説明

オンライン共有ホワイトボード・チャットの履歴再生方法、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム、プログラムおよび記録媒体

【課題】オンラインホワイトボードおよびチャットの書込みの履歴を連動させて再生できるオンライン共有ホワイトボード・チャットの履歴再生方法、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】ホワイトボードの描画情報19およびチャットの発言情報21を、それぞれ個別に時系列順に時刻ID18,20とともに記録する手段と、ホワイトボード履歴ポインタ51が指す前記ホワイトボード時刻ID18および描画情報19を読み出す手段と、チャット履歴ポインタ52が指す前記チャット時刻ID20および発言情報21を読み出す手段と、前記ホワイトボード時刻ID18およびチャット時刻ID20を比較し、前記ホワイトボード時刻ID18およびチャット時刻ID20の時間的な前後関係に基づき、前記描画情報19および発言情報21のどちらか一方を再生する手段とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークで互いに接続されたサーバおよびクライアントを利用したオンライン共有ホワイトボード・チャットシステムに関し、特に過去の書込みを時系列順に再生できるオンライン共有ホワイトボード・チャットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
eラーニングでは、遠隔地の学習者が共同で学習できるため、グループ活動で共通課題に共同で対処する協調学習を支援する試みが行われている。従来、電子掲示板やチャットなどのコミュニケーション支援ツールの普及とともに、例えば特許文献1に開示されるように、図や数式を用いた視覚的な説明が可能であるオンラインホワイトボードシステムが開発されている。また、特許文献1には、ホワイトボードと動画像とを同期再生することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−66315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のオンラインホワイトボードは同期的な利用を前提としており、学習者が遠隔地にいるとしても、時間的には学習者が同時に学習している必要がある。そのため、途中から議論に参加する者や別の時間に学習する者は、議論状況を把握できない問題がある。
【0005】
また、協調学習の対象となるプロジェクトベース学習(Project-Based Learning,PBL)では、プロジェクト完了後の「振り返り」が学習のために重要である。そのため、過去の議論の経過を見返したいという要求がある。さらに、学習過程で作成した図面の上に書き込みながら議論をしたいという要求もある。
【0006】
また、ホワイトボードとチャットとの同期再生において、特許文献1に開示されるようなホワイトボードと動画像とを同期再生する手法を用いると、離散的な情報であるチャットの個々の発言を正方向および逆方向にステップ再生することができない問題がある。
【0007】
さらに上記従来技術では、ホワイトボード書込みの履歴を、個々のクライアントが独立に再生することしかできない。そのため、各クライアントを操作・閲覧する複数のユーザが正方向および逆方向のステップ再生の操作を行い、その操作に基づき再生されるホワイトボード書込みの履歴を、全ユーザが共有して見ることはできない。
【0008】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、オンラインホワイトボードとチャットとを連携させるとともに、その書込みの履歴を連動させて再生できるオンライン共有ホワイトボード・チャットの履歴再生方法、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明のオンライン共有ホワイトボード・チャットの履歴再生方法では、オンライン共有ホワイトボードシステムに書込まれる描画情報およびオンラインチャットシステムに書込まれる発言情報に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻IDを付与するステップと、前記描画情報に付与されたホワイトボード時刻IDとともに、前記描画情報を時系列順に記録するステップと、前記発言情報に付与されたチャット時刻IDとともに、前記描画情報とは個別に前記発言情報を時系列順に記録するステップと、ホワイトボード履歴ポインタが指す前記ホワイトボード時刻IDおよび描画情報を読み出すステップと、チャット履歴ポインタが指す前記チャット時刻IDおよび発言情報を読み出すステップと、前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDを比較し、前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDの時間的な前後関係に基づき、前記描画情報および発言情報のどちらか一方を再生するステップとからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明のオンライン共有ホワイトボード・チャットシステムでは、オンライン共有ホワイトボードシステムに書込まれる描画情報およびオンラインチャットシステムに書込まれる発言情報に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻IDを付与する手段と、前記描画情報に付与されたホワイトボード時刻IDとともに、前記描画情報を時系列順に記録する手段と、前記発言情報に付与されたチャット時刻IDとともに、前記描画情報とは個別に前記発言情報を時系列順に記録する手段と、ホワイトボード履歴ポインタが指す前記ホワイトボード時刻IDおよび描画情報を読み出す手段と、チャット履歴ポインタが指す前記チャット時刻IDおよび発言情報を読み出す手段と、前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDを比較し、前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDの時間的な前後関係に基づき、前記描画情報および発言情報のどちらか一方を再生する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明のオンライン共有ホワイトボード・チャットプログラムでは、コンピュータを、オンライン共有ホワイトボードシステムに書込まれる描画情報およびオンラインチャットシステムに書込まれる発言情報に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻IDを付与する手段と、前記描画情報に付与されたホワイトボード時刻IDとともに、前記描画情報を時系列順に記録する手段と、前記発言情報に付与されたチャット時刻IDとともに、前記描画情報とは個別に前記発言情報を時系列順に記録する手段と、ホワイトボード履歴ポインタが指す前記ホワイトボード時刻IDおよび描画情報を読み出す手段と、チャット履歴ポインタが指す前記チャット時刻IDおよび発言情報を読み出す手段と、前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDを比較し、前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDの時間的な前後関係に基づき、前記描画情報および発言情報のどちらか一方を再生する手段として機能させることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の記録媒体では、請求項3に記載のオンライン共有ホワイトボード・チャットプログラムを記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4の発明によれば、過去の議論の過程を確認することができるので、途中から議論に参加する者や別の時間に学習する者は、議論状況を容易に把握することができる。また、学習過程で作成した図面の上に書き込みながら議論をすることができ、且つその書込みも再生の対象とされる。さらに、各クライアントを操作・閲覧する複数のユーザが、ホワイトボードおよびチャットの書込みを正方向および逆方向に再生するステップ再生などの再生操作を行い、その操作に基づき再生される書込みの履歴を、全ユーザが共有して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示すオンライン共有ホワイトボード・チャットシステムの全体構成図である。
【図2】同上、図1のシステムのさらに詳細な全体構成図である。
【図3】同上、ユーザインタフェースの一例を示す図である。
【図4】同上、チャットウィンドウの履歴再生モードの一例を示す図である。
【図5】同上、再生制御ボタン群を示す図である。
【図6】同上、アップローダの一例を示す図である。
【図7】同上、履歴を再生するための前処理の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】同上、履歴の連続再生の動作手順を示すフローチャートである。
【図9】同上、履歴の逆方向ステップ再生の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明におけるオンライン共有ホワイトボード・チャットシステムの好ましい実施例を説明する。図1は、本実施例におけるオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1の全体構成図である。オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1は、インターネットやイントラネットなどの通信ネットワーク2と、この通信ネットワーク2にそれぞれ接続されるサーバ3およびクライアント4とを備えて構成される。
【0016】
また、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1は、図や数式を用いた視覚的な説明が可能なコミュニケーションツールを提供するオンライン共有ホワイトボードシステム5と、文字を用いたコミュニケーションツールを提供するオンラインチャットシステム6とを連携させて構成される。オンライン共有ホワイトボードシステムシステム5は、サーバ3側に、書込みを記録する記録手段11およびサーバホワイトボード制御部12を備え、クライアント4側にホワイトボード31本体を備える。オンラインチャットシステム6は、サーバ3側に、書込みを記録する記録手段13およびサーバチャット制御部14を備え、クライアント4側にチャット本体32を備える。またサーバ3は、書込みを初期状態から時系列順に再生する再生手段15と、オンライン共有ホワイトボードシステムシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の書込みの再生を同期させる同期手段16を含む同期・再生制御部17とを備える。
