説明

オレフィンの製造法

【課題】 目的とするオレフィンを高収率で得ることができる、オレフィンの製造法の提供。
【解決手段】 60kPa(絶対圧)以上の圧力にて、下記成分(i)又は(ii)の存在下、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体の脱カルボニル反応を行う、オレフィンの製造法。
(i)鉄元素を含む触媒とヨウ化物の混合物
(ii)鉄元素ならびにヨウ素元素を含む化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体を原料とするオレフィンの製造法に関する。更に詳しくは、界面活性剤、種々の化学薬品、医薬品の中間原料として好適に用いられるオレフィンの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
目的とする鎖長のオレフィンを製造する方法としては、エチレンなど低鎖長オレフィンをオリゴマー化し、αオレフィンを合成する方法が一般に知られている。しかし、このオリゴマー化経由での合成では重合度に分布を有するため目的とする鎖長のオレフィンのみを高収率で得ることができない。
【0003】
また、カルボン酸からオレフィンを製造する方法として、Pd錯体触媒を用いた、カルボン酸からオレフィンを合成する方法(特許文献1)、第8族金属、第9族金属、第10族金属及び銅から選ばれる元素を含む触媒と酸無水物の存在下、カルボン酸からαオレフィンを合成する方法(特許文献2)、Pd錯体触媒、ピバル酸無水物を用いたカルボン酸からαオレフィンを合成する方法(非特許文献1)が知られている。これらの方法は、効率的にオレフィンを得るために、特殊な添加剤を用いたり、又は反応温度を250℃以上の高温としているにもかかわらず、目的とするオレフィンの収率は満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3530198号明細書
【特許文献2】米国特許第5077447号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem. Commun., 724, (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、目的とするオレフィンを高収率で得ることができる、オレフィンの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、60kPa(絶対圧)以上の圧力にて、鉄元素を含む触媒とヨウ化物の存在下、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体の脱カルボニル反応を行う、オレフィンの製造法を提供する(以下、態様1という)。
【0008】
本発明はまた、60kPa(絶対圧)以上の圧力にて、鉄元素ならびにヨウ素元素を含む化合物を触媒として用いる、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体からのオレフィンの製造法を提供する(以下、態様2という)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造法により、界面活性剤などの基剤及び種々の化合物の中間原料として好適に用いられるオレフィンを、カルボン酸又はその誘導体を原料として、高収率で合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[態様1]
本発明の態様1に用いられるβ水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体は、カルボニル基のβ位に少なくとも1つの水素原子を有するものであれば特に限定されず、飽和体でも不飽和体でも、一部環状になったものでも、ヘテロ原子を含むものでも、カルボニル基を複数有するものでもよいが、飽和1価カルボン酸又はその誘導体が好ましい。β水素原子を有するカルボン酸誘導体としては、β水素原子を有するカルボン酸無水物、β水素原子を有するカルボン酸ハロゲン化物、β水素原子を有するカルボン酸エステル、β水素原子を有するカルボン酸アミドが挙げられ、β水素原子を有するカルボン酸無水物、β水素原子を有するカルボン酸ハロゲン化物が好ましく、β水素原子を有するカルボン酸無水物がより好ましい。
【0011】
β水素原子を有するカルボン酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等が挙げられる。
【0012】
β水素原子を有するカルボン酸無水物の具体例としては、カプロン酸無水物、カプリル酸無水物、カプリン酸無水物、ラウリン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、ベヘン酸無水物、3−フェニルプロピオン酸無水物、アジピン酸無水物、アゼライン酸無水物、エイコサン酸無水物、9−デセン酸無水物、10−ウンデセン酸無水物、オレイン酸無水物、2,4−ヘキサジエン酸無水物、3−メチルブタン酸無水物、6−オクタデシン酸無水物、ヒドノカルピン酸無水物、ゴルリン酸無水物、リシノール酸無水物、コハク酸無水物等、あるいはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸や、上記β水素原子を有するカルボン酸の具体例で挙げられたカルボン酸と、上記β水素原子を有するカルボン酸の具体例で挙げられたカルボン酸との異なるカルボン酸同士が縮合したカルボン酸無水物が挙げられる。
【0013】
β水素原子を有するカルボン酸ハロゲン化物の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等の塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物が挙げられる。
