するケイ素系ポリマーからなる縮合硬化型オルガノポリシルメチレンの提供、並びに該縮合硬化型オルガノポリシルメチレンを含有して成り、硬化すると、耐熱性、電気絶縁特性、耐水性、成型加工性に優れ、気体透過性の少ないオルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):


で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性、機械的強度、電気絶縁性、電気特性、耐薬品性、耐水性を有する縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化してシリコーンゴム弾性体となる硬化性シリコーンゴム組成物はよく知られており、その耐候性、耐熱性、電気絶縁性等の優れた性質を利用して電気電子部品のガスケット材、ポッティング材、コーティング材、型取り材等の成形材料、電線被覆用材料等、及び自動車用部品として広く使用されている。しかし、硬化性シリコーンゴム組成物はシリコーン特有のシロキサン結合を有することから、そのイオン結合性により耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性や耐水性、気体透過性、また高温加湿下での使用など極めて厳しい使用環境ではシリコーンの優れた特性を発揮することが出来ない。
【0003】
その対策としてシロキサン結合の一部をシルエチレン結合としたポリマー(特許文献1)やシルフェニレン結合としたポリマー(特許文献2)が知られている。しかしこれらのポリマーは合成し難く量産性に乏しい、ポリマーが高価であるなど問題点を有しており、特殊な用途や特殊な分野以外では商品化されていない。
【0004】
炭化ケイ素系セラミックスの前駆体としてシルメチレン結合からなるポリジアリールシルメチレンが知られている(特許文献3〜5)。本ポリマーは高融点の結晶性熱可塑性ケイ素系高分子であり、耐熱性、絶縁性、電気特性、耐薬品性、耐水性に優れるが、成型加工性が悪く実用化されていない。成型加工性の改良は種々試みられておりポリジアリールシルメチレンとシリコーンポリマーの混合物(特許文献6)、ポリジアリールシルメチレンとポリアルキルシルメチレン系との混合物(特許文献7〜8)が報告されている。また、ジシラシクロブタン膜を金属微粒子膜で開環重合して基板上にポリジアリールシルメチレンを製膜する方法(特許文献9)が知られている。しかし、ジアリール系シルメチレンポリマーは高結晶性熱可塑性ポリマーであることから合成し難く高価であり加工性が悪い。そのため炭化珪素系セラミックスの前躯体としての活用が検討されたが、ポリマーとしての特性を生かした熱硬化性組成物は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表01/030887号公報
【特許文献2】特開平5−320350号公報
【特許文献3】特開平8−109264号公報
【特許文献4】特開平8−109265号公報
【特許文献5】特開平8−109266号公報
【特許文献6】特開平9−227781号公報
【特許文献7】特開平9−227782号公報
【特許文献8】特開平9−227783号公報
【特許文献9】特許3069655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、シルメチレン結合を有するケイ素系ポリマーからなる縮合硬化型オルガノポリシルメチレンの提供、並びに該縮合硬化型オルガノポリシルメチレンを含有して成り、硬化すると、耐熱性、電気絶縁特性、耐水性、成型加工性に優れ、気体透過性の少ないオルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレンを合成することに成功し、かつ該オルガノポリシルメチレンに任意的に特定の硬化剤および硬化触媒を添加し、縮合反応させることによって得られる硬化物が有用であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子より選ばれる基であり、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、または(RSiCH−より選ばれる基であり、Rは、水素原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基より選ばれる基、kは1〜100の整数、nは1〜1000の整数である。)
で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレンを提供する。
【0009】
また、本発明は、
下記一般式:
【化2】

(式中、Rは、塩素基、水酸基、または炭素数1〜4のアルコキシ基である。R、R、kは上述の通り。)で表される、シルメチレン単位の繰り返しの数が互いに同一または異なるオルガノポリシルメチレンの加水分解反応により請求項1または請求項2に記載のオルガノポリシルメチレンを製造する方法を提供する。
【0010】
さらに、(A)請求項1または2に記載のオルガノポリシルメチレン 1〜100重量部、
(B)下記一般式:
【化3】

