説明

オルソポックスウイルスの製造および精製方法

本発明は、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを、製造および精製する方法に関する。本発明は、本発明による方法から得られた、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルス、ならびに上記精製されたオルソポックスウイルスを含んでなる、癌、感染症、および/または自己免疫疾患の治療および/または予防用医薬組成物、好ましくはワクチン、ならびにその使用に関する。本発明はまた、本発明の方法により野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列および所望によりE1A核酸配列を含んでなる、カモ科に属する鳥類細胞から得られた不死化鳥類細胞株、特にノバリケン不死化鳥類細胞株の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスの製造および精製の分野に関する。本発明は特に、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)を、製造および精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルソポックスウイルスは、主に独特な形態、大型のDNAゲノム、および複製の場が細胞質であることによって区別される、直径200ないし300nmの複雑なエンベロープウイルスである。コペンハーゲンワクシニアウイルス(Vaccinia Virus:VV)株(GOEBEL et al., 1990, Virol. 179, 247-266 and 517-563; JOHNSON et al., 1993, Virol. 196, 381-401)および改変ワクシニアウイルスアンカラ(modified Vaccinia Virus Ankara:MVA)株(ANTOINE et al., 1998, Virol. 244, 365-396)を含むオルソポックスウイルスの数種のメンバーのゲノムが、マッピングおよび配列決定されている。VVは、そのおおよそ100がウイルス集合に関連する約200のタンパク質をコードする、約192kbの二本鎖DNAゲノムを有する。MVAは、ニワトリ胚線維芽細胞における、ワクシニアウイルスアンカラ株の500を超える連続継代によって製造された、高度に弱毒化されたワクシニアウイルス株である(MAYR et al., 1975, Infection 3, 6-16)。MVAウイルスは、寄託番号N602I−721により、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託された。MVAゲノムの完全配列を決定し、かつコペンハーゲンVVゲノムと比較することによって、ウイルスゲノム内に起こった変化の正確な同定、ならびにORF(Open Reading Frame:翻訳領域)の断片化を誘導する7個の欠失(IないしVII)および多数の変異を定義することが可能になる(ANTOINE et al., 1998, Virology 244, 365-396)。
【0003】
組み換え生ワクチン開発用のベクターとしてのオルソポックスウイルスの使用は、安全性への懸念および規制による影響を受けてきた。ワクチン接種にオルソポックスウイルスを使用する前には、ウイルスの精製が必要になる。利用できるオルソポックスウイルスの製造方法は、細胞株(例えばHelaS3)、発育鶏卵、またはニワトリ胚線維芽細胞(Chicken Embryo Fibroblast:CEF)内でのウイルスの複製を含んでなる。ウイルスの複製後に培地を廃棄し、細胞を溶解して細胞から放出したオルソポックスウイルスをスクロースクッション遠心分離(sucrose cushion centrifugation)によって精製する(KOTWAL and ABRAHAM; poxvirus growth, Purification and tittering in Vaccinia Virus and Poxvirology, 2004, 101-108, Humana Press Inc., Totowa; NJ; USA)。
【0004】
国際公開第07/147528号には、標的とする感染特異性をもたない野生型、弱毒化、および/または組み換えMVAを製造する方法が記載されており、これはパッケージング細胞(例えばCEF;細胞株)の培養を用意すること、前記培養細胞を感染させること、前記感染細胞を培養すること、製造されたMVAを、培養上清および/またはパッケージング細胞から回収すること、ならびに深層濾過、精密濾過、および透析濾過によってウイルスをさらに精製することを含んでなる。国際公開第07/147528号には、深層濾過、精密濾過、および透析濾過を行う際に、ヌクレアーゼの使用、さらに詳細にはヌクレアーゼとしてのBenzonase(登録商標)の使用は必要でないことが明記される。
【0005】
国際公開第08/138533号には、生物学的に活性のあるワクシニアウイルスを精製する方法が記載されており、これはリガンドが結合する固相基質へ、液相培養に含まれるワクシニアウイルスを負荷すること、基質を洗浄すること、およびウイルスを溶出することを含んでなる。
【発明の概要】
【0006】
オルソポックスウイルスの製造および精製のための数種の方法について記載されているにもかかわらず、代替法はなお必要とされている。本発明はこのような方法を提供する。
【0007】
本出願の全体にわたって用いられる「オルソポックスウイルス」は、痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス(VV)、例えばワクシニアウイル株:エルストリー、ウェスタンリザーブ、ワイス、NYVAC、NYCBOH、パリ、コペンハーゲン;ならびにそれらの誘導体、例えば改変ワクシニアウイルスアンカラ(modified Vaccinia Virus Ankara:MVA)、特にMVA575(ECACC V00120707)およびMVA−BN(ECACC V00083008)を指す。本発明によるオルソポックスウイルスは、未熟ウイルス(immature virus:IV)、細胞内成熟ウイルス(intracellular mature virus:IMV)、細胞内エンベロープウイルス(intracellular enveloped virus:IEV)、細胞結合エンベロープウイルス(cell-associated enveloped virus:CEV)、または細胞外エンベロープウイルス(extracellular enveloped virus:EEV)(SMITH et al. (2002), J. Gen. Virol., 83, 2915-2931)を区別しない。
【0008】
本出願の全体にわたって用いられる単数に関する言及(「a」および「an」)は、文脈が明らかに他を指示しない限り、それらが参照される構成要素または工程の「少なくとも1」、「少なくとも第1」、「1以上」、または「複数」を意味する意向で用いられる。
【0009】
本出願の全体にわたって用いられる「および/または」は、本明細書のいずれの箇所で用いられる場合でも、「および」、「または」、および前記の語により接続される要素のその他のいずれの組み合わせも意味する。
【0010】
本出願の全体にわたって用いられる「含んでなる(comprising)」および「含んでなる(comprise)」は、産物、組成物、および方法が、参照される構成要素または工程を含むが、他を除外しないことを意味するように意図される。「から本質的になる」が、産物、組成物、および方法を定義するために用いられる際、いずれの必須な意義のあるその他の構成要素または工程も除外されることを意味する。従って、列挙される構成要素から本質的になる組成物は、微量の混入物および薬剤的に許容される担体を除外しないであろう。「からなる」は、その他の構成要素または工程について、微量の要素にとどまらず除外することを意味する。
【0011】
本出願の全体にわたって用いられる「約」または「おおよそ」は、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%を意味する。
【0012】
本発明は、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造および精製する方法(すなわち方法A)に関し、この方法は以下の工程を含んでなる:
a)パッケージング細胞の培養物を用意し、
b)培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させ、
c)感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養し、
d)1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートし、
e)培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収し、
f)単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害し、かつ工程e)で回収されたオルソポックスウイルスが工程g)において陰イオン交換吸着剤へ吸着することを避けるのに適切な条件下で、前記オルソポックスウイルスに一価の塩を添加し、
g)核酸の捕捉を可能にするのに適切な条件下で、工程f)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを接触させ、
h)細胞片の除去を可能にするのに適切な条件下で、工程g)で得られた混合物を清澄化し、
i)通過画分(flow through)中に残るオルソポックスウイルスを回収するのに適切な条件下で、陰イオン交換吸着剤を一価の塩を含んでなる溶液により洗浄し、
j)工程h)で得られた通過画分と工程i)で得られた通過画分を濃縮し、
k)工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過(diafiltrating)すること。
【0013】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は動物性産物(パッケージング細胞を除く)を用いない。本出願の全体にわたって用いられる「動物性産物」は、生存する生命体の動物細胞内で、または動物細胞から製造されたいずれの化合物または化合物の集積も指す。
【0014】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、ワクチンの無菌性についての規制基準の完全な順守を確実にする、無菌的な工業規模の製造過程に適している。
【0015】
本出願の全体にわたって用いられる「弱毒化オルソポックスウイルス」は、目的とする被験体内におけるその病原性が実質的に減少するように改変された、いずれのオルソポックスウイルスも指す。好ましくはオルソポックスウイルスは、臨床的観点から非病原性となる程度まで、すなわち、オルソポックスウイルスに曝露された被験体が、対照被験体に比較して統計学的に有意に増大したレベルの病態を示さない程度まで弱毒化される。本発明の好ましい実施形態によれば、弱毒化オルソポックスウイルスは弱毒化VVまたは弱毒化MVAである。
【0016】
本出願の全体にわたって用いられる「組み換えオルソポックスウイルス」は、そのゲノム内に挿入された外来性配列を含んでなるオルソポックスウイルスを指す。本明細書で用いられる外来性配列は、親ウイルスに天然に存在しない核酸を指す。
【0017】
本出願の全体にわたって用いられる「パッケージング細胞」は、製造されるべきオルソポックスウイルスを感染させられる細胞を指す。パッケージング細胞は、初代細胞、組み換え細胞、および/または細胞株であってよい。例えば、組み換えウイルスベクターを持たない組み換えウイルスの製造に必要な要素を含む、組み換え細胞を用いることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、パッケージング細胞は不死化細胞株である。本出願の全体にわたって用いられる「不死化細胞株」は、培養によりヘイフリック限界を超えて増殖する細胞株を指す。
【0019】
本発明によれば、不死化細胞はカモ科(Anatidae family)またはキジ科ファミリーに属する鳥類細胞から好ましく得られる。カモ科の中でも、バリケン属またはマガモ属に属する細胞が特に好ましい。さらに好ましいものは、ノバリケン(Cairina moschata)またはマガモ種に属する不死化鳥類細胞株(immortalized avian cell lines)である。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、パッケージング細胞は、カモ科、好ましくはノバリケン種に属する鳥類細胞から得られた不死化鳥類細胞株である。
【0021】
本発明による好ましいノバリケン不死化鳥類細胞株は、国際公開第2007/077256号に記載される、テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株である。以下の不死化鳥類細胞株が特に好ましい:
−受託番号08060502により欧州細胞培養収集機関(European Collection of Cell Cultures:ECACC)に寄託されるT3−17490(図2、3、および4を参照)またはその誘導体;
−受託番号08060501により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT6−17490(図5、6、および7を参照)またはその誘導体。
【0022】
本発明によるその他の好ましいノバリケン不死化鳥類細胞株は、国際公開第2009/004016号に記載される、E1A核酸配列およびテロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株である。
【0023】
本出願の全体にわたって用いられる、寄託された不死化鳥類細胞株の「誘導体(derivative)」は、「関心のある物質」をコードする核酸配列を含んでなる不死化鳥類細胞株を指す。本明細書で用いられる「関心のある物質」は、薬理的活性のあるタンパク質、例えば増殖因子、増殖制御因子、抗体、抗原、免疫化もしくはワクチン接種などに有用なそれらの誘導体、インターロイキン、インスリン、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSF、インターフェロン(インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ)、血液凝固因子(例えば第VIII因子;第IX因子;tPA)またはそれらの組み合わせを含んでよいが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の方法に使用されてよいその他の不死化細胞株は:
−米国特許第5,879,924号に記載される、10日齢のイーストランシング系統(ELL−O)卵由来の自然発生不死化ニワトリ細胞株である、DF1細胞株;
−国際公開第2005/007840号に記載される、増殖因子および支持細胞層から徐々に分離した胚性幹細胞由来のEbxニワトリ細胞株;
−カモ胚永久細胞株である、DEC99細胞株(Ivanov et al. Experimental Pathology and Parasitology, 4/2000 Bulgarian Academy of Sciences)である。
【0025】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、パッケージング細胞は初代細胞である。本出願の全体にわたって用いられる「初代細胞」は、動物もしくはヒトの組織、臓器、または生命体から新たに分離された細胞を指し、この細胞は継続的かつ無制限に複製および分裂することができない。通常、初代細胞は細胞培養において100回未満、しばしば50回未満、しばしば25回未満分裂する。従って、初代細胞は不死化現象を起こさない。初代細胞には動物線維芽細胞または臍帯血リンパ球が含まれるが、これらに限定されない。本発明のさらに好ましい実施形態によれば、パッケージング細胞は初代または二次的な鳥類細胞、好ましくはニワトリ胚線維芽細胞(chicken embryo fibroblast:CEF)である。
【0026】
本発明によれば、パッケージング細胞の培養物を用意するために用いられる培地(すなわち工程a)において)、前記培養細胞にオルソポックスウイルスを感染させるために用いられる培地(すなわち工程b)において)、および前記の感染させたパッケージング細胞を培養するために用いられる培地(すなわち工程c)において)は、同じかまたは異なってよい。
【0027】
好ましい実施形態によれば、本発明で用いられる細胞用培地は動物性産物を含まない。動物性産物を含まない多くの培地について既に記載されており、それらのうちの幾つかは市販されている。例えば、293 SFM II;無血清培地馴化293-F 細胞;無血清培地馴化293-H 細胞;293fectin(商標)トランスフェクション試薬;CD 293 AGT(商標);CD 293 培地;FreeStyle(商標)293 発現システム;FreeStyle(商標)293培地;無血清培地馴化FreeStyle(商標)293-F細胞;アデノウイルス発現培地(Adenovirus Expression Medium: AEM);PER.C6(登録商標)細胞用増殖培地;CD 293 AGT(商標);CD 293 培地;無血清培地馴化COS-7L 細胞;EPISERF(登録商標)培地;OptiPro(商標)SFM;VP-SFM;VP-SFM AGT(商標)(全てInvitrogenより市販)が、本発明の過程における細胞用培地として用いられてよい。本発明で用いられる動物性産物を含まない細胞用培地は、自家製の培地であってもよい。
パッケージング細胞の培養物を用意する工程a)は当業者に公知である。
【0028】
パッケージング細胞が不死化細胞株である場合、前記不死化細胞株は適切な培地中で培養される。この方法は、表面に接着しての増殖、(微小)担体の存在下または非存在下での懸濁液中の増殖、またはそれらの組み合わせを含んでなってよい。培養は、例えばディッシュ、ローラーボトル、またはバイオリアクター内で、バッチ、フェドバッチ、連続系、ホローファイバーなどを用いて行うことができる。細胞培養を通してウイルスを大量製造するために、当該技術分野では、細胞を(微小)担体の存在下または非存在下で懸濁液中にて増殖可能にすることが好ましく、かつ動物性産物を含まない培地中にて培養可能にすることが好ましい。本発明で使用される細胞用培地は、好ましくは動物性産物を含まない。前述のように、動物性産物を含まない多くの培地について既に記載されており、それらのうちの幾つかは市販されている。
