説明

オレフィンブロック組成物の染色堅牢性布地および衣料品

望ましい特性のバランスのとれた組み合わせを多くの場合有する染色布地組成物を、今般発見した。本染色布地は、少なくとも1つのエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1つの架橋剤の反応生成物を含む1つまたはそれ以上の弾性繊維を含む。多くの場合、本布地は、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により約3.0以上の変色を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
米国特許実務を目的として、2007年1月16日出願の米国特許仮出願第60/885,202号の内容全体を、本明細書に参照として組み入れる。
【0002】
技術分野
本発明は、染色堅牢性である染色布地に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば衣料品において使用するための染色布地の製造に、多くの異なる材料が使用されてきた。多くの場合、このような布地は、次のうちの1つ以上を含む特性の組み合わせを有することが望ましい:寸法安定性、熱硬化特性、一方または両方の寸法に関して伸縮性にすることができる能力、耐薬品性、耐熱性および耐摩耗性、引張り強さなど。加えて、多くの場合、このような染色布地が、洗濯されたとき、前述の特性の1つまたはそれ以上を有意に低下させることなく、色、例えば染色、をより長くおよびより濃く保持することができることも重要である。さらに、染色布地が、例えば編布である場合、時には、低減された欠陥(例えば繊維破断)により処理の向上が望まれる。
【発明の開示】
【0004】
より濃く着色することができることおよび洗濯に対して色を保持することができる、すなわち染色堅牢性である、ことを含めて、望ましい特性のバランスのとれた組み合わせを多くの場合有する、改善された布地が、ここに見出された。これらの組成物は、一部の用途では、改善された加工性も可能にする。本発明の布地は、一般に、弾性繊維を含む編布または織布である。このような編布は、例えば、マイクロファイバーポリエステルのようなポリエステルを含む。前記弾性繊維は、多くの場合、少なくとも1つのエチレンブロックポリマーと少なくとも1つの架橋剤の反応生成物を含む。前記繊維は、前記布地が所望の特性を有するような架橋量を特徴とする。前記エチレンブロックポリマーは、通常、
(A)エチレン/α−オレフィン共重合体であり、ここで、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、次の特徴の1つまたはそれ以上を有する:
(1)ゼロより大で約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn);または
(2)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5で且つ約1までのブロック指数を有することを特徴とする少なくとも1つの分子画分;または
(3)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、Tmとdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
の関係に対応する;または
(4)約1.7から約3.5のMw/Mnであって、融解熱[ΔH(単位:J/g)]、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として定義されるデルタ量(ΔT(単位:摂氏度)]において、ΔTおよびΔHの数値が、
ΔHがゼロより大で130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
(ここで、CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、前記ポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、前記CRYSTAF温度は30℃である)の関係を有する数値であることを特徴とする;または
(5)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、Reおよびdの数値が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、
Re>1481−1629(d)
の関係を満たす;または
(6)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分が、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有し、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体は、前記エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマー(1または複数)を有し、ならびに前記共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全ポリマーに対する)を有することを特徴とする分子画分;または
(7)25℃での貯蔵弾性率[G’(25℃)]、および100℃での貯蔵弾性率[G’(100℃)]において、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約9:1である。
【0005】
上のエチレン/α−オレフィン共重合体の特徴(1)から(7)は、一切の有意な架橋前、すなわち架橋前、のエチレン/α−オレフィン共重合体に関して与えるものである。本発明において有用なエチレン/α−オレフィン共重合体は、通常、所望の特性が得られる程度に架橋される。架橋前に測定した場合の特徴(1)から(7)を用いることに、前記共重合体が架橋を必要としないことを示唆する意味はない−単に、前記特徴を有意な架橋のない共重合体に関して測定することを意味する。架橋は、特定のポリマーまたは架橋度に依存してこれらのそれぞれの特性を変える場合もあり、または変えない場合もある。多くの場合、本発明の染色布地は、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により約3.0以上の変色によって特徴づけることができる。多くの場合、本発明の染色布地は、染色後、分光光度計で測定して約600であるかそれより濃い色濃度によって特徴づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】従来のランダムコポリマー(丸で表す)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で表す)と比較して、本発明のポリマー(ひし形で表す)についての融点/密度の関係を示す。
【0007】
【図2】様々なポリマーについてのDSC融解エンタルピーの関数としてデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す。ひし形は、ランダムエチレン/オクテンコポリマーを表し;四角は、ポリマー実施例1から4を表し;三角は、ポリマー実施例5から9を表し;および丸は、ポリマー実施例10から19を示す。記号「X」は、ポリマー実施例AからFを表す。
【0008】
【図3】本発明の共重合体(四角および丸で表す)および従来のコポリマー(三角で表す。これらは、様々なAFFINITY(商標)ポリマー(Dow Chemical Companyから入手可能)である)から製造した非配向のフィルムについての弾性回復率に対する密度の影響を示す。四角は、本発明のエチレン/ブテンコポリマーを表し;および丸は、本発明のエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【0009】
【図4】実施例5のポリマー(丸で表す)ならびに比較ポリマーEおよびF(記号「X」で表す)についての、画分のTREF溶出温度に対する、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。ひし形は、従来のランダムエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【0010】
【図5】実施例5のポリマー(曲線1)および比較例F(曲線2)についての、画分のTREF溶出温度に対する、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。四角は、実施例Fを表し;および三角は、実施例5を表す。
【0011】
【図6】比較エチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびプロピレン/エチレン−コポリマー(曲線3)についての、ならびに異なる量の鎖シャトリング剤を用いて製造した本発明の2つのエチレン/1−オクテンブロックコポリマー(曲線1)についての、温度の関数としての貯蔵弾性率の対数のグラフである。
【0012】
【図7】幾つかの公知ポリマーと比較して、幾つかの本発明のポリマー(ひし形で示す)についての曲げ弾性率に対するTMA(1mm)のプロットを示す。三角は、様々なDow VERSIFY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手できる)を表し;丸は、様々なランダムエチレン/スチレンコポリマーを表し;および四角は、様々なDow AFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手できる)を表す。
【0013】
【図8】実験室用染色機の写真を示す。
【0014】
【図9】染色および還元洗浄プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般定義
「繊維」は、長さ対直径比が約10より大きい材料を意味する。繊維は、概してその直径に従って分類される。フィラメント繊維は、単糸で約15デニールより大きい、通常は約30デニールより大きい個々の繊維直径を有するものとして一般に定義される。細デニール繊維は、一般に、単糸で約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。マイクロデニール繊維は、一般に、単糸で約100マイクロメートルデニール未満の直径を有する繊維と定義される。
【0016】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」は、一定の長さの材料の不連続ストランド(すなわち、所定の長さのセグメントに切断または別様に分割されたストランド)である「ステープルファイバー」とは対照的に、不定の(すなわち、あらかじめ決められていない)長さの材料の連続ストランドを意味する。
【0017】
「弾性の」は、繊維が、100%歪(2倍の長さ)まで1回引張った後および4回引張った後、その伸長量の少なくとも約50パーセントを回復するということを意味する。弾性は、繊維の「永久歪」によって説明することもできる。永久歪は、弾性の逆である。繊維を一定の点まで伸長し、その後、開放して伸長前の原位置にし、その後、再び伸長する。繊維が荷重を引張り始める点を永久歪パーセントと呼ぶ。「弾性材料」は、当分野では「エラストマー」および「エラストマー材料」とも呼ばれる。弾性材料(弾性品と呼ばれることもあるAATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度)としては、コポリマーそれ自体はもちろん、これらに限定されないが、繊維、フィルム、ストリップ、テープ、リボン、シート、コーティング、成形品などの形態のコポリマーも挙げられる。好ましい弾性材料は、繊維である。弾性材料は、硬化されている場合もあり、硬化されていない場合もあり、照射されている場合もあり、照射されていない場合あり、および/または架橋されている場合もあり、架橋されていない場合もある。
【0018】
「非弾性材料」は、上で定義したような弾性ではない材料(例えば繊維)を意味する。
【0019】
「ホモフィル(Homofil)繊維」は、単一ポリマー領域またはドメインを有し、且つ、(複合繊維が有するような)他の異質なポリマー領域を一切有さない繊維を意味する。
【0020】
「複合繊維」は、2つまたはそれ以上の異質なポリマー領域またはドメインを有する繊維を意味する。複合繊維は、コンジュゲート繊維または多成分系繊維としても知られている。それらのポリマーは、通常は互いに異なるが、2つまたはそれ以上の成分が同じポリマーを含む場合もある。それらのポリマーは、その複合繊維の断面を交差して実質的に異なるゾーンに配置されており、通常、その複合繊維の長さ方向に沿って継続的に伸びる。複合繊維の構造は、例えば、鞘/芯配置(1つのポリマーを別のポリマーが包囲している)、サイドバイサイド配置、パイ配置または「シーアイランド(islands-in-the sea)」配置であり得る。複合繊維は、さらに、米国特許第6,225,243号、同第6,140,442号、同第5,382,400号、同第5,336,552号および同第5,108,820号に記載されている。
【0021】
「メルトブロー繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物を、多数の細い、通常は円形のダイキャピラリーを通して、溶融スレッドまたはフィラメントとして収束高速ガス流(例えば、空気)に押出すことによって形成された繊維であり、前記ガス流は、それらのスレッドまたはフィラメントを低減された直径に細める役割を果たす。それらのフィラメントまたはスレッドをその高速ガス流によって運び、捕集面上に堆積させて、10マイクロメートルより一般には小さい平均直径を有する繊維がランダムに分散されたウェブを形成する。
【0022】
「溶融紡糸繊維」は、少なくとも1つのポリマーを溶融し、その後、その溶融状態の繊維を、ダイの直径(または他の断面形状)より小さい直径(または他の断面形状)に延伸することによって形成された繊維である。
【0023】
「スパンボンド繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物を、紡糸口金の多数の細い、通常は円形のダイキャピラリーを通して、フィラメントとして押出すことによって形成された繊維である。押出されたフィラメントの直径を急速に低下させ、その後、それらのフィラメントを捕集面上に堆積させて、一般に約7マイクロメートルと約30マイクロメートルの間の平均直径を有する繊維がランダムに分散されたウェブを形成する。
【0024】
「不織布」は、編布の場合のように識別できる様式でではなくランダムに重ね置かれている(interlaid)個々の繊維またはスレッドの構造を有するウェブまたは布地を意味する。本発明の実施形態の弾性繊維を利用して、不織布構造はもちろんのこと、非弾性材料との組み合わせでの弾性不織布の複合構造を作製することができる。
【0025】
「糸」は、織布または編布および他の物品を製造する際に使用することができる、撚られたまたは別様に交絡されたフィラメントの連続長を意味する。糸は、被覆されていることもあり、または被覆されていないこともある。カバードヤーンは、別の繊維または材料、一般には天然繊維、例えば綿またはウールの、外部被覆の中に少なくとも部分的にくるまれている糸である。
【0026】
「ポリマー」は、同じタイプのモノマーであろうと、異なるタイプのモノマーであろうと、モノマーを重合させることによって作製された高分子化合物を意味する。一般用語「ポリマー」は、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」ならびに「共重合体」を包含する。
【0027】
「共重合体」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって作製されたポリマーを意味する。一般用語「共重合体」は、用語「コポリマー」(通常、2つの異なるモノマーから作製されたポリマーを指すために用いられる)ならびに用語「ターポリマー」(通常、3つの異なるタイプのモノマーから作製されたポリマーを指すために用いられる)を包含する。これは、4つまたはそれ以上のタイプのモノマーを重合させることによって製造されたポリマーも包含する。
【0028】
用語「エチレン/α−オレフィン共重合体」は、一般に、エチレンと3個またはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンとを含むポリマーを指す。好ましくは、エチレンが、その全ポリマーの大部分のモル分率を構成する。すなわち、エチレンは、その全ポリマーの少なくとも約50モルパーセントを構成する。さらに好ましくは、エチレンは、少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、または少なくとも約80モルパーセントを構成し、その全ポリマーの実質的な残部は、少なくとも1つの他のコモノマーを含み、これは、好ましくは、3個またはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンである。多くのエチレン/オクテンコポリマーについて、好ましい組成は、その全ポリマーの約80モルパーセントより多いエチレン含量、およびその全ポリマーの約10から約15、好ましくは約15から約20モルパーセントのオクテン含量を含む。一部の実施形態において、エチレン/α−オレフィン共重合体は、低収率でまたは少量でまたは化学プロセスの副生成物として生成されるものを含まない。エチレン/α−オレフィン共重合体は、1つまたはそれ以上のポリマーとブレンドできる一方で、製造されたままの(as-produced)エチレン/α−オレフィン共重合体は、実質的に純粋であり、多くの場合、重合プロセスの反応生成物の主成分を構成する。
【0029】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合した形態で含み、これは、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマーユニットの多数のブロックまたはセグメントであることを特徴とする。すなわち、エチレン/α−オレフィン共重合体は、ブロック共重合体、好ましくはマルチブロック共重合体またはコポリマーである。用語「共重合体」および「コポリマー」は、本明細書では同義で用いられる。一部の実施形態において、マルチブロックコポリマーは、次の式:
(AB)
によって表すことができ、この式中、nは、少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、ならびに「B」は、ソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分枝しているまたは実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状の様式で連結している。他の実施形態において、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えると、これらのブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有さない:
AAA――AA−BBB――BB
【0030】
さらに他の実施形態におけるブロックコポリマーは、異なるコモノマー(単数または複数)を含む第三のブロックタイプを、通常は有さない。さらに他の実施形態において、ブロックAおよびブロックBのそれぞれが、そのブロックの中に実質的にランダムに分布しているモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えると、ブロックAおよびブロックBのいずれも、異なる組成の2つまたはそれ以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えば、そのブロックの残りのものとは実質的に異なる組成を有するチップセグメント、を含まない。
【0031】
一般に、マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、そのポリマーの重量に対して約95重量パーセントより多い、好ましくは約98重量パーセントより多い量で存在する、重合ユニットのブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、そのポリマーの重量に対して約5重量パーセント未満、好ましくは約2重量パーセント未満である。一部の実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてエチレンから成る。一方、「ソフト」セグメントは、そのコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、そのポリマーの重量に対して約5重量パーセントより大きい、好ましくは約8重量パーセントより大きい、約10重量パーセントより大きい、または約15重量パーセントより大きい、重合ユニットのブロックを指す。一部の実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量パーセントより大きい場合があり、約25重量パーセントより大きい場合があり、約30重量パーセントより大きい場合があり、約35重量パーセントより大きい場合があり、約40重量パーセントより大きい場合があり、約45重量パーセントより大きい場合があり、約50重量パーセントより大きい場合があり、または約60重量パーセントより大きい場合がある。
【0032】
多くの場合、ソフトセグメントは、ブロック共重合体の中に、そのブロック共重合体の総重量の約1重量パーセントから約99重量パーセント、好ましくは、そのブロック共重合体の総重量の約5重量パーセントから約95重量パーセント、約10重量パーセントから約90重量パーセント、約15重量パーセントから約85重量パーセント、約20重量パーセントから約80重量パーセント、約25重量パーセントから約75重量パーセント、約30重量パーセントから約70重量パーセント、約35重量パーセントから約65重量パーセント、約40重量パーセントから約60重量パーセント、または約45重量パーセントから約55重量パーセント存在し得る。逆に言えば、ハードセグメントが同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量百分率およびハードセグメントの重量百分率は、DSCまたはNMRから得られるデータを基に計算することができる。こうした方法および計算は、Colin L.P.Shan、Lonnie Hazlittらの名で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された、「Ethylene/α-Olefins Block Interpolymers」と題する、同時に出願された米国特許出願第11/376,835号、代理人ドケット番号385063999558に開示されている。この開示は、その全体が本明細書に参照として組み入れられている。
【0033】
用語「結晶質」は、用いられている場合には、示差走査熱分析(DSC)または同等の技法によって判定したときに一次転移または結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、用語「半結晶質」と同義で用いられることがある。用語「非晶質」は、示差走査熱分析(DSC)または同等の技法によって判定したときに結晶融点がないポリマーを指す。
【0034】
用語「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、好ましくは線状に接続されている、2つまたはそれ以上の化学的に異質な領域またセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、重合エチレン官能基について言えばペンダントまたはグラフト式でではなく末端対末端で連結されている、化学的に区別されるユニットを含むポリマー、を指す。好ましい実施形態において、前記ブロックは、組み込まれているコモノマーの量もしくはタイプ、密度、結晶性の量、そのようなポリマー組成に起因する微結晶サイズ、立体規則性のタイプ(イソタクチックまたはシンジオタクチック)もしくは立体規則度、位置規則性もしくは位置不規則性、分岐の量(長鎖分岐もしくは超分岐を含む)、均一性、または他の任意の化学的または物理的な特性が異なる。マルチブロックコポリマーは、これらのコポリマーの独特な製造プロセスのため、両方の多分散指数(PDIもしくはMw/Mn)の一意的な分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布によって特徴付けられる。さらに具体的には、連続プロセスで製造されたとき、これらのポリマーは、望ましくは、1.7から2.9、好ましくは1.8から2.5、さらに好ましくは1.8から2.2、および最も好ましくは1.8から2.1のPDIを有する。バッチまたはセミバッチプロセスにおいて製造されたとき、これらのポリマーは、1.0から2.9、好ましくは1.3から2.5、さらに好ましくは1.4から2.0、および最も好ましくは1.4から1.8のPDIを有する。
【0035】
後続の説明において、本明細書に開示されているすべての数は、それに伴って「約」または「おおよそ」という語が用いられているかどうかにかかわらず、近似値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または場合によっては10から20パーセント変動することがある。下限Rおよび上限Rを有する数値範囲が開示されているときは、必ず、その範囲内に入る任意の数が、具体的に開示されている。特に、その範囲内の次の数:R=R+k*(R−R)、が、具体的に開示されており、この式中のkは、1パーセント刻みで1パーセントから100パーセントまでの範囲にわたる変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、.....、50パーセント、51パーセント、52パーセント、.....、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである。さらに、上で定義したように2つの数Rによって定義される任意の数値範囲も、具体的に開示されている。
【0036】
エチレン/α−オレフィン共重合体
本発明の実施形態において使用されるオレフィンブロックポリマー、例えばエチレン/α−オレフィン共重合体、(「本発明の共重合体」または「本発明のポリマー」とも呼ばれる)は、エチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合した形態で含み、これは、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマーユニットの多数のブロックまたはセグメント(ブロック共重合体)、好ましくはマルチブロックコポリマー、を特徴とする。これらのエチレン/α−オレフィン共重合体は、以下に記載する態様の1つまたはそれ以上を特徴とする。
