説明

オレフィンの製造方法及びオレフィン製造用触媒

【課題】アルコールを原料として、そのアルコールよりも炭素原子数が1以上大きいオレフィンを高い収率で効率よく製造できるオレフィンの製造方法、及びオレフィン製造用触媒を提供する。
【解決手段】酸化インジウムを含む酸化インジウム含有触媒の存在下、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法であって、前記アルコールを反応させる反応系に水及び/又は水素を共存させるオレフィンの製造方法及びオレフィン製造用触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールを原料として、そのアルコールの炭素原子数より1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法、及びオレフィン製造用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な化学製品の原料となるオレフィンの現在の主要な製造方法は、石油留分の熱分解法である。しかし、近年の石油資源の枯渇問題の観点から、石油資源に依存しないようなオレフィン製造用原料の多様化が求められている。また、地球温暖化防止の観点から、CO2排出量の少ないオレフィンの製造方法が求められている。
【0003】
これまでに、天然ガス、石炭(石炭ガス化ガス)等から合成されるアルコールやDME(ジメチルエーテル)を原料とするオレフィン製造方法が開発され、多くの文献で報告されている。一方で、石油や石炭、天然ガス等の化石燃料を使わないオレフィン製造方法も検討されている。例えば、バイオエタノールをはじめとするバイオマス原料、すなわち、カーボンニュートラルなアルコールを原料とした方法も検討されている。
【0004】
アルコールやDMEからのオレフィン製造には、MTO(Methanol to Olefin)反応に代表される酸触媒を用いた反応系が利用される。この場合、酸触媒としてはゼオライトが一般的に使用されている。酸触媒の利点は高活性な点であるが、目的とするオレフィン以外に多くの副生成物が生成し、目的物の収率や選択率が低くなることや、触媒表面上で炭素析出が生じることにより触媒劣化が生じる点に問題がある。特に、ゼオライト触媒に関しては、脱アルミニウムによる触媒劣化も大きな問題である。
【0005】
このような問題を解決するため、ゼオライト触媒の細孔径の最適化や、添加物による酸強度の調整等の改良が試みられているが(例えば特許文献1及び2)、ゼオライトを触媒に利用する以上は、根本的な解決策には至っていない。
【0006】
また、エタノールからのオレフィン製造方法として、バイオエタノールを利用した方法が提案されている(例えば特許文献3及び4)。しかし、エタノールからのオレフィン製造においても、酸触媒、特にゼオライトが主に用いられている。従って、酸触媒に特有の問題解決方法は示されていない。
さらに、酸触媒でエタノールからそのエタノールより炭素数の多いオレフィンを製造しようとすると、エタノールの脱水反応が併発し、エチレンが多量に生成する。そのため、より有用な化学製品原料としての、プロピレンやブテン等の選択率が低いという問題点がある。
【0007】
ゼオライトを利用しない触媒系に、金属を担持したメゾ多孔体触媒がある(例えば特許文献5)。この金属担持メゾ多孔体触媒は、酸触媒の問題点を改善できると期待されたが、エタノールからプロピレンやブテンを得ようとすると、副生成物のエチレン生成量が多く、目的物の収率を高くすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平01−50827号公報
【特許文献2】特表2005−520763号公報
【特許文献3】特開2007−290991号公報
【特許文献4】特開2007−291076号公報
【特許文献5】WO2007/083684 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らはこれまでに、アルコールから、そのアルコールより炭素数の多いオレフィンを生成する触媒として酸化インジウムが有効であることを見出した。しかし、当該酸化インジウム触媒においては、触媒活性・触媒寿命の観点で未だ改善の余地があった。
【0010】
以上から、アルコールを原料として、そのアルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを高い収率で効率よく製造できるオレフィンの製造方法、及びオレフィン製造用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0012】
[1] 酸化インジウムを含む酸化インジウム含有触媒の存在下、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法であって、前記アルコールを反応させる反応系に水及び/又は水素を共存させるオレフィンの製造方法。
[2] 前記アルコールと、前記触媒とを、ゲージ圧100kPaG以上で接触させる上記[1]に記載のオレフィンの製造方法。
[3] 前記アルコールがバイオエタノールである[1]又は[2]に記載のオレフィンの製造方法。
[4]前記オレフィンがプロピレンである[1]〜[3]のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【0013】
[5] アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するためのオレフィン製造用触媒であって、酸化インジウムと周期表における3〜6族及び9〜11族から選ばれる少なくとも1種の添加元素とを含み、かつインジウム元素のモル量が前記添加元素のモル量よりも大きいオレフィン製造用触媒。
