説明

オレフィンヒドロシアン化用のニッケル/リン配位子触媒の調製方法

【課題】ニトリル溶媒とニッケルよりも陽性である還元性金属との存在下で二座リン含有配位子をモル過剰の塩化ニッケルと接触させる工程を含むヒドロシアン化触媒の調製方法に適した無水塩化ニッケルを製造する方法を提供する。
【解決手段】水和塩化ニッケルを約200〜約240℃で12時間未満にわたって処理する工程を含む無水塩化ニッケルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルと二座リン化合物との錯体であるヒドロシアン化触媒の調製方法に関連した無水塩化ニッケルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルとリン含有配位子との錯体がヒドロシアン化反応の触媒として有用であることは当該技術では周知である。単座ホスファイトを用いた、かかるニッケル錯体がブタジエンのヒドロシアン化を触媒してペンテンニトリルの混合物を生成することは公知である。これらの触媒はまた、ナイロンの生産で重要な中間体、アジポニトリルを生産するためのペンテンニトリルの次のヒドロシアン化においても有用である。二座ホスファイトおよびホスフィナイト配位子がかかるヒドロシアン化反応を行うためのニッケル系触媒を形成するのに使用できることはさらに公知である。
【0003】
米国特許公報(特許文献1)は、元素ニッケルを式PZ3(ここで、Zはアルキルまたはアルコキシ基、好ましくはアリールオキシ基である)の単座リン配位子と反応させることによるゼロ価ニッケル錯体の調製方法を開示している。該方法は、細分された元素ニッケルを使用し、好ましくはニトリル溶媒の存在下で実施される。反応は過剰の配位子の存在下で実施するよう教示されている。
【0004】
米国特許公報(特許文献2)は、ニッケルよりも陽性である細分された還元性金属の存在下で、ならびにNH3、NH4X、Zn(NH322、およびNH4XとZnX2との混合物(ここで、Xはハライドである)よりなる群から選択された促進剤の存在下で、トリオルガノホスファイト化合物を塩化ニッケルと反応させることによるトリオルガノホスファイトのゼロ価ニッケル錯体の調製方法を開示している。還元性金属には、Na、Li、Mg、Ca、Ba、Sr、Ti、V、Fe、Co、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Sn、Pb、およびThが含まれ、Znが好ましい。
【0005】
米国特許公報(特許文献3)は、二座リン配位子を含有するニッケルヒドロシアン化触媒の調製方法を開示している。二座リン配位子によって置換され得る配位子を含有するゼロ価ニッケル化合物が好ましいニッケル源である。2つのかかる化合物は、Ni(COD)2(ここで、CODは1,5−シクロオクタジエンである)、および(oTTP)2Ni(C24)(ここで、oTTPはP(O−オルソ−C64CH33である)である。あるいはまた、二価ニッケル化合物が還元剤と化合して好適なニッケル源を生成してもよい。触媒調製の後の方法では、触媒調製の温度が上がるにつれて、触媒形成速度は大きくなるが、分解生成物の量もまた増加する。従って、当該技術には、高い反応速度と低い分解とを見込む方法を求める要求がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,903,120号明細書
【特許文献2】米国特許第3,846,461号明細書
【特許文献3】米国特許第5,523,453号明細書
【特許文献4】米国特許第5,512,695号明細書
【特許文献5】米国特許第5,512,696号明細書
【特許文献6】米国特許第5,663,369号明細書
【特許文献7】米国特許第5,723,641号明細書
【特許文献8】米国特許第5,693,843号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二座リン含有配位子を、ニトリル溶媒とニッケルよりも陽性である還元性金属との存在下で、還元性金属に関してモル過剰である塩化ニッケルと接触させることによるヒドロシアン化触媒の調製方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の触媒は、還元性金属の存在下で、還元性金属に関してモル過剰である塩化ニッケルを二座リン含有配位子と接触させることによって調製されてもよい。還元性金属はニッケルよりも陽性である任意の金属であることができる。
かかる金属には、Na、Li、K、Mg、Ca、Ba、Sr、Ti、V、Fe、Co、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Sn、Pb、およびThが含まれる。FeおよびZnがもっとも好ましい。還元性金属(以下「MET」)は好ましくは細分されている。表現「細分された」は、金属が20メッシュ未満の粒径のものであることを意味する。
