説明

オレフィンを重合するための旋回流動層反応器

流動層反応器におけるオレフィンの重合方法を提供する。本発明の方法は、上記流動層反応器に1又は2以上のスワールを誘起するのに充分な角度及び量で、上記流動層反応器中に流体を導入することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、流動層反応器におけるオレフィンの重合方法に関する。上記流動層には1又は2以上の渦(swirl)が誘起され、それにより反応器が詰まることが防止又は抑制される。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用流動層反応器において、流動化は、上昇流動ガスによって達成される。反応器底部のグリッドは、流動化ガスを反応器の断面全体にわたって均等に分散させ、また、ガス供給空間に固体が入るのを防止するために用いられる。当該業界を悩ます問題は、反応器の壁上に粉末状のシートが形成されることである。これらのシートが反応器の壁から剥がれると、ガス分散グリッドの大部分をふさぐ可能性があり、結果として反応器の流れが乱れるか、又は、反応器が詰まることさえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、シーティングの可能性を少なくし、混合性を向上させるためにオレフィン重合用流動層の流体力学を変更する手段が、当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔には、本発明は流動層反応器におけるオレフィンの重合方法を提供する。当該方法は、反応器内の流動層に1又は2以上の渦を引き起こすのに充分な角度及び量で、流体を流動層反応器に導入するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明によれば、反応器内の流動層に1又は2以上の渦を誘起させるのに充分な角度及び量で、流動層反応器に流体を導入することにより、オレフィン重合用流動層反応器中のシーティングを減らすか、又は防止することができる。上記流動層内における旋回により反応器壁のところの固体の接線速度が速くなり、その結果、上記壁付近のせん断力が高くなり、そして反応器壁のシーティングの発生が減る。
【0006】
流動層内における旋回の別の利点は、流動層の上端から排出される粒子の量を減らすことである。重合システムにおいて、流動層の上端から放出された粒子により、流動化ガスを冷却し、そして反応器入口に戻すために用いられる配管系及び装置が詰まる原因が生ずる。
【0007】
好ましくは、1又は2以上の渦は、攪拌器、回転ブレード又は回転翼などの機械装置の補助なしに誘起される。
【0008】
本発明の方法を、チーグラーナッタやメタロセンのような公知の触媒を用いて各種のオレフィンを重合するために用いることができる。適切な重合モノマーは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等及びそれらの組合せのようなオレフィンを含む。
【0009】
1つ又は2つ以上の渦を引き起こすために、上記流体を流動層中に導入する方法は、特に限定されない。例えば、上記流体を、反応器の底部の分配プレートを通して導入することができる。上記分配プレートは、流体を垂直以外の角度で導入するための穴(perforation)を有していてもよい。また、分配プレートには渦を誘起するために、垂直以外の角度で流体を導入するデフレクタあるいはノズルを設けることもできる。
【0010】
穴、デフレクタ、及び/又はノズルの配置は、流動層中で1又は2以上の渦を誘起させることができさえすれば特に限定されない。例えば、穴、デフレクタ、及び/又はノズルを、1つ又は2つ以上の同心円上に、同一吐出角度で同一方向となるように配置することができる。これとは別に、穴、デフレクタ、及び/又はノズルは、流動層中に複数の渦を引き起こすべく、1つ又は2つ以上の非同心円上に配置することもできる。
【0011】
上記流体は、渦を生じさせるように流動層内に又は流動層に沿って設けられた1つ又は2つ以上のインジェクタ又はノズルを介して導入されることができる。
第一の実施態様では、流動層全体が一方向に旋回する。
【0012】
1つ又は2つ以上の渦を生じさせるために流動層に導入される流体の角度及び量を、用いられる特定の重合システム及び導入される流体の角度と量に応じて変化させることができる。一般的に、上記流体は、垂直に対して90°〜ほぼ垂直方向の角度で反応器に導入され得る。1つ又は2つ以上の渦を誘起するために所定の角度で導入される流体の量を変化させることができる。当業者の繰り返しの実験により、上記量を決定することができる。
【0013】
1又は2以上の渦を生じさせるために使用される流体は、ガス又は液体であることができる。典型的には、上記流体はガスであり、当該ガスは、オレフィン重合に通常使用される1種又は2種以上のガス、例えば、窒素、水素、オレフィン、アルカンであってもよい。
【0014】
別の実施態様では、1又は2以上の渦の誘起に加えて、シーティングの阻止又は更なる低減のために、反応器内部の流動化速度を周期的に変えることもできる。オレフィン重合用流動層反応器が詰まるのを防止又は低減するために流動化速度を変化させることは、米国特許仮出願No.60/800,826に基づく優先権主張を伴う同時係属中の米国特許出願(2006年5月16日に出願され、「脈動型オレフィン重合用流動層反応器」と題する)(代理人ケースNo.80263)に記載されており、その内容を、参照により本明細書に組み入れる。
【0015】
本発明を、その好ましい実施態様を特に参照して詳述してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱しない範囲で変更と改変が可能であることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層反応器中の流動層内に、1又は2以上の渦を誘起するのに充分な角度及び量において、流体を前記流動層反応器に導入すること:
を含む、前記流動層反応器内でオレフィンを重合させる方法。
【請求項2】
前記流体がガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガスがオレフィンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体が液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記流動層全体が旋回する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記流体が、前記反応器の底部のところの分配プレートを通して導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分配プレートが、垂直以外の角度において、前記流体を導入する穴を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分配プレートが、垂直以外の角度において、前記流体を導入するデフレクタ又はノズルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記流体が、前記流動層内又は前記流動層に沿って設置された1つ又は2つ以上のインジェクタ又はノズルを通して導入される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−537658(P2009−537658A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510992(P2009−510992)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/011417
【国際公開番号】WO2007/136583
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(507141712)ウエストレイク ロングビュー コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】