【0037】
1つの態様において、本発明の実施形態において使用されるエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7から約3.5のMw/Mn、および少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、前記変数の数値は、次の関係に対応する:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)、および好ましくは、
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)、およびさらに好ましくは、
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)
【0038】
このような融点/密度関係を図1に示す。密度が減少するにつれて融点が減少する従来のエチレン/α−オレフィンランダムコポリマーとは異なり、本発明の共重合体(ひし形で表す)は、特に密度が約0.87g/ccから約0.95g/ccの間であるとき、密度とは実質的に無関係な融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が0.875g/ccから約0.945g/ccの間であるとき、約110℃から約130℃の範囲内である。一部の実施形態において、このようなポリマーの融点は、密度が0.875g/ccから約0.945g/ccの間であるとき、約115℃から約125℃の範囲内である。
【0039】
もう1つの態様において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1つまたはそれ以上のα−オレフィンを重合した形態で含み、示差走査熱分析(「DSC」)最高ピークの温度マイナス結晶化分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)最高ピークの温度で定義されるΔT(単位:摂氏度)、および融解熱[ΔH(単位:J/g)]において、ΔTおよびΔHは、ΔHが130J/gまでの場合、次の関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、および好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、およびさらに好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満たすことを特徴とする。さらに、ΔHが130J/gより大きい場合、ΔTは、48℃であるかそれより高い。CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され(すなわち、このピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを表さなければならない)、そのポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、CRYSTAF温度は、30℃であり、ならびにΔHは、融解熱の数値(単位:J/g)である。さらに好ましくは、最高CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。図2は、本発明のポリマーおよび比較例についてプロットしたデータを示すものである。積分ピーク面積およびピーク温度は、計器の製造業者によって供給されたコンピュータ製図プログラムによって計算する。ランダムエチレンオクテン比較ポリマーについて示した斜線は、方程式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に対応する。
【0040】
さらにもう1つの態様において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶出分別法(「TREF」)を用いて分画したとき、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分が、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10パーセント高い、モルコモノマー含量を有し、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体は、前記ブロック共重合体と同じコモノマー(1または複数)を含有し、前記ブロック共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(全ポリマーに対する)モルコモノマー含量を有する。好ましくは、前記比較共重合体のMw/Mnも、前記ブロック共重合体の10パーセント以内であり、および/または前記比較共重合体は、前記ブロック共重合体の10重量パーセント以内の総コモノマー含量を有する。
【0041】
さらにもう1つの態様において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される、300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、Reおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にない場合、次の関係:
Re>1481−1629(d);および好ましくは
Re≧1491−1629(d);およびさらに好ましくは
Re≧1501−1629(d);およびさらにいっそう好ましくは
Re≧1511−1629(d)
を満たすことを特徴とする。
【0042】
図3は、特定の本発明の共重合体および従来のランダムコポリマーから製造した非配向のフィルムについての弾性回復率に対する密度の影響を示すものである。同じ密度の場合、本発明の共重合体のほうが実質的に高い弾性回復率を有する。
【0043】
一部の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、11cm/分のクロスヘッド分離速度で、10MPaより高い引張強度、好ましくは、11MPa以上の引張強度、さらに好ましくは13MPa以上の引張強度、および/または少なくとも600パーセント、さらに好ましくは少なくとも700パーセント、非常に好ましくは少なくとも800パーセント、および最高に好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0044】
他の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1から50、好ましくは1から20、さらに好ましくは1から10の貯蔵弾性率比[G’(25℃)/G’(100℃)]、および/または(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に、60パーセント未満、50パーセント未満、もしくは40パーセント未満の70℃圧縮永久歪(下は0パーセントの圧縮永久歪まで)を有する。
【0045】
さらに他の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満の70℃圧縮永久歪を有する。好ましくは、前記共重合体の70℃圧縮永久歪は、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、下はほぼ0パーセントにまでなることもある。
【0046】
一部の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、85J/g未満の融解熱、および/または100ポンド/フィート(4800Pa)以下、好ましくは50 lbs/ft(2400Pa)以下、特に、5 lbs/ft(240Pa)以下、および0 lbs/ft(0Pa)ほども小さいペレットブロッキング強度を有する。
【0047】
他の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、少なくとも50モルパーセントのエチレンを重合した形態で含み、ならびに80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満または60パーセント未満、最も好ましくは40から50パーセント未満で、下はゼロパーセント近くまでの70℃圧縮永久歪を有する。
【0048】
一部の実施形態において、前記マルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなくシュルツ−フローリー分布に適合するPDIを有する。前記コポリマーは、多分散ブロック分布とブロックサイズの多分散分布の両方を有すること、およびブロック長の最確分布を有することをさらに特徴とする。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて4個またはそれ以上のブロックまたはセグメントを含有するものである。さらに好ましくは、前記コポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10または20個のブロックまたはセグメントを含む。
【0049】
コモノマー含量は、任意の適する技法を用いて測定することができるが、核磁気共鳴(「NMR」)分光分析法に基づく技法が好ましい。さらに、比較的広いTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーのブレンドの場合、望ましくは、TREFを用いて、そのポリマーを、10℃またはそれ以下の溶出温度範囲をそれぞれが有する画分に先ず分画する。すなわち、それぞれの溶出画分は、10℃またはそれ以下の回収温度範囲を有する。この技法を用いると、前記ブロック共重合体は、比較共重合体の対応する画分より高いモルコモノマー含量を有するような画分を少なくとも1つ有する。
【0050】
もう1つの態様において、本発明のポリマーは、好ましくはエチレンと1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合した形態で含む、オレフィン共重合体であり、本ポリマーは、化学的または物理的特性の異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマーユニットの多数のブロック(すなわち、少なくとも2つのブロック)またはセグメント(ブロック化共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマー、を特徴とする。前記ブロック共重合体は、40℃と130℃の間で溶出する(しかし、個々の画分の回収および/または単離を伴わない)ピーク(しかし、分子画分だけではない)を有し、これは、前記ピークが、半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開して赤外分光法により概算されるコモノマー含量を有すること、同じ溶出温度での比較ランダムエチレン共重合体ピークの、半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開したものより高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10パーセント高い平均モルコモノマー含量を有することを特徴とし、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体は、前記ブロック化共重合体のものと同じコモノマー(単数または複数)を有し、ならびに前記ブロック化共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度およびモルコモノマー含量(全ポリマーに対する)を有する。好ましくは、前記比較共重合体のMw/Mnも、前記ブロック化共重合体のものの10パーセント以内であり、および/または前記比較共重合体は、前記ブロック化共重合体のものの10重量%以内の全コモノマー含量を有する。半値全幅(FWHM)計算は、ATREF赤外線検出器からのメチルの応答面積のメチレン応答面積に対する比率[CH/CH]に基づき、ここで、最高(最も高い)ピークをベースラインから特定し、その後、FWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定される分布については、FWHM面積をTとTの間の曲線下面積と定義し、この場合のTおよびTは、ピークの高さを2で割り、その後、ベースラインに水平な線(ATREF曲線の左および右の部分を横切って二分する線)を引くことにより、ATREFピークの左右に対して決定される点である。コモノマー含量についての検量線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを使用し、TREFピークのFWHM面積比に対してNMRからのコモノマー含量をプロットすることによって作成する。この赤外線法のために、対象となる同じコモノマータイプについての検量線を生成する。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、TREFピークのFWHMメチル:メチレン面積比[CH/CH]を用いてこの検量線を参照することにより決定することができる。
【0051】
コモノマー含量は、任意の適する技法を用いて測定することができるが、核磁気共鳴(NMR)分光分析法に基づく技法が好ましい。この技法を用いると、前記ブロック化共重合体は、対応する比較共重合体より高いモルコモノマー含量を有する。
【0052】
好ましくは、エチレンと1−オクテンの共重合体の場合、このブロック共重合体は、量(−0.2013)T+20.07以上の、さらに好ましくは、量(−0.2013)T+21.07以上の、40と130℃の間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有する(ここで、Tは、比較するTREF画分のピーク溶出温度数値であり、℃で測定される)。
【0053】
図4は、エチレンと1−オクテンのブロック共重合体の実施形態を図示するものであり、この図では、幾つかの比較エチレン/1−オクテン共重合体(ランダムコポリマー)についてのTREF溶出温度に対するコモノマー含量のプロットが、(−0.2013)T+20.07を表す線(実線)に適合する。方程式(−0.2013)T+21.07についての線を点線で示す。本発明の幾つかのブロックエチレン/1−オクテン共重合体(マルチブロックコポリマー)の画分についてのコモノマー含量も示す。これらのブロック共重合体画分のすべてが、等価の溶出温度でのいずれの線よりも有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は本共重合体の特徴を示しており、この結果は、結晶質と非晶質の両方の性質を有するポリマー鎖内の区別されるブロックの存在に起因すると考えられる。
【0054】
図5は、下で論じる実施例5および比較Fについてのポリマー画分のTREF曲線およびコモノマー含量を図示するものである。両方のポリマーについての40から130℃、好ましくは60℃から95℃で溶出するピークは、3つの部分に分画され、このそれぞれの部分が10℃未満の温度範囲にわたって溶出する。実施例5についての実際のデータを三角によって表す。種々のコモノマーを含有する共重合体について適切な検量線を作成することができ、それが、同じモノマーの比較共重合体、好ましくはメタロセンまたは他の均一触媒組成物を使用して製造されたランダムコポリマー、から得られたTREF値に適合する、比較として用いられる線であることは、当業者には理解されるはずである。本発明の共重合体は、同じTREF溶出温度で検量線から決定した値より多い、好ましくは少なくとも5パーセント多い、さらに好ましくは少なくとも10パーセント多い、モルコモノマー含量を特徴とする。
【0055】
上の態様、および本明細書に記載する特性に加えて、本発明のポリマーは、1つまたはそれ以上の追加の特徴によって特徴づけることができる。1つの態様において、本発明のポリマーは、好ましくはエチレンと1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合した形態で含む、オレフィン共重合体であり、本ポリマーは、化学的または物理的特性の異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマーユニットの多数のブロックまたはセグメント(ブロック化共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマー、を特徴とする。前記ブロック共重合体は、TREF増分値を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、これは、前記画分が、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分のものより高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10、15、20または25パーセント高い、モルコモノマー含量を有することを特徴とし、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体は、前記ブロック化共重合体のものと同じコモノマー(単数または複数)を含み、好ましくは、それは同じコモノマー(単数または複数)であり、ならびに前記ブロック化共重合体のものの10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(全ポリマーに対する)モルコモノマー含量を含む。好ましくは、前記比較共重合体のMw/Mnも前記ブロック化共重合体のものの10パーセント以内であり、および/または前記比較共重合体は、前記ブロック化共重合体のものの10重量パーセント以内の全コモノマー含量を有する。
【0056】
好ましくは、前記共重合体は、エチレンと少なくとも1つのα−オレフィンの共重合体、特に、約0.855から約0.935g/cmの全ポリマー密度を有する共重合体、およびさらに特に、約1モルパーセントより多いコモノマーを有するポリマーであり、前記ブロック化共重合体は、量(−0.1356)T+13.89以上の、さらに好ましくは、量(−0.1356)T+14.93以上の、および最も好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上の、40と130℃の間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有する(ここで、Tは、比較するTREF画分のピークATREF溶出温度数値であり、℃で測定される)。
【0057】
好ましくは、エチレンと少なくとも1つのアルファ−オレフィンの前記共重合体、特に、約0.855から約0.935g/cmの全ポリマー密度を有する共重合体、およびさらに特に、約1モルパーセントより多いコモノマーを有するポリマーの場合、前記ブロック化共重合体は、量(−0.2013)T+20.07以上の、さらに好ましくは、量(−0.2013)T+21.07以上の、40と130℃の間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有する(ここで、Tは、比較するTREF画分のピーク溶出温度数値であり、℃で測定される)。
【0058】
さらにもう1つの態様において、本発明のポリマーは、好ましくはエチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合した形態で含む、オレフィン共重合体であり、本ポリマーは、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマーユニットの多数のブロックまたはセグメント(ブロック化共重合体)、最も好ましくはマルチブロック共重合体、であることを特徴とする。前記ブロック共重合体は、TREF増分値を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、これは、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有するすべての画分が、約100℃より高い融点を有することを特徴とする。約3モルパーセントから約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分の場合、すべての画分が、約110℃またはそれより高いDSC融点を有する。さらに好ましくは、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有する前記ポリマー画分は、次の式に対応するDSC融点を有する:
Tm≧(−5.5926)(前記画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90。
【0059】
もう1つの態様において、本発明のポリマーは、好ましくはエチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合した形態で含む、オレフィン共重合体であり、本ポリマーは、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合したモノマーユニットの多数のブロックまたはセグメント(ブロック化共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマー、であることを特徴とする。前記ブロック共重合体は、TREF増分値を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、これは、約76℃であるかそれより高いATREF溶出温度を有するすべての画分が、DSCによって測定したとき、次の方程式に対応する融解エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(摂氏でのATREF溶出温度)−136.58。
【0060】
本発明のブロック共重合体は、TREF増分値を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、これは、40℃と約76℃未満の間のATREF溶出温度を有するすべての画分が、DSCによって測定したとき、次の方程式に対応する融解エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(摂氏でのATREF溶出温度)+22.97。
【0061】
赤外線検出器によるATREFピークコモノマー組成の測定
TREFピークのコモノマー組成は、スペイン、バレンシアのPolymer Char(http://www.polymerchar.com/)から入手できるIR4赤外線検出器を使用して、測定することができる。
【0062】
この検出器の「組成モード」は、測定センサー(CH)および組成センサー(CH)を装備しており、これらには2800から3000cm−1の領域の狭帯域赤外フィルターが付いてる。前記測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH)炭素(これは、溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出し、一方、前記組成センサーは、ポリマーのメチル(CH)基を検出する。測定シグナル(CH)で割った組成シグナル(CH)の算術比は、溶液中の測定ポリマーのコモノマー含量の影響を受けやすく、その応答を公知のエチレンアルファ−オレフィンコポリマー標準物質で較正する。
【0063】
前記検出器は、ATREF計器と共に使用すると、TREFプロセス中の溶出ポリマーの濃度(CH)シグナル応答と組成(CH)シグナル応答の両方を提供する。ポリマー特異的検量線は、コモノマー含量がわかっている(これは、好ましくは、NMRによって測定される)ポリマーについてのCHに対するCHの面積比を測定することによって、作成することができる。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCHおよびCH応答についての面積比(すなわち、コモノマー含量に対するCH/CHの面積比)の基準検量線を当てはめることによって概算することができる。
【0064】
ピーク面積は、適切なベースラインを当てはめた後、半値全幅(FWHM)計算を用いて、TREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分することによって計算することができる。半値全幅の計算は、ATREF赤外線検出器からのメチルの応答面積のメチレン応答面積に対する比率[CH/CH]に基づき、ここで、最高(最も高い)ピークをベースラインから特定し、その後、FWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定される分布の場合、FWHM面積は、T1とT2の間の曲線下面積と定義され、この場合のT1およびT2は、ピークの高さを2で割り、その後、ベースラインに水平な線(ATREF曲線の左および右の部分を横切って二分する線)を引くことにより、ATREFピークの左右に対して決定される点である。
【0065】
このATREF赤外線法におけるポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光分析の利用は、原理的には、次の参考文献:Markovich, Ronald P.; Hazlitt, Lonnie G.; Smith, Linley; 「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」, Polymeric Materials Science and Engineering (1991), 65, 98-100; およびDeslauriers, P.J. ; Rohlfing, D.C.; Shieh, E.T.; 「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)」, Polymer (2002), 43, 59-170(両文献とも、その全体が本明細書に参照として組み入れられている)に記載されているようなGPC/FTIRシステムのものに類似している。
【0066】
他の実施形態において、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大で約1.0以下である平均ブロック指数(ABI)、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn)、を特徴とする。前記平均ブロック指数、ABI、は、5℃刻みでの20℃から110℃の分取TREFにおいて得られたそれぞれのポリマー画分についてのブロック指数(「BI」)の重量平均である:

(この式中、BIは、分取TREFにおいて得られた本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロック指数であり、およびwは、そのi番目の画分の重量百分率である)。
【0067】
それぞれのポリマー画分についてのBIは、次の2つの方程式(これらの両方が同じBI値を与える)
【数1】

のうちの一方によって定義され、式中、Tは、i番目の画分についての分取ATREF溶出温度(好ましくは、ケルビンで表される)であり、Pは、上で説明したようにNMRまたはIRによって測定することができる、i番目の画分のエチレンモル分率である。PABは、全エチレン/α−オレフィン共重合体(分画前)のエチレンモル分率であり、これも、NMRまたはIRによって測定することができる。TおよびPは、純粋な「ハードセグメント」(これは、その共重合体の結晶性セグメントを指す)についてのATREF溶出温度およびエチレンモル分率である。「ハードセグメント」についての実際の値が入手できない場合は、一次近似値として、TおよびP値を高密度ポリエチレンホモポリマーについての値にする。ここで行われる計算についてのTは、372°Kであり、Pは、1である。
【0068】
ABは、PABと同じ組成であり、PABのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは、次の方程式:
Ln PAB=α/TAB+β
から計算することができ、式中のαおよびβは、多数の公知ランダムエチレンコポリマーを使用して較正することによって決定することができる。αおよびβは計器によって変わることがあることに留意しなければならない。さらに、対象となるポリマー組成、およびまた、それらの画分と類似の分子量範囲のポリマー組成を用いて、それら自体の検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果がある。類似の分子量範囲から検量線が得られれば、そのような効果は本質的に無視できる。一部の実施形態において、ランダムエチレンコポリマーは、次の関係:
Ln P=−237.83/TATREF+0.639
を満たす。
【0069】
XOは、Pと同じ組成であり、Pのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、Ln P=α/TXO+βから計算することができる。逆に言うと、PXOは、Tと同じ組成であり、TのATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル分率であり、これは、Ln PXO=α/T+βから計算することができる。
【0070】
それぞれの分取TREF画分についてのブロック指数(BI)が得られると、全ポリマーについての重量平均ブロック指数(ABI)を計算することができる。一部の実施形態において、ABIは、ゼロより大きいが、約0.3未満であり、または約0.1から約0.3である。他の実施形態において、ABIは、約0.3より大で約1.0以下である。好ましくは、ABIは、約0.4から約0.7、約0.5から約0.7、または約0.6から約0.9の範囲でなければならない。一部の実施形態において、ABIは、約0.3から約0.9、約0.3から約0.8、または約0.3から約0.7、約0.3から約0.6、約0.3から約0.5、または約0.3から約0.4の範囲である。他の実施形態において、ABIは、約0.4から約1.0、約0.5から約1.0、または約0.6から約1.0、約0.7から約1.0、約0.8から約1.0、または約0.9から約1.0の範囲である。
【0071】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のもう1つの特徴は、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体が、約0.1より大で約1.0までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn)を有する、分取TREFによって得ることができる少なくとも1つのポリマー画分を含むことである。一部の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.6より大で約1.0まで、約0.7より大で約1.0まで、約0.8より大で約1.0まで、または約0.9より大で約1.0までのブロック指数を有する。他の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.1より大で約1.0まで、約0.2より大で約1.0まで、約0.3より大で約1.0まで、約0.4より大で約1.0まで、または約0.4より大で約1.0までのブロック指数を有する。さらに他の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.1より大で約0.5まで、約0.2より大で約0.5まで、約0.3より大で約0.5まで、または約0.4より大で約0.5までのブロック指数を有する。さらに他の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.2より大で約0.9まで、約0.3より大で約0.8まで、約0.4より大で約0.7まで、または約0.5より大で約0.6までのブロック指数を有する。
【0072】
エチレンとα−オレフィンのコポリマーの場合、本発明のポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、および最も好ましくは少なくとも2.6で、5.0の最大値まで、さらに好ましくは3.5の最大値まで、および特に2.7の最大値までのPDI;(2)80J/gまたはそれ以下の融解熱;(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量;(4)−25℃未満、さらに好ましくは−30℃未満のガラス転移温度(T)、および/または(5)1つおよび1つだけのTを有する。
【0073】
さらに、本発明のポリマーは、単独で、または本明細書に開示する任意の他の特性との組み合わせで、100℃の温度でlog(G’)が400kPa以上の、好ましくは1.0MPa以上の貯蔵弾性率(G’)を有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0から100℃の範囲では温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を有し(図6に図示する)、これは、ブロックコポリマーの特徴であるが、オレフィンコポリマー、特に、エチレンと1つまたはそれ以上のC3−8脂肪族α−オレフィンのコポリマーについては今まで知られていない。(本内容における「比較的平坦な」という用語は、50と100℃の間、好ましくは0と100℃の間でのlogG’(単位:パスカル)の減少が、1ケタ未満であることを意味する)。
【0074】
本発明の共重合体は、少なくとも90℃の温度で1mmの熱機械分析侵入深さ、ならびに3kpsi(20MPa)から13kpsi(90MPa)の曲げ弾性率によってさらに特徴づけることができる。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度で1mmの熱機械分析侵入深さ、ならびに少なくとも3kpsi(20MPa)の曲げ弾性率を有することができる。それらを、90mm未満の耐摩耗性(または容積減少)を有するものとして特徴づけることもできる。図7は、他の公知ポリマーと比較して、本発明のポリマーについて曲げ弾性率に対するTMA(1mm)を示すものである。本発明のポリマーは、他のポリマーより有意に良好な可撓性と耐熱性のバランスを有する。
【0075】
加えて、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01から2000g/10分、好ましくは0.01から1000g/10分、さらに好ましくは0.01から500g/10分、および特に0.01から100g/10分のメルトインデックス、Iを有することができる。一定の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01から10g/10分、0.5から50g/10分、1から30g/10分、1から6g/10分、または0.3から10g/10分のメルトインデックス、Iを有する。一定の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィンポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分、または5g/10分である。
【0076】
本ポリマーは、1000g/モルから5,000,000g/モル、好ましくは1000g/モルから1,000,000、さらに好ましくは10,000g/モルから500,000g/モル、および特に10,000g/モルから300,000g/モルの分子量、Mwを有することができる。本発明のポリマーの密度は、0.80から0.99g/cm、および好ましくは、エチレン含有ポリマーについては0.85g/cmから0.97g/cmであり得る。一定の実施形態において、前記エチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860から0.925g/cm、または0.867から0.910g/cmの範囲にわたる。
【0077】
本ポリマーを製造するプロセスは、次の特許出願に開示されている:2004年3月17日出願の米国特許仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国特許仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国特許仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国特許仮出願第60/662,938号;2005年3月17日出願の国際出願番号PCT/US2005/008916;2005年3月17日出願の国際出願番号PCT/US2005/008915;および2005年3月17日出願の国際出願番号PCT/US2005/008917(これらのすべては、その全体が本明細書に参照として組み入れられている)。例えば、1つのこうした方法は、エチレンおよび場合によってはエチレン以外の1つまたはそれ以上の付加重合可能なモノマーを付加重合条件下で触媒組成物と接触させることを含み、この触媒組成物は、
(A)高いコモノマー組み込み指数(incorporation index)を有する第一のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー組み込み指数の90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー組み込み指数を有する第二のオレフィン重合触媒、および
(C)鎖シャトリング剤
を併せることによって得られる混合物または反応生成物を含有する。
【0078】
代表的な触媒および鎖シャトリング剤は、次のとおりである。
触媒(A1)は、国際公開第03/40195号、2003US0204017、2003年5月2日出願のUSSN 10/429,024、および国際公開第04/24740号の教示に従って調製される、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化1】

【0079】
触媒(A2)は、国際公開第03/40195号、2003US0204017、2003年5月2日出願のUSSN 10/429,024、および国際公開第04/24740号の教示に従って調製される、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化2】

【0080】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【化3】

【0081】
触媒(A4)は、US−A−2004/0010103の教示に実質的に従って調製した、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【化4】

【0082】
触媒(B1)は、1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【化5】

【0083】
触媒(B2)は、1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【化6】

【0084】
触媒(C1)は、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルであり、米国特許第6,268,444号の手法に実質的に従って調製される:
【化7】

【0085】
触媒(C2)は、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルであり、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製される:
【化8】

【0086】
触媒(C3)は、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチルであり、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製される:
【化9】

【0087】
触媒(D1)は、ビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウムジクロライドであり、Sigma−Aldrichから入手できる:
【化10】

