説明

オレフィンの異性化方法

【課題】炭素数4以上のオレフィンから二重結合および骨格が異性化した炭素数4以上のオレフィンを比較的に高収率で容易に製造できるオレフィンの異性化方法を提供する。
【解決手段】オレフィン原料を、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒に、100〜600℃、0.001〜10(g-触媒・秒)/(Ml-原料オレフィンガス)で接触させ、炭素原子間の二重結合および骨格の異性化反応により、原料オレフィンの二重結合の位置が転換、あるいは骨格が転換した炭素数4以上のオレフィンを製造させる。規則性メゾポーラス多孔体として、骨格の主成分がシリカで、開口径が1.4nm以上10nm以下のものが好ましい。連続的で容易に比較的に高い収率で所望とする炭素数4以上のオレフィンを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンを原料として炭素数4以上のオレフィンを転換反応により異性化したオレフィンを製造するオレフィンの異性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素放出量を抑制するためにバイオマス由来のアルコールを燃料として用いることが注目されている。そして、バイオマス由来のアルコールを燃料として利用するのみならず、石油代替原料として用いることにより、例えば、代表的なバイオアルコールであるバイオエタノールは脱水反応によりエチレンとすることでポリエチレンなどの原料とすることができる。すなわち、石油化学コンビナートからバイオマスコンビナートへの転換も可能となり、バイオマス由来のアルコールは燃料のみならず化学工業原料としてさらなる有効利用が考えられる。
一方、バイオマスを原料として微生物によりアルコールを製造する場合、エタノール以外にもプロパノール、ブタノール、オクタノールなどが生成してくるが、いずれも末端に水酸基を有する1級アルコールである。これら1級アルコールを化学工業原料としてより有効利用するために脱水反応により生成した末端オレフィンを、炭素構造のバックボーンを変える骨格異性化や、炭素原子間の二重結合を配置転換させる二重結合の異性化が要望されている。
そして、炭素構造のバックボーンを維持しながら炭素原子間の二重結合を配置転換させるオレフィンの二重結合の異性化触媒として、イオン交換用完全フッ素置換ポリマと金属酸化物からゾル−ゲル法で調製したオレフィン異性化用多孔質微細複合体が知られている(例えば、特許文献1または非特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の異性化方法は、イオン交換用完全フッ素置換ポリマが「NAFION(デュポン社の登録商標)」PFIEPで金属酸化物がシリカである微細複合体を触媒として、1−ブテンの2−ブテンへの二重結合の異性化が記載されている。
しかしながら、この特許文献1に記載の方法では、1−ブテンの転化率が充分とはいえないものであった。
【0004】
非特許文献1に記載の方法では、規則性メゾポーラス多孔体MCM−41による1−ブテンの2−ブテンへの二重結合の異性化が記載されている。
しかしながら、この非特許文献1に記載の方法でも、1−ブテンの転化率が充分とはいえないものであった。
【0005】
【特許文献1】特表平10−511648公報
【非特許文献1】Martin Hartmann, Andreas Poppl, Larry Kevan, J. Phys. Chem. 1996, 100, 9906-9910
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記特許文献1または非特許文献1に記載のような従来のオレフィンの異性化方法では、所望とする炭素数4以上のオレフィンを比較的に高い転化率で炭素原子間の二重結合の異性化をすることが困難である問題がある。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に鑑みて、炭素数4以上のオレフィンを比較的に高転化率で炭素原子間の二重結合の異性化および骨格異性化をすることができるオレフィンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に記載のオレフィンの異性化方法は、オレフィンを原料として転換反応により異性化したオレフィンを製造するオレフィンの異性化方法であって、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒とオレフィン原料とを、100℃以上600℃以下の温度範囲、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以下の接触時間で接触させ、異性化反応により炭素数4以上のオレフィンを生成させることを特徴とする。
この発明では、オレフィン原料を、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒と100℃以上600℃以下の温度範囲、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以下の接触時間で接触させ、炭素数4以上のオレフィンにおける二重結合の位置が、原料オレフィンとは異なる位置に異性化したオレフィンを製造させる。
このことにより、炭素数4以上のオレフィンを比較的に高い転化率で炭素原子間の二重結合の異性化および骨格異性化ができ、炭素数4以上のオレフィンを比較的に高い収率で製造できる。
【0009】
そして、本発明では、請求項1に記載のオレフィンの異性化方法であって、前記規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格は、主成分がシリカである構成とすることが好ましい。