【0017】
図2を参照しながら、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1のさらに詳細な全体構成を説明する。サーバ3は、図示しないが、CPU(主制御部)と、主メモリや外部記憶装置(ハードディスクドライブ)などの記憶装置と、通信ネットワークとの通信手段とを有する。サーバ3の記憶装置に予め記憶されたプログラムを処理実行することで、サーバホワイトボード制御部12、サーバチャット制御部14、および同期・再生制御部17は、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1の動作を制御するようになっている。記録手段11としてのホワイトボード描画情報蓄積部11は、サーバホワイトボード制御部12が行う動作に基づいて、ホワイトボードに書込みが行われた時刻ID18とともに描画情報19を時系列順に記録する。また、記録手段13としてのチャット発言情報蓄積部13は、サーバチャット制御部14が行う動作に基づいて、チャットに書込みが行われた時刻ID20とともに発言情報21を時系列に記録する。時刻ID18,20は、正確な絶対時刻ではなく、描画情報19と発言情報21との時間的前後関係が分かるような時刻とともに単調増加する数値であればよく、時刻ID供給部22から供給されるようになっている。こうして、オンライン共有ホワイトボードシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の書込みは、それぞれ個別に時系列順に時刻ID18,20とともに記録されるようになっている。すなわち、ホワイトボード描画情報蓄積部11およびチャット発言情報蓄積部13からそれぞれ読み出されるオンライン共有ホワイトボードシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の書込みは、時刻ID18,20が例えば昇順になるように表示することで、時系列順に再生されることができるようになっている。
【0018】
特許文献1では、ホワイトボードを使用して会議や遠隔授業を行っている映像などの動画像とあわせて表示させる場合には、動画像の再生時間にあわせて、ホワイトボードの履歴ファイルから情報を読み込み、オブジェクトの操作を実行し、その結果を画面に表示する。こうした方法では、動画像との同期ため時間間隔が重要な意味を持つことから、時間間隔が保持されるような時刻情報の付与が必要となる。すなわち、正確な絶対時刻を時刻情報とする必要があり、例えばコンピュータの時計が狂っていると、ホワイトボードと動画像がずれて再生される可能性がある。その一方で、本実施形態は、オンライン共有ホワイトボードシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の書込み、すなわち描画情報19および発言情報21の時間的な前後関係が保持されればよく、前述のように時刻ID18,20は、正確な絶対時刻ではなく、描画情報19と発言情報21の時間的前後関係が分かるような時刻とともに単調増加する数値であればよい。すなわち、本実施形態が扱う描画情報19および発言情報21は時間的に離散した情報であるから、両者がずれて再生するといった問題は懸念されることなく、後述するように履歴を正方向および逆方向にステップ再生するといったこともできるようになっている。
【0019】
同期・再生制御部17は再生方向およびステップ制御部23を備える。再生方向およびステップ制御部23は、後述するクライアントの再生制御ボタン群37の操作に基づき、描画・発言情報抽出部24の動作を制御する。描画・発言情報抽出部24は、ホワイトボード描画情報蓄積部11およびチャット発言情報蓄積部13から、時刻ID18,20と時刻ID18,20にそれぞれ対応する描画情報19および発言情報21とを抽出する。このとき、ホワイトボード履歴ポインタ51が指す時刻ID18および描画情報19と、チャット履歴ポインタ52が指す時刻ID20および発言情報21とがそれぞれ抽出されるようになっている。描画・発言情報整列部25は、抽出された描画情報19および発言情報21のそれぞれの時刻ID18,20を比較し、描画情報19の時刻ID18が先か、それとも発言情報20の時刻ID21が先かを判断する。再生方向が正方向であれば時刻ID18,20のうち先のものを表示させ、再生方向が逆方向であれば時刻ID18,20のうち後のものを表示させるようになっている。描画・発言表示指示部26は、サーバホワイトボード制御部12およびサーバチャット制御部14に対して、描画・発言情報整列部25で選択された描画情報19および発言情報21を表示する指令を送信する。
【0020】
特許文献1では、ホワイトボードおよび動画像を同期再生するために、実時間の動画像の記録と実時刻情報の記録とを使用している。その一方で、本実施形態は、時間的に離散した情報である描画情報19および発言情報21を使用して、オンライン共有ホワイトボードシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の書込みを同期再生する。そのため、描画情報19および発言情報21は、正確な絶対時刻ではなく、描画と発言の時間的前後関係が分かるような時刻とともに単調増加する数値である時刻ID18,20とともに記録されることで、時系列順に再生されることができるようになっている。すなわち、本実施形態は、描画情報19および発言情報21といった時間的に離散した情報と時刻の前後関係との記録に基づき同期再生を行うようになっている。