[6] 前記添加元素が、スカンジウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニッケル、及び銅から選ばれる少なくとも1種である[5]に記載のオレフィン製造用触媒。
[7] 前記アルコールがバイオエタノールである[5]又は[6]に記載のオレフィン製造用触媒。
[8] 前記オレフィンがプロピレンである[5]〜[7]のいずれかに記載のオレフィン製造用触媒。
【0014】
[9] アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するためのオレフィン製造用触媒であって、酸化インジウムが酸性質を有する担体上に担持されてなるオレフィン製造用触媒。
[10] さらに、周期表における3〜6族及び9〜11族から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含む[9]に記載のオレフィン製造用触媒。
[11] 前記添加元素が、スカンジウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニッケル、及び銅から選ばれる少なくとも1種である[10]に記載のオレフィン製造用触媒。
[12] 前記酸性質を有する担体がゼオライトである[9]〜[11]のいずれかに記載のオレフィン製造用触媒。
[13] 前記アルコールがバイオエタノールである[9]〜[12]のいずれかに記載のオレフィン製造用触媒。
[14] 前記オレフィンがプロピレンである[9]〜[13]のいずれかに記載のオレフィン製造用触媒。
【0015】
[15] 上記[5]〜[14]のいずれかに記載のオレフィン製造用触媒の存在下、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法。
[16] 前記アルコールを反応させる反応系に水及び/又は水素を共存させる[15]に記載のオレフィンの製造方法。
[17] 前記アルコールがバイオエタノールである[15]又は[16]に記載のオレフィンの製造方法。
[18] 前記オレフィンがプロピレンである[15]〜[17]のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アルコールを原料として、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを高い収率で効率よく製造できるオレフィンの製造方法、及びオレフィン製造用触媒を提供することができる。
また、有用な化学品を効率よく製造することが可能となり、貴重な石油資源の消費抑制や化石燃料を起源とする二酸化炭素の排出量の抑制を図ることができる。特に、バイオアルコールを原料に用いることによる、LCA(Life Cycle Assessment)の観点から原料のカーボンニュートラル化にも寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[オレフィンの製造方法]
本発明のオレフィンの製造方法は、酸化インジウムを含む酸化インジウム含有触媒の存在下、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法であって、アルコールを反応させる反応系に水及び/又は水素を共存させるものである。
反応系に水や水素を共存させることで炭素析出に起因する触媒劣化を抑制できるため、高い収率で、原料アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを効率よく製造することができる。
【0018】
上記反応は、固定床、移動床、流動床等どのような形式でも実施できるが、粉末状もしくは成型した触媒を充填した管状反応器に、アルコールと水及び/又は水素とを供給する固定床型反応で実施することが好ましい。
当該反応における空間速度は、300〜6500h-1とすることが好ましく、300〜4000h-1とすることがより好ましい。
反応温度は250〜600℃であることが好ましく、300〜550℃であることがより好ましく、350〜550℃であることがさらに好ましい。
反応圧力は、減圧、常圧(0kPaG)、加圧のいずれでも実施できるが、通常は、常圧〜やや加圧の雰囲気で実施される。原料アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンをより長時間生成できる点を考慮すると、100kPaG以上とすることが好ましく、100〜400kPaGとすることがより好ましい。
また、本反応は、窒素、炭化水素ガス等の共存下でも実施することができる。
【0019】
水の添加量は、供給するガス中で1〜70容量%であることが好ましく、5〜50容量%であることがより好ましい。水素の添加量は、供給するガス中で1〜70容量%であることが好ましく、5〜50容量%であることがより好ましい。
【0020】
インジウム含有触媒としては、インジウム酸化物及びインジウムを含む複合酸化物のいずれかからなる触媒を用いることが好ましい。インジウム含有触媒の好適な一例として、酸化インジウム(In23)が挙げられる。酸化インジウムの種類としては、立方晶又はアモルファス等を例示することができる。インジウム含有触媒におけるインジウムの含有量(酸化物換算)は、1〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。1〜100質量%であることで触媒活性やプロピレンの選択性を高い状態とすることができる。
