説明

オンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置

【課題】 オンマシンコーターでは、抄紙中に紙替えが行われるが、その際に塗工液を変更するカラー替えが伴われる場合に、塗工液の切り替わりを正確に把握でき、未抄銘柄の発生や作業時間を短縮できる塗工液の切替検出装置を提供する。
【解決手段】 オンマシンコーターの塗工液の供給ライン又は回収ライン中に塗工液の粘度を計測する粘度計を設置して、塗工液の粘度の変化を監視する。塗工液が変更された場合には、すなわちカラー替えが行われた場合には、粘度がそれまでとは異なるものとなり、紙替え作業のタイミングを合わせることが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙と塗工とを連続して行うオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の表面に光沢や平滑性を付与したり、印刷適正の向上等のために、表面にコーターヘッドから塗工液を塗工するコーター(塗工機)には、抄紙と塗工とを連続して行うオンマシンコーターと、抄紙と塗工とを別に行うオフマシンコーターとがある。
【0003】
オフマシンコーターは、主として、巻出装置とコーターヘッド、ドライヤ、巻取装置とから構成されており、オンマシンコーターでは、抄紙機のドライパートの後方位置等にコーターヘッドが配設される。
【0004】
オフマシンコーターでは、抄紙機で抄造された紙の巻取を原紙として巻出装置に供し、この巻取を巻き解きながらコーターヘッドを通過させて原紙表面に塗工液を塗工し、ドライヤで乾燥させた後、巻取装置で巻き取る。
【0005】
一方、オンマシンコーターでは、製紙原料スラリーをワイヤーパートに供給して脱水し、プレスパートで搾水したのち、適宜群数のドライヤ群(前群ドライヤ)を通過させて適宜な状態まで乾燥させた後に、コーターヘッドを通過させて塗工液を両面同時塗工した後、適宜群数のドライヤ群(後群ドライヤ)を通過させて乾燥させる。あるいは、前記オンマシンコーターでサイズ液両面同時塗布後、適宜群数のドライヤ群(後群ドライヤ)を通過させて適宜な状態まで乾燥させた後に、第一コ―ターヘッドで塗工液を片面塗工し、その後適宜群数のドライヤ群(第一ドライヤ)を通過させて適宜な状態まで乾燥させ、次に第二コーターヘッドで塗工液を第一コーターヘッドで塗工した反対面に塗工した後、再度適宜群数のドライヤ群(第二ドライヤ)を通過させて乾燥させる。次いで、カレンダーパートで光沢や平滑性を付与し、リールパートでマシンリールに巻き取られる。
【0006】
オンマシンコーターには、紙の両面を同時に塗工するロールコーターとしてゲートロールコーター、メタリングサイズプレスコーターがあり、また、片面を順に塗工するブレードコーター等を用いる種々のものがある。このような種々の塗工方式の中で、例えば、原紙を一対のアプリケーターロールに挟持させながら通過させる際に塗工液の塗工を行うようにしたゲートロールコーターについて、特許文献1に開示されているもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−105893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のオフマシンコーターでは抄造された原紙を巻き解きながら塗工を行うため、当該原紙に応じた仕様の塗工液を供給することが簡便に行える。例えば、製品の銘柄が異なる塗工紙を製造する場合には、それに応じた原紙の巻取を巻出装置に仕掛け、他方、当該銘柄に応じた塗工液をコーターヘッドから供給できるように準備する。そして、準備が完了した状態でコーターを作動させれば所望の塗工紙を製造することができる。
【0009】
一方、オンマシンコーターでは、銘柄の変更は抄紙機が連続運転されている操業中に行われる。すなわち、銘柄に応じて変更された製紙原料がワイヤーパートに供給され、当該銘柄に応じた塗工液に変更する塗工液のカラー替えが同時に行われる。このカラー替えが伴われた紙替え時の塗工液切替完了のタイミングは紙替え後における品質確認項目、すなわち、坪量や厚さ、平滑さ、色等で確認されているのみであり、塗工液が切り替わったことの確認は直接的には行われていない。
【0010】
変更された塗工液が紙表面に供給されるタイミングが不明であるため、塗工液の切り替わりが早すぎると先に抄造されていた銘柄が未抄となったり、遅い場合には紙替え時間が延びてしまい、いずれの場合にも無駄な製品が発生することになってしまう。
【0011】
よって、紙替え時における塗工液を変更するカラー替えのタイミングを適切にすることで、紙替え時の無駄の発生を防止することが必要となる。
【0012】
そこで、この発明は、カラー替えのタイミングを確実に確認することで、紙替え時における品質合わせのための無駄の発生を極力減じることができるようにしたオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る塗工液の切替検出装置は、抄紙と塗工とを連続して行うオンマシンコーターにおいて、コーターヘッドの塗工液の供給ライン、又は、原紙に塗工されて余剰となった塗工液の回収ライン内に粘度計を設けて、該供給ライン又は回収ライン内の塗工液の粘度の変化を監視して、塗工液の変更を認識することを特徴としている。