【0014】
β水素原子を有するカルボン酸エステルの具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等のメチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0015】
β水素原子を有するカルボン酸アミドの具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等のアミド、モノメチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等が挙げられる。
【0016】
β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体としては、カルボン酸又はカルボン酸残基の炭素数(カルボン酸無水物の場合は少なくとも1つのカルボン酸残基の炭素数)が3〜22のものが好ましく、8〜18のものがより好ましく、12〜18のものが更に好ましい。なお、不飽和カルボン酸又はその誘導体を原料に用いた場合は、原料よりも二重結合の数が1つ多いオレフィンとなる。
【0017】
本発明の態様1において用いる触媒は、鉄元素を含む触媒である。鉄元素を含む触媒としては、具体的には、FeCl、FeCl、FeBr、FeBr、FeI、FeI、CpFe、CpFe、CpFe(DPPE)、FeCl(PPh、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、りん酸鉄(III)、硫化鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、水酸化鉄(III)、鉄アルコキシド(II)、鉄アルコキシド(III)、脂肪酸鉄(II)、脂肪酸鉄(III)などが挙げられ(Cpはシクロペンタジエニル、Cpはペンタメチルシクロペンタジエニル、DPPEは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、PPhはトリフェニルホスフィンを示す)、FeCl、FeCl、脂肪酸鉄(II)が好ましく、FeClがより好ましい。
【0018】
本発明の態様1において、鉄元素を含む触媒の使用量は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体1モルに対し、鉄原子あたり0.00001〜0.8モルが好ましく、0.0001〜0.5モルがより好ましく、0.001〜0.4モルがより好ましく、0.005〜0.3モルが特に好ましい。
【0019】
本発明の態様1に用いられるヨウ化物としては、特に限定されるものではないが、第1族元素〜第14族元素から選ばれる元素のヨウ化物、又は下記一般式(1)で示される4級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0020】
[R−(Y) (1)
(ここで、Rは炭素数1〜22の炭化水素基を示し、Yは−Z−(CH)−で示される基を示し、Zはエーテル基、アミノ基、アミド基又はエステル基、より具体的には−O−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−COO−又は−OCO−、mは1〜6の数を示し、nは0又は1を示し、複数個のR、Y及びnはそれぞれ同一でも異なっていても良い。また、[R−(Y)]同士の間で環状構造を形成していてもよい。)
第1族元素〜第14族元素から選ばれる元素のヨウ化物としては、特に限定されるものではないが、第1族元素、第11族元素及び第12族元素から選ばれる元素のヨウ化物が好ましい。具体的にはKI、CuI、LiI、NaI、ZnI等を挙げることができ、KI、NaIが好ましい。
【0021】
一般式(1)で示される4級アンモニウム化合物としては、Rが炭素数1〜7のアルキル基、又はベンジル基(好ましくは炭素数1〜7のアルキル基)であって、nが0である4級アンモニウム化合物が好ましく、Et、(n−Butyl)(ここでEtはエチル基、n−Butylはn−ブチル基を示す)等がより好ましく、特にEtが好ましい。
【0022】
本発明の態様1において、ヨウ化物の使用量は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体1モルに対し、0.001〜10モルが好ましく、0.01〜3モルがより好ましい。
【0023】
本発明の態様1において、鉄元素を含む触媒は、第15族元素を含む配位子と組み合わせて用いることが好ましい。第15族元素を含む配位子としては、N−複素環カルベン系配位子、2,2−ビピリジルやピリジン等のピリジン系配位子、ヒ素系配位子、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系配位子、イソニトリル系の配位子、有機リン系配位子等が好ましく、有機リン系配位子がより好ましい。具体的な有機リン系配位子としては、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(パラ−メトキシフェニル)ホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等が挙げられ、それらのうち、トリフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが好ましく、トリフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンがより好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。これらの配位子は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