【0009】
驚くべきことに、反応の速度はリン含有配位子の濃度または還元性金属の量とは実質的に無関係であるが、むしろ、存在するNiCl2の量および反応温度に依存する。従って、NiCl2の量を増やすと、反応速度が大きくなる。望ましくない副反応、特に分解は温度と共に増加するので、触媒形成速度を大きくするために過剰の塩化ニッケルを使用することは、反応温度を低下させるかもしれず、それは望ましくない副反応を減少させるであろう。反応は通常、還元性金属が制限試薬(limiting reagent)であるように実施される。言い換えれば、触媒へ転化されるNiCl2の量は、加えられた還元性金属の量によってコントロールされる。
【0010】
本発明用のニッケル源は好ましくは塩化ニッケル(II)、NiCl2である。NiCl2の水和形か無水形かのどちらかが使用されてもよい。配位子の加水分解を最小限にするために、無水NiCl2が好ましい。表現「無水」は、塩化ニッケルが2重量%未満の水を含有することを意味する。1%以下の水を含有する塩化ニッケルが好ましい。無水塩化ニッケルは、NiCl2の水和形を約200℃〜約240℃の温度に加熱することによって得られてもよい。NiCl2を約240℃よりも上に加熱することは、触媒調製において反応性がより小さいNiCl2を生み出し、好ましくない。また、NiCl2を長時間加熱することもまた、より低い反応性の生成物を生み出す。従って、NiCl2は約200℃より上に約12時間より長く加熱されるべきではない。
【0011】
表現「水和NiCl2」は、2重量%以上の水を含有するNiCl2を意味する。水和NiCl2の例には、NiCl2の二水和物、六水和物および水溶液が挙げられる。無水NiCl2を製造するのに好ましい源は六水和物製品および水溶液である。水溶液としてのNiCl2が特に好ましい。水溶液は、おおよそ29重量パーセントNiCl2水溶液として商業的に入手可能である。しかしながら、本発明はこの重量パーセントに限定されず、異なる重量パーセントNiCl2の水溶液がうまくいくと考えられる。実用的な理由のために、好ましい水溶液は20〜31重量パーセントNiCl2を含有する。下限は、希薄溶液を脱水することの費用有効性のためである。上限は、周囲温度でのNiCl2溶解度のため、特にNiCl2(H2O)6の沈殿のためである。
【0012】
水和NiCl2の好ましい乾燥方法は、NiCl2を噴霧またはフラッシュ乾燥によって先ず乾燥し、次に生じた生成物を熱乾燥によってさらに乾燥することである。噴霧または熱乾燥機の多数のタイプが当業者に公知である。空気輸送乾燥機とフラッシュ乾燥機とは乾燥取引では互換性の専門用語であることが知られている。使用するのにどのタイプを選択するかは決定的に重要であるわけではない。噴霧乾燥機の例は、並流、向流、および混相流である。この好ましい方法では、噴霧乾燥機は120〜150℃、好ましくは130〜135℃の出口温度を有するべきである。噴霧乾燥機での熱暴露の平均滞留時間は1〜75秒、好ましくは1〜45秒であるべきである。生じた生成物は、典型的には、おおよそ22重量パーセント水を含有する二水和物生成物である。
【0013】
噴霧またはフラッシュ乾燥に続いて、生成物は好ましくはさらに熱乾燥によって乾燥される。乾燥機タイプの選択は決定的に重要であるわけではない。熱乾燥は、熱が主として伝導または対流による直接または間接乾燥によってもよい。熱乾燥は、減圧下にまたは乾燥不活性ガス流れで起こってもよい。経済的理由のために、乾燥不活性ガスは好ましくは窒素である。熱乾燥は約200℃〜約240℃の温度で起こるべきである。乾燥の時間は約12時間を超えるべきではない。
【0014】
触媒形成反応は、ニトリル溶媒、好ましくは3−ペンテンニトリルまたは2−メチル−ブテンニトリルの存在下で実施される。配位子の濃度は約1重量%から90重量%の範囲であってもよい。実用的な理由のために、配位子濃度の好ましい範囲は5%〜50%である。還元性金属(MET)の量は、所望のニッケル触媒生成物濃度によって決められる。還元性金属(MET)の好ましい量は、一般に、反応マスの0.1%〜5%の範囲に収まるであろう。NiCl2の量は還元性金属に対してモル過剰であろう。NiCl2対METのモル比は1.1:1から100:1の範囲である。NiCl2:METの好ましい比は2:1〜50:1の範囲である。反応温度は0℃から120℃の範囲であってもよい。好ましい温度範囲はNiCl2形に依存する。NiCl2の水和形は無水NiCl2よりも低い温度で速く反応する。NiCl2・2H2Oについては、好ましい温度範囲は0℃〜60℃であり、最も好ましい範囲は25℃〜50℃である。無水NiCl2については、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、最も好ましい範囲は50℃〜90℃である。反応は広範な圧力範囲内で実施されてもよい。実用的な理由のために、好ましい圧力は約5psia〜50psia(34〜340kPa)の範囲である。反応はバッチまたは連続方式で実施されてもよい。