【0021】
クライアント4は、例えばPCなどのコンピュータで構成されており、図示しないが、周知のように、CPU(主制御部)と、主メモリや外部記憶装置(ハードディスクドライブ)などの記憶装置と、通信ネットワークと接続することが可能な有線又は無線のLANアダプタなどの通信インターフェースと、入出力制御部と、入力装置と、表示装置と、出力装置などを、ハードウェア構成として備える。
【0022】
クライアント4のホワイトボード本体31およびチャット本体32の詳細な構成を説明すると、クライアント4は、記憶装置に予め記憶されたプログラムを処理実行することで、クライアント4側のオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1の動作を制御するクライアントホワイトボード制御部33およびクライアントチャット制御部35を備える。クライアントホワイトボード制御部33は、オンライン共有ホワイトボードシステム5に書込みが行われると、表示装置に表示されるホワイトボードウィンドウ34にその書込みを表示するとともに、サーバホワイトボード制御部12に対して、ホワイトボード描画情報蓄積部11に描画情報19を記録するよう指示を送る。また、クライアントホワイトボード制御部33は、書込み履歴の再生時には、サーバホワイトボード制御部12の指示を受けて、ホワイトボードウィンドウ34にその書込みを表示する。クライアントチャット制御部35は、オンラインチャットシステム6に書込みが行われると、表示装置に表示されるチャットウィンドウ36にその書込みを表示するとともに、サーバチャット制御部14に対して、チャット発言情報蓄積部13に発言情報21を記録するよう指示を送る。また、クライアントチャット制御部35は、書込み履歴の再生時には、サーバチャット制御部14の指示を受けて、チャットウィンドウ36にその書込みを表示する。
【0023】
図3に、クライアント4の表示装置に表示されるユーザインタフェースの一例を示す。メインウィンドウ60内のホワイトボードウィンドウ34には、スライドや描画情報19が表示される。チャットウィンドウ36には、発言情報21が表示される。チャットウィンドウ36は、履歴の再生時には図4に示すように、履歴再生モードに切り替わる。また、メインウィンドウ60には、基本操作を行うアイコン群61や、レイヤー管理を行うのに必要な情報62が表示されるようになっている。
【0024】
またクライアント4は、ホワイトボード書込みの再生を制御する再生制御ボタン群37を表示装置に表示し、各ユーザがその再生制御ボタン群37をクリックすることで、各種再生操作を行えるようになっている。サーバでは、前述のように、再生制御ボタン群37の操作に基づき、再生方向およびステップ制御部23が再生の制御を行うようになっている。再生制御ボタン群37は、例えば図5に示すように、履歴の最初に戻るボタン41、連続再生を開始する再生ボタン42、再生を一時停止する一時停止ボタン43、逆方向にステップ再生する逆方向ステップ再生ボタン44、正方向にステップ再生する正方向ステップ再生ボタン45、および再生を停止する停止ボタン46を備える。
【0025】
また、前述のオンライン共有ホワイトボードシステム5は、前述の基本操作を行うものとして、ホワイトボードウィンドウ34にスライドを表示するスライド表示機能、およびホワイトボードウィンドウ34に線を描画するデジタルインク機能を備える。サーバ3に画像ファイルを配置しておくことで、画像ファイルがスライドとしてホワイトボードウィンドウ34に表示され、その上に描画することができるようになっている。例えば画像ファイル66は、図6に示すようなアップローダウィンドウ65に一覧で表示されるようになっている。このアップローダウィンドウ65で画像ファイル66を選択することで、画像ファイル66がスライドとしてホワイトボードウィンドウ34に表示されるようになっている。デジタルインクの種類は、例えばフリーハンドおよび直線があり、線の太さと色を変更することができるようになっている。また、消しゴムが使用でき、書き込んだ線を消すことができるようになっている。オンラインチャットシステム6は、時系列で会話形式の議論をするチャット機能を備える。したがって、オンライン共有ホワイトボードシステム5とオンラインチャットシステム6とを連携させることにより、ホワイトボードを用いた視覚的な説明に加えて、文字による議論ができるようになっている。
【0026】
次に、図7〜9のフローチャートを参照しながら、上記構成におけるオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1の動作手順を説明する。図7はオンライン共有ホワイトボードシステム5およびオンラインチャットシステム6の書込みの履歴を連続再生するための前処理を示すフローチャートである。例えば再生ボタン42がクリックされて連続再生が開始されると、まずステップS11でクライアントへホワイトボード初期化指令が送信される。次にステップS12で、ホワイトボード描画情報蓄積部11に記録されたホワイトボード操作履歴のうち、特定の時刻ID18とその時刻ID18に対応する描画情報19を指す、ホワイトボード履歴ポインタ51が先頭にセットされる。ステップS13で、チャット発言情報蓄積部13に記録されたチャット操作履歴のうち特定の時刻ID20とその時刻ID20に対応する発言情報を指す、チャット履歴ポインタ52が先頭にセットされる。こうして、描画部分すなわちホワイトボードウィンドウ34の表示がクリアされるとともに、チャットが履歴再生モードに切り替わり、ホワイトボードおよびチャットの書込みの履歴を連動させて再生できるようになる。
