説明

オレフィンの重合方法

【課題】オレフィンの重合方法。
【解決手段】 下記の(a)〜(c)の段階を有する:
(a)オレフィン含有炭化水素フィードストックを、担体上に堆積させたニッケルを含む収着剤上を通過させ、この場合、上記ニッケルは酸化ニッケルおよび金属ニッケルとして存在し、(b)一種または複数のメタロセン触媒上で上記炭化水素フィードストックに含まれるオレフィンの一部をポリマーに変換し、(c)得られたポリマーを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合方法に関するものである。
本発明は特に、プロピレンの重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン、特にエチレンおよびプロピレンは多種の中間体および最終製品を製造するのに使用されており、主として用いられているポリマー材料である。この重合プロセスには種々のタイプの触媒が使用できるが、優れた品質が得られるという理由で、メタロセン触媒が広く用いられるようになっている。
【0003】
しかし、メタロセン触媒は炭化水素フィードストック(供給原料)に生じる品質変動に極めて敏感である。その結果、触媒活性が不規則になり、生産性が低下し、メタロセンのポテンシャルの完全に使いこなすことはできない。触媒活性が変動するためポリマー特性、例えばメルトフローインデックスも変動する。従って、反応条件および反応物の供給速度を常に調節する必要があるが、そうしたとしても必ずしもポジティブな結果になるとは限らない。また、こうした調節の結果、一般には規格外の樹脂の生産が増え、触媒コストが高くなり、経済的なロスが増加する。
【0004】
重合プロセスを安定化する方法はいくつか知られている。例えば、重合前にオレフィンフィードストックを低温蒸留、液体吸着、膜分離することが行なわれている。しかし、これらの方法は高い設備投資を必要とし、運転費用も高くなるという欠点がある。さらに、これらの方法では重合プロセスを充分に安定化させることはできない。
【0005】
特許文献1〜5には、炭化水素フィードストックとニッケルと酸化ニッケルとから成る吸収剤(absorbent)とを接触させてチーグラー−ナッタ触媒の活性を改善している。しかし、これらの文献にはメタロセン−タイプの重合は記載がない。
【0006】
特許文献6(米国特許第US 2003/0105376号明細書)では各種触媒を用いる重合の前にオレフィンを各種の金属と金属酸化物とから成る2つの不均質収着剤(sorbent)上を通す方法が記載されている。第1の収着剤はアセチル系不純物を除去し、第2の収着剤は一酸化炭素を除去する。しかし、重合条件の安定化はない。
【0007】
特許文献7(欧州特許第EP 0683147号公報)にはメタロセンを用いて重合する前にオレフィンを担体上に支持したアルカリ金属と接触させる方法が記載されている。チーグラー−ナッタ触媒を使用して製造した精製プロピレンの重合例では精製したプロピレンを使用したときに触媒活性が増加することを示しているが、収着剤が金属状のアルカリ金属を含むため、オレフィン流を収着剤と接触させる前にオレフィンを乾燥しなければならない。さらに、重合条件が安定化することは記載がない。
【0008】
特許文献8(日本特許第JP 05070373A2号公報)にはプロピレンを重合するために金属ニッケルを使用してプロピレンを精製することが記載されている。処理後の炭化水素流は一酸化炭素および硫化カルボニルをそれぞれ0.1ppm以下しか含んでいないが、実施例に示すように、精製後の硫化カルボニルおよび一酸化炭素の量は変動し、触媒活性は低下し、溶融指数が不安定なポリマーが得られる。さらに、メタロセンに関する重合法は記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第US 4,830,735号明細書
【特許文献2】ベルギー特許第BE 9000332号公報
【特許文献3】欧州特許第EP 0308569号公報
【特許文献4】欧州特許第EP 0643028号公報
【特許文献5】欧州特許第EP 0648720号公報
【特許文献6】米国特許第US 2003/0105376号明細書
【特許文献7】欧州特許第EP 0683147号公報
【特許文献8】日本特許第JP 05070373A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、メタロセン−タイプの重合法を高い生産性で安定化させるというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、担体上に配置されたニッケルを含む収着剤上を通過させたオレフィン含有炭化水素フィードストックをメタロセンタイプの触媒で重合する方法において、上記ニッケルが酸化ニッケルと金属ニッケルの両方で存在することを特徴とする方法にある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、オレフィンのメタロセンタイプの重合方法に関するものである。以下ではプロピレンの重合で本発明を説明するが、本発明は他のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブテン誘導体、ペンテン誘導体、ヘキセン誘導体、オクテン誘導体またはこれらを任意に組合せたもの重合にも適用できることは理解できよう。プロピレンの物性から、本発明方法はプロピレンの重合に用いるのが好ましい。
