説明

オルガノポリシロキサンおよびシリコーン組成物

【課題】 分子鎖末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、(メタ)アクリロキシ基、およびケイ素原子結合加水分解性基を有する新規なオルガノポリシロキサン、およびこれを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤とし、熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好で、適度なチキソトロピーを示すシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】 一般式:


{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基、R3は酸素原子または二価炭化水素基、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基、nは5〜1,000の整数、aは1または2。}で表されるオルガノポリシロキサン、およびこれを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤とするシリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンおよびシリコーン組成物に関し、詳しくは、分子鎖末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、(メタ)アクリロキシ基、およびケイ素原子結合加水分解性基を有する新規なオルガノポリシロキサン、およびこのオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤とし、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好で、適度なチキソトロピーを示すシリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンは、シリコーンマクロモノマーとして(メタ)アクリル系樹脂の改質剤、あるいはこれに光増感剤を配合して、紫外線等の高エネルギー線照射により架橋するシリコーン組成物の主剤として使用されている。このような(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンとして、例えば、特許文献1には、片末端シロキシリチウム低分子化合物を開始剤としてヘキサメチルシクロトリシロキサンをアニオンリビング重合して得られるポリマーと(メタ)アクリル基を有するジメチルモノハロシランを、アミン化合物の存在下に反応してなる片末端メタクリル重合性シロキサンが提案されており、また、特許文献2には、片末端にアミノ基を有するジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸ハライドをアルカリ水溶液中で反応してなる片末端(メタ)アクリルアミド基を有するジオルガノポリシロキサンが提案されているが、分子鎖末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、(メタ)アクリロキシ基、およびケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンについては知られていない。
【0003】
一方、多量の熱伝導性充填剤を充填して高熱伝導性のシリコーン組成物を得るため、特許文献3、4には、熱伝導性充填剤の表面処理剤としてケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンを使用することが提案されているが、このようなオルガノポリシロキサンを使用しても、アルミナ等の熱伝導性充填剤を高充填しようとすると、得られるシリコーン組成物の粘度が急激に上昇して、その取扱作業性や成形性が著しく低下するという問題があった。
【0004】
また、特許文献5には、熱伝導性充填剤の表面処理剤として、ビニル基とケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンを使用することが提案されており、このようなオルガノポリシロキサンを使用すると、アルミナ等の熱伝導性充填剤を高充填することができるが、得られるシリコーン組成物はチキソトロピーを示さず、貯蔵中に熱伝導性充填剤が沈降しやすいという問題があったり、用途によっては得られるシリコーン組成物の流れ性が問題となることがあった。
【特許文献1】特開平8−73592号公報
【特許文献2】特開平9−12724号公報
【特許文献3】特開2000−256558号公報
【特許文献4】特開2001−139815号公報
【特許文献5】特開2003−213133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分子鎖末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、(メタ)アクリロキシ基、およびケイ素原子結合加水分解性基を有する新規なオルガノポリシロキサン、およびこのオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤とし、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好で、適度なチキソトロピーを示すシリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオルガノポリシロキサンは、一般式:
【化1】

{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、nは5〜1,000の整数であり、aは1または2である。}
で表される。
【0007】
また、本発明のシリコーン組成物は、(A)オルガノポリシロキサン{ただし、下記(C)成分を除く。}、(B)熱伝導性充填剤、および(C)一般式:
【化2】

{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、nは5〜1,000の整数であり、aは1または2である。}
で表されるオルガノポリシロキサンから少なくともなるか、または前記(B)成分、および前記(C)成分から少なくともなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、(メタ)アクリロキシ基、およびケイ素原子結合加水分解性基を有する新規な化合物であり、また、本発明のシリコーン組成物は、このようなオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤としているので、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好で、適度なチキソトロピーを示すという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
はじめに、本発明のオルガノポリシロキサンを詳細に説明する。
本発明のオルガノポリシロキサンは、一般式:
【化3】

で表される。上式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基等の直鎖状アルケニル基;iso−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−10−ウンデセニル基等の分岐鎖状アルケニル基;ビニルシクロヘキシル基、ビニルシクロドデシル基等の脂肪族不飽和環状アルキル基;ビニルフェニル基等の脂肪族不飽基含有アリール基;ビニルベンジル基、ビニルフェネチル基等の脂肪族不飽和基含有アラルキル基が例示され、好ましくは、直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくは、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基である。R1中の脂肪族不飽和結合の位置は限定されないが、R1が結合するケイ素原子より遠い位置であることが好ましい。また、上式中、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、さらに好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基である。また、上式中、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R3の二価炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基が例示され、好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。また、上式中、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、具体的には、一般式:
【化4】