【0014】
塗工液の粘度は、塗工液の種類が異なることによって変化するから、これを監視することによって塗工液の切り替わり、すなわちカラー替えの有無を把握できる。この粘度の変化に応じて、紙替え作業を行う。
【0015】
また、請求項2の発明に係るオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置は、前記粘度計に振動式粘度計を用いたことを特徴としている。
【0016】
振動式粘度計は、完全密閉構造であり、流体中でも計測が可能であるため、塗工液の回収ラインに設置するのに適している。
【0017】
また、請求項3の発明に係るオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置は、前記監視する粘度に関するデータを、粘度の変化の比率としたことを特徴としている。
【0018】
変化の比率を測定することにより、粘度計の誤差を考慮することなく塗工液の変更を確実に監視することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係るオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置によれば、塗工液の変更の有無を粘度の変化によって判断できるので、カラー替えをほぼ確実に判断でき、紙替えのタイミングを確実に判断できて、未抄が発生することや不必要に紙替え時間を伸ばしてしまうことを極力防止できる。
【0020】
しかも、塗工液の供給ライン又は回収ラインに粘度計を配設するものであるから、既存の設備にも容易に設置することができ、安価な設備コストで紙の製造の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る切替検出装置を備えたオンマシンコーターを説明する概略のブロック図である。
【図2】この発明に係る切替検出装置で監視した塗工液の粘度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図示した好ましい実施形態に基づいて、この発明に係るオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置を具体的に説明する。
【0023】
図1にこの発明に係る切替検出装置を備えたオンマシンコーターの一例として、ゲートロールコーター1を示している。このゲートロールコーター1は、抄紙機のドライパートの間に設置されているもので、例えば、n群のドライヤ群からなるドライパートのm群目と(m+1)群目のドライヤ群の間に設置されている。原紙Pは、図1上矢標Q方向に走行し、一対のアプリケーターロール11a、11bの間をこれら一対のロール11a、11bに挟持されながら通過するようにしてある。アプリケーターロール11a、11bのそれぞれの外側には、これらアプリケーターロール11a、11bのそれぞれに接触した状態で、一対のインナーゲートロール12a、12bが配設されている。また、これらインナーゲートロール12a、12bの外側には、これらインナーゲートロール12a、12bのそれぞれに接触した状態で、一対のアウターゲートロール13a、13bが配設されている。そして、これらインナーゲートロール12a、12bとアウターゲートロール13a、13bの間の供給部14a、14bに上方から塗工液が供給されるようにしてある。
【0024】
供給される塗工液は、塗工液供給管15a、15bからそれぞれ供給される。塗工液は図示しない調製装置からワーキングタンク16に供給されて貯留され、供給ポンプ16aでスクリーン17に給送されて選別され、適正な塗工液が前記塗工液供給管15a、15bから、供給部14a、14bにそれぞれ供給される。
【0025】
供給部14a、14bに供給されて余剰となった塗工液は、該供給部14a、14bの下方に配設された塗工液受け部18a、18bに回収され、回収ラインを構成する回収管19a、19bから貯留バット20に回収される。この貯留バット20から返戻管20aを通って前記ワーキングタンク16に返戻されるようにしてある。
【0026】
また、前記スクリーン17で選抜されて供給するのに不適とされた塗工液は排除管17aを通ってスクリーン21に回収され、ここで再び選別されて適正な塗工液はワーキングタンク16に供給され、不適な塗工液は排出管21aから排出される。なお、排出された塗工液は図示しない調製装置に返戻される。
【0027】
前記貯留バット20内には、塗工液の切替検出装置として粘度計2が設置されている。この粘度計2によって、貯留バット20に回収された余剰の塗工液についての粘度が計測される。また、この粘度計2による計測値は、パーソナルコンピュータや汎用コンピュータ等による図示しない処理装置に送出されている。
