説明

オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物、及びそれを用いた薄型ウエハの製造方法

【課題】 本発明は、非極性の有機溶剤には可溶で、短時間で剥離することが可能であり、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に剥離しないオルガノポリシロキサンを提供することを目的とする。
【解決手段】 下記(I)〜(III)で示される単位を含むものであることを特徴とする非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):40〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):59モル%以下
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜30モル%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン、このオルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物、及びそれを用いた薄型ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元半導体実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、さらにこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を裏面研削によって薄型化し、さらに裏面にTSVを含む電極等を形成する電極形成工程が必要である。従来、電極形成工程前のシリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかしながら、このテープは有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、裏面での配線層形成プロセスを行うには適さない。
【0003】
そこで半導体基板をシリコン、ガラス等の支持基板に接着剤を介して接合することによって、裏面研削工程、裏面電極形成工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、両基板を接合する際の接着剤である。この接着剤には基板を隙間なく接合できる接着性と、後のプロセスに耐えるだけの十分な耐久性が必要で、さらに最後に薄型ウエハを支持基板から簡便に剥離できることが必要である。このように、最後に剥離することからこの接着剤を仮接着剤と呼ぶことにする。
【0004】
これまでに公知の仮接着剤とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着剤に高強度の光を照射し、接着剤層を分解することによって支持基板から接着剤層を剥離する技術(特許文献1)、及び、炭化水素系の熱溶融性の化合物を接着剤に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者はレーザ等の高価な装置が必要で、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなるなどの問題があった。また後者は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であり、プロセスの適応範囲は狭かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−64040号公報
【特許文献2】特開2006−328104号公報
【特許文献3】米国特許7541264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、3次元半導体実装技術を実現するために、シリコーン粘着剤を仮接着剤層に用いる技術が提案されている(特許文献3)。これは基板同士を付加硬化型のシリコーン粘着剤を用いて接合し、剥離の際にはシリコーン樹脂を溶解、或いは分解するような薬剤に浸漬して両基板を分離するものである。そのため剥離に非常に長時間を要し、実際の製造プロセスへの適用は困難である。
【0007】
一方で、これら仮接着剤は、剥離した後は不要になるため、有機溶剤で洗浄、除去する必要があり、洗浄用有機溶剤に容易に溶解しなければならない。しかしながら、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に使用される有機溶剤に対しては、難溶であることが求められている。このような有機溶剤への溶解性をコントロールすることは、本用途においては大変重要な特性である。
【0008】
従来のオルガノポリシロキサンに用いられる有機基、即ちメチル基、フェニル基を主として有するものは、アセトンやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N−メチルピロリドン等の極性有機溶剤に対し、高い溶解性を有するものが多く、上記の用途では改良が必要であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接着性、耐熱性に優れる上、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶であるオルガノポリシロキサンを提供することを目的とする。また、本発明のオルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物であって、短時間で支持基板から剥離することが可能であり、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に剥離しない仮接着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、該仮接着剤組成物を用いた薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、下記(I)〜(III)で示される単位を含むものであることを特徴とする非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンを提供する。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):40〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):59モル%以下
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜30モル%
(前記R〜Rは一価の有機基又は水素原子であり、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%以上は炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基であり、且つ、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の30モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜7の下記環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基であり、
【化1】

さらに、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の非芳香族飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、水素原子又は炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【0011】
このように、オルガノポリシロキサンの有機基を非芳香族飽和炭化水素基とすることで、接着性、耐熱性に優れる上、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶となる。即ちT、D、M単位のR〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%以上は炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基とし、且つ、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の30モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜7の下記環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基とし、さらに、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の非芳香族飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、水素原子又は炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基とすることで、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に使用される極性有機溶剤には難溶で、かつ、剥離時に用いるヘキサン、オクタン、イソドデカン等の非極性の炭化水素溶剤には可溶であるオルガノポリシロキサンとなる。
【0012】
また、前記非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンのうち、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の2〜30モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)と、
下記平均組成式(1)
SiO(4−a−b―c)/2 (1)
(式中Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、Rは2価の有機基である。a、b、及びcは0<a≦2.5、0≦b≦1、0.75≦a+b≦2.5、0.005≦c≦1、かつ0.8≦a+b+c≦4を満たす正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するヒドロシリル基含有化合物であって、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜1.0倍となる量のヒドロシリル基含有化合物(A2)とを、
白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0013】
このような、高分子量化したオルガノポリシロキサンであれば、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶である上、接着性、耐熱性に一層優れるオルガノポリシロキサンとなる。
【0014】
さらに、前記非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンのうち、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の2〜20モル%が水素原子であるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)と、
下記平均組成式(2)
1011SiO(4−d−e―f)/2 (2)
(但し、式中Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、R10は2価の有機基である。R11は炭素数2〜6のアルケニル基である。d、e、fは0<d≦2、0≦e≦1、0.75≦d+e≦3、0.01≦f≦1、かつ0.8≦d+e+f≦4を満たす正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有化合物であって、ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)の総SiH基に対して総アルケニル基が1.0〜2.5倍となる量のアルケニル基含有化合物(A4)とを、
白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0015】
このような、高分子量化したオルガノポリシロキサンであれば、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶である上、接着性、耐熱性に一層優れるオルガノポリシロキサンとなる。
【0016】
前記ヒドロシリル基含有化合物(A2)は、下記構造式(3)で示される両末端にSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は下記構造式(4)で示される両末端にSiH基を含有するビスシリル化合物であることが好ましい。
【化2】