【0027】
図8は書込みの履歴を連続再生する際の再生処理のフローチャートである。ステップS21で再生が開始されると、ステップS22で履歴を全て取出したか判断される。履歴を全て取出している場合(ステップS22のYESの場合)、再生処理は終了する。履歴を全て取出していない場合(ステップS22のNOの場合)、ステップS23でホワイトボード履歴ポインタ51が指すホワイトボード操作履歴の時刻ID18および描画情報19を読み出す。ステップS24でチャット履歴ポインタ52が指すチャット操作履歴の時刻ID20および発言情報21を読み出す。これらの読み出しは、同期・再生制御部17の描画・発言情報抽出部24の動作に基づき行われる。
【0028】
ステップS25でホワイトボードの時刻ID18と、チャットの時刻ID20とを比較する。この比較は、同期・再生制御部17の描画・発言情報整列部25の動作に基づき行われる。ホワイトボードの時刻ID18がチャットの時刻ID20よりも先の場合(ステップS25の≦の場合)、ステップS26でホワイトボード描画情報19をクライアント4に送信し、その後ステップS27でホワイトボード履歴ポインタ51をひとつ進める。その一方で、チャットの時刻ID20がホワイトボードの時刻ID18よりも先の場合(ステップS25の>の場合)、ステップS28でチャット発言情報21をクライアント4に送信し、その後ステップS29でチャット履歴ポインタ52をひとつ進める。これらの情報の送信は、同期・再生制御部17の描画・発言表示指示部26の指示に基づき、サーバホワイトボード制御部12およびサーバチャット制御部14を介して行われる。ステップS30で一定時間待機した後、再びステップS22で履歴を全て取出したかが判断される。
【0029】
履歴を正方向にステップ再生する場合には、クライアントの表示装置に表示される正方向ステップ再生ボタン45がクリックされるたびに、ステップS23〜S30の動作を行うようにすればよい。履歴を逆方向にステップ再生する場合には、例えば図9に示すフローチャートに基づき処理すればよい。ステップS31でクライアントの表示装置に表示される逆方向ステップ再生ボタン44がクリックされると、ステップS32でホワイトボード履歴ポインタ51が指す位置よりも1つ後退した位置のホワイトボード操作履歴の時刻ID18および描画情報19を読み出し、ステップS33でチャット履歴ポインタ52が指す位置よりも1つ後退した位置のチャット操作履歴の時刻ID20および発言情報21を読み出す。これらの読み出しは、同期・再生制御部17の描画・発言情報抽出部24の動作に基づき行われる。S34でホワイトボードの時刻ID18と、チャットの時刻ID20とを比較する。この比較は、同期・再生制御部17の描画・発言情報整列部25の動作に基づき行われる。ホワイトボードの時刻ID18がチャットの時刻ID20よりも後の場合(ステップS34の≧の場合)、ステップS35でホワイトボード描画情報19を削除フラグ(図示せず)とともにクライアント4に送信し、その後ステップS36でホワイトボード履歴ポインタ51をひとつ後退させる。クライアント4は、削除フラグが付与されたホワイトボード描画情報19を受取ると、該当する描画をホワイトボードウィンドウ34の表示から削除する。その一方で、チャットの時刻ID20がホワイトボードの時刻ID18よりも後の場合(ステップS34の<の場合)、ステップS37でチャット発言情報21を削除フラグとともにクライアント4に送信し、その後ステップS38でチャット履歴ポインタ52をひとつ後退させる。クライアント4は、削除フラグが付与されたチャット発言情報21を受取ると、該当する発言をチャットウィンドウ36の表示から削除する。これらの情報の送信は、同期・再生制御部17の描画・発言表示指示部26の指示に基づき、サーバホワイトボード制御部12およびサーバチャット制御部14を介して行われる。ステップS39で続けて逆方向ステップ再生ボタン44がクリックされた場合(ステップS39のYESの場合)、再びステップS32に戻る。他の操作ボタンがクリックされた場合(ステップS39のNOの場合)には、逆方向ステップ再生を終了し、クリックされた操作ボタンに従って再生処理が実行される。
【0030】
このようにして、ホワイトボード描画情報蓄積部11およびチャット発言情報蓄積部13に記録されたオンライン共有ホワイトボードシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の書込みを、それぞれ初期状態から時系列順に再生するとともに、オンライン共有ホワイトボードシステム5の書込みおよびオンラインチャットシステム6の再生を、時刻ID18,20に基づいて同期させることで、途中から議論に参加する者や別の時間に学習する者は、書込みの履歴を再生し、容易に議論状況を把握することができる。また、クライアント4のユーザは、振り返り学習の際には、過去の議論の過程を確認することができる。さらに、ユーザは、学習過程で作成し、ホワイトボードの初期状態として表示される図面の上に、書き込みを行いながら議論を進めることができる。従来、例えば前述の特許文献1では、操作情報や動画のデータを全てクライアントに送信した後に、クライアントで再生処理が行われる。したがって、再生中に後からホワイトボードに書き込まれたものは再生の対象にならない。その一方で本実施例は、データをサーバ3に置いたままで、クライアント4と連携して、連続再生したり、ユーザの操作によってステップ再生を行ったりする。したがって、あるクライアント4のユーザの操作により履歴が再生されている途中で、別のクライアント4のユーザがその上に書き込んだものも再生の対象とされる。以上のように本発明のオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1は、同期的な利用も非同期的な利用も可能であることから、地理的にも時間的にも柔軟な協調学習が実施されることができる。