【0013】
本発明方法は、下記の(a)〜(c)の段階を有する:
(a) オレフィン含有炭化水素フィードストックを、担体上に堆積させたニッケルを含む収着剤上を通過させ、この場合、上記ニッケルは酸化ニッケルおよび金属ニッケルとして存在し、
(b) 一種または複数のメタロセン触媒上で上記炭化水素フィードストックに含まれるオレフィンの一部をポリマーに変換し、
(c) 得られたポリマーを回収する。
【0014】
収着剤(sorbent material)
特定理論に拘束されるものではないが、オレフィンフィードストック中の不純物は金属ニッケルと酸化ニッケルとから成る収着剤上を通過するときに実質的に除去されると思われる。その結果得られる炭化水素フィードストックは安定したメタロセン−タイプの重合プロセスに適している。非晶質または結晶質のシリカ、シリコ-アルミナ、アルミナ、珪藻土、ゼオライト、その他類似の材料を担体として使用できる。ニッケルおよび酸化ニッケルの全重量は収着剤の10重量%〜80重量%にすることができる。従って、収着剤は20〜90重量%の担体を含むことができる。酸化ニッケルに対する金属ニッケルの重量比は0.4〜2.0であるのが好ましく、金属ニッケルは収着剤の6重量%以下ではあってはならず且つ50重量%以上であってはならない。収着剤は40〜70重量%の金属ニッケルおよび酸化ニッケルと、30〜60重量%の担体とから成る。上記定義の外の収着剤を用いて本発明方法を実行したときには、重合条件がある程度安定化するが、得られる重合結果は満足なものではない。理論に拘束されるものではないが、酸化ニッケルに対するニッケルの比を高くするとより大きな結晶子が形成され、交換効率が低下すると思われる。同様に、全ニッケル含有量を過剰にすると比表面積が低下し、従って、交換効率が下がる。逆に、全ニッケル含有量があまりに低いと、不純物を収着する能力が不充分になる。
【0015】
ニッケルは担体上に当業者に公知の任意の方法で配置できる。例えば、水中に硝酸ニッケルを溶かし、その溶液を担体と混合し、例えば炭酸ニッケルの形でニッケルを沈殿させ、洗浄し、乾燥し、沈降物をか焼してニッケルを担体上に付けることができる。こうして堆積させたニッケルを水素によって部分的に還元して金属ニッケルの形にし、残りを酸化ニッケルの形に残す。
【0016】
一般に、還元後のニッケル結晶子の寸法は1〜2ナノメートルである。このニッケル結晶子の寸法は行なった還元度に依存する。すなわち、還元度を増加させると結晶子の寸法が増加するが、得られた収着剤は所望特性を有しない。逆に、還元度があまり低過ぎると、結晶子はよい寸法を有するが、利用できるニッケルの量が少なく、フィードストックを確実に処理することができない。
【0017】
還元後に得られる収着剤の比表面積は一般に100〜200m2/gである。収着剤の粒度は反応装置中で許容される圧力降下度に依存する。しかし、細かく分割した形の有利である点に注意されたい。使用する収着剤が球形の場合、この材料の粒径は約3.5mm を超えないのが好ましく、最も好ましくは1〜2.5mである。円筒形の粒子を使用する場合には、その直径は1〜2mm、長さは3〜8mmが好ましい。類似寸法のTrilobesを使用することもできる。
【0018】
収着剤は一般にエクスサイチュウ(ex situ)で予め製造する。シクロヘキサンまたはドデカンのような飽和液体炭化水素下に保存するか、N2のような非酸化気体下に保存する。また、表面上に二酸化炭素層を被覆して保護することもできる。この層は収着剤を空気から保護し、ハンドリングが容易になる。しかし、この二酸化炭素層は収着材料を使用する前に例えば窒素ストリッピングによって約200℃で除去しなければならない。
【0019】
プロピレンはフィードストックと接触した時に、収着剤上に吸着され、運転開始時のプロピレンの吸着反応は発熱反応であることが分かっている。一定条件下、特に、収着剤を非酸化雰囲気下に保存した時には、温度上昇が非常に大きい。特に、材料表面の温度は熱電対で測定した値よりはるかに高くなり、収着剤に損害が与えられる。しかも、高温は望ましくない副反応、特にプロピレンのダイマー化およびトリマー化を誘発する。ダイマーはヘキセン誘導体であり、これはプロピレンと共重合することがある。そうしたプロピレン流を重合で使用した場合、上記副生成物がアイソタクチックポリプロピレンの直鎖の規則性を壊したり、プロセスを難しくする原因になる。結果的に、コポリマーはポリプロピレンの結晶化度が低くなり、融点が低下し、機械抵抗性も低下する。より深刻な問題は、重合中にダイマーが触媒の活性サイトをブロックするリターダの作用をして生産性を大幅に下げ、触媒コストを増加させることである。
