オレアノイルペプチド組成物および皮膚の加齢を治療する方法
【課題】オレアノール酸と結合したペプチドを含む組成物および皮膚の加齢を治療する方法の提供。
【解決手段】下記構造で示される、オレアノール酸と結合したペプチドを含む組成物。

該組成物は、オレアノール酸と結合したペプチドおよび成分または植物抽出物を含む。前記成分または植物抽出物は、ココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される。
【解決手段】下記構造で示される、オレアノール酸と結合したペプチドを含む組成物。

該組成物は、オレアノール酸と結合したペプチドおよび成分または植物抽出物を含む。前記成分または植物抽出物は、ココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願番号11/835165(2007年8月7日出願)(発明の名称:トリテルペノイドおよび小有機分子により改変されたペプチド:合成および化粧薬剤における使用(“Peptides modified with triterpenoids and small organic molecules: synthesis and use in cosmeceuticals”)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)の部分継続出願である。
【0002】
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢の治療におけるその使用に関する。オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドは、それぞれ別個に、またはココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体およびカンゾウ抽出物を含む群から選択される成分または植物抽出物と一緒に前記組成物中に存在する。本組成物は、酸化、コラーゲン欠乏、並びにエラスターゼおよびコラゲナーゼのようなセリンプロテアーゼの過剰活性(前記は、皮膚のしわ、微細な表情しわ、皮膚厚の低下、過剰色素沈着、眼の下のくま、および未熟な加齢をもたらす)による加齢を効果的に緩和する。
【背景技術】
【0003】
皮膚の外観およびコンディションは、環境因子(自然発生的(日光、風による刺激、湿気など)もしくは人工的(熱、空気の状態、汚染物質など)プロセス、病理学的プロセス(例えば皮膚科学的疾患)または通常の加齢プロセス)の影響により持続的に退行し得る。皮膚が受ける多様な損傷はそれぞれ別個にまたは相乗的に作用する。時間の経過にしたがって発生し得る皮膚の質低下を緩和または予防するために、消費者は新規なまたは改良された化粧組成物および肌の手入れのための化粧方法をますます熱心に求めている。そのような製品または方法は、加齢プロセスの目に見える徴候、例えばしわ、筋の出現、皮膚の張りの低下、皮膚厚の低下、過剰な色素沈着またはシミの形成および加齢斑を予防し、遅らせまたは後戻りさせる。そのような製品または方法は、過敏肌、乾燥肌または落屑肌の外観およびコンディションを改善し、および/または潜在的刺激物質の中でとりわけ化学物質、風または日光の曝露により刺激を受けた肌を落ち着かせる。
加齢は人間の身体、より具体的には人間の皮膚に関係するので、加齢集団とともに、加齢に関する研究が増加している。例えば、小じわ、しわなどの存在によって明らかになる加齢肌の治療には大きな関心が寄せられている。加齢の皮膚徴候(例えば小じわ、しわ、たるみ、および過剰な色素沈着)に対しては多くの方策(外科手術、レーザー治療および化粧品を含む)が用いられてきた。化粧品による治療には、皮膚の加齢の影響を変化させる多様なクリームおよびローションの使用が含まれる。従来技術では文献の多くは、加齢におけるいくつかの有害な影響の1つを予防するためにただ1つの基礎的成分の使用に焦点を当てている。例えば、ある方策は、皮膚細胞の再増殖を刺激するために、他の成分を使用することなく1つまたは2つ以上のオキシカルボン酸またはレチン酸を使用することであった。このアプローチは、加齢が、同時に発生する多数の損傷経路を介して皮膚に損傷を引き起こす、多数の供給源に由来する多数の因子の皮膚における有害な相互作用によって引き起こされることを認識していないので無駄になった。
【0004】
消費者は、皮膚のしわ、筋およびみぞを治療する“アンチエージング”製品をますます熱心に求めている。顔面の表情しわを治療する高価で痛みを伴う化粧品注入の出現は、有効で非侵襲的な局所用代替物の発見における関心を増大させた。
表情しわは、成人年齢の早期に顔面の皮膚に出現する別のタイプのしわである。表情しわは、眼窩周囲、眉間、前額部および口周囲領域の顔面表情筋と解剖学的に関連する。ほほ笑んだり、一瞥したり、唇をすぼめたり、眉をひそめたりする動作時のこれらの筋肉の活動は、顔面の他の領域より大きな物理的張力を上層の皮膚に加える。前記の理由により、表情しわは、皮膚解剖学における非収縮性成分(例えば表皮)に焦点を当てた局所性治療に対しては応答性が低い。大いに効果的であるためには、表情しわの治療はまた顔面表情筋および真皮と結合した筋線維成分の抑制を伴うべきである。横紋筋線維を弛緩させる多数の物質が化粧品の従来技術において記載されている。問題は、従来技術の筋弛緩物質は作用が遅く十分に強力でないか、または抑制作用が累積的でないということである。さらにまた、これらの筋弛緩物質のいずれも顔面筋活動を低下させない。真皮の変形を迅速に抑制する新規に発見された植物抽出物は、真皮を修復および若返らせる物質がより効果を発揮するのを可能にする。
表情しわは、顔面の表情筋が収縮するかまたはそれ自体を皮膚の真下で縮め、続いて弛緩させてその休止時の長さに戻るときに形成される。皮膚もまた縮まりさらに元に戻ることができるが、筋肉とは同様ではない。したがって、筋肉が収縮するとき、皮膚はたわみさらに内側に折り畳まれる傾向がある。皮膚がその下の筋肉の短縮及び復元に耐える能力は上部真皮の質および健康状態と関係がある。年齢が進むにつれて、真皮の厚さ、弾性、コラーゲン含有量および修復能力は低下する。このような皮膚はもはや前記の動作から復元できず、真皮の線維性細胞間マトリックスは弱体化し断裂する。この時点で、皮膚は永続的なしわを発生させる。皮膚のこの領域が顔面表情の絶え間ない張力に曝されるとき、しわは深さを増し続ける。
【0005】
表情しわの解剖学
表情しわと密接に関係する皮膚は顔面の他の部分で見出されるものとは組織学的に異なっている。真皮下結合組織の小葉間中隔は横紋筋組織線維(皮筋層)を含む。これらの線維は下層の顔面筋群から発する。それらは、下部(網様)真皮のコラーゲン性ネットワーク内で統合される。上部(乳頭)真皮の真皮線維芽細胞の亜集団(“筋線維芽細胞”として知られている)は、横紋筋組織と類似する固有の収縮特徴を有する。これらの真皮線維芽細胞内の収縮は、横紋筋の線維成分と同じ神経伝達物質(すなわちアセチルコリン)によって仲介される。
顔面皮膚内の筋肉線維は皮膚表面の滑らかさに対して直接の影響を有し、これら筋線維への神経による運動流入の調節はしわの減少をもたらす。例えば、顔面神経のベル麻痺がる患者では、顔面の麻痺側の皮膚が麻痺のない側の皮膚よりも滑らかである。さらにまた、Botox.TMコスメティックの注入は前額および上部眉筋肉を固定するだけでなく、これらの筋肉に対して外側の皮膚を滑らかにする。Botox.TMは、筋線維の輸入運動ニューロンのシナプス結合部内のアセチルコリンの取り込みに干渉し、それによってしわおよびみぞと密接な関係を有する筋組織の収縮を妨げる。Botox.TM治療には強い要請があり、したがって、局所性の等価物を開発することは化粧品研究者の最終目標である(以下を参照されたい:A. Blitzer et al., Arch. Otolaryngol. Head Neck Surg., 119:1018-1022, 1993;J. D. Carruthers et al., J. Dermatol. Surg. Oncol., 18:17-21, 1992)。
【0006】
消費者の要請に応えるために、多くの化粧組成物および化粧方法が肌の手入れおよび治療のために開発されてきた。しかしながら、今日まで報告されている製品または治療方法の多くは(大半とまではいかずとも)不適切な結果をもたらすか、あるいは望ましくない副作用によって効用が損なわれる。これら副作用には、皮膚または近隣の粘膜の炎症、皮膚の過剰な油分または脂肪分の生成または皮膚の変色が含まれる。
真皮の修復:真皮の再生能力は、表情筋の慢性的な筋収縮および弛緩に耐えるその能力に対して重大な影響を有する。加齢または日光による皮膚の損傷の結果として、下部真皮の若返りに必要な線維芽細胞および血管は減少する。上部真皮の“基底層”の線維芽細胞の新細胞への複製は遅くなり、コラーゲン生成能力は低下し、コラーゲン線維ネットワークの組織化および温存能力は低下する。真皮マトリックスはコラーゲンおよび主要な水分保持分子(すなわちグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸)の供給源であるので、前記の保護は表皮の健康に必須である。前駆タンパク質の継続的な補充がなければ、コラーゲン線維ネットワークおよび細胞外マトリックスの組織崩壊および分解が生じる。前記プロセスの結果は、真皮-表皮接合物の扁平化および上部真皮の機械的耐性の脆弱化である。したがって、加齢皮膚は、一時的な変形(前記は顔面の表情発現時に発生する)に対してはるかに強い感受性を示し、一時的変形は永続的になる(以下を参照されたい:Oikarinen, "The Aging of Skin: Chronoaging Versus Photoaging," Photodermatol. Photoimmunol. Formation, Photomed., vol. 7, pp. 3-4, 1990;Thalmann et al. "A Computational Skin Model: Fold and Wrinkle Formation"pp.1-5)。
【0007】
皮膚の弾性を高めるかまたは真皮を強化するための単一分子またはその組成物について考察しているいくつかの教示が当分野に存在する(U.S. Pat. No. 6,794,362;U.S. Pat. No. 6,777,389)。前記は、エラスチンの分子組成を模倣するかまたは前記に添加されるペプチドまたはペプチド様化合物から処方される。Mittsら(U.S. Pat. No. 6,809,075)は、ペプチド/レチノイド組成物を真皮のエラスチン成分内に組み入れ、それによって皮膚が変形から元に戻る能力を高めることができることを記載した。従来技術は、天然または合成ペプチド処方物がコラーゲン線維ネットワークまたは真皮マトリックスの細胞外基質を強化できることをしばしば教示している。したがって、新規な完全性(Lowe, N. et al., *Pharmacology of Retinols In Skin", Vol. 3 (1989), pp. 240-248)。しかしながら、レチノイドにより引き起こされる不安定性および刺激性が問題である。Dioguardi(U.S. Pat. No. 5,198,465)が主張したアプローチは皮膚のコラーゲン含有量の増加であり、前記は、一般的には合成コラーゲン前駆体およびコラーゲン代謝経路の補助酵素を局所的に適用することによる。根拠は、前駆体分子の拡散および吸収による直接的置換が不完全な皮膚を補強するということである。Kludas(U.S. Pat. No. 5,055,298)が教示する同様な見解は、実質的に天然の組成物は真皮-表皮接合部で修復性および再形成性作用を有し得るということである。さらにまた、最近の技術(U.S. Pat. No. 6,906,036;U.S. Pat. No. 6,884,425)は、マトリックスのメタロプロテイナーゼの阻害物質は真皮の破壊を予防し、治癒し、正常で健康な皮膚への回復を促進することができることを教示している。前述の特許のいずれも線維芽細胞の活性およびコラーゲン前駆体の合成を刺激する能力を教示していないし、真皮の厚さおよびコラーゲン線維ネットワークを回復するとも教示していない。
最近の特許では、Varaniら(U.S. Pat. No. 6,919,072)は、コラーゲンの分解を阻害し、プロコラーゲンの合成を高めることによってコラーゲン含有量を増進させ、ケラチノサイトおよび線維芽細胞の増殖を高めるレチノイドおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害物質の組成を同定した。前記発明は、年代的に加齢を示す皮膚で表皮-真皮接触面の厚さを回復させ、さらに上部真皮内のコラーゲン含有量を通常のレベルに回復させる。当該発明の特性は、環境的および物理的張力に耐える皮膚強度を提供することである。他のレチノイドに関しては、Loweのレチノイドは長期の適用を必要とし、真皮の修復は本出願の好ましい実施態様の場合よりもはるかに遅い。
【0008】
ペプチドの重要性
初期の技術の狙いは、新規なコラーゲンを構築するか、または基底層を刺激もしくは破壊してその再生および健康的な再構成を達成する物質を追加する分子を物理的に補充すると考えられる物質を明らかにすることにあった。より最近の技術は、上部真皮を刺激してそれ自体を細胞の再増殖により再生させる際の局所ペプチド治療の利点を教示する。このことは、皮膚の損傷後の治癒プロセスを刺激する際に有用な天然に存在するペプチドを身体が所有するという知識によって支持される。Robinson(U.S. Pat. No. 6,492,326)は、パルミトイルペンタペプチド-3、ペンタペプチドの誘導体およびその混合物の組合せを含む多様な処方物を教示する。Lintner(U.S. Pat. No. 6,620,419)は、ペプチド一般配列式がパルミトイル-リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリン(パルミトイル基が配列番号1に結合)である、コラーゲン合成およびグリルコスアミノグリカンの合成を高めるペプチドを開示する。それらは相乗的に作用して、より初期の処方物よりもはるかに効率的にしわおよび皮膚の加齢の他の形態を治癒させる。Lintnerの教示とRobinsonの教示との重要な相違はペンタペプチドの末端への脂肪酸鎖の付加であり、前記付加は、この親油性改変ペプチドの表皮への浸透を非常に効率的にし、したがって真皮形成層への到達をより効率的にする。正味の結果は、上部真皮の修復能力の回復による皮膚の厚さの増加である。結果として、皮膚は、表情筋の活発な収縮および弛緩並びに皮膚自体の内部の微小な収縮によって当該皮膚に課せられる変形に耐える能力を向上させる。
【0009】
より包括的な研究は、環境因子(例えばストレス、日光への曝露、並びに食物、水および大気中の不純物)もまた皮膚の表皮および真皮層の成分に悪影響を与えることを見出した(前記は、順次皮膚の外観に影響を与え、これを変化させ、未熟な加齢の出現をもたらす)。例えば、遊離ラジカル、反応性窒素種(“RNS”)、反応性酸素種(“ROS”)および他の酸化性の種(“OOS”)のような因子は、皮膚を含むヒトの身体に悪影響を与え得る。皮膚の外観に衝撃を加えさらに悪影響与える上記に特筆したグループ内の具体的な因子には、無水硝酸、超酸化ラジカル、過酸化水素および水酸化物遊離ラジカルが含まれる。これらの因子は、多数の皮膚症状(光による損傷、皮膚の一般的加齢、接触皮膚炎、しわ、脂質の過剰酸化、酵素分解、コラーゲンおよび/またはエラスチンの減少および分解、DNAの分解および再生阻害、皮膚組織の炎症および一般的損傷を含む)において様々に関係している。
抗酸化活性は、身体での反応性酸素種の生成を低下させ、同時に細胞に回復不能な損傷を引き起こす酸化を妨げる活性である。基底状態または三重項酸素は、環境因子または生化学的因子への暴露の結果として(例えば酵素、還元代謝、化学物質、汚染物質、光化学反応の結果として)活性化され、高い反応性を有する反応性酸素種(ROS)(例えば超酸化ラジカル、ヒドロキシラジカルおよび過酸化水素)に変換され得る。したがって、前記は不可逆的な細胞構成成分の破壊をもたらす。そのような反応性酸素種の作用は、抗酸化酵素(例えばスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ)および抗酸化物質(例えばビタミンC、ビタミンEおよびグルタチオン)(前記はいずれも身体の防御系を形成する)によって低下させることができる。しかしながら、そのような身体の防御メカニズムの異常または過剰な反応性酸素種への暴露が生じる場合は、反応性酸素種は不可逆的に脂質、タンパク質およびDNAを破壊し得る。加齢、癌、多発性動脈硬化症、関節炎、およびパーキンソン病を含む多様な疾患は前記の帰結である。
【0010】
合成抗酸化物質、例えばBHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)およびNDGA(ノルジヒドロ-グアイアレチン酸)が今日までに開発されている。天然の抗酸化剤を例示すれば、抗酸化酵素(例えばスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ)および非酵素性抗酸化物質、例えばトコフェノール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、カロテノイドおよびグルタチオンが存在する。
しかしながら、合成抗酸化剤は、身体におけるそれらの強力な毒性のためにアレルギー反応および腫瘍形成を引き起こし、さらに温度感受性のために容易に破壊される。他方、天然の抗酸化剤は合成抗酸化剤よりも身体において安全であるが、作用が弱いという問題を有する。したがって、使用で安全性に関する問題を示さず優れた抗酸化活性もまた有するという新規な天然の抗酸化剤の開発が必要とされる。局所適用抗酸化剤は、全ての皮膚タイプにとって皮膚を健康に保ち、日光による損傷を予防し、細胞機能を改善するというメリットを有する。
結論として抗酸化剤は、皮膚の刺激および炎症の軽減に対してプラスの作用をもたらし、健康で生き生きした皮膚の生成および維持に必須であり、したがってしわを潜在的に減少させるステップであることが示された(International Journal of Experimental Pathology, 2000:257-263; Skin Pharmacology and Applied Skin Physiology, 2000: 143-149)。
【0011】
ポリフェノール(ポリヒドロキシフェノール)構造(すなわち芳香環にいくつかのヒドロキシル基を有する)を有する数百の分子が食用植物で同定された。これらの分子は植物の二次代謝物で、一般的には紫外線照射または病原体の攻撃に対する防御に必要とされる。ポリフェノールは、果実、野菜、穀類、乾燥豆類、チョコレートおよび飲料(例えば紅茶、コーヒーまたはワイン)の広範囲に及ぶ成分である。
これらの化合物は、それらが含むフェノール環の数およびこれらの環と互いに結合する構造成分の数の関数として種々のグループに分類できる。フェノール類はフェノール酸、フラボノイド、スチルベンおよびリガンドを含む。以下の2つのクラスのフェノール酸が存在する:安息香酸の誘導体およびケイ皮酸の誘導体。
実際のところ、in vivoで抗酸化剤の各々を全て測定するのは現実的ではない。さらにまた、現在、酸化ストレスに影響を及ぼす主要因子は当該系の抗酸化物質の全体的状況であるという仮説が今では広く行きわたっている(抗酸化物質が遊離ラジカルおよびROSを除去することによって疾患を予防する)。したがって、細胞外抗酸化物質の状況を包括的に測定できる方法を入手することが肝要である。抗酸化物質の状況を測定する方法が存在し、前記方法は、発生した遊離ラジカルの標的インジケーター分子への到達の抗酸化物質による阻害を基準にする。阻害アッセイの一般的特徴は、標的分子と反応する遊離ラジカルを発生させ、それによって観察および定量することが可能な終末点を作成することである。抗酸化物質の添加はこの終末点の発生を阻害する。前記の好例はDPPH(1,1-ジフェニル-2-ヒドラジル)の遊離ラジカル除去活性である。
エラスチン(結合組織の弾性線維中に極めて高濃度で見出される)は、皮膚のきめおよび張りに大きな影響を与える。エラスターゼ(セリンプロテアーゼ酵素)は、甚だしい細胞間線維ネットワークを含む組織の分離に役割を果たす。過剰なエラスターゼ生成は皮膚のしわ/未熟な加齢をもたらすであろう。
【0012】
生命活力を有するタンパク質、コラーゲンは皮膚の張りおよび構造を維持する。コラゲナーゼはセリンプロテアーゼ酵素であり、前記は治癒に向かう創傷部が残る任意の死組織を有する創傷を清浄にする。コラゲナーゼ(炎症時に集中的に生成される)は、皮膚の張りおよび構造を維持する生命活力タンパク質コラーゲンを消化することにより皮膚のしわ形成に役割を果たす。
アンチエージングのまた別のメカニズムは皮膚のコラーゲン強化である。新規コラーゲンを構築する分子を物理的に補充するか、または基底層を刺激もしくは破壊してその再生および健康的な再構成を達成する物質を付加する作用物質はアンチエージング組成物のために優れている。より最近の技術は、上部真皮を刺激して細胞の再増殖によりそれ自体を再生させる局所ペプチドの利点を教示する。前記は、皮膚の創傷後の治癒プロセスの刺激に有用な天然に存在するペプチドが身体に存在するという知見によって支持される。Robinson(U.S. Pat. No. 6,492,326)は、パルミトイルペンタペプチド-3、ペンタペプチドの誘導体およびその混合物を含む多様な処方物を教示する。Lintner(U.S. Pat. No. 6,620,419)は、ペプチド一般配列式がパルミトイル-リシル-スレオニル-リシル-セリン(パルミトイル基が配列番号1に結合)である、コラーゲン合成およびグリルコスアミノグリカンの合成を増進させるペプチドを開示する。それらは相乗的に作用して、しわおよび皮膚の加齢の他の形態を初期の処方物よりもはるかに効率的に治癒する。
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢の治療におけるその効果的使用を開示する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢を治療する方法を提供する。本組成物は、皮膚の弾性低下、コラーゲン変形、炎症、遊離ラジカル誘発皮膚損傷などによって引き起こされる皮膚の加齢を予防し、遅らせおよび/または逆戻りさせる際に多数のメカニズムにより効果的に働く。
オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドは、本組成物中にそれぞれ別個に、または成分または植物抽出物と一緒に存在する。オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドおよび成分または植物抽出物を含む本組成物は、皮膚の加齢の具体的徴候の治療に相乗的効果を示す。前記成分または植物抽出物は、ココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される。スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される。
本発明で用いられるオレアノイルペプチドの濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
本組成物で用いられる成分または植物抽出物の濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドの構造を示す。
【図2】種々の濃度のオレアノイルペプチドにおけるコラゲナーゼの%阻害を提供する。
【図3】種々の濃度のオレアノイルペプチドにおけるエラスターゼの%阻害を提供する。
【図4】種々の濃度のオレアノイルペプチドにおけるTNFα阻害を示す。
【図5】ヒト好中球の細胞外インターロイキン-1ベータ(IL-1β)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図6】ヒト好中球の細胞外インターロイキン-6(IL-6)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図7】ヒト好中球の細胞外プロスタグランジンE2(PGE2)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図8】ヒト好中球の細胞外酸化窒素(NO)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図9】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図9(b)は、しわの柔弱化におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図10】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図10(b)は、しわの厚さの改善におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図11】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図11(b)は、過剰な色素沈着の緩和におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図12】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図12(b)は、眼の下のくまの減少におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図13】オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物の皮膚のコンディショニングおよび若返りにおける影響;(a)サンプル無しのコントロール細胞、(b)非処理細胞と比較して、5μg/mLのココナッツ液状内乳による35%強化、(c)非処理細胞と比較して、5μg/mLのオレアノイルペプチドによる15%強化、(d)非処理細胞と比較して、オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む5μg/mLの組成物による85%強化。
【図14】オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物のUVに対する皮膚防御における影響;(a)サンプル無しにUVに曝露したコントロール細胞、(b)非処理細胞と比較して、40μg/mLのアムラ抽出物による53%UV防御、(c)非処理細胞と比較して、40μg/mLのオレアノイルペプチドによる13%UV防御、(d)非処理細胞と比較して、オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む40μg/mLの組成物による80%UV防御。
【図15】オレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/THCを含む組成物のメラニン抑制における影響;(a)サンプル無しのコントロール細胞、(b)メラニンの顕著な減少を示さないオレアノイルペプチド処理、(c)オレアノイルペプチドおよびプテロスチルベンを含む組成物:IC50は0.42μg/mL、(e)オレアノイルペプチドおよびカンゾウ抽出物を含む組成物:IC50は1.3μg/mL、(f)オレアノイルペプチドおよびオキシレスベラトロールを含む組成物:IC50は4.3μg/mL、(g)オレアノイルペプチドおよびTHCを含む組成物:IC50は1.2μg/mL、(h)オレアノイルペプチドおよびレスベラトロールを含む組成物:IC50は1.6μg/mL。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、皮膚の加齢を治療する方法に関し、前記方法は、以下の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物で皮膚を治療する工程を含む:
【化1】