【0029】
パッケージング細胞がCEFである場合、前記CEFは特定病原体除去(Specific Pathogen Free:SPF)卵から好ましく抽出される。SPF卵は、例えばCharles River Laboratories(ウィルミントン、マサチューセッツ州、米国)から市販されている。前記卵は、好ましくは9日齢を超え、より好ましくは10ないし14日齢、さらに好ましくは12日齢である。胚抽出に先立ち、卵は好ましく消毒される。卵を消毒するための多くの方法および製品が、先行技術から入手できる。ホルモル溶液中でのインキュベーション(例えば2%ホルモル、1分)に続く、70%エタノールによる洗浄が特に好ましい。次に胚の細胞を分離して純化する。本発明の好ましい実施形態によれば、胚の細胞は、細胞間基質を破壊するための酵素による消化工程に供される。この目的のため、細胞間基質を消化できる酵素の使用が特に有用である。本発明による好ましい酵素には、トリプシン、コラゲナーゼ、プロナーゼ、ディスパーゼ、ヒアルロニダーゼ、およびノイラミニダーゼが含まれるがこれらに限定されない。本発明による、CEFを調製するために用いられる酵素は、好ましくは組み換え由来である。酵素は単独、または組み合わせて使用できる。本発明の好ましい実施形態によれば、ディスパーゼとトリプシン(例えば、Gibco(商標)のTrypLE select)の組み合わせが用いられる。当業者は、細胞を効率的に分離するための酵素濃度、温度、およびインキュベーションの長さを決定することができる。CEF培養の用意には、混入物を除去するための濾過工程および/または遠心分離工程をさらに含むことができる。本発明によれば、得られた初代CEFは、直接使用できるかまたは1回のさらなる細胞継代後の二次的なCEFとして使用できる。CEF(すなわち初代または二次的な)は、次に適切な細胞用培地中で培養される。本発明で用いられる細胞用培地は、好ましくは動物性産物を含まない。前述のように、動物性産物を含まない多くの培地について既に記載されており、それらのうちの幾つかは市販されている。本発明によれば、CEFはVP−SFM細胞用培地(Invitrogen)中で好ましく培養される。感染に先立ち、CEFは好ましくは1ないし5日間、より好ましくは1ないし2日間、さらに好ましくは2日間培養される。CEFは、好ましくは30℃ないし36.5℃の温度にて培養される。
【0030】
パッケージング細胞の培養物(工程a)で用意される)においてオルソポックスウイルスを感染させる工程b)は、当業者に公知である。本出願の全体にわたって用いられる「感染」は、ウイルス核酸の細胞への移行を指し、ここでウイルス性核酸が複製され、ウイルスタンパク質が合成されるか、または新たなウイルス粒子が集合する。当業者は、特定のウイルス製造のために最も適切なパッケージング細胞を選択することができる。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、オルソポックスウイルス、好ましくはMVAまたはVVの製造のために、国際公開第2007/077256号もしくは国際公開第2009/004016号に記載される、CEFまたは不死化鳥類細胞株の使用を含んでなる。パッケージング細胞の培養物(工程aで用意される)においてオルソポックスウイルスを感染させる工程b)は、前記パッケージング細胞の培養物を用意するために(すなわち工程aにおいて)用いられる細胞用培地と同じかまたは異なってよい適切な細胞用培地中で行われる。本発明に用いられる細胞用培地は、好ましくは動物性産物を含まない。前述のように、動物性産物を含まない多くの培地について既に記載されており、それらのうちの幾つかは市販されている。パッケージング細胞がCEFの場合、CEFの培養における感染の工程b)は、イーグル基礎培地(Invitrogen)中で行われる。細胞用培地1リットルあたり、好ましくは0.5ないし1.5、より好ましくは1.1ないし1.3、さらに好ましくは、約1.2胚が播種される。製造するオルソポックスウイルスがMVAである特定の実施形態によれば、MVAは、好ましくは0.001ないし0.1、より好ましくは0.03ないし0.07、さらに好ましくは約0.05のMOIにおいて、細胞培養容器へ播種される。製造するオルソポックスウイルスがVVである別の特定の実施形態によれば、VVは、好ましくは0.0001ないし0.1、より好ましくは約0.0001のMOIにおいて、細胞培養容器へ播種される。
【0031】
感染させたパッケージング細胞(工程b)から)を子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する工程c)は、当業者に公知である。
【0032】
パッケージング細胞がCEFの場合、感染させたCEFを培養する工程c)は、前記CEFの培養の用意に用いられる細胞用培地(すなわち工程a)において)と同じかまたは異なってよく、かつ前記CEFの培養におけるオルソポックスウイルスの感染に用いられる細胞用培地(すなわち工程b)において)と同じかまたは異なってよい、適切な細胞用培地中で行われる。本発明に用いられる細胞用培地は、好ましくは動物性産物を含まない。前述のように、動物性産物を含まない多くの培地について既に記載されており、それらのうちの幾つかは市販されている。本発明によれば、感染させたCEFの培養はイーグル基礎培地(Invitrogen)中で行われる。感染させたCEFは、好ましくは1ないし6日間、より好ましくは2ないし4日間、さらに好ましくは3日間培養される。感染させたCEFは、好ましくは37℃未満、より好ましくは30℃ないし36.5℃の温度にて培養される。
【0033】
1以上のヌクレアーゼ(すなわち、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ)の存在下でのインキュベーションである工程d)は、溶液中に存在する核酸(例えばDNA;RNA)を分解するために行われる。本発明に好ましく用いられるヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼは、以下のようにそれらの基質に基づいて分類できる:DNAを分解するデオキシリボヌクレアーゼ(deoxyribonuclease:DNase);RNAを分解するリボヌクレアーゼ(ribonuclease:RNase);ならびにDNAおよびRNAを分解するエンドヌクレアーゼ。エンドヌクレアーゼDNaseには、DNaseI、DNaseII、およびエンドデオキシリボヌクレアーゼIVが含まれるが、これらに限定されない。エンドヌクレアーゼRNaseには、RNaseI、RNaseIII、RNAseE、RNAseF、およびRNAsePが含まれるが、これらに限定されない。DNAおよびRNAを分解するエンドヌクレアーゼにはBenzonase(登録商標)が含まれるが、これに限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、工程c)で製造されたオルソポックスウイルスをインキュベートする工程d)は、Benzonase(登録商標)の存在下で行われる。Benzonase(登録商標)は、特定のヌクレオチド間の内部リン酸ジエステル結合を加水分解することによって、核酸(例えばDNA;RNA)を分解する。消化の完了により、溶液中に存在する全ての遊離核酸(例えばDNA;RNA)は、長さが3ないし8塩基の5’−1リン酸末端オリゴヌクレオチドに短縮される。Benzonase(登録商標)は、タンパク質分解活性を持たない。本発明で用いられるBenzonase(登録商標)は、好ましくは薬剤的に許容される。薬剤的に許容されるBenzonase(登録商標)は市販されている(EurogentecのME-0280-10を参照;Merckの、例えば1.01653.0001を参照)。
【0034】
本発明による、単数または複数のヌクレアーゼの作用の好ましい条件は:
−7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5、より好ましくは8.0のpH;
−1ないし2mMの範囲、好ましくは2mMである、Mg2+およびMn2+、好ましくはMg2+から選択される補助因子の濃度である(実施例1に記載される)。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、ヌクレアーゼは、22℃ないし28℃の温度、好ましくは23℃ないし27℃の温度、より好ましくは24℃ないし26℃の温度、さらに好ましくは25℃の温度にてインキュベートされる(実施例1に記載される)。この実施形態によれば、工程d)の持続時間は、好ましくは1ないし5時間、より好ましくは2時間である(実施例1に記載される)。
【0036】
本発明の好ましい別の実施形態によれば、ヌクレアーゼは、2℃ないし8℃の温度、好ましくは3℃ないし7℃の温度、より好ましくは4℃ないし6℃の温度、さらに好ましくは5℃の温度にてインキュベートされる。この別の実施形態によれば、工程d)の持続時間は、好ましくは10ないし20時間、より好ましくは18時間である。
【0037】
本発明によれば、工程d)で用いられる単数または複数のヌクレアーゼの濃度は、5ないし100U/mlの範囲、好ましくは5ないし50U/mlの範囲、より好ましくは10U/mlである。図1に示すように、50U/ml Benzonase(登録商標)の使用に比較すると、同条件下での10U/ml Benzonase(登録商標)の使用により、2時間の処理後(温度25℃;2mM Mg2+;pH8)、驚くべきことにDNA濃度は同等に減少する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程d)は、1以上の界面活性剤の添加をさらに含んでなる。界面活性剤には、Tween、Triton X-100(モノエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、サポニン、SDS、Brij 96、ポリドカノール、N−オクチルβ−D−グルコピラノシド、および炭酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。工程d)で用いられる好ましい界面活性剤はTweenである。Tweenには、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、およびTween 85(ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート)が含まれるが、これらに限定されない。工程d)で用いられる好ましいTweenはTween 80である。本発明によれば、工程d)で用いられる単数または複数の界面活性剤の濃度は、10ないし100μg/Lの範囲、好ましくは10ないし55μg/Lの範囲である。
【0039】
製造され、単数または複数のヌクレアーゼによって予め処理されたオルソポックスウイルスを、次に培養上清および/またはパッケージング細胞から回収する。
【0040】
オルソポックスウイルスをパッケージング細胞から回収する際(すなわちパッケージング細胞のみから、またはパッケージング細胞および上清から)、工程e)に先立ち、パッケージング細胞膜を破壊する工程があってよい。この工程において、パッケージング細胞からのオルソポックスウイルスの遊離が導かれる。パッケージング細胞膜の破壊は、当業者に公知の様々な技術によって誘導できる。これらの技術は、凍結/融解、低浸透圧性溶解、超音波処理(ソニケーターの使用による)、および顕微溶液化(マイクロフルイダイザーの使用による)を含んでなるが、これらに限定されない。ソニケーターは、例えばHeraeus PSP、Biologies、Misonix、またはGlenMillsから市販されている。本発明に用いられる好ましいソニケーターは、SONITUBE 20 kHz型SM 20-120-3、SONITUBE 36 kHz型SM 35/3WU、およびSONITUBE 35 kHz型SM 35-400-3(Heraeus PSP)である。マイクロフルイダイザーは、例えばMicrofluidics Corporationから市販されている。パッケージング細胞膜は、SLM Amincoフレンチプレスを用いてもまた破壊できる。パッケージング細胞膜は、高速ホモジナイザーを用いてもまた破壊できる。高速ホモジナイザーは、例えばSilverson Machines、またはIka-Labotechnikから市販されている。本発明に用いられる好ましい高速ホモジナイザーはSILVERSON L4R(Silverson Machines)である。パッケージング細胞膜の破壊後に得られる混合物は、パッケージング細胞から放出された核酸(例えばDNA)の、予め添加された(工程d)において)単数または複数のヌクレアーゼによる分解を可能にするため、攪拌しながら少なくとも1時間、さらにインキュベートすることができる。従って本発明の特定の実施形態によれば、工程e)の前に、
1.好ましくは高速ホモジナイザーを用いてまたは超音波処理によって、パッケージング細胞膜を破壊し、
2.工程1)で得られる混合物を少なくとも1時間インキュベートし、工程d)において添加された単数または複数のヌクレアーゼにより、パッケージング細胞から放出された核酸(例えばDNA)を分解する。
【0041】
本発明によれば、工程2)の持続時間は、好ましくは1ないし5時間、より好ましくは2時間である(実施例1に記載される)。
【0042】
本発明によれば、単数または複数のヌクレアーゼ(工程d)において予め添加された)は、工程2)の間に、22℃ないし28℃の温度、好ましくは23℃ないし27℃の温度、より好ましくは24℃ないし26℃の温度、さらに好ましくは25℃の温度にてインキュベートされる(実施例1に記載される)。
【0043】
工程e)で回収されたオルソポックスウイルスに一価の塩を添加する工程f)は、適切な条件下で:
−単数または複数のヌクレアーゼ活性を阻害すること;および
−工程g)においてオルソポックスウイルスの陰イオン交換吸着剤への吸着を避けること、すなわち、10%を超えるオルソポックスウイルスの陰イオン交換吸着剤への吸着を避けることを可能にする。従って、工程g)では核酸(例えばDNA)のみが陰イオン交換吸着剤へ吸着され得る。
【0044】
一価の塩にはNaClおよびKClが含まれるが、これらに限定されない。工程f)で用いられる好ましい一価の塩はNaClである。本発明によれば、工程f)における一価の塩の濃度は、200ないし300mM、好ましくは250mMまたは300mMの範囲である。本発明によれば、工程f)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。本発明によれば、工程e)で回収されたオルソポックスウイルスに一価の塩を添加する工程f)は、250mM、好ましくは300mMのNaClがpH8.0において用いられる、実施例1に記載される条件によって好ましく行われる。
【0045】
工程f)で得られた混合物を適切な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させる工程g)では、前記混合物に含まれる核酸(例えばDNA)の捕捉が可能になる。工程f)で行った処理のため、オルソポックスウイルスは陰イオン交換吸着剤に捕捉されない。
【0046】
本発明によれば、工程g)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる(実施例1に記載される)。
【0047】
本発明によれば、工程g)の持続時間は、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは1時間である(実施例1に記載される)。
【0048】
本発明によれば、工程g)で用いられる陰イオン交換吸着剤の官能基は、一級、二級、三級、および四級アミノ基、例えばジメチルアミノエチル(dimethylaminoethyl:DMAE)、ジエチルアミノエチル(diethylaminoethyl:DEAE)、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)、トリエチルアミノエチル(triethylaminoethyl:TEAE)、−R−CH(OH)−CH−N+−(CH基(Q基とも名付けられる;Streamline(登録商標)樹脂、Pharmaciaを参照)、およびその他の基、例えば形式正電荷を既に有するか、または7.0ないし9.0のpH範囲内で有し得るポリエチレンイミン(polyethyleneimine:PEI)である。工程g)で用いられる好ましい陰イオン交換吸着剤の官能基は、ジメチルアミノエチル(dimethylaminoethyl:DMAE)、ジエチルアミノエチル(diethylaminoethyl:DEAE)、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)、およびトリエチルアミノエチル(triethylaminoethyl:TEAE)からなる群から選択され、より好ましくはトリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)である。
【0049】