【0021】
インジウム含有触媒は、金属成分を含む塩(硝酸塩、硫酸塩、塩化物など)を空気中でそのまま焼成する方法や、該金属成分を含む水溶液に、アンモニア水等の塩基を滴下して沈殿を形成させ、濾過後焼成する方法により得ることができる。
【0022】
本発明において、原料であるアルコールは生物資源由来のエタノール(例えば、バイオエタノール)であることが好ましい。また、製造されるオレフィンはプロピレンであることが好ましい。さらに、インジウム含有触媒としては、後述する本発明のオレフィン製造用触媒を適用することもできる。
【0023】
[オレフィン製造用触媒]
(第1のオレフィン製造用触媒)
本発明の第1のオレフィン製造用触媒は、アルコールから、そのアルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するためのオレフィン製造用触媒であって、酸化インジウムと周期表における3〜6族及び9〜11族から選ばれる添加元素とを含み、かつインジウム元素のモル量が添加元素のモル量よりも大きい触媒である。当該触媒は酸化インジウムを主成分とし、添加元素を含有する触媒である。
本発明のように、酸化インジウムを主成分とすることでアルコールから、そのアルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを効率よく製造することが可能となり、添加元素との複合効果によって、1以上大きいオレフィンを高収率で製造することができ、また触媒劣化の抑制も可能となる。
【0024】
添加元素のモル量は、インジウム元素のモル量に対して、0.1〜50モル%であることが好ましく、1〜30モル%であることがより好ましく、5〜20モル%であることがさらに好ましい。0.1〜50モル%であることで炭素数が1以上多いオレフィンの高収率化と触媒劣化の抑制とを両立させることができる。
【0025】
添加元素は、スカンジウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニッケル、及び銅から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
本発明の第1のオレフィン製造用触媒を作製するには、まず、インジウムを含む塩(硝酸塩、硫酸塩、塩化物等)を空気中でそのまま焼成する方法や、該金属成分を含む水溶液に、アンモニア水等の塩基を滴下して沈殿を形成させ、濾過後焼成する方法により酸化インジウムを作製する。その後、添加元素を含む前駆体を含浸法やイオン交換法等で担持させて適宜熱処理を施して作製する。
また、別の方法としては、インジウムを含む塩と同時に添加元素の塩(硝酸塩、硫酸塩、塩化物等)を一緒に混合して焼成する方法や、当該添加成分とインジウム成分を含む水溶液に、アンモニア水等の塩基を滴下して同時に沈殿を形成させ、濾過後焼成する方法等もある。
【0027】
(第2のオレフィン製造用触媒)
本発明の第2のオレフィン製造用触媒は、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するためのオレフィン製造用触媒であって、酸化インジウムが酸性質を有する担体上に担持されてなる。
【0028】
「酸性質を有する担体」とは、酸触媒反応に対して活性を示す物質である。ここで,酸触媒反応として,不飽和炭化水素の二重結合異性化反応やアルコールの脱水反応等を挙げることができる。このような性質を有する担体として、シリカ・アルミナ、ゼオライト、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、チタニア・ジルコニア、リン酸ジルコニウム、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、ゼオライトであることがより好ましい。ゼオライトは多孔質であり、反応に有効な酸点を豊富に有するため担体としては好適である。
【0029】
上記担体に担持する方法としては含浸法、イオン交換法、物理混合法等が挙げられる。酸化インジウムの担持量は1質量%以上とすることが好ましく、2質量%以上とすることがより好ましい。1質量%以上とすることで、触媒活性や、プロピレン選択率を良好なものとすることができる。また、酸化インジウムの担持量は80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明の第2のオレフィン製造用触媒においても、周期表における3〜6族及び9〜11族から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含むことが好ましい。この場合の添加元素の詳細としては、第1のオレフィン製造用触媒の添加元素と同様である。
【0031】
本発明の第1及び第2のオレフィン製造用触媒による接触反応の原料であるアルコールとしては、生物資源由来のエタノール(例えばバイオエタノール)であることが好ましい。また、製造されるオレフィンとしては、プロピレンであることが好ましい。
【0032】
以上のような本発明の第1又は第2のオレフィン製造用触媒の存在下で、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを高収率で効率よく製造することができる。アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを得るための反応条件は、既述の本発明のオレフィンの製造方法で説明した条件を適宜採用することができる。
【実施例】
【0033】
[参考例1]
(触媒Aの調製)