【0020】
収着剤の温度の過度の上昇は使用前のコンディショニングで避けることができるということが分かっている。このコンディショニングは少なくとも一種の軽質オレフィン、好ましくはプロピレンを0.1〜5容積%濃度のマイナー量で含む不活性ガスを収着材料上に流すことで実行できる。不活性ガスは通常窒素であり、酸素の最少量含まなければならない。コンディショニングは純粋な不活性ガスを材料上に大気圧で外界温度以下で流すことで開始するのが好ましい。出口でのプロピレン濃度が入口の濃度と等しくなるまでコンディショニング階段を続ける。発熱の経緯は収着剤内に入れた熱電対でモニターすることができる。
【0021】
吸着剤材料をイクスサイチュウ(ex situ、予め)で製造し、二酸化炭素の単分子層(ニッケル表面上に収着されると思われる)によって保護する時には、吸着剤をコンディショニングする前に約350〜約150℃、好ましくは約250℃の温度で好ましくは大気圧下で不活性ガス(最少量の酸素を含む)を通すことによって予め処理しなければならないことも公知である。その後、水素濃度を増大させた不活性ガスと水素の混合物をその上に通し(全ての予防措置をしたとしても収着される危険のある酸素を除去するため)た後に、水素を含まない不活性ガス流を約250℃でパージするのが好ましい。
【0022】
本発明方法は、オレフィン含有炭化水素フード中に存在する不純物の濃度を下げることによってメタロセン触媒の生産性と活性を改善することができる。不純物の最初の濃度は1000ppmまたはそれ以上であり、この濃度は元のフィードストックの製造方法に依存する。この場合、予め、他の公知の精製法、例えば蒸留、酸素を用いた二酸化炭素への接触酸化、モレキュラーシーブの使用等を実行して一酸化炭素濃度を100ppm以下に引き下げるのが一般により経済的である。
【0023】
理論に拘束されるものではないが、金属ニッケルと酸化ニッケルとの組合せがオレフイン含有フィードストック中に存在する不純物と化学反応すると考えられる。不純物量は各オレフィン供与源で変動し、従って、触媒活性も同様に変動する。不純物の一つはメタロセン触媒毒となる一酸化炭素である。炭化水素フィードストックから一酸化炭素のような不純物を実質的に除去することによって触媒活性は一定になり、従って、重合条件を常に調節する必要がなくなり、ポリマー製品の溶融流動指数が安定化する。また、ニッケルベースの吸着剤は水素化触媒の役目をし、プロピレン供与源から相当量の水素を除去し、プロパンを形成すると思われる。その結果、溶融流動指数が安定化する。
【0024】
使用後、収着剤を高温度の不活性ガス処理(必要に応じて水素を添加)で部分的に再活性化することができる。
【0025】
ポリオレフィンの製造では炭化水素フィードストックは一般に75重量%以上、特に85〜99.99重量%のオレフィンを含む。本発明の一つの実施例では、オレフィン含有炭化水素フィードストックは−10℃〜80℃、好ましくは0〜40℃、より好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは0〜25℃、より好ましくは0〜20℃の温度で、0.1〜60l/l.hの液体空間速度(LHSV)すなわち5、10、20、25、30、35または40から45、50、55または60l/l.hまでの液体空間速度(LHSV)、好ましくは20〜60l/l.hのLHSV、より好ましくは、20〜40l/l.h、最も好ましくは約30l/l.hのLHSVで吸着剤上を通す。驚くことに、0〜30℃、さらには0〜25℃または0〜20℃の低い温度で、20〜40l/l.h、さらには60l/l.hのLHSV、実際には約30l/l.hでもニッケル収着剤は触媒活性の大きく安定化させる。
【0026】
ニッケル吸着剤と一緒に追加の収着剤を使用することもできる。すなわち、ニッケル吸着剤上に通す前に、フィードストックを一種以上の追加の吸着剤上を通すことができる。これらはガードの役目をし、その結果、ニッケル吸着剤のトータル寿命が延びる。ニッケル吸着剤ベッドの後に一つ以上の追加の吸着剤を使用するもできる。この追加の吸着剤は当業者に公知の任意の吸着剤にすることができる。可能な追加の吸着剤の例は酸化銅、亜鉛酸化物、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、アルミナ(促進アルミナを含む)等の金属酸化物、パラジウム、白金、モレキュラーシーブ、例えば3A、4A、5Aまたは13Xおよび銅/酸化銅吸着剤である。モレキュラーシーブ13Xは大きな気孔を有するので使用が好ましい。