で表される(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基が例示される。上式中、R6は水素原子、フェニル基、またはハロゲン化フェニル基であり、R6のハロゲン化フェニル基としては、クロロフェニル基が例示される。R6は水素原子であることが好ましい。また、上式中、R7は水素原子またはメチル基である。また、上式中、R8は二価炭化水素基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基が例示され、好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。また、上式中、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、R5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が例示され、R5のアルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、メトキシプロピル基が例示され、R5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基等の直鎖状アルケニル基;iso−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−10−ウンデセニル基等の分岐鎖状アルケニル基が例示され、またR5のアシル基としては、アセチル基、オクタノイル基が例示される。R5はアルキル基であることが好ましく、特に、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。また、上式中、nは5〜1,000の整数である。また、上式中、aは1または2である。
【0010】
このようなオルガノポリシロキサンを調製する方法としては、例えば、一般式:
【化5】

(式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、nは5〜1,000の整数である。)
で表される分子鎖片末端シラノール基封鎖オルガノポリシロキサンと一般式:
4Si(OR5)3
(式中、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基である。)
で表されるシラン化合物を、酢酸等の酸性触媒や水酸化カルシウム等のアルカリ性触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0011】
このような本発明のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、式:
【化6】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化7】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化8】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化9】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化10】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化11】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化12】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化13】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化14】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化15】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化16】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化17】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化18】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化19】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化20】

で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化21】

が挙げられる。
【0012】
このような本発明のオルガノポリシロキサンは、無機質粉末の表面処理剤として有用であり、特に、熱伝導性粉末の表面処理剤として有用である。本発明のオルガノポリシロキサンが適用できる無機質粉末としては、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属系粉末;アルミナ粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ベリリウム粉末、酸化クロム粉末、酸化チタン粉末等の金属酸化物系粉末;窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末等の金属窒化物系粉末;炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、炭化珪素粉末等の金属炭化物系粉末;表面に導電性を付与するために金属を被覆してなる金属酸化物系粉末;その他、ヒュームドシリカ、疎水化ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、溶融シリカ、珪藻土、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、炭酸マンガン、水酸化セリウムが例示される。これらの無機質粉末の表面を処理する方法は限定されず、周知の方法により処理することができる。
【0013】
次に、本発明のシリコーン組成物を詳細に説明する。
本発明のシリコーン組成物は、(A)オルガノポリシロキサン{ただし、下記(C)成分を除く。}、(B)熱伝導性充填剤、および(C)一般式:
【化22】

{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、nは5〜1,000の整数であり、aは1または2である。}
で表されるオルガノポリシロキサンから少なくともなることを特徴とする。このような本組成物は、非架橋性のグリース状であってもよく、また、さらに(D)架橋剤を含有して、架橋性とし、架橋により増粘あるいは硬化することができる。この架橋反応は限定されず、例えば、ヒドロシリル化反応、縮合反応、または有機過酸化物によるフリーラジカル反応が挙げられる。
【0014】
(A)成分は本組成物の主剤であり、上記(C)成分以外のオルガノポリシロキサンであれば特に限定されない。(A)成分中のケイ素原子に結合している基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、2−メチルウンデシル基、1−ヘキシルヘプチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、2−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロピル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基である。また、(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、20〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜50,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜50,000mPa・sの範囲内である。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の物理的特性が著しく低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が著しく低下するからである。このような(A)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹枝状(デンドリマー状)が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。このような(A)成分としては、例えば、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の混合物が挙げられる。
【0015】
このような(A)成分としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、式:(CH3)3SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:CH3SiO3/2で表されるシロキサン単位と式:(CH3)2SiO2/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサンコポリマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシリル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシリルエチル基封鎖ジメチルポリシロキサン、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
また、本組成物がヒドロシリル化反応により架橋する場合には、(A)成分は、一分子中に平均0.1個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、好ましくは、一分子中に平均0.5個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、特に好ましくは、一分子中に平均0.8個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。これは、一分子中のケイ素原子結合アルケニル基の平均値が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからである。このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合アルケニル基としては、前記と同様のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、このオルガノポリシロキサン中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合している基としては、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、20〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜50,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜50,000mPa・sの範囲内である。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の物理的特性が著しく低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が著しく低下するからである。このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、前記と同様の構造が例示され、好ましくは直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の混合物が挙げられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、前記と同様のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが例示される。
【0017】
また、本組成物が縮合反応により架橋する場合には、(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のシラノール基もしくはケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;ビニロキシ基、プロペノキシ基、iso−プロペノキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケノキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;アセトキシ基、オクタノイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基等のアミド基が挙げられる。また、このオルガノポリシロキサン中のシラノール基およびケイ素原子結合加水分解性基以外のケイ素原子に結合している基としては、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が例示される。また、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、20〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜100,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜100,000mPa・sの範囲内である。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の物理的特性が著しく低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が著しく低下するからである。このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、前記と同様の構造が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。このようなオルガノポリシロキサンとしては、前記と同様の一分子中に少なくとも2個のシラノール基もしくはケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンが例示される。
【0018】
また、本組成物が有機過酸化物によるフリーラジカル反応により架橋する場合には、(A)成分のオルガノポリシロキサンは限定されないが、好ましくは、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合している基としては、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基である。また、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、20〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50〜50,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜50,000mPa・sの範囲内である。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の物理的特性が著しく低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が著しく低下するからである。このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、前記と同様の構造が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の混合物が挙げられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、前記と同様のオルガノポリシロキサンが例示される。
【0019】
(B)成分の熱伝導性充填剤は、本組成物に熱伝導性を与える成分であり、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属系粉末;アルミナ粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ベリリウム粉末、酸化クロム粉末、酸化チタン粉末等の金属酸化物系粉末;窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末等の金属窒化物系粉末;炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、炭化珪素粉末等の金属炭化物系粉末;表面に導電性を付与するために金属を被覆してなる金属酸化物系粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。また、(B)成分の形状としては、例えば、球状、丸み状、針状、円盤状、棒状、不定形状が挙げられる。本組成物あるいは本組成物の架橋物に電気絶縁性が要求される場合には、(B)成分は、金属酸化物系粉末、金属窒化物系粉末、または金属炭化物系粉末であることが好ましく、特に、アルミナ粉末であることが好ましい。(B)成分の平均粒径は限定されないが、0.1〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらには、0.1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、(B)成分としてアルミナ粉末を用いる場合には、(B1)平均粒径が5〜50μm(ただし、5μmを含まない。)である球状のアルミナ粉末と(B2)平均粒径が0.1〜5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物であることが好ましい。さらに、この混合物において、前記の(B1)成分の含有量は30〜90重量%の範囲内であり、前記の(B2)成分の含有量は10〜70重量%の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本組成物において、(B)成分の含有量は限定されないが、良好な熱伝導性を与えるためには、容積%については、本組成物中の少なくとも30容積%であることが好ましく、さらに、30〜90容積%の範囲内であることが好ましく、さらに、60〜90容積%の範囲内であることが好ましく、特に、80〜90容積%の範囲内であることが好ましい。同様に、重量%については、本組成物中の少なくとも50重量%であることが好ましく、さらに、70〜98重量%の範囲内であることが好ましく、特に、90〜97重量%の範囲内であることが好ましい。(B)成分の含有量として、具体的には、(A)成分100重量部に対して500〜2,500重量部の範囲内であることが好ましく、さらに、500〜2,000重量部の範囲内であることが好ましく、特に、800〜2,000重量部の範囲内であることが好ましい。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の熱伝導性もしくは電気伝導性が不十分となるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の粘度が高くなったり、均一な組成物を得ることができなかったり、その取扱作業性が著しく低下するからである。
【0021】
(C)成分のオルガノポリシロキサンは、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために、(B)成分を多量に含有しても、本組成物の取扱性を向上させ、本組成物に適度なチキソトロピーを付与するための成分であり、一般式:
【化23】