(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子より選ばれる基であり、mは0〜300の整数である。)で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 0〜99重量部(但し、(A)と(B)の合計は100重量部である)、及び
(C)下記一般式:
[化4]
SiX4−a (5)
(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、Xは、互いに独立に、ケトオキシム基、アルコキシ基または 1−メチルビニロキシ基であり、aは0、1または2である。)で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物からなる硬化剤 0〜30重量部、
(D)硬化触媒の触媒量
を含有することを特徴とするオルガノポリシルメチレン組成物および該組成物より成る硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシルメチレンを含む組成物は、優れた耐熱性、電気絶縁性、機械的強度、光学的特性を有し、シリコーンゴムの欠点である気体透過性や過酷な使用条件下での耐水性、耐加水分解性などに優れる特性を有する硬化物を提供する。また、本発明のオルガノポリシルメチレンを含む組成物は、従来のシリコーンゴム同様の成型加工性を有し、成型装置など従来の加工機械がそのまま転用できる。本発明の縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物から得られる成型体は、シリコーンゴムと同様に絶縁材料、封止材料、ケーブル、パッキン、コネクター等の電気、電子部品、自動車部品、半導体装置等に好適に用いられる。また、その光学的特性を生かし、レンズや透明封止材料などの用途に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1で製造した化合物のNMRである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0014】
(A)オルガノポリシルメチレン
(A)成分は、下記一般式(1)で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有し、好ましくは25℃における粘度が1〜1,000,000mm/sであるオルガノポリシルメチレンである。
【化5】

式中、Rは、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基、kは1〜100、好ましくは1〜50、nは1〜1000、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50の整数である。
【0015】
式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子より選ばれる基である。該1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換されたクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。中でも、メチル基およびフェニル基が好ましい。特に、メチル基が組成物の硬化特性、硬化物の柔軟性の点から好ましく、Rの50%以上はメチル基であることが好ましい。
【0016】
は、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、(RSiCH−より選ばれる基である。該1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。中でも、メチル基およびフェニル基が好ましい。特に、メチル基が組成物の硬化特性、硬化物の柔軟性の点から好ましく、Rの50%以上はメチル基であることが好ましい。
【0017】
中でも、下記式(2)で表わされるオルガノポリシルメチレンが好ましい。
【化6】

(式中、Rは、互いに独立に、メチル基またはY(CHSiCH−であり、Rは、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、Yは炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基であり、k、nは上述の通り。)
【0018】
上記式(1)で表されるオルガノポリシルメチレンは、下記式(3)で表される、シルメチレン単位の繰り返しの数が互いに同一または異なるオルガノポリシルメチレンを加水分解反応して合成する方法により製造することができる。また必要に応じて、加水分解反応の後、さらにKOH、NaOH等の強アルカリでアルカリ重合し、水洗中和することにより本発明のオルガノポリシルメチレンを得ることができる。
【化7】

(式中、Rは、塩素基、水酸基、または炭素数1〜4のアルコキシ基である。R、R、kは上述の通り。)
【0019】
上記式(1)で表わされるオルガノポリシルメチレンとして、例えば下記のものが挙げられる。
【化8】

【0020】
本発明はまた、(A)上記一般式(1)のオルガノポリシルメチレン、任意的な(C)特定の硬化剤、及び(D)硬化触媒を含有することを特徴とする縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物である。本発明の縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物は、下記一般式(4)で表される(B)オルガノポリシロキサンをさらに含有していてもよい。
【0021】
(B)オルガノポリシロキサン
(B)成分は、(A)オルガノポリシルメチレンの一部を代替する任意成分であり、下記一般式(4)で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有し、好ましくは25℃における粘度が1〜1,000,000mm/sであるオルガノポリシロキサンである。
【化9】

式中、mは0〜300、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜20の整数である。
【0022】
式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子より選ばれる基である。該1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換されたクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。Rの少なくとも2がアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子から選ばれ、これ以外のRとしてはメチル基であることが好ましい。
【0023】
中でも、下記式(6)で表わされる両末端水酸基オルガノポリシロキサンが好ましい。
【化10】

