説明

オルガノポリシロキサン硬化性組成物、その硬化被膜、被覆基材およびその組成物の硬化方法

【解決手段】(A)エホ゜キシ基との反応性官能基含有アクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、着色顔料(a3)および必要に応じて体質顔料(a4)を含有する有機質組成物と、(B)エホ゜キシ基含有シラン化合物またはそのオリコ゛マー成分(b1)、シリコーン樹脂成分(b2)および必要に応じて特定のアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)を含有する無機質組成物とからなるオルカ゛ノホ゜リシロキサン硬化性組成物、その硬化被膜、その被膜で表面が被覆されている基材およびその組成物の硬化方法。
【効果】上記組成物は、2液型で両組成物(A)、(B)をそれぞれ別個に貯蔵保管し、使用時に混合して使用するので、2液とも貯蔵安定性に優れ、その結果、付着性および光沢性が向上した硬化被膜を形成することができ、また塗料として有機塗料の古い塗膜上に塗り替え塗装することができる。この硬化被膜は、耐候性に優れている。また、この組成物は、常温硬化と現場塗装が可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、特にオルガノポリシロキサン系塗料として現場塗装が可能な常温硬化型のオルガノポリシロキサン硬化性組成物、その硬化被膜、その硬化被膜が表面に形成されている被覆基材、およびその組成物の硬化方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】従来、オルガノポリシロキサン系塗料として、たとえば耐熱性、耐候性等に優れた珪素含有ビニル系共重合体からなる塗料組成物が広く用いられている(特公昭58−215409号公報、特開昭58−19361号公報、特開昭60−47076号公報、特公昭63−54747号公報、特公平1−20662号公報、特公平2−30350号公報、特公平3−7708号公報等)。
【0003】しかしながら、このような珪素含有ビニル系共重合体からなる塗料組成物は、耐クラック性に乏しい。また、特開平5−163463号公報には、オルガノシロキサンの縮合物からなる塗料組成物が記載されているが、この組成物も耐クラック性に乏しい。
【0004】さらに、たとえば珪素含有ビニル系共重合体とアルコキシシラン縮合物との混合液(a)と、金属化合物(b)とからなるオルガノポリシロキサン系塗料組成物では、混合液(a)の貯蔵安定性が乏しく24時間程度でゲル化してしまう。また、これらの3成分をそれぞれ別々の容器に保存し取扱いなどしたのでは、作業性、取扱い性が悪い。
【0005】また、従来のオルガノポリシロキサン系塗料は、オルガノポリシロキサン樹脂からなる主剤と、硬化促進剤(酸、塩基、金属触媒)との組合せからなる加熱硬化型塗料が多い。このような塗料は、顔料をオルガノポリシロキサン樹脂中で分散させるため、塗料貯蔵中に変質する虞がある。しかも、従来のオルガノポリシロキサン系塗料は、有機塗料の古い塗膜との付着性(密着性)に劣っているため、有機塗料の古い塗膜上に塗り替えを目的とする塗装ができない。
【0006】したがって、貯蔵安定性に優れるとともに、有機塗料の古い塗膜との付着性に優れた、現場塗装が可能な常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料として好適なオルガノポリシロキサン硬化性組成物の出現が望まれている。
【0007】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、貯蔵安定性に優れるとともに、有機塗料の古い塗膜との付着性に優れた、現場塗装が可能な常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料として好適なオルガノポリシロキサン硬化性組成物、その硬化被膜、その硬化被膜が表面に形成されている被覆基材、およびその組成物の硬化方法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、および着色顔料(a3)を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)、およびシリコーン樹脂成分(b2)を含有する無機質組成物とからなることを特徴としている。
【0009】上記有機質組成物(A)中に、体質顔料(a4)が含まれていてもよい。上記有機質組成物(A)を構成するアクリル樹脂成分(a1)としては、アミノ基含有アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0010】また、上記無機質組成物(B)中に、一般式 R1nSi(OR24-n(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされるアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)が含まれていてもよい。
【0011】本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる2液型の組成物で、これらの2液は、使用時までそれぞれ別個の容器にて貯蔵保管される。
【0012】上記のような本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる2液型塗料として用いることができる。
【0013】本発明に係る硬化被膜は、上記の、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物から形成されてなることを特徴としている。この硬化被膜は、2液型塗料としてのオルガノポリシロキサン硬化性組成物から形成された硬化塗膜であってもよい。
【0014】本発明に係る被覆基材は、上記の、本発明に係る硬化被膜で表面が被覆されていることを特徴としている。本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法は、上記の有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とを接触させることを特徴としている。
【0015】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物、その硬化被膜、被覆基材およびその組成物の硬化方法について具体的に説明する。
【0016】本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる常温硬化型の2液型(塗料)組成物である。すなわち、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とを接触させて常温硬化させることができる。