【0027】
重合
本発明方法の重合階段は公知の任意のメタロセンタイプ重合にすることができる。公知の任意のメタロセン触媒を使用できる。メタロセン触媒は下記一般式(I)〜(III)で表される:
(CpRn)mMXq (I)
(ここで、Cpは置換または非置換のシクロペンタジエニル環、Mは周期律表のIVB族遷移金属またはバナジウム、各Rは1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビルまたはヒドロカルボキシル基で、互いに同一でも異なっていてもよく、各Xは1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビルまたはヒドロカルボキシル基またはハロゲン水素で、互いに同一でも異なっていてもよく、m=1〜3、n=0〜5、q=0〜3で、m+qの合計は金属の酸化状態に等しい)
(C5R'k)gR''s(C5R’k)MQ3-9 (II)
R''s(C5R'k)2MQ' (III)
(ここで、(C5R'k)はシクロペンタジエニルまたは置換したシクロペンタジエニルを表し、各R'は水素または1〜20の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリルまたはアリールアルキル基のようなヒドロカルビル基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、また、2つの炭素原子が一緒になってC4〜C6環を形成していてもよく、R''はC1〜C4アルキレン基、ジアルキルゲルマニウムまたはシリコンまたはシロキサンであるか、2つの(C5R'k)環をブリッジするアルキルフォスフィンまたはアミン基であり、Qは1〜20の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリール・アルキル基のようなヒドロカルビル基、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルボキシル基またはハロゲンであり、互いに同一でも異なっていてもよく、Q'は1〜約20の炭素原子を有するアルキリデン基であり、sは0または1、gは0、1または2である)
【0028】
これらのさ中で使用可能なメタロセンの例はエチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2-メチル-4,5-ベンジインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(2-メチル-4-tert-ブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(2-メチル-4-tert-ブチル−シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドである。マルチモートのポリマーが必要なば場合には異なるメタロセン触媒の混合物を使用できる。これらの触媒は一つの反応装置に一緒に存在するか、直列または並列に接続された複数の反応装置で別々に存在できる。
【0029】
メタロセン触媒成分を活性化する共触媒はその目的で使われる任意の公知の共触媒、例えばアルミニウム含有共触媒、硼素含有共触媒またはフッ素化触媒にすることができる。アルミニウム含有共触媒はアルミノキサン、アルキルアルミニウム、ルイス酸および/またはフッ素化触媒担体で構成できる。
【0030】
本発明方法で使用可能なアルミノキサンは当業者に周知で、好ましくは下記式で表されるオリゴマーの直鎖および/または環状アルキルアルミノキサンから成るのが好ましい:
直鎖オリゴマーの場合

環状アルキルアルミノキサンオリゴマーの場合

【0031】
(ここで、nは1〜40、好ましくは10〜20、mは3〜40、好ましくは3〜20、RはC1〜C8アルキル基、好ましくはメチルである)
【0032】
一般のアルミノキサン、例えばメチルアルモキサン(MAO)の製造法では直鎖化合物と環状化合物との混合物が得られる。
共触媒としてアルミノキサンを使用しない場合には、式:AlRxで表される一種または複数のアルミニウムアルキルを使用する。ここで、各Rはハロゲンまたは1〜12の炭素原子を有するアルコキシまたはアルキル基の中から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、xは1〜3である)。特に適したものはトリアルキルアルミニウム、最も好ましいのはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)およびトリエチルアルミニウム(TEAL)である。
【0033】