【0088】
シャトリング剤 利用されるシャトリング剤としては、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)、およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0089】
好ましくは、上述のプロセスは、相互変換することができない多数の触媒を使用して、ブロックコポリマー、特にマルチブロックコポリマー、好ましくは線状マルチブロックコポリマー、特にエチレンとC3−20オレフィンまたはシクロオレフィン、および最も特にエチレンとC4−20α−オレフィンの2つまたはそれ以上のモノマー、を形成するために、連続溶液方法の形をとる。すなわち、前記触媒は、化学的に異質である。連続溶液重合条件下でのこのプロセスは、高いモノマー転化率でのモノマー混合物の重合に申し分なく適している。これらの重合条件下では、鎖シャトリング剤から触媒へのシャトリングが、鎖成長に比べて有利になり、マルチブロックコポリマー、特に、線状マルチブロックコポリマーが、高効率で形成される。
【0090】
本発明の共重合体は、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的ブレンド、および逐次的モノマー付加、流動触媒(fluxional catalyst)、アニオンまたはカチオンリビング重合技術によって作製されたブロックコポリマーとは区別することができる。特に、同等の結晶性または弾性率で同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、良好な(高い)耐熱性(例えば、融点によって測定される)、高いTMA侵入温度、高い高温引張強度、および/または高い高温捩り貯蔵弾性率(例えば、動的機械的分析によって決定される)を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を有するランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、低い圧縮永久歪(特に高温で)、低い応力緩和、高い耐クリープ性、高い引裂強度、高い耐ブロッキング性、速い硬化(高い結晶化(凝固)温度に起因する)、高い回復率(特に高温で)、良好な耐摩耗性、高い収縮力、および良好な油およびフィラー受容性を有する。
【0091】
本発明の共重合体は、独特な結晶化度と分岐分布の関係も示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に、同じモノマーおよびモノマーレベルを有するランダムコポリマー、または等価の総合密度のポリマーの物理的ブレンド、例えば高密度ポリマーと低密度コポリマーのブレンド、と比較して、CRYSTAFを使用して測定される最高ピーク温度とDSCを使用して融解熱の関数として測定される最高ピーク温度の間に比較的大きな差がある。本発明の共重合体のこの独特な特徴は、ポリマー骨格内のブロック中のコモノマーのユニークな分布に起因すると考えられる。特に、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含量の交互ブロック(ホモポリマーブロックを含む)を含有することができる。本発明の共重合体は、シュルツ−フローリー型の分布である、異なる密度またはコモノマー含量のポリマーブロックの数および/またはブロックサイズに関する分布も有することができる。加えて、本発明の共重合体は、ポリマーの密度、弾性率および形態とは実質的に無関係である独特なピーク融点および結晶化温度プロフィールも有することができる。好ましい実施形態において、本ポリマーの微結晶秩序は、1.7未満の、またはさらに1.5未満の、下は1.3未満までのPDI値においてでさえ、ランダムまたはブロックコポリマーとは区別できる、特徴的な球晶および板晶を示す。
【0092】
さらに、本発明の共重合体は、ブロッキネス度またはレベルに影響を及ぼす技術を用いて作製することができる。すなわち、触媒およびシャトリング剤の比率およびタイプ、ならびに重合温度、および他の重合変数を制御することによって、コモノマーの量またはそれぞれのポリマーブロックまたはセグメントの長さを変えることができる。この現象の驚くべき恩恵は、ブロッキネス度を増大させるにつれて、結果として生ずるポリマーの光学特性、引裂強度および高温回復特性が改善されるという発見である。特に、ポリマー中のブロックの平均数が増加するにつれて、曇り度は減少し、その上、透明度、引裂強度および高温回復特性が増す。所望の連鎖移動能力(低い連鎖停止反応レベルで高いシャトリング速度)を有する、シャトリング剤と触媒の組み合わせを選択することにより、他の形態のポリマー停止反応を有効に抑制することができる。従って、本発明の実施形態のエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合では、β−ヒドリド脱離は、あったとしてもわずかにしか観察されず、結果として生ずる結晶性ブロックは、高度に、または実質的に完全に、線状であり、長鎖分岐をほとんどまたは全く有さない。
【0093】
本発明の実施形態に従って、高結晶性連鎖末端を有するポリマーを選択的に作製することができる。エラストマー用途の場合、非晶質ブロックを末端に有するポリマーの相対量の減少は、結晶性領域に対する分子間希釈効果を減少させる。この結果は、水素または他の連鎖反応停止剤に適切に応答する鎖シャトリング剤および触媒を選択することによって達成することができる。具体的には、高結晶性ポリマーを生成する触媒が、(例えば、より高いコモノマー組み込み、レジオ・エラー(regio-error)、またはアタクチックポリマー形成により)、さほど結晶性でないポリマーセグメントを生じさせる原因となる触媒より、(例えば、水素の使用による)連鎖反応停止を受けやすい場合には、高結晶性ポリマーセグメントが、そのポリマーの末端部分を優先的に占める。結果として生ずる末端基が結晶性であるばかりでなく、停止し次第、その高結晶性ポリマー形成性触媒部位をポリマー形成の再始動にもう一度利用することができる。それ故、その最初に形成されるポリマーは、別の高結晶性ポリマーセグメントとなる。従って、結果として生ずるマルチブロックコポリマーの両末端は、優先的に高結晶性となる。
【0094】
本発明の実施形態において使用されるエチレン/α−オレフィン共重合体は、好ましくは、エチレンと少なくとも1つのC−C20α−オレフィンの共重合体である。エチレンとC−C20α−オレフィンのコポリマーが、特に好ましい。前記共重合体は、C−C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンをさらに含むことができる。エチレンとの重合に適する不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例としては、C−C20α−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の適するモノマーとしては、スチレン、ハロ置換またはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、およびナフテン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0095】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーを使用することもできる。オレフィンは、本明細書において用いる場合、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素系化合物のファミリーを指す。触媒の選択に依存して、任意のオレフィンを本発明の実施形態において使用することができる。好ましくは、適するオレフィンは、ビニル不飽和を含有するC−C20脂肪族および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびノルボルネン(5および6位がC−C20ヒドロカルビルまたはシクロヒドロカルビル基で置換されているノルボルネンを含むが、これらに限定されない)である。このようなオレフィンの混合物、ならびにこのようなオレフィンとC−C40ジオレフィン化合物の混合物も含まれる。
【0096】
オレフィンモノマーの例としては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、おびよ1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−l−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C−C40ジエン(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンを含むが、これらに限定されない)、および他のC−C40α−オレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、前記α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはこれらの組み合わせである。ビニル基を含有する任意の炭化水素を場合によっては本発明の実施形態において使用することがあるが、モノマーの分子量が高くなりすぎると、実施上の問題点、例えば、モノマーの入手可能性、コスト、および結果として生じたポリマーからの未反応モノマーの簡便な除去が、より解決しにくいものとなり得る。
【0097】
本明細書に記載する重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどをはじめとするモノビニリデン芳香族モノマーを含有するオレフィンポリマーの製造によく適する。特に、エチレンとスチレンを含有する共重合体を、本明細書における教示に従って作製することができる。場合によっては、改善された特性を有する、場合によってはC−C20ジエンを含有するエチレン、スチレンおよびC−C20アルファオレフィンを含有する、コポリマーを作製することができる。
【0098】
適する非共役ジエンモノマーは、6から15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状炭化水素ジエンであり得る。適する非共役ジエンの例としては、直鎖非環式ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分岐鎖非環式ジエン、例えば5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、ならびにジヒドロミリセンとジヒドロオシネンの混合異性体、単環脂環式ジエン、例えば1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン、ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えばテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、およびノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。EPDMを作製するために一般に使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0099】
本発明の実施形態に従って製造することができる望ましいポリマーの一類は、エチレンと、C−C20α−オレフィン、特にプロピレンと、場合によっては1つまたはそれ以上のジエンモノマーの弾性共重合体である。本発明のこの実施形態において使用するために好ましいα−オレフィンは、式CH=CHRによって表すことができ、この式中Rは、1から12個の炭素原子の直鎖または分岐アルキル基である。適するα−オレフィンの例としては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいα−オレフィンは、プロピレンである。プロピレン系ポリマーは、当分野では一般にEPまたはEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマー、特にマルチブロックEPDM型ポリマー、を作製する際に使用するのに適するジエンとしては、4から20個の炭素を含有する、共役または非共役、直鎖または分岐鎖、環式または多環式ジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、および5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0100】
ジエン含有ポリマーは、より多くのまたはより少ない量のジエン(全くない場合を含む)およびα−オレフィン(全くない場合を含む)を含有する交互セグメントまたはブロックを含有するため、ジエンとα−オレフィンの総量を、後のポリマー特性を損なうことなく減少させることができる。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンモノマーは、ポリマー全体にわたって均一にまたはランダムにではなく、ポリマーの1つのタイプのブロックに優先的に組み込まれるため、それらをより効率的に利用することができ、後にそのポリマーの架橋密度をより良好に制御することができる。このような架橋可能なエラストマーおよびそれらの硬化生成物は、より高い引張強度およびより良好な弾性回復率をはじめとする、有利な特性を有する。
【0101】
一部の実施形態において、異なる量のコモノマーを組み込む2つの触媒で製造した本発明の共重合体は、95:5から5:95の、それにより形成されたブロックの重量比を有する。望ましくは、弾性ポリマーは、そのポリマーの総重量に対して20から90パーセントのエチレン含量、0.1から10パーセントのジエン含量、および10から80パーセントのα−オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、前記マルチブロック弾性ポリマーは、そのポリマーの総重量に対して60から90パーセントのエチレン含量、0.1から10パーセントのジエン含量、および10から40パーセントのα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、10,000から約2,500,000、好ましくは20,000から500,000、さらに好ましくは20,000から350,000の重量平均分子量(Mw)、および3.5未満、さらに好ましくは3.0未満の多分散性、および1から250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する、高分子量ポリマーである。さらに好ましくは、このようなポリマーは、65から75パーセントのエチレン含量、0から6パーセントのジエン含量、および20から35パーセントのα−オレフィン含量を有する。
【0102】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって、官能化することができる。例示的官能基としては、例えば、エチレン性不飽和一および二官能性カルボン酸、エチレン不飽和一および二官能性カルボン酸無水物、それらの塩およびそれらのエステルを挙げることができる。このような官能基をエチレン/α−オレフィン共重合体にグラフトすることができ、またはそれをエチレンおよび任意の追加のコモノマーと共重合させて、エチレンと官能性コモノマーと場合によっては他のコモノマー(単数または複数)の共重合体を形成することができる。ポリエチレンに官能基をグラフトするための手段は、例えば、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記載されており、これらの特許の開示は、その全体が本明細書に参照として組み入れられている。1つの特に有用な官能基は、無水マレイン酸である。
【0103】
前記官能性共重合体中に存在する官能基の量は様々であり得る。前記官能基は、一般に、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、およびさらに好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量で、コポリマー型官能化共重合体中に存在し得る。前記官能基は、一般に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、およびさらに好ましくは約25重量パーセント未満の量で、コポリマー型官能化共重合体中に存在する。
【0104】
試験方法
後続の実施例では、次の分析技術を利用する:
【0105】
サンプル1から4およびAからCのためのGPC法
熱針(160℃に設定)を装備した自動液体処理ロボットを使用して、30mg/mLの最終濃度をもたらすために十分な1,2,4−トリクロロベンゼン(300ppmのイオノール(Ionol)で安定させたもの)を、それぞれの乾燥ポリマーサンプルに添加する。小さなガラス攪拌棒をそれぞれの試験管の中に入れ、250rpmで回転する加熱したオービタルシェーカーを用いて、それらのサンプルを2時間、160℃に加熱する。その後、その自動液体処理ロボットおよび160℃に設定した熱針を使用して、それらの濃縮ポリマー溶液を1mg/mLに希釈する。
【0106】
Symyx Rapid GPCシステムを使用して、それぞれのサンプルについての分子量データを決定する。2.0mL/分の流量に設定したGilson 350ポンプを使用して、1,2−ジクロロベンゼン(300ppmのイオノールで安定させヘリウムでパージしたもの)を移動相として、直列に配列した3本のPlgel 10マイクロメートル(μm)Mixed B 300mm×7.5mmカラムに通し、160℃に加熱する。エバポレーターを250℃に設定し、ネブライザーを165℃に設定し、および窒素流量を60から80psi(400から600kPa)Nの圧力で1.8SLMに設定したPolymer Labs ELS 1000 Detectorを使用する。ポリマーサンプルを160℃に加熱し、前記液体処理ロボットおよび熱針を使用してそれぞれのサンプルを250μLループに注入する。2つの切替ループおよびオーバーラッピングインジェクションを使用するポリマーサンプルの逐次分析を用いる。Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを使用して、サンプルデータを収集し、分析する。ピークを手作業で積分し、ポリスチレン標準検量線に対して補正せずに分子量情報を報告する。
【0107】
標準CRYSTAF法
分岐分布は、スペイン、バレンシアのPolymerCharから市販されているCRYSTAF 200ユニットを使用して結晶化分析分別(CRYSTAF)により決定する。サンプルを1時間、160℃の1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解し(0.66mg/mL)、95℃で45分間、安定させる。サンプル温度は、0.2℃/分の冷却速度で、95から30℃の範囲にわたる。赤外線検出器を使用して、ポリマー溶液濃度を測定する。温度を下げながら、ポリマーが結晶化するにつれて累積可溶濃度を測定する。これらの累積プロフィールの解析的微分は、ポリマーの短鎖分岐分布を表す。
【0108】
CRYSTAFピーク温度および面積を、CRYSTAF Software(バージョン2001.b、スペイン、バレンシアのPolymerChar)の中に含まれているピーク分析モジュールによって特定する。CRYSTAFピーク検出手順は、ピーク温度をdW/dT曲線の最大値として特定し、そしてその微分曲線におけるその特定されたピークの両側の正の最大変曲間の面積を特定する。このCRYSTAF曲線を計算するために好ましい処理パラメータは、70℃の温度限界を有し、その温度限界より上では0.1の、およびその温度限界より下では0.3の平滑化パラメータを有するものである。
【0109】
DSC標準法(サンプル1−4およびA−Cを除外)
示差走査熱分析の結果は、RCS冷却補助装置およびオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを使用して決定する。50ml/分の窒素パージガス流量を用いる。サンプルを薄膜にプレスし、そのプレス中で約175℃で溶融し、その後、室温(25℃)に空気冷却する。その後、3から10mgの材料を直径6mmのディスクに切断し、正確に計量し、軽いアルミニウムパン(約50mg)の中に入れ、その後、端を曲げて閉じる。次の温度プロフィールを用いてサンプルの熱挙動を調査する。サンプルを180℃に急速に加熱し、3分間等温で保持して、一切の前の熱履歴を除去する。その後、サンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却し、−40℃で3分間保持する。その後、サンプルを10℃/分の加熱速度で150℃に加熱する。その冷却および第二加熱曲線を記録する。
【0110】
DSC融解ピークは、−30℃と融解終点の間に引いた線形ベースラインに対する熱流量(W/g)の最大値として測定する。融解熱は、線形ベースラインを使用して−30℃と融解終点の間の溶融曲線の曲線下面積として測定する。
【0111】
GPC法(サンプル1から4およびAからCを除外)
このゲル透過クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210装置またはPolymer Laboratories Model PL−220装置から成る。カラムおよびカルーセル区画を140℃で動作させる。3本のPolymer Laboratories 10マイクロメートル Mixed−Bカラムを使用する。溶剤は、1,2,4−トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶剤中0.1グラムのポリマーの濃度で調製する。2時間、160℃で軽度に攪拌することにより、サンプルを調製する。使用する注入量は、100マイクロリットルであり、流量は、1.0mL/分である。
【0112】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量の間に少なくとも10の隔たりがある6つの「カクテル」混合物に割り当てた、580から8,400,000の範囲にわたる分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行う。これらの標準物質は、Polymer Laboratories(英国、シュロップシア)から購入する。それらのポリスチレン標準物質を、1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶剤中に0.025グラムで、および1,000,000未満の分子量については、50ミリリットルの溶剤中に0.05グラムで調製する。それらのポリスチレン標準物質を30分間、穏やかに攪拌しながら80℃で溶解する。狭い標準混合物を最初に実行し、そして分解を最小にするために最も高い分子量の成分から低いものへと順番に実行する。次の方程式(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載の通り)
ポリエチレン=0.431(Mポリスチレン
を用いて、ポリスチレン標準物質ピーク分子量をポリエチレン分子量に変換する。
【0113】
ポリエチレン当量分子量計算は、Viscotek TriSECソフトウェアVersion 3.0を使用して行う。
【0114】
圧縮永久歪
圧縮永久歪は、ASTM D 395に従って測定する。3.2mm、2.0mmおよび0.25mmの厚さの25.4mmの直径の円形ディスクを12.7mmの総厚に達するまで積重ねることによって、サンプルを作製する。それらのディスクは、次の条件下でホットプレスを用いて成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラックから切断する:3分間、190℃でゼロ圧力、続いて2分間、190℃で86MPa、続いて、86MPaで冷水を流しながらそのプレスの内部を冷却する。
【0115】
密度
密度測定用のサンプルは、ASTM D 1928に従って作製する。測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、1時間以内のサンプルプレスで行う。
【0116】
曲げ/割線弾性率/貯蔵弾性率
ASTM D 1928を用いてサンプルを圧縮成形する。ASTM D−790に従って、曲げ弾性率および2パーセント割線弾性率を測定する。貯蔵弾性率は、ASTM D 5026−01または同等の技法に従って測定する。
【0117】
光学特性
ホットプレス(Carver Model #4095−4PR1001R)を使用して、0.4mmの厚さのフィルムを圧縮成形する。ペレットをポリテトラフルオロエチレンシートの間に配置し、3分間、55psi(380kPa)で、続いて3分間、1.3MPaで、その後、3分間、2.6MPaで、190℃で加熱する。その後、そのフィルムを1.3MPaで1分間、そのプレスの中で冷水を流しながら冷却する。それらの圧縮成形フィルムを、光学測定、引張挙動、回復、および応力緩和のために使用する。
【0118】
透明度は、ASTM D 1746において指定されているようにBYK Gardner Haze−gardを使用して測定する。
【0119】
45°光沢は、ASTM D−2457において指定されているようにBYK Gardner Glossmeter Microgloss 45°を使用して測定する。
【0120】
内部曇りは、ASTM D 1003手順Aに基づきBYK Gardner Haze−gardを使用して測定する。鉱物油をフィルム表面に塗布して、表面の掻ききずを除去する。
【0121】
機械的特性−引張、ヒステリシス、および引裂
ASTM D 1708微小引張試験片を使用して、一軸引張における応力−歪挙動を測定する。21℃で、500%/分でInstronを用いてサンプルを伸長する。引張強度および破断点伸度を5つの試験片の平均から報告する。
【0122】
100%および300%ヒステリシスは、ASTM D 1708微小引張試験片とInstron(商標)計器を使用して、100%および300%歪までの周期荷重から決定する。サンプルに、267%/分で3サイクル、21℃で荷重を負荷および除荷する。環境チャンバを使用して、300%および80℃でサイクル実験を行う。80℃実験では、サンプルを、試験前に45分間、試験温度で平衡させる。21℃、300%歪サイクル実験では、第一除荷サイクルからの150%歪での収縮応力を記録する。すべての実験について、荷重がベースラインに戻った時点での歪を用いて、第一除荷サイクルからの回復率パーセントを計算する。回復率パーセントは、次のとおり定義する:
【数2】

(式中、εは、周期荷重のためにかかる歪であり、εは、第一除荷サイクル中に荷重がベースラインに戻るところでの歪である)。
【0123】
応力緩和は、環境チャンバを装備したInstron(商標)計器を使用して、50パーセント歪および37℃で12時間測定する。このゲージの形状寸法は、76mm×25mm×0.4mmである。環境チャンバの中で45分間、37℃で平衡させた後、サンプルを333%/分で50%歪に伸張した。応力を時間の関数として12時間、記録した。12時間後の応力緩和パーセントを、次の式を用いて計算した:
【数3】

