説明

オレフィン製造触媒およびその製造方法

【課題】アルコールから容易に製造できるアルデヒドを原料とし、アルデヒドからオレフィンの選択率が高い触媒およびこの触媒を用いたオレフィン製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、規則性メゾ多孔体に金属元素が担持されたオレフィン製造触媒を用い、この触媒にアルコールから容易に製造できるアルデヒドを接触させてオレフィンを生成させることを特徴とするオレフィン製造触媒およびオレフィン製造方法である。このため、オレフィンを高い収率で得ることができる。また、アルデヒドを原料とするため、エタノールからプロピレンを生成させる場合のような、エチレンが生成し、それ以上の反応が進行しにくく、エチレンの収率が高くなりプロピレンが得にくくなる問題を解消できる。さらに、ゼオライト触媒のような酸性触媒を用いる場合のような、触媒劣化により触媒の寿命が短くなる問題を解消できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドを原料としてオレフィンを製造する触媒およびその触媒を用いたオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低級オレフィン(エチレン・プロピレン・ブテン)の製造は、現在は石油留分の熱分解法により実施されている。しかし、石油資源の枯渇問題等から石油以外の原料から低級オレフィンを作る方法が求められており、天然ガスや石炭から合成されるアルコールやジメチルエーテル(以下、DME)を原料として低級オレフィンを製造する方法が報告されている(特許文献1参照)。さらに近年では、化石原料を使わないカーボンニュートラルであるバイオアルコールを原料とする製造方法も報告されている(特許文献2参照)。
また、アルコールからの低級オレフィン製造では、MTO(Methanol To Olefin)反応に代表されるように、酸触媒であるゼオライトが一般的に使用されている(特許文献3参照)。さらに、バイオエタノールからプロピレンを作る反応にもゼオライト触媒を用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−290991号公報
【特許文献2】特開2007−291076号公報
【特許文献3】特開平1−50827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、酸触媒は、高活性である一方で、幅広い生成物が生成してしまい目的物の選択率が低いことや、炭素析出や脱アルミニウム等の劣化が進行しやすいという問題を抱えている。これらを解決するために、ゼオライト触媒の細孔径を制御したり、添加物を加えて酸強度を制御したりする等の改良方法が検討されているが、依然としてゼオライト触媒を利用しており根本的な解決策とはなっていない。
また、近年、バイオエタノールを意識した、エタノールからの低級オレフィン製造に関する検討が行われている。しかし、前述と同様にゼオライト触媒が用いられており、酸触媒としての根本的な問題の解決法は示されていない。特に、エタノールを利用する場合において酸触媒を用いると、エタノールの脱水反応が進行して、エチレンが生成し、それ以上の反応が進行し難いという課題がある。
さらに、ゼオライトを利用しない新しい触媒として金属を担持したメゾ多孔体触媒の提案もあるが、当該触媒は酸触媒の問題点を改善できる可能性がある一方で、エタノールの反応結果では、エチレン収率が高くなるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、アルコールから容易に製造できるアルデヒドを原料とし、アルデヒドからオレフィンの選択率が高い触媒およびこの触媒を用いたオレフィン製造方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルデヒドから炭素数3以上のオレフィンを生成させるオレフィン製造触媒であって、規則性メゾ多孔体に、周期表第6族元素から周期表第13族元素のうちいずれか一の元素が担持されたことを特徴としたオレフィン製造触媒である。
このことにより、本発明の触媒は、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。また、アルデヒドを原料としているため、エタノールから直接プロピレンを生成させる場合のようにエチレンが多量に生成し、それ以上の反応が進行しにくくなることを防止することができる。従って、エチレンの収率が高くなり所望のプロピレンが得にくくなるというおそれを解消することができる。
【0007】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体に担持される元素は、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛及びクロムの中から選ばれる少なくともいずれか一種である(以下、鉄、コバルト、ニッケル等、と省略する場合も有る)。より好ましくは鉄、コバルト、ニッケルの中から選ばれる少なくともいずれか一種である。
このことにより、本発明の触媒は、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。また、アルデヒドを原料としているため、エタノールから直接プロピレンを生成させる場合のようにエチレンが多量に生成し、それ以上の反応が進行しにくくなることを防止することができる。従って、エチレンの収率が高くなり所望のプロピレンが得にくくなるというおそれを解消することができる。さらに、ゼオライト触媒のような酸性触媒を用いる場合のような、触媒劣化により触媒の寿命が短くなるという問題を解消することができる。