この発明では、規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格の主成分がシリカである。
このことにより、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、あるいは銅を良好に担持し良好な物性の規則性メゾポーラス多孔体が容易に得られる。
【0010】
また、本発明では、請求項1または請求項2に記載のオレフィンの異性化方法であって、前記規則性メゾポーラス多孔体は、開口径が1.4nm以上10nm以下である構成とすることが好ましい。
この発明では、規則性メゾポーラス多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いる。
このことにより、所望とする炭素数4以上のオレフィンをより高い転化率で二重結合が異性化したオレフィンが容易に得られる。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。一方、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が10nmより大きくなると、細孔の効果すなわち活性成分であるニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄あるいは銅の良好な担持が得られ難くなり、高い収率が得られなくなるおそれがある。このため、規則性メゾポーラス多孔体の開口径を1.4nm以上10nm以下に設定することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のオレフィンの異性化方法であって、前記触媒は、ニッケルを主成分として前記規則性メゾポーラス多孔体に担持させたものである構成とすることが好ましい。
この発明では、規則性メゾポーラス多孔体にニッケルを主成分として担持させた触媒を用いる。
このことにより、炭素数4以上の所望のオレフィンのより高い転化率で二重結合を異性化することができる。
【0012】
また、本発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のオレフィンの異性化方法であって、前記オレフィン原料中のオレフィンは、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンである構成とすることが好ましい。
この発明では、オレフィン原料中のオレフィンとして例えば1−ブテンを用いた場合には2−ブテンを高い収率で容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のオレフィンの異性化方法に係る一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、オレフィンとして1−ブテンを原料としてオレフィンである2−ブテンを製造する構成について説明するが、1−ブテンに限定されるものではなく、2−ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどの炭素数4以上のオレフィンであれば好適に用いることができる。さらに、水蒸気が混合された炭素数4以上のオレフィン原料を用いることもできる。
【0014】
(触媒の構成)
本実施形態におけるオレフィンの異性化方法に用いる触媒としては、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒である。
この規則性メゾポーラス多孔体は、規則性ナノ細孔を有する無機または無機有機複合固体物質である。
【0015】
そして、規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格の主成分としては、シリカが好ましい。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体の合成方法としては、特に制限はないが、例えば炭素数が8以上の高級アルキル基を有する四級アンモニウム塩をテンプレートとして、シリカの前駆体を原料として合成する方法などが例示できる。
そして、シリカ前駆体の種類としては、例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカなどの非晶質シリカ、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムなどの珪酸アルカリ、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケートなどのアルコキサイドを、単独または混合して用いることができる。また、テンプレートの種類としては、特に制限はないが、一般式CH3(CH2)nN(CH3)3・X(nは7〜21の整数、Xはハロゲンイオンあるいは水酸化イオン)で表記されるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン界面活性剤が、特に好ましい。具体的には、n−オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n−デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどが例示できる。
なお、規則性ナノ細孔を有する構造が容易に得られ、強度などの物性も良好であるとともに、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、あるいは銅の安定した担持が容易に得られる点で、シリカを用いることが好ましい。
【0016】
