説明

オレフィンとアンモニアとの反応によるアルキルアミンの製造法

オレフィンをアンモニアとか焼されたゼオライト触媒のヒドロアミノ化条件下で断熱的に運転される反応器ユニット中で反応させることによってアルキルアミンを製造する方法が提案されており、この方法は、出発オレフィン、アンモニアおよび相応するアルキルアミンを含有する反応混合物を、1つ以上の位置で取り出し、反応混合物が取り出された位置に比べてそれぞれよりいっそう低い濃度のアルキルアミンを有する反応器ユニット中の1つの位置または複数の位置で反応混合物と間接的に熱接触させることによって特徴付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンをアンモニアとか焼されたゼオライト触媒のヒドロアミノ化条件下で断熱的に運転される反応器ユニット中で反応させることによるアルキルアミンの製造法に関する。
【0002】
オレフィンへのアンモニアの付加は、発熱を伴ない;したがって、価値のある生成物のアルキルアミンの方向への平衡の移動のためには、低い温度が必要とされる。しかし、低い温度の場合、反応速度は、僅かである。従って、比較的低い温度の場合でも十分な反応速度を保証する触媒が追求された。平衡状況のためには、低い温度と共に高い圧力が好ましいので、一般には、しばしば40〜500バールの範囲内、有利に150〜300バールの過圧で作業される。変換率および選択度に最適な温度状況は、オレフィンおよび使用される触媒の性質に依存し、多くの場合には、230〜320℃の範囲内にある。しかし、高められた圧力下で最適な温度の場合であっても、反応器を通しての1回の通過の場合には、5〜20%、しばしば10〜15%の変換率が達成可能であるにすぎない。
【0003】
オレフィンをアンモニアとか焼されたゼオライト触媒で反応させることによるアルキルアミンの製造法は、例えば欧州特許出願公開第132736号明細書、欧州特許出願公開第752409号明細書、欧州特許出願公開第822179号明細書または米国特許第6809222号明細書中に記載されている。
【0004】
これに対して、本発明の課題は、オレフィンの収量を工業的に簡単な方法で上昇させることができる方法を提供することであった。殊に、反応混合物が貫流する内部装置容積が言うに値するほど減少することなく、即ち最大で10%減少し、殊に外部冷却剤のための組込み物が必要とされることなく、存在する高圧反応器を簡単に増強できるはずである。
【0005】
解決は、オレフィンをアンモニアとか焼されたゼオライト触媒のヒドロアミノ化条件下で断熱的に運転される反応器ユニット中で反応させることによるアルキルアミンの製造法から出発する。
【0006】
本発明は、出発オレフィン、アンモニアおよび相応するアルキルアミンを含有する反応混合物を、1つの位置または複数の位置で取り出し、反応混合物が取り出された位置に比べてそれぞれよりいっそう低い濃度のアルキルアミンを有する反応器ユニット中の1つの位置または複数の位置で反応混合物と間接的に熱接触させることによって特徴付けられる。
【0007】
反応器ユニットの1つの適当な位置または複数の適当な位置の反応混合物を利用し、間接的な熱交換によって、この反応混合物を1つの適当な位置または複数の適当な位置で冷却し、この場合には、常によりいっそう低い濃度のアルキルアミンを有する反応混合物を利用し、間接的な熱交換によって、よりいっそう高い濃度のアルキルアミンを有する反応混合物を冷却することにより、断熱的な反応の実施を有するアルキルアミンの製造方法でオレフィンの変換率を上昇させることが可能であることが見い出された。
【0008】
実際に、この特殊な方法実施の場合には、供給流と取り出される生成物混合物との間の温度差は、反応熱によって惹起される断熱的な温度上昇に相当するが、しかし、反応器出口温度は、最大の反応温度より明らかに低い。
【0009】
特に好ましい変法において、出発オレフィン、アンモニアおよび相応するアルキルアミンを含有する反応混合物は、反応器の流動路の中央部で反応器ユニットによって転向され、反応器中の流動路の中央部にまで導かれる反応混合物との間接的な熱接触で向流で導かれる。この方法実施の場合、反応器中の最大温度は、反応混合物の出口で達成されるのではなく、反応器の流動路の中央部で反応器によって達成される。
【0010】
第1の反応器ユニットから出る反応混合物は、有利に1つの他の反応器ユニット中に導入されてもよいし、複数の他の反応器ユニット中に導入されてもよく、この他の反応器ユニットは、第1の反応器ユニットと同様に構成されている。個々の順次に接続された反応器ユニットは、唯一の圧力支持性スリーブ中に配置されていてよい。
【0011】
2個以上の反応器ユニットが設けられていることよって、僅かな長さおよび相応する低い圧力損失を有する個々の反応器ユニットを設計することができる。
【0012】