第15族元素を含む配位子の使用量は、良好な触媒の安定性及び反応速度を得る観点から、鉄元素を含む触媒中の鉄原子1モルに対して、触媒が元々有するものも含めて配位原子換算で0.3〜100モルの範囲であるのが好ましく、0.5〜20モルの範囲であるのがより好ましく、2〜10モルの範囲であるのが特に好ましい。
【0025】
本発明の態様1における脱カルボニル反応は、60kPa(絶対圧)以上の圧力にて行う。良好な触媒の安定性及び反応速度を得る観点から、100kPa〜6000kPa(絶対圧)が好ましく、特に200kPa〜2500kPa(絶対圧)がより好ましい。
【0026】
反応系内に導入するガスは、良好な触媒の安定性及び反応速度を得る観点から、具体的には、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。
【0027】
本発明の態様1における脱カルボニル反応の温度は、オレフィンの良好な選択性を得る観点から、20〜300℃が好ましく、80〜270℃がより好ましく、120〜260℃がさらに好ましい。
【0028】
本発明の態様1においては、β水素原子を有さない酸無水物を添加しなくても反応は進行するが、β水素原子を有さない酸無水物を加えることによっても反応が進行する。その場合、β水素原子を有さない酸無水物の使用量は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体1モルに対して、10モル以下が好ましく、2モル以下がより好ましい。また、β水素原子を有さない酸無水物の使用量は、0.01モル以上がより好ましい。β水素原子を有さない酸無水物としては無水酢酸、無水ピバル酸が好ましく、特に無水酢酸が好ましい。
【0029】
[態様2]
本発明の態様2において、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体は、態様1について記載したものを用いることができる。本発明の態様2においては、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体としては、カルボン酸又はカルボン酸残基の炭素数(カルボン酸無水物の場合は少なくとも1つのカルボン酸残基の炭素数)は3〜22が好ましく、3〜18がより好ましい。
【0030】
本発明の態様2において用いる触媒は、鉄元素ならびにヨウ素元素を含む化合物である。かかる化合物の具体例としては、FeI、FeIなどが挙げられ、FeIが好ましい。
【0031】
本発明の態様2において、触媒の使用量は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体1モルに対し、鉄原子あたり0.00001〜0.8モルが好ましく、0.0001〜0.5モルがより好ましく、0.001〜0.4モルがより好ましく、0.005〜0.3モルが特に好ましい。
【0032】
本発明の態様2において、鉄元素ならびにヨウ素元素を含む化合物は、第15族元素を含む配位子と組み合わせて用いてもよい。第15族元素を含む配位子としては、N−複素環カルベン系配位子、2,2−ビピリジルやピリジン等のピリジン系配位子、ヒ素系配位子、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系配位子、イソニトリル系の配位子、有機リン系配位子等が挙げられ、用いる場合には有機リン系配位子が好ましい。有機リン系配位子の具体例は、態様1について記載した通りである。それらのうち、態様2においては、トリフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。これらの配位子は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
第15族元素を含む配位子の使用量は、オレフィンの生産性、操業性の観点から、触媒中の鉄原子1モルに対して、触媒が元々有するものも含めて配位原子換算で100モル未満であるのが好ましく、12モル未満であるのがより好ましく、4モル未満であるのが特に好ましい。
【0034】
本発明の態様2における脱カルボニル反応は、60kPa(絶対圧)以上の圧力にて行う。良好な触媒の安定性及び反応速度を得る観点から、100kPa〜6000kPa(絶対圧)が好ましく、特に200kPa〜2500kPa(絶対圧)がより好ましい。
反応系内に導入するガスは、良好な触媒の安定性及び反応速度を得る観点から、具体的には、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。
【0035】
本発明の態様2における脱カルボニル反応の温度は、オレフィンの良好な選択性を得る観点から、20〜300℃が好ましく、80〜270℃がより好ましく、120〜260℃がさらに好ましい。
【0036】
本発明の態様2においては、β水素原子を有さない酸無水物を添加しなくても反応は進行するが、β水素原子を有さない酸無水物を加えることによっても反応が進行する。その場合、β水素原子を有さない酸無水物の使用量は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体1モルに対して、10モル以下が好ましく、2モル以下がより好ましい。また、β水素原子を有さない酸無水物の使用量は、0.01モル以上がより好ましい。β水素原子を有さない酸無水物としては無水酢酸、無水ピバル酸が好ましく、特に無水酢酸が好ましい。
【0037】
本発明の上記態様1及び2の方法により得られるオレフィンとしては、末端に二重結合を持つ構造のみでなく、それらから異性化した内部に二重結合を持つ内部オレフィンであってもよい。
【0038】