また、規則性メゾポーラス多孔体としては、開口径が、例えば1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いることが好ましい。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、例えば反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。一方、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が10nmより大きくなると、例えば細孔の効果すなわち活性成分であるニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄あるいは銅の良好な担持が得られ難くなり、高い収率が得られなくなるおそれがある。このことにより、プロピレンの高い収率で製造させる点で、規則性メゾポーラス多孔体の開口径を1.4nm以上10nm以下に設定することが好ましい。
【0017】
そして、触媒としては、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上の金属が、規則性メゾポーラス多孔体に担持されたものである。特に、ニッケルが担持されたものが好ましい。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体にニッケルを担持する方法としては、特に制限はなく、例えば含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法などを用いることができる。特に、規則性メゾポーラス多孔体を合成した細孔内に貯蔵されているテンプレートを焼成除去することなく、水溶媒中でニッケルイオンとテンプレートイオンとを交換するテンプレートイオン交換法が製造性の点で好ましい。また、テンプレートイオン交換は、細孔内にテンプレートが吸蔵されている規則性メゾポーラス多孔体をニッケルの無機酸塩または有機酸塩の水溶液と接触させる方法が利用できる。ニッケル源としては、例えば、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケルなどを用いることができる。特に、取扱の簡便性や水への溶解度の大きさなどの点で、特に硝酸ニッケルが好ましい。
【0018】
そして、規則性メゾポーラス多孔体に担持されるニッケルの量は、規則性メゾポーラス多孔体の骨格を構成するシリカを基準として、例えば原子比Si/Niが5以上500以下、特に15以上100以下であることが好ましい。
ここで、原子比Si/Niが5より小さくなると、Niの割合が多くなって触媒活性の低い酸化ニッケル粒子の生成を抑制しにくくなり、触媒活性が低下するおそれがある。一方、原子比Si/Niが500より大きくなると、Niの割合が少なくなって高分散化したニッケルの十分な担持が得られなくなり、触媒活性が低下するおそれがある。このことにより、ニッケルの担持量は、原子比Si/Niが5以上500以下、特に15以上100以下に設定することが好ましい。
【0019】
また、テンプレートイオン交換によりニッケルを担持させた規則性メゾポーラス多孔体は、残存するテンプレートを焼成によって除去するために、酸素が存在する雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。
ここで、加熱処理の温度は、例えば、200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下である。そして、加熱処理の温度が200℃より低くなると、テンプレートの焼成に時間を要するおそれがある。一方、加熱処理の温度が800℃より高くなると、細孔壁を構成しているシリカの崩壊が生じるおそれがある。このことにより、ニッケルを担持した規則性メゾポーラス多孔体の加熱処理の温度を200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下に設定することが好ましい。
【0020】
(オレフィンの異性化方法)
本発明のオレフィンの異性化方法は、上述した触媒にオレフィン原料を接触させて炭素原子間の二重結合の異性化反応により、炭素数4以上のオレフィンの二重結合の位置が原料オレフィンとは異なる位置を有する異性化オレフィンを生成すなわち製造させる。
ここで、オレフィンの異性化装置としては、特に限定されないが、例えば、上述した触媒を充填して内部に触媒層を有しオレフィン原料が流通可能な反応器である固定床流通反応装置を用いることができる。
オレフィン原料としては、原料としてオレフィンを含むもので、特に炭素数4以上のオレフィンとして、例えば2−ブテンを高選択的に生成させる目的で1−ブテンを原料とすることができる。さらには、オレフィン原料としては、水が混合されていてもよい。さらに、オレフィン原料としては、固定床流通反応装置に直接供給、あるいは窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガスにより適宜希釈して供給、すなわち不活性ガスが混合されたものとしてもよい。
【0021】
また、オレフィン原料の反応温度としては、例えば、100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下であることが好ましい。
ここで、反応温度が100℃より低くなると、触媒活性が十分に得られなくなって反応速度が低下し製造効率が低下し、異性化効率が低下するおそれがある。一方、反応速度が600℃より高くなると、例えばコーク発生などの触媒活性の劣化を生じおるおそれがある。このことにより、原料ガスの反応温度を100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下、より好ましくは200℃以上500℃以下、に設定することが好ましい。
