説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる主に炭素数4のオレフィンを含んでなる液状炭化水素を原料として粒状固体酸触媒の存在下に、オレフィン重合体の製造する際に、抽出溶剤による影響を低減もしくは排除し、触媒効率を向上させる方法を提供すること。
【解決手段】原料液状炭化水素を、アルミニウム原子含有処理剤に接触させた後に、1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状体の固体酸触媒の存在下に重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエン系炭化水素を抽出蒸留法で製造する際のラフィネートから得られる、主として炭素数4のオレフィンを含む液状の炭化水素原料を原料としてオレフィン重合体を得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油類の分解生成物等の、ジエン、オレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素を含む炭化水素混合物から、ブタジエン等のジエンを分離することは、多くの化合物の沸点が近接していることおよび共沸混合物が形成されることから単蒸留では不可能である。そのため、溶剤を用い抽出蒸留によってジエンを得ることが広く行われている。ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法によってジエン類を製造する際のラフィネート中に含まれる主として炭素数4のオレフィンを含む液状の炭化水素を固体酸触媒の存在下オレフィン重合体を得ることが従来行われている。一般には固体触媒は有機溶剤に懸濁させて重合反応槽に注入される。固体酸触媒がオレフィン重合体中にそのまま残存した場合に、長期的には製品の透明性等の特性を変化させる。また、固体酸触媒として塩化アルミニウム(AlCl)等のハロゲン含有触媒を使用した場合には、重合体中の残存触媒はハロゲン系不純物として商品価値を低下させる。そこで、通常、重合後に反語に該触媒を失活処理および除去処理するが、これらの処理工程は、アルカリ性水溶液等による抽出、分離、精製、ろ過等の工程を含む煩雑な工程である。
【0003】
固体酸触媒の効率を高めて使用量を低下させることは、触媒コストの低減のみならず、触媒の失活工程および除去工程の負担が軽減されることになるので、根本的解決のひとつとなる。このためには、触媒の単位体積当たりの表面積を増加させるために小粒径の固体酸触媒を使用することが有効である。しかしながら、本発明者の検討によれば、固体酸触媒は粒径が減少すると、反応系内の不純物を表面に吸着する能力が増加し、原料中の不純物を吸着するために、単位体積当たりの表面積増加等の効果が十分に得られていないことが分かった。
【0004】
この問題を解決するためには、重合反応前に原料中に含まれる固体酸触媒に吸着される不純物(化合物)を除去することが考えられる。しかしながら、どのような不純物を除去すべきかは明らかではなく、当然のことながらその具体的手段も不明である。関連技術として、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートを原料として、該ラフィネート中のイソブチレンから第3級ブタノールを製造する方法において、原料中の残存ジメチルホルムアミドを強酸性イオン交換樹脂を用いて吸着処理する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、本発明に係るオレフィンは強酸性イオン交換樹脂との接触下で重合反応するので、この提案手段を、上述のようなオレフィンの重合技術上の問題を解決するために転用するとはできない。
【特許文献1】特開2000−34242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートであって、オレフィンとして主に炭素数4のオレフィンを含んでなる液状炭化水素を原料とし、小粒径の固体酸触媒を使用してオレフィン重合体を製造する方法において、ラフィネート中の抽出蒸留溶剤等の触媒に吸着して触媒効率を低下させる化合物を吸着除去し、触媒効率を高く保持させることにより固体酸触媒の添加量を低減させ、かつ、該触媒の失活処理および除去処理におけるアルカリ性水溶液等による抽出負担を低減する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる炭化水素を含む、主として炭素数4のオレフィンを含むオレフィン5〜95質量%と主として炭素数4の飽和脂肪族炭化水素を含む飽和脂肪族炭化水素95〜5質量%(両者を合わせて100質量%とする。)からなる液状炭化水素を、アルミニウム原子含有処理剤に接触させた後に、粒径1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状固体酸触媒の存在下にオレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0007】