(式中、nは0〜400の正数、R12〜R14は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。)
【化3】

(式中、R15〜R17は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。Xは2価の有機基である。)
【0017】
このような、ヒドロシリル基含有化合物(A2)であれば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)のアルケニル基とのヒドロシリル化反応が進みやすく、またアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)と相溶性のよいヒドロシリル基含有化合物(A2)となるためヒドロシリル化反応の観点から好ましい。
【0018】
また、本発明では、(A)前記オルガノポリシロキサンと、(B)有機溶剤とを含む仮接着剤組成物を提供する。
【0019】
このような、仮接着剤組成物であれば、接着性、耐熱性に優れる上、非極性の有機溶剤には可溶で、短時間で支持基板から剥離することが可能であり、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に剥離しない仮接着剤組成物となる。
【0020】
さらに、前記(B)有機溶剤は、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤であることが好ましい。
【0021】
沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤であれば、スピンコート可能で、かつ安全性も高い仮接着剤組成物となる。また、沸点が120℃以上であれば、炭化水素溶剤の引火点が高いため好ましく、沸点が240℃以下であれば、炭化水素溶剤を塗工した後の加熱乾燥で容易に揮発し、膜内に留まりにくいため、仮接着剤組成物が基板接合後の加熱プロセスで高温に晒される際にも、接合面での気泡の形成を抑制できるので好ましい。
【0022】
また、本発明では、回路形成面及び回路非形成面を有するウエハを、支持基板と接合して研磨することで薄型ウエハを製造する方法であって、
前記回路形成面上及び/又は前記支持基板上に、前記仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、前記ウエハと前記支持基板とを接合する接合工程、
前記支持基板を接合したウエハの前記回路非形成面を研削する研削工程、
前記研削後のウエハを前記接着層で前記支持基板から剥離する剥離工程、及び
前記剥離したウエハの回路形成面に残存する前記接着層を除去する除去工程を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法を提供する。
【0023】
このような、薄型ウエハの製造方法であれば、剥離工程において短時間で支持基板からウエハを剥離することが可能であり、また、薄型ウエハの製造工程中に接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりしたとしてもウエハが支持基板から剥離しないため、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明のオルガノポリシロキサン、このオルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物、及び該仮接着剤組成物を用いた薄型ウエハの製造方法であれば、接着性、耐熱性に優れる上、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶であるオルガノポリシロキサン及びこれを有する仮接着剤組成物を提供することができ、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のオルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物、及びそれを用いた薄型ウエハの製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
前述のように、非極性の有機溶剤には可溶で、短時間で剥離することが可能であり、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に剥離しない仮接着剤の開発が望まれていた。
【0027】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、オルガノポリシロキサンの有機基を非芳香族飽和炭化水素基とすることで、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、かつ、非極性の有機溶剤には可溶となることを見出して、本発明を完成させた。以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
[非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン]
すなわち、本発明では、下記(I)〜(III)で示される単位を含むものであることを特徴とする非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンを提供する。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):40〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):59モル%以下
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜30モル%
(前記R〜Rは一価の有機基又は水素原子であり、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%以上は炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基であり、且つ、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の30モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜7の下記環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基であり、
【化4】

さらに、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の非芳香族飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、水素原子又は炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【0029】
前記R〜Rは一価の有機基又は水素原子である。さらに、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%以上は炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基であり、且つ、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の30モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜7の下記環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基である。その上、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の非芳香族飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、水素原子又は炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基である。
【0030】
このように、本発明のオルガノポリシロキサンは、有機基を非芳香族飽和炭化水素基とすることで、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、かつ、非極性の有機溶剤には可溶となる。即ちT、D、M単位のR〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%以上を炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基とすることで、上述した極性有機溶剤には難溶で、かつヘキサン、オクタン、イソドデカン等の非極性の炭化水素溶剤には可溶であるオルガノポリシロキサンとなる。
【0031】
非芳香族飽和炭化水素基の具体例としては、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ノルボルニル基、ノルボルニルエチル基、アダマンチル基が挙げられるが、より好ましくはn−プロピル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基が良い。特に高い耐熱性を有する上で環状炭化水素基(環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基)の含有量は重要である。非芳香族飽和炭化水素基としての環状炭化水素基含有量が、R〜Rで示される全有機基及び水素原子のうち30モル%より多い場合には、耐熱性に優れるオルガノポリシロキサンとなる。これら環状炭化水素基としては、下記図示した、1価及び/又は2価のシクロペンチル骨格、シクロヘキシル骨格、ビシクロ[2.2.1]骨格、ビシクロ[3.1.1]骨格を含む構造が好ましい。
【化5】