【0008】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体を構成する骨格は、主成分がシリカである構成が好ましい。
この発明では、規則性メゾ多孔体を構成する骨格の主成分がシリカである。
このことにより、鉄、コバルト、ニッケル等を良好に担持することができるので、良好な物性の規則性メゾ多孔体を得ることができる。よって、触媒機能の高い触媒を得ることができ、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0009】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体は、開口径が1.4nm以上10nm以下である構成が好ましい。
この発明では、規則性メゾ多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いている。
このことにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0010】
本発明では、前記アルデヒドは、アセトアルデヒドと、パラアルデヒドと、クロトンアルデヒドと、ブチルアルデヒドとから選ばれる少なくともいずれか一種である構成が好ましい。
この発明では、アルデヒドとしてアセトアルデヒド、パラアルデヒドと、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒドを用いている。
このことにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0011】
本発明では、前記アルデヒドは、アルコールを脱水素して得られたもの、もしくは酸化させて得られたもの、または糖を発酵反応させて得られたものである構成が好ましい。
この発明では、アルコールを脱水素もしくは酸化させて、または糖を発酵反応させて得られたアルデヒドを用いている。
このことにより、アルコールから原料のアルデヒドを容易に得ることができる。
【0012】
本発明は、アルデヒドからオレフィンを生成させるオレフィン製造方法であって、前記アルデヒドを、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒に接触させることを特徴とするオレフィン製造方法である。
この発明では、アルデヒドを、オレフィン製造触媒に接触させてオレフィンを製造している。
このことにより、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。
【0013】
本発明は、アルコールを脱水素もしくは酸化して、または糖を発酵反応して得られたアルデヒド類を製造する工程の後に、前記工程で得られたアルデヒド類を、上記のオレフィン製造触媒に接触させることを特徴とするオレフィン製造方法である。
このことにより、アルコールから原料のアルデヒドを容易に得ることができ、さらに、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のオレフィンの製造方法に係る一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、アルデヒドとしてアセトアルデヒドを原料としてプロピレンを製造する構成について説明する。
【0015】
(触媒の構成)
本実施形態におけるオレフィンの製造に用いる触媒は、規則性メゾ多孔体である。
この規則性メゾ多孔体は、規則性ナノ細孔を有する無機または無機有機複合の固体物質である。なお、触媒には、例えばアルミナ粉粒物などが混在するものを用いてもよい。
【0016】
そして、規則性メゾ多孔体を構成する骨格は、シリカが主成分であることが好ましい。
ここで、規則性メゾ多孔体の合成方法としては、特に制限はないが、例えば炭素数が8以上の高級アルキル基を有する四級アンモニウム塩をテンプレートとして、シリカの前駆体を原料として合成する方法などが例示できる。
そして、シリカ前駆体の種類としては、例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカなどの非晶質シリカ、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムなどの珪酸アルカリ、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケートなどのアルコキサイドを、単独または混合して用いることができる。
また、テンプレートの種類としては、特に制限はないが、一般式CH3(CH2)nN(CH3)3・X(nは7〜21の整数、Xはハロゲンイオンあるいは水酸化物イオン)で表記されるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン界面活性剤が好ましい。
具体的には、n−オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n−デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどが例示できる。
なお、規則性ナノ細孔を容易に形成することができ、強度などの物性も良好であるとともに、周期表第6属元素から周期表第13属元素、特に鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛及びクロムの少なくとも一種の安定した担持が容易である点で、シリカを用いることが好ましい。
