説明

オルト置換アリールボロン酸を使用する化学反応のためのカルボン酸の有機触媒活性化方法

本開示は、有機反応のための、詳細にはアミンとの直接的なアミド化反応のための、操作的に単純な、カルボン酸の低温での触媒活性化方法を記載するものである。本方法は、式(I)のオルト置換アリールボロン酸の使用を伴い、式中のR1からR5基は、本明細書において定義するとおりである。好ましい態様において、R1はハロゲンである。アリールボロン酸は、求核性1,2-付加反応、共役1,4-付加反応、およびα,β-不飽和カルボン酸を伴うディールス・アルダー反応を含む付加環化反応を触媒する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野
本開示は、有機反応のための、詳細にはアミンとの直接的なアミド化反応、付加環化および共役付加のための、操作的に単純な、カルボン酸の低温での触媒活性化方法を含む。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
アミド結合は、自然界のいたるところに存在し、また、生体分子を構成する最も重要な官能基の一つと言える。アミドは、ペプチドおよびタンパク質の骨格にとって基本的単位であり、ヌクレオチドの重要な成分である。それ故、アミド化およびペプチド合成のための合成方法の開発は、化学者を長く夢中にさせてきた。結果として生ずるアミド結合の好適な熱力学的安定性にもかかわらず、遊離カルボン酸とアミンとの単純な脱水反応は、大きな活性化エネルギーによって悩まされるプロセスである。安定なカルボン酸アンモニウム塩の最初の形成により脱水段階が阻止される。この塩中間体は、官能化分子とは相容れない非常に高い温度(典型的には160℃超)においてのみ、崩壊してアミド生成物をもたらす。それ故、この重要な古典的反応は、化学者に課題を投げかけ続けており、単純で自然に優しくアトムエコノミカルな様式で遊離カルボン酸とアミンとで直接アミドを作る手段は未だ存在しない。
【0003】
最新のアミド結合形成方法の多くは、カルボン酸を活性化および脱水するために、超化学量論量(すなわち、大過剰)の高価で毒性の試薬、例えばカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、ホスホニウム塩、およびその他の使用を伴う。これらのカップリング剤およびそれらの関連する補助試薬(co-reagent)(塩基、超求核剤、他の添加剤)は、所望のアミドの単離を複雑にする傾向がある大量の不経済な副生成物を生じさせる。
【0004】
アミド結合の直接的な形成は、1858年以来公知である(Benz, G. In Comprehensive Organic Synthesis, Vol 6(非特許文献1); Trost B. M., Fleming I., Heathcock C. H. Pergamon press: New York, 1991, Chap. 2.3(非特許文献2))。カルボン酸とアミンとのアミド化反応のために使用されている触媒は、TiCl4(Carlson et al. Acta Chem. Scand. Ser. B. 1988, 28(非特許文献3))、Ti(O-i-Pr)4、(Helquist et al. Tetrahedron Lett.. 1988, 59,3049(非特許文献4))、Ph3SbO/P4S10(Matsuda et al. J. Org. Chem. 1991, 56, 4076(非特許文献5))、Sb(OEt)4(Yamamoto et al. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 1569(非特許文献6))およびArB(OH)2(Ishihara et al. J. Org. Chem. 1996, 61, 4196)(非特許文献7)を含むが、周囲条件(すなわち、室温)下で穏やかに機能する効率的な触媒手順は、未だ開発されていない。
【0005】
Ishihara et al.(同上)(非特許文献7)に報告されているArB(OH)2触媒は、Arが、3,4,5-トリフルオロフェニル、3-ニトロフェニル、3,5-ジ-(トリフルロメチル)フェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、フェニル、2,4,6-トリ-(トリフルオロメチル)フェニルおよび2,3,4,5-テトラフルオロフェニルであるものを含む。反応は、約110℃の温度で(トルエンを還流させながら)、5mol%の触媒負荷量で、およびソックスレー円筒濾紙において4Åのモレキュラーシーブを使用して水を除去しながら行われた。これらの触媒の固相バージョンは、Latta et al.(Synthesis. 2001, 11, 1611-1613)(非特許文献8)によって報告されているが、それも非常に高温を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Benz, G. In Comprehensive Orgenic Synthesis, Vol 6
【非特許文献2】Trost B. M. Fleming I., Heathcock C. H. Pergamon press: New York, 1991, Chap. 2.3
【非特許文献3】Carlson et al. Acta Chem. Scand. Ser. B. 1988, 28
【非特許文献4】Helquist et al. Tetrahedron Lett.. 1988, 59,3049
【非特許文献5】Matsuda et al. J. Org. Chem. 1991, 56, 4076
【非特許文献6】Yamamoto et al. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 1569
【非特許文献7】Ishihara et al. J. Org. Chem. 1996, 61, 4196
【非特許文献8】Latta et al. Synthesis. 2001, 11, 1611-1613
【発明の概要】
【0007】
開示の概要
本明細書において、オルト置換アリールボロン酸を使用して、カルボン酸の、室温での触媒求電子的活性化(catalytic electrophilic activation)を達成した。詳細には、様々なカルボン酸における室温でのアミド化反応ならびにα,β-不飽和カルボン酸をジエノフィルとして使用するディールス・アルダー反応を、オルト置換アリールボロン酸触媒を利用して達成した。本触媒活性化方法は、α,β-不飽和カルボン酸の二重または三重結合の求電子的活性化にも適用することができ、アルケンおよびアルキンの1,4-共役付加反応ならびに他の付加環化にも適用することができる。後続の反応のためのカルボン酸の本活性化方法は、穏やかな反応条件下で行われ、本質的に廃棄物を生じず、唯一の副生成物として水を生成する。
【0008】
従って、本開示は、後続の反応のためのカルボン酸の触媒求電子的活性化方法を含み、この方法は、カルボン酸の求電子的活性化のための条件下で、カルボン酸と式Iのアリールボロン酸とを組み合わせることを含む:

式中、
R1は、ハロ、C1-4アルキル、C6-10アリール、NO2、CN、CO2H、C(O)C1-4アルキル、CO2C1-4アルキル、OC1-4アルキル、SC1-4アルキル、OC6-10アリール、S(O)C1-4アルキル、SO2C1-4アルキル、OCF3、CR6R7OR8、CR6R7SR8、OH、SHおよびSi(R8)3から選択され;
R2からR5は、H、ハロ、C1-4アルキル、C6-10アリール、CO2H、C(O)C1-4アルキル、CO2C1-4アルキル、OC1-4アルキル、SC1-4アルキル、OC6-10アリール、S(O)C1-4アルキル、SO2C1-4アルキル、フルオロ置換C1-4アルキル、フルオロ置換C1-4アルコキシ、OH、SH、SR8およびSi(R8)3から独立して選択され;
R6、R7およびR8は、H、C1-4アルキルおよびC6-10アリールから独立して選択され、
但し、式Iの化合物は2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボロン酸でない。
【0009】
本開示の態様では、カルボン酸を求核剤、例えばアミンまたはアルコールとの後続の反応のために活性化し、水を除去するための手段の存在下でカルボン酸と式Iのアリールボロン酸とを組み合わせる。この態様によると、本開示は、例えば、アミドまたはエステルの調製方法を提供する。
【0010】
本開示のもう一つの態様において、カルボン酸は、ディールス・アルダー反応におけるジエンとのまたは1,4-共役付加反応における求核剤との反応のために活性化されるα,β-不飽和カルボン酸である。
【0011】
本開示は、式IIの新規ボロン酸またはその塩も含む:

式中、
R6は、HおよびC1-4アルキルから選択され;ならびに
R7、R8およびR9は、H、C1-4アルキルおよびOC1-4アルキルから独立して選択され、かつR7、R8およびR9のうちの一つまたは二つは、Hである。
【0012】
式IIの化合物は新規であり、カルボン酸の活性化のための良好な活性を有するクラスのボロン酸触媒の代表である。
【0013】
本開示は、不均一反応条件での使用のために、例えば化学結合によって固体支持体に付着している式IおよびIIの化合物も含む。
【0014】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、この詳細な説明から本開示の精神および範囲内の様々な変更ならびに変形が当業者に明らかになると考えられるので、この詳細な説明および具体的な実施例は、本開示の好ましい態様を示すが、単に例証としてのみ提供されるものであることは理解されるはずである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の詳細な説明
特定のオルト置換アリールボロン酸が、例えばアミド化、ディールス・アルダー付加環化および1,4-共役付加を含む有機反応のためにカルボン酸を求電子的活性化することが明らかになった。詳細には、これらのアリールボロン酸は、アミン(一級および二級アミンを含む)とカルボン酸との反応を、この反応において生成される水を除去するための手段の存在下で触媒して、アミドを生じさせる。また、これらのボロン酸は、水の存在下でのα,β-不飽和カルボン酸とジエンの反応を触媒する。これらの反応は室温で起こり、結果として廃棄物または副生成物を殆ど生じない。
【0016】
従って、本開示は、カルボン酸の求電子的活性化のための条件下で、カルボン酸と式Iのアリールボロン酸とを組み合わせることを含む、後続の反応のためのカルボン酸の触媒求電子的活性化方法を含む:

式中、
R1は、ハロ、C1-4アルキル、C6-10アリール、NO2、CN、CO2H、C(O)C1-4アルキル、CO2C1-4アルキル、OC1-4アルキル、SC1-4アルキル、OC6-10アリール、S(O)C1-4アルキル、SO2C1-4アルキル、OCF3、CR6R7OR8、CR6R7SR8、OH、SHおよびSi(R8)3から選択され;
R2からR5は、H、ハロ、C1-4アルキル、C6-10アリール、CO2H、C(O)C1-4アルキル、CO2C1-4アルキル、OC1-4アルキル、SC1-4アルキル、OC6-10アリール、S(O)C1-4アルキル、SO2C1-4アルキル、フルオロ置換C1-4アルキル、フルオロ置換C1-4アルコキシ、OH、SH、SR8およびSi(R8)3から独立して選択され;
R6、R7およびR8は、H、C1-4アルキルおよびC6-10アリールから独立して選択され、
但し、式Iの化合物が、2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボロン酸でない。
【0017】
本明細書において用いる場合の用語「アルキル」は、一から四個の炭素原子を含有する直鎖および/または分岐鎖、飽和アルキル基を意味し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルを含む。
【0018】
式Iの化合物に関して本明細書において用いる場合の用語「アリール」は、6から10個の炭素原子および少なくとも一つの芳香族環を含有する単環式または多環式の環を意味し、フェニル、ナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インダニル、インデニルなどを含む。一態様では、アリールはフェニルである。
【0019】
式Iの化合物に関して本明細書において用いる場合の用語「多環式」は、互いに連結された二つ以上の環を含有する基を意味し、例えば、二つ(二環式)、三つ(三環式)または四つ(四環式)の環を含有する基を含む。環は、単結合によって連結されている場合もあり、単一原子によって連結されている場合もあり(スピロ環式)、または二個の原子によって連結されている場合もある(縮合および架橋)。
【0020】
式Iの化合物に関して本明細書において用いる場合の用語「フルオロ置換されている」は、水素原子の、すべてを含めて、一つ以上がフッ素原子で置換されているアルキルまたはアルコキシ基を指す。
【0021】
式Iの化合物に関して本明細書において用いる場合の用語「ハロ」は、F、Cl、BrおよびIを含む、ハロゲンを意味する。
【0022】
本開示の態様において、式Iのアリールボロン酸は、式中のR2からR5がすべてHであるものを含む。本開示のさらなる態様において、式Iのアリールボロン酸は、R1が、ハロ、CH3、NO2およびCH2OCH3から選択され、その上、R2からR5がすべてHであるものを含む。本開示のもう一つの態様において、式Iのアリールボロン酸は、R1が、I、Br、ClおよびFから選択され、その上、R2からR5がすべてHであるものを含む。
【0023】
本開示のもう一つの態様において、式Iのアリールボロン酸は、R2からR5が、H、ハロ、CO2CH3、CO2CH2CH3、OCH3、CH3、CO2H、C(O)CH3、S(O)CH3、CF3およびCF3Oから独立して選択されるものを含む。本開示のもう一つの態様において、R2からR5のうちの少なくとも一つは、Hである。本開示のもう一つの態様において、式Iのアリールボロン酸は、R1が、ハロ、CH3、NO2およびCH2OCH3から選択され、R2からR5が、H、ハロ、CO2CH3、CO2CH2CH3、OCH3、CH3、CO2H、C(O)CH3、S(O)CH3、CF3およびCF3Oから独立して選択され、かつR2からR5のうちの少なくとも一つがHであるものを含む。
【0024】
R1が、キラルであり得、および本方法が、エナンチオ選択的反応のためのカルボン酸の活性化に有用であることが、本開示のさらなる態様である。
【0025】
本開示のもう一つの態様において、式Iのアリールボロン酸は、表1に示すとおりの式I(a)からI(w)の化合物から選択される。さらなる態様において、式Iのアリールボロン酸は、2-ブロモフェニルボロン酸、2-ヨードフェニルボロン酸および2-クロロフェニルボロン酸から選択される。もう一つの態様において、式Iのアリールボロン酸は、2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸、2-ヨード-3-メチル-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸および2-ヨード-3,5-ジメチルフェニルボロン酸から選択される。
【0026】
本開示のもう一つの態様では、公知の方法論を用いて式IまたはIIの化合物を固体支持体に付着させる。そのような触媒は、例えば不均一な固相反応に、有用である。固体支持体は、例えば、非限定的に、シリカまたは高分子不溶性マトリックス、例えばポリスチレンであり得、およびボロン酸は、例えば、非限定的に、化学結合によって、例えばアルコキシまたはカルボキシ基によって、付着させることができる。
【0027】
式Iの化合物は、市販されているか、当技術分野において公知の方法を用いて調製することができる。例えば、ボロン酸基は、金属交換反応条件を用いて適切な置換フェニル前駆体に付着させることができる。一つの具体的な実施例では、ヨードなどのハロゲン基を、例えば臭化フェニルマグネシウムとの反応により、グリニャール試薬に転換し、その後、標準的な反応条件下でホウ酸トリアルキルと反応させて対応するボロン酸を生成することができる。
【0028】
本開示の態様では、CO2H基の炭素原子との求核性1,2-付加反応、もしくはα,β-不飽和カルボン酸のβ-炭素原子との共役1,4-付加反応における求核剤との反応のために、またはジエンとのディールス・アルダー反応のために、式Iの化合物を使用してカルボン酸を求電子的活性化する。この方法は、1,3-双極子、例えば、非限定的に、酸化窒素、アゾメチンイリド、酸化カルボニルなどを含む、ジエン以外の4電子パートナーとの[3+2]付加環化のような、アルケンおよびアルキンの他の付加環化に拡大することもできる。
【0029】
「ディールス・アルダー」反応は、置換シクロヘキセン系を形成するための、共役ジエンと一般にジエノフィルと呼ばれる置換アルケンとの有機化学反応(具体的には、付加環化)である。
【0030】
求核「共役付加」は、求核剤と主としてカルボニル化合物との1,2様式での反応(C=O結合の炭素原子への付加)または、カルボニル化合物がα,β-不飽和結合を含有するときには、1,4様式での「共役付加」(β-炭素原子への付加)を伴う有機反応である。
【0031】
本明細書において用いる場合、「カルボン酸の求電子的活性化のための条件下」という表現は、例えば求核剤またはジエンとの、後続の反応のためのカルボン酸の求電子的活性化のために適切な溶媒および反応温度、時間ならびに試薬比および濃度においてという意味である。本開示の態様において、溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)およびトルエンから選択される。適切には、溶媒はDCMである。本開示のさらなる態様において、反応温度は、室温(すなわち、約20℃から約27℃)または室温よりわずかに上(すなわち、約45℃以下、適切には約40℃以下)である。本開示のもう一つの態様において、反応時間は、約2時間から約50時間、適切には約15時間から約48時間、さらに適切には約20時間である。
【0032】
本開示のさらなる態様において、反応が、(1,2-または1,4-付加のいずれかによる)カルボン酸への求核剤の付加であるとき、求核剤のカルボン酸に対する比率は、約1:1であり、試薬の濃度は、約0.05Mから約0.1M、適切には約0.07Mである。本開示のさらなる態様において、式Iのアリールボロン酸触媒の量は、約1mol%から約25mol%、適切には約5mol%から約25mol%、さらに適切には約10mol%である。
【0033】
本開示のさらなる態様において、反応が、二重結合を含むカルボン酸へのジエンのディールス・アルダー付加であるとき、カルボン酸のジエンに対する比率は、適切には約1:2である。
【0034】
カルボン酸の求電子的活性化のための条件が、カルボン酸の構造、行われる反応および選択される特定の触媒に依存して変わること、ならびに所望の生成物の最適な収率を得るために上の範囲内で反応条件を変えることができることは、当業者には理解される。反応の過程に従って様々な方法を利用することができ、例えば、クロマトグラフィーおよび電子顕微鏡技術を含む。
【0035】
適切には、求核付加反応については、本方法を、この反応において生成される水を除去するための手段を伴う無水および不活性雰囲気下(例えば、アルゴンまたは窒素下)条件で行う。適切には、ディールス・アルダー反応については、本方法を水の存在または不在下で行う。
【0036】
本明細書において用いる場合の「水を除去するための手段」は、求核剤とカルボン酸の反応に干渉しない、および本開示の方法において生成される水の有効な除去を生じさせる、任意の方法または試薬を指す。本開示の態様において、水を除去するための手段は、モレキュラーシーブ、適切には、(オーブンの中での乾燥によって活性化された)3Å、4Åおよび/または5Å活性化モレキュラーシーブである。水を除去するための他の手段は、例えば、活性アルミナ、ベンゾフェノン、ベントナイトクレー、塩化カルシウム、水素化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸銅(II)、塩化リチウム、臭化リチウム、マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カリウム、シリカゲル、塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤を含む。
【0037】
本開示の方法の態様において、求核剤は、CO2H基の炭素原子、またはα,β-不飽和カルボン酸のβ-炭素原子と反応して、炭素原子への共有結合を形成することが望まれる、および本開示の方法において作用する、任意の適切な求核性化学種である。本開示の態様において、求核剤は、アミン、アルコールまたはチオールを含む化合物である。本開示のもう一つの態様において、求核剤は、一級または二級アミンを含む化合物である。本開示の態様において、アミンは、置換もしくは非置換アリール基ならびに/または分岐および/もしくは非分岐、飽和および/もしくは不飽和、置換もしくは非置換、環式および/もしくは非環式アルキル基を含む。芳香族基とは、6から14個の炭素原子および少なくとも一つの芳香族環を有する単環式または多環式芳香族環を意味する。アルキル基とは、1から20個の炭素原子を有する炭素鎖または環を意味する。アルキル基が不飽和であるとき、それは、1から5の二重および/または三重結合を有し得る。任意でアルキルおよび/またはアリール基上に存在する置換基は、例えば、ハロ、アリール、C1-4アルコキシ、C1-4アルキル、C(O)C1-4アルキル、S(O)C1-4アルキル、フルオロ置換C 1-4アルキルおよびフルオロ置換C1-4アルコキシを含む。本開示のもう一つの態様において、アミンは、天然に存在するアミノ酸またはそれらの類似体またはそれらの保護された変型のうちの一つである。
【0038】
本開示の方法におけるカルボン酸は、例えば求核剤またはジエンと反応して求核剤またはジエンへの共有結合を形成することが望まれる、および本開示の方法において作用する、任意の適切なカルボン酸含有化合物であり得る。本開示の態様において、カルボン酸は、置換もしくは非置換アリール基ならびに/または分岐および/もしくは非分岐、飽和および/もしくは不飽和、置換もしくは非置換、環式および/もしくは非環式アルキル基を含有する。芳香族基とは、6から14個の炭素原子と少なくとも一つの芳香族環とを有する単環式または多環式芳香族環を意味する。アルキル基とは、1から20個の炭素原子を有する炭素鎖または環を意味する。アルキル基が不飽和であるとき、それは、1から5の二重および/または三重結合を有し得る。任意でアルキルおよび/またはアリール基上に存在する置換基は、例えば、ハロ、アリール、C1-4アルコキシ、C1-4アルキル、C(O)C1-4アルキル、S(O)C1-4アルキル、フルオロ置換C 1-4アルキルおよびフルオロ置換C1-4アルコキシを含む。本開示のもう一つの態様において、カルボン酸は、天然に存在するアミノ酸またはそれらの類似体またはそれらの保護された変型のうちの一つである。
【0039】
本開示の方法において特に良好な活性を有する特定のボロン酸は、新規である。従って、本開示は、式IIの化合物またはその塩を含む:

式中、
R6は、HおよびC1-4アルキルから選択され;ならびに
R7、R8およびR9は、H、C1-4アルキルおよびOC1-4アルキルから独立して選択され、かつR7、R8およびR9のうちの一つまたは二つは、Hである。
【0040】
本開示の態様において、R6は、H、メチルおよびエチルから選択され、R7、R8およびR9は、H、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから独立して選択され、ならびにR7、R8およびR9のうちの一つまたは二つは、H、またはその塩である。
【0041】
本開示の態様において、式IIの化合物は、2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸、2-ヨード-3-メチル-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸および2-ヨード-3,5-ジメチルフェニルボロン酸から選択される。
【0042】
前記塩は、式IIの化合物とで形成する任意の塩基性付加塩であり得る。塩は、式IIの化合物の単離および精製に有利であり得る。所望の化合物塩の形成は、標準的な技術を用いて達成される。例えば、中性化合物を適切な溶媒中で塩基で処理し、形成された塩を濾過、抽出または任意の他の適切な方法によって単離する。酸での処理によって中性化合物を再生してもよい。
【0043】
本開示の範囲を理解する上で、本明細書において用いる場合の用語「含むこと(comprising)」およびその派生語は、述べている特徴、要素、成分、基、整数、および/または段階の存在を指定するが、他の述べていない特徴、要素、成分、基、整数および/または段階を除外しない、無制限の用語であると解釈する。前述のことは、同様の意味を有する語、例えば用語「含むこと(including)」、「有すること(having)」およびそれらの派生語にもあてはまる。最後に、本明細書において用いる場合の「実質的に」、「約」および「およそ」などの程度に関する用語は、最終結果を有意に変えないような、修飾される用語の妥当な偏差量を意味する。程度に関するこれらの用語は、修飾される用語の少なくとも±5%の偏差を、修飾する語の意味をこの偏差が否定しない場合、含むと解釈すべきである。
【0044】
以下の非限定的な実施例は、本開示の例証となるものである。
【0045】
実施例
実施例1:一般的なアミド化手順
オーブン中で一晩乾燥させた、攪拌棒を装備した試験管の中に、(0.5mmol)のカルボン酸、20mol%のアリールボロン酸および1gの活性化4Åモレキュラーシーブ(これもオーブン中で一晩乾燥させた)を入れた。冷却した試験管にアルゴンを流し、その後、アルゴン下で7mlの乾燥溶媒(ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)またはトルエン)を添加した。得られた溶液または懸濁液を10分間攪拌し、その後、(0.5mmol)のアミンを添加した。その反応物を48時間、室温(24〜26℃)で攪拌させ、その後、Celite(登録商標)545によって濾過し、その混合物を水(2×20ml)、ブライン(30ml)で抽出し、無水Na2SO4で乾燥させた。濾過および真空下での濃縮によって、粗生成物を得、それをフラッシュ・カラム・クロマトグラフィーによって精製して純粋なアミドを得た。あるいは、反応混合物をCelite(登録商標)545によって濾過し、その濾液を酸性水溶液(pH=4)、塩基性水溶液(pH=9)で洗浄し、ブラインと共に予備濃縮した。有機層を回収し、無水Na2SO4で乾燥させ、蒸発させて、純粋なアミド生成物を得た。
【0046】
(a)ベンジルアミンと2-フェニル酢酸の反応-アリールボロン酸置換の効果

