説明

オレフィンの乳化重合法

キノイド化合物と、金属化合物と、少なくとも1種の極性基で置換されたホスフィン化合物とを反応させ、次いでこの反応生成物を使用して、オレフィンを水中で又は少なくとも50質量%の水及び少なくとも1種の乳化剤を含有する溶剤混合物中で重合又は共重合させることによる、1種又は複数種のオレフィンの乳化重合法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の説明
本発明は、1種又は複数種のオレフィンを乳化重合するにあたり、一般式Ia又はIb
【0002】
【化1】

[式中、Rは、それぞれ、以下の1種又は複数種の基:
水素、
ハロゲン、
ニトリル、
〜C12−アルキル基、C〜C12−アルコキシ基、C〜C15−アラルキル基、C〜C14−アリール基(これらは非置換か又はC〜C12−アルキル基、ハロゲン、C〜C12−アルコキシ基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C12−チオエーテル基、塩の形で存在してもよいカルボキシ基又はスルホ基で置換されている)、並びに水素及び/又はC〜C12−アルキル基を有するアミノ基、
アミノ基NR[式中、R及びRは、一緒に又は別々に、水素、C〜C12−アルキル基、C〜C15−アラルキル基及びC〜C14−アリール基(これらは非置換か又はC〜C12−アルキル基、ハロゲン、C〜C12−アルコキシ基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C12−チオエーテル基、塩の形で存在してもよいカルボキシ基又はスルホ基で置換されている)、並びに水素及び/又はC〜C12−アルキル基を有するアミノ基であり、これらは飽和又は不飽和の5〜10員環を付加的に形成してもよい]であり、
かつ、同じか又は異なる一般式Ia及びIbの化合物は、場合により1種又は複数種のC〜C12−アルキレン橋、C〜C12−アルキル化アゾ橋又は一般式II
【0003】
【化2】

[式中、Yは、ケイ素か又はゲルマニウムであり、かつR及びRは、水素及び/又はC〜C12−アルキル基である]の橋によって架橋されていてもよい]のキノイド化合物若しくは少なくとも2種の化合物Ia又はIbの混合物と、
ホスフィン化合物と、
一般式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2
[式中、置換基及び変数は、以下に定義するとおりである:
Mは、元素周期系7〜10族の遷移金属であり、
は、ホスファン(RPH3−x又はアミン(RNH3−x、基Rは同じか又は異なっている、エーテル(RO、水、アルコール(R)OH、ピリジン、式C5−x(RNのピリジン誘導体、一酸化炭素、C〜C12−アルキルニトリル、C〜C14−アリールニトリル又はエチレン性不飽和二重結合系であり、その際、xは、0〜3の整数である、
は、水素、C〜C12−アルキル基、これらはそれ自体O(C〜C−アルキル)−基又はN(C〜C−アルキル)−基で置換されていてよく、
〜C12−シクロアルキル基、C〜C15−アラルキル基及び
〜C14−アリール基であり、
は、ハロゲン化物イオン、アミドアニオン(RNH2−y[式中、yは、0〜2の整数であり、かつRは、C〜C12−アルキル基である]、及び更にC〜C−アルキルアニオン、アリルアニオン、ベンジルアニオン又はアリールアニオンであり、その際、L及びLは、互いに1つ又は複数の共有結合によって結合されていてよい、
z1は、1〜4の整数であり、
z2は、1〜6の整数である]の金属化合物とを反応させ、
続いてこの反応生成物を使用して、オレフィンを水中で又は少なくとも50質量%の水を含有する溶剤混合物中で、乳化剤及び場合により活性化剤の存在下で重合又は共重合させる方法において、ホスフィン化合物として、一般式(R′)PH3−a[式中、R′は、C〜C12−アルキル基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C15−アラルキル基又はC〜C14−アリール基であり、これらは少なくとも1種の極性基Pで置換されており、その際、この極性基Pは、
− ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシスルホニルオキシ基又はホスホノ基並びにこれらについて考えられるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩、
− アルカノールアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリニウム基、オキサゾリニウム基、モルホリニウム基、チアゾリニウム基、キノリニウム基、イソキノリニウム基、トロピリウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基及びホスホニウム基並びに一般式IV
−N IV
[式中、R、R及びRは、それぞれ無関係に、水素又はC〜C12−アルキル基である]のアンモニウム基を含む群から選択されているか、
又は、
− 一般式V、VI又はVII
−(EO)−(PO)−R10
−(PO)−(EO)−R10 VI
−(EO/PO)−R10 VII
[式中、EOは、−CH−CH−O−基であり、
POは、−CH−CH(CH)−O−基又は−CH(CH)−CH−O−基であり、
k及びlは、0〜50の数値であるが、k及びlは同時に0ではなく、
10は、水素、C〜C12−アルキル基又はスルホ基並びにこれらに相応のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩である]の基を含む群から選択されており、
aは、1、2又は3である]の化合物III
及び/又は一般式(R′)PH2−b−G−PR′′[式中、R′′は、水素であるか又はR′と同じ意味であり、Gは、C〜C12−アルキレン基、C〜C12−シクロアルキレン基、C〜C15−アラルキレン基又はC〜C14−アリーレン基であり、かつ
bは、1又は2である]のジホスフィン化合物VIIIを使用することを特徴とする方法に関する。
【0004】
インサイチューで形成された錯体(金属化合物と、ホスフィン化合物と、キノイド化合物との反応生成物)の単離及び精製は省く。
【0005】
本発明にかかる方法のために、場合により活性剤を使用する。更に、本発明は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びエチレンコポリマーの水分散液、及び本発明にかかる水性分散液の、紙用途、織物塗布剤及び皮革塗布剤における使用、発泡成形体、カーペット裏地被覆剤、及び薬剤配合物の製造のための使用並びに接着剤、充填剤、プラスチックプラスター、塗工剤及び塗料剤の成分としての使用に関する。
【0006】
ポリマーの水性分散液は、多くの極めて異なる用途に商業的に利用される。例えば、紙用途(紙塗工及び表面サイジング)、塗料及びラッカー用の原料、接着剤原料(とりわけ、触圧接着剤)、織物塗布剤及び皮革塗布剤、建築化学においては、発泡成形体(マットレス、カーペット裏地被覆剤)並びに医療製品及び薬剤製品、例えば薬剤結合剤として挙げることができる。これらは、D.ディストラー(D.Distler)(編者)「水性ポリマー分散液」ヴィレイ−VCH出版、第1版、1999年("Waessrige Polymerdispersionen" Wiley-VCH Verlag, 1. Auflage, 1999)中にまとめられている。
【0007】
これまで、ポリオレフィンの水性分散液を製造することは困難であった。しかし、かかる水性分散液を提供できることが望ましい。それというのも、そのモノマー、例えばエチレン又はプロピレンが経済的という点で極めて有利であるからである。
【0008】
かかる水性分散液を相応のオレフィンから製造する慣用の方法では、ラジカル高圧重合か又は二次分散液の製造の何れかを行う。
【0009】