【0015】
本発明にとって好適な配位子は、二座ホスファイト、二座ホスフィナイト、および二座ホスフィンよりなる群から選択された二座リン含有配位子である。最も好ましい配位子は二座ホスファイト配位子である。
【0016】
最も好ましい二座ホスファイト配位子は、次の構造式のものである。
【0017】
【化1】

【0018】
これらの式で、R1は、非置換または1個もしくは複数個のC1〜C12アルキルもしくはC1〜C12アルコキシ基で置換されたフェニル;あるいは非置換または1個もしくは複数個のC1〜C12アルキルもしくはC1〜C12アルコキシ基で置換されたナフチルであり、かつ、ZおよびZ1は、構造式I、II、III、およびIVよりなる群から独立して選択される:
【0019】
【化2】

【0020】
式中、
2およびR9は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
3およびR8は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
4およびR7は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
5およびR6は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択される;
【0021】
【化3】

【0022】
式中、
XはO、S、またはCH(R18)であり、
10およびR17は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
11およびR16は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
12およびR15は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
13およびR14は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、そして
18はHまたはC1〜C12アルキルである;
【0023】
【化4】

【0024】
式中、
19およびR20は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、およびCO221から選択され、
21はC1〜C12アルキル、または非置換のもしくはC1〜C4アルキル基で置換されたC6〜C10アリールである。アリール基は好ましくはフェニルまたはナフチルである。
【0025】
【化5】

【0026】
式中、
AはO、S、またはCH(R24)であり、
22およびR23は同じものであり、かつ、HおよびCO225から選択され、
24はHまたはC1〜C12アルキルであり、
25はC1〜C12アルキルである;または
上の構造式において、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシ基は直鎖であっても分枝であってもよい。
【0027】
本方法によって製造することができるジオルガノホスファイト化合物の例には、下に示される式V〜XXVIを有するものが挙げられる。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
好適な二座ホスファイトは、それらの開示が参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献4)、米国特許公報(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)、および米国特許公報(特許文献7)に開示されているタイプのものである。好適な二座ホスフィナイトは、それらの開示が参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献8)に開示されているタイプのものである。
【0033】
反応は、未反応の過剰のNiCl2が反応生成物から濾過または遠心分離によって分離されてもよいようなやり方で実施されてもよい。集められた過剰の塩化ニッケルは、次に触媒調製反応器へ再循環することができる。
【実施例】
【0034】