【0028】
以上により構成されたこの発明に係るオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置による紙替え時の作用を、以下に説明する。
【0029】
前記供給部14a、14bに供給された塗工液のうち、余剰のものは前記塗工液受け部18a、18bに回収され、回収管19a、19bを通って貯留バット20に貯留される。貯留バット20には前記粘度計2が設置されているから、貯留された塗工液の粘度が計測されることになる。このとき、塗工液に変更がなければ、常にほぼ一定の粘度を示すことになる。
【0030】
一方、塗工液が変更された場合、いわゆるカラー替えが行われる場合には、塗工液の性質等が変化することになり、その一つとして粘度が変化することになる。この粘度の変化が粘度計2により計測されることによって、カラー替えが行われたと判断できる。
【0031】
なお、前記供給部14a、14bに供給された塗工液は、インナーゲートロール12a、12bの外周面に付着し、その回転途中でアプリケーターロール11a、11bに転写され、該アプリケーターロール11a、11bから原紙Pの表面に塗工されることになる。
【0032】
図2には、坪量78.0g/m2の紙から坪量95g/m2の紙へ紙替えする際のカラー替え時における塗工液の粘度の変化を実測したグラフを示してあり、横軸に時刻を縦軸に粘度[mpa・s]を示している。なお、粘度は振動式粘度計(型式:FVM80A-ST、CBC社製)で計測した。また、この際の紙替え作業に要した時間を、図上に「紙替え開始」と「紙替え終了」とで示してあり、紙替え作業は、18時37分に紙替えが開始され、19時16分に紙替えが終了して、作業に約39分を要している。
【0033】
一方、図2を参照すると、塗工液の粘度が約155[mpa・s]から170[mpa・s]に変化していることが判る。このときの粘度の変化を監視すると、18時37分に変化が開始され、18時49分には変化が終了している。すなわち、この12分間でカラー替えが行われていると判断でき、その間に紙替え作業を行うことで作業時間を短縮することができる。
【0034】
塗工液の変更がない場合には粘度はほぼ一定で推移するから、粘度の変化はそれまでの粘度に対する変化の比率を測定して、その比率が閾値よりも大きくなった場合には塗工液が変更されたと判断するようにしても構わない。一般的には、抄造される紙はその銘柄が予め決定されており、したがって、オンマシンコーターが設置された抄紙機で使用される塗工液の粘度についても予め把握しておくことができる。このため、使用される塗工液の粘度の変化の範囲を予め計測しておけば変化の閾値を決定することができる。この決定された閾値に基づいて粘度の変化を監視し、閾値を超えた場合には塗工液が変更されたと判断することができる。
【0035】
また、塗工液の粘度の計測には、振動式粘度計を用いることが好ましい。振動式粘度計は、完全密閉式であるため、流体中に浸漬した状態で計測が可能であるから、塗工液の供給ライン又は回収ラインに設置するのに適したものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明に係るオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置によれば、塗工液の変更を迅速に把握できるので、紙替えに要する時間の短縮を図ることができると共に、未抄の銘柄の発生を極力抑制して歩留まりの向上に寄与する。
【符号の説明】
【0037】
1 ゲートロールコーター
2 粘度計
11a、11b アプリケーターロール
14a、14b 供給部
16 ワーキングタンク
18a、18b 塗工液受け部
19a、19b 回収管
20 貯留バット
20a 返戻管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙と塗工とを連続して行うオンマシンコーターにおいて、
コーターヘッドの塗工液の供給ライン、又は、原紙に塗工されて余剰となった塗工液の回収ライン内に粘度計を設けて、該供給ライン又は回収ライン内の塗工液の粘度の変化を監視して、塗工液の変更を認識することを特徴とするオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置。
【請求項2】
前記粘度計に振動式粘度計を用いたことを特徴とする請求項1に記載のオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置。
【請求項3】
前記監視する粘度に関するデータを、粘度の変化の比率としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオンマシンコーターにおける塗工液の切替検出装置。


【図1】
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【図2】
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