で表される。上式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中、nは5〜1,000の整数である。また、上式中、aは1または2である。
【0022】
このような(C)成分としては前記と同様のオルガノポリシロキサンが例示される。(C)成分は、式中のaの値が異なり、nの値が同じであるオルガノポリシロキサンの混合物、または、式中のaの値が同じで、nの値が異なるオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。式中のaの値が同じで、nの値が異なるオルガノポリシロキサンの混合物を用いる場合には、nの値の差は5以上であることが好ましく、さらには、nの値の差が10以上であることが好ましく、特に、nの値の差が20以上であることが好ましい。なお、式中のaの値が異なり、nの値が同じであるオルガノポリシロキサンの混合物、または、aの値が同じで、nの値が異なるオルガノポリシロキサンの混合物において、それぞれのオルガノポリシロキサンの割合は特に限定されない。
【0023】
本組成物において、(C)成分の含有量は限定されず、(B)成分の表面を処理して、得られる組成物中への分散性を向上できる量であればよく、具体的には、(B)成分100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましく、特に、(B)成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲内であることが好ましい。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、(B)成分を多量に含有した場合に、得られる組成物の成形性が低下したり、得られる組成物の貯蔵中に(B)成分が沈降分離する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の物理的特性が低下する傾向があるからである。
【0024】
本組成物を調製する方法は限定されず、例えば、(B)成分と(C)成分を混合して、(B)成分の表面を予め(C)成分で処理した後、これらを(A)成分に添加する方法、(A)成分と(B)成分を混合した後、(C)成分を添加して、(A)成分中で(B)成分の表面を(C)成分で処理しながら混合する方法が挙げられ、特に、後者の方法が好ましい。このように本組成物中、(C)成分は(B)成分の表面を処理した状態で含有されているか、または本組成物中に単に含有されていてもよい。また、(B)成分を(C)成分により処理する際、その処理を促進するために、加熱したり、あるいは酢酸、リン酸などの酸性物質や、トリアルキルアミン、4級アンモニウム塩類、アンモニアガス、炭酸アンモニウムなどの塩基性物質を併用してもよい。
【0025】
本組成物は、さらに(D)架橋剤を含有して、架橋性とし、架橋により増粘あるいは硬化することができる。本組成物がヒドロシリル化反応する場合には、(D)成分は、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなる。このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合に結合している基としては、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはアルキル基、アリール基であり、特に好ましくはメチル基、フェニル基である。また、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、好ましくは1〜100,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは1〜5,000mPa・sの範囲内である。このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、樹枝状(デンドリマー状)が挙げられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、これらの分子構造を有する単一重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、式:(CH3)3SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:(CH3)2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサンコポリマー、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
本組成物において、このオルガノポリシロキサンの含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(A)成分および(C)成分中の脂肪族不飽和一価炭化水素基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、さらに、0.1〜5モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1〜3.0モルの範囲内となる量であることが好ましい。これは本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物が非常に硬質な硬化物となり、表面に多数のクラックを生じたりするからである。
【0028】
また、白金系触媒は本組成物の架橋を促進するための触媒であり、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体が挙げられる。
【0029】
本組成物において、白金系触媒の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であり、具体的には、(A)成分に対して本成分中の白金金属が重量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えるを配合しても、得られる組成物の架橋反応は著しく促進されないからである。
【0030】
また、本組成物が縮合反応により架橋する場合には、(D)成分は、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するシランもしくはその部分加水分解物および/または縮合反応用触媒からなる。このシラン中のケイ素原子結合加水分解性基としては、前記と同様のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基が例示される。また、このシランのケイ素原子には上記の加水分解性基以外に、例えば、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基を結合していてもよい。このようなシランもしくはその部分化水分解物としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルオルソシリケートが挙げられる。
【0031】
本組成物において、このシランもしくはその部分加水分解物の含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。これは、このシランもしくはその部分加水分解物の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下したり、また、接着性が低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の架橋反応が著しく遅くなったりするからである。
【0032】
また、縮合反応用触媒は、例えば、(D)成分ととして、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等の加水分解性基を有するシランを用いる場合には必須ではない。この縮合反応用触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機アルミニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ブチルスズ−2−エチルヘキソエート等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0033】
本組成物において、この縮合反応用触媒の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であればよく、具体的には、(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。これは、この触媒が必須である場合、この触媒の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下するからである。
【0034】
また、本組成物が有機過酸化物によるフリーラジカル反応により架橋する場合には、(D)成分は有機過酸化物である。この有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチルビス(2,5−tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエートが挙げられる。この有機過酸化物の含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、上記(A)成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0035】