本開示の方法の態様に従って様々なアリールボロン酸触媒を使用するN-ベンジル-2-フェニルアセトアミドの調製の結果を表1に提示する。
【0047】
(b)ベンジルアミンと2-フェニル酢酸の反応-アリールボロン酸の濃度およびmol%の効果
(a)において説明した反応を、反応時間、試薬の濃度および2-ブロモフェニルボロン酸のmol%を変えて繰り返した。結果を表2に示す。
【0048】
(c)ベンジルアミンと2-フェニル酢酸の反応-試薬比の効果
(a)において説明した反応を、10mol%の2-ブロモフェニルボロン酸を使用し、ならびにアミンおよびカルボン酸の比率を変えて繰り返した。結果を表3に示す。
【0049】
(d)基質範囲
上で説明した一般的な反応を、10mol%の2-ブロモフェニルボロン酸ならびに異なるアミンおよびカルボン酸を使用して繰り返した。結果を表4に示す。
【0050】
(e)ベンジルアミンと2-フェニル酢酸の反応-2-ブロモフェニルボロン酸および2-ヨードフェニルボロン酸の並列比較
上で説明した一般的な反応を、室温、活性化4Åモレキュラーシーブを伴うジクロロメタンおよび6時間の反応時間という同一条件下で、10mol%の、2-ブロモフェニルボロン酸または2-ヨードフェニルボロン酸のいずれかを使用して繰り返した。アミドの収率は、2-ヨードフェニルボロン酸で91%、および2-ブロモフェニルボロン酸で55%であった。
【0051】
実施例2:一般的なディールス・アルダー手順