【0017】
さらに、規則性メゾ多孔体としては、開口径が、例えば1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いることが好ましい。
ここで、規則性メゾ多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、例えば、反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。
一方、規則性メゾ多孔体の開口径が10nmより大きくなると、例えば、細孔の効果すなわち活性成分である鉄、コバルト、ニッケル等の良好な担持が困難となり、高い収率が得られなくなるおそれがある。
このことにより、プロピレンを高い収率で製造する点で、規則性メゾ多孔体の開口径を1.4nm以上10nm以下に設定することが好ましい。
【0018】
なお、触媒として、規則性メゾ多孔体に、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛及びクロムの群から選ばれる1種または2種以上の金属を担持したものを用いてもよい。
ここで、規則性メゾ多孔体に金属を担持する方法としては、特に制限はなく、例えば、含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法などを用いることができる。
特に、規則性メゾ多孔体を合成した細孔内に貯蔵されているテンプレートを焼成除去することなく、水溶媒中で金属イオンとテンプレートイオンとを交換するテンプレートイオン交換法が製造容易性の点で好ましい。
また、テンプレートイオン交換は、細孔内にテンプレートが吸蔵されている規則性メゾ多孔体を金属の無機酸塩または有機酸塩の水溶液と接触させる方法が利用できる。
そして、規則性メゾ多孔体に担持される金属(Me)の量は、規則性メゾ多孔体の骨格を構成するシリカを基準として、例えば、原子比Si/Meが5以上500以下、特に15以上100以下であることが好ましい。
ここで、原子比Si/Meが5より小さくなると、Meの割合が多くなって触媒活性の低い金属酸化物粒子の生成を抑制しにくくなり、触媒活性が低下するおそれがある。
一方、原子比Si/Meが500より大きくなると、Meの割合が少なくなって高分散化した金属の十分な担持が得られなくなり、触媒活性が低下するおそれがある。
このことにより、金属の担持量は、原子比Si/Meが5以上500以下、特に15以上100以下に設定することが好ましい。
また、テンプレートイオン交換により金属を担持させた規則性メゾ多孔体は、残存するテンプレートを焼成によって除去するために、酸素が存在する雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。
ここで、加熱処理の温度は、例えば、200℃以上800℃以下が好ましく、300℃以上600℃以下がより好ましい。
そして、加熱処理の温度が200℃より低くなると、テンプレートの焼成に時間を要するおそれがある。
一方、加熱処理の温度が800℃より高くなると、細孔壁を構成しているシリカの崩壊が生じるおそれがある。
このことにより、金属を担持した規則性メゾ多孔体の加熱処理の温度を200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下に設定することが好ましい。
【0019】
(オレフィンの製造方法)
本発明のオレフィンの製造方法は、上述した触媒にアルデヒド原料を接触させてオレフィンを生成すなわち製造させる。
ここで、オレフィンの製造装置としては、特に限定されないが、例えば、上述した触媒を充填して内部に触媒層を有しアルデヒド原料が流通可能な反応器である固定床式気相流通反応装置を用いることができる。
原料のアルデヒドとしては、特にプロピレンを高選択的に生成させる目的でアセトアルデヒドを原料とする。
また、アルデヒド原料としては、他のアルデヒドが混在したり、水が混合されたりしていてもよい。さらに、アルデヒド原料としては、固定床式気相流通反応装置に直接供給、あるいは窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガスにより適宜希釈して供給、すなわち不活性ガスが混合されたものとしてもよい。さらに、アルコールを出発原料とし、脱水素触媒を通過させアルデヒドに転換させたものを原料としてもよい。
なお、本実施形態に用いるアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、プロピオールアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトンアルデヒドが好ましい(以下、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド等、と省略する場合も有る)。さらに、アルデヒドは、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒドがより好ましい。
なお、アルコールを脱水素もしくは酸化させて、または糖を発酵反応させて得られたアルデヒドを製造する工程の後段に、得られたアルデビドを、前述で説明したオレフィン製造触媒に接触させる工程を設けても良い。この場合、アルコール原料から直接オレフィンを製造する場合に比べ、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