構造I
【0016】
本発明の別の実施態様では、前記組成物は、場合によってコナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む。
本発明のさらに別の実施態様では、スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せを含む群から選択される。
本発明のさらに別の実施態様では、前記組成物は局所的に適用され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群から選択される形態で存在する。
本発明は、下記の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド並びに皮膚科学的に許容できる賦形剤中で処方される、日光遮蔽物、スキンライトニング剤、スキンタンニング剤、抗酸化剤、香料、乳濁化剤、保存料、着色剤、乳化剤、膨張剤および緩衝剤を含む群から選択されるさらに別の1つまたは2つ以上の付加物を含む組成物に関する:
【0017】
【化2】

構造I
【0018】
本発明の別の実施態様では、前記組成物は、場合によってコナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む。
本発明の別の実施態様では、前記スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せを含む群から選択される。
本発明の別の実施態様では、前記組成物は局所的に適用され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群から選択される形態で存在する。
本発明は、下記の構造Iで表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドに関する。オレアノール酸は配列番号1のペプチドの末端のリジンと結合する。
【0019】
【化3】

構造I
【0020】
本発明の別の実施態様では、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドは、脱水反応による配列番号1のペプチドとオレアノール酸とのカップリングによって合成される。
【0021】
定義
本明細書で用いられる“局所適用”という用語は、本発明の組成物を皮膚の表面に塗布または広げることを意味する。
本明細書で用いられる“皮膚科学的に許容できる”という用語は、そのように記述された組成物またはその成分が、甚だしい毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを生じることなく人間の皮膚に接触させて用いるために適切であることを意味する。
本明細書で用いられる“安全で有効な量”という用語は、プラスの効果、好ましくはプラスの皮膚の外観または感覚的利点(本明細書に開示した利点をそれぞれ別個に含む)の顕著な誘発に十分であるが、ただし重大な副作用を回避するためには十分に低い、すなわち当業者の慎重な判断の範囲内のリスク比で合理的な利点を提供する、化合物または組成物の量を意味する。
本明細書で用いられる“皮膚の適合性”という用語は、局所用組成物の長期の適用に対し皮膚への最小限の害反応(例えばチクチクする感じ、ひりひりする感じ、皮膚の赤み、かゆみおよび毛包炎)で耐え得る皮膚の能力を意味する。
“同時投与”という用語は、前記組成物を第二の医薬(典型的には異なる作用メカニズムを有する)を、所望の結果を促進する投与スケジュールで投与することを指す。この用語は、同時投与、同じ日のそれぞれ別個の時間における投与、または別の日における投与をも指すことができる。組成物は別々に投与するか、またはただ1つの処方物にまとめてもよい。
【0022】
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢を治療する方法を提供する。オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド(化合物)は、本明細書を通して以後“オレアノイルペプチド”と称する。
前記化合物中のオレアノール酸をその誘導体と置き換え、本発明で用いることができる。前記化合物のオレアノール酸部分をさらに改変し、3-アシルオキシ基にアルカノイルオキシ、アルケノイルオキシ、アリールカルボキシロイルオキシ、ヘテロアリールカルボキシロイルオキシ基などから選択される置換基を含むことができる。
本発明で用いられるオレアノイルペプチドは、皮膚の弾性、コラーゲンの変形、炎症、遊離ラジカル誘発皮膚損傷などによって引き起こされる皮膚の加齢を予防し、遅らせおよび/または逆戻りさせる際に多数のメカニズムによって機能する。
前記組成物は、オレアノールペプチドをそれぞれ別個にまたは成分もしくは植物抽出物と一緒に含む。本発明で開示したオレアノイルペプチドおよび成分または植物抽出物を含む組成物は、皮膚加齢の個々の特徴の治療で相乗効果を示す。前記成分または植物抽出物は、ココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される。前記スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される。
【0023】
本発明で用いられるオレアノイルペプチドの濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
組成物で用いられる成分または植物抽出物の濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
ある実施態様では、オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物は、細胞若返りの強化を提供する。
別の実施態様では、オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物は、UV誘発損傷に対し防御強化を提供する。
さらに別の実施態様では、オレアノイルペプチドおよびスチルベンまたはその誘導体/カンゾウ抽出物/テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体を含む組成物は、皮膚の明るさの向上の強化を提供する。
以下の記載では前記天然の成分は“活性成分”と称される。本発明のアンチエージングスキンケア組成物はまた、皮膚科学的に許容できる賦形剤を含む。前記物質は、前記活性成分の希釈剤、分散剤または担体として機能し得る。前記賦形剤は、スキンケア製品で通常的に用いられる物質を含むことができ、前記には水、緩衝性水溶液、液体もしくは固体の皮膚軟化剤、シリコーンオイル、乳化剤、溶媒、湿潤剤、膨張剤、散剤、発射薬などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
アンチエージングスキンケア組成物の粉末成分は適切な賦形剤に溶解させ、強度したがって製品の効能を増減させることができる。強度および効能におけるそのような多様性は、皮膚のタイプおよび条件が大きく変動する個体で構成される大いに不均質な集団を治療する場合、アンチエージングスキンケア組成物の有効性の維持に強く所望され得る。
【0024】
前記活性成分の他に、本発明の組成物は場合によって多様な化粧品付加物または製造付加物を含むことができる。例えば、日光遮蔽物、スキンライトニング剤もまた含むことができる。賦形剤はまた、抗酸化剤、香料、乳濁化剤、保存料、着色剤、乳化剤および緩衝剤のような付加物を、当該アンチエージングスキンケア組成物の有効性、保存、有用性または市場性の強化のために要望または所望に応じて含むことができる。好ましい実施態様では、スキンケア組成物への香料または他の隠蔽剤の添加は、活性成分の存在に付随する臭いの緩和または遮断のために所望されまたは必要である。
本発明のアンチエージングスキンケア組成物の調製のために、多様な技術を利用することができる。例えば、活性成分は、一般的にはスキンケア製品の製造に通常的な態様で皮膚科学的に許容できる賦形剤に取り込むことができる。したがって、活性成分は、第一に、皮膚科学的許容できる賦形剤に取り込まれるべき水または別の溶媒もしくは液体の一部分に溶解または分散することができる。この製造アプローチで使用される好ましい組成物は、水中油、油中水、または水中油中水エマルジョンである。
しかしながら、好ましい実施態様では、活性成分は(上記の付加物を含むかまたは含まない)、皮膚科学的に許容される担体とは分離させた状態で、例えば乾燥粉末として維持される。得られたアンチエージングスキンケア組成物は続いて顔面、手、腕、足、首または他の領域の皮膚に適用され、この場合、治療領域の完全で均一な被覆を担保するために手で塗布することが所望される。
【0025】
本発明のアンチエージングスキンケア組成物は、水溶液、クリーム、ゲル、ローション、スプレー、軟膏、ペースト、ムース、化粧品などを含む(ただし前記に限定されない)、通常的な“放置用”スキンケア製品の形態であり得る。アンチエージングスキンケア組成物はまた“洗い流し用”製品の形態であってもよい。前記製品には浴用またはシャワー用ゲルが含まれ(ただし前記に限定されない)、前記は、洗浄時に皮膚への吸着または付着を促進するために活性成分のためのデリバリー系をおそらく含む。もっとも好ましくは、前記製品は“放置用”製品である(すなわち、その皮膚への適用の後で時間を置かずに意図的に洗浄される工程を与えられることなく皮膚に適用される製品)。
本発明のアンチエージングスキンケア組成物は、任意の適切な態様のパッケージ(通常的な態様にある広口瓶、瓶、チューブ、スティック、ローラーボールアプリケーター、エーロゾルスプレー装置などを含むが、ただしこれらに限定されない)であり得る。
本発明はさらに以下のような肌の手入れによる利点を提供する:しわの形成を遅らせるかまたは予防する;皮膚のたるみを遅らせるかまたは予防する;光による皮膚の損傷を遅らせるかまたは予防する;若々しい外観を皮膚に付与する;皮膚へのコラーゲンの蓄積を強化する;組織の修復および細胞増殖を強化する;および皮膚の手触り、滑らかさまたは堅実性を改善する。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明の方法は、治療を必要とする皮膚に対して1日1回または2回以上実施することができる。この方法では、アンチエージングスキンケア組成物の小体積、例えば0.1から5mLを適切な容器またはアプリケーターから皮膚に適用し、さらに手もしくは指または適切な装置を用いて皮膚上に広げるかおよび/または皮膚に擦り込む。当該組成物が“放置用”または“洗い流し用”製品として処方されたかどうかにしたがい、場合によって洗い流し工程がその後に続き得る。皮膚外観における改善は、皮膚のコンディション並びにアンチエージングスキンケア組成物が用いられた濃度、量および頻度にしたがって1日以内または2日以上の使用で明らかになるであろう。
本明細書に記載した本発明の組成物、方法および使用は、しわの形成の予防、低下または遅延、および皮膚の張りの低下の予防、低下または遅延をもたらす。本明細書に記載した組成物、方法および使用はまた、シミ、肌触り、滑らかさまたは堅実性を改善し、さらに弾力性が改善された滑らかでしなやかな皮膚をもたらす。外観、手触りおよびコンディション(具体的には明るさ、鮮明さに関する)における全般的な改善、および皮膚の全般的な若々しい外観が達成される。本発明はしたがって、オレアノイルペプチドによって提供されるアンチエージング効果と包括的に記載される幅広い結果を提供する。
【0027】
本明細書に記載した本発明の組成物、方法および使用は、局所適用のためにおよび皮膚のコンディションの調整にさらに有用である。前記皮膚のコンディションには目に見えるかおよび/または触知される皮膚(特に皮膚の表面)の不連続性が含まれる(そのような不連続性は一般的には好ましくない)。そのような不連続性は、内部および/または外部要因によって誘発または引き起こされ、本明細書に記載した皮膚の加齢の徴候を含むことができる。
“皮膚の加齢の徴候”には、視覚的および触覚的に認知し得る全ての外面の所見および任意の加齢による他の巨視的または顕微鏡的作用が含まれるが、ただしこれらに限定されない。そのような徴候は、本質的または非本質的要因、例えば年齢による加齢および/または環境的損傷によって誘発または引き起こされ得る。これらの徴候は以下を含むプロセス(ただしこれらに限定されない)から生じ得る:手触りの不連続性(例えばしわ(表面近くの小じわおよび粗く深いしわを含む)、皮膚のすじ、割れ目、へこみ、大きな孔(例えば付属の構造物(例えば汗腺管、皮脂線または毛包)に付随する))の発生;落屑、剥離および/または皮膚の非平坦性および粗雑性の他の形態;皮膚の弾力性の低下(機能的な皮膚エラスチンの低下および/または不活化)、たるみ(眼の一帯および顎のふくらみを含む)、皮膚の堅実性の低下、皮膚のち密性の低下、変形からの皮膚の戻りの低下、赤みまたは変色(眼の下のくまを含む)、シミ形成、土色化、過剰に色素沈着した皮膚領域(例えば加齢斑およびシミ)、角化症、異常分化、過剰角質形成、弾力線維症、コラーゲン減成、並びに以下における他の組織学的変化:角質層、真皮、表皮、皮膚血管系(例えば末梢血管拡張症またはクモの巣状血管)および下部組織、特に皮膚直近組織。
本発明は、上記に記載した皮膚の加齢に関連するメカニズムにより生じる“皮膚の加齢の徴候”の予防、緩和または遅延に限定されず、発生のメカニズムに無関係に前記徴候の予防、緩和または遅延も含もうとすることは理解されるべきである。
【0028】
実施例
本発明の上記の特徴および他の利点は、実施例と併せて下記の詳細な説明からより明瞭に理解されよう。
オレア・エウロパエア(Olea europaea)抽出物:前記は、90%を越える純度で活性成分トリテルペノイドオレアノール酸を含む乳脂色の粉末である。供給源はオレア・エウロパエア(オリーブ)の葉である。
ペンタペプチド、リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリン(配列番号1):前記は、コラーゲン減成産物である、一般式リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリンのペプチドである(K. Katayama, J. A. Borunda, R. Raghow, A. H. Kang, J. M. Sayer, J. Biol. Chem., 268, 9941, 1993)。
実施例1
トリテルペノイドのオレアノール酸と結合した配列番号1のペンタペプチド(オレアノール酸は配列番号1のペプチドの末端のリジンと結合する)は、皮膚の真皮マトリックスにおけるコラーゲン合成とコラーゲン減成との間の健康的なバランスを維持することによって、加齢の症状を相乗的に緩和または遅延させる。
したがって、オレアノイルペプチドは、全てのアンチエージング作用様式(例えばセリンプロテアーゼ阻害活性、抗炎症活性、抗酸化活性、コラーゲン補充活性など)を賦与されている。
オレアノイルペプチドをそれぞれ別個にまたは成分もしくは植物抽出物と一緒に含む本発明の局所用化粧組成物は、基剤成分、アジュバントおよび化粧品分野で通常的に用いられる添加物を混合することによって液体または半固体形で調製される。液体または半固体形の化粧品には皮膚ローション、クリームおよびゲルが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
局所適用用組成物はまた、全身ローション、ピールオフおよびフェースマスク化粧組成物でも用いることができる。
本発明の好ましい実施態様を例示のために開示してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲において開示した本発明の範囲から逸脱することなく多様な改変、付加および置換が可能であることを認識していよう。
【実施例1】
【0029】
オレアノイルペプチドの化学的合成
アセチルオレアノイルLys (Z)-Thr (Bzl)-Thr (Bzl)-Lys (Z)-Ser (Bzl)-OBzl
