説明

オレフィン製造触媒およびオレフィンの製造方法

【課題】アルコールからオレフィンを高い選択率で製造できる触媒およびこの触媒を用いてオレフィンを製造する製造方法を提供する。
【解決手段】規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に周期表第13族元素を組み込む。周期表第13族元素を組み込んだ規則性メゾ多孔体に、周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素を担持し、オレフィン製造触媒とする。オレフィン製造触媒に、アルコールを接触させて、オレフィンを生成する。オレフィンを高い収率で得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールを原料としてオレフィンを製造するためのオレフィン製造触媒、およびオレフィンを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低級オレフィン(エチレン・プロピレン・ブテン)の製造は、現在、石油留分の熱分解法により実施されている。しかし、石油資源の枯渇問題等から石油以外の原料から低級オレフィンを作る方法が求められている。その方法として、天然ガスや石炭から合成されるアルコールやジメチルエーテルを原料として低級オレフィンを製造する方法が報告されている(特許文献1参照)。さらに近年では、化石原料を使わないカーボンニュートラルであるバイオアルコールを原料とする製造方法も報告されている(特許文献2参照)。
また、アルコールから低級オレフィンを製造する方法では、MTO(Methanol To Olefin)反応に代表されるように、酸触媒であるゼオライトが一般的に使用されている(特許文献3参照)。さらに、バイオエタノールからプロピレンを作る反応にも、ゼオライト触媒を用いることが提案されている(特許文献2参照)。一方、ゼオライト触媒以外の新しい触媒として金属を担持したメゾ多孔体触媒も提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−290991号公報
【特許文献2】特開2007−291076号公報
【特許文献3】特開昭64−50827号公報
【特許文献4】WO2007/83684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3に記載のようなゼオライトに代表される酸触媒は、高活性である一方で、幅広い生成物が生成してしまい目的物の選択率が低いことや、炭素析出や脱アルミニウム等の劣化が進行しやすいという問題を抱えている。これらを解決するために、ゼオライト触媒の細孔径を制御したり、添加物を加えて酸強度を制御したりする等の改良方法が検討されているが、依然としてゼオライト触媒を利用しており根本的な解決策とはなっていない。
また、近年、特許文献2に記載のように、バイオエタノールを意識した、エタノールからの低級オレフィン製造に関する検討が行われている。しかし、前述と同様にゼオライト触媒が用いられており、酸触媒としての根本的な問題の解決法は示されていない。
さらに、ゼオライトを利用しない新しい触媒として、特許文献4に記載のような金属を担持したメゾ多孔体触媒の提案もあるが、当該触媒は酸触媒の問題点を改善できる可能性がある一方で、活性が十分でないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、アルコールからオレフィンを高い選択率で製造できる触媒およびこの触媒を用いてオレフィンを製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載のオレフィン製造触媒は、アルコールからオレフィンを生成させるオレフィン製造触媒であって、規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に周期表第13族元素が組み込まれているとともに、前記規則性メゾ多孔体には周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素が担持されていることを特徴とする。
このことにより、本発明の触媒を用いることで、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。
【0007】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に組み込まれている元素は、アルミニウム、ガリウムの中から選ばれる少なくともいずれか一種であることが好ましい。
このことにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0008】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体に担持される元素は、鉄、コバルト、ニッケルの中から選ばれる少なくともいずれか一種であることが好ましい。
このことにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0009】
本発明では、周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素は、テンプレートイオン交換法により担持されていることが好ましい。
このことにより、本発明の触媒を容易に製造できる。
【0010】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体を構成する元素は、主成分がシリカであることが好ましい。