又、別の場所で、エタノールから製造したアルデビドを、本発明のオレフィン製造触媒を用いるオレフィン製造装置まで輸送する手間、エネルギーが節約できる。
【0020】
そして、反応温度としては、150℃以上600℃以下であることが好ましい。ここで、反応温度が150℃より低くなると、触媒活性が十分に得られなくなって反応速度が低下しオレフィンの製造効率が低下するおそれがある。
一方、反応速度が600℃より高くなると、例えばコークが生成するなどして触媒活性の劣化を生じるおそれがある。
このことにより、反応温度は150℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上500℃以下に設定するのがより好ましい。
なお、原料ガスの反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できる。なお、製造性や装置構成などの観点から、常圧から1.0MPa程度に設定することが好ましい。
【0021】
そして、アルデヒド原料と触媒との接触時間は、アルデヒド原料を気相で反応させる場合、例えば0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以下であることが好ましい。
ここで、触媒との接触時間が0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)より短くなると、原料のオレフィンの転化率の向上が望めず、所望とするオレフィンを高い収率で製造できなくなるおそれがある。
一方、触媒との接触時間が10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)より長くなると、重合などの副反応が生じて、高い収率で所望とするオレフィンが得られなくなるおそれがある。
このことにより、原料アルデヒドガスと触媒との接触時間は、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルデヒドガス)以下に設定することが好ましい。
【0022】
また、原料アルデヒドに水が含まれる場合、原料アルデヒド中の水供給量は、50vol%以下であることが好ましい。
ここで、原料アルデヒド中の水供給量が50vol%より多くなると、アルデヒドの転化率が低くなり、高い収率でオレフィンを得ることができなくなるおそれがある。
このことにより、原料アルデヒド中の水供給量は、50vol%以下、好ましくは40vol%以下、より好ましくは30vol%以下に設定することが好ましい。
【0023】
(実施形態の作用効果)
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体に6から13族元素のうちいずれか一の元素が担持されている。
このため、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。また、アルデヒドを原料とするため、エタノールからプロピレンを生成させる場合のような、エチレンが生成し、それ以上の反応が進行しにくく、エチレンの収率が高くなり所望のプロピレンが得にくくなるというおそれを解消することができる。さらに、ゼオライト触媒のような酸性触媒を用いる場合のような、触媒劣化により触媒の寿命が短くなるという問題を解消することができる。
【0024】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体に担持される元素が鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛及びクロムの少なくとも一種から選ばれる少なくともいずれか一種である。
このため、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。また、アルデヒドを原料とするため、エタノールからプロピレンを生成させる場合のような、エチレンが生成し、それ以上の反応が進行しにくく、エチレンの収率が高くなり所望のプロピレンが得にくくなるというおそれを解消することができる。
【0025】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体を構成する骨格の主成分がシリカである。
このため、鉄、コバルト、ニッケル等を良好に担持することができるので、良好な物性の規則性メゾ多孔体を得ることができる。よって、触媒機能の高い触媒を得ることができ、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0026】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いる。
このため、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0027】
上記実施形態では、アルデヒドとしてアセトアルデヒド、パラアルデヒド、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド等が用いられている。
このため、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0028】
上記実施形態では、アルコールを脱水素もしくは酸化させて、または糖を発酵反応させて得られたアルデヒドを用いている。
このため、アルコール原料からでも、一旦アルデヒドへ転換することにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0029】
上記実施形態では、アルデヒドをオレフィン製造触媒に接触させてオレフィンを製造している。