適した硼素含有共触媒はトリフェニルカルベニウムボロエート、例えば下記特許文献9に記載のテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラト−トリフェニルベニウム、または、下記特許文献10の第6頁、第30行〜第7頁、第7行目に記載の下記一般式:
[L’−H]+[BAr1Ar234]−
で表されるものである。
【特許文献9】欧州特許第EP 0427696号公報
【特許文献10】欧州特許第EP 0277004号公報
【0034】
メタロセン触媒系は均一プロセスの溶液重合プロセスまたは不均質プロセスのスラリープロセスで使用できる。溶液法での典型的な溶剤は4〜7の炭素原子を有する炭化水素、例えばヘプタン、トルエンまたはシクロヘキサンである。スラリー法、バルク法または気相法では不活発な担体上に触媒系を固定する必要がある。メタロセンは公知の任意の方法で支持可能である。支持する場合の担体は有機または無機の任意の固形物にすることができる。特にタルク、無機酸化物のような多孔質固体担体およびポリオレフィンのような樹脂担体が好ましい。担体は細粉砕された無機酸化物であるのが好ましい。そうした担持触媒の例は下記文献に記載されている。
【特許文献11】米国特許第US 6,855,783号明細書
【0035】
本発明で望ましく使用される無機酸化物材料にはIIa、IIIa、IVA、IVb族の金属の酸化物、例えばシリカ、アルミナおよびこれらの混合物が含まれる。単独またはシリカまたはアルミナと一緒に使用可能な他の無機酸化物はマグネシア、チタニア、ジルコニアである。しかし、その他の適切な担体、例えば細粉砕されたポリエチレンのような細粉砕した官能化ポリオレフィンを使用することもできる。担体は200〜900m2/gの表面積と0.5〜4ml/gの細孔容積とを有するシリカであるのが好ましい。
【0036】
固体担体触媒の製造時に使用するアルミノキサンおよびメタロセンの量および添加時期は変えることができる。遷移金属に対するアルミニウムのモル比は1:1〜1000:1の間、好ましくは5:1〜500:1であるのが好ましい。本発明の好ましい実施例では適当な不活発炭化水素溶剤に溶かしたアルミノキサンを、同じまたは他の適当な炭化水素にスラリー化した担体に加えた後に、このスラリーにメタロセン触媒成分の混合物を加える。
【0037】
スラリー重合法で使用可能な希釈剤には反応温度で液体で且つ個々の成分と化学反応しない鉱油および各種の炭化水素が含まれる。使用可能な溶剤の例としてはアルカン、例えばペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびノナン、シクロアルカン誘導体、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサン、芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびジエチルベンゼンを挙げることができる。
【0038】
メタロセン触媒を用いた重合法は公知である。本発明では最初の階段で精製されたオレフィンを、必要に応じて用いる同様に精製されたα−オレフィンコモノマーと一緒に、メタロセン触媒を収容した反応装置中へ供給する。コモノマーは一般に密度を制御し、得られるポリマーの融解温度を下げるために加える。典型的なコモノマーにはエチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−ブテン、1−オクテン、または、4−メチルペンテンが含まれる。エチレン重合にはコモノマーとして1−ヘキセンを使用し、プロピレン重合のコモノマーとしてはエチレンを使用するのが好ましい。水素を使用することで平均分子量を制御できることは当業者に公知である。
【0039】
例えばイソブタンを使用してスラリー中で反応を行う場合には、70℃〜110℃の反応温度を使用できる。希釈剤とモノマーとが同じものであるバルクプロセスで反応を行うこともできる。適当な溶剤を選択して反応を溶液中で実行する場合には150℃〜300℃の範囲の反応温度を使用できる。また、適当に担持した触媒を使用して反応を気相で実行することもできる。
【0040】
メタロセン触媒を用いたプロピレンおよびエチレン重合のポテンシャルを完全に利用するためには安定した重合条件にすることが重要である。そうすることによってのみメタロセンの生産性を高くでき、一定にすることができる。本発明者は炭化水素フィードストックを上記収着剤上に通すことによって、メタロセン触媒の生産性をより高くできる、という予測不可能な効果を見出した。さらに、触媒生産性、従って触媒流速は一定に維持され、従って、ポリマー製品をより良く制御できる。さらに、溶融流動性の制御が改良される。
【0041】
以下、本発明の実施例を用いて好ましい本発明方法を説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を制限するものではなく、当業者は種々の変更を行なうことができる。