また、本発明のシリコーン組成物は、前記(B)成分、および前記(C)成分から少なくともなることを特徴とする。このような本組成物は、非架橋性のグリース状であってもよく、また、さらに前記(D)成分または(E)光増感剤を含有して、架橋性とし、架橋により増粘あるいは硬化することができる。この架橋反応は限定されず、前記(D)成分を含有する場合には、例えば、ヒドロシリル化反応、縮合反応、または有機過酸化物によるフリーラジカル反応が挙げられ、また、前記(E)成分を含有する場合には、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射により架橋反応が挙げられる。
【0036】
本組成物中の(B)成分および(C)成分は前記の通りである。本組成物中、(B)成分の含有量は限定されないが、良好な熱伝導性を与えるためには、容積%については、本組成物中の少なくとも30容積%であることが好ましく、さらに、30〜90容積%の範囲内であることが好ましく、さらに、60〜90容積%の範囲内であることが好ましく、特に、80〜90容積%の範囲内であることが好ましい。同様に、重量%については、本組成物中の少なくとも50重量%であることが好ましく、さらに、70〜98重量%の範囲内であることが好ましく、特に、90〜97重量%の範囲内であることが好ましい。(B)成分の含有量として、具体的には、(C)成分100重量部に対して500〜2,500重量部の範囲内であることが好ましく、さらに、500〜2,000重量部の範囲内であることが好ましく、特に、800〜2,000重量部の範囲内であることが好ましい。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の熱伝導性もしくは電気伝導性が不十分となるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の粘度が高くなったり、均一な組成物が得ることができなかったり、その取扱作業性が著しく低下するからである。
【0037】
本組成物の調製方法は限定されず、例えば、(B)成分と(C)成分を混合して、(B)成分の表面を予め(C)成分で処理し、さらに(C)成分を添加して混合する方法、(C)成分と(B)成分を混合しながら、(C)成分中で(B)成分の表面を(C)成分で処理する方法が挙げられる。このように本組成物中、(C)成分の一部が(B)成分の表面を処理した状態で含有されていてもよい。また、(B)成分を(C)成分により処理する際、その処理を促進するために、加熱したり、あるいは酢酸、リン酸などの酸性物質や、トリアルキルアミン、4級アンモニウム塩類、アンモニアガス、炭酸アンモニウムなどの塩基性物質を併用してもよい。
【0038】
また、本組成物は、さらに(D)架橋剤を含有して、架橋性とし、架橋により増粘あるいは硬化することができる。本組成物がヒドロシリル化反応により架橋する場合には、(D)成分は、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなる。このオルガノポリシロキサンは前記の通りであり、本組成物において、このオルガノポリシロキサンの含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(C)成分中の脂肪族不飽和一価炭化水素基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、さらに、0.1〜5モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1〜3.0モルの範囲内となる量であることが好ましい。これは本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物が非常に硬質な硬化物となり、表面に多数のクラックを生じたりするからである。また、白金系触媒は本組成物の架橋を促進するための触媒であり、前記の通りであり、本組成物において、白金系触媒の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であり、具体的には、(C)成分に対して本成分中の白金金属が重量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超える量を配合しても、得られる組成物の架橋反応は著しく促進されないからである。
【0039】
また、本組成物が縮合反応により架橋する場合には、(D)成分は、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するシランもしくはその部分加水分解物および/または縮合反応用触媒からなる。このシランは前記の通りであり、本組成物において、このシランもしくはその部分加水分解物の含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(C)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。これは、このシランもしくはその部分加水分解物の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下したり、また、接着性が低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の架橋反応が著しく遅くなったりするからである。また、縮合反応用触媒は前記の通りであり、本組成物において、この縮合反応用触媒の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であればよく、具体的には、(C)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。これは、この触媒が必須である場合、この触媒の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下するからである。
【0040】
また、本組成物が有機過酸化物によるフリーラジカル反応により架橋する場合には、(D)成分は有機過酸化物である。この有機過酸化物としては、前記の通りであり、この有機過酸化物の含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、上記(C)成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0041】
また、本組成物は、(D)成分の代わりに(E)光増感剤を含有して、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射による架橋性の組成物とすることができる。この(E)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジル、α−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、およびこれらの誘導体が挙げられる。この光増感剤は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
(E)成分の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であり、具体的には、本組成物の0.01〜20重量%の範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.1〜10重量%の範囲内となる量であることが好ましい。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の架橋性が低下するからであり、一方で、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の物理的特性が低下するからである。
【0043】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、ヒュームド酸化チタン等の充填剤、この充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水化処理した充填剤;その他、顔料、染料、蛍光染料、耐熱添加剤、トリアゾール系化合物以外の難燃性付与剤、可塑剤、接着付与剤を含有してもよい。
【0044】
特に、本組成物がヒドロシリル化反応により架橋する場合、その架橋速度を調節し、取扱作業性を向上させるため、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエン−イン化合物;その他、ヒドラジン系化合物、フォスフィン系化合物、メルカプタン系化合物等の反応抑制剤を含有することが好ましい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して0.0001〜1.0重量%の範囲内であることが好ましい。
【0045】
このような本組成物が架橋性である場合、その架橋方法は限定されず、例えば、本組成物を成形後、室温で放置する方法、本組成物を成形後、50〜200℃に加熱する方法が挙げられる。また、このようにして得られる架橋物の性状は限定されないが、例えば、増粘したグリース状、あるいは硬化した、ゲル状、低硬度のゴム状、あるいは高硬度のゴム状が挙げられ、放熱材料として部材に十分に密着させることができ、また、取扱性が良好であることから、JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが10〜98の範囲内である硬化物であることが好ましい。
【実施例】
【0046】
本発明のオルガノポリシロキサンおよびシリコーン組成物を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の特性は25℃における値である。
【0047】
[参考例1]
攪拌機、還流冷却管、滴下ロート、および温度計を備えた四つ口フラスコに、式:
【化24】