アセチルオレアノール酸(5gm、10mmole)を50mLのクロロホルムに溶解し0℃に冷却する。前記反応混合物に新しく蒸留した塩化チオニルを一滴ずつ加える。前記混合物を低温で30分、続いて室温で2時間攪拌した。その後溶媒をin vacuoで完全に除去し、残留物を乾燥させる。TFA.Lys (Z)-Thr (Bzl)-Thr (Bzl)-Lys (Z)-Ser (Bzl)-OBzl(9.3GM、7.14mmole)を100mLのクロロホルムと一緒に取り、0℃に冷却する。攪拌しながら、5mLのトリエチルアミンを加え、この溶液のpHを8−9に調整する。前記ペンタペプチド溶液を10℃に冷却し、攪拌しながら、上記で調製したクロロホルム25mL中の塩化アセチルオレアノイル溶液をゆっくりと加える。前記混合物を低温で15分さらに反応の完了まで室温で攪拌する。続いて前記反応混合物を、10%のKHSO4溶液(3回)、水、飽和NaHCO3溶液(3回)、水および飽和NaCl溶液で洗浄する。前記を最後にNa2SO4無水物上で乾燥させ、in vacuoで濃縮する。残留物を酢酸エチル/石油エーテル(7:3)を用いて沈殿させる。続いて沈殿物をろ過し、in vacuoで乾燥させる。収量13.4g(80%)。質量スペクトルは1763で所望のm/eピークを示し、高解析NMRにより所望の構造が確認された。
アセチルオレアノイル-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-OH
アセチルオレアノイル-Lys (Z)-Thr (Bzl)-Thr (Bzl)-Lys (Z)-Ser (Bzl)-OBzl(10GM、6mmole)をメタノール中の5%酢酸100mLと混合し、水素添加装置に移す。2gの10% Pd-Cを前記反応混合物に添加する。水素添加は5kgの水素圧を用い60℃の温度で実施される。反応完了後に、触媒をフィルターで除去し、反応混合物をin vacuoで濃縮した。残留物をアセトニトリルの添加により沈殿させた。固形物をろ過し、乾燥させた。収量5.6g(90%)。質量スペクトルは1045で分子イオンピークを示した。
オレアノイル-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-OH(オレアノイルペプチド)
上記で得たアセチルオレアノイル-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-OH(5gm、4.8mmole)を25mLのメタノールに取り、攪拌した。この混合物に2MのLiOH溶液25mLを加え2時間攪拌した。前記反応混合物からメタノールを除去した。前記水溶液を酢酸エチルで洗浄し、1NのHCl溶液でpH7−8に酸性化させた。続いて前記水溶液を蒸発により乾燥させた。前記残留物にメタノールを添加し、不溶性塩をフィルターで除いた。溶液を濃縮し、乾燥ジエチルエーテルを用いて沈殿させた。続いて固体(オレアノイルペプチド)をろ過し乾燥させた。収量4.1g(85%)。ES-MSスペクトルはm/e1001(M-H)で分子イオンピークを示した。
オレアノール酸と配列番号1(リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリン)のペンタペプチド(図1)との結合は、ペンタペプチドのアンチエージング潜在能力を多数の作用様式で顕著に強化する。したがって、本発明のオレアノイルペプチドは、皮膚のコンディションを治療するためにより良好で新規な分子として機能する。
【実施例2】
【0030】
オレアノイルペプチドのアンチエージング潜在能力
in vitro実験:
コラゲナーゼ阻害の潜在能力:
オレアノイルペプチドのコラゲナーゼ阻害潜在能力は、高処理様式で阻害性物質をスクリーニングするために要求される高い感受性を提供する、モリキュラープローブズ(Molecular Probes)EnzChek(商標)コラゲナーゼアッセイキットを用いることによって測定した。EnzChekキットは、DQゼラチン(フルオレセイン結合ゼラチン)を含む。この基質は大半のゲラチナーゼおよびコラゲナーゼによって効率的に消化されて高蛍光性のペプチドを生成する。蛍光の増加はタンパク分解活性に比例し、蛍光マイクロプレートリーダーによりモニターできる。蛍光の減少はサンプルのコラゲナーゼ阻害活性に正比例する。アッセイに用いられるコラゲナーゼはクロストリジウム・ヒストリチクム(Clostridium histolyticum)から精製される。100μg/mLのDQゼラチンおよび30分のインキュベーション時間を用いれば、本アッセイによって最終濃度2 x 10-3U/mL(7ngタンパク質/mL)まで本酵素活性を検出できる(1ユニットは、37℃、pH5、5時間でコラーゲンから1μmoleのL-ロイシン等価物を遊離させるために必要な酵素量と規定される)。
適切な賦形剤(蛍光の強さに影響を与えないPBSまたは2%のDMSO)中の種々の濃度のオレアノイルペプチドを12.5μg/mLの基質、DQゼラチン(ブタ皮膚由来)、フルオレセイン結合物と10分間予備インキュベートし、続いてクロストリジウム・ヒストリチクム酵素由来コラゲナーゼIV型酵素の0.2U/mLを添加した。蛍光強度をマイクロプレートリーダーで30分後に測定した(Em:485nmおよびEx:520nm)。オレアノイルペプチドの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッド(Graphpad)プリズムソフトを用いてIC50として表される。コラゲナーゼの阻害パーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下におけるコラゲナーゼ活性による吸収;T=阻害物質存在下におけるコラゲナーゼ活性による吸収。
IC50値はコラゲナーゼ活性の50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好なコラゲナーゼ阻害潜在能力を示す。表1で、オレアノイルペプチドは、それぞれオレアノール酸、配列番号1のペプチドおよびPal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser(パルミトイル基が配列番号1に結合)と比較したとき顕著なコラゲナーゼ阻害活性を示す。
図2はオレアノイルペプチドの種々の濃度におけるコラゲナーゼ%阻害を示す。
【0031】
エラスターゼ阻害の潜在能力:
オレアノイルペプチドのエラスターゼ阻害潜在能力は、高処理様式で阻害性物質をスクリーニングするために要求される高い感受性を提供する、モリキュラープローブズ(Molecular Probes)EnzChek(商標)エラスターゼアッセイキットを用いることによって測定した。EnzChekキットは、DQエラスチン(フルオレセイン結合可溶性ウシ頸部靭帯エラスチン)を含む。この基質はエラスターゼによって効率的に消化されて高蛍光性のペプチドを生成する。蛍光の増加はタンパク分解活性に比例し、蛍光マイクロプレートリーダーによりモニターできる。蛍光の減少はサンプルのエラスターゼ阻害活性に正比例する。アッセイに用いられるエラスターゼはブタ膵臓から精製される。
適切な賦形剤(蛍光の強さに影響を与えないPBSまたは2%のDMSO)中の種々の濃度のオレアノイルペプチドを基質、25μg/mLのDQエラスチン(ウシ頸部靭帯由来)フルオレセイン結合物と10分間予備インキュベートし、さらに0.1U/mLのブタ膵臓エラスターゼ酵素を添加した。蛍光強度をマイクロプレートリーダーで30分後に測定した(Em:485nmおよびEx:520nm)。サンプルの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッド(Graphpad)プリズムソフトを用いてIC50として表される。エラスターゼの阻害パーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下におけるエラスターゼ活性による吸収;T=阻害物質存在下におけるエラスターゼ活性による吸収。
IC50値はエラスターゼ活性の50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好なエラスターゼ阻害潜在能力を示す。表1で、オレアノイルペプチドのIC50値(表1)は、前記がPal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser(パルミトイル基が配列番号1に結合)よりも良好なエラスターゼ阻害潜在能力を有することを明瞭に示している。オレアノール酸および配列番号1のペプチドはそれぞれエラスターゼ阻害を示さなかった。
図3はオレアノイルペプチドの種々の濃度におけるエラスターゼの%阻害を示す。
【0032】
コラーゲンの強化:
コラーゲンの強化は多様なストレス条件による皮膚の損傷の修復を促進する。
コラーゲンの強化は、細胞外マトリックスのコラーゲンI型およびコラーゲンIII型とより強い特異性で結合するシリウスレッド(Sirius Red)染料を用いることによって測定した。コラーゲンと結合する染料を溶解し、光学密度(OD)をフルオスター(Fluostar)オプチママイクロタイタープレートリーダーを用いて544nmで分光光度法により測定する。コラーゲンと結合した染料のODは細胞内のコラーゲン含有量と正比例する。
ヒトの骨に由来するヒト骨肉腫細胞をコラーゲン強化実験に用いた。前記細胞を24ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度で播種した。まず初めにコンフルエントな一層の細胞を、培養液中の種々の非毒性濃度のオレアノイルペプチドおよび賦形剤(コントロール)で処理した。各濃度について、4組ずつ維持し、‘n’値が8となるように解析を2回実施した。サンプルの処理後、細胞をCO2インキュベーターで48時間インキュベートした。続いて前記細胞をシリウスレッド染色技術でデベロップし、コラーゲン強化を解析した。細胞をPBSで十二分に洗浄した。各ウェルにつき1mLのブアン(Bouin’s)液(1.3%ピクリン酸、35%ホルムアルデヒドおよび氷酢酸を15:5:1の割合で含む)を用いRTで1時間インキュベートすることによって、前記細胞をブアン液で固定した。続いて前記固定液をマイクロピペットで吸引することにより除去し、細胞を流水で15分間洗浄した。培養プレートを風乾した後、1.3%のピクリン酸中の0.1%シリウスレッド染料を用いて細胞を染色した。ウェル当たり1mLのシリウスレッド染料を添加し、オービテック(Orbitek)シェーカーにて70RPMでおだやかに振盪しながらRTで1時間インキュベートした。続いて染料を吸引によって除去し、さらに細胞を0.01NのHClで十二分に洗浄して未結合色素を除去した。続いて、コラーゲンと結合した色素を、オービテックシェーカーにて70RPMでおだやかに振盪しながらウェルにつき0.2mLのNaOH(0.1N)に30分間RTで溶解させた。続いて色素を96ウェルのマイクロプレートに移し、フルオスター・オプチママイクロプレートリーダーを用いODを544nmで読み取った。
非処理細胞に対するコラーゲンのパーセンテージ強化は、非処理細胞のODを正常条件下での最適値として以下のように算出される:
細胞増殖の%強化=[(100/C) x T] − 100
式中、C=非処理細胞におけるコラーゲンによる吸収;T=サンプル処理細胞におけるコラーゲンによる吸収。
以下が観察された:オレアノイルペプチドは1.25ppmで17%のコラーゲン強化を示し、Pal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser(パルミトイル基が配列番号1に結合)は1.25ppmで11%のコラーゲン強化を示し、配列番号1のペプチドは1.25ppmで5%のコラーゲン強化を示し、一方、オレアノール酸は強化を全く示さなかった。オレアノイルペプチドが他のものと比較してより良好なコラーゲン強化を示すことは明白である。
【0033】
抗酸化潜在能力:
DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)スカベンジングアッセイ:
DPPHアッセイは、遊離ラジカルを除去する抗酸化剤の能力を判定するためにしばしば用いられる(遊離ラジカルは、酸化ストレスによって引き起こされる生物学的損傷の主要要因であることが判明している)。本アッセイは、被検化合物の抗酸化能力に関して信頼できる情報を提供することが知られている。本アッセイは、安定な遊離ラジカルDPPHが抗酸化剤によってクェンチングされる際の前記ラジカルの紫から黄色への色の変化を基準にする。
1.5mLのDPPHメタノール溶液(0.1mM)および合計体積3mLの種々の濃度のサンプルを含むアッセイ混合物のチューブを37℃の振盪水浴中で30分間インキュベートした。吸収の減少(ラジカルの除去と正比例する)を517nmで分光光度法により測定する。サンプルの用量依存遊離ラジカルスカベンジング活性を計算し、結果はグラフパッドプリズムソフトを用いてSC50値として表される。スカベンジングのパーセンテージは以下のように算出される:
%スカベンジング=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下における吸収;T=阻害物質存在下における吸収。
SC50値は、遊離ラジカルの50%スカベンジングに必要な濃度で、したがってSC50値が低ければ低いほど抗酸化潜在能力が高いことを示す。表1から、オレアノイルペプチドのみがDPPHスカベンジング活性を示すことは明白である。
【0034】
抗炎症性潜在能力:
TNFα阻害潜在能力:
TNFα阻害実験のために、ヒトの全血が用いられる。全血アッセイでは、単球がリポ多糖類(LPS)刺激によるTNF-αの主要供給源であるようである。単球およびマクロファージは、好酸球、マスト細胞、末梢リンパ球および顆粒球のような他の細胞タイプに加えてTNF-αの主要な供給源である。炎症性細胞の活性化は、c-AMPの細胞内レベルによって影響を受ける(c-AMPはホスホジエステラーゼイソ酵素によって調節される)。LPSはヒト血液におけるTNF-α生成のもっとも強力な刺激である。刺激後、本アッセイは定量的サンドイッチ酵素免疫アッセイ技術を利用する。TNF-α特異的モノクローナル抗体でマイクロプレートは事前に被覆される。サンプルに存在するTNF-αは前記固定抗体と結合する。一切の未結合物質を洗い流した後、TNF-αに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体を添加する。一切の未結合抗体-酵素試薬を除去するために洗浄した後で、基質溶液をウェルに添加する。最初の工程で結合したTNF-αの量に比例して発色が生じる。発色を停止させ、色の強度はTNF-α含有量と正比例する。
健康なドナー由来のヘパリン化血液を10%のFBSを含むRPMI1640培養液で1:3に希釈した。適切な賦形剤(PBSまたは0.1%のDMSO)中の種々の濃度のオレアノイルペプチドとともに希釈血液サンプルを37℃で1時間、5%CO2を含むインキュベーターで予備インキュベートした。0.1% DMSOは水に不溶なサンプルのための賦形剤として用いられた。予備インキュベーションの後で、マクロファージからTNFαを遊離させるために1ng/mLのLPSでこの全血細胞を37℃で5時間5%CO2を含むインキュベーターでインキュベートすることによって刺激した。続いて、サンプルを3分間4℃で3000gにて遠心し、上清をTNFαELISAキットの使用によりTNFα含有量についてアッセイした。全チューブから200μLの上清をマイクロタイタープレートの対応するウェル(マウスモノクローナル抗体で予め被覆したマイクロプレート)に移し、続いて全ウェルに50μLのアッセイ希釈液を加えた。室温で2時間インキュベートした後、提供された洗浄緩衝液でウェルを完全に洗浄し、続いて200μLのコンジュゲートを各ウェルに添加した。このプレートを室温で2時間インキュベートした。再度洗浄した後、200μLの基質溶液を各ウェルに添加し、さらに室温で20分インキュベートした。50μLの停止溶液を各ウェルに添加した(前記停止溶液は青から黄色への色の変化をウェルで引き起こすであろう)。光学密度を450nmで読み取り(前記光学密度はTNFα含有量に正比例する)、サンプル処理によるTNFα含有量の抑制パーセンテージを非処理細胞のそれに対して計算した。サンプルの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッドプリズムソフトを用いてIC50値として表した。エラスターゼの阻害パーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下におけるTNFαによる吸収;T=阻害物質存在下におけるTNFαによる吸収。
IC50値はTNFαの50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好TNFα阻害潜在能力を示す。
上記の手順はまた、オレアノイルペプチドによるLTB4阻害の決定にも踏襲される。表1の結果から、オレアノイルペプチドは良好なTNFαおよびLTB4阻害物質であることは明白である。
図4はオレアノイルペプチドの種々の濃度におけるTNFα阻害を示す。
【0035】
表1:オレアノイルペプチドのアンチエージング潜在能力に関するin vitro実験