本発明を次の非限定的な実施例によって例示する。特に記載のない限り、反応の程度(転化率)は、触媒合成反応で生成した活性ニッケルの量を分析することによって測定する。分析は、安定なニッケル錯体、(配位子)Ni(DMAD)を形成するアセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)で反応混合物の固形分なしアリコートを処理し、この錯体について高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量的に分析することによって実施する。
【0035】
実施例1〜6、および11〜18は、実施例20で製造されるような無水NiCl2を利用する。参考例7〜10で利用されるNiCl2・2H2Oは、塩化ニッケル六水和物を減圧下に約130℃に加熱することによって製造した。
【0036】
実施例1〜6は、触媒合成反応速度が反応に装入された無水NiCl2の量に依存することを例示する。
【0037】
(実施例1)
機械撹拌機を備えた100mL反応容器に、一面の窒素雰囲気下に3−ペンテンニトリル(80mL、830ミリモル)、配位子V(18g、19ミリモル)、NiCl2(3.22g、24.8ミリモル)、および亜鉛粉(0.61g、9.3ミリモル)を装入した。反応混合物を100℃で3時間撹拌し、試料を分析のために30分ごとに抜き取った。2時間後に、NiCl2の触媒への70%転化が起こり、3時間後に、NiCl2の触媒への95%よりも大きい転化が起こった。
【0038】
(実施例2)
装入したNiCl2の量(1.61g、12.4ミリモル)がそれの半分であったことを除いて、実施例1のやり方で反応を行った。2時間後に、NiCl2の触媒への約37%転化が起こり、3時間後に、NiCl2の触媒への約60%転化が起こった。
【0039】
次の参考例3および実施例4〜10では、活性ニッケルが使い果たされた触媒源、いわゆる「リサイクル触媒」を再装入した。これらの場合、「リサイクル触媒」は3−ペンテンニトリル中に11重量パーセント(重量%)配位子Vを含有していた。
【0040】
(参考例3)
機械撹拌機を備えた100mL反応容器に、一面の窒素雰囲気下にリサイクル触媒(100g、11重量%配位子Vを含有する)、NiCl2(1.21g、9.3ミリモル)、および亜鉛粉(0.61g、9.3ミリモル)を装入した。反応混合物を80℃で4時間撹拌し、試料を分析のために30分ごとに抜き取った。4時間後に、NiCl2の触媒への2%未満の転化が起こった。
【0041】
(実施例4)
装入したNiCl2の量(2.42g、18.6ミリモル)が参考例3の2倍であったことを除いて、参考例3のやり方で反応を行った。4時間後に、NiCl2の触媒への35%転化が起こった。
【0042】
(実施例5)
装入したNiCl2の量(4.84g、37.2ミリモル)が参考例3の4倍であったことを除いて、参考例3のやり方で反応を行った。4時間後に、NiCl2の触媒への75%転化が起こった。
【0043】
(実施例6)
装入したNiCl2の量(7.26g、56.0ミリモル)が参考例3の6倍であったことを除いて、参考例3のやり方で反応を行った。2時間後に、NiCl2の触媒への77%転化が起こり、4時間後に、NiCl2の触媒への83%転化が起こった。
【0044】
次の参考例7〜10は、水和NiCl2(NiCl2・2H2O)の使用が、無水NiCl2と同じ、しかしより低い温度で、塩化ニッケル濃度への速度依存性を生み出すことを示す。
【0045】
(参考例7)
機械撹拌機を備えた100mL反応容器に、一面の窒素雰囲気下にリサイクル触媒(100g、11重量%配位子Vを含有する)、NiCl2・2H2O(1.21g、7.3ミリモル)、および亜鉛粉(0.61g、9.3ミリモル)を装入した。反応混合物を25℃で4時間撹拌し、試料を分析のために30分ごとに抜き取った。4時間後に、NiCl2の触媒への約13%転化が起こった。
【0046】
(参考例8)
装入したNiCl2・2H2Oの量(2.42g、14.6ミリモル)が参考例7の2倍であったことを除いて、参考例7のやり方で反応を行った。4時間後に、NiCl2の触媒への27%転化が起こった。
【0047】
(参考例9)
装入したNiCl2・2H2Oの量(4.84g、29.2ミリモル)が参考例7の4倍であったことを除いて、参考例7のやり方で反応を行った。4時間後に、NiCl2の触媒への93%転化が起こった。
【0048】
(参考例10)
装入したNiCl2・2H2Oの量(7.26g、43.8ミリモル)が参考例7の6倍であったことを除いて、参考例7のやり方で反応を行った。30分後に、NiCl2の触媒への95%よりも大きい転化が起こった。
【0049】
比較例1は、NiCl2に関して還元性金属のモル比を大きくすることが反応速度を大きくしないことを例示する。この例では、NiCl2が制限試薬であり、反応の程度はNiCl2の転化率として報告する。NiCl2は実施例20でのように製造されたものであった。