2,3-ジメチルブタ-1,3-ジエン(2当量)およびアクリル酸(1当量)を、室温で28時間、DCM中の2-ブロモフェニルボロン酸(0.2当量)および水(0.1当量)の存在下で組み合わせた。その生成物、3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルボン酸を収率76%で単離した。水を添加せずに反応を繰り返したとき、収率は90%であった。
【0052】
この反応を、様々なジエンを使用して繰り返した。結果を表5に提示する。
【0053】
実施例3:2-ヨードフェニルボロン酸:I(l)の調製

THFとジエチルエーテル(Et2O)との混合物(1:1)60mL中の1,2-ジヨードベンゼン(0.102g、3.08mmol)の溶液に、-78℃で、塩化イソプロピルマグネシウム(THF中の2M、1.54mL、3.08mmol)を滴加した。その混合物を2時間、その温度で攪拌した後、B(OiPr)3(1.74g、2.12mL、9.24mmol)を添加した。その溶液を一晩、室温に温め;その後、40mLのHCl(10%)を添加し、得られた混合物を30分間、室温で攪拌した。水性層をEt2O(50mL、3回)で抽出した。Na2SO4での乾燥、蒸発およびフラッシュクロマトグラフィーによる精製によって、0.62gの純粋な生成物を得た(82%)。
【0054】
実施例4:2-ヨード-3,5-ジメチルフェニルボロン酸:I(w)の調製

THFとEt2Oとの混合物(1:1)60mL中の1,2-ヨード-3,5-ジメチルベンゼン(0.5g、1.40mmol)の溶液に、-78℃で、塩化イソプロピルマグネシウム(THF中の2M、0.70mL、1. 40mmol)を滴加した。その混合物を2時間、-78℃で攪拌した後、B(OiPr)3(0.96mL、4.19mmol)を添加した。その溶液を一晩、室温に温め、その後、NH4Clの飽和溶液を添加し、得られた混合物を30分間、室温で攪拌した。水性層をEt2O(50mL、3回)で抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。この濃縮試料にヘキサンを添加し、結果として生じた沈殿を単離して、上に示したとおりの生成物を分離不能な混合物として得た。
分光データ:

(27℃でのNMRで、Bに付着しているCは見られなかった)。
IR(顕微鏡、cm-1)2951、1587、1386、1342、1296、1270、1000。
C8H1011BIO2についてのHRMS(EI):計算値275.98185;実測値275.98239。
得られたX線結晶構造。
【0055】
実施例5:2-ヨード-3-メチル-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸:I(x)の調製

(a)1,2-ジメトキシ-3-メチルベンゼン
丸底フラスコの中で、3-メチルカテコール(5.0g、40.3mmol)、MeI(22.3g、157.1mmol)、およびK2CO3(18.9g、136.9mmol)をアセトン(20.0ml)に溶解した。その反応混合物を室温で1時間攪拌し、その後、60℃で一晩攪拌した。その反応混合物を濃縮し、EtOAc/ヘキサン(5:95)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフに付した。淡黄色の液体を100%で単離した(6.13g)。この化合物の特性は、以前の報告と一致した:Xing, L.; Wang, X.; Cheng, X.; Zhu, R.; Liu, B.; Hu, Y. Tetrahedron Letters 2007, 63, (38), 9382-9386。
【0056】
(b)1,2-ジヨード-4,5-ジメトキシ-3-メチルベンゼン
丸底フラスコの中で、1,2-ジメトキシ-3-メチルベンゼン(実施例5(a)、2.0g、13.15mmol)、I2(9.02g、28.92mmol)、およびHg(OAc)2(9.22g、28.92mmol)をCH2Cl2(40.0ml)に溶解した。その反応混合物を室温で攪拌し、TLCによってモニターした。完了したら、その反応混合物を濾過し、チオ硫酸ナトリウムの水溶液で洗浄し、CH2Cl2で抽出し、ブラインで洗浄した。そのCH2Cl2溶液をNa2SO4で乾燥させ、濃縮し、EtOAc/ヘキサン(10:90)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフに付した。薄オレンジ色の固体を68%で単離した(3.61g)。