このことにより、周期表第13族元素を規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に組み込むことにより、アルコールからオレフィンを製造する活性点を生成させ、さらに周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか一種を良好に担持することができる。このため、良好な物性の規則性メゾ多孔体を得ることができる。したがって、触媒機能の高い触媒を得ることができ、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0011】
本発明では、前記規則性メゾ多孔体の開口径は、1.4nm以上10nm以下であることが好ましい。
このことにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0012】
本発明では、前記アルコールは、炭素数が2以上10以下のものであることが好ましい。
ここで、アルコールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキシルアルコール等が例示できる。
このことにより、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0013】
本発明では、前記アルコールは、バイオエタノールであることが好ましい。
このことにより、大気中の二酸化炭素を炭素分として固定する植物等の農林産物やバイオマスを原料として利用可能で、大気中の二酸化炭素がネットで増大しないため、石油代替原料として有効利用でき、二酸化炭素放出量の抑制、バイオマスの有効利用等、環境および資源等の観点で有益である。
【0014】
本発明に記載のオレフィンの製造方法は、前記アルコールを、本発明に記載のオレフィン製造触媒に接触させることを特徴とする。
このことにより、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のオレフィンの製造方法に係る一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、アルコールとしてエタノールを原料とし、エチレン、プロピレン、ブテン等の有用オレフィンを製造する構成について説明する。
【0016】
(触媒の構成)
本実施形態におけるオレフィンの製造に用いる触媒は、規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に、周期表第13族元素のうちの少なくともいずれか1つが組み込まれている。すなわち、規則性メゾ多孔体の骨格中には、周期表第13族元素のいずれか一種もしくは複数の元素が組み込まれている。さらに、該触媒には、周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか一種が担持されている。
規則性メゾ多孔体は、規則性ナノ細孔を有する無機または無機有機複合の固体物質である。
そして、規則性メゾ多孔体を構成する元素は、シリカが主成分であることが好ましい。
ここで、規則性メゾ多孔体の合成方法としては、特に制限はないが、例えば炭素数が8以上の高級アルキル基を有する四級アンモニウム塩をテンプレートとして、シリカの前駆体を原料として合成する方法等が例示できる。
そして、シリカ前駆体の種類としては、例えば、非晶質シリカ、珪酸アルカリ、珪酸アルコキサイドを、単独又は混合して用いることができる。非晶質シリカとしては、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカ等が用いられる。珪酸アルカリとしては、珪酸ナトリウムや珪酸カリウム等が用いられる。珪酸アルコキサイドとしては、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等が用いられる。
また、テンプレートとしては、特に制限はないが、一般式CH3(CH2)nN(CH3)3・X(nは7〜21の整数、Xはハロゲンイオンあるいは水酸化物イオン)で表記されるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン界面活性剤が好ましい。
具体的には、n−オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n−デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が例示できる。
なお、規則性メゾ多孔体を合成する原料としては、コロイダルシリカを用いることが好ましい。規則性ナノ細孔を有する構造が容易に得られ、強度等の物性も良好であるとともに、周期表第13族元素を容易に組み込むことができ、周期表第8族元素から第10族元素までのいずれか1つの元素を容易に担持できるためである。
【0017】
さらに、規則性メゾ多孔体としては、開口径が、例えば1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いることが好ましい。
ここで、規則性メゾ多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、例えば、反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。
一方、規則性メゾ多孔体の開口径が10nmより大きくなると、例えば、触媒体として不安定となり、高いプロピレン収率が得られなくなるおそれがある。
このことにより、オレフィン、特にプロピレンを高い収率で製造する点で、規則性メゾ多孔体の開口径を1.4nm以上10nm以下に設定することが好ましい。
【0018】
規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に周期表第13族元素を組み込む方法としては、特に制限はないが、例えば前述の規則性メゾ多孔体の合成時にシリカ前駆体とテンプレートと一緒に第13族元素化合物を投入し、合成する方法等が例示できる。