本発明の第2は、本発明の第1において、前記粒状固体酸触媒が塩化アルミニウムであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0008】
本発明の第3は、本発明の第1または第2のいずれかにおいて、前記粒状固体酸触媒が粒径850μm未満の粒子を60質量%以上含むものであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0009】
本発明の第4は、本発明の第1〜3のいずれかにおいて、前記炭素数4のオレフィンがイソブテンであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0010】
本発明の第5は、本発明の第1〜4のいずれかにおいて、前記アルミニウム原子含有処理剤が組成式AlOで表される成分を含む無機固体処理剤であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0011】
本発明の第6は、本発明の第1〜5のいずれかにおいて、前記アルミニウム原子含有処理剤がアルミナを含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0012】
本発明の第7は、本発明の第1〜6のいずれかにおいて、前記抽出蒸留に使用される有機溶剤がジメチルホルムアミドであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、抽出蒸留のラフィネートから得られる炭素数4のオレフィンを含有する脂肪族炭化水素を原料とし、粒子径1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状固体酸触媒の存在下でオレフィン重合体を製造する方法において、当該触媒の効率を高め、その使用量を低減することができ、触媒に係る生産コストを低減し、かつ、その後の触媒失活および/あるいは除去工程を簡素化あるいは省略することができる。また、得られたオレフィン重合体中の触媒残渣が小さい。特に、ハロゲン含有触媒を使用した場合においては、その誘導体からなる清浄剤等の潤滑油添加物を燃焼する場合においても、大気中へのハロゲンの放出が少なく、従って環境保全の面においても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のオレフィン重合体は、末端に二重結合を有する炭素数4のオレフィンを主たる構成成分とする重合体を意味する。本発明において、オレフィン重合体を得るための出発原料として、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる、主として炭素数4のオレフィンを含むオレフィン5〜95質量%および主として炭素数4の飽和脂肪族炭化水素を含む飽和脂肪族炭化水素95〜5質量%(両者を合わせて100質量%とする。)からなる液状炭化水素を用いる。ここで「主として」とは、50質量%以上を意味する。すなわち、オレフィン中に炭素数4のオレフィンを50質量%以上含むこと、および飽和炭化水素中に炭素数4の飽和炭化水素を50質量%以上含むことを意味する。
【0015】
抽出蒸留の原料としては、石油精製または石油化学工業で得られるジエン、オレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素の混合物が挙げられる。たとえば、ブタジエンを得る場合の原料としては、ナフサ分解によりエチレン・プロピレン等を製造する際に生成する主として炭素数4の留分(C4留分、粗ブタジエン、B−B留分等と称されている)が好ましい。この外に、ガスオイルの高温分解によって得られる同様の留分、あるいは流動接触分解(FCC)による石油類の分解生成物、ブタン、ブテンの接触脱水素反応生成物等から得られるものを使用できる。炭素数5のジエンであるイソプレンを得る場合には、炭素数5の原料留分を使用する。
【0016】
本発明に用いられる抽出蒸留法には特に制限はなく、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする公知の抽出蒸留法がいずれも好ましく使用できる。ブタジエンを製造する場合の抽出蒸留法の具体例を以下に挙げるが、イソプレンの場合もほぼ同様に行われる。
【0017】