オレフィンとアンモニアとの反応のためには、最初に公知方法で、即ちアンモニアとオレフィンとを1:1〜10:1、有利に1:1〜5:1のモル比で混合し、反応を固定床反応器または渦動床反応器中で40〜500バール、有利に150〜300バールの圧力および80〜400℃、有利に230〜320℃の温度で気相中または過臨界状態で実施することが設けられている。
【0013】
本方法の1つの実施態様は、アンモニアをオレフィンと一緒に1:1〜5:1のモル比で混合し、か焼されたゼオライト触媒を含む固定床反応器に供給し、40〜500バール、有利に150〜310バール、殊に200〜280バールの圧力および200〜350℃、有利に230〜320℃の温度で単相状態で反応させることにある。
【0014】
オレフィンとしては、殊に線状または分枝鎖状の脂肪族C3〜C5−オレフィンを使用することができる。好ましいオレフィンエダクトは、ブテンおよび殊にイソブテンである。相応して、アンモニアおよびイソブテンから出発する特に好ましいヒドロアミノ化生成物として第三ブチルアミンが得られる。
【0015】
本発明による方法においては、か焼されたゼオライト触媒が使用される。これは、触媒の活性物質がゼオライトから構成されていることを意味する。通常、ゼオライト触媒は、触媒成形体の製造に必要とされる結合剤をさらに含有する。触媒成形体を相応する成形材料から製造する場合には、通常、乾燥後になおか焼される。
【0016】
この場合には、一般に400℃を上廻る温度が必要とされ、それによって結合材料は硬化する。最大温度は、550℃を上廻る温度で結晶度を失なうゼオライトの安定性によって制限されている。か焼は、大工業的に回転管中で400〜550℃の範囲内の温度および1〜4時間の滞留時間で実施される。実験室内では、通常、炉内で480〜520℃の温度および2〜16時間の期間で作業される。
【0017】
オレフィンをアンモニアおよび/または第1アミンでヒドロアミノ化するのに適した触媒は、ゼオライト、殊にフォージャサイト、例えばX型ゼオライト、Y型ゼオライトおよびUSY型ゼオライト、エリオナイト、チャバサイト、モルデナイト、オフレタイト、クリノプチオライト(Clinoptiolith)、ペンタシル、例えばZSM−5およびZBM−10、ZSM−11、ZSM−12、MCM−22、MCM−41、MCM−48、MCM−49、MCM−56、EMT、SSZ−26、SSZ−33、SSZ−37、CIT−1、PSH−3、NU−85、ベータ型ならびにホウ素含有型、例えばZBM−11、H−ホウ素−ZSM−5、H−ホウ素−ベータ、H−ホウ素−ZSM−11ならびにガリウム含有型またはチタン含有型である。
【0018】
この触媒は、大きな面積と組み合わされた、多数の触媒活性中心によって優れている。
【0019】
記載されたゼオライトは、製造後の後処理のタイプおよび種類で区別される(例えば、熱処理、脱アルミ化、酸処理、金属イオン交換等)。
【0020】
適当なゼオライトの例は、米国特許第4375002号明細書、米国特許第4536602号明細書、欧州特許出願公開第305564号明細書、欧州特許出願公開第101921号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第4206992号明細書中に見出される。
【0021】
場合によっては記載されているようにアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属でドープされていてよい珪酸ホウ素ゼオライト、珪酸ガリウムゼオライト、アルミノ珪酸塩ゼオライトおよび珪酸鉄ゼオライトが重要である、欧州特許出願公開第133938号明細書、欧州特許出願公開第431451号明細書および欧州特許出願公開第132736号明細書の記載から公知のゼオライトが適している。
【0022】
更に、例えば5Åを上廻る孔径を有する一定の組成の結晶性アルミノ珪酸塩として定義されている、カナダ国特許第2092964号明細書の記載から公知のベーターゼオライトも適している。
【0023】
好ましくは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19530177号明細書中に記載されているような金属変性されたかまたはハロゲン変性されたベーターゼオライトが使用される。
【0024】
殊に、例えば欧州特許出願公開第132736号明細書中に開示されているような、10以上のSiO2/Al23モル比を有するペンタシル型のゼオライト触媒も適している。
【0025】
燐酸アルミニウムおよびシリコ−アルミニウム燐酸塩(Silico-Alumophosphate)の中には、ゼオライト構造またはゼオライト類似の構造を有する結晶系、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19601409号明細書中に記載されているようなSAPO−37、AIPO4−5、SAPO−5が含まれるが、しかし、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第4431093号明細書中に記載されているような非晶質系も含まれる。前記系は、一般に式Al23*P25*xSiO2を有する。