【0017】<有機質組成物(A)>本発明で用いられる有機質組成物(A)は、エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、着色顔料(a3)、および必要に応じて体質顔料(a4)を含有している。
【0018】アクリル樹脂成分(a1)本発明で用いられるエポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)は、エポキシ基との反応性官能基を有する(メタ)アクリレートまたはその誘導体からなるアクリルモノマーの重合体である。
【0019】エポキシ基との反応性官能基としては、具体的には、アミノ基、酸無水基などが挙げられる。中でも、アミノ基が好ましい。このエポキシ基との反応性官能基は、無機質組成物(B)を構成するエポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)のエポキシ基と反応し、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化に寄与する。
【0020】エポキシ基との反応性官能基を有する(メタ)アクリレートまたはその誘導体としては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0021】アクリル樹脂成分(a1)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。アクリル樹脂成分(a1)は、有機質組成物(A)100重量部に対して、通常20〜70重量部、好ましくは30〜65重量部、さらに好ましくは30〜60重量部の量で用いられる。
【0022】硬化触媒成分(a2)本発明で用いられる有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)は、無機質組成物(B)を構成するシリコーン樹脂成分(b2)の硬化に寄与する。
【0023】このような硬化触媒成分(a2)として用いられる有機金属化合物としては、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ジブチル錫ジオクトエート、テトラノルマルブトキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、アルミキレート(アルミニウムブトキシエチルアセトアセテート)などが挙げられる。中でも、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレートが好ましい。
【0024】有機金属化合物は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。硬化触媒成分(a2)は、有機質組成物(A)100重量部に対して、通常0.1〜2.0重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部の量で用いられる。
【0025】着色顔料(a3)本発明で用いられる着色顔料(a3)は、特に制限はなく、従来公知の着色顔料、たとえばカーボンブラック、二酸化チタン、弁柄、酸化鉄、水酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0026】着色顔料(a3)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。着色顔料(a3)は、有機質組成物(A)100重量部に対して、通常3〜60重量部、好ましくは3〜55重量部、さらに好ましくは3〜50重量部の量で用いられる。
【0027】着色顔料(a3)および必要に応じて体質顔料(a4)等を有機系樹脂中で分散させることにより、得られる有機質組成物(A)の粘度安定性が向上し貯蔵性安定性が良くなり、また光沢性および付着性が安定した被膜を形成することができる2液性のオルガノポリシロキサン硬化性組成物を得ることができる。調色も有機系樹脂を用いることにより水分等の影響を受けにくくなる。
【0028】体質顔料(a4)本発明で必要に応じて用いられる体質顔料(a4)は、従来公知の体質顔料であり、たとえば沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カリ長石、カオリン、アルミナホワイト、クレー、タルク、ベントナイト、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、シリカ微粉末などが挙げられる。中でも、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カリ長石が好ましい。
【0029】体質顔料(a4)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明で用いられる有機質組成物(A)は、アクリル樹脂成分(a1)からなる有機質系樹脂中に、着色顔料(a3)、または着色顔料(a3)および体質顔料(a4)を分散させてエナメル化させているので、貯蔵安定性に優れている。
【0030】体質顔料(a4)は、必要に応じて、有機質組成物(A)100重量部に対して、通常5〜50重量部、好ましくは5〜45重量部、さらに好ましくは5〜40重量部の量で用いられる。
【0031】その他の成分本発明で用いられる有機質組成物(A)中に、必要に応じて、脱水剤、増粘剤、有機溶剤、染料、顔料分散剤、沈殿防止剤、タレ止め剤、消泡剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0032】脱水剤としては、具体的には、オルト酢酸メチル、ソジウムアルミノシリケートなどが挙げられる。増粘剤としては、具体的には、合成微粉シリカ、ポリアマイドワックスなどが挙げられる。
【0033】有機溶剤としては、有機質組成物(A)および無機質組成物(B)中の各成分に対して実質的に不活性であり、かつ、これらの組成物中のポリマーなどの成分を溶解あるいは分散し得る限り、塗工作業性等の観点から従来公知の有機溶剤を広く用いることができる。
【0034】このような有機溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、硬化方法などにより、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】<無機質組成物(B)>本発明で用いられる無機質組成物(B)は、エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)、シリコーン樹脂成分(b2)、および必要に応じて特定のアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)を含有している。