【0032】
炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基が、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%を下回る場合、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤に難溶とすることが困難となるため適さない。なお、非芳香族飽和炭化水素基としての、環状構造を有する炭化水素基の含有量は、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の30モル%を下回っても溶剤溶解性に関しては問題ないが、260℃以上の高温での耐久性が不充分となる場合がある。
【0033】
本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を40〜99モル%、(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を59モル%以下、(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1〜30モル%含む。上記構造のオルガノポリシロキサンは、原料となる加水分解性シランの加水分解、及び縮合反応を制御しながら行うことにより製造できる。また、本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンとしては40℃を越えない温度で固体形状を有するものが取り扱い上好ましい。
【0034】
原料として用いることができる加水分解性シランとしては、メチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシラン、n−プロピルトリクロルシラン、イソプロピルトリクロルシラン、n−ブチルトリクロルシラン、イソブチルトリクロルシラン、n−ペンチルトリクロルシラン、イソペンチルトリクロルシラン、シクロペンチルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、シクロヘキシルトリクロルシラン、n−オクチルトリクロルシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−ドデシルクロルシラン、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルトリクロルシラン(C1)、ビシクロ[2.2.1]ノニルトリクロルシラン(C2)、ビシクロ[3.1.1]デシルトリクロルシラン(C3、C4)、ジメチルジクロルシラン、n−プロピルメチルジクロルシラン、イソプロピルメチルジクロルシラン、n−ブチルメチルジクロルシラン、イソブチルメチルジクロルシラン、n−ヘキシルメチルジクロルシラン、シクロヘキシルメチルジクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン、及びこれらの加水分解性基がメトキシ基、エトキシ基であるものが挙げられる。
【0035】
特に環状構造を複数有する下記(C1)〜(C4)は、endo体、exo体の立体異性体が存在するが、これらは問わず使用可能である。
【化6】

【0036】
T単位を40〜99モル%含むことで、本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体となりやすく、かつ、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶となる。T単位が40モル%より少ない場合、本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体となりにくく、かつ後述する非極性の炭化水素溶剤に可溶とすることが困難となる。また、本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン中には反応性の末端基、即ちシラノールや加水分解性残基が残存しないことが、後述する熱安定性の観点から好ましい。従って末端にM単位を導入する構造が好ましく、M単位の含有量としては1モル%以上含むことが好ましい。
【0037】
D単位を59モル%以下含むことで、本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体となりやすく、かつ、仮接着剤組成物に用いた場合にウエハと支持基板を十分に接合できる。D単位が59モル%より多くなる場合、40℃以下で固体となりにくく、流動性のある粘ちょう物質、或いは液状物になりやすい。従って支持基板と半導体回路を有するウエハとの接合が不十分となり、裏面研削、或いはその後の加工で積層ウエハがずれる等の不具合が生じる恐れがあるため不適である。
【0038】
M単位を1〜30モル%含むことで、本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶となり、反応性末端基を十分低減した構造となる。1モル%より少ない場合、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤に可溶で、且つ、シラノールや加水分解性残基等の反応性末端基を十分低減した構造とすることが困難である。30モル%より多い場合、末端基が多くなると相対的に分子量が小さくなるため不適である。
【0039】
M単位にて封止されていない分子末端基、即ちシラノール基、又はアルコキシシリル基等の加水分解性残基が存在する場合、これら反応性末端基の含有量は可能な限り少ない方が好ましい。シラノール基、及びアルコキシシリル基の末端残基が分子内に少量であれば、熱がかかった際に縮合反応による架橋が生成し、基板の剥離性が大きく変化してしまうことを抑制できるので好ましい。また、シラノール基のOH基、及びアルコキシシリル基(Si−OR:Rは原料として用いたアルコキシシランのアルコキシ基残基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等)のOR基の総量が、全樹脂固形分中の5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。M単位の導入により、このような反応性末端基を所望の量まで減じることができる。
【0040】
本発明の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの分子量の分布は非常に重要である。即ちGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、ポリスチレン標準物質によって作製した検量線にそって得られる重量平均分子量の値で、2,000以上であることが好ましい。非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が2,000以上であれば、耐熱性に優れるため好ましい。より好ましい非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量の範囲としては、3,000〜200,000程度、さらに好ましくは5,000〜150,000程度が好ましい。
【0041】
このような分析、解析が可能なGPC装置としては、東ソー製のHLC−8120GPC、HLC−8220GPC、HLC−8230GPCが使用できる。
【0042】
[非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの製造方法]
このような非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは公知の方法で製造できる。例えば、加水分解縮合反応により、上記のシロキサン単位(T、D、M単位)を形成し得るオルガノクロロシラン及び/又はオルガノアルコキシシラン、あるいはその部分加水分解縮合物を得ることができる。例えば、すべての加水分解性基(クロル基、アルコキシ基等)を加水分解するのに過剰量の水と原料シラン化合物及び生成するオルガノポリシロキサンを溶解可能な有機溶剤との混合溶液中へ混合し、加水分解縮合反応させることで得られる。所望の重量平均分子量のオルガノポリシロキサンは、反応温度及び時間、水、有機溶剤の配合量を調節することで得ることができる。このようにして製造されたオルガノポリシロキサンは、例えば仮接着剤として使用する際、不要な有機溶剤成分を除去し、一度固形化してから使用してもよい。
【0043】
[高分子量化したオルガノポリシロキサン]
また、本発明のオルガノポリシロキサンには、非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンを原料として、高分子量化したオルガノポリシロキサンも含まれる。以下、このような高分子量化したオルガノポリシロキサンについて説明する。
【0044】
このような高分子量化したオルガノポリシロキサンとしては、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の2〜30モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)と、下記平均組成式(1)
SiO(4−a−b―c)/2 (1)
(式中Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、Rは2価の有機基である。a、b、及びcは0<a≦2.5、0≦b≦1、0.75≦a+b≦2.5、0.005≦c≦1、かつ0.8≦a+b+c≦4を満たす正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するヒドロシリル基含有化合物であって、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜1.0倍となる量のヒドロシリル基含有化合物(A2)とを、白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させた高分子量化したオルガノポリシロキサンが含まれる。
【0045】
この際、アルケニル基の含有量は、少なくともR〜Rで示される全有機基及び水素原子の2モル%〜30%である。アルケニル基の含有量が2モル%以上であれば、ヒドロシリル化反応による分子量増加が大きくなり、耐熱性等の物性に優れるオルガノポリシロキサンとなるため好ましい。また30モル%以下であれば、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性有機溶剤への溶解性が更に低くなり好ましい。
【0046】
このようなアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基が挙げられるが、反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0047】
また、上記平均組成式(1)中、前記Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、前記Rは2価の有機基である。Rは1価の有機基であれば特に限定されないが、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基が例示される。また、Rは2価の有機基であれば特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、ブタニレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基が例示される。
【0048】
さらに、上記平均組成式(1)中、a、bは分子中の有機基の含有量を示し、a、b、及びcは0<a≦2.5、0≦b≦1、0.75≦a+b≦2.5、0.005≦c≦1、かつ0.8≦a+b+c≦4を満たす正数である。a+bが0.75より小さい場合、相対的にcの値、即ちSiH基の含有量が多くなる。アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)のアルケニル基とヒドロシリル基含有化合物(A2)のSiH基とのヒドロシリル化反応を考えた場合、SiH量が多いと架橋度が高すぎて高分子量化したオルガノポリシロキサンがゲル化する傾向にある。また、SiH基が多量に残存する場合、熱劣化による発ガスの可能性が高くなる。また、a+bが2.5以下であれば、SiH基量は適切で、反応による高分子量化が適切に進行する。さらに、aが2以下であれば、架橋に関与するSiH基量は適切で分子量が目標とする値まで上昇し、耐熱性に優れる。そのため、a、b、及びcは上記範囲であることが好ましい。さらに、cの値は、さらにケイ素原料の入手し易さから1.0以下が好ましく、また架橋反応を十分進行させるためには0.005以上が好ましい。
【0049】
また、(A1)成分の総アルケニル基に対する(A2)成分の総SiH量は、0.4〜1.0が好ましい。0.4以上であれば、分子量の増加は十分であり、所望の耐熱性、接着性が得られる。また、1.0以下であれば、樹脂の架橋が適度となりゲル化しにくく、また樹脂内に残存するSiH基も低減でき、接合後の耐熱試験の際に発泡も抑制できるため好ましい。
【0050】
より具体的なヒドロシリル基含有化合物(A2)の例としては、両末端にSiH基を有する直鎖ポリシロキサン、ポリシリルアルキレン、ポリシリルアリーレンが使用できる。特に、下記構造式(3)で示される両末端にSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は下記構造式(4)で示される両末端にSiH基を含有するビスシリル化合物であることが好ましい。
【化7】