工程g)で用いられる陰イオン交換吸着剤は、例えばビーズ型基質または膜に存在してよい。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程g)で用いられる陰イオン交換吸着剤はビーズ型基質に存在する。基質は例えば、アガロース、親水性ポリマー、セルロース、デキストラン、シリカであってよい。鎖(例えばデキストラン鎖)が基質に結合される。上述の官能基は、化学的に安定な結合(例えばエーテル結合)を通して鎖に結合する。ビーズ型基質の好ましい官能基は、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)である。本発明によれば、ビーズ型基質のビーズの直径は、清澄化工程h)で用いられるフィルターの孔径よりも大きい。従ってビーズ型基質のビーズの直径は、好ましくは8μmよりも大きく、より好ましくは50μmないし150μmの直径、さらに好ましくは90μmないし120μmの直径、さらに一層好ましくは120μmの直径である。本発明の特性に基づき、工程h)での清澄化の間に、オルソポックスウイルス(直径200〜300nm)はフィルターの孔径を通過するであろう(すなわち、オルソポックスウイルスは通過画分中に回収されるであろう)。本発明に用いられるビーズ型基質の陰イオン交換吸着剤は、好ましくはオートクレーブ可能である。オートクレーブ可能なビーズ型基質の陰イオン交換吸着剤については、既に記載されており、それらのうちの幾つかは、例えばUNOsphere(登録商標)Q (BioRad)、UNOsphere(登録商標)S (BioRad)、STREAMLINE(商標)Q Sepharose(登録商標)XL (Amersham Biosciences)、STREAMLINE(商標)SP Sepharose(登録商標)XL (Amersham Biosciences)、またはBioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)として市販されている。本発明による、好ましいオートクレーブ可能なビーズ型基質の陰イオン交換吸着剤は、UNOsphere(登録商標)Q (BioRad)である。UNOsphere(登録商標)Q (BioRad)は、直径120μmで、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)官能基を有する親水性球状高分子ビーズである。工程f)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを接触させる工程g)は、陰イオン交換吸着剤がビーズ型基質にある前記交換吸着剤を用いて、実施例1に記載の条件により好ましく行われ、ここではUNOsphere(登録商標)Q (BioRad)が用いられる。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、工程g)で用いられる陰イオン交換吸着剤は膜に存在する。膜の官能基は以前に記載した通りであってよい。好ましい膜の官能基はトリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)である。本発明によれば、膜の孔径はオルソポックスウイルスの直径(すなわち200nm)よりも大きい。従って、オルソポックスウイルスは通過画分中に回収されるであろう。この点から、本発明によれば膜の孔径は1ないし5μmであり、好ましくは3μmの孔径である。本発明による膜の陰イオン交換吸着剤は、好ましくはオートクレーブ可能である。オートクレーブ可能な膜の陰イオン交換吸着剤については、既に記載されており、それらのうちの幾つかは、例えばSartobind(登録商標)75 Q (Sartorius)、CUNO PolyNet(商標)フィルター (例えばPolyNet(商標)PB P010、P020、P030、P050) または CUNO Betapure(商標)フィルター (例えばBetapure(商標)Z13-020、Z13-030、Z13-050)として市販されている。本発明による、好ましいオートクレーブ可能な膜の陰イオン交換吸着剤は、Sartobind(登録商標)75 Q (Sartorius)である。
【0052】
膜である陰イオン交換吸着剤を用いて工程g)を行う際、それに続く清澄化の工程h)(細胞片の除去を可能にする)は必要ではない。細胞片は、1ないし5μmの孔径、好ましくは3μmの孔径を有する膜によって保持される。
【0053】
工程g)で得られた混合物を清澄化する工程h)により、適切な条件下での細胞片の除去が可能になる。本発明によれば、工程h)での清澄化は深層濾過により好ましく行われる。深層濾過には、1以上の市販の製品、例えばSartoriusから市販されているSartopure(登録商標)フィルター(例えばSartopure(登録商標)PP2)、CUNO Incorporated APシリーズの深層フィルター(例えばAP01)、CUNO Incorporated CPシリーズの深層フィルター(例えばCP10, CP30, CP50, CP60, CP70, CP90)、CUNO Incorporated HPシリーズの深層フィルター(例えばHP10, HP30, HP50, HP60, HP70, HP90)、CUNO Incorporated Calif.シリーズの深層フィルター(例えばCA10, CA30, CA50, CA60, CA70, CA90)、CUNO Incorporated SPシリーズの深層フィルター(例えばSP10, SP30, SP50, SP60, SP70, SP90)、CUNO DelipidおよびDelipid Plusフィルター、Millipore Corporation CEシリーズの深層フィルター(例えばCE15, CE20, CE25, CE30, CE35, CE40, CE45, CE50, CE70, CE75)、Millipore Corporation DEシリーズの深層フィルター(例えばDE25, DE30, DE35, DE40, DE45, DE50, DE55, DE560, DE65, DE70, DE75)、Millipore Corporation HCフィルター(例えばA1HC, B1HC, COHC)、CUNO PolyNet(商標)フィルター(例えばPolyNet(商標)PB P050, P100, P200, P300, P400, P500, P700)、Millipore ClarigardおよびPolygardフィルター、CUNO Life Assureフィルター、ManCel Associates深層フィルター(例えばPR 12 UP, PR12, PR 5 UP);およびPALLまたはSeitzSchenk Incorporatedフィルターの使用が含まれるが、これらに限定されない。利用可能な深層フィルターユニットの清澄化能を改善するためには、孔径が小さくなる2以上のユニットを組み合わせると役立ち得る。この実施形態によれば、清澄化される混合物は、第1の深層フィルターユニットを通過してより大きな混入物を保持し、続いて第2の深層フィルターユニットを通過する。この点から、本発明の好ましい実施形態によれば、工程h)の清澄化は深層濾過により、好ましくは孔径8μmのフィルターと孔径5μmのフィルターを組み合わせて行われる。本発明で用いられる、孔径8μmおよび5μmの好ましいフィルターは、Sartoriusから市販されているSartopure(登録商標)フィルター(Sartopure(登録商標)PP2)である。深層濾過は、少なくとも1L/分の流速、好ましくは1L/分の流速で行われ得る。本発明によれば、工程h)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、好ましくは8.0のpHにおいて行われる。工程g)で得られた混合物を清澄化する工程h)は、実施例1に記載される条件により好ましく行われ、ここで清澄化は、孔径8μmのフィルターと孔径5μmのフィルターを組み合わせた深層濾過により、流速1L/分で行われる。
【0054】
工程h)での清澄化の間に、オルソポックスウイルス(直径200〜300nm)はフィルターの孔径を通過する。従って、オルソポックスウイルスは通過画分中に回収される。
【0055】
陰イオン交換吸着剤を一価の塩を含んでなる溶液で洗浄する工程i)により、通過画分内に残存するオルソポックスウイルスの適切な条件下での回収が可能になる。使用される一価の塩にはNaClおよびKClが含まれるが、これらに限定されない。工程i)で用いられる好ましい一価の塩はNaClである。本発明によれば、工程i)で用いられる一価の塩の濃度は200ないし300mMの範囲、好ましくは250mMまたは300mMである。本発明によれば、工程i)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。本発明の好ましい実施形態によれば、工程i)で用いられる一価の塩を含んでなる溶液は、100mM Tris−HCl、5%(w/v)スクロース、10mM グルタミン酸ナトリウム、および生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl、pH8.0(すなわちSO8緩衝液)を含んでなる、薬剤的に許容される溶液である。本発明のその他の好ましい実施形態によれば、工程i)で用いられる一価の塩を含んでなる溶液は、例えばTris緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、またはリン酸緩衝液を含んでなる、薬剤的に許容される溶液である。陰イオン交換吸着剤を一価の塩を含んでなる溶液で洗浄する工程i)は、好ましくは実施例1に記載される条件に従って行われ、ここで洗浄は250mM、好ましくは300mMのNaClを含んでなる、薬剤的に許容されるSO8緩衝液により行われる。
【0056】
工程h)で得られた通過画分と工程i)で得られた通過画分を濃縮する工程j)により、前記通過画分に存在するタンパク質の除去が可能になる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、濃縮工程j)は精密濾過により行われる。精密濾過は、大分子を濃縮及び精製する、圧力駆動の膜による処理である。さらに詳細には、溶液は、濃縮水中のオルソポックスウイルスを除外するが小分子(例えばタンパク質)は透過水中へとフィルターを通過するように選択された孔径のフィルターを通過する。精密濾過によって、濃縮溶液の容量は減少する。この点から、精密濾過は、0.2μm未満の孔径、好ましくは0.09ないし0.15μmの孔径、より好ましくは0.1μmの孔径を有するフィルターを用いて行われる。本発明で用いられるフィルターは、好ましくはオートクレーブ可能である。工程j)で用いられるオートクレーブ可能なフィルターは例えば、Prostak Microfiltration Modules (Millipore)のように市販されており、なかでもProstak Microfiltration Module PSVVAG021、PSVVAG041、およびSK2P12E1が好ましい。工程h)で得られた通過画分と工程i)で得られた通過画分を濃縮する工程j)は、好ましくは実施例1に記載される条件に従って行われ、ここで濃縮は0.1μmの孔径を有するフィルターを用いる精密濾過によって行われる。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、濃縮工程j)は限外濾過によって行われる。本発明による限外濾過は、好ましくはクロスフロー濾過である。クロスフロー濾過の原理は当業者に公知である(例えば、Richards, G. P. and Goldmintz, D., J. Virol. Methods (1982), 4 (3), pages 147-153. "Evaluation of a cross-flow filtration technique for extraction of polioviruses from inoculated oyster tissue homogenates"を参照)。
【0059】
工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分(例えば濃縮工程k)を精密濾過または限外濾過によって行った際の濃縮水)を透析濾過する工程k)は精密濾過の改善であり、オルソポックスウイルスを含んでなる前期画分を、前期画分中の不純物の濃度を減少させる効果のある溶液によって希釈することに関する。オルソポックスウイルスを含んでなる画分の希釈により、前記画分からさらに不純物を洗い流すことが可能になる。透析濾過は、バッチモード、半連続モード、または連続モードで実行され得ることが理解される。透析濾過工程k)は、オルソポックスウイルスが含まれる緩衝液の交換に都合よく用いることができる。例えば、精製過程で用いた緩衝液を薬剤的に許容される緩衝液と交換するために有用となり得る。本発明によれば、精密濾過は、0.2μm未満の孔径、好ましくは0.09ないし0.15μmの孔径、より好ましくは0.1μmの孔径を有するフィルターを用いて行われる。本発明で用いられるフィルターは、好ましくはオートクレーブ可能である。工程k)で用いられるオートクレーブ可能なフィルターは例えば、Prostak Microfiltration Modules (Millipore)のように市販されており、なかでもProstak Microfiltration Module PSVVAG021、PSVVAG041、およびSK2P12E1が好ましい。工程j)で得られた通過画分を透析濾過する工程k)は、好ましくは実施例1に記載される条件に従って行われ、ここで透析濾過は0.1μmの孔径を有するフィルターを用いて行われる。
【0060】
工程j)の濃縮と工程k)の透析濾過は、同じ型のフィルターを用いて都合よく行うことができる。
【0061】
本発明の方法Aは:
1.ゲル濾過工程(すなわち工程l));および
2.透析濾過工程(すなわち工程m))をさらに含んでいてよい。
【0062】
ゲル濾過工程(すなわち工程l):本発明によれば、工程k)で得られたサンプルは、3ないし160μm、好都合には80ないし160μm、好ましくは40ないし105μm、より好ましくは25ないし75μm、さらに好ましくは20ないし80μm、さらに一層好ましくは20ないし60μmの直径を有するビーズを含んでなる固体支持体において処理される。本発明によれば、前記支持体は、オルソポックスウイルスがビーズ内へ入らないように、オルソポックスウイルスの直径(すなわち200〜300nm)に対して閉ざされた多孔度を有する。一方で、より小さなサイズの分子はビーズ内へ入り、その移動は遅くなる。
【0063】
ゲル濾過工程l)で用いられる支持体は、例えばアガロース、デキストラン、アクリルアミド、シリカ、エチレングリコール/メタクリル酸塩共重合体、またはそれらの混合物、例えばアガロースとデキストランの混合物を基礎とすることができる。本発明によれば、支持体は官能基なしで好ましく用いられる。ゲル濾過クロマトグラフィー支持体は、例えば:
・エチレングリコール/メタクリル酸塩ゲル濾過クロマトグラフィー支持体(例えば、20ないし60μmのビーズ直径を有するToyopearl(登録商標)HW 55、Toyopearl(登録商標)HW 65、およびToyopearl(登録商標)HW 75、Tosohaas);
・アリルデキストラン/メチレンビスアクリルアミドゲル濾過クロマトグラフィー支持体(例えば、25ないし75μmのビーズ直径を有するSephacryl(商標)S300 HR;25ないし75μmのビーズ直径を有するSephacryl(商標)S400 HR;25ないし75μmのビーズ直径を有するSephacryl(商標)S500 HR;40ないし105μmのビーズ直径を有するSephacryl(商標)S1000 SF、全てPharmaciaから市販される);
・N−アクリルアミノヒドロキシプロパンジオールゲル濾過クロマトグラフィー支持体(例えば、80ないし160μmのビーズ直径を有するTrisacryl、Biosepra);
・アガロースゲル濾過クロマトグラフィー支持体(例えば、20ないし80μmのビーズ直径を有するMacro-Prep SE、Bio-Rad)
として市販される。
【0064】
エチレングリコール/メタクリル酸塩ゲル濾過クロマトグラフィー支持体(例えば、20ないし60μmのビーズ直径を有するToyopearl(登録商標)HW 55、Toyopearl(登録商標)HW 65、およびToyopearl(登録商標)HW 75、Tosohaas)が好ましい。
【0065】
本発明のゲル濾過工程l)に好ましい条件は:
−200mMないし2Mの範囲、好ましくは200mMないし1Mの範囲、より好ましくは500mMである、NaClおよびKClから選択され、好ましくはNaClである一価の塩の濃度;
−7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5、より好ましくは8.0のpHである。
【0066】
透析濾過工程m)は、透析濾過工程k)で以前に記載した方法および条件によって行われる。
【0067】
本発明によれば、以前に記載した方法Aの工程f)から工程l)の各工程の前に、1以上の安定剤の存在下で、オルソポックスウイルスを含んでなるサンプルをインキュベートする工程があってよい。本明細書で用いられる「安定剤」は、オルソポックスウイルスの保存を可能にする薬剤を指す。安定剤には、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ソルビトール、スタキオース、ラフィノース、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトール、グリセロール)、アミノ酸(例えば、Gly;Leu;Lys;Arg;Asp;Val;Glu)、界面活性剤(例えば、Triton X-100; Tween、例えばTween 20、Tween 80、またはTween 85)および塩(例えばNaCl;KCl)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、このインキュベーション工程で用いられる安定剤は糖類、好ましくはサッカロースである。本発明によれば、このインキュベーション工程で用いられるサッカロースの濃度は25ないし100g/Lの範囲、好ましくは50g/Lである。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、100mM Tris−HCl、5%(w/v)スクロース、10mM グルタミン酸ナトリウム、および生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl、pH8.0(すなわちSO8緩衝液)を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、例えばTris緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、またはリン酸緩衝液を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程の持続時間は、1ないし20時間、好ましくは18時間である。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、2℃ないし8℃の温度、好ましくは3℃ないし7℃の温度、より好ましくは4℃ないし6℃の温度、より好ましくは5℃の温度において行われる。安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、実施例1に記載するように、50g/Lサッカロースの存在下で、18時間、5℃の温度において好ましく行われる。
【0068】
本発明の方法Aの別の実施形態によれば、以前に記載したように、清澄化工程(工程h))は、オルソポックスウイルスを培養上清および/またはパッケージング細胞から回収する工程e)の後で行われる。
【0069】
本発明の別の実施形態によれば、単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害するため、および工程e)で回収されたオルソポックスウイルスが工程g)において陰イオン交換吸着剤へ吸着することを避けるために、前記オルソポックスウイルスに適切な条件下で一価の塩を添加する工程f)は行われない。
【0070】