【0036】エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)本明で用いられるエポキシ基を有するシラン化合物としては、具体的には、γ- グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のγ- グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン;γ- グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のγ- グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;3,4-エポキシシクロヘキシルエチルメチルジメトキシシラン等の3,4-エポキシシクロヘキシルジアルキルジアルコキシシラン;3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリプロポキシシラン等の3,4-エポキシシクロヘキシルアルキルトリアルコキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、γ- グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、γ- グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが好ましい。
【0037】本発明では、上記のようなエポキシ基含有シラン化合物を用いることができるし、またこれらの化合物の縮合物であるオリゴマーも用いることができる。オリゴマーとしては、流動性の良いオリゴマーが用いられ、その分子量は通常、200〜1,000、好ましくは200〜500程度である。
【0038】これらのエポキシ基含有シラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。エポキシ基含有シラン化合物またはそのオリゴマー(b1)は、無機質組成物(B)100重量部に対して、通常3〜25重量部、好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜20重量部の量で用いられる。エポキシ基含有シラン化合物またはそのオリゴマー(b1)を上記のような量で用いると、被塗物との付着性に優れた被膜(塗膜)を形成できる組成物が得られる。
【0039】本発明で用いられるエポキシ基含有シラン化合物またはそのオリゴマー(b1)と、上述した有機質組成物(A)を構成するエポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)とを接触させると、エポキシ基とエポキシ基との反応性官能基との間で反応が起こり、アクリル樹脂成分(a1)は硬化する。本発明においては、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)は、使用するまでの間、それぞれ別個の容器にて貯蔵保管されるので、貯蔵中に、このような硬化反応は生じない。
【0040】シリコーン樹脂成分(b2)本発明で用いられるシリコーン樹脂成分(b2)は、主骨格がシロキサン(−Si−O−Si−)結合で構成され、側鎖にメチル基やフェニル基等の有機基が結合したオルガノポリシロキサンである。シロキサン結合は炭素−炭素結合に比較し結合エネルギーが高く、結合距離が長く、結合角が大きいため、シリコーン樹脂成分(b2)は、耐熱性、耐寒性、柔軟性、耐光性、電気絶縁性に優れている。
【0041】シリコーン樹脂成分(b2)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。シリコーン樹脂成分(b2)は、無機質組成物(B)100重量部に対して、通常40〜90重量部、好ましくは45〜85重量部、さらに好ましくは50〜80重量部の量で用いられる。
【0042】シリコーン樹脂成分(b2)は、有機質組成物(A)を構成する有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)と接触させると、硬化反応が起こるが、本発明においては、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)は、使用するまでの間、それぞれ別個の容器にて貯蔵保管されるので、貯蔵中に、このような硬化反応は生じない。
【0043】アルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)本発明で必要に応じて用いられるアルコキシシラン化合物は、下記の一般式で表わされる。
【0044】R1nSi(OR24-n上記式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示し、nは0〜3の整数を示す。
【0045】アルキル基としては、炭素原子数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基であり、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。
【0046】シクロアルキル基としては、炭素原子数5〜12、好ましくは6〜10のシクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
【0047】置換されたフェニル基としては、たとえば上記アルキル基で置換されたフェニル基などが挙げられる。モノアルコキシシラン化合物としては、具体的には、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ-n- プロピル-n- プロポキシシラン、トリイソプロピルイソプロポキシシラン、トリブチルブトキシシラン、トリメチルフェノキシシラン、トリフェニルメトキシシランなどが挙げられる。
【0048】ジアルコキシシラン化合物としては、具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ-n- プロピル- ジ-n- プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジブチルジブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0049】トリアルコキシシラン化合物としては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリシクロヘキソキシシランなどが挙げられる。
【0050】このようなアルコキシシラン化合物の縮合物は、たとえばアルコキシシラン化合物を、HCl等の酸触媒の存在下に脱水縮合反応させることにより得ることができる。このような反応により得られるアルコキシシラン化合物の縮合物としては、たとえば下記の式で表わされる縮合物が挙げられる。