(式中、nは0〜400の正数、R12〜R14は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。)
【化8】

(式中、R15〜R17は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。Xは2価の有機基である。)
【0051】
前記R12〜R17は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。R12〜R17としては、特に限定されないが、炭素数1〜8の1価の炭化水素基、具体的にはメチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基が例示される。特に好ましくはメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が例示される。
【0052】
上記構造式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度nは0〜400である。このnの範囲内で重合度nが200以上の大きいものは、(A1)のアルケニル基とのヒドロシリル化反応が進み難いため、重合度0〜40のシロキサンと併用することが好ましい。なお、nが200以下であれば、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)との相溶性がよく、また末端SiH基の反応性も低下しないため好ましい。
【0053】
下記構造式(4)で示されるビスシリル化合物の連結基Xは、2価の有機基である。Xとしては、特に限定されないが、炭素数1〜10の2価炭化水素基、及びフェニレン基が例示される。特に高分子量化されたオルガノポリシロキサンの耐熱性の観点から、フェニレン基が好ましい。
【0054】
このような、高分子量化したオルガノポリシロキサンであれば、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶である上、接着性、耐熱性に一層優れるオルガノポリシロキサンとなる。
【0055】
さらに、本発明には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)とヒドロシリル基含有化合物(A2)との付加反応生成物の他、反応性基を交換した化合物の組み合わせ、即ちヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)とアルケニル基含有化合物(A4)とを付加反応して高分子量化したオルガノポリシロキサンも含まれる。
【0056】
すなわち、本発明のオルガノポリシロキサンには、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の2〜20モル%が水素原子であるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)と、
下記平均組成式(2)
1011SiO(4−d−e―f)/2 (2)
(但し、式中Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、R10は2価の有機基である。R11は炭素数2〜6のアルケニル基である。d、e、fは0<d≦2、0≦e≦1、0.75≦d+e≦3、0.01≦f≦1、かつ0.8≦d+e+f≦4を満たす正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有化合物であって、ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)の総SiH基に対して総アルケニル基が1.0〜2.5倍となる量のアルケニル基含有化合物(A4)とを、白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させて高分子量化したオルガノポリシロキサンが含まれる。
【0057】
この際、水素原子の含有量は、少なくともR〜Rで示される全有機基及び水素原子の2モル%〜20%である。水素原子の含有量が2モル%以上であれば、ヒドロシリル化反応による分子量増加が大きくなり、耐熱性等の物性に優れるオルガノポリシロキサンとなるため好ましい。また20モル%以下であれば、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性有機溶剤への溶解性が更に低くなり好ましい。
【0058】
上記平均組成式(2)中のRはアルケニル基を除く1価の有機基であり、R10は2価の有機基である。R11は炭素数2〜6のアルケニル基である。ここでRはアルケニル基を除く1価の有機基であれば特に限定されないが、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基が例示される。また、R10は2価の有機基であり、特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、ブタニレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基が例示される。さらに、R11は炭素数2〜6のアルケニル基であり、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基が挙げられるが、反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0059】
上記平均組成式(2)中のd、e、fは分子中の有機基の含有量を示し、d、e、fは0<d≦2、0≦e≦1、0.75≦d+e≦3、0.01≦f≦1、かつ0.8≦d+e+f≦4を満たす正数である。
【0060】
(A3)成分の総SiH量に対する(A4)成分の総アルケニル基は、1.0〜2.5倍となる量が好ましい。1.0以上であれば、分子量の増加は十分であり、所望の耐熱性、接着性が得られる。また、2.5以下であれば、樹脂の架橋が適度となりゲル化しにくく、また樹脂内に残存するSiH基も低減でき、接合後の耐熱試験の際に発泡も抑制できるため好ましい。
【0061】
このような、高分子量化したオルガノポリシロキサンであれば、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶である上、接着性、耐熱性に一層優れるオルガノポリシロキサンとなる。
【0062】
[高分子量化したオルガノポリシロキサンの製造方法]
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)とヒドロシリル基含有化合物(A2)との反応は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)を有機溶剤に溶解させ、ヒドロシリル化触媒である白金系の金属触媒を添加後、50〜150℃に加熱しながら、ヒドロシリル基含有化合物(A2)を滴下することで、高分子量化したオルガノポリシロキサンを得ることができる。白金触媒はSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A1)成分の重量に対して1〜800ppm、特に2〜300ppm程度配合することが好ましい。
【0063】
また、ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)とアルケニル基含有化合物(A4)との反応も上記同様に、両者を付加反応触媒存在下で加熱混合することで行うことができ、これにより高分子量化したオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0064】
これらヒドロシリル化付加反応後のオルガノポリシロキサンの分子量は、仮接着剤の特性、特に加熱時の熱変形、接着界面でのボイド発生等に影響する。
【0065】