【0036】
オレアノイルペプチドはまたIL-1β発現の阻害を示した。表示された最大阻害は、1μg/mLの濃度でIL-1β発現の31.78%阻害であった(表2、図5)。
LPSでチャレンジしたヒトの好中球で観察実験を実施した。細胞培養上清の測定によって、4μg/mLで28.03%という顕著なIL-6発現の低下が明らかになった(表3、図6)。100μg/mLの用量レベルのロリプラムを実験設計の信頼性および再現性の確認のために標準薬剤として用いた。
オレアノイルペプチドをNOおよびPGE2発現についてもまたスクリーニングした。前記は、2μg/mLの濃度で最大31.85%および50.00%のNOおよびPGE2発現阻害を示した(表4、図7;表5、図8)。
TNFα、IL-1β、IL-6、LTB4、NOおよびPGE2のような炎症マーカーを抑制するオレアノイルペプチドの能力は、炎症に起因する皮膚加齢の治療におけるその役割の指標となる。
【0037】
表2:ヒト好中球の細胞外インターロイキン-1ベータ(IL-1β)発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:IL-1β発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【0038】
表3:ヒト好中球の細胞外インターロイキン-6(IL-6)発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:IL-6発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【0039】
表4:ヒト好中球の細胞外プロスタグランジンE2(PGE2)発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:NO発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【0040】
表5:ヒト好中球の細胞外酸化窒素発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:NO発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【実施例3】
【0041】
ヒトに対するオレアノイルペプチドの影響に関する実験
ヒトの皮膚に対するオレアノイルペプチドの潜在的な影響を調べるために、中等度から重度の加齢徴候を有する約30歳から60歳の年齢範囲の候補者を院内で選別した。オレアノイルペプチド(0.01%)を含む局所組成物が皮膚塗布用クリームとして調製された。
このオレアノイルペプチド含有クリームを前記候補者の顔面皮膚の罹患領域に1日2回、3週間の間連続して塗布した。前記候補者の写真をクリーム適用前および3週間後に撮影した。
図9(a)および9(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後にしわが軟化したことは明白である。
図10(a)および10(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後に皮膚の厚さが改善されたことは明白である。
図11(a)および11(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後に過剰な色素沈着が減少したことは明白である。
図12(a)および12(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後に眼の下のくまが減少したことは明白である。
これらいずれの証拠も、オレアノイルペプチドの多機能性アンチエージング潜在能力を明白に示している。
【実施例4】
【0042】
オレアノイルペプチドおよび成分または植物抽出物を含む組成物の調製
本発明のある実施態様では、多様な成分および植物抽出物がオレアノイルペプチドと組み合わせて用いられる。個々の成分は、コナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびテトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体を含む群から選択される。これらの成分は、それぞれ別個にまたは組み合わせてオレアノイルペプチドとともに用いられる。前記成分の乾燥粉末およびオレアノイルペプチドの乾燥粉末を既定の比率で混合し、水または任意の他の溶媒に溶解して組成を完成させる。オレアノイルペプチドとともに用いられる各成分は、皮膚の加齢の具体的な徴候を治療する顕著な活性を示す。
皮膚若返りを強化するオレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物
Swiss 3T3マウス線維芽細胞を細胞増殖実験に用いた。細胞を96ウェルプレートの各ウェルにつき3000細胞の播種密度でDMEM培養液中に播種した。コンフルエントな一層のSwiss 3T3線維芽細胞を、FBSを含まない培養液中の種々の非毒性濃度のサンプル(オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物)および賦形剤(コントロール)で処理した。各濃度について、6組ずつ維持し、‘n’値が12となるように解析を2回実施した。サンプルの処理後、細胞をCO2インキュベーターで72時間インキュベートした。続いて前記細胞をNRU染色技術でデベロップし、細胞の生存活性を解析した。予め温めたDMEM培養液で調製した中性赤の0.003%溶液とともに細胞を37℃で3時間 CO2インキュベーターにてインキュベートした。過剰な色素をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗い流した。リソソームの色素を、25mLの水、24.5mLのエタノールおよび0.5mLの氷酢酸から成るデベロッパー溶液100μLでRTにて20分抽出した。フルオスター・オプチママイクロプレートリーダーを用い光学密度(OD)を492nmで読み取った。
非処理細胞に対する細胞増殖強化パーセンテージは、非処理細胞のODを正常条件下での最適値として以下のように算出される:
細胞増殖の%強化=[(100/C) x T] − 100
式中、C=非処理細胞における細胞増殖による吸収;T=サンプル処理細胞における細胞増殖による吸収。
表6および図13に表した結果は、細胞増殖がオレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物で処理された細胞で顕著に強化されることを示し、したがって組成物が皮膚の若返りに有用であることを表示している。
【0043】
表6

【0044】
UV B防御有効性強化のためのオレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物
Swiss 3T3マウス線維芽細胞をUV防御実験に用いた。細胞を96ウェルプレートの各ウェルにつき3000細胞の播種密度で播種した。まず初めに、コンフルエントな一層のSwiss 3T3線維芽細胞を、培養液中の種々の濃度のサンプル(オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物)および賦形剤(コントロール)で処理し、さらに0.036 J cm-2のUV B照射に曝露して、サンプルが最大のUV防御を提供する最大非細胞傷害濃度を決定した。0.036 J cm-2を、防御が存在しない細胞培養に対して約50%の細胞死を引き起こすために必要なUV線量として標準化した。サンプルの細胞傷害性潜在能力の観察にのみ供され得るコントロールプレートもまた、UV照射を実施しないで同様な条件下で維持した。各濃度について、6組ずつ維持し、‘n’値が12となるように解析を2回実施した。UV照射後、サンプルを含まない新しい培養液に交換し、前記細胞をCO2インキュベーターで48時間インキュベートした。続いて前記細胞をNRU染色技術でデベロップし、細胞の生存活性を解析した。予め温めたDMEM培養液で調製した中性赤の0.003%溶液とともに細胞を37℃で3時間 CO2インキュベーターにてインキュベートした。過剰な色素をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗い流した。リソソームの色素を、25mLの水、24.5mLのエタノールおよび0.5mLの氷酢酸から成るデベロッパー溶液100μLでRTにて20分抽出した。マイクロプレートリーダーを用い光学密度(OD)を492nmで読み取った。
UV誘発細胞傷害性パーセンテージの低下、すなわちUV防御のパーセンテージは、サンプルの存在下および非存在下における非照射細胞の細胞傷害性と比較して照射細胞の細胞傷害性に関して算出した。
サンプル非処理細胞における%UV誘発細胞傷害性(U1)=[(C1−T1)/C1] X 100
式中、C1=非照射細胞における細胞生存活性による吸収;T1=UV照射細胞における細胞生存活性による吸収。
サンプル処理細胞における%UV誘発細胞傷害性(U2)=[(C2−T2)/C2] X 100
式中、C2=非照射サンプル処理細胞における細胞生存活性による吸収;T2=UV照射サンプル処理細胞における細胞生存活性による吸収。
%UV防御=[(U1−U2)/U1] X 100
式中、U1=サンプル非処理細胞における%UV誘発細胞傷害性;U2=サンプル処理細胞における%UV誘発細胞傷害性。
表7および図14に表した結果は、オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物はUV防御を提供することを示し、したがって組成物がUV損傷から皮膚を防御する際に有用であることを示している。
【0045】
表7

【0046】
メラニン阻害強化のためのオレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/テトラヒドロクルクミノイド(THC)を含む組成物
B16F1マウスメラノーマ細胞を6ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにつき2mLのDMEM培養液にて5000細胞/ウェルの播種密度で播種した。CO2インキュベーターで24時間インキュベートした後、培養液を∝-MSH含有培養液で交換することによりメラニンを0.1nMの∝-MSHで誘発する。続いて、9日間にわたって∝-MSH含有培養液およびサンプルを規則的に3日間隔で補充しながら、種々の濃度のサンプル(オレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/THCを含む組成物)で前記細胞を処理した。コントロールウェルは、サンプル調製のために用いた賦形剤だけを用いサンプルで処理しないで維持した。インキュベーション時間の後で、培養液を除去し、細胞をはぎ取り、PBSで洗浄した。その後、メラニンを沸騰水浴中で5分間1N NaOHにより抽出した。メラニン抽出物の吸収はマイクロプレートリーダーにおいて405nmで読み取った。サンプルの阻害作用はメラニン形成の低下を基準に算出した。サンプルの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッドプリズムソフトを用いIC50値として表す。メラニン阻害のパーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C−T)/C] X 100
式中、C=阻害物質非存在下でのメラニンによる吸収;T=阻害物質存在下でのメラニンによる吸収。
IC50値は、メラニン形成の50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好なメラニン阻害潜在能力を示す。表8および図15から、オレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/THCを含む組成物のIC50値は、個々の作用物質のIC50値よりも顕著に低く、したがって活性の強化を提供することは明白である。
【0047】
表8