【0050】
(比較例1)
「リサイクル触媒」溶液(9グラムの30重量%配位子V)をNiCl2(0.11グラム)と亜鉛(0.10g)とで処理した。混合物を撹拌して約100℃に加熱した。2時間後の透明な液体試料の分析はNiCl2の54%転化率を示した。装入した亜鉛が0.20グラムおよび0.40グラムであったことを除いて、同様なやり方で行った反応は、それぞれ、54%および50%の転化率をもたらした。
【0051】
次の実施例11〜17は、本発明の方法が追加のリン含有配位子にも適用できること、および鉄が還元剤として使用された場合に同じ結果が観察されることを示す。これらの実施例では、反応の程度は、誘導結合プラズマ(ICP)によって溶液中のニッケルを測定することによって求めた。
【0052】
(実施例11)
24.008グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに2.497グラムの配位子XXIVを溶解することによって配位子XXIVの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.0グラム)を無水NiCl2(1.22グラム)および亜鉛(0.102グラム)と混合した。混合物を撹拌して約80℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は56%転化率を示し、たったの0.20グラムのNiCl2が混合物に装入されたことを除いて、同様な反応で、たったの10%転化率が2時間後に見出された。
【0053】
(実施例12)
24.16グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに3.03グラムの配位子XXIを溶解することによって配位子XXIの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.38グラム)を1.20グラムの無水NiCl2および0.10グラムの亜鉛と混合した。混合物を撹拌して約81℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は41%転化率を示した。たったの0.20グラムのNiCl2を混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、たったの10%転化率が2時間後に見出された。
【0054】
(実施例13)
24.0グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに2.59グラムの配位子XVIIIを溶解することによって配位子XVIIIの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.38グラム)を1.20グラムの無水NiCl2および0.10グラムの亜鉛と混合した。混合物を撹拌して約80℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は73%転化率を示した。たったの0.20グラムのNiCl2を混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、たったの14%転化率が2時間後に見出された。
【0055】
(実施例14)
24.0グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに2.85グラムの配位子XIXを溶解することによって配位子XIXの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.4グラム)を1.20グラムの無水NiCl2および0.10グラムの亜鉛と混合した。混合物を撹拌して約78℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は38%転化率を示した。たったの0.20グラムのNiCl2を混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、たったの10%転化率が2時間後に見出された。
【0056】
(実施例15)
24.0グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに2.67グラムの配位子XXを溶解することによって配位子XXの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.0グラム)を1.23グラムの無水NiCl2および0.10グラムの亜鉛と混合した。混合物を撹拌して約81℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は59%転化率を示した。たったの0.20グラムのNiCl2を混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、たったの10%転化率が2時間後に見出された。