本発明の方法により得られるオレフィンは、界面活性剤、種々の化学薬品、医薬品の中間原料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、特に断らない限り、「%」は「モル%」を表す。なお、態様1の実施例については「実施例1−n」と番号を付す。また、態様2の実施例については「実施例2−n」と番号を付す。
【0040】
実施例1−1
セプタム付きねじ口試験管に撹拌子と、ステアリン酸 142.2mg(0.5mmol)、FeCl 12.7mg(0.1mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh) 52.4mg(0.2mmol)、ヨウ化カリウム 83.0mg(1.0mmol)を加え、窒素雰囲気下、103kPa(絶対圧)、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。低沸分を減圧留去したのち、内部標準としてアニソールを加え、H−NMR測定より、生成物を定量した(生成物の定量は、ステアリン酸のα位のプロトン、末端オレフィンのビニルプロトン、内部オレフィンのビニルプロトン、内部標準であるアニソールのメチル基との積分比を比較することにより行った)。
【0041】
仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率38%(末端オレフィン:内部オレフィン(モル比)=16:84)で得られた。
【0042】
実施例1−2及び1−3
触媒、ヨウ化物及び配位子の量を表1に示すものへと変えた以外は実施例1−1と同様に行った。
【0043】
比較例1−1
ヨウ化物を使用しなかった以外は実施例1−1と同様に行った。
【0044】
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1の結果をまとめて表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1−4
セプタム付きねじ口試験管に撹拌子と、ステアリン酸 142.2mg(0.5mmol)、FeCl 12.7mg(0.1mmol)、トリフェニルホスフィン 52.4mg(0.2mmol)、ヨウ化カリウム 83.0mg(1.0mmol)、無水酢酸 51.0mg(0.5mmol)を加え、窒素雰囲気下、103kPa、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。低沸分を減圧留去したのち、実施例1−1と同様にH−NMR測定より、生成物を定量した。
【0047】
仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率94%(末端オレフィン:内部オレフィン(モル比)=31:69)で得られた。
【0048】
実施例1−5〜1−8
触媒、ヨウ化物及び配位子の量及び/又は種類を表2に示すものへと変えた以外は実施例1−4と同様に行った。
【0049】
実施例1−4〜1−8の結果をまとめて表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例1−9〜1−10
配位子の量を表3に示すものへと変えた以外は実施例1−3と同様に行った。
【0052】
実施例1−3、1−9〜1−10の結果をまとめて表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例1−11
セプタム付きねじ口試験管に攪拌子と、ステアリン酸284.5g(1.0mmol)、FeCl 6.4mg(0.05mmol)、トリフェニルホスフィン26.2mg(0.1mmol)、ヨウ化カリウム83.0mg(1.0mmol)を加え、一酸化炭素にて置換し、103kPa(絶対圧)を維持しながら、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。反応混合物をジエチルエーテルで溶解させ、セライトろ過した後、低沸分を減圧留去した。その後、実施例1−1と同様にH−NMR測定より、生成物を定量した。
【0055】
仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率26%(末端オレフィン:内部オレフィン(モル比)=15:85)で得られた。
【0056】
実施例1−12〜1−15
セプタム付きねじ口試験管の代わりに30mLステンレス製オートクレーブを用い、表4に示す充填ガスの種類、圧力に変えた以外は実施例1−11と同様に行った。
【0057】
比較例1−2
20mLナスフラスコに攪拌子と、ステアリン酸284.5g(1.0mmol)、FeCl 6.4mg(0.05mmol)、トリフェニルホスフィン26.2mg(0.1mmol)、ヨウ化カリウム83.0mg(1.0mmol)を加え、窒素置換した後、真空ポンプをつなぎ、50kPa(絶対圧)を維持しながら、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。反応混合物をジエチルエーテルで溶解させ、セライトろ過した後、低沸分を減圧留去した。その後、実施例1−1と同様にH−NMR測定より、生成物を定量した。
オレフィンは得られなかった。
【0058】
実施例1−11〜1−15及び比較例1−2の結果をまとめて表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例1−16
セプタム付きねじ口試験管に攪拌子と、ステアリン酸284.5g(1.0mmol)、FeCl 12.7mg(0.1mmol)、ヨウ化カリウム84.0mg(1.0mmol)、無水酢酸102.0mg(1.0mmol)を加え、窒素にて置換した後、103kPa(絶対圧)を維持しながら、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。反応混合物をジエチルエーテルで溶解させ、セライトろ過した後、低沸分を減圧留去した。その後、実施例1−1と同様にH−NMR測定より、生成物を定量した。