(Rは、互いに独立に炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基であり、mは0〜300、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜20の整数である。)
【0024】
特に、下記式に示されるようなポリジメチルシロキサン、または両末端水酸基ポリジメチルシロキサン‐ポリメチルフェニルシロキサン共重合体が好ましい。
【化11】

(式中、mは前述の通りであり、p+qは1〜300、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜20の整数である。)
【0025】
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し、(A)成分1〜100重量部、(B)成分0〜99重量部、好ましくは(A)成分30〜100重量部、(B)成分0〜70重量部で含有するのがよい。(A)成分が前記下限値未満では、耐水性、光学的特性などオルガノポリシルメチレンの特徴が発現しない。
【0026】
(C)硬化剤
(C)硬化剤は(A)成分オルガノポリシルメチレン及び(B)成分オルガノポリシロキサンと縮合反応することで架橋結合を形成し、3次元網状構造のゴム弾性体を与える。本発明の硬化剤は、下記一般式(5)で表わされる有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物であり、1分子中に2以上のケトオキシム基、アルコキシ基または 1-メチルビニロキシ基を有する。部分加水分解縮合物とは、部分的に加水分解した有機ケイ素化合物が縮合反応して得られるオルガノポリシロキサンである。
[化12]
SiX4−a (5)
(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、Xは、互いに独立に、ケトオキシム基、アルコキシ基または1−メチルビニロキシ基であり、aは0、1または2である。)
【0027】
式(5)において、Rは互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子より選ばれる基である。該1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換されたクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、ビニル基およびフェニル基が好ましい。
【0028】
このような式(5)の有機ケイ素化合物としては、例えば、メチルトリス(ジエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(ジエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシム基含有シラン化合物;トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシフェルシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシ基含有シラン化合物;トリ(1−メチルビニロキシ)メチルシラン、トリ(1−メチルビニロキシ)フェニルシラン、トリ(1−メチルビニロキシ)ニルシラン等の1−メチルビニロキシ基含有シラン化合物が挙げられる。本発明の硬化剤は上記有機ケイ素化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。また、これらの硬化剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(C)成分は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、通常0〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部で配合するのがよい。前記下限値未満では、組成物の保存安定性、加工性が低下し、保存中にゲル化してしまうことがある。また前記上限値超では、硬化収縮が大きくなり、得られる硬化物の物性が低下することがある。
【0030】
(D)硬化触媒
(D)硬化触媒は(A)成分及び(B)成分と(C)成分の縮合反応を促進させるための触媒である。このような硬化触媒としては、例えば、スズオクトエート、コバルトオクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズオクトエート、スズカプリレート、スズオレエート等のカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;テトラブチルチタネート、テトラ-1-エチルへキシルチタネート、テトライソプロペニルチタネート等のチタン酸エステル;テトラ(オルガノシリコネート)チタン等の有機チタン化合物;トリエタノールアミントタネート、チタンアセチルアセトナート等のチタンキレート化合物;アルコキシアルミニウム化合物類等が挙げられる。また、硬化触媒は、下記に示す2-グアニジル基含有シラン化合物であることができる。
【0031】
【化13】