また、第13族元素化合物の種類としては、特に制限はないが、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸化物、硫酸化物、アルコキサイド等が挙げられる。具体的には、ホウ素酸、三酸化ホウ素、リン酸ホウ素、三臭化ホウ素、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、ガリウムアセチルアセテート、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム、ガリウムエトキシド等が例示できる。
【0019】
なお、これら周期表第13族元素がメゾ多孔体の骨格に組み込まれていることを確認する手法としては、固体NMR法が通常用いられる。これは、固体材料の原子レベルの構造解析を行う分析手法である。例えば、Al−NMRによりアルミニウムの構造解析を行うと、アルミニウムの隣接原子の配位数を調べることができる。シリカが主成分となるメゾ多孔体の骨格中に組み込まれたアルミニウムは4配位を示すが、骨格外に存在する場合は6配位となり、本測定により骨格中に存在するのか否かが判断できる。
このような骨格中に組み込まれた周期表第13族元素(X)の量は、規則性メゾ多孔体の主成分であるシリカを基準として、例えば、原子比Si/Xが5以上500以下、特に25以上250以下であることが好ましい。
ここで、原子比Si/Xが5より小さくなると、Xの割合が多くなり、規則性メゾ多孔体を生成し難く、触媒活性が低下するおそれがある。
一方、原子比Si/Xが500より大きくなると、触媒の活性点となるXの割合が少なくなり、触媒活性が低下するおそれがある。
このことにより、周期表第13族元素の量は、原子比Si/Xが5以上500以下、特に25以上250以下に設定することが好ましい。
【0020】
さらに、触媒として、周期表第13族元素を骨格中の一部に組み込んだ規則性メゾ多孔体に、周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか一種を担持する必要がある。
ここで、規則性メゾ多孔体に周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか一種を担持する方法としては、特に制限はなく、例えば、含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法等を用いることができる。
特に、規則性メゾ多孔体を合成した細孔内に貯蔵されているテンプレートを焼成除去することなく、水溶媒中で金属イオンとテンプレートイオンとを交換するテンプレートイオン交換法が、製造容易性の点で好ましい。
また、テンプレートイオン交換法としては、細孔内にテンプレートが吸蔵されている規則性メゾ多孔体を、金属の無機酸塩または有機酸塩の水溶液と接触させる方法が利用できる。
そして、規則性メゾ多孔体に担持される周期表第8族元素から第10族元素までのいずれか一種の金属(Me)の量は、規則性メゾ多孔体の主成分であるシリカを基準として、例えば、原子比Si/Meが5以上500以下、特に15以上100以下であることが好ましい。
ここで、原子比Si/Meが5より小さくなると、Meの割合が多くなって触媒活性の低い金属酸化物粒子の生成を抑制しにくくなり、触媒活性が低下するおそれがある。
一方、原子比Si/Meが500より大きくなると、Meの割合が少なくなって高分散化した金属の十分な担持が得られなくなり、触媒活性が低下するおそれがある。
このことにより、金属の担持量は、原子比Si/Meが5以上500以下、特に15以上100以下に設定することが好ましい。
【0021】
また、テンプレートイオン交換法により金属を担持させた規則性メゾ多孔体は、残存するテンプレートを焼成によって除去するために、酸素が存在する雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。
ここで、加熱処理の温度は、例えば、200℃以上800℃以下が好ましく、300℃以上600℃以下がより好ましい。
そして、加熱処理の温度が200℃より低くなると、テンプレートの焼成に時間を要するおそれがある。
一方、加熱処理の温度が800℃より高くなると、細孔壁を構成しているシリカの崩壊が生じるおそれがある。
このことにより、金属を担持した規則性メゾ多孔体の加熱処理の温度を200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下に設定することが好ましい。
【0022】
(オレフィンの製造方法)
本発明のオレフィンの製造方法は、上述した触媒にアルコール原料を接触させてオレフィンを生成すなわち製造させる。
ここで、オレフィンの製造装置としては、特に限定されないが、例えば、上述した触媒を充填して内部に触媒層を有しアルコール原料が流通可能な反応器である固定床式気相流通反応装置を用いることができる。
原料のアルコールとしては、特に制限はないが、炭素数2以上10以下の範囲内にあることが好ましい。また、アルコール原料は、複数の種類のアルコールが混在したり、水が混合されたりしていてもよい。さらに、アルコール原料としては、固定床式気相流通反応装置に直接供給、あるいは窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水素等のガスにより適宜希釈して供給、すなわちガスが混合されたものとしてもよい。
なお、本実施形態に用いるアルコールは、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコールが好ましい。