で表される片末端シラノール基・片末端ジメチルビニルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン30g(13.35mmol)、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.67g(14.80mmol)、水酸化カルシウム0.09g(1.22mmol)、および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール0.008g(0.0366mmol)を投入した。この混合物を攪拌しながら100℃まで温度を上昇させ、8時間反応させた。その後、ゆっくりと室温まで冷却し、不溶な水酸化カルシウムをろ過して取り除いた。反応中に副成したメタノールを室温にて減圧留去した。さらに100℃〜105℃、3時間の減圧下、過剰のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを留去し、無色透明の反応生成物30.08gを得た。この反応生成物は下記NMRの結果より、式:
【化25】

で表されるジメチルポリシロキサン(I)であることが判明した。このジメチルポリシロキサン(I)は、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量は4060.00であり、分散度は1.15であった。
13C−NMR(100MHz,CDCl3)のδ値(ppm):−2.1,−0.14,0.26,0.41,0.64,0.73,1.0,6.6,17.9,21.9,49.7,66.1,124.4,130.9,135.9,138.6,166.5
29Si−NMR(80MHz,CDCl)のδ値(ppm):−50.7,−22.4〜−20.8[m、(CH3)2SiO],−4.1
【0048】
[参考例2]
攪拌機、還流冷却管、滴下ロート、および温度計を備えた四つ口フラスコに、式:
【化26】

で表される片末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン30g(13.35mmol)、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.28g(14.00mmol)、水酸化カルシウム0.09g(1.22mmol)、および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール0.008g(0.0366mmol)を投入した。この混合物を攪拌しながら80℃まで温度を上昇させ、8時間反応させた。その後、ゆっくりと室温まで冷却し、不溶な水酸化カルシウムをろ過して取り除いた。反応中に副成したメタノールを室温にて減圧留去した。さらに80℃、3時間の減圧下、過剰のγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを留去し、無色透明の反応生成物30.15gを得た。この反応生成物は下記NMRの結果より、式:
【化27】