このため、オレフィン製造触媒を用いることで、容易に所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。
【0030】
上記実施形態では、アルコールを脱水素もしくは酸化させて、または糖を発酵反応させて得られたアルデヒドを製造する工程の後段に、得られたアルデビドを前述で説明したオレフィン製造触媒に接触させる、オレフィンの製造方法を開示する。
このため、アルコール原料から直接オレフィンを製造する場合に比べ、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0031】
(実施形態の変形例)
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0032】
すなわち、本発明のオレフィンの製造方法を実施する製造装置としては、上述した固定床式気相流通反応装置に限られるものではない。例えば、流動床として原料ガスを触媒と接触させるなど、原料を触媒と接触させるいずれの構成が適用できる。
さらに、触媒としては、粉粒体や塊状物、いわゆるハニカム構造物など、各種形態で利用できる。
また、触媒として、シリカメゾ多孔体に限らず、例えば、骨格の主成分にアルミナなど、他の無機材料などが含まれるものなど、規則性メゾ多孔体であればいずれの組成物を適用することができる。
そして、触媒としては、規則性メゾ多孔体を単体で用いる構成に限らず、上述したように、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛及びクロムの群から選ばれる1種または2種以上を担持したものを用いてもよい。
【0033】
また、規則性メゾ多孔体の物性、規則性メゾ多孔体に担持させる鉄、コバルト、ニッケル等の群から選ばれる1種または2種以上の担持量などの触媒の物性は、上述した条件に限られるものではなく、処理効率や装置構成などにより、適宜設定できる。
さらには、アルデヒド原料としては、生成物であるオレフィンに対応したものであれば、アセトアルデヒドなどに限られず、さらには水やその他のアルデヒドなどを含んでいてもよい。
また、アルデヒド原料を気化した原料アルデヒドガスの触媒との接触条件である反応処理条件についても、上述した条件に限られるものではなく、反応温度が150℃以上600℃以下であれば、処理効率や装置構成などにより、適宜設定できる。
【0034】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
[実施例]
【0035】
次に、本発明のオレフィンの製造方法について、実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(触媒の調製)
シリカ源に日産化学工業製スノーテックス20(コロイダルシリカ)、界面活性剤としてドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)を用いた。実験用具は全てテトラフルオロエチレン製のものを用いた。
まず、界面活性剤225.0gにイオン交換水641.4gを混ぜ強く攪拌した。これにスノーテックス20(306.7g)と水酸化ナトリウム水溶液(NaOH11.7g+H2O125.6g)を交互に少量ずつ滴下した。
そして、全量滴下後混合溶液を313Kで2時間攪拌した。このとき、混合溶液の最終pHは11.6であった。
この混合溶液を静置条件下、オートクレーブ中413Kで48時間水熱処理した。そして、得られた白色生成物を濾過し2Lのイオン交換水で洗浄した後、乾燥機中353Kで一晩乾燥させた。
乾燥後の試料3.0gを30mLのイオン交換水に加え攪拌し、縣濁させた。ここに、硝酸ニッケル六水和物(和光純薬製特級試薬)0.38gを30mLのイオン交換水に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下した。添加終了後、室温で1時間攪拌を継続した。攪拌後、混合液を353Kの水浴中で20時間静置した。その後濾過し、約1Lのイオン交換水に分散させ5分間攪拌後濾過し、353Kで一晩乾燥させた。乾燥後の試料を磁性皿に薄く広げ、773Kまで昇温後、6時間焼成し、Ni−M41を得た。このNi−M41のSi/Ni原子比は21.3であった。
【0037】
(アセトアルデヒドの反応)
上記Ni−M41を触媒としてアセトアルデヒドの反応を行った。内径5mmのSUS製反応管の中央に触媒を100mg充填する。反応に先立ち、触媒の前処理として、100mL/minの窒素ガスを流しながら、40分掛けて673Kまで昇温し、673Kにて1時間保持した。その後、目的の原料(アセトアルデヒド、エタノール等)をこの窒素気流中に0.5μL注入し、触媒層を通過させて反応を行った。
生成物の分析については、反応管と直結させたFIDガスクロにて分析を行った。
なお、比較例2,3においてはNi−M41の代わりに市販のゼオライト触媒H−ZSM−5を用いて反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(結果)
比較例1〜3及び実施例1〜4の生成物の成分分析を行った結果を以下に示す。
[比較例1]
【0040】
比較例1では、金属を担持したメゾ多孔体触媒(Ni−M41)でエタノールを反応させた。この場合、高いエタノール転化率を示すが、その主生成物はエタンであり、プロピレンの収率は低い結果となった。
[比較例2]
【0041】
比較例2では、ゼオライト触媒であるH−ZSM−5でエタノールを反応させた。この場合、高いエタノール転化率を示すが、生成物中のプロピレン収率はエチレン収率よりも低い結果となった。