また、アルコールは、天然ガス・石炭・石油等の原料から合成されたものだけでなく、発酵法により製造されるバイオアルコールでも構わない。
【0023】
そして、反応温度としては、150℃以上600℃以下であることが好ましい。ここで、反応温度が150℃より低くなると、触媒活性が十分に得られなくなって反応速度が低下し、オレフィンの製造効率が低下するおそれがある。
一方、反応速度が600℃より高くなると、例えばコークが生成する等して、触媒活性の劣化を生じるおそれがある。
このことにより、反応温度は150℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上500℃以下に設定することがより好ましい。
また、原料ガスの反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できる。なお、製造性や装置構成等の観点から、常圧から1.0MPa程度に設定することが好ましい。
【0024】
そして、アルコール原料と触媒との接触時間は、アルコール原料を気相で反応させる場合、例えば0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以下であることが好ましい。
ここで、触媒との接触時間が0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)より短くなると、原料のオレフィンの転化率の向上が望めず、所望とするオレフィンを高い収率で製造できなくなるおそれがある。
一方、触媒との接触時間が10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)より長くなると、生成したオレフィンの重合等の副反応が生じて、高い収率で所望とするオレフィンが得られなくなるおそれがある。
このことにより、原料アルコールガスと触媒との接触時間は、0.001(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(mL−原料アルコールガス)以下に設定することが好ましい。
【0025】
また、原料アルコールに水が含まれる場合、原料アルコール中の水供給量は、50体積%以下であることが好ましい。
ここで、原料アルコール中の水供給量が50体積%より多くなると、アルコールの転化率が低くなり、高い収率でオレフィンを得ることができなくなるおそれがある。
このことにより、原料アルコール中の水供給量は、50体積%以下、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下に設定することが好ましい。
【0026】
(実施形態の作用効果)
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に周期表第13族元素が組み込まれており、さらに周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか一の元素が担持されている。
このため、ゼオライト触媒のような酸性触媒を用いる場合のような副反応が少なく、所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。さらに、触媒劣化により触媒の寿命が短くなるという問題を解消することができる。
【0027】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に組み込まれている元素は、アルミニウム、ガリウムの中から選ばれる少なくともいずれか一種である。
このため、ゼオライト触媒のような酸性触媒を用いる場合のような副反応が少なく、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。さらに、触媒劣化により触媒の寿命が短くなるという問題を解消することができる。
【0028】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体に担持される元素は、鉄、コバルト、ニッケルの中から選ばれる少なくともいずれか一種である。
このため、ゼオライト触媒のような酸性触媒を用いる場合のような副反応が少なく、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。さらに、触媒劣化により触媒の寿命が短くなるという問題を解消することができる。
【0029】
上記実施形態では、周期表第8族から第10族までの少なくともいずれか1つの元素を、テンプレートイオン交換法により担持させることにより、本発明の触媒を調製している。
このため、製造方法が簡便となり、さらには金属担持状態が改善され、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0030】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体を構成する骨格の主成分がシリカである。
このため、周期表第13族元素を骨格中の一部に組み込むことにより、アルコールからオレフィンを製造する活性点を生成させ、さらに周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素を良好に担持することができる。このため、良好な物性の規則性メゾ多孔体を得ることができる。よって、触媒性能の高い触媒を得ることができ、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0031】
上記実施形態では、規則性メゾ多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いる。
このため、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0032】