気化したC4留分を抽出塔下部から送入し、抽出溶剤を同塔上部から加えると、当該溶剤とブタジエンの相互作用によりブタジエンの見かけ上の沸点が上昇し塔底部へ移行し、オレフィンを含有する炭化水素が塔頂部から抽出溶剤を含有するラフィネートとして流出し、塔底部からブタジエン等を含有するエキストラクトが流出する。ラフィネートに同伴している抽出溶剤は水洗塔で散水水洗などの方法によりラフィネートから回収される。しかし、このような処理後も、ラフィネート中には抽出溶剤および当該抽出溶剤の酸化物等の劣化物が微量含有されることが通常である。含有量は、通常、数十質量ppb〜十質量ppmオーダーである。さらに、ラフィネート中に微量含有するジエン類、アセチレン結合を有する炭化水素類を、所望により公知の方法により水素添加して除去することを適宜行うことが好ましい。以下、本明細書においてラフィネートという場合は、特に記載のある場合を除き、抽出蒸留塔から得られた後、抽出溶剤の分離工程および所望による水素添加工程を経たものを意味する。
【0018】
本発明の抽出蒸留における好ましい抽出溶剤としては、フルフラール、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等がある。抽出効率は、オレフィン等と相互作用の小さい極性の高い有機溶剤となる窒素が含有されるものが好ましく、また、炭化水素と溶剤の分離の容易さから沸点がラフィネート中の炭化水素に比べて十分に高いことが好ましい。したがって、これらの中でも、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが最も好ましい。
【0019】
オレフィンとしては、ビニル基を有するもの、すなわち末端に二重結合を有するものが特に好ましい。たとえば炭素数4のオレフィンとして1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(イソブテン)が、好ましい。炭素数4のオレフィンの内、特にイソブテンが好ましい。本発明おいては、炭素数4のオレフィンのほかに、炭素数5のオレフィンを含むことを妨げない。炭素数5のオレフィンとして3−メチル−1―ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンが、その外にビニルシクロヘキサン、4−メチル−1−ペンテン、2,4,4-トリメチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。生成重合体および原料炭化水素を含む反応系を液状に保つことの容易さ、オレフィンの反応性などから、炭素数4のオレフィンが最も好ましい。
【0020】
オレフィンの含有率が5質量%未満であるとオレフィン重合体の製造効率が商業的でなく、95質量%を越えると、特に分子量が大きいオレフィン重合体の製造時に、反応系の粘度が高くなりすぎて、工程が円滑に行われないことがある。オレフィンの含有量は、例えば、炭素数4のオレフィンであるイソブテンを含む炭化水素から数平均分子量1500〜30000の炭素数4のオレフィンの重合体(ポリブテン)を製造する工程では、イソブテン濃度は20〜80質量%の範囲にあることが好ましく、25〜60質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0021】
炭素数4のオレフィンを主として含有する炭化水素は、エチレンやプロピレン等の低級オレフィンを製造するナフサクラッキング装置から留出するC4留分からブタジエンを抽出蒸留法により製造した際のラフィネートとして市場から容易に入手することができる。当該ラフィネートは通常、オレフィンとして40〜55質量%の範囲のイソブテンと20〜35質量%の範囲の1−ブテンとを含み、その外に7〜8質量%の2−ブテンを含む。ブタジエンは0.5質量%以下であり、微量の抽出溶剤を含んでいる。残余はブタン、イソブタン等の飽和炭化水素である。もちろん、当該ラフィネートに他のオレフィンまたは飽和炭化水素を追加しても使用できる。
【0022】
本発明の重合原料は、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートをから得られる炭化水素を含むので、抽出溶剤除去工程を経ていても微量の抽出溶剤の同伴が避けられない。抽出溶剤は重合反応系内に存在するすべての化合物と相互作用を生じる可能性がある。特に、抽出溶剤として好ましい窒素を含有するもの、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等は塩基性が強いため、固体酸触媒と優先的にかつ強い相互作用を生じる可能性が高い。本発明者は、1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状固体酸触媒は、特にこれら抽出溶剤に対する吸着能力が高く、これら吸着物が触媒効率を低下させていることを見出した。