市販の酸化インジウム試薬(関東化学製)を700℃、5時間焼成し、0.3〜0.6mmに整粒して酸化インジウム触媒(触媒A)を調製した。
【0034】
(触媒評価)
触媒の評価は、通常の常圧式流通反応装置を用いて行った。触媒Aを2g石英製反応管に充填し、エタノール濃度が30vol%であるエタノール/窒素混合ガスを13ml/minの速度で反応管へ供給し、反応温度を550℃にて反応を行った。生成物の分析は、オンラインガスクロマトグラフィーにて分析を行った。反応開始1時間後と3時間後の分析結果を表1に示す。
【0035】
[実施例1]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例1中の触媒評価において、反応管への供給ガスをエタノール濃度が30vol%、水濃度が8vol%であるエタノール/水/窒素混合ガスを13ml/minとしたこと以外は同様とした。反応開始1時間後と3時間後の分析結果を表1に示す。
なお、表1中の「活性維持率」は、(3時間後のプロピレン収率+ブテン収率)/(1時間後のプロピレン収率+ブテン収率)の式から求めたもので、値が高いほど触媒劣化が抑えられていることを示す。
【0036】
[実施例2]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例1中の触媒評価において、反応管への供給ガスをエタノール濃度が30vol%、水素濃度が31vol%であるエタノール/水素/窒素混合ガスを13ml/minとしたこと以外は同様とした。反応開始1時間後と3時間後の分析結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例1中の触媒評価において、反応管への供給ガスをエタノール濃度が30vol%、水濃度が8vol%、水素濃度が31vol%であるエタノール/水/水素/窒素混合ガスを13ml/minとしたこと以外は同様とした。反応開始1時間後と3時間後の分析結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、実施例1から3において、参考例1と比較して、原料アルコールの炭素数よりも炭素数が増加したオレフィン(本実施例の場合、プロピレン・ブテン)の収率が著しく向上しており、さらにこれらのオレフィン収率の低下も改善されている。酸化インジウム触媒の低いオレフィン収率と活性劣化を劇的に改善することできた。
【0040】
[参考例2]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例1中の触媒評価において、反応温度を500℃としたこと以外は同様とした。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0041】
[実施例4]
(触媒Bの調製)
触媒Aに対して、酢酸スカンジウム(添川理化学製)の水溶液を含浸し、その後800℃、5時間焼成することによりスカンジウムを担持させた酸化インジウム触媒(触媒B)を調製した。このとき、スカンジウムの量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0042】
(触媒評価)
触媒Bの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0043】
[実施例5]
(触媒Cの調製)
実施例4の触媒調製において、酢酸スカンジウムの替わりに硝酸ジルコニル二水和物(和光純薬工業製−和光一級)を用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、ジルコニウムを担持させた酸化インジウム触媒(触媒C)を調製した。このとき、ジルコニウムの量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0044】
(触媒評価)
触媒Cの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0045】
[実施例6]
(触媒Dの調製)
実施例4の触媒調製において、酢酸スカンジウムの替わりにバナジン(V)酸アンモニウム(和光純薬工業製−試薬特級)を用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、バナジウムを担持させた酸化インジウム触媒(触媒D)を調製した。このとき、バナジウムの量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0046】
(触媒評価)
触媒Dの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0047】
[実施例7]
(触媒Eの調製)
実施例4の触媒調製において、酢酸スカンジウムの替わりに七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(和光純薬工業製−試薬特級)を用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、モリブデンを担持させた酸化インジウム触媒(触媒E)を調製した。このとき、モリブデンの量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0048】
(触媒評価)
触媒Eの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0049】
[実施例8]
(触媒Fの調製)