【0048】
ペプチドの配列表は添付の付属物1に含まれ、前記はまたファイル名sequencelistcip.txtとしてEFSウェブにより提出される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願番号11/835165(2007年8月7日出願)(発明の名称:トリテルペノイドおよび小有機分子により改変されたペプチド:合成および化粧薬剤における使用(“Peptides modified with triterpenoids and small organic molecules: synthesis and use in cosmeceuticals”)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)の部分継続出願である。
【0002】
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢の治療におけるその使用に関する。オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドは、それぞれ別個に、またはココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体およびカンゾウ抽出物を含む群から選択される成分または植物抽出物と一緒に前記組成物中に存在する。本組成物は、酸化、コラーゲン欠乏、並びにエラスターゼおよびコラゲナーゼのようなセリンプロテアーゼの過剰活性(前記は、皮膚のしわ、微細な表情しわ、皮膚厚の低下、過剰色素沈着、眼の下のくま、および未熟な加齢をもたらす)による加齢を効果的に緩和する。
【背景技術】
【0003】
皮膚の外観およびコンディションは、環境因子(自然発生的(日光、風による刺激、湿気など)もしくは人工的(熱、空気の状態、汚染物質など)プロセス、病理学的プロセス(例えば皮膚科学的疾患)または通常の加齢プロセス)の影響により持続的に退行し得る。皮膚が受ける多様な損傷はそれぞれ別個にまたは相乗的に作用する。時間の経過にしたがって発生し得る皮膚の質低下を緩和または予防するために、消費者は新規なまたは改良された化粧組成物および肌の手入れのための化粧方法をますます熱心に求めている。そのような製品または方法は、加齢プロセスの目に見える徴候、例えばしわ、筋の出現、皮膚の張りの低下、皮膚厚の低下、過剰な色素沈着またはシミの形成および加齢斑を予防し、遅らせまたは後戻りさせる。そのような製品または方法は、過敏肌、乾燥肌または落屑肌の外観およびコンディションを改善し、および/または潜在的刺激物質の中でとりわけ化学物質、風または日光の曝露により刺激を受けた肌を落ち着かせる。
加齢は人間の身体、より具体的には人間の皮膚に関係するので、加齢集団とともに、加齢に関する研究が増加している。例えば、小じわ、しわなどの存在によって明らかになる加齢肌の治療には大きな関心が寄せられている。加齢の皮膚徴候(例えば小じわ、しわ、たるみ、および過剰な色素沈着)に対しては多くの方策(外科手術、レーザー治療および化粧品を含む)が用いられてきた。化粧品による治療には、皮膚の加齢の影響を変化させる多様なクリームおよびローションの使用が含まれる。従来技術では文献の多くは、加齢におけるいくつかの有害な影響の1つを予防するためにただ1つの基礎的成分の使用に焦点を当てている。例えば、ある方策は、皮膚細胞の再増殖を刺激するために、他の成分を使用することなく1つまたは2つ以上のオキシカルボン酸またはレチン酸を使用することであった。このアプローチは、加齢が、同時に発生する多数の損傷経路を介して皮膚に損傷を引き起こす、多数の供給源に由来する多数の因子の皮膚における有害な相互作用によって引き起こされることを認識していないので無駄になった。
【0004】
消費者は、皮膚のしわ、筋およびみぞを治療する“アンチエージング”製品をますます熱心に求めている。顔面の表情しわを治療する高価で痛みを伴う化粧品注入の出現は、有効で非侵襲的な局所用代替物の発見における関心を増大させた。
表情しわは、成人年齢の早期に顔面の皮膚に出現する別のタイプのしわである。表情しわは、眼窩周囲、眉間、前額部および口周囲領域の顔面表情筋と解剖学的に関連する。ほほ笑んだり、一瞥したり、唇をすぼめたり、眉をひそめたりする動作時のこれらの筋肉の活動は、顔面の他の領域より大きな物理的張力を上層の皮膚に加える。前記の理由により、表情しわは、皮膚解剖学における非収縮性成分(例えば表皮)に焦点を当てた局所性治療に対しては応答性が低い。大いに効果的であるためには、表情しわの治療はまた顔面表情筋および真皮と結合した筋線維成分の抑制を伴うべきである。横紋筋線維を弛緩させる多数の物質が化粧品の従来技術において記載されている。問題は、従来技術の筋弛緩物質は作用が遅く十分に強力でないか、または抑制作用が累積的でないということである。さらにまた、これらの筋弛緩物質のいずれも顔面筋活動を低下させない。真皮の変形を迅速に抑制する新規に発見された植物抽出物は、真皮を修復および若返らせる物質がより効果を発揮するのを可能にする。
表情しわは、顔面の表情筋が収縮するかまたはそれ自体を皮膚の真下で縮め、続いて弛緩させてその休止時の長さに戻るときに形成される。皮膚もまた縮まりさらに元に戻ることができるが、筋肉とは同様ではない。したがって、筋肉が収縮するとき、皮膚はたわみさらに内側に折り畳まれる傾向がある。皮膚がその下の筋肉の短縮及び復元に耐える能力は上部真皮の質および健康状態と関係がある。年齢が進むにつれて、真皮の厚さ、弾性、コラーゲン含有量および修復能力は低下する。このような皮膚はもはや前記の動作から復元できず、真皮の線維性細胞間マトリックスは弱体化し断裂する。この時点で、皮膚は永続的なしわを発生させる。皮膚のこの領域が顔面表情の絶え間ない張力に曝されるとき、しわは深さを増し続ける。
【0005】
表情しわの解剖学
表情しわと密接に関係する皮膚は顔面の他の部分で見出されるものとは組織学的に異なっている。真皮下結合組織の小葉間中隔は横紋筋組織線維(皮筋層)を含む。これらの線維は下層の顔面筋群から発する。それらは、下部(網様)真皮のコラーゲン性ネットワーク内で統合される。上部(乳頭)真皮の真皮線維芽細胞の亜集団(“筋線維芽細胞”として知られている)は、横紋筋組織と類似する固有の収縮特徴を有する。これらの真皮線維芽細胞内の収縮は、横紋筋の線維成分と同じ神経伝達物質(すなわちアセチルコリン)によって仲介される。
顔面皮膚内の筋肉線維は皮膚表面の滑らかさに対して直接の影響を有し、これら筋線維への神経による運動流入の調節はしわの減少をもたらす。例えば、顔面神経のベル麻痺がる患者では、顔面の麻痺側の皮膚が麻痺のない側の皮膚よりも滑らかである。さらにまた、Botox.TMコスメティックの注入は前額および上部眉筋肉を固定するだけでなく、これらの筋肉に対して外側の皮膚を滑らかにする。Botox.TMは、筋線維の輸入運動ニューロンのシナプス結合部内のアセチルコリンの取り込みに干渉し、それによってしわおよびみぞと密接な関係を有する筋組織の収縮を妨げる。Botox.TM治療には強い要請があり、したがって、局所性の等価物を開発することは化粧品研究者の最終目標である(以下を参照されたい:A. Blitzer et al., Arch. Otolaryngol. Head Neck Surg., 119:1018-1022, 1993;J. D. Carruthers et al., J. Dermatol. Surg. Oncol., 18:17-21, 1992)。
【0006】
消費者の要請に応えるために、多くの化粧組成物および化粧方法が肌の手入れおよび治療のために開発されてきた。しかしながら、今日まで報告されている製品または治療方法の多くは(大半とまではいかずとも)不適切な結果をもたらすか、あるいは望ましくない副作用によって効用が損なわれる。これら副作用には、皮膚または近隣の粘膜の炎症、皮膚の過剰な油分または脂肪分の生成または皮膚の変色が含まれる。
真皮の修復:真皮の再生能力は、表情筋の慢性的な筋収縮および弛緩に耐えるその能力に対して重大な影響を有する。加齢または日光による皮膚の損傷の結果として、下部真皮の若返りに必要な線維芽細胞および血管は減少する。上部真皮の“基底層”の線維芽細胞の新細胞への複製は遅くなり、コラーゲン生成能力は低下し、コラーゲン線維ネットワークの組織化および温存能力は低下する。真皮マトリックスはコラーゲンおよび主要な水分保持分子(すなわちグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸)の供給源であるので、前記の保護は表皮の健康に必須である。前駆タンパク質の継続的な補充がなければ、コラーゲン線維ネットワークおよび細胞外マトリックスの組織崩壊および分解が生じる。前記プロセスの結果は、真皮-表皮接合物の扁平化および上部真皮の機械的耐性の脆弱化である。したがって、加齢皮膚は、一時的な変形(前記は顔面の表情発現時に発生する)に対してはるかに強い感受性を示し、一時的変形は永続的になる(以下を参照されたい:Oikarinen, "The Aging of Skin: Chronoaging Versus Photoaging," Photodermatol. Photoimmunol. Formation, Photomed., vol. 7, pp. 3-4, 1990;Thalmann et al. "A Computational Skin Model: Fold and Wrinkle Formation"pp.1-5)。
【0007】
皮膚の弾性を高めるかまたは真皮を強化するための単一分子またはその組成物について考察しているいくつかの教示が当分野に存在する(U.S. Pat. No. 6,794,362;U.S. Pat. No. 6,777,389)。前記は、エラスチンの分子組成を模倣するかまたは前記に添加されるペプチドまたはペプチド様化合物から処方される。Mittsら(U.S. Pat. No. 6,809,075)は、ペプチド/レチノイド組成物を真皮のエラスチン成分内に組み入れ、それによって皮膚が変形から元に戻る能力を高めることができることを記載した。従来技術は、天然または合成ペプチド処方物がコラーゲン線維ネットワークまたは真皮マトリックスの細胞外基質を強化できることをしばしば教示している。したがって、新規な完全性(Lowe, N. et al., *Pharmacology of Retinols In Skin", Vol. 3 (1989), pp. 240-248)。しかしながら、レチノイドにより引き起こされる不安定性および刺激性が問題である。Dioguardi(U.S. Pat. No. 5,198,465)が主張したアプローチは皮膚のコラーゲン含有量の増加であり、前記は、一般的には合成コラーゲン前駆体およびコラーゲン代謝経路の補助酵素を局所的に適用することによる。根拠は、前駆体分子の拡散および吸収による直接的置換が不完全な皮膚を補強するということである。Kludas(U.S. Pat. No. 5,055,298)が教示する同様な見解は、実質的に天然の組成物は真皮-表皮接合部で修復性および再形成性作用を有し得るということである。さらにまた、最近の技術(U.S. Pat. No. 6,906,036;U.S. Pat. No. 6,884,425)は、マトリックスのメタロプロテイナーゼの阻害物質は真皮の破壊を予防し、治癒し、正常で健康な皮膚への回復を促進することができることを教示している。前述の特許のいずれも線維芽細胞の活性およびコラーゲン前駆体の合成を刺激する能力を教示していないし、真皮の厚さおよびコラーゲン線維ネットワークを回復するとも教示していない。
最近の特許では、Varaniら(U.S. Pat. No. 6,919,072)は、コラーゲンの分解を阻害し、プロコラーゲンの合成を高めることによってコラーゲン含有量を増進させ、ケラチノサイトおよび線維芽細胞の増殖を高めるレチノイドおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害物質の組成を同定した。前記発明は、年代的に加齢を示す皮膚で表皮-真皮接触面の厚さを回復させ、さらに上部真皮内のコラーゲン含有量を通常のレベルに回復させる。当該発明の特性は、環境的および物理的張力に耐える皮膚強度を提供することである。他のレチノイドに関しては、Loweのレチノイドは長期の適用を必要とし、真皮の修復は本出願の好ましい実施態様の場合よりもはるかに遅い。
【0008】
ペプチドの重要性
初期の技術の狙いは、新規なコラーゲンを構築するか、または基底層を刺激もしくは破壊してその再生および健康的な再構成を達成する物質を追加する分子を物理的に補充すると考えられる物質を明らかにすることにあった。より最近の技術は、上部真皮を刺激してそれ自体を細胞の再増殖により再生させる際の局所ペプチド治療の利点を教示する。このことは、皮膚の損傷後の治癒プロセスを刺激する際に有用な天然に存在するペプチドを身体が所有するという知識によって支持される。Robinson(U.S. Pat. No. 6,492,326)は、パルミトイルペンタペプチド-3、ペンタペプチドの誘導体およびその混合物の組合せを含む多様な処方物を教示する。Lintner(U.S. Pat. No. 6,620,419)は、ペプチド一般配列式がパルミトイル-リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリン(パルミトイル基が配列番号1に結合)である、コラーゲン合成およびグリルコスアミノグリカンの合成を高めるペプチドを開示する。それらは相乗的に作用して、より初期の処方物よりもはるかに効率的にしわおよび皮膚の加齢の他の形態を治癒させる。Lintnerの教示とRobinsonの教示との重要な相違はペンタペプチドの末端への脂肪酸鎖の付加であり、前記付加は、この親油性改変ペプチドの表皮への浸透を非常に効率的にし、したがって真皮形成層への到達をより効率的にする。正味の結果は、上部真皮の修復能力の回復による皮膚の厚さの増加である。結果として、皮膚は、表情筋の活発な収縮および弛緩並びに皮膚自体の内部の微小な収縮によって当該皮膚に課せられる変形に耐える能力を向上させる。
【0009】
より包括的な研究は、環境因子(例えばストレス、日光への曝露、並びに食物、水および大気中の不純物)もまた皮膚の表皮および真皮層の成分に悪影響を与えることを見出した(前記は、順次皮膚の外観に影響を与え、これを変化させ、未熟な加齢の出現をもたらす)。例えば、遊離ラジカル、反応性窒素種(“RNS”)、反応性酸素種(“ROS”)および他の酸化性の種(“OOS”)のような因子は、皮膚を含むヒトの身体に悪影響を与え得る。皮膚の外観に衝撃を加えさらに悪影響与える上記に特筆したグループ内の具体的な因子には、無水硝酸、超酸化ラジカル、過酸化水素および水酸化物遊離ラジカルが含まれる。これらの因子は、多数の皮膚症状(光による損傷、皮膚の一般的加齢、接触皮膚炎、しわ、脂質の過剰酸化、酵素分解、コラーゲンおよび/またはエラスチンの減少および分解、DNAの分解および再生阻害、皮膚組織の炎症および一般的損傷を含む)において様々に関係している。
抗酸化活性は、身体での反応性酸素種の生成を低下させ、同時に細胞に回復不能な損傷を引き起こす酸化を妨げる活性である。基底状態または三重項酸素は、環境因子または生化学的因子への暴露の結果として(例えば酵素、還元代謝、化学物質、汚染物質、光化学反応の結果として)活性化され、高い反応性を有する反応性酸素種(ROS)(例えば超酸化ラジカル、ヒドロキシラジカルおよび過酸化水素)に変換され得る。したがって、前記は不可逆的な細胞構成成分の破壊をもたらす。そのような反応性酸素種の作用は、抗酸化酵素(例えばスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ)および抗酸化物質(例えばビタミンC、ビタミンEおよびグルタチオン)(前記はいずれも身体の防御系を形成する)によって低下させることができる。しかしながら、そのような身体の防御メカニズムの異常または過剰な反応性酸素種への暴露が生じる場合は、反応性酸素種は不可逆的に脂質、タンパク質およびDNAを破壊し得る。加齢、癌、多発性動脈硬化症、関節炎、およびパーキンソン病を含む多様な疾患は前記の帰結である。
【0010】
合成抗酸化物質、例えばBHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)およびNDGA(ノルジヒドロ-グアイアレチン酸)が今日までに開発されている。天然の抗酸化剤を例示すれば、抗酸化酵素(例えばスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ)および非酵素性抗酸化物質、例えばトコフェノール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、カロテノイドおよびグルタチオンが存在する。
しかしながら、合成抗酸化剤は、身体におけるそれらの強力な毒性のためにアレルギー反応および腫瘍形成を引き起こし、さらに温度感受性のために容易に破壊される。他方、天然の抗酸化剤は合成抗酸化剤よりも身体において安全であるが、作用が弱いという問題を有する。したがって、使用で安全性に関する問題を示さず優れた抗酸化活性もまた有するという新規な天然の抗酸化剤の開発が必要とされる。局所適用抗酸化剤は、全ての皮膚タイプにとって皮膚を健康に保ち、日光による損傷を予防し、細胞機能を改善するというメリットを有する。
結論として抗酸化剤は、皮膚の刺激および炎症の軽減に対してプラスの作用をもたらし、健康で生き生きした皮膚の生成および維持に必須であり、したがってしわを潜在的に減少させるステップであることが示された(International Journal of Experimental Pathology, 2000:257-263; Skin Pharmacology and Applied Skin Physiology, 2000: 143-149)。
【0011】
ポリフェノール(ポリヒドロキシフェノール)構造(すなわち芳香環にいくつかのヒドロキシル基を有する)を有する数百の分子が食用植物で同定された。これらの分子は植物の二次代謝物で、一般的には紫外線照射または病原体の攻撃に対する防御に必要とされる。ポリフェノールは、果実、野菜、穀類、乾燥豆類、チョコレートおよび飲料(例えば紅茶、コーヒーまたはワイン)の広範囲に及ぶ成分である。
これらの化合物は、それらが含むフェノール環の数およびこれらの環と互いに結合する構造成分の数の関数として種々のグループに分類できる。フェノール類はフェノール酸、フラボノイド、スチルベンおよびリガンドを含む。以下の2つのクラスのフェノール酸が存在する:安息香酸の誘導体およびケイ皮酸の誘導体。
実際のところ、in vivoで抗酸化剤の各々を全て測定するのは現実的ではない。さらにまた、現在、酸化ストレスに影響を及ぼす主要因子は当該系の抗酸化物質の全体的状況であるという仮説が今では広く行きわたっている(抗酸化物質が遊離ラジカルおよびROSを除去することによって疾患を予防する)。したがって、細胞外抗酸化物質の状況を包括的に測定できる方法を入手することが肝要である。抗酸化物質の状況を測定する方法が存在し、前記方法は、発生した遊離ラジカルの標的インジケーター分子への到達の抗酸化物質による阻害を基準にする。阻害アッセイの一般的特徴は、標的分子と反応する遊離ラジカルを発生させ、それによって観察および定量することが可能な終末点を作成することである。抗酸化物質の添加はこの終末点の発生を阻害する。前記の好例はDPPH(1,1-ジフェニル-2-ヒドラジル)の遊離ラジカル除去活性である。
エラスチン(結合組織の弾性線維中に極めて高濃度で見出される)は、皮膚のきめおよび張りに大きな影響を与える。エラスターゼ(セリンプロテアーゼ酵素)は、甚だしい細胞間線維ネットワークを含む組織の分離に役割を果たす。過剰なエラスターゼ生成は皮膚のしわ/未熟な加齢をもたらすであろう。
【0012】
生命活力を有するタンパク質、コラーゲンは皮膚の張りおよび構造を維持する。コラゲナーゼはセリンプロテアーゼ酵素であり、前記は治癒に向かう創傷部が残る任意の死組織を有する創傷を清浄にする。コラゲナーゼ(炎症時に集中的に生成される)は、皮膚の張りおよび構造を維持する生命活力タンパク質コラーゲンを消化することにより皮膚のしわ形成に役割を果たす。
アンチエージングのまた別のメカニズムは皮膚のコラーゲン強化である。新規コラーゲンを構築する分子を物理的に補充するか、または基底層を刺激もしくは破壊してその再生および健康的な再構成を達成する物質を付加する作用物質はアンチエージング組成物のために優れている。より最近の技術は、上部真皮を刺激して細胞の再増殖によりそれ自体を再生させる局所ペプチドの利点を教示する。前記は、皮膚の創傷後の治癒プロセスの刺激に有用な天然に存在するペプチドが身体に存在するという知見によって支持される。Robinson(U.S. Pat. No. 6,492,326)は、パルミトイルペンタペプチド-3、ペンタペプチドの誘導体およびその混合物を含む多様な処方物を教示する。Lintner(U.S. Pat. No. 6,620,419)は、ペプチド一般配列式がパルミトイル-リシル-スレオニル-リシル-セリン(パルミトイル基が配列番号1に結合)である、コラーゲン合成およびグリルコスアミノグリカンの合成を増進させるペプチドを開示する。それらは相乗的に作用して、しわおよび皮膚の加齢の他の形態を初期の処方物よりもはるかに効率的に治癒する。
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢の治療におけるその効果的使用を開示する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢を治療する方法を提供する。本組成物は、皮膚の弾性低下、コラーゲン変形、炎症、遊離ラジカル誘発皮膚損傷などによって引き起こされる皮膚の加齢を予防し、遅らせおよび/または逆戻りさせる際に多数のメカニズムにより効果的に働く。
オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドは、本組成物中にそれぞれ別個に、または成分または植物抽出物と一緒に存在する。オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドおよび成分または植物抽出物を含む本組成物は、皮膚の加齢の具体的徴候の治療に相乗的効果を示す。前記成分または植物抽出物は、ココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される。スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される。
本発明で用いられるオレアノイルペプチドの濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
本組成物で用いられる成分または植物抽出物の濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドの構造を示す。
【図2】種々の濃度のオレアノイルペプチドにおけるコラゲナーゼの%阻害を提供する。
【図3】種々の濃度のオレアノイルペプチドにおけるエラスターゼの%阻害を提供する。
【図4】種々の濃度のオレアノイルペプチドにおけるTNFα阻害を示す。
【図5】ヒト好中球の細胞外インターロイキン-1ベータ(IL-1β)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図6】ヒト好中球の細胞外インターロイキン-6(IL-6)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図7】ヒト好中球の細胞外プロスタグランジンE2(PGE2)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図8】ヒト好中球の細胞外酸化窒素(NO)の発現における段階的用量のオレオノイルペプチドの影響;P値:*<0.01;**<0.001。
【図9】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図9(b)は、しわの柔弱化におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図10】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図10(b)は、しわの厚さの改善におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図11】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図11(b)は、過剰な色素沈着の緩和におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図12】オレアノイルペプチドの適用前および適用後にそれぞれ撮影された候補者の写真を示す。図12(b)は、眼の下のくまの減少におけるオレアノイルペプチドの影響を示す。
【図13】オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物の皮膚のコンディショニングおよび若返りにおける影響;(a)サンプル無しのコントロール細胞、(b)非処理細胞と比較して、5μg/mLのココナッツ液状内乳による35%強化、(c)非処理細胞と比較して、5μg/mLのオレアノイルペプチドによる15%強化、(d)非処理細胞と比較して、オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む5μg/mLの組成物による85%強化。
【図14】オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物のUVに対する皮膚防御における影響;(a)サンプル無しにUVに曝露したコントロール細胞、(b)非処理細胞と比較して、40μg/mLのアムラ抽出物による53%UV防御、(c)非処理細胞と比較して、40μg/mLのオレアノイルペプチドによる13%UV防御、(d)非処理細胞と比較して、オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む40μg/mLの組成物による80%UV防御。
【図15】オレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/THCを含む組成物のメラニン抑制における影響;(a)サンプル無しのコントロール細胞、(b)メラニンの顕著な減少を示さないオレアノイルペプチド処理、(c)オレアノイルペプチドおよびプテロスチルベンを含む組成物:IC50は0.42μg/mL、(e)オレアノイルペプチドおよびカンゾウ抽出物を含む組成物:IC50は1.3μg/mL、(f)オレアノイルペプチドおよびオキシレスベラトロールを含む組成物:IC50は4.3μg/mL、(g)オレアノイルペプチドおよびTHCを含む組成物:IC50は1.2μg/mL、(h)オレアノイルペプチドおよびレスベラトロールを含む組成物:IC50は1.6μg/mL。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、皮膚の加齢を治療する方法に関し、前記方法は、以下の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物で皮膚を治療する工程を含む:
【化1】