[比較例3]
【0042】
比較例3では、ゼオライト触媒であるH−ZSM−5でアセトアルデヒドを反応させた。この場合、エチレン収率とプロピレン収率が同程度であるが、オレフィンの収率が全体的に低い。これより、アルデヒドを原料としたオレフィン製造に酸触媒であるゼオライトを用いても効果がないことが確認された。
【実施例1】
【0043】
実施例1では、金属を担持したメゾ多孔体触媒(Ni−M41)でアセトアルデヒドを反応させた。この場合、比較例1と比較してエチレン収率が大きく抑えられ、プロピレン収率が増加した。これにより、プロピレンがオレフィン中の主生成物となった。
【実施例2】
【0044】
実施例2では、金属を担持したメゾ多孔体触媒(Ni−M41)でクロトンアルデヒドを反応させた。この場合、比較例1と実施例2とを比較して、さらにエチレン収率が抑えられ、プロピレン収率が増加した。比較例1〜3および実施例1〜4の中で、プロピレン/エチレン比率が最大となった。
【実施例3】
【0045】
実施例3では、金属を担持したメゾ多孔体触媒(Ni−M41)でブチルアルデヒドを反応させた。この場合、実施例1,2と同様に、エチレン収率が大きく抑えられ、プロピレン収率が増加した。また、プロピレン以外のオレフィン収率も高い結果となった。
【実施例4】
【0046】
実施例4では、金属を担持したメゾ多孔体触媒(Ni−M41)の前段に脱水素触媒(ズードケミー触媒(株)製G−99C)を充填し、エタノールを反応させた。この場合、比較例1と比較しエチレン収率が大きく抑えられ、プロピレン収率が増加した。これにより、比較例1〜3および実施例1〜4の中で、プロピレン収率が最大となった。
【0047】
(まとめ)
以上より、アルデヒドからプロピレンを製造する場合、酸触媒であるゼオライト触媒を用いても高いプロピレン収率を実現することはできない。しかし、金属を担持したメゾ多孔体触媒(Ni−M41)を用いることで、高いプロピレン収率を実現することができる。
また、エタノールを原料としてプロピレンを製造する場合、まず脱水素反応によりエタノールをアセトアルデヒドに転換することにより、プロピレン収率が増加する。
さらに、アルデヒドとしてアセトアルデヒド以外のアルデヒドについても適用することができる。例えば、クロトンアルデヒドを用いた場合でも高いプロピレン収率を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、アルデヒドを原料としてオレフィンを製造する方法に利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドから炭素数3以上のオレフィンを生成させるオレフィン製造触媒であって、
規則性メゾ多孔体に、周期表第6属元素から周期表第13族元素のうちいずれか一の元素が担持された
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体に担持される元素は、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、亜鉛及びクロムの中から選ばれる少なくともいずれか一種である
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体を構成する骨格は、主成分がシリカである
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体の開口径が1.4nm以上10nm以下である
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記アルデヒドは、アセトアルデヒドと、パラアルデヒドと、クロトンアルデヒドと、ブチルアルデヒドとから選ばれる少なくともいずれか一種である
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記アルデヒドは、アルコールを脱水素して得られたもの、もしくは酸化させて得られたもの、または糖を発酵反応させて得られたものである
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項7】
アルデヒドからオレフィンを生成させるオレフィン製造方法であって、
前記アルデヒドを、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒に接触させる
ことを特徴とするオレフィン製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のオレフィン製造方法であって、
前記アルデヒドは、アルコールを脱水素して得られたアルデヒド、もしくは酸化させて得られたアルデヒド、または糖を発酵反応させて得られたアルデヒドを使用する
ことを特徴とするオレフィン製造方法。
【請求項9】
アルコールを脱水素もしくは酸化して、または糖を発酵反応して得られたアルデヒド類を製造する工程の後に、前記工程で得られたアルデヒド類を、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒に接触させることを特徴とするオレフィン製造方法。

【公開番号】特開2010−69384(P2010−69384A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237981(P2008−237981)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】