なお、原料ガスの反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できる。なお、製造性や装置構成などの観点から、常圧から1.0MPa程度に設定することが好ましい。
【0022】
そして、原料ガスと触媒との接触時間は、例えば0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以上10(g−触媒・秒)/(ml−原料ガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以上5(g−触媒・秒)/(ml−原料ガス)以下であることが好ましい。
ここで、触媒との接触時間が0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)より短くなると、原料のオレフィンの異性化率の向上が望めず、所望とする炭素数4以上のオレフィンを高い収率で異性化できなくなるおそれがある。一方、触媒との接触時間が10(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)より長くなると、重合などの副反応が生じて、高い収率で所望とする炭素数4以上の異性化したオレフィンが得られなくなるおそれがある。このことにより、原料ガスと触媒との接触時間は、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以上5(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以下、さらには0.1(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以上3(g−触媒・秒)/(mL−原料ガス)以下に設定することが好ましい。
【0023】
そして、上記各種条件による原料ガスと触媒との接触により、骨格の主成分がシリカの規則性メゾポーラス多孔体であるシリカメゾ多孔体が特異な固体酸触媒能を有し、テンプレートイオン交換法で調製したニッケルイオンを担持した触媒は、固体酸触媒能および層状珪酸塩類似構造を取るニッケル活性点により、オレフィンの二重結合の位置が変換する異性化反応が生じ、原料のオレフィンから二重結合の位置が異なる異性化したオレフィンを生成させる反応が連続して進行する。このことにより、所望とする炭素数4以上のオレフィンが高い収率で製造される。
【0024】
(実施形態の作用効果)
上述したように、上記実施形態では、オレフィン原料を、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒と、100℃以上600℃以下の温度範囲、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以下の接触時間で接触させ、オレフィンの二重結合の位置が原料オレフィンの二重結合の位置とは異なる異性化したオレフィンを製造させる。
このため、所望とする炭素数4以上の二重結合や骨格が異性化したオレフィンを比較的に高い収率で製造できる。
【0025】
そして、上記実施形態では、触媒を構成する規則性メゾポーラス多孔体として、骨格の主成分がシリカのものを用いている。
このため、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、あるいは銅を良好に担持し良好な物性の規則性メゾポーラス多孔体が容易に得られる。
【0026】
また、上記実施形態では、規則性メゾポーラス多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いている。
このため、所望の炭素数4以上の二重結合や骨格が異性化したオレフィンをより高い収率で連続的に製造することが容易に得られる。
【0027】
さらに、上記実施形態では、規則性メゾポーラス多孔体にニッケルを主成分として担持させた触媒を用いる。
このため、所望の炭素数4以上の二重結合や骨格が異性化したオレフィンをより高い収率で製造できる。
【0028】
そして、上記実施形態では、オレフィン原料中のオレフィンとして1−ブテンを用いて、炭素数4以上のオレフィンとして2−ブテンを製造させている。
このため、1−ブテンから二重結合の異性化によりその二重結合の位置が異なった2−ブテンを高い収率で容易に製造できる。
【0029】
〔実施形態の変形例〕
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0030】
すなわち、本発明のオレフィンの異性化方法を実施する製造装置としては、上述した固定床流通反応装置に限られるものではない。例えば、流動床として原料ガスを触媒と接触させるなど、原料ガスを触媒と接触させるいずれの構成が適用できる。さらには、触媒としては、粉粒体や塊状物、いわゆるハニカム構造物など、各種形態で利用できる。
また、触媒として、シリカメゾ多孔体に限らず、例えば骨格の主成分にアルミナなど、他の無機材料などが含まれるものなど、規則性メゾポーラス多孔体であればいずれの組成物を適用することができる。
そして、ニッケルを担持したものに限らず、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を担持していればよい。
なお、これらニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上の担持としては、規則性メゾポーラス多孔体の表面に存在する状態に限らず、例えば規則性メゾポーラス多孔体の骨格の主成分と共存する状態など、担持形態としては、いずれの状態をも含むものである。
【0031】