(式中、Lは、時間0の50%歪での荷重であり、L12は、12時間後の50パーセント歪での荷重である)。
【0124】
Instron(商標)計器を使用して、0.88g/ccまたはそれ以下の密度を有するサンプルで、切込みあり引張引裂実験を行う。この形状寸法は、試験片の長さの半分のところに2mmの切込みが入っている、76mm×13mm×0.4mmのゲージ切片から成る。そのサンプルを、21℃で破断するまで508mm/分で伸張する。最大荷重での歪までの応力−伸度曲線の曲線下面積として、引裂エネルギーを計算する。少なくとも3つの試験片の平均値を報告する。
【0125】
TMA
熱機械分析(侵入温度)は、5分間、180℃および10MPaの成形圧で成形し、その後、風冷した、30mmの直径×3.3mmの厚さの圧縮成形ディスクを用いてを行う。使用した計器は、TMA 7(Perkin−Elmerから入手できるブランド)である。試験の際、1.5mmの半径の先端を有する探針(P/N N519−0416)を1Nの力でサンプルディスクの表面にあてる。温度を25℃から5℃/分で上昇させる。探針侵入距離を温度の関数として測定する。探針がサンプル中に1mm侵入したとき、実験は終わる。
【0126】
DMA
動的機械的分析(DMA)は、180℃のホットプレスで5分間、10MPaの圧力で成形し、その後、そのプレスの中で90℃/分で水冷した、圧縮成形ディスクを用いて測定する。試験は、捩り試験用の二重片持ちはり固定具を装備したARES制御歪レオメーター(TA instruements)を使用して行う。
【0127】
1.5mmのプラックをプレスし、寸法32×12mmの棒に切断する。そのサンプルの両末端を、10mm離した(グリップ離隔距離ΔL)固定具の間にクランプで留め、−100℃から200℃の逐次的温度段階(1段階につき5℃)に付す。それぞれの温度で、10ラジアン/秒の角周波数で、捩り弾性率G’を測定する。確実に、トルクが十分であり、測定値が直線状態を保つように、歪振幅を0.1パーセントと4パーセントの間で維持する。
【0128】
10gの初期静的力を維持して(自動引張モード)、熱膨張が発生したときのサンプルのたるみを防止する。結果として、グリップ離隔距離ΔLは、特にポリマーサンプルの融点または軟化点より上では、温度に伴って増す。この試験は、最大温度で、または固定具間の隔たりが65mmに達すると、終了する。
【0129】
メルトインデックス
メルトインデックス、すなわちIは、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定する。メルトインデックス、すなわちI10も、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定する。
【0130】
ATREF
分析的昇温溶出分別(ATREF)分析は、米国特許第4,798,081号およびWilde, L.; Ryle, T.R.; Knobeloch, D.C.; Peat, I.R.; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)(これらは、その全体が本明細書に参照として組み入れられている)に記載されている方法に従って行う。分析すべき組成物をトリクロロベンゼンに溶解し、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)が入っているカラムの中で、その温度を0.1℃/分の冷却速度で20℃にゆっくりと低下させることによって結晶化させる。このカラムは、赤外線検出器を装備している。その後、溶出溶剤(トリクロロベンゼン)の温度を1.5℃/分の速度で20℃から120℃にゆっくりと上昇させることによりそのカラムから結晶化したポリマーサンプルを溶出させることによって、ATREFクロマトグラム曲線を作成する。
【0131】
13C NMR分析
約3gのテトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物を、10mm NMR管の中の0.4gのサンプルに添加することによって、サンプルを調製する。その管およびその内容物を150℃に加熱することによって、それらのサンプルを溶解し、均質化する。JEOL Eclipse(商標)400MHz分光計またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光計を使用して、100.5MHzの13C共鳴振動数に対応するデータを収集する。6秒のパルス繰り返し時間遅れで、1データファイルにつき4000のトランジェントを用いて、データを獲得する。定量分析のため最小の信号対雑音を達成するために、多数のデータファイルを合計する。スペクトル幅は、25,000Hzであり、最小ファイルサイズは32Kデータポイントである。サンプルを130℃で、10mmの広帯域プローブで分析する。コモノマー組み込みは、Randallのトライアッド法(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317 (1989)(これは、その全体が本明細書に参照として組み入れられている))を用いて決定する。
【0132】
TREFによるポリマー分画
4時間、160℃で攪拌することにより、2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)に15から20gのポリマーを溶解することによって、大規模TREF分画を行う。そのポリマー溶液を、30から40メッシュ(600から425μm)の球形の工業品質のガラスビーズ(Potters Industries,HC 30 Box 20,Brownwood,TX,76801から入手できる)およびステンレス鋼、0.028’’(0.7mm)の直径のカットワイヤーショット(Pellets,Inc.63 Industrial Drive,North Tonawanda,NY,14120から入手できる)の60:40(v:v)混合を充填した3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)スチールカラムに、15psig(100kPa)窒素によって押し通す。そのカラムを、160℃に初期設定した熱制御オイルジャケットに浸漬する。そのカラムを、先ず、125℃に急冷し、その後、毎分0.04℃でゆっくりと20℃に冷却し、1時間保持する。温度を毎分0.167℃で上昇させながら、新たなTCBを約65mL/分で導入する。
【0133】
その分取TREFカラムから約2000mL分の溶出液を16のステーション(加熱したフラクションコレクター)に回収する。ロータリーエバポレーターを使用して、約50から100mLのポリマー溶液が残るまでそれぞれの画分中のポリマーを濃縮する。それらの濃縮溶液を一晩放置した後、過剰なメタノールを添加し、濾過し、すすぐ(最終すすぎ液を含めて、約300から500mLのメタノール)。この濾過段階は、5.0μmのポリテトラフルオロエチレン被覆濾紙を使用する3箇所真空利用濾過ステーション(Osmonics Inc.,Cat#Z50WP04750)を用いて行う。濾過された画分を60℃の真空オーブンの中で一晩乾燥させ、さらなる試験の前に化学てんびんで計量する。
【0134】
溶融強度
溶融強度(MS)は、およそ45度の入口角を有する2.1mmの直径の20:1ダイを装着したキャピラリーレオメーターを使用して測定する。サンプルを190℃で10分間、平衡させた後、ピストンを1インチ/分(2.54cm/分)の速度で動作させる。標準試験温度は190℃である。サンプルを、2.4mm/秒の加速度で、ダイの100mm下に位置する1セットの加速ニップのほうに一軸延伸する。必要引張力をそのニップロールの巻取り速度の関数として記録する。試験中に達成された最大引張力を溶融強度と定義する。引取共振を示すポリマー溶融物の場合、引取共振の発生前の引張力を溶融強度とする。溶融強度は、センチニュートン(「cN」)で記録する。
【0135】
触媒
用語「一晩」は、用いられている場合には、およそ16から18時間を指し、用語「室温」は、20から25℃を指し、および用語「混合アルカン」は、市販のC6−9脂肪族炭化水素混合物を指し、ExxonMobil Chemical Companyから商品呼称Isopar E(登録商標)で入手できる。本明細書における化合物名が、その構造図と一致しない場合、その構造図が支配するものとする。すべての金属錯体の合成およびすべてのスクリーニング実験の準備は、ドライボックス技術を用いて乾燥窒素雰囲気で行った。使用したすべての溶剤は、HPLC品質であり、それらを使用する前に乾燥させた。
【0136】
MMAOは、改質メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム改質メチルアルモキサンを指し、Akzo−Noble Corporationから商業的に入手可能である。
【0137】
触媒(B1)の調製は、次のとおり行う。
a)(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)を10mLのイソプロピルアミンに添加する。その溶液は、急速に明黄色に変わる。周囲温度で3時間攪拌した後、真空下で揮発成分を除去して、明黄色の結晶質固体を得る(97パーセントの収率)。
b)1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
5mLトルエン中の(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2mmol)の溶液を、50mLトルエン中のZr(CHPh)(500mg、1.1mmol)の溶液にゆっくりと添加する。得られた暗黄色の溶液を30分間攪拌する。減圧下で溶剤を除去して、所望の生成物を赤褐色の固体として得る。
【0138】
触媒(B2)の調製は、次のとおり行う。
a)(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)に溶解し、ジ−t−ブチルサリカルデヒド(di-t-buthylsalicaldehyde)(10.00g、42.67mmol)を添加する。その反応混合物を3時間攪拌し、その後、12時間、−25℃に冷却する。得られた黄色固体沈殿を濾過によって回収し、冷メタノール(2×15mL)で洗浄し、その後、減圧下で乾燥させる。収量は、黄色固体の11.17gである。H NMRは、異性体の混合物としての所望の生成物と一致する。
b)ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
200mLトルエン中の(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)の溶液を、600mLトルエン中のZr(CHPh)(5.28g、11.6mmol)の溶液にゆっくりと添加する。得られた暗黄色の溶液を1時間、25℃で攪拌する。その溶液を680mLトルエンでさらに希釈して、0.00783Mの濃度を有する溶液を得る。
【0139】
助触媒1 実質的に、米国特許第5,919,9883号、実施例2に開示されているように、長鎖トリアルキルアミン(Akzo−Nobel,Inc.から入手できる、Armeen(商標)M2HT)、HClおよびLi[B(C]の反応によって調製した、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物(本明細書では、以後、アルメーニウムボラート(armeenium borate)と呼ぶ)。
【0140】
助触媒2 米国特許第6,395,671号、実施例16に従って調製した、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマン)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14−18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0141】
シャトリング剤 利用したシャトリング剤としては、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミニウム(TEA、SA4)、トリオクチルアルミニウム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム(SA10)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)、およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0142】
実施例1−4、比較A−C
一般的なハイスループット並列重合条件
Symyx Technologies,Inc.から入手できるハイスループット、並列式重合反応装置(PPR)を使用し、実質的に米国特許第6,248,540号、同第6,030,917号、同第6,362,309号、同第6,306,658号および同第6,316,663号に従って動作させることにより、重合を行う。エチレン共重合は、エチレンを用い、使用する全触媒に対して1.2当量の助触媒1(MMAOが存在するときには1.1当量)を要求に応じて使用して、130℃および200psi(1.4MPa)で行う。一連の重合は、事前に計量したガラス管が取り付けられている48の個々の反応セルを6×8配列で備えている並列式圧力反応装置(PPR)で行う。それぞれの反応セルの動作容積は、6000μLである。個々の攪拌パドルによって攪拌を規定することで、それぞれのセルを温度および圧力制御する。モノマーガスおよび急冷ガスは、ポンプで直接そのPPRユニットに送り、自動弁によって制御する。液体試薬は、シリンジによってそれぞれの反応装置にロボット操作で添加し、保存溶液は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶剤(4mL)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1mL)、助触媒1または助触媒1/MMAO混合物、シャトリング剤、そして触媒または触媒混合物である。助触媒1とMMAOの混合物、または2つの触媒の混合物を使用する場合、反応装置に添加する直前にそれらの試薬を小さなバイアルの中で予備混合する。ある試薬をある実験において省く場合、他の点では上の添加順序を維持する。所定のエチレン消費量に達するまで、およそ1から2分間、重合を行う。COで急冷した後、反応装置を冷却し、ガラス管を取り出す。それらの管を遠心器/真空乾燥ユニットに移し、12時間、60℃で乾燥させる。乾燥されたポリマーが入っているそれらの管を計量し、この重量と風袋重量の差によってポリマーの純収量を得る。結果は表1に含まれている。表1および本出願の他の箇所において、比較化合物はアスタリスク(*)によって指摘する。
【0143】
実施例1−4は、本発明による線状ブロックコポリマーの合成を実証するものであり、これは、例えば、DEZが存在するときには非常に狭いMWDで本質的に単頂性のコポリマーの形成、およびDEZが不在の場合には二頂性の広い分子量分布の生成物(別々に製造されたポリマーの混合物)の形成によって証明される。触媒(A1)は、触媒(B1)より多くのオクテンを組み込みことがわかっているため、本発明の結果として生ずるコポリマーの異なるブロックまたはセグメントは、分岐または密度に基づいて区別することができる。
【0144】
【表1】

【0145】
本発明に従って製造されたポリマーは、シャトリング剤が不在の状態で作製されたポリマーより比較的狭い多分散性(Mw/Mn)および大きいブロックコポリマー含量(トリマー、テトラマー、またはそれより大きいもの)を有することがわかる。
【0146】
図を参照することにより、表1のポリマーについてのさらなる特徴データを見つける。より具体的には、DSCおよびATREFの結果は、次のことを示す:
【0147】
実施例1のポリマーについてのDSC曲線は、115.7℃の融点(Tm)と158.1J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.5℃での最高ピークと、52.9パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの差は、81.2℃である。
【0148】
実施例2のポリマーについてのDSC曲線は、109.7℃の融点(Tm)と214.0J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、46.2℃での最高ピークと、57.0パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの差は、63.5℃である。
【0149】
実施例3のポリマーについてのDSC曲線は、120.7℃の融点(Tm)と160.1J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、66.1℃での最高ピークと、71.8パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの差は、54.6℃である。
【0150】
実施例4のポリマーについてのDSC曲線は、104.5℃の融点(Tm)と170.7J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃での最高ピークと、18.2パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの差は、74.5℃である。
【0151】
比較AについてのDSC曲線は、90.0℃の融点(Tm)と86.7J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.5℃での最高ピークと、29.4パーセントのピーク面積を示す。これら両方の値が、密度の低い樹脂と一致する。DSCのTmとTcrystafの差は、41.8℃である。
【0152】
比較BについてのDSC曲線は、129.8℃の融点(Tm)と237.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、82.4℃での最高ピークと、83.7パーセントのピーク面積を示す。これら両方の値が、密度の高い樹脂と一致する。DSCのTmとTcrystafの差は、47.4℃である。
【0153】
比較CについてのDSC曲線は、125.3℃の融点(Tm)と143.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、81.8℃での最高ピークと34.7パーセントのピーク面積、ならびに52.4℃のより低い結晶温度を示す。これら2つのピークの間の隔たりは、高結晶性ポリマーと低結晶性ポリマーの存在と一致する。DSCのTmとTcrystafの差は、43.5℃である。
【0154】
実施例5−19、比較D−F、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
内部攪拌機を装備したコンピュータ制御オートクレーブ反応装置で、連続溶液重合を行う。温度制御用ジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8L反応装置に、精製混合アルカン溶剤(ExxonMobil Chemical Companyから入手できるIsopar(商標)E)、エチレン(2.70lbs/時(1.22kg/時)で)、1−オクテン、および(使用する場合には)水素を供給する。この反応装置への溶剤供給量をマスフローコントローラーによって測定する。変速薄膜ポンプによって、反応装置への溶剤流量および圧力を制御する。そのポンプの吐出し時に側流をとって、触媒および助触媒1注入ラインならびに反応装置攪拌機にフラッシュフローをもたらす。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定し、ならびに制御弁によって、またはニードル弁の手動調整によって制御する。残りの溶剤を1−オクテン、エチレンおよび(使用する場合には)水素と併せ、反応装置に供給する。必要に応じて、マスフローコントローラーを使用して反応装置に水素を供給する。溶剤/モノマー溶液の温度は、反応装置に入る前に熱交換器を使用して制御する。この流れが反応装置の底部に入る。ポンプおよびマスフローメーターを使用して触媒成分溶液を計量し、触媒フラッシュ溶剤と併せ、反応装置の底部に導入する。その反応装置を満液で、激しく攪拌しながら500psig(3.45MPa)で作動させる。反応装置の頂部にある出口ラインを通して生成物を取り出す。この反応装置からのすべての出口ラインは、蒸気トレースおよび絶縁が施されている。少量の水を任意の安定剤または他の添加剤と共に出口ラインに添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことによって重合を停止させる。その後、生成物流を熱交換器に通すことによって加熱した後、脱揮する。脱揮押出機および水冷ペレタイザーを使用する押出しによって、そのポリマー生成物を回収する。プロセスの詳細および結果は表2に含まれている。選択したポリマー特性を表3に与える。
【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
結果として生じたポリマーを、前の実施例と同様にDSCおよびATREFによって検査する。結果は、次のとおりである:
【0158】
実施例5のポリマーについてのDSC曲線は、119.6℃の融点(Tm)と60.0J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、47.6℃での最高ピークと、59.5パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、72.0℃である。
【0159】
実施例6のポリマーについてのDSC曲線は、115.2℃の融点(Tm)と60.4J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、44.2℃での最高ピークと、62.7パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、71.0℃である。
【0160】
実施例7のポリマーについてのDSC曲線は、121.3℃の融点と69.1J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、49.2℃での最高ピークと、29.4パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、72.1℃である。
【0161】
実施例8のポリマーについてのDSC曲線は、123.5℃の融点(Tm)と67.9J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.1℃での最高ピークと、12.7パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、43.4℃である。
【0162】
実施例9のポリマーについてのDSC曲線は、124.6℃の融点(Tm)と73.5J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.8℃での最高ピークと、16.0パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、43.8℃である。
【0163】
実施例10のポリマーについてのDSC曲線は、115.6℃の融点(Tm)と60.7J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、40.9℃での最高ピークと、52.4パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、74.7℃である。
【0164】
実施例11のポリマーについてのDSC曲線は、113.6℃の融点(Tm)と70.4J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、39.6℃での最高ピークと、25.2パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、74.1℃である。
【0165】
実施例12のポリマーについてのDSC曲線は、113.2℃の融点(Tm)と48.9J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃であるかまたはそれより高いピークを示さない(従って、さらなる計算のために、Tcrystafを30℃に設定する)。DSCのTmとTcrystafの変分は、83.2℃である。
【0166】
実施例13のポリマーについてのDSC曲線は、114.4℃の融点(Tm)と49.4J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、33.8℃での最高ピークと、7.7パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、84.4℃である。
【0167】
実施例14のポリマーについてのDSCは、120.8℃の融点(Tm)と127.9J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、72.9℃での最高ピークと、92.2パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、47.9℃である。
【0168】
実施例15のポリマーについてのDSC曲線は、114.3℃の融点(Tm)と36.2J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、32.3℃での最高ピークと、9.8パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、82.0℃である。
【0169】
実施例16のポリマーについてのDSC曲線は、116.6℃の融点(Tm)と44.9J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.0℃での最高ピークと、65.0パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、68.6℃である。
【0170】
実施例17のポリマーについてのDSC曲線は、116.0℃の融点(Tm)と47.0J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、43.1℃での最高ピークと、56.8パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、72.9℃である。
【0171】
実施例18のポリマーについてのDSC曲線は、120.5℃の融点(Tm)と141.8J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、70.0℃での最高ピークと、94.0パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、50.5℃である。
【0172】
実施例19のポリマーについてのDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)と174.8J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.9℃での最高ピークと、87.9パーセントのピーク面積を示す。DSCのTmとTcrystafの変分は、45.0℃である。
【0173】
比較DのポリマーについてのDSC曲線は、37.3℃の融点(Tm)と31.6J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃であるかまたはそれより高いピークを示さない。これら両方の値は、密度の低い樹脂と一致する。DSCのTmとTcrystafの変分は、7.3℃である。
【0174】
比較EのポリマーについてのDSC曲線は、124.0℃の融点(Tm)と179.3J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.3℃での最高ピークと、94.6パーセントのピーク面積を示す。これら両方の値は、密度の高い樹脂と一致する。DSCのTmとTcrystafの変分は、44.6℃である。
【0175】
比較FのポリマーについてのDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)と90.4J/gの融解熱に関するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、77.6℃での最高ピークと、19.5パーセントのピーク面積を示す。これら2つのピーク間の隔たりは、高結晶性ポリマーと低結晶性ポリマーの両方の存在と一致する。DSCのTmとTcrystafの変分は、47.2℃である。
【0176】
物理的特性の試験
ポリマーサンプルを、物理的特性、例えば、耐高温特性(例えば、TMA温度試験によって証明される)、ペレットブロッキング強度、高温回復率、高温圧縮永久歪および貯蔵弾性率比、G’(25℃)/G’(100℃)について評価する。幾つかの市販のポリマーを試験に含める:比較Gは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手できる、AFFINITY(登録商標))であり、比較Hは、弾性で実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手できる、AFFINITY(登録商標)EG8100)であり、比較Iは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手できる、AFFINITY(登録商標)PL1840)であり、比較Jは、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON Polymersから入手できる、KRATON(商標)G1652)であり、比較Kは、熱可塑性加硫物(TPV(中に分散された架橋エラストマーを含有するポリオレフィンブレンド))である。結果を表4に提示する。
【0177】
【表4】