で表されるジメチルポリシロキサン(II)であることが判明した。このジメチルポリシロキサン(II)は、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量は4143.37であり、分散度は1.16であった。
13C−NMR(100MHz,CDCl3)のδ値(ppm):−2.0,0.19,0.09,0.50,0.65,0.88,0.98,1.2,6.8,22.1,49.9,66.2,128.3,129.9,131.2,138.9,165.6
29Si−NMR(80MHz,CDCl3)のδ値(ppm):−50.7,−22.3〜−20.7[m、(CH3)2SiO],−4.1
【0049】
[実施例1]
混合装置を用いて、粘度が400mPa・sである分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.44重量%)2.133重量部、平均粒径が11μmである丸み状アルミナ粉末22.5重量部、参考例1で調製したオルガノポリシロキサン(I)0.25重量部を混合して熱伝導性シリコーンゴムベースを調製した。
【0050】
次に、このゴムベースに、粘度が5mPa・sであり、一分子中に平均5個のケイ素原子結合水素原子を有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.76重量%)0.089重量部(上記ゴムベース中のビニル基1モルに対して、本成分に含まれているケイ素原子結合水素原子が1.48モルとなる量)、反応抑制剤として、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.024重量部を混合し、最後に、白金含有量が0.5重量%である白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体0.014重量部を混合して熱伝導性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0051】
このシリコーンゴム組成物およびそれを架橋して得られたシリコーンゴムの特性を次のようにして測定し、それらの結果を表1に示した。
[シリコーンゴム組成物の粘度]
シリコーンゴム組成物の粘度をTAインスツルメンツ社製レオメーター(AR500)を用いて測定した。ジオメトリーは直径20mm、2°のコーン/プレートを用いた。なお、粘度は0.3rpmと3.0rpmの異なる回転速度で測定し、0.3rpmにて測定後、5分間静止したのち、3.0rpmにて続けて粘度を測定した。それぞれ10分後の値を粘度とした。高回転時の粘度と低回転時の粘度の比が適度に大きいということは、シリコーンゴム組成物の取扱性が優れるだけでなく、チキソトロピーを示し、アルミナの沈降を抑制し、良好な貯蔵安定性を付与できることを意味する。
【0052】
[シリコーンゴム組成物の成形性]
シリコーンゴム組成物を厚さ1mmとなるように0.2mm厚の四フッ化エチレン製フィルムの間に挟み込み、150℃×15分間加熱架橋させた。その後、四フッ化エチレン製フィルムを剥がし取り、シリコーンゴムシートを成形できたかどうかを観察した。均一なシリコーンゴムシートを成形できた場合を成形性良好として:○、シート状には成形できたももの、部分的に強度が弱い個所があった場合を成形性やや良好として:△、シート状の成形できなかったり、成形できたとしても強度が弱い場合を成形性不良として:×、として評価した。
【0053】
[シリコーンゴムの接着強さ]
シリコーンゴム組成物を、被着体{株式会社パルテック製のアルミニウム板(JIS H 4000、A1050P)}の間に挟み込んだ後、150℃×30分間加熱することにより架橋させた。なお、接着面積は25mm×10mmとし、接着層の厚さは1mmとした。このシリコーンゴムの引張せん断接着強さをJIS K 6249の規定に従って測定した。
【0054】
[シリコーンゴムの熱伝導率]
シリコーンゴムの熱伝導率を定常法に従って、日立製作所株式会社製の樹脂材料熱抵抗測定装置により面積1cm×1cm、厚さ1mmのシートの50℃での熱抵抗を測定し、その熱抵抗値から熱伝導率を算出した。
【0055】
[実施例2]
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(I)の代わりに、参考例2で調製したジメチルポリシロキサン(II)を用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物およびこれを架橋して得られたシリコーンゴムの特性を実施例1と同様にして測定し、それらの結果を表1に示した。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(I)の代わりに、式:
【化28】