(式中、Meはメチル基を意味する。)
【0032】
硬化触媒の配合量は触媒量としての有効量であり、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよく特に制限されるものではないが、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量100質量部に対し、0.01〜10質量部、特に、0.1〜5質量部程度の範囲で配合するのがよい。
【0033】
その他の配合成分
本発明の縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、補強性充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、導電性付与剤、接着性付与剤、着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤など各種機能性添加剤を配合してもよい。例えば、煙霧質シリカ、沈澱法シリカなどの補強性充填剤、けいそう土、グラファイト、酸化アルミニウム、マイカ、クレイ、カーボン、酸化チタン、ガラスビーズなどの充填剤、導電材料、顔料、滑剤、離型剤としてのポリジメチルシロキサンなどを添加することが出来る。
【0034】
本発明の縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物は、上記成分をプラネタリーミキサーや品川ミキサー等により常法に準じて混合することにより得ることができる。また、本発明の縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物の硬化方法、硬化条件は、組成物の種類に応じて公知の方法、条件を採用することができる。本発明の縮合型の組成物は大気中の湿気で硬化するので、湿気を避けた雰囲気中で保存する必要がある。硬化は、温度60〜150℃、湿度20〜80%の雰囲気下、0.5〜24時間で行うのがよい。
【0035】
本発明の縮合硬化型オルガノポリシルメチレン組成物は、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐水性、気体透過性、光学特性に優れ、特に透明性を必要とするLED用レンズやLED用封止材料など光学材料に最適な材料である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記において「部」は重量部を意味し、粘度は25℃での測定値(東機産業製BMタイプ回転粘度計にて測定)である。
【0037】
[実施例1]
オルガノポリシルメチレン(A1)の合成
下記式(7)のクロル基含有シルメチレン1000g(3.01モル)をキシレン800gに溶解し、水500gとキシレン250gの混合溶媒系に60℃で滴下し、加水分解反応をした。ついで、室温で3時間熟成反応をした後、廃酸分離、水洗洗浄、濾過の後、160℃/5mmHgで30分間ストリップした。
【0038】
【化14】

【0039】
H−NMRによる分析の結果、得られた生成物は下記式(8)で表わされる構造のオルガノポリシルメチレン(A1)であることがわかった(粘度5mm/s)。H−NMRの測定結果を図1に示す。(NMR:日本電子社製JNM−LA300WB、300MHz、H−NMR、重溶媒としてDMSO−dを使用。)
【化15】

【0040】
[実施例2]
オルガノポリシルメチレン(A2)の合成
上記式(7)のクロル基含有シルメチレン1000g(3.01モル)をキシレン800gに溶解し、水500gとキシレン250gの混合溶媒系に60℃で滴下し、加水分解反応をした。ついで、室温で3時間熟成反応をした後、廃酸分離、水洗洗浄、140℃で共沸脱水した。この末端水酸基導入ポリシルメチレンにKOH0.2gを添加し、140℃、10時間反応させてアルカリ重合し、ついで中和、濾過の後、160℃/5mmHgで30分間ストリップして、下記式(9)のオルガノポリシルメチレン(A2)を得た(粘度20mm/s)。
【0041】
【化16】

【0042】
[実施例3]
実施例1で調製したオルガノポリシルメチレン(A1)100部、テトラエトキシシラン(C1)2.0部、(D)ジブチルスズジラウレート0.2部を均一に混合して縮合硬化型ポリシルメチレン組成物を得た。この組成物を、縦130×横170×深さ2(mm)の金型に注入し、デシケータにいれ減圧(10Torr)で10分間脱泡後、25℃および相対湿度60%の雰囲気中に1週間放置して硬化させ、厚さ1.0mmのポリシルメチレン硬化物を調製した。諸物性を評価した結果を表1に示す。
【0043】
[実施例4]
実施例2で調製したオルガノポリシルメチレン(A2)100部、下記式(10)で示されるメチルトリス(ジエチルケトオキシム)シラン(C2)2.0部、及び(D)ジブチルスズジラウレート0.2部を均一に混合して縮合硬化型ポリシルメチレン組成物を得た。実施例3と同様の方法でポリシルメチレン硬化物を調製した。諸物性を評価した結果を表1に示す。
【0044】
【化17】

【0045】
[実施例5]
実施例1で調製したオルガノポリシルメチレン(A1)70部、下記式(11)で示され粘度10mm/sのジメチルポリシロキサン(B1)30部、テトラエトキシシラン(C1)2.0部、及び(D)ジブチルスズジラウレート0.2部を均一に混合して縮合硬化型ポリシルメチレン‐ポリシロキサン共重合性組成物を得た。実施例3と同様の方法でポリシルメチレン‐ポリシロキサン硬化物を調製した。諸物性を評価した結果を表1に示す。
【0046】
【化18】