上記実施形態では、アルコールとして炭素数が2以上10以下の範囲内にあるアルコールが用いられている。
このため、所望のオレフィンをより高い収率で得ることができる。
【0033】
上記実施形態では、アルコールとしてバイオエタノールを用いている。
このため、カーボンニュートラルなオレフィンを高い収率で得ることができる。
【0034】
上記実施形態では、アルコールを本発明のオレフィン製造触媒に接触させてオレフィンを製造している。
このため、オレフィン製造触媒を用いることで、容易に所望のオレフィンを高い収率で得ることができる。特に、接触させる簡単な方法で、高い収率でオレフィンを得ることができる。
【0035】
(実施形態の変形例)
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状等は、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。
【0036】
すなわち、本発明のオレフィンの製造方法を実施する製造装置としては、上述した固定床式気相流通反応装置に限られるものではない。例えば、流動床として原料ガスを触媒と接触させる等、原料を触媒と接触させるいずれの構成が適用できる。
さらに、触媒としては、粉粒体や塊状物、いわゆるハニカム構造物等、各種形態で利用できる。
また、触媒として、シリカメゾ多孔体に限らず、例えば、骨格の主成分に他の無機材料が含まれるもの等、規則性メゾ多孔体であればいずれの組成物を適用することができる。
そして、触媒としては、規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に組み込まれる周期表第13族元素、および、そこに担持される周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素は、各族から選ばれる1種または2種以上を含有したものを用いてもよい。
【0037】
また、規則性メゾ多孔体の物性、規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に組み込まれる周期表第13族元素、および、そこに担持される周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素の担持量等の触媒の物性は、上述した条件に限られるものではなく、処理効率や装置構成等により、適宜設定できる。
さらには、アルコール原料としては、生成物であるオレフィンに対応したものであれば、エタノール等に限られず、さらには水やその他のアルコールなどを含んでいてもよい。
また、アルコール原料を気化した原料アルコールガスの触媒との接触条件である反応処理条件についても、上述した条件に限られるものではなく、反応温度が150℃以上600℃以下であれば、処理効率や装置構成などにより、適宜設定できる。
【0038】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0039】
次に、本発明のオレフィンの製造方法について、実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
(触媒の調製)
規則性メゾ多孔体の主成分にシリカを選びテトラエトキシシラン(TEOS)(東京化成製)、界面活性剤としてドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)、周期表第13族元素としてアルミニウムを選びアルミニウムイソプロポキシド(アルドリッチ製)、周期表第8族元素から第10族元素としてニッケルを選び硝酸ニッケル六水和物(和光純薬製特級試薬)を用いた。実験用具は、全てテトラフルオロエチレン製のものを用いた。
まず、60℃の温浴中でイオン交換水180gに界面活性剤30.0gを溶かした。そこに、水酸化テトラメチルアンモニウム25%水溶液(アルドリッチ製)10.5gを加え、さらにアルミニウムイソプロポキシド0.04gを加えた。この溶液にTEOS16.7gを滴下し、滴下終了後から2時間、60℃で攪拌を続けた。攪拌終了後、溶液をオートクレーブに移し、100℃で6日間水熱合成を行った。水熱合成終了後、得られた白色生成物を濾過し2Lのイオン交換水で洗浄した後、乾燥器中353Kで一晩乾燥させた。
乾燥後の試料3.0gを30gのイオン交換水に加え攪拌し、縣濁させた。ここに、硝酸ニッケル六水和物0.38gを30gのイオン交換水に溶解させた水溶液を滴下した。添加終了後、室温で2時間攪拌を継続した。攪拌後、混合液を353Kの水浴中で24時間静置した。その後濾過し、約1Lのイオン交換水に分散させ5分間攪拌後濾過し、353Kで一晩乾燥させた。乾燥後の試料を磁性皿に薄く広げ、773Kまで昇温後、6時間焼成し、触媒を得た。得られた触媒は、NMR測定を行い、アルミニウムが骨格中に組み込まれていることを確認した。
この触媒のSi/Al原子比は229、Si/Ni原子比は16であった。
【0041】
[実施例2]
実施例1の触媒の調製において、アルミニウムイソプロポキシドの量を0.08gに変えた以外は、同様に行った。
この触媒のSi/Al原子比は122、Si/Ni原子比は15であった。
【0042】
[実施例3]
実施例1の触媒の調製において、アルミニウムイソプロポキシドの量を0.16gに変えた以外は、同様に行った。
この触媒のSi/Al原子比は59、Si/Ni原子比は15であった。
【0043】
[実施例4]
実施例1の触媒の調製において、アルミニウムイソプロポキシドの代わりにガリウムアセチルアセテート(アルドリッチ製)0.55gに変えた以外は、同様に行った。
この触媒のSi/Ga原子比は32、Si/Ni原子比は15であった。
【0044】
[比較例]