【0031】
また、1ステップずつ前進したり(正方向ステップ再生)、後退したり(逆方向ステップ再生)することができることから、所望の時点のホワイトボードおよびチャットの履歴を確認することができる。このような再生は各クライアント4で独立して行うこともできるし、各クライアント4の複数のユーザがそれぞれ操作し、その結果再生されるものを全ユーザが共有して見ることもできる。したがって、本発明のオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1は、議論の参加者全員が履歴の再生を共有しながら議論を行う協調学習に有効に活用されることができる。
【0032】
また、上述の実施例では、記憶装置に予め記憶されたプログラムを実行することで、プログラムに従ってオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1が動作するようになっているが、本発明はこれに限らず、オンライン共有ホワイトボード・チャットプログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体(図示せず)を配布し、この記録媒体を用いてサーバおよびクライアントにインストールすることにより上述の処理を行うようにしてもよい。このような記録媒体としては、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、DVD(Digital Versatile Disc )などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるマスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリやハードディスクなどの磁気ディスク等で実現しても良い。またこれら記録媒体にプログラムを記録する手段としては、ローカルエリアネットワークやインターネット、ディジタル放送などの有線および無線通信媒体を利用してもよく、ルータやモデムなどの各種通信インターフェースを介して記録するようにしてもよい。
【0033】
以上のように、本実施例は請求項1〜4に対応しており、オンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1は、オンライン共有ホワイトボードシステム5に書込まれる描画情報19およびオンラインチャットシステム6に書込まれる発言情報21に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻ID18,20を付与する手段と、前記描画情報19に付与されたホワイトボード時刻ID18とともに、前記描画情報19を時系列順に記録する手段と、前記発言情報21に付与されたチャット時刻ID20とともに、前記描画情報19とは個別に前記発言情報21を時系列順に記録する手段と、ホワイトボード履歴ポインタ51が指す前記ホワイトボード時刻ID18および描画情報19を読み出す手段と、チャット履歴ポインタ52が指す前記チャット時刻ID20および発言情報21を読み出す手段と、前記ホワイトボード時刻ID18およびチャット時刻ID20を比較し、前記ホワイトボード時刻ID18およびチャット時刻ID20の時間的な前後関係に基づき、前記描画情報19および発言情報21のどちらか一方を再生する手段とを備えることで実現される。
【0034】
こうすると、過去の議論の過程を確認することができるので、途中から議論に参加する者や別の時間に学習する者は、議論状況を容易に把握することができる。また、学習過程で作成した図面の上に書き込みながら議論をすることができ、且つその書込みも再生の対象とされる。さらに、各クライアント4の複数のユーザが、ホワイトボードおよびチャットの書込みを正方向および逆方向に再生するステップ再生などの再生操作を行い、その操作に基づき再生される書込みの履歴を、全ユーザが共有して見ることができる。したがって、本発明によれば、eラーニングを用いた協調学習支援において、視覚的な説明ができるオンラインホワイトボードおよび文字による議論ができるチャットを連携させたオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム1を同期的にも非同期的にも利用することができ、当該システム1は振り返り学習にも活用されることができる。
【0035】
そしてこうした作用効果は、上記の記録ステップ11,13と、再生ステップ15と、同期ステップ16とを備えたオンライン共有ホワイトボード・チャット履歴再生方法でも実現されるし、上記の記録手段11,13と、再生手段15と、同期手段16とを、任意のコンピュータなどに機能させるオンライン共有ホワイトボード・チャットプログラムでも実現される。また、このプログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録することで、記録媒体を容易に配布したり販売したりすることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えばクライアント4の数は、図1や図2に示したような1つや2つに限られるものではない。また、ホワイトボードウィンドウ34やチャットウィンドウ36は、特別なプログラムのウィンドウではなく、Webブラウザでもよい。その際には、Webブラウザ側で制御プログラムが動作する必要があり、例えば、いわゆる「Ajax」(Asynchronous JavaScript(登録商標) + XML)と呼ばれるWebブラウザのアプリケーション技術を用いてもよい。また、Java(登録商標) Appletなどのプログラミング言語を用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