実施例4の触媒調製において、酢酸スカンジウムの替わりに硝酸コバルト(II)六水和物(和光純薬工業製−和光特級)を用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、コバルトを担持させた酸化インジウム触媒(触媒F)を調製した。このとき、コバルトの量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0050】
(触媒評価)
触媒Fの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0051】
[実施例9]
(触媒Gの調製)
実施例4の触媒調製において、酢酸スカンジウムの替わりに硝酸ニッケル(II)六水和物(和光純薬工業製)を用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、ニッケルを担持させた酸化インジウム触媒(触媒G)を調製した。このとき、ニッケルの量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0052】
(触媒評価)
触媒Gの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0053】
[実施例10]
(触媒Hの調製)
実施例4の触媒調製において、酢酸スカンジウムの替わりに硝酸銅(II)三水和物(和光純薬工業製−和光特級)を用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、銅を担持させた酸化インジウム触媒(触媒H)を調製した。このとき、銅の量がインジウムに対して10モル%となるように含浸液の量を調整した。
【0054】
(触媒評価)
触媒Hの評価は、参考例2と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示すように、実施例4〜10は、参考例2と比較して、原料アルコールの炭素数よりも炭素数が増加したオレフィン(本実施例の場合、プロピレン・ブテン)の収率が著しく改善されている。このように、酸化インジウム触媒の低いオレフィン収率をより向上させることができた。
【0057】
[参考例3]
(触媒Iの調製)
市販のシリカ試薬(富士シリアル製キャリアクト)に、硝酸インジウム水溶液を含浸し、それを700℃、5時間焼成することにより酸化インジウムを担持したシリカ触媒(触媒I)を調製した。このとき、酸化インジウムの担持量が40wt%となるように含浸液の量を調整した。
【0058】
(触媒評価)
触媒の評価は、通常の常圧式流通反応装置を用いて行った。触媒Iを2g石英製反応管に充填し、エタノール濃度が30vol%であるエタノール/窒素混合ガスを13ml/minの速度で反応管へ供給し、反応温度を500℃にて反応を行った。生成物の分析は、オンラインガスクロマトグラフィーにて分析を行った。反応開始1時間後分析結果を表3に示す。
【0059】
[実施例11]
(触媒Jの調製)
参考例3において、シリカの代わりに市販のアルミナ試薬(日揮ユニバーサル製)を用いた以外は同様にして行い、酸化インジウムを担持したアルミナ触媒(触媒J)を調製した(整粒後の粒径:0.3〜0.6mm)。このとき、酸化インジウムの担持量が40wt%となるように含浸液の量を調整した。
【0060】
(触媒評価)
触媒Jの評価は、参考例3と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表3に示す。
【0061】
[実施例12]
(触媒Kの調製)
参考例3において、シリカの代わりに市販のZSM−5ゼオライト(ゼオリスト製)を用いた以外は同様にして行い、酸化インジウムを担持したZSM−5触媒(触媒K)を調製した。このとき、酸化インジウムの担持量が20wt%となるように含浸液の量を調整した。
【0062】
(触媒評価)
触媒Kの評価は、参考例3と同様にして行った。反応開始1時間後の分析結果を表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示すように、酸性質を示す担体に担持した酸化インジウム触媒(実施例11、12)は、酸性質を示さない担体に担持した酸化インジウム触媒(参考例3)と比較して、原料アルコールの炭素数よりも炭素数が増加したオレフィン(本実施例の場合、プロピレン及びブテン)の収率が著しく改善されている。このように、酸化インジウム触媒の低いオレフィン収率をより向上させることができた。
【0065】
[参考例4]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。触媒A2.5gを石英製反応管に充填し、エタノール濃度が33vol%であるエタノール/窒素混合ガスを13ml/minの速度で反応管へ供給し、反応温度を525℃、反応圧力を0kPaGにて反応を行った。生成物の分析は、オンラインガスクロマトグラフィーにて分析を行った。生成物の分析結果を表4に示す。
なお、表4中の「C36収率<Acetone収率となる時間」は触媒寿命の指標であり、値が高いほど触媒劣化が抑えられていることを示す。これは、本反応がエタノールからアセトンを経由してプロピレンが生成するためである。
【0066】
[参考例5]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例4中の触媒評価において反応圧力を100kPaGとしたこと以外は同様とした。生成物の分析結果を表4に示す。
【0067】
[参考例6]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例4中の触媒評価において反応圧力を200kPaGとしたこと以外は同様とした。生成物の分析結果を表4に示す。
【0068】
[参考例7]
(触媒評価)