【0023】
本発明においては、原料炭化水素を、重合工程前にアルミニウム原子を含む処理剤に接触させ、抽出溶剤を当該処理剤に吸着させる。アルミニウム原子を含む処理剤は、好ましくは組成式AlOで表される成分を含む無機固体処理剤である。AlOで表される成分を含む限り、天然または合成の無機物を用いることができる。具体的な無機固体処理剤としては、活性アルミナ、シリカ・アルミナ、モレキュラーシーブなどを例示することができる。好ましくは活性アルミナである。これらは適宜のバインダーを用いて成型したものでもよい。
【0024】
例えば、市販のアルミナを適宜に粉砕し、分級して用いることができる。固体処理剤としての比表面積は特に限定されないが、通常は1〜500m2/gの範囲である。また、本発明の効果を阻害しない限り、アルミナに適宜アルカリ金属、アルカリ土類金属またはその他の金属を、酸化物、水酸化物あるいはその他の形態で含浸あるいはその他の方法により適宜担持させて変性したものを用いることもできる。しかしながら、通常は、特にこのような担持・変性は必要なく、ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が0.5質量%以下のアルミナが用いられる。このように担持・変性をまったくまたは殆ど行なわないアルミナは安価であり、この点においても本発明は有利な方法である。なお、本発明において好ましく使用できるアルミナは、活性アルミナ、特に、塩素吸着能の高いアルミナが好ましい。である。また、AlOで表される成分を含む化合物は両性化合物としての性質を有することが知られている。
【0025】
本発明者は、本発明におけるアルミニウム原子含有処理剤は、アルミニウム化合物としての両性化合物の特性および吸着剤としての吸着力を有しており、この独特の特性により、オレフィンを実質的に重合させることなく原料中の残存抽出溶剤を物理的に吸着するか、特に、抽出溶剤である化合物中の孤立電子対と配位化合物を形成する等の作用により吸着除去しているものと考えている。すなわち、特開2000−34242で提案された強酸性イオン交換樹脂による吸着除去と比較すれば、オレフィンの重合反応を実質的に進行させることなしに残存抽出溶剤を吸着除去することできる。
【0026】
アルミニウム原子含有処理剤と液状炭化水素原料を接触させる際の温度は、該処理剤と原料炭化水素中のオレフィンの種類との組み合わせよって異なる。処理温度が高過ぎる場合はオレフィンの重合反応が進行する可能性があり、低すぎると処理効果が十分に発揮できないこと、および後続する重合プロセス温度も考慮して、−30℃〜100℃とすることが好ましく、さらに−10℃〜50℃の範囲とすることが好ましい。また、本発明の効果を十分に得るためには、液相にて原料炭化水素をアルミニウム原子含有処理剤に接触させることが好ましく、必要に応じて加圧しながら処理を行う。
【0027】
アルミニウム原子含有処理剤と原料炭化水素の接触時間は、抽出溶剤の除去が達成される限り特に制限されないが、通常約1分〜10時間の範囲が好ましい。この範囲より短い場合は接触が一般に不十分なため抽出溶剤が十分除去されず、長い場合は設備費が増大して好ましくない。接触のための方法としては、回分式または連続式のいずれも可能である。連続式の場合は、固定床式、流動床式などの方法によることができる。流れの方向もアップフローおよびダウンフローのいずれも採用することができる。
【0028】
本発明者は先に、酸触媒によるオレフィン重合の前処理としてアルミニウム原子含有処理剤による原料オレフィンの処理が、酸触媒の効率向上に効果を有することを見出して特許出願を行っているが(特開2004−245716)、本出願は、粒径1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状固体酸触媒において、この効果が極めて顕著に現れることを見出したことに基づくものである。すなわち、粒径1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状体の固体酸触媒は、触媒効率に優れるが、吸着能力が大きいために原料中に抽出溶媒等が存在する場合には、その影響を大きく受けるため、本発明の工程の組み合わせによる効果が顕著に得られる。特に、粒径850μm未満の固体酸触媒(20メッシュ篩通過粒子)は吸着剤としての能力が高いため、これらを60質量%より多く含む固体酸触媒においては本発明の効果が顕著である。粒径1400μm以上の固体酸触媒(12メッシュ篩不通過粒子)は、吸着能力が低すぎて、本発明の効果は得られるが相対的に低いものとなる。本発明における固体酸触媒は、公知のオレフィンの重合用固体酸触媒であれば特に制限はないが、触媒活性の点から塩化アルミニウム(AlCl)が好ましい。