【0061】
仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率56%(末端オレフィン:内部オレフィン(モル比)=13:87)で得られた。
【0062】
実施例1−17〜1−18
セプタム付きねじ口試験管の代わりに30mLステンレス製オートクレーブを用い、表5に示す充填ガスの種類、圧力、反応時間に変えた以外は実施例1−16と同様に行った。
【0063】
実施例1−19〜1−21
セプタム付きねじ口試験管の代わりに30mLステンレス製オートクレーブを用い、表5に示す充填ガスの種類、圧力、反応時間、および新たに配位子を添加した以外は実施例1−16と同様に行った。
【0064】
実施例1−16〜1−21の結果をまとめて表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
実施例1−22
セプタム付きねじ口試験管に撹拌子と、無水ステアリン酸 275.5mg(0.5mmol)、FeCl 6.4mg(0.05mmol)、トリフェニルホスフィン 26.2mg(0.1mmol)、ヨウ化カリウム41.5mg(0.5mmol)、を加え、窒素雰囲気下、103kPa(絶対圧)、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。低沸分を減圧留去したのち、実施例1−1と同様にH−NMR測定より、生成物を定量した。
【0067】
仕込み無水ステアリン酸に対してオレフィンが収率128%(末端オレフィン:内部オレフィン(モル比)=9:91)で得られた。
【0068】
実施例1−23〜1−25
触媒、ヨウ化物及び配位子の量、反応温度、反応時間を表6に示すものへと変えた以外は実施例1−22と同様に行った。
【0069】
比較例1−3
ヨウ化物を使用しなかった以外は実施例1−22と同様に行った。
【0070】
実施例1−22〜1−25及び比較例1−3の結果をまとめて表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
実施例2−1
セプタム付きねじ口試験管に撹拌子と、ステアリン酸 142.2mg(0.5mmol)、FeI 31.0mg(0.1mmol)、トリフェニルホスフィン 52.4mg(0.2mmol)を加え、窒素雰囲気下、103kPa(絶対圧)、250℃で攪拌を行った。3時間後、加熱をやめ、室温(25℃)になるまで放置した。低沸分を減圧留去したのち、実施例1−1と同様にH−NMR測定より、生成物を定量した。
【0073】
仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率47%(末端オレフィン:内部オレフィン(モル比)=15:85)で得られた。
【0074】
実施例2−1及び比較例1−1の結果をまとめて表7に示す。
【0075】
【表7】

【0076】
なお、各実施例及び各比較例で使用した原料は、以下のとおりである。
・ステアリン酸:Nacalai Tesque社製、品番 32202−25
・無水ステアリン酸:東京化成工業社製、品番 S0083
・FeCl:Aldrich社製、品番 37287−0
・FeCl:Aldrich社製、品番 157740
・FeI:Strem Chemicals社製、品番 93−2635
・トリフェニルホスフィン:Nacalai Tesque社製、品番 35312−82
・DPPE:東京化成工業社製、品番 B1137
・ヨウ化カリウム:和光純薬工業社製、品番 162−19642
・無水酢酸:Nacalai Tesque社製、品番 00226−15

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60kPa(絶対圧)以上の圧力にて、鉄元素を含む触媒とヨウ化物の存在下、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体の脱カルボニル反応を行う、オレフィンの製造法。
【請求項2】
β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体が、β水素原子を有するカルボン酸又はβ水素原子を有するカルボン酸無水物である、請求項1記載のオレフィンの製造法。
【請求項3】
ヨウ化物が、第1族元素〜第14族元素から選ばれる元素のヨウ化物、又は下記一般式(1)で示される4級アンモニウム化合物である、請求項1又は2記載のオレフィンの製造法。
[R−(Y) (1)
(ここで、Rは炭素数1〜22の炭化水素基を示し、Yは−Z−(CH)−で示される基を示し、Zはエーテル基、アミノ基、アミド基又はエステル基、mは1〜6の数を示し、nは0又は1を示し、複数個のR、Y及びnはそれぞれ同一でも異なっていても良い。また、[R−(Y)]同士の間で環状構造を形成していてもよい。)
【請求項4】
60kPa(絶対圧)以上の圧力にて、鉄元素ならびにヨウ素元素を含む化合物を触媒として用いる、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体からのオレフィンの製造法。
【請求項5】
β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体が、β水素原子を有するカルボン酸又はβ水素原子を有するカルボン酸無水物である、請求項4記載のオレフィンの製造法。

【公開番号】特開2011−168528(P2011−168528A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33368(P2010−33368)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】