【0051】R3−Si(OR42−〔−O−Si(OR42−〕n−OR4この式において、R3 は炭素原子数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、あるいは炭素原子数5〜12、好ましくは6〜10のシクロアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基であり、R4 は水素原子、炭素原子数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、あるいは炭素原子数5〜12、好ましくは6〜10のシクロアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基であり、nは1〜6、好ましくは1〜4の整数である。nが2以上である場合、複数のR4 は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。R3 およびR4 の基の具体例としては、アルコキシシラン化合物を表わす上記一般式におけるR1 、R2の具体例と同じ基を挙げることができる。
【0052】アルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。アルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)は、必要に応じて、無機質組成物(B)100重量部に対して、通常3〜30重量部、好ましくは3〜25重量部、さらに好ましくは5〜25重量部の量で用いられる。
【0053】本発明においては、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)は、使用するまでの間、それぞれ別個の容器にて貯蔵保管するので 上記有機質組成物(A)を構成する有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)と、無機質組成物(B)を構成するアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)との混合による貯蔵安定性の低下は問題にならない。
【0054】その他の成分本発明で用いられる無機質組成物(B)中に、必要に応じて、脱水剤、消泡剤、有機溶剤、レベリング剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0055】脱水剤としては、具体的には、オルト酢酸メチル、ソジウムアルミノシリケートなどが挙げられる。消泡剤としては、具体的には、ジメチルシリコーンオイル、アクリル−ブタジエン系消泡剤、アクリル系消泡剤、ビニル−エーテル系消泡剤などが挙げられる。
【0056】有機溶剤としては、有機質組成物(A)および無機質組成物(B)中の各成分に対して実質的に不活性であり、かつ、これらの組成物中のポリマーなどの成分を溶解あるいは分散し得る限り、塗工作業性等の観点から従来公知の有機溶剤を広く用いることができる。このような有機溶剤の具体例は、既に上述した通りである。
【0057】<硬化性組成物の貯蔵保管・塗装等>上記のような有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物(塗料組成物)においては、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とは、それぞれ別個の容器にて保管、運搬、取扱い等がなされる。本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、着色顔料等の顔料を有機系樹脂中に分散させた有機質組成物(A)と、顔料を含まない無機質組成物(B)とを別個の容器にて貯蔵保管し、使用時に、これらを混合して使用するので、白色等の無彩色を呈するような無機顔料だけでなく、赤色、青色、緑色等の有彩色を呈する有機顔料も分散安定性に優れ、高光沢の硬化被膜を形成し得る。
【0058】また、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物を構成する有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とは、通常、塗装時に従来公知の方法にて混練され、得られた混練物は、モルタル状、ペースト状、ペイント状、液状などの任意の性状で使用することができる。
【0059】主剤としての有機質組成物(A)と硬化剤としての無機質組成物(B)との重量配合比[(A)/(B)]は、通常1/1〜5/1、好ましくは1/1〜4/1である。
【0060】この混練の際には、各成分を季節、環境等に応じて加温、冷却等してもよく、また各成分を一度に、あるいは少量ずつ複数回に分けて添加・混合してもよい。また、この際には、従来より公知の混合機、分散機、攪拌機を使用でき、このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0061】また、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、従来公知の任意の方法で基材表面に塗装でき、塗装方法としては、たとえば吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、ローラー塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻き取り法、流し法、盛り付け、パッチング法などが挙げられ、自動化してもよく、手動にて塗装してもよい。
【0062】また、このような二液型のオルガノポリシロキサン硬化性組成物が塗装される基材(被塗物)の材質、形状、場所(位置)、構造などは特に限定されず、基材の材質としては天然物、合成物のいずれでもよく、たとえば紙、パルプ、金属(例:鉄等)、合金(例:ステンレス等)、岩石、セラミックス、スラッグ、アスファルト、木材、竹、繊維、プラスチック、コンクリート、ホーロー等が挙げられ、基材の塗装部位、場所あるいは形状としては、床、壁、外壁、タンク、塔、インゴット、煙道、煙突、道路、トンネル、橋梁、建材、建築物、機械・器具・装置等の各種部材、織物等の繊維製品、成形体、ハニカム体等が挙げられる。
【0063】特に、好適な基材(被塗物)としては、鉄等の金属製品、コンクリート製品、窯業セラミック・粘土類製品、ホーロー製品、木材・竹、紙等の天然素材製品、合成樹脂製品等が挙げられる。
【0064】本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、これらの基材表面に塗布されていてもよく、基材の内部や隙間に含浸、充填、注入等されていてもよい。またこれら基材表面には、プライマー処理、下地処理等が施されていてもよく、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物を塗装した後、さらにその表面に他の上塗り塗料が塗装されてもよい。
【0065】上記のような基材表面に、本発明のオルガノポリシロキサン硬化性組成物を塗装(含浸等を含む)すれば、耐久性、高度、耐汚染性等に優れた被膜(塗膜)が形成される。