付加反応後の高分子量化したポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いてポリスチレン標準物質によって作製した検量線に則って得られる重量平均分子量の値で、15,000より大きいことが好ましい。重量平均分子量が15,000以上であれば、耐熱性に優れるオルガノポリシロキサンとなる。より好ましい重量平均分子量の範囲としては、20,000〜200,000程度、さらに好ましくは30,000〜150,000程度が好ましい。
【0066】
[仮接着剤組成物]
また、本発明では、(A)前記オルガノポリシロキサンと、(B)有機溶剤とを含む仮接着剤組成物を提供する。
【0067】
本発明の仮接着剤組成物に含まれる(A)オルガノポリシロキサンとしては、前述の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン及び高分子量化したオルガノポリシロキサンを用いることができる。また、成分(B)は、成分(A)のオルガノポリシロキサンを溶解し、スピンコート等、公知の塗膜形成方法によって膜厚1〜200μmの薄膜を形成できるものであれば好ましい。この際、より好ましい膜厚は5〜180μm、さらに好ましくは30〜150μmであり、このような範囲の膜厚を形成できる(B)有機溶剤が好ましい。
【0068】
このように、成分(A)を溶解する(B)有機溶剤としては、ケトン、エステル、アルコール等の極性溶媒以外のものが使用でき、非芳香族炭化水素が好ましい。
【0069】
このような(B)有機溶剤の具体例として、特に限定されないが、ペンタン、へキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ウンデカン、イソドデカン、リモネン、ピネン等が挙げられる。
【0070】
これらの中でスピンコート可能、かつ安全性も高い仮接着剤組成物を与える(B)有機溶剤としては、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤が好ましい。即ち、この観点からオクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカン、リモネンが好ましい。沸点が120℃以上であれば、炭化水素溶剤の引火点も高いため好ましい。また、沸点が240℃以下であれば、炭化水素溶剤を塗工した後の加熱乾燥で揮発しやすく、膜内に留まりにくい。そのため、仮接着剤組成物が基板接合後の加熱プロセスで高温に晒される際にも、接合面での気泡の形成を抑制できるので好ましい。
【0071】
上記成分の他、塗布性を向上させるため、本発明の仮接着剤組成物に公知の界面活性剤を添加してもよい。具体的には、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0072】
また、本発明の仮接着剤組成物の耐熱性をさらに高めるため、公知の酸化防止剤、シリカ等のフィラーを添加してもよい。
【0073】
[薄型ウエハの製造方法]
また、本発明では、回路形成面及び回路非形成面を有するウエハを、支持基板と接合して研磨することで薄型ウエハを製造する方法であって、
前記回路形成面上及び/又は前記支持基板上に、前記仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、前記ウエハと前記支持基板とを接合する接合工程、
前記支持基板を接合したウエハの前記回路非形成面を研削する研削工程、
前記研削後のウエハを前記接着層で前記支持基板から剥離する剥離工程、及び
前記剥離したウエハの回路形成面に残存する前記接着層を除去する除去工程を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法を提供する。
【0074】
本発明の薄型ウエハの製造方法は、半導体回路を有するウエハと該ウエハの厚みを薄くするために用いる支持基板との接着層として、前述のオルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物を用いることを特徴とする。本発明の製造方法により得られる薄型ウエハの厚さは、特に限定されないが、典型的には300〜5μm、より典型的には100〜10μmである。
【0075】
[接合工程]
前記接合工程は、回路形成面上及び/又は支持基板上に、上記の仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、ウエハと支持基板とを接合する工程である。回路形成面及び回路非形成面を有するウエハは、一方の面が回路が形成された回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。本発明が適用できるウエハは、特に限定されないが、通常、半導体ウエハである。該ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム−ヒ素ウエハ、ガリウム−リンウエハ、ガリウム−ヒ素−アルミニウムウエハ等が挙げられる。接合工程におけるウエハは研削工程において裏面研削される前のウエハであり、その厚さは、特に制限はないが、典型的には800〜600μm、より典型的には775〜625μmである。
【0076】
支持基板としては、シリコンウエハ、ガラスウエハ、石英ウエハ等が使用可能である。本発明においては、支持基板を通して接着層に放射エネルギー線を照射する必要はなく、支持基板の光線透過性は不要である。
【0077】
接着層は、前述の仮接着剤組成物により形成される。接着層を形成する仮接着剤組成物はオルガノポリシロキサンを主成分とすることが好ましい。仮接着剤組成物に含まれるオルガノポリシロキサンは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。接着層はウエハの回路形成面上及び/又は支持基板上に形成される。このようにして形成された接着層を介してウエハは支持基板と接合される。接着層は、ウエハに形成される場合、該ウエハの回路形成面上に形成される。
【0078】
本発明の接着層は加熱によって軟化する。接着層中の樹脂が軟化する温度範囲は80〜320℃、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜260℃であり、この温度にて減圧下で、両基板(即ち、ウエハと支持基板)を均一に圧着することで、ウエハが支持基板と接合した接合基板が形成される。両基板を設置したチャンバー内を、減圧下、上記温度範囲に加熱することで接着層中の樹脂が一部軟化または融解した後、両基板を接触させ、加熱圧着することで、界面に気泡を挟むことなく、一様な接合界面を形成できる。接着層を介してウエハを支持基板と接合するとき、支持基板の温度は上記温度範囲であることが好ましい。これら接合温度にて接着層中の樹脂が十分軟化するため、ウエハの接合される面に存在する凹凸を隙間なく埋め込むことができる。圧着するときの荷重は、例えば8インチウエハ(直径200mm)で20kN以下、好ましくは10kN以下、より好ましくは7kN以下で接合可能である。
【0079】
ウエハ接合装置としては、市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB;SUSS社のXBC300等が挙げられる。
【0080】
[研削工程]
研削工程は、支持基板を接合したウエハの回路非形成面を研削する工程である。即ち、接合工程にて接合した積層基板のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くしていく工程である。ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、平面研削盤等の公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハ裏面を研削加工する装置としては、(株)ディスコ製 DAG−810(商品名)等が挙げられる。
【0081】
[加工工程]