また、規則性メゾポーラス多孔体の物性、規則性メゾポーラス多孔体に担持させるニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上の担持量などの触媒の物性は、上述した条件に限られるものではなく、処理効率や装置構成などにより、適宜設定できる。
さらには、オレフィン原料として水などを含むものでも適用できる。
【0032】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0033】
次に、本発明のオレフィンの異性化方法について、実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(触媒の調製)
MCM−41の合成
シリカ源としてコロイダルシリカ(日産化学工業製の商品名スノーテックス20(SiO2:20wt%、粒子径:10〜20nm))、界面活性剤としてドデシルトリメチルアンモニウムブロミド[C1225N(CH3)3Br](東京化成製)を用いた。pHの調整には水酸化ナトリウム(和光純薬製特級試薬)を用いた。
A液;スノーテックス20 306.7g
B液;C1225N(CH3)3Br 225.0g
2O 641.4g
C液;NaOH 11.7g
2O 125.6g
そして、313KにてB液を攪拌しながら、A液とC液をゆっくりと交互に加えた。この混合溶液を313Kで2時間攪拌した。混合溶液の最終pHは10.2であった。攪拌後、静置条件下413Kで48時間水熱処理を行った。得られた白色の生成物を濾過し、2Lのイオン交換水で洗浄後濾過し、353Kで一晩乾燥させ未焼成のMCM-41を得た。
【0034】
Ni−MCM−41の調製
未焼成のMCM−41の3.0gを30mLのイオン交換水に加え攪拌し、縣濁させた。また、硝酸ニッケル6水和物(和光純薬製特級試薬)0.38gを30mLのイオン交換水で溶解させた。
未焼成MCM-41の縣濁液を激しく攪拌しながら、ゆっくりとパスツールを用いてNiイオン水溶液を加え、添加後室温で1時間攪拌した。攪拌後、混合液を353Kの水浴中で20時間静置した。その後濾過し、約1Lのイオン交換水に分散させて5分間攪拌後濾過し、353Kで一晩乾燥させ未焼成Ni−MCM−41を得た。
この未焼成Ni−MCM−41を磁性皿に薄く広げ、773Kまで昇温後、6時間空気中で焼成し、Ni−MCM−41を得た。このNi−MCM−41のSi/Ni原子比は21.3であった。
【0035】
(1−ブテンの2−ブテンへの異性化反応)
上記Ni−MCM−41を触媒として1−ブテンの異性化反応を行った。常圧固定床流通反応装置の内径10mmの耐熱ガラス製反応器の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を100mg充填する。反応に先立ち、触媒の前処理として、50mL/minの窒素ガスを673Kで2時間流通させた。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、1−ブテンを33mL/minの速度(接触時間=0.18(g−触媒・秒)/(mL−ガス))で供給して反応を行った。
この結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、炭素数4以上のオレフィンを原料として、その二重結合が異性化した炭素数4以上のオレフィンを製造する方法に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを原料として転換反応により異性化したオレフィンを製造するオレフィンの異性化方法であって、
ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒とオレフィン原料とを、100℃以上600℃以下の温度範囲、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料オレフィンガス)以下の接触時間で接触させ、異性化反応により炭素数4以上のオレフィンを生成させる
ことを特徴とするオレフィンの異性化方法。
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィンの異性化方法であって、
前記規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格は、主成分がシリカである
ことを特徴とするオレフィンの異性化方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のオレフィンの異性化方法であって、
前記規則性メゾポーラス多孔体は、開口径が1.4nm以上10nm以下である
ことを特徴とするオレフィンの異性化方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のオレフィンの異性化方法であって、
前記触媒は、ニッケルを主成分として前記規則性メゾポーラス多孔体に担持させたものである
ことを特徴とするオレフィンの異性化方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のオレフィンの異性化方法であって、
前記オレフィン原料中のオレフィンは、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンである
ことを特徴とするオレフィンの異性化方法。

【公開番号】特開2008−222609(P2008−222609A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61000(P2007−61000)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】