で表されるジメチルポリシロキサンを用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物およびこれを架橋して得られたシリコーンゴムの特性を実施例1と同様にして測定し、それらの結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
[実施例3]
混合装置を用いて、参考例1で調製したジメチルポリシロキサン(I)1.745重量部、平均粒径が40μmである球状アルミナ粉末13.95重量部、平均粒径が1.3μmである不定形アルミナ粉末9.3重量部、およびチバガイギー社製2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.015重量部を混合してシリコーン組成物を調製した。
【0059】
このシリコーン組成物の特性を次のようにして測定し、その結果を表2に示した。
[シリコーン組成物の粘度]
シリコーン組成物の粘度を実施例1と同様の方法で測定した。
[シリコーン組成物の熱伝導率]
シリコーン組成物の熱伝導率を定常法に従って、日立製作所株式会社製の樹脂材料熱抵抗測定装置により面積1cm×1cm、厚さ100〜200μmでの50℃での熱抵抗を測定し、その熱抵抗値の線形近似から熱伝導率を算出した。なお、熱伝導率は架橋前のグリース状態で測定した。
【0060】
[シリコーン組成物の架橋性]
図1に示した方法によりシリコーン組成物の架橋性を評価した。すなわち、0.1mlのシリコーン組成物を5cm×5cmのすりガラス板1上に塗布し、四隅に厚さ1mmのスペーサーを使用して同じすりガラス板1で挟みこんだものを試験体とした。紫外線照射前および紫外線照射後について、それぞれの試験体を100℃で6時間放置した後のシリコーン組成物あるいはシリコーン架橋物からのオイル成分(未架橋成分)の滲み出しを、式:
X+Y−2R
X:縦方向に滲み出したオイル成分の幅(mm)
Y:横方向に滲み出したオイル成分の幅(mm)
R:シリコーン組成物あるいはシリコーン架橋物の幅(mm)
で評価した。なお、この値が小さいほど、シリコーン組成物の架橋性が良好で、未架橋成分の染み出しが少ないことを意味する。また、紫外線照射には、ウシオ電機株式会社製の高圧水銀ランプUVL−4000−Oを使用し、照射の条件は254nmの紫外線を0.54J/cm2の光量で1回あるいは3回とした。
【0061】
[実施例4]
実施例3において、ジメチルポリシロキサン(I)の代わりに、参考例2で調製したジメチルポリシロキサン(II)を用いた以外は実施例3と同様にしてシリコーン組成物を調製した。このシリコーン組成物の特性を実施例3と同様にして測定し、その結果を表2に示した。
【0062】
[比較例2]
実施例3において、ジメチルポリシロキサン(I)1.745重量部の代わりに、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6.5重量部を用い、チバガイギー社製2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの配合量を0.5重量部とした以外は実施例3と同様にしたが、均一なシリコーン組成物を得ることはできなかった。
【0063】
【表2】

【0064】
[実施例5]
混合装置を用いて、参考例1で調製したオルガノポリシロキサン(I)0.504重量部、平均粒径が40μmである球状アルミナ粉末13.95重量部、平均粒径が1.3μmである不定形アルミナ粉末9.3重量部、および粘度が400mPa・sである分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.44重量%)1.258重量部を混合してグリース状シリコーン組成物を調製した。
【0065】
このシリコーン組成物の特性を次のようにして測定し、その結果を表3に示した。
[シリコーン組成物の粘度]
シリコーン組成物の粘度を、実施例1において、ジオメトリーに直径20mmのプレートを用い、シリコーン組成物の厚さを200μmとした以外は実施例1と同様に測定した。
[シリコーン組成物の熱伝導率]
グリース状シリコーン組成物の熱伝導率を定常法に従って、日立製作所株式会社製の樹脂材料熱抵抗測定装置により面積1cm×1cm、厚さ100〜200μmでの50℃での熱抵抗を測定し、その熱抵抗値の線形近似から熱伝導率を算出した。
【0066】
【表3】