これらの方法には、欠点が存する。このラジカル重合法は極端な高圧を必要とし、これらは技術水準においてはエチレン及びエチレンコポリマーに限られ、そして必要とされる装置は、購入及び整備の点で極めて高価である。別の可能性は、US−A5574091号に記載されているように、最初にエチレンを任意の方法において重合させ、次いで二次分散液を製造することにある。この方法は、多段階法であり、従って極めてコストがかかる。
【0010】
従って、オレフィン、例えばエチレン又はプロピレンを乳化重合の条件下で重合させ、そして必要な分散液を相応のオレフィンから1段階で製造することが望ましい。更に、乳化重合法には、極めて一般的に、これらがモル質量の大きいポリマーを提供し、その際、熱除去がこの方法条件により良好に操作されるという利点が存する。最後に、水系の反応は、極めて一般的に重要である。それというのも、水は廉価であり、かつ環境を汚染しない反応媒質であるからである。
【0011】
これまでに提供されているオレフィン、例えばエチレン又はプロピレンの乳化重合法は、依然として改善されるべきである。この問題は、一般的に、これらのオレフィンの重合に必要な触媒に存在する。
【0012】
ポリオレフィンには大きな商業的な重要性が存するので、改善された重合法の探索は更に、より大きな重要性を帯びるものである。
【0013】
水性媒質中の、特にインサイチューで製造された重合触媒の使用下でのオレフィン重合の技術水準についての良好な概要は、出願人からドイツ国特許商標庁に出願され、先行して公開されていない出願番号10234005.6号の特許出願に挙げられている。この出願の対象は、これにより明確に引き合いに出され、それは重合触媒のインサイチューでの製造における、特定のキノイド化合物と、慣用のホスフィン化合物又はジホスフィン化合物と、特定の遷移金属化合物との広範な使用、及び水性媒質中におけるオレフィン重合のための使用である。被覆において好ましく挙げられ、かつ実施例において使用されるインサイチュー触媒(in situ catalyst)は、2,3,5,6−テトラクロロ−パラ−ベンゾキノン又は2,3,5,6−テトラブロモ−パラ−ベンゾキノン並びにトリフェニルホスフィンの使用下で、配位子化合物として製造された。確かに極めて水溶性の低い有機溶剤、例えばヘキサデカンをインサイチュー触媒の製造の際に使用できるが、それは十分に満足のいくものではない。同様に、有機溶剤として存在するインサイチュー触媒を、オレフィンと接触させる前に、この有機触媒溶液をいわゆる水中油型−ミニマルションに変換させる処理に供することは満足のいくものではない。
【0014】
従って、本課題は、低水溶性の有機溶剤をも用いず、かつ水中油型触媒ミニエマルションを提供することなく、ポリマー固体含有率が良好である水性ポリマー分散液を提供する改善された方法を提供することである。
【0015】
目下のところ、前記課題は、冒頭に定義した方法によって解決されることを見出した。
【0016】
重合に好適なオレフィンとしては:エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン及び1−エイコセンが挙げられるが、分枝鎖状オレフィン、例えば4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン及びビニルシクロヘキサン並びにスチレン、パラ−メチルスチレン及びパラ−ビニルピリジンも挙げられ、この場合には、エチレン及びプロピレンが好ましい。特に好ましいのはエチレンである。
【0017】
本発明にかかる方法においては、前記の主要オレフィンの他に、更に少なくとも1種の更なるオレフィンを補助オレフィンとして重合に使用してよく、その際、この少なくとも1種の補助オレフィンは、以下の群から選択してよい:
− エチレン並びに1−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン及び1−エイコセン、しかしまた分枝鎖状オレフィン、例えば4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン及びビニルシクロヘキサン並びにスチレン、パラ−メチルスチレン及びパラ−ビニルピリジン、この場合には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンが好ましい;
− 内部オレフィン、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、若しくはシス−又はトランス−2−ブテン、シクロペンテン;
− 極性オレフィン、例えばアクリル酸、アクリル酸−C〜C−アルキルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸−C〜C−アルキルエステル、C〜C−アルキル−ビニルエーテル及びビニルアセテート並びにシロキシ化合物、例えば[3−(トリメトキシシリル)ブチル]メタクリレート、[3−(トリフェノキシシリル)ブチル]メタクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン又はビニルトリフェノキシシラン;好ましくはアクリル酸、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルビニルエーテル及びビニルアセテート。
【0018】
この場合には、主要オレフィンと少なくとも1種の補助オレフィンとの比は自由に選択でき、その際、重合されるべき混合物中の主要オレフィンは、≧50モル%まで使用し、かつ少なくとも1種の補助オレフィンの全量は≦50モル%である。しかしながら、有利には主要オレフィンのみが重合に使用される。少なくとも1種の補助オレフィンの使用の際には、補助オレフィン全量は、より有利には、≦40モル%、≦30モル%、≦20モル%か又は≦10モル%であり、かつ≧0.1モル%、≧0.5モル%、≧1モル%、≧5モル%か又は≧10モル%であり、かつ全ての値が含まれる。
【0019】
本発明にかかる重合には、有利にはオレフィン混合物を使用し、その際、それに使用されるオレフィンの少なくとも1種がエチレンであることが重要である。より有利には、エチレンは主要オレフィンであり、かつ補助オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−スチレンを含む群から選択される。
【0020】
しかし、重合に1種のオレフィンのみを使用することも可能である。このために、特にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン又は1−エイコサンを使用するが、分枝鎖状オレフィン、例えば4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン及びビニルシクロヘキサン並びにスチレン、パラ−メチルスチレン及びパラ−ビニルピリジンも使用し、しかしながらこの場合には、エチレン及びプロピレンが好ましい。特に好ましいのはエチレンである。
【0021】
一般式Ia及びIbのキノイド化合物の基は、以下のように定義する:
Rは、それぞれ、以下の1種又は複数種の基:
− 水素、
− ハロゲン、すなわちフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の原子、この場合には、フッ素、塩素及び臭素が好ましい、
− ニトリル、
− C〜C12−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシル;好ましくはC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、特に好ましくはC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル及びt−ブチル、
− C〜C12−アルコキシ基、例えばC〜C12−アルキル基について挙げられた例にそれぞれ更に酸素原子がその基の末端上に提供された基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ)、