構造I
【0016】
本発明の別の実施態様では、前記組成物は、場合によってコナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む。
本発明のさらに別の実施態様では、スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せを含む群から選択される。
本発明のさらに別の実施態様では、前記組成物は局所的に適用され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群から選択される形態で存在する。
本発明は、下記の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド並びに皮膚科学的に許容できる賦形剤中で処方される、日光遮蔽物、スキンライトニング剤、スキンタンニング剤、抗酸化剤、香料、乳濁化剤、保存料、着色剤、乳化剤、膨張剤および緩衝剤を含む群から選択されるさらに別の1つまたは2つ以上の付加物を含む組成物に関する:
【0017】
【化2】

構造I
【0018】
本発明の別の実施態様では、前記組成物は、場合によってコナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む。
本発明の別の実施態様では、前記スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せを含む群から選択される。
本発明の別の実施態様では、前記組成物は局所的に適用され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群から選択される形態で存在する。
本発明は、下記の構造Iで表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドに関する。オレアノール酸は配列番号1のペプチドの末端のリジンと結合する。
【0019】
【化3】

構造I
【0020】
本発明の別の実施態様では、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドは、脱水反応による配列番号1のペプチドとオレアノール酸とのカップリングによって合成される。
【0021】
定義
本明細書で用いられる“局所適用”という用語は、本発明の組成物を皮膚の表面に塗布または広げることを意味する。
本明細書で用いられる“皮膚科学的に許容できる”という用語は、そのように記述された組成物またはその成分が、甚だしい毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを生じることなく人間の皮膚に接触させて用いるために適切であることを意味する。
本明細書で用いられる“安全で有効な量”という用語は、プラスの効果、好ましくはプラスの皮膚の外観または感覚的利点(本明細書に開示した利点をそれぞれ別個に含む)の顕著な誘発に十分であるが、ただし重大な副作用を回避するためには十分に低い、すなわち当業者の慎重な判断の範囲内のリスク比で合理的な利点を提供する、化合物または組成物の量を意味する。
本明細書で用いられる“皮膚の適合性”という用語は、局所用組成物の長期の適用に対し皮膚への最小限の害反応(例えばチクチクする感じ、ひりひりする感じ、皮膚の赤み、かゆみおよび毛包炎)で耐え得る皮膚の能力を意味する。
“同時投与”という用語は、前記組成物を第二の医薬(典型的には異なる作用メカニズムを有する)を、所望の結果を促進する投与スケジュールで投与することを指す。この用語は、同時投与、同じ日のそれぞれ別個の時間における投与、または別の日における投与をも指すことができる。組成物は別々に投与するか、またはただ1つの処方物にまとめてもよい。
【0022】
本発明は、オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物および皮膚の加齢を治療する方法を提供する。オレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド(化合物)は、本明細書を通して以後“オレアノイルペプチド”と称する。
前記化合物中のオレアノール酸をその誘導体と置き換え、本発明で用いることができる。前記化合物のオレアノール酸部分をさらに改変し、3-アシルオキシ基にアルカノイルオキシ、アルケノイルオキシ、アリールカルボキシロイルオキシ、ヘテロアリールカルボキシロイルオキシ基などから選択される置換基を含むことができる。
本発明で用いられるオレアノイルペプチドは、皮膚の弾性、コラーゲンの変形、炎症、遊離ラジカル誘発皮膚損傷などによって引き起こされる皮膚の加齢を予防し、遅らせおよび/または逆戻りさせる際に多数のメカニズムによって機能する。
前記組成物は、オレアノールペプチドをそれぞれ別個にまたは成分もしくは植物抽出物と一緒に含む。本発明で開示したオレアノイルペプチドおよび成分または植物抽出物を含む組成物は、皮膚加齢の個々の特徴の治療で相乗効果を示す。前記成分または植物抽出物は、ココナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される。前記スチルベンは、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される。
【0023】
本発明で用いられるオレアノイルペプチドの濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
組成物で用いられる成分または植物抽出物の濃度は約0.0001から約10%の範囲である。
ある実施態様では、オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物は、細胞若返りの強化を提供する。
別の実施態様では、オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物は、UV誘発損傷に対し防御強化を提供する。
さらに別の実施態様では、オレアノイルペプチドおよびスチルベンまたはその誘導体/カンゾウ抽出物/テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体を含む組成物は、皮膚の明るさの向上の強化を提供する。
以下の記載では前記天然の成分は“活性成分”と称される。本発明のアンチエージングスキンケア組成物はまた、皮膚科学的に許容できる賦形剤を含む。前記物質は、前記活性成分の希釈剤、分散剤または担体として機能し得る。前記賦形剤は、スキンケア製品で通常的に用いられる物質を含むことができ、前記には水、緩衝性水溶液、液体もしくは固体の皮膚軟化剤、シリコーンオイル、乳化剤、溶媒、湿潤剤、膨張剤、散剤、発射薬などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
アンチエージングスキンケア組成物の粉末成分は適切な賦形剤に溶解させ、強度したがって製品の効能を増減させることができる。強度および効能におけるそのような多様性は、皮膚のタイプおよび条件が大きく変動する個体で構成される大いに不均質な集団を治療する場合、アンチエージングスキンケア組成物の有効性の維持に強く所望され得る。
【0024】
前記活性成分の他に、本発明の組成物は場合によって多様な化粧品付加物または製造付加物を含むことができる。例えば、日光遮蔽物、スキンライトニング剤もまた含むことができる。賦形剤はまた、抗酸化剤、香料、乳濁化剤、保存料、着色剤、乳化剤および緩衝剤のような付加物を、当該アンチエージングスキンケア組成物の有効性、保存、有用性または市場性の強化のために要望または所望に応じて含むことができる。好ましい実施態様では、スキンケア組成物への香料または他の隠蔽剤の添加は、活性成分の存在に付随する臭いの緩和または遮断のために所望されまたは必要である。
本発明のアンチエージングスキンケア組成物の調製のために、多様な技術を利用することができる。例えば、活性成分は、一般的にはスキンケア製品の製造に通常的な態様で皮膚科学的に許容できる賦形剤に取り込むことができる。したがって、活性成分は、第一に、皮膚科学的許容できる賦形剤に取り込まれるべき水または別の溶媒もしくは液体の一部分に溶解または分散することができる。この製造アプローチで使用される好ましい組成物は、水中油、油中水、または水中油中水エマルジョンである。
しかしながら、好ましい実施態様では、活性成分は(上記の付加物を含むかまたは含まない)、皮膚科学的に許容される担体とは分離させた状態で、例えば乾燥粉末として維持される。得られたアンチエージングスキンケア組成物は続いて顔面、手、腕、足、首または他の領域の皮膚に適用され、この場合、治療領域の完全で均一な被覆を担保するために手で塗布することが所望される。
【0025】
本発明のアンチエージングスキンケア組成物は、水溶液、クリーム、ゲル、ローション、スプレー、軟膏、ペースト、ムース、化粧品などを含む(ただし前記に限定されない)、通常的な“放置用”スキンケア製品の形態であり得る。アンチエージングスキンケア組成物はまた“洗い流し用”製品の形態であってもよい。前記製品には浴用またはシャワー用ゲルが含まれ(ただし前記に限定されない)、前記は、洗浄時に皮膚への吸着または付着を促進するために活性成分のためのデリバリー系をおそらく含む。もっとも好ましくは、前記製品は“放置用”製品である(すなわち、その皮膚への適用の後で時間を置かずに意図的に洗浄される工程を与えられることなく皮膚に適用される製品)。
本発明のアンチエージングスキンケア組成物は、任意の適切な態様のパッケージ(通常的な態様にある広口瓶、瓶、チューブ、スティック、ローラーボールアプリケーター、エーロゾルスプレー装置などを含むが、ただしこれらに限定されない)であり得る。
本発明はさらに以下のような肌の手入れによる利点を提供する:しわの形成を遅らせるかまたは予防する;皮膚のたるみを遅らせるかまたは予防する;光による皮膚の損傷を遅らせるかまたは予防する;若々しい外観を皮膚に付与する;皮膚へのコラーゲンの蓄積を強化する;組織の修復および細胞増殖を強化する;および皮膚の手触り、滑らかさまたは堅実性を改善する。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明の方法は、治療を必要とする皮膚に対して1日1回または2回以上実施することができる。この方法では、アンチエージングスキンケア組成物の小体積、例えば0.1から5mLを適切な容器またはアプリケーターから皮膚に適用し、さらに手もしくは指または適切な装置を用いて皮膚上に広げるかおよび/または皮膚に擦り込む。当該組成物が“放置用”または“洗い流し用”製品として処方されたかどうかにしたがい、場合によって洗い流し工程がその後に続き得る。皮膚外観における改善は、皮膚のコンディション並びにアンチエージングスキンケア組成物が用いられた濃度、量および頻度にしたがって1日以内または2日以上の使用で明らかになるであろう。
本明細書に記載した本発明の組成物、方法および使用は、しわの形成の予防、低下または遅延、および皮膚の張りの低下の予防、低下または遅延をもたらす。本明細書に記載した組成物、方法および使用はまた、シミ、肌触り、滑らかさまたは堅実性を改善し、さらに弾力性が改善された滑らかでしなやかな皮膚をもたらす。外観、手触りおよびコンディション(具体的には明るさ、鮮明さに関する)における全般的な改善、および皮膚の全般的な若々しい外観が達成される。本発明はしたがって、オレアノイルペプチドによって提供されるアンチエージング効果と包括的に記載される幅広い結果を提供する。
【0027】
本明細書に記載した本発明の組成物、方法および使用は、局所適用のためにおよび皮膚のコンディションの調整にさらに有用である。前記皮膚のコンディションには目に見えるかおよび/または触知される皮膚(特に皮膚の表面)の不連続性が含まれる(そのような不連続性は一般的には好ましくない)。そのような不連続性は、内部および/または外部要因によって誘発または引き起こされ、本明細書に記載した皮膚の加齢の徴候を含むことができる。
“皮膚の加齢の徴候”には、視覚的および触覚的に認知し得る全ての外面の所見および任意の加齢による他の巨視的または顕微鏡的作用が含まれるが、ただしこれらに限定されない。そのような徴候は、本質的または非本質的要因、例えば年齢による加齢および/または環境的損傷によって誘発または引き起こされ得る。これらの徴候は以下を含むプロセス(ただしこれらに限定されない)から生じ得る:手触りの不連続性(例えばしわ(表面近くの小じわおよび粗く深いしわを含む)、皮膚のすじ、割れ目、へこみ、大きな孔(例えば付属の構造物(例えば汗腺管、皮脂線または毛包)に付随する))の発生;落屑、剥離および/または皮膚の非平坦性および粗雑性の他の形態;皮膚の弾力性の低下(機能的な皮膚エラスチンの低下および/または不活化)、たるみ(眼の一帯および顎のふくらみを含む)、皮膚の堅実性の低下、皮膚のち密性の低下、変形からの皮膚の戻りの低下、赤みまたは変色(眼の下のくまを含む)、シミ形成、土色化、過剰に色素沈着した皮膚領域(例えば加齢斑およびシミ)、角化症、異常分化、過剰角質形成、弾力線維症、コラーゲン減成、並びに以下における他の組織学的変化:角質層、真皮、表皮、皮膚血管系(例えば末梢血管拡張症またはクモの巣状血管)および下部組織、特に皮膚直近組織。
本発明は、上記に記載した皮膚の加齢に関連するメカニズムにより生じる“皮膚の加齢の徴候”の予防、緩和または遅延に限定されず、発生のメカニズムに無関係に前記徴候の予防、緩和または遅延も含もうとすることは理解されるべきである。
【0028】
実施例
本発明の上記の特徴および他の利点は、実施例と併せて下記の詳細な説明からより明瞭に理解されよう。
オレア・エウロパエア(Olea europaea)抽出物:前記は、90%を越える純度で活性成分トリテルペノイドオレアノール酸を含む乳脂色の粉末である。供給源はオレア・エウロパエア(オリーブ)の葉である。
ペンタペプチド、リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリン(配列番号1):前記は、コラーゲン減成産物である、一般式リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリンのペプチドである(K. Katayama, J. A. Borunda, R. Raghow, A. H. Kang, J. M. Sayer, J. Biol. Chem., 268, 9941, 1993)。
実施例1
トリテルペノイドのオレアノール酸と結合した配列番号1のペンタペプチド(オレアノール酸は配列番号1のペプチドの末端のリジンと結合する)は、皮膚の真皮マトリックスにおけるコラーゲン合成とコラーゲン減成との間の健康的なバランスを維持することによって、加齢の症状を相乗的に緩和または遅延させる。
したがって、オレアノイルペプチドは、全てのアンチエージング作用様式(例えばセリンプロテアーゼ阻害活性、抗炎症活性、抗酸化活性、コラーゲン補充活性など)を賦与されている。
オレアノイルペプチドをそれぞれ別個にまたは成分もしくは植物抽出物と一緒に含む本発明の局所用化粧組成物は、基剤成分、アジュバントおよび化粧品分野で通常的に用いられる添加物を混合することによって液体または半固体形で調製される。液体または半固体形の化粧品には皮膚ローション、クリームおよびゲルが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
局所適用用組成物はまた、全身ローション、ピールオフおよびフェースマスク化粧組成物でも用いることができる。
本発明の好ましい実施態様を例示のために開示してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲において開示した本発明の範囲から逸脱することなく多様な改変、付加および置換が可能であることを認識していよう。
【実施例1】
【0029】
オレアノイルペプチドの化学的合成
アセチルオレアノイルLys (Z)-Thr (Bzl)-Thr (Bzl)-Lys (Z)-Ser (Bzl)-OBzl