【0066】このような2液型のオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、上記基材の補修材、下地処理材、前処理材、穴埋め材、仕上げ材、盛り付け材、滑り止め材、表面化粧仕上げ等として用いられる。
【0067】なお、この2液型のオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とを混練し、その混練物を基材に塗装した後、常温雰囲気下に放置すれば硬化させることができる。必要に応じて加熱乾燥することも可能である。
【0068】本発明に係る硬化被膜は、上記のようにして基材上に形成された、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物からなる被膜(塗膜)である。また、本発明に係る被覆基材は、このような被膜(塗膜)で表面が被覆されている基材である。
【0069】
【発明の効果】本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、2液型であり、使用するまでの間、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とに分けてそれぞれ別個の容器にて貯蔵保管し、使用時にこれらを混合して使用するので、2液とも貯蔵安定性に優れ、その結果、付着性および光沢性が向上した硬化被膜を形成することができる。
【0070】また、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、2液型塗料組成物として、従来のオルガノポリシロキサン系塗料に比し、有機塗料の古い塗膜との付着性に優れた硬化塗膜を形成するできるため、有機塗料の古い塗膜上に塗り替えを目的として塗装することができる。
【0071】さらに、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、2液型塗料組成物として、従来のオルガノポリシロキサン系塗料と同等以上の優れた耐候性を有する硬化被膜(硬化塗膜)を形成することができる。
【0072】さらにまた、本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物は、常温硬化させることが可能で、また現場塗装することも可能である。本発明に係る硬化被膜は、従来のオルガノポリシロキサン系塗料から形成される硬化被膜に比し、有機塗料の古い塗膜等との付着性に優れ、光沢性が向上している。
【0073】本発明に係る被覆基材は、本発明に係る硬化被膜で被覆されているので、基材の被覆表面は、従来のオルガノポリシロキサン系塗料から形成される硬化被膜に比し、有機塗料の古い塗膜等との付着性に優れ、光沢性が向上している。
【0074】本発明に係るオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法によれば、上記のような特性に優れた、本発明に係る硬化被膜および被覆基材を得ることができる。
【0075】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0076】なお、実施例等で行なった塗膜外観(色・光沢)、付着性、加温貯蔵安定性および促進耐候性についての試験は、下記に示す方法に従って行なった。
<塗料・塗膜の試験方法>塗料・塗膜の試験方法は、基本的にJIS K 5400に記載の試験方法に準拠し、試験塗板片の作製は、3.2mm厚のブラスト鋼板(JIS K 5410)に、下記の第1表に示す塗装仕様で供試塗料を吹き付け法により塗布し、乾燥条件は特記しない限り、常温乾燥で行なった。
【0077】
【表1】


【0078】(1)塗膜外観(色・光沢)
塗膜外観(色・光沢)は、JIS K 5400に準拠して、肉眼で観察した。
(2)付着性塗板試験片を、JIS K 5400に記載の碁盤目試験法に準拠して、密着剥離テストにより、25/25を「付着性有り」と評価し、24/25以下を「付着性無し」と評価した。
(3)加温貯蔵安定性JIS K 5400に記載の加温貯蔵安定性試験法に準拠して、塗料を加温貯蔵し、塗料の”容器の中での状態”、”塗装作業性”および”塗膜外観”の変化を調べ、貯蔵前に比べて著しい差異が無い場合を「良」、それ以外を「不良」と評価した。
(4)促進耐候性JIS K 5400に記載の促進耐候性試験法に準拠して、サンシャインカーボンアーク灯式による照射試験を行ない、塗板試験片の光沢および色差(ΔE)の変化を測定した。
【0079】
【実施例1〜3】第2表に示す成分、配合量からなる主剤と、第3表に示す成分、配合量からなる硬化剤とを混合し、得られた塗料の加温貯蔵安定性、その塗膜の外観(色、光沢)、付着性および促進耐候性について、上記方法に従って評価を行なった。その結果を第6表、第7表、第8表、図1および図2に示す。
【0080】
【表2】


【0081】
【表3】


【0082】
【比較例】第4表に示す成分、配合量からなる主剤と、第5表に示す成分、配合量からなる硬化剤とを混合し、得られた塗料の加温貯蔵安定性、その塗膜の外観(色、光沢)、付着性および促進耐候性について、上記方法に従って評価を行なった。その結果を第6表、第7表、第8表、図1および図2に示す。
【0083】
【表4】


【0084】
【表5】


【0085】
【表6】


【0086】
【表7】


【0087】
【表8】


【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1〜3および比較例で行なった光沢保持率の経時変化を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1〜3および比較例で行なった色差(ΔE)の経時変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、および着色顔料(a3)を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)、およびシリコーン樹脂成分(b2)を含有する無機質組成物とからなることを特徴とするオルガノポリシロキサン硬化性組成物。
【請求項2】前記有機質組成物(A)中に、体質顔料(a4)が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物。
【請求項3】前記有機質組成物(A)を構成するアクリル樹脂成分(a1)が、アミノ基含有アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物。
【請求項4】前記無機質組成物(B)中に、一般式 R1nSi(OR24-n(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされるアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物。
