説明

オレフィン類の製造方法

【課題】アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下、脱水反応に付すことによるオレフィン類を製造する方法であって、低コストで効率的に高いアルコール類の転化率を得ることができるという特徴を有するオレフィン類の製造方法を提供する。
【解決手段】チタン系触媒の存在下にアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させてプロピレンオキサイドとアルコール類を得、該アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下に脱水反応に付してオレフィン類を得るオレフィン類の製造方法であって、該脱水触媒として、使用履歴を経た触媒を酸素含有ガスの存在下に加熱処理した触媒を用いるオレフィン類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類の製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下、脱水反応に付すことによるオレフィン類を製造する方法であって、低コストで効率的に高いアルコール転化率を得ることができるという特徴を有するオレフィン類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルコール類からのオレフィン類の製造方法としては、たとえば、特許文献1にアルコ−ル類をアルミナ系の脱水触媒の存在下、脱水反応に付すことによるオレフィン類を製造する方法が開示されている。しかしながら従来の方法においては、高い転化率を得るには、260℃〜350℃の高温を必要とし、低コストで効率的に高いアルコール類の転化率を得るという観点において、必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/078336−A2号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下、脱水反応に付すことによるオレフィン類を製造する方法であって、低コストで効率的に高いアルコール類の転化率を得ることができるという特徴を有するオレフィン類の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、チタン系触媒の存在下にアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させてプロピレンオキサイドとアルコール類を得、該アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下に脱水反応に付してオレフィン類を得るオレフィン類の製造方法であって、該脱水触媒として、使用履歴を経た触媒を酸素含有ガスの存在下に加熱処理した触媒を用いるオレフィン類の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下、脱水反応に付すことによるオレフィン類を製造する方法であって、低コストで効率的に高いアルコール類の転化率を得ることができるという特徴を有するオレフィン類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるチタン系触媒としては、チタンを含有し、かつアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させてプロピレンオキサイドとアルコール類を得られる触媒ならば、いかなるものでも良い。プロピレンオキサイドとアルコール類を高収率及び高選択率下に得る観点から、チタン含有珪素酸化物からなる触媒の存在下に実施することが好ましい。これらの触媒は珪素酸化物と化学的に結合したチタンを含有する、いわゆるチタン−シリカ触媒が好ましい。たとえば、チタン化合物をシリカ担体に担持したもの、共沈法やゾルゲル法で珪素酸化物と複合したもの、あるいはチタンを含むゼオライト化合物などを挙げることができる。
【0008】
本発明におけるアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとしては、チタン系触媒の存在下、プロピレンと作用させてプロピレンオキサイドとアルコール類が得られるものならばいかなるものでも良いが、クメンまたはエチルベンゼンを含酸素ガスで酸化して得られるクメンハイドロパーオキサイドやエチルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0009】
本発明において、チタン系触媒の存在下にアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させてプロピレンオキサイドとアルコール類を得るための反応温度は、一般に0〜200℃であるが、25〜200℃が好ましい。圧力は反応混合物を液体の状態に保つのに充分な圧力でよい。一般に圧力は100〜10000kPaであることが有利である。
【0010】
本発明における原料であるアルコール類としては、アルミナ系触媒の存在下にアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させて得られるアルコール類であれば、特に制限はないが、たとえば、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとしてクメンハイドロパーオキサイドかつアルコール類としてクミルアルコールやアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとしてエチルベンゼンハイドロパーオキサイドかつアルコール類としてα―フェネチルアルコール等が挙げられる。
【0011】
本発明におけるアルミナ系触媒としては、アルミナを含有する触媒ならばいかなるものでも良いが、活性アルミナや銅、亜鉛、パラジウム等の金属を含有する活性アルミナ等が挙げられる。
【0012】
本発明におけるオレフィン類としては、アルミナ系触媒の存在下、原料であるアルコール類から脱水反応により生成するオレフィン類であればいかなるものでも良いが、クミルアルコールから生成するα−メチルスチレンやα―フェネチルアルコールから得られるスチレン等が挙げられる。α−メチルスチレンは、触媒の存在下に水素との反応によりクメンに変換される。該クメンは、酸素との反応によってクメンハイドロパーオキサイドに変換するという経路で再利用できる。
【0013】
本発明において、脱水触媒として使用履歴を経た触媒を酸素含有ガスの存在下に加熱処理した触媒を用いることにより、低コストで効率的に高いアルコール類の転化率を得ることができる。使用履歴を経た触媒とは、該脱水反応に触媒として用いられたものである。酸素含有ガスとしては、酸素を含有しているガスならばいかなるものでも良いが、酸素、空気、酸素濃縮空気等が挙げられる。加熱処理の温度は、250〜700℃が好ましい。温度が低すぎると高いアルコール類の転化率を得られない場合があり、また、温度が高すぎると、多大なエネルギーが必要となり経済的に不利になる場合がある。
【0014】
本発明における脱水反応は、気相反応でも液相反応でも良い。液相反応の場合は、スラリー又は固定床を用いることができる。大規模な工業的操作の場合には、固定床を用いるのが好ましい。また、液相反応の場合は、溶媒を用いることもできる。溶媒としては、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類やベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0015】
また、本発明における脱水反応の反応温度は一般に150℃〜300℃であるが、150〜250℃の温度が好ましい。反応温度が低すぎると、アルコール類の転化率が低くなる場合があり、一方、反応温度が高すぎるとオレフィン類の選択率が低下する場合がある。反応圧力は一般に10〜10000kPaであることが有利である。脱水反応は、ガスを供給しながら反応を行うこともできる。ガスとしては、窒素、水素等の無機ガスやヘリウム、アルゴン等の希ガスが挙げられる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例において本発明を説明する。
実施例1
チタン系触媒として、チタン−シリカ触媒を充填した固定床反応器にプロピレンとクメンハイドロパーオキサイドを含むクメン溶液を供給し反応させることにより、プロピレンオキサイド及びクミルアルコールを含むクメン溶液を得、該プロピレンオキサイドと未反応のプロピレンを蒸留除去した後、クミルアルコールを含むクメン溶液を得た。
アルミナ系の脱水触媒として、活性アルミナを充填した固定床反応器に該クミルアルコールを含む溶液と水素ガスを供給し、脱水反応を行うことによりα―メチルスチレンを得た。その後、使用履歴を経た触媒として該脱水触媒を固定床反応器より抜き出した。
該使用履歴を経た触媒を石英管に10.1g充填し、空気を200Nml/min供給しながら、500℃で1時間加熱処理を行った。その後、室温まで冷却した後、加熱処理後触媒が得られた。
該加熱処理後触媒2.06gを金属製200ml反応器に入れ、25重量%クミルアルコール及び0.2重量%α―メチルスチレンを含むクメン溶液を100.3g加えた。窒素で1.0MPa−Gまで加圧し、230℃で2時間反応させたところ、0.3重量%クミルアルコール及び21重量%α―メチルスチレンを含むクメン溶液が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系触媒の存在下にアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させてプロピレンオキサイドとアルコール類を得、該アルコール類をアルミナ系の脱水触媒の存在下に脱水反応に付してオレフィン類を得るオレフィン類の製造方法であって、該脱水触媒として、使用履歴を経た触媒を酸素含有ガスの存在下に加熱処理した触媒を用いるオレフィン類の製造方法。

【公開番号】特開2008−222634(P2008−222634A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63002(P2007−63002)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】