【0178】
表4において、比較F(これは、触媒A1およびB1を使用する同時重合の結果として得られた2つのポリマーの物理的ブレンドである)は、約70℃の1mm侵入温度を有し、一方、実施例5−9は、100℃またはそれより高い1mm侵入温度を有する。さらに、実施例10−19は、すべて、85℃より高い1mm侵入温度を有し、大部分が、90℃より高い、またはさらに100℃より高い1mmTMA温度を有する。これは、本新規ポリマーが、物理的ブレンドに比べて高い温度で良好な寸法安定性を有することを示している。比較J(市販のSEBS)は、約107℃の良好な1mm TMA温度を有するが、約100パーセントの非常に劣った(高温70℃)圧縮永久歪を有し、およびまた、高温(80℃)300パーセント歪回復中に回復に失敗する(サンプルが破断する)。このように、例示したポリマーは、一部の市販の高性能熱可塑性エラストマーにおいてでさえ得ることができない特性の独特の組み合わせを有する。
【0179】
同様に、表4は、本発明のポリマーについては6またはそれ以下の低い(良好な)貯蔵弾性率比、G’(25℃)/G’(100℃)を示しているが、物理的ブレンド(比較F)は、9の貯蔵弾性率比を有し、同様の密度のランダムエチレン/オクテンコポリマー(比較G)は、一桁大きい貯蔵弾性率比(89)を有する。ポリマーの貯蔵弾性率比は、できる限り1に近いことが望ましい。そのようなポリマーは、比較的温度の影響を受けず、そのようなポリマーから製造した二次加工品は、広い温度範囲にわたって有用に利用することができる。低い貯蔵弾性率比および温度非依存性のこの特徴は、エラストマー用途において、例えば感圧接着剤配合物において、特に有用である。
【0180】
表4におけるデータは、本発明のポリマーが改善されたペレットブロッキング強度を有することも明示している。特に、実施例5は、0MPaのペレットブロッキング強度を有し、これは、それが、相当なブロッキングを示す比較FおよびGに比べて、試験条件下で易流動性であることを意味する。大きなブロッキング強度を有するポリマーのばら積輸送は、保管または輸送時に製品どうしの凝集または粘着を生じさせ、その結果、劣った取扱適性を生じさせることがあるので、ブロッキング強度は重要である。
【0181】
本発明のポリマーの高温(70℃)圧縮永久歪は一般に良好であり、これは、一般に約80パーセント未満、好ましくは約70パーセント未満、特に約60パーセント未満を意味する。対照的に、比較F、G、HおよびJは、すべて、100パーセント(回復しないことを示す、最大可能値)の70℃圧縮永久歪を有する。特に、ガスケット、窓用形材、Oリングなどのような用途には、良好な高温圧縮永久歪(低い数値)が必要とされる。
【0182】
【表5】

【0183】
表5は、新規ポリマーについての機械的特性についての結果、ならびに周囲温度での様々な比較ポリマーについての結果を示すものである。本発明のポリマーは、ISO 4649に従って試験したとき、一般に約90mm未満、好ましくは約80mm未満、および特に約50mm未満の容積減少を示す、非常に良好な耐摩耗性を有することがわかる。この試験では、数値が高くなるほど、容積減少が大きく、従って、耐摩耗性が低い。
【0184】
切込みあり引張引裂強度によって測定した場合の本発明のポリマーの引裂強度は、表5に示すように、一般に1000mJまたはそれ以上である。本発明のポリマーの引裂強度は、3000mJほども高いことがあり、5000mJほども高いことさえある。比較ポリマーは、一般に、750mJを超えない引裂強度を有する。
【0185】
表5は、本発明のポリマーが、一部の比較サンプルより良好な、150パーセント歪での収縮応力を有すること(これは、より高い収縮応力値によって実証される)も示している。比較例F、GおよびHは、400kPaまたはそれ以下の150パーセント歪での収縮応力値を有し、一方、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)ほども高い150パーセント歪での収縮応力値を有する。より高い150パーセント収縮応力値を有するポリマーは、弾性用途、例えば、弾性繊維および布地、特に不織布にとても有用である。他の用途としては、おむつ、衛生用品、および医療用衣服のウエストバンド用途、例えばタブおよびゴムバンド、が挙げられる。
【0186】
表5は、本発明のポリマーについては、例えば比較Gに比べて、(50パーセント歪での)応力緩和も改善される(低い)ことも示している。より低い応力緩和は、体温で長時間にわたって弾性特性を保持することが望まれるおむつおよび他の衣料品などの用途において、そのポリマーがその力をより良好に保つことを意味する。
光学試験
【0187】
【表6】

【0188】
表6に報告した光学特性は、実質的に配向性のない圧縮成形フィルムに基づくものである。ポリマーの光学特性は、重合に利用する鎖シャトリング剤の量の変化の結果として生ずる結晶サイズの変化のため、広範にわたって変えることができる。
【0189】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7および比較Eのポリマーの抽出検討を行う。これらの実験では、ポリマーサンプルをガラス円筒濾紙に量り取り、Kumagawa型抽出装置に取り付ける。そのサンプルを伴う抽出装置を窒素でパージし、500mL丸底フラスコに350mLのジエチルエーテルを充填する。その後、そのフラスコを抽出装置に取り付ける。攪拌しながらそのエーテルを加熱する。エーテルが円筒濾紙に凝集し始める時間を記録し、24時間、窒素下で抽出を進行させる。この(24時間の)時点で加熱を停止し、溶液を放置して冷却する。抽出装置内に残っている一切のエーテルをフラスコに戻す。フラスコ中のエーテルを真空下、周囲温度で蒸発させ、結果として生じた固体を窒素でパージして乾燥させる。ヘキサンでの逐次的洗浄を用いて、一切の残留物を計量済みのびんに移す。その後、併せたヘキサン洗液を新たな窒素パージによって蒸発させ、残留物を真空下で一晩、40℃で乾燥させる。抽出装置内の一切の残留エーテルを窒素でパージして乾燥させる。
【0190】
その後、350mLのヘキサンを充填した第二の清浄な丸底フラスコをその抽出装置に接続する。攪拌しながらヘキサンを加熱して還流させ、ヘキサンの円筒濾紙への凝集が最初に見られてから24時間、還流状態を持続させる。その後、加熱を停止し、フラスコを放置して冷却する。抽出装置内の一切のヘキサンをフラスコに戻す。真空下、周囲温度で蒸発させることによってヘキサンを除去し、フラスコに残っている一切の残留物を、逐次的へキサン洗浄を用いて、計量済みのびんに移す。フラスコの中のヘキサンを窒素パージによって蒸発させ、残留物を一晩、40℃で真空乾燥させる。
【0191】
抽出後に円筒濾紙中に残存するポリマーサンプルをその円筒濾紙から計量済みのびんに移し、一晩、40℃で真空乾燥させる。結果は、表7に含まれている。
【0192】
【表7】

【0193】
追加のポリマー実施例19A−J、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
実施例19A−Iについて
コンピュータ制御完全混合反応装置(computer controlled well - mixed reactor)において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶剤(Exxon Mobil,Inc.から入手できるIsopar(商標)E)、エチレン、1−オクテンおよび(使用する場合には)水素を併せ、27ガロン反応装置に供給する。反応装置への供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。供給流の温度は、その反応装置に入る前にグリコール冷却式熱交換器の使用により制御する。触媒成分溶液は、ポンプおよびマスフローメーターを使用して測定する。その反応装置を満液で、およそ550psigの圧力で動作させる。反応装置を出次第、そのポリマー溶液に水および添加剤を注入する。その水が、触媒を加水分解し、重合反応を停止させる。その後、二段階脱揮の準備で、後反応装置溶液を加熱する。溶剤および未反応モノマーは、その脱揮プロセス中に除去される。ポリマー溶融物をポンプで水中ペレット切断用のダイに送る。
【0194】
実施例19Jについて
内部攪拌機を装備したコンピュータ制御オートクレーブ反応装置において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶剤(Exxon Mobil Chemical Companyから入手できるIsopar(商標)E)、エチレン(2.70lbs/時(1.22kg/時)で)、1−オクテン、および(使用する場合には)水素を、温度制御用ジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8L反応装置に供給する。反応装置への溶剤供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。変速薄膜ポンプによって、反応装置への溶剤流量および圧力を制御する。そのポンプの吐出し時に、側流をとって、触媒および助触媒注入ラインおよび反応装置攪拌機にフラッシュフローをもたらす。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定し、また、制御弁によってまたはニードル弁の手動調整によって制御する。残りの溶剤を1−オクテン、エチレンおよび(使用する場合には)水素と併せ、反応装置に供給する。必要に応じて、マスフローコントローラーを使用して反応装置に水素を供給する。溶剤/モノマー溶液の温度は、反応装置に入る前に熱交換器の使用により制御する。この流れが、反応装置の底部に入る。ポンプおよびマスフローメーターを使用して触媒成分溶液を計量し、触媒フラッシュ溶剤と併せ、反応装置の底部に導入する。その反応装置を、満液で、激しく攪拌しながら、500psig(3.45MPa)で動作させる。生成物は、反応装置の頂部にある出口ラインを通して取り出す。その反応装置からのすべての出口ラインは、蒸気トレースおよび絶縁が施されている。少量の水を任意の安定剤または他の添加剤と共にその出口ラインに添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことによって、重合を停止させる。その後、その生成物流を熱交換器に通すことによって加熱した後、脱揮する。脱揮押出機および水冷式ペレタイザーを使用する押出しによって、ポリマー生成物を回収する。
【0195】
プロセスの詳細および結果は表8に含まれている。選択したポリマーの特性を表9A−Cに提供する。
【0196】
表9Bにおいて、本発明の実施例19Fおよび19Gは、500%歪後、約65から70%の低い直後残留歪を示す。
【0197】
【表8】

【0198】
【表9】

【0199】
【表10】

【0200】
実施例20および21
実施例20および21のエチレン/α−オレフィン共重合体は、下の表11に示す重合条件を用いて上の実施例19A−Iと実質的に同様の方法で製造した。これらのポリマーは、表10に示す特性を示した。表10は、そのポリマーへの任意の添加剤も示す。
【0201】
【表11】

【0202】
Irganox 1010は、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタンである。Irganox 1076は、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。Irgafos 168は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトである。Chimasorb 2020は、1,6−ヘキサンジアミン,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2,3,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンを伴うポリマー、N−ブチル−1−ブタナミンおよびN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジナミンとの反応生成物。
【0203】
【表12】