この点から、本発明は、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造および精製する方法(すなわち方法B)にも関し、この方法は以下の工程を含んでなる:
a’)パッケージング細胞の培養物を用意すること;
b’)培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させること;
c’)感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養すること;
d’)1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートすること;
e’)培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収すること;
f’)工程e’)で回収されたオルソポックスウイルスを、
1.単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤、および所望により
2.1以上の安定剤
の存在下でインキュベートすること;
g’)オルソポックスウイルスおよび核酸の捕捉を可能にするため、工程f’)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを適切な条件下で接触させること;
h’)細胞片の除去を可能にするため、工程g’)で得られた混合物を適切な条件下で清澄化すること;
i’)オルソポックスウイルスを、一価の塩を含んでなる溶液により溶出すること;
j’)工程i’)で得られた混合物を濃縮すること;
k’)工程j’)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過すること。
【0071】
パッケージング細胞の培養物を用意する工程a’)については、以前に記載したパッケージング細胞の培養物を用意する工程a)を参照されたい。
【0072】
培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させる工程b’)については、以前に記載した培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させる工程b)を参照されたい。
【0073】
感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する工程c’)については、以前に記載した感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する工程c)を参照されたい。
【0074】
1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートする工程d’)については、以前に記載した1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートする工程d)を参照されたい。
【0075】
培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収する工程e’)については、以前に記載した培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収する工程e)を参照されたい。
【0076】
工程e’)で回収されたオルソポックスウイルスを次に、
1.単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤、および所望により
2.1以上の安定剤の存在下でインキュベートする(工程f’))。
【0077】
ヌクレアーゼ活性を阻害できる薬剤には、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸塩(ethylenediamine tetraacetate:EDTA);ジエチレントリアミン五酢酸塩(diethylenetriamine pentaacetate:DTPA);ニトリロ三酢酸塩(nitrilotriacetic acid:NTA))、一価の塩(例えばNaClまたはKCl)、プロテアーゼ、リン酸塩、一価の陽イオン(例えば、Na;Li;K;Ag)、塩酸グアニジン、および硫酸アンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。例えば、EDTA、DTPA、またはNTAのようなキレート剤は、以前に記載したように、単数または複数のヌクレアーゼ活性に必須の補助因子を構成する金属イオン(例えば、Mg2+;Mn2+)を除去する。一価の塩(例えばNaClまたはKCl)は、50ないし150mM、好ましくは約100mMの濃度でヌクレアーゼを不活性化する。リン酸塩および/または一価の陽イオン(例えば、Na;Li;K;Ag)は、約100mM、または100mMを超える濃度でヌクレアーゼを不活性化する。塩酸グアニジンおよび硫酸アンモニウムは、100mMを超える濃度でヌクレアーゼを不活性化する。本発明の好ましい実施形態によれば、工程f’)においてヌクレアーゼ活性を阻害できる薬剤はキレート剤であり、より好ましくはエチレンジアミン四酢酸塩(ethylenediamine tetraacetate:EDTA)である。本発明によれば、工程f’)で用いられるEDTAの濃度は5ないし20mMの範囲、好ましくは10mMである。本発明の別の好ましい実施形態によれば、工程f’)においてヌクレアーゼ活性を阻害できる薬剤は一価の塩、好ましくはNaCl、より好ましくは100mMのNaClである。本発明の別の好ましい実施形態によれば、工程f’)においてヌクレアーゼ活性を阻害できる薬剤は一価の塩およびキレート剤、好ましくはNaClおよびEDTA、より好ましくは100mMのNaClおよび10mMのEDTAである(実施例4に記載される)。
【0078】
本発明によれば、工程f’)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる(実施例4に記載される)。
【0079】
本発明によれば、工程f’)は、2℃ないし8℃の温度、好ましくは3℃ないし7℃の温度、より好ましくは4℃ないし6℃の温度、さらに好ましくは5℃の温度において行われる。本発明によれば、工程f’)の持続時間は5分ないし20時間である。好ましくは1ないし3時間、より好ましくは1時間である。本発明の好ましい実施形態によれば、工程f’)の持続時間は2ないし20時間、好ましくは18時間である。この実施形態によれば、工程e’)で得られたオルソポックスウイルスは、単数または複数のヌクレアーゼ活性を阻害できる1以上の薬剤に加え、1以上の安定剤の存在下でもインキュベートされる(以前に記載される)。工程f’)における安定剤とは、前記工程f’)において単数または複数のヌクレアーゼ活性を阻害できる単数または複数の薬剤による処理の間に、オルソポックスウイルスの保存を可能にする薬剤を指す。安定剤には、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ソルビトール、スタキオース、ラフィノース、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトール、グリセロール)、アミノ酸(例えば、Gly;Leu;Lys;Arg;Asp;Val;Glu)、界面活性剤(例えば、Triton X-100; Tween、例えばTween 20、Tween 80、またはTween 85)および塩(例えばNaCl;KCl)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、工程f’)で用いられる安定剤は糖類、好ましくはサッカロースである。本発明によれば、工程f’)で用いられるサッカロースの濃度は25ないし100g/Lの範囲、好ましくは50g/Lである。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、100mM Tris−HCl、5%(w/v)スクロース、10mM グルタミン酸ナトリウム、および生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl、pH8.0(すなわちSO8緩衝液)を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、例えばTris緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、またはリン酸緩衝液を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。
【0080】
工程f’)で得られた混合物を適切な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させる工程g’)では、前記オルソポックスウイルスおよび前記混合物に含まれる核酸(例えばDNA)の捕捉が可能になる。
【0081】
本発明によれば、工程g’)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる(実施例4に記載される)。
【0082】
本発明によれば、工程g’)の持続時間は、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは1時間である(実施例4に記載される)。
【0083】
本発明によれば、工程g’)で用いられる陰イオン交換吸着剤の官能基は、一級、二級、三級、および四級アミノ基、例えばジメチルアミノエチル(dimethylaminoethyl:DMAE)、ジエチルアミノエチル(diethylaminoethyl:DEAE)、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)、トリエチルアミノエチル(triethylaminoethyl:TEAE)、−R−CH(OH)−CH−N+−(CH基(Q基とも名付けられる;Streamline(登録商標)樹脂、Pharmaciaを参照)、およびその他の基、例えば形式正電荷を既に有するか、または7.0ないし9.0のpH範囲内で有し得るポリエチレンイミン(polyethyleneimine:PEI)である。工程g’)で用いられる好ましい陰イオン交換吸着剤の官能基は、ジメチルアミノエチル(dimethylaminoethyl:DMAE)、ジエチルアミノエチル(diethylaminoethyl:DEAE)、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)、およびトリエチルアミノエチル(triethylaminoethyl:TEAE)からなる群から選択され、より好ましくはトリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)である。
【0084】
工程g’)で用いられる陰イオン交換吸着剤は、例えばビーズ型基質または膜に存在してよい。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程g’)で用いられる陰イオン交換吸着剤はビーズ型基質に存在する。基質は例えば、アガロース、親水性ポリマー、セルロース、デキストラン、シリカであってよい。鎖(例えばデキストラン鎖)が基質に結合される。上述の官能基は、化学的に安定な結合(例えばエーテル結合)を通して鎖に結合する。ビーズ型基質の好ましい官能基は、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)である。本発明によれば、ビーズ型基質のビーズの直径は、工程h’)での清澄化に用いられるフィルターの孔径よりも大きい。従ってビーズ型基質のビーズの直径は、好ましくは8μmよりも大きく、より好ましくは50μmないし150μmの直径、さらに好ましくは90μmないし120μmの直径、さらに一層好ましくは120μmの直径である。本発明の特性に基づき、オルソポックスウイルスを有するビーズ型基質のビーズおよび細胞片は、工程h’)での清澄化の間にフィルターによって保持され得る。本発明に用いられるビーズ型基質の陰イオン交換吸着剤は、好ましくはオートクレーブ可能である。オートクレーブ可能なビーズ型基質の陰イオン交換吸着剤については、既に記載されており、それらのうちの幾つかは、例えばUNOsphere(登録商標)Q (BioRad)、UNOsphere(登録商標)S (BioRad)、STREAMLINE(商標)Q Sepharose(登録商標)XL (Amersham Biosciences)、STREAMLINE(商標)SP Sepharose(登録商標)XL (Amersham Biosciences)、またはBioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)として市販されている。本発明による、好ましいオートクレーブ可能なビーズ型基質の陰イオン交換吸着剤は、UNOsphere(登録商標)Q (BioRad)およびBioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)である。UNOsphere(登録商標)Q (BioRad)は、直径120μmで、トリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)官能基を有する親水性球状高分子ビーズである。BioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pa
ll Corporation)は、直径約75μmで四級アミンQ官能基を有する、高密度で多孔性のジルコニウムジオキシドビーズである。工程f’)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを接触させる工程g’)は、陰イオン交換吸着剤がビーズ型基質にある前記交換吸着剤を用いて、実施例4に記載の条件により好ましく行われ、ここではBioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)が用いられる。
【0086】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、工程g’)で用いられる陰イオン交換吸着剤は膜に存在する。膜の官能基は以前に記載した通りであってよい。好ましい膜の官能基はトリメチルアミノエチル(trimethylaminoethyl:TMAE)である。本発明の好ましい実施形態によれば、工程g’)で用いられる膜の孔径は1ないし5μmであり、好ましくは3μmの孔径である。本発明の別の好ましい実施形態によれば、工程g’)で用いられる膜の孔径はオルソポックスウイルスのサイズ(すなわち200nm)よりも小さく、さらに詳細には0.1μmの孔径である。膜に存在する多くの陰イオン交換吸着剤については既に記載されており、それらのうちの幾つかは、例えばSartobind(登録商標)75 Q(Sartorius)のように市販されている。本発明による膜の陰イオン交換吸着剤は、好ましくはオートクレーブ可能である。オートクレーブ可能な膜の陰イオン交換吸着剤については、既に記載されており、それらのうちの幾つかは、例えばSartobind(登録商標)75 Q (Sartorius)として市販されている。本発明による、好ましいオートクレーブ可能な膜の陰イオン交換吸着剤は、Sartobind(登録商標)75 Q (Sartorius)である。
【0087】
陰イオン交換膜である陰イオン交換吸着剤を用いて工程g’)を行う際、それに続く清澄化の工程h’)(細胞片の除去を可能にする)は必要ではない。細胞片は、工程f)で用いられる陰イオン交換膜によって保持される(以前に記載される)。
【0088】
工程g’)で得られた混合物を清澄化する工程h’)については、以前に記載した工程g)で得られた混合物を清澄化する工程h)を参照されたい。
【0089】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程g’)をビーズ型基質である陰イオン交換吸着剤を用いて行う際、工程h’)の前に、オルソポックスウイルスを有する前記ビーズ型基質の除去を可能にする工程があってよい。この点から前記の工程は、例えばビーズ型基質のビーズのサイズよりも小さな孔径を有するフィルターバッグを用いて行われる。本発明によれば、フィルターバッグの孔径は10ないし100μm、好ましくは25ないし100μm、より好ましくは50μmである。本発明に用いられるフィルターバッグは、好ましくはオートクレーブ可能である。オートクレーブ可能なフィルターバッグについては既に記載されており、かつそれらのうちの幾つかは市販されており、例えば、ポリエステル布フィルターバッグ(例えばNB EES 0010、0025、0050、0100)、ポリエステル/ポリプロピレン布フィルターバッグ(例えばNB PES 0010、0025、0050、0100)およびナイロン単繊維布フィルターバッグ(例えばNB NYS 0025、0050、0100)である、CUNO(商標)布フィルターバッグ(CUNO)が好ましい。
【0090】
オルソポックスウイルスを一価の塩を含んでなる溶液で溶出する工程i’)により、捕捉されたオルソポックスウイルスの陰イオン交換吸着剤からの回収が可能になる。使用される一価の塩にはNaClおよびKClが含まれるが、これらに限定されない。工程i’)で用いられる好ましい一価の塩はNaClである。本発明の一実施形態によれば、溶出は、好ましくは0ないし2.5M、より好ましくは0ないし2M、さらに好ましくは0ないし1.5Mの範囲の、一価の塩の濃度勾配を増大させることによって行われる。本発明の別の実施形態によれば、溶出は、1M未満、好ましくは300mMないし750mM、より好ましくは500mMの一価の塩の濃度における1ステップ溶出によって行われる。本発明によれば、工程i’)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。本発明の好ましい実施形態によれば、工程i’)で用いられる一価の塩を含んでなる溶液は、100mM Tris−HCl、5%(w/v)スクロース、10mM グルタミン酸ナトリウム、および生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl、pH8.0(すなわちSO8緩衝液)を含んでなる、薬剤的に許容される溶液である。本発明のその他の好ましい実施形態によれば、工程i’)で用いられる一価の塩を含んでなる溶液は、例えばTris緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、またはリン酸緩衝液を含んでなる、薬剤的に許容される溶液である。オルソポックスウイルスを一価の塩を含んでなる溶液で溶出する工程i’)は、好ましくは実施例4に記載される条件に従って行われ、ここで溶出は、SO8緩衝液中の増大するNaCl濃度勾配(300mM;400mM;500mM)により行われる。