アセチルオレアノール酸(5gm、10mmole)を50mLのクロロホルムに溶解し0℃に冷却する。前記反応混合物に新しく蒸留した塩化チオニルを一滴ずつ加える。前記混合物を低温で30分、続いて室温で2時間攪拌した。その後溶媒をin vacuoで完全に除去し、残留物を乾燥させる。TFA.Lys (Z)-Thr (Bzl)-Thr (Bzl)-Lys (Z)-Ser (Bzl)-OBzl(9.3GM、7.14mmole)を100mLのクロロホルムと一緒に取り、0℃に冷却する。攪拌しながら、5mLのトリエチルアミンを加え、この溶液のpHを8−9に調整する。前記ペンタペプチド溶液を10℃に冷却し、攪拌しながら、上記で調製したクロロホルム25mL中の塩化アセチルオレアノイル溶液をゆっくりと加える。前記混合物を低温で15分さらに反応の完了まで室温で攪拌する。続いて前記反応混合物を、10%のKHSO4溶液(3回)、水、飽和NaHCO3溶液(3回)、水および飽和NaCl溶液で洗浄する。前記を最後にNa2SO4無水物上で乾燥させ、in vacuoで濃縮する。残留物を酢酸エチル/石油エーテル(7:3)を用いて沈殿させる。続いて沈殿物をろ過し、in vacuoで乾燥させる。収量13.4g(80%)。質量スペクトルは1763で所望のm/eピークを示し、高解析NMRにより所望の構造が確認された。
アセチルオレアノイル-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-OH
アセチルオレアノイル-Lys (Z)-Thr (Bzl)-Thr (Bzl)-Lys (Z)-Ser (Bzl)-OBzl(10GM、6mmole)をメタノール中の5%酢酸100mLと混合し、水素添加装置に移す。2gの10% Pd-Cを前記反応混合物に添加する。水素添加は5kgの水素圧を用い60℃の温度で実施される。反応完了後に、触媒をフィルターで除去し、反応混合物をin vacuoで濃縮した。残留物をアセトニトリルの添加により沈殿させた。固形物をろ過し、乾燥させた。収量5.6g(90%)。質量スペクトルは1045で分子イオンピークを示した。
オレアノイル-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-OH(オレアノイルペプチド)
上記で得たアセチルオレアノイル-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-OH(5gm、4.8mmole)を25mLのメタノールに取り、攪拌した。この混合物に2MのLiOH溶液25mLを加え2時間攪拌した。前記反応混合物からメタノールを除去した。前記水溶液を酢酸エチルで洗浄し、1NのHCl溶液でpH7−8に酸性化させた。続いて前記水溶液を蒸発により乾燥させた。前記残留物にメタノールを添加し、不溶性塩をフィルターで除いた。溶液を濃縮し、乾燥ジエチルエーテルを用いて沈殿させた。続いて固体(オレアノイルペプチド)をろ過し乾燥させた。収量4.1g(85%)。ES-MSスペクトルはm/e1001(M-H)で分子イオンピークを示した。
オレアノール酸と配列番号1(リシル-スレオニル-スレオニル-リシル-セリン)のペンタペプチド(図1)との結合は、ペンタペプチドのアンチエージング潜在能力を多数の作用様式で顕著に強化する。したがって、本発明のオレアノイルペプチドは、皮膚のコンディションを治療するためにより良好で新規な分子として機能する。
【実施例2】
【0030】
オレアノイルペプチドのアンチエージング潜在能力
in vitro実験:
コラゲナーゼ阻害の潜在能力:
オレアノイルペプチドのコラゲナーゼ阻害潜在能力は、高処理様式で阻害性物質をスクリーニングするために要求される高い感受性を提供する、モリキュラープローブズ(Molecular Probes)EnzChek(商標)コラゲナーゼアッセイキットを用いることによって測定した。EnzChekキットは、DQゼラチン(フルオレセイン結合ゼラチン)を含む。この基質は大半のゲラチナーゼおよびコラゲナーゼによって効率的に消化されて高蛍光性のペプチドを生成する。蛍光の増加はタンパク分解活性に比例し、蛍光マイクロプレートリーダーによりモニターできる。蛍光の減少はサンプルのコラゲナーゼ阻害活性に正比例する。アッセイに用いられるコラゲナーゼはクロストリジウム・ヒストリチクム(Clostridium histolyticum)から精製される。100μg/mLのDQゼラチンおよび30分のインキュベーション時間を用いれば、本アッセイによって最終濃度2 x 10-3U/mL(7ngタンパク質/mL)まで本酵素活性を検出できる(1ユニットは、37℃、pH5、5時間でコラーゲンから1μmoleのL-ロイシン等価物を遊離させるために必要な酵素量と規定される)。
適切な賦形剤(蛍光の強さに影響を与えないPBSまたは2%のDMSO)中の種々の濃度のオレアノイルペプチドを12.5μg/mLの基質、DQゼラチン(ブタ皮膚由来)、フルオレセイン結合物と10分間予備インキュベートし、続いてクロストリジウム・ヒストリチクム酵素由来コラゲナーゼIV型酵素の0.2U/mLを添加した。蛍光強度をマイクロプレートリーダーで30分後に測定した(Em:485nmおよびEx:520nm)。オレアノイルペプチドの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッド(Graphpad)プリズムソフトを用いてIC50として表される。コラゲナーゼの阻害パーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下におけるコラゲナーゼ活性による吸収;T=阻害物質存在下におけるコラゲナーゼ活性による吸収。
IC50値はコラゲナーゼ活性の50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好なコラゲナーゼ阻害潜在能力を示す。表1で、オレアノイルペプチドは、それぞれオレアノール酸、配列番号1のペプチドおよびPal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser(パルミトイル基が配列番号1に結合)と比較したとき顕著なコラゲナーゼ阻害活性を示す。
図2はオレアノイルペプチドの種々の濃度におけるコラゲナーゼ%阻害を示す。
【0031】
エラスターゼ阻害の潜在能力:
オレアノイルペプチドのエラスターゼ阻害潜在能力は、高処理様式で阻害性物質をスクリーニングするために要求される高い感受性を提供する、モリキュラープローブズ(Molecular Probes)EnzChek(商標)エラスターゼアッセイキットを用いることによって測定した。EnzChekキットは、DQエラスチン(フルオレセイン結合可溶性ウシ頸部靭帯エラスチン)を含む。この基質はエラスターゼによって効率的に消化されて高蛍光性のペプチドを生成する。蛍光の増加はタンパク分解活性に比例し、蛍光マイクロプレートリーダーによりモニターできる。蛍光の減少はサンプルのエラスターゼ阻害活性に正比例する。アッセイに用いられるエラスターゼはブタ膵臓から精製される。
適切な賦形剤(蛍光の強さに影響を与えないPBSまたは2%のDMSO)中の種々の濃度のオレアノイルペプチドを基質、25μg/mLのDQエラスチン(ウシ頸部靭帯由来)フルオレセイン結合物と10分間予備インキュベートし、さらに0.1U/mLのブタ膵臓エラスターゼ酵素を添加した。蛍光強度をマイクロプレートリーダーで30分後に測定した(Em:485nmおよびEx:520nm)。サンプルの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッド(Graphpad)プリズムソフトを用いてIC50として表される。エラスターゼの阻害パーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下におけるエラスターゼ活性による吸収;T=阻害物質存在下におけるエラスターゼ活性による吸収。
IC50値はエラスターゼ活性の50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好なエラスターゼ阻害潜在能力を示す。表1で、オレアノイルペプチドのIC50値(表1)は、前記がPal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser(パルミトイル基が配列番号1に結合)よりも良好なエラスターゼ阻害潜在能力を有することを明瞭に示している。オレアノール酸および配列番号1のペプチドはそれぞれエラスターゼ阻害を示さなかった。
図3はオレアノイルペプチドの種々の濃度におけるエラスターゼの%阻害を示す。
【0032】
コラーゲンの強化:
コラーゲンの強化は多様なストレス条件による皮膚の損傷の修復を促進する。
コラーゲンの強化は、細胞外マトリックスのコラーゲンI型およびコラーゲンIII型とより強い特異性で結合するシリウスレッド(Sirius Red)染料を用いることによって測定した。コラーゲンと結合する染料を溶解し、光学密度(OD)をフルオスター(Fluostar)オプチママイクロタイタープレートリーダーを用いて544nmで分光光度法により測定する。コラーゲンと結合した染料のODは細胞内のコラーゲン含有量と正比例する。
ヒトの骨に由来するヒト骨肉腫細胞をコラーゲン強化実験に用いた。前記細胞を24ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度で播種した。まず初めにコンフルエントな一層の細胞を、培養液中の種々の非毒性濃度のオレアノイルペプチドおよび賦形剤(コントロール)で処理した。各濃度について、4組ずつ維持し、‘n’値が8となるように解析を2回実施した。サンプルの処理後、細胞をCO2インキュベーターで48時間インキュベートした。続いて前記細胞をシリウスレッド染色技術でデベロップし、コラーゲン強化を解析した。細胞をPBSで十二分に洗浄した。各ウェルにつき1mLのブアン(Bouin’s)液(1.3%ピクリン酸、35%ホルムアルデヒドおよび氷酢酸を15:5:1の割合で含む)を用いRTで1時間インキュベートすることによって、前記細胞をブアン液で固定した。続いて前記固定液をマイクロピペットで吸引することにより除去し、細胞を流水で15分間洗浄した。培養プレートを風乾した後、1.3%のピクリン酸中の0.1%シリウスレッド染料を用いて細胞を染色した。ウェル当たり1mLのシリウスレッド染料を添加し、オービテック(Orbitek)シェーカーにて70RPMでおだやかに振盪しながらRTで1時間インキュベートした。続いて染料を吸引によって除去し、さらに細胞を0.01NのHClで十二分に洗浄して未結合色素を除去した。続いて、コラーゲンと結合した色素を、オービテックシェーカーにて70RPMでおだやかに振盪しながらウェルにつき0.2mLのNaOH(0.1N)に30分間RTで溶解させた。続いて色素を96ウェルのマイクロプレートに移し、フルオスター・オプチママイクロプレートリーダーを用いODを544nmで読み取った。
非処理細胞に対するコラーゲンのパーセンテージ強化は、非処理細胞のODを正常条件下での最適値として以下のように算出される:
細胞増殖の%強化=[(100/C) x T] − 100
式中、C=非処理細胞におけるコラーゲンによる吸収;T=サンプル処理細胞におけるコラーゲンによる吸収。
以下が観察された:オレアノイルペプチドは1.25ppmで17%のコラーゲン強化を示し、Pal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser(パルミトイル基が配列番号1に結合)は1.25ppmで11%のコラーゲン強化を示し、配列番号1のペプチドは1.25ppmで5%のコラーゲン強化を示し、一方、オレアノール酸は強化を全く示さなかった。オレアノイルペプチドが他のものと比較してより良好なコラーゲン強化を示すことは明白である。
【0033】
抗酸化潜在能力:
DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)スカベンジングアッセイ:
DPPHアッセイは、遊離ラジカルを除去する抗酸化剤の能力を判定するためにしばしば用いられる(遊離ラジカルは、酸化ストレスによって引き起こされる生物学的損傷の主要要因であることが判明している)。本アッセイは、被検化合物の抗酸化能力に関して信頼できる情報を提供することが知られている。本アッセイは、安定な遊離ラジカルDPPHが抗酸化剤によってクェンチングされる際の前記ラジカルの紫から黄色への色の変化を基準にする。
1.5mLのDPPHメタノール溶液(0.1mM)および合計体積3mLの種々の濃度のサンプルを含むアッセイ混合物のチューブを37℃の振盪水浴中で30分間インキュベートした。吸収の減少(ラジカルの除去と正比例する)を517nmで分光光度法により測定する。サンプルの用量依存遊離ラジカルスカベンジング活性を計算し、結果はグラフパッドプリズムソフトを用いてSC50値として表される。スカベンジングのパーセンテージは以下のように算出される:
%スカベンジング=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下における吸収;T=阻害物質存在下における吸収。
SC50値は、遊離ラジカルの50%スカベンジングに必要な濃度で、したがってSC50値が低ければ低いほど抗酸化潜在能力が高いことを示す。表1から、オレアノイルペプチドのみがDPPHスカベンジング活性を示すことは明白である。
【0034】
抗炎症性潜在能力:
TNFα阻害潜在能力:
TNFα阻害実験のために、ヒトの全血が用いられる。全血アッセイでは、単球がリポ多糖類(LPS)刺激によるTNF-αの主要供給源であるようである。単球およびマクロファージは、好酸球、マスト細胞、末梢リンパ球および顆粒球のような他の細胞タイプに加えてTNF-αの主要な供給源である。炎症性細胞の活性化は、c-AMPの細胞内レベルによって影響を受ける(c-AMPはホスホジエステラーゼイソ酵素によって調節される)。LPSはヒト血液におけるTNF-α生成のもっとも強力な刺激である。刺激後、本アッセイは定量的サンドイッチ酵素免疫アッセイ技術を利用する。TNF-α特異的モノクローナル抗体でマイクロプレートは事前に被覆される。サンプルに存在するTNF-αは前記固定抗体と結合する。一切の未結合物質を洗い流した後、TNF-αに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体を添加する。一切の未結合抗体-酵素試薬を除去するために洗浄した後で、基質溶液をウェルに添加する。最初の工程で結合したTNF-αの量に比例して発色が生じる。発色を停止させ、色の強度はTNF-α含有量と正比例する。
健康なドナー由来のヘパリン化血液を10%のFBSを含むRPMI1640培養液で1:3に希釈した。適切な賦形剤(PBSまたは0.1%のDMSO)中の種々の濃度のオレアノイルペプチドとともに希釈血液サンプルを37℃で1時間、5%CO2を含むインキュベーターで予備インキュベートした。0.1% DMSOは水に不溶なサンプルのための賦形剤として用いられた。予備インキュベーションの後で、マクロファージからTNFαを遊離させるために1ng/mLのLPSでこの全血細胞を37℃で5時間5%CO2を含むインキュベーターでインキュベートすることによって刺激した。続いて、サンプルを3分間4℃で3000gにて遠心し、上清をTNFαELISAキットの使用によりTNFα含有量についてアッセイした。全チューブから200μLの上清をマイクロタイタープレートの対応するウェル(マウスモノクローナル抗体で予め被覆したマイクロプレート)に移し、続いて全ウェルに50μLのアッセイ希釈液を加えた。室温で2時間インキュベートした後、提供された洗浄緩衝液でウェルを完全に洗浄し、続いて200μLのコンジュゲートを各ウェルに添加した。このプレートを室温で2時間インキュベートした。再度洗浄した後、200μLの基質溶液を各ウェルに添加し、さらに室温で20分インキュベートした。50μLの停止溶液を各ウェルに添加した(前記停止溶液は青から黄色への色の変化をウェルで引き起こすであろう)。光学密度を450nmで読み取り(前記光学密度はTNFα含有量に正比例する)、サンプル処理によるTNFα含有量の抑制パーセンテージを非処理細胞のそれに対して計算した。サンプルの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッドプリズムソフトを用いてIC50値として表した。エラスターゼの阻害パーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C-T)/C] x 100
式中、C=阻害物質非存在下におけるTNFαによる吸収;T=阻害物質存在下におけるTNFαによる吸収。
IC50値はTNFαの50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好TNFα阻害潜在能力を示す。
上記の手順はまた、オレアノイルペプチドによるLTB4阻害の決定にも踏襲される。表1の結果から、オレアノイルペプチドは良好なTNFαおよびLTB4阻害物質であることは明白である。
図4はオレアノイルペプチドの種々の濃度におけるTNFα阻害を示す。
【0035】
表1:オレアノイルペプチドのアンチエージング潜在能力に関するin vitro実験