なお、本発明における粒状体の大きさは、JISZ8801(ISO3310)「試験用ふるい」で規定されている網目の目開き寸法を基準としている。具体的には、12メッシュ篩不通過粒子が粒径1400μm以上の粒子であり、12メッシュ篩を通過する粒子が粒径1400μm未満の粒子である。同様に、20メッシュ篩通過粒子が粒径850μm未満である。
【0029】
上記固体酸触媒は、通常、適当な溶剤、例えばノルマルヘキサン、ノルマルへプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、シクロドデカン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、メチルクロリド、エチルクロリド中に投入し、攪拌して懸濁状態にして反応槽に注入する。公知のリガンドとなる化合物を使用して錯体として併用してもよい。また、必要に応じ、活性化剤として例えばHCl、t-ブチルクロライド、水などを供給してもよい。使用量は原料中の末端二重結合を有するオレフィンに対し0.5×10−5〜1.0×10−2 (mol/mol)がよい。
【0030】
重合反応はアルミニウム原子含有処理剤による処理を経た原料炭化水素および触媒を使用して、液相で行う。反応は回分式、連続式いずれの方法での行うことができるが、連続式が好ましい。反応装置は、公知のものを使用することができる。原料炭化水素および触媒の供給は公知の方法で行う。重合温度および圧力は、反応系が液相に保たれる条件であれば特に制限はないが、好ましい温度は−100〜+10℃、圧力は0.1〜2MPaである。
【0031】
オレフィン重合体の数平均分子量には、特に制限はない。すまわち、オレフィン重合体が、重合反応系内において、未反応のオレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素に溶解しており、また、該未反応のオレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素から蒸留等で分離できる範囲あれば、例えば、2量体、3量体から数平均分子量500以下の範囲にあるオリゴマー、数平均分子量1,500〜50,000の範囲にある粘性重合体、さらに、数平均分子量100,000以上のポリマー状重合体のイソブテン重合体を、すべて得ることができる。
【0032】
重合後は、公知の方法に従って、触媒の失活工程および/あるいは触媒の抽出除去工程等が行われるが、触媒添加量が低減されているために、これらの工程の負荷は従来の方法に比べて小さくなる。また、これら工程の前後に適宜に蒸留して未反応のオレフィン等を除去して目的の重合体を得る。またこのようにして得た重合体は、さらに適宜蒸留して所望の数平均分子量を有するオレフィン重合体に分離することができる。なお、本発明においては、触媒添加量が低減されているから、脱ハロゲン処理塔(例えばアルミナ充填塔)を設置すれば、ハロゲン濃度が5質量ppm以下である重合体を容易に得ることができる。
【0033】
以上、主としてブテン系のオレフィン重合体を例にとって説明したが、本発明に係る効果はブテン系オレフィン重合体に限られるものではない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<原料Aの調整、製造>
エチレンクラッカーからのC4留分から、ブタジエンをエキストラクトとする抽出蒸留法(抽出溶剤:ジメチルホルムアミド)のラフィネートを用意した。以下、「原料A」という。原料Aの炭化水素組成を表1に示す。原料A中のジメチルホルムアミド濃度は0.7質量ppmであった。なお、原料中のジメチルホルムアミドの濃度は、原料中のジメチルホルムアミドを水を用いて抽出しエバポレートにより濃縮した後に、GC−FTD(熱イオン化検出器)を用いて測定し、その結果から逆算して求めた。
【0035】
<原料Bの調整、製造>
「原料A」と同一の炭化水素組成のC4混合物(ただし、ジメチルホルムアミドを含まない)を市販の特級試薬から調製し、これにN−メチルピロリドンを1.5質量ppm加えたものを調製した。以下、「原料B」という。
【0036】
<アルミニウム原子含有処理剤>
活性アルミナ(UOP LLC社、商品名:A203−CL)を粉砕して粒径を0.5mm0から1.0mmに分級したものを、アルミニウム原子含有処理剤として用いた。これを、内容積15mlの固定床容器に10g充填した。比較の目的で、同一形状容器に、試薬特級塩化カルシウム(東京化成(株)製)を粉砕し粒径を0.5〜1.0mmに分級したものを充填したものを作成した。