C9H10I2O2についてのHRMS(EI):計算値403.87702;実測値403.87682。
【0057】
(c)2-ヨード-4,5-ジメトキシ-3-メチルフェニルボロン酸
THFおよびEt2Oの混合物(1:1)120mL中の1,2-ジヨード-4,5-ジメトキシ-3-メチルベンゼン(実施例5(b)、2.0g、4.95mmol)の溶液に、-78℃で、塩化イソプロピルマグネシウム(THF中の2M、2.72mL、5.44mmol)を滴加した。その混合物を2時間、その温度で攪拌した後、B(OiPr)3(10.50mL、14.84mmol)を添加した。その溶液を一晩、室温に温め;その後、NH4Clの飽和溶液を添加し、得られた混合物を30分間、室温で攪拌した。水性層をEt2O(50mL、3回)で抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。その濃縮した試料に、ヘキサンを添加し、結果として生じた沈殿を単離して、0.90gの純粋な生成物(56%)を得た。
分光データ

(27℃でのNMRで、Bに付着しているCは見られなかった)。
C9H1211BIO4についてのHRMS(EI):計算値321.98733;実測値321.98740。
得られたX線結晶構造。
【0058】
実施例6:2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸:I(v)の調製

(a)1,2-ジメトキシベンゼン
丸底フラスコの中で、カテコール(10.0g、90.0mmol)、MeI(50.0g、354.0mmol)、およびK2CO3(42.7g、309.0mmol)をアセトン(40.0ml)に溶解した。その反応混合物を室温で1時間攪拌し、その後、60℃で一晩攪拌した。その反応混合物を濃縮し、EtOAc/ヘキサン(5:95)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフに付した。無色の液体を100%で単離した(12.43g)。この化合物の特性は、以前の報告と一致した:(a)Paduraru, P. M.; Popoff, R. T. W.; Nair, R.; Gries, R.; Gries, G.; Plettner, E. Jounal of Combinatiorial Chemistry 2008, 10 (1), 123-134。
【0059】
(b)1,2-ヨード-4,5-ジメトキシベンゼン
丸底フラスコの中で、1,2-ジメトキシベンゼン(実施例6(a)、2.1g、15.2mmol)、I2(10.42g、33.44mmol)、およびHg(OAc)2(10.65g、33.44mmol)をCH2Cl2(40.0ml)に溶解した。その反応混合物を室温で攪拌し、TLCによってモニターした。完了したら、その反応混合物を濾過し、チオ硫酸ナトリウムの水溶液で洗浄し、CH2Cl2で抽出し、ブラインで洗浄した。そのCH2Cl2溶液をNa2SO4で乾燥させ、濃縮し、EtOAc/ヘキサン(10:90)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフに付した。薄オレンジ色の固体を67%で単離した(4.0g)。この化合物の特性は、以前の報告と一致した:(a)Pak, J. J.; Mayo, J. L.; Shurdha, E. Tetrahedron Letters 2006, 47, 233-237。
【0060】
(c)2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸:I(v)
THFおよびEt2Oの混合物(1:1)120mL中の1,2-ジヨード-4,5-ジメトキシベンゼン(実施例6(b)、2.0g、5.13mmol)の溶液に、-78℃で、塩化イソプロピルマグネシウム(THF中の2M、2.67mL、5.39mmol)を滴加した。その混合物を2時間、その温度で攪拌した後、B(OiPr)3(10.89mL、15.39mmol)を添加した。その溶液を一晩、室温に温め;その後、NH4Clの飽和溶液を添加し、得られた混合物を30分間、室温で攪拌した。水性層をEt2O(50mL、3回)で抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。その濃縮した試料に、ヘキサンを添加し、結果として生じた沈殿を単離して、1.05gの純粋な生成物(67%)を得た。
分光データ

(27℃でのNMRで、Bに付着しているCは見られなかった)。
IR(顕微鏡、cm-1)2959、1585、1506、1373、1310、1263、1199。
【0061】
実施例7:さらなるアミド化反応:
(a)実施例1において説明した一般的なアミド化手順ならびに対応するカルボン酸およびアミンと触媒I(l)またはI(m)のいずれかを使用して、以下の追加の化合物を調製した:

【0062】
(b)実施例1において説明した一般的なアミド化手順および下に示す触媒を使用して、以下の追加の反応を行った。この結果は、触媒I(l)および触媒I(w)の活性を比較するものである。

【0063】
(c)実施例1において説明した一般的なアミド化手順および下に示す触媒を使用して、以下の追加の反応を行った。この結果は、低い反応性を有するアミンを使用して、触媒I(l)、I(v)、I(w)およびI(x)の活性を比較するものである。

【0064】
好ましい実施例であると現在考えられるものに関して本開示を説明したが、本開示が、これらの開示した実施例に限定されないことは理解されるはずである。むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる様々な変形および同等のアレンジを包含すると解釈される。
【0065】
すべての出版物、特許および特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許または特許出願が、参照によりその全体が組み入れられていると具体的におよび個々に示されているのと同程度に、それら全体が参照により本明細書に組み入れられている。本出願における用語が、参照により本明細書に組み入れられている文献において異なって定義されていることが見出された場合、本明細書において提供する定義が、その用語についての定義としての役割を果たすものとする。
【0066】
【表1】