− C〜C15−アラルキル基、これらの基はアリール部分に6〜10個の炭素原子を有し、かつアルキル部分に1〜9個の炭素原子を有しており、例えばC〜C12−フェニルアルキル、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニル−n−プロピル、フェニル−イソ−プロピル、フェニル−n−ブチル、しかしながら特に好ましくはベンジル;
− C〜C14−アリール基、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル及び9−フェナントリル、好ましくはフェニル、1−ナフチル及び2−ナフチル、特に好ましくはフェニル、
− アミノ基NR[式中、R及びRは、一緒に又は別々に、水素、C〜C12−アルキル基、C〜C15−アラルキル基及びC〜C14−アリール基(それぞれ前記のとおり定義した)であり、かつ飽和又は不飽和5〜10員環を付加的に形成してよく、この場合には、好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基及びメチルフェニルアミノ基である]。飽和環を有するアミノ基の例は、N−ピペリジル基及びN−ピロリジニル基であり;不飽和環を有するアミノ基の例は、N−ピリル基、N−インドリル基及びN−カルバゾリル基である。
【0022】
前記のとおりに挙げられたC〜C12−アルキル基、C〜C12−アルコキシ基、C〜C15−アラルキル基、C〜C14−アリール基及びアミノ基NRは、式Ia及びIbのキノイド基本骨格上にそれぞれ未置換で存在していてよい。これらは、それ自体、付加的に、更に、以下の1種又は複数種の置換基をその分子骨格上に有していてもよい:
− ハロゲン、
− C〜C12−アルキル基、C〜C12−アルコキシ基、水素及び/又はC〜C12−アルキル基を有するアミノ基、これらはそれぞれ前記のとおりに定義されている;
− C〜C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシル;好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル;
− C〜C12−チオエーテル基、例えばメチルメルカプチル、エチルメルカプチル、n−プロピルメルカプチル、イソプロピルメルカプチル、n−ブチルメルカプチル、イソブチルメルカプチル、t−ブチルメルカプチル、n−ペンチルメルカプチル、イソペンチルメルカプチル、ネオペンチルメルカプチル、n−ヘキシルメルカプチル;
− カルボキシ基、場合により、その塩の形、好ましくはそのアルカリ塩、特にそのリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩並びにそのアンモニウム塩の形、
− スルホ基、場合により、その塩の形、好ましくはそのアルカリ塩、特にそのリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩並びにそのアンモニウム塩の形。
【0023】
更に、一般式Ia及びIbで示され、1種又は複数種のC〜C12−アルキレン橋によって、特に1種又は複数種のC〜C10−アルキレン橋によって、特に好ましくは1種又は複数種のC〜C−アルキレン橋によって、1種又は複数種のC〜C12−アルキル化アゾ橋によって、特に1種又は複数種のC〜C10−アルキル化アゾ橋によって互いに架橋された化合物を使用してもよい。
【0024】
更に、同じか異なる一般式Ia及びIbの化合物は、一般式II
【0025】
【化3】

[式中、Yは、ケイ素又はゲルマニウムであり、かつR及びRは、水素及び/又はC〜C12−アルキル基である]の橋によっても架橋されていてよい。このために、好ましくは、ケイ素を基礎とする橋を使用する。
【0026】
一般式Iaで示され、特に極めて顕著に好適な選択キノイド化合物を、以下に式Ia1〜Ia19として示す:
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
特に好適な一般式Ibのキノイド化合物を、以下に式Ib1及びIb2として示す:
【0031】
【化7】

【0032】
互いに架橋された複数の一般式Iaの化合物からなる特に好適なキノイド化合物を、以下に式IaI及びIaIIとして示す。
【0033】
【化8】

【0034】
これらの一般式Ia及びIbのキノイド化合物の合成は、自体公知である。かかる化合物の合成手順は、とりわけDE−A2923206号、EP−A046331号、EP−A046328号又はEP−A052929号に見られる。
【0035】
化合物IaとIbとを、0:100〜100:0モル%の比の混合物で使用してよい。好ましい実施態様は、0:100モル%、10:90モル%、50:50モル%、90:10モル%及び100:0モル%であり、全ての値が含まれる。
【0036】
一般式Ia及びIbのキノイド化合物並びに一般式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2の金属化合物を、一般式(R′)PH3−aのホスフィン化合物IIIと合し、その際、R′は、C〜C12−アルキル基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C15−アラルキル基又はC〜C14−アリール基であり、これらは少なくとも1種の極性基Pで置換されており、その際、この極性基Pは、
− ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COH)、スルホ基(−SOH)、ヒドロキシスルホニルオキシ基(−O−SOH)又はホスホノ基(−PO)並びにこれらについて考えられるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩、
− アルカノールアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリニウム基、オキサゾリニウム基、モルホリニウム基、チアゾリニウム基、キノリニウム基、イソキノリニウム基、トロピリウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基及びホスホニウム基並びに一般式IV
−N IV
[式中、R、R及びRは、互いに無関係に、水素又はC〜C12−アルキル基である]のアンモニウム基を含む群から選択されているか、
又は、
− 一般式V、VI又はVII
−(EO)−(PO)−R10
−(PO)−(EO)−R10 VI
−(EO/PO)−R10 VII
[式中、EOは、−CH−CH−O−基であり、
POは、−CH−CH(CH)−O−基又は−CH(CH)−CH−O−基であり、
k及びlは、0〜50の数値、有利には0〜30、より有利には0〜15であり、この場合にはk及びlは同時に0ではなく、
10は、水素、C〜C12−アルキル基又はスルホ基並びにこれらに相応のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩である]の基を含む群から選択されており、
aは、1、2又は3である。
【0037】
無論、1種又は複数種のR′基が、2個、3個又はそれ以上の極性基Pで置換されることも可能である。
【0038】
一般式Ia及びIbのキノイド化合物並びに一般式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2の金属化合物を、一般式V(R′)PH2−b−G−PR′′[式中、R′′は、水素であるか又はR′と同じ意味であり、Gは、C〜C12−アルキレン基、C〜C12−シクロアルキレン基、C〜C15−アラルキレン基又はC〜C14−アリーレン基であり、かつbは、1又は2である]のジホスフィン化合物IIIと合してもよい。アルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基又はアリーレン基は、相応の前記のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基から誘導された二価の官能基である。
【0039】
無論、ホスフィン化合物IIIとVIIIとの混合物を、一般式Ia及びIbの化合物並びに一般式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2の金属化合物と合してもよい。