【0057】
(実施例16)
24.0グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに2.68グラムの配位子XXVを溶解することによって配位子XXVの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.1グラム)を1.20グラムの無水NiCl2および0.10グラムの亜鉛と混合した。混合物を撹拌して約81℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は45%転化率を示した。鉄粉(0.43グラム)を亜鉛の代わりに混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、34%転化率が2時間後に見出された。
【0058】
(実施例17)
24.0グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに2.77グラムの配位子XXVIを溶解することによって配位子XXVIの溶液を調製した。この溶液のアリコート(12.6グラム)を1.20グラムの無水NiCl2および0.10グラムの亜鉛と混合した。混合物を撹拌して約80℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は37%転化率を示した。鉄粉(0.42グラム)を亜鉛の代わりに混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、38%転化率が2時間後に見出された。
【0059】
(実施例18)
24.0グラムの乾燥3−ペンテンニトリルに3.03グラムの配位子Vを溶解することによって配位子Vの溶液を調製した。この溶液のアリコート(13.3グラム)を1.20グラムの無水NiCl2および0.44グラムの鉄と混合した。混合物を撹拌して約81℃の温度で加熱した。2時間後に採取した透明な液体のみの試料の分析は16%転化率を示した。たったの0.2グラムのNiCl2を混合物に装入したことを除いて、同様な反応で、たったの7%転化率が2時間後に見出された。
【0060】
実施例19〜24はNiCl2の好ましい乾燥方法を例証する。比較例2〜3は、本発明との比較のために提示され、乾燥中の過熱がより反応性の小さい材料をもたらすであろうことを示す。「BET表面積」分析は、当業者に周知の、固体材料の表面積を測定するための分析技法を意味する。文字「BET」は、固体表面上への多層ガス吸着/吸収の理論を開発したブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer Emmett Teller)に関係する。例えば、77°Kで窒素ガスを用いて、固体材料の表面積は所与重量の固体についてガスの分圧の関数として吸着された窒素のモル数を測定することによって推定されるかもしれない。BETの収着理論を得られた等温吸収曲線に適用することによって、固体について有効表面積を測定することは容易である。
【0061】
(実施例19)
10gの塩化ニッケル六水和物を、100mL/分乾燥窒素の流れを備えた石英内張り管状炉中の清浄な石英ボートの中に薄く広げた。出口窒素流れを鉱油バブラーに通してフードへ排出した。次に試料を15分にわたって240℃へ加熱し、その温度に合計60分間保持した。次に試料を冷却してシールし、触媒調製実験前の集積および貯蔵用の窒素フラッシュされるグローブボックス中へ移した。該材料の小部分を10℃/分で400℃へ加熱することによる熱重量分析(TGA)によって含水率について分析した。おおよそ200℃での減量は試料中の水の量目を提供した。
【0062】
この試料は0.3重量パーセントの水を含有し、35m2/gのBET表面積と9nmの推定結晶子サイズとを有した。実施例1のそれと同様な触媒調製に使用した時、この材料は76%転化率をもたらした。
【0063】
(比較例2)
塩化ニッケルを窒素中で350℃に30分間さらに加熱したことを除いて、実施例19の手順を繰り返した。回収した試料は0.05重量パーセント未満の水、13m2/gのBET表面積および22nmの推定結晶子サイズを有した。実施例1のそれと同様な触媒調製に使用した時、この材料は36%転化率をもたらした。
【0064】
(比較例3)
塩化ニッケルを窒素中で500℃に30分間さらに加熱したことを除いて、実施例19の手順を繰り返した。回収した試料は0.05重量パーセント未満の水、2m2/gのBET表面積および44nmの推定結晶子サイズを有した。実施例1のそれと同様な触媒調製に使用した時、この材料は1%転化率をもたらした。