【0037】
<触媒>
粒状固体酸触媒として塩化アルミニウムを使用した。表2に示すように粒径分布によって7種類の触媒を使用した。触媒1〜5は本発明の触媒である。参考触媒1、2は粒径分布が本発明の範囲を外れるものである。
【0038】
<原料の前処理>
0.3MPaの加圧下に液状に保たれた原料Aおよび原料Bをそれぞれ別個に、前記アルミニウム原子含有処理剤を充填した容器に注入し、+20℃、WHSV=1h−1の条件で60分間、前処理した。
【0039】
<重合反応>
内容積200mlのオートクレーブに、上記の前処理済の原料を240g/hrで、粒状固体酸触媒として表2に示す粒径分布を有する塩化アルミニウムをヘキサンに懸濁させて、それぞれ別にフィードし、反応温度−15℃、0.19MPaで連続的に120分間重合を行った。触媒の添加量は、各原料中のイソブテン1molに対して0.5mmolとした。
【0040】
<イソブテンのポリイソブテンへの転化率の算出>
重合反応前原料および重合反応後の後の重合体(ポリイソブテン)をそれぞれ密閉容器にサンプリングし水酸化ナトリウム水溶液で中和処理して触媒を失活し、常温常圧に保った後、蒸発気体成分中のイソブテンmol%をガスクロマトグラフィーで分析した。蒸発気体成分中のイソブテン減少分をイソブテンのポリイソブテンへの転化率(%)とした。結果を表3に示した。
【0041】
まず、活性アルミナで前処理を行った各原料においては、当該前処理を行わない場合、および、塩化カルシウム、モレキュラーシーブで同様の処理を行った場合に比較して、原料A、原料Bの両者において、同一の触媒添加量でも高い転化率が得られていることが分かる。また、原料Aにおける転化率の増加割合と原料Bにおける増加割合とを比較すると、原料Aにおける増加割合がより大きく、本発明がジメチルホルムアミドを抽出溶剤とするラフィネートに対してより効果的であることが分かる。
【0042】
つぎに、原料Aについて活性アルミナで前処理を行った場合の転化率の増加割合(%)を、触媒の粒径との関係でみると、2000μm以上2800μm未満のみの塩化アルミからなる参考触媒1、1400μm以上2000μm未満のみの塩化アルミからなる参考触媒2においては、その増加割合は200%でほぼ同一であるが、本発明の実施態様である1400μm未満の粒子を60質量%以上含む触媒1〜5では、増加率は300%以上に増加し、当該範囲で顕著な効果が得られることがわかる。特に、850μm未満の粒子を60質量%以上含む触媒3、触媒4の増加率は370%、400%以上と顕著である。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる炭化水素を含む、主として炭素数4のオレフィンを含むオレフィン5〜95質量%と主として炭素数4の飽和脂肪族炭化水素を含む飽和脂肪族炭化水素95〜5質量%(両者を合わせて100質量%とする。)からなる液状炭化水素を、アルミニウム原子含有処理剤に接触させた後に、粒径1400μm未満の粒子を60質量%以上含む粒状固体酸触媒の存在下にオレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記粒状固体酸触媒が塩化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記粒状固体酸触媒が粒径850μm未満の粒子を60質量%以上含むものであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記炭素数4のオレフィンがイソブテンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム原子含有処理剤が組成式AlOで表される成分を含む無機固体処理剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム原子含有処理剤がアルミナを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記抽出蒸留に使用される有機溶剤がジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2006−219560(P2006−219560A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33134(P2005−33134)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000231682)新日本石油化学株式会社 (33)
【Fターム(参考)】