【0040】
前記極性基IVに相当するアニオンは、非求核性アニオン、例えばペルクロレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート及びカルボキシレート、例えばアセテート、トリフルオロアセテート、トリクロロアセテート、プロピオネート、オキサレート、シトレート、ベンゾエート、並びにオルガノスルホン酸の共役アニオン、例えばメチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネート及びパラ−トルエンスルホネート、更にはテトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート又はヘキサフルオロアンチモネートである。
【0041】
更に、
式V及びVI:(EO)は、k−CH−CH−O−基からのブロック、
及び
(PO)は、l−CH−CH(CH)−O−基か又は−CH(CH)−CH−O−基からのブロックであり、かつ
式VIII:(EO/PO)は、k−CH−CH−O−基と、l−CH−CH(CH)−O−基又は−CH(CH)−CH−O−基との統計分布の混合物であることが望ましい。
【0042】
化合物Ia及びIbとホスフィン化合物IIIとの比、若しくは化合物Ia及びIbとVIIIとのモル比は、1:1000〜1000:1、有利には1:10〜10:1、より有利には1:2〜2:1である。
【0043】
ホスフィン化合物III若しくはVIIIは、慣用の有機化学合成によって製造してよく[このためには、例えば水相有機金属化学、B.コーニルス、W.A.ヘアマン(編者)、ヴィレイ−VCH社、ヴァインハイム、1998年(Aqueous-Phase Organometalic Chemistry, B. Cornils, W.A. Herrmann (Herusgeber), Wiley-VCH, Weinheim, 1998);F.ジョーら著、無機合成1998年(32号)1〜43頁(F.Joo et al., Inorg. Synth. 1998(32), Seiten 1 bis 43);W.A.ヘアマン、C.W.コールペインター著、応用化学1993年(105号)1588頁以降(W.A. Herrmann und C.W. Kohlpainter, Angew. Chem. 1993(105), Seiten 1588ff.);H.シンドバウア著、月刊化学1965年(96号)2051頁以降(H. Schindlbauer, Monatsh. Ch. 1965(96), Seiten 2051ff.);O.ヘルトら著、応用化学1993年(105号)1097頁以降(O. Herd et al. Angew. Chem. 1993(105), Seiten 1097ff.)又はDE−A4141299号を参照のこと]、そして一部は市販品であってよい。
【0044】
ホスフィン化合物IIIとしては、特に、
4−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸、
3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸、
トリス(4−スルホフェニル)ホスファン、
トリス(3−スルホフェニル)ホスファン、
並びにこれらに相応のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、例えばこれらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩であるか、若しくは、
2−(2−{2−[4−(ジフェニルホスフィノ)フェノキシ]エトキシ}エトキシ)エタノールが挙げられる。
【0045】
ホスフィン化合物VIIIとしては、特に、
1,3−ビス(ジ−4−ヒドロキシフェニル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−ヒドロキシブチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−メチロール−5−ヒドロキシペンチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−5−ヒドロキシペンチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−6−ヒドロキシヘキシル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ(3−ヒドロキシシクロペンチル)プロピル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−8−ヒドロキシオクチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ(3−ヒドロキシシクロヘキシル)プロピル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−スルホフェニル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−スルホブチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−メチロール−5−スルホペンチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−5−スルホペンチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−6−スルホヘキシル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ(3−スルホシクロペンチル)プロピル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−8−スルホオクチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ(3−スルホシクロヘキシル)プロピル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−カルボキシフェニル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−カルボキシブチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−4−メチロール−5−カルボキシペンチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−5−カルボキシペンチル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−6−カルボキシヘキシル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ(3−カルボキシシクロペンチル)プロピル)ホスフィノプロパン、
1,3−ビス(ジ−8−カルボキシオクチル)ホスフィノプロパン、又は、
1,3−ビス(ジ(3−カルボキシシクロヘキシル)プロピル)ホスフィノプロパンが挙げられる。
【0046】
一般式Ia又はIbのキノイド化合物は、ホスフィン化合物III又はVIIIの他に、1種又は複数種の式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2の金属化合物とも合する。この場合には、置換基及び変数を以下のように定義する:
は、式(RPH3−xのホスファン又は式(RNH3−xのアミンから選択され、その際、xは、0〜3の整数である。しかしまた、エーテル(RO、例えばジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン、水、アルコール(R)OH、例えばメタノール又はエタノール、ピリジン、式C5−x(RNのピリジン誘導体、例えば2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン又は3,5−ルチジン、一酸化炭素、C〜C12−アルキルニトリル又はC〜C14−アリールニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル又はベンゾニトリルが好適である。更に、モノ又はポリエチレン性不飽和二重結合系、例えばエテン、プロペン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、シクロヘキセン、ノルボルネンを配位子として利用してよいが、しかしこれらに相当する基も使用してよい。有利には、1,5−シクロオクタジエン(「COD」)、1,6−シクロデカジエン又は1,5,9−オール−トランス−シクロドデカトリエンを使用する。
は、水素、C〜C12−アルキル基、これらはそれ自体O(C〜C−アルキル)又はN(C〜C−アルキル)−基で置換されていてよい、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C15−アラルキル基及びC〜C14−アリール基から選択され、その際、これらの基の特定例は、基Rの定義に見ることができる。
は、
− ハロゲン化物、例えばフッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物、好ましくは塩化物及び臭化物、
− アミドアニオン(RNH2−y[式中、yは、0、1又は2の整数であり、かつRは、C〜C12−アルキルである]、
− C〜C−アルキルアニオン、例えばメチルアニオン、エチルアニオン、n−プロピルアニオン、イソプロピルアニオン、n−ブチルアニオン、t−ブチルアニオン又はn−ヘキシルアニオン、
− アリルアニオン又はメタリルアニオン、
− ベンジルアニオン又は、
− アリールアニオン、例えばフェニルアニオンから選択される。
Mは、元素周期系7〜10族の遷移金属であり:好ましくはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル又はパラジウムであり、特に好ましくはニッケルである。
z1は、1、2、3又は4の整数である。
z2は、1、2、3、4、5又は6の整数であり、有利には4又は6である。
【0047】
特定の実施態様においては、L及びLは、互いに1つ又は複数の共有結合によって結合している。
【0048】
金属化合物としては、有利には、ニッケルのオレフィン錯体を使用する。好ましい金属化合物は、Ni(COD)である。
【0049】
式Ia及びIbの化合物と金属化合物と少なくとも1種のホスフィン化合物III又はVIIIとの反応条件は、それ自体は重要ではない。通常は、これらを0〜100℃の温度で、溶剤中で反応させ、その際、該溶剤は脂環式又は芳香族炭化水素、例えばn−ヘプタン、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレン又はパラ−キシレンから選択してよい。クロロベンゼンも溶剤として好適であり、更にケトン、例えばアセトン、非環式又は環式エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン又はテトラヒドロフランが好適である。しかし、水、又は水溶性アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はn−ブタノールを、溶剤としてインサイチュー触媒の製造の際に使用してもよい。好ましくは、水、水溶性アルコール又はケトン、例えばイソプロパノール又はアセトンを使用する。
【0050】
しかしながら、好ましくは、最初にキノイド化合物Ia又はIbと、ホスフィン化合物III又はVIIIとを混合し、次いでそれを金属化合物と反応させて、インサイチュー触媒を得る。
【0051】
金属化合物とホスフィン化合物IIIとのモル比としては、1:1000〜1000:1の比が有効であり、この比は好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:2〜2:1である。ホスフィン化合物VIIIを使用するのであれば、適切なモル比は、1:500〜500:1であり、この比は好ましくは1:5〜5:1、特に好ましくは1:1である。
【0052】
金属化合物と化合物Ia又はIbとのモル比も同様に、1:1000〜1000:1、好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:2〜2:1である。
【0053】
この場合には、金属化合物と、選択された有機キノイド化合物と、ホスフィン化合物とを、重合反応器の外部で反応させ、次いでこの反応溶液をその重合反応器に添加することが可能である。
【0054】
金属化合物とホスフィン化合物とキノイド化合物との反応は、重合装置の内部で実施してもよく、その際、別の物質、例えば乳化剤又は更なる溶剤、重合されるべきモノマー並びに別の助剤、例えば活性剤をも既に添加することが有利であり得る。
【0055】
この場合には、反応条件の選択は、それぞれ、使用される物質に依存する。特に、感水性の前駆物質の場合には、この前駆物質を最初に重合反応器の外部で反応させ、次いでこの反応生成物をその重合反応器内に計量供給することが有利であると示されている。
【0056】
これらの手段は、前駆物質は使用された溶剤中で完全に溶解しないが、反応混合物は溶解する場合にも同様に有利である。
【0057】
インサイチューで形成された錯体(金属化合物とホスフィン化合物とキノイド化合物との反応生成物)の単離及び精製は、省く。
【0058】
オレフィンを水中で又は少なくとも50質量%の水を含有する溶剤混合物中で重合又は共重合させる際にインサイチューで製造された錯体を使用することは抜群に好適である。この重合は、乳化剤及び場合により活性剤の存在下で実施する。
【0059】
有利には、活性剤を使用して、インサイチュー錯体の活性を高めることが推奨される。本明細書の範囲においては、活性剤は、インサイチュー錯体の活性を高めることができる全種の化合物と解される。
【0060】
本発明にかかる方法による1−オレフィンの重合は、自体公知のように実施してよい。
【0061】
この場合、重合の際の試薬の添加の順序は、重要ではない。従って、最初にガス状モノマーを溶剤に加圧するか若しくは液体モノマーを計量供給して、次いで、キノイド化合物とホスフィン化合物と金属化合物との混合物を添加してよい。しかし、最初にキノイド化合物とホスフィン化合物と金属化合物との混合物を更なる溶剤で希釈して、次いでモノマーを添加してもよい。
【0062】
同時に、活性剤が必要不可欠であれば、それを直接添加するか若しくは同じ溶剤の第2の溶剤分中か又はアセトン中に溶解させて添加することの何れかを行う。
【0063】
実際的な重合は、慣用的には1バールの最低圧で進行させるが、この圧力未満では重合速度は遅すぎる。最低圧は、好ましくは2バールであり、特に好ましくは10バールである(それぞれ過圧)。
【0064】
最大圧としては、4000バールを挙げることができる;より高い圧力では、重合反応器の材料についての要求が極めて高度であり、かつこの方法は経済的ではない。この最大圧は、好ましくは≦100バール、特に好ましくは≦50バールである。
【0065】
重合温度は、広範囲に変更できる。最低温度としては≧10℃を挙げることができる。それというのも低温では重合速度が低下するからである。≧40℃又は≧65℃の最低温度が好ましい。有効な最大温度としては、350℃を挙げることができる;この最大温度は、好ましくは≦150℃又は≦100℃である。
【0066】
水性重合媒質中の有機溶剤としては、芳香族化合物の溶剤、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレン及びパラ−キシレン並びにこれらの混合物が好適である。更に、環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサン又は非環式エーテル、例えばジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル又は1,2−ジメトキシエタンが好適である。また、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はジイソブチルケトンが好適であり、同様にアミド、例えばジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド、水溶性アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はn−ブタノール並びにこれらの溶剤の混合物も好適である。