本発明の薄型ウエハの製造方法では、研削工程後剥離工程前に加工工程を含めることができる。加工工程は、回路非形成面を研削したウエハ、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハの回路非形成面側に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれるが、例としては、回路非形成面に対する電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成など、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0082】
[剥離工程]
剥離工程は、研削後のウエハを接着層で支持基板から剥離する工程である。即ち、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前に支持基板から剥離する工程である。剥離方法としては、主にウエハと支持基板を、加熱しながら水平反対の方向にスライドさせることにより両基板を分離する方法、積層基板のうち一方の基板を水平に固定しておき、加熱しながらもう一方の基板を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式で剥離する方法等、多数の提案がなされている。
【0083】
本発明には、これらの剥離方法すべてに適用可能であるが、水平スライド剥離方式がより適している。
【0084】
ウエハ、接着層、支持基板からなる積層体が加熱され、接着層が融解、或いは軟化した状態で力をかけることでウエハを支持基板から剥離することができる。加熱温度は、本発明で用いる接着層では好ましくは50〜300℃、より好ましくは60〜230℃、更により好ましくは70〜220℃である。
【0085】
これらの剥離を行う装置としては、EVG社のEVG850DB、SUSS社のXBC300等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0086】
[除去工程]
除去工程は、剥離したウエハの回路形成面に残存する接着層を除去する工程である。残存する接着層の除去は、例えば、ウエハを洗浄することにより行うことができる。
【0087】
除去工程には、接着層中の樹脂、特に本発明のオルガノポリシロキサンを溶解するような洗浄液であればすべて使用可能であり、具体的には、前述の(B)有機溶剤が使用可能である。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。また、回路形成面に残存する接着層を除去しにくい場合は、上記溶剤に、塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類としては、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸が使用可能である。これら塩基類、酸類の添加量は0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%とすることができる。また、回路形成面に残存する接着層の除去性を向上させるため、既存の界面活性剤を添加することもできる。洗浄方法としては、上記洗浄液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が可能である。温度は10〜80℃、好ましくは15〜65℃が適する。
【0088】
このような、薄型ウエハの製造方法であれば、剥離工程において短時間で支持基板からウエハを剥離することが可能であり、また、薄型ウエハの製造工程中に接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりしたとしてもウエハが支持基板から剥離しないため、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明のオルガノポリシロキサンの合成例及び比較合成例、本発明の仮接着剤組成物の実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
[オルガノポリシロキサンの合成]
(合成例1)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロルシラン183.6g(0.8モル)、ジメチルクロルシラン12.9g(0.1モル)、トリメチルクロルシラン10.9g(0.1モル)を仕込み、フラスコ内に攪拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、さらに80℃で1時間攪拌熟成を行った。室温まで冷却しながら静置して、分離してきた水相を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水相を除去する水洗浄操作をトルエン相が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン相を加熱還流してトルエン相から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンを除去して、固体のオルガノポリシロキサン(樹脂1)134gを得た。
【0091】
得られたオルガノポリシロキサン(樹脂1)は、T単位80モル%とD単位10モル%とM単位10モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン(樹脂1)100gあたりシラノール基を0.1モル含有し、外観は無色透明固体で重量平均分子量は7,100であった。全有機基及び水素原子中のノルボルニル基含有量は61%であった。また、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の80%がノルボルニル基であった。このオルガノポリシロキサン(樹脂1)をイソドデカン溶液に固形分濃度55%で溶解した溶液を、樹脂溶液Pとした。
【0092】
(合成例2)
合成例1と同様に、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロルシラン103.3g(0.45モル)、n−ヘキシルトリクロルシラン43.9g(0.2モル)、ジメチルジクロルシラン19.4g(0.15モル)、メチルビニルジクロルシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロルシラン16.3g(0.15モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製して、固体のオルガノポリシロキサン(樹脂2)124gを得た。
【0093】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位65モル%とD単位20モル%とM単位15モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン100gあたりシラノール基を0.08モル、ビニル基を0.04モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は6,200であった。全有機基及び水素原子中のノルボルニル基含有量は43モル%、ビニル基は3.3モル%であった。また、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の43%がノルボルニル基であった。
【0094】
(合成例3)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)として、合成例2で得た固形のオルガノポリシロキサン(樹脂2)100gをトルエン100gに溶解し、固形分濃度50%の溶液を調製した。この溶液に、白金触媒を樹脂に対して白金原子で20ppm添加し、60℃に加温した状態で、ヒドロシリル基含有化合物(A2)として、下記式(5)で示される化合物(SiH当量 1473g/mol)32.4gを滴下したところ、反応による発熱を観測した。この量は、H/Vi比(総アルケニル基に対するSiH基の比率)で0.55に相当する。100℃で2時間反応を行い、反応を完結させた。その後、減圧留去にて濃縮し、トルエンを留去して反応生成物を固形化した後、イソドデカンにて再溶解し、固形分濃度55%の樹脂Q溶液を得た。また、この樹脂をGPCにて重量平均分子量Mwを測定したところ47,000であった。
【化9】