【請求項5】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)の2液からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物。
【請求項6】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる2液型塗料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物。
【請求項7】(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、および着色顔料(a3)を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)、およびシリコーン樹脂成分(b2)を含有する無機質組成物とからなるオルガノポリシロキサン硬化性組成物から形成されてなることを特徴とする硬化被膜。
【請求項8】前記有機質組成物(A)中に、体質顔料(a4)が含まれていることを特徴とする請求項7に記載の硬化被膜。
【請求項9】前記有機質組成物(A)を構成するアクリル樹脂成分(a1)が、アミノ基含有アクリル樹脂であることを特徴とする請求項7または8に記載の硬化被膜。
【請求項10】前記無機質組成物(B)中に、一般式 R1nSi(OR24-n(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされるアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)が含まれていることを特徴とする請求項7に記載の硬化被膜。
【請求項11】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)の2液からなることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の硬化被膜。
【請求項12】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる2液型塗料であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の硬化被膜。
【請求項13】(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、および着色顔料(a3)を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)、およびシリコーン樹脂成分(b2)を含有する無機質組成物とからなるオルガノポリシロキサン硬化性組成物から形成された硬化被膜で表面が被覆されていることを特徴とする被覆基材。
【請求項14】前記有機質組成物(A)中に、体質顔料(a4)が含まれていることを特徴とする請求項13に記載の被覆基材。
【請求項15】前記有機質組成物(A)を構成するアクリル樹脂成分(a1)がアミノ基含有アクリル樹脂であることを特徴とする請求項13または14に記載の被覆基材。
【請求項16】前記無機質組成物(B)中に、一般式 R1nSi(OR24-n(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされるアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)が含まれていることを特徴とする請求項13に記載の被覆基材。
【請求項17】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)の2液からなることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の被覆基材。
【請求項18】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる2液型塗料であることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の被覆基材。
【請求項19】(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分(a1)、有機金属化合物からなる硬化触媒成分(a2)、および着色顔料(a3)を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物またはそのオリゴマー成分(b1)、およびシリコーン樹脂成分(b2)を含有する無機質組成物とを接触させることを特徴とするオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法。
【請求項20】前記有機質組成物(A)中に、体質顔料(a4)が含まれていることを特徴とする請求項19に記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法。
【請求項21】前記有機質組成物(A)を構成するアクリル樹脂成分(a1)が、アミノ基含有アクリル樹脂であることを特徴とする請求項19または20に記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法。
【請求項22】前記無機質組成物(B)中に、一般式 R1nSi(OR24-n(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされるアルコキシシラン化合物またはその縮合物(b3)が含まれていることを特徴とする請求項19に記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法。
【請求項23】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)の2液からなることを特徴とする請求項19〜22のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法。
【請求項24】前記オルガノポリシロキサン硬化性組成物が、有機質組成物(A)と無機質組成物(B)とからなる2液型塗料であることを特徴とする請求項19〜22のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン硬化性組成物の硬化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2000−63612(P2000−63612A)
【公開日】平成12年2月29日(2000.2.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−238502
【出願日】平成10年8月25日(1998.8.25)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】