【0047】
[実施例6]
実施例2で調製したオルガノポリシルメチレン(A2)50部、上記式(11)で示され粘度25mm/sのジメチルポリシロキサン(B1)50部、テトラエトキシシラン(C1)2.0部、及び(D)ジブチルスズジラウレート0.2部を均一に混合して縮合硬化型ポリシルメチレン‐ポリシロキサン共重合性組成物を得た。実施例3と同様の方法でポリシルメチレン‐ポリシロキサン硬化物を調製した。諸物性を評価した結果を表1に示す。
【0048】
[比較例]
上記式(11)で示され粘度25mm/sのジメチルポリシロキサン(B1)100部、テトラエトキシシラン(C1)2.0部、及び(D)ジブチルスズジラウレート0.2部を均一に混合して縮合硬化型ポリシロキサン組成物を得た。実施例3と同様の方法でポリシロキサン硬化物を調製した。諸物性を評価した結果を表1に示す。
【0049】
上記各硬化物の物性評価は以下の方法で行った。結果を表1に示す。
(1)外観は、硬化物の外観を目視で観察し、変色の有無、透明性を目視にて評価した。
(2)硬度は、JIS K6253準拠タイプAデュロメータにて測定した。
(3)引っ張り強度、伸び、密度、体積抵抗率、絶縁破壊強度、比誘電率、誘電正接は、JIS K6249に準拠して測定した。
(4)水蒸気透過性は、JIS Z0208に準拠して測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より、実施例3〜6のオルガノポリシルメチレン硬化物は、透明性を有し、機械的強度に優れ、水蒸気透過性が少ない。比較例の硬化物は機械的強度が劣り、水蒸気透過性が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐水性、気体透過性、光学特性に優れ、特に透明性を必要とするLED用レンズやLED用封止材料など光学材料に最適な材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子より選ばれる基であり、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子、(RSiCH−より選ばれる基であり、Rは、水素原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基より選ばれる基、kは1〜100の整数、nは1〜1000の整数である)
で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレン。
【請求項2】
(A)下記一般式:
【化2】

(式中、Rは、互いに独立に、メチル基またはY(CHSiCH−であり、Rは、水素原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Yは炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基であり、kは1〜100の整数、nは1〜1000の整数である。)で表される請求項1に記載のオルガノポリシルメチレン。
【請求項3】
下記一般式:
【化3】

(式中、Rは、塩素基、水酸基、または炭素数1〜4のアルコキシ基である。R、R、kは上述の通り)で表される、シルメチレン単位の繰り返しの数が互いに同一または異なるオルガノポリシルメチレンの加水分解反応により請求項1または2に記載のオルガノポリシルメチレンを製造する方法。
【請求項4】
(A)請求項1または2に記載のオルガノポリシルメチレン 1〜100重量部、
(B)下記一般式:
【化4】

(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子より選ばれる基であり、mは0〜300の整数である)で表され、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、水酸基、またはハロゲン原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 0〜99重量部(但し、(A)と(B)の合計は100重量部である)、及び
(C)下記一般式:
[化5]
SiX4−a (5)
(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、Xは、互いに独立に、ケトオキシム基、アルコキシ基または1−メチルビニロキシ基であり、aは0、1または2である)で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物からなる硬化剤 0〜30重量部、
(D)硬化触媒の触媒量
を含有することを特徴とするオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項5】
(A)請求項1または2に記載のオルガノポリシルメチレン 30〜100重量部、
(B)請求項4に記載のオルガノポリシロキサン 0〜70重量部(但し、(A)と(B)の合計は100重量部である)、及び
(C)請求項4に記載の硬化剤 0〜30重量部、
(D)硬化触媒の触媒量
を含有することを特徴とするオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項6】
(B)オルガノポリシロキサンが下記一般式:
【化6】

(Rは、互いに独立に炭素原子数1〜10の、アルケニル基を除く1価炭化水素基であり、mは0〜300の整数である)で表わされるオルガノポリシロキサンである請求項4または5に記載のオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のオルガノポリシルメチレン組成物を硬化してなるオルガノポリシルメチレン硬化物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−42749(P2011−42749A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192209(P2009−192209)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】