【0067】
好ましくは、アセトン又は水溶性アルコール、つまりメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はn−ブタノールを、水性重合媒質中の有機溶剤として使用し、その際、これらの有機溶剤の混合比は任意である。
【0068】
水性重合媒質の量も同様に重要ではないが、インサイチューで形成される錯体及び活性剤が完全にが溶解できることを確保しなければならず、さもなければ活性損失をもたらしうる。溶解事象は、場合により、超音波処理によって促進してよい。
【0069】
同様に添加されるべき乳化剤は、水性重合媒質中に直接添加すること又はインサイチューで形成された触媒錯体の溶液と一緒に添加することの何れかを行ってよい。
【0070】
この場合には、乳化剤の量は、モノマーと乳化剤との質量比が1より大きくなるように、好ましくは10より大きくなるように、特に好ましくは20より大きくなるように選択する。この場合には、乳化剤の使用が少なければ少ないほど有利になる。
【0071】
乳化剤を添加すると、重合速度及び形成される水性ポリマー分散液の安定性の何れも高まる。導入されるべき乳化剤は、非イオン性又はイオン性であってよい。
【0072】
慣用の非イオン性乳化剤は、例えばエトキシ化されたモノ−、ジ−及びトリ−アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C〜C12)並びにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C〜C36)である。この例は、BASF AG社製のLutensol(登録商標)又はUnion Carbide社製Triton(登録商標)である。
【0073】
慣用のアニオン性乳化剤は、例えば、アルキルスルフェート(アルキル基:C〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30;アルキル基C12〜C18)及びエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50;アルキル基C〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。無論、スルホン化されたアルキルジフェニルエーテル、例えばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Company社の称号)を使用してよい。
【0074】
好適なカチオン性乳化剤は、一般的に、C〜C18−アルキル基、−アラルキル基又は複素環基を有する第1級、第2級、第3級又は第4級のアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩並びにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。例として、ドデシルアンモニウムアセテート又は相応のヒドロクロリド、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルのクロリド又はアセテート、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルフェート並びにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド並びにGemini型界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドが挙げられる。他の多くの例は、例えばH.スタシュ著、界面活性剤教本、カールハンザー出版、ミュンヘン、ウィーン、1981年(H. Stache, Tensid-Taschenbuch, Carl-Hanse-Verlag, Muenchen, Wien, 1981)及びマクカシェエン乳化剤&界面活性剤、MC出版社、グレンロック、1989年(McCutcheon's, Emulsifiers & Detergents, MC Pubilshing Company, Glen Rock 1989)に見られる。
【0075】
好ましくは、非イオン性及びアニオン性乳化剤、特に好ましくはアニオン性乳化剤を本発明にかかる方法に使用する。
【0076】
重合反応器としては、撹拌釜及び加圧釜並びに管状反応器が有用と示されており、その際、管状反応器は、ループ管型反応器として用いることができる。
【0077】
1種又は複数種の重合されるべきオレフィンは、水性重合媒質中で混合する。この場合には、重合媒質としては、水又は水と前記のとおり説明した溶剤との混合物を使用してよい。
【0078】
しかしながら、含水率は、有機溶剤、脱イオン水、キノイド化合物、ホスフィン化合物及び金属化合物、乳化剤並びに場合により更なる助剤から形成された重合媒質の全量に対して、それぞれ、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%であることを考慮すべきである。
【0079】
インサイチューで製造された錯体、乳化剤並びに場合により活性剤の溶液は、モノマーと水性重合媒質との混合物と合する。種々の成分の添加順序は、それ自体重要ではない。しかしながら、成分を合することは、場合によって中間で生ずる難溶性の錯体化合物の結晶が生じないように迅速に実施することが必要である。
【0080】
式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2の金属化合物と、使用されるべきオレフィンとのモル比は、1:≧100、1:≧1000、1:≧10000又は1:≧100000であり、かつ全ての値が含まれる。インサイチューで形成される錯体の反応性に応じて、オレフィン/金属化合物の比は、更により高い値であってもよい。
【0081】
重合法としては、原則的に、連続法及び不連続法が好適である。全成分の混合後に、オレフィン又はオレフィン混合物を重合過程において追加的に計量供給する半連続法(半回分法)が好ましい。
【0082】
本発明にかかる方法によれば、最初に水性ポリマー分散液が得られる。有利には、この水性ポリマー分散液は、固体含有率が≧10質量%、≧20質量%であり、又は≧30質量%でありさえもする。
【0083】
本発明にかかる分散液中のポリマー粒子の平均粒径は、1〜1000nm、好ましくは10〜500nmm、特に好ましくは10〜200nmである。粒径分布は、均一であってよいが、極めて均一でなくてもよい。多くの用途のために、特に高い固体含有率(>55質量%)を有する用途のために、広範な分布又は二項分布が好ましくさえある。この粒径は、例えば光散乱法によって測定することができる。これについては、D.ディストラー(D.Distler)(編者)「水性ポリマー分散液」ヴォレイ−VCH出版、第1版、1999年、第4章("Waessrige Polymerdispersionen" Wiley-VCH Verlag, 1. Auflage, 1999, Kapitel 4)にまとめられている。
【0084】
本発明にかかる方法により得られるポリマーは、技術的に重要な特性を有する。ポリエチレンの場合には、高い結晶度を有することができ、このことは例えば若干数の分枝、好ましくは1000C原子当たり20未満、特に好ましくは10未満のポリマーの分枝によって、H−NMR及び13C−NMR分光法によって測定される。
【0085】
本発明にかかる方法により得られるポリオレフィンの分子量分布、すなわちQ値(Mw/Mn)は、1.0〜50、特に1.5〜10である。得られるポリオレフィンのモル質量は、500〜1000000の範囲内、有利には1000〜50000の範囲内か又は1000〜10000の範囲内である(数平均)。