【実施例】
【0042】
実施例E1、E2と比較例CE3
米国特許第US 6,855,783号明細書に記載の標準的なメタロセンアイソタクチックポリプロピレン(miPP)触媒を使用してプロピレンを重合した。3リットル容の反応装置に1.5リットルのプロピレンと0.4NLの水素とを導入した。触媒(オイル中にスラリー化した20重量%の触媒0.3ml)を69mgのTEALと5分間、接触させ、0.5リットルのプロピレンと一緒に反応装置に添加した。重合温度を70℃に1時間維持した後、反応装置の内容物を出し、ポリマーを単離した。この実施例で用いたプロピレンは反応装置に直接注入するか、先ず最初にニッケルと酸化ニッケルとを含む収着剤ベッドを通した。[表1]はニッケル収着剤ベッドを通した場合と通さない場合の重合結果を示している。生産性は相対値で示してある。この結果は、同じ触媒を同量だけ反応装置に注入した場合、重合前にプロピレンをニッケルと酸化ニッケルの収着剤ベッドに通すことで生産性は33倍〜34倍増加することを示している。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例E4〜E8
異なる供与源からサンプリングしたプロピレンを用いて重合を実施した。実施例E1、E2、CE3では同じ触媒(miPP)を使用した。この実験の目的はニッケル−酸化ニッケル収着剤を使用することで、プロピレンを単一供給した場合より利点があることを示すことにある。プロピレンの5つの異なる供与源(1〜5)を評価した。結果を収着剤なしで13Xモレキュラーシーブのみを通したものと比較した。[表2]はプロピレンの供与源とは無関係に本発明の収着剤が生産性を大きく向上させること、13Xモレキュラーシーブ単独より優れていることを示している。生産性は相対値で示してある。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例E9と、比較例CE10
実施例9では、プロピレンを2つの13X吸着剤ベッド上を通した後、ニッケル−酸化ニッケル収着剤ベッドを通してから、プロピレンを重合した。実施例E1、E2および比較例CE3のプロピレン重合で使用した触媒(miPP)は同じものである。重合プロセスは安定し、触媒流量速度は一定であり、従って、溶融流動指数(MFI)の変動の小さいポリプロピレンが得られた。結果は[表3]に示してある。MFIはASTM D1238に従って2.16kgの荷重下で230℃の温度で測定した。デルタMFIはターゲットMFI25に対してプロピレンの重合中の最も高いMFIと最も低いMFIとの差を表す。活性は相対値で示してある。
【0047】
比較例CE10では本発明の収着剤ベッド上を通さなかったプロピレンを使用して同じ重合プロセスを実行した。実施例E1、E2および比較例CE3と同じメタロセン触媒(miPP)を使用し、さらに、実験室条件下でmiPPより高い活性を示すことが知られている類似メタロセン触媒(miPP*)と一緒に使用した。それにもかかわらず、触媒のトータル活性は実施例E9の約半分にしかならない。さらに、重合条件も安定しなかった。さらに、高圧フラッシュラインが不安定になるという問題が生じ、フラフ(fluff)が増加した。さらに、バルク密度が大きく低下し、その結果、流量が低下し、エネルギー消費量(キロワット)が増加した。
【0048】
[表3]に示すように、本発明のニッケル−酸化ニッケル収着剤を使用した実施例E9のデルタMFIは比較例CE10より小さい。これは本発明重合プロセスで得られるポリプロピレンのMFIは変化が少なく、安定していることを示している。反応条件がより安定することの証拠はデルタ水素ファクタにも現れる。デルタ水素ファクタは運転中の水素濃度の最低測定値と最高測定値との差で、ppmで表される。水素濃度は比較例CE10より実施例E9の方が多くを変化する。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例E11と、比較例CE12、CE13
この実験は本発明に従った重合プロセスによって得られるポリプロピレンのMFIの安定性が改良することを示すために実行した。実施例E11は実施例E1、E2および比較例CE3で使用したものと同じメタロセン触媒(miPP)を用いて実施した。使用したプロピレンは一つの13X吸着剤ベッドを通した後、2つのニッケル−酸化ニッケル収着剤ベッドを通した。重合条件は安定し、活性は一定であった。微粉末に関する問題も観測されなかった。結果は[表4]に示してある。デルタMFIは重合中のプロピレンの最高MFIと最低MFIとの差である。実施例E11は2つのターゲットポリプロピレンのデータを示し、その一つは15MFIを有し、他は25MFIを有する。活性は相対値で示してある。
【0051】