【0065】
(実施例20)
10.9重量パーセントH2Oを含有する9.1kgのNiCl2水和物を回転真空乾燥機中へ供給した。20kgのNiCl2六水和物を乾燥機に加え、34.7重量パーセントH2Oを含有するのに相当するNiCl2装入という結果になった。乾燥機中の圧力を100トル(690kPa)に下げ、乾燥機中の温度を5時間にわたって100℃へ徐々に上げた。表現「乾燥機中の温度」はバルク内容物の温度を意味する。真空乾燥機は、測定されたバルク温度よりも20℃以下高い温度の熱油供給で間接的に加熱した。TGA試験は、乾燥機内容物が二水和物状態に同等の21.5重量パーセントH2Oの残留水分に脱水されたことを確認した。次に乾燥機中の温度を4時間にわたって200℃へ上げ、続いて2時間にわたって240℃へ上げた。TGA試験は、残留水分が0.1重量パーセント未満のH2Oに低下したことを示した。それは、24m2/gのBET表面積を有し、17nmの推定結晶子サイズを有した。おおよそ17kgの無水NiCl2生成物を回収した。実施例1のそれと同様な触媒調製に使用した時、この材料は79%転化率をもたらした。
【0066】
(実施例21)
おおよそ29重量パーセントNiCl2を含有する水溶液を、33.5kg/時の平均質量流量で噴霧乾燥機中へポンプ送液した。濾過した周囲空気を400℃に間接的に加熱し、327kg/時の平均質量流量で同時に注入した。これらの条件下では、噴霧乾燥機を出る空気の平均出口温度は135℃であった。4時間試験の間に、約22重量パーセント水を含有する50kgのNiCl2二水和物を製造した。
【0067】
約30kgの噴霧乾燥生成物を、実施例20でのものと同じ回転真空乾燥機中へ供給した。回転乾燥機中の圧力を50トル(345kPa)に下げ、乾燥機中の温度を2時間にわたって220℃へ上げてさらに3時間維持した。TGA試験は、残留水分が0.1重量パーセント未満のH2Oに低下し、18nmの推定結晶子サイズを有することを示した。実施例1のそれと同様な触媒調製に使用した時、この材料は82%転化率をもたらした。約80℃の反応温度としたことを除いて、同様な触媒調製に使用した時、転化率は2時間後に64%であった。
【0068】
(実施例22)
この実施例22は、噴霧乾燥機生成物が連続的に熱処理機に供給されてもよいこと、および熱処理機中の低圧が満足のいく結果を得るのに必要ではないことを示す。
【0069】
噴霧乾燥機から単離したNiCl2二水和物を次に、熱油供給によって244℃に間接的に加熱して、それより約10℃低いバルク温度をもたらす熱処理機中へ連続的に供給したことを除いて、実施例21の手順を繰り返した。熱処理機中の圧力を大気圧よりもわずかに下に維持した。熱処理機から排出された無水生成物は、1重量パーセント未満H2Oの残留水分を含有した。約80℃の反応温度でを除いて、実施例1のそれと同様な触媒調製に使用した時、この材料は62%転化率をもたらした。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
1.二座ホスファイト、二座ホスフィナイト、および二座ホスフィンよりなる群から選択された少なくとも1種の二座リン含有配位子を、ニトリル溶媒とニッケルよりも陽性である還元性金属との存在下で、塩化ニッケルと接触させる工程を含み、前記塩化ニッケルは前記還元性金属に関してモル過剰であることを特徴とするヒドロシアン化触媒の調製方法。
2.前記還元性金属がNa、Li、K、Mg、Ca、Ba、Sr、Ti、V、Fe、Co、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、およびSnよりなる群から選択されることを特徴とする1に記載の方法。
3.前記ヒドロシアン化触媒から未反応塩化ニッケルを分離する工程をさらに含むことを特徴とする2に記載の方法。
4.前記還元性金属がZnまたはFeであることを特徴とする2.に記載の方法。
5.前記触媒調製が30〜100℃の温度で、および5〜50psia(34〜340kPa)の圧力で実施されることを特徴とする4に記載の方法。
6.前記触媒調製が50〜90℃の温度で実施されることを特徴とする5に記載の方法。
7.塩化ニッケル対還元性金属のモル比が1.1:1〜50:1であることを特徴とする6に記載の方法。
8.塩化ニッケル対還元性金属の前記モル比が2:1〜25:1であることを特徴とする7に記載の方法。
9.前記二座リン含有配位子が式
【0070】
【化1】

【0071】
(式中、
1は、非置換または1個もしくは複数個のC1〜C12アルキルもしくはC1〜C12アルコキシ基で置換されたフェニル、非置換または1個もしくは複数個のC1〜C12アルキルもしくはC1〜C12アルコキシ基で置換されたナフチルであり、