【0086】
得られるポリマー粒子が種々の粒子形態を有しうることも重要である。そこで特に、例えば球状(x軸=y軸=z軸)、レンズ状(y軸<x軸及びz軸;x軸≒z軸)、棒状(y軸及びz軸<x軸;y軸≒z軸)であり、ポリエチレンの場合には小片状のポリマー粒子も得られる。
【0087】
本発明にかかる分散液についての利点は、廉価なオレフィン出発製品並びに簡便な方法の点で価格が有利である他に、ポリブタジエン又はブタジエンコポリマー分散液と比べて高い耐候性を示すことである。アクリレート又はメタクリレートを主要モノマーとして有するポリマーの分散液と比較して、けん化する傾向がより低いことが利点として挙げることができる。更に、大部分のオレフィンは易揮発性であり、かつ重合されない残留オレフィンの量を容易に除去することができる点で有利である。最後に、重合の間に、モル質量調節剤、例えば、一方では除去が困難なことがあり、他方では不快な臭いを放つt−ドデシルメルカプタンを添加しなくてもよいことが有利である。更に、本発明にかかる方法から得られる水性分散液は、比較的高い固体含有率を有する点で有利である。
【0088】
更に、本発明にかかる方法は、全ての公知の乳化重合法とは対照的に、特に、極めて小さいポリエチレン粒子の水性ポリマー分散液を製造するのに好適であることが重要である。粒度が小さければ、水性ポリマー分散液に完全な又はほぼ完全な透明性がもたらされる。
【0089】
最初に得られた水性分散液から、水及び場合により1種又は複数種の有機溶剤を除去することによって、ポリマー粒子を得ることができる。水及び場合により1種又は複数種の有機溶剤の除去のために、多くの慣用の方法、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥又は蒸発が好適である。このように得られたポリマー粒子は、形態が良好であり、かつ見かけの密度が大きい。
【0090】
本発明により製造された分散液は、多くの用途、例えば紙用途、例えば紙塗工又は表面サイジング、更に塗料及びラッカー、建築用化学薬品、接着剤原料、発泡成形体、織物塗布剤及び皮革塗布剤、カーペット裏地被覆剤、マットレス又は薬剤用途に有利に使用できる。
【0091】
紙塗工は、着色された水性分散液を用いる紙表面塗工と解される。この場合には、本発明により製造された分散液は、その価格が低廉である点で有利である。表面サイジングは、疎水化物質の顔料不含の塗布と解される。この場合には、ポリオレフィン分散液は、特に疎水性物質として有利であり、それはこれまで経済的条件下で困難を伴ってしか得られなかった。更に、紙塗工又は表面サイジング用の分散液の本発明にかかる製造の間に、モル質量調節剤、例えば、一方では除去が困難なことがあり、他方では不快な臭いを放つt−ドデシルメルカプタンを添加しなくてよいことが有利である。
【0092】
塗料及びラッカーにおいて、本発明により製造された分散液は特に好適である。それというのも、これは価格の面から極めて有利であるからである。水性ポリエチレン分散液は特に有利である。それというのも、それが顕著な耐UV性をも示すからである。更に水性ポリエチレン分散液は特に好適である。それというのも、建築化学において慣用の基礎化学薬品に対して耐久性を示すからである。
【0093】
接着剤、特に粘着性ラベル、箔、並びにプラスター用の接着剤において、しかしまた建築用接着剤又は工業用接着剤において、本発明により製造された分散液は経済的に有利である。特に建築用接着剤においては、これは特に有利である。それというのも、これは建築化学において慣用の基礎化学薬品に対して耐久性を示すからである。
【0094】
本発明により製造された分散液から自体公知の方法、例えばDunlop法か又はTalalay法によって製造できる発泡成形体においては、他方、本発明にかかる分散液の好都合な価格は有利である。更なる成分としては、ゲル化剤、石鹸、増粘剤及び加硫ペーストを利用する。発泡成形体は、例えばマットレスに加工する。
【0095】
織物塗布剤又は皮革塗布剤は、織物又は皮革の保存及び改良のために利用される。この効果については、例として、織物の防水並びに更なる最終仕上げを挙げることができる。織物塗布剤及び皮革塗布剤の構成成分としての、本発明により製造される分散液の利点は、価格が有利であることの他、悪臭を有さないことである。それというのも、水性分散液中のオレフィン残留量を容易に除去できるからである。
【0096】
カーペット裏地被覆剤は、カーペット繊維を裏地に接着させるのに利用され、更に、カーペットに必要な剛性を付与すること、並びに添加剤、例えば防火剤又は静電防止剤を均一に分布させるために利用される。本発明により製造された分散液は、価格が有利であることの他に、慣用の添加剤に対して抵抗性を有する。ポリエチレン分散液は、とりわけ、化学的に特に不活性であると判明している。最後に、カーペット裏地被覆のための分散液の本発明にかかる製法の間に、モル質量調節剤、例えば前記の欠点が存するt−ドデシルメルカプタンを添加しなくてよいことは有利である。
【0097】
薬剤配合物は、医薬品の担体としての分散液と解される。医薬品の担体としての分散液は、自体公知である。本発明により製造される医薬品の担体としての分散液の利点は、経済的に有利な価格であり、かつ人体の影響、例えば胃液又は酵素に対しての安定性を示す。
【0098】
作業実施例
一般:合成は、特に記載がない限り、シュレンク(Schlenk)技術により、空気及び湿分の排除下で、かつアルゴン雰囲気下で実施した。
【0099】
得られたポリマーのモル質量の測定は、GPCを用いて実施した。DIN55672に依拠して、以下の条件を選択した:溶剤1,2,4−トリクロロベンゼン、流速:1ml/分;温度140℃。Waters 150C装置を用いて測定し、その際、ポリエチレン標準品で較正した。
【0100】
固体含有率の決定は、メタノールでのポリエチレンの沈殿によって実施した。
【0101】
実施例
24.5mg(100μモル)の2,3,5,6−テトラクロロ−パラ−ベンゾキノン(Ia1)及び38mg(100μモル)の4−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸のカリウム塩を、20〜25℃(室温)でシュレンク型フラスコ中において、10mlの水不含のガス抜きされたイソ−プロパノール中に、アルゴン保護雰囲気下で撹拌しつつ溶解させ、その際、この溶液は橙色を呈した。この溶液を、アルゴン雰囲気下で、30.3mg(110μモル)のニッケル(1,5−シクロオクタジエン)、[Ni(COD)]を含有する別のシュレンク型フラスコ中に移し、20分にわたって撹拌した。
【0102】
その間に、1gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を90mlのガス抜きされた脱イオン水中に溶かした溶液を調製した。この溶液を、室温でアルゴン雰囲気下で300mlの圧力反応器に添加した。このインサイチューで製造された触媒のイソプロパノール溶液を、撹拌しつつ(1分当たり1000回転)、同様にこの反応器に供給した。次いで、この反応器内に、エチレンを40バールの圧力(過圧)まで加圧した。次いで液体の反応器内容物を撹拌しつつ70℃まで加熱し、そしてこの温度で2時間にわたって維持させた。次いで、この反応器内容物を室温まで冷却し、そして雰囲気圧まで下げた。得られたポリマー分散液は、わずかに濁りが見られるにすぎなかった。
【0103】
得られた水性ポリマー分散液40gを、撹拌しつつ60gのメタノールと混合し、その際、5.32gのポリエチレン(ポリマー固体含有率13.3質量%に相当)が沈殿した。このポリマーは、数平均分子量が約6000g/モルであり、かつ質量平均分子量が約32400であった。このポリエチレンの融点は129℃であった。
【0104】
比較例
比較例を、実施例と同様に実施したが、但し4−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸のカリウム塩に代えて、26.3mgの未置換のトリフェニルホスフィンを使用した。