比較例CE12のプロピレンは実施例E1、E2および比較例CE3に記載のものと同じ触媒(miPP)の存在下で重合した。比較例CE13のプロピレンは比較例CE10に記載の触媒miPP*を使用して重合した。重合前にプロピレンをニッケル/酸化ニッケル収着剤ベッド上に通さなかった。その結果、比較例CE12とCE13の平均活性は実施例E11よりはるかに低い。[表4]は2つのターゲットポリプロピレン(各々のターゲットMFIはそれぞれ15および25)のデルタMFIは、本発明の実施例E11が比較例CE12、CE13より小さいことを示している。これは、本発明の重合方法がより安定し、MFI変動が少ないポリプロピレンが得られることを意味している。
【0052】
【表4】

【0053】
[表5]は従来方で重合したプロピレンのMFIの標準誤差および標準偏差は大きいことを証明している。
【0054】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(c)の段階を有するオレフィンの重合方法:
(a) オレフィン含有炭化水素フィードストックを、担体上に堆積させたニッケルを含む収着剤上を通過させ、この場合、上記ニッケルは酸化ニッケルおよび金属ニッケルとして存在し、
(b) 一種または複数のメタロセン触媒上で上記炭化水素フィードストックに含まれるオレフィンの一部をポリマーに変換し、
(c) 得られたポリマーを回収する。
【請求項2】
酸化ニッケルおよび金属ニッケルの全重量が収着剤の10〜80重量%で、収着剤が20〜90重量%の担体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化ニッケルに対する金属ニッケルの重量比が0.4〜2.0であり、しかも、金属ニッケルは収着剤の6重量%以下ではなく且つ50重量%以上でもなく、収着剤は40〜70重量%の金属ニッケルおよび酸化ニッケルと、30〜60重量%の担体とから成る請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
収着剤が100〜200m2/gの比表面積を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フィードストックがプロピレンを75重量%以上、好ましくは85〜99.99重量%含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
メタロセンがジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(2-メチル-4,5-ベンジインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(2-メチル-4-tert-ブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル) ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(2-メチル-4-tert-ブチル−シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドまたはこれらの混合物の一つである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フィードストックが80重量%以上、好ましくは90〜99.99重量%のエチレンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メタロセンがエチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドまたはこれらの混合物の一つである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)段階の温度が−10℃〜80℃で、LHSVが0.1〜60l/l.hである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(b)階段より前の任意の段階でオレフィン含有炭化水素フィードストックを下記(1)〜(3)の少なくとも一つの上を通す請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法:
(1)モレキュラーシーブ、好ましくは13Xモレキュラーシーブ
(2)金属酸化物
(3)アルミナ。

【公表番号】特表2010−525134(P2010−525134A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504760(P2010−504760)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057906
【国際公開番号】WO2009/000782
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】