【0026】
触媒は、粉末の形で使用されてもよいし、有利に成形体、例えば球体、ストランド形、タブレット形または砕石形として使用されてもよい。成形のために、成形すべき組成物に対して結合剤10〜60質量%が添加されてよい。結合剤として、種々の酸化アルミニウム、有利にベーム石、25:75〜95:5のSiO2/Al23モル比を有する非晶質アルミノ珪酸塩、二酸化珪素、有利に高分散性SiO2、例えばシリカゾル、高分散性SiO2と高分散性Al23との混合物、高分散性TiO2ならびに粘土が適している。
【0027】
変形後、押出品または圧縮品は、有利に80〜150℃で1〜16時間乾燥され、300〜500℃で1〜16時間か焼され、この場合か焼は、活性化と同様に直接にヒドロアミノ化反応器中で行なわれてもよい。
【0028】
一般に触媒は、H形で使用される。しかし、その上、選択性、可使時間および可能な触媒再生の回数の増大のためには、触媒上で種々の変性が行なわれてよい。
【0029】
触媒の変性は、変形されていない触媒をアルカリ金属、例えばNaおよびK、アルカリ土類金属、例えばCaおよびMg、遷移金属、例えばMn、Fe、Mo、Cu、ZnおよびCr、貴金属および/または希土類金属、例えばLa、CeおよびYでドーピングすることにある。
【0030】
好ましい触媒の実施態様は、変形された触媒およびか焼された触媒を流動管中に装入し、20〜100℃で例えば上記金属のハロゲン化物、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩または硝酸塩を溶解した形で前記触媒の上方に導くことにある。この種のイオン交換は、例えば、触媒の水素型、アンモニウム型およびアルカリ金属型上で行なわれることができる。
【0031】
触媒上への金属の施与の別の方法は、ゼオライト材料を例えば上記金属のハロゲン化物、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、硝酸塩または酸化物で水溶液中またはアルコール性溶液中で含浸させることにある。
【0032】
イオン交換ならびに含浸には、乾燥、選択的に再度のか焼が引き続くことができる。金属でドープされた触媒の場合には、水素および/または水蒸気での後処理が有利である。
【0033】
触媒の変性のもう1つの方法は、不均一系触媒材料[変形されたかまたは変形されていない]を、酸、例えば塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、リン酸(H3PO4)、硫酸(H2SO4)、シュウ酸(HO2C−CO2H)またはこれらの混合物での処理にかけることにある。
【0034】
特殊な実施態様は、触媒粉末を変形前にフッ酸(0.001〜2モル、有利に0.05〜0.5モル)で還流下に1〜3時間、処理することにある。濾別および洗浄除去の後、一般に100〜160℃で乾燥され、400〜550℃でか焼される。
【0035】
更に、特殊な実施態様は、結合剤での不均一系触媒の変形後の不均一系触媒のHCl処理にある。この場合、不均一系触媒は、一般に60〜80℃の温度で1〜3時間、3〜25%の、殊に12〜20%の塩酸で処理され、引続き洗浄除去され、100〜160℃で乾燥され、400〜550℃でか焼される。
【0036】
前記触媒の変性の別の方法は、アンモニウム塩、例えばNH4Cl、またはモノアミン、ジアミンまたはポリアミンとの交換である。この場合、結合剤で変形された不均一系触媒は、一般に60〜80℃で10〜25%の、有利に約20%のNH4Cl溶液で2時間連続的に質量的に1:15の不均一系触媒/塩化アンモニウム溶液中で交換され、その後に100〜120℃で乾燥される。
【0037】
更に、アルミニウム含有触媒上で行なうことができる変性は、アルミニウム原子の一部分がケイ素によって置換されるかまたは触媒が例えば熱水処理によって触媒のアルミニウム含量が減損されることによる脱アルミニウムである。熱水による脱アルミニウムに続いて、有利には酸または錯化剤での抽出が行なわれ、形成された非格子アルミニウムが除去される。ケイ素によるアルミニウムの置換は、例えば(NH42SiF6またはSiCl4を用いて行なわれてよい。Y型ゼオライトの脱アルミニウムの例は、Corma他, Stud. Surf. Sci. Catal. 37 (1987), 第495〜503頁に見出される。
【0038】
触媒は、例えば1〜4mmの直径を有するストランドとしてかまたは例えば3〜5mmの直径を有するタブレットとしてオレフィンのヒドロアミノ化に使用されることができる。