5 オンライン共有ホワイトボードシステム
6 オンラインチャットシステム
18 時刻ID(ホワイトボード時刻ID)
19 描画情報
20 時刻ID(チャット時刻ID)
21 発言情報
51 ホワイトボード履歴ポインタ
52 チャット履歴ポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンライン共有ホワイトボードシステムに書込まれる描画情報およびオンラインチャットシステムに書込まれる発言情報に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻IDを付与するステップと、
前記描画情報に付与されたホワイトボード時刻IDとともに、前記描画情報を時系列順に記録するステップと、
前記発言情報に付与されたチャット時刻IDとともに、前記描画情報とは個別に前記発言情報を時系列順に記録するステップと、
ホワイトボード履歴ポインタが指す前記ホワイトボード時刻IDおよび描画情報を読み出すステップと、
チャット履歴ポインタが指す前記チャット時刻IDおよび発言情報を読み出すステップと、
前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDを比較し、
前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDの時間的な前後関係に基づき、
前記描画情報および発言情報のどちらか一方を再生するステップと
からなることを特徴とするオンライン共有ホワイトボード・チャットの履歴再生方法。
【請求項2】
オンライン共有ホワイトボードシステムに書込まれる描画情報およびオンラインチャットシステムに書込まれる発言情報に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻IDを付与する手段と、
前記描画情報に付与されたホワイトボード時刻IDとともに、前記描画情報を時系列順に記録する手段と、
前記発言情報に付与されたチャット時刻IDとともに、前記描画情報とは個別に前記発言情報を時系列順に記録する手段と、
ホワイトボード履歴ポインタが指す前記ホワイトボード時刻IDおよび描画情報を読み出す手段と、
チャット履歴ポインタが指す前記チャット時刻IDおよび発言情報を読み出す手段と、
前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDを比較し、
前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDの時間的な前後関係に基づき、
前記描画情報および発言情報のどちらか一方を再生する手段と
を備えることを特徴とするオンライン共有ホワイトボード・チャットシステム。
【請求項3】
コンピュータを、
オンライン共有ホワイトボードシステムに書込まれる描画情報およびオンラインチャットシステムに書込まれる発言情報に対して時系列順に、時刻とともに単調増加する時刻IDを付与する手段と、
前記描画情報に付与されたホワイトボード時刻IDとともに、前記描画情報を時系列順に記録する手段と、
前記発言情報に付与されたチャット時刻IDとともに、前記描画情報とは個別に前記発言情報を時系列順に記録する手段と、
ホワイトボード履歴ポインタが指す前記ホワイトボード時刻IDおよび描画情報を読み出す手段と、
チャット履歴ポインタが指す前記チャット時刻IDおよび発言情報を読み出す手段と、
前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDを比較し、
前記ホワイトボード時刻IDおよびチャット時刻IDの時間的な前後関係に基づき、
前記描画情報および発言情報のどちらか一方を再生する手段として機能させることを特徴とするオンライン共有ホワイトボード・チャットプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のオンライン共有ホワイトボード・チャットプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43380(P2012−43380A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186625(P2010−186625)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年5月6日掲載https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=69349&item_no=1&page_id=13&block_id=8
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)地域ICT振興型研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】