【0105】
反応完了及びメタノール沈殿後には、0.3gのポリエチレンが得られ、これはポリマー固体含有率0.7質量%に相当するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数種のオレフィンを乳化重合するにあたり、一般式Ia又はIb
【化1】

[式中、Rは、それぞれ、以下の1種又は複数種の基:
水素、
ハロゲン、
ニトリル、
〜C12−アルキル基、C〜C12−アルコキシ基、C〜C15−アラルキル基、C〜C14−アリール基(これらは非置換か又はC〜C12−アルキル基、ハロゲン、C〜C12−アルコキシ基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C12−チオエーテル基、塩の形で存在してもよいカルボキシ基又はスルホ基で置換されている)、並びに水素及び/又はC〜C12−アルキル基を有するアミノ基、
アミノ基NR[式中、R及びRは、一緒に又は別々に、水素、C〜C12−アルキル基、C〜C15−アラルキル基及びC〜C14−アリール基(これらは非置換か又はC〜C12−アルキル基、ハロゲン、C〜C12−アルコキシ基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C12−チオエーテル基、塩の形で存在してもよいカルボキシ基又はスルホ基で置換されている)、並びに水素及び/又はC〜C12−アルキル基を有するアミノ基であり、これらは飽和又は不飽和の5〜10員環を付加的に形成してもよい]であり、
かつ、同じか又は異なる一般式Ia及びIbの化合物は、場合により1種又は複数種のC〜C12−アルキレン橋、C〜C12−アルキル化アゾ橋又は一般式II
【化2】

[式中、Yは、ケイ素か又はゲルマニウムであり、かつR及びRは、水素及び/又はC〜C12−アルキル基である]の橋によって架橋されていてもよい]のキノイド化合物若しくは少なくとも2種の化合物Ia又はIbの混合物と、
ホスフィン化合物と、
一般式M(L、M(L(Lz1又はM(Lz2
[式中、置換基及び変数は、以下に定義するとおりである:
Mは、元素周期系7〜10族の遷移金属であり、
は、ホスファン(RPH3−x又はアミン(RNH3−x、基Rは同じか又は異なっており、エーテル(RO、水、アルコール(R)OH、ピリジン、式C5−x(RNのピリジン誘導体、一酸化炭素、C〜C12−アルキルニトリル、C〜C14−アリールニトリル又はエチレン性不飽和二重結合系であり、その際、xは、0〜3の整数であり、
は、水素、C〜C12−アルキル基、これらはそれ自体O(C〜C−アルキル)−基又はN(C〜C−アルキル)−基で置換されていてよく、
〜C12−シクロアルキル基、C〜C15−アラルキル基及び
〜C14−アリール基であり、
は、ハロゲン化物イオン、アミドアニオン(RNH2−y[式中、yは、0〜2の整数であり、かつRは、C〜C12−アルキル基である]、及び更にC〜C−アルキルアニオン、アリルアニオン、ベンジルアニオン又はアリールアニオンであり、その際、L及びLは、互いに1つ又は複数の共有結合によって結合されていてよい、
z1は、1〜4の整数であり、
z2は、1〜6の整数である]の金属化合物とを反応させ、
続いてこの反応生成物を使用して、オレフィンを水中で又は少なくとも50質量%の水を含有する溶剤混合物中で、乳化剤及び場合により活性化剤の存在下で重合又は共重合させる方法において、ホスフィン化合物として、一般式(R′)PH3−a[式中、R′は、C〜C12−アルキル基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C15−アラルキル基又はC〜C14−アリール基であり、これらは少なくとも1種の極性基Pで置換されており、その際、この極性基Pは、
− ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシスルホニルオキシ基又はホスホノ基並びにこれらについて考えられるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩、
− アルカノールアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリニウム基、オキサゾリニウム基、モルホリニウム基、チアゾリニウム基、キノリニウム基、イソキノリニウム基、トロピリウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基及びホスホニウム基並びに一般式IV
−N IV
[式中、R、R及びRは、それぞれ無関係に、水素又はC〜C12−アルキル基である]のアンモニウム基を含む群から選択されているか、
又は、
− 一般式V、VI又はVII
−(EO)−(PO)−R10
−(PO)−(EO)−R10 VI
−(EO/PO)−R10 VII
[式中、EOは、−CH−CH−O−基であり、
POは、−CH−CH(CH)−O−基又は−CH(CH)−CH−O−基であり、
k及びlは、0〜50の数値であるが、k及びlは同時に0ではなく、
10は、水素、C〜C12−アルキル基又はスルホ基並びにこれらに相応のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアンモニウム塩である]の基を含む群から選択されており、
aは、1、2又は3である]の化合物III
及び/又は一般式(R′)PH2−b−G−PR′′[式中、R′′は、水素であるか又はR′と同じ意味であり、Gは、C〜C12−アルキレン基、C〜C12−シクロアルキレン基、C〜C15−アラルキレン基又はC〜C14−アリーレン基であり、かつ
bは、1又は2である]のジホスフィン化合物VIIIを使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
活性剤を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属化合物が、ニッケルのオレフィン錯体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
イオン性乳化剤を使用することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
使用されるオレフィンの少なくとも1種がエチレンであることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
主要オレフィンがエチレンであり、かつ補助オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン又はスチレンから選択されることを特徴とする、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
重合されるべきオレフィンが、エチレンのみであることを特徴とする、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載の方法によって得られる水性ポリマー分散液。
【請求項9】
請求項8に記載の水性ポリマー分散液の、紙用途、織物塗布剤及び皮革塗布剤における使用、発泡成形体、カーペット裏地被覆剤及び薬剤配合物の製造のための使用並びに、接着剤、充填剤、プラスチックプラスター、被覆剤及び塗料剤の成分としての使用。
【請求項10】
請求項8に記載の水性ポリマー分散液から得られるポリマー粉末。

【公表番号】特表2007−510784(P2007−510784A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538759(P2006−538759)
【出願日】平成16年11月6日(2004.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012597
【国際公開番号】WO2005/049669
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】