【0091】
工程i’)で得られた混合物を濃縮する工程j’)により、前記通過画分に存在するタンパク質の除去が可能になる。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、濃縮工程j’)は精密濾過により行われる(以前に工程j)で記載される)。
【0093】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、濃縮工程j’)は限外濾過により行われる(以前に工程j)で記載される)。
【0094】
工程j’)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過する工程k’)については、以前に記載した工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過する工程k)を参照されたい。
【0095】
本発明の方法Bは:
1.ゲル濾過工程(すなわち工程l’));および
2.透析濾過工程(すなわち工程m’))をさらに含んでなってよい。
【0096】
ゲル濾過工程l’)については、ゲル濾過工程l)を参照されたい。
【0097】
透析濾過工程m’)については、透析濾過工程m)を参照されたい。
【0098】
本発明によれば、以前に記載した方法Bの工程f’)から工程l’)の各工程の前に、1以上の安定剤の存在下で、オルソポックスウイルスを含んでなるサンプルをインキュベートする工程があってよい。本明細書で用いられる「安定剤」は、オルソポックスウイルスの保存を可能にする薬剤を指す。安定剤には、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ソルビトール、スタキオース、ラフィノース、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトール、グリセロール)、アミノ酸(例えば、Gly;Leu;Lys;Arg;Asp;Val;Glu)、界面活性剤(例えば、Triton X-100; Tween、例えばTween 20、Tween 80、またはTween 85)および塩(例えばNaCl;KCl)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、このインキュベーション工程で用いられる安定剤は糖類、より好ましくはサッカロースである。本発明によれば、このインキュベーション工程で用いられるサッカロースの濃度は25ないし100g/Lの範囲、好ましくは50g/Lである。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、100mM Tris−HCl、5%(w/v)スクロース、10mM グルタミン酸ナトリウム、および生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl、pH8.0(すなわちSO8緩衝液)を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、例えばTris緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、またはリン酸緩衝液を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程の持続時間は、1ないし20時間、好ましくは18時間である。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、2℃ないし8℃の温度、好ましくは3℃ないし7℃の温度、より好ましくは4℃ないし6℃の温度、さらに好ましくは5℃の温度において行われる。安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、50g/Lサッカロースの存在下で、18時間、5℃の温度において好ましく行われる。
【0099】
本発明の方法Bの別の実施形態によれば、以前に記載したように、清澄化工程(工程h’))は、オルソポックスウイルスを培養上清および/またはパッケージング細胞から回収する工程e’)の後で行われる。
【0100】
本発明はまた、以前に記載したように、方法Aの単数または複数の工程と方法Bの単数または複数の工程とを組み合わせた方法にも関する。
【0101】
この点から、本発明はさらに詳細に、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造および精製する方法(すなわち方法C)に関し、この方法は以下の工程を含んでなる:
a’’)パッケージング細胞の培養物を用意すること;
b’’)培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させること;
c’’)感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養すること;
d’’)1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートすること;
e’’)培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収すること;
f’’)工程e’’)で回収されたオルソポックスウイルスを、
1.単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤、および所望により
2.1以上の安定剤;
の存在下でインキュベートすること;
g’’)前記オルソポックスウイルスおよび核酸の捕捉を可能にするため、工程f’’)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを適切な条件下で接触させること;
h’’)細胞片の除去を可能にするため、工程g’’)で得られた混合物を適切な条件下で清澄化すること;
i’’)オルソポックスウイルスを、一価の塩を含んでなる溶液により溶出すること;
j’’)工程i’’)で溶出されたオルソポックスウイルスが工程k’’)において陰イオン交換吸着剤へ吸着することを避けるために、前記オルソポックスウイルスに一価の塩を添加すること;
k’’)核酸の捕捉を可能にするため、工程j’’)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを適切な条件下で接触させること;
l’’)通過画分中に残るオルソポックスウイルスを回収するため、陰イオン交換吸着剤を適切な条件下で一価の塩を含んでなる溶液により洗浄すること;
m’’)工程l’’)で得られた通過画分を濃縮すること;
n’’)工程m’’)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過すること。
【0102】
パッケージング細胞の培養物を用意する工程a’’)については、以前に記載したパッケージング細胞の培養物を用意する工程a)を参照されたい。
【0103】
培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させる工程b’’)については、以前に記載した培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させる工程b)を参照されたい。
【0104】
感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する工程c’’)については、以前に記載した感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する工程c)を参照されたい。
【0105】
1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートする工程d’’)については、以前に記載した1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートする工程d)を参照されたい。
【0106】
培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収する工程e’’)については、以前に記載した培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収する工程e)を参照されたい。
【0107】
工程e’’)で回収されたオルソポックスウイルスを、(1)単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤、および所望により(2)1以上の安定剤の存在下でインキュベートする工程f’’)については、以前に記載した、工程e’)で回収されたオルソポックスウイルスを、(1)単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤、および所望により(2)1以上の安定剤の存在下でインキュベートする工程f’)を参照されたい。
【0108】
前記オルソポックスウイルスおよび核酸の捕捉を可能にするため、工程f’’)で得られた混合物を適切な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させる工程g’’)については、以前に記載した、前記オルソポックスウイルスおよび核酸の捕捉を可能にするため、工程f’)で得られた混合物を適切な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させる工程g’)を参照されたい。
【0109】
工程g’’)で得られた混合物を清澄化する工程h’’)については、以前に記載した工程g)で得られた混合物を清澄化する工程h)を参照されたい。
【0110】
オルソポックスウイルスを一価の塩を含んでなる溶液で溶出する工程i’’)については、以前に記載したオルソポックスウイルスを一価の塩を含んでなる溶液で溶出する工程i’)を参照されたい。
【0111】
以前に工程i’’)で溶出されたオルソポックスウイルスに一価の塩を添加する工程j’’)は、適切な条件下で、工程k’’)において前記オルソポックスウイルスの陰イオン交換吸着剤への吸着を避けること(すなわち、10%を超えるオルソポックスウイルスの陰イオン交換吸着剤への吸着を避けること)を可能にする。従って、工程k’’)では核酸(例えばDNA)のみが陰イオン交換吸着剤へ吸着され得る。一価の塩にはNaClおよびKClが含まれるが、これらに限定されない。工程j’’)で用いられる好ましい一価の塩はNaClである。本発明によれば、工程j’’)における一価の塩の濃度は、200ないし300mM、好ましくは250mMまたは300mMの範囲である。本発明によれば、工程j’’)は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。
【0112】
核酸の捕捉が可能になる、工程j’’)で得られた混合物を適切な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させる工程k’’)については、以前に記載した核酸の捕捉が可能になる、工程f)で得られた混合物を適切な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させる工程g)を参照されたい。
【0113】
通過画分中に残るオルソポックスウイルスを回収するため、陰イオン交換吸着剤を適切な条件下で一価の塩を含んでなる溶液により洗浄する工程l’’)については、以前に記載した、通過画分中に残るオルソポックスウイルスを回収するため、陰イオン交換吸着剤を適切な条件下で一価の塩を含んでなる溶液により洗浄する工程i)を参照されたい。
【0114】
工程l’’)で得られた通過画分を濃縮する工程m’’)により、前記通過画分に存在するタンパク質の除去が可能になる。本発明の好ましい実施形態によれば、濃縮工程m’’)は精密濾過により行われる(以前に工程j)で記載される)。本発明の別の好ましい実施形態によれば、濃縮工程m’’)は限外濾過により行われる(以前に工程j)で記載される)。
【0115】
工程m’’)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過する工程n’’)については、以前に記載した工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過する工程k)を参照されたい。
【0116】
本発明の方法Cは:
1.ゲル濾過工程(すなわち工程o’’));および
2.透析濾過工程(すなわち工程p’’))をさらに含んでなってよい。
【0117】
ゲル濾過工程o’’)については、ゲル濾過工程l)を参照されたい。
【0118】
透析濾過工程p’’)については、透析濾過工程m)を参照されたい。
【0119】
本発明によれば、以前に記載した方法Cの工程f’’)から工程p’’)の各工程(好ましくは工程k’’)から工程p’’)の各工程)の前に、1以上の安定剤の存在下で、オルソポックスウイルスを含んでなるサンプルをインキュベートする工程があってよい。本明細書で用いられる「安定剤」は、オルソポックスウイルスの保存を可能にする薬剤を指す。安定剤には、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ソルビトール、スタキオース、ラフィノース、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトール、グリセロール)、アミノ酸(例えば、Gly;Leu;Lys;Arg;Asp;Val;Glu)、界面活性剤(例えば、Triton X-100; Tween、例えばTween 20、Tween 80、またはTween 85)および塩(例えばNaCl;KCl)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態によれば、このインキュベーション工程で用いられる安定剤は糖類、より好ましくはサッカロースである。本発明によれば、このインキュベーション工程で用いられるサッカロースの濃度は25ないし100g/Lの範囲、好ましくは50g/Lである。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、100mM Tris−HCl、5%(w/v)スクロース、10mM グルタミン酸ナトリウム、および生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl、pH8.0(すなわちSO8緩衝液)を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、単数または複数の安定剤は、例えばTris緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、またはリン酸緩衝液を含んでなる、薬剤的に許容される溶液からなる溶液に含まれてよい。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程の持続時間は、1ないし20時間、好ましくは18時間である。本発明によれば、安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、2℃ないし8℃の温度、好ましくは3℃ないし7℃の温度、より好ましくは4℃ないし6℃の温度、さらに好ましくは5℃の温度において行われる。安定剤の存在下でのこのインキュベーション工程は、50g/Lサッカロースの存在下で、18時間、5℃の温度において好ましく行われる。
【0120】
本発明の方法Cの別の実施形態によれば、以前に記載したように、清澄化工程(工程h’’))は、オルソポックスウイルスを培養上清および/またはパッケージング細胞から回収する工程e’’)の後で行われる。
【0121】
本発明によれば、本発明の方法の各工程の後で得られたオルソポックスウイルスを含んでなるサンプルは、当業者に公知である凍結によって保存されてよい。
【0122】
本発明によれば、本発明の方法は7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5のpH、より好ましくは8.0のpHにおいて行われる。
【0123】
本発明の好ましい実施形態によれば、オルソポックスウイルスはワクシニアウイルス(Vaccinia Virus:VV)である。本発明による好ましいVVは、例えば特許出願PCT/EP2008/009720(欠陥のあるI4Lおよび/またはF4L遺伝子を含んでなるVVについて記載される、国際公開第2009/065546号)またはPCT/EP2008/009721(欠陥のあるF2L遺伝子を含んでなるVVについて記載される、国際公開第2009/065547号)に記載されるVVである。
【0124】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、オルソポックスウイルスは改変ワクシニアウイルスアンカラ(modified Vaccinia Virus Ankara:MVA)である。本発明による好ましいMVAは、寄託番号NI−721により、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託されたMVA、MVA 575(ECACC V00120707)、およびMVA−BN(ECACC V00083008)である。
【0125】
「組み換えオルソポックスウイルス」との語は、そのゲノムに挿入された外来性配列を含んでなるオルソポックスウイルスを指す。本明細書で用いられる外来性配列は、親オルソポックスウイルスに天然に存在しない核酸を指す。一実施形態によれば、外来性配列は、直接的または間接的に細胞傷害性機能を有する分子をコードする。「直接的または間接的」な細胞傷害性によって本発明者らが意味するものは、それ自体が毒性であり得る(例えばリシン、腫瘍壊死因子(tumour necrosis factor:TNF)、インターロイキン−2(interleukin-2:IL2)、インターフェロン−ガンマ(interferon-gamma:IFNγ)、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、シュードモナス外毒素A)、または毒性の産物を形成するために代謝され得る、または毒性の産物を形成するための何かとして作用し得る、外来性配列によってコードされる分子である。リシンcDNAの配列は、Lamb et al(Eur. J. Biochem., 1985, 148, 265-270)に開示される。
【0126】