【0036】
オレアノイルペプチドはまたIL-1β発現の阻害を示した。表示された最大阻害は、1μg/mLの濃度でIL-1β発現の31.78%阻害であった(表2、図5)。
LPSでチャレンジしたヒトの好中球で観察実験を実施した。細胞培養上清の測定によって、4μg/mLで28.03%という顕著なIL-6発現の低下が明らかになった(表3、図6)。100μg/mLの用量レベルのロリプラムを実験設計の信頼性および再現性の確認のために標準薬剤として用いた。
オレアノイルペプチドをNOおよびPGE2発現についてもまたスクリーニングした。前記は、2μg/mLの濃度で最大31.85%および50.00%のNOおよびPGE2発現阻害を示した(表4、図7;表5、図8)。
TNFα、IL-1β、IL-6、LTB4、NOおよびPGE2のような炎症マーカーを抑制するオレアノイルペプチドの能力は、炎症に起因する皮膚加齢の治療におけるその役割の指標となる。
【0037】
表2:ヒト好中球の細胞外インターロイキン-1ベータ(IL-1β)発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:IL-1β発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【0038】
表3:ヒト好中球の細胞外インターロイキン-6(IL-6)発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:IL-6発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【0039】
表4:ヒト好中球の細胞外プロスタグランジンE2(PGE2)発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:NO発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【0040】
表5:ヒト好中球の細胞外酸化窒素発現に対する段階的用量のオレアノイルペプチドの(OP)の影響

観察数−3;LPSコントロール:リポ多糖類コントロール;↓:NO発現の阻害;P値:*<0.01、**<0.001
【実施例3】
【0041】
ヒトに対するオレアノイルペプチドの影響に関する実験
ヒトの皮膚に対するオレアノイルペプチドの潜在的な影響を調べるために、中等度から重度の加齢徴候を有する約30歳から60歳の年齢範囲の候補者を院内で選別した。オレアノイルペプチド(0.01%)を含む局所組成物が皮膚塗布用クリームとして調製された。
このオレアノイルペプチド含有クリームを前記候補者の顔面皮膚の罹患領域に1日2回、3週間の間連続して塗布した。前記候補者の写真をクリーム適用前および3週間後に撮影した。
図9(a)および9(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後にしわが軟化したことは明白である。
図10(a)および10(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後に皮膚の厚さが改善されたことは明白である。
図11(a)および11(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後に過剰な色素沈着が減少したことは明白である。
図12(a)および12(b)は、オレアノイルペプチドの適用前および適用後に撮影した候補者の写真である。オレアノイルペプチドの適用後に眼の下のくまが減少したことは明白である。
これらいずれの証拠も、オレアノイルペプチドの多機能性アンチエージング潜在能力を明白に示している。
【実施例4】
【0042】
オレアノイルペプチドおよび成分または植物抽出物を含む組成物の調製
本発明のある実施態様では、多様な成分および植物抽出物がオレアノイルペプチドと組み合わせて用いられる。個々の成分は、コナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびテトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体を含む群から選択される。これらの成分は、それぞれ別個にまたは組み合わせてオレアノイルペプチドとともに用いられる。前記成分の乾燥粉末およびオレアノイルペプチドの乾燥粉末を既定の比率で混合し、水または任意の他の溶媒に溶解して組成を完成させる。オレアノイルペプチドとともに用いられる各成分は、皮膚の加齢の具体的な徴候を治療する顕著な活性を示す。
皮膚若返りを強化するオレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物
Swiss 3T3マウス線維芽細胞を細胞増殖実験に用いた。細胞を96ウェルプレートの各ウェルにつき3000細胞の播種密度でDMEM培養液中に播種した。コンフルエントな一層のSwiss 3T3線維芽細胞を、FBSを含まない培養液中の種々の非毒性濃度のサンプル(オレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物)および賦形剤(コントロール)で処理した。各濃度について、6組ずつ維持し、‘n’値が12となるように解析を2回実施した。サンプルの処理後、細胞をCO2インキュベーターで72時間インキュベートした。続いて前記細胞をNRU染色技術でデベロップし、細胞の生存活性を解析した。予め温めたDMEM培養液で調製した中性赤の0.003%溶液とともに細胞を37℃で3時間 CO2インキュベーターにてインキュベートした。過剰な色素をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗い流した。リソソームの色素を、25mLの水、24.5mLのエタノールおよび0.5mLの氷酢酸から成るデベロッパー溶液100μLでRTにて20分抽出した。フルオスター・オプチママイクロプレートリーダーを用い光学密度(OD)を492nmで読み取った。
非処理細胞に対する細胞増殖強化パーセンテージは、非処理細胞のODを正常条件下での最適値として以下のように算出される:
細胞増殖の%強化=[(100/C) x T] − 100
式中、C=非処理細胞における細胞増殖による吸収;T=サンプル処理細胞における細胞増殖による吸収。
表6および図13に表した結果は、細胞増殖がオレアノイルペプチドおよびココナッツ液状内乳を含む組成物で処理された細胞で顕著に強化されることを示し、したがって組成物が皮膚の若返りに有用であることを表示している。
【0043】
表6

【0044】
UV B防御有効性強化のためのオレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物
Swiss 3T3マウス線維芽細胞をUV防御実験に用いた。細胞を96ウェルプレートの各ウェルにつき3000細胞の播種密度で播種した。まず初めに、コンフルエントな一層のSwiss 3T3線維芽細胞を、培養液中の種々の濃度のサンプル(オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物)および賦形剤(コントロール)で処理し、さらに0.036 J cm-2のUV B照射に曝露して、サンプルが最大のUV防御を提供する最大非細胞傷害濃度を決定した。0.036 J cm-2を、防御が存在しない細胞培養に対して約50%の細胞死を引き起こすために必要なUV線量として標準化した。サンプルの細胞傷害性潜在能力の観察にのみ供され得るコントロールプレートもまた、UV照射を実施しないで同様な条件下で維持した。各濃度について、6組ずつ維持し、‘n’値が12となるように解析を2回実施した。UV照射後、サンプルを含まない新しい培養液に交換し、前記細胞をCO2インキュベーターで48時間インキュベートした。続いて前記細胞をNRU染色技術でデベロップし、細胞の生存活性を解析した。予め温めたDMEM培養液で調製した中性赤の0.003%溶液とともに細胞を37℃で3時間 CO2インキュベーターにてインキュベートした。過剰な色素をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗い流した。リソソームの色素を、25mLの水、24.5mLのエタノールおよび0.5mLの氷酢酸から成るデベロッパー溶液100μLでRTにて20分抽出した。マイクロプレートリーダーを用い光学密度(OD)を492nmで読み取った。
UV誘発細胞傷害性パーセンテージの低下、すなわちUV防御のパーセンテージは、サンプルの存在下および非存在下における非照射細胞の細胞傷害性と比較して照射細胞の細胞傷害性に関して算出した。
サンプル非処理細胞における%UV誘発細胞傷害性(U1)=[(C1−T1)/C1] X 100
式中、C1=非照射細胞における細胞生存活性による吸収;T1=UV照射細胞における細胞生存活性による吸収。
サンプル処理細胞における%UV誘発細胞傷害性(U2)=[(C2−T2)/C2] X 100
式中、C2=非照射サンプル処理細胞における細胞生存活性による吸収;T2=UV照射サンプル処理細胞における細胞生存活性による吸収。
%UV防御=[(U1−U2)/U1] X 100
式中、U1=サンプル非処理細胞における%UV誘発細胞傷害性;U2=サンプル処理細胞における%UV誘発細胞傷害性。
表7および図14に表した結果は、オレアノイルペプチドおよびアムラ抽出物を含む組成物はUV防御を提供することを示し、したがって組成物がUV損傷から皮膚を防御する際に有用であることを示している。
【0045】
表7

【0046】
メラニン阻害強化のためのオレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/テトラヒドロクルクミノイド(THC)を含む組成物
B16F1マウスメラノーマ細胞を6ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにつき2mLのDMEM培養液にて5000細胞/ウェルの播種密度で播種した。CO2インキュベーターで24時間インキュベートした後、培養液を∝-MSH含有培養液で交換することによりメラニンを0.1nMの∝-MSHで誘発する。続いて、9日間にわたって∝-MSH含有培養液およびサンプルを規則的に3日間隔で補充しながら、種々の濃度のサンプル(オレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/THCを含む組成物)で前記細胞を処理した。コントロールウェルは、サンプル調製のために用いた賦形剤だけを用いサンプルで処理しないで維持した。インキュベーション時間の後で、培養液を除去し、細胞をはぎ取り、PBSで洗浄した。その後、メラニンを沸騰水浴中で5分間1N NaOHにより抽出した。メラニン抽出物の吸収はマイクロプレートリーダーにおいて405nmで読み取った。サンプルの阻害作用はメラニン形成の低下を基準に算出した。サンプルの用量依存阻害活性を計算し、結果はグラフパッドプリズムソフトを用いIC50値として表す。メラニン阻害のパーセンテージは以下のように算出される:
%阻害=[(C−T)/C] X 100
式中、C=阻害物質非存在下でのメラニンによる吸収;T=阻害物質存在下でのメラニンによる吸収。
IC50値は、メラニン形成の50%阻害に必要な濃度であり、したがってIC50値が低ければ低いほど、より良好なメラニン阻害潜在能力を示す。表8および図15から、オレアノイルペプチドおよびスチルベン/カンゾウ抽出物/THCを含む組成物のIC50値は、個々の作用物質のIC50値よりも顕著に低く、したがって活性の強化を提供することは明白である。
【0047】
表8

【0048】
ペプチドの配列表は添付の付属物1に含まれ、前記はまたファイル名sequencelistcip.txtとしてEFSウェブにより提出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の加齢を治療する方法であって、前記方法が以下の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物で皮膚を治療する工程を含む、前記治療方法。
【化1】

構造I
【請求項2】
組成物が場合によって、コナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スチルベンが、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が局所的に適用され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群から選択される形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
下記の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド並びに皮膚科学的に許容できる賦形剤中で処方される、日光遮蔽物、スキンライトニング剤、スキンタンニング剤、抗酸化剤、香料、乳濁化剤、保存料、着色剤、乳化剤、膨張剤および緩衝剤を含む群から選択されるさらに別の1つまたは2つ以上の付加物を含む組成物。
【化2】

構造I
【請求項6】
組成物が場合によって、コナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
スチルベンが、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が局所適用のために処方され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群からから選択される形態で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
以下の構造Iで表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド。
【化3】

構造I
【請求項10】
脱水反応による配列番号1のペプチドとオレアノール酸とのカップリングによって合成される、請求項9に記載のオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド。
【請求項1】
皮膚の加齢を治療する方法であって、前記方法が以下の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチドを含む組成物で皮膚を治療する工程を含む、前記治療方法。
【化1】

構造I
【請求項2】
組成物が場合によって、コナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スチルベンが、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が局所的に適用され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群から選択される形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
下記の構造Iによって表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド並びに皮膚科学的に許容できる賦形剤中で処方される、日光遮蔽物、スキンライトニング剤、スキンタンニング剤、抗酸化剤、香料、乳濁化剤、保存料、着色剤、乳化剤、膨張剤および緩衝剤を含む群から選択されるさらに別の1つまたは2つ以上の付加物を含む組成物。
【化2】

構造I
【請求項6】
組成物が場合によって、コナッツ液状内乳、アムラ抽出物、スチルベンまたはその誘導体、テトラヒドロクルクミノイドまたはその誘導体、カンゾウ抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される成分または植物抽出物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
スチルベンが、オキシレスベラトロール、プテロスチルベン、レスベラトロール、3-ヒドロキシプテロスチルベンおよびそれらの組合せから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が局所適用のために処方され、さらにクリーム、ローション、ゲル、乳液、パッチおよびリキッドを含む群からから選択される形態で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
以下の構造Iで表されるオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド。
【化3】

構造I
【請求項10】
脱水反応による配列番号1のペプチドとオレアノール酸とのカップリングによって合成される、請求項9に記載のオレアノール酸と結合した配列番号1のペプチド。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【公開番号】特開2012−140428(P2012−140428A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−290738(P2011−290738)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(501394435)サミ ラブズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−290738(P2011−290738)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(501394435)サミ ラブズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]