ZおよびZ1は、式I、II、IIIおよびIVを有する基よりなる群から独立して選択される:
【0072】
【化2】

【0073】
式中、
2およびR9は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
3およびR8は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
4およびR7は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
5およびR6は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択される;
【0074】
【化3】

【0075】
式中、
XはO、S、またはCH(R18)であり、
10およびR17は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
11およびR16は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
12およびR15は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、
13およびR14は同じものであり、かつ、H、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから選択され、そして
18はHまたはC1〜C12アルキルである;
【0076】
【化4】

【0077】
式中、
19およびR20は同じものであり、かつ、HおよびCO221から選択され、
21はC1〜C12アルキル、または非置換もしくはC1〜C4アルキル基で置換されたC6〜C10アリールである;
【0078】
【化5】

【0079】
式中、
AはO、S、またはCH(R24)であり、
22およびR23は同じものであり、かつ、HおよびCO225から選択され、
24はHまたはC1〜C12アルキルであり、
25はC1〜C12アルキルである;または)
の化合物であることを特徴とする8に記載の方法。
10.前記塩化ニッケルが3に従って調製されたヒドロシアン化触媒から分離された未反応塩化ニッケルであることを特徴とする9に記載の方法。
11.前記塩化ニッケルが無水であることを特徴とする9に記載の方法。
12.前記無水塩化ニッケルが水和塩化ニッケルを約200〜約240℃の温度で12時間未満にわたって処理する工程を含む方法によって製造されることを特徴とする11に記載の方法。
13.前記水和塩化ニッケルがNiCl2・6H2OまたはNiCl2・2H2Oであることを特徴とする12に記載の方法。
14. 前記無水塩化ニッケルが
(a)約120〜約150℃の出口温度で塩化ニッケルの水溶液を噴霧乾燥する工程と、
(b)工程(a)の前記生成物を約200〜約240℃の温度で12時間未満にわたって熱乾燥する工程と
を含む方法によって製造されることを特徴とする11に記載の方法。
15. 前記噴霧乾燥出口温度が1〜45秒の熱暴露の平均滞留時間で約130〜約135℃であることを特徴とする14に記載の方法。
16. 前記還元性金属が20メッシュ以下の粒径を有することを特徴とする15に記載の方法。
17. 水和塩化ニッケルを約200〜約240℃で12時間未満にわたって処理する工程を含むことを特徴とする無水塩化ニッケルの製造方法。
18. 前記水和塩化ニッケルがNiCl2・6H2OまたはNiCl2・2H2Oであることを特徴とする17に記載の方法。
19. (a)塩化ニッケルの水溶液を約120〜約150℃の出口温度で噴霧乾燥する工程と、
(b)工程(a)の前記生成物を約200〜約240℃の温度で12時間未満にわたって熱乾燥する工程と
を含むことを特徴とする17.に記載の方法。
20.前記噴霧乾燥出口温度が、1〜45秒の全暴露時間で、約130〜約135℃であることを特徴とする19に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和塩化ニッケルを約200〜約240℃で12時間未満にわたって処理する工程を含むことを特徴とする無水塩化ニッケルの製造方法。

【公開番号】特開2009−35482(P2009−35482A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284604(P2008−284604)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願2003−547049(P2003−547049)の分割
【原出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】