参考例1と同様に、触媒Aを用いた。評価条件は、参考例4中の触媒評価において反応圧力を400kPaGとしたこと以外は同様とした。生成物の分析結果を表4に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
表4に示すように、参考例5〜7は、参考例4と比較して原料アルコールの炭素数よりも炭素数が増加したオレフィン(本実施例の場合、プロピレン及びブテン)の収率を大きく変えずに、触媒劣化を抑制することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化インジウムを含む酸化インジウム含有触媒の存在下、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法であって、
前記アルコールを反応させる反応系に水及び/又は水素を共存させるオレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記アルコールと、前記触媒とを、ゲージ圧100kPaG以上で接触させる請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記アルコールがバイオエタノールである請求項1又は2に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記オレフィンがプロピレンである請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項5】
アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するためのオレフィン製造用触媒であって、
酸化インジウムと周期表における3〜6族及び9〜11族から選ばれる少なくとも1種の添加元素とを含み、かつインジウム元素のモル量が前記添加元素のモル量よりも大きいオレフィン製造用触媒。
【請求項6】
前記添加元素が、スカンジウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニッケル、及び銅から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項7】
前記アルコールがバイオエタノールである請求項5又は6に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項8】
前記オレフィンがプロピレンである請求項5〜7のいずれか1項に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項9】
アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するためのオレフィン製造用触媒であって、
酸化インジウムが酸性質を有する担体上に担持されてなるオレフィン製造用触媒。
【請求項10】
さらに、周期表における3〜6族及び9〜11族から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含む請求項9に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項11】
前記添加元素が、スカンジウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニッケル、及び銅から選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項12】
前記酸性質を有する担体がゼオライトである請求項9〜11のいずれか1項に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項13】
前記アルコールがバイオエタノールである請求項9〜12のいずれか1項に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項14】
前記オレフィンがプロピレンである請求項9〜13のいずれか1項に記載のオレフィン製造用触媒。
【請求項15】
請求項5〜14のいずれか1項に記載のオレフィン製造用触媒の存在下、アルコールから、該アルコールよりも炭素原子数が1以上多いオレフィンを製造するオレフィンの製造方法。
【請求項16】
前記アルコールを反応させる反応系に水及び/又は水素を共存させる請求項15に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項17】
前記アルコールがバイオエタノールである請求項15又は16に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項18】
前記オレフィンがプロピレンである請求項15〜17のいずれか1項に記載のオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2013−6831(P2013−6831A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115088(P2012−115088)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年9月26日付け委託契約(平成22年3月19日付け変更契約)、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(先導技術開発)/セルロース系バイオマスエタノールからプロピレンを製造するプロセス開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】