【0204】
本発明の染色布地および布製品に適する繊維
本発明は、布製品、例えばシャツ、パンツ、ソックス、水着など、に適する染色布地に関する。本布地は、任意の方法で製造することができるが、一般には織布または編布のいずれかである。本発明の織布は、典型的に、ASTM D3107に従って測定される少なくとも約10パーセントの伸縮によって特徴付けられ、これに対して本発明の編布は、一般に、ASTM D2594に従って測定される少なくとも約30パーセントの伸縮を特徴とする。
【0205】
本染色布地は、通常、少なくとも1つのエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1つの適する架橋剤の反応生成物を含む1つまたはそれ以上の弾性繊維から成る。本明細書において用いる場合、「架橋剤」は、繊維の1つまたはそれ以上、好ましくは大部分、を架橋する任意の手段である。従って、架橋剤は、化合物であってもよいが、必ずしもそうではない。架橋剤は、本明細書において用いる場合、架橋触媒を伴うまたは伴わない、電子ビーム照射、ベータ線照射、ガンマ線照射、コロナ照射、シラン、過酸化物、アリール化合物およびUV照射も含む。米国特許第6,803,014号および同第6,667,351号は、本発明の実施形態において用いることができる電子ビーム照射法を開示している。一般に、布地を染色できるような量の十分な繊維を架橋する。この量は、使用する具体的なポリマーおよび所望の特性によって変わる。しかし、一部の実施形態において、架橋ポリマーのパーセントは、実施例25において説明する方法に従って形成されるゲルの重量パーセントによって測定して、少なくとも約5パーセント、好ましくは少なくとも約10パーセント、さらに好ましくは少なくとも約15重量パーセントから、多くとも約75、好ましくは多くとも65、好ましくは多くとも約50パーセント、さらに好ましくは多くとも約40パーセントである。
【0206】
前記繊維は、ASTM D2653−01(第一フィラメント破断点伸度試験)により、一般に、約200%より大きい、好ましくは約210%より大きい、好ましくは約220%より大きい、好ましくは約230%より大きい、好ましくは約240%より大きい、好ましくは約250%より大きい、好ましくは約260%より大きい、好ましくは約270%より大きい、好ましくは約280%より大きい、および600%ほども高いこともある、フィラメント破断伸度を有する。さらに、本発明の繊維は、(1)ASTM D2731−01により(完成繊維形態で特定伸度での力のもとで)、約1.5以上の、好ましくは約1.6以上の、好ましくは約1.7以上の、好ましくは約1.8以上の、好ましくは約1.9以上の、好ましくは約2.0以上の、好ましくは約2.1以上の、好ましくは約2.2以上の、好ましくは約2.3以上の、好ましくは約2.4以上の、および4ほども高いこともある、200%伸度での荷重/100%伸度での荷重の比を有することを特徴とする。
【0207】
前記ポリオレフィンは、任意の適するエチレンオレフィンブロックポリマーから選択することができる。特に好ましいオレフィンブロックポリマーは、エチレン/α−オレフィン共重合体であり、この場合のエチレン/α−オレフィン共重合体は、架橋前に以下の特性のうちの1つまたはそれ以上を有する:
(1)ゼロより大で約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn);または
(2)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5で且つ約1までのブロック指数を有することを特徴とする、少なくとも1つの分子画分;または
(3)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]において、Tmとdの数値は、次の関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
に対応する;または
(4)約1.7から約3.5のMw/Mn、であって、融解熱[ΔH(単位:J/g)]、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として定義されるデルタ量[ΔT(単位:摂氏度)]において、ΔTおよびΔHの数値は、次の関係:
ΔHがゼロより大で130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
(ここで、CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、前記ポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、前記CRYSTAF温度は30℃である)を有することを特徴とする;または
(5)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、Reおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、次の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす;または
(6)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分は、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有し、ここで前記比較ランダムエチレン共重合体は、前記エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマー(1または複数)を有し、ならびに前記共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(全ポリマーに対する)モルコモノマー含量を有する;または
(7)25℃での貯蔵弾性率[G’(25℃)]、および100℃での貯蔵弾性率[G’(100℃)]において、G’(25℃)対G’(100℃)の比は、約1:1から約9:1である。
【0208】
前記繊維は、所望の用途に依存して任意の望ましいサイズおよび断面形状にすることができる。摩擦低減のため、多くの用途にほぼ円形の断面が望ましい。しかし、他の形状、例えば、三葉形または平坦な(すなわち、「リボン」のような)形も用いることができる。デニールは、繊維の長さの9000メートルあたりのその繊維のグラム数として定義される生地用語である。好ましいデニールサイズは、布地のタイプおよび所望の用途に依存する。一般に、編布は、繊維の大部分が、少なくとも約1、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約50から、多くとも約180、好ましくは多くとも約150、好ましくは多くとも約100デニール、好ましくは多くとも約80デニールというデニール有する繊維を含む。一方、織布は、繊維の大部分が、ニットより大で最大3000デニールまでのデニールを有する繊維を含むことができる。
【0209】
用途に依存して、前記繊維は、ステープルファイバーまたはバインダー繊維をはじめとする任意の適する形態をとり得る。典型的な例としては、ホモフィル繊維、複合繊維、メルトブロー繊維、溶融紡糸繊維、またはスパンボンド繊維を挙げることができる。複合繊維の場合、それは、鞘−芯構造;シーアイランド構造;サイドバイサイド構造;マトリックス−フィブリル構造;またはセグメント化パイ構造を有することがある。有利なことに、従来の繊維形成プロセスを利用して、上述の繊維を製造することができる。そのようなプロセスとしては、例えば、米国特許第4,340,563号、同第、4,663,220号、同第4,668,566号、同第4,322,027号および同第4,413,110号に記載されているものが挙げられる。
【0210】
それらの組成に依存して、前記繊維の加工を容易にすることができ、および前記繊維を他の繊維と同様にまたはそれより良好にスプールから巻出せるようにすることができる。通常の繊維は、円形断面である場合、それらのベースポリマーの過剰な応力緩和に起因して満足のいく巻出し動作を生じさせることができないことが多い。この応力緩和は、スプールの経年数に比例し、ならびにスプールのまさに表面に位置するフィラメントがその面に対する把持力を失って、ゆるいフィラメントのストランドになる原因となる。後に、そのような従来の繊維を有するスプールを積極送り装置、すなわちMemminger−IRO、のロール上に配置し、工業速度、すなわち100から300回転/分、まで回転させると、それらのゆるい繊維はスプール面の側方に投入され、最終的にはスプールの端から落ちる。これは、脱線として知られており、脱線は、巻出プロセスを中断させ、最終的には機械停止を生じさせる、パッケージの肩または端から滑り落ちる従来の繊維の傾向を示す。上の繊維は、脱線を同じまたははるかに低い有意な程度に示すことができ、ことによるとより大きなスループットを可能にする。
【0211】
前記繊維のもう1つの利点は、欠点、例えば布地の欠陥および弾性フィラメントまたは繊維の破断などが従来の繊維と同等であるか、該欠点を従来の繊維と比較して減少させることができる点である。すなわち、上の繊維の使用は、針床上の繊維断片の蓄積−丸編機においてポリマー残留物が針表面に付着するとき発生することが多い問題−を減少させることができる。従って、前記繊維は、繊維を丸編機で例えば布地にするときにその残留物によって引き起こされる、対応する布地破断を減少させることができる。
【0212】
もう1つの利点は、スプールから針まで全域にわたってフィラメントを運ぶ弾性ガイドが、固定式、例えばセラミックおよび金属アイレットである丸編機において、前記繊維を編むことができる点である。対照的に、一部の従来の弾性オレフィン繊維は、アイレットなどの機械部分との摩擦を最小にするためにプーリーなどの回転要素で構成されたこれらのガイドを加熱して、丸編プロセス中の機械停止またはフィラメント破断を回避することができるようにする必要がある。すなわち、機械の案内要素に対する摩擦が、本発明の繊維の使用によって低減される。丸編に関するさらなる情報は、例えば、Bamberg Meisenbach,「Circular Knitting: Technology Process, Structures, Yarns, Quality」, 1995(これは、その全体が本明細書に参照として組み入れられている)において見つけられる。
【0213】
添加剤
酸化防止剤、例えば、Ciba Geigy Corp.よって製造されているIRGAFOS(登録商標)168、IRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)3790およびCHIMASSORB(登録商標)944を本エチレンポリマーに添加して、成形または二次加工操作中の過度の分解を防止すること、および/またはグラフトもしくは架橋の程度をより良好に制御する(すなわち、過剰なゲル化を抑制する)ことができる。インプロセス添加剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、水、フルオロポリマーなども、残留触媒の失活および/または加工性向上などを目的として使用することができる。TINUVIN(登録商標)770(Ciba−Geigyからのもの)を光安定剤として使用することができる。
【0214】
本コポリマーにフィラーを入れてもよいし、フィラーをいれなくてもよい。フィラーを入れる場合、存在するフィラーの量は、耐熱性または高温での弾性のいずれかにも悪影響を及ぼすこととなる量を超えてはならない。存在する場合、典型的に、フィラーの量は、そのコポリマーの総重量(またはコポリマーと1つもしくはそれ以上の他のポリマーのブレンドの場合には、そのブレンドの総重量)に対して0.01重量%と80重量%の間である。代表的なフィラーとしては、カオリンクレー、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカおよび炭酸カルシウムが挙げられる。フィラーが存在する好ましい実施形態では、フィラーを、そうしなければそのフィラーが架橋反応に干渉するに違いないあらゆる傾向を防止または阻止するであろう材料で、コーティングする。ステアリン酸が、そのようなフィラーコーティング剤の実例となる。
【0215】
本繊維の摩擦係数を低下させるために、様々な紡糸仕上剤配合物、例えば、繊維油剤に分散された金属石鹸(例えば、米国特許第3,039,895号または同第6,652,599号参照)、基油中の界面活性剤(例えば、米国特許出願公開第2003/0024052号参照)およびポリアルキルシロキサン(例えば、米国特許第3,296,063号または同第4,999,120号参照)を使用することができる。米国特許出願第10/933,721号(US20050142360として公開されたもの)には、紡糸仕上剤組成物が開示されており、これも使用することができる。
【0216】
布地
本発明は、オレフィンブロックコポリマーを含む、改善された染色布製品に関する。本発明の目的に関し、「布製品」は、布地および物品、すなわち、布地から作られる衣料品(例えば、着色が必要な衣類および他の品目を含む)を含む。編成は、手で、編み針で、または機械を用いて、糸またはスレッドをひと続きの連結されたループの状態に編み合わせることを意味する。本発明は、例えば、縦または横編み、平編みおよび丸編みをはじめとする任意のタイプの編成に適切であり得る。特に好ましい縦編物としては、トリコットおよびラッシェルが挙げられ、一方、好ましい横編物としては、丸編物、平編物およびシームレス編物が挙げられる。しかし、本発明は、丸編み、すなわち、円形針を利用する円形状の編成において用いると、特に有利である。本発明は、任意のタイプの織布にも適切であり得る。
【0217】
本発明の染色布地は、好ましくは、少なくとも1つのエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1つの架橋剤の反応生成物を含む1つまたはそれ以上の弾性繊維を含み、前記エチレンオレフィンブロックポリマーは、エチレン/α−オレフィン共重合体であり、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、架橋前、以下の特徴のうちの1つまたはそれ以上を有する:
(1)ゼロより大で約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn);または
(2)少なくとも0.5で、且つ、約1までのブロック指数を有することを特徴とする、TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子画分;または
(3)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]において、Tmとdの数値は、次の関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
に対応する;または
(4)約1.7から約3.5のMw/Mn、ならびに融解熱[ΔH(単位:J/g)]、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として定義されるデルタ量[ΔT(単位:摂氏度)]において、
ΔTおよびΔHの数値は、次の関係:
ΔHがゼロより大で130J/gまでの場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、
前記CRYSTAFピークが、前記累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、ならびに前記ポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、前記CRYSTAF温度は30℃であることを特徴とする;または
(5)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、ここでReおよびdの数値は、前記エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、次の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす;または
(6)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分は同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有し、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体は、前記エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマー(1または複数)を有し、ならびに前記共重合体のものの10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(全ポリマーに対する)モルコモノマー含量を有することを特徴とする分子画分;または
(7)25℃での貯蔵弾性率[G’(25℃)]、および100℃での貯蔵弾性率[G’(100℃)]において、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約9:1である。
【0218】
本染色布地中のポリマーの量は、そのポリマー、用途、および所望の特性によって変わる。本染色布地は、典型的に、少なくとも約1重量パーセント、好ましくは少なくとも約2重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、好ましくは少なくとも約7重量パーセントのエチレン/α−オレフィン共重合体を含む。本布地は、典型的に、約50重量パーセント未満、好ましくは約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、好ましくは約20重量パーセント未満、さらに好ましくは約10重量パーセント未満のエチレン/α−オレフィン共重合体を含む。前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、繊維の形態である場合もあり、ならびに別の適するポリマー、例えば、ポリオレフィン、例えばランダムエチレンコポリマー、HDPE、LLDPE、LDPE、ULDPE、ポリプロピレンホモポリマー、コポリマー、プラストマーおよびエラストマー、ラストール、ポリアミドなど、とのブレンドである場合もある。
【0219】
本布地のエチレン/α−オレフィン共重合体は、いずれの密度を有してもよいが、通常、少なくとも約0.85g/cm、好ましくは少なくとも約0.865g/cmである(ASTM D792)。相応じて、前記密度は、通常、約0.93g/cm未満、好ましくは約0.92g/cm未満である(ASTM D792)。本布地のエチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.1から約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする。架橋を望む場合、架橋ポリマーのパーセントは、形成されたゲルの重量パーセントによって測定して、多くの場合、少なくとも10重量パーセント、好ましくは少なくとも約20重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも約25重量パーセントから、多くとも約90重量パーセント、好ましくは多くとも約75重量パーセントである。
【0220】
本布地は、多くの場合、レーヨン、ナイロン、ビスコース、ポリエステル、例えばマイクロファイバーポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、セルロース、綿、亜麻、ちょ麻、麻、ウール、絹、リネン、竹、テンセル、モヘア、他の天然繊維、他の合成繊維、およびこれらの混合物から成る群より選択される別の材料を含む。多くの場合、前記他の材料が本布地の大部分を構成する。そのような場合、前記他の材料は、本布地の少なくとも約50重量パーセント、好ましくは少なくとも約60重量パーセント、好ましくは少なくとも約70重量パーセント、好ましくは少なくとも約80重量パーセント、時には90から95重量パーセントほどをも構成する。
【0221】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体、他の材料、または両方が繊維の形態である場合もある。好ましいサイズとしては、少なくとも約1デニール、好ましくは少なくとも約20デニール、好ましくは少なくとも約50デニールから、多くとも約180デニール、好ましくは多くとも約150デニール、好ましくは多くとも約100デニール、好ましくは多くとも約80デニールというデニールが挙げられる。
【0222】
特に好ましい丸編布は、エチレン/α−オレフィン共重合体を繊維の形態で、その布の約5から約20(重量)パーセントの量で含む。特に好ましい縦編布は、エチレン/α−オレフィン共重合体を繊維の形態で、その布の約10から約30(重量)パーセントの量で含む。多くの場合、このような縦編布および丸編布は、ポリエステルまたはマイクロファイバーポリエステルも含む。
【0223】
本布地、特に編布は、AATCC 135による洗浄後、水平方向、垂直方向または両方で、約5パーセント未満、好ましくは4パーセント未満、好ましくは3パーセント未満、好ましくは2パーセント未満、好ましくは1パーセント未満、好ましくは0.5パーセント未満、好ましくは0.25パーセント未満の収縮を、多くの場合、有する。さらに具体的には、本布地(熱硬化後)は、AATCC135 IVAiに従って、縦方向、幅方向、または両方で、約7%から約+7%、好ましくは−5%から約+5%、好ましくは約−3%から約+3%、好ましくは−2%から約+2%、さらに好ましくは−1%から約+1%の寸法安定性を、多くの場合、有する。加えて、多くの場合、本布地は、より多い架橋量を有する弾性繊維の比較布地より、AATCC 135 IVAiによる洗浄後、より少ない収縮を有する。
【0224】
編布は、所望される場合には、エチレン/α−オレフィン共重合体および他の材料のタイプおよび量を制御することにより、二次元伸縮するようにすることができる。場合によっては、編布は、ASTM D2594に従って測定される少なくとも約30パーセントの伸縮を特徴とする。同様に、編布は、縦および幅方向での伸びが、ASTM D 2594に従って約7パーセント未満、好ましくは約5パーセント未満、好ましくは約4パーセント未満、好ましくは約3パーセント未満、好ましくは約2パーセント未満、好ましくは約1パーセント未満、および0.5パーセントほどの小ささにもなるようにすることができる。同試験(ASTM D 2594)を用いて、60秒での縦方向の伸びは、約15%未満、好ましくは約12%未満、好ましくは約10%未満、好ましくは約8%未満であり得る。相応じて、同試験(ASTM D 2594)を用いて、60秒での幅方向の伸びは、約20%未満、好ましくは約18%未満、好ましくは約16%未満、好ましくは約13%未満であり得る。ASTM D 2594の60分試験に関しては、幅方向の伸びが、約10%未満、好ましくは約9%未満、好ましくは約8%未満、好ましくは約6%未満であり得、一方、60分での縦方向の伸びが、約8%未満、好ましくは約7%未満、好ましくは約6%未満、好ましくは約5%未満であり得る。上に記載した、より低い伸びにより、本発明の布地を、サイズを依然として制御しながら約180℃未満、好ましくは約170℃未満、好ましくは約160℃未満、好ましくは約150℃未満からの温度で熱硬化することができる。編布とは対照的に、織布は、ASTM D3107に従って測定される少なくとも約10パーセントの伸縮を特徴とする。
【0225】
有利なことに、本発明の編布は、破断を多く伴わずに、およびアイレットフィーダーシステム、プーリーシステムまたはこれらの組み合わせを含む編み機を使用して、製造することができる。従って、改善された成形適性を有すると同時に許容される寸法安定性(縦方向および幅方向)を有し、許容される伸びおよび伸縮を有し、サイズを制御しながら低温で熱硬化させることができ、低い水分率を有する丸編み伸縮生地を、多種多様な丸編み機において、有意な破断を伴わずに、高い処理量で、脱線を伴なわずに製造することができる。
【0226】
染色
本発明の染色布地は、事実上、任意の染色プロセスによって製造することができる。例えば、多くの有用な技法が、Fundamentals of Dyeing and Printing, by Garry Mock, North Carolina State University 2002, ISBN 9780000033871 に記載されている。本発明の布地の1つの利点は、それらを、多くの場合、少なくとも約130℃の温度で染料と接触させて、0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.35未満、好ましくは0.3未満、好ましくは0.25未満、好ましくは0.2未満、好ましくは0.15未満、好ましくは0.1未満、好ましくは0.05未満の伸び対伸縮比を示す染色布地を製造することができる点である。有利なことに、結果として生ずる本発明の染色布地は、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により、多くの場合、約3.0以上の、好ましくは約3.5以上の、さらに好ましくは約4.0以上の変色を特徴とする。もう1つの利点は、場合によっては、本発明の布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後、AATCC評価により、約2.5以上の、好ましくは約3.0以上の、さらに好ましくは約3.5以上の変色を示すことができる点である。本質的に、これは、本発明の染色布地が、洗濯されたとき、従来の染色布地より退色が少ないことを意味する。
【0227】
本発明の染色布地は、染色後の有利な色濃度によっても特徴づけられ、すなわち、本布地は、より濃い。例えば、多くの場合、本染色布地は、染色後、分光光度計で測定して、約600以上の、好ましくは約650以上の、好ましくは約700以上の、好ましくは約750以上の色濃度によって特徴づけることができる。有利なことに、その色は、第一および第二洗浄後でさえ実質的に保持される。例えば、本染色布地は、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度が、染色後の少なくとも約90、好ましくは少なくとも約95、さらに好ましくは少なくとも約97パーセントの色濃度(各色濃度は、分光光度計によって測定される)であることを特徴としうる。場合によっては、本染色布地は、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後の色濃度が、染色後の少なくとも約90、好ましくは少なくとも約92.5、さらに好ましくは少なくとも約94パーセントの色濃度(各色濃度は、分光光度計によって測定される)であることを特徴としうる。
【0228】
いずれの特定の理論による拘束も受けることを望まないが、本発明の染色布地がより濃く染まる理由は、オレフィンブロックポリマーの繊維のためであると考えられる。すなわち、オレフィンブロックポリマー繊維は、より少ない程度に染まり、それによってその他の材料をより濃くすることができる。また、オレフィンブロックポリマーを繊維として利用すると、より高い染色温度をより少ない繊維破断で用いることができる。同様に、本染色布地が洗濯であまり色落ちしない理由は、オレフィンブロックポリマー繊維が、他のポリマーで作られた繊維ほど大きな程度には染色されないからであると考えられる。かくして、オレフィンブロックポリマーは、それほど色落ちおよびにじみ出すことがない。
【実施例】
【0229】
実施例22−弾性エチレン/α−オレフィン共重合体の繊維
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィン共重合体(オレフィンブロックポリマー)を使用して、ほぼ円形の断面を有する40デニールのモノフィラメント繊維を製造した。繊維を製造する前に、以下の添加剤をそのポリマーに添加した:7000ppmのPDMSO(ポリジメチルシロキサン)、3000ppmのCYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、および3000ppmのCHIMASORB 944 ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]および0.5重量%のTiO。円形の0.8mmの直径のダイ形状、299℃の紡糸温度、650m/分の巻取速度、2%の紡糸仕上げ剤、6%の冷延伸、および150gのスプール重量を用いて、これらの繊維を製造した。その後、合計176.4kGyの照射を架橋剤として用いて、それらの繊維を架橋した。
【0230】
実施例23−繊維の硬質糸
実施例22の弾性繊維および150デニール、288フィラメントのポリエステルを含む硬質糸を製造した。このマイクロファイバーのフィラメントは、1フィラメントあたり0.52デニールほども細いものである。2つの比較例も製造した。1つの比較例の硬質糸は、450m/分のライン速度および同じ150デニール、288フィラメントのポリエステル繊維で製造したランダムエチレン−オクテンコポリマーの40デニール繊維を用いた。このランダムエチレン−オクテンコポリマーは、3.0g/10分の平均メルトインデックス、0.875g/cmの密度を有し、ならびに166.4kGyの照射線量を架橋剤として用いて架橋した。第二の比較例の硬質糸は、Lycra(商標)162Cポリマーのマルチフィラメント繊維および同じ150デニール、288フィラメントのポリエステル繊維で製造した。
【0231】
実施例24−染色
マイクロファイバーポリエステル系布地の弾性繊維色移りおよび色濃度を評価するための実験を計画した。この実験により、オレフィンブロックポリマーからなる繊維、Lycra(商標)162Cからなる繊維、およびランダムエチレン−オクテンコポリマーからなる繊維に関する分散染料の汚染性を評価した。これら3つの異なるタイプそれぞれの繊維(1グラム)および硬質糸を構成するマイクロファイバーポリエステル布地(証拠布地(witness fabric))(9グラム)を、図8に示す実験室用迅速染色機に入れた。その後、それら3つの異なるタイプそれぞれの繊維を用いて、図9に示すとおりの染色および還元洗浄プロセスを行った。Clariant染料Foron Black S−WFを使用して、繊維および布地を黒色に染色した。Lycra系繊維は、125℃で染色した。この弾性繊維は高温で重度の損傷を受け得るからである。他の2つのタイプの繊維は、135℃で染色した。染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後の試験片を評価のために回収した。
【0232】
染色および還元洗浄後の3つの異なるタイプの繊維を目視評価した。染色堅牢度の指標として色濃度、変色および色移り値を得るために、ポリエステルマイクロファイバー布地も検査した。染色された繊維をD65標準昼光のもとで目視評価して、繊維に対する色移りを定義した。色濃度(K/S)は、分光光度計(Datacolor model−600PLUS)で測定した。高いK/S値は、より濃い色を表した。変色は、原試験片と洗浄後の試験片の色の違いを報告するAATCC61−2003−2Aに従って測定した。クォーテーションは、AATCC評価手順によるグレースケールにより1から5の範囲にわたる。低いグレードほど大きな変色、および従って低い染色堅牢度を示す。染色後、第一還元洗浄後、および第二還元洗浄後の試験片をAATCC 61−2003−2Aによって洗浄し、その前と後での変色を測定した。
【0233】
色移りもAATCC 61−2003−2Aの試験に基づく。アセテート、綿、ポリアミド、アクリルおよび羊毛繊維からなるマルチファイバー試験布地を試験片に取り付けて洗浄する。この試験は、1から5にグレード分けするものであり、低いグレードほど重度の色移りを意味する。繊維産業の慣例により、色移りの指標としてポリアミドのグレード結果を用いる。
【0234】
染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後、前記3つの異なるタイプの弾性繊維の実験室浸漬試験を行った。結果は、オレフィンブロックポリマーを含む布地について良好な染色堅牢度およびより濃い色を示した。表12は、染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後の弾性繊維の色移りを示すものである。染料吸収量が多いものほど、弾性繊維それ自体の色が濃くなる。高い染料吸収量は、濃い色を得るためにはプラスであるが、洗浄(家庭洗濯)中にそれがにじみ出すと有害であり得る。Lycra(商標)繊維は、染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後に最も濃い色を示す。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマー繊維は、より薄い色移りを示す。これらの試験片は、染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後、非常に類似してる。オレフィンブロックポリマー繊維は、より少ない染料吸収量を示し、これは、マイクロファイバーポリエステル布地の染色堅牢度の場合、より良好な染色堅牢度を助長する。
【0235】
【表13】