【0039】
反応器ユニットは、一般に組込み物を備えている反応器、好ましくはシャフト型装置である。組込み物は、冷たい反応混合物と熱い反応混合物とが間接的な熱接触で向流で互いに接して通り過ぎて導かれるように構成されている。
【0040】
組込み物は、互いに接して管束または分離薄板としてシャフト型装置中に構成されていてよい。
【0041】
特に好ましくは、組込み物は、反応混合物のための熱輸送路が3〜15mm、殊に5〜10mmであるように設計されている。
【0042】
この場合、熱輸送路は、管束の構造的変形で管内径に相当し、分離薄板での変形では、2枚の連続した分離薄板の間隔に相当する。
【0043】
次に、本発明を実施例によって詳説する。
【0044】
1つのシミュレーションで、第三ブチルアミンをイソブテンおよびアンモニアからゼオライト触媒で280バールの反応圧力および断熱的な反応条件下で反応混合物の冷却なしに製造する方法でのイソブテンの達成可能な最大変換率(比較のため)と、第三ブチルアミンをイソブテンおよびアンモニアからゼオライト触媒で280バールの反応圧力および断熱的な反応条件下で反応混合物の冷却を伴なって、反応器の流動路の中央部での反応器ユニットによる反応混合物の転向および流動路の第1の半分で反応器によって循環される反応媒体との間接的な熱交換によって製造する方法でのイソブテンの達成可能な最大変換率(本発明に相当する)とを比較した。
【0045】
エダクト流のための使用温度は、それぞれ変換に最適化されており、即ち最大で達成可能な変換が達成されるような使用温度が選択され、実際に比較による方法のために253℃の入口温度または本発明による方法のために245℃の入口温度が選択された。本発明による方法のための16.8%の変換率と比較して、比較による方法においては、15.8%のイソブテンの変換率が達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンをアンモニアとか焼されたゼオライト触媒のヒドロアミノ化条件下で断熱的に運転される反応器ユニット中で反応させることによってアルキルアミンを製造する方法において、出発オレフィン、アンモニアおよび相応するアルキルアミンを含有する反応混合物を、1つ以上の位置で取り出し、反応混合物が取り出された位置に比べてそれぞれよりいっそう低い濃度のアルキルアミンを有する反応器ユニット中の1つの位置または複数の位置で反応混合物と間接的に熱接触させることを特徴とする、アルキルアミンを製造する方法。
【請求項2】
オレフィンをアンモニアとか焼されたゼオライト触媒のヒドロアミノ化条件下で断熱的に運転される反応器ユニット中で反応させることによってアルキルアミンを製造する方法において、出発オレフィン、アンモニアおよび相応するアルキルアミンを含有する反応混合物を、反応器の流動路の中央部で反応器ユニットによって転向させ、反応器ユニット中の流動路の中央部にまで導かれる反応混合物との間接的な熱接触で向流で導くことを特徴とする、アルキルアミンを製造する方法。
【請求項3】
複数の反応器ユニットが順次に接続される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
オレフィンがC3〜C5−オレフィンから選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オレフィンがイソブテンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
反応器ユニットが組込み物を備えたシャフト型装置である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
組込み物が管束または分離薄板である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
組込み物中の熱輸送路が3〜15mmである、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
熱輸送路が5〜10mmである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
熱輸送路が管束の管の内径に相当するかまたは2枚の連続した分離薄板の間隔に相当する、請求項8または9記載の方法。

【公表番号】特表2009−512725(P2009−512725A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537064(P2008−537064)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067602
【国際公開番号】WO2007/048753
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】