実施例1の触媒の調製において、アルミニウムイソプロポキシドを入れなかったこと以外は同様に行った。
この触媒のSi/Ni原子比は15であった。
【0045】
(エタノールの反応)
触媒の活性評価としてエタノールからのオレフィン生成反応を行った。内径10mmの石英管の中央に触媒を200mg充填した。反応に先立ち、触媒の前処理として、100mL/minの窒素ガスを流しながら、40分掛けて673Kまで昇温し、673Kにて1時間保持した。その後、窒素ガス流量を7.2mL/min、エタノールを9μL/min流して反応を開始した。反応開始1時間後の生成物を、反応管と直結させたFIDガスクロにて分析を行った。
その結果を、以下の表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
(結果)
比較例及び実施例1〜4の生成物の成分分析を行った結果を以下に示す。
[比較例]
比較例では、周期表第13族元素を骨格中に組み込んでいないメゾ多孔体触媒でエタノールを反応させた。この結果、エタノール転化率は50%を下回り、低い活性である。また、オレフィン収率/その他収率比が1よりも小さく、反応主生成物はオレフィンではなかった。
【0048】
[実施例1]
実施例1では、周期表第13族元素としてアルミニウムを骨格に組み込んだ規則性メゾ多孔体触媒でエタノールを反応させた。この結果、比較例と比べてエタノール転化率が大きく向上した。さらに、オレフィン収率/その他収率比が1よりも大きくなり、反応主生成物がオレフィンとなった。
[実施例2]
実施例2では、周期表第13族元素の含有率を実施例1よりも増加させた。この結果、エタノール転化率がさらに向上した。また、オレフィン収率/その他収率比も増加し、オレフィン収率が向上した。
[実施例3]
実施例3では、周期表第13族元素の含有率を実施例2よりも増加させた。この結果、エタノール転化率がさらに向上した。また、オレフィン収率/その他収率比も増加し、オレフィン収率が向上した。
[実施例4]
実施例4では、周期表第13族元素としてガリウムを骨格に組み込んだ規則性メゾ多孔体触媒でエタノールを反応させた。この結果、比較例と比べてエタノール転化率が大きく向上した。さらに、オレフィン収率/その他収率比が1よりも大きくなり、反応主生成物がオレフィンとなった。
【0049】
(まとめ)
以上より、エタノールからオレフィンを製造する場合、周期表第13族元素を骨格中に含有しないメゾ多孔体触媒(比較例)ではオレフィンはほとんど製造されないが、周期表第13族元素を骨格中に含有することにより高いオレフィン収率を実現することが可能となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、アルコールを原料としてオレフィンを製造する方法に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールからオレフィンを生成させるオレフィン製造触媒であって、
規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に周期表第13族元素が組み込まれているとともに、前記規則性メゾ多孔体には周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素が担持されている
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体の骨格中の一部に組み込まれている元素は、アルミニウム、ガリウムの中から選ばれる少なくともいずれか一種である
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体に担持される元素は、鉄、コバルト、ニッケルの中から選ばれる少なくともいずれか一種である
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
周期表第8族元素から第10族元素までの少なくともいずれか1つの元素は、テンプレートイオン交換法により担持されている
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体を構成する元素は、主成分がシリカである
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記規則性メゾ多孔体の開口径は、1.4nm以上10nm以下である
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記アルコールは、炭素数が2以上10以下のものである
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒であって、
前記アルコールは、バイオエタノールである
ことを特徴としたオレフィン製造触媒。
【請求項9】
アルコールからオレフィンを生成させるオレフィンの製造方法であって、
前記アルコールを、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のオレフィン製造触媒に接触させる
ことを特徴とするオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2012−16682(P2012−16682A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156951(P2010−156951)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(先導技術開発)/セルロース系バイオマスエタノールからプロピレンを製造するプロセス開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】