【0236】
表13は、マイクロファイバーポリエステル布地の色濃度(K/S)値を示すものである。K/S値が高いほど、濃い色を表す。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマー繊維を有する染色した証拠マイクロポリエステル布地は、Lycraを有するものと比較して濃い黒色を示した。いずれの特定の理論による拘束も受けることを望まないが、この結果は、用いた、より高い染色温度に起因すると考えられる。染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後のサンプルの間に有意な差はなかった。しかし、オレフィンブロックポリマーのマイクロファイバーポリエステルは、より濃い色に達し得る。
【0237】
【表14】

【0238】
表14は、染色後、第一還元洗浄後および第二還元洗浄後のマイクロファイバーポリエステルの変色値を示すものである。値が高いほど、変色が軽度であることを意味する。すべての試験片が良好な変色結果を示す。
【0239】
【表15】

【0240】
表15は、ポリアミド布地(試験布地)への色移りを示すものである。値が高いほど、色移りが少ないことを意味する。還元洗浄後、これらの布地は、より良好な色移りを示す。第一還元洗浄後に示された結果と第二還元洗浄後に示された結果の間に明白な差はない。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマーの染色した証明布地は、染色したLycra布地より濃く、これは、表12に示したような染色堅牢度に対して影響を及ぼす。いずれの結果も布地の熱硬化を伴わない。
【0241】
【表16】

【0242】
3つのシングルジャージー編布をこの試験に用いた。それらは、40デニールのLycra繊維、40デニールのランダムエチレン−オクテンコポリマー繊維および40デニールのオレフィンブロックポリマー繊維とともに編んだマイクロファイバーポリエステル硬質糸である。編成速度、弾性ドラフト、および未染色生地の布地重量を表16に示す。
【0243】
【表17】

【0244】
ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマーの未染色生地を20分間、85℃で精練し、45分間、135℃で乾燥させ、60分間130℃で引っ張らずに乾燥させ、20%過剰送り量で120秒間(1分あたり15ヤード)、165℃で硬化させ、仕上げる。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマー含有布地についての染色および還元条件を図9に示す。Lycra未染色生地は、125℃で染色し、185℃で熱硬化させる。完成布地を表17に記載する。
【0245】
【表18】

【0246】
表18は、AATCC 61−2003−2Aの試験結果を示すものであり、ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマーは両方とも、熱硬化前または後、Lycra 162と比較して変色に関して優れた性能を有する。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマー繊維を135℃で染色したこと、その分散染料がこの温度でより良好な反応を有したことが、その理由である。マイクロファイバーポリエステル/Lycraの染色ロットには、未反応分散染料がある。布地を汚染した低い染色温度、および試験中に試験片を退色させるにじみ出しのためである。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびOBCは両方とも、Lycraと比較して、ポリアミドに対する良好な染色堅牢度を有する。Lycraは、熱硬化後、劣った染色堅牢度を示す。185℃高温熱硬化中に分散染料が移染するからである。
【0247】
【表19】

【0248】
熱硬化後、3つの完成布地を分光光度計(Datacolor model−600PLUS)によって試験した。表19は、濃さを示す色濃度(K/S)を示すものである。ランダムエチレン−オクテンコポリマーおよびオレフィンブロックポリマーを含有するマイクロファイバーポリエステル編布は、同じ染色配合を用いたLycraを含有する編布と比較して濃い色を有する。
【0249】
【表20】

【0250】
実施例25−様々な繊維架橋量
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィン共重合体を使用して、ほぼ円形の断面を有する40デニールのモノフィラメント繊維を製造した。繊維を製造する前に、以下の添加剤をそのポリマーに添加した:7000ppmのPDMSO(ポリジメチルシロキサン)、3000ppmのCYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン)、および3000ppmのCHIMASORB 944 ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]および0.5重量%のTiO。円形の0.8mmの直径のダイ形状、299℃の紡糸温度、650m/分の巻取速度、2%の紡糸仕上げ剤、6%の冷延伸、および150gのスプール重量を用いて、これらの繊維を製造した。その後、e−ビームからの様々な照射量を架橋剤として用いて、それらの繊維を架橋した。
【0251】
ゲル含量対照射量を図11に示す。ゲル含量は、4つの有意な形状精度におよそ25mgの繊維サンプルを量り出すことによって決定した。その後、蓋をした2ドラムバイアルの中でサンプルを7mLのキシレンと併せる。そのバイアルを15分ごとに反転混合しながら(すなわち、バイアルをひっくり返しながら)90分、125℃から135℃で加熱して、非架橋ポリマーを本質的にすべて抽出する。バイアルがおよそ25℃に冷却したら、キシレンをゲルからデカントする。そのバイアルの中で少量の新たなキシレンでそのゲルをすすぐ。風袋計量済みのアルミニウム秤量皿に、そのすすいだゲルを移す。ゲルが入っているその風袋計量済みの皿を30分間、125℃で真空乾燥させて、蒸発によりキシレンを除去する。乾燥ゲルが入っているその皿を化学てんびんで計量する。抽出されたゲルの重量および元の繊維重量を基にゲル含量を計算する。図11は、e−ビーム線量が増加するにつれて、架橋量(ゲル含量)が増加することを示す。架橋量とe−ビーム線量の関係が、所与のポリマーの特性、例えば分子量またはメルトインデックスによって影響を及ぼされ得ることは、当業者には理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の弾性繊維を含む染色布地であって、前記弾性繊維が、少なくとも1つのエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1つの架橋剤の反応生成物を含み、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により約3.0以上の変色を特徴とする、染色布地。
【請求項2】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により約3.5以上の変色を特徴とする、請求項1に記載の染色布地。
【請求項3】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により約4.0以上の変色を特徴とする、請求項1に記載の染色布地。
【請求項4】
前記布地が、ASTM D3107に従って測定される少なくとも約10パーセントの伸縮を特徴とする織布である、請求項1に記載の布地。
【請求項5】
前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋前、以下の特徴:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、前記Tmとdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
の関係に対応する;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに融解熱[ΔH(単位:J/g)]、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として定義されるデルタ量[ΔT(単位:摂氏度)]において、ΔTおよびΔHの数値が、
ΔHがゼロより大で130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
(ここで、CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、前記ポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、前記CRYSTAF温度は30℃である)の関係を有する数値であることを特徴とする;または
(c)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]において、Reおよびdの数値が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、
Re>1481−1629(d)
の関係を満たすことを特徴とする;または
(d)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分は、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有し、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマー(1または複数)ならびに前記共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全ポリマーに対する)を有することを特徴とする分子画分を有する;または
(e)25℃での貯蔵弾性率[G’(25℃)]、および100℃での貯蔵弾性率[G’(100℃)]において、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約10:1であることを特徴とする;または
(f)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、前記画分が少なくとも0.5で且つ約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn)を有することを特徴とする分子画分;または
(g)ゼロより大で約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn);
の1つまたはそれ以上を特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体である、請求項1に記載の布地。
【請求項6】
前記布地が、ASTM D2594に従って測定される少なくとも約30パーセントの伸縮を特徴とする編布である、請求項1に記載の布地。
【請求項7】
前記弾性繊維が、布地の約2から約30重量パーセントを構成する、請求項1に記載の布地。
【請求項8】
前記布地が、ポリエステル、ナイロン、セルロース、綿、亜麻、ちょ麻、麻、ウール、絹、リネン、竹、テンセル、モヘア、他の天然繊維、およびこれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の布地。
【請求項9】
前記ポリエステルが、マイクロファイバーポリエステルである、請求項8に記載の布地。
【請求項10】
前記ポリエステルが、布地の少なくとも約50重量パーセントを構成する、請求項8に記載の布地。
【請求項11】
前記マイクロファイバーポリエステルが、布地の少なくとも約50重量パーセントを構成する、請求項9に記載の布地。
【請求項12】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、別のポリマーとブレンドされる、請求項5に記載の布地。
【請求項13】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、約0.865から約0.92g/cmの密度(ASTM D792)および約0.1から約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする、請求項5に記載の布地。
【請求項14】
前記布地が、編布であり、繊維の大部分が約1デニールから約180デニールのデニールを有する繊維を含む、請求項1に記載の布地。
【請求項15】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後、AATCC評価により約2.5以上の変色を特徴とする、請求項1に記載の染色布地。
【請求項16】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後、AATCC評価により約3.0以上の変色を特徴とする、請求項1に記載の染色布地。
【請求項17】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後、AATCC評価により約3.5以上の変色を特徴とする、請求項1に記載の染色布地。
【請求項18】
1つまたはそれ以上の弾性繊維を含む染色布地であって、前記弾性繊維が、少なくとも1つのエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1つの架橋剤の反応生成物を含み、前記布地が、染色後、分光光度計で測定して約600であるかそれより濃い色濃度を特徴とする、染色布地。
【請求項19】
前記布地が、染色後分光光度計で測定して約650であるかそれより濃い色濃度であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項20】
前記布地が、染色後分光光度計で測定して約700であるかそれより濃い色濃度であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項21】
前記布地が、染色後分光光度計で測定して約750であるかそれより濃い色濃度であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項22】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度が染色後の少なくとも約90パーセントの色濃度(各式濃度は分光光度計で測定)であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項23】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度が染色後の少なくとも約95パーセントの色濃度(各式濃度は分光光度計で測定)であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項24】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度が染色後の少なくとも約97パーセントの色濃度(各式濃度は分光光度計で測定)であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項25】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後の色濃度が染色後の少なくとも約90パーセントの色濃度(各式濃度は分光光度計で測定)であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項26】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後の色濃度が染色後の少なくとも約92.5パーセントの色濃度(各式濃度は分光光度計で測定)であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項27】
前記布地が、AATCC61−2003−2Aによる第二洗浄後の色濃度が染色後に少なくとも約94パーセントの色濃度(各式濃度は分光光度計で測定)であることを特徴とする、請求項18に記載の染色布地。
【請求項28】
前記布地が、ASTM D3107に従って測定される少なくとも約10パーセントの伸縮を特徴とする織布である、請求項18に記載の布地。
【請求項29】
前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋前、以下の特徴:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、前記Tmとdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
の関係に対応する;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに融解熱[ΔH(単位:J/g)]、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として定義されるデルタ量(ΔT(単位:摂氏度)]において、ΔTおよびΔHの数値が、
ΔHがゼロより大で130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
(ここで、CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、前記ポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、前記CRYSTAF温度は30℃である)の関係を有する数値であることを特徴とする;または
(c)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]において、Reおよびdの数値が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、
Re>1481−1629(d)
の関係を満たす;または
(d)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分は、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有し、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマー(1または複数)、ならびに前記共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全ポリマーに対する)を有することを特徴とする分子画分を有する;または、
(e)25℃での貯蔵弾性率[G’(25℃)]、および100℃での貯蔵弾性率[G’(100℃)]において、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約10:1であることを特徴とする;または
(f)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、前記画分が少なくとも0.5であり約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn)、を有することを特徴とする分子画分;または
(g)ゼロより大で約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn);
の1つまたはそれ以上を特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体である、請求項18に記載の布地。
【請求項30】
前記弾性繊維が、布地の約2から約30重量%を構成する、請求項18に記載の布地。
【請求項31】
前記布地が、ポリエステル、ナイロン、またはこれらの混合物をさらに含む、請求項18に記載の布地。
【請求項32】
前記ポリエステルが、マイクロファイバーポリエステルである、請求項18に記載の布地。
【請求項33】
前記ポリエステルが、布地の少なくとも約80重量パーセントを構成する、請求項31に記載の布地。
【請求項34】
前記マイクロファイバーポリエステルが、布地の少なくとも約80重量パーセントを構成する、請求項32に記載の布地。
【請求項35】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、別のポリマーとブレンドされる、請求項28に記載の布地。
【請求項36】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、約0.865から約0.92g/cmの密度(ASTM D792)および約0.1から約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする、請求項28に記載の布地。
【請求項37】
前記繊維の大部分が、約1デニールから約180デニールのデニールを有する、請求項18に記載の布地。
【請求項38】
染色布地の製造プロセスにおいて、前記布地が少なくとも1つのエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1つの架橋剤の反応生成物からなる1つまたはそれ以上の弾性繊維を含み、前記方法が、前記布地と前記染料を室温より高い温度で接触させて、前記布地を乾燥させることを含み、前記改良が、前記布地と前記染料を少なくとも約130℃の温度で接触させて染色布地を製造することを含み、前記布地が0.5未満の伸び対伸縮比を示す、プロセス。
【請求項39】
前記染色布地が、0.25未満の伸び対伸縮比を示す、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記染色布地が、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後、AATCC評価により約3.0以上の変色を特徴とする、請求項38に記載のプロセス。
【請求項41】
前記染色布地が、染色後に少なくとも約90パーセントの色濃度になる、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度によって特徴付けられる(ここで、それぞれの色濃度は、分光光度計で測定される)、請求項38に記載のプロセス。
【請求項42】
浸透剤が実質的にない状態で行われる、請求項38に記載のプロセス。
【請求項43】
前記染色布地が、染色後、分光光度計によって測定して約600であるかそれより濃い色濃度を特徴とする、請求項38に記載のプロセス。
【請求項44】
前記染色布地が、染色後に少なくとも約90パーセントの色濃度になる、AATCC61−2003−2Aによる第一洗浄後の色濃度によって特徴付けられる(ここで、それぞれの色濃度は、分光光度計で測定される)、請求項38に記載のプロセス。
【請求項45】
前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋前、以下の特徴:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点[Tm(単位:摂氏度)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]を有し、前記Tmとdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
の関係に対応する;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに融解熱[ΔH(単位:J/g)]、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として定義されるデルタ量(ΔT(単位:摂氏度)]において、ΔTおよびΔHの数値が、
ΔHがゼロより大で130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
(ここで、CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、前記ポリマーの5パーセント未満しか同定可能なCRYSTAFピークを有さない場合には、前記CRYSTAF温度は30℃である)の関係を有する数値であることを特徴とする;または
(c)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定される300パーセント歪および1サイクルでの弾性回復率[Re(単位:パーセント)]、および密度[d(単位:グラム/立方センチメートル)]において、Reおよびdの数値が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、
Re>1481−1629(d)
の関係を満たすことを特徴とする;または
(d)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記画分は、同じ温度間で溶出する比較ランダムエチレン共重合体画分より少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有し、ここで、前記比較ランダムエチレン共重合体が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマー(1または複数)ならびに前記共重合体の10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全ポリマーに対する)を有することを特徴とする分子画分を有する;または、
(e)25℃での貯蔵弾性率[G’(25℃)]、および100℃での貯蔵弾性率[G’(100℃)]において、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約10:1であることを特徴とする;または
(f)TREFを用いて分画したとき40℃と130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、前記画分が少なくとも0.5で且つ約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn)、を有することを特徴とする分子画分;または
(g)ゼロより大で約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布(Mw/Mn);
の1つまたはそれ以上を特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体である、請求項38に記載のプロセス。
【請求項46】
前記布地が、織布であり、繊維の大部分が約3000デニール未満のデニールを有する繊維を含む、請求項1に記載の布地。
【請求項47】
前記布地が、編布であり、ASTM D2594に従って測定される少なくとも約30パーセントの伸縮を特徴とする、請求項18に記載の布地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−516909(P2010−516909A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546488(P2009−546488)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/051142
【国際公開番号】WO2008/089220
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】