本発明の好ましい実施形態によれば、外来性配列は自殺遺伝子である。自殺遺伝子は、比較的に無毒性のプロドラッグを毒性の薬物に変換できるタンパク質をコードする。例えば、酵素、シトシンデアミナーゼは5−フルオロシトシン(5-fluorocytosine:5−FC)を5−フルオロウラシル(5-fluorouracil:5−FU)に変換し(Mullen et al (1922) PNAS 89, 33);単純ヘルペス酵素であるチミジンキナーゼは、抗ウイルス剤であるガンシクロビル(ganciclovir:GCV)またはアシクロビルによる治療に対して細胞を感受性にする(Moolten (1986) Cancer Res. 46, 5276; Ezzedine et al (1991) New Biol 3, 608)。いずれの生命体、例えば大腸菌または出芽酵母、のシトシンデアミナーゼも用いられてよい。従って本発明の好ましい実施形態によれば、自殺遺伝子は、参照によって本明細書に取り込まれる特許出願、国際公開第99/54481号、国際公開第05/07857号、PCT/EP2008/009720、およびPCT/EP2008/009721に記載される、シトシンデアミナーゼ活性を有するタンパク質、より好ましくはFCU1タンパク質またはFCU1−8タンパク質をコードする。
【0127】
この点から、本発明の方法に従って製造される好ましい組み換えオルソポックスウイルスは:
・MVA−FCU1(国際公開第99/54481号を参照)、TG4023とも称される;
・MVA−FCU1−8(国際公開第05/07857号を参照);および
・VV−FCU1、ここで前記VVは、さらに詳細には、欠陥のあるI4Lおよび/またはF4L遺伝子、および欠陥のあるJ2R遺伝子(PCT/EP2008/009720/国際公開第2009/065546号、およびPCT/EP2008/009721/国際公開第2009/065547号を参照)を含んでなる、である。
【0128】
プロドラッグ/酵素の組み合わせのその他の例には、Bagshawe et al(国際公開第88/07378号)により開示される、様々なアルキル化剤およびシュードモナス菌種のCPG2酵素、ならびにEpenetos & Rowlinson-Busza(国際公開第91/11201号)により開示される、シアン形成プロドラッグ(例えばアミグダリン)および植物由来のベータグルコシダーゼが含まれる。本発明のこの実施形態に有用な酵素には、リン酸塩を含むプロドラッグの、遊離薬物への変換に有用なアルカリホスファターゼ;硫酸塩を含むプロドラッグの、遊離薬物への変換に有用なアリールスルファターゼ;ペプチドを含むプロドラッグの、遊離薬物への変換に有用なプロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、およびカテプシン(例えばカテプシンBおよびL);D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグの変換に有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグの、遊離薬物への変換に有用な炭水化物切断酵素、例えばベータガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;ベータラクタムによって誘導体化された薬物の、遊離薬物への変換に有用なベータラクタマーゼ;および、それらのアミン窒素が、フェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基それぞれによって誘導体化された薬物の、遊離薬物への変換に有用なペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼが含まれるがこれらに限定されない。あるいは、当該技術分野においてアブザイムとして公知である、酵素活性を有する抗体もまた、本発明のプロドラッグの遊離活性薬物への変換に用いることができる(Massey R. et al., Nature, 1987, 328, 457-458)。同様にプロドラッグには、上に挙げたプロドラッグ、例えばリン酸塩を含むプロドラッグ、チオリン酸塩を含むプロドラッグ、硫酸塩を含むプロドラッグ、ペプチドを含むプロドラッグ、D−アミノ酸修飾されたプロドラッグ、グリコシル化されたプロドラッグ、ベータラクタムを含むプロドラッグ、所望により置換されたフェノキシアセトアミドを含むプロドラッグまたは所望により置換されたフェニルアセトアミドを含むプロドラッグ、5−フルオロシトシン、およびその他の変換できる5−フルオロウリジンプロドラッグが含まれるがこれらに限定されない。本発明において使用するための、プロドラッグ型に誘導体化できる細胞傷害性薬物の例には、エトポシド、テニポシド、アドリアマイシン、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、シスプラチンおよびシスプラチン類似体、ブレオマイシン、エスペラミシン(例えば米国特許第4,675,187号を参照)、5−フルオロウラシル、メルファラン、およびその他の関連するナイトロジェンマスタードが含まれるがこれらに限定されない。
【0129】
さらなる実施形態によれば、外因性遺伝子は、標的となるRNAまたはDNAを切断できるリボザイムをコードする。切断される標的RNAまたはDNAは、細胞の機能に必須のRNAまたはDNAである可能性があり、その切断によって細胞死がもたらされるか、または切断されるRNAまたはDNAは、望ましくないタンパク質、例えば癌遺伝子産物をコードするRNAまたはDNAである可能性があり、このRNAまたはDNAの切断によって細胞の癌化が阻止され得る。
【0130】
さらなる実施形態によれば、外因性遺伝子はアンチセンスRNAをコードする。「アンチセンスRNA」によって本発明者らが意味するものは、タンパク質をコードするmRNA分子にハイブリダイズして発現に干渉するか、または細胞内の別のRNA分子、例えばプレmRNAもしくはtRNAもしくはrRNAにハイブリダイズするか、またはハイブリダイズして、遺伝子からの発現に干渉するRNA分子である。
【0131】
本発明の別の実施形態によれば、外来性配列によって、標的細胞の欠陥のある遺伝子の機能が置換される。数千の、欠陥のある遺伝子が原因となるヒトを含む哺乳類の遺伝性疾患が受け継がれている。このような遺伝性疾患の例には、CFTR遺伝子の変異が知られている嚢胞性線維症;ジストロフィン遺伝子の変異が知られているデュシェンヌ型筋ジストロフィー;HbA遺伝子の変異が知られている鎌状赤血球症が含まれる。多くの型の癌は、欠陥のある遺伝子、特に癌原遺伝子および変異を起こしている腫瘍抑制遺伝子によって引き起こされる。癌原遺伝子の例は、ras、src、bclなど;腫瘍抑制遺伝子の例は、p53およびRbである。
【0132】
本発明のさらなる実施形態によれば、外来性配列は腫瘍関連抗原(Tumor Associated Antigen:TAA)をコードする。TAAは、同じ型の組織において、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞に高い頻度または密度で検出される分子を指す。TAAの例には、CEA、MART1、MAGE1、MAGE3、GP−100、MUC1(参照により本明細書に取り込まれる、国際公開第92/07000号、国際公開第95/09241号、およびRochlitz et al. J Gene Med. 2003 Aug;5(8):690-9 を参照)、MUC2、点突然変異したras癌遺伝子、正常または点突然変異したp53、過剰発現したp53、CA−125、PSA、C−erb/B2、BRCA I、BRCA II、PSMA、チロシナーゼ、TRP1、TRP2、NY−ESO−1、TAG72、KSA、HER−2/neu、bcr−abl、pax3−fkhr、ews−fli−1、サバイビン、およびLRPが含まれるが、これらに限定されない。さらに好ましい実施形態によれば、TAAはMUC1である。
【0133】
本発明の別の実施形態によれば、外因性遺伝子は抗原をコードする。本明細書で用いる「抗原」は、抗体が結合するリガンドを指す;抗原自体が免疫原性である必要はない。好ましくは、抗原は、例えばHIV−1、(例えばgp120またはgp160)、いずれのネコ免疫不全ウイルス、ヒトまたは動物の疱疹ウイルス、例えばgDもしくはその誘導体またはHSV1もしくはHSV2由来のICP27のような前初期タンパク質、サイトメガロウイルス(例えばgBまたはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(例えばgpI、II、またはIII)のようなウイルス由来、またはB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)、例えばB型肝炎表面抗原もしくはその誘導体、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus:HAV)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV;国際公開第04/111082号を参照;選択的にはja種の遺伝子型1b株に由来する非構造HCVタンパク質)、および肝炎Eウイルス(hepatitis E virus:HEV)のような肝炎ウイルス由来、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus:HPV;国際公開第90/10459号、国際公開第95/09241号、国際公開第98/04705号、国際公開第99/03885号、国際公開第07/121894号、および国際公開第07/121894号を参照;HPV16株由来のE6およびE7タンパク質が好ましい;Liu et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Oct 5; 101 Suppl 2:14567-71も参照)もしくはインフルエンザウイルスのようなその他のウイルス性病原体由来、サルモネラ、ナイセリア、ボレリア(例えばOspAもしくはOspB、またはそれらの誘導体)、またはクラミジア、またはボルデテラ、例えばP.69、PTおよびFHAのような細菌性病原体由来、またはプラスモジウムもしくはトキソプラズマのような寄生虫由来である。さらに好ましい実施形態によれば、抗原はHCVまたはHPVから選択される。
【0134】
この点から、本発明の方法によって製造される好ましい組み換えオルソポックスウイルスは、MVA−HCV(国際公開第04/111082号を参照)であり、これはTG4040とも称される。
【0135】
組み換えオルソポックスウイルスは、1を超える外来性配列を含んでなってよく、外来性配列それぞれが1を超える分子をコードしてよい。例えば同じ組み換えオルソポックスウイルス内に、例えばTAA(以前に記載される)または抗原(以前に記載される)をコードする外来性配列と、サイトカイン(例えばインターロイキン(interleukin:IL、例えばIL2);腫瘍壊死因子(tumour necrosis factor:TNF);インターフェロン−(interferon:IFN);コロニー刺激因子(colony stimulating factor:CSF))をコードする外来性配列とが付随すると有用であり得る。
【0136】
この点から、本発明の方法によって製造される好ましい組み換えオルソポックスウイルスは:
・MVA−[MUC1−IL2](国際公開第92/07000号および国際公開第95/09241号を参照)、TG4010とも称される;および
・MVA−[HPV−IL2](国際公開第90/10459号、国際公開第95/09241号、国際公開第98/04705号、国際公開第99/03885号、国際公開第07/121894号、および国際公開第07/121894号を参照)、TG4001とも称される、である。
【0137】
好都合には、組み換えオルソポックスウイルスは単数または複数の外来性配列の発現に必要なエレメントをさらに含んでなる。発現に必要なエレメントは、ヌクレオチド配列のRNAへの転写およびmRNAのポリペプチドへの翻訳を可能にするエレメント一式、特に、本発明の組み換えオルソポックスウイルスを感染させる細胞内で有効なプロモーター配列および/または調節性配列、ならびに所望により、前記ポリペプチドの細胞表面への排出および発現を可能にするために必要な配列を含んでなる。これらのエレメントは、誘導性または恒常的であってよい。言うまでもなく、プロモーターは、選択された組み換えオルソポックスウイルスおよびホスト細胞に適応させる。例として言及され得るものは、ワクシニアウイルスプロモーター、p7.5K、pH5R、pK1L、p28、p11、または前記プロモーターの組み合わせである。このようなプロモーター配列に関する多くの情報が、文献により提供される。必要なエレメントはさらに、ホスト細胞における外来性配列の発現またはその維持を改善する追加のエレメントを含むことができる。特に、イントロン配列(国際公開第94/29471号)、分泌シグナル配列、核局在化配列、IRES型翻訳の再開始のための内部部位、転写終結のためのポリA配列について言及され得る。
【0138】
本発明はまた、医薬組成物、好ましくはワクチンとして使用するための、本発明の方法によって得られる、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスにも関する。
【0139】
本明細書で用いられる「医薬組成物」は、薬剤的に許容される担体を含んでなる組成物を指す。前記の薬剤的に許容される担体は、好ましくは、例えばスクロース溶液のように、等張、低浸透圧性、または弱い高浸透圧性であり、比較的低いイオン強度を有する。さらにこのような担体は、いずれの溶媒、または水性もしくは部分的に水性の液体、例えば非発熱性の無菌水も含み得る。加えて医薬組成物のpHは、in vivoでの使用条件を満たすように調整および緩衝される。医薬組成物はまた、薬剤的に許容される希釈剤、補助剤、または賦形剤、同様に可溶化剤、安定剤、および保存剤も含んでよい。注射による投与のためには、製剤は水性、非水性、または等張溶液であることが好ましい。これは、液体または使用時に適切な希釈剤によって再構成できる乾燥型(粉末、凍結乾燥物など)として、単一用量または複数用量において提供され得る。
【0140】
本発明はまた、癌、感染症、および/または自己免疫疾患を治療および/または予防するための、本発明の方法によって得られる、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスにも関する。
【0141】
本明細書で用いられる「癌」は、肺癌(例えば小細胞肺癌、および非小細胞肺癌)、気管支癌、食道癌、咽頭癌、頭頚部癌(例えば、咽頭癌、口唇癌、鼻腔および副鼻腔癌、ならびに咽喉癌)、口腔癌(例えば舌癌)、胃の癌(例えば胃癌)、腸癌、胃腸の癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肛門癌、肝臓癌、膵臓癌、尿路癌、膀胱癌、甲状腺癌、腎癌、癌腫、腺癌、皮膚癌、例えばメラノーマ)、眼の癌(例えば網膜芽細胞腫)、脳の癌(例えば、神経膠腫、髄芽腫、および大脳星状細胞腫)、中枢神経系の癌、リンパ腫(例えば皮膚B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン症候群、および非ホジキンリンパ腫)、骨癌、白血病、乳癌、生殖器癌、子宮頸癌(例えば子宮頸部上皮内腫瘍)、子宮癌(例えば子宮内膜癌)、卵巣癌、膣癌、外陰部の癌、前立腺癌、精巣癌を指すが、これらに限定されない。「癌」はまた、パピローマウイルス誘導性の癌、疱疹ウイルス誘導性の腫瘍、EBV誘導性のB細胞リンパ腫、B型肝炎誘導性の腫瘍、HTLV−1誘導性のリンパ腫、およびHTLV−2誘導性のリンパ腫を含むが、これらに限定されないウイルス誘導性の腫瘍も指す。
【0142】
本明細書で用いられる「感染症」は、感染性の生命体によって引き起こされるいずれの疾病も指す。感染性の生命体には、ウイルス(例えば、一本鎖RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)、A、B、およびC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)、またはヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV))、寄生虫(例えば、プラスモジウム種、リーシュマニア種、住血吸虫種、またはトリパノソーマ種のような原生動物および後生動物の病原体)、細菌(例えば、マイコバクテリア、特に結核菌、サルモネラ菌、連鎖球菌、大腸菌、またはブドウ球菌)、真菌(例えば、カンジダ種またはアスペルギルス種)、ニューモシスチス・カリニ、およびプリオンが含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
本明細書で用いられる「自己免疫疾患」は、二つの一般的な型:「全身性自己免疫疾患」(すなわち、多くの臓器または組織を損傷する疾患)、および「限局性自己免疫疾患」(すなわち、単一の臓器または組織のみを損傷する疾患)を指す。しかしながら、「限局性自己免疫疾患」の結果は、間接的にその他の身体臓器およびシステムに影響を及ぼすことによって全身性となり得る。「全身性自己免疫疾患」には、関節、およびおそらくは肺および皮膚に発症する関節リウマチ;皮膚、関節、腎臓、心臓、脳、赤血球、同様にその他の組織及び臓器に発症する全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)を含む狼瘡;皮膚、腸、および肺に発症する強皮症;唾液腺、涙腺、および関節に発症するシェーグレン症候群;肺および腎臓に発症するグッドパスチャー症候群;洞、肺、および腎臓に発症するウェゲナー肉芽腫症;大筋肉群に発症するリウマチ性多発筋痛症、および側頭動脈炎/頭頚部の動脈に発症する巨細胞性動脈炎が含まれるが、これらに限定されない。「限局性自己免疫疾患」には、膵島に発症する1型糖尿病;甲状腺に発症する橋本甲状腺炎およびグレーブス病;消化管に発症するセリアック病、クローン病、および潰瘍性大腸炎;中枢神経系に発症する多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)およびギラン・バレー症候群;副腎に発症するアジソン病;肝臓に発症する原発性胆管硬化症(primary biliary sclerosis)、硬化性胆管炎、および自己免疫性肝炎;ならびに手指、足指、鼻、耳に発症するレイノー現象が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる、精製された野生型,弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを含んでなる医薬組成物、好ましくはワクチンにも関する。本発明によれば前記医薬組成物は、癌、感染症、および/または自己免疫疾患の治療および/または予防を意図する。
【0145】