【0067】
[実施例6]
混合装置を用いて、参考例1で調製したジメチルポリシロキサン(I)1.707重量部、平均粒径が40μmである球状アルミナ粉末13.95重量部、平均粒径が1.3μmである不定形アルミナ粉末9.3重量部、粘度が5mPa・sであり、一分子中に平均5個のケイ素原子結合水素原子を有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.76重量%)0.04重量部{上記ジメチルポリシロキサン(I)中のビニル基1モルに対して、本成分に含まれているケイ素原子結合水素原子が0.43モルとなる量}、および白金含有量が0.5重量%である白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体0.001重量部を混合してシリコーン組成物を調製した。
【0068】
このシリコーン組成物の特性を次のようにして測定し、その結果を表4に示した。
[シリコーン組成物の粘度]
シリコーン組成物の粘度を、実施例1において、ジオメトリーに直径20mmのプレートを用い、シリコーン組成物の厚さを200μmとした以外は実施例1と同様に測定した。
[シリコーン組成物の架橋性]
シリコーン組成物の架橋性は、150℃、30分間の加熱後の粘度を測定して確認した。なお、このシリコーン組成物は、150℃、30分間の加熱により、増粘したグリース状を呈した。このシリコーン組成物の適度な粘度上昇は、例えば、電子部品を実装した基板上へシリコーン組成物を塗布した後、加熱により、シリコーン成分の滲み出しを抑制できることを意味する。
【0069】
[シリコーン組成物の熱伝導率]
シリコーン組成物の熱伝導率を定常法に従って、日立製作所株式会社製の樹脂材料熱抵抗測定装置により面積1cm×1cm、厚さ100〜200μmでの50℃での熱抵抗を測定し、その熱抵抗値の線形近似から熱伝導率を算出した。なお、熱伝導率は反応前のグリース状態で測定した。
【0070】
[実施例7]
混合装置を用いて、参考例2で調製したオルガノポリシロキサン(II)1.653重量部、平均粒径が40μmである球状アルミナ粉末13.95重量部、平均粒径が1.3μmである不定形アルミナ粉末9.3重量部、ビス(p−メチルベンゾイル)パーオキサイドを50重量%含有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(粘度=10,000mPa・s)0.1重量部を混合してシリコーン組成物を調製した。このシリコーン組成物の特性を実施例6と同様にして測定し、その結果を表4に示した。なお、このシリコーン組成物は、150℃、30分間の加熱によりシリコーンゴムを形成したため、加熱後の粘度測定はできなかった。
【0071】
[実施例8]
混合装置を用いて、参考例1で調製したオルガノポリシロキサン(I)1.736重量部、平均粒径が40μmである球状アルミナ粉末13.95重量部、平均粒径が1.3μmである不定形アルミナ粉末9.3重量部、ジブチルスズジラウレート0.018重量部を混合してシリコーン組成物を調製した。このシリコーン組成物の特性を実施例6と同様にして測定し、その結果を表4に示した。なお、シリコーン組成物の架橋性は次のように評価した。
[シリコーン組成物の架橋性]
シリコーン組成物の架橋性は、25℃、55%RH×4日養生後の粘度を測定して確認した。なお、このシリコーン組成物は、25℃、55%RH×4日養生後、増粘したグリース状を呈した。シリコーン組成物の適度な粘度上昇は、電子部品を実装した基板上にシリコーン組成物を塗布した後、シリコーン成分の滲み出しを抑制できることを意味する。
【0072】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、(メタ)アクリロキシ基、およびケイ素原子結合加水分解性基を有する新規な化合物であり、無機質粉末の表面処理剤、特には、熱伝導性粉末の表面処理剤、あるいはシリコーンマクロモノマーとして各種共重合体の原料に利用することができる。また、本発明のシリコーン組成物は、このようなオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤としているので、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好で、適度なチキソトロピーを示し、流れ性がコントロールされているので、ディスペンサー等の塗布により電気・電子部品の放熱剤として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例3、4において、シリコーン組成物の架橋性を評価するために用いた試験体の上面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 すりガラス板
2 シリコーン組成物あるいはシリコーン架橋物
3 滲み出したオイル成分
X 縦方向に滲み出したオイル成分の幅
Y 横方向に滲み出したオイル成分の幅
R シリコーン組成物あるいはシリコーン架橋物の幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、nは5〜1,000の整数であり、aは1または2である。}
で表されるオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
無機質粉末の表面処理剤である、請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
無機質粉末が熱伝導性粉末である、請求項2記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
(A)オルガノポリシロキサン{ただし、下記(C)成分を除く。}、(B)熱伝導性充填剤、および(C)一般式:
【化2】

{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、nは5〜1,000の整数であり、aは1または2である。}
で表されるオルガノポリシロキサンから少なくともなるシリコーン組成物。
【請求項5】
さらに、(D)架橋剤を含有する、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
(B)成分の平均粒径が0.01〜100μmである、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
(B)成分がアルミナ粉末である、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
(B)成分が、(B1)平均粒径が5〜50μm(但し、5μmを含まない。)である球状もしくは丸み状アルミナ粉末と(B2)平均粒径が0.1〜5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物からなる、請求項7記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
(B)成分が、(B1)成分30〜90重量%と(B2)成分10〜70重量%からなる、請求項8記載のシリコーン組成物。
【請求項10】
(B)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して500〜2,500重量部である、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項11】
(C)成分の含有量が、(B)成分100重量部に対して0.1〜10重量部である、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項12】
(B)成分が、(A)成分中で(C)成分により表面処理されている、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項13】
(B)熱伝導性充填剤、および(C)一般式:
【化3】

{式中、R1は脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、R2は同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3は酸素原子または二価炭化水素基であり、R4は(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基であり、R5はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、nは5〜1,000の整数であり、aは1または2である。}
で表されるオルガノポリシロキサンから少なくともなるシリコーン組成物。
【請求項14】
さらに、(D)架橋剤または(E)光増感剤を含有する、請求項13記載のシリコーン組成物。
【請求項15】
(B)成分の平均粒径が0.01〜100μmである、請求項13記載のシリコーン組成物。
【請求項16】
(B)成分がアルミナ粉末である、請求項13記載のシリコーン組成物。
【請求項17】
(B)成分が、(B1)平均粒径が5〜50μm(但し、5μmを含まない。)である球状もしくは丸み状アルミナ粉末と(B2)平均粒径が0.1〜5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物からなる、請求項16記載のシリコーン組成物。
【請求項18】
(B)成分が、(B1)成分30〜90重量%と(B2)成分10〜70重量%からなる、請求項17記載のシリコーン組成物。
【請求項19】
(B)成分の含有量が、(C)成分100重量部に対して500〜2,500重量部である、請求項13記載のシリコーン組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2006−169411(P2006−169411A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365159(P2004−365159)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】