1 比較例。
2 反応温度=35〜40℃。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】


【0070】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸の求電子的活性化のための条件下で、該カルボン酸と式Iのアリールボロン酸とを組み合わせることを含む、カルボン酸の触媒求電子的活性化方法:

式中、
R1は、ハロ、C1-4アルキル、C6-10アリール、NO2、CN、CO2H、C(O)C1-4アルキル、CO2C1-4アルキル、OC1-4アルキル、SC1-4アルキル、OC6-10アリール、S(O)C1-4アルキル、SO2C1-4アルキル、OCF3、CR6R7OR8、CR6R7SR8、OH、SHおよびSi(R8)3から選択され;
R2からR5は、H、ハロ、C1-4アルキル、C6-10アリール、CO2H、C(O)C1-4アルキル、CO2C1-4アルキル、OC1-4アルキル、SC1-4アルキル、OC6-10アリール、S(O)C1-4アルキル、SO2C1-4アルキル、フルオロ置換C1-4アルキル、フルオロ置換C1-4アルコキシ、OH、SH、SR8およびSi(R8)3から独立して選択され;ならびに
R6、R7およびR8は、H、C1-4アルキルおよびC6-10アリールから独立して選択され、
但し、式Iの前記化合物は、2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボロン酸でない。
【請求項2】
式Iのアリールボロン酸において、R1が、ハロ、CH3、NO2およびCH2OCH3から選択され、その上、R2からR5がすべてHである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式Iのアリールボロン酸において、R1が、IおよびBrから選択され、その上、R2からR5がすべてHである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
式Iのアリールボロン酸において、R2からR5が、H、ハロ、CO2CH3、CO2CH2CH3、OCH3、CH3、CO2H、C(O)CH3、S(O)CH3、CF3およびCF3Oから独立して選択され、かつR2からR5のうちの少なくとも一つがHである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
式Iのアリールボロン酸において、R1が、ハロ、CH3、NO2およびCH2OCH3から選択され、ならびにR2からR5が、H、ハロ、CO2CH3、CO2CH2CH3、OCH3、CH3、CO2H、C(O)CH3、S(O)CH3、CF3およびCF3Oから独立して選択され、かつR2からR5のうちの少なくとも一つがHである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
式Iのアリールボロン酸が、式I(a)からI(x)の化合物から選択され、式中のR1からR5が、以下で定義するとおりである、請求項1記載の方法:


【請求項7】
式Iのアリールボロン酸が、2-ブロモフェニルボロン酸、2-ヨードフェニルボロン酸、2-クロロフェニルボロン酸、2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸、2-ヨード-3-メチル-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸および2-ヨード-3,5-ジメチルフェニルボロン酸から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
式Iのアリールボロン酸が、2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸、2-ヨード-3-メチル-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸および2-ヨード-3,5-ジメチルフェニルボロン酸から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
カルボン酸の求電子的活性化のための条件が、該カルボン酸の活性化のために適切な溶媒および反応温度、時間ならびに試薬比および濃度を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
溶媒が、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)およびトルエンから選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
溶媒がDCMである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
反応温度が約20℃から約27℃である、請求項9〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
反応温度が約20℃から約45℃である、請求項9〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
反応時間が、約2時間から約50時間である、請求項9〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
式Iのアリールボロン酸触媒の量が、約1mol%から約25mol%である、請求項9〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
カルボン酸が、CO2H基の炭素原子との求核性1,2-付加反応、もしくはα,β-不飽和カルボン酸のβ-炭素原子との共役1,4-付加反応における求核剤との反応のために、または付加環化反応のために求電子的活性化される、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
カルボン酸が、CO2H基の炭素原子との求核性1,2-付加反応における求核剤との反応のために求電子的活性化され、該反応が、水の除去のための手段の存在下で行われる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
無水および不活性雰囲気条件下で行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
カルボン酸の求核剤に対する比率が、1:1である、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
求核剤が、アミン、アルコールまたはチオールを含む化合物である、請求項16〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
付加環化反応が、ジエンとのディールス・アルダー反応である、請求項16記載の方法。
【請求項22】
カルボン酸のジエンに対する比率が、1:2である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
式IIの化合物またはその塩:

式中、
R6は、HおよびC1-4アルキルから選択され;ならびに
R7、R8およびR9は、H、C1-4アルキルおよびOC1-4アルキルから独立して選択され、かつR7、R8およびR9のうちの一つまたは二つは、Hである。
【請求項24】
R6が、H、メチルおよびエチルから選択され、R7、R8およびR9が、H、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから独立して選択され、かつR7、R8およびR9のうちの一つまたは二つがHである、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
2-ヨード-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸、2-ヨード-3-メチル-4,5-ジメトキシフェニルボロン酸および2-ヨード-3,5-ジメチルフェニルボロン酸から選択される、請求項23記載の化合物。

【公表番号】特表2010−538021(P2010−538021A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523243(P2010−523243)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001554
【国際公開番号】WO2009/030022
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510061553)ザ ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アルバータ (1)
【Fターム(参考)】