(式中、Meはメチル基を示す。)
【0095】
(合成例4)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)として、合成例2で得た固形のオルガノポリシロキサン(樹脂2)100gを用いて、ヒドロシリル基含有化合物(A2)として、パラビス(ジメチルシリル)ベンゼン(SiH当量 97g/mol)2.3gを用いる以外は、合成例3と同様な反応を行い、重量平均分子量34,200、固形分濃度55%のイソドデカン溶液Rを得た。この(A2)量は、H/Vi比で0.6に相当する。
【0096】
(比較合成例1)
合成例1と同様に、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロルシラン137.5g(0.65モル)、ジフェニルジクロルシラン50.6g(0.2モル)、メチルビニルジクロルシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロルシラン10.8g(0.1モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製して、固形のオルガノポリシロキサン(樹脂3)137gを得た。
【0097】
得られたオルガノポリシロキサン(樹脂3)は、T単位65モル%とD単位25モル%とM単位10モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン100gあたりシラノール基を0.01モル、ビニル基を0.034モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は11,700であった。また、R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の72%がフェニル基(芳香族不飽和炭化水素基)であった。
【0098】
(比較合成例2)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして、比較合成例1で得られたオルガノポリシロキサン(樹脂3)100gを用い、ヒドロシリル基含有化合物として、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン(SiH当量 166g/mol)3.4gを用いて、合成例3と同様な反応を行い、濃縮、固形化後、シクロペンタノンで再溶解することによって、重量平均分子量44,200、固形分濃度75%の樹脂溶液Sを得た。この量は、H/Vi比で0.6に相当する。
【0099】
(実施例1〜3、比較例1)
オルガノポリシロキサン樹脂溶液(P、Q、R、S)を用い、8インチシリコンウエハ(直径:200mm、厚さ:725μm)上にスピンコートにて表1記載の膜厚で接着層を形成した。8インチガラス基板(ガラスウエハ)を支持基板とし、この支持基板と、接着層を有するシリコンウエハを真空接合装置内で表1に示す接着温度にて接合し、ウエハ、接着層、及び支持基板からなる積層体を作製した。その後、下記試験を行った。また、耐溶剤性については、別途実験基板を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
[外観]
スピンコート後の塗膜を、ホットプレート上で150℃、2分乾燥を行い、膜内の溶剤を完全に留去した後、目視による塗膜外観、指触によるタック感を確認した。クラック、及びタックのないものを良好(○)、クラック、及び、又はタックが認められるものを不良(×)で示す。
【0101】
[接着性試験]
8インチのウエハ接合は、EVG社のウエハ接合装置520ISを用いて行った。接合温度は表1に記載の値、接合時のチャンバー内圧力は10−3mbar以下、荷重は5kNで実施した。接合後、室温まで冷却した後の界面の接着状況を目視で確認し、界面での気泡などの異常が発生しなかった場合を○、異常が発生した場合を×で示す。
[裏面研削耐性試験]
グラインダー(DAG810 DISCO製)を用いてシリコン基板の裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を○、異常が発生した場合を×で示す。
【0102】
[耐熱性試験]
シリコン基板を裏面研削した後の積層体を窒素雰囲気下の250℃オーブンに2時間入れた後、270℃のホットプレート上で10分加熱した後の外観異常の有無を調べた。外観異常が発生しなかった場合を○、外観異常が発生した場合を×で示す。
【0103】
[耐溶剤試験]
6インチウエハ(直径:150mm)に、樹脂溶液(P、Q、R、S)のスピンコートにて30μm厚の塗膜を形成し、150℃/2分後、200℃/2分加熱乾燥させた。その後、この塗膜を25℃でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液に10分浸漬し、溶解の有無を目視でチェックした。樹脂の溶解が認められないものを良好(○)とし、樹脂の溶解が認められたものを不良(×)で示す。
【0104】
【表1】