本発明はまた、癌、感染症、および/または自己免疫疾患の治療および/または予防のための医薬組成物、好ましくはワクチンを製造するための、本発明の方法によって得られる、精製された野生型,弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスの使用にも関する。
【0146】
医薬組成物、特にワクチンは、局所的、非経口、または消化管経路による投与のために、従来法によって製造されてよい。投与経路は、例えば胃内、皮下、心臓内、筋肉内、静脈内、腹腔内、腫瘍内、鼻腔内、肺内、または気管内経路であってよい。後の三つの実施形態には、エアロゾルまたは滴下による投与が都合よい。投与は、単一用量で、または一定の時間間隔の後に1回もしくは数回繰り返して行われてよい。投与に適切な経路および投薬量は、様々なパラメーター、例えば個体、治療される疾病、または導入に関心がもたれる単数もしくは複数の遺伝子、の関数として変動する。第1の可能性によれば、医薬組成物、特にワクチンはin vivoで直接投与され得る(例えば、静脈内注射により、到達可能な腫瘍内へ、または治療用もしくは予防用ワクチン接種のために末梢、皮下において)。患者から細胞を回収すること(骨髄幹細胞、末梢血リンパ球、筋肉細胞など)、先行技術に従ってそれらをin vitroでトランスフェクトすること、およびそれらを患者へ再投与することである、ex vivoでのアプローチを採用することも可能である。さらに、適切かつ本発明の範囲から逸脱することなく、医薬組成物、特にワクチンに含まれる様々な成分を、異なる経路によって同時または連続的に投与することが想定される。
【0147】
本発明はまた、本発明の方法に従って、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、カモ科ファミリーに属する鳥類細胞から得た不死化鳥類細胞株の使用にも関する。カモ科の中でも、バリケン属またはマガモ属に属する細胞が特に好ましい。さらに好ましいものは、ノバリケンまたはマガモ種に属する不死化鳥類細胞株である。
【0148】
本発明の好ましい実施形態によれば、ノバリケン不死化鳥類細胞株は、国際公開第2007/077256号に記載される、テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株である。以下の不死化鳥類細胞株が特に好ましい:
−受託番号08060502により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT3−17490(図2、3、および4を参照)またはその誘導体;
−受託番号08060501により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT6−17490(図5、6、および7を参照)またはその誘導体。
【0149】
この点から、本発明はまた:
・本発明の方法に従って、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株の使用
・本発明の方法に従って、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、受託番号08060502により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT3−17490ノバリケン不死化鳥類細胞株(実施例2に記載される)またはその誘導体の使用
・本発明の方法に従って、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、受託番号08060501により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT6−17490ノバリケン不死化鳥類細胞株(実施例3に記載される)またはその誘導体の使用にも関する。
【0150】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、ノバリケン不死化鳥類細胞株は、国際公開第2009/004016号に記載される、E1A核酸配列およびテロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株である。
【0151】
この点から、本発明はまた、本発明の方法に従って、野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、E1A核酸配列およびテロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株の使用にも関する。
【0152】
本出願の全体にわたって用いられる、寄託された不死化鳥類細胞株の「誘導体」は、「関心のある物質」をコードする核酸配列を含んでなる不死化鳥類細胞株を指す。本明細書で用いられる「関心のある物質」は、薬理的活性のあるタンパク質、例えば増殖因子、増殖制御因子、抗体、抗原、免疫化もしくはワクチン接種などに有用なそれらの誘導体、インターロイキン、インスリン、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSF、インターフェロン(インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ)、血液凝固因子(例えば第VIII因子;第IX因子;tPA)またはそれらの組み合わせを含んでよいが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ活性における、様々なBenzonase(登録商標)濃度(すなわち10mM;50mM)の効果を示した図である(温度25℃;Mg2+2mM;pH8)。
【図2】T3−17490(ECACC 08060502)ノバリケン不死化鳥類細胞株(継代39)の、光学顕微鏡による画像処理を示した図である。
【図3】T3−17490(ECACC 08060502)ノバリケン不死化鳥類細胞株の増殖曲線を示した図である(継代7から継代75まで)。
【図4】T3−17490(ECACC 08060502)ノバリケン不死化鳥類細胞株における、集団倍加時間の漸進的変化を示した図である(継代7から継代75まで)。
【図5】T6−17490(ECACC 08060501)(継代45)の、光学顕微鏡による画像処理を示した図である。
【図6】T6−17490(ECACC 08060501)ノバリケン不死化鳥類細胞株の増殖曲線を示した図である(継代15から継代51まで)。
【図7】T6−17490(ECACC 08060501)ノバリケン不死化鳥類細胞株における、集団倍加時間の漸進的変化を示した図である(継代16から継代51まで)。
【実施例】
【0154】
本発明の例証のため、以下の実施例を提供する。実施例は、本発明の範囲をどのようにも限定しようと意図するものではない。
【0155】
実施例1:方法A
工程a):パッケージング細胞の培養物を用意する
SPF卵66個を、2%ホルモル溶液中で60秒インキュベートした。70%エタノールで洗浄後、卵を開き、胚を抽出および解体した。得られた組織を、次にディスパーゼ(UI/ml)およびトリプルセレクト(UI/ml)によって36.5℃、120分消化した。未消化組織を除去するために混合物を濾過し、CEFを遠心分離(2300rpm、15分)によって回収した。CEFを、55LのVP-SFM (Invitrogen)中で2日間36.5℃にてインキュベートした。
【0156】
工程b):培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させる
次に細胞用培地を廃棄し、MVA−[MUC1−IL2]、TG4010とも称される(0.05MOI)(寄託番号NI−721により、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託されたMVA)を、55Lのイーグル基礎培地(Invitrogen)中に加えた。
【0157】
工程c):感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する
次に、感染させたCEFを3日間36.5℃にてインキュベートした。
【0158】
工程d):1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートする
次に、MVA子孫を含んでなる感染させたCEFを、10U/mlまたは50U/mlのBenzonase(登録商標)(Merck;参照1.01653.0001)存在下で、以下の条件:
−攪拌しながら、温度25℃にて2時間;
−Mg2+2mM;
−pH8.0によりインキュベートした。
【0159】
工程e):培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収する
細胞用培地およびCEFを回収した。次に混合物を15分間、11ml/分にて、Silverson(著作権)L4R高速ホモジナイザー(Silverson)によるか、または75分間、1500ml/分にて、SONITUBE 36 kHz型 SM 35/3WU (Heraeus PSP)によってホモジナイズした。
得られた混合物を次に2時間、攪拌しながら温度25℃、pH8.0にてインキュベートした。
【0160】
工程f):単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害するため、および工程e)で回収されたオルソポックスウイルスが工程g)において陰イオン交換吸着剤へ吸着することを避けるために、前記オルソポックスウイルスに適切な条件下で一価の塩を添加する
得られた混合物を次にNaCl 250mMの存在下で、pH8.0にてインキュベートした。
【0161】
工程g):核酸の捕捉を可能にするため、工程f)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを適切な条件下で接触させる
得られた混合物を次にUNOsphere(登録商標)Q (BioRad)に加えた。UNOsphere(登録商標)Q (BioRad)ビーズ型基質を、最初に無菌水で洗浄した後、Tris 10mM緩衝液(pH8.0)中でオートクレーブして、次にNaCl、250mMまたは300mM緩衝液(pH8.0)によって平衡化した。
次にUNOsphere(登録商標)Q (BioRad) ビーズ型基質を、蠕動のWatson-Marlowポンプ(参照323ES/4D, 520S; Watson-Marlow)を用いて、Flexboy(登録商標)バッグ(参照FFB101961 ; Sartorius Stedim biotech)内に含まれる、工程f)で得られた混合物に加えた。
UNOsphere(登録商標)Q (BioRad)ビーズ型基質および工程f)で得られた混合物を、1時間ゆっくりと攪拌しながら、室温(20℃ないし22℃)にて接触させた。
【0162】
工程h):細胞片の除去を可能にするため、工程g)で得られた混合物を適切な条件下で清澄化する
得られた混合物を次に、Sartopure(登録商標)PP2、8μm(Sartorius)とSartopure(登録商標)PP2、5μm(Sartorius)を組み合わせた深層濾過により、流速1L/分で清澄化した。
【0163】
工程i):通過画分中に残るオルソポックスウイルスを回収するため、陰イオン交換吸着剤を適切な条件下で一価の塩を含んでなる溶液により洗浄する
次に、UNOsphere(登録商標)(BioRad)を、SO8緩衝液(10mM Tris−HCl;スクロース 5%(w/v);10mM グルタミン酸ナトリウム;生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl;pH8.0)中のNaCl 250mMまたは300mM(v/v)により、蠕動のWatson-Marlowポンプ(参照323ES/4D, 520S; Watson-Marlow)を用いて洗浄した。
次に、工程h)で得られた通過画分と工程i)で得られた通過画分を一晩(すなわち18時間)5℃にて、最終濃度50g/Lのサッカロース存在下でインキュベートした。
【0164】
工程j):工程h)で得られた通過画分と工程i)で得られた通過画分を濃縮する
工程h)で得られた通過画分と工程i)で得られた通過画分を、次に0.1μm Prostak Microfiltration Module (参照PSVVAG021, Millipore)を通して18倍に濃縮した。
【0165】
工程k):工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過する
次に濃縮水を同じモジュール、すなわち0.1μm Prostak Microfiltration Module (参照PSVVAG021, Millipore)において透析濾過した。
DNAの定量は、Quant-iT(商標)Picogreen(登録商標)dsDNA Assays Kit (カタログ番号P7589、Invitrogen)を用いて行った。
結果:残存DNAは検出されなかった。
【0166】
実施例2:本発明の方法に従ってオルソポックスウイルスを製造するための、T3−17490不死化ノバリケン細胞株(受託番号08060502によりECACCに寄託される)の使用。
T3−17490細胞(継代39)は、均一な線維芽細胞様の形態を有する(図2)。静的な単層は100%コンフルエンスになるまで安定であり、次に接触阻止が起こる。細胞の検査によると、マイコプラズマ混入および細菌混入は陰性であった。T3−17490細胞株の増殖曲線(継代7から継代75)(図3)により、継代19から継代75までの連続的な指数関数的増殖が示される。集団倍加時間(population doubling time:PDT)の漸進的変化に焦点を当てると、進行的な安定化と減少が観察され、特に最近の10継代の間では、48時間の点におけるPDTの安定化が観察される(図4)。集団倍加に対応する数(集団倍加数(population doubling level, PDL))を、2つの指数関数的増殖段階の累積によって算出した:75継代の間に、細胞は少なくとも147の集団倍加(population doublings:PD)を行った。初代細胞が老化を始める前の集団倍加数は、組織および種に依存する。一般に上限は50ないし60PDであるとされている。従ってT3−17490細胞はヘイフリック限界をはるかに越えており、結果的に不死化細胞株と称される。
注:
・集団倍加数(population doubling level:PDL)は、細胞世代数を指す(現存量の2倍増加)。PDL算出:PDL=Ln(最終の/最初の細胞数)/Ln(2);
・集団倍加時間(population doubling time:PDT)、世代時間とも称される、は、1集団が倍加するために必要とされる時間である。PDT算出:PDT=ΔtLn(2)/Ln(最終の/最初の細胞数)。
【0167】
実施例3:本発明の方法に従ってオルソポックスウイルスを製造するための、T6−17490不死化ノバリケン細胞株(受託番号08060501によりECACCに寄託される)の使用。
T6−17490細胞(継代45)は、均一な線維芽細胞様の形態を有する(図5)。静的な単層は100%コンフルエンスになるまで安定であり、次に接触阻止が起こる。細胞の検査によると、マイコプラズマ混入および細菌混入は陰性であった。T6−17490細胞株の増殖曲線(継代15から継代51)(図6)により、継代19からの連続的な指数関数的増殖が示される。この期間に測定した集団倍加時間(population doubling time:PDT)は、進行的に減少した。平均PDTは、94時間(継代20から35)から52時間(継代36から51)となった(図7)。51継代に対応する算出した集団倍加の数(PDL)は、少なくとも71集団倍加であった。従ってT6−17490細胞はヘイフリック限界をはるかに越えており、結果的に不死化細胞株と称される。
注:
・集団倍加数(population doubling level:PDL)は、細胞世代数を指す(現存量の2倍増加)。PDL算出:PDL=Ln(最終の/最初の細胞数)/Ln(2);
・集団倍加時間(population doubling time:PDT)、世代時間とも称される、は、1集団が倍加するために必要とされる時間である。PDT算出:PDT=ΔtLn(2)/Ln(最終の/最初の細胞数)。
【0168】
実施例4:方法B
工程a’):パッケージング細胞の培養物を用意する
SPF卵66個を、2%ホルモル溶液中で60秒インキュベートした。70%エタノールで洗浄後、卵を開き、胚を抽出および解体した。得られた組織を、次にディスパーゼ(UI/ml)およびトリプルセレクト(UI/ml)によって36.5℃、120分消化した。未消化組織を除去するために混合物を濾過し、CEFを遠心分離(2300rpm、15分)によって回収した。CEFを、55LのVP-SFM (Invitrogen)中で2日間36.5℃にてインキュベートした。
【0169】
工程b’):培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させる
次に細胞用培地を廃棄し、MVA−[MUC1−IL2]、TG4010とも称される(0.05MOI)(寄託番号NI−721により、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託されたMVA)を、55Lのイーグル基礎培地(Invitrogen)中に加えた。
【0170】
工程c’):感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養する
次に、感染させたCEFを3日間36.5℃にてインキュベートした。
【0171】
工程d’):1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートする
次に、MVA子孫を含んでなる感染させたCEFを、10U/mlのBenzonase(登録商標)(Merck;参照1.01653.0001)存在下で、以下の条件:
−攪拌しながら、温度25℃にて2時間;
−Mg2+2mM;
−pH8.0によりインキュベートした。
【0172】
工程e’):培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収する
細胞用培地およびCEFを回収した。次に混合物を15分間、11ml/分にて、Silverson(著作権)L4R高速ホモジナイザー(Silverson)によるか、または75分間、1500ml/分にて、SONITUBE 36 kHz型 SM 35/3WU (Heraeus PSP)によってホモジナイズした。
【0173】
工程f’):工程e’)で回収されたオルソポックスウイルスを、単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤の存在下でインキュベートする
得られた混合物を次にNaCl 100mMおよびEDTA 10mMの存在下で、pH8.0にてインキュベートした。
【0174】
工程g’):前記オルソポックスウイルスおよび核酸の捕捉を可能にするため、工程f’)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを適切な条件下で接触させる
得られた混合物を次にBioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)に加えた。BioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)ビーズ型基質を、最初に無菌水で洗浄した後、次にNaOH 0.5Nにより消毒して、Tris 10mM緩衝液(pH8.0)で洗浄して、次にTris 10mM、NaCl 10mM、サッカロース5%緩衝液(pH8.0)によって平衡化した。
次にBioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)ビーズ型基質を、蠕動のWatson-Marlowポンプ(参照323ES/4D, 520S; Watson-Marlow)を用いて、Flexboy(登録商標)バッグ(参照FFB101961 ; Sartorius Stedim biotech)内に含まれる、工程f’)で得られた混合物に加えた。
BioSepra(登録商標)Q hyperZ (Pall Corporation)ビーズ型基質および工程f’)で得られた混合物を、1時間ゆっくりと攪拌しながら、室温(20℃ないし22℃)にて接触させた。
【0175】
工程h’):細胞片の除去を可能にするため、工程g’)で得られた混合物を適切な条件下で清澄化する
得られた混合物を次に、Sartopure(登録商標)PP2、8μm(Sartorius)とSartopure(登録商標)PP2、5μm(Sartorius)を組み合わせた深層濾過により、流速1L/分で清澄化した。
【0176】
工程i’):オルソポックスウイルスを、一価の塩を含んでなる溶液により溶出する
オルソポックスウイルスを、SO8緩衝液(10mM Tris−HCl;スクロース 5%(w/v);10mM グルタミン酸ナトリウム;生理的なモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)の50mM NaCl;pH8.0)中の増大するNaCl濃度勾配(300mM;400mM;500mM)により、蠕動のWatson-Marlowポンプ(参照323ES/4D, 520S; Watson-Marlow)を用いて溶出した。
【0177】
工程j’):工程i’)で得られた混合物を濃縮する
工程i’)で得られた溶出液を、次に0.1μm Prostak Microfiltration Module (参照PSVVAG021, Millipore)を通して18倍に濃縮した。
【0178】
工程k’):工程j’)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過する
次に濃縮水を同じモジュール、すなわち0.1μm Prostak Microfiltration Module (参照PSVVAG021, Millipore)において透析濾過した。
DNAの定量は、Quant-iT(商標)Picogreen(登録商標)dsDNA Assays Kit (カタログ番号P7589、Invitrogen)を用いて行った。
結果:残存DNAは検出されなかった。
【0179】
上記の全ての書類(例えば、特許、特許出願、出版物)は、引用することにより本明細書の一部とされる。本発明の様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記述してきたが、特許請求される本発明は、このような特定の実施形態によって不当に制限されるべきではないことが理解されなければならない。実際に、本発明を実行するために記載された様式についての、当業者に自明である様々な改変は、以下の請求項の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造および精製する方法であって、以下の工程:
a)パッケージング細胞の培養物を用意し、
b)培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させ、
c)感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養し、
d)1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートし、
e)培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収し、
f)単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害しかつ工程g)においてオルソポックスウイルスが陰イオン交換吸着剤へ吸着することを避けるのに適切な条件下で、工程e)で回収されたオルソポックスウイルスに一価の塩を添加し、
g)核酸の捕捉を可能にするのに適切な条件下で、工程f)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを接触させ、
h)細胞片の除去を可能にするのに適切な条件下で、工程g)で得られた混合物を清澄化し、
i)通過画分中に残るオルソポックスウイルスを回収するのに適切な条件下で、陰イオン交換吸着剤を一価の塩を含んでなる溶液により洗浄し、
j)工程h)で得られた通過画分および工程i)で得られた通過画分を濃縮し、
k)工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造および精製する方法であって、以下の工程:
a’)パッケージング細胞の培養物を用意し、
b’)培養パッケージング細胞にオルソポックスウイルスを感染させ、
c’)感染させたパッケージング細胞を、子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで培養し、
d’)1以上のヌクレアーゼの存在下でインキュベートし、
e’)培養上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収し、
f’)工程e’)で回収されたオルソポックスウイルスを、
1.単数または複数のヌクレアーゼの活性を阻害できる1以上の薬剤、および、所望により
2.1以上の安定剤
の存在下でインキュベートし、
g’)前記オルソポックスウイルスおよび核酸の捕捉を可能にするのに適切な条件下で、工程f’)で得られた混合物と陰イオン交換吸着剤とを接触させ、
h’)細胞片の除去を可能にするのに適切な条件下で、工程g’)で得られた混合物を清澄化し、
i’)オルソポックスウイルスを、一価の塩を含んでなる溶液により溶出し、
j’)工程i’)で得られた混合物を濃縮し、
k’)工程j’)で得られたオルソポックスウイルスを含んでなる画分を透析濾過すること
を含んでなる、方法。
【請求項3】
パッケージング細胞が、不死化細胞株、好ましくは不死化鳥類細胞株である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
不死化鳥類細胞株が、カモ科、好ましくはノバリケン種に属する鳥類細胞から得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
不死化鳥類細胞株が、テロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase:TERT)をコードする核酸配列を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
不死化鳥類細胞株が、受託番号08060502により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT3−17490またはその誘導体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不死化鳥類細胞株が、受託番号08060501により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT6−17490またはその誘導体である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
不死化鳥類細胞株が、E1A核酸配列およびテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)をコードする核酸配列を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
パッケージング細胞が、初代または二次的な鳥類細胞、好ましくはニワトリ胚線維芽細胞(CEF)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
pHが7.0ないし9.0、好ましくは7.5ないし8.5、より好ましくは8.0である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
単数または複数のヌクレアーゼが、単数または複数のエンドヌクレアーゼであり、好ましくはBenzonase(登録商標)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
単数または複数のヌクレアーゼの濃度が、5ないし100U/mlの範囲、好ましくは5ないし50U/mlの範囲、より好ましくは10U/mlである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
オルソポックスウイルスを回収する工程の前に、
1)好ましくは高速ホモジナイザーを用いてまたは超音波処理によって、パッケージング細胞膜を破壊し、
2)、工程1)で得られる混合物を少なくとも1時間インキュベートし、予め添加された単数または複数のヌクレアーゼにより、パッケージング細胞から放出された核酸を分解する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
陰イオン交換吸着剤が、清澄化工程で用いられるフィルターの孔径よりも大きな直径、好ましくは8μmよりも大きな直径、より好ましくは50μmないし150μmの直径、さらに好ましくは90μmないし120μmの直径、さらに一層好ましくは120μmの直径を有するビーズ型基質に存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
陰イオン交換吸着剤の官能基が、ジメチルアミノエチル(DMAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、およびトリエチルアミノエチル(TEAE)からなる群から選択され、好ましくはトリメチルアミノエチル(TMAE)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
清澄化工程が、深層濾過により、好ましくは孔径8μmのフィルターと孔径5μmのフィルターを組み合わせて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
濃縮工程が、0.09ないし0.15μmの孔径を有するフィルター、好ましくは0.1μmの孔径を有するフィルターを用いる精密濾過により行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
透析濾過工程が、0.09ないし0.15μmの孔径を有するフィルター、好ましくは0.1μmの孔径を有するフィルターを用いて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
1.ゲル濾過工程;および
2.透析濾過工程を
さらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
工程f)で用いられる一価の塩がNaClである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
工程f)で用いられる一価の塩の濃度が、50ないし150mMの範囲、好ましくは100mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程f’)においてヌクレアーゼ活性を阻害しうる単数または複数の薬剤が、キレート剤であり、好ましくはエチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)である、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
EDTAの濃度が、5ないし20mMの範囲、好ましくは10mMである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程i’)で用いられる一価の塩がNaClである、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
工程i’)が、0ないし2.5Mの範囲、好ましくは0ないし2Mの範囲、より好ましくは0ないし1.5Mの範囲の一価の塩の濃度勾配を増大させることにより行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスである、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記オルソポックスウイルスが改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
組み換えオルソポックスウイルスが、シトシンデアミナーゼ活性を有するタンパク質、好ましくはFCU1タンパク質またはFCU1−8タンパク質をコードする自殺遺伝子である外来性配列を含んでなる、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
組み換えオルソポックスウイルスが、腫瘍関連抗原(TAA)、好ましくはMUC1をコードする外来性配列を含んでなる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
組み換えオルソポックスウイルスが、抗原、好ましくはHCVまたはHPVをコードする外来性配列を含んでなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
組み換えオルソポックスウイルスが、サイトカイン、好ましくはIL2をコードする外来性配列をさらに含んでなる、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
組み換えオルソポックスウイルスが、単数または複数の外来性配列の発現に必要なエレメントをさらに含んでなる、請求項28〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
医薬組成物、好ましくはワクチンとして使用するための、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法によって得られる、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルス。
【請求項34】
癌、感染症、および/または自己免疫疾患を治療および/または予防するための、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法によって得られる、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルス。
【請求項35】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法によって得られる、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを含んでなる、医薬組成物、好ましくはワクチン。
【請求項36】
癌、感染症、および/または自己免疫疾患を治療および/または予防するための、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
癌、感染症、および/または自己免疫疾患を治療および/または予防するための医薬組成物、好ましくはワクチンを製造するための、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法によって得られる、精製された野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスの使用。
【請求項38】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、カモ科、好ましくはノバリケン種に属する鳥類細胞から得られる不死化鳥類細胞株の使用。
【請求項39】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株の使用。
【請求項40】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、受託番号08060502により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT3−17490ノバリケン不死化鳥類細胞株またはその誘導体の使用。
【請求項41】
請求項1〜32のいずれか一項に記載野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、受託番号08060501により欧州細胞培養収集機関(ECACC)に寄託されるT6−17490ノバリケン不死化鳥類細胞株またはその誘導体の使用。
【請求項42】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の野生型、弱毒化、および/または組み換えオルソポックスウイルスを製造するための、E1A核酸配列およびテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)をコードする核酸配列を含んでなるノバリケン不死化鳥類細胞株の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526531(P2012−526531A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510276(P2012−510276)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056491
【国際公開番号】WO2010/130753
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】