【0105】
上記表1に示されるように、比較例1が耐溶剤性に乏しいのに対して、本発明のオルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物の実施例1〜3は、耐溶剤性良好で、かつ接着性、裏面研磨耐性、耐熱性にも優れる仮接着剤組成物となることが示された。
【0106】
以上より、本発明のオルガノポリシロキサンであれば、接着性、耐熱性に優れる上、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶であるオルガノポリシロキサンとなることが示された。また、本発明のオルガノポリシロキサンを含む仮接着剤組成物であれば、短時間で支持基板から剥離することが可能であり、かつ耐溶剤性に優れるため、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に剥離しない仮接着剤組成物となることが示された。さらに、本発明の薄型ウエハの製造方法であれば、剥離工程において短時間で支持基板からウエハを剥離することが可能であり、また、薄型ウエハの製造工程中に接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりしたとしてもウエハが支持基板から剥離しないため、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)〜(III)で示される単位を含むものであることを特徴とする非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):40〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):59モル%以下
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜30モル%
(前記R〜Rは一価の有機基又は水素原子であり、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の40モル%以上は炭素数3〜20の非芳香族飽和炭化水素基であり、且つ、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の30モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜7の下記環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基であり、
【化1】

さらに、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の非芳香族飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、水素原子又は炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンのうち、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の2〜30モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)と、
下記平均組成式(1)
SiO(4−a−b―c)/2 (1)
(式中Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、Rは2価の有機基である。a、b、及びcは0<a≦2.5、0≦b≦1、0.75≦a+b≦2.5、0.005≦c≦1、かつ0.8≦a+b+c≦4を満たす正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するヒドロシリル基含有化合物であって、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜1.0倍となる量の前記ヒドロシリル基含有化合物(A2)とを、
白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであることを特徴としたオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
請求項1に記載の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンのうち、前記R〜Rで示される全有機基及び水素原子中の2〜20モル%が水素原子であるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)と、
下記平均組成式(2)
1011SiO(4−d−e―f)/2 (2)
(但し、式中Rはアルケニル基を除く1価の有機基であり、R10は2価の有機基である。R11は炭素数2〜6のアルケニル基である。d、e、fは0<d≦2、0≦e≦1、0.75≦d+e≦3、0.01≦f≦1、かつ0.8≦d+e+f≦4を満たす正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有化合物であって、前記ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(A3)の総SiH基に対して総アルケニル基が1.0〜2.5倍となる量の前記アルケニル基含有化合物(A4)とを、
白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであることを特徴としたオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
前記ヒドロシリル基含有化合物(A2)は、下記構造式(3)で示される両末端にSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は下記構造式(4)で示される両末端にSiH基を含有するビスシリル化合物であることを特徴とする請求項2に記載のオルガノポリシロキサン。
【化2】

(式中、nは0〜400の正数、R12〜R14は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。)
【化3】

(式中、R15〜R17は、同一又は異なる、置換又は非置換の1価の有機基である。Xは2価の有機基である。)
【請求項5】
(A)請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサンと、
(B)有機溶剤とを含むものであることを特徴とする仮接着剤組成物。
【請求項6】
前記(B)有機溶剤は、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤であることを特徴とする請求項5に記載の仮接着剤組成物。
【請求項7】
回路形成面及び回路非形成面を有するウエハを、支持基板と接合して研磨することで薄型ウエハを製造する方法であって、
前記回路形成面上及び/又は前記支持基板上に、請求項5又は請求項6に記載の仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、前記ウエハと前記支持基板とを接合する接合工程、
前記支持基板を接合したウエハの前記回路非形成面を研削する研削工程、
前記研削後のウエハを前記接着層で前記支持基板から剥離する剥離工程、及び
前記剥離したウエハの回路形成面に残存する前記接着層を除去する除去工程を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。


【公開番号】特開2012−229333(P2012−229333A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98324(P2011−98324)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】